免疫グロブリン Fc受容体タンパク質 技術分野
本発明は、 新規な免疫グロブリン Fc受容体タンパク質、 該タンパク質をコード する遺伝子、 該遺伝子を含有する組換えベクター、 該組換えベクターを含む形質 転換体、 及ぴ該タンパク質の製造方明法等に関する。 背景技術
免疫グロブリ ン (Ig) と免疫グロブリ ン受容体 (IgR) との結合は、 様々な免 疫反応を惹起し、 生体防御機構において重要な役割を果たしている。 Fc受容体
(FcR)は、 免疫グロブリ ンの Fc領域と結合し、 アレルギー、 自己免疫、 炎症など 様々な免疫反応に関わる重要な因子である。 したがって、 免疫応答の分子機構を 理解 ·制御する上で Fc受容体は重要な手がかりの一つとなる。 免疫グロプリンの
Fc領域はそれぞれに特異的な' Fc受容体に結合し、 Fc受容体をもつ細胞の活性化や 抗体の細胞間トランスポートに働く。 これまで IgG、 IgEに対する FcRは複数同定 されている力 S (D. H. Conrad, Fc eps ilon RII/CD23 : the low aff inity receptor for IgE, Annu Rev Immunol 8 (1990) 623-645.; J. P. Kinet, Antibody-cell interact ions: Fc receptors, Cell 57 (1989) 351-354.; J. V. Ravetch, and
J. P. Kinet, Fc receptors, Annu Rev Immunol 9 (1991) 457 - 492.; J. C.
Unkeless, E. Sc igl iano, and V. H. Freedman, Structure and function of human and murine receptors for IgG, Annu Rev Immunol 6 (1988) 251-281. )
、 IgA又は IgMに対する FcRは Fc a / μ R (A. Shibuya, N. Sakamoto, Y. Shimizu,
K. Shibuya, M. Osawa, T. Hiroyama, H. J. Eyre, G. R. Sutherland, Y. Endo
T. Fuj ita, T. Miyabayashi, S. Sakano, T. Tsuj i, E. Nakayaraa, J. H.
Phi l l ips, L. L. Lani er, and Ή. Nakauchi, Fc alpha/mu receptor mediates endocytos i s of IgM - coated microbes, Nat Immunol 1 (2000) 441-446. )、 plgR
( P. Krajci, D. Kvale, K. Tasken, and P. Brandtzaeg, Molecular cloning
and exon-intron mapping of the gene encoding human transmembrane secretory component (the poly - Ig receptor) , Eur J Immunol 22 (1992) 2309-2315.; J. F. Piskurich, M. H. Blanchard, K. R. Youngman, J. A. France, and C. S. Kaetzel, Molecular cloning of the mouse polymeric Ig receptor. Funct ional regions of the molecul e are conserved among f ive mammal ian spec ies, J Immunol 154 (1995) 1735-1747. )、 及ぴヒ トでのみ同定 されてレヽる Fc a RI (CD89) (C. R. Mal isze ski, C. J. March, M. A. Schoenborn, S. Girapel, and L. Shen, Express ion cloning of a human Fc receptor for IgA, J Exp Med 172 (1990) 1665- 1672. )の 3種類しか知られていない。 IgA又は IgMと結合した細胞上の受容体は、 当該細胞を活性化したり、 あるいは結合した 抗体を細胞内に取りこみ、 細胞の中を運搬して細胞の反対側から放出する (トラ ンスサイ ト シス) ことにより、 免疫反応を制御する。
IgMは、 体内に病原体 (抗原) が入ってくると最初にできる抗体であり、 病原 体を覆うように結合することが知られている。 近年、 この IgMに対する受容体が、 IgMに覆われた病原体の B yンパ球内部への取り込みに関与することが明らかとな つている 、 Shibuya, N. Sakamoto, Y. Snimizu, K. Shibuya, M. Osawa, T. Hiroyama, H. J. Eyre, G. R. Sutherland, Y. Endo, T. Fuj ita, T. Miyabayashi, S. Sakano, T. Tsuj l, E. Nakayama, J. H. Pni ll ips, L. L. Lanier, and H. Nakauchi, Fc alpha/mu receptor mediates endocytos is of IgM- coated microbes, Nat Immunol 1 (2000) 44ト 446. )。 一方、 IgAは腸管粘膜 に多く存在している。 腸管などの粘膜組織は抗原が最初に生体内に侵入する場で あり、 末梢リンパ球の 60〜70%が存在する最大の免疫組織である。 バイエル板に 代表されるこれらの免疫組織を覆う粘膜には、 特殊に分化した上皮細胞である M 細胞が存在する。 M細胞は腸内抗原サンプリングの主要経路として免疫応答に重 要であり、 その人為的操作は免疫応答そのものの操作につながる。 しかしながら、 M細胞を含む粘膜上皮細胞の発生 ·分化、 腸管免疫機構の詳細は明らかとはなつ ていない。 - 従って、 IgM、 IgAに対する FcR分子の探索及ぴその機能研究は、 IgM、 IgAが関' 与する上記の免疫応答機構の解明につながる。
従って、 本発明の課題は、 新規な Fc受容体を取得し、 該受容体の分子的及び機 能的特性を解明することにある。 発明の開示
本発明者らは、 上記課題を解決するため、 既知の IgAに対する Fc受容体の Igド メインとホモロジ一を有する遺伝子をデータベースで検索した結果、 前記受容体 とホモロジ一を有する機能未知の遺伝子をヒト及ぴマウスで同定した。 さらに、 これらの遺伝子がコードするタンパク質は毛細血管内皮細胞に艮局して発現する こと、 IgA及び IgMに結合して細胞内に取り込むことを見出し、 本発明を完成する に至った。
すなわち、 本発明は以下の発明を包含する。
(1) 以下の (a)又は (b)のタンパク質。
(a) 配列表の配列番号 2、 4、 6、 8、 10、 12、 又は 14で表されるアミノ酸配列 からなるタンパク質
(b) 配列表の配列番号 2、 4、 6、 8、 10、 12、 又は 14で表されるアミノ酸配列 において 1若しくは数個のァ ノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配 列からなり、 かつ IgA及び IgMの Fcに対して結合活性を有するタンパク質
(2) (1)に記載のタンパク質の部分アミノ酸配列からなるタンパク質。
(3) (1)に記載のタンパク質と他のぺプチドからなる融合タンパク質。
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
(5) 以下の(c)又は(d)の D N Aからなる遺伝子。
(c) 配列表の配列番号 1、 3、 5、 7、 9、 11、 又は 13で表される塩基配列から なる DNA
(d) 配列表の配列番号 1、 3、 5、 7、 9、 11、 又は 13で表される塩基配列から なる DNA
と相補的な塩基配列からなる DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズ し、 かつ IgA及び IgMの Fcに対しで結合活性を有するタンパク質をコードする DNA
(6) (4)又は(5)に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
(7) (4)又は(5)に記載の遺伝子により形質転換された形質転換体。
(8) (7)に記載の形質転換体を培地に培養し、 得られる培養物から発現させたタ ンパク質を採取することを特徴とする、 (1)〜(3)に記載のタンパク質の製造方法。
(9) (1)〜(3)のいずれかに記載のタンパク質を特異的に認識する抗体。
(10) (9)に記載の抗体を、 (1)〜(3)のいずれかに記載のタンパクが含まれると 予想される被験試料に反応させ、 .該抗体と該タンパク質との免疫複合体の生成を 検出することを含む、 (1)〜(3)のいずれかに記載のタンパクの検出方法。
(11) (9)に記載の抗体を含む、 (1)〜(3)のいずれかに記載のタンパク質の検出 用試薬。
(12) (1)〜(3)のいずれかに記載のタンパク質、 又は該タンパク質をコードする 遺伝子を有効成分として含む免疫応答制御用医薬。
(13) (1)〜(3)のいずれかに記載のタンパク質、 又は該タンパク質を発現する細 胞を、 リガンドが含まれると予想される被験試料に作用させ、 該タンパク質に対 して結合能を有する物質を選択することを含む、 該タンパク質に対するリガンド のスクリ一二ング方法。
(14) (1)〜(3)のいずれかに記載のタンパク質を IgM又は IgAに被験試料の存在下 で作用させ、 該タンパク質と' IgM又は IgAとの結合を促進又は阻害する物質を選択 することを含む、 該タンパク質に対するアンタゴニス ト又はァゴエス トのスクリ 一ユング方法。
(15) (13)に記載の方法により得られたリガンド、 又は(14)に記載の方法により 得られたアンタゴニスト若しくはァゴニストを有効成分として含む免疫応答制御 用医薬。 図面の簡^な説明
図 1はヒ ト及びマウス elgRのアミノ酸配列を示す (黒の網掛け部分:相同アミ ノ酸、 点線のボックスで囲った領域:膜貫通ドメイン、 細線のボックスで囲った 領域はオルタナティヴ · スプライシングにより欠落する部分) 。
図 2は、 ヒ ト及びマウス elgRの模式図を示す (棒線:オルタナティヴ 'スプラ イシングにより欠落する部分、 Δの数字: Lに対する欠落部分のアミノ酸、 TM :膜 貫通ドメイン) 。
図 3は、 elgRを発現させた HeLa細胞における各種ィムノグロプリンの取り込み の様子を示す [A〜E:マウス elgR - Sを発現させた HeLa細胞; F〜H、 I〜J : ヒ ト elgR- L及ぴヒト elgR- Mを発現させた HeLa細胞。 上段:取り込ませた各種ィムノグ ロブリ ンの染色像 (緑色、 A- J) 、 中段:発現した elgRの染色像 (赤色、 A ' - J ' ) 、 下段:両者を重ね合わせたもの (A"- J") ]。
図 4はマウス心筋における elgRの免疫染色像 (緑色) を示す (A : 2 0 0倍、 B: 4 0 0倍、 A' 及び B ' :核の染色像 (青色) と重ね合わせたもの、 矢印:毛細 血管よりも太い血管) 。
図 5は、 elgR - Fc融合タンパク質発現ベクター pcDNA3 - Fcの構造を示す。
図 6は、 作製したラットモノクローナル抗体おょぴゥサギ抗血清を用いた HeLa 細胞の免疫染色像を示す [A: コントロールの HeLa細胞、 B- D:マウス elgR- Sを発 現させた HeLa細胞。 Cと])はゥサギ抗血清とラットモノクロ一ナル抗体の二重染色 像。 共焦点顕微鏡で撮影 (Α, Β ; 400倍、 C, D ; 630倍) ] 。 以下、 本発明を詳細に説明する。 本願は、 2003年 12月 9 日に出願された日本 国特許出願 2003- 410136号の Ϊ憂先権を主張するものであり、 該特許出願の明細書 及び Z又は図面に記載される内容を包含する。
1 . Fc受容体タンパク質、 それをコードする遺伝子
本発明の Fc受容体タンパク質は、 IgA及び IgMと特異的に結合する新規な Fc受容 体タンパク質であって、 毛細血管内皮細胞に限局して発現することから、 endothel ial im腿 noglobul in receptor (el gR)と命名し 7こ。
本発明において同定した Fc受容体タンパク質をコードする遺伝子には、 オルタ ナティヴ · スプライシングにより生成する、 ヒ ト由来の 4種類の遺伝子 (h - eIgR-L、 h-elgR-M, h-elg -S a , h-elgR-S β ) 、 マウス由来の 3種類の遺伝子
(m- elgR - L、 m- elgR- M、 m - elgR-S)が含まれる。 h - elgR -し、 h-elgR - M、 h-elgR-S a、 h- elgR- S j3の cDNA塩基配列をそれぞれ配列番号 1, 3 , 5, 7に、 またこれ らの cDNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号 2 , 4, 6, 8に' 示す。 また、 m-elgR- L、 m- elgR- M、 m- elgR- Sの cDNAの塩基配列をそれぞれ配列番
号 9, 11, 13に、 またこれらの cDNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ 配列番号 10, 12, 14に示す。
本発明の Fc受容体タンパク質は種々の組織、 臓器の毛細血管内皮細胞に発現し、 IgM及ぴ IgA抗体の血中から組織への移行に関与する。
従って、 本発明の Fc受容体タンパク質に結合し、 該タンパク質の機能を阻害す る物質、 例えばアンタゴニスト、 Fc受容体タンパク質に結合してその機能を阻害 する特異的抗体は、 免疫応答を抑制することができる。 また、 本発明の Fc受容体 タンパク質に結合し、 該タンパク質の機能を促進する物質、 例えばリガンド、 ァ ゴニスト、 Fc受容体タンパク質に結合してその機能を促進する特異的抗体は、 薬 剤を組織へ効果的に移行させるドラッグデリパリ一の担体として機能することが できる。
本発明において 「リガンド」 とは、 本発明の Fc受容体タンパク質と結合する物 質をいう。 また、 本発明において 「ァゴ二スト」 とは、 本発明の Fc受容体タンパ ク質に結合し、 該タンパク質を活性化することのできる物質をいい、 「アンタゴ 二ス ト」 とは、 本発明の Fc受容体タンパク質に対するリガンドゃァゴュス トの作 用を阻害する物質をいう。 こ'れらリガンド、 ァゴニスト、 アンタゴニストは、 天 然由来及び非天然由来の物質のいずれをも含む。
本発明の Fc受容体タンパク質をコードする遺伝子は、 後記実施例に示すように、 IgAに対する既知の Fc受容体を用いた BLASTによる相同性検索を行 、、 ホモ口ジー の高い遺伝子を候補遺伝子としてスクリーニングし、 該当する E S Tクローンの 供与を受ける (または購入する) ことにより取得できる。
本発明の Fc受容体タンパク質をコードする遺伝子はまた、 下記の細胞や組織に 由来する cDNAライブラリ一を、 上記方法で取得した遗伝子断片をもとにして合成 した DNAプローブを用いてスクリ一二ングすることにより単離することができる。 cDNAライブラリ一を作製するための mRNA供給源としては、 Fc受容体の mRNAが発現 している細胞であれば特に限定されず、 ヒトやその他の哺乳動物 (例えば、 マウ ス、 ラット、 モルモット、 ゥサギ、 ブタ、 ヒッジ、 ゥシ、 サル等) のあらゆる毛 細血管内皮細胞、 又はそれらの細胞が存在するあらゆる組織 (例えば、 心臓、 腎 臓、 肝臓等) が挙げられる。
raRNAの調製は、 当該技術分野において通常用いられる手法により行うことがで きる。 例えば、 上記細胞又は組織を、 グアジニン試薬、 フヱノール試薬等で処理 して全 RNAを得、 その後、 オリゴ(dT)セルロースカラムやセファロース 2 Bを担体 とするボリ U—セファロース等を用いたァフィ二ティーカラム法により、 あるい はバッチ法によりポリ (A) +RNA (mRNA) を得る。 さらに、 ショ糖密度勾配遠心法 等によりポリ (A + ) RNAをさらに分画してもよい。
次いで、 得られた mRNAを鎳型として、 オリゴ dTプライマー及び逆転写酵素を用 いて一本鎖 cDNAを合成し、 該一本鎖 cDNAから DNA合成酵素 I、 DNAリガーゼ及び RnaseH等を用いて二本鎖 cDNAを合成する。 合成した二本鎖 cDNAを T4DNA合成酵素 によって平滑化後、 アダプター (例えば、 EcoRIアダプター) の連結、 リン酸化 等を経て、 gt l l等の λファージに組み込んで in v ivoパッケージングすること によって cDNAライブラリ一を作製する。 また、 λファージ以外にもプラスミ ドべ クタ一を用いて cDNAライブラリーを作製することもできる。
cDNAライプラリーから目的の DNAを有する株 (ポジティブクローン) を選択す るスクリーニング方法としては、 例えば、 配列番号 2, 4, 6 , 8、 10, 12 , 14 のいずれかに示すァミノ酸配'列に対応するセンスプライマー及びアンチセンスプ ライマーを合成し、 これを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法が挙げ られる。
PCR反応の鎵型 DNAとしては、 前記 mRNAから逆転写反応により合成された cDNAを 用いればよい。 また、 プライマーは、 増幅したときの DNA断片の予想サイズ、 あ るいは縮重コ ドンの組み合わせなどを適宜検討しながら、 上記のアミノ酸配列情 報に基づいて設計することができる。
このようにして得られた DNA増幅断片を、 32P、 35S又はビォチン等で標識して プローブとし、 これを形質転換体の DNAを変性固定した-トロセルロースフィル ターとハイブリダイズさせ、 ポジティブクローンを検索する。
取得したポジティブクローンについて塩基配列の決定を行う。 塩基配列の決定 はマキサム-ギルバートの化学修飾法、 又は Ml 3ファージを用いるジデォキシヌク レオチド鎖終結法等の公知手法により行うことができるが、 通常は自動塩基配列' 決定機 (例えば PERKIN- ELMER社製 373A DNAシークェンサ一、 TAKARA社製 BcaBEST
ジデォキシシークェンシングキット等) を用いて行う。 決定した塩基配列は、 DNASIS (日立ソフトウェアエンジニアリング社) 等の DNA解析ソフトによって解 析し、 得られた DNA鎖中にコードされているタンパク質コード部分を見出すこと ができる。
本発明の Fc受容体タンパク質は、 (a) 配列表の配列番号 2、 4、 6、 8、 10、 12、 又は 14で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、 (b) 配列表の配列番号 2、 4、 6、 8、 10、 12、 又は 14で表されるアミノ酸配列において 1若しくは数 個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、 かつ IgA及 び IgMの Fcに対して結合活性を有するタンパク質である。
上記の 「配列番号 2、 4、 6、 8、 10、 12、 又は 14に示すアミノ酸配列におい て 1から数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列」 におけ る 「1から数個」 の範囲は特には限定されないが、 例えば、 1から 20個、 好まし くは 1から 10個、 より好ましくは 1から 7個、 さらに好ましくは 1から 5個、 特 に好ましくは 1から 3個程度を意味する。
上記アミノ酸の欠失、 付加及び置換は、 上記 Fc受容体タンパク質をコードする 遺伝子を、 当該技術分野で公 ¼1の手法によつて改変することによつて行うことが できる。 遺伝子に変異を導入するには、 Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知 手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、 例えば部位特異的突然変異誘 発法を利用した変異導入用キッ ト (例えば Mutant-K (TAKARA社製) や Mutant - G (TAKARA社製) )などを用いて、 あるレ、は、 TAKARA社の LA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。
上記の 「IgA及び IgMの Fcに対して結合活性を有する」 とは、 IgA及び IgMの Fcに 対する結合活性が、 配列番号 2、 4、 6、 8、 10、 12、 又は 14に記載のアミノ酸 配列を有するタンパク質が有する活性と実質的に同等であることをいう。
より詳細には、 当該活性が同等 (例えば、 約 0. 01〜100倍、 好ましくは約 0. 5〜 20倍、 より好ましくは約 0· 5〜 2倍) である限り、 分子量等の量的要素は元のタ ンパク質と異なっていてもよレ、。 '
本発明の Fc受容体タンパク質には、 上記 Fc受容体タンパク質と機能的に同等で あり、 かつ該タンパク質のアミノ酸配列と相同性を有するタンパク質も含まれる。
ネ目同性を有するタンパク質とは、 配列番号 2、 4、 6、 8、 10、 12、 又は 14に記 載のアミノ酸配列と約 70%以上、 好ましくは約 80%以上、 より好ましくは約 90% 以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有するタンパク質を意味する。 タン ノ ク質の相同性を決定するには、 文献 (Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. , Proc. Natl. Acad. , Sci. USA (1983) 80, 726- 730)に記載のアルゴリズムに従えば よい。
本発明の Fc受容体タンパク質には、 上記 Fc受容体タンパク質と機能的に同等で あり、 かつ該タンパク質のアミノ酸配列の部分配列を有するタンパク質(部分ぺ プチド) も含まれる。
本発明の Fc受容体タンパク質には、 該蛋白質と他のぺプチド又はタンパク質と が融合した融合蛋白質も含まれる。 融合蛋白質を作製する方法は、 Fc受容体タン パク質をコ ドする DNAと他のぺプチド又はタンパク質をコードする DNAをフレー ムが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、 宿主で発現させれば よく、 すでに公知の手法を用いることができる。 融合に付される他のペプチド又 は蛋白質としては、 特に限定されない。 例えば、 ペプチドとしては、 FLAG、 6 X Hi s, 10 X His、 インフルェジザ凝集素 (HA) 、 ヒ ト c一 mycの断片、 VSV- GPの断片、 T7 - tag、 HSV- tag、 E - tag等、 すでに公知であるペプチドが挙げられる。 またタン パク質としては、 例えば GST (グルタチオン- S-トランスフェラーゼ) 、 HA (イン フルェンザ凝集素) 、 ィムノグロブリン定常領域、 —ガラク トシダーゼ、 ΜΒΡ (マルトース結合蛋白質) 、 GFP (緑色蛍光蛋白) 等が挙げられる。
本発明の Fc受容体タンパク質は、 必要に応じて塩の形態、 好ましくは生理学的 に許容される酸付加塩の形態としてもよい。 そのような塩としては、 無機酸 (例 えば、 塩酸、 リン酸、 臭化水素酸、 硫酸) の塩、 有機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル酸、 マレイン酸、 コハク酸、 酒石酸、 クェン酸、 リンゴ酸、 シユウ酸、 安息香酸、 メタンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸) の塩等が挙げら れる。
本発明の Fc受容体タンパク質は、 該タンパク質を発現しているヒ トゃ哺乳動物 の培養細胞又は組織からの抽出 .分離よつて、 あるいは後述のように該タンパク 質をコードする DNAを含む形質転換体を培養することによつても製造することが
できる。 ヒ トゃ哺乳動物の組織又は細胞から製造する場合、 ヒ トゃ哺乳動物の組 織又は細胞をホモジナイズ後、 酸等で抽出を行い、 得られた抽出液を疎水クロマ トグラフィー、 逆相クロマトグラフィー、 イオン交換クロマトグラフィー等の各 種クロマトグラフィーを組み合わせることにより単離精製することが きる。
また、 前記部分ペプチドは、 公.知のペプチド合成法又は前記 Fc受容体タンパク 質を適当なぺプチダーゼ (例えば、 トリプシン、 キモトリプシン、 アルギニルェ ンドぺプチダーゼ) で切断することによって製造することができる。 ペプチド合 成法としては、 例えば、 固相合成法、 液相合成法のいずれによってもよい。
本発明の Fc受容体タンパク質をコードする遺伝子は、 上記の本発明のタンパク 質をコードする遺伝子であればいかなるものでもよく、 具体的には、 (a) 配列表 の酉己列番号 1、 3、 5、 7、 9、 11、 又は 13に示す塩基配列からなる DNA、 (b) 配歹 IJ表の配列番号 1、 3、 5、 7、 9、 11、 又は 13に示す塩基配列からなる DNA と相補的な塩基配列からなる DNAとストリンジヱントな条件下でハイプリダイズ し、 かつ IgA及び IgMの Fcに対して結合活性を有するタンパク質をコードする DNA からなる遺伝子が挙げられる。
上記の 「配列番号 1、 3、' 5、 7、 9、 11、 又は 13に示す塩基配列からなる DNAと相捕的な塩基配列からなる DNAとス トリンジェントな条件下でハイブリダイ ズできる DNA」 としては、 配列番号 1、 3、 5、 7、 9、 11、 又は 13に示す塩基 配歹 Uと約 70%以上、 好ましくは約 80%以上、 より好ましくは約 90%以上、 最も好 ましくは約 95%以上の相同性を有する塩基配列からなる DNA等が挙げられる。 こ こで、 ストリンジヱントな条件とは、 例えば、 ナトリウム濃度が 600〜900mMであ り、 温度が 60〜68°C、 好ましくは 65°Cでの条件をいう。
一旦本発明の遺伝子の塩基配列が確定されると、 その後は化学合成によって、 又は本遺伝子の cDNAを鏺型とした PCRによって、 あるいは該塩基配列を有する DNA 断片をプローブとしてハイブリダィズさせることにより、 本発明の遗伝子を得る ことができる。
2 . 組換えベクター及ぴ形質転換体の作製
(1) 組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、 適当なベクターに本発明の遺伝子を連結すること により得ることができる。 本発明の遺伝子を挿入するためのベクターは、 宿主中 で複製可能なものであれば特に限定されず、 例えば、 プラスミ ド DNA、 ファージ DNA等が挙げられる。 プラスミ ド DNAとしては、 大腸菌由来のプラスミ ド (例え ば pRSET、 pBR322, pBR325, pUC118, pUC119, pUC18, pUC19等) 、 枯草菌由来の プラスミ ド (例えば pUBl lO, pTP5等)、 酵母由来のプラスミ ド (例えば ΥΕρ13, YEp24, YCp50等)などが挙げられ、 ファージ DNAとしては λファージ (Charon4A、 Charon21A、 EMBL3、 EMBL4、 λ gtlON l gtll λ ZAP等) が挙げられる。 さらに、 レトロウィルス又はワクシニアウィルスなどの動物ウィルス、 バキュ口ウィルス などの昆虫ウィルスベクターを用いることもできる。
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、 まず、 精製された DNAを適当な制 限酵素で切断し、 適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニンダサ ィ トに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
本発明の遺伝子は、 その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込ま れることが必要である。 そこで、 本発明のベクターには、 プロモーター、 本発明 の遺伝子のほか、 所望によりェンハンサ一などのシスエレメント、 スプライシン グシグナル、 ポリ A付加シグナル、 選択マーカー、 リボソーム結合配列 (SD配 列) などを含有するものを連結することができる。 なお、 選択マーカーとしては、 例えばジヒ ドロ葉酸還元酵素遺伝子、 アンピシリン耐性遺伝子、 ネオマイシン耐 性遺伝子等が挙げられる。
このようなベクターとしては、 宿主細胞が大腸菌である場合は、 例えば pETベ クタ一(Novagen社製) 、 pTrxFUSベクタ一(Invitrogen社製) 、 pCYBベクター(NEW
ENGLAMD Bio Labs社製) 等が、 宿主細胞が酵母である場合は、 例えば pESP- 1発現 ベクター(STRATAGENE社製) 、 pAUR123ベクター (宝酒造社製) 、 pPICべクター
(Invitrogen社製) 等が、 また宿主細胞が動物細胞である場合は、 例えば pMAM- neo発現ベクター (CL0NTECH社製) 、 pCDNA3. 1ベクター(Invitrogen社製) 、 pBK-
CMVベクタ一 (STRATAGENE社製) '等が、 宿主細胞が昆虫細胞である場合は、 例え ば pBacPAKベクター (CL0NTECH社製) 、 pAcUW31ベクター(CL0NTECH社製) 、
PAc.P (+) IElベクター(Novagen社製) 等がそれぞれ挙げられる。
(2) 形質転換体の作製
本発明の形質転換体は、 本発明の組換えベクターを、 目的遺伝子が発現し得る ように宿主中に導入することにより得ることができる。 ここで、 宿主としては、 本発明の DNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。 例えば、 大腸菌 (Escherichia coli) 等のェシエ リ ヒ ア属、 バチルス · ズブチリ ス (Bacillus subtilis) 等のバチルス属、 シユードモナス · プチタ、' (Pseudomonas putida) 等のシユー ドモナス属、 リ ゾビゥム ' メ リ ロティ ( Rhizobium meliloti ) 等のリ ゾビゥム属に属する細菌 ; サッカロ ミセス . セレビシェ 、 Saccharorayces cerevisiae ) 、 シ ン サ ッ カ ロ ¾> セ ス ' ポ ン べ (Schizosaccharomyces pombe) 等の酵母;サル細胞 C0S_7、 Vero、 チャイニーズ ハムスター卵巣細胞 (CH0細胞) 、 マウス L細胞、 ヒ ト GH3、 ヒ ト FL細胞等の動物 細胞; あるいは Sf9、 Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、 本発明の組換えベクターが該細菌中で自 律複製可能であると同時に、 プロモーター、 リボゾーム結合配列、 本発明の遺伝 子、 転写終結配列により構成されていることが好ましい。 また、 プロモーターを 制御する遺伝子が含まれてい'てもよい。
大腸菌としては、 例えばエツシェリヒア ' コリ (Escherichia coli)K12、 DH1な どが挙け'られ、 枯草菌と しては、 例えばバチルス · ズプチリ ス (Bacillus subtilis)などが挙げられる。 プロモーターとしては、 大腸菌等の宿主中で発現 できるものであればいずれを用いてもよい。 例えば trpプロモーター、 lacプロモ 一ター、 PLプロモーター、 PRプロモーターなどの、 大腸菌やファージに由来する プロモ一ターが用いられる。 tacプロモーターなどのよ うに、 人為的に設計改変 されたプロモーターを用いてもよい。 細菌への組換えベクターの導入方法として は、 細菌に DNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。 例えば力 ルシゥムイオンを用いる方法(Cohen, S.N. et al. (1972) Proc. Natl. Acad. Sci. , USA 69, 2110-2114)、 エレク トロボレ一シヨン法等が挙げられる。 ' 酵母を宿主とする場合は、 例えばサッカロミセス · セレビシェ(Saccharomyces cerevisiaeリ、 シゾサッカロ セス · ポンべ (Schizosaccharomyces pombe)、 ヒ ヒ ァ 'パス トリス(Pichia pastoris)などが用いられる。 この場合、 プロモーター
としては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、 例えば gallプロモー ター、 gal lOプロモーター、 ヒートショックタンパク質プロモーター、 MF a lプロ' モーター、 PH05プロモーター、 PGKプロモーター、 GAPプロモーター、 ADHプロモ 一ター、 A0X1プロモーター等が挙げられる。 酵母への組換えベクターの導入方法 と しては、 酵母に DNAを導入する方法であれば特に限定されず、 例えばエレク ト 口ポレーシヨ ン法(Becker, D. M. et al. (1990) Methods. Enzymol. , 194, 182— 187)、 スフエロプラスト法(Hinnen, A. et al. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci., USA 75, 1929—1933)、 酢酸リチウム法(Itoh, H. (1983) J. Bacteriol. 153, 163 - 168)等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、 サル細胞 COS- 7、 Vero、 チャイニーズハムスタ 一卵巣細胞 (CH0細胞) 、 マウス L細胞、 ラッ ト GH3、 ヒ ト HeLa、 FL細胞などが用 いられる。 プロモーターとして SR aプロモーター、 SV40プロモーター、 LTRプロ モーター、 CMVプロモーター等が用いられ、 また、 ヒ トサイ トメガロウィルスの 初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。 動物細胞への組換えベクターの導入 方法としては、 例えばェレク トロポレーシヨン法、 リン酸カルシウム法、 リボフ ェクション法等が挙げられる'。
昆虫細胞を宿主とする場合は、 Sf9細胞、 Sf21細胞などが用いられる。 昆虫細 胞への組換えベクターの導入方法としては、 例えばリン酸カルシウム法、 リボフ ェクション法、 エレク トロポレーション法などが用いられる。
また、 上記の各宿主細胞への遺伝子導入は、 組換えべクタ一によらない方法、 例えばパーティクルガン法なども用いることができる。
3 . 本発明の Fc受容体タンパク質の製造
本発明の Fc受容体タンパク質は、 前記形質転換体を培養し、 その培養物から採 取することにより得ることができる。 「培養物」 とは、 培養上清のほか、 培養細 胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するもので ある。 '
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、 その宿主細胞の培養に用いられ る通常の方法に従って行うことができる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地と しては、 微生物が資化し得る炭素源、 窒素源、 無機塩類等を含有し、 形質転換体 の培養を効率的に行うことができる培地であれば、 天然培地、 合成培地のいずれ を用いてもよい。 炭素源としては、 該生物が資化し得るものであればよく、 グル コース、 フラク トース、 スクロース、 デンプン等の炭水化物、 酢酸、 プロピオン 酸等の有機酸、 エタノール、 プロパノール等のアルコール類が用いられる。 窒素 源としては、 アンモニア、 塩化アンモニゥム、 硫酸アンモニゥム、 酢酸アンモニ ゥム、 リン酸アンモニゥム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニゥム塩又はその 他の含窒素化合物のほか、 ペプトン、 肉エキス、 コーンスチープリカー等が用い られる。 無機塩類としては、 リン酸第一カリウム、 リン酸第二カリウム、 リン酸 マグネシウム、 硫酸マグネシウム、 塩化ナトリウム、 硫酸第一鉄、 硫酸マンガン、 硫酸銅、 炭酸カルシウム等が用いられる。
培養は、 通常、 振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、 37°Cで 6〜24 時間行う。 培養期間中、 pHは 7. 0〜7. 5に保持する。 pHの調整は、 無機又は有機酸、 アルカリ溶液等を用いて行う。 培養中は必要に応じてアンピシリンゃテトラサイ クリン等の抗生物質を培地に'添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現べクタ一で形質転換し た微生物を培養する場合は、 必要に応じてィンデューサーを培地に添加してもよ い。 例えば、 Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培 養するときにはイソプロピル - i3 -D -チォガラタ トピラノシド(IPTG)等を、 trpプ 口モーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイン ドール酢酸(IAA)等を培地に添加してもよレ、。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、 一般に使 用されている RPMI 1640培地、 DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加し た培地等が用レ、られる。 培養は、 通常、 5 %C02存在下、 37°Cで 1〜30日行う。 培養中は必要に応じてカナマイシン、 ぺニシリン等の抗生物質を培地に添加して もよい。 - 培養後、 本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、 菌体 又は細胞を破石 することにより該タンパク質を抽出する。 また、 本発明のタンパ
ク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、 培養液をそのまま使用するカ 遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。 その後、 タンパク質の単離精製に用 いられる一般的な生化学的方法、 例えば硫酸アンモニゥム沈殿、 ゲルクロマトグ ラフィ一、 イオン交換クロマトグラフィー、 ァフィ二ティークロマトグラフィー 等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、 前記培養物中から本発明の タンパク質を単離精製することができる。
4 . 本発明の Fc受容体タンパク質に対する抗体
本発明の抗体は以下の一般的な抗体調製方法によって取得できる。
(1) 抗原の調製
本発明においては、 前記の通り単離精製した本発明の Fc受容体タンパク質又は その一部の断片を抗原として用いる。
(2)ポリクローナル抗体の作製
前記のようにして調製した抗原を用いて動物を免疫する。 抗原の動物 1匹当た りの投与量は、 ゥサギの場合、 例えばアジュバントを用いて 100〜500 である。 アジュバン卜としては、 フ口'ィント完全アジュバント(FCA)、 フロイント不完全 アジュバント (FIA)、 水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。
免疫は、 B甫乳動物 (例えばラット、 マウス、 ゥサギなど) に投与することによ り行われる。 投与部位は静脈内、 皮下又は腹腔内である。 また、 免疫の間隔は特 に限定されず、 数日から数週間間隔、 好ましくは 2〜3週間間隔で、 1〜10回、 好ましくは 2〜3回免疫を行う。 そして、 最終の免疫日から 6〜60日後に抗体価 を測定し、 最大の抗体価を示した日に採血し、 抗血清を得る。 抗体価の測定は、 酵素免疫測定法(ELISA; enzyme- l inked immunosorbent assay)、 放射性免疫測定 法(RIA; rad ioimmuno assay)等により行うこと力 Sできる。
抗血清から抗体の精製が必要とされる場合は、 硫安塩析法、 イオン交換クロマ トグラフィー、 ゲル濾過、 ァフィ二ティークロマトグラフィーなどの公知の方法 を適宜選択して、 又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
(3) モノクローナル抗体の作製
(3-1) 免疫及び抗体産生細胞の採取
上記のようにして調製された抗原タンパク質を用いて動物を免疫する。 必要で あれば、 免疫を効果的に行うため、 前記と同様アジュバント (市販のフロイント 完全アジュバント、 フロイント不完全アジュバント等) を混合してもよい。
免疫は、 哺乳動物 (例えばラット、 マウス、 ゥサギなど) に投与することによ り行われる。 抗原の 1回の投与量は、 マウスの場合 1匹当たり 50 である。 投 与部位は、 主として静脈内、 皮下、 腹腔内である。 また、 免疫の間隔は特に限定 されず、 数日から数週間間隔、 好ましくは 2〜 3週間間隔で、 最低 2〜 3回行う。 そして、 最終免疫後、 抗体産生細胞を採集する。 抗体産生細胞としては、 脾臓細 胞、 リンパ節細胞、 末梢血細胞等が挙げられるが、 脾臓細胞が好ましい。
(3-2) 細胞融合
ハイブリ ドーマを得るため、 抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行 う。 抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、 マウスなどの動物由来の 細胞であって一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。 使用する細胞 株として、 薬剤選択性を有し、 未融合の状態では HAT選択培地 (ヒポキサンチン、 アミノプテリン及びチミジンを含む) で生存できず、 抗体産生細胞と融合した状 態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。 例えば、 ミエローマ細胞の具 体例としては P3X63 - Ag. 8. Ul (P3U1) 、 P3/NSI/1- Ag4- 1、 Sp2/0- Agl4などのマウ スミエローマ細胞株が挙げられる。
次に、 上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。 細胞融合は、 血清を含まない匪 EM、 RPMI- 1640培地などの動物細胞培養用培地中に、 抗体産生 細胞とミエローマ細胞とを 15 : 1〜25 : 1の割合で混合し、 ポリエチレングリコール 等の細胞融合促進剤存在下、 あるいは電気パルス処理(例えばエレク トロポレー シヨン)により融合反応を行う。
(3-3) ハイブリ ドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイプリ ドーマを選別する。 例えば、 ヒ ポキサンチン、 アミノプテリ ン及びチミジンを含む培地を用いて培養し、 生育す る細胞をハイプリ ドーマとして得ることができる。
次に、 増殖したハイプリ ドーマの培養上清中に、 目的とする抗体が存在するか 否かをスクリーニングする。 ハイプリ ドーマのスクリ一 ングは、 通常の方法に
従えばよく、 特に限定されるものではない。 例えば、 ハイプリ ドーマとして生育 したゥエルに含まれる培養上清の一部を採集し、 酵素免疫測定法 (ELISA ; enzyme-l inked immunosorbent assayノ 、 RlA (radioimmuno assay)等 tこよってス クリーニングするこ とができる。 融合細胞のクローニングは、 限界希釈法等によ り行い、 最終的に単クローン抗体産生細胞であるハイプリ ドーマを樹立する。 (3-4) モノクロ一ナノレ抗体の採取
樹立したハイプリ ドーマからモノク口一ナル抗体を採取する方法として、 通常 の細胞培養法等を採用することができる。 細胞培養法においては、 ハイプリ ドー マを 10%牛胎児血清含有 RPMI- 1640培地又は MEM培地等の動物細胞培養培地中、 通常の培養条件 (例えば 37°C , 5 % C02濃度) で 3〜10日間培養し、 その培養上 清から抗体を取得する。
上記抗体の採取方法において、 抗体の精製が必要とされる場合は、 硫安分画法、 イオン交換ク口マト グラフィー、 ァフィ二ティーク口マトグラフィ一、 ゲルクロ マトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、 又はこれらの方法を組み合 わせることにより精製することができる。
5 . 本発明の抗体による Fc受容体タンパク質の検出方法、 検出用試薬
本発明の抗体は、 本発明の Fc受容体タンパク質又はその部分断片と反応するた め、 該受容体タンパク質の検出用試薬として使用することができる。 Fc受容体タ ンパク質の検出方法は特に限定されるものではなく、 例えばウェスタンブロッテ イング法などを採用することができる。 例えば、 被験試料 (細胞成分又はその各 分画等) を電気泳動等により分画し、 次に、 予め標識 (放射標識、 蛍光染色等) された本発明の抗体と反応させてシダナルを検出する。 本発明の Fc受容体タンパ ク質の検出に使用する抗体は、 該受容体タンパク質の全長アミノ酸配列を有する タンパク質に対する抗体でもよく、 該タンパク質の部分アミノ酸配列を有するぺ プチドに対する抗体でもよい。
本発明の抗体を用レ、た Fc受容体タンパク質の定量は、 例えばィムノブロット法、 酵素抗体法 (E I A ) 、 放射線免疫測定法 (R I A) 、 蛍光抗体法、 免疫細胞染 色等より行うことが可能であるが、 それらに限定されるものではない。
また、 上記抗体は、 その断片であってもよく、 具体的には、 当該抗体の一本鎖 抗体断片(scFv)が挙げられる。
具体的には、 ELISA法による場合は、 以下の通り行う。 まず、 希釈した血液等 の試料を 96ゥヱルマイクロプレートに吸着させた後、 一次抗体として本発明の抗 体を反応させる。 次いで、 発色反.応に必要な POD (ペルォキシダーゼ) 等の特異的 酵素で標識した抗グロブリ ン抗体を反応させ、 洗浄後、 発色基質と して ABTS2, 2,-アジノ-ジ-(3-ェチル -ベンゾチアゾリン- 6-スルホン酸) 等を添加して 発色させ、 比色法により測定することによって試料中の本発明の Fc受容体タンパ ク質を検出する。 あるいは、 サンドイッチ ELISA 法による場合は、 以下の通り行 う。 まず、 希釈した血液等の試料を、 予め本発明の抗体を吸着させた 96ウェルマ イク口プレ一トに添加して一定時間ィンキュベートする。 その後、 プレートを洗 浄し、 ピオチンで標識した精製抗体を各ゥヱルに添加して一定時間インキュベー トした後、 プレートを洗浄し、 酵素標識アビジンを添加してさらにインキュベー トする。 インキュベート後、 プレートを洗浄し、 発色基質としてオルトフヱニレ ンジァミン等を添加して発色させ、 比色法によって測定する。
また、 上記の Fc受容体タン'パク質検出用試薬は、 他の試薬と組み合わせ、 Fc受 容体タンパク質検出用キットに用いることもできる。 当該キットは、 少なくとも 本発明の抗体を含むものであればよく、 該抗体を固相に固定させる場合にあって は、 該抗体とは抗原認識部位が異なり、 二次抗体として用いられる抗体を含んで いてもよい。 二次抗体として用いられる抗体は、 例えば酵素等で標識されていて もよく、 これら 2つの抗体の他に、 各種試薬 (例えば、 酵素基質、 緩衝液、 希釈 液等) を含んでいてもよい。
6 . 本発明の Fc受容体タンパク質に対するリガンドのスクリ一ユング方法 本発明の Fc受容体タンパク質に対するリガンドのスクリ一ユングは、 本発明の
Fc受容体タンパク質、 又は該タンパク質を発現する細胞をリガンドが含まれるこ とが予想される被験試料に作用させ、 該タンパク質に対して結合能を有する物質 を選択することにより行うことができる。 結合能を有する物質を選択する具体的 手法としては、 本発明の Fc受容体タンパク質、 又は該受容体タンパク質を発現す
る細胞に被験試料を作用させ、 該受容体タンパク質に対する被験試料の結合量を 測定することなどにより行う。 測定において結合量が多い物質を本発明の受容体 タンパク質に対するリガンドの候補物質として選択することができる。
被験試料としては任意の物質を使用することができ、 その種類は特に限定され ない。 被験試料の具体例としては、 例えばペプチド、 タンパク質、 非ペプチド性 化合物、 合成化合物、 天然物抽出物 (植物抽出液、 動物組織 ·動物細胞抽出液) 、 あるいは化合物ライブラリー、 ファージディスプレーライブラリーもしくはコン ピナトリアルライブラリ一でもよい。 化合物ライブラリ一の構築は当業者に公知 であり、 また市販の化合物ライブラリ一を使用することもできる。
かかるスクリーニング法により得られたリガンドは組織で発現している Fc受容 体タンパク質に結合することができるので、 例えば免疫抑制剤、 抗アレルギー薬、 抗炎症薬を組織に効率よく到達させるドラッグデリバリー用担体として用いるこ とができる。 あるいは、 Fc受容体タンパク質に被験試料の存在下に反応させるこ とによって、 Fc受容体タンパク質に対するァゴニスト又はアンタゴニストのスク リーニングにも利用できる (次項 7 . 参照) 。
7 . 本発明の Fc受容体タンパク質に対するァゴニスト又はアンタゴニストのスク リ一二ング系
本発明の Fc受容体タンパク質は、 該受容体タンパク質とリガンドである IgM又 は IgAとの結合を阻害する物質 (アンタゴニス ト) 、 該受容体に結合してリガン ドと同様な免疫応答を起こす物質 (ァゴ二ス ト) のスクリーニングするための手 段 (スクリーニング方法、 スクリーニング用キット) として有用である。
本発明の Fc受容体タンパク質に対するァゴニスト又はアンタゴニストのスクリ 一ユング方法は、 (a ) Fc受容体タンパク質を IgM又は IgAに被験試料の非存在下 において作用させた場合と、 (b ) Fc受容体タンパク質を IgM又は IgAに被験試料 の存在下において作用させた場合とを比較し、 該 Fc受容体タンパク質と該 IgM又 は IgAの結合に対して影響を与える物質を選択することを特徴とする。 被験試料 を添加した場合に Fc受容体タンパク質と IgM又は IgAとの結合量が減少又は増加す る被験試料が見つかれ f 、 その被験試料は、 本発明のタンパク質と IgM又は IgAと
の結合を阻害又は拮抗し、 免疫応答を制御するのに役立つアンタゴニスト又はァ ゴニストの候補物質となる。
また、 本発明の Fc受容体タンパク質は該タンパク質に対するァゴニスト又はァ ンタゴニストのスク リ一二ング用キッ トに用いることもできる。 当該キットは、 少なくとも本発明の Fc受容体タンパク質を含むものであればよく、 標識リガンド、 リガンド標準液、 各種試薬 (例えば、 緩衝液、 洗浄液、 希釈液等) を含んでいて もよい。
被験試料としては任意の物質を使用することができ、 その種類は特に限定され ず、 前項で挙げたものと同様である。
8 . 本発明の免疫応答制御用医薬
本発明の Ec受容体タンパク質 elgRは種々の組織、 臓器の毛細血管内皮細胞に発 現し、 IgM及び: [gA抗体の血中から組織への移行に関与する。 また、 前記方法によ り取得されるリガン ド、 アンタゴ-スト、 ァゴニストは本発明の Fc受容体タンパ ク質に結合することができ、 該受容体の機能を促進あるいは阻害する機能を有す る。 従って、 本発明の Fc受容'体タンパク質、 遺伝子、 リガンド、 アンタゴニスト、 ァゴニストはいずれも免疫応答制御用医薬として用いることができる。
例えば、 本発明の医薬を免疫応答制御機構の不全が原因となる疾患に用いると、 IgM、 IgA抗体の組織への移行を制御することによって該疾患の治療を行うことが できる。 かかる疾患としては、 例えば、 自己免疫疾患 (例えば、 多発性硬化症、 全身性エリマト一デス、 慢性関節リウマチ、 強皮症、 多発性筋炎、 皮膚筋炎、 シ ーグレン症候群、 ベーチェット病、 強直性脊椎炎、 インスリン依存性糖尿病、 悪性貧血など) 、 腫瘍 (胃癌、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 食道癌、 前立腺癌、 肝癌、 腎臓癌、 膀胱癌、 皮膚癌、 子宮癌、 脳腫瘍、 骨肉種、 骨髄腫瘍など) 、 免疫不全 疾患 (原発性免疫不全症候群、 続発性免疫不全症候群など) 、 炎症性疾患 [炎症 性腸疾患 (IBD) 、 潰瘍性大腸炎、 クローン病、 関節炎、 プドウ膜炎、 SIRS (全 身性炎症反応症候群など]、 アレルギー疾患 (気管支喘息発作、 アトピー性皮膚 炎、 アレルギー性鼻炎、 花粉症、 尊麻疹など) などが挙げられるが、 これらに限 定はされなレ、。
本発明の医薬は、 各種製剤形態に調製し、 経口又は非経口的に全身又は局所投 与することができる。 本発明の医薬を経口投与する場合は、 錠剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 散剤、 丸剤、 内用水剤、 懸濁剤、 乳剤、 シロップ剤等に製剤化するか、 使用する際に再溶^ させる乾燥生成物にしてもよい。 また、 本発明の医薬を非経 口投与する場合は、 静脈内注射剤 (点滴を含む) 、 筋肉内注射剤、 腹腔内注射剤、 皮下注射剤、 坐剤などに製剤化し、 注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は 多投与量容器の状態で提供される。
これらの各種製剤は、 製剤上通常用いられる賦形剤、 増量剤、 結合剤、 湿潤剤、 崩壊剤、 潤滑剤、 界面活性剤、 分散剤、 緩衝剤、 保存剤、 溶解補助剤、 防腐剤、 矯味矯臭剤、 無痛化剤、 安定化剤、 等張化剤等などを適宜選択し、 常法により製 造することができる。
上記各種製剤は、 医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであって もよい。 このような担体及ぴ添加物の例として、 水、 医薬的に許容される有機溶 剤、 コラーゲン、 ポリ ビエルアルコール、 ポリビニルピロリ ドン、 カルボキシビ 二ルポリマー、 ァノレギン酸ナトリ ウム、 氷溶 1"生デキストラン、 カルボキシメチル スターチナトリ ウム、 ぺク ン、 キサンタンガム、 ァラビアゴム、 カゼイン、 ゼ ラチン、 寒天、 グリセリン、 プロピレングリコーノレ、 ポリエチレングリコ一ル、 ワセリン、 パラフィン、 ステアリルアルコール、 ステアリン酸、 ヒ ト血清アルブ ミン、 マンニトール、 ソルビトール、 ラク トースなどが挙げられる。 使用される 添加物は、 剤型に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
本発明の医薬の投与量は、 投与対象の年齢、 投与経路、 投与回数により異なり、 広範囲に変えることができる。 例えば、 本発明のタンパク質の有効量と適切な希 釈剤及び薬理学的に使用し得る担体との組み合わせとして投与される有効量は、 一回につき体重 lkgあたり 0. 01mg〜1000 mgの範囲の投与量を選ぶことができ、 1 日 1回から数回に分けて 1日以上投与される。
本発明の遺伝子を免疫系疾患に対する遺伝子治療剤として使用する場合は、 本 発明の遺伝子を注射により直接投与する方法のほか、 該遺伝子が組込まれたベタ ターを投与する方法が挙げられる。 上記ベクターとしては、 アデノウイルスべク ター、 アデノ関連ウイノレスベクター、 へノレぺスウイノレスベタター、 ワクシニアゥ
イノレスベクター、 レトロゥイノレスべクタ一等が挙げられ、 これらのウィルスべク ターを用いることにより効率よく投与することができる。 また、 本発明の遺伝子 をリボソームなどのリン脂質/ J、胞に導入し、 そのリポソームを投与する方法を採 用してもよレ、。
遺伝子治療剤の投与形態としては、 通常の静脈内、 動脈内等の全身投与のほか、 免疫系組織 (骨髄、 リンパ節など) に局所投与を行うことができる。 さらに、 力 テーテル技術、 外科的手術等と組み合わせた投与形態を採用することもできる。 遺伝子治療剤の投与量は、 年鈴、 性別、 症状、 投与経路、 投与回数、 剤型によつ て異なるが、 通常は、 本発明の遺伝子の重量にすると成人 1日あたり 0. l〜100mg/ 体重の範囲が適当である。 発明を実施するための最良の 態
以下、 実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 但し、 本発明はこれら 実施例に限定されるものではない。
(実施例 1 ) 新規 Fc受容体遺伝子の同定
IgA/IgMと結合する新たな Fc受容体遺伝子を単離する目的で、 Nat ional Center for Bi otechnology Informat ion (NCBI) の BLAST プ ロ グ ラ ム (http : //www. ncbi . nlm. nih. gov/BLAST/) により、 IgAに対する既知の Fc受容体 である多量体 Ig受容体(plgR)及び Fc α / μ受容体(Fc α / R)の間で相同性の高い ィムノグロブリン (Ig) ドメインの配列をもとにヒ ト及びマウスの cDNAデータべ ース検索を行った。
その結果、 既知の Fc受容体遣伝子と約 36%のホモロジ一を持つ、 新たな Fc受容 体遺伝子の候補となる遺伝子をヒ ト及びマウスで同定した。
後述する遺伝子発現様態の角罕析結果から、 同定した遺伝子は毛細血管内皮細胞 に限局して発現することが判明したので、 該遺伝子によりコードされるタンパク 質を endotnel ial immunoglobu l in receptor (elgR)と" ΡΠ·名した。
また、 EST, cDNA及ぴゲノムデ '·ータベースの解析から、 同定した遺伝子には、 オルタナティヴ ·スプライシングにより生成する長さの異なる遗伝子産物が、 ヒ トでは 4種類、 マウスでは 3種類存在することが明らかとなった。
図 1に、 ヒ ト elgR (h- elgR- L)及ぴマウス eIgR (m- elgR - L)のアミノ酸配列の比較 を示す。 ヒ トとマウスでのアミノ酸配列の相同性は約 51 %であった。
図 2に、 ヒ ト elgR (h-elgR) 及ぴマウス elgR (m- elgR) の模式図を示す。 オルタ ナティヴ ·スプライシングにより生じる長さが異なる遺伝子産物のうち、 Lは口 ングタイプ、 Mはミ ドルタイプ、 Sはショートタイプの遗伝子産物を表し、 それぞ れのアミノ酸数を表記した。 また、 ヒ ト elgR-Sは C末端が多様化して、 S o;と S j3 の 2種類に細分された (C末端 (-296)スプライシング変異体) 。
同定した Fc受容体遺伝子の由来となる ESTクローン (IMAGE Consortium) を下 表にまとめる。
表 1
Fc¾^¾ ^体遺 十 GenBank _hum >an/mouse E fs—access ion number ο
h-elgR-L 醒— 145 00273
h-elgR-M BI465150
n - elgR— S AF427619
h-elgR-S β AF427620
m-elgR-L
ra-elgR-M AK037204
m— elgR— S AK009375
塩基配列は、 ABI PRISM3100Avantシ^" -ケンサーを用いて決定した。 h- elgR- L、 h- eIgR_M、 h-elgR-S a、 h- elgR- S j3の塩基配列をそれぞれ配列番号 1, 3, 5 , 7に、 また対応するアミノ酸配列をそれぞれ配列番号 2, 4, 6 , 8に示す。 m_ elgR- L、 m-elgR-M, m-elgR- Sの塩基配列をそれぞれ配列番号 9 , 11, 13に、 また 対応するアミノ酸配列をそれぞれ配列番号 10, 12, 14に示す。
(実施例 2 ) 新規 Fc受容体タンパク質 (elgR) の解析
(1) 抗体の作製 (ポリクローナル抗体の作製)
ヒ ト elgRの細胞質内領域に対するペプチド抗体 (抗血清) は、 スカシ貝へモシ ァニン (KLH :配列番号 15) に結合させたペプチド MPPLHTSEEELGFSKFVSA (配列番 号 16) をゥサギ (家兎、 ニュージーランドホワイ ト、 早) 2羽に皮下免疫して得
た (抗ヒト elgR抗体 #B3498、 #B3499) 。
一方、 マウス elgRの細胞質内領域に対するペプチド抗体 (抗血清) は、 ぺプチ ド PPPLQMSAEELAFSEFISV (配列番号 17) を用いる以外は上記と同様にして得た (抗 マウス elgR抗体 #B3496 #B3497) 。
なお、 免疫は約 50日間にわた.り合計 4回行い、 免疫アジュバントは初回のみ CFA (フロイント完全アジュバント)、 2回目以降は IFA (フロイント不完全アジュ バント)を用いた。 抗体価測定は、 抗原と同じペプチドを用いた ELISA法によって 行った。 最初の免疫から約 80日後、 全採血し、 いずれのゥサギからも 100ml程度 の抗血清を得た。
(2) 抗体の取り込み
elgRは既知の IgA/IgMに対する FcRである plgR及ぴ Fc a / z Rと相同性を有するこ とから、 elgR力 S lgA又は IgMと結合する可能性が示唆される。 そこで、 遺伝子導入 によりヒト及びマウス elgR (h- elgR- L、 m - elgR- S) を HeLa細胞に発現させ、 種々 の Igとの結合及びその細胞内への取り込み活性の有無を検討した。
ヒ ト及びマウス elgR (h- elgR - L、 m- elgR - S) の cDNAに下記の PCRプライマーを 用いた PCRにて制限酵素サ'ィ トを組み込み、 得られた断片を発現ベクター pcDNA3-HAC [挿入される遺伝子のコード領域の C末端側に HAェピトープ配列 (YPYDVPDYA: 酉己列番号 18) が付加されるように pcDNA3 (Invitrogen) を改変した ベクター (M. Hosaka, K. Toda, H. Takatsu, S. Tori i, K. Murakami, and K. Nakayama, Structure and intracel lular local ization of mouse ADP— ribosylation factors type 1 to type 6 (ARF1 - ARF6), J Biochem (Tokyo) 120 (1996) 813-819) ] に挿入することによってヒ ト及ぴマウスの elgR cDNA発現べ クタ一を構築した。
h-elgR-L cDNA及び h - elgR M cDNA用 PCR プライマー:
フォワード : 5 ' - GGAGATCTACCATGCGGCTTCTGGTCCTGC- 3, (配列番号 19) リバース : 5 ' - CCGCTCGAGCGCTGAGACAAACTTCGAGAA - 3, (配列番号 20) ra-elgR-S cDNA用 PCR プライマー:
フォワード : 5, - GCGGATCCACCATGAGGCCTCTGGTCCTGC - 3, (配列番号 21) .
リバース : 5, -GCGTCGACCACAGAGATGAACTCAGAGAAG-3 ' (配列番号 22)
カバーグラス上に培養した HeLa細胞に FuGENE 6 transfection reagent (Roche Molecular Biochemical s)を用いてヒト及ぴマウスの elgR cDNA発現ベクターを導 入した。 48時間後に各種 Ig [ヒ ト IgAl ( λ ) 及ぴヒ ト IgA2 ( κ ) (Athens Research & Technology)、 マ ウス IgA ( λ )及びマ ウス IgM ( κ ) (ICN Pharmaceut ical s, Inc. ) 、 マ ウ ス IgG (Jackson ImmunoResearch
Laborator i es) ] を含む培地に交換してさらに 2時間 4 °C又は 37°Cで培養した。
PBSで洗浄後、 細胞を 4 %パラフオルムアルデヒ ドで固定し、 0. 1% Triton X- 100で膜を透過させ、 FITC標識した抗ィムノグロブリンサブタイプ抗体 [抗ヒ ト IgA抗体, 抗マウス IgA抗体, 抗マウス IgM抗体 (いずれも ICN Pharmaceuticals, Inc. ) , ίτιマウス IgG饥体 (Jackson ImmunoResearch Laboratori es 」 と反応させ た。 同時に、 ラッ ト抗 HA抗体 (3F10 : Roche Molecular Biochemicals)及ぴ Cy3 標識 f几ラッ卜 IgG抗体 (Jackson ImmunoResearch Laboratori es)を段階的に反 J心さ せることで発現した elgRを検出した。 観察は共焦点顕微鏡(TCS- SP2, Leica)を用 いて行った。 図 3の A〜Eは、 マウス elgR- S (m- elgR- S)を発現させた HeLa細胞、 図 3の F〜H及び I〜: [は、 それぞれヒ ト elgR- L (h - elgR - L)およびヒ ト elgR- M (h - elgR- M)を発現させた HeLa細胞における各種免疫グロブリンの取りこみの様子を 共焦点顕微鏡により撮影した写真 (6 3 0倍) を示す。 各種ィムノグロブリンの 取込みは 37°C、 1時間にて行った。 図 3に示すように、 マウス elgR発現細胞 (A〜 E) 、 ヒ ト elgR発現細胞 (F〜J) とも、 ヒ ト IgAl、 ヒ ト IgA2、 マウス IgA、 マウス IgMと結合し、 細胞内に取り込むが、 マウス IgGとは結合が認められなかった。 (3) 免疫糸且織染色(elgRの発現部位の同定)
マウス組織を 10%ホルマリン又は 1 %硫酸亜鉛/ 10%ホルマリン溶液にて固定 後、 パラフィン包埋して病理切片を作成し、 (1)で調製した抗マウス elgR抗血清 と反応させた。 抗原特異的な結合は、 ピオチン標識抗ゥサギ IgG抗体(Jackson ImmunoRes earch Laboratories) ヒ ドロぺノレオキジダーゼ標識ス hレプ卜アビジ ン、 及び FITC標識チラミ ド(いずれも Perkin Elmer)を段階的に反応させることで 検出した。 '
図 4に心筋の免疫染色像を示す。 毛細血管内皮細胞にのみ特異的に発現が認め られ、 それより太い細血管以上の血管内皮細胞には発現は認められなかった (図
中矢印) 。
同様の毛細血管内皮細胞特異的な elgRの発現が舌及び肝臓の組織切片による免 疫染色においても認められた。
以上の実験結果から、 新たに同定した elgRは毛細血管内皮細胞に特異的に発現 し、 血中の IgMや IgAをトランスサイトーシスによって経毛細血管内皮的に組織に 移行させることにより、 免疫応答の制御に役割を果たしている可能性が示唆され た。
(実施例 3 ) Fc受容体タンパク質 (elgR) に対するモノクローナル抗体
(1) モノクローナル抗体の作製
ヒト及びマウス elgR (h - elgR- L、 m - elgR- S) の cDNAに、 下記の PCRプライマー を用いた PCRにて制限酵素サイ トを組み込み、 得られた断片を発現ベクター pcDNA3-Fc (挿入される遺伝子のコード領域の C末端側にヒ ト IgGl重鎖 Fc領域が融 合して発現するように pcDNA3 (Invitrogen)を改変したベクター:図 5 ) に挿入す ることによって、 ヒ ト及びマウスの elgR細胞外領域と、 ヒ ト免疫グロブリン IgGl の重鎖の Fc領域の融合タンパク質 (elgR - Fc融合タンパク質) を産生する発現べ クタ一を構築した。
h-elgR-L cDNA用 PCR プライマー:
フォワード: 5, - GGAGATCTACCATGCGGCTTCTGGTCCTGC - 3, (配列番号 23) リバース : 5, - CCGCTCGAGTATGCGGACCATCGGGAT- 3, (配列番号 24)
m-elg -S cDNA用 PCR プライマー:
フォワード: 5, - GCGGATCCACCATGAGGCCTCTGGTCCTGC- 3, (配列番号 25) リバース : 5, -CCGGTCGACGGCCATCATGCGGACCAT-3 ' (配列番号 26)
構築した elgR- Fc融合タンパク質発現ベクターを、 FuGENE6 transfection reagent (Roche Molecular Biochemicals)を用いて 293T細胞に導入した。 96時間 後に培養上清を回収し、 凍結保存した。 回収した培養上清が 300ml程度に達した 後、 HiTrap Protein A HP Columns (Araersham Biosciences)を用いて、 elgR - Fcj¾ 合タンパク質を精製した。 精製操作には、 高性能液体クロマトグラフィー AKTA explorer 10S (Amersham Biosciences)を使用した。 精製した融合タンパク質は、
PD-10 Desalting co lumns (Amersham Biosci ences)で脱塩した後、 PBSで 24時間透 析し、 抗原タンパク質として用いた。
ヒ ト及びマウスの elgR細胞外領域に対する抗体 (抗血清) は、 精製した elgR - Fc融合タンパク質をそれぞれラッ ト (Wister、 早、 4週齢) 2匹に Foot Puds免 疫して得た。 免疫は 1週間をはさんで 2回行い、 免疫アジュバントは Titer Max Goldを用いた。 1回目の免疫から 10日後に採血した。 抗体価測定は、 抗原と同じ elgR- Fc融合タンパク質を用いて、 ヒ ト免疫グロブリ ン IgG Fc フラグメント (Jackson ImmunoRes earch)をコン卜ローノレとした ELISA法 ίこよって行った。
採血して得られた抗血清を、 マウス Myeloma P3U1細胞と融合させハイブリ ドーマ を作製し、 限界希尺法と ELISA法の組合せによりポジティブクローンのスクリ一 ニングを行った。 ^離されたハイプリ ドーマの培養上清を用いて、 ヒ ト及びマウ スの elgRを強制発現させた HeLa細胞を免疫染色して観察し、 ポジティブクローン を確認した。 その結果、 ヒ ト elgRに対するモノクローナル抗体は 7クローン (#1F6、 #1C12、 #1E1 0、 #5C8、 #16H3 #1D9、 #14C8)、 マウス elgRに対するモノク ローナル抗体は 2ク ローン(#B3A1、 #B7F11)を得た。
(2)モノクローナル抗体による elgRの免疫染色 (モノクローナル抗体の elgRに対 する特異性の確認)
力/ 一グラス上 (こ培養した HeLa糸口月包に FuGENE 6 transfection reagent (Roche
Molecular Biochemi cal s)を用いてマウスの elgR (m- elgR-S) cDNA発現ベクター を一過性に導入し fこ。 48時間後に PBSで洗浄後、 細胞を 4 %パラフオルムアルデ ヒ ドで固定し、 (1)で調製したモノクローナル抗体と反応させた。 PBSで洗浄後、
Cy3標識 マウス IgG抗体 (Jackson ImraunoReseai-ch Laboratories) と反応させ ることにより、 細胞に結合したモノクローナル抗体を検出した。 一部のサンプル では、 モノクローナル抗体の特異性を確かめるために、 さらに、 細胞の膜を 0. 1%
Triton X-100で透過させ、 実施例 2で調製した elgRの細胞内領域を認識するポリ クローナル抗体と反応させ、 PBSで洗浄後、 さらに Alexa Fluor488標識抗ゥサギ
IgG抗体 (Molecular Probes, Inc) と反応させた。 観察は共焦点レーザー顕微鏡
(TCS-SP2, Lei ca) を用いて行った。 ' elgRを導入していない HeLa細胞を同様に染色した場合 (図 6の A ) に比較して、
m - elgR- Sを導入した細胞ではモノクローナル抗体 (#B3A1) による特異的な染色 像が見られた (図 6の B ) 。 図 6の Cは Alexa Fluor488 (緑色) によるポリクロ ーナル抗体 (#B3496) の染色像を、 図 6の Dは、 Cと同じ細胞の Cy3 (赤色) に よりモノクローナル抗体の染色像を示す。 両者で同一の細胞が染色されているこ とから、 ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体はともに elgR特異的に結合し ていることがわかる。 実施例 2および 3 ( 1) で調製したしたその他のポリク口 ーナル抗体およびモノクローナル抗体でも同様の結果が得られている。 本明細書で引用した全ての刊行物、 特許及び特許出願をそのまま参考として本 明細書に み入れるものとする。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 I gA及び IgMと特異的に結合する新規な Fc受容体タンパク質が 提供される。 本発明の Fc受容体タンパク質は種々の組織、 臓器の毛細血管内皮細 胞に発現し、 IgA及び IgMを血中から組織へ移行させることによって、 抗原抗体反 応を惹起し、 免疫応答の開始を制御する。 従って、 本発明の Fc受容体タンパク質 は、 免疫監視機構の解明、 免疫調節物質の探索、 抗自己免疫疾患薬ゃ抗炎症薬な どの医薬の開発、 ドラッグデリバリーシステムの開発に有用である。 配列表フリーテキス ト
配列番号 1 9〜 2 6 :合成 DNA