明細書
造血幹細胞及び造血前駆細胞の増幅方法 技術分野
本発明は、 造血細胞の増幅用組成物、 造血細胞の増幅用無血清培地、 並びに造血細胞の増幅方法、 及び当該増幅方法により得られうる造血細 胞培養物などに関する。 背景技術
再生医学 ( 生医療) とは生体の組織臓器がどのように発生分化し、 構築されているかの仕組みに関する研究成果を利用して疾患部分の組織 や臓器を修復しよう とする先端医学分野である。 患者自身の組織の修復 能力によって治療が可能になることが理想である。 そこで再生医学の一 つの方向と しては生体組織のできるだけ大きな潜在的修復能力を引き出 す方法を開発することである。 そのためには細胞増.殖と細胞分化および 組織構築を調節するサイ トカインゃマトリ ックス分子などの制御因子の 働きを解明して利用することなどが求められる。 その一方で移植治療に 用いる細胞を体外培養によって増殖させることが必要になる。 そこで組 織幹細胞のように長期間自己増殖しながら多種類の機能細胞を作り出す ことができる幹細胞が注目されている。
再生医学の一例と して細胞医療が挙げられる。 細胞医療とは自己また は他人の組織を用い、 疾病の治療を行う技術である。 免疫細胞を増殖さ せて免疫力を高めたり、 軟骨細胞を培養して関節に移植することなどが 可能になると考えられている。 現在細胞医療が有効であると期待されて いるものの一つが、 癌化学療法後の骨髄抑制の治療を目的とした造血幹 細胞である。 造血幹細胞は骨髄性白血病治療や癌化学療法後の骨髄抑制
を防止するために、 予め末梢血中などの造血幹細胞を採取しておき、 細 胞増殖因子や抗原などで処理した後に移植する方法が取られている。 細胞医療の代表例として臍帯血幹細胞移植について説明する。 臍帯血 幹細胞移植とは新生児と母親を繋ぐ臍の緒の血 (臍帯血) を採取 ·冷凍 保存し、 必要に応じて白血病患者などに移植することである。 臍帯血は 未分化な造血幹細胞を豊富に含んでいる。 そのため、 骨髄や末梢血より もはるかに少量の細胞でも造血能が得られる。 また A型が完全に一 致していなくても移植が可能で、 さらに移植片対宿主病 (G V H D ) の 発生が少ない。 ただし採取される細胞数に限度があるため、 現時点では 小児への移植が主体である。
再生医療における基盤整備の一つに、 目的とする細包の培養技術が挙 げられる。 当技術には安定的、 大量、 安価、 早く、 かつ簡便に目的細胞 を増殖(分化'増幅を含む) させられるレベルであることが要求される。 細胞培養としては大きく分けて、 血清を含む培地で培養する血清培養と 血清を含まない培地で培養する無血清培養とがあるが、 再生医療の場に おいて、 ウィルスやプリオンの混入を防ぐ等の理由から無血清培養が注 目されている。特に該細胞として汎用される臍帯血のェクスビボ増幅(ex vivo expans ion) , 臍帯血前駆細胞の増幅培養の技術を臨床応用するため に無血清培養法の確立が重要な課題となっている。
無血清培地での造血細胞の増幅培養について幾つかの関連技術が知ら れている。
例えば、 W O 9 8 / 0 6 8 2 2は組換えヒ ト血清ァノレブミンを含有す る無血清培地を開示するが、 造血細胞の増幅培養に関する記載はない。 また、 W〇 9 5 / 0 6 1 1 2は、 臍帯血から造血幹糸田胞を調製し、 ヒ ト血清アルプミンを含有する無血清培地で培養することを開示している。 また無血清培養された細胞は分化していない傾向があるとの記載もある。
しかしながら、 WO 9 5/0 6 1 1 2は本来、 好中球前駆細胞 . 巨核球 前駆細胞の增殖に関するものである。
さらに、 W09 7 / 3 3 9 7 8は、 臍帯血から調製された C D 3 4 + 細胞を、 ヒ ト血清アルブミンを含有する無血清培地中で培養すること、 及び当該培養により CD 34 +細胞の増幅が実現されるこ とを開示して いる。 しかしながら、 当該培養における組換えヒ ト血清アルブミンの使 用は開示されていない。 発明の開示
本発明の目的は、 造血細胞の増幅培養系に有用な種々の手段を提供す ることにある。
本発明者らは上記の事情を考慮に入れて研究を行った結果、 ヒ ト血清 アルブミンを用いることにより、 従来法と比べて、 造血細胞の分化を抑 制しつつ、 造血細胞を効率的に増幅し得ることを見出して本発明を完成 した。
即ち、 本発明は、 下記の通りである :
( 1 ) 組換えヒ ト血清アルブミンを含有してなる、 造血細胞の増幅用組 成物、
(2) 造血細胞が造血幹細胞である、 上記 ( 1 ) の組成物、
( 3) 造血幹細胞が CD 34+/CD 3 8—、 CD 34+ZDR―、 CD 3 4 +/ C D 9 0+、 CD 34+/CD l 1 7 +、 CD 34 +/C D l 2 3 +、 及び CD 34 +/C D 1 3 3+からなる群より選ばれるものである、 上記 (2) の組成物、
( 4 ) 造血幹細胞が CD 34+ZCD 3 8— ZDR である、 上記 (2) の組成物、
( 5) 造血細胞が造血前駆細胞である、 上記 ( 1 ) の組成物、
( 6 ) 基本培地および組換えヒ ト血清ァノレブミンを含有してなる、 造血 細胞の増幅用無血清培地、
( 7) 組換えヒ ト血清アルブミンを含有してなる無血清培地中で造 jfaL細 胞を培養することを特徴とする、 造血細 J3包の増幅方法、
( 8 ) 造血細胞を調製することをさらに含む、 上記 ( 7 ) の増幅方 fe、 ( 9 ) 造血細胞が臍帯血由来のものである、 上記 ( 7) 又は (8 ) O増 幅方法、
( 1 0) 造血細胞が造血幹細胞である、 記 ( 7 ) 〜 (9 ) のいず;^か の増幅方法、
( 1 1 ) 増幅された造血幹細胞が C D 3 4 +ZC D 3 8—、 CD 3 4 Z D R一、 CD 3 4+/CD 9 0 +、 C D 3 4 + / C D 1 1 7 +、 C D 3 4 +
/CO 1 2 3 +、 及び CD 3 4 +/C D 1 3 3 +からなる群より選ば る ものである、 上記 ( 1 0) の増幅方法、
( 1 2)増幅された造血幹細胞が CD 3 4 +/C D 3 8— /DR である、 上記 ( 1 0) の増幅方法、
( 1 3) 造血細胞が造血前駆細胞である、 上記 ( 7) 〜 ( 9) のいずれ かの増幅方法、
( 1 4) 上記 (7) 〜 ( 1 3 ) のいずれ力 の方法により得られうる造血 細胞培養物、
( 1 5) 血清成分を含有しない、 上記 ( 1 4) の培養物。
本発明の詳細については、以下の発明の群細な説明において説明する。 本発明によれば、 造血細胞をより未分ィ匕の状態で増幅することができ る。 その增幅効率は、 血清培地 (例えば F C S添加培地)、 血漿由来 H S A含有無血清培地等を用いる従来の方法と 比べて非常に優れている。 ま た、 本発明によれば、 無血清培地による 血細胞の増幅が可能になる た め、 細胞移植において問題となり得るウイ ルスやプリオンの混入を低減
することができる。 発明の詳細な説明
本発明は、 組換えヒ ト血清アルブミ ンを含有してなる、 造血細胞の増 幅用組成物を提供する。 本発明の組成物は、 従来の方法よりも、 未分化 状態を維持したまま、 造血細胞数を効率的に増加し得るという特徴を有 する。
本明細書中で用いられる場合、 「造血細胞」 とは、 未分化細胞である造 血幹細胞及び造血前駆細胞をいい、分化した細胞、例えば、 白血球(例、 顆粒球 (好中球、 好酸球、 好塩基球)、 単球、 マクロファージ、 リ ンパ球 (B細胞、 T細胞、 NK細胞))、 赤血球、 血小板は除かれる。 造血細月包 の由来は、 哺乳動物、 好ましくはヒ トである。
「造血幹細胞」 とは、 白血球、 赤血球、 血小板等に共通する祖先であ る、 多分化能と自己複製能を併有する細胞をいう。 造血幹細胞は、 C D 34 +であり得る。 従って、 一つの局面では、 造血幹細胞として CD 3 4 +細胞を用いることができる。 また、 CD 34+以外にも、 他の造血幹 細胞マーカーを複数併用してもよい。 CD 3 4 +と併用される幹細胞マ 一力一としては、 CD 3 8—、 DR―、 CD 4 5+、 CD 9 0+、 CD 1 1 7+、 CD 1 2 3 +、 C D 1 3 3 +が例示される。 造血細胞がいずれの 細胞マーカーを発現しているかは、 F AC Sを用いた方法等の自体公失口 の方法により測定することができ、 また、 特定の幹細胞マーカーを発現 している造血幹細胞を分離、 精製することもできる。
「造血前駆細胞」 とは、 造血幹細胞に由来する細胞であって、 終末分 化していない細胞をいう。 造血前駆細胞は、 2〜 3系統の血球に分化で きる寡能性造血前駆細胞、 1つの血球に分化が限定された単能性造血前 駆細胞に分類することができる。
また、 造血前駆細胞は、 顆粒球 (好酸球、 好中球、 好塩基球) の前駆 細胞、 単球及ぴマクロファージの前駆細胞、 血小板の前駆細胞、 赤血球 の前駆細胞、 B細胞の前駆細胞、 T細胞の前駆細胞、 マス ト細胞の前駆 細胞であり得る。 血小板の前駆細胞として は、 巨核球の前駆細胞が好ま しく、 巨核芽球の前駆細胞がより好ましい c また、 赤血球の前駆細胞と しては赤芽球の前駆細胞が好ましい。 これ ら各系列の前駆細胞は、 自体 公知の方法を用いて細胞マーカーを判別す ることにより分類することが できる。 例えば、 骨髄系細胞のマーカーと して C D 1 3、 単球及びマク 口ファージ系のマーカーとして CD 1 4、 巨核球系マーカーとして CD 4 1、 赤血球系マーカーとしてグリコホリ ン、 B細胞系マーカーとして C D 1 9、 T細胞系マーカーとして CD 3 ^知られている。
さらに、 造血前駆細胞は、 多系列の血球に分化できる混合コロニー単 位 (mixed colony forming unit: C FU― M i x )、 好中球、 マクロフ ァージ系のコロニーを形成する顆粒球—マクロファージコロニー形成単 位 (C FU— GM)、 好中球コロニー形成尊位 (C FU— G)、 マク ロフ ァージコ口-一形成単位 (C F U _M)、 赤芽球系コロニー、 バース トを 形成する赤芽球コロニー形成単位 (C FU— E)、 赤芽球バース ト形成単 位 (B FU— E)、 巨核球コロニー、 バース トを形成する巨核球コロニー 形成単位(C FU— Me g)、巨核球バース 卜形成単位(B FU— M e g)、 好酸球、 好塩基球、 マス ト細胞のコロニー それぞれ形成する好酸球コ 口ニー形成単位 (C F U— E 0 )、 好塩基球 コ口-一形成単位 (C F U— B a s o )、 マス ト細胞コロニー形成単位 ( C FU— Ma s t ) などに対 応する細胞に分類することができる。 造血爾駆細胞がいずれのコロニー 形成単位に該当するかは、 自体公知のコ口-一アツセィ法 (in vitro コ ロニー法) により定量的に測定することが" eきる。
「増幅」 とは、 終末分化していないいわゆる未分化細胞の数を増加さ
せることをいい、 一方、 「増殖」 とは、 終末分化した細胞、 及び未分化細 胞の総数を増加させることをいう。 造血細胞の増幅は、 細胞マーカーの 解析 (例えば、 F A C Sによる C D 3 4 +に対応する細胞の計数)、 コロ ニーアッセィ法に基づく定量的な解析等により評価することができる。 本発明で用いられる組換えヒ ト血清アルブミン (以下、 必要に応じて r H S Aと省略) は、 遺伝子組換え技術を用いて調製されたものであれ ば特に限定されないが、 例えば、 医薬品 (注射剤) として利用可能な程 度に十分に精製されたものが好ましい。
r H S Aは、 遺伝子操作を経て調製された H S A産生宿主により産生 される H S Aであれば特に限定されないが、 好ましくは産生宿主に由来 する夾雑成分 (例えば、 蛋白質、 多糖類等) を実質的に含まない、 より 好ましくは公知の手段で r H S A産生宿主を培養した後、 その培養濾液 または菌体、 細胞からそれぞれ公知の分離手段および精製手段により採 取おょぴ精製されたものが用いられる。また、 トランスジエニック動物、 トランスジエニック植物を利用することもできる (特表平 9— 5 0 9 5 6 5号公報、 同 1 0— 5 0 4 2 8 9号公報)。 具体的には以下の方法が挙 げられる。
本発明において用いられる、 r H S Aを得るための宿主は、 遺伝子操 作を経て調製されたものであれば特に限定されず、 既に公知文献記載の ものの他、 今後開発されるものであっても適宜利用することができる。 具体的には、 遺伝子操作を経て r H S A産生性とされた菌 (例えば、 大 腸菌、 酵母、 枯草菌等)、 動物細胞等が例示される。 特に、 宿主として酵 母、 好ましくはサッカロマイセス属 [例えば、 サッカロマイセス · セレ ビシェ ( Saccharomyces cerevi s i ae) ] , もしくはピキァ属 [例えば、 ピ キア ' パス ト リ ス (Pi chi a pastori s) ] を用いる。 また、 栄養要求性株 や抗生物質感受性株を用いてもよい。 さらに好適にはサッカロマイセ
ス · セレビシェ AH 2 2株 (a,his 4, leu 2, can 1)、 ピキア 'パス ト リ ス GT S 1 1 5株 (his 4) が用いられる。
これらの r H S A産生宿主の調製方法、 該宿主を培養することによる r H S Aの生産方法および培養物からの r H S Aの分離採取方法は、 公 知ならびにそれに準じた手法を採用することによって実施することがで きる。 例えば、 r H S A産生宿主の調製方法としては、 例えば通常の H S A遺伝子を用いる方法 (特開昭 5 8 — 5 6 6 8 4号公報、 同 5 8 — 9 0 5 1 5号公報、 同 5 8 — 1 5 0 5 1 7号公報)、新規な H S A遺伝子を 用いる方法 (特開昭 6 2 — 2 9 9 8 5号公報、 特開平 1 一 9 8 4 8 6号 公報)、合成シグナル配列を用いる方法(特開平 1 — 2 4 0 1 9 1号公報)、 血清アルブミンシグナル配列を用いる方法 (特開平 2— 1 6 7 0 9 5号 公報)、組み換えプラスミ ドを染色体上に組み込む方法 (特開平 3 — 7 2 8 8 9号公報)、宿主同士を融合させる方法(特開平 3 - 5 3 8 7 7号公 報)、 メタノール含有培地で変異を起こさせる方法、変異型 AO X 2プロ モーターを用いる方法 (特開平 6 — 9 0 7 6 8号公報、 同 4— 2 9 9 9 8 4号公報)、枯草菌による H S Aの発現 (特開昭 6 2 - 2 5 1 3 3号公 報)、 酵母による H S Aの発現 (特開昭 6 0 — 4 1 4 8 7号公報、 同 6 3 - 3 9 5 7 6号公報、 同 6 3 — 7 4 4 9 3号公報)、 ピキア酵母による H S Aの発現 (特開平 2 - 1 0 4 2 9 0号公報) などが例示される。
このうち、 メタノール含有培地で変異を起こさせる方法は具体的には 以下のように行う。すなわち、まず適当な宿主、好ましくはピキア酵母、 具体的には G T S 1 1 5¾ (NR R L寄託番号 Y— 1 5 8 5 1 ) の AO X 1遺伝子領域に常法により AO X 1 プロモーター支配下に H S Aが発 現する転写ュニッ トを有するプラスミ ドを導入して形質転換体を得る (特開平 2 - 1 0 4 2 9 0号公報を参照のこと)。この形質転換体はメタ ノール培地中での増殖能は弱い。 そこで、 この形質転換体をメタノール
含有培地中で培養して変異を起こさせ、生育可能な菌株のみを回収する。 この際、メタノール濃度としては 0 . 0 0 0 1〜5 %程度が例示される。 培地は人工培地、 天然培地のいずれでもよい。 培養条件として ί 1 5〜 4 0 °C、 1〜 1 0 0 0時間程度が例示される。
また、 r H S A産生宿主の培養方法としては、 上記の各公報に記載さ れた方法の他に、 フ ッ ドバッチ培養 (半回分培養) により、 高濃度の グルコースあるいはメタノ一ル等を適度に少量ずつ供給し、 産 菌体に 対する高濃度基質阻害を避けて高濃度の菌体と産生物を得る方 ¾ (特開 平 3— 8 3 5 9 5号公報)、培地中に脂肪酸を添加して r H S A O産生を 増強する方法 (特開平 4一 2 9 3 4 9 5号公報) 等が例示される。
培養処理により産生された r H S Aを、 宿主細胞に由来する 分及び 培養成分等から十分な精度をもって単離 ·精製する方法については各種 の方法が提案されている。 例えば、 従来行われている方法として r H S Aを含有する酵母培養液を、 圧搾→限外濾過膜処理→加熱処理"→限外濾 過膜処理に供した後、 陽イオン交換体処理、 疎水性クロマト処理、 陰ィ オン交換体処理等の工程に供する方法 (特開平 5— 3 1 7 0 T 9号公 報 ; バイォテクノ口ジー · ォプ ' ブラッ ド ' プロティンズ、 2 2 7卷、 2 9 3〜 2 9 8頁、 1 9 9 3年発行) などが挙げられる。 また、 上記の 従来法の後で、 さらにキレート樹脂処理またはホウ酸 ·塩処理 (Ο工程に 供する方法も報告されている (特開平 6— 5 6 8 8 3号公報、 同 6— 2 4 5 7 8 9号公報)。 また、 当該酵母培養液を加熱処理後に、 吸着流動床 技術を用いたス トリームライン法 (特開平 8 - 1 1 6 9 8 5号 報) 等 を用いることもできる。 このようにして調製 ·精製された r H S Aは公 知の手法、 例えば、 滅菌加熱、 限外濾過膜処理、 安定化剤の添カロ、 除菌 濾過、 分注、 凍結乾燥等の処理を施すことができる。
遺伝子組換え由来品は、 ロッ ト間格差がない、精製が容易、 ウィルス ·
プリオン等による汚染の危険性もない等の理由から、 より好ましい例で あると考えられる。
本発明の組成物は、 造血細胞の分化を抑制しつつ、 造血細胞全般を増 幅するために有用であるが、 具体的には、 造血幹細胞からの造血幹細胞 の増幅、 並びに、 造血幹細胞及ぴ Z又は造血前駆細胞からの造血前駆細 胞の増幅を可能にする。
従って、 第一の局面において、 本発明の組成物は、 造血幹細胞の増幅 剤であり得る。 例えば、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地及び 血漿由来 H S A含有無血清培地より も、 CD 3 4 +細胞 (例えば、 CD 34+ZCD 3 8 -、 CD 34 +ZDR―、 CD 34+/CD 3 8— ZDR―、 CD 34+/CD 90+、 C D 34 +/C D 1 1 7 +、 CD 34+/CD 1 2 3 +、 CD 34 +/CD 1 3 3 +) をより未分化の状態で増幅すること が確認されている (表 8、 1 0、 1 6)。 それ故、 r HSAは、 血清成分 よりも、 造血幹細胞をより未分化の状態で増幅し得ると考えられる。 従 つて、 本発明の組成物は、 造血幹細胞をより未分化の状態で増幅するた めに用いられ得る。
また、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地より も、 CD 3 4 + /C D 3 8—細胞、 C D 34+/CD 3 8— /D R—細胞をより効率的に増 幅することが確認されている (表 2)。 それ故、 r H SAは、 血清成分及 び血漿由来 HS Aよりも、 CD 34+/CD 3 8—細胞及び/又は CD 3 4 +/C D 3 8— /D R—細胞をより効率的に増幅し得ると考えられる。 従って、 本発明の組成物は、 CD 3 4+/CD 3 8—細胞及び/又は C D 34 +/C D 3 8— /D R-細胞をより効率的に増幅するために用いられ 得る。
別の局面において、 本発明の組成物は、 造血前駆細胞の増幅剤であり 得る。 例えば、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地よりも、 C F
U-M i x、 B F U— Eに対応する細胞をより選択的に増幅" Tる傾向が 認められている (表 3 )。 それ故、 r H S Aは、 血清成分よりち、 C F U 一 M i x、 B FU— Eに対応する細胞をより選択的に増幅する可能性が ある。 従って、 本発明の組成物は、 C FU— M i x、 8 11ー £に対応 する細胞をより選択的に増幅するために用いられ得る。
また、 r H S A含有無血清培地は、 血漿由来 H S A含有無 ifcL清培地よ りも、 C FU— M i x、 C FU— GM又は B FU— Eに対応する細胞を 増幅することが確認されている (表 1 4、 1 5参照)。 それ故、 r H S A は、 血漿由来 H SAよりも、 C FU_M i x、 C F U— GM 2:は B F U 一 Eに対応する細胞を増幅し得ると考えられる。 従って、 本 明の組 成物は、 C FU— M i x、 C F U— GM又は B F U— Eに対 する細胞 を増幅するために用いられ得る。
さらに、 r HS A含有無血清培地は、 血清含有培地よりも 分化状態 を維持して、 血液前駆細胞を造血細胞から増幅することが確 されてい る (表 4、 5)。 それ故、 r H S Aは、 造血細胞の増幅に際しで、 血清成 分より も造血細胞の分化を抑制し得ると考えられる。 従って、 本発明の 組成物は、 造血前駆細胞をより未分化の状態で増幅するために用いられ 得る。
さらに、 r HS A含有無血清培地は、 血清含有培地よりも、 好中球系 細胞の造血細胞からの増幅を抑制することが確認、されている(表 6、 7 )。 それ故、 r H SAは、 造血細胞の増幅に際して、 血清成分より も、 好中 球系細胞の造血細胞からの増幅を抑制し得ると考えられる。 って、 本 発明の組成物は、 好中球系細胞の造血細胞からの増幅を抑制するために 用いられ得る。
また、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地より も、 球及ぴマ ク口ファージ系細胞の造血細胞からの増幅を抑制することが崔認されて
いる (表 9 )。 それ故、 r H S Aは、 造血細胞の増幅に際して、 血清成分 よりも、 単球及ぴマク口ファージ系細胞の造血細胞からの増幅を抑制し 得ると考えられる。 従って、 本発明の組成物は、 単球及びマクロファー ジ系細胞の造血細胞からの増幅を抑制するために用いられ得る。
本発明の組成物は、 r H S A及び担体を含有する。 好ましくは、 担体 は、 薬学的に許容され得る担体であり得る。 薬学的に許容され得る担体 とは、 賦形剤、 希釈剤、 増量剤、 崩壌剤、 安定剤、 保存剤、 緩衝剤、 乳 化剤、 芳香剤、 着色剤、 甘味剤、 粘稠剤、 矯味剤、 溶解捕助剤あるいは その他の添加剤等が挙げられる。 そのような担体の一つ以上を用いるこ とにより、注射剤、液剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。 とりわけ注射剤の場合には、 例えば生理食塩水あるいは市販の注射用 蒸留水等の非毒性の薬学的に許容され得る担体中に適切な濃度となるよ うに溶解または懸濁することにより製造することができる。 また、 注射 剤は、 場合により、 非水性の希釈剤 (例えばプロ ピレングリコール、 ポ リエチレングリコール、 ォリーブ油のような植物油、 エタノールのよう なアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもでき る。
そのような注射剤の無菌化は、 バクテリァ保留フィルターを通す濾過 滅菌、 殺菌剤の配合または照射により行うことができる。 注射剤は、 用 時調製の形態として製造することができる。 即ち、 凍結乾燥法などによ つて無菌の固体組成物とし、 使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶 媒に溶解して使用することができる。
また、 本発明の組成物は、 必要に応じて脂質、 各種ビタミン、 その他 の成分を含有し得る。 脂質と しては、 コ レステロール、 レシチン (リ ン 脂質) などが例示される。 ビタミンとしては、 例えば、 ビタミン C (ァ スコルビン酸)、 ビタ ミ ン E ( トコフエロール) などが例示される。 他の
成分としては、 例えば、 インスリ ンなどの成長因子、 トランスフェリ ン などの鉄源、 各種サイ トカインなどが例示される。 また、 サイ ト力イン と しては、 S C F、 T PO (トロンボポイエチン)、 F L (F 1 t 3 / F 1 k 2 1 i g a n d)、 I L 6、 I L 6 R ( I L 6受容体) などが例示 される。
本発明はまた、 基本培地および組換えヒ ト血清アルブミンを含有して なる、造血細胞の増幅用無血清培地を提供する。本発明の無血清培地は、 基本培地および r H S Aを含有することを特徴とする。 本発明の無血清 培地に添加される r H S Aは、 上述の通りである。
本発明の無血清培地の調製に用いられる基本培地としては通常の細胞 培養用、 特に哺乳動物細胞培養に用いられているものであれば特に限定 されない。 具体的には MEM (αΜΕΜなど)、 R PM I (R PM I 1 6
40など)、 H a m F ( H a m F 1 2など) が例示される。
本発明の無血清培地に添加される組換え H S Aの量は、 造血細胞の効 率的な増幅、 及び Z又は特定の造血細胞の選択的増幅を可能とする限り 特に限定されないが、例えば約 0. 1〜 2 0 w Z V %、好ましくは約 0.
5〜 1 0 w / V %、 より好ましくは約:!〜 5 w Z V %である。
本発明の無血清培地には、 必要に応じて脂質が添加される。 本発明の 無血清培地に添加される脂質としては、 コレステロール、 レシチン (リ ン脂質) などが例示される。 コレステロールの添加量は、 例えば約 1 0
〜 1 0 00 ;u g/m l であり、 レシチンの添加量は、 例えば約 1 0〜 1
O O O ^ g/m l である。
また、 本発明の無血清培地は、 他の成分をさらに添加することもでき る。 他の成分としては、 例えば、 インスリ ンなどの成長因子、 トランス フェリンなどの鉄源、 各種サイ トカインなどが例示される。 また、 サイ トカインと しては、 S C F、 T P O (ト口ンボポイエチン)、 F L (F 1
t 3 /F 1 k 2 1 i g a n d)、 I L 6、 I L 6 R ( I L 6受容体) な どが例示される。 イ ンスリンの添加量としては 0. 1〜 1 00単位 (ゥ サギ血糖による定量法) または 0. 1〜 1 0 0 g /m 1程度が例示さ れる。 また、 トランスフェリンの添加量としては 1 0〜 1 00 0 g / m l程度が例示される。 さらに、 サイ ト力インの添加量としては各々、 :! 〜 1 0 0 0 n g/m l程度、 好ましくは 1 0〜 1 O O n g/m l程度 が例示される。
さらに、 必要に応じて、 本発明の無血清培地には、 各種ビタミンなど が添加される。 添加されるビタミンとしては、 例えば、 ビタミン C (ァ スコルビン酸)、 ビタミン E (トコフエロール) などが例示される。 ビタ ミンの添加量は、 例えば、 約 0. 1〜 1 0 μ g Zm 1であり得る。
本発明の無血清培地の p Hとしては造血細胞の増幅が可能である限り 特に限定されないが、 例えば約 6. 0〜 8. 0、 好ましくは約 6. 8〜 7. 6、 最も好ましくは約 7. 0〜 7. 2であり得る。
本発明の無血清培地は、 造血細胞をより分化させずに、 造血細胞全般 の増幅を可能とするため有用であるが、 具体的には、 造血幹細胞からの 造血幹細胞の増幅、 並びに、 造血幹細胞及び Z又は造血前駆細胞からの 造血前駆細胞の増幅を可能にする。
従って、 第一の局面において、 本発明の無血清培地は、 造血幹細胞増 幅用の培地であり得る。 例えば、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有 培地及ぴ血漿由来 H S A含有無血清培地より も、 CD 3 4 +細胞 (例え ば、 CD 34+/CD 3 8 _、 CD 34+ノ DR―、 CD 34+/CD 3 8 — /DR―、 CD 34+/CD 9 0+、 C D 3 4 +/ C D 1 1 7 +、 CD 3 4 +ノ CD 1 23 +、 CD 34+/CD 1 3 3 +) をより未分化の状態で增 幅することが確認されている (表 8、 1 0、 1 6 )。 従って、 本発明の無 血清培地は、 造血幹細胞をより未分化の状態で増幅するために用いられ
得る。
また、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地より も、 CD 34 + /C D 3 8—細胞、 CD 34+ ZCD 3 8—ZD R—細胞をより効率的に増 幅することが確認されている (表 2)。 従って、 本発明の無血清培地は、 C D 3 4 +/C D 3 8—細胞及び/又は C D 3 4+/C D 3 8— /D R— 細胞をより効率的に増幅するために用いられ得る。
別の局面において、 本発明の無血清培地は、 造血前駆細胞増幅用であ り得る。 例えば、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地より も、 C FU—M i x、 B F U— Eに対応する細胞をより選択的に増幅する傾向 が認められている(表 3 )。従って、本発明の組成物は、 C F U— M i X、 B F U— Eに対応する細胞をより選択的に増幅するために用いられ得る。 また、 r H S A含有無血清培地は、 血漿由来 H S A含有無血清培地よ りも、 C FU— M i x、 C F U— GM又は B F U— Eに対応する細胞を 増幅することが確認されている (表 1 4、 1 5参照)。 従って、 本発明の 無血清培地は、 C FU— M i x、 C F U— GM又は B F U— Eに対応す る細胞を増幅するために用いられ得る。
さらに、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地より も未分化状態 を維持して、 血液前駆細胞を造血細胞から増幅することが確認されてい る (表 4、 5)。 従って、 本発明の無血清培地は、 造血前駆細胞をより未 分化の状態で増幅するために用いられ得る。
さらに、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地より も、 好中球系 細胞の造血細胞からの増幅を抑制することが確認されている(表 6、 7)。 従って、 本発明の無血清培地は、 好中球系細胞の造血細胞からの増幅を 抑制するために用いられ得る。
また、 r H S A含有無血清培地は、 血清含有培地より も、 単球及びマ ク口ファージ系細胞の造血細胞からの増幅を抑制することが確認されて
いる (表 9)。 従って、 本発明の無血清培地は、 単球及びマクロファージ 系細胞の造血細胞からの増幅を抑制するために用いられ得る。
本発明はさらに、 組換えヒ ト血清アルブミ ンを含有してなる無血清培 地中で造血細胞を培養することを特徴とする、 造血細胞の増幅方法を提 供する。 ヒ ト血清アルブミ ン、 無血清培地は、 上述したものと同様であ る。
本発明の増幅方法において用いられる造血細胞としては、 入手可能で ある限り どのような細胞であってもよく、 臍帯血、 末梢血、 骨髄などか ら調製された造血細胞が例示される。 これら造血細胞は、 自体公知の方 法により C D 3 4 +に純化したものを用いることができる。
無血清培地に播種される細胞量としては、 造血細胞の培養が可能であ る限り特に限定されないが、 約 1 X 1 0 4〜 1 X 1 0 5個 Zm 1が例示さ れる。 培養期間は、 特に限定されないが、 1 日以上 (例えば、 1〜 2 0 日)、 好ましくは 7 日以上 (例えば、 7〜 1 4日) が例示される。 培養温 度は約 3 0〜4 0 °C、 好ましくは 3 7 °Cであり得る。 二酸化炭素含量は 約 1〜 1 0 %、 好ましくは約 5 %などが例示される。
本発明の増幅方法は、 造血細胞をより分化させずに、 造血細胞全般の 増幅を可能とするため有用であるが、 具体的には、 造血幹細胞からの造 血幹細胞の増幅、 並びに、 造血幹細胞及びノ又は造血前駆細胞からの造 血前駆細胞の増幅を可能にする。
本発明の増幅方法は、 r H S Aを含有する無血清培地を用いることを 特徴とする。 従って、 一つの局面において、 本発明の増幅方法は、 血清 含有培地及び血漿由来 H S A含有無血清培地を用いる培養よりも、 造血 幹細胞をより未分化の状態で増幅し得る。 また、 本発明の増幅方法は、 血清含有培地を用いる培養よりも、 C D 3 4 +/C D 3 8—細胞及び Z又 は C D 3 4 +/C D 3 8— /D R—細胞をより効率的に増幅し得る。
別の局面において、 本発明の増幅方法は、 血清含有培地を用いる方法 よりも、 C FU— M i x、 B FU— Eに対応する細胞をより選択的に増 幅し得る。 また、 本発明の増幅方法は、 血漿由来 H S A含有無血清培地 より も、 C FU— M i x、 C F U— GM又は B F U— Eに対応する細胞 を増幅し得る。 さらに、 本発明の増幅方法は、 血清含有培地よりも、 造 血前駆細胞をより未分化の状態で増幅し得る。 また、 本発明の増幅方法 は、 血清含有培地よりも、 好中球系細胞の造血細胞からの増幅を抑制し 得る。 さらに、 本発明の増幅方法は、 血清含有培地よりも、 単球及びマ ク口ファージ系細胞の造血細胞からの増幅を抑制し得る。
また、 本発明は、 上記の本発明の増幅方法により得られうる造血細胞 培養物を提供する。 本発明の培養物は、 r H S Aを含有する無血清培地 で造血細胞を培養することにより得られるものであるため、 血清由来の 成分を含有しないという特徴を有する。 従って、 本発明の培養物は、 血 清成分に由来するウィルスやプリオン等の有害物が混入する恐れがなレ、 ため、 細胞医療等での使用において有用である。
本発明の造血細胞培養物は、培養培地中に存在していてもよく、また、 遠心分離等の自体公知の方法により回収された形態で提供されてもよレ、。 また、 F A C S等の自体公知の方法により、 CD 34+等のマーカーを 指標として造血幹細胞に純化することもできる。 また、 造血前駆細胞に 対する種々のマーカー (例えば、 CD 1 3、 CD 1 4、 CD 4 1、 グリ コホリン、 CD 1 9、 C D 3 ) を用いて造血前駆細胞、 好ましくは特定 の造血前駆細胞に純化することもできる。 従って、 本発明はまた、 本発 明の培養方法により得られうる造血幹細胞の培養物、 並びに造血前駆細 胞全般及び特定の造血前駆細胞の培養物を提供する。 実施例
本発明をより詳細に説明するために実施例および実験例を挙げるが、 本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。 参考例 1 : r H S Aの調製
r H S Aは、 以下の通り調製した。 先ず、 r H S A産生酵母ピキア - パス トリスの取得およびその培養については、 特開平 5 - 3 1 7 0 7 9 号公報に記載された方法に準じて行った。 得られた培養液から r H S A を回収 ·精製するには、 特開平 8 - 1 1 6 9 8 5号公報に記載された方 法に準じて行った。 次いで、 精製された r H S Aを 2 5 %溶液に調製し た。
続いて、 精製された r H S A (含有組成物) の性状を、 下記のそれぞ れの分析法により確認した。 これら性状の測定結果を表 1に示す。
H P L C分析:
r H S Aを H P L Cゲル濾過法により分析した。 カラムは T S K g e l G 3 0 0 0 SW (東ソ一)、展開液は 0. 1 M K H 2 P O 4 / 0.
3 M N a C 1緩衝液、 検出は波長 2 8 0 n mの吸光度を用いた。
酵母由来成分の分析:
H S A非産生酵母の上清として、 上記の方法で粗精製したものをゥサ ギに免疫し、 得られた抗血清を用いて、 精製された r H S A含有組成物 中に夾雑する酵母由来成分を検出した。 測定は酵素免疫測定法 (E I A 法) により行なった。 r H S A濃度として 2 5 %に調製したものを用い て測定した。
分子量:
前述の H P L Cゲル濾過法と同様にして行なった。
等電点 :
薄層ポリアタリルァミ ドゲルを用い、 A l l e nらの方法 ( J . C h
r o m a t o g . , 1 4 6 , p i , 1 9 7 8 ) に準じて測定した。
着色度:
波長 2 8 0 n m、 3 5 0 n m、 4 5 0 11 111ぉょぴ5 0 0 11 111での吸光 度を測定し、 A 3 5。/A 2 8 0、 A 4 5 0 /A 2 8 0、 A 5。0/A 2 8。を各々算 出した。
パイ ロジェン : 生化学工業のェン ドスぺシーを用いた。
(表 1 )
組換え HSA (含有滅物) の性状
当該 r H S A含有組成物を本発明の実施例おょぴ実験例に供した。
実施例 1 : r H S Aを含有する無血清培地の調製
ひ ME M、 2 w / V % r H S A , コレステロ一ノレ ( I C N B i o m e d i c a l社) 1 0 0 μ g / 1 、 レシチン ( I C N B i o m e d i c a 1社) 1 6 0 g / m 1 , インス リ ン ( S i g m a社) 1 g m l 、 ホロ トランスフェ リ ン ( S i g m a社) 2 0 0 μ g /m 1 , トコ フヱロール (WA K O社) 1 β g /m 1 、 ァスコルビン酸 (WAK O社) 1 z gZm l を配合し、 完全無血清培地を調製した。 コ レステロールは 難溶性のため、 エタノールで溶解させた後、 3 0〜 4 0 °Cに設定したス ターラで 1 0分間攪拌し、 エタノールを蒸発させた。 その後、 常温のス
ターラに移し、 コレステロールの結晶が析出する前に r H S Aをゆつく り滴下して抱合させた。 この溶液に上記試薬を混合させた後、 ポトルト ップフィルターで濾過滅菌を行った。 もしくは以下の別法を用いた。 す なわち、 コ レステロ一ノレ、 レシチン、 ト コフェローノレを各々エタノーノレ に溶解し、 調製されたコ レステロール溶液、 レシチン溶液、 トコフエ口 ール溶液を必要量フラスコに取り混和 ·攪拌した。 スターラで攪拌しな がら、 ゆっく り と r H S Aを滴下した。 白い析出物が出るが、 それが r H S Aと混和された後は若干速度を早めて r HS Aを全て滴下した。 1 0分間ほどスターラで攪拌した。 さらにこの溶液に上記試薬を混合させ た後、 濾過滅菌を行った。 実施例 2 : r H S A及び種々のサイ トカインを含有する無血清培地の調 m
αΜΕΜ、 2 w / V % r H S A , コ レステロ一ノレ ( I C N B i o m e d i c a l社) 1 0 0 g /m l 、 レシチン ( I CN B i o m e d i c a 1社) 1 6 0 t g Zm 1 、 ィンス リ ン (S i g m a社) 1 μ g / m 1 、 ホロ トランスフェ リ ン (S i g m a社) 2 0 0 u s / 1 、 ト コ フエ口ール (WAKO社) 1 μ g Zm 1 、 ァスコルビン酸 (WAKO社) 1 μ g Zm 1 、 S C F l O O n g / m 1 , T P O 1 0 n g / 1、 F L l O O n gダ m l、 I L 6 1 0 0 n g /m 1 s I L 6 R 1 0 0 n g Zm l を配合し、 完全無血清培地を調製した。 実験例 1 :臍帯血 C D 3 4 +細胞の増幅率の測定
C D 3 4 +細胞の培養細胞の増幅率を、 血清培地、 無血清培地におい て培養 7 日 目、 1 4 日目でそれぞれ解析した。 C D 3 4 +細胞の増幅率 は、 F AC S解析に基づく、 0 日目の C D 3 4 +/C D 4 5 +細胞数に対
する 7 日 目又は 1 4 3 目の CD 34+ZCD 4 5 +細胞数の倍率である。 CD 3 4+/CD 3 8 _細胞、 CD 34+/CD 3 8—ZD R—細胞の各増 幅率は、 それぞれ、 F AC S解析に基づく、 0 日 目の CD 34 +/C D 3 8—細胞、 CD 34 +/CD 3 8—ノ D R—細胞数に対する 7 日目又は 1 4 日 目の C D 34 +/ C D 3 8—細胞、 C D 34 +Z C D 3 8— Z D R一細 胞数の倍率である。 なお、 用いた培地、 CD 3 4 +細胞、 培養条件は下 記の通りである。 結果を表 2に示す。
培地 :
血清培地としては、 ひ MEM (最小基本培地 α ) に 1 0 %または 2 0 % F C S (ゥシ胎児血清、 J RH社)、及び 5種のサイ ト力イン(S C F 1
O O n g/m l、 T P O 1 0 n g m 1 s F L 1 0 0 n g /m 1 、 I L 6 1 00 n g Zm l、 s I L 6 R 1 0 0 n g /m 1 ) を添加し たものを、 無血清培地としては、 実施例 2で調製したものを用いた。 C D 34 +細胞 :
臍帯血よりマグネッ ト ·ィムノビーズ法 (A u t o MA C S ) を用い て CD 3 4 +細胞を分離後、 液体窒素で凍結保存したものを解凍して用 いた。 用いた C D 34 +細胞の純度は、 9 5 %以上であった。
培養条件 :
上記の通り調製された血清培地、 無血清培地の各 1 m l に C D 3 4 + 細胞 1 X 1 04個を播き、 5 % C O 2インキュベータで 7 日間又は 1 4日 間培養した。 培養には 24穴プレートを用いた。
(表 2)
培 による 幅率の F AC S解
その結果、 総細胞の増殖率では血清培地が無血清培地よりも高かった カ 、 1 4日目における C D 3 4 +/C D 3 8—細胞、 CD 34+/CD 3 8—ZD R_細胞の増幅率では無血清培地が血清培地より も高かった (表 2)。
以上より、 r H S A含有無血清培地は、 総細胞の増幅率では血清培地 に劣るものの、 長期培養での C D 3 4 +/C D 3 8—細胞、 C D 34 +Z C D 3 8— /D R—細胞の選択的な増幅において血清培地より も優れる ことが明らかとなった。 実験例 2 :培養細胞のコロニー形成能の測定
C D 3 4 +細胞の培養細胞のコロニー形成能を、 血清培地、 無血清培 地において培養 7 日目、 1 4日目でそれぞれ解析した。 用いた培地、 C D 3 4 +細胞、培養条件は実験例 1 と同様であった。 コロニー形成能は、 コロニーアツセィにより評価した。 具体的には、 メチルセルロース培地 (M e t h o C u 1 t社) を用いて培養前と培養 7 日目、 1 4日目にコ ロニーアツセィを行った。 培養前、 培養 7日目については細胞密度 2 5 0個/ディッシュ、 1 4 日 目については 5 00個/ディッシュで細胞を 播き、 1 4 日間培養した後、 コロニー数をカウントした。 なお、 総コロ
数の増幅率は、 単位当たりの総コ口 数と培養総細胞数よりコロ 形成細胞数を算出し倍率に換算した。 C F U— GM B F U— E C F U— M i xの増幅率については、 それぞれ、 単位当たりの C F U— GM B F U— E C F U— M i x 形成率と総細胞数よりコロ 形成細胞数を算出し倍率に換算した。 結果を表 3に示す。
(表 3 )
その結果、 C F U— GMの増幅では無血清培地が血清培地より も高か つたが、 B F U— E C F U— M i Xの増幅では無血清培地が血清培地 よりも高かった (表 3 )。
以上より、 r H S A含有無血清培地は、 総細胞、 C F U— GMの増幅 率では血清培地に劣るものの、 B F U— E C F U— M i xの選択的な 増幅において血清培地よりも優れる傾向が認められた。 実験例 3 C D 3 4 +細胞培養細胞の染色による形態学的解析
C D 3 4 +細胞の培養 1 4 日 目の細胞を、 既報に従いメイギムザ(May Giemsa)、ぺ ォキシダーゼ (PerocidaseJ、エステラーゼ (Esterase) の 3種類の染色により形態学的に解析した。 ギムザ染色による培養細胞の 形態分類を表 4に、 同染色による分類一覧を表 5に、 ペルォキシダ一ゼ
による培養細胞の形態分類を表 6に、. エステラーゼ染色による培養細胞 の形態分類を表 7にそれぞれ示す。
(表 4)
ギムザ染色による培養細胞の形態学的分類
(表 5 ) ギムザ染色による分類
(表 6)
(表 7)
エステラーゼによる培養細胞の形態学的分類
FCS 無血淸 無血清 ZF C S 陰性 53 79 1. 49
特異的エステラーゼ陽性 (AS-D) 39 12 ―
非特異的エステラーゼ陽性(α— NB) 8 8 一
その結果、 ギムザ染色による解析によれば、 無血清培地は、 血清培地 よりも未分化状態を維持した (表 4)。 特に、 無血清培地は血清培地より も骨髄芽球の割合が高かった (表 5)。 また、 ペルォキシダーゼ染色、 特 異的エステラーゼ染色 (ペルォキシダーゼ陽性、 特異的エステラーゼ陽 性は、 好中球系細胞への分化を主に示す) による解析によれば、 無血清 培地は、 血清培地よりも C D 3 4 +細胞の増幅に際して好中球系細胞へ の分化を抑制した (表 6、 7 )
以上より、 r H S A含有無血清培培地で培養される C D 3 4 +細胞は、 血清培地で培養される CD 3 4 +細胞より も未熟性が維持されることが 明らかとなった。 実験例 4 :培養細胞の表面抗原の解析
C D 3 4 +細胞の培養細胞の表面抗原を、 血清培地、 無血清培地にお いて培養 1 4 日 目でそれぞれ解析した。 用いた培地、 CD 3 4 +細胞、 培養条件は実験例 1 と同様であった。 表面抗原は、 培養細胞を常法によ り 3色染色し、 次いで FAC Sキヤリバーを用いて解析した。 表面抗原 の解析として、 C D 3 4 +/C D 3 8— ZD R の陽性率の解析、 造血前 駆細胞の性質の解析、 Lineage 解析を行った。 本解析に用いた抗体は以 下のマーカーに対する抗体である。
. CD 3 4 +ZC D 3 8 _/D R—細胞の陽性率 : CD 3 4、 CD 3 8、
H L A- D R
• Lineage解析: C D 1 3 (骨髄系マーカー)、 CD 1 4 (単球及ぴマク 口ファージ系のマーカー)、 C O 4 1 (巨核球系マーカー)、 C D 1 9 ( B 細胞系マーカー)、 C D 3 (T細胞系マーカー)、 グリコホリン (赤血球 系マーカー)
•造血前駆細胞の性質の解析: CD 9 0、 CD 1 1 7、 C D 3 8、 H L
A— DR、 C D 1 2 3、 C D 1 3 3
なお、 C D 3 4 +/C D 3 8— ZD R—細胞の陽性率の解析は、 FAC Sを用いて以下の通りに行なった。先ず、前方散乱光 (Forward Scatter; F S) と側方散乱光 (Side Scatter; S S) の scatter gramから得られ る細胞集団に gatingした(R 1 )。次いで S Sと CD 34+領域に gating した (R 2)。 さらに R 1かつ R 2のゲート内の細胞を CD 3 8 と HLA — DRで展開した (34 gating)。 次いで、 34 gating CD 3 8— /DR一 の平均値 (n = 5) を算出した。
CD 3 4 +/CD 3 8—/ D R—細胞の陽性率についての結果を表 8に、 Lineage '解析についての結果を表 9に、 造血幹細胞の性質の解析につい ての結果を表 1 0に示す。
(表 8 )
CD 34 +細胞に対する CD34+ZCD38— ZD R—細胞の比率
(表 9)
培養 14日目の培養細胞の Lineage解析
FCS 無血淸 P値
CD 3 9. 48 5. 37 0. 436
グリコホリン 0. 51 3. 39 0. 26
CD 19 2. 77 6. 82 0. 486
CD41 0. 66 3. 79 0. 492
CD 14 41. 04 17. 91 0.000912
CD 13 95. 50 97. 36 0. 568
(表 1 0) 幹細胞マーカーの解析
その結果、 CD 34+細胞の内、 CD 34+ZCD 3 8— /D R
_細胞の 割合は、 無血清培地が血清培地より も約 8倍高い値を示した。 また、 Lineage 解析によれば、 無血清培地は、 血清培地よりも、 単球系への分 化を抑制した (表 9)。 さらに、 造血幹細胞マーカーの解析によれば、 全 てのマーカーが無血清培養で高発現し、 特に CD 34+ CD 9 0 +を除 く全てのマーカーが有意に高発現していた (表 1 0)。
以上より、 r H S A含有無血清培地は、 血清培地より も、 CD 3 4 + 細胞の C D 3 4+/C D 3 8— Z D R 細胞への選択的な増幅に優れるこ と、 CD 34+細胞の増幅に際して単球系細胞への分化を抑制すること、 造血幹細胞の未分化増幅に優れることが明らかとなった。 実験例 5 :培養液中のサイ ト力イン含有量の測定
実験例 2において培養細胞のコロユー形成率が無血清培地で優れてい たことから、 無血清培養は分化能より 自己複製能を持つ造血前駆細胞を より選択的に増幅させると推察された。 この一因として F C S中に分化 を促進するサイ トカインが含まれることが考えられたので培養液中のサ ィ トカイン含有量、 及び培養 1 4日目の培養上清中のサイ トカイン含有 量を E L I S A法で測定した。 測定は G— C S F、 GM_ C S F、 TG
F— ]3 1、 TGF— 3 2、 I L 3、 E P Oについて行った。 培養液中の サイ トカイン含有量についての結果を表 1 1に、 培養上清中のサイ トカ ィ ン含有量についての結果を表 1 2に示す。
(表 1 1)
(表 1 2)
培養 14日目の培養上清のサイトカイン含有量
N Sは有意差がないことを表す その結果、 血清培養で GM— C S F、 TGF— j3 2、 E POが有意差 をもって多いことが判明した。 また培養液を測定したところ血清培地の み TGF— 2が検出された (表 1 1 )。 血清培養で高濃度の T G F— 2が検出された。 T G F— j3 2は分化の進んだ造血細胞の分化型サイ ト カイン受容体の発現を増強させる効果とそれによる分化型サイ トカイン の分泌刺激作用が報告されており、 今回の検討においても培養 1 4日 目 における血清培養の培養上清の方が GM_ C S F等の分化型サイ トカイ
ンが優位に増加していた。
以上より、本発明の無血清培培地は、自己複製能を有する造血幹細胞、 造血前駆細胞の増幅に有用であることが明らかとなった。 実験例 6 : 血漿由来 H S Aと r H S Aの効力の比較
6 . 1 . 血漿由来 H S A含有無血清培地の調製
培養方法、 培地の組成、 表面抗原解析方法、 コロニーアツセィ法は実 験例 1 と同じである。血漿由来 H S A添加培地は、 α MEM、 2 w/ v % ヒ ト血漿由来 H S A (三菱ゥヱルファーマ製)、 コレステロール ( I C N B i o m e d i c a l社製) 1 0 0 g / 1 , レシチン ( I C N B i o m e d i c a 1社製) 1 6 0 g /ra l 、 イ ンス リ ン ( S i g m a 社製) 1 μ g /ΧΆ 1 、 S C F 1 0 0 n g /m l、 T P O l O n g Zm l、 F L 1 0 0 n g /m l、 I L 6 1 0 0 n g /m l、 s I L 6 R 1 0 0 n g Zm l を配合し、 無血清培地を調製した。
6 . 2 . C D 3 4 +細胞増幅の比較
C D 3 4 +細胞を 1 0 4個ずっ播いた。 血漿由来 H S A、 r H S A含有 無血清培地にビタミ ン E、 ビタミン Cをそれぞれ添加した。 培養 1 4 日 目の総培養細胞数を測定した。 結果を表 1 3に示す。
(表 1 3 )
CD 34+細胞の増幅
6 . 3 . コロニー形成能の比較
実験例 2 と同様に 1 4 日間培養した後、 培養 7 日目、 1 4日目のコロ
ニー形成能を解析した。培養 7 日目におけるコロ ニー形成能を表 1 4に、 培養 1 4 日 目におけるコロニー形成能を表 1 5にそれぞれ示す。
(表 1 4)
培養 7日目におけるコロエー形成能
(表 1 5)
培養 14日目におけるコロニー形成能
6. 4. C D 34 +/C D 3 8—細胞増幅の比較
上記と同様にして F AC Sを用いて解析した。 1 4日間培養し、 CD 34、 C D 3 8の両抗原について解析した。 結果を表 1 6に示す。
(表 1 6 )
CD34+Z細胞の培養 14日目における増幅率
その結果、 r H S Aは、 血漿由来 H S Aより も C D 3 4 +細胞の增殖 能が低かった (表 1 3)。 しかしながら、 r H S Aは、 血漿由来 H S Aよ りも C F U— GM、 B FU-E, C F U _M i xの増幅能が高かった(表
1 4、 1 5 )。 また、 r H S Aは、 血漿由来 H S Aよりも C D 3 4+ZC D 3 8 細胞の増幅能が高かった (表 1 6)。
以上より、 r H S Aは、 血漿由来 H S Aよりも C F U_ GM、 B F U — E、 C F U— M i xの増幅に優れること、 並びに、 血漿由来 H S Aよ り も C D 3 4 +ZC D 3 8—細胞の増幅に優れることが明らかとなった。 実験例 7 : 血清培地と無血清培地の効力差の比較
血清培地 (F C S ) と r h— H S A原液を成分とした無血清培地の効 力差を比較した。
培養方法、 培地の組成、 表面抗原解析法、 コロニーアツセィ法は実験 例 1 と同じである。
原液 r h— H S A添加培地は α MEMを基礎培地とし、 2 % r h— H S A原液 (三菱ゥエルファーマ)、 2 0 0 μ g /m 1 トランスフェ リ ン、
0 0 g /m 1 コ レステロ一ノレ、 1 6 0 // g /m l レシチン、 1 μ g / τα 1 イ ンス リ ン、 1 μ g /m 1 トコフエ口ール、 l ^ g / m l ァスコ ルビン酸を添加した。 培養時に S C F l O O n g /m 1、 T P O 1 0 n g Zm l、 F L I O O n g /m l , I L 6 1 0 0 n g /m 1、 s I L 6 R 1 0 0 n g /m 1 を配合し、 完全無血清培地を調整した。
7. 1. 培養による C D 3 4陽性の増幅
臍帯血由来の C D 3 4陽性細胞を 2 X 1 0 4個ずつ血清培地と r h— H S A原液培地に播いた。 培養 1 2 日目の総培養細胞数を測定し増幅率 を算出した。 結果を表 1 7に示す。
(表 1 7)
7. 2. コロニー形成能の比較
培養 1 2 日 目 (表 1 8 ) の細胞を 2週間培養し、 コロニー形成能を比 較した。 総コロニー形成細胞の増幅率は血清培養で 9 7. 5倍、 組換え HS A原液で 1 6 1. 1倍であった。 またより幼若な造血幹細胞の能力 を反映する C FU— M I Xのコロニー形成細胞の増幅率は血清培養で 5 7. 6倍、 組換え H S A原液で 1 1 1倍であった。
(表 1 8)
7. 3. C D 34陽性 Z C D 3 8陰性の増幅
F A C Sを用いて解析した。 培養 1 2 日目のものを比較した。 結果を 表 1 9に示す。 C D 3 4陽性 ZC D 3 8陰性の分画が最も未分化な造血 幹細月包分画と考えられる。
(表 1 9)
C D 3 4陽性 Z C D 3 8陰性分画に加え、 H L A— D R陰性分画も幼 若であることから、 培養 1 2 日目に FAC Sを用いて解析を行い比較し た。 結果を表 2 0に示す。 血清培養が 7. 3 5 %なのに対し組換え H S A原液は 1 5. 1 5 %であった。
(表 2 0 )
7. 5. 分化血球の割合 (各種モノクローナル抗体と F AC Sを用いた 血球の L i n e a g e角军析)
C D 3 (Tリ ンパ球)、 C D 1 9 (B yンパ球)、 グリ コフォリン A (G 1 y c o p h o r i n A) (赤芽球 ·赤血球)、 C D 4 1 (巨核球 ·血小 板)、 CD 1 4 (単球)、 CD 3 3 (幼若顆粒球 .単球)、 C D 6 6 b (成 熟顆粒球) を血球の分化度の指標と して、 培養細胞の表面抗原を解析、
比較した (表 2 1 )。
(表 2 1 )
ギムザ染色による培養細胞の形態分類を表 2 2にまとめた。 血清培養 では 1 2 日間の培養により分化成熟細胞の割合が増加するが組換え H S A原液では芽球が 4 0 %以上を占め、 未熟性が維持される傾向にあるこ とが示唆された。
(表 2 2 )
組換え H S A原液培地での増幅と血清培地での増幅に、 大きな差は見 られなかった (表 1 7 )。
コロニー形成能について、 H S A原液培地では、 コロニー形成総細胞 数を含む全てで血清培地を上回っていた (表 1 8)。
F A C Sを用いた解析では、 C D 34陽性/ C D 3 8陰性、 CD 3 4 陽性 Z C D 3 8陰性 Z H L A— D R陰性ともに H S A原液培地で血清培 地より幼若な分画を維持していた (表 1 9、 表 2 0 )。
培養 田胞の分化は、 血清培地では単球系や顆粒球系への分化が H S A 培地より も進み、 H S A原液培地は巨核球系への分化が血清培地より も 進むことがわかった (表 2 1 )。
ギムザ染色による形態分類では、 H S A原液培地〉 F C Sの順に芽球 が多く見られた (表 2 2 )。
以上の結果より、 H S A原液培地は増幅が増すが、 幼若な細胞の増殖 能を維持していることが分かった。 実験例 8 : 造血再生能の評価
実験 ί列 1において組換え H S Αを含む無血清培地により増幅された造 血幹細包を用いて、 N O Dマウスで造血再生能を評価した。 その結果、 増幅操作を施さない臍帯血由来造血幹細胞に比較して良好な結果が得ら れた。 産業上の利用可能性
本発明は、 未分化の造血細胞をより未分化の状態で増幅することがで きる種々の手段を提供するため、 再生医療、 細胞移植への応用が期待で きる。 また、 本発明は、 無血清培地での造血細胞の増幅を可能とし、 血 清成分に由来するウィルスやプリオンの混入を回避することができるた め、 再生医療、 細胞移植への応用が期待できる。 本出願は、 日本で出願された特願 2 0 0 4 - 1 3 2 9 1 (出願日 : 2 0 0 4 1月 2 1 日) を基礎としており、 その内容は本明細書に全て包 含されるものである。