JP4059404B2 - 甲状腺機能を刺激する活性を持つ抗体 - Google Patents

甲状腺機能を刺激する活性を持つ抗体 Download PDF

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Description

本発明は、自己免疫疾患の患者が持つ自己抗体の可変領域遺伝子のクローニングに関するものである。具体的には、サイロトロピン受容体に結合して甲状腺刺激活性を示す自己抗体の可変領域遺伝子に関するものである。
自己免疫疾患によって発症する甲状腺機能障害の存在が広く知られている。このような患者の血中にはサイロトロピン(甲状腺刺激ホルモン、以下TSHと省略する)の受容体(以下TRと省略する)に結合する抗体(自己抗体)が存在する。
更にこの自己抗体には、TRに結合してTSHが結合したときと同じ甲状腺刺激活性を示す抗体と、この抗体とは逆にTRに結合してTSHのTRに対する刺激活性を阻害する抗体の、少なくとも2種類の異なった活性を持つ抗体が存在していることが報告されている。
同じTRに対する自己抗体でありながら、その症状は前者では甲状腺機能の亢進として現れ、後者では甲状腺機能の低下につながる。このような背景から、前者の抗体を甲状腺刺激抗体(以下TSABと省略する)、後者の抗体を甲状腺刺激阻害抗体(以下TSBABと省略する)と呼んでいる。このTSAB活性は、TRを備えた生細胞の自己抗体による刺激に対するcAMP産生量を指標として確認することができる
なお、甲状腺の代表的な疾患であるバセドウ病は、TRに対する自己抗体が原因となって発症するとされている。特にTSABはTSHよりも長い時間にわたって甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを過剰分泌させる(非特許文献1)。
自己抗体の一般的な検出方法は、検出すべき自己抗体が認識する組織や抗原決定基のアミノ酸配列を再現した合成ペプチドを抗原として用い、これに対して結合性の抗体を検出することによって行われている。
甲状腺機能障害においても同じようなアプローチに基づいて自己抗体の検出が行われている。たとえば、ブタのTRへのTSHの結合を阻害する抗体を検出することによって自己免疫症状を診断する技術が知られている。なお、このような活性を持つ抗体は、TSH結合阻害抗体(以下TBIIと省略する)と呼ばれている。
この方法では、単にTRに対する結合活性を見ているだけなのでTSABとTSBABを区別して検出する事はできない。この理由としては、TSABにしろ、TSBABにしろ、いずれもTRへの結合活性を持つ抗体であることには変わりは無いためである。
一方、TSABを特異的に測定する方法としては、スティミュレーションアッセイが知られている(非特許文献2)。この方法ではラットの甲状腺細胞株FRTL−5を用いている。FRTL−5は、TRを細胞膜上に発現したラット甲状腺培養株で、その生育にはTSHを要求する。TSABがFRTL−5のTSH受容体と結合することによって細胞中ではアデニレートシクラーゼが活性化され、培養系にcAMPが産生される。すなわち、培養物中のcAMP濃度を比較すれば、TSAB活性を特異的に測定することができる。
この方法は確かにTSAB活性の特異的な測定を可能とする。しかし単純な免疫反応だけで構成される方法に比べて、細胞の培養操作を要求されるため操作が複雑で、しかも結果を得るまでに時間がかかるという特徴が有る。また細胞の培養条件を常に一定に保たなければ必要な精度は期待できないので、高度な培養技術が要求される分析方法といえる。
更に、活性比較の標準とすべき抗体もTSABの測定にあたって問題となる。自己免疫疾患の患者の血液を標準としたのでは、均一な品質を維持することが難しいし、量的にも安定供給は期待できない。ヒトや動物のTRを免疫原としてTRを認識する動物抗体を得る方法が考えられる。ヒトのTRをコードする遺伝子は既にクローニングされているので(特許文献1)、そのポリクローナル抗体やモノクローナル抗体を得ることが可能である。
しかし、このような方法で得た抗体は、あくまでもヒト以外の動物の免疫システムが認識した抗原決定基に対する反応性を持っている。したがってその抗体が、ヒトの自己抗体と同じ反応性を示しているのかどうかが問題となる。ましてTSABという特殊な活性を持つ抗体を安定して得ることは困難といえよう。特に標準として用いるには、できるだけヒトの自己抗体に近い反応性を持つものを使うべきであるから、たとえ刺激活性を指標にモノクローナル抗体を確立するとしても、ヒトの自己抗体と親和性やエピトープの面で等価な抗体を得られるとは限らない。
このような問題点を解消するためには、実際の自己免疫疾患を持つ患者の抗体産生細胞を形質転換して株化する方法が有効である。実際に本発明者らをはじめとしてTSABについてもこの方法を試み、エプスタインバールウイルス(以下EBVと省略する)によって形質転換したTSAB産生細胞株を樹立している(非特許文献3)。しかしこの細胞株は、大量培養が困難で標準や試薬原料としての抗体を産生させるには好ましい材料とは言えなかった。
この他にも患者から誘導された抗体産生細胞についての報告は有る。しかしこの報告はヒト−マウスヘテロハイブリドーマを利用したものである(非特許文献4)。ヘテロハイブリドーマでは染色体の脱落が生じやすく、結果としてハイブリドーマの抗体産生能が消失する現象がしばしば観察される。なお、TSABを得るためのこれまでのアプローチは抗体をコードする遺伝子のクローニングを目的としているわけではない。
この状況下で自己免疫疾患の研究を遺伝子レベルで発展させるためには、抗体遺伝子についてもクローニングしておく必要が有る。遺伝子工学的手法による抗体産生、あるいはその活性に変異を加えた抗体の開発において、遺伝子のクローニングとアミノ酸配列を含めた構造の解明が必要である。例えば抗体の親和性を改良する目的で抗体可変領域のアミノ酸を置換することがヒト化抗体作製等の過程で広く行われている。
その中でもCDR(相補性決定領域)のDNA塩基配列、そしてアミノ酸配列の解明は特に重要である。CDRは抗体可変領域の中の4つのフレームワーク(FR)に連結された状態で存在する領域である。FRの構造が抗体の間でよく保存されているのに対してCDRの変異性は大きく、抗体の特異性が可変領域の中でもCDRという特定の領域によって決定されることが明らかにされている。
しかし、たとえ自己抗体の産生細胞を得ることができ、更にそれを株化することが可能であっても、抗体遺伝子をクローニングすることは必ずしも容易なことではない。抗体分子は極めて多様性に富んでいるため、遺伝子のクローニングに大きな威力を発揮するPCR法を適用し難い。PCR法は、あくまでも塩基配列がわかっている遺伝子の増幅に有効な技術である。増幅すべき遺伝子の末端部分に相補的なプライマーを用意しなければならないという性格上、この特性は避けることができない。
その他にも、具体的な遺伝子の配列を予想できない場合であっても、クローニングを可能とする技術は知られているが、PCR法に比べて効率が悪く抗体のような多様性に富む遺伝子のクローニングを行うには不向きである。
マウスなどの非ヒト動物では、イムノグロブリンの遺伝子に関する研究が進み、その可変領域に対しても偏りの生じ難いプライマーの配列が報告されている。しかし現段階ではマウスよりもはるかに少ない情報しか得られていないヒトのイムノグロブリン遺伝子については、未だに完全にその遺伝子を増幅することは容易でないと考えられている。しかも実験動物であるマウスの遺伝子は、系統が管理されているので均一性が高く比較的取り扱いやすいといえる。
一方、遺伝的な制御を受けていないヒトの遺伝子は、遺伝的には多様性に富み実験は容易ではない。すなわち、プライマーが全ての遺伝子に対してアニールするとは限らないため、たとえスタートマテリアルがEBVでトランスフォームしたクローンであったとしても、そのクローンが産生する抗体遺伝子の情報が未知である以上、その抗体遺伝子をクローニングする作業は困難をきわめるといわざるを得ない。
特表平5−503849公報 BIOmedica Vol.1、3、pp239−243;1986 Endoclin.Vol.125、No.1、pp410−、1985 Biochem.Biophys.Res.Commun.Vol.207、No.3、pp985−993、1995 Proc.Natl.Acad.Sci.USA.Vol.79、pp6680−6684、1982
本発明は、TSABの可変領域をコードする遺伝子の提供を課題としている。本発明はまた、このTSABをコードする遺伝子の発現産物の試薬や標準物質としての応用についての提案を行う。
本発明の課題は、新たにクローニングされ配列決定した以下の抗体可変領域遺伝子、あるいはその変異体によって解決される。すなわち本発明は、TRに結合して甲状腺機能を刺激する活性を持ち、かつ配列1または配列3に示す遺伝子によってコードされるアミノ酸配列、あるいはその部分配列から選択したアミノ酸配列を含むイムノグロブリン重鎖可変領域である。
本発明はまた、TRに結合して甲状腺機能を刺激する活性を持ち、かつ配列2または配列4に示す遺伝子によってコードされるアミノ酸配列、あるいはその部分配列から選択したアミノ酸配列を含むイムノグロブリン軽鎖可変領域である。
本発明は、これらアミノ酸配列の中からCDRのアミノ酸配列を与える。
更に本発明は、これらイムノグロブリン可変領域(またはその変異体)を構成するアミノ酸配列(配列17−配列20)をコードするDNA、そのクローニング方法、そしてこれらのDNAによって得られるイムノグロブリン可変領域の組み換え体の応用を提案するものである。なお本明細書において、アミノ酸は次のように省略した。
アラニン A or Ala
アルギニン R or Arg
アスパラギン N or Asn
アスパラギン酸 D or Asp
システイン C or Cys
グルタミン Q or Gln
グルタミン酸 E or Glu
グリシン G or Gly
ヒスチジン H or His
イソロイシン I or Ile
ロイシン L or Leu
リジン K or Lys
メチオニン M or Met
フェニルアラニン F or Phe
プロリン P or Pro
セリン S or Ser
トレオニン T or Thr
トリプトファン W or Trp
チロシン Y or Tyr
バリン V or Val
配列1−4で示したDNAは、バセドウ病患者の末梢血リンパ球からEBVトランスフォームによって樹立した抗体産生細胞株に由来するものである。すなわち、配列1と配列2がTSAB活性を持つIgGクラスのヒト・モノクローナル抗体を産生するB6B7に、そして配列3と配列4が同じくTSAB活性を持つIgMクラスのヒト・モノクローナル抗体を産生する101−2に由来している。
本発明によって、TSABの可変領域をコードする遺伝子配列が提供される。この遺伝子配列をもとに、遺伝子操作によって標準や試薬に必要な抗体を安定して供給することが可能となる。遺伝子操作によって得られる抗体を生産する形質転換細胞は、EB−Vトランスフォーマントやヘテロハイブリドーマのような公知の抗体産生細胞に比べて形質がきわめて安定している。
本発明によって提供されるクローニングした遺伝子は、同じ形質転換体を高い再現性で容易に得る事を可能とする。このような本発明の特徴は、TSABを試薬や標準に用いるために商業的な供給を考えるときにたいへん有利な条件となる。これに対して公知の抗体産生細胞は、きわめて規模の大きい細胞集団の中から必要な抗体を産生する細胞をクローン化することによって得られたものなので、同じ抗体産生細胞を再び得る事は容易ではない。
本発明が提供するTSABの可変領域をコードする遺伝子は、自己免疫による甲状腺機能障害の遺伝子レベルでの研究に貢献する。本発明で明らかにされたイムノグロブリンの可変領域遺伝子の配列を基に、患者のイムノグロブリン遺伝子の解析を進めることが容易となり、結果として自己免疫症状を遺伝子レベルでとらえることが可能となる。このような遺伝子レベルでの解析は、イムノグロブリンの可変領域遺伝子の配列を明らかにすることによって初めて可能となる。
配列1〜配列4に示すDNAは、これらの抗体産生細胞株のmRNAからcDNAライブラリーを合成し、更にこのcDNAライブラリーを鋳型としてPCR法によりイムノグロブリンの可変領域をコードする遺伝子のライブラリーを得、これをクローニングすることによって単離されたものである。cDNAの合成にはヒトイムノグロブリン遺伝子をできるだけ漏れ無く拾うために、イムノグロブリン遺伝子の間で高度に保存されている領域を逆転写酵素のためのプライマーとして用いた。
またイムノグロブリンの可変領域をコードするDNAのPCR法による増幅にあたっては、多様性に富む可変領域をできるだけ偏りなく増幅するためにアダプターと、可変領域をコードするDNAの中でも高度に保存されている領域を組み合わせてプライマーとした。アダプターとは、人工的に合成したオリゴヌクレオチドで配列中にはクローニングサイトに組み込むための制限酵素の認識配列を含むものである。すなわち、クローニング用のベクターのサイトに合わせた配列を備えた任意のオリゴヌクレオチドを用いることができる。
アダプターは、cDNAライブラリーの5’側にライゲーションすることによって導入される。こうして得られたアダプター付加cDNAを鋳型として、可変領域遺伝子の上流側については重鎖、軽鎖ともに前記アダプター配列をプライマーとし、一方下流側は公知のJH領域(重鎖)、あるいはJκ領域(軽鎖)の配列から保存性の高い配列を選んでプライマーとすることで、イムノグロブリンの可変領域をコードするDNAを増幅する。
PCR法による増幅産物を制限酵素で消化し、本出願人によるイムノグロブリン遺伝子クローニングベクターpSRH(重鎖用)、ならびにpSRL−neo(軽鎖用)の対応するサイトに組み込んでクローニング後、配列決定したのが配列1−配列4の塩基配列である。またこの塩基配列をアミノ酸配列に翻訳したのが配列17−配列20に示すアミノ酸配列である。
イムノグロブリン重鎖のアミノ酸配列を示す配列17と配列19においては、N末端に19merからなるリーダー配列(「−;マイナス」表示した)が存在し、実際のイムノグロブリン可変領域を構成するのは1番からはじまるアミノ酸配列である。同じく軽鎖(配列18と配列20)においては20merからなるリーダー配列が存在し、やはり1番からはじまるアミノ酸配列で実際のイムノグロブリン可変領域が構成される。
配列17−配列20のアミノ酸配列を持つイムノグロブリンの可変領域は、配列1−配列4に示した塩基配列を備えたDNAを公知の発現系を利用して翻訳することで得ることができる。イムノグロブリン可変領域の発現については多くの報告が有るが、たとえば本出願人の報告したベクター(特開平7−135978公報)を利用すれば簡単に可変領域遺伝子を発現ベクターに組み込むことができる。
このベクターを用いれば、重鎖と軽鎖とをそれぞれが定常領域と可変領域とを備えた完全なイムノグロブリン遺伝子として1本のベクターに連結することができる。マウスミエローマ細胞株等の適当な動物細胞をこのベクターで形質転換すれば、定常領域と可変領域とを備え、しかもSS結合によって2量体構造を取った完全なイムノグロブリン分子として再構成することができるのである。宿主に動物細胞を利用しているので、糖鎖構造についても天然のイムノグロブリンに近い状態にあることが期待できる。
本発明のイムノグロブリン重鎖は、ヒト定常領域をコードする遺伝子と融合させた完全な重鎖分子であってもよい。更に軽鎖の可変領域や、更に軽鎖の定常領域をも備えた完全なイムノグロブリン分子として構成することも可能である。クローニングされた可変領域遺伝子をもとに、完全な重鎖分子やイムノグロブリンを再構成する技術は既に公知である。なお、軽鎖の可変領域遺伝子としては、イムノグロブリンの抗原結合活性の大部分を重鎖可変領域が決定していることから、任意の抗原結合活性を備えたものを利用することができる。
しかしより完全な特異性を得るためには、軽鎖可変領域もTSAB活性を備えたものを用いるのが好ましい。このような軽鎖可変領域として、前記配列2または配列4のDNAによってコードされる配列18、または配列20のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を示すことができる。
配列1および配列2は、IgGクラスのイムノグロブリンに由来するものであり、病原性に強く関与しているものと思われる。一方配列3および配列4はIgMクラスに由来している。しかしイムノグロブリンのクラスを決定しているのは定常領域であるから、本発明による可変領域遺伝子はその由来にかかわらず融合させる定常領域の遺伝子を選択することによって任意のクラスのイムノグロブリンとして構成することが可能である。このようなイムノグロブリンのクラスの変更はクラススイッチと呼ばれ、たとえば本出願人らの開示した技術(特開平7−135978公報)によって実施できる。
本発明において、可変領域が持つべきTSAB活性は公知の技術によって確認すれば良い。すなわち、アミノ酸の変異を導入した遺伝子の発現産物について、たとえば先に紹介したスティミュレーションアッセイ(非特許文献2)によってTSAB活性を確認し本発明による変異体をスクリーニングすることが可能である。本発明に含まれるTSABは、TSAB活性を持つことによってのみ特徴づけられるものであって、TBII活性の有無は問わない。
本発明はTSABの可変領域におけるCDRを構成するアミノ酸配列を提供する。すなわち配列5−配列16に示したのが、本発明によって明らかにされたTSABの可変領域を構成するアミノ酸配列をもとに、Kabat E.A.らによって既に知られている抗体のアミノ酸配列データと照合して決定したCDRのアミノ酸配列である。
各CDRはそれをコードするDNAを与えるが、特に好ましいDNAの塩基配列は配列1−配列4の塩基配列の中からこれらCDRに対応する部分を切り出した塩基配列である。本発明が明らかにしたTSABの可変領域における3つのCDRの位置について、以下にまとめる。各位置は、アミノ酸配列については配列17−配列20に示したアミノ酸配列に付した番号に、また塩基配列については配列1−配列4に示した塩基配列に付した番号に基づいて特定した。
rB6B7重鎖(アミノ酸配列:配列17、塩基配列:配列1)
CDR1;31−35番アミノ酸/148−162番塩基
CDR2;50−65番アミノ酸/205−252番塩基
CDR3;98−112番アミノ酸/349−393番塩基
rB6B7軽鎖(アミノ酸配列:配列18、塩基配列:配列2)
CDR1;24−34番アミノ酸/130−162番塩基
CDR2;50−56番アミノ酸/208−228番塩基
CDR3;89−96番アミノ酸/325−345番塩基
r101−2重鎖(アミノ酸配列:配列19、塩基配列:配列3)
CDR1;31−35番アミノ酸/148−162番塩基
CDR2;50−66番アミノ酸/205−255番塩基
CDR3;99−106番アミノ酸/352−375番塩基
r101−2軽鎖(アミノ酸配列:配列20、塩基配列:配列4)
CDR1;24−35番アミノ酸/130−165番塩基
CDR2;51−57番アミノ酸/201−231番塩基
CDR3;90−98番アミノ酸/328−354番塩基
本発明が提供するCDRはTSABの結合活性を決定する重要な領域である。また、本発明によって提供されるTSAB活性を持つイムノグロブリンの可変領域、または更にこれらを定常領域と融合させることによって得られるイムノグロブリンの完全な分子は、たとえば次のような利用分野において有用である。
利用分野1:免疫分析
本発明のイムノグロブリン可変領域は、実際の患者組織に由来するものであるので病原性に深く関与する抗体に近い反応性を備えているものと推測できる。このような抗体は、競合法やインヒビションアッセイによる免疫分析に有用である。臨床的に分析意義の大きいと思われる病原性に関連する抗体に反応性が近いので、これらの抗体を高い精度で分析することが可能となるためである。
実施例に示したように、抗体のTSAB活性はクラススイッチによって変化する場合がある。すなわち、抗原との結合特異性を決定するのが可変領域だとしても、抗体全体の生理活性に及ぼす定常領域の役割は決して無視することはできないと考えられる。したがってイムノグロブリンを可変領域のみならず定常領域を備えた完全な分子として供給できるということは、TSABという特殊な活性を持つ抗体の免疫分析において重要である。可変領域のみでは実際の試料中に存在する抗体と等価な活性を示すとは限らないためである。
アッセイフォーマットにかかわらず、本発明による免疫分析の反応原理は次のようにまとめられる。すなわち、TRに対する本発明のTSABの結合が試料中の検出すべきTSABによって阻害される程度を測定すれば良いのである。競合法であれば試薬として供給したTSABが検出すべきTSABとともにTRに結合し、その結合部位に対して競合することによって定量反応が成立する。
一方、インヒビションアッセイでは、検出すべきTSABがTRに対して先に結合することで、試薬として供給したTSABが結合すべき部位をブロックしてしまうことによって定量系が成立する。配列17〜配列20で示したアミノ酸配列で特徴づけられる可変領域を備えたイムノグロブリンはTSAB活性を持つので、このような単純な反応系によって特異的にTSABの定量を行うことができる。
TRに結合したTSABは、試薬として用いる本発明のTSABを公知の標識技術によってあらかじめ標識しておけば容易に決定することが可能である。標識には、放射性同位元素、酵素、発光物質、あるいは蛍光物質等を用いることができる。TRに結合したTSABと、結合を阻害されたTSABは、TRを固相上に固定しておけば洗浄によって簡単に分離できる。あるいはまた、遠心操作によって分離しても良い。TRのTSABの認識部位以外に結合する第二抗体によって、第二抗体(固相)−TR−TSABというサンドイッチ構造を形成させることによって分離することもできる。
本発明による免疫分析において必要となる試薬成分、すなわち標識TSABとTR抗原は、TSABの免疫分析用試薬として商業的に供給することができる。本発明による試薬の具体的な形態の例として、ポリスチレンビーズに固定したTR抗原と、酵素やラジオアイソトープ等で標識したTSABの組み合わせを示すことができる。ポリスチレンビーズへのTRのような蛋白質の固定は、物理吸着や化学結合によって行われる。またTSABの認識する部位とは異なる位置の抗原決定基を認識する抗体や、TRの糖蛋白部分と結合するレクチンを結合したポリスチレンビーズでTRを捕捉することによって固相化することもできる。
このような間接的な捕捉方法を採用するのであれば、TRは液状で供給し、TSABとの反応後にこれらの固相化試薬で捕捉するという形態の試薬も実現できる。このような試薬ではTRとTSABとがいずれも液状なので反応を早く進められる。一方酵素やラジオアイソトープによってイムノグロブリンを標識する技術も公知である。イムノグロブリンは直接標識されていても良いし、アビジン−ビオチンシステムを利用して間接的に標識することもできる。
本発明が提供するTSABの免疫学的な分析方法、あるいは分析用試薬に用いるTRは、動物組織や株化した培養細胞等から抽出したもの、あるいはTRをコードする遺伝子の発現産物等を利用することができる。動物組織としてはラットやブタの甲状腺、TRを備えた脂肪組織等を用いることができる。
他方、培養細胞には、先に説明したFRTL−5細胞(ATCC CRL−8305)が有用である。ただ本発明に用いるTRは単に抗原として用いているので、たとえばスティミュレーションアッセイに用いる場合のように生物学的な活性は必ずしも要求されない。また、一般的にいって配列17−配列20のように一定のアミノ酸配列で特徴づけられるイムノグロブリンの可変領域は、抗原分子の中でもごく限られた範囲の構造を認識しているだけなので、この抗原構造を人為的に模倣した合成化合物によってTRとすることも可能である。更に後に述べる抗イディオタイプ抗体もTSABの抗原として利用できる。
利用分野2:標準物質
本発明のイムノグロブリン可変領域は、遺伝子操作によって高度に安定な品質を実現するので、標準物質として有用である。利用分野1に説明した免疫分析において、正確な定量を行うためには安定した標準物質が不可欠である。本発明はこのような要求を満足する。
あるいは、前述のスティミュレーションアッセイのような生物学的な検定方法において、標準物質として用いるにはヒトの自己抗体と共通の活性を持つことが求められる。本発明のイムノグロブリン可変領域はこのような生物学的な検定用の標準物質としても利用することが可能である。
今後TSABの臨床的な研究を進めるためには、ヒトの自己抗体の標準物質として利用できる均質なイムノグロブリンの安定供給が求められる。遺伝子操作によって量的にも、質的にも安定したイムノグロブリンの供給を可能にした本発明のイムノグロブリンは、このような要求を満たすものである。本発明が提供するTSABを含む各種分析のための標準物質は、それ単独で流通させても良いし、あるいは他の試薬類と組み合わせてキット化することもできる。
利用分野3:甲状腺機能低下症状の改善
本発明のTSABは、甲状腺機能低下症状を改善するために用いることができる。ヒトのリンパ球に由来する本発明のイムノグロブリン可変領域は、ヒトに投与した場合でも異物として認識されにくいため、免疫システムで排除されることなく確実にTRへ到達できる。
利用分野4:TSHのシグナル伝達モデル
本発明のTSABは、TRに対してTSHと同じ甲状腺刺激活性を持っている。したがってTRにおけるシグナル伝達のモデル系の構成に有用である。TSH分子と、本発明によるTSABの分子構造を比較する事により、シグナル伝達に必要な構造の解析が期待できる。
利用分野5:TSABに起因する自己免疫疾患治療用の拮抗剤スクリーニング
本発明のTSABは、患者の体内に存在する病原性の自己抗体と同様の反応性を持っているものと推定される。したがって、生体外(in vitro)におけるTSAB阻害剤のスクリーニングに有用である。TR発現細胞を利用してTSAB活性を決定する技術は知られているので、スクリーニングすべき候補化合物と本発明のTSABの存在下でTR発現細胞を培養し、TSABのみの存在下で培養したものと比較すれば、TSAB阻害活性を指標とするスクリーニングを容易に行う事が可能である。
利用分野6:TSABの抗イディオタイプ抗体
本発明によって得られるTSABの可変領域は、抗イディオタイプ抗体を得るための免疫原として有用である。抗体の可変領域を認識する抗体は、免疫原として作用させた抗体のリガンドの立体構造を模倣していると言われている。こうして得られた抗体に対する抗体は、抗イディオタイプ抗体と呼ばれている。本発明においては抗イディオタイプ抗体の可変領域はTSABのリガンドであるTRの構造を模倣するものと考えられるから、様々な利用用途が考えられる。まずTSABの検出のための抗原として有用である。このような用途に用いるときには、抗イディオタイプ抗体を生体外でしか利用しないため、その由来はヒトに限定されない。
抗イディオタイプ抗体は、抗原としての構造のみならず細胞障害活性等の抗体としての特徴も備えていることから、治療目的にも有用である。すなわち、TSAB産生細胞を攻撃してその抗体産生を抑制するための医薬品としての用途が期待できる。このような用途に用いるときには、生体内に抗イディオタイプ抗体を導入しなければならないので、少なくともその定常領域はヒト由来のものとすべきである。
あるいは抗イディオタイプ抗体のCDRのみをヒト型の抗体のCDRと置換した、いわゆるヒト化抗体を用いれば、更に安全性の高い治療薬とすることができる。生体内に導入されたTSABの抗イディオタイプ抗体は、血液中のTSABを中和するばかりでなくTSABを産生する抗体産生細胞の表面に露出したTSABの可変領域に結合することによって細胞障害作用を発揮し、結果として病原性のTSAB産生を抑制する。
1.cDNAの合成とPCR
バセドウ病患者の末梢血リンパ球から樹立したTSAB産生B6B7株および101−2株から、PCR法によって抗体の可変領域をコードする遺伝子ライブラリーを調製した。B6B7はIgGタイプの抗体を、101−2はIgMタイプの抗体を産生するクローンで、いずれの抗体もTSAB活性を備えている。
また、101−2株は、TBII活性を持つことが明らかな患者に由来するものであるが、産生する抗体はTSABとなっている。これらのトランスフォーマントが産生するモノクローナル抗体の特性を表1にまとめた。表中のTSAB活性は、後に述べる方法によって決定したものである。なお一連の操作は公知の抗体可変領域遺伝子のクローニング技術を応用し、その概要を図1に示した。
Figure 0004059404
5×10の細胞から市販のmRNA分離用キット(Micro−FastTrack mRNA isolation kit、Invitrongen Corp.製)を用い、指示書にしたがってcDNAを合成した。Cγ、Cμ、およびCκに対して、それぞれ次の配列を持つ合成ヌクレオチドをプライマーに用いた。cDNAの合成には市販のcDNA合成キット(cDNA synthesis kit、Pharmacia Inc.製)を用いた。得られたcDNAに対し以下に示すアダプター配列をライゲーションし、更にEcoRIで消化してPCR法による増幅のためのテンプレートとした。
プライマーの配列
Cγ:5'- GAGAGAGAGAGAGAGAGCGCCTGAATTCCACGACACCGTCACCG-3'
Cμ:5'-AACGGCCACGCTGCTCGTATC-3'
Cκ:5'- GAGAGAGAGAGAGAGAGAATTCTGTAGGTGCTGTCCTTGCTGTCCTG-3'
アダプター:5'-CGATAAGCTTGGATCCTCGAG-3'
アダプター:5'-CTCGAGGATCCAAG-3'
PCR反応は、上流側は重鎖、軽鎖ともに前記アダプター配列をプライマーとし、下流側は公知のJH領域(重鎖)、あるいはJκ領域(軽鎖)の配列から保存性の高い配列を選んでプライマーとした。具体的な配列は以下に示した。
JHプライマー:5'-GGCGAATTCTTACCTGAGGAGACGGTGACC-3'
Jκプライマー:5'-GGCGAATTCTTACGTTTGATCTCCACCTTGGTCCC-3'
変性:95℃/1分、アニール:52℃/2分、伸長:72℃/2分(最初のサイクルの時のみ7分)というサイクルを、重鎖、軽鎖の遺伝子に対してそれぞれ30サイクル行った。このPCR反応によってイムノグロブリンの可変領域をコードする遺伝子のライブラリーを得ることができる。
イムノグロブリン重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子のPCR産物のEcoRI/XhoI断片(重鎖遺伝子約500bp、軽鎖遺伝子約450bp)を、公知のヒトイムノグロブリンの定常領域Cγ1(重鎖)を含むベクターpSRH、およびCκ(軽鎖)を含むベクターpSRL−neoの対応するサイトに挿入した。
この操作によって、得られたいくつかのクローンのうち、重鎖、軽鎖それぞれについて少なくとも3つの異なるクローンを次のプライマーを使いジデオキシシークエンシングキットPRISM ready reaction(アプライド社製)によって配列決定した。なお5’側のプライマーはSRαのプライマーサイトであり、3’側のプライマーにはJ−Cイントロン部分の配列を利用した。
5’配列決定用プライマー:5'-CATGAATTCTGTTCTGCGCCGTTACAG-3'
3’配列決定用プライマー:5'-TCAGAATGGAATGTGCAG-3'
更にそれぞれのベクターをHindIII/BamHIサイトのサイトでライゲーションして、最終的に重鎖と軽鎖を備えた完全なイムノグロブリン分子を発現する1本のベクターとした。このベクターをSV40のLarge T抗原を産生しているCos7細胞へエレクトロポーレーションにより導入すると、形質転換からおよそ48時間後にはアッセイ可能な量のイムノグロブリンを分泌する。この培養上清のIgG濃度を指標としてスクリーニングし、IgGクラスのイムノグロブリンを分泌するクローンrB6B7、およびr101−2を樹立した。
2.イムノグロブリン遺伝子の再構築
再構築したイムノグロブリン全分子をコードするDNAを含むベクターpSRIG−neo(20μg)でマウス・ミエローマP3X63−Ag8.653を形質転換し、10%のウシ胎児血清および1mg/mLのG418(GIBCO−BRL製)を含むRPMI1640培地で培養した。G418耐性細胞をサブクローニングしIgGの産生を指標としてスクリーニングして、高い濃度でIgGを分泌するものについてTRAB活性を測定した。
3.TRAB組み換え体の精製とTSAB検定
2.で得たTRに結合する抗体TRAB(rB6B7およびr101−2)を精製し、更にその甲状腺刺激活性を分析(TSAB検定)した。イムノグロブリン発現ベクターで形質転換した細胞を無血清培地S−CloneSF−B(三光純薬工業製、商品名)で培養し上清を集めた。150mLの培養上清を2mLのプロテインAセファロース4Fast Flow(ファルマシア製)で精製し、ポリエチレングリコールで濃縮した。これを改変ハンクス培地に対して透析し、得られた精製抗体についてTSAB活性、TBII活性を分析した。
TSAB活性は公知の方法によって分析した。45μLのバセドウ病患者血清、あるいは精製抗体を、FRTL−5細胞(ATCC CRL−8305)とインキュベートした。培養上清のcAMPレベルを市販のRIAキットで測定し、改変ハンクス培地を対照とするcAMPレベルのパーセンテージでTSAB活性を決定した。IgG非産生クローンやIgG産生環境に無い培地をコントロールとした時、正常範囲は150%以下である。
一方TBII活性には市販のTSHレセプターアッセイキット(コスミック製、商品名)を利用した。このキットは、125標識TSHの可溶化ブタ甲状腺組織に対する結合の抗体による阻害活性を測定するためのものである。正常範囲は、同じく陰性コントロールに対して10%以内である。測定は3回行った。結果は表2および図2に示した。
Figure 0004059404
rB6B7、r101−2いずれのクローンから得た遺伝子産物も高いTSAB活性を示した。なお、表2および図2中に示した196−14は、異なるcDNAライブラリーをもとに、同じ操作で得られた形質転換体による発現産物である。このクローンはrB6B7と同じ軽鎖遺伝子を持つが重鎖の遺伝子はTRABとは無関係なマウス由来の可変領域からなっている。
rB6B7とr101−2のTSAB活性は、それぞれ最大で186−302%、あるいは181−239%にも及んだ。rB6B7のTSAB活性は、スタートマテリアルであるトランスフォーマントが産生していたモノクローナル抗体のみならず、このトランスフォーマントを得た患者血清のTSAB活性とも近い値を示した。これらのことから、rB6B7は実際の患者血液中に存在する自己抗体の反応性を忠実に反映しているものと推測された。
一方IgMクラスのイムノグロブリンを産生していたトランスフォーマントからクローニングした遺伝子の産物であるr101−2は、遺伝子の再構築に伴うIgGクラスへのクラススイッチによってTSAB活性が334%から181−239%に下がった。また表2や図2に示したようにTSAB活性はIgG濃度にともなって上昇する傾向を示すが、一定の濃度を越えると値が低下している。またいずれの濃度でも明らかなTSAB活性を示すのに対して、有意なTBII活性は観察されなかった。
本発明による可変領域遺伝子の単離とイムノグロブリン遺伝子の構築のアウトラインを示す。図中、UTは非翻訳領域、Lはリーダー、Vはvariable、Dはdiverse、Jはjunctional、Cはconstant、AAAAはポリAテール、SRαはSRαプロモーター、太線はエクソン、EはEcoRI、BはBamHI、HはHindIII、XはXhoIである。 遺伝子組み換えによって得られたTSABのTSAB活性を示すグラフ。縦軸はTSAB活性(%)、横軸はIgG濃度(μg/mL)を示す。

Claims (6)

  1. 次の工程1)-4)で構成されるサイロトロピン受容体に結合する物質を免疫学的に検出する方法であって、サイロトロピン受容体と結合する標識抗体として甲状腺機能を刺激する活性を持つ可変領域が配列番号17に示すアミノ酸配列の重鎖および配列番号18に示すアミノ酸配列の軽鎖の両方を具備するrB6B7、若しくは可変領域が配列番号19に示すアミノ酸配列の重鎖および配列番号20に示すアミノ酸配列の軽鎖の両方を具備するr101−2を用いる検出方法
    1)サイロトロピン受容体抗原を用意する工程
    2)サイロトロピン受容体と結合する物質を検出すべき試料を1)の抗原と接触させる工程
    3)更にサイロトロピン受容体と結合する標識抗体を接触させる工程
    4)抗原と結合した標識抗体、または結合しなかった標識抗体に由来する標識を測定し、サイロトロピン受容体と結合する物質を検出する工程
  2. 次の工程1)-3)で構成されるサイロトロピン受容体に結合する物質を免疫学的に検出する方法であって、サイロトロピン受容体と結合する標識抗体として甲状腺機能を刺激する活性を持つ可変領域が配列番号17に示すアミノ酸配列の重鎖および配列番号18に示すアミノ酸配列の軽鎖の両方を具備するrB6B7、若しくは可変領域が配列番号19に示すアミノ酸配列の重鎖および配列番号20に示すアミノ酸配列の軽鎖の両方を具備するr101−2を用いる検出方法
    1)サイロトロピン受容体抗原を用意する工程
    2) サイロトロピン受容体に結合する物質を検出すべき試料と、サイロトロピン受容体と結合する標識抗体を同時に1)の抗原と接触させる工程
    3)抗原と結合した標識抗体、または結合しなかった標識抗体に由来する標識を測定し、サイロトロピン受容体に結合する物質を検出する工程
  3. 前記サイロトロピン受容体と結合する物質成分が、サイロトロピン受容体に結合して甲状腺機能を刺激する活性を持つ自己抗体またはサイロトロピン受容体を刺激する自己抗体の拮抗物質である、請求項1または2記載の方法
  4. 標識抗体として、配列番号1に示す塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むイムノグロブリン重鎖可変領域および配列番号2に示す塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むイムノグロブリン軽鎖可変領域の両方を具備するrB6B7、若しくは配列番号3に示す塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むイムノグロブリン重鎖可変領域および配列番号4に示す塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むイムノグロブリン軽鎖可変領域の両方を具備するr101−2を用いる請求項1〜3記載の検出方法
  5. 重鎖および軽鎖の両方を具備する標識抗体のイムノグロブリン重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR1、CDR2、CDR3)および軽鎖可変領域の相補性決定領域(CDR1、CDR2、CDR3)が、
    CDR1(配列番号5)、CDR2(配列番号6)、CDR3(配列番号7)からなる配列番号17に示すrB6B7重鎖可変領域
    および
    CDR1(配列番号8)、CDR2(配列番号9)、CDR3(配列番号10)からなる配列番号18に示すrB6B7軽鎖可変領域
    若しくは
    CDR1(配列番号11)、CDR2(配列番号12)、CDR3(配列番号13)からなる配列番号19に示すr101−2重鎖可変領域
    および
    CDR1(配列番号14)、CDR2(配列番号15)、CDR3(配列番号16)からなる配列番号20に示すr101−2軽鎖可変領域
    である請求項1〜4記載の検出方法
  6. 請求項1〜5記載のサイロトロピン受容体に結合する物質を免疫学的に検出する方法の標準物質であって、サイロトロピン受容体と結合する標識抗体として甲状腺機能を刺激する活性を持つ、配列番号1および配列番号2、若しくは配列番号3および配列番号4に示す塩基配列を発現させることによって得られる重鎖および軽鎖の両方を具備する組み換え体を含む標準物質
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