明 細 書 超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法 技術分野
本発明は、 超音波診断装置に関し、 特に生体内の組織の性状診断 を行うための超音波診断装置およびその制御方法に関する。 背景技術
近年、 心筋梗塞や脳梗塞などの循環器系疾病を患う人々が増加し てきており、 このような疾病の予防および治療を行うことが大きな 課題となっている。
心筋梗塞や脳梗塞の発病には、 動脈の硬化が深く関係している。 具体的には、 動脈壁に粥腫が形成されたり、 高血圧等の種々の要因 によって動脈の新しい細胞が作られなくなったりすると、 動脈は弾 力性を失い、 硬く、 脆くなる。 そして、 粥腫が形成された部分にお いて血管が閉塞したり、 粥腫を覆う血管組織が破裂することにより 粥腫が血管内へ流出し、 別の部分において動脈を閉塞させたり、 動 脈が硬化した部分が破裂したりすることによって、 これらの疾病が 引き起こされる。 このため、 動脈硬化を診断することがこれらの疾 病予防や治療には重要となる。
従来より、 動脈が硬化しているかどうかは、 血管カテーテルを用 いて血管内部の様子を直接観察することによって診断されていた。 しかし、 この診断には、 血管カテーテルを血管に挿入する必要があ るため、 患者への負担が大きいという問題があった。 このため、 血
管カテーテルによる観察は、 動脈が硬化していることが確かである 患者に対して、 その場所を特定するために用いられ、 例えば、 健康 管理のための検査として、 この方法が用いられることはなかつた。 動脈硬化の一因であるコレステロール値を測定したり、 血圧値を 測定したりすることは、 患者への負担が少なく、 容易に行うことの できる検査である。 しかし、 これらの値は、 動脈が硬化している度 合いを直接示すものではない。
また、 動脈硬化の治療薬を動脈の硬化が余り進行していない患者 に対して投与することができれば、 動脈硬化の治療に効果を発揮す る。 しかし、 動脈硬化が進行してしまうと、 治療薬によって動脈の 硬化を抑制することはできても、 硬化した動脈を完全に回復させる ことは難しいと言われている。
こうした理由から、 患者への負担が少なく、 動脈の硬化が進行す る前に動脈の硬化の度合いを診断する診断方法あるいは診断装置が 求められている。
患者への負担が少ない医療診断装置としては、 超音波診断装置が 従来より知られている。 超音波診断装置を用いて超音波を体外から 照射することによって、 患者に苦痛を与えることなく、 体内の形状 情報、 運動情報あるいは質情報を得ることができる。
特に超音波による計測を行えば、 測定対象物の運動情報が得られ るため、 変位量から、 測定対象物の弾性率を求めることができる。 つまり、 生体内の血管の弾性率を求めることができ、 動脈の硬化の 度合いを直接知ることが可能となる。 また、 患者に超音波プローブ をあてるだけで測定できるため、 患者への負担も少ない。 このため, 超音波診断装置を用いれば、 動脈硬化の正確な診断も可能であるし,
予防のための検診を被験者に対して負担を与える場合がなく行うこ とが期待される。
しかし、 従来より用いられている超音波診断装置は、 例えば胎児 の形状を観察したり、 胎児の心音を聴診したりする超音波診断装置 に代表されるように、 形状情報や運動情報の分解能はそれほど高く ない。 このため、 従来の超音波診断装置を用いて、 心拍に合わせて 収縮する動脈の弾性率を求めることは不可能であった。 例えば、 日 本特許公開公報特開昭 6 2— 2 6 6 0 4 0号公報に示されているも ののように、 測定対象の変位量計測が十分ではないものが多かった, 近年、 エレク トロニクス技術の進歩によって、 超音波診断装置の 測定精度を飛躍的に向上させることも可能になってきた。 これに伴 つて、 生体組織の微小運動を計測する超音波診断装置の開発が進ん でいる。 例えば、 特許文献 2は、 検波信号の振幅および位相の両方 を用い、 制約付最小二乗法によって対象の瞬時の位置を決定し、 高 精度な位相のトラッキングを実現する超音波振動装置を開示してい る。 この装置は、 拍動により大きく動いている組織上の微小振動を 計測することができる。 特許文献 2によれば、 振幅が 1 0 m m以上 ある拍動に伴う大振幅変位運動上の数百 H zまでの微小振動を拍動 が 1 0回程度繰り返されても十分再現よく計測することができる。 特開平 1 0 _ 5 2 2 6号公報の装置は、 数百 H zまでの高い周波 数成分を再現性よく計測でき、 超音波ビームを収束させることによ つて心筋や動脈壁上の直径 1〜 2 m m程度の領域の弾性特性を得る ことができる。 また、 一心拍中、 あらゆる時相の成分の超音波信号 が得られ、 その信号の周波数スぺク トル解析が可能である等の優れ た特徴を備えていると報告されている。
したがって、 この公報の技術を用いた超音診断装置によれば、 た とえば、 健康診断などにおいて、 被験者に負担を与えることなく、 経時的に動脈硬化の進行度合いを調べ、 動脈硬化による疾病を予防 することが可能となると期待される。 また、 動脈の微小領域におけ る弾性特性を測定することによって、 血管破裂が生じ易い部位を特 定し、 その部位を治療することが可能になると期待される。
超音波により計測された生体組織の運動情報は、 従来より、 モニ タなどの画像表示装置を用いて二次元マツビングをおこなうことに よって可視化される。 たとえば、 超音波受信信号を振幅強度に応じ て輝度変調することによって描いた直線を超音波ビームの走査につ れて画像に書き込み、 二次元の生体の断層像をリアルタイムで表示 する方法が広く用いられている。 この方法は Bモ一ド法と呼ばれ、 臓器などの生体組織の差異が、 その動きおよび適当な輝度の差異に よって表示される。 このため、 たとえば、 胎児の形状を観察したり 胆石を発見したりすることが可能であり、 形状情報や運動情報の分 解能がそれほど高くない従来の超音波診断装置では、 このような画 像表示がその診断の目的に合致していた。
しかしながら、 特開平 1 0— 5 2 2 6号公報に開示された技術な どを用いる高分解能の超音波診断装置の場合、 血管壁の弾性特性な どの運動情報を 1〜 2 m mの分解能で計測することが可能であるた め、 心臓の鼓動にともなって、 血管の内部を血液が移動し、 血管壁 が伸縮運動を行う様子が血管壁近傍の運動状態として計測される。 この時、 画像表示される弾性特性は、 計測したい血管壁の弾性特性 に加えて、 血管内部の血液の弾性特性が示されてしまう。 その結果. 血管壁と血液の境界が不明瞭となり、 血管壁の弹性特性を正確に評
価することが困難となる。 特に、 このような表示を利用して、 血管 壁において弾性特性の異なる領域を見つけ、 動脈硬化が生じている 部分を特定することは非常に困難となる。 発明の開示
本発明の目的はこのような問題を解決し、 流体部分を測定対象物 が含んでいても流体部分に隣接した領域の伸縮量や弾性率を見やす く画像表示することのできる超音波診断装置および超音波診断装置 の制御方法を提供する。
本発明の超音波診断装置は、 流体が移動している流体部分を含む 測定対象物へ超音波送信波を送信するための超音波プローブを駆動 する超音波プローブ駆動部と、 前記超音波送信波が前記測定対象物 において反射することにより得られ、 前記超音波プローブにより受 信する超音波反射波を増幅する受信部と、 前記超音波反射波を位相 検波する位相検波部と、 前記測定対象物の複数の測定対象位置にお ける前記測定対象物の運動速度を前記位相検波された信号からそれ ぞれ求め、 前記運動速度から、 前記測定対象物の各測定対象位置間 における伸縮量および/または弾性率を求める演算部と、 前記位相 検波された信号に基づいて、 前記測定対象物中における流体部分を 判定する流体判定部と、 前記流体判定部が判定した情報を用い、 前 記流体部分以外の領域において前記測定対象物の伸縮量および Zま たは弾性率を 2次元で画像表示するための画像データを生成する画 像デ一夕生成部とを備える。
ある好ましい実施形態において、 前記流体判定部は、 ドプラ法に よって前記流体部分を判定する。
ある好ましい実施形態において、 超音波診断装置は、 前記位相検 波された信号を所定の値よりも高い周波数成分および前記所定の値 以下の周波数成分に分離し、 分離した周波数成分の信号を選択的に 前記流体判定部および前記演算部へ入力するフィルタ部をさらに備 える。
ある好ましい実施形態において、 前記超音波プローブ駆動部は、 前 記測定対象物の伸縮量および Zまたは弾性率を求めるのに適した第 1の駆動パルスと、 前記ドプラ法により流体部分を判定するのに適 した第 2の駆動パルスとを生成し、 前記演算部は前記第 1の駆動パ ルスにより得られる超音波反射波を位相検波することにより得られ る信号から前記伸縮量および/または弾性率を求め、 前記流体判定 部は、 前記第 2の駆動パルスにより得られる超音波反射波を位相検 波することにより得られる信号から前記流体部分を判定する
ある好ましい実施形態において、 前記画像データ生成部は、 前記 各測定対象位置間における伸縮量および Zまたは弾性率をその値に 応じた諧調表示または色度表示を用いて二次元マツビングした第 1 の画像と、 前記流体部分を所定の色で表示し、 前記流体部分以外の 領域を無色透明で表示した第 2の画像とを合成した画像データを生 成する。
ある好ましい実施形態において、 前記画像デ一夕生成部は、 前記 流体部分に対応する位置における前記伸縮量および Zまたは弾性率 を所定の色または無色透明で示し、 前記流体部分以外の領域に対応 する位置における前記伸縮量および/または弾性率をその値に応じ た諧調表示または色度表示を用いて二次元マツビングした第 3の画 像を含む画像データを生成する。
ある好ましい実施形態において、 超音波診断装置は、 前記超音波 反射波を包絡線検波する包絡線検波部と、 包絡線検波された信号を 対数増幅する増幅部とをさらに備え、 前記画像デ一夕生成部は、 前 記増幅部から得られる信号によって生成した Bモード画像を前記第 1および第 2の画像または前記第 3の画像と合成した画像データを 生成する。
ある好ましい実施形態において、 前記超音波プローブ駆動部は、 Bモ一ド画像を生成するのに適した第 3の駆動パルスをさらに生成 し、 前記包絡線検波部は、 前記第 3の駆動パルスにより得られる超 音波反射波を包絡線検波する。
ある好ましい実施形態において、 超音波診断装置は、 前記画像デ 一夕生成部が出力する画像データに基づいて画像を表示する表示部 をさらに備える。
また、 本発明の超音波診断装置の制御方法は、 超音波を送受信す る送受信部と、 受信した超音波を位相検波する位相検波部と、 位相 検波した超音波に基づいて伸縮量および Zまたは弾性率を計算する 演算部とを備えた超音波診断装置の制御方法であって、 流体が移動 している流体部分を含む測定対象物へ超音波を送信し、 前記超音波 が前記測定対象物において反射することにより得られる超音波反射 波を受信するステップ (A ) と、 前記超音波反射波を位相検波する ステップ (B ) と、 前記測定対象物の複数の測定対象位置における 前記測定対象物の運動速度を前記位相検波された信号からそれぞれ 求め、 前記運動速度から、 前記測定対象物の各測定対象位置間にお ける伸縮量および Zまたは弾性率を求めるステップ (C ) と、 前記 位相検波された信号に基づいて、 前記測定対象物中における流体部
分を判定するステップ (D ) と、 前記流体判定部が判定した情報を 用い、 前記流体部分以外の領域において前記測定対象物の伸縮量お よび Zまたは弾性率を 2次元で画像表示するための画像デ一夕を生 成するステップ ( E ) とを包含する。
ある好ましい実施形態において、 前記ステップ ( D ) においてド ブラ法により前記流体部分を判定する。
ある好ましい実施形態において、 超音波診断装置の制御方法は、 前記位相検波された信号から所定の値よりも高い周波数成分および 前記所定の値以下の周波数成分を分離するステップ (F ) をさらに 包含し、 前記ステップ (C ) を、 前記分離された周波数成分の信号 に基づいて実行する。
ある好ましい実施形態において、 前記ステップ (A ) において、 前記測定対象物の伸縮量および/または弾性率を求めるのに適した 第 1の駆動パルスと、 前記ドプラ法により流体部分を判定するのに 適した第 2の駆動パルスとを前記測定対象物へ送信し、 前記ステツ プ (C ) において、 前記第 1の駆動パルスにより得られる超音波反 射波を位相検波することにより得られる信号から前記伸縮量および Zまたは弾性率を求め、 前記ステップ (D ) において、 前記第 2の 駆動パルスにより得られる超音波反射波を位相検波することにより 得られる信号から前記流体部分を判定する。
ある好ましい実施形態において、 前記ステップ (E ) は、 前記伸 縮量および/または弾性率をその値に応じた諧調表示または色度表 示を用いて二次元マツビングした第 1の画像と、 前記流体部分を所 定の色彩で表示し、 前記流体部分以外の領域を無色透明で表示した 第 2の画像とを合成した画像データを生成する。
ある好ましい実施形態において、 前記ステップ (E ) は、 前記流 体部分に対応する位置における前記伸縮量および/または弾性率を 所定の色彩または無色透明で示し、 前記流体部分以外の領域に対応 する位置における前記伸縮量および/または弾性率をその値に応じ た諧調表示または色度表示を用いて二次元マツビングした第 3の画 像を含む画像データを生成する。
ある好ましい実施形態において、 超音波診断装置の制御方法は、 前記超音波反射波を包絡線検波し、 包絡線検波された信号を対数増 幅するステップ (G ) をさらに包含し、 前記ステップ (E ) は、 前 記対数増幅された信号による Bモード画像と、 前記第 1および第 2 の画像または前記第 3の画像とを合成した画像データを生成する。 ある好ましい実施形態において、 前記ステップ (A ) において、 Bモ一ド画像を生成するのに適した第 3の駆動パルスをさらに生成 し、 前記ステップ (G ) において、 前記第 3の駆動パルスにより得 られる超音波反射波を包絡線検波する。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明による超音波診断装置の第 1の実施形態の構成を 示すブロック図である。
図 2は、 超音波ビームと流体の移動方向との関係を説明する模式 図である。
図 3は、 ドプラシフトを説明するための模式的なグラフである。 図 4は、 超音波ビームと流体の移動方向との関係を説明する他の 模式図である。
図 5は、 生体の血管壁を伝播する超音波ビームを模式的に示して いる。
図 6は、 測定対象位置と弾性率を求める対象組織との関係を示す 図である。
図 7は、 画像データ生成部における画像の合成を説明する図であ る。
図 8は、 画像データ生成部における画像の合成を説明する他の図 である。
図 9は、 本発明による超音波診断装置によって、 頸動脈を診断し た場合の画像の一例を示す模式図である。
図 1 0は、 比較のために、 頸動脈を診断した場合において流体部 分の弾性率も示した画像の一例を示す模式図である。
図 1 1は、 本発明による超音波診断装置の第 2の実施形態の構成 を示すブロック図である。
図 1 2は、 図 1 1に示す超音波診断装置で用いられる超音波駆動 パルス列を説明する模式図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明の超音波診断装置は測定対象物の各部の運動速度や各微小 な領域における伸縮量および弾性率を測定する。 測定対象物自体は 移動しない。 本発明の超音波診断装置は、 特に生体の各部の弾性率 を計測するのに適しており、 空間分解能も高いため、 血管壁の伸縮 量や弾性率の計測に好適に用いることができる。 以下、 血管壁の伸 縮量や弾性率を計測する場合を例にとり、 本発明の超音波診断装置 を説明する。
本発明の超音波診断装置を用いて計測する血管壁近傍では、 血管 壁が血液の流れる流路を規定し、 その流路に沿って血液が移動する < このため、 血管壁近傍の伸縮量や弾性率を計測し、 画像表示した場 合、 血管壁に隣接する血液の弹性特性が示され、 血管壁と血液の境 界が不明瞭となり、 血管壁の弾性特性を正確に評価することが困難 とな^)。
この問題を解決するため、 本発明の超音波診断装置では、 血管壁 の運動特性を評価する際に、 血液の運動特性を表示しないようにす る。 具体的には、 測定対象物から得られる超音波反射波から、 移動 している血液である流体部分を判定し、 測定対象物中の流体部分の 特定または位置情報の取得を行う。 そして、 超音波の送受信によつ て得た血管壁近傍の運動特性を 2次元マツビングし、 画像表示する ためのデ一夕を作成する際、 特定した流体部分の情報を利用し、 流 体部分では運動特性を表示しないようにする。
(第 1の実施形態)
以下、 本発明による超音波診断装置の第 1の実施形態を概略的に 説明する。 図 1は、 超音波診断装置 5 0の構成を示すブロック図で ある。 超音波診断装置 5 0は、 超音波診断装置本体 1 と、 超音波プ ローブ 2と、 モニタ 1 6とを備えている。 また、 血圧計 1 7と E C G (心電計) 1 8が超音波診断装置本体 1へ接続されている。
超音波診断装置本体 1は、 超音波送受信部 3、 C P U 4、 遅延時 間制御部 5、 位相検波部 6、 およびフィルタ部 7 1を含む。
超音波プローブ 2は超音波診断装置本体 1の超音波送受信部 3に 接続されており、 測定対象物である生体に対して超音波の送受信を 行う。 測定対象物は血管内部を流れる血液である流体部分を含んで
いる。 超音波プローブ 2は、 アレイ状に配列された複数の超音波振 動子 (超音波振動子群) を有している。
超音波送受信部 3は、 電子部品等を用いて構成され、 超音波プロ ーブ駆動部となる超音波プローブ 2を駆動する駆動回路と、 超音波 反射波を増幅する受信部となる受信回路を含む。 超音波診断装置本 体 1全体の制御等を行う C P U 4の制御にしたがって、 超音波プロ —ブ駆動回路は所定の駆動パルス信号を超音波プローブ 2に与える, 駆動パルスにより超音波プローブ 2から送信される超音波送信波は. 生体において反射し、 生じた超音波反射波が超音波プローブ 2で受 信される。 超音波プローブ 2により受信された超音波反射波は、 受 信回路において増幅される。 超音波送受信部 3はまた A / D変換回 路を含み、 受信回路において増幅された超音波反射波はデジタル信 号に変換される。
遅延時間制御部 5は超音波送受信部 3に接続されており、 超音波 送受信部 3から超音波プローブ 2の超音波振動子群に与える駆動パ ルス信号の遅延時間を制御する。 これにより、 超音波プローブ 2か ら送信される超音波送信波の超音波ビームの音響線の方向や焦点深 度を変化させる。 また、 超音波プローブ 2によって受信され、 超音 波送受信部 3によって増幅された超音波反射波信号の遅延時間を制 御することにより、 受信される超音波の音響線の方向を変化させる ことができる。 遅延時間制御部 5の出力は位相検波部 6に入力され る。
以下において詳細に説明するように、 超音波送受信部 3によって 送受信する超音波は、 測定対象物の弾性率測定、 ドプラ法による流 体部分の判定および Bモード画像表示に用いられる。 このため、 超
音波送受信部 3および遅延時間制御部 5は、 これらのいずれの目的 にも適した一種類の駆動パルスおよび走査方法で超音波の送受信を 行う。 特に、 超音波診断装置 5 0を用いて測定対象物の弾性率を求 めることが重要であるので、 弾性率測定に最も適した駆動パルス、 遅延時間、 および走査方法が選択されることが好ましい。
位相検波部 6は、 遅延時間制御部 5で遅延制御された受信反射波 信号を位相検波し、 実部信号と虚部信号とに分離する。 エイリアシ ングによる高周波成分を除去するために位相検波部 6の出力部分に 高周波成分を除去するフィルタを設けてもよい。 遅延時間制御部 5 および位相検波部 6はソフトウェアによって構成してもよいし、 ハ ―ドウエアによって構成してもよい。 分離された実部信号および虚 部信号はフィルタ部 7 1に入力される。 フィルタ部 7 1は、 分離さ れた実部信号を所定の値よりも高い周波数成分および所定の値以下 の周波数成分に分離する第 1のフィルタ 7と、 分離された虚部信号 を所定の値よりも高い周波数成分および所定の値以下の周波数成分 に分離する第 2のフィルタ 8とを含む。 第 1のフィルタ 7および第 2のフィル夕 8は、 D S P (デジタル · シグナル · プロセッサ) な どにより構成され、 遮断周波数あるいは通過帯域が異なるものの基 本的に同じ機能を備える。
フィルタ部 7 1の機能を図 2および図 3を参照してさらに説明す る。 図 2は、 本発明の超音波診断装置 5 0を用いて測定対象物であ る生体 6 0に超音波を送信する様子を模式的に示している。 生体 6 0は、 血管壁 6 4と、 血管壁 6 4により規定される流路を流れる血 液である流体部分 6 1 と.. 血管以外の生体組織 6 2とを含む。 流体
は速度 v bで矢印方向に移動する。 血管壁 6 4は伸縮運動を行い、 生体組織 6 2はほとんど移動しない。
生体 6 0の表面に超音波プローブ 2を密着させ.. 超音波ビーム 6 3が流体の進行方向に対して鋭角 Θをなして流体 6 1の上流側に到 達するよう超音波を測定対象物に対して送信する。 この時、 流体 6 1において反射する超音波は、 ドプラ効果により高周波側にシフト する。 一方、 血管壁 6 4および生体組織 6 2はほとんど移動しない ため、 ドプラ効果による周波数のシフトは小さい。 このため、 図 3 に示すように、 流体 6 1から得られる超音波反射波 6 5は血管壁 6 4および生体組織 6 2から得られる超音波反射波 6 6に比べて高周 波側にシフトする。 フィルタ部 7 1において、 受信した超音波反射 波を周波数 f 1より大きい周波数成分と周波数 f 1以下の周波数成 分とに分離すれば、 受信した超音波反射波から流体 6 1による信号 成分を分離することができる。
流体 6 1から得られる超音波反射波 6 5と血管壁 6 4および生体 組織 6 2から得られる超音波反射波 6 6とが重なっていたり、 分離 が難しい場合には、 遅延時間制御部 5によって、 流体 6 1の進行方 向に対する超音波ビーム 6 3がなす角 0を小さくする。 これにより , 流体 6 1から得られる超音波反射のドプラシフトを大きくすること ができる。 また、 図 4に示すように、 超音波ビーム 6 3が出射する 方向が異なるよう、 超音波プローブ 2の超音波振動子群をグル一プ 分けしてもよい。
なお、 流体 6 1から得られる反射波がドプラシフトする方向は、 流体 6 1の進行方向に対する超音波ビーム 6 3の方向に依存する。 超音波ビーム 6 3が流体 6 1の下流側に到達し、 流体の進行方向に
対して鈍角 0をなすよう超音波を測定対象物に対して送信する場合 には、 流体 6 1から得られる反射波は低周波数側に移動する。 つま り、 流体 6 1から得られる超音波反射波 6 5は血管壁 6 4および生 体組織 6 2から得られる超音波反射波 6 6に比べて低周波数側にシ フトする。
したがって、 フィル夕部 7 1の第 1のフィルタ 7は、 位相検波部 において分離された実部信号をドブラシフ卜が大きい信号成分とド ブラシフトが小さい信号成分に分離し、 第 2のフィルタ 8は、 位相 検波部において分離された虚部信号をドプラシフトが大きい信号成 分とドプラシフ卜が小さい信号成分に分離する。
超音波診断装置本体 1は、 流体判定部 9、 演算部 1 0、 演算デー 夕記憶部 1 1、 画像データ生成部 7 2および表示データ記憶部 1 9 をさら含む。 流体判定部 9、 演算部 1 0、 演算データ記憶部 1 1お よび表示データ記憶部 1 9はソフトウエアまたはハ一ドウエアを用 いて構成され、 画像データ生成部 7 2は電子部品を用いた回路によ り構成される。 これらの構成により、 位相検波した信号から測定対 象領域内における流体部分の判定ならびに対象となる生体組織の運 動速度および位置変位量を演算する。
具体的には、 流体判定部 9は、 フィル夕部 7 1の第 1のフィルタ 7および第 2のフィル夕 8から位相検波部 6において分離された実 部信号および虚部信号のうちドプラシフトが大きい信号成分をそれ ぞれ受け取る。 そして、 一般的に用いられるドプラ法によって測定 対象領域内における流体部分を判定し、 少なくとも流体部分がどこ にあるかを判定する。 たとえば、 カラードプラ法を用いて測定対象 領域の各位置における流速を求めてもよいし、 パワードプラ法によ
る振幅情報に基づいて、 測定対象領域内における流体部分を特定し てもよい。 求められた流体部分の位置情報は、 画像データ生成部 7 2へ送られる。
一方、 演算部 1 0は、 フィル夕部 7 1の第 1のフィルタ 7および 第 2のフィルタ 8から位相検波部 6において分離された実部信号お よび虚部信号のうちドブラシフトが小さい信号成分をそれぞれ受け 取る。 演算部 1 0は、 運動速度演算部と、 位置演算部と、 伸縮演算 部と、 弾性率演算部とを含む。 演算部 1 0の運動速度演算部は、 受 け取った信号に基づいて、 複数の測定対象位置における生体組織の 運動速度を求める。 位置演算部は、 運動速度を積分することにより 位置変位量を求める。 また、 伸縮演算部は、 求めた位置変位量から 各測定対象位置間における生体組織の伸縮量を求める。 さらに、 弾 性率演算部において、 血圧計 1 7から入力される最低血圧値および 最高血圧値に関するデータを用いて対象となる組織の弾性率を求め る。 演算部 1 0の出力は画像データ生成部 7 2に入力される。
演算データ記憶部 1 1は、 流体判定部 9および演算部 1 0へ入力 される位相検波された信号、 あるいは、 流体判定部 9において求め られた流体部分の位置情報および演算部 1 0で求められた運動速度. 位置変位量、 伸縮量または弾性率をそれぞれ流体判定部 9および演 算部 1 0から受け取って記憶する。 伸縮量または弾性率を演算デー 夕記憶部 1 1が記憶していなくても、 位相検波された信号、 運動速 度、 位置変位量などを再び流体判定部 9および演算部 1 0が読み込 んで計算を行うことにより、 流体部分の位置情報や複数の測定対象 位置間の伸縮量や弾性率を求めることができる。
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図 1に示すように、 超音波診断装置本体 1は、 さらに検波部 1 2 および利得制御部 1 3を備えている。 検波部 1 2および利得制御部 1 3は、 測定対象領域の Bモード画像を得るために、 受信した反射 波信号をその振幅強度に応じた輝度で変調する。 具体的には、 検波 部 1 2は遅延時間制御部 5から出力される受信反射波信号を包絡線 検波する。 利得制御部 1 3は検波した信号を対数増幅し、 画像デー 夕生成部 7 2へ出力する。 検波部 1 2および利得制御部 1 3はソフ トウエアによって構成してもよいし、 ハードウェアにより構成して もよい。
画像データ生成部 7 2は、 D S C (デジタル · スキャン · コンパ
—タ) 1 4および表示制御部 1 5を含む。 D S C 1 4は、 演算部 1 0において求められた伸縮量および Zまたは弾性率を二次元マツピ ングデータに変換する。 また、 流体判定部 9から得られる少なくと も流体部分の位置情報を二次元画像に変換する。 カラードプラ法を 流体判定部 9が採用している場合には、 その流体が移動する方向お よびその流速に基づいて彩色されたカラ一フロー画像を生成しても よい。 また、 パワードプラ法を用いる場合にはその流速に応じた諧 調 (輝度) 画像を生成してもよい。 利得制御部 1 3から出力される 信号は Bモ一ド画像のデータに変換される。 D S C 1 4の出力は表 示制御部 1 5へ入力される。
表示制御部 1 5は、 D S C 1 4から出力されるこれらの画像デー 夕を合成し、 モニタ 1 6に表示するための画像デ一夕に変換する。 また、 血圧計 1 7から得られる最低血圧値および最高血圧値と E C G (心電計) 1 8から得られる心電図の波形信号を受け取り、 これ らの信号を画像データに変換し、 D S C 1 1からの画像データに重
畳する。 このとき、 以下において詳しく説明するように、 伸縮量お よび Zまたは弾性率の二次元マツピングデ一夕のうち、 流体部分に 位置するデータは、 流体判定部 9から得られる画像の流体部分の位 置情報を利用して、 時間の経過によっても変化しない所定の彩色で 表示されるようにする。 表示制御部 1 5の出力はモニタ 1 6に入力 され、 モニタ 1 6はこれを表示する。 表示制御部 1 5の出力は表示 データ記憶部 1 9へも出力され、 任意のタイミングにおける動画あ るいは静止画を表示デ一夕記憶部 1 9に記憶させることができる。 次に、 超音波診断装置 5 0の動作を詳細に説明する。 遅延時間制 御部 5により遅延時間が制御された複数の駆動パルス信号が超音波 送受信部 3から出力され、 超音波プローブ 2は、 各駆動パルス信号 を超音波送信波に変換し、 生体へ送信する。 生体組織によって反射 して得られる超音波反射波は、 超音波プローブ 2で受信され、 電気 信号に変換される。 超音波送受信部 3において受信した受信反射波 信号は、 遅延時間制御部 5を経て位相検波部 7に入力される。 遅延 時間制御部 5は、 駆動パルス信号ごとに異なる偏向角度で超音波の 送受信を行うことができるよう、 各駆動パルス信号に異なる遅延時 間データを設定する。
位相検波部 6は、 受信反射波信号を位相検波し、 実部信号および 虚部信号に分離する。 フィルタ部 7 1の第 1のフィルタ 7は、 位相 検波部において分離された実部信号をドプラシフトが大きい信号成 分とドプラシフトが小さい信号成分に分離し、 第 2のフィルタ 8は. 位相検波部において分離された虚部信号をドプラシフ卜が大きい信 号成分とドプラシフ卜が小さい信号成分に分離する。
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ドプラシフ卜が大きい信号成分は流体判定部 9へ入力され、 ドプ ラ法によつて測定対象領域内における流体部分を判定し、 少なく と も流体部分の位置情報を求める。 ドプラシフトが小さい信号成分は. 演算部 1 0へ入力される。
演算部 1 0における組織の位置変位量の演算について、 図 5を用 いて詳細に説明する。 図 5は、 生体 6 0を伝播する超音波ビーム 2 4を模式的に示しており、 図では血管壁 6 4および血管以外の生体 組織 6 2が示されている。 生体 6 0の表面に配置された超音波プロ ーブ 2から送信した超音波送信波は、 生体 6 0中を進行する。 超音 波送信波は、 ある有限の幅を持つ超音波ビーム 2 4として生体 6 0 中を伝播し、 その過程において生体組織 6 2および血管壁 6 4によ つて反射または散乱した超音波の一部が超音波プローブ 2へ戻り、 超音波反射波として受信される。 超音波反射波は時系列信号 r
( t ) として検出され、 超音波プローブ 2に近い組織から得られる 反射の時系列信号ほど、 時間軸上で原点近くに位置する。 超音波ビ ーム 2 4の幅 (ビーム径) は、 遅延時間を変化させることにより制 御することができる。
超音波ビームの中心軸である音響線 2 2上に位置する血管壁 2 3 中の複数の測定対象位置 P n ( P l 、 P 2、 P 3、 P k - · · P n nは 3以上の自然数) は、 ある一定間隔 Hで超音波プローブ 2に近 い順に P l 、 P 2、 P 3、 P k - · · Ρ ηと配列している。 生体 6 0の表面を原点とする深さ方向の座標を Ζ 1 、 Ζ 2、 Ζ 3、 Ζ k、 · · · Z nとすると、 測定対象位置 P kからの反射は、 時間軸 上で t k = 2 Z k / cに位置することになる。 ここで cは生体内で の超音波の音速を示す。 反射波信号 r ( t ) を位相検波部 6におい
て位相検波し、 検波した信号を実部信号および虚部信号に分離して フィル夕部 2 1を通過させる。 演算部 1 0では、 反射波信号 r
( t ) と微小時間△ t後の反射波信号 r ( t + Δ t ) において振 は変化せず、 位相および反射位置のみが変化するという制約のもと で、 反射波信号 r ( t ) と r ( t + Δ t ) との波形の整合誤差が最 小となるよう最小二乗法によって位相差を求める。 この位相差から. 測定対象位置 P nの運動速度 V n ( t ) が求められ、 さらにこれを 積分することにより、 位置変位量 d n ( t ) を求めることができる, 次に、 これらの測定演算結果を用いた弾性率の演算 ·表示につい て、 図 6を用いて説明する。 図 6は、 測定対象位置 P nと弾性率演 算の対象組織 T nとの関係を示す図である。 対象組織 T kは、 隣接 する測定対象位置 P kと P k + 1 とに挟まれた範囲に厚み Hを有し て位置している。 n個の測定対象位置 P 1 · · · · P nからは (n - 1 ) 個の対象組織 T 1 · · · · T n— 1を設けることができる。 対象組織 T kの伸縮量である厚み変化量 D k ( t ) は、 測定対象 位置 P kと P k+ 1の位置変位量 d k ( t ) と d k + 1 ( t ) とか ら、 D k ( t ) = d k + 1 ( t ) - d k ( t ) として求められる。 血管壁 6 4の組織 T kの厚みの変化は、 心拍による血圧の変化に応 じて生じる。 よって、 対象組織 T kの厚み H (最低血圧時の値) 、 対象組織の厚み変化量 D k ( t ) の最大値 D km a x、 および最低 血圧値と最高血圧値との差である脈圧 Bを用い、 対象組織 T kの歪 み率である弾性率 χ kを χ k = (B X H) /D km a xにより求め ることができる。 ここで、 弾性率 χ kは血管半径方向の弾性率であ る。 そして、 遅延時間を制御し、 送受信する超音波の偏向角度を走 查させることにより、 血管壁 6 4の任意の断面における弾性率を二
次元マッピング表示することができる。 血管内の血流の脈動周期に ともなって、 最低血圧値および最高血圧値が更新されるので、 弹性 率 Z kも更新される。 したがって、 弾性率はおおよそ脈動周期に一 致するリアルタイムで更新される。
なお、 血管壁には円周方向の弾性率も存在するので、 血管壁の半 径方向の弾性率に換えて、 あるいは、 血管壁の半径方向の弾性率と ともに血管壁の円周方向における弾性率を求めてもよい。 血管壁の 弾性率を異なる方向において求めることによってより詳細に動脈硬 化の診断を行うことが可能となる。
次に画像デ一夕生成部 7 2における画像データの生成を説明する, 上述したように、 画像データ生成部 7 2の D S C 1 4では、 演算部 1 0において求められた弾性率を二次元マッビングデータに変換す る。 弾性率に変えて伸縮量を表示するようにしてもよいし、 弾性率 および伸縮量を切り替えて表示するよう、 両方の二次元マツピング データを生成してもよい。 二次元マッピング表示では、 弾性率の大 きさにしたがって、 輝度を分布させた色彩による諧調表示を行つた り、 弾性率の大きさに色度を対応させた色度表示を行ったりするこ とできる。 たとえば弾性率の大きい箇所および小さい箇所をそれぞ れ青色および赤色で表示し、 弾性率がその中間の値である箇所は青 色と赤色の中間色で表示することができる。 色相の組み合わせは、 ユーザが自由に選択できるようにしてもよい。
また、 流体判定部 9から得られる少なくとも流体部分の位置情報 を二次元画像に変換する。 上述したように流体部分をカラ一ドプラ 法により移動方向および流速に応じた色度表示してもよいし、 パヮ —ドプラ法により諧調表示してよい。 利得制御部 1 3から出力され
る信号は Bモード画像に変換される。 D S C 1 4の出力は表示制御 部 1 5へ入力される。
表示制御部 1 5は、 これらの 3つの画像を合成し、 画像データを 生成する。 図 7は、 表示制御部 1 5における画像の合成を模式的に 示している。 図 7において、 流体部分 7 5 bの位置情報を含む二次 元画像データ 7 5と、 弾性率の二次元マツピングデ一夕 7 6 aを含 む画像データ 7 6と、 Bモード画像デ一夕 7 7 とが模式的に示され ている。 二次元画像データ 7 5は流体部分 7 5 bとその他の部分 7 5 aとを含んでいる。 流体判定部 9において、 各測定位置における 流体の速度を求めている場合には、 流体部分がその移動方向および 速度の大きさに応じた諧調あるいは色度で表示するよう D S C 1 4 では画像データが生成される。 しかし、 表示制御部 1 5は、 この二 次元画像データ 7 5において、 流体部分 7 5 bを黒色、 あるいは、 時間の経過によっても変化しない所定の色で表示し、 その他の部分 7 5 aは無色透明で表示するよう、 D S C 1 4で生成した画像デー 夕に対して変換処理を施す。
弾性率の二次元マツビングデータ 7 6 aは上述したように、 弾性 率の大きさに応じた諧調あるいは色度で表示されている。 Bモード 画像 7 7には血管壁 6 4および血管壁 6 4により規定される空間を 移動する血液である流体部分 6 1が示されている。
図 7に示すように、 これら 3つの画像は測定対象物の位置が互い に対応するように表示制御部 1 5において重畳され、 画像デ一夕 Ί 8が生成される。 このとき、 弾-性率の二次元マツピングデータ 7 6 aは血管壁 6 4および流体部分 6 1にまたがる領域に作製されてい るが、 二次元画像データ 7 5において、 流体部分 7 5 bが黒色で示
されているため、 二次元マツピングデ一夕 7 6 aの流体部分 7 5 b と重畳する部分 7 6 a ' は黒色で表示される。 つまり、 流体部分 7 5 bに対応する位置をマスクすることにより、 合成された画像デー 夕 7 8において、 弾性率の表示が求められる血管壁 6 4に位置する 領域 7 6 a ' , にのみ弾性率に応じた諧調あるいは色度で表示され る二次元マップが表示され、 血管壁 6 4に隣接する流体 (血液) 6 1部分 7 6 a ' は黒色で表示される。 このため、 血管壁 6 4の弹性 特性が見やすくなり、 血管壁 6 4中弾性率が正常ではない部分を容 易に見つけることができるようになる。 また、 血管の脈動により、 血管壁 6 4が移動あるいはシフトしても流体 6 1部分は常に黒色で 表示されるため、 弾性率が正常ではない部分のシフトを目視によつ て容易に追跡することができる。
このように、 本実施形態では、 流体部分から得られるドプラシフ トの大きい信号成分を除去し、 残った信号成分を用いて得られる弹 性率を単純に二次元マップで表示するのではなく、 流体部分から得 られるドプラシフトの大きい信号成分から流体部分の位置情報を求 め、 得られた位置情報から流体部分には弾性率を表示しないように している。 位置情報を求めることにより、 流体部分と流体部分では ない部分 (血管壁) との境界をノイズなどの影響を受けずに明確に することができ、 弾性率が正しく求められる部分を明瞭に表示する ことができる。
なお、 上述の画像データ生成部 7 2では、 流体判別部 9のデータ を利用してマスクを作製し、 弾性率の二次元マツビングデータの一 部のみを弾性率に応じた諧調あるいは色度で表示させていたが、 流
体判別部 9の位置情報を直接利用して、 流体部分以外の領域におい て弾性率の二次元マツピングデータを作製してもよい。
たとえば図 8に示すように、 演算部 1 0において求めた弾性率を D S C 1 4において二次元マツビングする際、 流体判別部 9から得 られた流体部分の位置情報を利用して、 流体部分に対応する領域 7 6 a ' においては弾性率をマッピングしないで、 流体部分以外の領 域 7 6 a ' ' においてのみ弾性率をマッピングした画像データ 7 9 を作製する。 あるいは流体部分に対応する領域 7 6 a ' は、 黒色ま たは無色透明で示すようにして、 流体部分以外の領域 7 6 a ' ' に おいてのみ弾性率をマッピングした画像デ一夕 7 9を作製する。 こ の画像データ 7 9と Bモ一ド画像データ 7 7とを合成すると、 弹性 率の表示が求められる血管壁 6 4に位置する領域 7 6 a ' ' にのみ 弾性率に応じた諧調あるいは色度で表示される画像データ 7 8が得 られる。 この場合、 流体部分 7 6 a ' に対応する領域は黒色または Bモード画像が示される。 このようにして生成した画像データ 7 8 をモニタ 1 6に入力することにより、 生体組織の各部の弾性率が見 やすく表示される。
画像の表示は、 生体に向けて超音波送信波を送信し、 生体から反 射する超音波反射波を受信することにより、 測定データを収集しな がら行ってもよい。 これをリアルタイム表示モードという。 または 測定データを収集後、 演算データ記憶部 1 0からデータを読み出し て上述の手順により画像データ 7 8を生成することにより、 行って もよい。 これをオフライン表示モードという。 超音波診断装置はリ アルタイム表示モ一ドおよびオフライン表示モードの両方を備えて いてもよい。
ここで、 「リアルタイム表示」 とは、 計測データを取得するため に、 生体に対して超音波プローブ 2を当てて超音波の送受信を行つ ている間に、 受信した超音波反射波に基づく画像を逐次表示するこ とをいう。 受信した超音波反射波が瞬時に演算され、 超音波反射波 の受信と実質的に同時に画像表示が行われてもよいし、 演算に時間 を要するため、 受信から画像の表示までに数ミリ秒から数十ミリ秒 程度のタイムラグが存在していてもかまわない。 リアルタイム表示 は、 表示された画像に基づいて計測領域を移動させたり、 目的とし ている部位を探索するために適している。 したがって、 上述の時間 程度のタイムラグが存在する場合であっても、 その期間、 超音波プ ローブ 2を生体に対して静止させておく ことが可能である限り、 「リアルタイム表示」 として機能することができる。 また、 超音波 反射波の受信と画像表示とが上述の関係を満たす限り、 超音波反射 波に基づく種々の演算データがレジス夕や一時記憶のためのメモリ などに記憶されてもかまわない。
また、 リアルタイム表示モードおよびオフライン表示モードにお いて、 弾性率を計算する単位面積を変化させてもよい。 たとえば、 リアルタイム表示モードにおいて生体組織の各部の弾性率を表示す る場合には、 弾性率を計算する単位面積を大きくすることにより空 間分解能を低くし、 オフライン表示モードにおいて生体組織の各部 の弾性率を表示する場合には、 弾性率を計算する単位面積を小さく することにより空間分解能を高くしてもよい。 このようにすること により、 リアルタイム表示モードでは、 ノイズや超音波プローブと 生体との接触状態の変化等の影響を受けにくい安定した画像表示を 行うことができ、 表示された画像に基づいて超音波プロ一ブを移動
させることにより計測領域を移動させたり、 目的としている部位を 探索することが容易となる。 また、 被験者が不要な動作をしても、 表示している画像が大きく変化しにくいため、 被験者に厳密な静止 状態を強いる必要が無く、 被験者に好ましくない緊張を与えること を避けることができる。
さらに、 伸縮量や弾性率の空間分解能を低くすることにより、 リ アルタイム表示モードにおける画像表示のための計算量を低減させ ることができる。 このため、 超音波診断装置 5 0の C P U 4に要求 される演算処理能力を低くすることができ、 演算処理能力がさほど 高くない安価な C P U 4を超音波診断装置 5 0に用いることが可能 となる。 これより、 超音波診断装置のコストを低減させることでき る。 また、 計算量が少なくてすむため、 超音波反射波の受信後速や かに画像表示をさせることが可能となり、 タイムラグの少ないリァ ルタイム表示をおこなうこともできる。
なお、 上記実施形態では超音波反射波信号から測定対象組織の運 動速度および位置変位量を特許文献 2に開示された方法によって求 めている。 しかし、 たとえば R F信号に対するゼロクロス点検出法. 組織ドブラ法のような他の方法を用いて運動速度および位置変位量 を求めてもよい。
また、 深さ方向における計測エリアが狭い (短い) 場合には、 超 音波の送信焦点深度および受信焦点深度の両方を固定しても、 分解 能の高い計測をおこなうことできる場合が多い。 深さ方向における 計測エリアが広い (長い) 場合には、 送信焦点深度を変えたり、 受 信時にダイナミックフォーカシングを行う等により分解能の高い像 を得ることができる。
また、 流体判定部 9において、 カラードプラ法やパワードプラ法 によって、 流体の移動速度や方向に関する情報を求め、 D S C 1 4 において、 流体部分の流速や移動方向を適切な色度表示または諧調 表示によって画像データとして変換している場合には、 Bモード画 像データにこれらの画像デ一夕を重畳させてモニタで表示すること ができるようにしてもよい。
以下、 超音波診断装置 5 0における画像表示の一例を説明する。 図 9は、 超音波診断装置 5 0を用いて頸動脈の検診を行った結果を 表した画像の模式図である。 この例では、 頸動脈の血管壁の弾性率 を計測し、 血管壁中の微小な石灰化部位を探索する。 血管壁の石灰 化は典型的な動脈硬化である。
図 9において、 左半分および右半分に Bモードによる生体の二次 元断層画像 44、 4 5が示されている。 二次元断層画像 44、 4 5 は生体の頸動脈の長軸方向の断層図であり、 二次元断層画像 4 、 4 5において、 血管前壁 3 4、 血管後壁 3 6およびそれらに挟まれ た流体部分である血液 3 5が示されている。 超音波プローブ 2 (図 1 ) を生体に当てて、 検診を開始すると、 二次元断層画像 44、 4 5が得られる。 また、 二次元断層画像 44、 4 5を撮像するのに用 いられた超音波ビームの音響線 3 3 (点線にて表示) 、 血管前壁 3 4と血液 3 5との境界を囲むマーカ 3 7 ( 2本線にて表示) 、 検査 領域 (Region Of Inspect ion, R〇 I とも略す) 3 8 (四隅の 位置を表示) 、 および検査領域 3 8内を深さ方向に 7等分する位置 を示すマーカ 3 9が二次元断層画像 44に示される。 この例では、 8つのマ一力にて検査領域 3 8を 7層に等分して表示しているが、
実際の位置変位量測定は 1 5層にて行い、 したがって 1 4層分の弾 性特性を演算している。
図 9において右側に示される二次元断層画像 4 5には、 検査領域 3 8内の各部の弾性率 (血管壁の半径方向の弾性率) を求めた弾性 特性マップ 4 6が重畳して示される。 弹性特性マップ 4 6の位置は 二次元断層画像 4 4における検査領域 3 8に対応している。 弹性特 性マップ 4 6が示す領域の大きさは横 1 0 . O m m X縦 3 . 5 m m . 各単位セルの大きさは横 0 . 4 m m X縦 0 . 2 5 mmである。 した がって、 検査領域 3 8は、 1 4行および 2 5列に分割された単位セ ルからなる。
また、 血管壁の円周方向の弾性率も計測する場合には血管の内径 を求める必要があるため、 検査領域 3 8に血液 3 5と血管後壁 3 6 との境界が含まれるように二次元断層画像 4 4上において検査領域 3 8を設定する。 同様に、 マーカ 3 7を血液 3 5と血管前壁 3 4と の境界を含むように設定する。 超音波診断装置 5 0の C P U 4は、 マーカ 3 7および検査領域 3 8において、 Bモ一ドの輝度変化量ま たは輝度変化率があらかじめ設定された敷地を越えた位置を血液 3 5と血管前壁 3 4との境界の位置および血液 3 5と血管後壁 3 6と の境界の位置として求め、 これらの位置の差から血管の内径を求め る。 求めた血管の内径変化はグラフ 4 1 として図 9の下方に示され ている。 また、 E C G 1 8から受け取った心電図の波形 4 2も表示 する。
上述したように、 弾性特性マップ 4 6において血液 3 5と重なる 領域は黒色で表示されている。 このため、 血液 3 5と血管後壁 3 6 との境界の位置が明示され、 血管後壁 3 6内の弾性率が高い部分の
位置を特定しやすくなつている。 なお、 図 9において、 弹性特性マ ップ 4 6は、 各部の弾性率の値に応じたモノク口の濃淡で示されて いるが、 二次元断層画像 4 4および 4 5をモノクロ表示し、 弹性特 性マツプ 4 6を弾性率の値に応じた色度を用い、 カラー表示を行つ てもよい。
図 1 0は、 比較のために図 9と同様にして弾性率を測定し、 弹性 特性マップ 4 6の全体を弾性率の値に応じた諧調あるいは色度で表 示した場合の画面を示している。 図 1 0に示すように、 弾性特性マ ップ 4 6において、 血管後壁 3 6に対応する領域に加えて、 血液 3 5に対応する領域も弾性率が諧調あるいは色度で表示され、 血管後 壁 3 6と血液 3 5との境界がわかりにく くなつている。 このため、 血管後壁 3 6中の弾性率の特異部分を特定しにくくなつている。
また、 測定の目的から、 血液の弾性率は不必要である上に、 血流 によって反射した超音波から得られるデータは正しい弾性率を示さ ない。 このような不要でありかつ不正確な血液部分の弾性率を表示 させることは、 被験者の誤解を招くおそれもある。
なお、 二次元断層画像 4 4および 4 5は、 超音波の Bモード画像 であるため、 たとえば、 3 0フレーム/秒程度の表示速度でリアル タイムで更新することができる。 これに対して、 弹性特性の計算は 被験者の心拍間隔で行われるため、 弾性特性マップ 4 6は被験者の 心拍間隔 (約 1フレーム Z秒) で更新される。 このため、 二次元断 層画像 4 4および 4 5を 3 0フレーム/秒程度の表示速度で更新し ながら表示し、 弾性特性マップ 4 6を被験者の心拍間隔 (約 1フレ —ム/秒) で更新して表示してもよい。 しかし、 弾性特性マップ 4 6と重ねられる二次元断層画像 4 5は弹性特性マップ 4 6と同期し
て更新したほうが、 見易い画像が得られる。 また、 二次元断層画像
4 4は、 二次元断層画像 4 5の弾性特性マツプ 4 6で隠れた部分を 参照する目的で利用されることが多いため、 二次元断層画像 4 4も 弹性特性マップ 4 6と同期して更新したほうがより見易い画像を得 ることができる。
(第 2の実施形態)
以下、 本発明による超音波診断装置の第 2の実施形態を説明する, 第 1の実施形態において詳細に説明したように、 本発明の超音波診 断装置では、 弾性率の測定に加えて、 ドプラ法を用いた流体部分の 特定および Bモード画像の取得を行う。 第 1の実施形態では、 これ らの目的のために共通に用いられる駆動パルスを超音波送受信部 3 および遅延時間制御部 5によって制御していた。 しかし、 弾性率の 測定、 ドプラ法による流体部分の特定および Bモード画像の取得は. 受信した超音波反射にそれぞれ異なる信号処理を施すことにより達 成され、 最適な結果を得るための駆動パルスおよび走査方法は必ず しも一致しない。 このため、 本実施形態では、 それぞれの計測に最 適な駆動パルスおよび走査方法を用いる。
図 1 1に示すように超音波診断装置 5 1は、 第 1の実施形態の超 音波送受信部 3、 遅延時間制御部 5、 位相検波部 6、 流体判定部 9 および演算部 1 0 ' に換えて超音波送受信部 3 ' 、 遅延時間制御部
5 ' 、 位相検波部 6 ' 、 流体判定部 9 ' および演算部 1 0 ' を備え ている。 また、 スィッチ部 7 3 aおよび 7 3 bを備えている。
図 1 2は、 超音波送受信部 3 ' の駆動回路から出力される駆動パ ルス群 6 7を模式的に示している。 図 1 2に示すように、 駆動回路 から出力される駆動パルス群 6 7は、 駆動パルス 6 7 a、 6 7 bお
よび 6 7 cを含んでいる。 それぞれの駆動パルス 6 7 a- 6 7 cは 実際には複数のパルスを含むバースト波である。 駆動パルス 6 7 a は Bモード画像を得るために最適化されている。 同様に、 駆動パル ス 6 7 bおよび駆動パルス 6 7 cは、 弾性率の計測およびドプラ法 による流体部分の特定を行うことができるようそれぞれ最適化され ている。 最適化されるパラメ一夕としては、 遅延時間およびパルス 数などがある。
本実施形態では、 駆動パルス 6 7 a、 6 7 b、 6 7 cの時系列順 でこれらの駆動パルスが送信され、 駆動パルス群 6 7 cを構成して いるが、 駆動パルスの順序はこれに限られない。 たとえば、 弾性率 の計測を行うために最適化された駆動パルスを最初に送信してもよ い。
また、 図 1 2では、 駆動パルス群 6 7が 2つ示されているが、 実 施の計測では、 駆動パルス群 6 7を繰り返して送信することにより . それぞれの駆動パルス群 6 7に含まれる各駆動パルス 6 7 a、 6 7 b、 6 7 cが、 それぞれ Bモード画像の生成、 弾性率の計測および 流体部分の位置情報の特定に用いられる。 このため、 駆動パルス群 6 7における各駆動パルス 6 7 a、 6 7 b、 6 7 cのタイミングは それぞれの計測に要求される位相差に応じて変化してもよい。 超音 波送受信部 3 ' および遅延時間制御部 5 ' はこれらの駆動パルスを 含む駆動パルス群 6 7がそれぞれ最適な走査方法となるよう位相が 調整されて繰り返し送受信する。
各駆動パルス群 6 7の駆動パルス 6 7 a- 6 7 cが測定対象物に おいて反射し、 得られた超音波反射波はそれぞれ異なる信号処理を 施す必要がある。 このため C P U 4は、 スィッチ部 7 3 aおよび 7
3 bを用いて超音波反射波による信号処理経路を制御する。 具体的 には、 駆動パルス 6 7 aによる超音波反射波を超音波送受信部 3 ' が受信した場合には遅延時間制御部 5 ' から出力される超音波反射 信号はスィツチ部 7 3 aの切り換えによって検波部 1 2へ入力され る。 そして利得制御部 1 3において検波した信号を対数増幅し画像 データ生成部 7 2へ出力する。
一方、 駆動パルス 6 7 bおよび駆動パルス 6 7 cによる超音波反 射波を超音波送受信部 3 ' がそれぞれ受信した場合には、 遅延時間 制御部 5 ' から出力される超音波反射信号がスィツチ部 7 3 aの切 り換えによって位相検波部 6 ' へ出力される。 位相検波部 6 ' は第 1の実施形態で説明したように超音波反射信号を位相検波し、 実部 信号と虚部信号とに分離する。 得られた信号が駆動パルス 6 7 bに よるものである場合には、 スィツチ部 7 3 bによって実部信号およ び虚部信号を演算部 1 0 ' へ出力する。
演算部 1 0 ' は、 受け取った実部信号および虚部信号を用いて測 定対象物の各位置における運動速度、 位置変位量、 伸縮量および弹 性率を順に求める。 得られたデータは画像データ生成部 7 2へ送ら れる。
また、 位相検波部 6 ' において得られた実部信号および虚部信号 が駆動パルス 6 7 cによるものである場合には、 スィッチ部 7 3 b によって実部信号および虚部信号を流体判定部 9 ' へ出力する。 流 体判定部 9 ' はハイパスフィルタ 7 4を含んでおり、 実部信号およ び虚部信号からドプラシフ 1、が小さい信号成分を除去する。 そして, ドブラシフトが大きい信号成分を用い流体部分の判定を行う。 求め た流体部分の位置情報は画像データ生成部 7 2へ出力される。
画像データ生成部 7 2は、 演算部 1 0 ' から受け取る伸縮量およ び/または弾性率のデータと、 流体判定部 9 ' から受け取る流体部 分の位置情報とを用いて、 伸縮量および/または弾性率の二次元マ ッビングデータを作成する。 このとさ、 二次元マツピングデ一夕中 の流体部分に位置するデータは、 流体判定部 9から得られる画像の 流体部分の位置情報を利用して、 時間の経過によっても変化しない 所定の彩色で表示されるようにする。 また、 画像データ生成部 7 2 は、 利得制御部 1 3から得られる信号に基づき、 Bモード画像のデ 一夕を生成する。 得られた Bモ一ド画像のデータと伸縮量および/ または弾性率の二次元マッピングデ一夕とを合成し、 モニタ 1 6に 表示する。 画像データ生成部 7 2におけるこれらのデータの具体的 な生成方法は第 1の実施と同様である。
なお、 駆動パルス 6 7 a - 6 7 cは、 厳密には同時刻に送信され てはいない。 このため、 弾性率、 流体部分の位置および Bモード画 像は駆動パルス 6 7 a - 6 7 cの間隔に対応する時間で遅れて取得 される。 しかし、 駆動パルス 6 7 a - 6 7 cの間隔は短く、 その時 間において測定対象物が移動する移動量は無視しうる程度に小さい, このため、 弾性率、 流体部分の位置および Bモード画像は実質的に 同時刻に取得したとみなすことができ、 モニタに表示される弾性率 の二次元マツプと Bモード画像とで人間が知覚できるほどのずれは 生じない。
本実施形態によれば、 弾性率の測定、 ドプラ法による流体部分の 特定および Bモード画像の取得は、 それぞれの測定に最適な駆動パ ルスや走査方法を用いて行われる。 このため.. より正確な弾性率お よび流体部分の位置情報と精細な Bモ一ド画像とを得ることができ
る。 その結果、 測定対象物を示す画像がより見やすくなり、 測定対 象物中の伸縮率や弾性率の特異部分を正確に特定することが容易と なる。
本実施形態では、 弾性率の測定、 ドプラ法による流体部分の特定 および Bモ一ド画像の取得のためにそれぞれ適した 3種類の駆動パ ルスを用いているが、 精度が求められる計測にのみ専用の駆動パル スを用い、 他の計測には 1種類の駆動パルスを共通に用いてもよい, たとえば、 ドプラ法による流体部分の特定および Bモード画像の取 得に共通の用いられる駆動パルスと弾性率の測定に用いる駆動パル スとの 2種類からなる駆動パルス群を用いて計測をおこなってもよ い。
以上、 第 1および第 2の実施形態では、 生体を測定対象物として 用い、 本発明の超音波装置および超音波計測方法を説明したが、 測 定対象物は生体以外の物体であってもよい。 たとえば、 壁内の配管 の機械振動測定などに用いることができる。 このような場合におい ても、 配管内を移動する流体部分の伸縮量や弾性率を表示すること なく配管部分のみの伸縮量や弾性率を表示することができるため、 配管の診断あるいは検査を容易に行うことができる。 産業上の利用可能性
本発明の超音波診断装置およびその制御方法によれば、 流体部分 を測定対象物が含んでいても、 流体部分に隣接した領域のみの伸縮 量や弾性率を見やすく画像表示することができる。 このため、 計測 中の装置の操作性を高めることができ、 また、 測定対象物中の伸縮 率や弾性率の特異部分を発見することが容易となる。
本発明の超音波診断装置およびその制御方法は、 生体組織の弹 性率を診断するのに適している。 また、 壁内の配管の診断あるいは 検査にも適している。