明 細 書 ' 無細胞タンパク質合成系を用いたタンパク質の製造方法 技術分野
本発明は、 無細胞タンパク質合成系を用いたタンパク質の製造方法に関し、 詳 しくは生体内において膜に結合して、 あるいは膜の中に埋め込まれた状態で存在 する受容体等の難溶性タンパク質を凝集させること無く合成する方法及びこのよ うにして合成されたタンパク質を再構成する方法に関する。
背景技術 ヒトを始めとする様々な生物のゲノム塩基配列の大規模解析は、 既にゴールを 目前としている。 次なる課題は、 塩基配列解析により明らかにされた膨大な数の 遺伝子がコードするタンパク質の機能解明であり、 また、 これにより得られた知 見は、 新しい医薬を開発する上で多いに役立つものと期待されている。 タンパク 質の立体構造解析は、 夕ンパク質の機能解明あるいはドラッグデザィンに有用な 情報をもたらすものであり、 今後その重要性を増すと共に、 大規模解析に対応し たハイスループット化が望まれるものと考えられる。
タンパク質の立体構造解析には、 ミリグラムオーダーの精製タンハ°ク質が必要 とされる。 そのため以前は、 タンパク質の大量調製が立体構造解析のネックとな つていたが、 今日では、 遺伝子クローニング技術の発展により、 所望のタンパク 質を、 微生物や培養細胞などの発現系を用いて大量にかつ容易に調製することが 可能である。 さらに無細胞タンパク質合成系についても、 透析法の導入など様々 な改良が行われた結果、 数時間でミリグラムオーダーのタンパク質が得られるよ うになり、 立体構造解析のハイスループット化が現実のものとなりつつある。 しかしながら現時点では、 これらの方法が全てのタンパク質に適用されるわけ ではなく、 膜夕ンパク質を始めとする疎水性の高い領域を有するタンパク質の大 量調製は、 未だに困難である。 培養細胞発現系においては、 膜タンパク質は宿主 細胞の有する局在化機構によりその細胞膜に蓄積される。 そのため、 これを精製
する場合には、 各種可溶化剤を用いて膜から抽出する工程が必要となるが、 この 工程は時間と労力を要するほか、 抽出効率の上でも問題があり、 また、 可溶化剤 の種類によってはタンパク質本来の構造や機能が失われることもある。 また、 膜 タンパク質など疎水性の高い領域を有するタンパク質を大腸菌で発現させると、 多くの場合これらは不溶性の沈殿となる。 従って精製にあたっては、 沈殿をグァ 二ジンや尿素などの強力な変性剤を用いて可溶化する工程、 さらに、 この処理に より変性したタンパク質を本来の構造に戻す (フォールデイング) 工程が必要と なる。 これらの工程も時間と労力を要するものであり、 またフォ一ルディングェ 程の間に再不溶化するなどの問題も多い。 また、 これらのタンパク質は、 無細胞 タンパク質合成系においても凝集して不溶性の沈殿となり、 十分な合成量を得る ことができない。
以上のように、 膜夕ンパク質は不溶化という問題があるため大量調製が困難で あり、 その立体構造解析も遅れているのが現状である。 し力し、 膜タンパク質に は受容体、 チャネルタンパク質、 トランスポーターなど創薬の対象として重要な ものが多く、 これからの医薬開発を効率的に進める上で、 その構造解析は急務で める。
発明の開示
本発明は、 無細胞タンパク質合成系において、 膜タンパク質など疎水性の高い 領域を有するタンパク質を不溶化させることなく合成することを課題とする。 上記課題に鑑みて、 本発明者らは無細胞夕ンパク質合成系を用いて難溶性夕ン パク質、 特に生体内において膜に埋め込まれた状態で存在する受容体等の高度に 疎水的なタンパク質を合成するに際し、 界面活性剤や脂質等を添加するという極 めて簡便な方法によって、 これらのタンパク質を凝集 (不溶化) させることなく 合成できることを見出し、 また、 このようにして合成したタンパク質は、 生体内 での本来の状態、 例えば膜結合型、 でないにもかかわらずその生物学的な機能を 発揮しうる蓋然性が極めて高く、 その構造や機能の解析に用いることができるこ とも見出し、 これらの知見に基づいて本発明を完成するに到つた。
すなわち、 本発明の第一の視点において、 無細胞タンパク質合成系を用いた夕
ンパク質の製造方法において、 該合成系が界面活性剤を含有することによって、 夕ンパク質を凝集させること無く合成することを特徴とする方法が提供される。 好ましい態様において、 上記タンパク質は少なくとも一部に疎水性の高い領域 を有するタンパク質、 例えば膜タンパク質等の全体又は一部 (部分構造) である ことを特徴とする。
さらに好ましい態様において、 上記界面活性剤はタンパク質を変性させない緩 和な界面活性剤であり、 例えば、 非イオン性又は両性イオン性界面活性剤等が挙 げられる。 具体的にはジギトニン、 ポリオキシエチレンアルキルエーテル (Brij 系) 、 ポリオキシエチレンソルビ夕ン (Tween系) 、 /3—ドデシルマルトシド、 ]3—ォクチルダルコシド、 /3—ノニルダルコシド、 一へプチルチオダルコシド 、 )3—才クチルチオダルコシド、 スクロースモノデカノエ一ト、 スクロースモノ ドデカノエ一ト、 ォクチルテ卜ラォキシェチレン、 ォクチルペン夕ォキシェチレ ン、 ドデシルォク夕ォキシエチレン、 N-ジメチルデシルァミン N-ォキシド、 N, N -ジメチルドデシルァミン N-ォキシド、 N, N-ジメチルドデシルアンモニォプロパ ンスルホネート、 ォクチル (ヒドロキシルェチル) スルホキシド、 ォク夕ノィル - N -メチルダルカミド、 ノナノィル- N -メチルダルカミド、 デカノィル -N-メチル グルカミド及び (3- [ (3-コルアミドプロピル) -ジメチルアンモニォ] -卜プロパン スルホネート (CHAPS) からなる群から選択される少なくとも一種の界面活性剤 であることを特徴とする。
本発明の一実施形態において、 細菌の菌体抽出液を用いた無細胞タンパク質合 成系に界面活性剤、 好ましくは 0. 1〜2. 0容量%のジギトニン及び Z又は 0. 01〜0. 5容量%の Brij 35を含むことによって、 膜タンパク質を凝集させること無く合成 することを特徴とする方法が提供される。
また、 本発明の第二の視点において、 無細胞タンパク質合成系により製造され たタンパク質を再構成する方法であって、 膜タンパク質の少なくとも一部をコー ドする铸型核酸と、 界面活性剤と、 脂質とを含み、 タンパク質の合成と同時に又 は一定時間経過後に合成反応液の界面活性剤濃度を低下させることによって、 前 記タンパク質を脂質膜に再構成することを特徴とする方法が提供される。
好ましい態様において、 上記界面活性剤濃度を低下させる工程は、 透析、 希釈 、 ろ過、 遠心分離及び/又は界面活性剤に対する吸着剤を添加する工程であるこ とを特徴とする。
更に、 本発明の一実施形態において、 (a ) 細胞抽出液と、 膜タンパク質をコ ードする錶型核酸と、 界面活性剤と、 脂質とを含む無細胞タンパク質合成系で該 タンパク質を合成する工程、 及び
( b ) 該タンパク質の合成と同時に又は一定時間経過後に、 合成反応液の界面活 性剤濃度を低下させる工程、
を含み、 合成されたタンパク質が、 その生物活性の少なくとも一部を有すること を特徴とする膜夕ンパク質の製造方法が提供される。
好ましい形態において、 前記前記膜タンパク質は、 受容体、 チャネルタンパク 質、 トランスポー夕一及び膜結合酵素からなる群から選択される夕ンパク質又は その一部であることを特徴とする。
図面の簡単な説明
図 1は、 無細胞タンパク質合成系でニューロテンシン受容体 (NTR)を発現させ るための鍀型 D N Aを P C R法により調製する方法を示す。
図 2は、 ジギトニンを添加した無細胞タンパク質合成系により合成したニュー 口テンシン受容体 (NTR)を SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、 ウェスタン プロッティング法により分析した結果を示す。 レーン 1〜 5には合成反応終了後 、 遠心分離により沈殿した不溶性画分を、 レーン 6〜1 0には遠心分離の上清画 分をアプライした。 ジギ卜ニン添加量はそれぞれ、 レーン 1及び 6 : 0%、 レ一 ン 2及び 7 : 0. 04%、 レーン 3及び 8 : 0. 4%、 レーン 4及び 9 : 1 %、 レーン 5 及び 1 0 : 0% (錡型 D NA無添加) である。 レーン Mは分子量マーカーとして E CL protein molecular weight markers (アマシャム ·ファ レマシアバイ才テッ ク社製) を用いた。
図 3は、 Bri j 35を添加した無細胞タンパク質合成系により合成したニューロテ ンシン受容体 (NTR)を SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、 ウエスタンプロ ッティング法により分析した結果を示す。 レーン 1〜5には合成反応終了後、 遠
心分離により沈殿した不溶性画分を、 レーン 6〜10には遠心分離の上清画分を アプライした。 Br U 35の添加量はそれぞれ、 レーン 1及び 6 : 0%、 レーン 2及 び 7 : 0.0 1%、 レーン 3及び 8 : 0.02%、 レーン 4及び 9 : 0.2%、 レーン 5及 び 10 : 0% (錶型 DNA無添加) である。 レ一ン Mは分子量マ一カーとして ECL protein molecular weight markers (アマシャム ·フアルマシアバイオテック 社製) を用いた。
図 4は、 無細胞タンパク質合成系でヒト 02-アドレナリン作動性受容体 (ADR B2) を発現させるための铸型 DN Aを PC R法により調製する方法を示す。 図 5は、 ジギトニンを添加した無細胞タンパク質合成系により合成したヒト β 2-アドレナリン作動性受容体 (ADRB2) を SDS-ポリアクリルァ,ミドゲル電気泳動 し、 オートラジオグラフィ一により分析した結果を示す。 レーン 1〜5には合成 反応終了後、 遠心分離により沈殿した不溶性画分を、 レーン 6〜 10には遠心分 離の上清画分をアブライした。 ジギ卜ニン添加量はそれぞれ、 レ r "ン 1及び 6 : 0%、 レーン 2及び 7 : 0.04%、 レーン 3及び 8 : 0.4%、 レーン 4及び 9 : 1% 、 レーン 5及び 10 : 0% (铸型 DNA無添加) である。 レーン Μは分子量マー カーとして ECL protein molecular weight markers (アマシャム ·ファノレマシア バイオテック社製) を用いた。
図 6は、 ジギトニンを添加した無細胞夕ンパク質合成系により合成したヒト β 2 -アドレナリン作動性受容体 (ADRB2) を SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 し、 ウエスタンブロッテイング法により分析した結果を示す。 レーン 1〜5には 合成反応終了後、 遠心分離により沈殿した不溶性画分を、 レーン 6〜10には遠 心分離の上清画分をアプライした。 ジギトニン添加量はそれぞれ、 レーン 1及び 6 : 0%, レーン 2及び 7 : 0.04%、 レーン 3及び 8 : 0.4%、 レーン 4及び 9 : 1%、 レーン 5及び 10 : 0% (鐯型 DNA無添加) である。 レーン Μは分子量マ —力一として ECL protein molecular weight markers (アマシャム 'フアルマシ ァバイオテック社製) を用いた。
図 7は、 Brij35を添加した無細胞タンパク質合成系により合成したヒト /32 - ァドレナリン作動性受容体 (ADRB2) を SDS-ポリアクリルァミドゲル電気泳動し
、 ウエスタンブロッテイング法により分析した結果を示す。 レーン 1〜5には合 成反応終了後、 遠心分離により沈殿した不溶性画分を、 レーン 6〜 10には遠心 分離の上清画分をアプライした。 Brij35の添加量はそれぞれ、 レーン 1及び 6 : 0%、 レーン 2及び 7 : 0.01%、 レーン 3及び 8 : 0.02%、 レーン 4及び 9 : 0.2 %、 レーン 5及び 10 : 0% (錶型 DNA無添加) である。 レーン Mは分子量マ 一力一として ECL protein molecular weight markers (アマシャム ·フアルマシ ァバイオテック社製) を用いた。
図 8は、 /3-ドデシルマルトシド、 NP-40、 Tween 20 又は Triton X-100を添加 した無細胞夕ンパク質合成系により合成したヒト /32 -アドレナリン作動性受容 体 (ADRB2) を SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、 オートラジオグラフィ —により分析した結果である。 レーン 1は界面活性剤無添加、 レーン 2は 0.5% の β-ドデシルマルトシド添加、 レーン 3は 0.5%の ΝΡ- 40添加、 レーン 4は 0.5% の Tween 20添加、 レーン 5は 0.5%の Triton X-100を添加して合成した試料をァ プライした。 Pは沈殿画分、 Sは上清画分を示す。 レーン Mは分子量マーカ一と して ECL protein molecular weight markers (アマシャム ·ファリレマシアバイォ テック社製) を用いた。
図 9は、 /3-ドデシルマルトシド、 NP - 40、 Tween 20 又は Triton X - 100を添加 した無細胞タンパク質合成系により合成したヒト; S2 -アドレナリン作動性受容 体 (ADRB2) を SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、 ウエスタンプロッティ ング法により分析した結果を示す。 レーン 1は界面活性剤無添加、 レーン 2は 0. 5%の/ 3-ドデシルマルトシド添加、 レーン 3は 0.5%の NP- 40添加、 レーン 4は 0. 5%の Tween 20添加、 レーン 5は 0.5%の Triton X- 100を添加して合成した試料を アプライした。 Pは沈殿画分、 Sは上清画分を示す。 レーン Mは分子量マーカー として ECL protein molecular weight markers (アマシャム ·フアルマシアバイ ォテック社製) を用いた。
図 1 0は、 実施例 3に示した方法により再構成を行ったヒ卜 /32 -アドレナリ ン作動性受容体 (ADRB2) の各精製段階の試料を SDS-ポリアクリルアミドゲル電 気泳動し、 (a) 銀染色及び (b) ウェスタンブロッテイング法により分析した
結果である。 レーン 1〜 5は Ni-NTAァガロースカラムによる精製の各段階の試料 ( 1 :原試料、 2 :流出画分、 3 :洗浄画分、 4 : 300 イミダゾールによる溶 出画分、 5 : SOOniMイミダゾ一ルによる溶出画分) を、 レーン 6〜 8は PD- 10脱塩 カラムによる精製の各段階の試料 (6 :流出画分、 7 :フラクション 1、 8 :フ ラクシヨン 2 ) である。
図 1 1は、 実施例 3で再構成を行った His6 - タンパク質と、 対照として用い たヒト j3 2 AR ( S f 9 ) の Alprenololに対する結合曲線である。 発明の実施の形態 (無細胞タンパク質合成系)
本発明における無細胞タンパク質合成系とは、 細胞抽出液を用いて試験管内で タンパク質を合成する系であり、 このような合成系としては mR NAの情報を読 み取ってリボゾーム上でタンパク質を合成する無細胞翻訳系、 又は D N Aを铸型 として R NAを合成する無細胞転写系と無細胞翻訳系の両者を含む系の何れでも 良い。 D N Aを铸型として用いる場合には、 P C R等の試験管内での増幅反応に より、 従来必要とされたクローニングという煩雑な操作を経ることなく、 多数の 錶型 D N Aを同時並行的に迅速に調製することができる。
上記細胞抽出液としては、 リボゾーム、 t R NA等のタンパク質合成に必要な 成分を含む真核細胞又は原核細胞の抽出液が使用可能である。 前記真核細胞及び 原核細胞としては従来公知のものが何れも使用可能であり、 具体的に例示すれば 、 大腸菌、 好熱性細菌、 小麦胚芽、 ゥサギ網状赤血球、 マウス L一細胞、 エール リツヒ腹水癌細胞、 H e L a細胞、 C HO細胞及び出芽酵母などが挙げられ、 特 に大腸菌由来のもの (例えば大腸菌 S 3 0細胞抽出液) 又は高度好熱菌 (Thermus thermophi lus)由来のものが高い合成量を得る点において望ましい。 該大腸菌 S 3 0細胞抽出液は、 大腸菌 A19 (rna^ met) , BL21, BL21 s tar, BL21 codon plu s株等から公知の方法 (Prat t, J. M. et al. , Transcript ion and translat ion― a pract ical approach, (1984) , pp. 179-209, Henes, B. D.と Higgins, S. J.編 、 I L Press, Oxford参照) に従って調製できるし、 あるいは Promega社や Novag
en社から市販されるものを使用してもよい。
このような細胞抽出液は、 上記各細胞抽出液が濃縮されたもの (以下 「濃縮細 胞抽出液」 という。 ) でもよいし、 未濃縮のもの (以下 「粗細胞抽出液」 という 。 ) であっても良いが、 濃縮細胞抽出液を使用することにより、 より高いタンパ ク質合成量が得られる。 この濃縮細胞抽出液を得る方法としては、 任意の手段例 えば限外濾過、 透析、 PEG沈殿等によって行うことができる。
本発明の無細胞タンパク質合成系の組成としては、 大腸菌 S 30等の粗細胞抽 出液又は濃縮細胞抽出液 (10〜90重量%) の他に、 目的のタンパク質をコードす る DNA又は RNA (mRNA等) 、 ATP (0.5〜5mM) 、 GTP (0.05〜1. Om M) 、 CTP (0·05〜1·0πιΜ) 、 UTP (0.05〜1. OmM) 、 緩衝液、 塩類、 ァミノ 酸、 RNa s e阻害剤、 抗菌剤、 必要により RNAポリメラーゼ (DNAを铸型 とする場合) 及び t RNA等を含むことができる。 その他、 ATP再生系、 ポリ エチレングリコ一ル (例えば PEG# 8000) 、 3', 5'- cAMP、 葉酸類 (0.1 〜5mM)、 還元剤 (例えば 1〜10πιΜのジチオスレィ ] ^一ル) 等が含まれる。
緩衝液としては、 例えば Hepes_K0H、 Tr is- OAcのような緩衝剤を使用できる。 塩類としては、 酢酸塩 (例えばアンモニゥム塩、 マグネシウム塩等)、 グルタミン 酸塩等が使用でき、 抗菌剤としてはアジ化ナトリウム、 アンピシリン等が使用可 能である。 また DNAを鐯型として用いる場合には RNAポリメラ一ゼを反応系 に添加するが、 例えば T7RNAポリメラーゼ等の市販の酵素を使用できる。
本発明において、 ATP再生系としては好ましくは 0.02〜5/ g//iLのクレアチ ンキナーゼ (CK) と 10〜100 のクレアチンホスフェート (CP) の組合せが 挙げられるが、 これに限定されるものではなく、 従来より公知の材料が何れも使 用可能であり、 上記以外に例えば l〜20mMのホスホエノ一ルピルペート (PEP ) と 0.01〜l zg/ Lのピルビン酸キナーゼ (PK) の組合せ等が使用可能である 。 これら PK及び CKは何れも ADPを ATPに再生する酵素であり、 それぞれ P E Pおよび C Pを基質として必要とする。
本発明の無細胞タンパク質合成系には、 バッチ法、 フロー法の他、 従来公知の 技術がいずれも適用可能であり、 例えば限外濾過膜法や透析膜法、 樹脂に翻訳铸
型を固定化したカラムクロマト法等 (Spirin, A.ら、 Metti. In Enzymol. 217 巻、 123〜 142頁、 1993年参照) を挙げることができる。
(難溶性タンパク質)
本発明において合成されるタンパク質は、 分子中に疎水性の大きい部分を局部 的に含むようなタンパク質 (難溶性タンパク質) 又はその一部であれば良く、 特 に、 受容体、 チャネルタンパク質、 トランスポーター及び膜結合酵素などの膜夕 ンパク質が挙げられる。 具体的に例示すると、 細胞膜受容体としては、 イオンチ ャネル内蔵受容体 (脳内のグルタミン酸受容体等) 、 膜 7回貫通型受容体 (ァ'ド レナリン、 ドーパミン等のアミン作動性受容体、 アンギオテンシン、 ニューロべ プチド等の生理活性ペプチド受容体等) 、 脂質受容体 (プロス夕グランデイン受 容体等) 、 ペプチドホルモン受容体 (ACTH, TSH受容体等) 及びケモカイン受容体 等がある。 トランスポー夕一としては、 グルコースやアミノ酸等の比較的低分子 物質から、 タンパク質や DNA等の比較的大きな分子を輸送するためのもの等が ある。 膜結合酵素としては、 Gタンパク質等の細胞内へのシグナル伝達に関与す る多くのタンパク質が存在し、 細胞増殖の調節や細胞のガン化等に関し重要な働 きをしている。 さらに、 このような従来から公知の膜タンパク質のみならず、 レ まだその機能が明らかでない新規な膜タンパク質も含まれる。
これらの難溶性夕ンパク質は驚くべきことに界面活性剤との複合体として生物 学的機能や立体構造の解析に使用できる場合があり、 例えばマゥス脳から界面活 性剤で抽出した可溶性画分にニューロテンシンとの結合活性を検出した報告など がある (Mazella, J.ら、 J. Biol. Chem.263巻、 144一 149頁、 1988 年参照) 。 また、 紅色光合成細菌(Rhodopseudomonas viridis)の光合成反応中心 複合体は界面活性剤との複合体として結晶化され、 3 A分解能以上の高分解能で X線結晶解析が行われている (Michel, H.ら、 J. Mol.Biol.158巻、 567頁、 1982年及ぴ 6136!111(^6]:, J.ら、 Nature 916巻、 618頁 (1985年参照 ) 。 従って、 膜タンパク質は相当量の界面活性剤に覆われた状態で結晶化しても 、 もとの脂質二重層内の環境をかなり復元していると考えられる。
従って、 本発明の方法により凝集することなく合成され、 合成反応液の上清に
回収されるタンパク質についても、 リガンドとの結合能力やシグナル伝達作用等 の生物学的な機能を発揮し得る蓋然性が極めて高いと考えられる。
(界面活性剤)
本発明の方法に用いられる界面活性剤は、 合成すべきタンパク質の種類によつ て適宜選択して使用されることが望ましく、 タンパク質の変性を起こさないもの であれば従来公知のものがいずれも使用可能である。 通常用いられる界面活性剤 には、 その電気的性質により、 非イオン性、 陰イオン性、 及び両性イオン性に大 別される。 非イオン性界面活性剤としては、 ジギトニン、 ポリオキシエチレンァ ルキルエーテル (Brij系) 、 ポリオキシェチレンソルビタン (Tween系) 、 β― ドデシルマルトシド、 β一才クチルダルコシド、 3—ノニルグルコシド、 β一へ プチルチオダルコシド、 3—ォクチルチオダルコシド、 スクロースモノデカノエ —卜、 スクロースモノドデカノエー卜、 ォクチルテトラォキシエチレン、 ォクチ ルぺンタォキシエチレン、 及びドデシルォク夕才キシェチレン等が挙げられる。 陰イオン性界面活性剤としては、 タウロデオキシコール酸等が挙げられる。 両性 イオン性界面活性剤としては Ν, Ν -ジメチルデシルアミン Ν -才キシド、 Ν, Ν-ジメチ ルドデシルァミン Ν -ォキシド、 Ν, Ν -ジメチルドデシルアンモニォプロパンスルホ ネート、 及び (3- [ (3-コルアミドプロピル) -ジメチルアンモニォ] -1 -プロバンス ルホネート (CHAPS) 等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、 一種のみで単独使用してもよく、 また二種以上を組み 合わせてもよい。 これらの界面活性剤の使用量は、 目的タンパク質の種類に応じ て適宜設定されることが好ましいが、 通常用いられる濃度としてはその界面活性 剤の臨界ミセル濃度 (CM C) の 1〜5 0倍量程度が好ましく、 より好ましくは 3から 1 0倍程度使用される。 例えば、 界面活性剤としてジギトニンや Brij 35等 の非イオン性界面活性剤を使用した場合、 その濃度はジギトニンでは 0. 1〜2. 0容 量%程度が好ましく、 より好ましくは 0. 4〜1. 5容量%程度である。 また、 Brij 35 では 0. 01〜(! 5容量%程度が好ましく、 より好ましくは 0. 02〜0. 2容量%程度であ る。
上記界面活性剤は、 夕ンパク質を変性させない緩和な界面活性剤であることが
好ましい。 ドデシル硫酸ナトリゥム(SDS)のようなタンパク質変性作用の強い界 面活性剤は、 合成されたタンパク質を変性させる可能性が強い。 また、 これらは 無細胞タンパク質合成系を構成する酵素タンパク質等を変性させてそのタンパク 質合成活性自体を阻害する可能性があるため本発明の方法には不適当である。 また、 上記界面活性剤だけでは、 水溶液中でタンパク質の構造を維持し、 凝集 を防止するのが困難な場合に、 上記界面活性剤や脂質よりも小さなヘプタン _1, 2 , 3 -トリオールやオクタン- 1, 2, 3-トリオール等の両親媒性物質や、 トリェチルァ ミンアンモニゥムゃフエ二ルァラニン等の極性物質を共存させることによって凝 集を防止することができる。
(合成された夕ンパク質の検出と再構成)
本発明の方法により無細胞タンパク質合成系で合成したタンパク質は、 界面活 性剤との複合体となることによって合成反応液中で凝集 (不溶化) せずに、 後述 する実施例において具体的に示したように、 合成反応液を通常の遠心分離処理し た後の上清画分に検出される。 従って、 これらの溶液中のタンパク質を用いてそ の機能を解析したり、 NM Rによる構造解析に用いることができ、 さらにこれら の溶液から該夕ンパク質の結晶を作製することができれば X線結晶解析に用いる こともできる。
さらに、 膜タンパク質等の生体内での構造や機能をより正確に解析するために は、 無細胞タンパク質合成系で合成されたタンパク質を人工膜やリボソーム等に 再構成することが好ましい。 かかる再構成は界面活性剤と脂質とを添加した無細 胞タンパク質合成系で、 合成反応と同時に又は一定時間経過後に界面活性剤濃度 を低下させることによって、 合成されたタンパク質を脂質膜に再構成する。 ここ で、 再構成とは、 脂質によって形成された二分子層又は多重層からなる人工膜や リボソームに、 合成された膜タンパク質の少なくとも一部が埋め込まれることに よって生体内における状態に類似した系を構築することである。 この方法に使用 し得る脂質にはァシルグリセロール (中性脂肪) やコレステロールエステル等の 単純脂質の他、 リン脂質や糖脂質等の複合脂質が含まれる。 リン脂質には、 ホス ファチジルコリン ( P C ) 、 ホスファチジルエタノールァミン ( P E ) 、 ホスフ
ァチジルセリン ( P S ) ホスファチジルイノシトール ( P I ) 、 ホスファチジル グリセロール (P G) プラズマローゲン、 スフィンゴミエリン、 セラミドシリア チン及びこれらの誘導体等があり、 糖脂質にはセレブ口シド、 グロポシド、 ガン ダリオシド等のスフィンゴ糖脂質と総称されるもの等が挙げられる。 これらは一 種又は二種以上を組み合わせて使用することができ、 その使用量は用いる脂質に よって適宜設定されることが好ましいが、 通常、 0. 1〜10 πιΜ程度である。
これらの脂質の存在下に合成された膜タンパク質は、 界面活性剤の濃度を低下 させることによって脂質の二分子層や多重層が形成される際に、 これに組み込ま れて再構成が行われる。 界面活性剤の濃度を低下させるためには、 例えば.、 透析 法、 希釈法や界面活性剤に対する吸着剤を添加する方法等が挙げられる。
脂質膜に再構成された膜タンパク質を精製する場合は、 これらの複合体をろ過 や遠心分離法等によって回収し、 更に界面活性剤を加えて一旦可溶化して目的の 膜タンパク質のみを精製することも可能である。 後述する実施例 3では、 このよ うにして精製及び脂質膜に再構成した膜タンパク質について、 ヒ卜 3 2-アドレナ リン作動性受容体 (ADRB2)としてリガンドとの結合能力を有することが確認され る。 結合能力評価は、 放射性同位元素で標識された Alprenolol等の 0アドレナリ ン受容体の遮断薬と、 非標識の該遮断薬とを種々の濃度比で競合して結合、 ある いは阻害させ、 放射性同位元素の特異的結合 (取り込み) を測定することによつ て、 再構成された受容体の結合能力を評価する。 図 1 1の結果から、 非標識の遮 断薬濃度が増加すると /3アドレナリン受容体に結合する標識量が減少することか ら、 再構成された ]3アドレナリン受容体がそのリガンドと特異的に結合し、 生物 活性を有することが認められる。
また、 無細胞タンパク質合成系が透析法によって構成されている場合には、 か かる合成反応の内液に界面活性剤と脂質とを添加し、 タンパク質合成反応を行う と同時に又は一定時間経過後に透析外液から界面活性剤を除去することによって 、 タンパク質の合成速度と界面活性剤濃度を最適化して、 合成されたタンパク質 を脂質層の中に再構成することが可能となる。
実施例
以下に本発明の実施例として、 ラット由来ニューロテンシン受容体 (NTR)及び ヒト由来 /3 2—アドレナリン作動性受容体 (ADRB2)をコードする c D N Aフラグ メントを用いて本発明の方法について検討した結果を詳細に説明するが、 本発明 はこれらの実施例に限定されるものではない。 なお、 ここで%は、 特記しない限 り容量%である。
[実施例 1 ]ラットニユーロテンシン受容体 (NTR)の合成
NTRは、 Gタンパク質連結型受容体ファミリーのメンバーであり、 7回膜貫通 型膜タンパク質である。 そのリガンドであるニューロテンシンの結合により、 G タンパク質を介してホスホリパーゼ Cを活性化し、 イノシトール- 1, 4, 5-卜リス リン酸 Zジァシルグリセロールを産生する働きを有する。
1 ) MBP- T43NTR- TrxA- H10錶型フラグメントの調製
ここでは、 NTRc DNAの 5 '側にマル! ^一ス結合タンパク質 (MBP) 遺伝子、 3 '側にチォレドキシン (TrxA) 遺伝子および 10個のヒスチジンタグ配列を接続 した融合遺伝子を用いた。 この融合遺伝子を含む発現ベクター pRG/III- hs- MBP-T 43NTR- TrxA- H10は、 大腸菌での発現、 生成が報告されており (Grissha匪 er, R. ら、 Biochemical Society Transact ions, 2 7卷、 8 9 9〜9 0 3頁、 1 9 9 9 年参照) オックスフォード大学、 A. Wat ts博士より提供された。 NTR c D NAを 含むベクター pRG/III- hs- MBP-T43NTR-TrxA_H10を铸型とし、 5 ' プライマー; 5' -GTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGAAAATAAAAACAGGTGCACGCA-3' (配列番号 1 ) 、 及び 3 ' プライマー; 5' - GCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGTCGACGCCAGGGTTTTCCCAG T-3' (配列番号 2 ) を用い、 表 1に示した組成の反応液 を調製した。 表 2 に示したプログラムに従って第 1次 P C Rを行い、 NTR c D NAフラグメントを 増幅した。
[表 1 ] 第 1次 P C R反応液の組成
組成 添加』 铸型プラスミド 2ng/ L 5 zL
5 ' プライマ一 2.5 xM 5 xL 3, プライマ一 2. 5 Μ
dNTP s (東洋紡) 2mM 2.5 L lOxExpand HF緩衝液 (ベーリンガ' 2.5 L ( 15 塩化マグネシゥム含有)
4.8 L
DNAポリメラーゼ (ベ一リンガ一マンハイム) 3500units/mL 0.2nl
[表 2] PCRプログラム
STEP1 94。C 2 min
STEP2 94。C 30 sec
STEP3 60°C 30 sec
STEP4 72°C 2min
STEP5 GOTO 2 for 9 times
STEP 6 94°C 30 sec
STEP7 60°C 30 sec
STEP8 72°C 2 min +5sec/cycle
STEP9 GOTO 6 for 19 times
STEP 10 72°C 7 min
STEP 11 4°C forever
続いて第 1次 P C R産物を銬型とし、 この両末端と一部重複する 2つの化学合 成 2本鎖 DNA断片 (T7プロモーター配列をコードする 5'断片 (配列番号 3) 及び T7ターミネ一夕一配列をコードする 3 '断片 (配列番号 4) ) と、 5', 3' -プ ライマ一; 5'- GCCGCTGTCCTCGTTCCCAGCC-3' (配列番号 5) 、 とを用い、 表 3に示 した組成の反応液 25 Lを調製し、 表 2に示したプログラムに従って第 2次 P C Rを行った。 この結果、 図 1に示したように、 5' 上流の T7プロモータ一配列と 、 3,下流の T7ターミネータ一配列の間に、 大腸菌のマルトース結合タンパク質 (MBP) 、 N末端の一部欠失した NTR(T43NTR)、 チォレドキシン(TrxA)及び 10個の ヒスチジンタグの融合タンパク質をコ一ドする配列が挿入された NTR (MBP-T43NT R-TrxA-H10) cDN A銬型フラグメントが得られた。
[表 3] 第 2次 PC R反応液の組成
組成 添加 第 1次 PCR産物(鐯型)
5, 、 3, プライマー 0.25/iL 5' 断片 M 0.625 L 3, 断片 2nM 0.625 ^L dNTP s (東洋紡) 2謹 2.5 L 10 X Expand HF緩衝液 (ベーリンガ- 2. ( 15 塩化マグネシゥム含有)
滅菌蒸留水 8.3 L
DNAポリメラーゼ (ベーリンガーマンハイム) 3500units 0.2 Ι
2 ) 無細胞タンパク質合成法による MBP- T43NTR-TrxA- H10タンパク質の合成 大腸菌 S30抽出液は Zubayら (Annu. Rev. Genet i. , 7, 267-287, 1973) の方法に従 つて、 大腸菌 BL21株から調製した。 タンパク鹭合成反応は下記の表 4に示した組 成の溶液に、 上記の ΜΒΡ- T43NTR- TrxA-HIO c DNAフラグメントの PCR産物 1 jai 、 上記大腸菌 S30抽出液 7.2/iLを加え、 反応液の全量を 30/xLとした。 同じ組成の 反応液に終濃度 0.04%、 0.4%、 1%のジギトニン (和光純薬) 又は終濃度 0.01% 、 0.02%、 0.2%の Brij35 (SIGMA) を加えたものを調製した。 タンパク質合成反 応は、 30°Cで 2時間行った。
'質合成反応液の組成 組成
HEPES-K0H pH7.5 58.0 ジチォスレイトール 2.3 niM ATP
CTP, GTP, UTP 各 0.9 πιΜ クレアチンリン酸 81.0 mM クレアチンキナーゼ 250.0 g/mL ポリエチレングリコール 8000 4.00% 3', 5'-cAMP 0.64 mM
U -) - 5-フオルミル- 5, 6, 7, 8, -テ卜ラ-ヒドロ葉酸 35.0 g/mL 大腸菌トータル tRNA 170.0 g/niL グルタミン酸カリウム 200.0 mM 酢酸アンモニゥム 27.7 mM 酢酸マグネシウム 10.7 mM アミノ酸 各 1.0 mM
T7RNAポリメラーゼ (東洋紡) 16.0 units/ L
3 ) 抗ヒスチジンタグ抗体を用いたウエスタンプロッティングによる MBP- T43NTR -TrxA-HIOタンパク質の検出
合成反応終了後、 反応液を 12, 000 g、 20分間遠心し、 上清と沈殿に分離した。 この沈殿を 1. 5倍量の SDS-P AGEサンプルバッファーに溶解した。 上清については アセトン沈澱処理を行い、 得られた沈殿を 1. 5倍量の SDS- PAGEサンプルバッファ 一に溶解した。 これらの試料について、 定法に従って SDS-ポリアクリルアミド電 気泳動を行った。 ゲルは MULTIGEL15/25 (第一化学薬品) を用いた。 泳動終了後 、 セミドライトランスファー装置 BE- 330 (バイオクラフト) を用いて、 ゲル中の 試料をニトロセルロース膜 (PROTORAN BA85、 ポアサイズ 0. 45 /i m、 Sdile icher& Sc uel l) にブロットした。 このニトロセルロース膜を、 10倍に希釈した Wes tern
Blocking Reagent (Roche) を用い、 室温にて一夜、 ブロッキング処理を行った 。 この膜に、 一次抗体として 1000倍に希釈した抗ヒスチジンタグ抗体 (6xHis Mo noclonal Ant ibody, CL0NETECH) を加え、 室温、 1時間インキュベートした。 TB ST液でニトロセルロース膜を 4回洗浄した後、 二次抗体として 5000倍希釈した抗 マウス Ig抗体 (西洋ヮサビ由来過酸化酵素を結合したもの、 Amersham Pharmac ia
Biotech) を加え、 室温、 1時間インキュベートした。 TBST液でニトロセル口一 ス膜を 4回洗浄した後、 ECL Wes tern Blot t ing Detect ion Reagent (Amersham Ph amacia Biotech)と反応させ、 ルミノイメージアナライザー LAS- 1000 plus (富 士フィルム) により検出した。
4 ) ジギトニン添加による MBP-T43NTR- TrxA-HlOタンパク質の合成
ジギトニン添加又は無添加の条件で合成されたタンパク質のウェスタンブロッ ティングの結果を図 2に示した。 ここで検出されたバンドは、 抗ヒスチジンタグ 抗体に認識されるもの、 すなわち MBP-T43NTR-TrxA-H10である。 なお約 20kDaのバ ンドは、 铸型 DNAを加えていない対照サンプル (レーン 5、 10) を含めたすべての サンプルに検出されているため、 大腸菌に由来するタンパク質に抗体が非特異的 に結合したものと考えられる。 ジギトニン非存在下では、 合成された MBP-T43NTR - TrxA- H10は不溶化しており (レーン 1) 、 上清には検出されていない (レーン 6 ) 。 0. 04%ジギ卜ニン存在下においては大部分が不溶化した (レーン 2 ) —方、
少量が上清画分に検出された (レーン 7 )。 0. 4%以上のジギトニン存在下では、 大部分の MBP-T43NTR- TrxA- H10は上清画分に検出され (レーン 8、 9 ) 、 不溶性 画分にはほとんど存在しない (レーン 3、 4 ) ことが分かった。 これらの結果か ら、 本発明の方法により、 膜タンパク質である ΜΒΡ- T43NTR- TrxA - H10を上清から 回収され得ることが示された。
5 ) B r i j 35を添加による MBP- T43NTR- TrxA- H 10タンパク質の合成
Brij 35添加又は無添加の条件で合成されたタンパク質のウエスタンプロッティ ングの結果を図 3に示した。 ここで検出されたバンドは、 抗ヒスチジンタグ抗体 に認識されるもの、 すなわち MBP-T43NTR- TrxA- H10である。 なお約 20kDaのバンド は、 鍀型 DNAを加えていない対照サンプル (レーン 5、 1 0 ) を含めたすべての サンプルに検出されているため、 大腸菌に由来するタンパク質に抗体が非特異的 に結合したものと考えられる。 Brij35非存在下および 0. 01%の Brij 35存在下では 、 合成された MBP- T43NTR- TrxA- H10は不溶化しており (レーン 1、 2 ) 、 上清には 検出されていない (レーン 6、 7 ) 。 0. 02 %の Brij 35存在下においては合成さ れた MBP- T43NTR- TrxA- H10の一部が不溶性画分に検出された (レーン 3 ) —方、 その大部分は上清画分に検出された (レーン 8 )。 0. 2%の Brij35存在下では、 不 溶化した MBP- T43NTR- TrxA- H10はごく一部のみであり (レーン 4 ) 、 ほぼ全量が 上清に検出された(レーン 9 )。 これらの結果から、 ジギトニン同様、 Brij 35を用 いた系においても膜タンパク質である MBP- T43NTR- TrxA- H10を上清から回収され ることが示された。
[実施例 2 ]ヒト;8 2 -アドレナリン作動性受容体 (ADRB2) の合成
ADRB2は、 Gタンパク質連結型受容体ファミリーのメンバーであり、 7回膜貫 通型膜タンパク質である。 そのリガンドであるアドレナリンの結合により、 促進 性 Gタンパク質を介してアデ二リルシクラーゼを活性化させ、 細胞内環状 AM P 濃度を上昇させる働きを有する。 このタンパク質は既に公知であり、 その c D N Aの塩基配列は GenBankに登録されている (ァクセッション番号 AF022956) 。 1 ) }^36- 2铸型フラグメントの調製
ここではヒト 2ァドレナリン受容体とゥシ Gs融合 c D N Aが組み込まれたプ
ラスミドベクター pFASTBaCiQ2- Gs (デューク大学メディカルセンタ一の Robert J . Leikowitz博士より入手) を錶型とし、 5' プライマー; 5' - GGTGCCACGCGGATCC ATGGGGCAACCCGGGAAC-3' (配列番号 6) 、 及び 3' プライマー; - GCGGATAACAAT TTCACACAGGAAACAGTCGACTTACAGCAGTGAGTCATTTGTACTACAA-3' (配列番号 7 ) を用い 、 実施例 1と同様の方法により表 1に示した組成の反応液 25 を調製し、 表 2 に示したプログラムに従って第 1次 PC Rを行い、 ADRB2 cDNAフラグメントを 増幅した。
次に、 第 1次 PCR産物を铸型とし、 この両末端と一部重複する 2つの化学合 成二本鎖 DN A断片 (T7プロモーター配列、 6個のヒスチジンタグ配列及びトロ ンビン切断部位をコードする 5 ' 断片 (配列番号 8) 及び T7ターミネ一夕一配列 をコードする 3' 断片 (配列番号 9) と、 5',3'-プライマー; 5'- GCCGCTGTCCTCG TTCCCAGCC-3' (配列番号 5) とを用い、 実施例 1と同様の方法により表 3に示し た組成の反応液 25 を調製し、 表 2に示したプログラムに従って第 2次 PCR を行った。 この結果、 図 4に示したように、 5,側に T7プロモー夕一配列、 ヒスチ ジンタグおよびトロンビン切断部位を、 3 '側に T7ターミネータ一配列を有する A DRB2 (His6-i82 ) cDNA錶型フラグメントが得られた。
2) 無細胞タンパク質合成系による His6- タンパク質の合成
実施例 1と同様の方法により、 大腸菌 S 30抽出液を用いて無細胞タンパク質 合成系により His6-/32タンパク質を合成した。 表 4に示した組成の溶液に、 上記 His6- /32铸型 cDNAl Lと、 大腸菌 S 30抽出液 7. を加え、 反応液の全 量を 30/ Lとした。 同じ組成の反応液に終濃度 0.04%、 0.4%、 1%のジギトニン (和光純薬) 、 終濃度 0.01%、 0.02%, 0.2%の Brij35 (SIGMA) 、 終濃度 0.5% の -ドデシルマルトシド、 NP - 40、 Tween20又は Triton X- 100を加えたものを調 製した。 タンパク質をオートラジオグラムにより検出する場合は、 L- [14C]Leuci ne (Moravek Biochemicals) 3.7kBQを添加した。 合成反応は 30で、 120分行った
3) オートラジオグラムによる His6-i32タンパク質の検出
合成反応終了後、 反応液を 12, 000g、 20分間遠心し、 上清と沈殿に分離した。
この沈殿を 1. 5倍量の SDS- PAGEサンプルバッファ一に溶解した。 上清については アセトン沈澱処理を行い、 得られた沈殿を 1. 5倍量の SDS-PAGEサンプルバッファ —に溶解した。 これらの試料について、 定法に従って SDS-ポリアクリルアミド電 気泳動を行った。 ゲルは MULTIGEL15/25 (第一化学薬品) を用いた。 泳動終了後 、 ゲルを乾燥させ Imaging Plate (BAS-SR2040, 富士フィルム) にあてて喑所に 2 4時間置いた。 この後、 バイオイメージングアナライザー BAS2500 (富士フィ ルム) を用いて標識タンパク質の検出を行った。
4 ) 抗ヒスチジンタグ抗体を用いたウエスタンプロッティングによる
His6- /32タンパク質の検出
実嗨例 1と同様の方法により、 合成反応終了後の反応液を上清と沈殿に分け、 SDS- PAGEを行った後、 ゲル中のタンパク質をニトロセルロース膜にブロットし、 抗ヒスチジンタグ抗体と反応させてルミノイメージアナライザー(LAS- 1000 plus 富士フィルム社製)により検出した。
5 ) ジギトニン添加による His6- j32タンパク質の合成
ジギトニン添加又は無添加の条件で合成されたタンパク質のオートラジオダラ ムによる検出結果を図 5に、 また、 ウエスタンブロッテイングの結果を図 6に示 した。 図 5では、 ジギトニン非存在下および 0. 04%ジギトニン存在下では、 標識 タンパク質のバンドは主に沈殿画分に検出され (レーン 1、 2 ) 、 上清にはほと んど検出されず (レーン 6、 7 ) 、 これらの条件下では試料中のタンパク質の大 部分が不溶化することが示された。 一方、 ジギトニンの濃度が 0. 4%、 1 %の場合 は、 標識タンパク質は主に上清に検出された (レーン 8、 9 ) 。 これらの結果か ら、 無細胞タンパク質合成系にある濃度以上のジギトニンを添加することにより 、 合成されたタンパク質の不溶化を防げること、 これらを上清から回収できるこ とが示された。
一方、 抗ヒスチジンタグ抗体によるウエスタンブロッテイングの結果 (図 6 ) では、 鍀型 DNAを加えていない対照サンプル (レーン 5、 1 0 ) を含めたすべて のサンプルに約 20kDaのバンドが検出されたが、 これは大腸菌に由来するタンパ ク質に、 抗体が非特異的に結合したものと考えられる。 図 5の結果同様、 ジギ卜
ニン非存在下では、 合成された His6- 2は不溶化しており (レーン 1) 、 上清に は検出されていない (レ一ン 6) 。 0.04%ジギトニン存在下において 大部分が 不溶化した (レーン 2) —方、 少量が上清画分に検出された (レーン 7)。 0.4% 以上のジギトニン存在下では、 大部分の His6- /32は上清画分に検出された (レー ン 3、 4、 8、 9) 。 これらの結果から、 本発明の方法により、 膜タンパク質で ある His6_02を上清から回収できることが示された。
6) Brij35添加による His6- /32タンパク質の合成
Brij 35添加又は無添加の条件で合成されたタンパク質のウエスタンブロッテ ィングの結果を図 7に示した。 Brij 35非存在下および 0.01%の Brij 35存在下では 、 合成された His6-j32は不溶化,しており (レーン 1、 2) 、 上清には検出されて いない (レ一ン 6、 7) 。 0.02%Brij35存在下においては合成された His6-/32の 一部が不溶性画分に検出された (レーン 3) —方、 その大部分は上清画分に検出 された (レーン 8)。 0. 2%の Brij35存在下では、 不溶化した His(5- j32はごく一 部のみであり (レーン 4) 、 ほぼ全量が上清に検出された(レーン 9)。 これらの 結果から、 ジギトニン同様、 Brij35を用いた系においても膜タンパク質である Hi s6 - i32を上清から回収できることが示された。 なお約 20kDaのバンドは、 錶型 DNA を加えていない対照サンプル (レーン 5、 10) を含めたすべてのサンプルに検出 されているため、 大腸菌に由来するタンパク質に、 抗体が非特異的に結合したも のと考えられる。
7) jS-ドデシルマルトシド、 NP - 40、 Tween 20 又は Triton X- 100添加による Hi s6 - jS2タンパク質の合成
終濃度が 0.5%になるように ]3-ドデシルマルトシド、 NP- 40、 Tween 20 又は T riton X- 100を添加した場合に合成されたタンパク質のオートラジオグラムの結 果を図 8に、 またウエスタンブロッテイングの結果を図 9に示した。 図 8及び 9 共に、 分子量約 46, 000のバンドが His6-j32タンパク質であると推定される。 これ らの結果は、 界面活性剤無添加の条件では沈殿画分 (レーン 1 P) のみに検出さ れ、 上清画分 (レーン 1 S) には検出されなかった。 これに対し、 各種界面活性 剤を添加した条件では、 0.5%の ドデシルマルトシドを添加した場合に不溶
性画分 (レーン 2 P) と上清画分 (レーン 2 S) にほぼ同量の His6- /32タンパク 質が検出された。 なお、 その他の界面活性剤を添加した場合には上清画分には Hi s6 - 32タンパク質はほとんど検出されなかった。 これらの結果から、 0.5%の] 8- ドデシルマルトシドの添加により、 膜タンパク質である His6- を上清から回収 できることが示された。
[実施例 3]ヒ卜 32—アドレナリン作動性受容体 (ADRB2)の再構成
1) 透析法によるタンパク質合成
実施例 2と同様の方法により、 ヒト ;32—アドレナリン作動性受容体 (ADRB2) 発現用の铸型 cDNAフラグメントを調製し、 これを TOPO TA Cloning Kit (Invitro gen社)を用いてプラスミド pCR2.卜 T0P0に組み込んだものを铸型として用いた。 続いて実施例 1と同様の方法により、 大腸菌 S 30抽出液を用いて無細胞タンパ ク質合成系により His6- 02タンパク質を合成した。 但し、 実施例 1及び 2とは異 なり、 表 5に示した組成の反応内液 (20mL)及び反応外液(200mL)を用いる透析法 により蛋白質合成を行った。 反応内液は 5mLずつ透析膜 (DispoDialyzer, Spectr a/Por,分画分子量 50, 000) 4本に分注し、 反応外液中に浮遊させて 30°Cで 16時間 タンパク質合成を行った。
[表 5]
濃 度
透析内液 透析外液
HEPES-KOH pH7.5 58.0 ιπΜ 58.0 mM ジチオスレィトール 2.3 iii 2.3 mM ATP 1.2 mM 1.2 ni 組
CTP, GTP, UTP - 各 0.9 各 0.9 ni クレアチンリン酸 成 81.0 mM 81.0 mM クレアチンキナーゼ 250.0 Lg/ml 250.0 g/mL ポリエチレングリコール 8000 4.00% 4.00¾ 3', 5'-cAMP 0.64 mM 0.64 mM
L (-) -5-フオルミル- 5, 6, 7, 8, -テトラ-ヒドロ葉 35.0 Mg/mL 35.0 jLtg/mL 酸
大腸菌トータル tRNA 170.0 g/mL 170.0 /mL グルタミン酸カリウム 200.0 mM 200.0 mM 酢酸アンモニゥム 27.7 mM 27.7 mM 酢酸マグネシウム 10.7 mM 10.7 mM アジ化ナトリウム 1.5 mM 1.5 mM アミノ酸 各 1.5 mM 各 1.5 mM
T7RNAポリメラーゼ (東洋紡) 16.0 units/, L
大腸菌 S 30抽出液 7.2 L/302L全量
プラスミド DNA 1. O /SO^L全量
ジギトニン 0.4% 0.4¾ 脂質溶液 (160mMフォスファチジルコリン、 80m 0.5 L/30 L全量
Mフォスファチジルセリン、 80mMジパルミトイ 酢酸カリウム 4 3 Tris -酢酸 o 2
2) 透析
合成反応終了後、 上記透析膜を 1%CARBI0S0RB (Carbiochem社)を加えたリン酸 緩衝液 (137禮 NaCl, 2.7mM KC1, ΙΟηιΜ Na2HP04, 2mM K¾P04) 中に移し、 2〜 3時間毎に同緩衝液を交換しながら 4°Cで 8時間透析した。
3) 可溶化
透析終了後、 透析内液を回収し、 4°Cで 100, 000 X g、 1時間超遠心分離を行 つた。 得られた沈殿画分を 1 5mLの上記リン酸緩衝液に懸濁し、 10%の ]3—ドデ シルマルトシド (ナカライテスク社製) を滴下して加え、 終濃度 1%とした後、 4°Cで 2時間可溶化した。 可溶化した溶液を透析膜(Spectra/Por, 分画分子量 10 , 000)に入れ、 上記リン酸緩衝液中で 8時間 4°Cで透析した。
4) 精製
透析終了後の可溶化溶液を 4°Cで 100, 000 X g、 1時間超遠心分離を行った。 得られた上清画分(15mL)に、 あらかじめ緩衝液 A (20mMリン酸緩衝液 (pH7.4)、 5 OOmM NaCK lOniMイミダゾール、 0.05% j3一ドデシルマルトシド) で平衡化して おいた湿容量 2mLの Ni-NTAァガロース (QIAGEN社) を加え、 混合後、 4^で 3時 間穏やかに撹拌した。 その後、 Ni- NTAァガロースをカラムに充填し、 余分な緩衝 液を取り除いた。 カラムを 20mLの緩衝液 Aで洗浄した後、 5mLの緩衝液 B (20ιπΜ リン酸緩衝液 (ρΗ7.4)、 500πιΜ NaCL 300πιΜィミダゾール、 0.05% ]3—ドデシルマ ルトシド) でタンパク質を溶出した。
5) 脱塩
5mLのタンパク質溶出液を VIVASPIN (Sartorius社、 分画分子量 10, 000) で 2.5 mLに濃縮した。 2.5niLの濃縮液を、 リン酸緩衝液で平衡化した PD— 10脱塩カラム (Amersham Pharmacia社) に添加した。 続いて同カラムにリン酸緩衝液を加え、 タンパク質の溶出画分 3.5mLを回収した。
6) 再構成
3.5mLのタンパク質溶出液を VIVASPIN (分画分子量 10, 000) で lmLに濃縮した 。 lmLの濃縮液に、 終濃度が 0.01%となるように j3—ドデシルマルトシドと 6.25 /xLの脂質混合液を加えた後、 透析膜 (Spectra/Por, 分画分子量 50, 000)に移し、 1 %CARBI0S0RBを加えたリン酸緩衝液で 8時間 4 :で透析した。
7) 再構成した His6- j32タンパク質の検出
上述した方法により、 界面活性剤及び脂質の存在下で再構成を行った His6 - iS2 タンパク質の純度を、 実施例 1及び 2と同様に、 SDS-PAGE及びウェスタンブロッ ティングで調べた。 図 1 0は、 Ni-NTAァガロースカラム及び PD- 10脱塩カラムに よる精製の各段階における試料を SDS- PAGEを行った後、 (a) 銀染色及び (b) 抗 j32AR抗体を用いてウェスタンプロッティングを行った結果を示した。 (a) 及び (b) のいずれの結果も、 分子量約 46 kDaの His6- 2タンパク質が精製さ れていることが分かる。
8) 結合能力評価 (Binding Assay)
上記 6) で再構成した透析終了後のタンパク質溶液を 4°Cで 100, 000 X g、 .1 時間超遠心分離を行い、 得られた沈殿画分 (再構成された膜画分) を 100〜200 Lのインキュベーションバッファ一 (75mM Tris_HCl (pH7.4) , 12.5mM MgCl2, 2m M EDTA) に懸濁した。 この再構成膜画分を O〜100 ^Mの Alprenolol (Sigma社)の 存在下、 30°Cで 30分間静置した。 その後、 終濃度が IO Mとなるように [3H]Dihi droalprenololを加えて更に 30°Cで 1時間反応させた。
96wellの Unifilter GF/C (What man社)を用意し、 あらかじめ 200 Lの 0.3% ポリエチレンィミンで 2回、 続けて 200 Lの 50mM Tris- HC1 (pH7.4)で 9回洗浄 した。 この 96well Unifilterに上記反応液を加えた後、 インキュベーションバ ッファーで 7回洗浄した。 その後、 96well Unifilterを乾燥させ、 各 wellに 50 zLの MicroScint-0 (Packard社)を加え、 喑所で 10分間静置した。 これを T0PC0UN T (Packard社)を用いて各 well毎の [3H] Dihidroalprenoiolに由来する放射能を測 定した。 種々の濃度の Alprenolol存在下での [3H]Dihidroalprenololの取り込み 量 (結合曲線 Binding Curve) を図 11に示した。 図 1 1において、 対照として 用いたヒト ]32 AR (S f 9) (Lot No. UHW - 1098F)は R B I社から購入した。 x軸は添加した Alprenololのモル濃度を対数目盛りでプロッ卜し、 y軸は Alpren 0101無添加で測定した時の放射能量を 100 %として各濃度の Al p reno 101添加時の 放射能の取り込み率を示した。 図 11より、 本発明の再構成を行った His6- i32夕 ンパク質は、 Alprenololの濃度が 10— 6Mから 10 _4Mに増加するに従って、 [3H]Dihidroalprenololの取り込み率が約 80%から約 10%に低下すること、 即ち 、 添加した非標識の Alprenololと結合していることが分かる。
産業上の利用可能性
本発明の方法によれば、 夕ンパク質の活性を損なわないかたちで一定量の夕ン パク質 (特に、 膜タンパク質) を得ることが可能となり、 タンパク質の構造と機 能に関する研究に有力な手段を提供することができる。 これらの膜タンパク質、 特に、 受容体、 チャネルタンパク質、 トランスポ一夕一等の機能を制御する薬剤 の開発を通じて病気の診断や治療への応用が期待される。