明 細 書 有害物質の処理方法 技術分野
本発明は、 人体に対して有害な有機塩素系有害物に汚染された物質の 処理方法に関する。 詳しくは、 本発明は、 ダイォキシン類に汚染された 焼却灰、 集塵飛灰、 集塵ダスト、 土壌等、 あるいはポリ塩化ビフエニル ( P C B ) に汚染された土壌や、 廃棄のために保管されているポリ塩化 ビフエ二ルを含有する絶縁油等の処理方法に関する。 背景技術
ダイォキシン類は、 ゴミ焼却施設で、 特に塩素を含有する廃プラスチ ック等の比較的低温での処理の際発生する毒性の極めて強い物質で、 そ れによる汚染の広がりは、 現在、 社会問題となっている。
そのため、 連続高温燃焼の実施による発生の抑制やバグフィル夕一等 の集塵方法の改善が行われている。 しかし、 ダイォキシン類の発生その ものを抑えることはできず、 焼却灰や集塵ダスト中にはダイォキシン類 が含まれている。 従って、 焼却灰や集塵ダス 卜中のダイォキシン類の処 理が必要とされているが、 高温プラズマを用いた処理が試験的に試みら れているにすぎず、 新しい簡便な処理方法の開発が望まれているのが現 状である。
また、 ポリ塩化ビフエ二ルは水に不溶であるが有機溶媒とは相互に溶 解し、 難燃性ないしは不燃性で、 化学的に非常に安定である。 さらに、 電気的絶縁性に優れ、 蒸気圧も低いなど優れた性質を持っている。 その ため、 ポリ塩化ビフエ二ルはトランスやコンデンサーに用いられる絶縁 油をはじめとして多方面で利用されていた。
しかし、 ポリ塩化ビフエニルは野生生物や人体に対する毒性が極めて 強く、 1 9 6 0年代の中頃から、 それによる汚染の広がりが問題となり 、 1 9 7 1年に生産、 販売が禁止され、 回収および保管が義務づけられ た。 従って、 ポリ塩化ビフエ二ルは、 廃棄することはもちろん、 運搬す ることもできず、 保管されているのが現状である。
なお、 ポリ塩化ビフエニルの処理のための方策としては、 熱プラズマ を用いた超高温分解処理や高温高圧容器を用いた超臨界水による分解処 理が試験的に試みられている程度である。
このような実状にあるなかで、 特表平 8— 5 0 4 6 6 5号公報に、 ダ ィォキシン類ゃポリ塩化ビフエ二ル等の有毒物質をメカノケミカル処理 して無毒な最終生成物を得ることができるという記載が見られる。 しか し、 ダイォキシン類の存在状態やそれをメカノケミカル処理する条件 Jこ ついての具体的な記載は見られない。
ダイォキシン類は、 前掲の公報 (特表平 8— 5 0 4 6 6 5号公報) に 記載されている他の有毒物質とは異なり、 純物質として、 または高濃度 で存在することはない。 濃度の高い場合でも、 l p p m未満の n g Z g ( 1 0 " 9 g / g ) の単位で表される程度の極めて低い濃度で、 焼却灰、 集塵飛灰、 集塵ダスト、 土壌等の中に混入している。 このような状態に あるダイォキシン類を処理することは極めて困難である。
また、 同公報では、 純物質としてのポリ塩化ビフエ二ルが処理の対象 とされており、 1 2時間という長時間のメカノケミカル処理で、 ポリ塩 化ビフエニルの分解後の濃度は数 p p mであったという記載が見られる しかし、 現実に存在するポリ塩化ビフエ二ルは、 例えば、 ポリ塩化ビ フエニルを含む絶縁油を廃棄するために保管している容器から漏れて土 壌等にしみ込んだ状態で存在している。 前掲の公報には、 このような有 害物質中のポリ塩化ビフエニルの濃度を、 現在、 環境基準として定めら
れている 1 p p mまで短時間で低減する実用的な条件については何ら記 載されていない。
以上述べたように、 現実に存在するダイォキシン類に汚染された物質 、 あるいは、 ボリ塩化ビフエニルに汚染された土壌やポリ塩化ビフエ二 ルを含有する絶縁油等の処理についての具体的な方法は確立されていな い。
本発明の課題は、 このような、 現実に存在するダイォキシン類に汚染 された焼却灰、 集塵飛灰、 集塵ダスト、 土壌等、 あるいはポリ塩化ビフ ェニルに汚染された土壌ゃポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等の処 理方法を提供することにある。 発明の開示
本発明者らは、 ダイォキシン類に汚染された物質、 ポリ塩化ビフエ二 ルに汚染された土壌等をメカノケミカル処理するに際し、 それらの有害 物質中に含まれる水分が処理に伴い生じる反応に多大な影響を与えるこ とを知見した。
本発明は、 現実に存在する極めて低い濃度のダイォキシン類に汚染さ れた焼却灰、 集塵飛灰、 集塵ダスト、 土壌等、 あるいはポリ塩化ビフエ ニルに汚染された土壌ゃポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等を処理 の対象とし、 かつ、 処理に際して、 前記の有害物質中に存在する水分の 影響を極力排除することを特徴としている。
本発明の要旨は、 下記のとおりである。
下記の工程による有害物質に汚染された物質 (被処理物) の処理方法 ( 1 ) 被処理物を乾燥する
(2) 乾燥後の上記物質に酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有 する物質のうちの少なくとも一方を混合する
(3) 上記の混合物をメカノケミカル処理する
上記の処理方法において、 有害物質がダイォキシン類またはポリ塩化 ビフエ二ルであれば、 処理を効果的に行うことができる。
被処理物、 酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有する物質のう ちの少なく とも一つをあらかじめ粉碎すれば、 メカノケミカル処理を効 率よく行う ことができる。
酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有する物質のうちの少なく とも一方を混合する際に、 酸化アルミニウムおよび二酸化珪素のうちの 少なくとも一方を含有する物質を混合すれば、 それが粉砕助剤として働 き、 メカノケミカル処理の効率を高めることができる。
上記の処理方法において、 工程(3) のメカノケミカル処理の前、 また は処理の後、 または処理の前後に水和物を生成する無機粉末を混合して もよい。 または、 その後さらに水を加えて混合物を固化してもよい。 被処理物が、 ポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等の液状物質の場 合は、 これに、 酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有する物質の うちの少なく とも一方とともに、 酸化アルミニウムおよび二酸化珪素の うちの少なく とも一方を含有する物質を混合した後、 その混合物をメカ ノケミカル処理すればよい。 図面の簡単な説明
第 1図は、 メカノケミカル処理による焼却灰中のダイォキシン類の低 減効果を示す図である。
第 2図は、 メカノケミカル処理による汚染土壌中のダイォキシン類の 低減効果を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明は次の工程による有害物質に汚染された物質 (被処理物) の処
理方法である。
( 1 ) 被処理物を乾燥する
( 2 ) 乾燥後の上記物質に酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有 する物質のうちの少なく とも一方を混合する
(3) 上記の混合物をメカノケミカル処理する
ここで、 「有害物質」 とは、 有機塩素系有害物をいう。 なお、 「有機 塩素系有害物」 とは、 ダイォキシン類 (ポリ塩化ジベンゾパラジオキシ ンの他、 ポリ塩化ジベンゾフラン、 コプラナ P C B等を指す) 、 ポリ塩 化ビフエニル (P C B ) 、 D D T等、 塩素を置換基として有し、 人体に 対して強い毒性を示す有機化合物をいう。
また、 「有害物質に汚染された物質」 とは、 前記の有機塩素系有害物 に汚染された物質であって、 具体的には、 ダイォキシン類に汚染された 焼却灰、 集塵飛灰、 集塵ダス ト、 土壌等、 あるいはポリ塩化ビフエニル に汚染された土壌や、 ポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等の液状の ポリ塩化ビフエ二ル汚染物質をいう。 なお、 この有害物質に汚染された 物質を、 上記のように 「被処理物」 ともいう。
「酸化カルシウムを含有する物質」 とは、 酸化カルシウムを主要成分 として含有する物質をいう。 鉄鋼生産で発生する高炉スラグ (徐冷スラ グ、 水砕スラグのいずれでも可) 、 転炉スラグ、 取鍋残留スラグ、 電気 炉スラグ、 二次精鍊スラグ、 取鍋精鍊スラグ等の鉄鋼スラグが一例とし てあげられる。
また、 「メカノケミカル処理」 とは、 例えばボールミル等の衝撃粉碎 装置で機械的エネルギーを加えつつ処理対象物を混合粉砕する処理であ る。 ボールの落下に伴う衝撃力による粉碎の過程で処理対象物は物理的 に引きちぎられ、 活性の高い分子面ができる。 そのため、 メカノケミカ ル処理を行うことによって、 常温では起こり得ない反応 (メカノケミカ ル反応) を進行させることができる。
本発明の処理方法によって有害物質に汚染された物質 (被処理物) を 処理することができるのは、 以下の事実に基づいている。 すなわち、 化 学的に安定な有機塩素化合物であるダイォキシン類ゃポリ塩化ビフエ二 ルに酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有する物質のうちの少な く とも一方を混合し、 メカノケミカル処理を施すことによって、 ダイォ キシン類やポリ塩化ビフエニルを構成する元素間の結合のうち比較的結 合力が弱い炭素と塩素とが切り離され、 離脱した塩素と酸化カルシウム とが反応して安定な塩化カルシウムが生成する。 なお、 この一連の処理 を、 以下、 「無害化処理」 ともいう。
以下、 本発明の有害物質に汚染された物質 (被処理物) の処理方法を 前記の工程順に説明する。
工程(1 ) 被処理物の乾燥工程
乾燥工程を必須の要件とするのは、 上記の被処理物の無害化処理に対 し、 水分が著しい悪影響を及ぼすからである。 これは、 本発明者らが見 いだした事実で、 例えばダイォキシン類に汚染された焼却灰、 集塵飛灰 、 集塵ダス ト、 土壌等をメカノケミカル処理する際に、 これらの被処理 物に含まれる水分が、 場合によっては処理の際に生じる反応を停止させ たり、 より一層有害な物質 (例えば、 八塩化ジベンゾパラジオキシン、 さらには、 四塩化ジベンゾパラジオキシン) を生成したりする。
現実に存在するダイォキシン類に汚染された焼却灰、 集塵飛灰、 集塵 ダス 卜、 土壌等のうち、 焼却灰、 集塵飛灰、 集塵ダス ト等は、 通常、 発 塵防止のため水が散布される。 また、 土壌においても、 通常数十%の水 分が含まれている。 従って、 これらダイォキシン類に汚染された物質に 直接メカノケミカル処理を施そうとすると、 常に水分が悪影響を及ぼす こととなる。
また、 ポリ塩化ビフエニルが染み込んだ土壌においては、 通常、 数十 %の水分が含まれており、 メカノケミカル処理するに際して常に水分が
悪影響を及ぼす。 また、 ボリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等は、 長 期間にわたる保管の際、 密閉が不十分で、 吸湿している場合があり、 そ のときは水分が処理に対して悪影響を及ぼすことになる。 すなわち、 こ れらに含まれる水分が、 場合によっては処理の際に生じる反応を停止さ せたり、 より一層有害な物質 (六塩化ビフエニル、 さらには、 七塩化ビ フエニル) を生成したりする。
上述した理由によって、 メカノケミカル処理に先立ち、 あらかじめ被 処理物を乾燥して、 水分を除去するのである。
水分の作用 (悪影響) の一つは、 水分が、 混合された酸化カルシウム を水酸化カルシウムに変化させ、 メカノケミカル処理によりダイォキシ ン類ゃポリ塩化ビフエニルから離脱した塩素の吸収を悪化させる作用で ある。 他の一つは、 水分が酸化カルシウムに作用して被処理物 (すなわ ち、 ダイォキシン類やポリ塩化ビフエ二ルに汚染された物質) の造粒現 象を起こさせ、 粉砕時の衝撃エネルギーを緩和して粉砕効果を低下させ る作用である。
これらの作用が出現する条件は、 被処理物と、 酸化カルシウム、 また は酸化カルシウムを含有する物質、 またはそれらの両方との混合割合、 酸化カルシウム含有物質中の酸化カルシウム含有量、 被処理物の粒度、 表面性状等の関係で決定される。 従って、 影響が無視できる水分含有量 の上限を一義的に定めることはできない。
被処理物中の水分含有量の目安は、 被処理物がダイォキシン類に汚染 された物質の場合、 混合された酸化カルシウムの質量 (C a Oに換算し た質量) に対して 3 0質量%以下 (以下、 「%」 は 「質量%」 を意味す る) とするのが望ましい。 より望ましくは 2 0 %以下であり、 1 5 %以 下にすれば、 より一層望ましい。 なお、 酸化カルシウムの混合量は、 後 に述べるように、 被処理物と酸化カルシウムや酸化カルシウムを含有す る物質の合計量に対して、 C a O換算で少なく とも 3 0 %であることが
望ましい。 従って、 混合する酸化カルシウムや酸化カルシウムを含有す る物質の水分も少ない方が望ましい。
また、 被処理物がボリ塩化ビフエニルに汚染された物質、 例えば土壌 等の場合は、 水分含有量の目安は、 混合された酸化カルシウムの質量 ( C a〇に換算した質量) に対して 1 0 %以下とするのが望ましい。 より 望ましくは 5 %以下であり、 1 %以下にすれば、 より一層望ましい。 ダ ィォキシン類に汚染された物質の場合と同様、 混合する酸化カルシウム や酸化カルシウムを含有する物質の水分も少ない方が望ましい。 なお、 被処理物がポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等の液状の物質の場合 については後述する。
乾燥方法は、 特に限定されない。 加熱乾燥、 真空乾燥、 天日乾燥、 あ るいはそれらの乾燥方法を組み合わせた方法等のいずれを用いてもよい 上記の工程(1 ) の乾燥に代えて、 次に述べるように、 被処理物中の有 機塩素系有害物を有機溶媒で抽出し、 抽出後の液から有機溶媒を揮発除 去することにより水分を除去する方法を用いてもよい。 これによつて、 土壌等をはじめとする比較的低濃度の汚染を受けた物質を処理の対象と する場合、 処理効率を高めることができる。
この溶媒抽出による水分除去方法では、 まず、 被処理物中の有機塩素 系有害物を有機溶媒で抽出する。
抽出に用いる有機溶媒は、 有機塩素系有害物を抽出できるものであれ ば特に限定されないが、 抽出後の液からの有機溶媒の除去のし易さ等を 考慮すると、 低沸点で、 一般的に用いられているものが好ましい。 例え ば、 トルエン、 キシレン、 アセトン、 クロ口ベンゼン、 0-ジクロロベン ゼン、 クロ口ホルム等が好ましく、 特に、 ダイォキシン類、 ポリ塩化ビ フエニル、 D D T等を処理の対象とする場合は、 ベンゼン環を有する溶 媒または置換基として塩素を有する溶媒が抽出効率が高く、 好ましい。
抽出に使用する有機溶媒の量は、 被処理物の容量の 3倍程度が望まし い。
抽出操作は、 攪拌機能を持つ容器内で行うのがよい。 ソクスレー抽出 器またはこれに類似した構造を有する抽出装置を用い、 溶媒の揮発一液 化を繰り返して、 有害物の抽出と濃縮を繰り返し行うのが、 抽出効率が 向上するので好ましい。
有機溶媒による抽出工程では、 処理対象の有機塩素系有害物以外の有 機物も有機溶媒中に混入し、 また、 水分も有機溶媒に懸濁した状態で混 入してくる。 従って、 この段階で抽出後の液を一旦濾過するのが望まし い。
その後、 抽出後の液から有機溶媒を揮発除去する。
溶媒が除去された後の残渣には、 他の有機物や水分も含まれており、 半液体状、 あるいはペース ト状となっている。 従って、 これらを除去し ておくのが望ましい。
除去方法は特に限定されないが、 1 1 0 t 程度での加熱が最も簡便で 、 一般的である。 なお、 ダイォキシン類、 ポリ塩化ビフエ二ル、 D D T 等は蒸気圧が低いため蒸発することはない。
その後、 残渣に、 酸化カルシウム、 または酸化カルシウムを含有する 物質、 またはそれらの両方を混合し、 メカノケミカル処理を行う。
この溶媒抽出による水分除去方法で、 有機塩素系有害物を有機溶媒で 抽出した後、 抽出後の液に酸化アルミニウムおよび二酸化珪素のうちの 少なく とも一方を含有する物質を混合し、 その後有機溶媒を揮発除去し てもよい。 これによつて、 前記有害物を酸化アルミニウムや二酸化珪素 を含有する物質に付着させた状態で取り出すことができ、 その取扱いが 容易になる。 また、 これらの酸化アルミニウムや二酸化珪素を含有する 物質が粉砕効果を高めて反応を促進するので、 処理効率も向上する。
また、 有機塩素系有害物を有機溶媒で抽出した後、 酸化カルシウム、
または酸化カルシウムを含有する物質、 またはそれらの両方を混合し、 その後有機溶媒を揮発除去する方法を用いてもよい。 有害物を酸化カル シゥムや酸化カルシウムを含有する物質に付着させた状態で取り出すこ とができるので、 その取扱いが容易になるとともに、 酸化カルシウムや 酸化カルシウムを含有する物質と被処理物との分散混合が促進され、 処 理効率も向上する。
工程(2 ) 酸化カルシウム混合工程
乾燥後の被処理物に酸化カルシウムを混合するのは、 酸化カルシウム を次の工程のメカノケミカル処理により有機塩素系有害物から離脱した 塩素と反応させて、 塩素を安定な塩化カルシウムにするためである。 酸化カルシウムの混合量が多いほど、 また、 酸化カルシウム含有物質 を混合する場合は、 それに含まれる酸化カルシウムの量が多いほど、 被 処理物中のダイォキシン類やポリ塩化ビフエニルの濃度を短時間で低下 させることができる。
酸化カルシウムの混合量は、 被処理物がダイォキシン類に汚染された 物質である場合を例にとると、 被処理物と酸化カルシウムや酸化カルシ ゥムを含有する物質の合計質量に対して、 C a O換算で少なく とも 3 0 %とするのが好ましい。 被処理物とほぼ同質量とするのがより好ましく 、 それによつて効率的な処理が可能となる。 なお、 処理後は、 被処理物 中のダイォキシン類から除かれた塩素は安定な塩化カルシウムとなって いるので、 これをそのまま投棄しても害はない。
被処理物がポリ塩化ビフエニルに汚染された土壌等である場合は、 酸 化カルシウムの混合量が、 酸化カルシウムの反応当量の 2倍以上になる ように酸化カルシウム、 または酸化カルシウムを含有する物質、 または それらの両方を混合するのが好ましい。 それにより、 効率的な処理が可 能となる。 なお、 「酸化カルシウムの反応等量」 とは、 ポリ塩化ビフエ ニルから離脱した塩素と酸化カルシウムとが反応して安定な塩化カルシ
ゥムを生成する際の反応式から求められる酸化カルシウムのモル数であ る。
酸化カルシウムの混合量が上記反応当量に等しい場合でもポリ塩化ビ フエニルからの塩素の除去は可能であるが、 除去率が 7 0〜 8 0 %に止 まる。 酸化カルシウム混合量が上記反応当量の約 2倍であれば 9 0 %の 除去率が得られる。 9 9 %以上の除去率を得るには、 酸化カルシウム混 合量は反応当量の 3 〜 5倍とするのがよい。 なお、 処理後は、 被処理物 中のボリ塩化ビフエニルから除かれた塩素は安定な塩化カルシウムとな つているので、 これをそのまま投棄しても害はない。
前記の酸化カルシウムとしては、 生石灰等を用いればよい。
酸化カルシウムを含有する物質としては前述の鉄鋼スラグを使用する ことができる。 特に酸化アルミニウムや二酸化珪素を含むスラグが好ま しい。 後述するように、 メカノケミカル反応が促進されるからである。 工程(3) メカノケミカル処理工程
この工程は、 被処理物と酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有 する物質のうちの少なく とも一方との混合物を処理対象物とし、 これを ボールミル等の衝撃粉砕装置で機械的エネルギーを加えつつ混合粉砕す る工程である。 これによつてメカノケミカル反応が進行して被処理物中 のダイォキシン類やポリ塩化ビフエエルから塩素が離脱し、 離脱した塩 素と酸化カルシウムとが反応して安定な塩化カルシウムが生成する。 す なわち、 被処理物は無害化処理される。
粉砕処理時間は、 使用する粉砕装置の構造に基づく粉砕衝撃力が大き いほど、 ボールの個数が多いほど、 ボールの単重が大きいほど、 また、 ボールに対する処理対象物の質量比率が小さいほど、 短くなる。 しかし 、 処理時間を短くするためにボールに対する処理対象物の比率を低下さ せると、 全体としての処理効率を低下させることになる。 従って、 実際 には、 個々の粉碎装置と運転条件に応じて、 被処理物毎にあらかじめ処
理時間とダイォキシン類ゃポリ塩化ビフエニルの濃度変化の関係を求め ておき、 被処理物のそれぞれについて必要とされる最終濃度に応じて決 定すればよい。
粉砕処理に使用できる粉砕機としては、 ボールミル、 遊星型ボ一ルミ ル、 ア トライタ一ミル、 ロッ ドミル、 ロールミル、 クラッシャーミル等 があげられる。 この中でも、 重力加速度の数倍以上の衝撃が与えられる タイプの粉砕機、 例えば、 遊星型ボールミルが好ましい。 粉砕容器およ び粉砕用のボールの材質は、 特に限定されることはないが、 ステンレス 鋼、 クロム鋼、 タングステンカーバイ ト、 メノウ等が望ましい。
上記本発明を実施するに際し、 被処理物にあらかじめ粉砕処理 (予備 粉砕処理) を施しておけば、 メカノケミカル反応を促進させることがで きる。 特に、 被処理物が土壌の場合、 また、 焼却灰であっても粒径の大 きいものが含まれる場合は、 予備粉砕処理を施すことによってメカノケ ミカル処理の効率を大幅に向上させることができる。 この場合、 粒径 5 m m以下に予備粉砕しておくのが望ましい。 粒径の大きいものが含まれ ると、 単に処理時間が長くなるだけでなく、 場合によっては反応が停止 することもある。
また、 混合する酸化カルシウムや酸化カルシウムを含有する物質も、 被処理物に混合する前に粒径 5 m m以下に予備粉碎するか、 または篩分 けで 5 m mを超えるものを除いておくのが望ましい。 なお、 この場合は 、 前述した水分の影響を考慮すると、 予備粉砕した直後に被処理物に混 合するのが望ましい。 例えば、 粒径 1 m m以下まで予備粉砕したとして も、 1週間以上保管したものを使用すると、 吸湿現象と表面の活性度の 低下により反応速度は著しく低下するからである。
上記本発明において、 酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有す る物質のうちの少なく とも一方を混合する際に、 酸化アルミニウムおよ び二酸化珪素のうちの少なく とも一方を含有する物質を混合すれば、 メ
カノケミカル反応を促進させることができる。 酸化アルミニウムや二酸 化珪素を含有する物質が粉砕助剤として働くからである。
酸化アルミニウム、 二酸化珪素、 またはそれらの両方を含有する物質 としては、 例えば、 ボーキサイ ト、 アルミナ煉瓦、 珪砂、 珪石煉瓦等が あげられる。 さらに、 酸化ジルコニウム、 酸化チタン、 酸化クロム、 炭 化珪素等も同様の反応促進効果を示すが、 酸化アルミニウムや二酸化珪 素の混合物、 化合物の方が安価で、 かつ無害である。
この酸化アルミニウムや二酸化珪素を含有する物質を混合する処理方 法は、 後述するように、 被処理物がトランスやコンデンサーに用いられ ているポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等の場合、 特に好適に適用 し得る方法である。 被処理物がダイォキシン類ゃポリ塩化ビフエ二ルに 汚染された土壌等の場合は、 土壌等に元々酸化アルミニウムや二酸化珪 素が含まれているのに対し、 ポリ塩化ビフエ二ルを含有する絶縁油等に はそれらが含まれておらず、 それらを混合することによる効果がより大 きいからである。
上記本発明の処理方法において、 土壌等をはじめとする比較的低濃度 の汚染を受けた物質を対象とする場合、 処理効率を高めるために、 次の ような前処理を行うのが効果的である。 すなわち、 ダイォキシン類に汚 染された物質を水で洗浄し、 粗粒部と、 水と微粒部からなる洗浄水とに 分離し、 前記洗浄水から水分を除去する処理である。
この前処理を行うことによって、 前記粗粒部、 すなわち土壌の大部分 を占める部分のダイォキシン類は洗い流される。
前記の、 粗粒部と、 微粒部を含む洗浄水とに分離する方法の一例をあ げる。 まず、 水中に土壌を投入して攪拌し、 懸濁液を作る。 攪拌を停止 すると粗粒子部分が沈殿し、 上澄み部分に微粒子が懸濁した状態となる ので、 この上澄み液を分離する。 攪拌停止後から上澄み液分離までの時 間 (静置時間) を調節することにより、 分離する粒子径を変化させるこ
とができ、 ダイォキシン類の分離効率はこの静置時間を調節することに より決定される。 静置時間を同じに採っても、 分離効率は土壌の発生場 所毎に異なるので、 この前処理を行うに際しては、 それぞれの場所毎に 必要な分離効率が得られる最適の静置時間をあらかじめ求めておくのが よい。
洗浄に用いる水の量は、 体積で、 ダイォキシン類に汚染された土壌の 2倍以上を目安とすればよい。
別の分離方法としては、 例えば、 篩い目の開き幅が 0 . 1 m m程度の 篩い目をもつ振動篩に土壌を入れ、 土壌の微粒子部分を水とともに洗い 流す方法があげられる。 この場合は、 選択する篩い目の大きさによりダ ィォキシン類の分離効率が決定される。 従って、 先の例と同じく土壌の 発生場所毎に必要な分離効率が得られる最適の篩い目をもつ篩を選択す ればよい。
前記の水と微粒部からなる洗浄水 (すなわち、 微細なダストや土粒子 の微粒子を含む懸濁液) に対しては、 酸化カルシウムおよび酸化カルシ ゥムを含有する物質のうちの少なく とも一方を混合し、 メカノケミカル 処理を行うのであるが、 それに先立ち、 微粒子を含む懸濁液から水分を 除去する。
微粒子を含む懸濁液から水分を除くには、 この懸濁液に、 例えば高分 子凝集剤のような凝集剤を投入して微粒子を凝集沈殿させるか、 孔径が 0 . 0 1 m程度の目の細かいフィルタ一を用いて分離すればよい。 得 られる凝集沈殿物またはフィルターで分離した泥土状のものを脱水する 方法としては、 一般的には泥土の脱水処理で用いられているスクリュー デカン夕やフィルタープレスによる脱水、 ロールプレス脱水、 高圧薄層 脱水等が適用可能である。 しかし、 微粒子で構成された土は 「シルトま たは粘土」 と呼ばれる状態のものとなり、 脱水時に固まるので、 脱水後 に乾燥し、 粉碎する工程が必要となる。
推奨される方法は、 微粒子を含む懸濁液の含水比を適正含水比に調整 しておき、 この懸濁液の流れに衝撃波を伴う熱風を吹き付けて水分を蒸 発させる方法である。 例えば、 パルスジェッ トエンジンを備えた乾燥装 置により実施することができる。 また、 スプレードライヤーや、 媒体流 動層方式のドライヤーを備えた乾燥装置により水分を蒸発させる方法を 用いてもよい。
なお、 水分を除去する前に、 微粒子を含む懸濁液に酸化アルミニウム または二酸化珪素を含有する物質、 またはそれらの両方を含有する物質 を添加しておけば、 メカノケミカル反応を促進させることができる。 上述した本発明の処理方法は、 被処理物が比較的低濃度の有機塩素系 有害物 (ダイォキシン類やポリ塩化ビフエ二ル等) に汚染された焼却灰 、 集塵飛灰、 集塵ダス ト、 土壌等に主として適用し得る方法である。
この方法を、 例えばポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油の処理に適 用するため、 前記絶縁油に単に酸化カルシウムや酸化カルシウムを含有 する物質を混合してメカノケミカル処理を施そうとしても、 機械的な衝 擊力がポリ塩化ビフエニルに伝達されにく く、 ポリ塩化ビフエ二ルから の塩素の離脱速度が非常に遅い。
このように、 被処理物が廃棄のために保管されているポリ塩化ビフエ ニルを含有する絶縁油等の液状の物質の場合は、 下記の工程による処理 方法を用いればよい。 なお、 この場合の 「ボリ塩化ビフエニルに汚染さ れた物質」 とは、 ポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等の液状の物質 である。
( 1 ) ポリ塩化ビフエ二ルに汚染された物質に、 酸化カルシウムおよび 酸化カルシウムを含有する物質のうちの少なく とも一方とともに 、 酸化アルミニウムおよび二酸化珪素のうちの少なく とも一方を 含有する物質を混合する
(2) 上記の混合物をメカノケミカル処理する
前記(1 ) の工程で、 酸化アルミニウムおよび二酸化珪素のうちの少な く とも一方を含有する物質を混合するのは、 これらの物質がメカノケミ カル処理の際に、 粉砕助剤として働くからである。
この方法を実施するに際し、 ポリ塩化ビフエ二ルを含有する絶縁油等 の保管 (密閉) 状態がよければ、 保管が長期間にわたっても吸湿するこ とがないので、 前述した水分の除去は必ずしも必須ではない。 しかし、 保管中の密閉が不十分で、 吸湿している場合は、 前述した水分の悪影響 を受けないようにあらかじめ水分を除去するのが望ましい。 その場合、 無水硫酸マグネシウム、 無水硫酸ナトリウム、 無水硫酸カルシウム等を 脱水処理剤として用いればよい。
この液状のポリ塩化ビフエニル汚染物質を処理の対象とする場合も、 混合する酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを含有する物質のうちの 少なく とも一つをあらかじめ粉砕すれば、 メカノケミカル処理を効率よ く行うことができる。 また、 酸化カルシウムや酸化カルシウムを含有す る物質とともに混合する酸化アルミニウムや二酸化珪素を含有する物質 も、 あらかじめ粉砕するのが望ましい。
以上説明した本発明の処理方法を 2〜 3の被処理物を例にとって具体 的に述べる。
例えば、 ダイォキシン類に汚染された焼却灰を処理する場合、 まず、 その焼却灰を 1 1 0 で約 2時間乾燥し、 その後常温まで冷却し、 酸化 カルシウムを混合して、 遊星型ボールミル等で粉碎する。 粉砕時間は 2 〜 3時間であるが、 反応速度が遅く、 数時間を超える場合もある。 なお 、 酸化カルシウムは、 あらかじめ粉枠した酸化カルシウムを用いるのが 好ましい。
ポリ塩化ビフエニルに汚染された土壌を処理する場合も、 上記と同様 に、 1 1 0 で約 2時間乾燥し、 その後常温まで冷却し、 あらかじめ粉 砕した酸化カルシウムを混合して、 遊星型ボールミル等で粉碎すればよ
い。 粉砕時間は 2 〜 3時間であるが、 反応速度が遅く、 数時間を超える 場合もある。
また、 1 0年以上保管されたポリ塩化ビフエニルが混合されたトラン スの絶縁油を処理する場合は、 無水硫酸マグネシゥムを添加して水分を 除去し、 その後硫酸マグネシウムをろ過して取り除き、 あらかじめ粉砕 した酸化カルシウムと二酸化珪素を混合し、 遊星型ボールミル等で粉砕 する。 この場合も粉砕時間は 2〜 3時間であるが、 反応速度が遅く、 数 時間を超える場合もある。
上記本発明の処理方法によれば、 ダイォキシン類に汚染された焼却灰 、 集塵飛灰、 集塵ダス ト、 土壌等、 あるいはポリ塩化ビフエ二ルに汚染 された土壌や、 保管中のポリ塩化ビフエニルを含有する絶縁油等の処理 が可能である。
また、 鉄鋼スラグは酸化アルミニウムや二酸化珪素を含んでおり、 メ カノケミカル反応を促進する効果があるので、 これを酸化カルシウムを 含有する物質として利用すれば、 処理費用の削減に加え、 処理時間の短 縮も可能である。
上述した本発明の処理方法において、 メカノケミカル処理の前、 また は処理の後、 または処理の前後に水和物を生成する無機粉末を混合して もよい。
水和物を生成する無機粉末を混合することにより、 前記被処理物を無 害化処理すると同時に、 高強度の水和物を生成する物質 (これを、 ここ では 「無機粉末混合物」 という) とすることができる。 この無機粉末混 合物は、 既に無害なものとなっており、 水を加えると固化するので、 単 に投棄するだけではなく、 土質系の無機材料として土木建材用等に広く 有効利用できる可能性がある。
この発明の処理方法で混合する 「水和物を生成する無機粉末」 とは、 酸化カルシウム、 酸化アルミニウム、 二酸化珪素、 硫酸カルシウム等を
いう。 これらのうちの 1種以上を適宜混合する。 すなわち、 上記の処理 により得られる物質に、 水を加えて混合することによって水和物を生成 するような組成になるように前記無機粉末を混合する。 生成する水和物 としては、 3 C a〇一 A 1 2 03 — 3 C a S 04 · 3 2 Η2 〇 (ェ卜 リ ンガイ ト) 、 3 C a O— A l 2 Ο 3 - C a S Ο 4 · 1 2 H 2 〇 (モノサ ルフェイ ト水和物) 、 n C a O— S i 02 · mH 2 O (ケィ酸カルシゥ ム水和物) 、 3 C a〇— A l 2 O 3 · 6 H 2 O (アルミン酸カルシウム 水和物) 等があるが、 これらの成分系が出現する組成になるように前記 無機粉末を混合すればよい。
例えば、 被処理物にその処理に必要な酸化カルシウムを混合した場合 、 その混合量に見合った量の他の無機粉末 (酸化アルミニウム、 二酸化 珪素、 硫酸カルシウム等) を配合すればよい。 これによつて、 被処理物 中の有機塩素系有害物の塩素が除去された、 しかも水和物を生成し得る 無機粉末混合物が得られる。 配合割合は、 どのような水和物を得ようと するかによつて異なるので、 得られる無機粉末混合物の用途に応じて適 宜定めればよい。
水和物を生成する無機粉末は、 メカノケミカル処理の前、 または処理 の後、 または処理の前後に混合する。 処理前に混合すれば、 メカノケミ カル処理によって加えられる機械的エネルギーで酸化カルシウムおよび 水和物を生成する無機粉末の粒子が物理的に引きちぎられ、 活性の高い 分子面ができるので、 水和等の反応が生じやすい活性化された状態にな る。 従って、 得られる無機粉末混合物に水を加えると、 メカノケミカル 処理を施していない場合に比べて水和反応が著しく促進されるので、 固 化体の強度の向上効果が大きい。 また、 水和反応が促進される結果、 ァ ルカリの溶出が抑えられる。
水和物を生成する無機粉末をメカノケミカル処理後に混合する場合は 、 混合後に再度メカノケミカル処理を行うのが望ましい。
酸化カルシウムに加え、 酸化アルミニウム、 または二酸化珪素、 また はそれらの両方を含有する物質を混合すれば、 前述したように、 反応が 促進される。 例えば、 ボーキサイ ト、 アルミナ煉瓦、 珪砂、 珪石煉瓦等 を混合するのが望ましい。 さらに、 酸化ジルコニウム、 酸化チタン、 酸 化クロム、 炭化珪素等も同様の反応促進効果を示す。
酸化カルシウムを含有する物質として、 または水和物を生成する無機 粉末として、 またはそれら両方の特性を有するものとして前述した鉄鋼 スラグを使用することができる。 特に、 酸化アルミニウムや二酸化珪素 を含むスラグを用いる方が、 メカノケミカル反応が促進されるので好ま しい。 ただし、 高炉スラグを水和物を生成する無機粉末として用いる場 合は、 水硬性のある水碎スラグの方が好ましい。
上記酸化カルシウムを含有する物質に含まれる酸化アルミニウムや二 酸化珪素の含有量が低い場合でも、 ボーキサイ ト、 アルミナ煉瓦、 珪砂 、 珪石煉瓦等の酸化アルミニウムや二酸化珪素を含有する物質 (粉末) を混合すると反応が促進される。
なお、 上記の水和物を生成する無機粉末に加え、 中和材および通気材 のうちの少なく とも 1種を混合してもよい。 中和材 (例えば、 硫酸や、 それを酸性土壌、 無機粉末にあらかじめ含浸させたもの) を加えること により、 得られた無機粉末混合物に水を加えて固化したとき、 固化体か らのアルカリの溶出を少なくすることができる。 また、 通気材 (例えば 、 多孔質のゼォライ ト等) を加えると透水性、 通気性が改善されるので 、 得られた無機粉末混合物を植生緑化用に用いる場合等において好適で あり、 さらに用途の拡大も期待できる。
上記の水和物を生成する無機粉末を混合する本発明の処理方法におい て、 被処理物 (ダイォキシン類やポリ塩化ビフエニルに汚染された物質 ) 、 およびメカノケミカル処理の前に混合される酸化カルシウムや、 酸 化カルシウムを含有する物質等に含まれる水分量は、 前述したように、
極力少ない方がよい。 従って、 処理費用低減のために結晶水を含む無機 粉末 (例えば、 排煙脱硫装置から排出される二水石膏等) を使用する場 合は、 メカノケミカル処理が終了した後添加するのがよい。 なお、 その 際、 前述したように、 再度のメカノケミカル処理を 1 〜 2時間程度行う のが望ましい。
この水和物を生成する無機粉末を混合する処理方法によれば、 ダイォ キシン類、 ポリ塩化ビフエニル、 D D T等の有機塩素系有害物に汚染さ れた物質を安価に、 かつ短時間で処理し、 しかも水和反応により固化さ せ得る無機粉末混合物とすることができる。
この水和物を生成する無機粉末を混合する処理方法で得られる無機粉 末混合物に水を加え、 この混合物を固化してもよい。 固化物は無害なも のとなつており、 しかも高い強度を有しているので、 単に投棄するだけ ではなく、 以下に述べるような種々の用途に活用することが可能である 具体的には、 この無機粉末混合物を現地へ運搬した後、 必要な水分を 添加し、 例えばセメントを用いた場合に通常用いられている方法と同様 の方法で養生する。 水分を添加する前にこの混合物を成形し、 その後必 要な水分を添加し、 養生してもよい。 これにより強度が発現する。
水分の添加量は、 得られた無機粉末混合物中の水和物を生成する無機 粉末の含有量、 被処理物の種類等によって異なるが、 少なすぎても強度 は発現せず、 多すぎても強度は下がる。 水分の添加量が少なすぎる場合 は水和反応が進行しない。 多すぎる場合は、 余分な水分が最終的には蒸 発し、 脱水するが、 その余分な水分が存在していた部分が空孔となって 残り、 構造体としての強度が低下するからである。 従って、 使用の都度 、 適正な水分量をあらかじめ求めておくのがよい。
上記の無機粉末混合物に水を加えてこの混合物を固化する本発明の処 理方法によれば、 前記の無機粉末混合物を、 土質系の無機材料として、
河川堤防の基盤材、 川床改良材、 路盤材等の他、 ビル建設の基礎材、 橋 梁の基礎材、 地下埋没物の沈下防止材等、 より強度が必要とされる土木 建材用等にも使用することが可能である。
さらに、 この処理方法は、 それにより得られる固化物が重金属の溶出 防止作用も備えているので、 有機塩素系有害物に汚染された物質が重金 属を含んでいる場合でも適用することができる。
実施例 1
ダイォキシン類を含む焼却灰 1 0 0 gに酸化カルシウム 1 0 0 gを混 合し、 遊星ボールミルで 2〜4時間のメカノケミカル処理を行い、 得ら れた混合試料についてダイォキシン類の分析を行った。 分析は、 環境庁 大気保全局により作成された 「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」 に規定される方法に準じて実施した。
なお、 前記焼却灰に対しては、 2時間の天日乾燥処理、 または 1 1 0 でで 2時間加熱後、 デシケ一夕一内で常温まで冷却する加熱乾燥処理を 施した。 また、 比較のため、 乾燥処理を行わない場合についても同じ条 件でメカノケミカル処理を行い、 ダイォキシン類の分析を実施した。 焼却灰の水分含有量 (酸化カルシウムの質量に対する水分含有量) は 、 乾燥処理を行う前は 4 8 %であり、 天日乾燥処理後は約 2 5 . 5 %、 加熱乾燥処理後は約 7 %であった。
表 1にそれぞれの乾燥処理条件下におけるダイォキシン濃度を示す。 ここに、 ダイォキシン濃度 (p g— T E Q Z g ) とは、 この例でいえば 、 焼却灰 1 gに対するダイォキシン類の質量比で、 前記ダイォキシン類 の質量として、 分析されるそれぞれのダイォキシン類のピコグラム (P g ) で表した質量にそれぞれ定められている毒性係数を乗じたものの合 計として表した、 すなわち毒性等量 (T E Q ) に換算した質量を用いた ものである。 以下に述べる実施例においても同様である。
ダイォキシン濃度 (pg-TEQ/g)
未処理 2 h処理 3 h処理 4 h処理 天日乾燥 7220 1425 355 326
加熱乾燥 731 0 728 86 21
無乾燥(比較例) 721 0 251 0 2030 1 81 0 天日乾燥処理、 加熱乾燥処理のいずれの場合においても、 メカノケミ カル処理を行うことによってダイォキシン濃度は低下した。 特に、 加熱 乾燥処理によって十分に乾燥した場合は、 ダイォキシン濃度の低下が頭 著であった。 これに対して、 天日乾燥処理で水分が残留している場合は 、 メカノケミカル処理の初期にはダイォキシン濃度は低下したが、 3時 間を超えて処理を行っても、 ダイォキシン濃度の低下は少なかった。 た だし、 さらに長時間、 例えば 6〜 8時間のメカノケミカル処理を行えば 、 ダイォキシン濃度は低下する可能性があると考えられる。
一方、 乾燥処理を行わなかった場合は、 反応速度に及ぼす水分の影響 が大きく、 ダイォキシン濃度の低下は乾燥処理を行った場合に比べて極 めて少なかった。
実施例 2
ダイォキシン類を含む土壌 1 0 0 gに酸化カルシウム 1 0 0 gを混合 し、 遊星ボールミルで 2〜 4時間のメカノケミカル処理を行い、 得られ た混合試料についで実施例 1の場合と同じ方法でダイォキシン類の分析 を実施した。 '
己土壌中には粒径 5 m m以上の土の粒子が存在したので、 土壌に対 し、 粒径 l m m以下になるように予備粉碎処理を施し、 予備粉砕処理を 行わなかった場合と比較した。 なお、 予備粉砕処理の実施の有無に関係 なく、 土壌に対して、 1 1 で 2時間加熱後、 デシケータ一内で常温 まで冷却する加熱乾燥処理を施した。
土壌の水分含有量 (酸化カルシウムの質量に対する水分含有量) は 乾燥処理を行う前は 5 1 %、 乾燥処理後は 9 %であった。
表 2にダイォキシン濃度 (p g— TEQZg) を示す。
表 2
いずれの場合もダイォキシン濃度は低下したが、 特に、 予備粉砕処理 を行った場合、 ダイォキシン濃度の低下は顕著であった。 予備粉砕処理 を行わなかった場合は、 初期のダイォキシン濃度の低下も少なく、 4時 間の処理でも 1 Z 1 0程度までしか低下しなかった。 ただし、 長時間、 例えば 6〜 8時間のメカノケミカル処理を行えば、 予備粉碎を行ってい ない場合でもダイォキシン濃度は低下すると考えられる。
実施例 3
ダイォキシン類に汚染された焼却灰および土壌を対象として、 大型遊 星ボールミルを用いて実験を行った。
用いた遊星ボールミルは、 内径 6 7 7mm、 内部高さ 67 7mmのポ ッ トを 3基有している。 遊星ボールミルの公転半径は 8 5 Ommとし、 回転速度は、 公転、 自転とも毎分 7 0回 (70 r pm) とした。 ただし 、 公転方向と自転方向は反対方向とした。
実験では、 乾燥処理を行って水分含有量 (酸化カルシウムの質量に対 する水分含有量) を 0. 9 %まで低下させた焼却灰 8 k gに珪砂 6 k g と生石灰 56 k gを混合し、 メカノケミカル処理を行った。 また、 別に 、 乾燥処理を行って水分含有量を 1. 6 %まで低下させた汚染土壌 1 0 k gに生石灰 60 k gを混合し、 メカノケミカル処理を行った。 なお、 大型実験であるため、 生石灰の混合量は汚染物質量に対してそれぞれ 7
倍および 6倍とした。
それぞれの処理時におけるダイォキシン類の低減状況を第 1図および 第 2図に示す。 なお、 ダイォキシン類の分析は、 実施例 1の場合と同じ 方法で行った。
図示した結果から明らかなように、 ダイォキシン濃度は、 焼却灰およ び土壌のいずれの場合も、 処理時間の経過とともに急激に低下し、 約 1 0時間処理後、 ほぼ 0 p g— TEQZgとなった。
実施例 4
ダイォキシン類を含む電気炉ダス ト 1 00 gに、 酸化カルシウム 1 0 0 g、 高炉徐冷スラグ 244 g、 転炉スラグ 23 8 gまたは取鍋残留ス ラグ 22 7 gを混合し、 遊星ボールミルで 2〜 4時間のメカノケミカル 処理を行い、 得られた混合試料について実施例 1の場合と同じ方法でダ ィォキシン類の分析を実施した。 各スラグの混合量は、 酸化カルシウム として一定の混合量 ( 1 00 g) になるように設定した。
なお、 いずれの場合も、 電気炉ダス トに対しては、 l l Ot:で 2時間 加熱後、 デシケ一夕一内で常温まで冷却する加熱乾燥処理を施した。 ま た、 酸化カルシウムおよび各スラグは、 粒径 1 mm以下になるように予 備粉砕処理を行った。
電気炉ダス 卜の水分含有量 (酸化カルシウムの質量に対する水分含有 量) は、 乾燥処理を行う前は 3 5 %、 乾燥処理後は 1 3 %であった。 表 3に各スラグの組成を、 表 4にダイォキシン濃度 (p g— TEQZ g) を示す。
表 3
表 4
鉄鋼スラグ中には酸化アルミニウムや二酸化珪素が存在するため、 酸 化カルシウムを単独で添加した場合よりもメカノケミカル処理の進行が 速力ゝつた。
実施例 5
ダイォキシン類を含む電気炉ダス ト 1 0 0 gに、 酸化カルシウム 1 0 0 g、 酸化カルシウム 1 0 0 g +酸化アルミニウム 5 0 g、 または酸化 カルシウム 1 0 0 g + 酸化珪素 5 0 gを混合し、 遊星ポールミルで 2 〜 4時間のメカノケミカル処理を行い、 得られた混合試料について実施 例 1の場合と同じ方法でダイォキシン類の分析を実施した。
なお、 いずれの場合も、 電気炉ダス 卜に対しては、 1 1 0 で 2時間 加熱後、 デシケ一夕一内で常温まで冷却する加熱乾燥処理を行った。 ま た、 酸化カルシウムおよび各スラグは、 粒径 1 m m以下になるように予 備粉砕処理を行った。
電気炉ダス 卜の水分含有量 (酸化カルシウムの質量に対する水分含有
量) は、 乾燥処理を行う前は 4 1 %、 乾燥処理後は 1 6 %であった 表 5にダイォキシン濃度 ( p g— T EQZg) を示す。
表 5
酸化カルシウムとともに酸化アルミニウムまたは二酸化珪素を混合し た場合は、 酸化カルシウムを単独で添加した場合よりもメカノケミカル 処理の進行が速かった。
実施例 6
ポリ塩化ビフエニルに汚染されている土壌 1 0 0 gに酸化カルシウム l O O gを混合し、 遊星ボールミルで 2〜4時間のメカノケミカル処理 を行い、 得られた混合試料について、 J I S K O 0 9 5に規定された E C D—ガスクロマトグラフ法によりポリ塩化ビフエ二ルの分析を実施 した。
前記の土壌に対しては、 2時間の天日乾燥処理、 または 1 1 0 で 2 時間加熱後、 デシケ一 ー内で常温まで冷却する加熱乾燥処理を施した 。 また、 比較のため、 乾燥処理を行わない場合についても同じ条件でメ カノケミカル処理 ¾行い、 ポリ塩化ビフエニルの分析を実施した。 なお 、 土壌および酸化カルシウムのいずれについても、 あらかじめ予備粉砕 処理を行って粒径 1 mm以下とした。
土壌の水分含有量 (酸化カルシウムの質量に対する水分含有量) は、 乾燥処理を行う前は 4 6 %であり、 天日乾燥処理後は約 2 5. 5 %、 加 熱乾燥処理後は約 1 %であった。
表 6にそれぞれの乾燥処理条件下におけるボリ塩化ビフエ二ル濃度 (
表 6
天日乾燥処理、 加熱乾燥処理のいずれの場合においても、 メカノケミ カル処理を行うことによってポリ塩化ビフエニル濃度は低下した。 特に
、 加熱乾燥処理によって十分に乾燥した場合は、 土壌中の二酸化珪素な どが反応促進剤の役割を果たすため反応が速く、 ポリ塩化ビフエ二ル濃 度の低下が顕著であった。
これに対して、 天日乾燥処理で水分が残留している場合は加熱乾燥処 理を行った場合に比べて反応が遅かったが、 さらに長時間のメカノケミ カル処理を行えばポリ塩化ビフエ二ル濃度は低下するものと考えられる 一方、 乾燥処理を行わなかった場合は、 反応速度に及ぼす水分の影響 が大きく、 ポリ塩化ビフエニル濃度の低下は極めて少なかった。
加熱乾燥処理を施し 場合で、 2時間のメカノケミカル処理後の土壌 について、 「土壌 ¾染に係わる環境基準」 に規定される溶出試験を行つ た。 その結果、 ポリ塩化ビフエ二ルは検出されず、 土壌汚染に係わる環 境基準 (< 0. 0 0 0 5 mgZリ ッ トル) を十分満たすものであった。 実施例 Ί
ポリ塩化ビフエ二ルを 5 0 %混合したトランスの絶縁油 1 0 0 gに、 酸化カルシウム 1 0 0 g、 2 0 0 gまたは 3 0 0 gと、 そのそれぞれに 二酸化珪素 1 0 0 gを混合し、 遊星ボールミルで 2〜 4時間のメカノケ
ミカル処理を行い、 得られた混合試料について実施例 6の場合と同じ方 法でボリ塩化ピフエ二ルの分析を実施した。 また、 比較のために、 二酸 化珪素を加えずに酸化カルシウム 2 0 0 gのみを混合し、 上記と同様に メカノケミカル処理を行って得られた混合試料についてもポリ塩化ビフ ェニルの分析を実施した。
表 7に各条件下におけるポリ塩化ビフエニル濃度 ( P P m ) を示す。 表 7
(注)反応当量比 : 塩化カルシウム生成の反応式から求められる酸化カルシウムの
モル数(反応当量)に対する倍数
この結果から、 被処理物が卜ランスの絶縁油のように液体の場合は、 二酸化珪素の混合の影響が非常に大きいことがわかる。
実施例 8
ポリ塩化ビフエ二ル¾ 1 0 %混合したトランスの絶縁油 1 0 0 gに、 高炉徐冷スラグ、 炉スラグまたは取鍋残留スラグをそれぞれ 4 0 0 g 混合し、 遊星ボールミルで 2〜 4時間のメカノケミカル処理を行い、 得 られた混合試料について実施例 6の場合と同じ方法でポリ塩化ビフエ二 ルの分析を実施した。
表 8に各スラグの組成を、 表 9に各条件下におけるポリ塩化ビフエ二 ル濃度 ( p p m ) を示す。
表 8
表 9
鉄鋼スラグ中に含まれる酸化アルミニウムや二酸化珪素が粉砕助剤と して働くため、 短時間で処理が可能であった。
実施例 9
ポリ塩化ビフエニルに汚染されている土壌 1 0 0 gに酸化カルシウム 1 0 0 gを混合し、 遊星ボールミルで 2〜 4時間のメカノケミカル処理 を行い、 得られた 合試料について実施例 6の場合と同じ方法でポリ塩 化ビフエニルの分析を実施した。
その際、 一部の土壌について粒径 5 m m以下になるように予備粉碎処 理を行い、 予備粉砕処理を行わなかった場合と比較した。 また、 酸化力 ルシゥムについては粒径 1 m m以下になるように予備粉砕処理を行った なお、 土壌については、 予備粉砕処理の実施の有無には関係なく、 1
1 0でで 2時間加熱後、 デシケ一夕一内で常温まで冷却する加熱乾燥処 理^行つ/こ。
土壌の水分含有量 (酸化カルシウムの質量に対する水分含有量) は、 乾燥処理を行う前は 4 2 %であり、 乾燥処理後は約 1 %であった。
表 1 0に各条件下におけるポリ塩化ビフエニル濃度 ( P p m) を示す 表 1 0
この結果から明らかなように、 予備粉砕処理の効果は極めて大きかつ た。
実施例 1 0
ダイォキシンを含む焼却灰 1 0 0 gに酸化カルシウム 1 0 0 g、 酸化 アルミニウム 3 0 g、 二酸化珪素 3 0 gを混合し、 遊星ボールミルで 4 時間のメカノケミカル処理を行い、 その後、 二水石膏 1 5 gを添加し、 さらに 1時間のメカノケミカル処理を行い、 得られた混合試料について 実施例 1の場合と同じ方法でダイォキシン類の分析を実施した。
なお、 前記の焼却灰に対しては、 1 1 0 :で 2時間乾燥後、 デシケー ター内で常温まで冷却する加熱乾燥処理を行った。
ダイォキシンの濃度は、 メカノケミカル処理前の焼却灰では、 7 3 0 0 p g _T E QZgであり、 処理後の混合試料では、 1 3 p g— T E Q / gであった。
さらに、 処理後の混合試料に水分含有量が 5 5 %になるように水を添 加して固化し、 J I S A 1 2 1 6に規定される方法に準じて一軸圧縮 強度を測定した結果、 8. 3 3 X 1 06 N/m2 ( 8 5 k g f / c m 2
) の高い値が得られた。
実施例 1 1
ポリ塩化ビフエニルに汚染されている土壌 1 0 0 gに高炉水碎スラグ 微粉末 1 0 0 g、 無水石膏 2 0 g、 酸化カルシウム 2 0 gを混合し、 遊 星ボールミルで 4時間のメカノケミカル処理を行い、 得られた混合試料 について、 実施例 6の場合と同じ方法でポリ塩化ビフエニルの分析を実 施した。
なお、 前記の土壌に対しては、 1 1 O :で 2時間乾燥後、 デシケ一夕 一内で常温まで冷却する加熱乾燥処理行った。
ポリ塩化ビフエ二ルの濃度は、 メカノケミカル処理前の土壌では、 3 4 0 0 p p mであり、 処理後の混合試料では、 0. 8 p pmであった。 さらに、 処理後の混合試料に水分含有量が 5 5 %になるように水を添 加して固化し、 J I S A 1 2 1 6に規定される方法に準じて一軸圧縮 強度を測定した結果、 9. 0 2 X 1 06 NZm2 ( 9 2 k g f / c m 2 ) の高い値が得られた。
実施例 1 2
ダイォキシン類に汚染されている土壌 1 k gを、 2 リ ツ トルの水中に 投入して 1 0分間攪拌し、 その後、 篩い目の開き幅が 0 · 1 mmの篩い 目をもつ振動篩にかけて粗粒子部分を分離した。 その際、 さらに 1 リ ツ トルの水で粗粒子部分を洗浄した。 得られた約 3 リ ッ トルの洗浄液をェ バポレーターを用いて脱水し、 固形物を取り出し、 これをさらに 1 1 0 で 2時間乾燥した。 この脱水 · 乾燥物 (乾燥試料) の重量は 9 7 gで めった。
その後、 この乾燥試料に酸化カルシウム 1 0 0 gを混合し、 遊星ボー ルミルで 4時間のメカノケミカル処理を行い、 得られた処理後の試料に ついて、 実施例 1 の場合と同じ方法でダイォキシン類の分析を実施した 。 なお、 分析は、 ダイォキシン類に汚染されている土壌、 ならびに水で
洗浄した後の土壌 (粗粒子部分) および乾燥試料 (洗浄に用いた水を脱 水乾燥したダイォキシン類を含む微粒子) についても行った。
表 1 1 にダイォキシン類の分析結果を示す。 表 1 1
この実施例によると、 水で洗浄した後の土壌 (粗粒子部分) のダイォ キシン濃度は極めて低く、 単に水で洗诤するだけでダイォキシン類は容 易に洗い流されることがわかる。
また、 メカノケミカル処理後の試料のダイォキシン濃度も低く、 しか も、 メカノケミカル処理の対象物の量は元の土壌の量の 1 1 0以下で あった。 すなわち、 元の土壌を直接メカノケミカル処理する場合に比べ て、 少ない量の酸化カルシウムで処理できたことになる。 さらに、 元の 土壌を直接メカノケミカル処理するに際し、 この実施例で使用した 2 0 0 gを処理単位とする遊星ボールミルを用いたとすると、 1 0回の処理 が必要で、 全量の処理には 4 0時間を要することとなる。
実施例 1 3
ダイォキシン類に汚染されている土壌 1 k gにトルエン 3 リ ッ トルを 加え、 攪拌槽で約 1時閬抽出を行った後、 濾過して土壌を取り除き、 取 り除いた土壌の内 約 5 0 gを抽出した液に戻した。 その液からエバポ レーターで有機溶剤を揮発除去し、 得られた残渣を 1 1 0 で約 2時間 乾燥し、 デシケ一夕一内で常温まで冷却した。 このとき得られた残渣は 約 8 6 であった。
その後、 この残渣にあらかじめ粉砕しておいた酸化カルシウム 1 0 0 gを混合し、 遊星ボールミルで 4時間のメカノケミカル処理を行い、 得 られた混合試料について、 実施例 1 の場合と同じ方法でダイォキシン類
の分析を実施した。 なお、 分析は、 ダイォキシン類に汚染されている土 壌および溶媒抽出残渣についても行った。
表 1 2にダイォキシンの分析結果を示す。 表 1 2
この結果から明らかなように、 土壌のダイォキシン濃度は上記のメカ ノケミカル処理により顕著に低下した。
また、 この実施例では、 1 0 0 gの酸化カルシウムで 1 k gの土壌の 処理が可能であった。 この土壌を直接メカノケミカル処理する場合は、 約 1 k gの酸化カルシウムが必要となる。 また、 その際、 この実施例で 使用した 2 0 0 gを処理単位とする遊星ボールミルを用いたとすると、 1 0回の処理が必要で、 全量の処理には 4 0時間を要することとなる。 実施例 1 4
ポリ塩化ビフエ二ルに汚染されている土壌 1 k gに トルエン 3 リ ッ ト ルを加え、 攪拌槽で約 1時間抽出を行った後、 濾過して土壌を取り除き 、 抽出後の液に無水硫酸ナトリゥムの粉末を 1 0 0 g加えて脱水処理を 行った。 次いで、 脱水剤を濾過して除去し、 残った抽出後の液に高炉徐 冷スラグ 6 0 gを加えて攪拌した後、 その液からエバポレーターで有機 溶媒を揮発除去し、 残渣を高炉スラグに付着させた状態で取り出した。 このとき得られた残渣は約 8 3 gであった。
その後、 この残渣に遊星ボールミルで 4時間のメカノケミカル処理を 施し、 得られた混合試料について、 実施例 6の場合と同じ方法でにより ポリ塩化ビフエ二ルの分析を実施した。 なお、 分析は、 ポリ塩化ビフエ ニルに汚染されている土壌および溶媒抽出残渣についても行った。
また、 高炉徐冷スラグは、 あらかじめ予備粉砕処理を行って粒径 5 m
m以下にしたものを使用した。
表 1 3にポリ塩化ビフエ二ルの分析結果を示す, 表 1 3
この結果から明らかなように、 土壌のポリ塩化ビフエ二ル濃度は上記 のメカノケミカル処理により顕著に低下した。
また、 この実施例では、 6 0 gの高炉スラグで 1 k gの土壌の処理が 可能であった。 この土壌を直接メカノケミカル処理する場合、 この実施 例で使用した 2 O O gを処理単位とする遊星ボールミルを用いたとする と、 1 0回の処理が必要で、 全量の処理には 4 0時間を要することとな る。 産業上の利用可能性
本発明の有害物質の処理方法によれば、 焼却灰、 集塵飛灰、 集塵ダス ト、 土壌等のダイォキシン類に汚染された物質、 あるいはポリ塩化ビフ ェニルに汚染された土壌やポリ塩化ビフエ二ルを含有する絶縁油等を処 理することができる。 その際、 被処理物に混合する酸化カルシウムを含 有する物質として鉄鋼スラグを用いれば、 メカノケミカル反応を促進し て処理時間の短縮を,図り、 処理費用を削減することができる。
さらに、 水和固化が可能な無機粉末混合物とすることもでき、 土木建 材用に有効利用することが可能である。