JP2004212204A - 蛍光顕微鏡及び蛍光寿命の測定方法、並びに蛍光寿命の測定用プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】安価な構成で相対的な蛍光寿命を測定すること。
【解決手段】発振器11は一定の周期のON/OFF信号を半導体レーザー1へ入力する。半導体レーザー1は発振器11の信号に従い、発振器11のON/OFFと同じタイミングでレーザー光をON/OFFする。CCD9は、試料6から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光を積分する機能を持つ。まず、所定の周期でレーザー光を試料6に照射し、CCD9で蛍光像を撮像してコンピュータ10に取り込む。これを蛍光画像Aとする。次に、発振器11の出力をONにしたまま試料6に対してレーザー光を照射し、CCD9で蛍光像を撮像してコンピュータ10へ取り込む。この画像を、蛍光画像Bとする。そして、蛍光画像Aを蛍光画像Bで除算することにより、相対的な蛍光寿命を測定することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】発振器11は一定の周期のON/OFF信号を半導体レーザー1へ入力する。半導体レーザー1は発振器11の信号に従い、発振器11のON/OFFと同じタイミングでレーザー光をON/OFFする。CCD9は、試料6から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光を積分する機能を持つ。まず、所定の周期でレーザー光を試料6に照射し、CCD9で蛍光像を撮像してコンピュータ10に取り込む。これを蛍光画像Aとする。次に、発振器11の出力をONにしたまま試料6に対してレーザー光を照射し、CCD9で蛍光像を撮像してコンピュータ10へ取り込む。この画像を、蛍光画像Bとする。そして、蛍光画像Aを蛍光画像Bで除算することにより、相対的な蛍光寿命を測定することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、蛍光顕微鏡に関し、さらに詳しくは、安価な構成で相対的な蛍光寿命を測定できる蛍光顕微鏡及び蛍光寿命の測定方法、並びに蛍光寿命の測定用プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光物質は適切な波長の励起光で励起するとエネルギー順位が上がるが、この状態は非常に不安定なので、再びもとの安定したエネルギー状態に戻ろうとする。このとき、蛍光物質は励起光よりも20〜50nm程度長い波長の蛍光を放出する。このような蛍光物質によって細胞や蛋白質等の試料を染色し、この蛍光物質を励起する励起光を照射してその蛍光を観察するものが蛍光顕微鏡である。このような蛍光顕微鏡については、例えば非特許文献1に開示されているので、必要があればこれを参照されたい。
【0003】
蛍光顕微鏡における蛍光寿命の測定は、蛍光寿命によって複数の蛍光を分けたり、蛍光寿命によって生体の機能を解析したりすることに応用されている。このような蛍光寿命を測定する方法は、自家蛍光を利用して物質分析する方法に従来から用いられている。蛍光寿命は、周波数領域で測定する方法と時間領域で測定する方法とがあり、近年の蛍光顕微鏡では主として時間領域の測定法が用いられている。次に、従来の時間領域における蛍光寿命の測定手順について説明する。
【0004】
図8は、従来の時間領域における蛍光寿命測定機能を持った蛍光顕微鏡の構成図である。まず、従来例における蛍光顕微鏡400の構成について説明する。超短パルスで発光するチタン・サファイアレーザー等のパルスレーザー401から出射されるレーザー光の光路上には、ビームエキスパンダ402及びダイクロイックミラー403が配置されている。
【0005】
ダイクロイックミラー403は、蛍光を励起する波長を反射し、且つ蛍光波長は透過する。そして、ダイクロイックミラー403の反射光路上には、第一結像レンズ404及び対物レンズ405を介して、観察対象である試料406が配置される。また、試料406から発生する蛍光がダイクロイックミラー403を透過した後の光路上には、第二結像レンズ407とイメージインテンシファイア(Image Intensifier:以下I.I.)408とCCDカメラ409とが配置されている。
【0006】
CCDカメラ409はコンピュータ410に接続されており、CCDカメラ409の画像出力はコンピュータ410に取り込まれる。また、ゲート発生器411はパルスレーザー401とPC410とI.I.408とに接続されている。そして、ゲート発生器411は、パルスレーザー401の発振のトリガーを入力として、このトリガーにコンピュータ410から指令された一定時間の遅延Tdが与えられた所定の時間幅Twを持つゲート信号をI.I.408に出力する。
【0007】
次に、従来例における蛍光寿命の測定手順について説明する。パルスレーザー401からは、試料406の蛍光物質を励起して蛍光を発生させるためのレーザー光が出射する。出射したレーザー光は、ビームエキスパンダ402を通って、ダイクロイックミラー403で反射される。この反射光は、第一結象レンズ504を通り、対物レンズ405によって結像された後、試料406へ入射する。
【0008】
試料406では、入射した励起光であるレーザー光によって蛍光物質から蛍光が発生する。この蛍光は、対物レンズ405、第一結像レンズ404を介してダイクロイックミラー403で蛍光である長い波長の光が第二結像レンズ407の方向に透過して、I.I.408に結像する。励起光(レーザー光)がインパルス状である場合には、励起された瞬間から試料406から蛍光の放射が始まり、時間の経過とともに徐々に蛍光の強度が弱くなっていく。この蛍光の時間による変化は、次に示す式(1)のようになる。
【0009】
F(t)=F0×exp(−t/τ) ・・・(1)
ここで、F0は定数、tは蛍光時間であり、試料406が励起された瞬間の蛍光時間をt=0としている。τは蛍光のlifetime(寿命)と呼ばれる定数で、蛍光物質の種類や状態によって決まる。このτを求めることが蛍光寿命の測定である。パルスレーザー401にはチタン・サファイアレーザーがよく使用され、パルス幅は50〜100fsec.程度である。一般に蛍光物質において、τは数nsec.であることが多いので、励起光であるレーザー光はほとんどインパルスとみなすことができる。
【0010】
図9は、レーザー光の発振タイミング等を示すタイミングチャートである。同図(a)に示すようなタイミングでレーザー光が発振されたときには、試料406からの蛍光は同図(c)のように変化する。ここで、図9(a)に示すように、パルスレーザー401によって、一定の周期で且つ極めて短い時間だけレーザー光が発振したとする。ゲート発生器411には、パルスレーザー401のトリガー(図9(b))が入力される。そして、ゲート発生器411は、コンピュータ410から指令された前記トリガーがONとなるタイミングから一定の遅延Tdをもち、且つ所定の時間幅Twのゲート信号(図9(d))をI.I.408に出力する。
【0011】
I.I.408では、ゲート発生器411のゲートがONのときだけ、I.I.408に結像された蛍光を増幅してCCD409に出力する。CCD409は、出力された蛍光の像を撮像し、この像を電気信号としてコンピュータ410へ出力する。そして、コンピュータ410は、前記一定の遅延Tdを次々に変化させて、上記動作を繰り返す。
【0012】
例えば、Td及びTwをともに1nsec.として蛍光像をコンピュータ410へ取り込み、次いでTdを3nsec.、5nsec.と順次変化させて蛍光画像をコンピュータ410へ取り込む。このようにして得られた3個の画像のうち、それぞれの1画素に注目して測定した蛍光強度の変化を時間に対してプロットすると、図10に示すようになる。そして、測定点に対して(1)式をフィッテング計算することにより、寿命τを求めることができる。ここで、図10は、時間に対する蛍光強度の変化を示す説明図である。
【0013】
CCD409からコンピュータ410へ取り込んだ各画素に対してτを求めれば、2次元の蛍光画像における蛍光寿命を測定することができる。なお、実際にはレーザーの励起パルスの時間幅は0ではないし、受光するI.I.408のゲートも立ち上がり及び立下りに時間を要する特性である。したがって、これらの特性を考慮して解析する技術が、特許文献1に開示されている。また、特許文献2にも、蛍光寿命を測定する方法が開示されている。
【0014】
【特許文献1】
米国特許第4855930号明細書
【特許文献2】
特開2002−39943号公報
【非特許文献1】
稲澤譲治、津田均、小島清嗣具著「顕微鏡フル活用術イラストレイテッド」秀潤社出版、2000年7月15日
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、時間領域において蛍光寿命を測定する場合には、(1)式で表される蛍光の光量変化カーブを用いて解析するので、励起光であるパルスレーザーは、50〜100fsec.程度という非常に小さいパルス幅であることが要求される。このようなパルス幅でレーザー光を出射できるチタン・サファイアレーザーは、2000万円程度と非常に高価である。さらに、ゲートを高速で切り替えることのできるI.I.408が必要になるが、このようなI.I.も500万円程度であり、相当の金額を要する。このため、従来の方法によって蛍光寿命を測定しようとすると、2500〜3000万円の機材が必要となってしまう。
【0016】
また、従来における蛍光寿命の測定では、蛍光寿命は数値情報として得られるが、測定目的によっては必ずしも数値で蛍光寿命を求める必要はない。例えば、複数の蛍光物質からの蛍光の蛍光寿命を分けて観察したい場合や、蛍光寿命が場所によってどのように異なるかを観察したい場合等は、相対的な蛍光寿命の測定で十分である。
【0017】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、安価に相対的な蛍光寿命を測定できる蛍光顕微鏡及び蛍光寿命の測定方法、並びに蛍光寿命の測定用プログラムを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、この発明に係る蛍光顕微鏡は、観測対象である試料に対して所定の周期で、又は連続して励起光を照射する光源と、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積することにより蛍光の光量を積分する蛍光積分手段と、所定の周期で励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
この蛍光顕微鏡は、励起光の光源により観測対象である試料に対して所定の周期、又は連続して励起光を照射する。そして、演算手段により、所定の周期で励起光を試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算して、相対的な蛍光寿命を求める。このように、積分された蛍光の光量を用いて相対的な蛍光寿命を求めるので、従来のように、極めて高速に励起光の光源をON/OFFさせる必要はない。本発明においては、励起光の光源は数10〜数100MHz程度でON/OFFさせればよく、I.I.も従来と比較して低速でゲートをON/OFFすることができる。これにより、励起光の光源に高価なチタン・サファイアパルスレーザーや高速ゲートのI.I.を使用する必要がないので、従来と比較して極めて安価に蛍光顕微鏡を構成することができる。
【0020】
また、次の発明に係る蛍光顕微鏡は、観測対象である試料に対して所定の周期で、又は連続して励起光を照射する光源と、前記光源からの励起光を前記試料上の1点に収束させる対物レンズと、前記試料から放射された蛍光を光学的に共役な位置に再収束させる手段と、前記蛍光が再収束した位置に配置されるピンホールと、前記ピンホールを通過した蛍光を一定時間蓄積することにより蛍光の光量を積分する蛍光積分手段と、前記試料上に収束した励起光を当該励起光の光軸に対して垂直に2次元走査する走査手段と、所定の周期で励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この蛍光顕微鏡は、いわゆる共焦点形の蛍光顕微鏡であるが、このように、積分された蛍光の光量を用いて相対的な蛍光寿命を求めるので、従来のように、極めて高速に励起光の光源をON/OFFさせる必要はない。本発明においては、励起光の光源は数10〜数100MHz程度でON/OFFさせればよく、蛍光の検出器も従来のようにON/OFFさせる必要はない。これにより、励起光の光源に高価なチタン・サファイアパルスレーザーや高速ゲートを備えたPMT(Photo Multiplier Tube:ホトマルチプライヤーチューブ)を使用する必要がないので、従来と比較して極めて安価に共焦点形の蛍光顕微鏡を構成することができる。
【0022】
また、次の発明に係る蛍光顕微鏡は、上記蛍光顕微鏡において、上記光源は一定の波長を持つ半導体レーザーであることを特徴とする。半導体レーザーはチタン・サファイアパルスレーザーと比較して極めて安価であるので、励起光の光源に要するコストを低減できる。その結果、従来と比較して極めて安価に蛍光顕微鏡を構成することができる。また、次の発明に係る蛍光顕微鏡のように、上記蛍光顕微鏡において、上記光源に発光ダイオードを使用すれば、さらに安価に蛍光顕微鏡を構成することができる。また、半導体レーザーや発光ダイオードは波長の種類が比較的豊富なので、蛍光物質との組み合わせの自由度を高くして、観測の幅を広げることができる。
【0023】
また、次の発明に係る蛍光顕微鏡は、上記蛍光顕微鏡において、上記励起光は、上記試料に対して全反射する角度で入射することを特徴とする。このように、試料上で励起光を全反射させれば、試料中の蛍光物質が発する蛍光のみを観測できるので、蛍光寿命の測定精度を高くできる。
【0024】
また、次の発明に係る蛍光寿命の測定方法は、励起光を所定の周期で観測対象である試料へ照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する工程と、励起光を連続して観測対象である試料に照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する工程と、励起光を所定の周期で前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、励起光を連続して前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
また、次の発明に係る蛍光寿命の測定用プログラムは、励起光を所定の周期で観測対象である試料へ照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する手順と、励起光を連続して観測対象である試料に照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する手順と、励起光を所定の周期で前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、励起光を連続して前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0026】
この蛍光顕微鏡は、励起光の光源により観測対象である試料に対して所定の周期、又は連続して励起光を照射する。そして、所定の周期で励起光を試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算して、相対的な蛍光寿命を求める。このように、積分された蛍光の光量を用いて相対的な蛍光寿命を求めるので、従来のように、極めて高速で励起光の光源をON/OFFさせる必要はない。これにより、励起光の光源に高価なチタン・サファイアパルスレーザーや高速ゲートのI.I.を使用する必要がないので、従来と比較して極めて安価に相対的な蛍光寿命を測定できる。また、本発明に係る蛍光寿命の測定用プログラムによれば、本発明に係る蛍光寿命の測定方法がコンピュータ上で実現できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡の構成を示す説明図である。この蛍光顕微鏡100は、所定の周期で励起光を試料6に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を試料6に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算して、相対的な蛍光寿命を求める点に特徴がある。
【0029】
試料6中の蛍光物質を励起して蛍光を発生させるための励起光を発生する光源として、半導体レーザー1を用いる。半導体レーザー1は、発振器11からの信号に基づいて、所定の周期でON/OFFされる。励起光の波長は、例えば405、450、488、550nm程度のものが使用される。なお、半導体レーザーは、波長の種類が比較的豊富なので、蛍光物質との組み合わせの自由度を高くして、観測の幅を広げることができる。
【0030】
半導体レーザー1から出射されるレーザー光の光路上には、ビームエキスパンダ2及びダイクロイックミラー3が配置されている。ダイクロイックミラー3は、試料6中の蛍光物質を励起するレーザーの波長を反射し、且つ励起された蛍光物質から発生する蛍光の波長は透過するようになっている。
【0031】
また、前記ダイクロイックミラー3の反射光路上には、第一結像レンズ4と対物レンズ5とが配置され、これらを介して観察対象である試料6が配置されている。試料6からの蛍光がダイクロイックミラー3を透過した後の透過光路上には、第二結像レンズ7とI.I.8とCCD9とが配置されている。そして、第二結像レンズ7を通過した蛍光は、I.I.8に結像する。
【0032】
CCD9の画像出力は、これに接続されたコンピュータ10に取り込まれる。また、半導体レーザー1には発振器11が接続されており、この発振器11は一定の周期のON/OFF信号を半導体レーザー1へ入力する。ここで、コンピュータ10には、周辺機器として入力装置、表示装置などを接続し(いずれも図示省略)、これらの制御プログラムをメモリにロードして実行することにより前記周辺機器の機能を実現させてもよい。また、このコンピュータ10には、周辺機器として入力装置、表示装置など(いずれも図示省略)が接続されるものとする。ここで、入力装置とはキーボード、マウス等の入力デバイスのことをいう。表示装置とはCRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置などのことをいう。
【0033】
本発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100は、励起光の光源に安価な半導体レーザー1を用いる。また、光増幅機能を持つI.I.8は高速ゲートを持つ必要はない。このため、50〜100fsec.といった高速でON/OFFできる高価なパルスレーザーや、高速ゲートを持つI.I.を必要とした従来の蛍光顕微鏡と比較して、およそ1/10程度のコストで蛍光顕微鏡100を構成することができる。また、50〜100fsec.といった高速でレーザーをON/OFFする必要はなく、高速でI.I.のゲートをONする必要もないので、比較的簡易な技術で蛍光顕微鏡100を構成することができる。
【0034】
半導体レーザー1から出射されたレーザー光は、ビームエキスパンダ2を通ってダイクロイックミラー3で反射される。ここで反射したレーザー光は第一結像レンズ4を通った後、対物レンズ5によって結像されて試料6へ入射する。試料6においては、この入射したレーザー光(励起光)によって試料6内の蛍光物質が励起され、この蛍光物質から蛍光が発生する。この蛍光は、対物レンズ5及び第一結像レンズ4を介してダイクロイックミラー3へ導かれる。ダイクロイックミラー3では、蛍光である長い波長が第二結像レンズ7の方向に透過してI.I.8に結像する。
【0035】
このような蛍光顕微鏡100の構成により、蛍光寿命を測定する手順について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡の励起光の出射タイミング等を示すタイミングチャートである。また、図3は、この発明の実施の形態1に係る蛍光の測定方法を示すフローチャートである。図2(a)に示すように、発振器11は、一定周期でON/OFFを繰り返す。半導体レーザー1は、発振器11の信号に従い、発振器11のON/OFFと同じタイミングでレーザー光をON/OFFする(ステップS101)。そして、半導体レーザー1がONのタイミングで出射されるレーザー光によって、試料6中の蛍光物質が励起されて蛍光が発生する。この蛍光は、I.I.8で増幅された後、CCD9へ出力される。
【0036】
一般に、測定する蛍光寿命は数nsec.程度であることが多い。この場合には、発振器11の周波数を100MHz程度にし、発振器11のON時間とOFF時間との比(以下デューティー比という)を50%とする。この場合、半導体レーザー1は100MHzの周期でON/OFFを繰り返すことになる。ここで、蛍光寿命が1nsec.程度の場合を考える。このときには、図2(b)に示すように、励起光であるレーザー光がOFFになってから次にONになるまでに、蛍光はほとんど0近くまで減少する。一方、蛍光寿命が5nsec.程度の場合には、図2(d)に示すように、レーザー光がOFFになってから次にONになるまでにおける減少程度は、蛍光寿命が1nsec.程度の場合と比較して小さくなる。
【0037】
I.I.8は周波数特性が良好であるので、このように変化する信号をそのまま増幅してCCD9へ入力させることができる。一方、CCD9の周波数特性はI.I.8よりも劣るので、CCD9はローパスフィルタとして作用する。すなわち、CCD9は積分機能をもち、蛍光積分手段として機能する。その結果、半導体レーザー1からの出力(図2(b)参照)に対するCCD9の出力は、図2(c)のようになり、また、図2(d)に対する出力は図2(e)のようになる。CCD9により蛍光像を撮像し、コンピュータ10は、このCCD9からの出力を取り込む。ここで取り込んだ画像を、蛍光画像Aとする(ステップS102)。
【0038】
上記説明から、蛍光寿命の長いものほど蛍光の光量が多く、より明るく観察されるように考えられる。しかしながら、上記(1)式における定数F0は、蛍光物質の種類、密度あるいは試料6の状態等に依存するので、蛍光が明るいからといって蛍光寿命が長いとは限らない。そこで、F0の影響を除くために、発振器11の出力をONにしたまま試料6に対してレーザー光を出射し(ステップS103)、CCD9で蛍光像を撮像してコンピュータ10へ蛍光像の画像を取り込む。この画像を、蛍光画像Bとする(ステップS104)。
【0039】
発振器11をONのままにした場合、励起光であるレーザー光は常にONの状態で試料6へ照射される。このため、試料6からは常時一定の蛍光が放射される。ここで、(1)式から、F(t)∝F0の関係があるので、蛍光画像Aを蛍光画像Bで除算した結果である蛍光画像A/蛍光画像Bを画像表示すれば(ステップS105)、蛍光寿命の長いものほど明るいことになる。
【0040】
このように、本発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100及び蛍光寿命の測定方法では、励起光であるレーザー光をON/OFFして、試料6から放射される蛍光の光量変化を積分する。そして、この積分値を、連続的にレーザー光を照射したときにおける蛍光光量の積分値で除算することにより、相対的な蛍光寿命を測定する。これにより、安価な光源で蛍光寿命の長短を相対的に比較できる。また、相対的な蛍光寿命を求めることができるので、測定の目的に応じた蛍光顕微鏡を構成することができる。
【0041】
上記蛍光画像の除算は、コンピュータ10が実行するが、これの代わりに、処理部21と記憶部22とを含む専用のハードウェアとして演算手段である演算処理装置20(図1(b)参照)を構成して、上記手順を実行させてもよい。ここで、記憶部22は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体、あるいはRAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。また、この処理部21はメモリ及びCPU(中央演算装置)により構成され、処理部21の機能を実現するためのプログラム(図示省略)をメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0042】
なお、半導体レーザー1の代わりに光源として発光ダイオード(以下LED)を使用してもよい。LEDも半導体レーザー1と同様に数100MHzの周波数特性を持っているので、本発明に係る蛍光顕微鏡100及び蛍光寿命の測定方法に対して十分適用できる。また、LEDは波長の種類が比較的多いので、蛍光試料との組み合わせの自由度を高くして、観測の幅を広げることができる。なお、本発明は、ピンホールやスリットを持つディスクを組み合わせて、ディスク走査型の共焦点顕微鏡に適用することもできる。
【0043】
なお、実施の形態1に係る本発明の蛍光寿命の測定方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって上記測定手順を実現することができる。このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。また、上記プログラムは、上記測定手順をコンピュータ10にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0044】
(変形例1)
図4は、実施の形態1の第1変形例に係る蛍光顕微鏡を示す説明図である。この蛍光顕微鏡101は、実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100と略同様の攻勢であるが、励起光であるレーザー光を、試料6の観測領域に対して全反射する角度で入射させてエバネッセント照明を行い、試料6の蛍光物質が発する蛍光のみを観測する点が異なる。次の説明においては、実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100と同一の構成には同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。また、蛍光の測定方法は実施の形態1で説明した通りなので、その説明を省略する。
【0045】
半導体レーザー1から出射された励起光であるレーザー光は、ビームエキスパンダ2を構成するレンズの周辺部に向かって出射される。ビームエキスパンダ2を通ったレーザー光はダイクロイックミラー3で反射される。ここで反射したレーザー光は第一結像レンズ4を通った後、全反射対物レンズ5aの周辺部へ入射する。
【0046】
全反射対物レンズ5aの周辺部から出射したレーザー光は、試料6の観測領域に対して全反射する角度で入射する。試料6においては、この入射したレーザー光(励起光)によってエバネッセント光が発生して試料6内の蛍光物質が励起され、この蛍光物質から蛍光が発生する。ここで、全反射対物レンズ5aの周辺部から出射する光は全反射して、全反射レンズ5aの光軸に対して対称な位置に入射する。全反射レンズ5aから出射したこのレーザー光は、第1結像レンズ4を通り、ビームストッパ51でさえぎられることになる。これにより、試料6中の蛍光物質から発生した蛍光だけが全反射対物レンズ5aに入射し、第一結像レンズ4を介してダイクロイックミラー3へ導かれる。
【0047】
ダイクロイックミラー3では、蛍光である長い波長が第二結像レンズ7の方向に透過してI.I.8に結像する。この蛍光顕微鏡101では、励起光であるレーザー光の影響を最小限にして、蛍光のみをI.I.8に結像させることができるので、より高い精度で蛍光寿命を求めることができる。
【0048】
(変形例2)
図5は、実施の形態1の第2変形例に係る蛍光顕微鏡を示す説明図である。この蛍光顕微鏡102は、実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100と略同様の構成であるが、波長の異なる複数の光源を用意して、それぞれの光源に対応する複数の蛍光物質が発する複数の蛍光寿命を同時に求めるようにした点に特徴がある。なお、簡略化のため、図6においては、結像レンズ、対物レンズその他のレンズ類は省略してある。また、蛍光の測定方法は実施の形態1で説明した通りなので、その説明を省略する。
【0049】
半導体レーザー1、12、13は、それぞれ波長の異なる励起光を出射する。ここで、励起光は3種類に限られるものではなく、観測対象の個数や蛍光物質の種類に応じて、励起光の波長及び個数を適宜選択できる。それぞれの半導体レーザー1、12、13には、発振器11が接続されており、所定の周期(例えば数10〜数100MHz)のON/OFF信号を、それぞれの半導体レーザー1、12、13へ入力する。
【0050】
半導体レーザー11、12、13から出射したレーザー光は、それぞれ励起光用ダイクロイックミラー31、32、33へ導かれる。前記3色のレーザー光は、励起光用ダイクロイックミラー31、32、33を通過する過程で合成され、白色のレーザー光となって反射ミラー19へ入射する。反射ミラー19へ入射した励起光であるレーザー光は、第一結像レンズ4を通った後、全反射対物レンズ5aの周辺部へ入射する。そして、全反射対物レンズ5aから出射したレーザー光は、透明のテンプレート6p上に載せられた試料6の観測領域に対して全反射する角度で入射する。試料6においては、この入射したレーザー光(励起光)によってエバネッセント光が発生して試料6内の蛍光物質が励起され、この蛍光物質から蛍光が発生する。蛍光物質を励起した後のレーザー光は試料6の表面で全反射するので、蛍光物質から発生した蛍光だけが蛍光用ダイクロイックミラー331へ導かれる。
【0051】
蛍光用ダイクロイックミラー33では、3色のレーザー光と蛍光物質とから発生した蛍光を分離する。すなわち、蛍光用ダイクロイックミラー331では、半導体レーザー11、12、13のレーザー光によって励起された蛍光が反射して、I.I.8へ導かれる。I.I.8で増幅された蛍光は、CCD9で積分された後、コンピュータ10へ取り込まれ、実施の形態1で説明した手順で、各蛍光の相対的な寿命が求められる。ここで、半導体レーザー11、12、13から出射したそれぞれのレーザー光で励起される蛍光物質の蛍光寿命はそれぞれ異なる。したがって、蛍光寿命によって3つの蛍光を分離することができる。
【0052】
このような構成により、この蛍光顕微鏡102では、複数の異なる複数の光源を用意して、それぞれの光源に対応する複数の蛍光物質が発する複数の蛍光寿命を同時に求めることで、蛍光を分離することができる。これにより、これまで蛍光の波長毎に必要だったダイクロイックミラーと検出器であるI.I.等とを、それぞれ1個にすることができる。また、蛋白質が結合した場合におけるエネルギー移動の観測に対しても応用できる。
【0053】
(実施の形態2)
図6は、この発明の実施の形態2に係る蛍光顕微鏡を示す構成図である。また、図7は、この発明の実施の形態2に係る蛍光の測定方法を示すフローチャートである。この蛍光顕微鏡103は、本発明を共焦点形の蛍光顕微鏡に適用したものである。次の説明においては、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付する。
【0054】
半導体レーザー1から出射されるレーザー光の光路上には、ダイクロイックミラー3が配置されている。このダイクロイックミラー3の反射光路上にはX及びY方向に走査可能な2個のガルバノミラー15x、15y、瞳リレーレンズ16a、16b及び対物レンズ5が配置されている。そして、対物レンズ5の先には試料6が配置される。また、試料6の蛍光物質から発生した蛍光がダイクロイックミラー3を透過した後における透過光路上には、レンズ17、ピンホール18及びPMT13が配置されている。PMT13は、積分回路14を介してコンピュータ10に接続されている。また、半導体レーザー1には発振器11が接続されており、この発振器11はON/OFF信号を所定の周期(例えば数10〜数100MHz)で半導体レーザー1へ入力する。
【0055】
このような蛍光顕微鏡103の構成により、蛍光寿命を測定する手順について説明する。半導体レーザー1から出射されたレーザー光は、ダイクロイックミラー3で反射される。この反射光は、2個のガルバノミラー15x、15yによってさらに反射された後、瞳リレーレンズ16a、16bを通って対物レンズ5に入射する。ここで、瞳リレーレンズ16a、16bは、ガルバノミラー15x、15yの位置が、対物レンズ5の瞳面と共役にするような光学配置である。そして、ガルバノミラー15x、15yの角度を変化させることにより、対物レンズ5の瞳面へ入射するレーザー光の入射角度が変化する。このようにすれば、焦点面でのレーザースポットは、光軸に対して垂直な平面内で2次元に走査することができる。
【0056】
対物レンズ5に入射したレーザー光は、対物レンズ5の焦点近傍に配置された試料6へ入射する。試料6へ入射したレーザー光(励起光)により試料6内の蛍光物質が蛍光を発生する。この蛍光は、対物レンズ5、瞳リレーレンズ16a、16b及びガルバノミラー15x、15yを介してダイクロイックミラー3へ入射する。この蛍光は、励起光であるレーザー光よりも波長が長いので、ダイクロイックミラー3へ入射した後、レンズ17の方向に透過して、レンズ17でピンホール18へ収束される。
【0057】
ピンホール18は、対物レンズ5と光学的に共役の位置に配置されているので、試料6からの蛍光のうち合焦の成分(焦点の合っている成分)はピンホール18を通過できる。しかし、非合焦の成分はピンホール18の面で広がってしまうので、ほとんどピンホール18を通過できない。ピンホール18を通過した焦点の合っている蛍光の成分は、PMT13で光電変換された後、電気信号として積分回路14へ入力される。
【0058】
上述した手順で得られるのは、試料6上の1点の情報である。ここで、ガルバノミラー15x、15yは、互いに垂直な方向に動作し、一方がX軸を高速に、もう一方がY軸を低速に走査できるようになっている。例えば、1000×1000点の画素を得るときには、X軸のガルバノミラー15xを1kHzで振動させ、Y軸のガルバノミラー15yは1秒間でY軸を走査させる。このとき、X軸は1秒間に1000回往復走査されるので、画像の1ライン分の走査時間は約0.5msec.となる。また、1000×1000点の画素を得るので、1画素の情報取得に要する時間は約0.5μsec.となる。
【0059】
ここで、発振器11は、100MHzで、且つデューティー比が50%でON/OFFする場合を考える。このとき半導体レーザー1の出力は、実施の形態1と同様にON/OFFされて(図2(a)参照)、所定の周期でレーザー光が出射される(ステップS201)。試料6からの蛍光はPMT13で受光された後、積分回路14で積分される。したがって、積分回路14の出力は、実施の形態1と同様に、蛍光寿命が1nsec.のときには図2(c)、蛍光寿命が5nsec.のときには図2(d)のようになる。
【0060】
また、半導体レーザー1も100MHzでON/OFFするので、ON及びOFFの時間はそれぞれ5nsec.となり、1画素当たり50回のON/OFFが繰り返される。積分回路14からの出力、すなわち積分された蛍光の光量は、A/D変換されてからコンピュータ10に取得される(ステップS202)。ガルバノミラー15x、15yが試料6上を走査している間、各画素について積分された蛍光の光量を取得し(ステップS203:No)、その結果をコンピュータ10に取り込む。そして、例えば1000×1000の画素から構成される1枚の画像を得る。この画像を蛍光画像Aとする(ステップS204)。
【0061】
この動作だけでは、実施の形態1と同様に、蛍光寿命が各画素の明るさと対応しない。したがって、発振器11の出力をONのままにして、レーザー光を出射して(ステップS205)、積分された蛍光の光量をコンピュータ10が取得する(ステップS206)。ガルバノミラー15x、15yが試料6上を走査している間、各画素について積分された蛍光の光量を取得し(ステップS207:No)、その結果をコンピュータ10に取り込む。そして、同様に、1000×1000の画素から構成される蛍光画像Aとは異なる1枚の画像を得る。この画像を蛍光画像Bとする(ステップS208)。その後、実施の形態1と同様に、蛍光画像Aを蛍光画像Bで除算すれば(ステップS209)、その結果である蛍光画像A/蛍光画像Bは、蛍光寿命の長いものほど明るいことになる。
【0062】
なお、上記説明においては、半導体レーザー1のON/OFFを繰り返す状態と、ONのままの状態とで2回の走査を行って2枚の画像を得ている、ここで、半導体レーザー1が100MHzでON/OFFしているならば、画像の1点では50回ON/OFFすることになる。これを、蛍光画像A点の前半のみ25回のON/OFFの状態でデータを取り込み、後半はONのままでデータを取り込んでもよい。このようにすれば、一回の走査で蛍光寿命を測定することができるので、測定時間を短縮できる。
【0063】
このような蛍光顕微鏡103及び蛍光寿命測定手順によれば、走査型の共焦点顕微鏡においても、周期的に励起光であるレーザー光をON/OFFして、試料6から放射される蛍光の光量変化を積分することにより、安価な光源を用いて蛍光寿命の長短を相対的に比較できる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る蛍光顕微鏡によれば、従来と比較して極めて安価に蛍光顕微鏡や共焦点形の蛍光顕微鏡を構成することができる。
【0065】
また、この発明に係る蛍光寿命の測定方法又は蛍光寿命の測定用プログラムによれば、従来と比較して極めて安価に相対的な蛍光寿命を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡の励起光の出射タイミング等を示すタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る蛍光の測定方法を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1の第1変形例に係る蛍光顕微鏡を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の第2変形例に係る蛍光顕微鏡を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る蛍光顕微鏡を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る蛍光の測定方法を示すフローチャートである。
【図8】従来の時間領域における蛍光寿命測定機能を持った蛍光顕微鏡の構成図である。
【図9】レーザー光の発振タイミング等を示すタイミングチャートである。
【図10】時間に対する蛍光強度の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザー
2 ビームエキスパンダ
3 前記ダイクロイックミラー
4 第一結像レンズ
5 対物レンズ
6 試料
7 第二結像レンズ
10 コンピュータ
11 発振器
14 積分回路
15x、15y ガルバノミラー
16a、16b 瞳リレーレンズ
17 レンズ
18 ピンホール
100、101、102、103 蛍光顕微鏡
【発明の属する技術分野】
この発明は、蛍光顕微鏡に関し、さらに詳しくは、安価な構成で相対的な蛍光寿命を測定できる蛍光顕微鏡及び蛍光寿命の測定方法、並びに蛍光寿命の測定用プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光物質は適切な波長の励起光で励起するとエネルギー順位が上がるが、この状態は非常に不安定なので、再びもとの安定したエネルギー状態に戻ろうとする。このとき、蛍光物質は励起光よりも20〜50nm程度長い波長の蛍光を放出する。このような蛍光物質によって細胞や蛋白質等の試料を染色し、この蛍光物質を励起する励起光を照射してその蛍光を観察するものが蛍光顕微鏡である。このような蛍光顕微鏡については、例えば非特許文献1に開示されているので、必要があればこれを参照されたい。
【0003】
蛍光顕微鏡における蛍光寿命の測定は、蛍光寿命によって複数の蛍光を分けたり、蛍光寿命によって生体の機能を解析したりすることに応用されている。このような蛍光寿命を測定する方法は、自家蛍光を利用して物質分析する方法に従来から用いられている。蛍光寿命は、周波数領域で測定する方法と時間領域で測定する方法とがあり、近年の蛍光顕微鏡では主として時間領域の測定法が用いられている。次に、従来の時間領域における蛍光寿命の測定手順について説明する。
【0004】
図8は、従来の時間領域における蛍光寿命測定機能を持った蛍光顕微鏡の構成図である。まず、従来例における蛍光顕微鏡400の構成について説明する。超短パルスで発光するチタン・サファイアレーザー等のパルスレーザー401から出射されるレーザー光の光路上には、ビームエキスパンダ402及びダイクロイックミラー403が配置されている。
【0005】
ダイクロイックミラー403は、蛍光を励起する波長を反射し、且つ蛍光波長は透過する。そして、ダイクロイックミラー403の反射光路上には、第一結像レンズ404及び対物レンズ405を介して、観察対象である試料406が配置される。また、試料406から発生する蛍光がダイクロイックミラー403を透過した後の光路上には、第二結像レンズ407とイメージインテンシファイア(Image Intensifier:以下I.I.)408とCCDカメラ409とが配置されている。
【0006】
CCDカメラ409はコンピュータ410に接続されており、CCDカメラ409の画像出力はコンピュータ410に取り込まれる。また、ゲート発生器411はパルスレーザー401とPC410とI.I.408とに接続されている。そして、ゲート発生器411は、パルスレーザー401の発振のトリガーを入力として、このトリガーにコンピュータ410から指令された一定時間の遅延Tdが与えられた所定の時間幅Twを持つゲート信号をI.I.408に出力する。
【0007】
次に、従来例における蛍光寿命の測定手順について説明する。パルスレーザー401からは、試料406の蛍光物質を励起して蛍光を発生させるためのレーザー光が出射する。出射したレーザー光は、ビームエキスパンダ402を通って、ダイクロイックミラー403で反射される。この反射光は、第一結象レンズ504を通り、対物レンズ405によって結像された後、試料406へ入射する。
【0008】
試料406では、入射した励起光であるレーザー光によって蛍光物質から蛍光が発生する。この蛍光は、対物レンズ405、第一結像レンズ404を介してダイクロイックミラー403で蛍光である長い波長の光が第二結像レンズ407の方向に透過して、I.I.408に結像する。励起光(レーザー光)がインパルス状である場合には、励起された瞬間から試料406から蛍光の放射が始まり、時間の経過とともに徐々に蛍光の強度が弱くなっていく。この蛍光の時間による変化は、次に示す式(1)のようになる。
【0009】
F(t)=F0×exp(−t/τ) ・・・(1)
ここで、F0は定数、tは蛍光時間であり、試料406が励起された瞬間の蛍光時間をt=0としている。τは蛍光のlifetime(寿命)と呼ばれる定数で、蛍光物質の種類や状態によって決まる。このτを求めることが蛍光寿命の測定である。パルスレーザー401にはチタン・サファイアレーザーがよく使用され、パルス幅は50〜100fsec.程度である。一般に蛍光物質において、τは数nsec.であることが多いので、励起光であるレーザー光はほとんどインパルスとみなすことができる。
【0010】
図9は、レーザー光の発振タイミング等を示すタイミングチャートである。同図(a)に示すようなタイミングでレーザー光が発振されたときには、試料406からの蛍光は同図(c)のように変化する。ここで、図9(a)に示すように、パルスレーザー401によって、一定の周期で且つ極めて短い時間だけレーザー光が発振したとする。ゲート発生器411には、パルスレーザー401のトリガー(図9(b))が入力される。そして、ゲート発生器411は、コンピュータ410から指令された前記トリガーがONとなるタイミングから一定の遅延Tdをもち、且つ所定の時間幅Twのゲート信号(図9(d))をI.I.408に出力する。
【0011】
I.I.408では、ゲート発生器411のゲートがONのときだけ、I.I.408に結像された蛍光を増幅してCCD409に出力する。CCD409は、出力された蛍光の像を撮像し、この像を電気信号としてコンピュータ410へ出力する。そして、コンピュータ410は、前記一定の遅延Tdを次々に変化させて、上記動作を繰り返す。
【0012】
例えば、Td及びTwをともに1nsec.として蛍光像をコンピュータ410へ取り込み、次いでTdを3nsec.、5nsec.と順次変化させて蛍光画像をコンピュータ410へ取り込む。このようにして得られた3個の画像のうち、それぞれの1画素に注目して測定した蛍光強度の変化を時間に対してプロットすると、図10に示すようになる。そして、測定点に対して(1)式をフィッテング計算することにより、寿命τを求めることができる。ここで、図10は、時間に対する蛍光強度の変化を示す説明図である。
【0013】
CCD409からコンピュータ410へ取り込んだ各画素に対してτを求めれば、2次元の蛍光画像における蛍光寿命を測定することができる。なお、実際にはレーザーの励起パルスの時間幅は0ではないし、受光するI.I.408のゲートも立ち上がり及び立下りに時間を要する特性である。したがって、これらの特性を考慮して解析する技術が、特許文献1に開示されている。また、特許文献2にも、蛍光寿命を測定する方法が開示されている。
【0014】
【特許文献1】
米国特許第4855930号明細書
【特許文献2】
特開2002−39943号公報
【非特許文献1】
稲澤譲治、津田均、小島清嗣具著「顕微鏡フル活用術イラストレイテッド」秀潤社出版、2000年7月15日
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、時間領域において蛍光寿命を測定する場合には、(1)式で表される蛍光の光量変化カーブを用いて解析するので、励起光であるパルスレーザーは、50〜100fsec.程度という非常に小さいパルス幅であることが要求される。このようなパルス幅でレーザー光を出射できるチタン・サファイアレーザーは、2000万円程度と非常に高価である。さらに、ゲートを高速で切り替えることのできるI.I.408が必要になるが、このようなI.I.も500万円程度であり、相当の金額を要する。このため、従来の方法によって蛍光寿命を測定しようとすると、2500〜3000万円の機材が必要となってしまう。
【0016】
また、従来における蛍光寿命の測定では、蛍光寿命は数値情報として得られるが、測定目的によっては必ずしも数値で蛍光寿命を求める必要はない。例えば、複数の蛍光物質からの蛍光の蛍光寿命を分けて観察したい場合や、蛍光寿命が場所によってどのように異なるかを観察したい場合等は、相対的な蛍光寿命の測定で十分である。
【0017】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、安価に相対的な蛍光寿命を測定できる蛍光顕微鏡及び蛍光寿命の測定方法、並びに蛍光寿命の測定用プログラムを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、この発明に係る蛍光顕微鏡は、観測対象である試料に対して所定の周期で、又は連続して励起光を照射する光源と、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積することにより蛍光の光量を積分する蛍光積分手段と、所定の周期で励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
この蛍光顕微鏡は、励起光の光源により観測対象である試料に対して所定の周期、又は連続して励起光を照射する。そして、演算手段により、所定の周期で励起光を試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算して、相対的な蛍光寿命を求める。このように、積分された蛍光の光量を用いて相対的な蛍光寿命を求めるので、従来のように、極めて高速に励起光の光源をON/OFFさせる必要はない。本発明においては、励起光の光源は数10〜数100MHz程度でON/OFFさせればよく、I.I.も従来と比較して低速でゲートをON/OFFすることができる。これにより、励起光の光源に高価なチタン・サファイアパルスレーザーや高速ゲートのI.I.を使用する必要がないので、従来と比較して極めて安価に蛍光顕微鏡を構成することができる。
【0020】
また、次の発明に係る蛍光顕微鏡は、観測対象である試料に対して所定の周期で、又は連続して励起光を照射する光源と、前記光源からの励起光を前記試料上の1点に収束させる対物レンズと、前記試料から放射された蛍光を光学的に共役な位置に再収束させる手段と、前記蛍光が再収束した位置に配置されるピンホールと、前記ピンホールを通過した蛍光を一定時間蓄積することにより蛍光の光量を積分する蛍光積分手段と、前記試料上に収束した励起光を当該励起光の光軸に対して垂直に2次元走査する走査手段と、所定の周期で励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この蛍光顕微鏡は、いわゆる共焦点形の蛍光顕微鏡であるが、このように、積分された蛍光の光量を用いて相対的な蛍光寿命を求めるので、従来のように、極めて高速に励起光の光源をON/OFFさせる必要はない。本発明においては、励起光の光源は数10〜数100MHz程度でON/OFFさせればよく、蛍光の検出器も従来のようにON/OFFさせる必要はない。これにより、励起光の光源に高価なチタン・サファイアパルスレーザーや高速ゲートを備えたPMT(Photo Multiplier Tube:ホトマルチプライヤーチューブ)を使用する必要がないので、従来と比較して極めて安価に共焦点形の蛍光顕微鏡を構成することができる。
【0022】
また、次の発明に係る蛍光顕微鏡は、上記蛍光顕微鏡において、上記光源は一定の波長を持つ半導体レーザーであることを特徴とする。半導体レーザーはチタン・サファイアパルスレーザーと比較して極めて安価であるので、励起光の光源に要するコストを低減できる。その結果、従来と比較して極めて安価に蛍光顕微鏡を構成することができる。また、次の発明に係る蛍光顕微鏡のように、上記蛍光顕微鏡において、上記光源に発光ダイオードを使用すれば、さらに安価に蛍光顕微鏡を構成することができる。また、半導体レーザーや発光ダイオードは波長の種類が比較的豊富なので、蛍光物質との組み合わせの自由度を高くして、観測の幅を広げることができる。
【0023】
また、次の発明に係る蛍光顕微鏡は、上記蛍光顕微鏡において、上記励起光は、上記試料に対して全反射する角度で入射することを特徴とする。このように、試料上で励起光を全反射させれば、試料中の蛍光物質が発する蛍光のみを観測できるので、蛍光寿命の測定精度を高くできる。
【0024】
また、次の発明に係る蛍光寿命の測定方法は、励起光を所定の周期で観測対象である試料へ照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する工程と、励起光を連続して観測対象である試料に照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する工程と、励起光を所定の周期で前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、励起光を連続して前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
また、次の発明に係る蛍光寿命の測定用プログラムは、励起光を所定の周期で観測対象である試料へ照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する手順と、励起光を連続して観測対象である試料に照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する手順と、励起光を所定の周期で前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、励起光を連続して前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0026】
この蛍光顕微鏡は、励起光の光源により観測対象である試料に対して所定の周期、又は連続して励起光を照射する。そして、所定の周期で励起光を試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算して、相対的な蛍光寿命を求める。このように、積分された蛍光の光量を用いて相対的な蛍光寿命を求めるので、従来のように、極めて高速で励起光の光源をON/OFFさせる必要はない。これにより、励起光の光源に高価なチタン・サファイアパルスレーザーや高速ゲートのI.I.を使用する必要がないので、従来と比較して極めて安価に相対的な蛍光寿命を測定できる。また、本発明に係る蛍光寿命の測定用プログラムによれば、本発明に係る蛍光寿命の測定方法がコンピュータ上で実現できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡の構成を示す説明図である。この蛍光顕微鏡100は、所定の周期で励起光を試料6に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を試料6に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算して、相対的な蛍光寿命を求める点に特徴がある。
【0029】
試料6中の蛍光物質を励起して蛍光を発生させるための励起光を発生する光源として、半導体レーザー1を用いる。半導体レーザー1は、発振器11からの信号に基づいて、所定の周期でON/OFFされる。励起光の波長は、例えば405、450、488、550nm程度のものが使用される。なお、半導体レーザーは、波長の種類が比較的豊富なので、蛍光物質との組み合わせの自由度を高くして、観測の幅を広げることができる。
【0030】
半導体レーザー1から出射されるレーザー光の光路上には、ビームエキスパンダ2及びダイクロイックミラー3が配置されている。ダイクロイックミラー3は、試料6中の蛍光物質を励起するレーザーの波長を反射し、且つ励起された蛍光物質から発生する蛍光の波長は透過するようになっている。
【0031】
また、前記ダイクロイックミラー3の反射光路上には、第一結像レンズ4と対物レンズ5とが配置され、これらを介して観察対象である試料6が配置されている。試料6からの蛍光がダイクロイックミラー3を透過した後の透過光路上には、第二結像レンズ7とI.I.8とCCD9とが配置されている。そして、第二結像レンズ7を通過した蛍光は、I.I.8に結像する。
【0032】
CCD9の画像出力は、これに接続されたコンピュータ10に取り込まれる。また、半導体レーザー1には発振器11が接続されており、この発振器11は一定の周期のON/OFF信号を半導体レーザー1へ入力する。ここで、コンピュータ10には、周辺機器として入力装置、表示装置などを接続し(いずれも図示省略)、これらの制御プログラムをメモリにロードして実行することにより前記周辺機器の機能を実現させてもよい。また、このコンピュータ10には、周辺機器として入力装置、表示装置など(いずれも図示省略)が接続されるものとする。ここで、入力装置とはキーボード、マウス等の入力デバイスのことをいう。表示装置とはCRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置などのことをいう。
【0033】
本発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100は、励起光の光源に安価な半導体レーザー1を用いる。また、光増幅機能を持つI.I.8は高速ゲートを持つ必要はない。このため、50〜100fsec.といった高速でON/OFFできる高価なパルスレーザーや、高速ゲートを持つI.I.を必要とした従来の蛍光顕微鏡と比較して、およそ1/10程度のコストで蛍光顕微鏡100を構成することができる。また、50〜100fsec.といった高速でレーザーをON/OFFする必要はなく、高速でI.I.のゲートをONする必要もないので、比較的簡易な技術で蛍光顕微鏡100を構成することができる。
【0034】
半導体レーザー1から出射されたレーザー光は、ビームエキスパンダ2を通ってダイクロイックミラー3で反射される。ここで反射したレーザー光は第一結像レンズ4を通った後、対物レンズ5によって結像されて試料6へ入射する。試料6においては、この入射したレーザー光(励起光)によって試料6内の蛍光物質が励起され、この蛍光物質から蛍光が発生する。この蛍光は、対物レンズ5及び第一結像レンズ4を介してダイクロイックミラー3へ導かれる。ダイクロイックミラー3では、蛍光である長い波長が第二結像レンズ7の方向に透過してI.I.8に結像する。
【0035】
このような蛍光顕微鏡100の構成により、蛍光寿命を測定する手順について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡の励起光の出射タイミング等を示すタイミングチャートである。また、図3は、この発明の実施の形態1に係る蛍光の測定方法を示すフローチャートである。図2(a)に示すように、発振器11は、一定周期でON/OFFを繰り返す。半導体レーザー1は、発振器11の信号に従い、発振器11のON/OFFと同じタイミングでレーザー光をON/OFFする(ステップS101)。そして、半導体レーザー1がONのタイミングで出射されるレーザー光によって、試料6中の蛍光物質が励起されて蛍光が発生する。この蛍光は、I.I.8で増幅された後、CCD9へ出力される。
【0036】
一般に、測定する蛍光寿命は数nsec.程度であることが多い。この場合には、発振器11の周波数を100MHz程度にし、発振器11のON時間とOFF時間との比(以下デューティー比という)を50%とする。この場合、半導体レーザー1は100MHzの周期でON/OFFを繰り返すことになる。ここで、蛍光寿命が1nsec.程度の場合を考える。このときには、図2(b)に示すように、励起光であるレーザー光がOFFになってから次にONになるまでに、蛍光はほとんど0近くまで減少する。一方、蛍光寿命が5nsec.程度の場合には、図2(d)に示すように、レーザー光がOFFになってから次にONになるまでにおける減少程度は、蛍光寿命が1nsec.程度の場合と比較して小さくなる。
【0037】
I.I.8は周波数特性が良好であるので、このように変化する信号をそのまま増幅してCCD9へ入力させることができる。一方、CCD9の周波数特性はI.I.8よりも劣るので、CCD9はローパスフィルタとして作用する。すなわち、CCD9は積分機能をもち、蛍光積分手段として機能する。その結果、半導体レーザー1からの出力(図2(b)参照)に対するCCD9の出力は、図2(c)のようになり、また、図2(d)に対する出力は図2(e)のようになる。CCD9により蛍光像を撮像し、コンピュータ10は、このCCD9からの出力を取り込む。ここで取り込んだ画像を、蛍光画像Aとする(ステップS102)。
【0038】
上記説明から、蛍光寿命の長いものほど蛍光の光量が多く、より明るく観察されるように考えられる。しかしながら、上記(1)式における定数F0は、蛍光物質の種類、密度あるいは試料6の状態等に依存するので、蛍光が明るいからといって蛍光寿命が長いとは限らない。そこで、F0の影響を除くために、発振器11の出力をONにしたまま試料6に対してレーザー光を出射し(ステップS103)、CCD9で蛍光像を撮像してコンピュータ10へ蛍光像の画像を取り込む。この画像を、蛍光画像Bとする(ステップS104)。
【0039】
発振器11をONのままにした場合、励起光であるレーザー光は常にONの状態で試料6へ照射される。このため、試料6からは常時一定の蛍光が放射される。ここで、(1)式から、F(t)∝F0の関係があるので、蛍光画像Aを蛍光画像Bで除算した結果である蛍光画像A/蛍光画像Bを画像表示すれば(ステップS105)、蛍光寿命の長いものほど明るいことになる。
【0040】
このように、本発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100及び蛍光寿命の測定方法では、励起光であるレーザー光をON/OFFして、試料6から放射される蛍光の光量変化を積分する。そして、この積分値を、連続的にレーザー光を照射したときにおける蛍光光量の積分値で除算することにより、相対的な蛍光寿命を測定する。これにより、安価な光源で蛍光寿命の長短を相対的に比較できる。また、相対的な蛍光寿命を求めることができるので、測定の目的に応じた蛍光顕微鏡を構成することができる。
【0041】
上記蛍光画像の除算は、コンピュータ10が実行するが、これの代わりに、処理部21と記憶部22とを含む専用のハードウェアとして演算手段である演算処理装置20(図1(b)参照)を構成して、上記手順を実行させてもよい。ここで、記憶部22は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体、あるいはRAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。また、この処理部21はメモリ及びCPU(中央演算装置)により構成され、処理部21の機能を実現するためのプログラム(図示省略)をメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0042】
なお、半導体レーザー1の代わりに光源として発光ダイオード(以下LED)を使用してもよい。LEDも半導体レーザー1と同様に数100MHzの周波数特性を持っているので、本発明に係る蛍光顕微鏡100及び蛍光寿命の測定方法に対して十分適用できる。また、LEDは波長の種類が比較的多いので、蛍光試料との組み合わせの自由度を高くして、観測の幅を広げることができる。なお、本発明は、ピンホールやスリットを持つディスクを組み合わせて、ディスク走査型の共焦点顕微鏡に適用することもできる。
【0043】
なお、実施の形態1に係る本発明の蛍光寿命の測定方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって上記測定手順を実現することができる。このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。また、上記プログラムは、上記測定手順をコンピュータ10にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0044】
(変形例1)
図4は、実施の形態1の第1変形例に係る蛍光顕微鏡を示す説明図である。この蛍光顕微鏡101は、実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100と略同様の攻勢であるが、励起光であるレーザー光を、試料6の観測領域に対して全反射する角度で入射させてエバネッセント照明を行い、試料6の蛍光物質が発する蛍光のみを観測する点が異なる。次の説明においては、実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100と同一の構成には同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。また、蛍光の測定方法は実施の形態1で説明した通りなので、その説明を省略する。
【0045】
半導体レーザー1から出射された励起光であるレーザー光は、ビームエキスパンダ2を構成するレンズの周辺部に向かって出射される。ビームエキスパンダ2を通ったレーザー光はダイクロイックミラー3で反射される。ここで反射したレーザー光は第一結像レンズ4を通った後、全反射対物レンズ5aの周辺部へ入射する。
【0046】
全反射対物レンズ5aの周辺部から出射したレーザー光は、試料6の観測領域に対して全反射する角度で入射する。試料6においては、この入射したレーザー光(励起光)によってエバネッセント光が発生して試料6内の蛍光物質が励起され、この蛍光物質から蛍光が発生する。ここで、全反射対物レンズ5aの周辺部から出射する光は全反射して、全反射レンズ5aの光軸に対して対称な位置に入射する。全反射レンズ5aから出射したこのレーザー光は、第1結像レンズ4を通り、ビームストッパ51でさえぎられることになる。これにより、試料6中の蛍光物質から発生した蛍光だけが全反射対物レンズ5aに入射し、第一結像レンズ4を介してダイクロイックミラー3へ導かれる。
【0047】
ダイクロイックミラー3では、蛍光である長い波長が第二結像レンズ7の方向に透過してI.I.8に結像する。この蛍光顕微鏡101では、励起光であるレーザー光の影響を最小限にして、蛍光のみをI.I.8に結像させることができるので、より高い精度で蛍光寿命を求めることができる。
【0048】
(変形例2)
図5は、実施の形態1の第2変形例に係る蛍光顕微鏡を示す説明図である。この蛍光顕微鏡102は、実施の形態1に係る蛍光顕微鏡100と略同様の構成であるが、波長の異なる複数の光源を用意して、それぞれの光源に対応する複数の蛍光物質が発する複数の蛍光寿命を同時に求めるようにした点に特徴がある。なお、簡略化のため、図6においては、結像レンズ、対物レンズその他のレンズ類は省略してある。また、蛍光の測定方法は実施の形態1で説明した通りなので、その説明を省略する。
【0049】
半導体レーザー1、12、13は、それぞれ波長の異なる励起光を出射する。ここで、励起光は3種類に限られるものではなく、観測対象の個数や蛍光物質の種類に応じて、励起光の波長及び個数を適宜選択できる。それぞれの半導体レーザー1、12、13には、発振器11が接続されており、所定の周期(例えば数10〜数100MHz)のON/OFF信号を、それぞれの半導体レーザー1、12、13へ入力する。
【0050】
半導体レーザー11、12、13から出射したレーザー光は、それぞれ励起光用ダイクロイックミラー31、32、33へ導かれる。前記3色のレーザー光は、励起光用ダイクロイックミラー31、32、33を通過する過程で合成され、白色のレーザー光となって反射ミラー19へ入射する。反射ミラー19へ入射した励起光であるレーザー光は、第一結像レンズ4を通った後、全反射対物レンズ5aの周辺部へ入射する。そして、全反射対物レンズ5aから出射したレーザー光は、透明のテンプレート6p上に載せられた試料6の観測領域に対して全反射する角度で入射する。試料6においては、この入射したレーザー光(励起光)によってエバネッセント光が発生して試料6内の蛍光物質が励起され、この蛍光物質から蛍光が発生する。蛍光物質を励起した後のレーザー光は試料6の表面で全反射するので、蛍光物質から発生した蛍光だけが蛍光用ダイクロイックミラー331へ導かれる。
【0051】
蛍光用ダイクロイックミラー33では、3色のレーザー光と蛍光物質とから発生した蛍光を分離する。すなわち、蛍光用ダイクロイックミラー331では、半導体レーザー11、12、13のレーザー光によって励起された蛍光が反射して、I.I.8へ導かれる。I.I.8で増幅された蛍光は、CCD9で積分された後、コンピュータ10へ取り込まれ、実施の形態1で説明した手順で、各蛍光の相対的な寿命が求められる。ここで、半導体レーザー11、12、13から出射したそれぞれのレーザー光で励起される蛍光物質の蛍光寿命はそれぞれ異なる。したがって、蛍光寿命によって3つの蛍光を分離することができる。
【0052】
このような構成により、この蛍光顕微鏡102では、複数の異なる複数の光源を用意して、それぞれの光源に対応する複数の蛍光物質が発する複数の蛍光寿命を同時に求めることで、蛍光を分離することができる。これにより、これまで蛍光の波長毎に必要だったダイクロイックミラーと検出器であるI.I.等とを、それぞれ1個にすることができる。また、蛋白質が結合した場合におけるエネルギー移動の観測に対しても応用できる。
【0053】
(実施の形態2)
図6は、この発明の実施の形態2に係る蛍光顕微鏡を示す構成図である。また、図7は、この発明の実施の形態2に係る蛍光の測定方法を示すフローチャートである。この蛍光顕微鏡103は、本発明を共焦点形の蛍光顕微鏡に適用したものである。次の説明においては、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付する。
【0054】
半導体レーザー1から出射されるレーザー光の光路上には、ダイクロイックミラー3が配置されている。このダイクロイックミラー3の反射光路上にはX及びY方向に走査可能な2個のガルバノミラー15x、15y、瞳リレーレンズ16a、16b及び対物レンズ5が配置されている。そして、対物レンズ5の先には試料6が配置される。また、試料6の蛍光物質から発生した蛍光がダイクロイックミラー3を透過した後における透過光路上には、レンズ17、ピンホール18及びPMT13が配置されている。PMT13は、積分回路14を介してコンピュータ10に接続されている。また、半導体レーザー1には発振器11が接続されており、この発振器11はON/OFF信号を所定の周期(例えば数10〜数100MHz)で半導体レーザー1へ入力する。
【0055】
このような蛍光顕微鏡103の構成により、蛍光寿命を測定する手順について説明する。半導体レーザー1から出射されたレーザー光は、ダイクロイックミラー3で反射される。この反射光は、2個のガルバノミラー15x、15yによってさらに反射された後、瞳リレーレンズ16a、16bを通って対物レンズ5に入射する。ここで、瞳リレーレンズ16a、16bは、ガルバノミラー15x、15yの位置が、対物レンズ5の瞳面と共役にするような光学配置である。そして、ガルバノミラー15x、15yの角度を変化させることにより、対物レンズ5の瞳面へ入射するレーザー光の入射角度が変化する。このようにすれば、焦点面でのレーザースポットは、光軸に対して垂直な平面内で2次元に走査することができる。
【0056】
対物レンズ5に入射したレーザー光は、対物レンズ5の焦点近傍に配置された試料6へ入射する。試料6へ入射したレーザー光(励起光)により試料6内の蛍光物質が蛍光を発生する。この蛍光は、対物レンズ5、瞳リレーレンズ16a、16b及びガルバノミラー15x、15yを介してダイクロイックミラー3へ入射する。この蛍光は、励起光であるレーザー光よりも波長が長いので、ダイクロイックミラー3へ入射した後、レンズ17の方向に透過して、レンズ17でピンホール18へ収束される。
【0057】
ピンホール18は、対物レンズ5と光学的に共役の位置に配置されているので、試料6からの蛍光のうち合焦の成分(焦点の合っている成分)はピンホール18を通過できる。しかし、非合焦の成分はピンホール18の面で広がってしまうので、ほとんどピンホール18を通過できない。ピンホール18を通過した焦点の合っている蛍光の成分は、PMT13で光電変換された後、電気信号として積分回路14へ入力される。
【0058】
上述した手順で得られるのは、試料6上の1点の情報である。ここで、ガルバノミラー15x、15yは、互いに垂直な方向に動作し、一方がX軸を高速に、もう一方がY軸を低速に走査できるようになっている。例えば、1000×1000点の画素を得るときには、X軸のガルバノミラー15xを1kHzで振動させ、Y軸のガルバノミラー15yは1秒間でY軸を走査させる。このとき、X軸は1秒間に1000回往復走査されるので、画像の1ライン分の走査時間は約0.5msec.となる。また、1000×1000点の画素を得るので、1画素の情報取得に要する時間は約0.5μsec.となる。
【0059】
ここで、発振器11は、100MHzで、且つデューティー比が50%でON/OFFする場合を考える。このとき半導体レーザー1の出力は、実施の形態1と同様にON/OFFされて(図2(a)参照)、所定の周期でレーザー光が出射される(ステップS201)。試料6からの蛍光はPMT13で受光された後、積分回路14で積分される。したがって、積分回路14の出力は、実施の形態1と同様に、蛍光寿命が1nsec.のときには図2(c)、蛍光寿命が5nsec.のときには図2(d)のようになる。
【0060】
また、半導体レーザー1も100MHzでON/OFFするので、ON及びOFFの時間はそれぞれ5nsec.となり、1画素当たり50回のON/OFFが繰り返される。積分回路14からの出力、すなわち積分された蛍光の光量は、A/D変換されてからコンピュータ10に取得される(ステップS202)。ガルバノミラー15x、15yが試料6上を走査している間、各画素について積分された蛍光の光量を取得し(ステップS203:No)、その結果をコンピュータ10に取り込む。そして、例えば1000×1000の画素から構成される1枚の画像を得る。この画像を蛍光画像Aとする(ステップS204)。
【0061】
この動作だけでは、実施の形態1と同様に、蛍光寿命が各画素の明るさと対応しない。したがって、発振器11の出力をONのままにして、レーザー光を出射して(ステップS205)、積分された蛍光の光量をコンピュータ10が取得する(ステップS206)。ガルバノミラー15x、15yが試料6上を走査している間、各画素について積分された蛍光の光量を取得し(ステップS207:No)、その結果をコンピュータ10に取り込む。そして、同様に、1000×1000の画素から構成される蛍光画像Aとは異なる1枚の画像を得る。この画像を蛍光画像Bとする(ステップS208)。その後、実施の形態1と同様に、蛍光画像Aを蛍光画像Bで除算すれば(ステップS209)、その結果である蛍光画像A/蛍光画像Bは、蛍光寿命の長いものほど明るいことになる。
【0062】
なお、上記説明においては、半導体レーザー1のON/OFFを繰り返す状態と、ONのままの状態とで2回の走査を行って2枚の画像を得ている、ここで、半導体レーザー1が100MHzでON/OFFしているならば、画像の1点では50回ON/OFFすることになる。これを、蛍光画像A点の前半のみ25回のON/OFFの状態でデータを取り込み、後半はONのままでデータを取り込んでもよい。このようにすれば、一回の走査で蛍光寿命を測定することができるので、測定時間を短縮できる。
【0063】
このような蛍光顕微鏡103及び蛍光寿命測定手順によれば、走査型の共焦点顕微鏡においても、周期的に励起光であるレーザー光をON/OFFして、試料6から放射される蛍光の光量変化を積分することにより、安価な光源を用いて蛍光寿命の長短を相対的に比較できる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る蛍光顕微鏡によれば、従来と比較して極めて安価に蛍光顕微鏡や共焦点形の蛍光顕微鏡を構成することができる。
【0065】
また、この発明に係る蛍光寿命の測定方法又は蛍光寿命の測定用プログラムによれば、従来と比較して極めて安価に相対的な蛍光寿命を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡の構成を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る蛍光顕微鏡の励起光の出射タイミング等を示すタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る蛍光の測定方法を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1の第1変形例に係る蛍光顕微鏡を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の第2変形例に係る蛍光顕微鏡を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る蛍光顕微鏡を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る蛍光の測定方法を示すフローチャートである。
【図8】従来の時間領域における蛍光寿命測定機能を持った蛍光顕微鏡の構成図である。
【図9】レーザー光の発振タイミング等を示すタイミングチャートである。
【図10】時間に対する蛍光強度の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザー
2 ビームエキスパンダ
3 前記ダイクロイックミラー
4 第一結像レンズ
5 対物レンズ
6 試料
7 第二結像レンズ
10 コンピュータ
11 発振器
14 積分回路
15x、15y ガルバノミラー
16a、16b 瞳リレーレンズ
17 レンズ
18 ピンホール
100、101、102、103 蛍光顕微鏡
Claims (7)
- 観測対象である試料に対して所定の周期で、又は連続して励起光を照射する光源と、
前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積することにより蛍光の光量を積分する蛍光積分手段と、
所定の周期で励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する演算手段と、
を備えたことを特徴とする蛍光顕微鏡。 - 観測対象である試料に対して所定の周期で、又は連続して励起光を照射する光源と、
前記光源からの励起光を前記試料上の1点に収束させる対物レンズと、
前記試料から放射された蛍光を光学的に共役な位置に再収束させる手段と、
前記蛍光が再収束した位置に配置されるピンホールと、
前記ピンホールを通過した蛍光を一定時間蓄積することにより蛍光の光量を積分する蛍光積分手段と、
前記試料上に収束した励起光を当該励起光の光軸に対して垂直に2次元走査する走査手段と、
所定の周期で励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、連続して励起光を前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する演算手段と、
を備えたことを特徴とする蛍光顕微鏡。 - 上記光源は一定の波長を持つ半導体レーザーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光顕微鏡。
- 上記光源は発光ダイオードであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光顕微鏡。
- 上記励起光は、上記試料に対して全反射する角度で入射することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光顕微鏡。
- 励起光を所定の周期で観測対象である試料へ照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する工程と、
励起光を連続して観測対象である試料に照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する工程と、
励起光を所定の周期で前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、励起光を連続して前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する工程と、
を有することを特徴とする蛍光寿命の測定方法。 - 励起光を所定の周期で観測対象である試料へ照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する手順と、
励起光を連続して観測対象である試料に照射し、前記試料から放射された蛍光を一定時間蓄積して蛍光の光量を積分する手順と、
励起光を所定の周期で前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量を、励起光を連続して前記試料に照射した場合における積分された蛍光の光量で除算する手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする蛍光寿命の測定用プログラム。
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