明 細 書
内燃機関用点火コ ィル 技術分野
本発明は、 エン ジ ンのプラグホールに装着されて各点火プラ グに個別 に直結される、 所請独立点火形の内燃機関用点火コ イルに関する。 背景技術
このよ う な独立点火形の点火コ イルは、 コイル部の少な く と も一部が - ゲホール内に導入されて装着されるため、 細長い円筒形のコ イルケ 部にセ ンタ コ ア (磁路鉄心で珪素鋼板を多数積層 したもの) , 一次コ イル, 二次コ イルを内装 している。 一次コイルに流す電流の通電, 遮断制御によ リ 二次コ イ ルに点火に必要な高電圧を発生させるもので、 これらのコ イルは、 通常それぞれのポビンに巻かれ、 センタ コアの周囲 に同心状をな して配置されている。
この種点火コ イルには、 一次コ イ ルを内側, 二次コ イルを外側に配置 する、 所謂外二次コ イル構造のものと、 二次コ イルを内側, 一次コ イル を外側に配置する、 所謂内二次コ イ ル構造のものとがある。 このう ち後 者は前者に較べ二次コ イ ルの全長が短く 、 二次コ イル側の静電浮遊容量 が小さ いため出力特性の面で有利な点があると考え られている。
すなわち、 二次電圧出力及びその立上り特性は静電浮遊容量に影響さ れ、 静電浮遊容量が大き く なるほど出力が低下 し立上り に遅れが生じる したがって、 静電浮遊容量の小さ い内二次コ イル構造の方が、 小形, 高 出力化に適していると考え られている。
一次, 二次コ イルを収納するコ イ ルケース内には、 絶縁用樹脂を充填
(注入硬化) する こ とでコ イルの絶縁性を保証している。
しかし、 点火コイル装置の構成部材間に絶縁用樹脂と してエポキシ樹 脂を充填(注入硬化)する場合、 通常、 エポキシ樹脂の硬化温度は 1 0 0 °c以上であ り 、 常温では、 絶縁用樹脂ゃポビン材は、 構成部材間の線膨 張率差 (ボピン, コ イル, センタ コア, 絶縁用樹脂間相互の線膨張係数 差) に基づく 熱応力が加わるので、 熱応力によ るク ラ ッ ク 、 及び部材間 界面剥離の防止対策を講じる必要がある。
特開平 1 1— 1 1 1545号公報には内二次コ イル構造で、 一次, 二次コ イル を収納するコ イルケース内には、 絶縁用樹脂を充填 (注入硬化) する点 火コ イルが記載されている。 ま た、 充填する絶縁樹脂と接着しに く い材 質で 1 次コイルの線材を被覆する こ と によ リ 、 一次コ イルの線材間に樹 脂絶縁材が浸透 しても一次コ イルの線材と樹脂絶縁材との間が滑る よ う に したものが記載されている。
しか しながら、 この従来技術には一次コイルと絶縁樹脂が密着 してい ると一次コイ ルの表面が絶縁樹脂によ って削 られ、 被覆が剥がれるとい う 問題がある。 発明の開示
本発明の目的は、 一次コ イルの電気的絶縁を破壊する こ とな く 、 構成 部材間の線膨張率差 (ボビン , コイル, センタ コア, 絶縁用樹脂相互の 線膨張係数差) に基づく 熱応力を低減させ、 この種の点火コ イル装置の 高品質, 高信頼性を図る こ と にある。
本発明は、 上記目的を達成するために、
( 1 ) すなわち、 第 1 の発明は、 コ イルケース内に内側から順にセンタ コ ア, 二次ポビンに巻かれた二次コ イ ル, 一次ボビンに巻かれた一次コ
ィルが同心状に配置され、 これらの構成部材間に絶縁用樹脂が充填され、 内燃機関の各点火プラグに直結して使用される独立点火形の内燃機関用 点火コィルにおいて、
前記一次ポビンと前記一次コ イルとの間、 及び/ま たは、 一次コイル の層間に、 二次ボビン内部に生じる熱応力のう ち一次コ イルと二次ポビ ンの熱収縮差によ って二次ポビン内部に生じる応力を減少させる空隙部 を前記絶縁用樹脂と共存させた こ と を特徴とする。
この空隙は、 例えば、 「一次ボビンと一次コ イル間に充填される絶縁 用樹脂 (例えばエポキシ樹脂) 」 と 「一次ポビン」 との間、 「一次ボビ ンと一次コ イル間に充填される絶縁用樹脂」 と 「一次コ イル」 との間、
「一次コ イル」 と 「一次コイ ルの層間に充填される絶縁用樹脂」 との間 の少な く とも一つに剥離部を形成したものである。
よ り 具体的態様と しては、 一次コ イルと一次コイル周囲に充填されて いる絶縁用樹脂との間を剥離し易 く した被膜或いは被覆を一次コ イルに 施した り 、 一次ボビンのう ち一次コイルを巻く 側のボビン表面 (ボビン の外側の面) に、 該ポビン表面と このボビン表面に接する絶縁用樹脂と の間を剥離し易 く した被膜或いは被覆を塗布等によ り 施した り 、 これに 代わ り エポキシと接着力の弱い絶縁シー ト を貼り付けるものである。
これらの被膜あるいは被覆と して、 例えば、 ナイ ロ ン, ポ リ エチレン テフ ロ ン等の摩擦係数の小さ い材料及びエポキシ樹脂と接着力の小さ い 材料を絶縁材料に含有させたオーバ一コ一ティ ングが使用できる。
エポキシ硬化後、 温度が下がる時に銅とエポキシの線膨張係数差によ リ 、 エポキシと一次コ イル又は一次ボビン界面と に引 っ張り応力が働き エポキシと接着力が弱い部分で剥離が発生する。
本発明の作用と しては、 点火コ イルがエンジン運転停止後に温度降下
によ り熱収縮し ょ う とすると、 二次ポビンには、 センタ コア側からは熱 収縮差 (線膨張率差) によ り相対的に周方向に拡張力が作用 し、 ま た、 一次コ イル, 二次コイル側からは絶縁用樹脂を介して相対的に周方向の 引っ張り 力が二次コイルに作用 し、 それらの相乗作用によ り 二次ボビン には、 大きな内部応力 σ が発生する力 本発明では、 一次ボビンと一次 コイルとの間や或いは/及び、 前記一次コ イルの層間に、 空隙 (例えば 上記の剥離部) を介在させる こ とで、 一次コ イルから二次ボビンに作用 する周方向の引 っ張リ カの経路を遮断する こ とが可能になる。
したがって、 二次ポビン内部に生じる応力 σ のう ち一次コ イルと二次 ポビンの熱収縮差によ って二次ポビン内部に生じる応力分 σ 1 を減少さ せる こ とで、 トータルの内部応力 σ を大幅に小さ く (緩和) する ことが 可能になる。 本発明者らの C A E ( C ompu t e r A i de d Enge ne r i ng ) 解析例 によれば、 上記 した応力分 σ 1 を減少させる こ とで、 全体の内部応力の 少な く とも 2 0 %は低減させる こ とが可能になる。 なお、 このよ う な内 部応力の低減値は、 点火コ イルが内燃機関のブラ グホールに内揷されて 各点火プラグに直結して使用され、 その内揷される部分の外径が 0 1 8 〜 Φ 2 7 mm ( このサイ ズの細長い円筒形タ イ プの点火コ イルは、 通常、 一次ポビン肉厚が 0 . 5 〜 1 . 2 mm, 二次ポビン肉厚が 0 . 7 〜 1 . 6 m, ボビン長さ力 5 ◦ 〜 1 5 0 mmである ) のものによ って確認された。 なお、 上記のよ う な空隙 (例えば剥離部) を一次ポビン と一次コ イ ル との間、 及び/ま たは、 一次コ イルの層間に設けても、 一次コ イルは低 電位 (ほ '接地電位) であるので、 一次コイ ル同士での電界集中が発生 せず、 ま た、 二次コイル · 絶縁用樹脂 · 一次ポビン間が隙間な く 密着し ていれば、 一次コイル · 二次コ イル間の絶縁を充分に確保でき、 しかも 二次コ イルの線間電圧によ る電界集中防止を充分に図れる こ とが試験結
果、 確認されており 、 絶縁破壊の発生を防止できる。
( 2 ) さ らに、 上記の第 1 の発明に加えて、 例えば、 二次ポビンと して 変性 P P E (変性ポリ フ エ二レ ンエーテル) を用いた場合、 二次ポビン が無機物の充填材 (ガラス繊維, マイ 力 , タルク等) を 2 0 %以上含有 させる こ とで、 二次ボビンの材質改善の見地から、 内部応力 σ を さ らに 小さ く する こ とができる。
変性 Ρ Ρ Εは、 絶縁用樹脂と なるエポキシ樹脂との接着性に優れ、 ま た、 成形性, 絶縁性が良好であるので、 二次ポビンの品質安定化に貢献 できるが、 2 0重量%以下の無機質充填材では、 他の構成部材 (セ ンタ コ ア, 一次コ イル, 二次コ イル等) との間の線膨張率差が大き く な り 、 内部応力 (熱応力) σが大き く なる。 例えば、 C A Ε解析例によれば、 上記した σ 1 の減少がない場合には、 二次ポビンに発生する内部応力 σ は、 点火コ イルを 1 3 0 °Cから — 4 0 °Cの温度環境において急激に温度 降下させた場合に、 約 9 0 〜 1 0 O M P a といっ た大きな値になる。
これに対して、 本発明によれば、 内部応力 σ を 7 O M P a以下ま で下 げる こ とが可能にな り 、 二次ボビンの縦割れ防止を図る こ とができた。 なお、 二次ポビンの成形性 (樹脂流動性) を保持しつつ、 内部応力 σ を 下げる最適例と しては、 変性 Ρ Ρ Εが 4 5 〜 6 0重量%, ガラス繊維が
1 5 〜 2 5重量%, 非繊維状の無機質充填材が 1 5 〜 3 5 重量%のもの を提案する。 この詳細は、 実施の形態の項で説明する。
さ らに、 上記の内部応力 σ を下げる線膨張率の観点からすれば、 特に 樹脂成形の樹脂流動方向がポビン軸方向である場合には、 この樹脂流動 方向に対して直角方向 (ポビンの半径方向及び周方向に相当するもので 特に、 周方向の内部応力を抑える こ とがボビン縦割れ防止のポイ ン ト と なる ) の線膨張率が、 上記のよ う な無機質充填材が含有量の制限の範囲
内で、 A S T M D 6 9 6 に準ずる試験方法で— 3 0 °C〜一 1 0 °C時の 平均が 3 5 〜 7 5 X 1 0— 6であるものが好ま しい結果が得られた。 こ の 詳細は、 実施の形態の項で説明する。
よ り 具体的態様と しては、 絶縁用樹脂 (例えばエポキシ樹脂) と親和 しないま たは化学反応しない成分を含む被膜或いは被覆層を一次コ イル の最外層に形成する こ と によ り 、 一次コ イルと絶縁用樹脂が剥離し、 空 隙部を形成できる。 こ の絶縁用樹脂と親和 しないま たは化学反応しない 成分は、十 C H2 C H2 + n ( n ≥ 2 ) ま たは ~t~ C H2 C H (C H3) 十 n
( n > 2 ) で示される材料であ り 、 例えば、 ナイ ロ ン, ポ リ エチレ ンや ポ リ プロ ピレ ンなどのポ リ オレフ イ ン, フ ッ素系樹脂, フ ッ素系エラス トマ一, フ ッ素系ゴム, ワ ッ クス, 脂肪酸エステルがある。 図面の簡単な説明
第 1 図は本発明の一実施例に係る内燃機関用点火コ イルの縦断面図。 第 2 図は第 1 図の B部を拡大して横に した状態で示す拡大図。
第 3 図は第 1 図の A— A ' 横断面図。
第 4図は第 2 図の C部拡大断面図。
第 5 図は本発明の他の実施例に係る C部拡大断面図。
第 6 図は上記実施例のィ グナイ タケースの上面図。
第 7 図 ( a ) は上記実施例に用いる ト ラ ンス フ ァモール ドされた点火 駆動回路を示す正面図、 ( b ) はその上面図、 ( c ) は点火駆動回路を 搭載した トラ ンスフ ァモール ド前の上面図。
第 8 図は点火コ イルの各部にク ラ ッ ク が生じた場合の絶縁破壊を態様 を示す模式図。
第 9 図は上記実施例に用いる一次コ イルの断面図。
第 1 0 図は上記実施例に用いる二次ポビンの一部を反割 り に して局部 的に断面した状態を示す模式図。
第 1 1 図は第 1 0 図の P部拡大図。
第 1 2 図は本発明と従来例との二次ポビンの周方向 (樹脂成形の流動 方向に対し直角方向) の線膨張係数と二次ボビンの発生応力との関係を 示す線図。
第 1 3 図は二次ボビンの M i ca (マイ 力 ) 含有量と線膨張係数の関係を 示す線図。
第 1 4図は二次ボビンの発生と熱サイ クル数の関係を示す線図。
第 1 5 図は本発明の他の実施例に係る内燃機関用点火コ イルの縦断面 図及びその E部拡大断面図。
第 1 6 図は第 9 図の D部拡大断面図。 発明を実施するための最良の形態
本発明の実施例を図面によ リ 説明する。
第 1 図は本発明の一実施例に係る内燃機関用点火コ イルの縦断面図、 第 2 図はその B部を拡大して横に した状態で示す図、 第 3 図は第 1 図の A - A ' 横断面図である。
細長い円筒形ケース (外装ケース) 6 の内部には、 中心 (内側) から 外側に向けて、 センタ コア 1 , 二次ポビン 2 に巻かれた二次コ イル 3 , 一次ポビン 4 に巻かれた一次コ イル 5 が同心状に配置されている。 外装 ケース 6 の外側には、 センタ コア 1 と磁路を形成するサイ ドコ ア 7 が装 着されている。
センタ コア 1 は、 その断面積を増やすよ う に、 例えば第 3 図に示すよ う に、 幅長を数段階に設定 した多数の珪素鋼板或いは方向性珪素鋼板を
プレス積層 してなる。 センタ コア 1 の軸方向の両端には該センタ コア 1 に隣接 してマグネ ッ ト 9 , 1 0 が配置される。 このマグネ ッ ト 9 , 1 0 は、 センタ コア 1 を通過するコイル磁束と反対方向に磁束を発生させる こ と によ り 、 点火コイルをコアの磁化曲線の飽和点以下で動作させるも のである。 このマグネ ッ トは、 センタ コア 1 の一端にだけ配置しても よ い。 2 4 はセンタ コア 1 の軸方向の熱膨張を吸収する弾性体 (例えばゴ ム) である。
第 2 図に示すよ う に二次ポビン 2 に内挿されるセンタ コア 1 と二次ボ ビン 2 間には、 いわゆる軟質エポキシ樹脂 (可撓性エポキシ) 1 7 が充 填され、 二次ボビン 2 , 二次コ イル 3 , 一次ポピン 4 , 一次コ イル 5, コ イルケース 6 の各構成部材同士の隙間に硬質のエポキシ樹脂 (熱硬化 性エポキシ樹脂) 8 が充填されている。
軟質エポキシ樹脂 1 7 は、 ガラス転移点が常温 ( 2 0 °C ) 以下で、 ガ ラス転移点以上では弾性のある柔らかい性質 (エラス トマ一) を有する エポキシ樹脂であ り 、 例えばェポキシ樹脂と変性脂肪族ポ リ ア ミ ンの混 合物である。
センタ コア 1 , 二次ボビン 2 間の絶縁用樹脂を軟質エポキシ樹脂 1 7 と したのは、 いわゆるペンシルコ イ ル (プラ グホール内装着式の独立点 火形の点火コィル) が厳しい温度環境 (一 4 0 t 〜 1 3 0 °C程度の熱ス ト レス) にさ らされる こ と に加えて、 センタ コ ア 1 の線膨張率 ( 1 3 x 1 0 - 6 ) と硬質エポキシ樹脂の線膨張率 ( 4 0 X 1 — 6 ) との差が大きい ため、 通常の絶縁用エポキシ樹脂 (軟質エポキシ樹脂 1 7 よ り も硬質の エポキシ樹脂組成物) を用いた場合には、 ヒー トショ ッ ク (熱衝撃) に よ り エポキシ樹脂にク ラ ッ ク が生じ、 絶縁破壊が起こ る心配がある ため である。 すなわち、 このよ う なヒー ト シ ョ ッ ク に対処するため、 熱衝撃
吸収に優れた弾性体で絶縁性を有する軟質エポキシ樹脂 1 7 を用いた。 こ こで、 二次ポビン 2 について説明する。 本実施例の二次ポビン 2 は、 次の知見の下に成立したものである。
①二次ボビン 2 は、 〔二次ボビン 2 の許容応力 σ 0 〉 (一 4 0 °C —軟質 エポキシ樹脂 1 7 のガラス転移点 T g ) での発生応力 σ 〕 の条件を満足 する こ と。 こ こでは、 一例と して、 軟質エポキシ樹脂 1 7 のガラス転移 点が T g =— 2 5 °Cのものを例示する。
例えば、 軟質エポキシ樹脂 1 7 のガラス転移点が T g ==— 2 5 °Cであ る場合には、 二次ボビン 2 力 1 3 0 °Cから 一 4 0 °Cに温度変化する環境 に置かれて内燃機関運転停止後の温度降下によ り収縮した時に、 1 3 0 °C〜 一 2 5 °Cの範囲では二次ボビン 2 の収縮が軟質エポキシ樹脂 1 7 の 弾性吸収によ り 受け入れられるため、 二次ポビン 2 内部に生じる熱応力 σ のう ちセンタ コア 1 側から受ける分 σ 3 は実質無応力である。 ただ し 全体的にみれば、 二次ボビン 2 が熱収縮し ょ う とすると、 二次ボビン 2 よ り線膨張率 (熱膨張係数) の小さ い一次コ ィル 5 , 二次コ イル 3 が硬 質エポキシ樹脂 8 を介して二次コ イ ル 3 の熱収縮を抑えよ う とする。 換 言すれば、 一次コイル 5及び二次コ イル 3 は、 二次ポビン 2 に対して相 対的に周方向に引っ張リ カを与える。 それによ つて、 一次コ イル 5 か ら 作用する熱応力分 σ 1 と二次コ イル 3 から作用する熱応力分 σ 2 を合わ せたものが二次ボビン 2 の内部応力 σ の主な要素となる。
一 2 5 °C〜― 4 0 °Cの温度範囲では、 軟質エポキシ樹脂 1 7 がガラス 状態に移行し、 それによ リ ニ次ポビン 2 の収縮 (変形) はセンタ コ ア 1 側からも阻止されるので、 二次ポビン 2 の内部には、 上記した一次コ ィ ル, 二次コイルによ って与え られる熱応力分 σ 1 , σ 2 に、 センタ コ ア 側からの力によ って与え られる熱応力分 σ 3 が加わ り 、 これらの σ 1 ,
σ 2 , σ 3 をあわせた応力が二次ボビン 2 の内部応力 σの主たる要素と なる。
二次ポビン 2 に生じる熱応力 σは、 σ = Ε · ε = Ε · a · Tと して表 せる。 Εは二次ポビン 2 のヤング率、 ε はひずみ、 αは二次ポビンの線 膨張率、 Τは温度変化 (温度差) 。 二次ポビン 2 の許容応力 σ 0 が発生 応力 σ よ り 大きい場合には ( σく σ 0 ) 、 二次ポビン 2 は破壊しない。 ②二次ポビン 2 は、 エポキシ樹脂 8 と接着性の良い材料を選定する こ と( エポキシ樹脂 8 との接着性が悪い場合は、 二次ボビン 2 とエポキシ樹脂 8 の間に剥離が生じ、 絶縁破壊の心配がある。
こ こ で、 絶縁用樹脂とポビン材の間に剥離 (絶縁用樹脂のク ラ ッ ク も 含む) が生じた場合の絶縁破壊のメ カニズムについて第 8 図を用いて説 明する。
第 8 図は内二次コ イ ル構造のペンシルコイルの一部を拡大して示し、 二次ボビン 2 の外表面に二次コ イル 3 を分割巻きする ための鍔 (各スプ ールエリ アを設定する ための鍔) 2 Βが軸方向に間隔を置いて複数配設 されている場合の一部拡大断面図である。
エポキシ樹脂 8 のう ち、 二次ボビン 2 ' —次ボビン 4間に充填される エポキシ樹脂 8 は、 樹脂注入 (真空注入) によ り 、 二次コイル 3 , 一次 ポビン 4間の他に二次コ イル 3 の線間に浸透されて二次ポビン 2 の外表 面に至る。 ま た、 センタ コア 1 ' 二次ボビン 2 との間には、 既述のよ う に軟質エポキシ樹脂 1 7 が充填されている。
この場合、 絶縁用樹脂と二次ポビン, 一次ボビンとの密着強度 (接着 強度) が弱ければ、 符号ィ で示すよ う に二次ポ ビン 2 と二次コ イル 3 間 に浸透の絶縁用樹脂 8 との間、 及び符号口で示すよ う に二次ポビン鍔 2 Β と絶縁用樹脂 8 と の間に剥離が発生する。 ま た、 符号ハに示すよ う
に絶縁用樹脂 8 と一次ポビン 4 の間や、 符号二に示す絶縁用樹脂 1 7 と 二次ポビン 2 の間も剥離が生じる可能性領域と考え られている。
符号ィ で示す位置に剥離が発生すると、 剥離した箇所 (空隙) を通じ て二次コ イル 3 の線間電圧によ リ電界集中が発生し、 二次コイル 3 の線 間に部分放電ひいては発熱、 二次コ イルの線材のエナメル被覆が焼損し て レア一ショ ー トが発生する。 ま た、 符号口で示す位置に剥離が発生す ると、 二次コイ ル 3 の隣接する分割巻きエリ ア間の線材.同士に電界集中 が発生し、 上記同様の部分放電によ り レアーシ ョ ー トが発生する。 符号 ハに示す位置に剥離が発生すると二次コ イル 3 · —次コ イル 5 間に絶縁 破壊が発生し、 符号二示す位置に剥離が発生する と二次コ イル 3 ' セン ターコア 1 間に絶縁破壊が発生する。
本実施例では、 上記 ' の条件を満足させるために、 二次ポビン 2 の材 料と してエポキシ樹脂と接着性に優れた変性 P P E を用いている。 この 材料は、 強度確保のために、 無機物 (ガラスフ イ ラ一, マイ 力等) が含 有されているが、 さ らに、 本実施例では、 上記 · の条件を満足させるた め、 すなわち、 二次ボビンの線膨張率 α をできるだけ小さ く し、 ひいて は熱応力 (内部応力) σ を小さ く するため、 及び上記した許容応力 σ θ 〉 σ を実現する ために、 無機物を 2 0重量%以上、 よ り 好ま し く は 3 0 重量%以上混入させている。 ま た、 二次ポビン 2 の射出成形性を確保す るためには、 樹脂の溶解状態での流動性を向上させる必要があ り 、 無機 物はガラスフ ィ ラーなどの繊維系のものだけではな く 、 非繊維状無機物 であるマイ 力 を混入 している。
第 1 0 図に本実施例における二次ボビン 2 の一部を半分に割っ た断面 斜視図を示し、 本実施例の二次ポビン 2 の成形時の樹脂流動方向は、 ボ ビンの軸方向に してあ り 、 ポビンの径方向及び周方向が二次ボビンの樹
脂流動方向に対して直角方向となる。 第 1 1 図は第 1 0 図の P部を模式 的に拡大した図であ り 、 充填材であるガラス繊維は樹脂流動方向に向い てお り 、 したがって軸方向の二次ポビンの線膨張率は、 これに直角な径 方向及び周方向に較べて充分に小さい。 樹脂の流動性を損なわず径方向 及び周方向の線膨張率を小さ く したい場合には、 ガラス織維に加えて非 繊維状の充填材 (例えばマイ 力, タルク等) を混入 して、 径方向及び周 方向の線膨張率をできるだけ小さ く する必要がある。 二次ボビン 2 は内 部応力 (熱応力) σ に耐えるためには、 ポビンの周方向 (樹脂流動方向 に対して直角方向) の線膨張率をできるだけ小さ く する必要がある。 第 1 3 図に二次ポビン 2 を変性 Ρ Ρ Ε (ガラス繊維 2 0重量%ベース) と した場合のマイ 力含有量と樹脂流動方向に対し直角方向の線膨張率 ( A S T M D 6 9 6 に準ずる試験方法で— 3 0 。C 〜 ― 1 0 °Cの平均の 線膨張率) の関係を示す。 図中の E — 6 は 1 0 — 6を表す。 この場合、 無 機物の充填材は全体的には 2 0重量% (ガラス繊維 2 0 重量%、 マイ 力 0 重量% ) で線膨張率が約 7 0 X 1 0 6 (試験例では 6 6 · 8 X 1 0 ―6 ) とする こ とがで き、 ま た、 ガラス繊維 2 0重量%, マイ 力 2 0重量%で 線膨張率が約 5 0 1 0 —6 (試験例では 4 9 . 3 ズ 1 0 —6 ) , ガラス織維 2 0重量%, マイ 力 3 0重量%で約 4 0 X 1 0 — 6 (試験例では 3 9 . 6 X 1 0 ) の線膨張率が得られた。 例えば、 線膨張率を約 4 0 〜 5 0 x 1 0― 6程度に抑える こ と を意図する場合には、 ガラ ス繊維が 2 0 重量% の場合にはマイ 力は 2 0 〜 3 0重量%となるが、 ガラス繊維が 1 5 〜 2 5重量%程度の場合に線膨張率を 4 0 〜 5 0 X 1 0 — 6程度に抑えたい 場合には、 マイ 力は 1 5 〜 3 5重量%程度必要と される。 具体的には、 変性 Ρ Ρ Εが 4 5 〜 6 0 重量%, ガラス繊維が 1 5 〜 2 5 重量%, マイ 力力 1 5 〜 3 5重量%である。 その最適例と して、 本実施例では、 二次
ポビン 3 は、 変性 P P Eが 5 5重量%, ガラス繊維が 2 0重量%, マイ 力が 3 0重量%と している。 第 1 3 図に示すよ う にマイ 力含有量と直角 方向の線膨張率は略比例関係にある。
なお、 無機物 5 0 %入り変性 P P E は、 線膨張率 α が成形時の樹脂流 動方向では一 3 0 °C〜 1 0 CTCの範囲で 2 0 〜 3 0 X 1 0— 6である。
こ こ で、 二次ボビン 2 の強度を確保するためには、 ポビンの肉厚が厚 い方が有利である こ とはいう ま でもないが、 ペンシルコイルは一般的に φ 1 9 〜 φ 2 8 miii程度の細いプラ グホールに内揷する必要があるため、 内挿されるコ イル部の外径はサイ ドコアを含めて ø 1 8 〜 0 2 7 mm程度 となる。 こ の狭い空間の中で、 コ イルケース 6 , 一次コイル 5 , 一次ボ ビン 4 , 二次コイル 3 , 二次ポビン 2 , セ ンタ コア 1 等の構成部材間ゃ 構成部材自身の空隙にボイ ド等の欠陥をな く すエポキシ樹脂 8 を充填す る必要がある。 したがって、 各部の肉厚は極力少な く する こ とが望ま し レヽ
本実施例では、 一次ボビン肉厚 0 . 5 mm〜 1 . 2 mm, 二次ボビン肉厚 0 . 7 〜 1 . 6 mmと し、 ま た、 ポビンの長さ は 5 0 〜 1 5 0 mmとする。 二次ポビン 2 に巻かれる二次コ イ ル 3 は線間にエポキシ樹脂 8 が含浸 した状態で線膨張率が— 4 0 °Cで約 2 2 X 1 0 6 であ り 、 ま た、 一次 ポビン 4 に巻かれる一次コイル 4 は線間にェポキシ樹脂が含浸した状態 で線膨張率が— 4 0 °Cで約 2 2 X 1 0 6程度である。 なお、 本明細書の 線膨張率は、 A S T M D 6 9 6 に準ずる試験方法によるものである。
二次コ イル 3 は、 線径が 0 . 0 3 〜 0 . 1 mm程度のエナメル線を用いて 合計 5 0 0 0 〜 3 5 0 0 0 回程度分割巻き されている。 一方、 一次コ ィ ル 5 は、 線径 0 . 3 〜 1 . 0 mm程度のエナメル線で、 一層あた り数十回ず つ数層 ( こ こ では 2層) にわた り 合計 1 0 0 〜 3 0 0 回程度巻き回され
ている。 一次コ イル 5 の外被構造については、 後述する。
一次ボビン 4は、 ゴムを含有する P B Tよ り なる。 P B T を用いた理 由は、 エポキシ樹脂 8 の線膨張率と同等か或いは ± 1 0 %の範囲の線膨 張率にするためであ り 、 ま た、 ゴムを含有する こ とでエポキシ樹脂 8 と の密着性が増すためである。 具体的には、 その組成は、 例えば、 P B T が 5 5重量%, ゴムが 5重量%, ガラス繊維が 2 0重量%, 板状エラス トマ一が 2 0重量%である。 なお、 一次ボビン、 二次ポビンの両方を P P S材で形成して ト 一タルコ ス ト を下げる こ と も可能である。
一次コ イル 5 には、 第 9 図の模式図に示すよ う に銅線 ( 0 5 0 0 〜 8 0 0 m の回 り に厚さ 1 0 〜 2 0 mの絶縁体 (例えば、 エステル イ ミ ド, ア ミ ドイ ミ ド, ウ レタ ン等) の被覆 5 Aのほかに、 さ らにその 外に一次コ イル 5 と一次コ イル周囲に充填されている絶縁用樹脂 (ェポ キシ樹脂) 8 との間を剥離し易 く した被覆 (オーバーコーティ ング) 5 Bが施されている。 このオーバーコーティ ング 5 Bは、 上記絶縁体 5 Aと同 じ材料に滑り性を良く するナイ ロ ン, ポリ エチレ ン, テフ ロ ン 等のいずれかを数%添加するものであ り 、 その厚さは 1 〜 5 μ の被膜 である。
このよ う に、 一次コ イル 5 に、 あえてエポキシ樹脂 8 との密着性が良 く ないオーバーコーティ ング 5 Β を施す理由は、 二次ボビン内部に生じ る応力 σ のう ち一次コ イル 5 と二次ポビン 2 の熱収縮差 (線膨張率差) によ って二次ポビン内部に生じる応力分 σ 1 を減少させるため (上記条 件 · を満足させるため) である。
すなわち、 上記ォ一バーコ一ティ ング 5 Βの存在によ って、 第 4 図に 示すよ う に一次コ イル 5 とその周囲にあるエポキシ樹脂 8 との間に剥離 部 (空隙) 5 0 が生じ、 剥離部 5 0 は、 一次ボビン 4 · 一次コ イル 5 間
に充填されるエポキシ樹脂 8 と一次コ イル 5 との間や一次コイル 5 の層 間にもエポキシ樹脂 8 と共存する こと になる。 なお、 第 4図は第 2 図の C部拡大断面図であ り 、 C部に相当する箇所を撮影した顕微鏡断層写真 (倍率 3 0倍〜 4 0倍) を基に して作図 したものである。
このよ う に一次ポビン 4 と一次コイル 5 との間や一次コイル 5 の層間 に空隙 (剥離部) 5 0 を介在させる こ とで、 一次コイル 5 から二次ポビ ン 2 に作用する周方向の引 っ張リ カ (一次コイル · 二次ボビンの熱膨張 差に基づく 引 っ張リ カ) の経路を遮断する こ とが可能になる。 したがつ て、 二次ボビン内部に生じる応力 σ のう ち一次コ イルの存在によ り 与え られる応力分 σ ΐ を減少させる こ とで、 σ を 2 0 %以上小さ く (緩和) する こ とが可能になる。 ま た、 変性 Ρ Ρ Εの線膨張率を上記したよ う に 無機物充填物の 2 0 %以上の配合によ り 、 二次ポビンの材質改善からの 内部応力 (熱応力) の減少も図る こ とができ、 本発明者らの C A E解析 例によれば、 二次ポビン 2 の周方向 (ボビン成形の樹脂流動方向に対し て直角方向でもあ り 、 こ こでは Θ 方向と称する こ ともある ) の発生応力 σ を、 上記の空隙 5 0 の応力緩和作用との相乗作用によ り 、 大幅に減少 させる こ とができる。
第 1 2 図に、 本実施例における二次ポビンの樹脂流動方向 (ポビン軸 方向) に対し直角方向の線膨張率と二次ポビンの発生応力 ( Θ 方向) と の関係を示す。
第 1 2 図の二次ボビンの発生応力 (熱応力) は、 C A E解析ソフ ト を 用いて、 ィ グニシ ヨ ンコ イルの三次元モデルを作成し、 各部品の材料物 性値 (線膨張率, ヤング率, ポアソ ン比) をそれぞれ入力 し、 エポキシ が硬化する時の温度 1 3 0 °C時の発生応力を 0 と し、 一 4 0 °C時に発生 する Θ 方向の内部応力を求めたものである。 ただ し、 物性値における線
膨張率は、 一 4 0 °Cの近似値と して、 — 3 0 °C〜― 1 0 °〇の平均が 3 5 〜 Ί 5 X 1 0— 6の二次ポビン材料のものを用いた。
第 1 2 図において、 実線 Aが本実施例に相当するもので (一次コ イル の周囲に上記した剥離部 5 0 を設けたもの) 、 第 1 3 図で例示した二次 ポビン材 (第 1 2 図のガラ スフ ィ ラー 2 0重量%ベースで、 マイ 力 0重 量パーセン ト, 2 0重量パーセン ト, 3 0重量パーセン ト ) を意識し、 その二次ポビンの線膨張率の近似値と して、 一 3 0 °C〜一 1 0 °Cの平均 力、' 3 5 〜 7 5 X 1 0 — 6のものを用い、 具体的には約 4 0 x 1 ◦ — 6 (厳密 には 3 9. 6 X 1 CI—6 ) , 約 5 0 X 1 0—6 (厳密には 4 9. 3 x 1 0— 6), 約 7 0 X 1 0— 6 (厳密には 6 6. 8 X 1 0— 6 ) と、 裕度と して 3 5 x 1 0 — 6及び 7 5 X 1 0— 6の計 5 つの二次ポビンの Θ 方向の— 4 0 °C時近 似線膨張率を用いて C A E解析を行っ たものである。
その解析結果、 二次ポビンが近似— 4 0 °C時(一 3 0 °C 1 0 °C時) の線膨張率の平均が 3 5 〜 7 5 X 1 0 6の場合 (平均の下限値 3 5 は二 次ボビンの成形可能な無機物充填配合量の制約に基づく ものである ) に は、 二次ポビンの発生応力が 7 0 M P a 〔本発明者らが目安とする二次 ポビンの内部応力 (熱応力 ) の許容上限〕 以下になる解析結果が得られ た。
この発生応力 7 O M P a以下は、 本発明者らの C A E解析によるもの であるが、 その数値の根拠は、 第 1 4図で示すよ う にこの種の内燃機関 用点火コイルの耐久性を充分に満足させる熱サイ クル試験 ( 1 3 0 °C〜 一 4 0 °Cの温度変化を 3 0 0 回繰り 返す試験) に合格する ためのもので ある。 第 1 4図は、 二次ポ ビン 2 の発生応力と熱サイ クル数の特性試験 図であ り 、 横軸に熱サイ クル数を示し、 縦軸は発生応力を示し、 7 0 M P a以下が熱サイ クル 3 0 0 回数以上でも二次ポビン 2 にクラ ッ クが
生じないと こ ろである。
なお、 第 1 2 図における実線 Bは、 一次コ イルの周囲に上記した剥離 部 5 0 を設けない点火コイ ルにおいて、 S 方向の線膨張率を実線 A同様 に設定した場合の二次ポビン発生応力の解析結果を示す比較例で、 この 場合には、 いずれも二次ポビンの周方向の発生応力が 8 0 M P a以上と なるものである。
なお、 上記のよ う な剥離部 5 0 を一次ポビン 4 と一次コ イル 5や一次 コイル 5 の層間との間に設けても、 一次コ イル 5 は低電位 (ほ 接地電 位) であるので、 一次コ イル 5 同士での電界集中が発生せず、 ま た、 二 次コ イ ル 3 ' エポキシ樹脂 8 ' —次ポビン 4間が隙間な く 密着していれ ば、 一次コ イル · 二次コイル間の絶縁を充分に確保でき、 しかも、 二次 コイルの線間電圧による電界集中防止を充分に図れる こ とが本発明者ら の試験結果、 確認されている。
特に、 本実施例では、 一次ポビン 4 にゴム入 り の P B T を用いる こ と で、 エポキシ樹脂 8 との密着性を増 し、 それによ り 一次ボピン 4の内径 側ではエポキシ樹脂 8 との剥離が確実に防止され、 上記した二次コ イル 3 · エポキシ樹脂 8 · —次ボビン 4 間の密着性を保持して良好な絶縁性 能を発揮する こ とができる。
なお、 一次ポビン 4 は、 P P S (ポ リ フ エ二レンサルフ ァイ ド) , 変 性 P P E等の熱可塑性樹脂を用いても よい。
コ イルケース 6 は、 P B T, P P S , 変性 P P E等の熱可塑性樹脂が 用い られる。 コイルケース 6 の外側面にはサイ ドコア 7 が装着される。 サイ ドコア 7 は、 センタ コア 1 と協働して磁路を構成するもので、 0. 3 nm〜 0 . 5 mm 程度の薄い珪素鋼板或いは方向性珪素鋼板を管状に丸めて 成形される。
2 0 はコイルケース 6 の上部に結合された点火回路ュニッ ト (ィ ダナ イ タ ) であ り 、 ユニッ トケース 2 0 a内に点火コイルを駆動するための 電子回路 (点火駆動回路 2 3 ) が内装され、 外部との接続コネクタ部 2 1 がュニッ トケース 2 0 a と一体に成形されている。
本実施例の点火駆動回路 2 3 は、 最終的には トラ ンスフ ァモール ドさ れるもので、 第 7 図 ( a ) にその単独製品の正面図、 ( b ) に上面図を 示し、 ( c ) に トラ ンスフ ァモール ドする前の端子 3 3 .付きのベース
(基板) 3 1 に点火駆動回路用のハイ プリ ッ ド I C 3 0 a とパワー素子
(半導体チッ プ) 3 O b と を搭載した状態を示す。 第 7 図 ( a )〜( c ) に示すよ う.にベース 3 1 にノヽイ ブリ ッ ド I C 3 0 a とパワー素子 3 0 b と を搭載後に トラ ンスフ ァモール ド 3 2 が施される。
第 6 図にこの トラ ンスフ ァモール ドされた点火駆動回路 2 3 をュニ ッ トケース 2 0 a 内に搭載した状態を示し、 こ の搭載時に点火駆動回路 2 3 の端子 3 3 とュニ ッ トケース 2 0 a側のコネク タ端子 2 2 との接続 後にュニ ッ トケース 2 0 内にエポキシ樹脂 8 の注入硬化が行われる。 第
1 図では、 こ のエポキシ樹脂 8 をュニ ッ トケース 2 0 a内に充填した状 態を示し、 ト ラ ンスフ ァ モール ドされた点火駆動回路 2 3 は透視状態で 図示してある。 点火駆動回路 2 3 はエポキシ樹脂 8 によ り埋設される。 本実施例では点火駆動回路 2 3 のう ちパワー トラ ンジスタ以外の回路 要素でチップ化にな じ ま ないもの、 例えば、 ノ イズ防止用コ ンデンサ
(図示省略) はペンシルコ イル外部に外付けされる。 このノ イ ズ防止用 コ ンデンサは、 図示されない電源線とアース間に配置され、 点火コ イル の通電制御によ リ 発生する ノ イ ズを防止する。
このよ う な トラ ンスフ ァ モ一ル ドされた点火駆動回路 2 3 を採用する こ とで、 点火駆動回路 2 3 の 1 チッ プ I C化を図る こ とがで き、 製造ェ
程簡略化によ リ コ ス ト低減, 入力電流を小さ く できる等の利点がある。
1 1 は高圧ダイ オー ド、 1 2 は板ばね、 1 3 は高圧端子、 1 4は点火 プラグ接続用のスプリ ング、 1 5 は点火プラグ接続用のゴムブーツであ る。 高圧ダイ オー ド 1 1 は、 二次コイル 3 で発生した高電圧を板ばね
1 2 , 高圧端子 1 3 , スプリ ング 1 4 を介して点火プラグに供給する場 合に過早着火を防止する役割をなす。
本実施例の主な作用, 効果は次の通り である。
( 1 ) プラ グホール内に装着されて過酷な温度環境にさ ら される独立点 火形の点火コ イ ルであっても、 二次ポピンに生じる内部応力 (熱応力) σ を小さ く する こ とができる。
したがって、 本実施例によれば、 二次ポビンの内部応力 σ を大幅に減 少させて、 二次ポビンのク ラ ック防止(縦割れ防止) を確実に図る ことが できる。 試験的には、 1 3 0 〜ー 4 0 の温度変化を繰り返し 3 0 0 回与えて、 二次ボビン 2 を観察したと こ ろ、 二次ポビン 2 に損傷は発生 してお らず、 健全性が維持されている こ とが確認された。
( 2 ) ま た、 上記のよ う に空隙 5 0 を設けたと しても、 二次ポビン 2 に 対するエポキシ樹脂の接着性 (密着性) 及び一次ボビン 4の内側に対す るエポキシ樹脂との接着性が良好であるので、 絶縁性に支障な く 、 信頼 性の高いペンシルコイルを提供する こ とができる。
なお、 上記実施例では、 一次コイル 4 とその周囲の絶縁樹脂 8 との間 で隙間 5 0 を形成する力^ そのほか、 第 5 図に示すよ う に一次ボビン 4
' 一次コイル 5 間に充填される絶縁用樹脂 (エポキシ樹脂) 8 と一次ボ ビン 5 との間に空隙部 (剥離部) 5 1 を形成しても、 上記した本実施例 の効果 ( 1 ) を期待する こ とができる。
例えば、 第 5 図の実施例では、 一次ポビン 4 のう ち一次コイル 5 を巻
く 側のポビン表面 (ポビンの外側の表面) に、 該ポビン表面と このポビ ン表面に接するエポキシ樹脂 8 との間を剥離し易 く したォ一バーコーテ イ ング 4 A (被膜或いは被覆) を塗布する こ とで、 空隙部 5 1 を確保し ている。 オーバーコーティ ング 4 Aの材質は、 既述したオーバーコーテ イ ング 5 B と同様の材質である。 ま た、 一次ボビンの外側の表面に上記 したよ う なォ一バーコ一ティ ングではな く 、 エポキシと接着力の弱いシ — 卜を貼り 付けるなど しても よい。
ま た、 上記隙間 5 0 , 5 1 の双方を設けても よい。
第 1 5 図は本発明の他の実施例を示す一部省略断面図であ り 、 図示し ないがー次ボビン 4 と一次コ イル 5 との間、 或いは 及び、 一次コ イル 5 の層間に上記同様の応力緩和用の隙間 (剥離部) 5 0 , 5 1 を設けて お り 、 ま た、 その構成は、 以下の点を除いて前述した実施例と同様であ る。 前述の実施例と同一の符号は同一或いは共通する要素を示す。
すなわち、 前述の実施例と異なる点は、 センタ コア 1 と二次ポビン 2 との間に軟質エポキシ樹脂 1 7 を注入させるものではな く 、 これに代わ るものと して、 センタ コ ア 1 は、 二次ボビン 2 の内側に配置される前に 予め弾性を有する絶縁部材 6 0 、 例えばシ リ コ ン ゴム, ウ レタ ン, ァク リ ル樹脂等によ リ被覆され、 この被覆されたセンタ コアが二次ポビン 2 内に配置されてセンタ コア 1 と二次ボビン 2 間に硬質エポキシ樹脂 8 が 充填されている。
本実施例によれば、 前.記第 1 実施例と同様の効果を奏するほかに、 次 のよ う な作用, 効果を奏する。 セ ンタ コア 1 と二次ポビン 2 間の熱衝撃 を弾性部材 (センタ コアコ ーティ ング) 6 0 が吸収する こ とで、 二次ボ ビン 2 の熱応力 σ を小さ く する こ と に貢献でき、 しかも、 軟質エポキシ 樹脂を狭隘な二次ボビンとセンタ コ ア間に注入硬化作業 (真空中での注
入硬化) に比べて、 そのセンタ コアコ 一ティ ング 6 0は単品で行う こ と ができ、 ま た、 このコーティ ング付きのセンタ コア 1 を二次ポビンに内 揷後に行うセンタ コア · 二次ポビン間の通常の硬質エポキシ樹脂の注入 硬化は軟質ェポキシに比べて粘性が低いために容易に行う ことができる ので、 作業コ ス トの低減を図れ、 しかも、 センタ コアから発生する磁気 振動の吸収も効果的で低騒音化を図れる利点を有している。
本点火コイルは、 特開平 10— 325384号公報の図 5 に示す回路で構成さ れ、 同公報の図 8のよ う に動作する。
一次コ イル 5 には、 第 9図の模式図に示すよ う に銅線 ( 0 5 0 0〜 8 0 0 μ m ) の回 り に厚さ 1 0〜 2 0 μ πιの絶縁体 (例えば、 エステル イ ミ ド, ア ミ ドイ ミ ド, ウ レタ ン等) の被覆 5 Α, 5 Βが施されている , 本実施例では、 第一被覆 5 Αはエステルイ ミ ド, 第二被覆 5 Βはア ミ ド イ ミ ドの 2層コーティ ングである。
第 1 6図の模式図に示すよ う に外側の被覆 5 Βにエポキシ樹脂と親和 しないま たは化学反応 しない成分 5 C (例えば、 ナイ ロ ン, ポ リ エチレ ンゃポ リ プロ ピレンなどのポリ オレフ イ ン, フ ッ素系樹脂, フ ッ素系ェ ラス トマー, フ ッ素系ゴム, ワ ッ ク ス, 脂肪酸エステル) を含有してい る。 本実施例では、 特に脂肪酸エステルについて説明する。 脂肪酸エス テルは、 低分子量ポ リ エチレ ンに比べ、 被覆焼き付け前のワニス状態で は、 分散性が良く 、 被覆焼き付け時には、 ア ミ ドイ ミ ドょ リ融点が低い ため被 面に浮き ti^ く る。 さ らに脂肪酸エステルは、 無極性炭化水 素成分 ( C H2 C H2 ) を有してお り 、 エポキシ樹脂と親和 しない。
このため、 一次コイル表面とエポキシ樹脂との接着力が弱 く なる。 ァ ミ ドイ ミ ド層の厚さは、 0. 0 5 〜 5 μ mであ り 、 脂肪酸エステルは、 重量パーセン トでア ミ ドイ ミ ドを 1 0 0 %とすると、 2〜 1 0 %である
2 %未満では、 剥離の効果が少な く 、 1 0 %を超えると耐熱性が下がる c 尚、 絶縁樹脂に親和 しないま たは化学結合を しない成分と して、 ナイ ロ ンやフ ッ素系を用いる場合は、 焼付工程が増えるため、 コス ト U P に つながる。
上記の如く 、 一次コ イル 5 の被覆 5 B に、 あえてエポキシ樹脂 8 と相 溶しない成分 5 C を含有させる理由は、 二次ポビン内部に生じる応力 σ のう ち一次コ イル 5 と二次ポビン 2 の熱収縮差 (線膨張.率差) によ って 二次ボビン内部に生じる応力分 σ 1 を減少させるため (上記条件①を満 足させるため) である。
さ らに、 二次コ イルと二次ポビンの界面に働く 熱応力による剥離を低 減する こ とができる。
以上のよ う に、 プラグホール内に装着されて過酷な温度環境にさ らさ れる独立点火形の点火コ イルにおいて、 構成部材間の線膨張率差に基づ く 二次ポビンの熱応力を緩和 して、 二次ポビンの割れ防止の確実性を図 り 、 電気的絶縁の健全性を保持して この種点火コ イル装置の高品質, 高 信頼性を図る こ とができる。