明 細 書 フェライ ト膜の形成方法 技術分野
本発明はフェライ ト膜の製造方法に関し、 特に高い成膜速度で良質の フェライ ト膜を形成することのできるフ ライ ト膜の製造方法に関する ( 背景技術
フェライ トめつき法は、 水溶液中で基体にフ ライ ト膜を形成する方 法であって、 室温近傍の温度で成膜でき、 成膜後に熱処理を行なわずに 良質のフェライ ト膜が得られるという利点を有する (特許文献 1 )。
このフェライ トめっき法の詳細については、 その発明者の一人による 解説が非特許文献 1に記載されている。 この解説に記載されているよう に、 フェライ トめつき法によれば、 成膜時にも成膜後にも高温に加熱す る工程を必要とせず、 従ってフェライ ト膜を形成する基体物質に耐熱性 が要求されないことから、 その応用分野が大きく広がろうとしている。 このためフェライ トめっき法に基づいて、 品質のよいフェライ ト膜を高 い生産性にて形成する技術の開発が強く求められるようになった。
フェライ トめつき法は、 2価の鉄イオン F e 2 +を必須成分として含む 金属元素のイオンの水溶液を反応液とし、 この反応液を基体の表面に接 触させて金属イオンを基体面に吸着させ、 吸着した 2価鉄イオンに酸化 剤を作用させて酸化するとともに水和反応をさせることにより、 基体面 にフェライ トの結晶層を形成し、 この反応を繰り返すことによって、 基 体面にフェライ ト膜を成膜することがてきるものである。 このフェライ 膜を形成する反応において水素イオンが生成されるが、 この水素イオン
の生成に対しては、 緩衝液を用い、 液の p Hの低下を抑制し、 p Hの値 を成膜に適した範囲に保つことにより、 フェライ ト膜の成膜を持続させ ている。
このフェライ トめっき法を用いたフェライ ト膜の成膜プロセスにおい て、 従来、 酸化剤液として亜硝酸ナトリ ウム N a N 0 2の水溶液が用い られ、 また p H値を一定に保つ緩衝液として酢酸アンモユウム C H 3 C O〇N H 4の水溶液が用いられてきた。
フェライ トめっきによって形成されたフェライ ト膜は、 本発明者らに よる非特許文献 2および非特許文献 3にすでに報告されている通り、 バ ルク状フェライ トの透磁率の周波数限界則として知られる Snoek の限 界則を超えることができ、 G H z帯の領域まで高い透磁率を示すことが 明らかとなった。 またこのフェライ ト膜の透磁率の損失成分 " )がピ ークを示す周波数 f pは G H Zの領域にまで達し、 電磁ノィズ吸収の指 標となる周波数 ( と透磁率の損失成分 " との積 f/z " の値は、 周波数 f が約 1 0 G H zに及ぶ周波数域まで、大きな値を示すことがわかった。 この結果、 フェライ トめつきによって形成されるフェライ ト膜は、 G H z帯領域の高い周波数帯における電磁ノィズの抑制可能な電磁ノィズ抑 制体として注目されるようになった。
最近では、ディジタル機器の高速化'高周波化が進み、その動作周波数 が G H z帯に達するようになり、 この周波数帯域で発生する電磁ノイズ によって機器や素子が相互に干渉したり妨害したりするのを防止するこ とのできる電磁ノィズ抑制体が強く求められるようになった。 こう した 電磁ノイズ抑制体は、 主と して電磁ノイズの発生源や干渉や妨害を保護 する対象のごく近くに配置し、 電磁ノイズによる干渉や妨害の発生を抑 制するものである。
フェライ トめっきによって形成されるフェライ ト膜をこのような電磁
ノィズ抑制体と して用い、 実際に必要な電磁ノィズの抑制効果を得るに は、 フェライ ト膜の透磁率の損失成分が GH z領域まで高い値を有する とともに、 フェライ ト膜の厚さとして少なく とも 3 μ m程度を必要とす る。 ところが例えば非特許文献 2に記載の成膜方法によれば、 フェライ トめっきによる成膜速度は約 1 8 n mZ分であり、 この成膜速度で 3 μ m厚の成膜をするには 3時間近くの時間を要する。 そこでフェライ トめ つきの成膜速度を高めることにより、 フェライ ト膜の成膜に要する時間 を短縮することが望まれていた。
本発明者らは非特許文献 3において、 スピンスプレー法を用いたフエ ライ トめつきによるフェライ ト膜の成膜における反応液の; H 6. 8に 対し、 酸化液と して亜硝酸ナトリウムの水溶液を用い、 緩衝液として酢 酸ァンモユウム C H 3 C O O NH4の水溶液にアンモニア水 NH4 O Hを 添加して p Hを高めたものを用い、 成膜速度を 6 7 n mZ分まで高めた ことをすでに報告した。
しかしながら、 酢酸アンモニゥムとアンモニア水との混合溶液を使用 すると成膜速度を高めることができるが、 ァンモェゥムイオンには金属 銅の表面を侵す性質を持つという問題があった。 電磁ノィズ抑制体と し てフェライ ト膜の成膜を行なおうとする基体には、 配線やコイルなどに 銅が多く用いられていることから、 この緩衝液のアンモニゥムイオンに よってこれらの銅が侵されるおそれがあることが懸念された。 またアン モニァ水 NH4OHを添加して成膜速度を高めた場合のフェライ ト膜の 成膜には、 成膜の安定性の改善や成膜されたフェライ ト膜の品質につい ても改善が望まれてきた。
特許文献 1 : 特公昭 6 3— 0 1 5 9 9 0号公報 ( 1 9 8 8 ) 非特許文献 1 : 科学と工業 第 7 5卷 第 8号、 第 3 4 2〜 3 4
9頁 ( 2 0 0 1 )
非特許文献 2 : ジャーナル 'ォブ 'アプライ ド 'フィジックス 第 9 1卷 第 1 0号、 第 7 3 7 6〜 7 3 7 8頁 ( 2 0 0 2 )
非特許文献 3 : アイ トリプルイ一 ' トランザクションズ ·オン ■ マグネテイツタス、 第 3 8卷、 第 5号、 第 3 1 5 6〜 3 1 5 8頁 ( 2 0 0 2) 発明の開示
上記した通り、 フェライ トめつき法による成膜の際に、 p Hの緩衝液 と して酢酸ァンモ-ゥムの水溶液にアンモニア水を加えたものを用いた 場合には、 成膜速度を高めることができる一方で、 アンモユウムイオン によって基体上の C uが侵されるという問題点があり、 また成膜工程の 安定性や成膜されたフェライ ト膜には品質にも改善すべき点があった。 従ってこう した問題点を解消した新しいフェライ トめっき法を開発する ことが、 フェライ トめっき法を用いたフェライ ト膜の実用化を進める上 で重要な課題の一つであった。
本発明は、 このような課題を解決し、 フェライ トめつきにおけるフエ ライ ト膜の成膜速度を高めるとともに安定な成膜を可能にし、 しかも基 板上の C uを侵すおそれのないフユライ ト膜の製造方法を提供するもの である。
本発明のフ ライ ト膜の形成方法は、 2価の鉄イオンを必須成分と し て含み、 フェライ トを構成する金属イオンを含有した水溶液である反応 液と、 2価鉄イオンを酸化する酸化剤を含有する水溶液である酸化液と、 アル力リ金属の弱酸塩を含有する水溶液であって水素イオンの発生によ る p H値の低下を抑制する p H調整液とを基体の表面に供給し、 この基 体の表面にフェライ トめっきをすることによりフェライ ト膜を形成する ことを特徴とする。
また本発明の電磁ノィズ抑制体の形成方法は、 2価の鉄イオンを必須 成分として含み、 フェライ トを構成する金属イオンを含有した水溶液で ある反応液と、 2価鉄イオンを酸化する酸化剤を含有する水溶液である 酸化液と、 アル力リ金属の弱酸塩を含有する水溶液であって水素イオン の発生による p H値の低下を抑制する p H調整液とを基体の表面に供給 し、 この基体の表面にフェライ トめつきをすることにより、 電磁ノイズ を抑制するフェライ ト膜を形成することを特徴とする。
本発明は、 フェライ トめっき法によるフェライ ト膜の形成において、 これまで; p Hの緩衝液として用いられてきた酢酸アンモニゥム水溶液や 酢酸アンモ ウム水溶液とアンモニア水との混合溶液などのアンモニア やアンモニゥムイオンを用いることなく、 成膜速度を高めることができ しかも膜質の良好なフェライ ト膜が形成できるフェライ ト膜の形成方法 を見出すことを目的として広範な研究を行なった結果、 p Hの調整液と してアル力リ金属の弱酸塩の水溶液を用いることにより、 膜質の良好な フェライ ト膜を高い成膜速度で成膜することが可能であることを見出し、 本発明をなすに至ったものである。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の一実施形態に用いる成膜装置 (スピンスプレーフユ ライ トめつき装置) の模式的断面図である。
図 2は、 本発明の実施例 1により成膜されたフェライ ト膜の複素透磁 率の周波数変化を示す図である。
図 3は、 本発明の実施例 2により成膜されたフ ライ ト膜の複素透磁 率の周波数変化を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明のフェライ ト膜の製造方法の実施の形態を示すことによ り、 本発明を詳細に説明する。
1 . p H調整液
本発明において、 p H調整液として用いるアル力リ金属の弱酸塩の水 溶液を構成するアルカリ金属は、 L i、 N a、 K、 R b、 および C sの 群から選ばれる少なく とも 1種である。 これらアルカリ金属の中で、 資 源が豊富な N aおよび Kは原材料として品質の安定したものが容易に入 手できるので特に好ましく用いることができる。.
また上記アル力リ金属の弱酸塩の水溶液を構成するモノカルボン酸塩 としては、 アルカリ金属の酢酸塩を好ましく用いることができる。 この ほかのモノカルボン酸塩と しては、 例えば乳酸を挙げることができる。 本発明においては、 上記 p H調整液と して、 例えば酢酸ナトリ ウムや 酢酸力リ ウムなどのアル力リ金属のモノカルボン酸塩を用いると、 p H が調整されることに加えて、 反応液中の金属イオンの基体への吸着の促 進や、 反応液中に微粒子の生成するのを抑制する効果が見出された。 こ れは、 液中でカルボン酸イオンが金属イオンと結びつくことにより、 基 体面への金属イオンの吸着を容易にする一方で、 反応液中に微粒子の生 成するのを防ぐものと考えられる。
本発明における弱酸のアル力リ金属塩を用いた p H調整液は、 弱酸と 強アルカリの塩であることから、 塩の濃度を変えることにより液の: H 値の調整を行なうことができる。 本発明の p H調整液は、 この点におい て酢酸アンモニゥム水溶液とは異なっている。 酢酸アンモ-ゥムは弱酸 と弱アル力リの塩であることから、 酢酸アンモ-ゥム水溶液の p Hは、 酢酸の解離平衡定数とアンモニア水の解離抵抗定数によって与えられ、 従って酢酸アンモニゥムの濃度にはほとんど依存せず、 濃度によって p Hの値を調整することはできない。 この液の p Hを高めるには、 例えば
この液にアンモニア水などのアル力リを加える方法を用いなければなら ない。
なお、 反応液の供給された基体の表面に P H調整液とともに供給する 酸化液については、 亜硝酸水溶液のほか、 2価鉄イオンを 3価の鉄ィォ ンに酸化する各種の酸化剤の水溶液について、 その濃度をフ ライ トめ つき反応に適するように適正に調整して用いることがてきる。 また酸化 液の代わりに、 例えば酸素などをフェライ トめっき反応に適するように 適正に調整して用いることもできる。
2 . 基体への反応液、 酸化液および P H調整液の供給
本発明においては、 反応液と酸化液と P H調整液とを基体に供給する 方法として、 基体をこれらの液に浸漬して成膜を行なう方法のほかに、 これらの液の流れを作り、 これら液の流れの中に基体を配置して成膜を 行なう方法を用いることができる。 液の流れの中に基体を配置して成膜 する方法では、 常によく制御された新しい反応液、 酸化液および p H調 整液を基体に供給しながら成膜を行なうことができ、 膜の品質のよく制 御された成膜が可能である。 このため膜の均一性を高めることができる ほか、 膜厚方向に膜の特性を変化させることも可能である。 また常時新 しい液を基体面に供給することにより、 フェライ ト膜の成膜反応の低下 を防ぎ、 高い成膜速度を維持することができる。
反応液と酸化液と p H調整液の流れを基体に効果的に与える方法の一 つとして、 これら液体を例えば霧状にするなどして、 基体に吹きつける 方法を用いることができる。 基体を回転円板に固定し、 この回転円板を 回転させながら基体にこれらの液を吹きつける方法、 即ちスピンスプレ 一法を用いれば、 これらの液を基体上に均一に供給することができると ともに、 反応後の液を振り払うことができるので、 均一性よく成膜を行 なうことができる。
反応液と酸化液と P H調整液を基体に吹きつける際には、 反応液、 酸 化液、 および p H調整液の各々の吹きつけノズルを別々に設け、 それぞ れに吹き付けることができる。 また反応液を吹きつけるノズルと、 酸化 液と p H調整液とを混合したものを一緒に吹きつけるノズルとを設け、 これら 2つのノズルを用い、基体にこれらの液を供給することもできる。 こう して反応液の吹きつけと、 酸化液および p H調整液の吹きつけをそ れぞれに制御することにより、 基体の表面への 2価鉄イオンを含む金属 イオンの吸着と、 基体の表面に吸着した 2価鉄イオンの酸化とを適切に 制御してフェライ ト膜の形成を行なうことができる。
3 . フェライ トめつきの高速化
本発明によれば、 フェライ トめっき膜を安定に形成できるとともに、 その成膜速度を高速化することができる。
本発明においては、 成膜速度を高める上で、 p H調整液として用いる の弱酸のアル力リ金属塩水溶液の濃度を高め、 基体の表面に供給する液 の: Hを高めることが有効である。 供給する液の p Hを高めると、 水溶 液中に微粒子が生成し易くなり、基体面に膜を構成しない粒子が生成し、 また基体面形成される膜の質を低下させる傾向がみられる。 しかしなが ら、 本発明において p H調整液として酢酸力リ ゥムゃ酢酸ナトリ ウムな どのモノカルボンのアル力リ金属塩を用いると、 水溶液中に微粒子が生 成するのを抑制が得られるとともに、 2価鉄イオンを含む金属イオンの 基体の表面への吸着の促進が得られ、 このため、 p H調整液の濃度を高 め、 基体の表面に供給する液の p Hを高めることにより、 比較的安定な 成膜速度を高速化を行なうことができる。
成膜速度を高速化すための p H調整液の濃度は、 酢酸力リ ゥムゃ酢酸 ナトリ ウムの場合、 反応液の供給と、 酸化剤と p H調整液の混合液の供 給を等量ずつ行なうとして、 酸化剤と p H調整液の混合液中の酢酸力リ
ゥムおよび/または酢酸ナトリ ゥムの濃度が 5 0 mm o l / l以上であ ることが好ましく、 6 O mm o 1以上であることがさらに好ましい。 ま た膜質を確保するためには、 この濃度は 1 0 0 0 mm o 1 / 1以下であ ることが好ましく、 5 0 0 mm o 1 / 1以下であることがさらに好まし い。 また反応液の供給と、 酸化剤と p H調整液の混合液の供給を等量ず つ行なうとして、 酸化剤と; H調整液の混合液の p H値は、 高い成膜速 度を得るために、 p H 8以上であることが好ましく、 p H 8. 5以上で あることがさらに好ましい。 また膜質を確保するためには、 p Hが 1 0 以下であることが好ましく、 9. 5以下であることがさらに好ましい。 なお、 反応液の供給量に対し、 酸化剤と p H調整液の混合液の供給量を 等量にしない場合は、 供給量にほぼ反比例させるようにして、 その濃度 を調整することができる。
また 成膜速度を高速化すためには反応液の 2価鉄イオンを含む金属 イオンの濃度は、 2価鉄イオンが 1 0 mm o 1 / 1以上、 好ましくは 1 5 mm o 1 / 1以上であることが好ましく、他方で良質な膜を得ために、 2価鉄イオンが 8 0 mm o 1 / 1以下、 好ましくは 5 0 mm o 1 / 1以 下であることが好ましい。
本発明におけるフ ライ トめっきの成膜速度を高速化するためのもう 一つの要件は、 すでに述べた通り、 成膜面に常時新しい反応液おょぴ酸 化液を供給し、 反応生成物を直ちに除く ことにより、 成膜反応の低下を 防ぐことである。 新しい液の流れの中に基体を配置してフェライ トめつ きを行なうことが好ましく、 上記のスピンスプレー法は、 フェライ トめ つきの高速化に適した方法の一つである。
またフェライ ト膜を成膜する基体を加熱昇温することによって、 フ エ ライ ト膜の成膜速度をさらに高めることができる。 基体の加熱温度とし ては、 4 0°C以上にすれば昇温の効果が顕著に得られるようになり、 ま
た水の沸点に達しない 1 0 o °c未満の温度が取扱い上好都合である。 こ のため成膜速度をさらに高める上で好ましい温度範囲として、 4 0 °C以 上 1 0 0 °C未満を選ぶことができる。
4 . フェライ トめっき装置
図 1は本発明の高速フェライ トめっき法により成膜を行なうための、 一実施形態におけるスピンスプレー法を用いたフェライ トめっき装置の 模式的断面図である。
図 1において、 基板 1の面にはノズル 2から吹き出す反応液と、 ノズ ル 3から吹き出す p H調整液を加えた酸化液が吹きつけられる。 基板 1 は回転円板 4に固定され、 この回転円板 4は中心軸 5のまわりに回転す る。
基板面に吹きつけられた液は遠心力によって基板面上を回転円板の外 周に向って流れることにより、 .基板面には液が均一に供給される。 回転 円板 4は発熱体 6によって加熱されるとともに温度制御され、 回転円板 4上の基板 1を設定した温度に保つ役割を果たしている。
これらの系全体はチャンバ一 7内に収容されており、 反応後の液や吹 きつけによって残った液はドレイン 8から流出され、 回収されるように なっている。 また反応気体流入口 9からは窒素ガスをチャンバ一内に流 入させ、 気体流出口 1 0からこれを排出するようにしてチャンバ一内の 雰囲気を整えている。
このようにして、 本発明の高速フエライ トめつき法によれば、 フェラ ィ トめっきに用いる p Hの調整液として、 酢酸力リ ゥムなどのアル力リ 金属の弱酸塩を用いることによって、 成膜時に水素イオンが生成し; H 値が低下するのを抑制し、 フェライ トめっきに適正な: H値を維持する とともに、 高い成膜速度を得ることができる。 またこの p H調整液には アンモニゥムイオンを含有させる必要がないので、 アンモニゥムイオン
による金属銅の腐食を回避することができる。
(実施例 1 )
図 1に示した装置を用い、 次のようにして円板状のガラスの基板 1に フェライ トめっきを行なった。
塩化第一鉄 ( F e C 1 2 ■ 4 H 2 O) 1 6. 5 m m o 1 / 1、 塩化ニッ ケノレ (N i C 1 2 ■ 6 H 2 O) 5. 6 mm o 1 / 1、 および塩化亜鉛 (Z n C 1 2 ) 0. 1 8 am o 1 Z 1 を有する水溶液で p Hが 6. 8の反 応液をノズル 2から基板 1の面に 5 O m 1ノ分の流量で吹きつけ、 また 酸化剤として亜硝酸ナトリ ウム (N a N02) の水溶液と p H調整液と して酢酸カリ ウム (CH3C OOK) の水溶液とを混合し、 亜硝酸ナト リ ゥムの濃度が 4. 3 5 mm o l Zとなるようにするとともに、酢酸力 リ ゥムの濃度を調整してこの水溶液の p H値を調整し、 この水溶液をノ ズル 3から同じ基板 1の面に 5 0 m l Z分の流量で吹きつけた。
この基板 1は円板 4に固定し、 円板 4と共に回転軸 5により毎分 1 5 0回転の回転速度で回転させ、 基板に吹きつけられた液を遠心力によつ 'て基板の表面から外周に向けて流し、 振り切るようにした。 ここで基板 1は発熱体 6により加熱し、 温度制御を行なって 9 0°Cに保った。 この 条件にて 2 0分間の成膜を行ない、 得られためっき膜を洗浄し乾燥して 膜厚を測定し、 次の結果を得た。
(実施例 1一 1 ) 酢酸カリ ウムの濃度が 6 5 mm o 1 / 1 となるよ うに亜硝酸ナトリ ゥムの水溶液に酢酸力リ ゥム含有させ、 p H値を約 8. 2にした場合には、 平均膜厚 1. 0 4 Z mのフェライ ト膜を得た。 その 成膜速度は 5 2 nm/分であった。
(実施例 1一 2) 酢酸力リゥム濃度が 1 0 0 mm o 1 / 1 となるよ うに亜硝酸ナトリ ゥムの水溶液に酢酸力リ ゥム含有させ、 H値を約 8. 9にした場合には、 平均膜厚 1. 2 4 μ ΐηのフェライ ト膜を得た。 成膜
速度は 6 2 nmZ分であった)。
(実施例 1一 3 ) 酢酸力リゥムの濃度を 1 5 0mm o l Z l に増し、 p Hを約 9. 2にした場合には、 膜の緻密さは低下するものの、 成膜速 度をさらに高めることができることがわかった。
なお、 これらのフェライ トめつきの際に基板と して、 その一部に C u 膜を設けたものを用いたところ、 C u膜は侵されることなく、 C u膜上 にフェライ トめっき膜が成膜された。
こう して成膜されたフェライ ト膜について、 X線回折を行い回折パタ ーンからフェライ トのスピネル構造を確認した。 また回折線の強度比か ら上記 (実施例 1一 2) および (実施例 1一 3 ) のフェライ ト膜におい て { 1 1 1 } 面が基板面に平行に配列する配向傾向を見出した。 また上 記 (実施例 1— 2 ) および (実施例 1一 3 ) のフ ライ ト膜について、 走査型電子顕微鏡を用いて膜の構造を観察した結果、 (実施例 1一 2)の 膜では、 膜の断面に柱状に一様に成長した構造がみられ、 膜の表面は平 坦であった。 また (実施例 1 — 3 ) の膜についても、 膜の断面に柱状に 成長した構造がみられ、 膜の表面はほぼ平坦であった。
上記 (実施例 1— 2) のめつき膜について、 磁化曲線測定装置を用い て磁気測定を行なった結果、 飽和磁化 M sは 4 5 0 e m u/ c m3、 保 磁力 H eは 2 0 O eであった。また高周波用パーミアンスメーターを用 いて、 この膜の複素透磁率の周波数変化を求めた結果、 図 2に示す結果 を得た。 この図 2の結果から、 この膜が 1 0 0 0 MH z以上 ( 1 GH z 以上) の周波数帯域でも 2 0以上もの大きな を持ち、 したがって電 磁ノィズを抑制する特性を有し、 電磁ノィズ抑制体として使用できるこ とが確認された。 ·
(実施例 2)
実施例 1で用いた装置と同じ装置を用い、 塩化第一鉄 (F e C 1 2 ·
4 H 2 O 1 6. 5 mm o 1 / 1 )、 塩化-ッケル (N i C 1 2 ■ 6 H 2 O 5. 6 mm o 1 / 1 ) および塩化亜鉛 ( Z n C 1 2 0. 1 8 mm o 1 / 1 ) のほかに、 塩化コバルト (C o C l 2 ' 6 H20 0. 3 2 m m o 1 / 1 ) を有する水溶液の反応液を、 ノズル 2から基板 1の面に 8 0 m 1 分の流量で吹きつけ、 また酸化剤として亜硝酸ナトリ ウムの水 溶液と p H調整液として酢酸力リ ウム の水溶液とを混合し、亜硝酸ナト リ ゥムの濃度が 4. 3 5 mm o l /となるようにするとともに、酢酸力 リ ゥムの濃度を調整してこの水溶液の p H値を調整し、 この水溶液をノ ズル 3から同じ基板 1の面に 8 0 m lノ分の流量で吹きつけた。
この膜の成膜条件は実施例 1に合わせた。 すなわち、 基板 1を円板 4 に固定し、 円板 4と共に回転軸 5により毎分 1 5 0回転の回転速度で回 転させ、 基板に吹きつけられた液を遠心力によって基板の表面から外周 に向けて流し、 振り切るようにした。 このとき、 基板 1は発熱体 6によ り加熱し、 温度制御を行なって 9 0°Cに保った。 この条件にて 2 0分間 の成膜を行ない、 得られためっき膜を洗浄し乾燥して膜厚を測定した。
この条件にて 2 0分間の成膜を行ない、 得られためっき膜を洗浄し乾 燥して膜厚を測定し、 平均膜厚として 1. 2 0 i mを得た。 この結果成 膜速度は 6 0 nm/分であった。
これらのフェライ トめっきにおいても、 基板上に設けておいた C u膜 は侵されることなく、 C u膜上にはフェライ トめつき膜が成膜された。 得られためっき膜について、 実施例 1 と同様の評価を行なった。 すな わち X線回折の回折パターンからフェライ トのスピネル構造を確認し、 また回折線の強度比から { 1 1 1 } 面が基板面に平行に配列する配向傾 向を見出した。 走査型電子顕微鏡を用いた観察の結果、 膜の断面は柱状 に一様に成長した様子がみられること、 および膜の表面の平坦性を確認 した。
また、 この膜の飽和磁化 M sが 4 7 0 e m uノ c m3、 保磁力 H cが 1 5 O eであった。 また高周波用のパーミアンスメーターを用いて、 こ の膜の複素透磁率の周波数変化を求めた結果、 図 3に示す結果を得た。 この結果から本発明の高速フェライ トめっき法によって C oを含有させ た N i Z nフェライ ト膜を成膜することができ、 GH z帯における透磁 率の損失成分が大きく従って電磁ノィズ吸収の指標となる透磁率の損失 成分 " がピークをなす周波数 fpと透磁率の損失成分 との積 ίρ μ " の値が大きいフェライ ト膜が成膜できること、 そして GH z帯領域にお ける電磁ノィズ抑制体として使用できることが確認できた。
(実施例 3 )
実施例 1で用いた装置と同じ図 1に示した装置を用い、 塩化第一鉄が 40 mm o 1 Z 1の水溶液であって; Hが 4. 6の反応液をノズル 2か ら基板 1の面に 8 0 m l Z分の流量にて吹きつけ、 また亜硝酸ナトリ ウ ムの濃度が 2 0 mm o 1 Z、酢酸力リ ゥムの濃度が 2 4 0 mm o 1 / 1 で p Hを 9. 4の水溶液をノズル 3から同じ基板 1の面に 8 0 m 1 Z分 の流量で吹きつけた。 基板 1は円板 4に固定し、 円板 4と共に回転軸 5 により毎分 1 5 0回転の回転速度で回転させ、 基板に吹きつけられた液 を遠心力によって基板の表面から外周に向けて流し、 振り切るようにし た。 また基板 1は発熱体 6により加熱し、 温度制御を行なって 9 0°Cに 保った。 この条件にて 20分間の成膜を行ない、 得られためっき膜を洗 浄し乾燥して膜厚を測定した。
得られためっき膜を洗浄し乾燥して膜厚を測定した結果、 平均膜厚と して 2. 2 μ mが得られ、 成膜速度として 1 1 0 n niZ分と非常に高い 成膜速度が実現されていることが示された。
なお、 上記の実施例 1〜 3において、 p H調整液として用いた酢酸力 リ ウムの代わりに酢酸ナトリ ウムを用い、 上記の実施例 1〜 3と同様な
成膜を試みたところ、 実施例 1〜 3とほぼ同じ結果を得た。
なお、 酢酸力リゥムの代わりに他の弱酸と他の水酸化アル力リ金属と の塩を用いることができる。
本発明の高速フェライ トめっき法は、 上述した実施の形態にのみ限定 されるものではなく、 本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変 更を加え得ることは勿論である。 産業上の利用可能性
本発明の高速フェライ トめっき法によれば、 フェライ トめっきに用い る p H調整液と して、 酢酸カリウムなどのアルカリ金属の弱酸塩の水溶 液を用いることによって、 成膜時に水素イオンが生成し p H値が低下す るのを防ぎフェライ トめっきに適正な p H値を維持し、 高い成膜速度に て良好なフ ライ ト膜の成膜を得ることができる。