明 細 書
分布帰還型半導体レーザ、分布帰還型半導体レーザアレイ及び光モジ ール
技術分野
[0001] 本発明は、分布帰還型半導体レーザ、分布帰還型半導体レーザアレイ及び光モジ ユールに関し、特に光通信用途に利用できる分布帰還型半導体レーザ、分布帰還 型半導体レーザアレイ及び光モジュールに関する。
背景技術
[0002] 近年、テレコムからデータコムへと通信コンテンツシフトが進むな力、インターネットト ラフィックを流れる情報量は、飛躍的な増大を続けている。現在、光通信システムの 容量拡大ボトルネックは、メトロ'アクセス系領域であり、システムキーデバイスとして、 低コストな直接変調光源が求められて 、る。
[0003] そのような光源に求められる特性は、
(A) 高速変調性( > 10Gbps、即ち高 、緩和振動周波数 frが必要)
(B) 低消費電力(UnC00led、即ち高温度特性が必要)
(C) 低電圧'低駆動電流
(D) 広波長域対応(1. 3 m帯一 1. 55 m帯)
であり、これらの要求に応えられるレーザとして、(1)直接変調 DFBレーザ、(2)直接 変調 面発光レーザ (VCSEL)、 (3)直接変調 短共振器 FPレーザ等が研究されて いる。
[0004] 例えば、(1)の直接変調 DFBレーザでは、非特許文献 1に、 1. 3 μ m帯で共振器 長(利得発生領域長) 170— 300 μ mの InGaAlAs系 DFBレーザが報告され、共振 器長 170 mを用いることで、 85°Cでの緩和振動周波数 19GHzが得られている。ま た、非特許文献 2においては、同じく 1. 3 m帯において、ドライエッチング回折格子 を用いて、共振器長 200 mの DFBレーザで、 115°Cで 12. 5Gbpsの変調を実現 し、実用上十分な性能を得ることができている。
[0005] また、(2)の VCSELにつ!/、ては、まず、短波系 VCSEL (780nm— 980nm帯等)
で lOGbpsを超える高速変調特性が実現され (例えば、非特許文献 3参照)、より長 波長化を目指した研究開発が進められて!/ヽる (例えば、非特許文献 4参照)。
[0006] そして、(3)の FPレーザについては、開発の歴史も古ぐドライエッチングによる端 面形成技術 (例えば、非特許文献 5参照)を用いて究極的な極短共振器化の試みが なされ、非特許文献 6では、共振器長 20 m程度のレーザも報告されている。一方、 構造最適化も進められており、非特許文献 7にあるように、共振器長 200 /z mで両端 面 HRコーティングを施したレーザで、 85°Cで 11. 9GHzの frを実現した例もある。ま た、共振器長を 60 m程度以下とすることで、単一モード性を向上させる手法も開示 されている(例えば、特許文献 1参照)。
[0007] 他に、 DBRレーザにぉ ヽて共振器長 (利得発生領域長)を短くし、電流注入による 波長チューニング時のモードポップを抑制したり、低閾値発振や高速応答性を満足 したりする構成が開示されている (例えば、特許文献 2参照)。
[0008] なお、半導体レーザにモノリシックにモニタ PD (フォトダイオード) ^^積する構成は 、特許文献 3に開示されている。
特許文献 1:特許第 2624140号公報
特許文献 2:特開 2003— 46190号公報
特許文献 3:特許第 2545994号公報
非特許文献 1 : M. Aoki 他, "85°C-10Gbit/s operation of 1. I nGaAlAs MQW-DFB laser", ECOC2000 vol. 1, p. 123—124. 非特許文献 2 :K. Nakahara 他, "115°C, 12. 5-Gb/s direct modulatio n of 1. InGaAlAs-MQW RWG DFB laser with notch-free grating structure for datacom applications, , OFC2003 PDP40. 非特許文献 3 : G. Shtengel他, "High— Speed Vertical-Cavity Surface Emitting Laser, " IEEE Photonic. Technol. Lett. , 1993. , vol.
5, no. 12, p. 1359-1362
特許文献 4: A. Ramakrishnan 他, "Electrically pumped 10 Gbit/s
MOVPE— grown monolithic 1. 3 ^ m VCSEL with GalnNAs active region, IEE Electronics Letters, 2002. , vol. 38, no. 7
非特許文献 5 : M. Uchida 他, "An AlGaAs Laser with High— Quality Dry Etched Mirrors Fabricated Using an Ultrahigh Vacuum In Sit u Dry Etching and Deposition Processing System, " IEEE J. of Q uantum Electron. , 1988. , Vol. 24, no. 11, p. 2170—2176 非特許文献 6 : T. Yuasa 他, "Performance of Dry— etched short cavity GaAsZ AlGaAs multiquantum— well lasers, " J. Appl. Phys. , 19 88. , Vol. 63, no. 5, pp. 1321—1327
特許文献 7 :T. Aoyagi 他, "Recent progress of lOGb/s laser diod es for metropolitan area networks, " SPIE, 2001. , vol. 4580, APOC 2001, Beijing, China
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] [1]課題の説明
このように、 ( 1)の直接変調 DFBレーザ (共振器長 (利得発生領域長) L > 170 m 程度)では、ほぼ実用レベルの特性が得られてきている。しかし、実際の使用を考え ると、まだまだ駆動電流が大きぐ lOGbps以上の超高速変調で、数十 mAの電流を 変調させうるドライバ ICを必要としている。つまり、これまでの直接変調 DFBレーザで は、駆動電流が大きい(> 50mA)が故に、 ICへの負担が大きいという課題が残存し ているのである。
[0010] これに対して、(2)の VCSELは、低駆動電流化(閾値電流 Ith< lmA、駆動電流 I op < 10mA)が可能なデバイスであり、 (1) の直接変調 DFBレーザに代わる次世 代光源として期待されている。し力しながら、共振器長があまりに短いため、発振させ るためには、低損失の高反射ミラーを作り込む必要があり、ミラー面に光学損失を発 生させるドーピングを十分行うことが出来ない。そのため、抵抗が高くなり、駆動電圧 が高 、(3V以上必要) t 、う問題がある。
[0011] 更に、共振器体積があまりに小さいため、光出力が低いこと(2mW以下)や、別の 問題として、長波長化が困難なこと (波長 1. 34 mを越えることが困難)、も大きな課 題として存在している。
[0012] (3)の FPレーザは、比較的容易に短共振器ィ匕が図れるが、たとえ、非特許文献 6 のように、 20 m程度まで極短共振器化したとしても、 VCSELレベル(く数 m)ま で超短共振器ィヒできなければ、 GHz以上の超高速変調で 10km程度の伝送に耐え うるに十分な"動的"単一モード性、チヤ一ビング特性を得ることはできない。
[0013] このように、上記三つのタイプのレーザは、基本的に、それぞれが課題を内在して いるといえる。そして、ここまでの説明から、上記課題の解決策の糸口として、次のこ とが考えられるだろう。即ち、極短共振器 FPレーザの"動的"単一モード性を、何らか の手段で向上させることができれば、 VCSELを凌駕し、そして DFBレーザをも凌駕 しうる特性の超高速直接変調光源が実現できる、ということである。
[0014] では、 "動的"単一モード性の向上策は何か?類推される、最も単純な方法は、 DF Bレーザの共振器長 (利得発生領域長)をもっと短ぐ但し、 VCSELよりも長い共振 器長で、且つ、十分な単一モード性と低閾値電流特性を両立できる構造を見いだす 、ということであろう。確かに、これができれば上記(1)一(3)の問題を全て解決できる はずである。しかし、従来の結合係数 κ = 50cm— 1程度の DFBレーザ(両端面 AR- AR、又は HR— AR構造)を、単に短共振器ィ匕していくことを考えると、この場合は、著 しい閾値電流の上昇を招くため、実際の使用には耐えられない。即ち、非特許文献 7 でも述べられて 、るように、回折格子を有する DFBレーザの極短共振器ィ匕を考える 場合には、少なくとも閾値電流低減を図るため、極めて大きな κの導入が必要不可 欠なのである。しかし、そのような高 κ構造で、低閾値電流特性と高い単一モード安 定性の両立を図れる構造が存在するかどうかは不明であり、そもそも両立が可能かど うかも明らかではな力つた。なぜなら、極めて大きな κの導入は、回折格子反射率の 波長依存性が平坦ィ匕するということを意味しており、単一モード性が悪ィ匕するからで ある。その結果、 DFBレーザの短共振器ィ匕の試みは、 2003年 7月現在においても、 170 m程度が下限であった。
[0015] なお、特許文献 2には、共振器長 (利得発生領域長)が 以上 200 /z m以下 のレーザが開示されている力 このレーザは、 FP活性領域の外側にのみ回折格子を 付与した DBR構造である。 DBRレーザは、 DFBレーザよりも基本的に単一モード安 定性そのものが悪いため、我々の目的である超高速変調に用いるには安定性が十
分とはいえない。また、特許文献 2の基本構成においては、活性領域に多モード導 波路 (MMI)を用いる必要があるため、その部分に回折格子を描画することができず 、我々の提案するように DFBレーザィ匕することも不可能である(仮に MMI領域に回 折格子を形成した場合、多モード導波路なので、カゝえって多モード発振してしまうた め)。
[0016] [2]発明の目的
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、上記(1)一(3 )のタイプのレーザにおける課題を全て解決すること、即ち (I)低閾値電流 (低駆動電 流)特性、(II)高単一モード特性を両立し、更に (III)高 fr特性、(IV)高温度特性、 ( V)広い波長域への対応を可能にすることである。即ち、従来の直接変調 DFBレー ザ、 VCSEL、 FPレーザの特性を凌駕しうる特性を有する極短共振器 (利得発生領 域が極短!、)分布帰還型半導体レーザ (DFBレーザ)を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0017] [ 1]発明の特徴
本発明の分布帰還型半導体レーザは、レーザ光の利得を発生させる利得発生領 域と、該利得発生領域の内部に形成された回折格子と、を備える分布帰還型半導体 レーザにおいて、前記利得発生領域を挟む前後 2つの端面のうち前端面の反射率 は 1 %以下に設定されているとともに、前記 2つの端面のうち後端面側力 前側を見 た反射率は 30%以上に設定され、前記回折格子の結合係数を κ、前記利得発生領 域の長さを Lとすると、 κは 100cm— 1以上に、 Lは 150 μ m以下に、それぞれ設定さ れ、モード間利得差を Δ α、閾値利得を gthとすると、 Δ a Zgthが 1以上となる κとし の組み合わせを用いて 、ることを特徴として 、る。
[0018] ここで「利得発生領域を挟む前後 2つの端面のうち後端面側力 前側を見た反射 率」とは、「利得発生領域を挟む前後 2つの端面のうち後端面の反射率」である場合( 利得発生領域の後方側に反射機能領域を備えて!/ヽな!ヽ場合)と、「利得発生領域を 挟む前後 2つの端面のうち後端面による反射に加えて、利得発生領域の後方側に配 された反射機能領域 (反射器)からの反射を含んだ反射率」である場合がある。なお 、「利得発生領域の前端面」は、レーザ光の射出端面である。
[0019] また、モード間利得差 Δ aとは、基本モードと隣接モードとのミラー損失の差であり 、閾値利得 gth= (内部損失 a i +ミラー損失 a m)である。
[0020] なお、本発明の分布帰還型半導体レーザは、従来と比べて利得発生領域長が極 短い分布帰還型半導体レーザ (DFBレーザ)である力 特に、当該 DFBレーザの後 方に反射機能を構えていない場合 (例えば、図 7、図 15)には、利得発生領域長 = 共振器長であるため、「極短共振器 DFBレーザ」と表現することができる。他方、 DF Bレーザの後方に反射機能を構えている場合 (例えば、図 16)には利得発生領域長 =共振器長とはならないため、この場合も含めて、本発明の分布帰還型半導体レー ザを「利得発生領域長が極短 、DFBレーザ」或 、は「極短 、利得発生領域長の DF Bレーザ」と表現することがある。
[0021] 本発明の分布帰還型半導体レーザにお!ヽては、結合係数 κと利得発生領域長 と の積( K L値)が 1以上 3以下であることが好ましい。
[0022] 本発明の分布帰還型半導体レーザにおいては、 Δ a Zgthの利得発生領域長 Lへ の依存性をプロットした場合に Δ a Zgthがピーク値となる利得発生領域の長さを Lp とすると、前記利得発生領域の長さ Lは Lp以下であることが好ま 、。
[0023] 本発明の分布帰還型半導体レーザにおいては、前記回折格子が、(1)利得結合 構造であるか、(2)損失結合構造であるか、(3)利得結合、損失結合及び屈折率結 合のうちの 2つ或いは 3つが混在する構造である力、又は、(4)屈折率結合構造で且 つ λ Ζ4シフト構造を有して 、ること、が好まし 、。
[0024] 特に、回折格子が、屈折率結合構造で且つ λ Ζ4シフト構造を有する場合は、該 λ Ζ4シフト位置が、前記利得発生領域の前後方向の長さを 100%としたとき、該利 得発生領域の前端より 75%士 5%後方の位置とされて 、ることが好ま 、。
[0025] また、本発明の分布帰還型半導体レーザにぉ ヽては、前記利得発生領域の後端 面がエッチングにより形成され、当該分布帰還型半導体レーザを含む素子全体 (つ まりワンチップ)の前後長は 150 μ mよりも長!、ことが好まし!/、。
[0026] この場合、前記素子は、前記エッチングにより形成された端面ギャップを介して当 該分布帰還型半導体レーザの後方側に集積された他の機能領域を含む構造とされ て 、ることも好まし 、。
[0027] カロえて、これらの場合、前記他の機能領域が、受光機能を有することを好ま 、例 とする。
[0028] また、前記他の機能領域が受光機能を有する場合、その前端面が、前記利得発生 領域の後端面に対し傾斜状態に形成されていることが好ましい。
[0029] また、前記他の機能領域が、前記利得発生領域側への反射機能を有することも好 ましい。すなわち、この場合に、「利得発生領域を挟む前後 2つの端面のうち後端面 側から前側を見た反射率」 「利得発生領域を挟む前後 2つの端面のうち後端面に よる反射に加えて、利得発生領域の後方側に配された反射機能領域からの反射を 含んだ反射率」となる。
[0030] また、本発明の分布帰還型半導体レーザにぉ ヽては、前記利得発生領域の後端 面の反射率が 90%以上に設定されて 、ることが好ま 、。
[0031] 具体的には、例えば、前記利得発生領域の後端面は、該後端面に高反射膜が設 けられたことにより 90%以上の反射率とすることができる。
[0032] この場合、前記高反射膜には、前記利得発生領域内より光を導出させるための光 導出用窓が形成されて ヽることが好ま ヽ。
[0033] また、本発明の分布帰還型半導体レーザにぉ ヽては、前記利得発生領域を構成 する材料が、 Al、 N及び Sbのうちの少なくとも何れ力 1つを含むことが好ましい。
[0034] また、本発明の分布帰還型半導体レーザの直列抵抗は 50 Ω ± 10 Ωであることが 好ましい。
[0035] また、本発明の分布帰還型半導体レーザアレイは、本発明の分布帰還型半導体レ 一ザをアレイ状にモノリシックに備え、且つ各分布帰還型半導体レーザの波長が相 互に異なることを特徴として 、る。
[0036] また、本発明の光モジュールは、本発明の分布帰還型半導体レーザ又は本発明の 分布帰還型半導体レーザアレイを備えることを特徴としている。
[0037] [2]作用
(1)単一モード安定性指標の導出
本発明では、まず、極短共振器の (利得発生領域が極短い)分布帰還型半導体レ 一ザ (DFBレーザ)の単一モード安定性を評価するのに必要な指標の導出から説明
しなければならない。なぜなら、本発明の DFBレーザを従来と同一の指標で考えるこ とは不適切だ力 である。
[0038] 従来、 DFBレーザの単一モード安定性を量る指標としては、実験的には、副モード 抑圧比(Side Mode Suppression Ratio、 SMSR、 dB単位である)が広く用いら れてきており、また解析では、より直接的に理解できるパラメータとして、基本モードと 隣接モードとのミラー損失の差である Δ a [cm— 1]、または Δ aに共振器長 (利得発 生領域長) Lを乗算した Δ a 'Lが用いられてきた。この指標は、従来の共振器長 L = 200— 600 μ m程度の DFBレーザについて考える場合には、過去の実験的裏付け (実験的に得られる単一モード歩留まりと設計パラメータとの対応)等があつたため、 十分目安となる指標であった。しかし、本発明のように、従来にないほどに極短共振 器ィ匕をは力る DFBレーザの構造を最適なものにするためには、同一の指標で考える ことが、そもそもできない。
[0039] 例えば、 L = 250 μ mの通常の DFBレーザに対して、十分な単一モード安定性を 得るために必要な Δ a 'Lが 0. 5だったとする。この場合に、同じ 0. 5を Ι^= 50 /ζ πι の DFBレーザで実現するために必要な Δ αを、 Δ a 'Lを指標として導くならば、 L = 250 μ mと比べて 5倍の Δ aが要求されることになつてしまうが、これは到底正しい とは考えられない。また、基本的に、高 κの導入 (即ち、ミラー損失曲線が平坦ィ匕し、 Δ aは小さくなる傾向を生じる)が必要な、利得発生領域が極短い DFBレーザの単 一モード安定性を考えるために、 Δ αのみを用いることにも疑問がある。
[0040] そこで、本発明者は、まず、極短 ヽ利得発生領域を有するレーザに対して十分適 用でき、且つデバイスパラメータとの相関が明確な、単一モード安定性を示す指標の 導出を行った。その為に、 SMSRの基本式に立ち返り、見直しを行った。
[0041] SMSRの式は、以下の(1)式のように、主モード(波長 λ θ)と、次に強い副モード(
=隣接モード、波長 λ 1)との光出力 Ρ ( λ η)の比で表される。
[0042] [数 1]
Ρ(λο)
SMSR = (1)
Ρ(λι)
[0043] また、それぞれの光出力は、以下の(2)式で表される。
[0044] [数 2]
Ρ(λη) = Fl Vg CC ml, Λ n)Np^ Λ n hvVp (2)
[0045] 上記の(2)式において、 Fl:片側の端面出力 Z全光出力、 vg:群速度、 am:ミラ、 ロス、 Np:光子密度、 h:プランク定数、 Vp:共振器の体積である。
[0046] そして、 SMSRの式は以下の(3)式で表すことができる。
[0047] [数 3] gth,o Aat + Ag
SMSR = - 1 (3)
gth,1 8th, 1 · $sp ith.O
[0048] ここで、 gth:閾値利得、 Ith:閾値電流、 j8 sp:自然放出光係数であり、 gthは内部損 失 a iとミラー損失 amとの和である。添え字の 1、 0は、 0が主モード、 1が副モードを 意味する。 SMSRは、閾値電流との比である iZlth, 0を固定すれば利得と損失の関 数であり、利得発生領域長 Lには依存しない。ここで、利得が周波数 (つまり波長)に 依存しな!、( Δ g — 0)と近似すると、 SMSRの式は、次の(4)式のように変形する ことができる。
[0050] 即ち、 SMSRは Δ a Zgth,0の関数として表せることを意味している。
[0051] ここで、図 1に a i= 20cm— j8 sp = 5 X 10— 5としたときの SMSRの Δ a Zgth依存 性を示す。同図から、 SMSRは、 Δ a Zgthが大きくなるほど増大し、単一モード安 定性が高くなることがわかる。また、 SMSRは、 Δ a Zgth力 力 1に力けて急激に 増大するが、 1以上の領域では飽和傾向にあり、緩やかに増加することもわかる。 Δ a /gth = 1の物理的意味は、副モードが発振するためには、主モードの発振に必 要な利得の 2倍の利得が必要であることを意味している。例えば、 lZlth= 5のとき、 Δ a /gth = 1の SMSRは、 46dBであること力ら、 Δ a /gth> 1の範囲では、高い 単一モード安定性が期待できる。この新たに見いだした" Δ a Zgth"というパラメータ は、従来、単一モード安定性指標として用いられてきた Δ aを分子に有し、且つ閾値 電流に直結する gthを分母に有しているため、デバイス構造パラメータとの相関が非 常にわ力りやす ヽ指標と ヽえる。利得発生領域長が極短 ヽ DFBレーザを考えるため には、この指標をこそ用いなければならな 、と考える。
[0052] よって、本発明では、 Δ a Zgthというパラメータを単一モード安定性を量る指標とし て用いる。そして、利得発生領域長が極短い DFBレーザにおいて、 Δ a Zgthが 1以 上となる構造こそ力 高 、単一モード安定性が得られる構造であると 、うことを見 、だ したわけである。以下では、このように高い単一モード安定性と低閾値電流特性を両 立できるデバイス構造が、どのような構造である力、具体的に説明する。
[0053] (2)共振器端面反射率 (利得発生領域を挟む前後 2つの端面の反射率)につ 、て 単一モード安定性向上を考える上で、最初に考えるパラメータは、共振器の両端面 の反射率、及び λ Ζ4シフト位置である。 DFBレーザで最も高い単一モード安定性 を得るには、両端面を低反射率 (ARM匕 (反射率は 1%以下)することである力 利得 発生領域長が極短い構造で低閾値電流化するためには、いくら高い κの回折格子 を導入するといえども、回折格子の反射率だけでは、基本的に反射率が不足するた
め、利得発生領域を挟む前後 2つの端面のうち、少なくとも片端面は、劈開端面 (R 一 30%)以上に高反射率 (HR)化する必要がある。つまり、 1%以下の AR端面と、 3 0%以上の端面が必要と考えられる。更に、 30%側の端面反射率を、誘電体多層膜 や金属膜等の高反射膜により高反射化させ、より高い 90%以上にすることができれ ば、低閾値電流化には極めて有効である。
[0054] なお、ここで、利得発生領域の後端面側については、該後端面単体で 30%以上( 好ましくは 90%以上)の反射率を有していても良いが、利得発生領域の後方に配設 された反射機能領域力 の反射分を含めることによって、このように 30%以上 (好まし くは 90%以上)の反射率を実現することとしても良!ヽ。
[0055] 加えて、このような構造 (利得発生領域を挟む前後 2つの端面のうち前端面の反射 率は 1%以下に、後端面側力も前側を見た反射率は 30%以上にした構造)で、しか も高い単一モード歩留まりが得られる構造を見いだすことは、重要であろう。もちろん 、従来の共振器長(一 300 m)の DFBレーザに対しては、このような非対称な端面 構造の解析は、既に多くの報告がなされており、高い単一モード歩留まりを得るため の指針も明らかにされている。しかし、本発明のような極短い利得発生領域の DFBレ 一ザについても同様の指針が当てはまるかどうかは不明であったため、 Δ a Zgthパ ラメータを用いて、その検証を行った。
[0056] 計算した構造は、(1)非対称 λ Ζ4 ( λ Ζ4位置は、利得発生領域を前後方向にお Vヽて 25: 75の比に分けた場合の HR側 25の位置)で HR— ARの各反射率が(90%— 0%)の構造、(2) λ Ζ4シフト無しの HR— ARの各反射率が(90%— 0%)の構造、( 3) λ Ζ4シフト無しの HR— CLの各反射率が(90%— 30%)の構造である。なお、通 常の(共振長が 200— 600 /z mの場合) DFBレーザでは、(1)の構造が最も高い単 一モード歩留まりが得られることが解っている。実際に計算に用いたパラメータは、 L = 50 、 κ
実効屈折率 n= 3. 226、回折格子周期 203. 04nm、キ ャリア寿命 τ s = 5 X 10—
9s、内部損失 a i = 20cm—
1そして j8 sp = 5 X 10—
5とした。
[0057] 単一モード歩留まりは、 HR端面位相を 0— πまで 8等分、 CL端面位相を 0— πま で 4等分して得られる合計 32個の素子におけるそれぞれの Δ a Zgthを計算により 求め、その求めた値力 ^以上となる素子の割合で評価した。図 2に計算結果を示す。
[0058] 図 2から分力るように、本発明のような極短共振器 DFBレーザにつ!、ても従来の D FBレーザと同様の傾向が見積もられ、非対称 λ Ζ4構造では、最も良い 59%の歩 留まりが得られた。一方 HR— CL構造では、ミラー損失 a m自体の大きさは、非対称 λ Ζ4構造より小さな値が得られたのだが (即ち閾値電流は小さくなる)、 Δ a /gth > 1を満たす結果は得られず、歩留まりは 0%となった。以上の結果から、本発明のよ うな極短い利得発生領域長の DFBレーザにおいても、少なくとも、通常の DFBレー ザと同様に利得発生領域を 25: 75の比に分けた非対称 λ Ζ4構造は、高単一モー ド歩留まりが得られる基本構造として有効であることが確認された。なお、非対称 λ Ζ 4構造を有効とするために好まし 、 λ Ζ4シフト位置の許容ずれは、例えば ± 5%程 度以内である。
[0059] 以上では、本発明の分布帰還型半導体レーザ (DFBレーザ)の回折格子が、屈折 率結合のみ力もなる場合について説明した。その場合、 λ Ζ4シフトの導入が有効で あり、利得発生領域内における λ Ζ4シフト位置を 25: 75の位置にすることが有効で あることを示した。但し、その他にも、回折格子が、利得結合、もしくは損失結合、もし くは利得結合や損失結合や屈折率結合が混在する回折格子となって!/ヽる場合は、 λ Ζ4シフトの導入無しで、同様の効果 (高単一モード歩留まり)を得ることが出来る。
[0060] これらのうち、利得結合構造力もなる回折格子、損失結合構造からなる回折格子、 及び、屈折率結合構造で且つ λ Ζ4シフト構造を有している回折格子は、何れも理 論的な単一モード歩留まりが 100%となる。また、利得結合、損失結合及び屈折率結 合のうちの 2つ或いは 3つが混在する構造の回折格子の場合には、理論的な単一モ ード歩留まりが 100%には達しないものの、それに近い歩留まりを得ることも可能であ り、 λ Ζ4シフト構造以外の純粋な屈折率結合構造の場合よりも格段に単一モード歩 留まりが向上する。
[0061] 次に、実使用を考えた場合、どのような利得発生領域長で、どのような結合係数を 用いると、上記のような λ Ζ4シフトや端面構造で、更に高い単一モード安定性と低 閾値電流特性を両立できるか、につ 、て説明する。
[0062] (3)結合係数 κ、利得発生領域長 (共振器長) Lにつ ヽて
ここでは、利得発生領域長が極短い DFBレーザの"単一モード安定性"に着目し、
結合係数 K、利得発生領域長 Lの最適構造の導出を行う。ここで、 Δ a Zgthという 指標は、原理的に、内部損失 a iというパラメータを含んでおり、 a i依存性についても 考えなければならない。 a iは、レーザを作製する場合に活性層の層厚やドーピング 濃度によって、下限として数 cm— 1、上限として 25cm— 1程度の値をとる。よって、こ の範囲で検討する必要がある。
[0063] 利得発生領域長が極短い DFBレーザの計算モデルを図 3に示す。 HRとして 90% 、 ARとして 0%の反射率を考え、 L1 : L2 = 25 : 75を用いた。
[0064] まず図 4に、 a iが上限の 25cm— 1の場合にお!、て、種々の κに対して、 Δ a /gth の利得発生領域長 Lへの依存性を調べた結果を示す。従来の直接変調 DFBレーザ の κは 50— 60cm-l程度である力 例えば κ = 50cm— 1では、どのような利得発生 領域長 Lに対しても、 Δ a Zgthは 1以下しか得られない。また、 K = 50cm— 1程度の 場合は、 Δ a /gthの利得発生領域長依存性は、なだらかであり Lに鈍感である。こ れに対して、 κが 100cm— 1以上で、利得発生領域長が 150 /z m以下の場合、 Δ a Zgthが 1を越える領域が存在する。典型的には、 100cm— 1以上の高い κを有する D FBレーザでは、 κが大きくなればなるほど、より利得発生領域が短くなる側に Δ a / gthが 1を越す領域が存在し、しカゝもピークを持つことがわかる。この 1を越す領域は、 高 κほど利得発生領域が短くなる側にシフトし、且つピークの値自体も大きくなる。つ まり、 κを大きくしつつ、利得発生領域の短尺化を行う場合、 A a Zgthが鋭いピーク を呈するため、精密な利得発生領域長しと κの組み合わせを用いる必要があることを 意味している。
[0065] ここで明らかになつたことは、 a iが上限値と考えられる 25cm_1程度の場合でも、 κ を 100cm— 1以上とし、 Lを 150 m以下とすることで、 Δ α Zgth > 1の領域を得ること ができる、ということである。
[0066] 次に、図 5に、 a iが下限の 5cm— 1の場合において、種々の κに対して、 Δ a /gth の利得発生領域長 Lへの依存性を調べた結果を示す。このとき、従来の κ = 50cm" 1の場合は、利得発生領域長 Lが 150 μ m以上で Δ a Zgth > 1を得ることができる。 しかし、利得発生領域長 Lが 150 /z m以下では、 Δ a Zgthは 1以下となる。しかし、 κを 100cm— 1以上とすることで、 Lが 150 μ m以下の領域の Δ a Zgthを 1より遙かに
大きくすることができる。
[0067] このように、 κを 100cm— 1以上とし、 Lを 150 μ m以下とする構成は、利得発生領域 長が極短!ヽ DFBレーザにぉ 、てこそ、高 、単一モード安定性を得る上で有効な組 み合わせということができ、内部損失が数 cm— 1程度の下限から 25cm— 1程度の上限 に亘る広い範囲で有効である。そして、ある内部損失 a iに対して、利得発生領域長 Lの下限長は、 Δ a Zgthが 1以下になる長さとして規定することができる。
[0068] ここで、上記、 κと Lの組み合わせについて、もう一つ考慮しなければならない効果 がある。それは、閾値電流以上の駆動状態において軸方向空間ホールバーユング 現象にともなう単一モード安定性劣化である。軸方向空間ホールバーユング現象は 、基本的に利得発生領域内の軸方向光強度分布に依存している。そして、端面構造 (AR— HR)、 λ Ζ4シフト位置が決められた DFBレーザの場合、光強度分布は、結 合係数 κと利得発生領域長 Lとの積( κ L)の絶対値のみで決定される。軸方向空間 ホールバー-ングの影響を抑制し、より安定な動作を実現するためには、 K Lの値は 、 1以上 3以下の範囲に設定すると良い。
[0069] (4)閾値電流について
ここでは、 "低閾値電流特性"との両立について考え、より"低駆動電流化"に有効 なパラメータを絞り込む。即ち、 "安定な単一モード特性"が得られ、且つ、 "低閾値電 流特性"が得られるデバイスパラメータを見いだす。
[0070] 図 6に、 a i= 20cm— 1において、種々の κに対して、 Δ a /gth≥ 1を満たす Lのみ に対して、閾値電流 (Ith)を計算した結果を示す。
[0071] κ = 50cm— 1では、 、かなる利得発生領域長でも Δ a /gth≥ 1が得られな!/、が、 κ = 50cm— 1でプロットしているグラフは、従来の DFBレーザ構造のリファレンスとして 示している。
[0072] また、図 6の各曲線上に点で示したポイントは、各 κに対して Δ a Zgthがピークと なる利得発生領域長 Lを示している。計算結果から、閾値電流は、ほぼ Δ a Zgthが ピークとなる利得発生領域長 Lで最小となることがわ力つた。また、同じ Lでも κが大 きくなるほど閾値電流は小さくなり、 κ = 300cm— 1では、 Ref構造の 1Z3以下まで低 い閾値電流が見積もられた。
[0073] 利得発生領域長が極短い DFBレーザにおいて閾値電流が低減される理由は、(1 ) Lが短い領域では、体積縮小により絶対値として発振に必要な電流が下がる、 (2) κが大きい構造では、高い反射率が得られるため、閾値利得が下がり、閾値電流が 下がる、という二つの理由が考えられる力 高い緩和振動周波数 frを得るためには、 体積縮小効果は極めて有効であるので、高 fr特性まで含めて考えると、最適な利得 発生領域長は、 Δ a Zgthがピークとなる共振器長以下で、 Δ a Zgth> lが得られ る範囲ということができる。
[0074] (5)利得発生領域長が極短い DFBレーザの利点をより増大させる、その他の構造 について
ここでは、結合係数 κと利得発生領域長 Lの値の組み合わせ等に加えて、更に素 子特性を向上させる上で有効な、利得発生領域長が極短 、DFBレーザの構造につ いて説明する。
[0075] 本発明では、利得発生領域長を 150 μ m以下と、利得発生領域長の極短尺化を 図っている。このような構造の場合、従来のように両端面を劈開することは、極めて困 難である。また、他にもハンドリング問題がある。つまり、たとえ劈開ができたとしても、 分布帰還型半導体レーザ (DFBレーザ)を含む素子全体の長さが 150 μ m以下であ れば、モジュール等へ搭載する場合に、ハンドリングが極めて困難になる。しかし、利 得発生領域の前端面は、 1 %以下に低反射化しなければならないため、無反射コー ティングを行う関係上、フラットな劈開面とすることが望ましい。つまり、片端面は劈開 面としなければならな 、のである。
[0076] このような状況を鑑み、本発明では、反射率 30%以上が必要な利得発生領域後端 面の形成にエッチングを用いる。高反射側端面は、その形状が多少凸凹していたと しても、 30%以上の反射率を実現するためのコーティングは十分可能だ力もである。 高反射膜には、例えば、電流注入用の金属電極膜等を用いることもできる。エツチン グで裏側端面を形成することにより、 DFBレーザの利得発生領域長そのものは 150 m以下に維持し、素子全体の長さ(前後長さ)は 150 mより長ぐハンドリング装 置の能力に応じて適当な長さにする。適当な長さとは、例えば 170 m程度以上で める。
[0077] エッチングで後方端面を形成することは、もう一つのメリットを生む。すなわち、他の 機能領域の集積化である。本発明の場合、 DFBレーザ領域長は、 150 m以下で あり、素子長は、ハンドリングを考えて 150 mより長ぐ従来の単機能光源程度の長 さにするわけであるから、その余分な長さの領域に、別の機能領域を集積できれば、 より高機能な集積素子を小さいサイズで実現でき、素子の高付加価値ィ匕がはかれる 。本発明では、例えば、エッチングにより形成された端面ギャップを介して集積する他 の機能には、モニタ用受光機能がある。このとき、集積された機能領域力も DFBレー ザ (利得発生領域、光導波路)への反射戻り光を抑制するために、本発明では、利得 発生領域の後端面と、該後端面と対向する機能領域の前端面とを平行にはせず、該 機能領域の前端面を利得発生領域の後端面に対し傾斜状態となるように形成する。
[0078] このような構造は、集積された他の機能領域の端面もエッチングで形成することによ り容易に実現できる。
[0079] なお、半導体レーザにモノリシックにモニタ PD (フォトダイオード)魏積する構成は 、特許文献 3に開示されている。しかし、モニタ PDの集積は、本発明のように、利得 発生領域が極短 ヽ DFBレーザと組み合わせることで初めて、素子全体の長さを従来 の半導体レーザと同程度に短く維持しつつ、モニタ機能をも付加できるため、より一 層メリットがある。また、本発明のように、 DFBレーザの後端面 (モニタ PD側の端面) の反射率は、ある程度高くし、且つ、モニタ PDの前端面 (DFBレーザへの対向面)も 、 DFBレーザ端面に対し傾斜状態にして、反射戻り光を抑制しなければ、近接する モニタ PD力 の反射戻り光力 レーザの安定動作に悪影響を与えてしまう。このよう な端面形状の構成、集積素子小型化による本発明のメリットは、モニタ PD以外の他 の機能領域を集積する場合にも当てはまる。つまり、本発明によって、集積素子の全 体サイズの低減が可能となり、ウェハからの素子収量が向上し、コスト低減が可能とな るのである。
[0080] また、本発明では、集積された機能領域に回折格子等を形成して光の反射機能を 持たせることも好ましい。この場合、 DFBレーザ (の利得発生領域)の後方端面に高 反射膜等の形成を不要とすることができる。更に、上記、光反射機能を有する領域の 光導波路組成をレーザの発振波長を考慮して適当に選ぶことで、反射だけでなぐ
光の受光機能をも同時に付与することができる。
[0081] ここで一つ述べておくことがある。上記、 DFBレーザの後方端面を高反射膜で覆つ て高反射化させている場合、本発明では、後方のモニタ PDへ、モニタするために十 分な光量を取り出す (導出させる)ため、高反射膜の一部を、反射率を劣化させない 程度にエッチングで除去し、光取り出し窓 (光導出用窓)を形成する。
[0082] 一方、利得発生領域が極短!、DFBレーザを構成する材料としては、高温度特性が 期待できる、 AlGalnAs等の A1系材料、 GalnNAs等の N系材料或いは Sb系材料の 導入が、上記 κ、 L等の構造最適化と組み合わせることで、より有効に働く。
[0083] 利得発生領域が極短!ヽ DFBレーザを高速変調させる場合、駆動 50 Ω系とのイン ピーダンスマッチングを考えると、極短共振器の特徴、即ち、高抵抗ィ匕が可能というこ とを利用して、本発明では、ちょうどレーザの直列抵抗が 50 Ω ± 10 Ωとなるようにド 一ビング濃度、クラッド厚等のパラメータを選ぶことが好ま 、。
[0084] 力!]えて、アレイ化することも有効である。即ち、本発明では、利得発生領域が極短!、 DFBレーザがアレイ状にモノリシックに並べられ、且つ各々の DFBレーザの波長が 異なる DFBレーザアレイとすることで、波長多重光通信システム用の多波長光源を、 安価に提供することができるようになる。
[0085] 更に、本発明では、上記 DFBレーザ、もしくは、上記 DFBレーザアレイを少なくとも 含む光モジュールとすることで、モジュールとして製品を提供することができるように なる。
発明の効果
[0086] 第一の効果は、レーザ光の利得を発生させる利得発生領域と、該利得発生領域の 内部に形成された回折格子と、を備える分布帰還型半導体レーザにおいて、利得発 生領域を挟む前後 2つの端面のうち前端面の反射率は 1 %以下に設定されていると ともに、 2つの端面のうち後端面側力 前側を見た反射率は 30%以上に設定され、 回折格子の結合係数を κ、利得発生領域の長さを Lとすると、 κは 100cm— 1以上に 、 Lは 150 m以下に、それぞれ設定され、モード間利得差を Δひ、閾値利得を gth とすると、 Δ a Zgthが 1以上となる κと Lの組み合わせを用いているので、極めて単 一モード安定性が良ぐしかも低閾値電流で発振可能、且つ、利得発生領域が極短
ヽ分布帰還型半導体レーザを提供することができる。
[0087] 第二の効果は、上記の構造に加えて、結合係数 κと利得発生領域長 Lとの積が 1 以上 3以下とすることで、軸方向空間ホールバーユングの影響を抑制することができ 、発振閾値以後の動作条件において、高出力特性を得る上で、より安定な単一モー ド動作を実現し、且つ、利得発生領域が極短い分布帰還型半導体レーザを提供す ることがでさる。
[0088] 第三の効果は、上記の構造に加えて、 Δ a Zgthの利得発生領域長 Lへの依存性 をプロットした場合に Δ a Zgthがピーク値となる利得発生領域の長さを Lpとすると、 利得発生領域長 Lは Lp以下とすることで、安定な単一モード動作及び低い閾値電流 に加えて、高い緩和振動周波数 frを有し、且つ、利得発生領域が極短い分布帰還 型半導体レーザを提供することができる。
[0089] 第四の効果は、利得発生領域の内部に形成された回折格子が、利得結合構造を 有しているか、損失結合構造を有している力 利得結合、損失結合及び屈折率結合 のうちの 2つ或いは 3つが混在する構造を有している力、又は、屈折率結合構造で且 つ λ Z4シフト構造を有しているので、高い単一モード歩留まりを有し、且つ、利得発 生領域が極短い分布帰還型半導体レーザを提供することができる。
[0090] 第五の効果は、特に、利得発生領域の内部に形成された回折格子が、屈折率結 合構造で且つ λ Ζ4シフト構造を有し、該 λ Ζ4シフト位置が、前記利得発生領域の 前後方向の長さを 100%としたとき、該利得発生領域の前端より 75% ± 5%後方の 位置とされているので、より高い単一モード歩留まりを有し、且つ、利得発生領域が 極短!ヽ分布帰還型半導体レーザを提供することができる。
[0091] 第六の効果は、前記利得発生領域の後端面がエッチングにより形成され、当該分 布帰還型半導体レーザを含む素子全体の前後長は 150 mよりも長い構成とするこ とで、極短利得発生領域の分布帰還型半導体レーザにおける劈開困難性を克服し 、ハンドリング悪化を改善し、且つ、利得発生領域が極短い分布帰還型半導体レー ザを提供することができる。
[0092] 第七の効果は、前記素子を、前記エッチングにより形成された端面ギャップを介し て当該分布帰還型半導体レーザの後方側に集積された他の機能領域を含む構造と
することで、更に高機能化による高付加価値化を実現し、且つ、利得発生領域が極 短!ヽ分布帰還型半導体レーザを提供することができる。
[0093] 第八の効果は、集積された他の機能領域に、受光機能を付与することで、モニタ P Dが集積され、且つ、利得発生領域が極短い分布帰還型半導体レーザを提供するこ とがでさる。
[0094] 第九の効果は、第八の効果を促進する効果であるが、集積された他の機能領域の 前端面を、前記利得発生領域の後端面に対し傾斜状態に形成することで、他の機能 領域から利得発生領域内への反射戻り光を抑制することができ、安定な分布帰還型 レーザ動作を実現し、且つ、利得発生領域が極短い分布帰還型半導体レーザを提 供することができる。
[0095] 第十の効果は、集積された他の機能領域に、反射機能を持たせることにより、例え ば、利得発生領域の後端面に高反射膜を形成する必要性を無くし、モニタ用後方光 をより多く出力させることもできる。更に、他の機能領域に反射機能とともに光受光機 能を持たせることにより、コンパクトなモニタ PD集積型で、且つ、利得発生領域が極 短!ヽ分布帰還型半導体レーザを提供することができる。
[0096] 第十一の効果は、利得発生領域の後端面の反射率を 90%以上に設定することで 、より低閾値電流を有し、且つ、利得発生領域が極短い分布帰還型半導体レーザを 提供することができる。なお、利得発生領域の後端面の反射率を 90%以上とするに は、例えば、該後端面に高反射膜が設けると良い。
[0097] 第十二の効果は、利得発生領域の後端面に設けられた高反射膜に、利得発生領 域内より光を導出させるための光導出用窓を形成することにより、効率よく十分なモニ タ用後方光を取り出すことの出来、且つ、利得発生領域が極短い分布帰還型半導体 レーザを提供することができる。
[0098] 第十三の効果は、利得発生領域を構成する材料に、 Al、 N及び Sbのうちの少なく とも何れ力 1つを含むようにすることで、高温度動作特性に優れ、且つ、利得発生領 域が極短い分布帰還型半導体レーザを提供することができる。
[0099] 第十四の効果は、分布帰還型半導体レーザの直列抵抗を 50 Ω ± 10 Ωとすること で、レーザを高速変調させる場合に、容易に、駆動 50 Ω系とのインピーダンスマッチ
ングが可能で、且つ、利得発生領域が極短い分布帰還型半導体レーザを提供する ことができる。
[0100] 第十五の効果は、本発明の分布帰還型半導体レーザをアレイ状にモノリシックに並 ベ、且つ各分布帰還型半導体レーザの波長が相互に異なる分布帰還型半導体レー ザアレイとすることで、波長多重光通信システム用の多波長光源を、安価に提供する ことができる。
[0101] 第十六の効果は、更に、本発明の分布帰還型半導体レーザ、もしくは、本発明の 分布帰還型半導体レーザアレイを備える光モジュールとすることで、高 、単一モード 安定性、低い閾値電流、そして高い fr特性等を有する光源を、システム構築者が扱 V、やす 、モジュールと!、う形で提供することができる。
図面の簡単な説明
[0102] [図 1]副モード抑圧比(SMSR)の Δ a Zgth依存性を示す図である。
[図 2]各構造の DFBレーザにおける単一モード歩留まりを示す図である。
[図 3]DFBレーザのモデルを示す図である。
[図 4]内部損失 a i= 25cm— 1の場合の、各 κに対する Δ a Zgthの利得発生領域長 L依存性を示す図である。
[図 5]内部損失 a i= 5cm— 1の場合の、各 κに対する Δ a Zgthの利得発生領域長 L 依存性を示す図である。
[図 6] Δ a /gth≥ 1を満たす閾値電流の利得発生領域長 L依存性を示す図である。
[図 7]本発明の第一の実施形態に係る、モニタ PDとモノリシック集積された DFBレー ザの構造を示す模式的な斜視図である。
[図 8]図 7の素子の模式的な上面図である。
[図 9]図 7の素子の製造プロセスにおける MQW— SCH成長及び回折格子形成を説 明するための模式的な斜視図である。
[図 10]図 7の素子の製造プロセスにおける p— InPクラッド及び p+— InGaAsキャップの 成長を説明するための模式的な斜視図である。
[図 11]図 7の素子の製造プロセスにおける導波路メサの形成を説明するための模式 的な斜視図である。
[図 12]図 7の素子の製造プロセスにおける高抵抗 InPブロック層の成長を説明するた めの模式的な斜視図である。
[図 13]図 7の素子の製造プロセスにおける素子分離を説明するための模式的な斜視 図である。
[図 14]図 7の素子の製造プロセスにおける電極形成を説明するための模式的な斜視 図である。
[図 15]本発明の第二の実施形態に係る DFBレーザの構造を示す模式的な斜視図で める。
[図 16]本発明の第三の実施形態に係る、外部反射器とモノリシック集積された DFB レーザの構造を示す模式的な斜視図である。
[図 17]本発明の第四の実施形態に係るレーザアレイの構造を示す模式的な斜視図 である。
[図 18]図 17のレーザアレイと AWG合波器とをハイブリッド集積した状態を示す模式 図である。
符号の説明
1 分布帰還型半導体レーザ
la 肯 ij端面
lb 後端面
2 モニタ PD (受光機能を有する他の機能領域)
3 外部反射器 (反射機能を有する他の機能領域)
13 回折格子
18a DFBレーザ用 p電極 (一部が高反射膜を構成する)
29 素子
30 利得発生領域
31 λ Ζ4シフ卜位置
35 素子
33 素子
34 アレイ状素子 (分布帰還型半導体レーザアレイ)
GL ギャップ距離 (端面ギャップ)
発明を実施するための最良の形態
[0104] 次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
[0105] 〔第一の実施形態〕
図 7を参照すると、本発明の第一の実施形態として、 DFBレーザ (分布帰還型半導 体レーザ) 1とモニタ PD (受光機能を有する他の機能領域) 2とが一体的に集積され た素子 29の斜視図が示されている。また、図 8は、図 7に示す素子 29の上面模式図 である。なお、図 7では、 DFBレーザ 1の層構造を見せるために、 Feドープ InP電流 ブロック層 16を一部破断として透視状態にしている。更に、図 7では、モニタ PD2の 層構造を見せるために、該モニタ PD2の前端面に形成された SiN膜 17を透視状態 としている。
[0106] 図 7及び図 8に示すように、素子 29は、モノリシック集積された DFBレーザ (分布帰 還型半導体レーザ) 1とモニタ PD2を備える。
[0107] この素子 29の全体の前後長は、例えば 250 μ mである。つまり、 DFBレーザ 1を含 む素子全体の前後長は 150 mよりも長い。また、 DFBレーザ 1 (の利得発生領域 3 0)の前後長は、例えば 100 /z mであり、従来と比べて利得発生領域長が極短い。
[0108] なお、本実施形態の場合、 DFBレーザ 1の後方に反射機能を備えないため、本実 施形態の DFBレーザ 1は、「極短共振器 DFBレーザ」と表現することもできる。また、 本実施形態で説明するのは、利得発生領域 30の後方側に反射機能領域を備えな い例であるため、本実施形態の場合、「利得発生領域 30を挟む前後 2つの端面 la、 lbのうち後端面 lb側から前側を見た反射率」は、後端面 lbの反射率となる。
[0109] DFBレーザ 1は、 n— InP基板 10上に配設された、 InGaAlAs系の 10層の多重量 子井戸(Multiple— Quantum— Well、 MQW) 11、 AlGalnAs/AlInAs/lnGaAs P系からなる光閉じこめ層(Separate— confinement— heterostructure、 SCH) 12 a、 12b、及び屈折率結合構造で且つ λ Ζ4シフト構造の回折格子 13を含む光導波 路と、 ρ— InPクラッド 14と、 p+— InGaAsキャップ層 15と、 Feドープ高抵抗 InP16と、 電流阻止用絶縁膜としての SiN17 (SiN17は PDパシベーシヨン膜としても兼用)と、 DFBレーザ用 p電極 18aと、 n電極 19 (n電極 19はモニタ PD2にも兼用)と、を備える
[0110] なお、このうち MQW11及び回折格子 13により利得発生領域 30が構成されている
[0111] ここで、本実施形態の層構造においては、 MQW11を構成する各単層あたりのキヤ リア密度を下げて、微分利得を向上させるために多層の MQW11を導入して 、るが 、内部損失が 20cm— 1程度と高めであったため、図 4のグラフを参照し、回折格子 13 の結合係数は 200cm— 1とし、利得発生領域 30の前後長さは 100 mとした。
[0112] すなわち、回折格子 13の結合係数を κ、利得発生領域 30の前後長さを Lとすると 、 κは 100cm— 1以上に、 Lは 150 m以下に、それぞれ設定されている。更に、モー ド間利得差を Δ α、閾値利得を gthとすると、 Δ a Zgthが 1以上となる κと Lの組み 合わせを用いている。し力も、結合係数 κと利得発生領域長 Lとの積力 以上 3以下 である。加えて、 Δ α /gthの利得発生領域長 Lへの依存性をプロットした場合に Δ a Zgthがピーク値となる利得発生領域の長さを Lpとすると、利得発生領域長 Lは Lp 以下である。
[0113] また、本実施形態では、 DFBレーザ 1の後端面 lb (図 8参照)は ICPドライエツチン グ等により形成し、更に、該後端面 lbを、 DFBレーザ用 p電極 18aを構成する TiZP tZAuの金属多層膜で被覆することにより、該後端面 lbを、例えば 95%以上の反射 率に高反射化している。
[0114] 他方、 DFBレーザ 1の前端面 la (図 8参照)は、劈開により形成すると共に、該前端 面 1 aには反射率 0. 1 %以下の無反射 ( AR)コ一ティング(図示略)を施している。
[0115] すなわち、利得発生領域 30を挟む前後 2つの端面のうち前端面 laの反射率は 1% 以下に設定されているとともに、後端面 lbの反射率は 30%以上に設定されている。
[0116] このような本実施形態の構造では、 Δ a Zgthが十分 1以上となり、 K L値も 2である ので、軸方向空間ホールバーユングの影響を抑制できた。よって、安定な単一モード 動作(SMSR> 50dB)と、低閾値電流動作(< 2mA)が実現できた。また、 40mA以 上の駆動電流により、 3mW以上の前方光ファイバ出力と、 20GHzを越える高 fr特性 と、を得ることができ、超高速、低駆動電流、低駆動電圧の超高性能直接変調光源を 実現することができた。
[0117] 一方、後端面 lbからの光出力モニタに関して言えば、本実施形態では、後端面 lb を金属被覆しているため、金属による吸収で後端面 lbから後方への出射パワーが小 さくなることが予測された。よってモニタ PD2をも集積ィ匕し、漏れ光を検知する構成と した。
このようにモニタ PD2も集積ィ匕することには、素子 29における余裕領域を有効利用し つつ、該素子 29をノヽンドリングに適したサイズにできるというメリットもある。
[0118] なお、モニタ PD2への入力パワーをより増大するために、 DFBレーザ 1の後端面 1 bにおける電極被覆形状を工夫し、反射率が落ちない程度に、一部、光取り出し窓( 光導出用窓;図示略)を設けることが有効である。例えば、 DFBレーザ用 p電極 18a において、 DFBレーザ 1の後端面 lbを被覆する部分のうち、光導波路から 程 度横にずれた位置に幅 2 m程度の矩形状に電極を除去することにより、光取り出し 窓を形成する。
[0119] また、集積されたモニタ PD2も、基本的な層構造及び組成波長は DFBレーザ 1と 同じであるが、モニタ PD2のレーザ側の端面(つまり、モニタ PD2において、 DFBレ 一ザ 1と対向する前端面 2a (図 8参照))は、 DFBレーザ 1の光導波路内への反射戻 り光を抑制するため、図 8に示すように、 DFBレーザ 1の後端面 laに対し平行にはせ ず、該後端面 laに対し傾斜状態に形成する。ここで、傾斜角度 Θは、 DFBレーザ 1 の後端面 30aとモニタ PD2の前端面 2aとのギャップ距離 (端面ギャップ) GLに応じて 、反射戻り光がレーザ側の光導波路に戻らないように設定する。本実施形態では、ギ ヤップ距離 GLは、例えば 50 m程度であり、傾斜角度 Θは、例えば 10° としている
[0120] このように DFBレーザ 1と一体に集積されたモニタ PD2を用いることにより、 DFBレ 一ザ 1のオートパワーコントロール動作を制御するに十分なモニタ出力電流を得るこ とが出来た。また、素子 29の全素子長は、 250 /z mと、従来の 10G直接変調型の D FBレーザと等しい。つまり、従来と同じ素子サイズで光モニタ機能をも付与した高付 加価値の直接変調光源を実現することが出来た。また、駆動電流 40mA以上で fr> 20GHzが得られている力 lOGbps動作を考えた場合、必要な電圧、電流をより一 層低減することができ、超高速の 10G— CMOSドライバによる駆動も可能なレベルと
なる。実際、本発明の光源と CMOSの LDドライバを内蔵した Uncooledの直接変調 光源モジュールとしたところ、 10GHzの動作周波数では十分な特性が得られ、ドライ バを含めて、より低コストなモジュールを実現することができた。
[0121] 次に、図 9乃至図 14を参照して製造方法を説明する。
[0122] なお、図 9乃至図 13の各図において、 DFBレーザ 1の形成領域には、未だ DFBレ 一ザ 1の全体が形成されていない状態であっても DFBレーザ 1と示している。同様に 、図 11乃至図 14の各図において、モニタ PD2の形成領域には、未だモニタ PD2の 全体が形成されていない状態であってもモニタ PD2と示している。また、図 9乃至図 1 4の各図には、便宜的に単体の素子部分のみを示している力 例えば、劈開により切 り出すまでは、ウェハの状態であるものとする。
[0123] まず始めに、図 9に示すように、 n-InP基板 10上に、有機金属気相成長法を用い て、 n— InGaAlAsの第 1SCH層 12a (100nm厚)と、圧縮歪 1%の InGaAlAsゥエル (5nm厚)及び引っ張り歪み—1%の InGaAlAs (5nm厚)バリアからなる 10層の MQ Wl 1と、 InGaAlAs (50nm厚) ZlnAlAs (50nm厚) ZlnGaAsP (150nm厚)から なる第 2SCH層 12bと、極薄い p— InPカバー層(図示略; 50nm厚)と、をこの順に成 長する。
[0124] 次に、 p— InPカバー層(図示略)に対し、 EB露光法を用いて、 DFBレーザ 1の形成 領域のみに対し、 λ Ζ4シフトを有する回折格子 13の回折格子パターン(図示略)を 描画する。ここで、回折格子周期は、例えば約 200nmで、 λ Z4シフト位置 31 (図 3 参照)は、 DFBレーザ 1の前端から 75 πι± 5 /ζ m後の位置である。すなわち、回折 格子 13は、屈折率結合構造で且つ λ Ζ4シフト構造を有し、該 λ Ζ4シフト位置 31 1S 利得発生領域 30の前後方向の長さを 100%としたとき、該利得発生領域 30の前 端より 75%士 5%後方の位置とされて 、る。
[0125] そして、このように描画された回折格子パターンをドライエッチングを用いて半導体 へ転写する。ここで、回折格子の深さは、例えば約 lOOnmとし、回折格子パターンに 対するドライエッチングは、 A1を含む層(つまり第 2SCH層 12bの InAlAs層)まで到 達しないよう第 2SCH層 12bの InGaAsP層でストップさせる。これは、 A1を含む層の 酸ィ匕による問題発生を回避するためである。以上により、図 9に示すように、部分的(
DFBレーザ 1の形成領域のみ)に回折格子 13が形成されたウェハが得られる。
[0126] 次に、図 10に示すように、部分的に回折格子 13が形成されたウェハに、有機金属 気相成長法を用いて、例えば 2 m厚の p— InPクラッド層 14と、 300nm厚の p+— In GaAsキャップ層 15と、をこの順に成長する。
[0127] 次に、図 11に示すように、ドライエッチングを用いて、 DFBレーザ 1とモニタ PD2の 各領域を含む導波路メサ 32を形成する。つまり、 DFBレーザ 1とモニタ PD2の各形 成領域を含むメサを残して、 p+— InGaAsキャップ層 15力も第 1SCH層 12Aまでの 各層をドライエッチングにより除去する。ここで、導波路メサ 32の幅 (導波方向に対す る直交方向の寸法)は、 DFBレーザ 1の形成領域では例えば 1. 5 μ m程度とする一 方で、モニタ PD2の形成領域では、受光面積を広くするために例えば 50 /z m程度と する。
[0128] 次に、図 12に示すように、導波路メサ 32の両側部に、有機金属気相成長法を用い て、 Feドープ InP電流ブロック層 16を、該導波路メサ 32と同じ高さまで成長する。 なお、本実施形態では、電流ブロック層として、 Feをドーピングして高抵抗ィ匕した Fe ドープ InP電流ブロック層 16を採用する例を説明する力 これに限らず、ドーパントに は例えば Ruを用いても良 ヽ。
[0129] 次に、図 13に示すように、ドライエッチングを用いて、モニタ PD2の周囲をコ字状に エッチングすることにより、導波路メサ 32を、 DFBレーザ 1とモニタ PD2とに分離する 。なお、このエッチングでは、 n-InP基板 10の表層部までを除去する。このエツチン グにより、 DFBレーザ 1の後端面 lb (図 8 ;利得発生領域 30の後端面でもある)とモ- タ PD2の前端面 2a (図 8)とが形成される。
[0130] このうちモニタ PD2の前端面 2aは、図 8に示すように、 DFBレーザ 1の後端面 lbと 平行にならないよう、該後端面 lbに対して例えば 10°以上の傾斜をもたせている。な お、 DFBレーザ 1とモニタ PD2との間の距離(ギャップ距離 GL)は約 50 μ mである。
[0131] 次に、図 14に示すように、 SiN膜 17を素子 29における上面側の全表面に形成す る。この SiN膜 17は、電流阻止用絶縁膜並びにパシベーシヨン用膜として機能する ものである。
[0132] 次に、 SiN膜 17には、 DFBレーザ 1の領域では電流注入用の窓 17aを開口し、モ
ニタ PD2の領域では電流抽出用の窓(図示略;窓 17aと同様の形状)を開口する。
[0133] 次に、図 14に示すように、素子 29の上面に p電極を形成する。
[0134] すなわち、 DFBレーザ 1の領域では、 SiN膜 17上を覆い、且つ、該 SiN膜 17に形 成された電流注入用の窓 17aを介して p+— InGaAsキャップ層 15上を覆うように、 DF
Bレーザ用 p電極 18aを形成する。
[0135] ここで、 DFBレーザ用 p電極 18aは、例えば、 TiPtAuからなる。この DFBレーザ用 p電極 18aは、 DFBレーザ 1の後端面 lbも被覆するように形成する。これにより DFB レーザ 1の後端面 laの反射率として例えば 90%以上の高反射率を得ることができる
[0136] また、 DFBレーザ用 p電極 18aは、必要最小限の面積に形成する。これにより、 DF
Bレーザ用 p電極 18aのキャパシタンスを十分に小さくすることができるので、 DFBレ 一ザ 1が目的とする変調周波数を損うことがない。
[0137] 他方、モニタ PD2の領域でも、同様に、 SiN膜 17上を覆い、且つ、該 SiN膜 17に 形成された電流注出用の窓(図示略)を介して p+— InGaAsキャップ層 15上を覆うよう に、モニタ PD用 p電極 18bを形成する。
[0138] また、ウェハ裏面を研磨後、該裏面上に、 n電極 19を形成する。なお、この n電極 1
9は、 DFBレーザ 1及びモニタ PD2に兼用のものである。また、ウェハ裏面の研磨は
、劈開を容易とさせるために行うものであり、例えばウェハが 100 m— 350 m程度 まで薄くなるように行う。
[0139] 以上により、ウェハ状態での素子作製工程が終了する。
[0140] 次に、劈開によりウエノ、からバー状態に素子を切り出した後、そのバー状態 (アレイ 状態)で、一体となっている各 DFBレーザ 1の前端面に通常の無反射コーティングを 一括して施す。この無反射コーティングにより、 DFBレーザ 1の前端面の反射率とし て 1%以下の反射率を得ることができた。
[0141] 更に、 DFBレーザ 1及びモニタ PD2を 1個ずつ含む素子に分離して、素子作製が 兀 した。
[0142] なお、 DFBレーザ 1単体の直列抵抗は、約 8 Ωであった。
[0143] 本実施形態の素子 29のサイズは、従来の DFBレーザと同程度の長さ 250 μ m、幅
250 /z mであるため、 2インチウェハからの素子総収量は約 2万個、素子歩留まりは 6 0%であり、良品数は約 1万 2千個という極めて良好な値を得ることができた。得られ た特性は、記述のとおりである。
[0144] 以上のような第一の実施形態によれば、上記第一乃至第九の効果、並びに、上記 第十一乃至第十三の効果を得ることができる。
[0145] なお、上記の第一の実施形態においては、光導波路の材料 (利得発生領域 30を 構成する材料)に A1系材料が含まれる例を示したが、本発明は、この例に限らず、 G alnNAsZGaAs等の N系材料においても同様に実施可能である。この場合、 GaAs ウェハをベースとして素子を作り込むことができるため、より大きいウェハでプロセスを 進められる等のメリットを享受できる。また、光導波路の材料は、 Sb系材料であっても 良い。このように、利得発生領域 30を構成する材料力 Al、 N及び Sbのうちの少なく とも何れ力 1つを含むようにすることにより、上記第十三の効果を得ることができる。
[0146] また、上記第一の実施形態にお!、て、 p— InPクラッド 14のドーピング濃度を低減し たり、 DFBレーザ 1のメサ幅 1. 5 mを更に低減したり、利得発生領域長を一層短く したりすること等によって、 DFBレーザ 1の直列抵抗を 50 Ω ± 10 Ω程度にすることも でき、これにより、上記第十四の効果を得ることができる。
[0147] 〔第二の実施形態〕
上記の第一の実施形態では、素子 29に DFBレーザ 1とモニタ PD2とが一体的に 集積されている例を説明したが、本発明はこれに限らず、例えば図 15に示すように、 DFBレーザ 1のみが搭載された素子 35とすることもできる。すなわち、この第二の実 施形態に係る素子 35は、図 7に示す素子 29と比べてモニタ PD2を有しない点での み異なる。
[0148] 図 15に示す第二の実施形態に係る素子 35を得るためには、図 11の段階で行うェ ツチングにて DFBレーザ 1の領域のみの導波路メサ(図示略)を形成するとともに、モ ユタ PD2を形成するための各工程を省略する。
[0149] 図 15に示す素子 35の場合、素子 35全体の前後長は例えば 200 m程度と更に 短尺化することができるとともに、 DFBレーザ 1の後端面 lbの高反射膜には、 DFBレ 一ザ用 P電極 18aの代わりに誘電体多層膜(図示略)を用いることもできる。
[0150] 第二の実施形態によれば、上記第一乃至第六の効果、並びに、上記第十一乃至 第十三の効果を得ることができる。
[0151] 〔第三の実施形態〕
また、上記第一の実施形態において、図 13の状態とした後で、モニタ PD2の領域 に適当な周期で短冊状のエッチングを施すことにより、図 16に示すように、複数部分 に分割構成された外部反射器 3を集積した素子 33とすることもできる。外部反射器 3 における各分割部分の配置周期は、例えば、 DFBレーザ 1の領域の約 2倍の 400η m程度である。ここで、外部反射器 3における各分割部分の端面 (前端面及び後端 面)は、モニタ PD2の場合とは異なり、 DFBレーザ 1の後端面 lbと平行である必要が あり、上記短冊状のエッチングはそのように行う必要がある。
[0152] 図 16に示すように外部反射器 3を集積する場合、外部反射器 3の助けにより反射 率が向上するため、 DFBレーザ 1の後端面 lbには高反射膜を形成しないで良い。な お、図 16に示す例の場合、 DFBレーザ 1の利得発生領域長は、例えば 80 /z m程度 としている。
[0153] なお、本実施形態の場合、利得発生領域 30の後方側に反射機能領域すなわち外 部反射器 3を備えているため、「利得発生領域 30を挟む前後 2つの端面 la、 lbのう ち後端面 lb側から前側を見た反射率」は、後端面 lbによる反射に加え、外部反射器 3からの反射を含んだ反射率となる。
[0154] 以上のような第三の実施形態によれば、上記第一乃至第七の効果、上記第十の効 果、並びに、上記第十三の効果を得ることができる。
[0155] なお、上記の第三の実施形態では、更に、外部反射器 3に適宜電極を形成し、電 流を取り出せるようにすることで、該外部反射器 3にモニタ PD機能を付与することも 可能であり、この場合には、上記第八の効果も得ることができる。但し、この場合、モ ユタ PDの端面と外部反射器 3の反射率が若干低下するため、 DFBレーザ 1の利得 発生領域長を長くする等の工夫が必要である。なお、モニタ PD機能を付与するのは 、外部反射器 3における何れか 1つの分割部分であっても良いし、複数の分割部分 であっても良!ヽ(例えば、全ての分割部分であることが好ま 、)。
[0156] 〔第四の実施形態〕
また、モニタ PD2と一体的に集積された DFBレーザ 1 (図 7)を、図 17に示すように 、モノリシックに複数配列してアレイ化することができる。この場合は、アレイ状素子 34 の上面に pと nの各電極を備える構成とする必要がある。このため、 Fe— InP等の高抵 抗基板 20上に、 n— InPコンタクト層 21を成長した後、上記実施形態と同様の層構造 を形成し、アレイ状に素子化する。
[0157] 例えば、 CWDM用途の場合は、アレイ状素子 (分布帰還型半導体レーザアレイ) 3 4に含まれる各々の DFBレーザ 1の発振波長が約 20nm程度ずつ異なるように、各 D FBレーザ 1の回折格子 13の周期を調整する。すなわち、図 17に示すように 4つの D FBレーザ 1からなるアレイ状素子 34の場合に、室温の発振波長が、例えば、 λ 1 (第 1の DFBレーザ l) = 1290nm、 2 (第 2の DFBレーザ 1) = 1310nm、 3 (第 3の DFBレーザ 1) = 1330nm、 λ 4 (第 3の DFBレーザ 1) = 1350nmとなるように各回 折格子 13の周期を設定する。
[0158] また、アレイ状素子 34に含まれる各 DFBレーザ 1を独立に駆動するため、各 DFB レーザ 1の間は、分離溝 26によって電気的に絶縁する。この分離溝 26は、エツチン グにより、基板 20内にまで達するように形成する。
[0159] また、各 DFBレーザ 1の利得発生領域 30間での相互の熱干渉についても回避す るため、各 DFBレーザ 1の間隔 (利得発生領域 30の中心位置のピッチ)は例えば 50 0 m以上としている。
[0160] 最終的に、上記第一の実施形態と同様に DFBレーザ用 p電極 18a及びモニタ PD 用 p電極 18bを形成するのに加えて、 DFBレーザ用 n電極 23及びモニタ PD用 n電 極 24もアレイ状素子 34の上面側に形成する。これにより、各 DFBレーザ 1をアレイ状 素子 34の上面側力も独立に直接変調できることとなる。
[0161] ここで、第四の実施形態の場合には、図 18に示すように、 DFBレーザ用 n電極 23 及びモニタ PD用 n電極 24を n— InPコンタクト層 21に接続した状態に形成する必要 があるため、図 12の状態から図 13の状態とするためのエッチングは、 h字状(図 18の 場合、 hを鏡像反転させたような形状)に行う必要がある。
[0162] このようにして得られるアレイ状素子 34を、例えば、図 18に示すように AWG合波器 27とハイブリッド集積し、出力導波路 28に全光出力(λ 1—え 4)をまとめて取り出せ
る様にし、光ファイバへ接続することで、 CWDM用途に適用可能な、 DFBレーザァ レイ光源を実現することができる。
[0163] なお、図 18に示す AWG合波器 27に代えて、例えば、誘電体フィルタ及びミラーを 用いることとしても良いし、或いは、その他の合波器を用いることとしても良い。
[0164] 以上のような第四の実施形態によれば、上記第一乃至第九の効果、上記第十一乃 至第十三の効果、並びに、上記第十五の効果を得ることができる。
[0165] また、本発明は、以上において説明したほかに、上記第一乃至第三の実施形態に 係る素子 29、 35、 33、もしくは、上記第四の実施形態に係るアレイ状素子 34を備え る光モジュールとしてもよぐこの場合には、上記第十六の効果を得ることができる。