明 細 書 分離組織を有する部材およびその製造方法 技術分野
本発明は、 互いに異なる組成の 2つの領域からなる分離組織を有する部材およ びその製造方法に関する。 本発明でいう部材は、 板材、 棒材、 線材、 管材、 粉体 を含むものとする。 背景技術
金属系材料の用途が拡大され、 しかも使用環境が厳しくなるにしたがい、 材料 に要求される特性も高度化、 多様化している。 そして、 また、 同一材料の各部で 異なる特性が要求される場合もある。 このような要求に対しては、 材料に表面処 理を行う方法や、 異なる材質の材料を張り合わせたクラッド材あるいはサンドィ ツチ構造にするなどの手法が考えられてきた。 しかしながら、 これらの手法は、 複雑な工程と高度な調整技術を必要とし、 製造コストも高価になるという問題が あった。
また、 最近では、 材料内部から表面にかけて、 化学組成や組織が連続的あるい は段階的に変化し、 それに伴い特性も変化する傾斜機能材料が考えられるように なってきている。 例えば、 遠心力、 焼結プラズマ、 プラズマ溶射等を利用して、 金属とセラミックスの割合を徐々に変化させ組成と組織を傾斜化して、 表層は高 硬度で、 耐摩耗性、 耐熱性等を有し、 内層は靱性に富む材料とする研究が進めら れている (例えば、 ふえらむ, Vo l, 6 (2001) , No. 1,ρ9 〜13) 。 このような傾斜機 能材料の応用分野は極めて広く、 また要求される特性も多種に亘つている。 このような傾斜機能材料として、 例えば、 Cuコアはんだポールがある。
近年、 電子機器には、 さらなる小型化、 軽量化、 高機能化、 高速化等が要求さ れている。 このような要求に伴い、 小型で高密度実装が可能な半導体パッケージ が必要とされ、 なかでも多ピン化対応および実装が容易なプラスチック系パッケ
—ジとして B G A (Bal l Gr i d Array ) パッケージが注目されている。
B G Aパッケージの入出力端子には、 通常、 球体 (粉体) である、 はんだポー ルが使用されている。 はんだポールとしては、 Sn- 37Pb 共晶はんだポールや少量 の Agを含有した Sn- 36Pb-2Ag はんだポールを使用することが多い。 しかし、 最近 では、 B G Aパッケージとプリント基板との間隔を精度よく調整することができ るハードコアポールの要求が高まり、 Cuを核として表面に Sn-37Pb 共晶はんだを めっき法でコーティングした Cuコアはんだポールが開発されている。 Cuコアはん だポールは、 熱伝導性がよく半導体デバイスの発熱をプリント基板にすばやく逃 がすことができ、 また電気伝導性にも優れているとされている。 発明の開示
しかしながら、 まだ、 同一材料内で、 化学組成、 組織を多様に変化させて、 目 的とする機能を発現できる材料を、 安定してかつ安価に製造することができてい ないのが現状である。
また、 最近では、 パッケージの更なる小型化の観点から 700 ^ m以下というさ らに小径の Cuコアはんだポールが要求されている。 しかし、 上記した、 表面に Sn -37Pb 共晶はんだをめつき法によりコーティングした Cuコアはんだポールでは、 安定して製造できる大きさ (直径) はたかだか 700 / m前後であり、 この方法で は更なる小径化は難しいという問題がある。 また、 最近では、 環境汚染の問題か ら、 Cuコアはんだポールでも、 表面には鉛フリーはんだを形成することが要望さ れている。
本発明は、 上記した状況に鑑みて、 例えば、 中心部と表層部で異なる特性とな
るように、 材料内で、 組成が異なる領域を適正に制御できる、 分離組織を有する 部材ぉよびその製造方法を提案することを目的とする。
また、 本発明は、 部材として、 球状の粉体であるはんだポールに着目し、 B G Aパッケージ用はんだポールとして好適な分離組織を有する粉体 (部材) および その製造方法を提案することを目的とする。
本発明者らは、 上記した課題を達成するため、 図 1に示すような、 液相状態で 、 互いに組成の異なる 2つの液相に分離する、 液相 2相分離型合金を利用すれば 、 異なる組成の領域を、 例えば、 中心部と表層部に、 分離配置することができる ことに想到した。 液相が 2相に分離する合金としては、 Cu— Fe系合金、 Cu— Co系 合金が知られている (例えば、 Y. akagawa: ACTA METALLURGI CA, Vo l . 6 (1 958) , p. 704 〜71 1 ) 。 しかし、 これらの合金系では、 準安定な液相 2相分離であり、 安 定して分離組織を得ることはできないという問題があった。 本発明者らは、 さら に種々検討した結果、 異なる組成の領域を、 例えば、 中心部と表層部に、 2分し て分離配置した、 分離組織を有する材料を安定して得るためには、 つぎのような 諸条件
①安定した液相 2相分離を有する合金を使用すること、
②広い温度範囲の液相 2相分離領域を有する合金を用いること、
③液相からの铸込温度を高くすること、
④合金組成を、 2つの液相が 5体積%以上の液相量差を有する組成とすること が満足されることが肝要であるという知見を得た。
そこで、 本発明者らは、 まず、 Cu— Fe基合金、 Cu— Cr基合金、 Cu— Co基合金に 着目し、 安定な液相 2相分離状態の形成に影響する因子について研究した。 その 結果、 安定した液相 2相分離の形成には、 第 3元素 (X ) の添加 (種類、 含有量
) が重要であることを見いだした。 さらに、 X元素として、 Cu— Fe基合金では、 所定量の、 C、 Mo、 Nb、 V、 Cr、 W、 S i、 B、 S、 Ta、 Bi、 Ag、 Snのうちから選
ばれた 1種または 2種以上の含有が有効であることを確認した。 また、 Cu— Cr基 合金では、 X元素として、 所定量の、 Fe、 C , Mo、 Nb、 S、 B、 V、 W、 Si、 Sn 、 Ta、 Ag、 Coのうちから選ばれた 1種または 2種以上、 Cu— Co基合金では、 X元 素として、 所定量の、 Fe、 C、 Mo、 Nb、 S、 B、 V、 W、 Si、 Sn、 Ta、 Ag、 Crの うちから選ばれた 1種または 2種以上、 であることも見いだした。
また、 本発明者らは、 分離組織を有する粉体 (部材) が、 B G Aパッケージ 用はんだポールに適用できることに思い至った。 そして、 本発明者らは、 粉体の 表層を鉛フリーのはんだ組成とし、 コア層を電気伝導性、 熱伝導性に優れた組成 の分離組織とするために、 Cu— Bi基合金、 Al— Sn基合金に着目し、 安定な液相 2 相分離状態の形成に影響する因子について研究した。 その結果、 安定した液相 2 相分離の形成には、 第 3元素 (X) の添加 (種類、 含有量) が重要であることを 見いだした。 さらに、 X元素として、 Cu— Bi基合金、 A1— Sn基合金では、 所定量 の、 Sn、 In、 Ag、 Sb、 Zn、 AI、 Bi , Cu、 Niの含有が有効であることを確認した。 本発明は、 上記した知見に基づいて、 さらに検討を加えて完成されたものであ る。
すなわち、 本発明の要旨は、 つぎのとおりである。
( 1 ) 合金で構成された部材であって、 該部材が、 互いに異なる組成の 2つの領 域からなる分離組織を有することを特徴とする分離組織を有する部材。
( 2 ) ( 1 ) において、 前記合金が、 液相状態で互いに組成の異なる 2つの液相 に分離する、 液相の 2相分離を示し、 かつ該液相の 2相分離を示す領域の、 最高 温度 T c と最低温度 Td の差、 Δ Τで 10°C以上を有することを特徴とする分離組 織を有する部材。
( 3 ) ( 1 ) または (2 ) において、 前記合金が、 前記互いに異なる組成の 2つ の液相の体積率の差が 5 %以上となる平均組成を有することを特徴とする分離組
織を有する部材。
(4) (1 ) ないし (3) のいずれかにおいて、 前記部材が、 前記合金の溶湯を 噴霧、 急冷して得られた分離組織を有する粉体であることを特徴とする部材。
(5) (4) に記載の粉体である部材を使用して、 成形、 あるいはさらに焼結し てなる部品。
(6) ( 1) ないし (4) のいずれかにおいて、 前記合金が Cu— Fe— X基合金、 Cu— Cr— X基合金あるいは Cu_Co— X基合金のいずれかであることを特徴とする 分離組織を有する部材。
(7) (6) において、 前記 Cu— Fe_X基合金の、 Feが質量%で 15〜85%、 が 、 質量%で、 C : 0.02〜2.0 %、 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、 V: 4〜20%、 Cr: 4〜30%、 W: 2〜20%、 Si: 4〜20%、 B : 0.2 〜10%、 S : 0.2 〜10% 、 Ta: 2〜20%、 Bi : 1〜20%、 Ag: 2〜20%、 Sn: 2〜20%のうちから選ばれ た 1種または 2種以上であることを特徴とする分離組織を有する部材。
(8) (6) において、 前記 Cu_Cr— X基合金の、 Crが質量%で 15〜85%、 が 、 質量%で、 Fe: 4〜20%、 C : 0.02〜2.0 %、 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、 S : 0.2 〜10%、 B : 0.2 〜10%、 V: 4〜20%、 W: 2〜20%、 Si: 4〜20% 、 Sn: 2〜20%、 Ta: 2〜20%、 Ag: 2〜20%、 Co : 2〜20%のうちから選ばれ た 1種または 2種以上であることを特徴とする分離組織を有する部材。
(9) (6) において、 前記 Cu— Co— X基合金の、 Coが質量%で 15〜85%、 が 、 質量%で、 Fe: 4〜20%、 C : 0.02〜2.0 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、 S : 0.2 -10%, B : 0.2 〜10%、 V: 4〜20%、 W: 2〜20%、 Si: 4〜20% 、 Sn: 2〜20%、 Ta: 2〜20%、 Ag: 2〜20%、 Cr: 2〜20%のうちから選ばれ た 1種または 2種以上であることを特徴とする分離組織を有する部材。
(10) (1) ないし (3) のいずれかにおいて、 前記部材が、 棒状体、 線材、 板 状体のうちのいずれかであることを特徴とする分離組織を有する部材。
(11) (1) ないし (4) のいずれかにおいて、 前記合金に代えて、 セラミック スとすることを特徴とする分離組織を有する部材。
(12) 液相状態で互いに組成の異なる 2つの液相に分離する、 液相の 2相分離を 示し、 かつ該液相の 2相分離を示す領域の、 最高温度 Tc (°C) と最低温度 Td
(°C) の差、 ΔΤで 10°C以上を有する合金の溶湯を、 前記 Tc +10°C以上の温度 から、 所定の形状に铸込み、 互いに異なる組成の 2つの領域からなる分離組織を 生成させることを特徴とする分離組織を有する部材の製造方法。
(13) (12) において、 前記合金が、 前記 2つの液相の体積率の差が 5 %以上と なる平均組成を有することを特徴とする部材の製造方法。
(14) (12) または(13)において、 前記所定の形状に铸込みに代えて、 噴霧、 急 冷して、 分離組織を生成させた粉体とすることを特徴とする部材の製造方法。
(15) (12) または(13)において、 前記所定の形状が、 棒状、 線状、 板状のうち のいずれかであることを特徵とする部材の製造方法。
(16) (12) ないし (15) のいずれかにおいて、 前記合金が、 Cu— Fe— X基合金 、 Cu_Cr— X基合金、 あるいは Cu— Co— X基合金であることを特徴とする部材の 製造方法。
(17) (16) において、 前記 Cu_Fe_X基合金の、 Feが質量%で 15〜85%、 Xが 、 質量%で、 C : 0.02〜2.0 %、 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、 V: 4〜20%、 Cr: 4〜30%、 W: 2〜20%、 Si : 4〜20%、 B : 0.2 〜10%、 S : 0.2 〜10% 、 Ta: 2〜20%、 Bi: 1〜20%、 Ag: 2〜20%、 Sn: 2〜20%のうちから選ばれ た 1種または 2種以上であることを特徴とする部材の製造方法。
(18) (16) において、 前記 Cu— Cr_X基合金の、 Crが質量%で 15〜85%、 が
、 質量%で、 Fe: 4〜20%、 C : 0.02〜2.0 %、 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、
S : 0.2 〜10%、 B : 0.2 〜10%、 V: 4〜20%、 W: 2〜20%、 Si: 4〜20%
、 Sn: 2〜20%、 Ta: 2〜20%、 Ag: 2〜20%、 Co : 2〜20%のうちから選ばれ
た 1種または 2種以上であることを特徴とする部材の製造方法。
(19) (16) において、 前記 Cu— Co—X基合金の、 Coが質量%で 15〜85%、 Xが 、 質量%で、 Fe: 4〜20%、 C : 0.02〜2.0 %、 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、 S : 0.2 〜10%、 B : 0.2 〜10%、 V: 4〜20%、 W: 2〜20%、 Si: 4〜20% 、 Sn: 2〜20%、 Ta: 2〜20%、 Ag: 2〜20%、 Cr: 2〜20%のうちから選ばれ た 1種または 2種以上であることを特徴とする部材の製造方法。
(20) (4) において、 前記部材が、 はんだポールであって、 前記粉体の前記分 離組織が、 鉛フリーのはんだ組成からなる表層と、 電気伝導性と熱伝導性に優れ た組成のコア層と、 からなることを特徴とする部材。
(21) (20) において、 前記コア層が、 Cuまたは A1を主成分とする組成を有する ことを特徴とする部材。
(22) (20) において、 前記合金が、 Cu— Bi— X基合金、 Al_Sn— X基合金、 あ るいは M— In— X基合金のいずれかであることを特徴とする部材。
(23) (22) において、 前記 Cu— Bi— X基合金の、 Biが質量%で 5〜70%、 Xが 、 質量%で、 Sn: 0, 1 〜30%、 In: 0.1 〜30%、 Ag: 0.1 〜30%、 Sb: 0.1 〜30 %、 Zn: 0.1 〜30%、 A1: 0.1 〜30%のうちから選ばれた 1種または 2種以上で あることを特徴とする部材。
(24) (22) において、 前記 Al_Sn_X基合金の、 Snが質量%で 5〜90%、 Xが 、 質量%で、 Bi : 0.1 〜30%、 In: 0.1 〜30%、 Ag: 0.1 〜30%、 Sb: 0.1 〜30 %、 Zn: 0.1 〜30%、 Cu: 0.1 〜30%、 Ni: 0.1 〜15 %のうちから選ばれた 1種 または 2種以上であることを特徴とする部材。
(25) (22) において、 前記 M— In_X基合金の、 Inが質量%で 10〜90%、 が
、 質量%で、 Sn: 0.1 〜30%、 Bi : 0.1 〜30%、 Cu: 0.1 〜30%、 Ag: 0.1 〜30
%、 Sb: 0.1 〜30%、 Zn: 0.1 〜30%、 Ni: 0.1 〜15%のうちから選ばれた 1種 または 2種以上であることを特徴とする部材。
(26) (14) において、 前記部材が、 はんだポールであって、 前記粉体の前記分 離組織が、 鉛フリーのはんだ組成からなる表層と、 電気伝導性と熱伝導性に優れ た組成のコア層と、 からなることを特徴とする部材の製造方法。
(27) (26) において、 前記コア層が、 Cuまたは A1を主成分とする組成を有する ことを特徴とする部材の製造方法。
(28) (26) または (27) において、 前記粉体が、 平均粒径で 700 zm以下の粉 体であることを特徴とする部材の製造方法。
(29) (26) ないし (28) のいずれかにおいて、 前記合金が、 Cu— Bi_X基合金 、 Al— Sn_X基合金、 あるいは M— In— X基合金のいずれかであることを特徴と する部材の製造方法。
(30) (29) において、 前記 Cu_Bi— X基合金の、 Biが質量%で 5〜70%、 が 、 質量%で、 Sn : 0.1 〜30%、 In: 0.1 〜30%、 Ag: 0.1 〜30%、 Sb: 0.1 〜30 %、 Zn: 0.1 〜30%、 A1: 0.1 〜30%のうちから選ばれた 1種または 2種以上で あることを特徴とする部材の製造方法。
(31) (29) において、 前記 Al— Sn— X基合金の、 Snが質量%で 5〜90%、 Xが 、 質量%で、 Bi : 0.1 〜30%、 In: 0.1 〜30%、 Ag: 0.1 〜30%、 Sb: 0.1 〜30 %、 Zn: 0.1 〜30%、 Cu: 0.1 〜30%、 Ni: 0.1 〜15%のうちから選ばれた 1種 または 2種以上であることを特徴とする部材の製造方法。
(32) (29) において、 前記 A1— In— X基合金の、 Inが質量%で 10〜90%、 Xが 、 質量%で、 Sn: 0.1 〜30%、 Bi: 0.1 〜30%、 Cu: 0.1 〜30%、 Ag: 0.1 〜30 %、 Sb: 0.1 〜30%、 Zn: 0.1 〜30%、 Ni : 0.1 〜15%のうちから選ばれた 1種 または 2種以上であることを特徴とする部材の製造方法。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の部材製造に好適な、 A— B系合金の状態図を模式的に示す説
明図である。
図 2は、 部材の組織形態を示す模式図である。
図 3は、 Cuリッチ相と Feリッチ相の液相量差による部材の組織形態の変化を示 す模式図である。
図 4は、 Cu— Fe— X基合金製部材の組織形態と铸込温度との関係を示す模式図 である。
図 5は、 Cu— Fe— X基合金製部材の組織形態と铸込温度との関係を示す模式図 である。
図 6は、 60%Cu_31.8%Fe— 7.2 %Cr— 1 % Cを含有する、 Cu— Fe—X基合金 製粉末の粒子断面組織を示す金属顕微鏡組織写真である。
図 7は、 60%Cu_32%Fe— 8 %Siを含有する、 Cu_Fe_ X基合金製粉末の粒子 断面組織を示す金属顕微鏡組織写真である。
図 8は、 部材の組織形態の類別を示す模式図である。
図 9は、 本発明例 (部材 No.1-24 ) のミクロ組織を示す金属顕微鏡組織写真で ある。
図 1 0は、 比較例 (部材 No.1-7) のミクロ組織を示す金属顕微鏡組織写真であ る。
図 1 1は、 65%Cu— 31.4%Fe— 3 %Si— 0.6 %Cを含有する、 Cu_Fe— X基合 金製粉末の粒子断面組織を示す金属顕微鏡組織写真である。
図 1 2は、 35質量%Cu— 50%Bi— 15質量%Snを含有する、 Cu— Bi— X基合金製 粉末の粒子断面組織を示す金属顕微鏡組織写真 (a) 、 および (a) のスケッチ 図 (b) である。
図 1 3は、 比較例 (部材 No.4-2) のミクロ組織を示す金属顕微鏡組織写真であ る。
図 14は、 本発明例 (部材 No.5-5) のミクロ組織を示す金属顕微鏡写真である
発明を実施するための最良の形態
本発明の分離組織を有する部材は、 合金で構成された部材であって、 互いに異 なる組成の 2つの領域からなる分離組織を有する。 本発明の部材は、 粉末 (粉体 ) 、 棒状体、 線材、 板状体、 管状体のうちのいずれでもよい。 なお、 本発明の部 材には、 铸造まま、 あるいは铸造ままの部材をさらに、 熱間、 温間、 冷間のいず れかで圧延、 鍛造等の加工を施した部材が含まれることはいうまでもない。 なお 、 本発明では合金に代えてセラミックスとしてもよい。
図 2に、 本発明の部材の一例として、 Cu _Fe— X基合金製の棒状体 (部材) に ついての縦断面組織の一例を模式的に示す。 斜線部が、 Cuリッチ相の領域、 その 他が Feリツチ相の領域であり、 2つの組成の異なる領域に分離された組織となつ ている。 図 2 ( a ) の棒状体 (丸棒) の例では、 表面側が Feリッチ相領域、 中心 部が Cuリッチ相領域と、 組成の異なる領域に分離した組織となっている。 Cuリツ チ相領域、 Feリッチ相領域は、 製造条件により、 反転させることができる。
図 2 ( b ) の棒状体 (丸棒) の例では、 下層側が Cuリッチ相領域、 上層側が Fe リッチ相領域と、 上下に組成の異なる領域に分離した組織となっている。 図示は していないが、 Cu— Fe—X基合金製粉体の場合には、 一つの粒子内で表面部と中 心部とで組成の異なる 2つの領域 (Cuリツチ相領域と Feリツチ相領域との 2相) に分離した状態となる。
このような分離組織を有する部材とするためには、 まず、 使用する合金を、 安 定な液相 2相分離を有する合金とする必要がある。 そして、 安定な液相 2相分離 を有し、 かつ液相の 2相分離を示す領域の、 最高温度 T c (°C) と最低温度 Td
CC) の差、 Δ Τが 10°C以上を有する合金を使用することが好ましい。 ここで、
T c、 T d は、 図 1に模式的に示すように、 それぞれ液相 2相分離を示す領域の
、 最高温度、 最低温度である。 分離組織は、 ΔΤが大きいほど、 すなわち液相 2 相分離の温度領域が広いほど、 分離組織の出現が容易となる。 ΔΤが 10°C未満で は、 分離温度範囲が狭く、 凝固中に 2相分離する時間が十分でなく、 安定した分 離組織が出現しにくくなる。
また、 本発明では、 使用する合金は、 上記した安定な液相 2相分離を有し、 か つ液相の 2相分離を示す領域の、 最高温度 T c (°C) と最低温度 Td (°C) の差 、 ΔΤが 10で以上を有する合金であって、 さらにその平均組成を、 分離した 2種 類の液相の体積率の差が 5 %以上となる組成とするのが好ましい。
例えば、 Cu— Fe_X基合金を例に、 分離組織の形成状況におよぼす、 2類の液 相の体積率の差の影響を図 3に示す。 Cuリッチ相と Feリッチ相 (Fe-X) の各液相 の体積率、 VCU、 VFE- Xの差、 AVL =VCU_VFE— Xまたは VFE— X— VCuが、 5 %以上の図 3 (a) 、 (c) では明確な分離組織が得られている。 Cuリッチ相と Feリッチ相 (Fe- X) のうち、 液相量の多いほうが表層側に、 少ないほうが中心部 に配置される。 一方、 Δν^ = 0の図 3 (b) では、 組織 (組成) が、 中心部と 表層部とに明確に 2分されていない。 なお、 組成の異なる 2つの液相の液相量は 、 状態図から計算により求めるものとする。
このように、 本発明の部材は、 安定した液相 2相分離を有する、 好ましくは上 記した液相 2相分離領域を有する成分系で、 あるいはさらに上記した組成 (平均 組成) の合金で構成され、 互いに異なる組成の 2つの領域からなる分離組織を有 する部材である。
上記したような、 安定な液相 2相分離を有する合金としては、 Cu— Fe_X基合 金、 Cu_Cr— X基合金、 Cu— Co— X基合金、 Ag— Ti一 X基合金、 A1 - Bi— X基合 金などが例示される。 また、 はんだポール用として好適な、 Cu— Bi— X基合金、 A1— Sn_ X基合金、 あるいは Al -In- X基合金などがある。
上記した合金以外にも、 液相 2相分離が出現する系としては、 液相に安定な 2
相分離がある系に加え、 固相と液相の 2相共存温度および組成が大きい系が含ま れ、 次のような合金 (基系) 、
Ag— B基系、 Ag— Bi基系、 Ag— Cr基系、 Ag— Co基系、 Ag— Fe基系、 Ag— Mo基系 、 Ag— Ni基系、 Ag— S基系、 Ag— V基系、 A1— Bi基系、 Al—Cd基系、 A1— In基系 、 Al_Pb基系、 A1— Sn基系、 Au— B基系、 Ba_Ni基系、 Ba— Y基系、 Be— Ga基系 、 Be— Ge基系、 Be— Zn基系、 Bi— Cr基系、 Bi— Cu基系、 Bi— Ga基系、 Bi— Ge基系 、 Bi— Si基系、 Bi_Zn基系、 Cd— Ge基系、 Cd_Si基系、 Co— In基系、 Cr— Dy基系 、 Cr_Gd基系、 Cr— La基系、 Cr一 Nd基系、 Cr一 Sn基系、 Cr— Sm基系、 Cr一 Y基系 、 Cu_V基系、 Fe—Ιη基系、 Fe_Sn基系、 In— V基系、 Nd— V基系、 Ni— Pb基系 、 Sn_P基系、 Pb— Si基系、 Pb— Zn基系、 Sb— S基系、 Si_Zn基系、 Π— Y基系 が例示できる。
なかでも、 Cu— Fe— X基合金は、 第 3元素 Xとして、 所定量の、 C、 Mo、 Nb、 V、 Cr、 W、 Si、 B、 S、 Ta、 Bi、 Ag、 Snのうちから選ばれた 1種または 2種以 上を含有することにより、 広範囲な、 安定した液相 2相分離を示すようになる。
Cu— Fe— X基合金における第 3元素 Xとしては、 質量%で、 C : 0.02〜2.0 % 、 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、 V: 4〜20%、 Cr: 4〜30%、 W: 2〜20%、 Si: 4〜20%、 B : 0.2 〜10%、 S : 0.2 〜10%、 Ta: 2〜20%、 Bi: 1〜20% 、 Ag : 2〜20%、 Sn: 2〜20%のうちから選ばれた 1種または 2種以上とするこ とが好ましい。 以下、 質量%は単に%で記す。
なお、 Cu— Fe— X基合金においては、 第 3元素 Xがそれぞれ上記した範囲を外 れると、 安定した液相 2相分離状態とならず、 凝固後、 組成の異なる領域に明瞭 に分離しなくなり、 分離組織の形成が困難となる場合や、 液相 2相分離を示す領 域の最高温度が高い温度となり、 通常の方法では溶解が困難となり、 分離組織の 形成が簡単には得られない。
また、 Cu— Fe— X基合金においては、 上記した第 3元素に加えて、 第 4元素と して、 2〜8質量%の Niを含有することが好ましい。 第 4元素として、 上記した 範囲の Niを含有しても、 分離組織の形成には何の影響も与えることはなく、 むし ろ耐食性、 耐摩耗性、 導電性を顕著に改善する効果を示し、 さらに融点を低下さ せる等の効果がある。 優れた耐食性、 耐摩耗性、 導電性等が要求される場合には 、 第 4元素として Niを添加することは有効である。
なお、 上記した元素以外にも、 例えば耐酸化性向上のための A1のように分離組 織の形成には寄与しないが、 その他の特性を向上させるために添加することが有 効な元素があり、 本発明ではこのような第 4元素の含有を含むものとする。
また、 Cu— Cr— X基合金においては、 第 3元素 Xとして、 Fe: 4〜20%、 C : 0.02〜2· 0 %、 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、 S : 0.2 〜10%、 B : 0.2 〜10% 、 V: 4〜20%、 W: 2〜20%、 Si : 4〜20%、 Sn: 2〜20%、 Ta: 2〜20%、 Ag: 2〜20%、 Co : 2〜20%のうちから選ばれた 1種または 2種以上を含有する ことにより、 広範囲な、 安定した液相 2相分離を示すようになる。 第 3元素 が それぞれ上記した範囲を外れると、 同様に、 安定した液相 2相分離状態とならず 、 凝固後、 組成の異なる領域に明瞭に分離しなくなり、 分離組織の形成が困難と なる。 なお、 第 3元素 Xの含有量に応じ、 Crは 15〜85質量%の範囲とし、 残部 Cu および不可避的不純物とすることが好ましい。
また、 Cu— Co— X基合金においては、 第 3元素 Xとして、 質量%で、 Fe: 4〜
20%、 C : 0.02〜2.0 %、 Mo: 2〜20%、 Nb: 2〜20%、 S : 0.2 〜10%、 B :
0.2 〜10%、 V: 4〜20%、 W: 2〜20%、 Si: 4〜20%、 Sn: 2〜20%、 Ta:
2〜20%、 Ag : 2〜20%、 Cr: 2〜20%のうちから選ばれた 1種または 2種以上 を含有することにより、 広範囲な、 安定した液相 2相分離を示すようになる。 第
3元素 Xがそれぞれ上記した範囲を外れると、 同様に、 安定した液相 2相分離状 態とならず、 凝固後、 組成の異なる領域に明瞭に分離しなくなり、 分離組織の形
成が困難となる。 なお、 第 3元素の Xの含有量に応じ、 Coは 15〜85質量%の範囲 とし、 残部 Cuおよび不可避的不純物となることが好ましい。
また、 本発明では、 上記したような合金に代えて、 安定した液相 2相分離を有 する、 セラミックス系とすることもできる。 安定した液相 2相分離を有するセラ ミックス系としては、 Sn02— Ti02系、 A1203 -Cr 203 系、 A1203 — Cr 203 —Fe20 3 系、 CoFe 203 -C03O4 系、 Si02_Li20系、 Si02— Na20系、 BaO 一 Si02系などが 考えられる。
また、 とくに、 分離組織を有する部材 (粉体) として、 鉛フリーのはんだ組成 からなる表層と、 電気伝導性と熱伝導性に優れた組成のコア層とからなる分離組 織を有する、 卵型コア構造 (以下、 卵型構造ともいう) の粉体は、 はんだポール とすることが好ましい。 なお、 本発明でいう、 「はんだ組成」 とは、 450 °C以下 の液相線温度を有する合金組成をいうものとする。
本発明のはんだポールの断面組織の一例を図 12に示す。 図 12に示すはんだポー ルは、 35質量%Cu— 50%質量 Bi_15質量%Sn組成の、 卵型コア構造 (コア構造あ るいは卵型構造ともいう) を有するはんだポールである。 このはんだポールは、 Sn,Bi リッチのはんだ組成 (具体的には、 9質量%Cu— 6質量%Sn_残部 Bi) の 表層と、 Cu,Sn リッチ組成 (具体的には、 6質量%Bi— 13質量%Sn—残部 Cu) の コア層とからなる分離組織を有する粉体である。 この粉体は、 直径約 80 mであ り、 直径 700 zm以下の小径の粉体となっている。
このような分離組織を有する粉体 (はんだポール) とするためには、 上記した と同様にまず、 使用する合金を、 上記した、 安定な液相 2相分離を有し、 かつ液 相の 2相分離を示す領域の、 最高温度 T c (V) と最低温度 Td (°C) の差、 Δ
Tが 10°C以上を有し、 さらにその平均組成を、 分離した 2種類の液相の体積率の 差が 5 %以上となる合金で、 表層が鉛フリーのはんだ組成となり、 コア層が電気 伝導性と熱伝導性に優れた組成となる合金とする必要がある。 なお、 電気伝導性
と熱伝導性に優れた組成とは、 Cuあるいは A1を主成分とする組成とすることが好 ましい。
はんだポールに好適な、 このような合金としては、 本発明では、 Cu— Bi— X基 合金、 AI— Sn_X基合金、 あるいは A1— In— X基合金のいずれかとすることが好 ましい。
そして、 Cu— Bi— X基合金では、 第 3元素 Xとして、 質量%で、 Sn : 0.1 〜30 In: 0.1 〜30%、 Ag: 0.1 〜30%、 Sb: 0.1 〜30%、 Zn: 0.1 〜30%、 A1: 0.1 〜30%のうちから選ばれた 1種または 2種以上を含有することが好ましい。 これにより合金は、 広範囲な、 安定した液相 2相分離を示すようになる。 上記し た第 3元素 Xの含有量に応じ、 Biは質量%で 5〜70%、 Cuは質量%で 20〜80%の 範囲、 残部は不可避的不純物とすることが好ましい。
上記した組成とすることにより、 表層が、 50〜95質量%Bi— 1〜30質量%Xの はんだ組成となる。 一方、 コア層は 80〜99質量%Cu— 0.1〜10質量%Biの電気伝 導性と熱伝導性に優れた組成となる。 なお、 第 3元素 Xがそれぞれ上記した範囲 を外れると、 安定した液相 2相分離状態とならず、 凝固後、 分離組織の形成が困 難となる場合や、 表層がはんだ組成となりにくい場合がある。
また、 A1— Sn—Χ基合金では、 第 3元素 Xとして、 質量%で、 Bi : 0.1 〜30%
、 In: 0.1 〜30%、 Ag: 0.1 〜30%、 Sb: 0.1 〜30%、 Zn: 0.1 〜30%、 Cu: 0.
1 〜30%、 Ni: 0.1 〜15%のうちから選ばれた 1種または 2種以上を含有するこ とが好ましい。 これにより、 広範囲な、 安定した液相 2相分離を示すようになる
。 上記した第 3元素 Xの含有量に応じ、 Snは質量%で 5〜90%、 A1は質量%で 5
〜50%の範囲、 残部は不可避的不純物とすることが好ましい。 上記した組成とす ることにより、 表層が、 20〜95質量%Sn— 1〜50質量%Xのはんだ組成となる。 一方、 コア層は 80〜99質量%A1— 1〜20質量%Snの電気伝導性と熱伝導性に優れ た組成となる。 なお、 第 3元素 Xがそれぞれ上記した範囲を外れると、 安定した
液相 2相分離状態とならず、 凝固後、 分離組織の形成が困難となる場合や、 表層 がはんだ組成となりにくい場合がある。
また、 A1— In— X基合金では、 第 3元素 Xとして、 質量%で、 Sn : 0. 1 〜30 % 、 Bi : 0. 1 〜30 %、 Cu: 0. 1 〜30 %、 Ag: 0. 1 〜30 %、 Sb: 0. 1 〜30 %、 Zn: 0. 1 〜30 %、 Ni : 0. 1 〜15 %のうちから選ばれた 1種または 2種以上を含有するこ とが好ましい。 これにより、 広範囲な、 安定した液相 2相分離を示すようになる 。 上記した第 3元素 Xの含有量に応じ、 Inは質量%で 10〜90 %、 A1は質量%で 5 〜50 %の範囲、 残部は不可避的不純物とすることが好ましい。 上記した組成とす ることにより、 表層が、 20〜95質量%In— 1〜50質量%Xのはんだ組成となる。 一方、 コア層は 80〜99質量%A1— 1〜20質量%Inの電気伝導性と熱伝導性に優れ た組成となる。 なお、 第 3元素 Xがそれぞれ上記した範囲を外れると、 安定した 液相 2相分離状態とならず、 凝固後、 分離組織の形成が困難となる場合や、 表層 がはんだ組成となりにくい場合がある。
なお、 上記した合金系はいずれも、 上記したような安定した液相 2相分離の条 件を十分に満足している。
つぎに、 このような分離組織を有する部材の製造方法について、 説明する。 まず、 安定した液相 2相分離を有する、 好ましくは上記した、 Δ Τが 10°C以上 の液相 2相分離領域を有する成分系で、 あるいはさらに上記した、 分離した 2種 の液相の体積率の差が 5 %以上となる組成 (平均組成) の合金溶湯を、 溶製する 。 溶製方法は、 とくに限定する必要はなく、 通常公知の溶製方法がいずれも適用 できる。
合金溶湯は、 ついで所定の形状、 所定の材質の铸型に铸込まれる。 なお、 本発 明では、 铸込み温度が分離組織の形成に大きく影響する。 錡込温度は、 T c + 10
°C以上の温度とするのが好ましい。 铸込温度が T c + 10°C未満と低すぎると、 組 成の異なる領域に 2分された明確な分離組織が得られない。
Cu— Fe— X系合金を例にとり、 このような分離組織の形成に及ぼす铸込温度の 影響を模式的に図 4、 図 5に示す。 図 4、 図 5は、 Cu— Fe _ X三元系合金溶湯を 溶製し、 铸込温度を変化して金属製铸型 (金型) に铸込み円柱状部材 (円柱体) とした。 得られた円柱状部材 (円柱体) の横断面について、 マクロ組織を観察し 、 その結果を模式的に示したものである。 図 4は Feリッチ相の液相量が多い場合 、 図 5は、 Cuリッチ相液相量が多い場合である。
図 4、 図 5から、 铸込温度が高い場合 ( (a ) と (b ) ) には、 Feリッチ相が 円柱状部材 (円柱体) の表面側に形成され、 内部は Cuリッチ相となるが、 铸込温 度が低下するにしたがって ( (c ) と (d ) ) 、 Feリッチ相と Cuリッチ相の分離 が明確でなくなり、 Cuリッチ相が内部で分散した状態で形成されるようになる。 このようなことから、 本発明では、 铸込温度を、 液相 2相分離を示す領域の最 高温度 T c (°C) を基準として、 T c + 10°C以上の温度とする。 Tc + 10°C未満 では、 分離組織の形成が不十分となる。
また、 本発明では、 合金溶湯を注入する铸型として、 凝固時の冷却速度が比較 的遅い、 例えば、 黒鉛製坩堝を用いると、 上記した組成のいずれも、 Cu— Fe— X 基合金溶湯を棒状体铸型に铸込む場合、 図 2 ( b ) に示すような Cuリッチ相と Fe リッチ相とに上下二分された分離組織が得られる。 一方、 铸型として、 凝固時の 冷却速度が速い、 例えば、 金属製铸型 (金型) を用いると、 図 2 ( a ) に示すよ うに、 部材の表面側が Feリッチ相、 内部が Cuリッチ相 (あるいはその逆) となる 分離組織を形成する。 使用する铸型の材質により、 すなわち凝固時の冷却速度に よっても分離組織の形態が変化することもあり、 铸型材質の選定を適正にする必 要がある。
また、 本発明では、 上記した範囲の組成に溶製した合金溶湯を、 アトマイズ法 を利用して、 粉体 (粉末) とすることにより、 棒状体、 線材等と同様に、 表層と
中心部で組成の異なる組織に 2分された、 分離組織を有する微細な粉末粒子を容 易に製造することができる。 アトマイズ法は、 合金溶湯を噴霧 ·急冷して微細粉 末とする粉体の製造方法であり、 水アトマイズ法、 ガスアトマイズ法、 真空アト マイズ法等があり、 粉体の量産に利用されている。 これらの方法は、 いずれも、 本発明の部材 (粉体) の製造においても好適に利用できるが、 本発明では上記し た方法に限定されるものではないことはいうまでもない。
水アトマイズ法は、 合金溶湯を高圧の水ジェットで噴霧、 急冷して粉体を得る 方法であり、 ガスアトマイズ法は水に代えて、 高圧の N2ガスや Arガスで噴霧する 方法である。
合金溶湯を噴霧 ·急冷するアトマイズ法により、 製造される微細粉末は、 通常 、 1 00 m〜500 以下程度の平均粒径を有するが、 ガスの種類、 ガスの噴霧 圧、 あるいはノズル穴の径を調整することにより、 容易に平均粒径 300 Π1以下 の微細粉末とすることができる。 例えば、 ガスの種類として、 N 2ガス、 Heガス等 の原子 (分子) 量の小さいガスを使用し、 ガス圧を高め、 ノズル径を小さくする ことが微細粉末の生成には好ましい。 なお、 B G Aパッケージ用はんだポールに おけるように、 さらに粒径ばらつきを少なくする必要がある場合には、 篩等の分 級により一定範囲の粒径のみを有する粉体としてもよい。
図 6には、 分離組織を有する粉末粒子の断面組織の一例を示す。 図 6に示す粉 末粒子は、 質量%で、 60 % Cu— 31. 8 %Fe— 7. 2 % Cr - l % Cを含有する、 Cu _Fe 一 X基合金溶湯をガスアトマイズ法で噴霧、 急冷して得られた、 平均粒径約 250 m の粉末粒子である。 この粉末粒子は、 表面側が Feリッチ相、 中心部が Cuリツ チ相と、 組成の異なる領域に明瞭に 2分された分離組織を示している。
また、 図 7には、 質量%で、 60 % Cu— 32 %Fe— 8 % S iを含有する、 Cu— Fe— X 基合金溶湯をガスアトマイズ法で噴霧、 急冷して得られた粉末粒子の断面組織写 真を示す。 この粉末粒子は、 表面側が Cuリッチ相、 中心部が Feリッチ相と、 組成
の異なる領域に明瞭に 2分された分離組織を示している。
本発明によれば、 このような分離組織を有する粉体 (粉末) が容易に製造でき るが、 例えば、 表層側を Cuリッチ相とし、 中心側を Feリッチ相とすることにより 、 焼結促進剤としての用途が考えられる。 また、 表層側を Cuリッチ相等の高導電 率を有する組成とし、 中心側を例えば Feリツチ相とする粉体を焼結することによ り、 高強度を有する導電材料とすることも可能となる。
このような分離組織を有する粉体 (粉末) は、 合金系の選択によりその応用範 囲は極めて広く、 上記したように B G Aパッケージ用ポ一ルとして、 粉末のまま 使用してもよいが、 所定の形状の金型に装入され、 加圧成形されたのち、 必要に 応じ焼結されて、 所望の形状の部品 (製品) とすることもできる。 焼結後、 必要 に応じ種々の加工を施してもよい。
ぐ実施例 >
(実施例 1 )
表 1に示す組成の Cu— Fe— X 3基合金をアーク溶解炉で溶製し、 表 1に示す条 件で铸型に注入 ·凝固させ、 棒状部材 (20ΙΜΙ Φ ) とした。 得られた部材の横断面 について、 铸造組織を観察し、 分離組織の形成状況を調査した。
得られた結果を表 1、 表 2に示す。 铸造組織は、 図 8に模式的に類別された組 織形態で評価した。 組織形態 A— 1〜Α— 2は Feリツチ相と Cuリツチ相が明瞭に 分離生成した分離組織であり、 組織形態 B— 1〜 B— 2は Feリッチ相と Cuリッチ 相の分離が不十分な組織である。
なお、 使用した合金の液相 2相分離領域の最高温度 T c 、 最高温度と最低温度 の差 Δ Τを、 実験状態図や計算状態図から求め、 表 1に示す。 また、 使用した合 金の、 液相 2相分離状態での組成の異なる 2つの液相の体積率差 Δνを状態図か ら計算で求め、 同様に表 ι、 表 2に示す。
部 溶湯組成 (質量%) 液相 2相分離 使用铸型 铸造まま 備 考 材 温度 祖織
No. Cu Fe X Tc ΔΤ 種類 **
°c °C * % し
1-1 50 50 ― ―― ― 1450 金型 B-1 比較例
1-2 48 48 Ni: ff ― ― ― 1450 B-1 比較例
1-3 48 48 Mn:4 一 一 ― 1450 B-1 比較例
1-4 48 48 Ni:4 ― ― ― 1450 B-1 比較例
1-5 48 48 Co:4 舰 ― 一 ― 1450 B-1 比較例
1-6 48 48 AI:4 一 ― 一 1450 B-1 比較例
1-7 49.5 49.5 Cr:l ― ― ― 1450 B-1 比較例
1-8 49 49 Cr:2 一 ― ― 1450 B-1 比較例
1-9 48 48 Cr:4 有 1430 60 6 1460 Α - 2 *** 本発明例 o 1-10 48 48 Cr:6 有 1430 60 10. 1460 A-2 *** 本発明例
1-11 60 34 Cr:6 有 1430 60 20 1460 A - 1 *** 本発明例
1-12 46.4 46.4 Cr:7.2 有 1430 80 25 1460 A-2 *** 本発明例
1-13 65 27.8 Cr:7.2 有 1450 100 20 1480 A-1 *** 本発明例
1-14 49.5 49.5 Mo:l 1480 B-1 比較例
1-15 48 48 o:4 有 1730 300 6 1780 A— 2 *** 本発明例
1-16 65 27.5 Mo :7.8 有 1950 500 25 ~2000 **** A-1 *** 本発明例
1-17 49 49 Si:2 1480 B-1 比較例
1-19 48 48 Si:4 有 1600 280 6 1620 A-2 *** 本発明例
1-20 44 44 Si:12 有 1580 300 15 1610 A - 2 *** 本発明例
1-21 60 34 Si:6 有 1550 280 8 1590 A - 1 *** 本発明例
*) 2種の液相の体積差- (V Fe-X-Vcu) または (V( ■VFO-X)
**) 図 8参照
***)A- 1 A- 2:分離組織
****) アーク溶解 : W電極でァークを発生させて溶解
部 溶 成 (質量%) 液相 2相分離 艇 使用麵 まま 備 考 mm
No. Cu Fe X Tc ΔΤ 種類 n
。c 。C * % °C
1-22 49.5 49.5 V:2 1550 金型 B-l 比較例
1-23 48 48 V:4 有 1600 100 10 1620 A-2 *** 本発明例
1-24 70 26 V:4 有 1750 A— 1 *** 本発明例
C
1-25 49.5 49.5 Nb:l 1620 B-l
1-26 49 49 Nb:2― 有 1500 100 6 1550 A-2 *** 本発明例
1-27 48 48 b:4 有 1550 200 10 1600 A-2 *** 本発明例
1-28 49.9 49.9 C:0.2 有 1750 400 5 1800 A-l *** 本発明例
1-29 69.9 28 Mo:2,C:0.1 有 2000 600 30 -2100 A - 1 *** 本発明例
1-30 60 39.6 C:0.4 有 1820 500 20 〜1950 キネ *ネ A-l *** 本発明例
*) 2種の液相の体 «¾=(VFe-x— VCu) または (VCu— VFe- X)
**) 図 8参照
***)A-1、 A-2:分 ϋΐϋ
アーク溶解 : W電極でアークを発生させて溶解
本発明例はいずれも、 表層側と中心側で組成の異なる領域、 Cuリッチ相と Feリ ツチ相に 2分された分離組織を有している。 組成により、 Cuリッチ相が表層側と なる場合と、 中心側となる場合がある。 (2相分離時に液相量の多い方が表層側 に配置される。 )
一方、 本発明の範囲を外れる比較例では、 Feリッチ相と Cuリッチ相の分離が不 十分であり、 分離組織の形成は認められなかった。
本発明例である、 部材 No. 1-24 の光学顕微鏡組織写真を図 9、 比較例である、 部材 No. 1 -7の光学顕微鏡組織写真を図 10に示す。
得られた棒状部材 (本発明例) のうち、 表層側 (外側) が Cuリッチ相 (Cu合金 ) となる部材では、 Cuリッチ相 (Cu合金) が高導電性、 高耐食性、 高放熱性等の 特性を有するため、 高強度導電材、 高耐食性材等として好適である。 一方、 Feリ ツチ相 (Fe合金) は、 高強度、 高耐摩耗性等の特性を有するため、 表層側 (外側 ) が Feリッチ相 (Fe合金) となる部材では、 耐摩耗性用材として好適である。 また、 得られた棒状部材は、 錶造ままで製品とすることもでき、 あるいは铸造 ままの部材をさらに、 熱間、 温間、 冷間のいずれかで圧延、 鍛造等の加工を施し て製品とすることもできる。
(実施例 2 )
表 3に示す組成の Cu— Fe— X ( X ! : Cr、 X 2 : Ni、 C ) 基合金をアーク溶解 炉で溶製し、 表 3に示す条件で錶型に注入 ·凝固させ、 棒状部材 (20ΙΜ Φ ) とし た。 なお、 得られた部材の横断面について、 铸造組織を観察するとともに、 分離 した各領域について電子線マイクロアナライザー (E P M A) を用いて各領域中 の成分分析を実施した。 铸造組織は、 実施例 1と同様に図 8に模式的に類別され た組織形態で評価した。
得られた結果を表 3および表 4に示す。
:
c
*) 2種の液相の #¾¾=(VFe— x—VCu) または (VCu- -Vpe-x)
**) 図 7参照
n )k- A- 2:分離
****) アーク溶解: W電極でアークを発生させて溶解
(質量%) 部 Cuリッチ相 Feリッチ相 材
No. Cu Fe Cr Ni Cu Fe Cr Ni
2-1 96.9 2.7 0.4 5.8 77.3 17.0
2-2 97.7 2.1 0.3 2.2 78.2 19.6
2-3 97.1 2.5 0.4 7.3 74.5 19.6
2-4 95.0 2.9 0.7 1.4 8.8 69.3 16.8 5.2
2-5 95.9 1.6 0.2 2.3 10.4 64.5 17.6 7.6
2-6. 93.4 3.5 0.9 2.2 8.7 65.4 18.5 7.4
本発明例はいずれも、 表層側と中心側で組成の異なる領域、 Cuリッチ相と Feリ ツチ相に 2分された分離組織を有している。 この合金系では、 Feリッチ相は、 Cr 量が高くなりステンレス鋼 (高 Cr) 組成となっている。 そのため、 Feリッチ相が 表層側 (外側) となる部材は、 表層が耐食性に優れ、 中心部が導電性に優れた材 料となっている。 とくに、 Niを含有する部材 No. 2-4, No. 2- 5, No. 2-6では、 耐食性 、 導電性の向上は顕著となる。
(実施例 3 )
質量%で、 Cu: 65 %— Fe: 31. 4 %— S i: 3 % - C : 0. 6 %組成の Cu— Fe— X基 合金をアーク溶解炉で溶製し、 铸込温度: 1620°Cとして、 ガスアトマイズ法で、 噴霧急冷し、 平均粒径 300 m 以下の粉末とした。 この組成の合金は、 T c : 15 90°C、 Δ Τ: 270 °C、 Δ V: 10 %であった。 得られた部材 (粉体) の断面 (粒子 断面) について、 組織を観察し、 図 1 1に示す。
得られた粉末は、 分離組織を有しており、 表層側が Cuリッチ相、 中心側が Feリ ツチ相に明確に 2分されている。
(実施例 4 )
表 5に示す組成の Cu— B i— X基合金をアーク溶解炉で溶製し、 錶込温度を表 5 に示す温度として、 ガスァ卜マイズ法で、 噴霧条件を表 5に示す条件に調整して 粉体 (粉末) とした。 得られた粉体の断面 (粒子断面) について、 組織を観察し 、 分離組織の形成状況 (粉体の平均粒径、 コアの平均粒径) を観察するとともに 、 分離した領域の組成を電子線マイクロアナライザー (E P M A) を用いて、 各 層の成分分析を行った。
得られた結果を表 5に示す。
なお、 各合金の液相 2層分離領域の最高温度 T c 、 最高温度と最低温度の差△
T、 を実験状態図や計算状態図から求め、 また、 液層 2相分離状態での組成の異 なる 2つの液相の体積率差 A Vを状態図から計算でもとめ、 表 5に併記して示す
また、 本発明例 (粉体 No. 4-5) のミクロ組織は図 12に示す通りである。 比較例 (粉体 No. 4- 2) のミクロ組織を図 13に示す。
編城 mm%) 液相 2相分離 粉 体 備
No.
Cu Bi X 有 Λ Δ V ガス BSSFF lit, ガス 平均 分離 平均 ¾■平均鰣隠%) コア層平均鰣 mm%)
径 粒径 繊 コア径
C C * % MPa 讓 μ,χη. Cu Bi Sn In X Cu Sn Bi In X
4-1 40 60 te 760 4 Ar 195
4-2 15 80 Sn: 5 850 4 0.5 Ar 190 架 比
DO
4-3 96 3 In: 1 910 2 0.5 Ar 645 比
4-4 20 40 Sn: 40 840 4 0.3 Ar 240
4-5 35 . 50 Sn: 15 有 780 60 10 900 6 0.5 N2 80 有 53 9 85 6 81 6 13 本発
4-6 20 60 Sn: 20 有 750 40 30 860 4 0.5 N2 235 有 35 8 90 2 95 1 4 本発
4-7 30 45 In: 25 有 710 30 50 840 4 0.3 Ar 240 有 48 7 58 35 93 1 7 本発
4-8 65 30 Al: 5 有 810 110 12 950 4 0.5 Ar 372 有 70 2 90 Al: 8 91 5 Al: 本発
4-9 30 55 Sb: 15 有 640 140 30 860 4 0.5 Ar 300 有 39 6 73 Sb:21 89 2 Sb: 9 本発
4-10 25 55 Zn: 20 有 710 26 35 820 2 0.5 Ar 462 有 43 3 72 Zn:25 85 3 Zn:12 本発明
4-11 70 20 Zn: 10 有 730 15 60 810 4 0.3 Ar 196 有 55 10 80 Zn:10 88 2 Zn:10 本発明
*) 2種の液相の #^=(VBi— X— VCu) または (VCu— VBi— X)
本発明例はいずれも、 表層が鉛フリーのはんだ組成で、 コア層が Cu,Sn を主成 分とする電気伝導性と熱伝導性に優れた組成である、 分離組織を有する 700 _i m 以下の小径の粉体であり、 はんだポールとして好適な粉体となっている。 一方、 本発明の範囲を外れる比較例は、 いずれも層分離が不十分で分離組織の形成が認 められなかった。
(実施例 5 )
表 6に示す組成の A卜 Sn-X基合金、 A卜 In-X基合金をアーク溶解炉で溶製し、 铸込温度を表 6に示す温度として、 ガスアトマイズ法で、 噴霧条件を表 6に示す 条件に調整して粉体 (粉末) とした。 実施例 1と同様に粉体断面 (粒子断面) に ついて、 組織を観察し、 分離組織の形成状況を観察するとともに、 各層の組成を 電子線マイクロアナライザー (E P MA) を用いて、 各層の成分分析を行った。 また、 得られた粉体の平均粒径、 コアの平均粒径を実施例 4と同様に測定した 得られた結果を表 6に示す。
なお、 各合金の Tc 、 Δ Τ、 を実施例 4と同様に実験状態図や計算状態図から 求め、 また、 Δ νを状態図から計算でもとめ、 表 6に併記して示す。 また、 本発 明例 (粉体 Νο5-5 ) のミクロ組織を図 14に示す。
附 麵滅 麵%) 液相 跪 粉 体 備 No. 驢
nl il V ΛΤ Λ ゾカレ T 麵平 )
a%)
径 酶 纖 径
°C α 有 Tri Υ 41
il u
5-1 Π 80 m 850 4 0.5 Ar 210 "
5-2 in u T JJlil . 1 900 *t ou
CD 5-3 OC;
ou in 0 Q 867 Ar 91 魅
5-4 20 o 80 Ti: 5 912 2 0.8 Ar 660
5-5 29 61 Cu: 11 有 605 30 70 700 3 0.5 Ar 390 有 35 2 88 Cu:17 97 2 Cu: 1 本 ¾s
5-6 30 37 Bi:33 有 580 80 20 720 4 0.4 Ar 163 有 40 3 47 Bi:50 96 3 Bi: 2 本 ¾0
5-7 19 75 Ni: 6 有 631 45 63 765 3 0.5 Ar 221 有 46 5 89 Ni: 6 92 2 Ni: 6 本 ¾5
5-8 48 13 39 有 610 210 34 910 3 0.5 Ar 248 有 72 7 28 65 95 1 本 ¾ø
5-9 15 80 Cu: 6 有 603 88 71 800 4 0.5 Ar 286 有 38 3 90 Cu: 7 92 3 Cu: 5 本 ¾0
5-10 21 64 Bi:15 有 595 148 58 875 2 0.6 Ar 408 有 65 5 75 Bi:20 95 4 Bi: 1 本 ¾0
5-11 35 18 35 Zn:12 有 645 185 40 920 2 0.7 ― N2 391 有 78 4 26 55 Zn:15 95 1 2 Zn: 2 本 ¾0
*) 2種 夜相 ®^^=(VSN— X— VA,) または (VAI-VSH-X) ( V,„-x-VAI) または (VA,-V,n-x)
実施例 4と同様に、 本発明例はいずれも、 表層が鉛フリーのはんだ組成で、 コ ァ層が Al, Sn を主成分とする電気伝導性と熱伝導性に優れた組成である、 分離組 織を有する 500 m以下の小径の粉体であり、 しかも粒径ばらつきも少なく寸法 精度が高く、 はんだポールとして好適な粉体となっている。 一方、 本発明の範囲 を外れる比較例は、 いずれも層分離が不十分で分離組織の形成が認められなかつ た。
以上、 本発明は、 上記した合金に限定されるものではないことはいうまでもな い。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 組成が異なる領域を容易に分離、 配置でき、 所望の機能を適 正に複合配置した機能性部材を、 容易にしかも安価に製造でき、 産業上格段の効 果を奏する。 また、 本発明は、 表層側に耐食性、 耐酸化性、 耐摩耗性に富む、 例 えば、 Cu、 Cr等の高価な合金元素量の多い合金 (領域) を形成し、 内側には Fe等 の低廉な合金 (領域) とすれば、 省資源、 低コストの複合材が容易に得られると いう効果もある。 また、 粉体では、 表層側に、 Pd、 P t等の触媒特性を有する高価 な組成とし、 中心側を廉価な合金組成とすることにより安価な触媒を提供できる という効果もある。 また、 表層側を抗菌性を有する組成とし、 中心側を廉価な材 料とすることができ、 安価な抗菌性粉も提供することができるという効果もある 。 また、 表層側を Cu等の高導電率を有する組成とすることにより、 安価な導電性 粉が、 また、 表層側を Cu等に富む組成とし、 中心部を Cr、 W、 Mo等の熱膨張係数 の小さい組成とすることにより、 低膨張の粉体が、 提供できるという効果もある あり、 その応用範囲は極めて広い。
また、 本発明によれば、 表層を鉛フリーのはんだ組成とし、 内側 (コア層) を 電気伝導性と熱伝導性に優れた組成とする、 分離組織を有する粉体を、 寸法精度
高く、 容易にしかも安価に製造でき、 BGAパッケージ用はんだポールを安価に 提供できるという効果もある。