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蛍光寿命分布画像測定装置およびその測定方法
技術分野
本発明は、 励起光を照射された試料から放出される蛍光の蛍光寿命の分布画像 を取得する蛍光寿命分布画像測定装置およびその方法に関するものである。
背景技術
被測定物に励起光を照射すると、 その被測定物に含まれる蛍光物質から蛍光が 発生する。 その蛍光の強度は、 励起光照射時刻から時間を経るに従って指数関数 的に減衰していく。 この蛍光減衰曲線の減衰特性を表すのが蛍光寿命であり、 こ の蛍光寿命は、 蛍光物質の種類によって決まっている。
近年、 蛍光タンパク質や蛍光色素で染色した細胞の蛍光寿命値の分布を画像化 することにより、 細胞内における反応を高精度に測定することができる FLIM (F1 uorescence Lifetime Imaging Microscopy) と呼ばれる測定方法力 S提案され、 論 文 I iuorescence Liietirae Imaging Microscopy (FLIM): Instrumentation and ApplicationsJ (Critical Reviews in Analytical Chemistry, 23 (5) : 369-395
(1992) ) に記載されている。 本測定方法は、 例えば、 細胞内で遺伝子が発現した かどうかを調べる蛍光タンパク質、 カルシウムなどのイオン濃度を測定できる蛍 光色素、細胞内での!) Hを測定できる蛍光色素などの蛍光寿命の変化を測定するこ とにより、遺伝子発現の有無、イオン濃度、 p Hなどの細胞内での分布を画像化す ることができるものである。
このような FLIM測定法として、 PMTによる時間相関計数法とレーザスキャンとの 組み合わせによる方法、 ゲート 'イメージ 'インテンシファイアによる時間分解 画像計測法、 及び、 ス トリークカメラによる方法が知られている。
発明の開示
しかしながら上記従来例では以下のような問題点がある。 PMT による時間相関 計数法を用いた方法は、 励起光の 1パルス毎に単一光子しか測定できないので、
測定時間が長くかかりすぎるため時々刻々と変化する細胞内の反応を追跡するこ とができないという問題がある。
ゲート 'イメージ 'インテンシファイアを用いた方法は、 ゲート法により蛍光 寿命を測定することから、 蛍光の取得効率が悪く、 励起レーザの影響で細胞等の 生体試料の退色及び試料自体の損傷が発生するという問題点がある。
一方、 ストリークカメラを用いた従来の方法は、 時間分解能および感度が高い ものの、 励起レーザの影響で細胞等の生体試料の退色及び試料自体の損傷が発生 するという問題点がある。
本発明は、 上記問題点を解消する為になされたものであり、 細胞等の試料への ダメージを最小にするとともに、 短時間での測定を実現することができる蛍光寿 命分布画像測定装置およびその測定方法を提供することを目的とする。
本発明に係る蛍光寿命分布画像測定装置は、 パルス励起光を試料に照射し、 試 料から放出される蛍光の寿命の試料における分布を測定する蛍光寿命分布画像測 定装置であって、 パルス励起光を発するレーザ光源と、 レーザ光源の発したパノレ ス励起光を試料に導いて照射し、 試料から放出される蛍光を導いて出力する測定 用光学系と、 測定用光学系から出力され到達した蛍光の蛍光強度の時間変化を記 録するストリークカメラと、 ストリークカメラで記録された蛍光強度の時間変化 に基づいて蛍光寿命を算出し、 蛍光寿命分布画像を作成する蛍光寿命分布画像作 成手段と、 を備え、測定用光学系は、第 1走査手段、光分離手段、第 2走査手段、 及び、 対物光学系を備え、 第 1走査手段は、 レーザ光源の発したパルス励起光を 第 1方向に走査し、 光分離手段は、 第 1走査手段から到達したパルス励起光を第 2走査手段へ導き、 第 2走査手段から到達した蛍光をス トリークカメラに導き、 第 2走査手段は、 光分離手段から到達したパルス励起光を第 1方向に垂直な第 2 方向に走査し、 対物光学系から出力され到達した蛍光を第 1方向に垂直な第 2方 向に走査して光分離手段へ導く。 対物光学系は、 第 1走査手段、 第 2走査手段と 共役な位置関係にあり、 第 1方向及び第 2方向、 それぞれに走査されたパルス励
起光を集光して試料の各走査点に照射し、 パルス励起光が照射されたときに各走 查点から放出される蛍光を第 2走査手段へ出力すること、 を特徴とする。
本発明に係る蛍光寿命分布画像測定装置によれば、 レーザ光源より発せられた パルス励起光は、 測定用光学系に出力され、 測定用光学系に出力されたパルス励 起光は、 第 1走査手段により第 1方向に走査されて出力され、 第 1方向に走査さ れて出力されたパルス励起光は、 第 2走査手段により第 1方向に垂直な第 2方向 に走査して出力され、 第 2方向に走査して出力されたパルス励起光は、 対物光学 系により集光されて試料に照射される。 パルス励起光が試料に照射されたときに 試料から放出される蛍光は、 対物光学系により第 2走査手段へ出力され、 第 2走 查手段へ出力された蛍光は、 第 2走査手段により第 1方向に垂直な第 2方向に走 査して光分離手段へ出力さる。 ここで、 パルス励起光と蛍光とが第 2走査手段を 往復通過する事で、 蛍光は、 ス トリークカメラ上で第 2走査方向には走査されず 第 1走査方向にのみ走査される。 光分離手段へ出力された蛍光は、 光分離手段に よりス トリークカメラへ出力され、 ス トリークカメラへ出力された蛍光は、 ス ト リークカメラにより蛍光の蛍光強度の時間変化として記録される。 そして、 ス ト リークカメラで記録された蛍光強度の時間変化に基づいて蛍光寿命が算出され、 蛍光寿命分布画像が作成される。
本発明に係る蛍光寿命分布画像測定装置は、 対物光学系が試料の内部に集光点 を合わせる位置に配置され、 パルス励起光のパルス幅が 1 5 0 f s以下、 パルス 励起光の集光点におけるピークパワー密度が 1 X 1 0 5WZ c m2以上、及び、試料 が励起され蛍光を発し得る光の最長波長を λ としたときにパルス励起光の波長 力 S λ 以上 2 λ 以下であることが好ましい。 このようにすれば、 パルス励起光に より集光点において二光子励起を起こすことができる。
本発明に係る蛍光寿命分布画像測定装置は、 パルス励起光の波長が 7 5 0 n m 以上 1 0 0 0 n m以下であるのが好ましい。 このようにすれば、 蛍光タンパク質 や蛍光色素で染色した細胞等の試料において二光子励起を起こすことができる。
本発明に係る蛍光寿命分布画像測定装置は、 対物光学系の配置が第 1方向及び 第 2方向の双方に垂直な方向に沿って移動するのが好ましレ、。このようにすれば、 試料の深さ方向に対しても蛍光寿命を測定することができるため、 3次元的な蛍 光寿命分布画像を得る事ができる。
本発明に係る蛍光寿命分布画像測定装置は、 第 1走査手段及び第 2走査手段そ れぞれがガルバノミラーであり、 光分離手段がダイクロイックミラーであるのが 好ましい。
本発明に係る蛍光寿命分布画像測定方法は、 パルス励起光を試料に照射し、 試 料から放出される蛍光の寿命の前記試料における分布を測定する蛍光寿命分布画 像測定方法であって、 パルス幅が 1 5 0 f s以下、 集光点におけるピークパワー 密度が 1 X 1 0 5W/ c m2以上、及び、試料が励起され蛍光を発し得る光の最長波 長を λ としたときに波長が 以上 2え以下であるパルス励起光を発する第 1ス テツプと、 パルス励起光を第 1方向に走査する第 2ステップと、 第 1方向に走查 されたパルス励起光を第 1方向に垂直な第 2方向に走査する第 3ステップと、 第 1方向及び第 2方向、 それぞれに走査されたパルス励起光を試料の内部の各走査 点に集光させる第 4ステップと、 集光されたパルス励起光の照射により各走査点 から放出される蛍光の蛍光強度の時間変化を記録する第 5ステップと、 記録され た蛍光強度の時間変化に基づいて蛍光寿命を算出し、 蛍光寿命分布画像を作成す る第 6ステップと、 を備えることを特徴とする。
本発明に係る蛍光寿命分布画像測定方法によれば、 第 1ステップで発せられた パルス幅が 1 5 0 f s以下、 集光点におけるピークパワー密度が 1 X 1 0 5W/ c m2以上、 及び、 試料が励起され蛍光を発し得る光の最長波長を λ としたときに 波長が λ 以上 2 λ 以下であるパルス励起光は、 第 2ステップで第 1方向に走查 される。 第 1方向に走査されたパルス励起光は、 第 3ステップで第 1方向に垂直 な第 2方向に走査される。 第 1方向及び第 2方向、 それぞれに走査されたパルス 励起光は第 4ステツプで試料の内部に集光され、 集光されたパルス励起光の照射
により放出される蛍光の蛍光強度の時間変化が第 5ステップで記録される。 記録 された蛍光強度の時間変化に基づいて第 6ステップで蛍光寿命が算出され、 蛍光 寿命分布画像が作成される。
図面の簡単な説明
図 1は、 本実施形態に係る蛍光寿命分布画像測定装置の構成図である。
図 2は、 本実施形態に係る顕微鏡下における試料のスキャン状態を示す図であ る。
図 3は、 本実施形態に係るストリークカメラにより記録された蛍光のストリー ク像を高速スキャン型 C C Dで撮像した画像を示す図である。
図 4は、 各走査点における蛍光強度の時間変化を示す図である。
図 5は、 蛍光寿命プロファイルを示す図である。
図 6 Aは、 パルス励起光が発せられるタイミングを示す図である。
図 6 Bは、 ストリークカメラが検出する蛍光強度の時間変化を示す図である。 図 6 Cは、 ストリークカメラにおいて印加される掃引電圧の時間変化を示す図 である。
図 6 Dは、 X軸方向に走査されるタイミングを示す図である。
図 6 Eは、 C C Dが画像を撮像するタイミングを示す図である。
図 6 Fは、 Y軸方向に走査されるタイミングを示す図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、 添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。 なお、 図面 の説明において同一の要素には同一の符号を付し、 重複する説明を省略する。 本実施形態に係る蛍光寿命分布画像測定装置は、 二光子励起により試料を励起 させている。 二光子励起はレーザ光の強度を非常に大きくした場合に発生する現 象である。 まず、 二光子励起について簡単に説明する。
試料 5 0の吸収のバンドギャップ E (;よりも光子のエネルギー h V が小さいと 試料を励起することが出来ない。 よって、 試料 5 0に吸収が生じる条件は h V >
Ecである。 しカゝし、 パルス励起光の強度を非常に大きくすると n h v〉EGの条 件 (n = 2, 3 , 4 , - · ■である) で試料 5 0が励起される。 この現象を多光子 励起とい、 n = 2の場合を二光子励起という。 パルス波の場合、 レーザ光の強度 はレーザ光の集光点のピークパワー密度 (WZ c m2) で決まり、 例えばピークパ ヮー密度が 1 X 1 0 5 (W/ c m2) 以上の条件で多光子吸収が生じる。 ピークパ ヮー密度は、 (集光点におけるレーザ光の 1パルス当たりのエネルギー) ÷ (レー ザ光のビームスポット断面積 Xパルス幅) により求められる。
二光子励起は、 一光子励起のときよりも、 エネルギーが低い長波長のレーザを 使用することができる。 長波長のレーザを使用できることの長所としては、 細胞 などの試料のダメージが小さいことと、 組織内の深部までレーザが届くため、 試 料の比較的深い領域も観察できることが挙げられる。 また、 二光子励起は、 二個 の光子がほぼ同時に来た場合に起こるため、 光強度のほぼ 2乗に比例して発生す ると言われ、 レーザの集光点だけで蛍光分子が励起される。 したがって、 集光点 ではない観察しない部分の蛍光退色を防ぐことができ、 長時間の観察や組織等の 試料の広い範囲で観察することも可能となる。 なお、 集光点とはレーザ光が集光 した箇所のことである。
上記の理由から細胞等の生体試料の蛍光寿命を測定するには、 二光子励起が必 須である。 そのため発明者は、 ス トリークカメラを用いたスリ ット光蛍光寿命分 布画像計測装置を試作し、 スリツト光により二光子励起を起こす方法を試みた。 しかし、 スリツト光では、 二光子励起の励起効率の低さから蛍光寿命データの取 得に至らなかた。 そこで、 発明者は、 さらに開発に努め本願発明を完成するに至 つた。
図 1は本実施形態に係る蛍光寿命分布画像測定装置 1の概略構成を示す構成図 である。
本実施形態に係る蛍光寿命分布画像測定装置 1は、 蛍光分子を含む試料 5 0に パルス励起光を照射し、 この試料 5 0から放出される蛍光の寿命を測定するもの
である。 この蛍光寿命分布画像測定測定装置 1は、 レーザ光源 1 0、 測定用光学 系 2 0、 ストリークカメラ 3 0、 及び、 蛍光寿命分布画像作成手段 4 0を備えて いる。
レーザ光源 1 0は、 試料 5 0に対して照射すべきパルス励起光を繰り返し出力 するものであり、 例えば、 チタンサファイアレーザ等の超短光パルス (フェムト 秒パルス) レーザ光源が好適に用いられる。
レーザ光源 1 0の側方に設けられる測定用光学系 2 0は、 レーザ光源 1 0の発 したパルス励起光を試料 5 0に導いて照射し、 試料 5 0から放出される蛍光を導 いてストリークカメラへ出力するものであり、 第 1走査手段 1 0 0、 光分離手段 1 1 0、 第 2走查手段 1 2 0、 励起光光学系 1 3 0、 対物光学系 1 4 0、 瞳リレ 一光学系 1 5 0、 及び、 結像光学系 1 6 0を有している。
レーザ光源 1 0の側方に設けられる第 1走査手段 1 0 0は、 第 1スキャナドラ ィバ 1 0 1により駆動され、 レーザ光源 1 0より発せられたパルス励起光を第 1 方向 (X軸方向) に走査して瞳リ レー光学系 1 5 0へ出力するものであり、 例え ば、 ガルバノミラー等が好適に用いられる。
第 1走查手段 1 0 0の側方に設けられる瞳リレー光学系 1 5 0は、 第 1走查手 段 1 0 0と第 2走査手段 1 2 0とが共役の関係になるように配置され、 第 1走査 手段 1 0 0から到達したパルス励起光を光分離手段 1 1 0を介して第 2走査手段 1 2 0へ導くものである。
瞳リレー光学系 1 5 0の側方に設けられる光分離手段 1 1 0は、 瞳リレー光学 系 1 5 0から到達したパルス励起光を反射して第 2走査手段 1 2 0へ出力し、 第 2走査手段 1 2 0から到達した蛍光を透過して結像光学系 1 6 0へ出力するもの であり、 例えば、 ダイクロイツクミラー等が好適に用いられる。
光分離手段 1 1 0の側方に設けられている第 2走査手段 1 2 0は、 第 2スキヤ ナドライバ 1 2 1により駆動され、 光分離手段 1 1 0から到達したパルス励起光 を第 1方向 (以下 「X軸方向」 という) に垂直な第 2方向 (以下 「Y軸方向 J と
いう) に走査して励起光光学系 1 3 0へ出力し、 励起光光学系 1 3 0から到達し た蛍光を X軸方向に垂直な Y軸方向に走査して光分離手段 1 1 0へ出力するもの であり、 例えば、 ガルバノミラー等が好適に用いられる。
第 2走査手段 1 2 0の下方に位置する励起光光学系 1 3 0は、 第 2走査手段 1 2 0と対物光学系 1 4 0とが共役の関係になるように配置され、 第 2走査手段 1
2 0から到達したパルス励起光を対物光学系 1 4 0へ出力し、 対物光学系 1 4 0 から到達した蛍光を第 2走査手段 1 2 0へ出力するものである。
励起光光学系 1 3 0の下方に位置する対物光学系 1 4 0は、 励起光光学系 1 3 0から到達したパルス励起光を集光して試料 5 0に照射し、 パルス励起光が試料 5 0に照射されたときに試料 5 0から放出される蛍光を励起光光学系 1 3 0へ出 力するものである。
光分離手段 1 1 0の側方に設けられている結像光学系 1 6 0は、 試料 5 0とス トリークカメラ 3 0の光電面とが共役の関係になるように配置され、 光分離手段 1 1 0から到達した蛍光をストリークカメラ 3 0の光電面上に結像するものであ る。
結像光学系 1 6 0の側方に設けられているストリークカメラ 3 0は、 測定用光 学系 2 0から出力された蛍光の蛍光強度の時間変化を記録するものであり、 高速 スキャン型 C C D 3 1は、 ス トリークカメラ 3 0の蛍光面上の光像を撮像するも のである。
蛍光寿命分布画像作成手段 4 0は、 ストリークカメラ 3 0で記録された蛍光強 度の時間変化に基づいて蛍光寿命を算出し、 蛍光寿命分布画像を作成するもので ある。
本実施形態に係る蛍光寿命分布画像測定装置 1の動作について説明するととも に、 蛍光寿命分布測定方法についても説明する。
本実施形態に係る蛍光寿命分布画像測定装置 1によれば、 レーザ光源 1 0より 発せられたパルス励起光は、 測定用光学系 2 0に出力され、 測定用光学系 2 0に
出力されたパルス励起光は、 第 1走査手段 1 0 0により X軸方向に走査されて出 力され、 X軸方向に走査されて出力されたパルス励起光は、 瞳リレー光学系 1 5 0により光分離手段 1 1 0へ出力され、 光分離手段 1 1 0へ出力されたパルス励 起光は、 第 2走査手段 1 2 0により X軸方向に垂直な Y軸方向に走査して出力さ れ、 Y軸方向に走査して出力されたパルス励起光は、 対物光学系 1 4 0により集 光されて試料 5 0に照射される。 パルス励起光が試料 5 0に照射されたときに試 料 5 ()から放出される蛍光は、 対物光学系 1 4 0により励起光光学系 1 3 0へ出 力され、 励起光光学系 1 3 0へ出力された蛍光は、 励起光光学系 1 3 0により第 2走査手段 1 2 0へ出力され、 第 2走査手段 1 2 0へ出力された蛍光は、 第 2走 查手段 1 2 0により X軸方向に垂直な Y軸方向に走査して光分離手段 1 1 0へ出 力され、 光分離手段 1 1 0へ出力された蛍光は、 光分離手段 1 1 0により結像光 学系 1 6 0へ出力され、 結像光学系 1 6 0へ出力された蛍光は、 結像光学系 1 6 0によりス トリークカメラ 3 0へ出力され、 ストリークカメラ 3 0へ出力された 蛍光は、 ストリークカメラ 3 0により蛍光の蛍光強度の時間変化として記録され る。 そして、 ストリークカメラ 3 0で記録された蛍光強度の時間変化に基づいて 蛍光寿命が算出され、 蛍光寿命分布画像が作成される。
また、 本実施形態に係る蛍光寿命分布画像測定方法によれば、 第 1ステップで 発せられたパルス幅が 1 5 0 f s以下、 集光点におけるピークパワー密度が 1 X 1 05WZ c m2以上、及び、試料 5 0が励起され蛍光を発し得る光の最長波長をえ としたときに波長が λ 以上 2 以下であるパルス励起光は、 第 2ステップで X 軸方向に走査される。 X軸方向に走査されたパルス励起光は、 第 3ステップで X 軸方向に垂直な Υ軸方向に走査される。 X軸方向及び Υ軸方向、 それぞれに走査 されたパルス励起光は第 4ステツプで試料の内部に集光され、 集光されたパルス 励起光の照射により放出される蛍光の蛍光強度の時間変化が第 5ステップで記録 される。 記録された蛍光強度の時間変化に基づいて第 6ステップで蛍光寿命が算 出され、 蛍光寿命分布画像が作成される。
図 2は、 顕微鏡の対物光学系 1 4 0下における細胞等の試料 5 0に対する走查 状態を示す。 本図は、 スポット状のパルス励起光を、 試料 5 0の X軸方向に高速 に走査 (1、 2、 3、 · ■ ·、 M) しながら、 さらに Y軸方向にも走査 (1、 2、 3、 · ■ ■、 N) したものを模式的に示したものである。 X軸方向の走査距離は、 ス トリークカメラ 3 0の光電面のスリ ッ ト長に対応している。 また、 X軸方向の 走査周期は 1 0 O H z〜l k H zに設定されている。
パルス励起光の周波数は約 1 MH z〜 8 O MH zであり、 X軸走査手段 2 0は 1 0 0 H z〜l k H zで走査するため、 パルス励起光が集光された直径約 0 . 5 / mの光球が X軸方向に走査されることにより擬似スリット状に並ぶ。
ここで、 Y軸方向の走查では、 第 2走査手段 1 2 0 (ガルバノミラー) 力 光 分離手段 1 1 0 (ダイクロイツクミラー) より後方に配置され、 第 2走査手段 1 2 0 (ガルバノミラー) は、 励起光光学系 1 3 0 (瞳投影レンズ) の後側焦点面 に位置し、 Y軸方向にのみパルス励起光を走査する。 試料から発生する蛍光はこ の第 2走査手段を通過しディスキャンされストリークカメラ 3 0へ向カゝう。 すな わち、 励起光光学系 1 3 0 (瞳投影レンズ) 上の Y軸方向に振られた像は、 X軸 方向にのみ走査された形となり、 必ずストリークカメラ 3 0の光電面に結像する 事になる。
蛍光は、 ス トリークカメラ 3 0のスリ ッ トを介して結像光学系 1 6 0により、 ス トリーク管の光電面上にスリ ッ ト像として結像される。 蛍光がスリ ッ トに入射 し、 光電面に達したとすると、 この蛍光は、 光電面によりその光の強度に応じた 数の電子に変換され、 加速電極により加速されて蛍光面に向かって飛び出して行 く。 この電子が掃引電極の間を通過する時、 タイミングを合わせて掃引電極に印 加された高電圧により、 高速掃引が行われる。 これにより、 少しずつ遅れてやつ てきた電子群は垂直方向の少しずつ異なった角度に偏向され、 MCP (マイクロチヤ ネルプレート)に飛び込む。電子群は MCPを通過する際、数万倍まで電子の数を增 倍された後、 蛍光面に衝突し、 光に変換される。 蛍光面では、 最も早く入射した
光パルスに対応する蛍光像が最も上方に位置し、 順に下方へと配列される。 つま り、 蛍光面上の垂直方向が時間軸になる。 また、 蛍光像の明るさは、 それぞれの 蛍光の強度に比例している。 さらに、 蛍光像の水平方向の位置は、 蛍光の水平方 向の位置に対応している。 蛍光面上の増幅されたストリーク像は、 高速スキャン 型 CCD 3 1により撮像される。 ここで、 高速スキャン型 CCD 3 1は、 ストリ 一ク掃引回路からの C C Dトリガ信号を受信した CCDカメラ駆動回路からの指 令信号により露光を開始する。
図 6 A— F は本実施形態に係る蛍光寿命分布画像測定装置 1の動作タイミング を示す図である。 ここで、 レーザ光源 10の発するパルス励起光の周期とス トリ ークカメラ 30の掃引周期とは同期している。 従って、 パルス励起光の照射によ つて試料 50から放出された蛍光ごとにストリーク像が取得され、 高速スキャン 型 CCD 31により撮像される。
また、 図 6 A— Fに示されるように、 高速スキャン型 CCD 31の露光時間と Y軸の掃引タイミングとは同期している。 高速スキャン型 CCD 31の露光時間 は約 200msであり、 この間第 2走査手段 1 20は停止している。 約 20 Om s経過し、 CCD画像 1枚分の撮像が終了すると、 第 2走査手段 1 20 (ガルバ ノミラー) を動かし次の画像の撮像を行う。
これを N回繰り返すことによって図 2に示すように、 試料 50に対する 2次元 的な走査が行われる。
図 3は、 本実施形態に係るストリークカメラ 30により記録された蛍光のスト リーク像を高速スキャン型 CCD 31で撮像した画像を示す図である。 それぞれ の画像は、 高速スキャン型 CCD 31の露光時間の間第 2走査手段 1 20を固定 しておき、 高速スキャン型 CCD 31をその間露光させて取得したものである。 X軸方向に走査 (1、 2、 3、 · ■ ·、 M) されたパルス励起光により励起され放 出された蛍光の強度に対応したストリーク像が取得されている。 ここで画像の水 平方向が X軸方向に対応し、 画像の垂直方向が時間軸となる。 よって図 4に示す
ように、 走査点 1〜Mそれぞれに対応した縦のラインごとに、 それぞれの走査点 における蛍光強度の時間変化データが取得できる。 ここで、 Y軸の走査を N回行 つた場合には、 N枚の画像が取得される。
図 5は、 本実施形態に係る蛍光寿命プロファイルを示す図である。 蛍光の強度 がピーク値の 1 / eに減衰するまでの時間を蛍光寿命値とする。 蛍光寿命分布画 像作成手段 4 0では、 高速スキャン型 C C D 3 1で取得した蛍光強度の時間変化 データに基づき、 それぞれの縦のラインごとに、 1〜Mまでの各集光点に対応し た試料 5 0の蛍光寿命値を算出する。
蛍光寿命を算出するには、 C C Dの縦の 1ラインごとに得られた蛍光強度の時 間変化データに対して、 時間変化を所定の曲線 (関数系) 等でフィッティングす るフィッティング計算を行って、 蛍光の蛍光寿命を算出する。 この処理を 1枚の 画像において Mライン分行い、 さらに同様の処理を N枚の画像それぞれについて 行うことにより、 各走查点における蛍光寿命の寿命値のデータが得られる。 以上のようにして得られた各走查点における蛍光寿命の寿命値を、 寿命値の長 短に応じた色彩により各走査点ごとに表示することによって、 細胞等の試料 5 0 の蛍光寿命分布画像 (F L I M画像) を取得することができる。
なお、 蛍光寿命分布画像作成手段 4 0には、 必要に応じて、 蛍光寿命分布画像 作成手段 4 0で得られた蛍光寿命分布画像を表示するための表示装置 4 1 (図 1 参照) を接続しておくことが好ましい。
本実施形態に係る対物光学系 1 4 0は、 試料 5 0の内部に集光点を合わせる位 置に配置され、 パルス励起光は、 パルス幅が 1 5 0 f s以下、 集光点におけるピ ークパワー密度が 1 X 1 0 5WZ c m2以上、及び、試料 5 0が励起され蛍光を発し 得る光の最長波長を λ としたときに波長が λ以上 2 λ以下であるのが好適であ る。 この場合は、 パルス励起光により集光点において二光子励起を起こす事がで きる。
また、 パルス励起光は、 波長が 7 5 0 n m以上 1 0 0 0 n m以下であるのが好
適である。 このようにすれば、 蛍光タンパク質や蛍光色素で染色した細胞等の試 料において二光子励起を起こすことができる。
本実施例において、 レーザ光源 1 0には、 パルス幅 1 5 0 f s以下、 周波数 7 6 MH zのチタンサファイアレーザを使用した。 また、 対物光学系 1 4 0には、 4 0倍の油浸または水浸の対物レンズを使用した。 この場合レーザの出力は約 8 mWである。 また、 周波数 1 MH zのレーザ光源 1 0を使用した場合には、 レー ザ出力は、 0 . l mWとなる。
本実施形態に係る対物光学系 1 4 0は、 配置が X軸方向及び Y軸方向の双方に 垂直な方向に沿って移動するのが好適である。 この場合は、 試料 5 0の深さ方向 に対しても蛍光寿命を測定することができるため、 3次元の蛍光寿命分布画像を 得る事ができる。
長波長レーザは、 短波長のレーザより組織内の深部までレーザが届くため、 試 料の比較的深い領域も観察できる。 また、 一光子励起では集光点の前後でも励起 されるため、 深さ方向の空間分解能は取れない力 二光子励起は直径約 0 . 5 mのパルス励起光の集光点でのみ励起が起こるので、 空間分解能にすぐれる。 よ つて、 対物光学系 1 4 0を動かして集光点を試料 8 0の深さ方向に移動させるこ とにより、 深さ方向のマッピングができる。 これによつて、 3次元の蛍光寿命分 布画像を得る事ができる。
以上、 詳細に説明したとおり、 本発明によれば、 細胞等の試料へのダメージを 最小にするとともに、 短時間での計測を実現することができる蛍光寿命分布画像 計測装置およびその計測方法を提供することができる。
産業上の利用可能性
本発明は、 例えば細胞内における遺伝子の発現及びタンパク質相互作用などを 分析するのに用いられる。