JPH11111545A - 内燃機関用点火コイル - Google Patents

内燃機関用点火コイル

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JPH11111545A
JPH11111545A JP9357011A JP35701197A JPH11111545A JP H11111545 A JPH11111545 A JP H11111545A JP 9357011 A JP9357011 A JP 9357011A JP 35701197 A JP35701197 A JP 35701197A JP H11111545 A JPH11111545 A JP H11111545A
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一豊 大須賀
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 温度変化に伴う絶縁破壊を防止し、所望の高
電圧を発生する点火コイルを提供する。 【解決手段】 一次スプール23は二次コイル22の外
周に配設されている。薄膜フィルム51は、一次スプー
ル23と一次コイル24との間に介在し、一次スプール
23および一次コイル24を構成する線材間に浸透して
いるエポキシ樹脂26の両方との接着力が小さい。した
がって、周囲温度の変化に伴い薄膜フィルム51の内周
部と外周部とが互いに拘束しないように別々に膨張およ
び収縮できるので、膨張および収縮時に薄膜フィルム5
1よりも外周側の部材から内周部に加わる力を低減でき
る。これにより、例えば二次スプール21に亀裂が生じ
ることを防止できるので、二次コイル22とコア12間
の絶縁が破壊されることを防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関用点火コ
イルに関し、特にプラグホールに直接搭載するスティッ
ク状の内燃機関用点火コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のスティック状の内燃機関用点火コ
イルとして、一次コイルおよび二次コイルを巻回した樹
脂製のスプールを棒状のコアの外周に配設し、コア、各
コイル、および各コイルを巻回したスプールを収容する
点火コイルのハウジング内に絶縁材として樹脂を充填す
るものが知られている。ハウジング内に充填する樹脂は
絶縁材としてだけではなく、コイルの線材間に浸透しコ
イルの巻線崩れを防ぐ役割を果たしている。
【0003】さらに、線膨張率の異なるコイルとスプー
ルとが温度変化により膨張および収縮しても、コイルと
スプールとが剥離し剥離部に沿ってコイルを構成する線
材間で放電が発生しないように樹脂絶縁材とスプールと
は接触面で接着力を有する材質が選択されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、絶縁材と
して樹脂を充填した点火コイルでは樹脂絶縁材により各
部材が互いに接着されているので、周囲温度の変化に伴
い線膨張率の異なる各部材が膨張および収縮するときに
各部材が互いに拘束力を受ける。この際、外周側よりも
内周の部材の方が大きな力を受けるので、内周側部材に
ひずみが生じやすい。
【0005】このように膨張および収縮に伴う拘束力が
部材同士に働くと、例えばスプールにひずみ発生し、こ
のひずみが繰り返し発生するとスプールに亀裂が発生す
ることがある。スプールに亀裂が生じると、この亀裂に
沿ってコイルの線材間で放電が発生することがある。一
次スプールおよび二次スプールのうち内周に配設される
内周スプールは、前述したように外周スプールよりも大
きな力を受けるので内周スプールに亀裂が生じやすい。
内周スプールに亀裂が生じると、内周コイルと例えば低
電圧側のコアとの間で放電が発生しやすくなる。そし
て、内周スプールの亀裂に沿って内周コイルとコアとの
間で放電が発生すると内周スプールだけでなく内周コイ
ルとコアとの間に充填されている樹脂絶縁材による内周
コイルとコアとの間の絶縁が破壊される恐れがある。
【0006】さらに、内周コイルが二次コイルである場
合、コアと二次コイルとの電位差は大きいので二次コイ
ルとコアとの間で絶縁破壊が生じやすくなる。一次コイ
ルまたは二次コイルとコアとの間で絶縁破壊が生じる
と、二次コイルから点火プラグに印加される高電圧が低
下し、点火プラグにおいて良好な火花が発生しないとい
う問題が生じる。
【0007】また、温度変化に伴い部材同士に働く力は
コアと内周スプールとの間に充填される樹脂絶縁材とコ
アとの接触部にも働くので、コアと接する樹脂絶縁材に
亀裂が生じることがある。すると、内周コイルとコアと
の間で放電が発生しやすくなり、内周コイルとコアとの
間で絶縁破壊が発生する恐れがある。また、プラグホー
ルに直接搭載するスティック状の点火コイルは径の大き
さに厳しい制約があるので、点火コイル内の絶縁を保持
しつつ小径化を図るためには、可能な限り部材を省略す
る必要がある。しかし、従来の点火コイルのように、ス
プールにコイルを巻回した構造体を内周側および外周側
に配設する構成では小径化に限度がある。
【0008】本発明の目的は、温度変化に伴う絶縁破壊
を防止し、所望の高電圧を発生する点火コイルを提供す
ることにある。本発明の他の目的は、製造コストを低減
し、小径化可能な点火コイルを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1、2ま
たは5記載の点火コイルによると、点火コイルの内周部
と外周部とが温度変化に伴いそれぞれ別々に膨張および
収縮可能に分離されていることにより、大きな力が働き
やすい内周部においてスプールや樹脂絶縁材に亀裂が発
生することを防止する。したがって、例えば内周スプー
ルに亀裂が発生することによりこの亀裂に沿って内周コ
イルを構成する線材間で放電が発生することを防止でき
る。また、内周スプールに生じた亀裂に沿って内周コイ
ルと例えば低電圧側のコアとの間で放電が発生すること
を防止できるので、内周コイルとコアとの間の絶縁破壊
を防止し、所望の高電圧を発生することができる。
【0010】さらに、コアと接する樹脂絶縁材に亀裂が
生じることを防止し、内周コイルとコアとの間で絶縁破
壊が発生することを防止できる。本発明の請求項3記載
の点火コイルによると、一次スプールと低電位の一次コ
イルとの間に分離部材を介在させることにより分離部材
に高電位が加わらないので、分離部材自体の絶縁破壊を
防止できる。
【0011】本発明の請求項4記載の点火コイルによる
と、一次スプールが分離部材を兼ねることにより分離部
材を新たに設ける必要がない。したがって、部品点数が
低減し、製造工数が減少する。本発明の請求項6記載の
点火コイルによると、一次スプールに分離材を塗布する
ことにより、一次スプールと樹脂絶縁材とがそれぞれ別
々に膨張および収縮できる。したがって、一次スプール
および一次スプールと接する樹脂絶縁材に亀裂が発生す
ることをを防止するので、亀裂に沿って放電が発生する
ことを防止できる。
【0012】本発明の請求項7記載の点火コイルによる
と、一次コイルに分離材を塗布することにより、一次コ
イルに樹脂絶縁材が浸透しない。したがって、一次コイ
ル側の一次スプールは樹脂絶縁材と非接触であり、一次
スプールと一次コイル、ならびに一次コイルと樹脂絶縁
材はそれぞれ別々に膨張および収縮できる。したがっ
て、一次スプールおよび一次コイルと接する樹脂絶縁材
に亀裂が発生することをを防止するので、亀裂に沿って
放電が発生することを防止できる。
【0013】本発明の請求項8記載の点火コイルによる
と、樹脂絶縁材と接着しにくい材質で一次コイルの線材
を被覆することにより、一次コイルの線材間に樹脂絶縁
材が浸透しても一次コイルと樹脂絶縁材とはそれぞれ別
々に膨張および収縮できる。したがって、一次コイルの
膨張および収縮に伴い樹脂絶縁材を介して一次スプール
に加わる拘束力が低下するので、一次スプールおよび一
次スプールに接する樹脂絶縁材に亀裂が生じることを防
止し、亀裂に沿って放電が発生することを防止できる。
【0014】本発明の請求項9記載の点火コイルによる
と、一次スプールの表面は一次スプールの表面と接する
部材と別々に膨張および収縮可能に分離されているの
で、一次スプールと樹脂絶縁材とがそれぞれ別々に膨張
および収縮できる。したがって、一次スプールおよび一
次スプールと接する樹脂絶縁材に亀裂が発生することを
を防止するので、亀裂に沿って放電が発生することを防
止できる。
【0015】本発明の請求項10記載の点火コイルによ
ると、一次コイルおよび二次コイルの外周に配設した外
周コアの内周面を他部材と別々に膨張および収縮可能に
分離することにより、線膨張率の異なる外周コアと樹脂
充填材とが膨張および収縮を繰り返しても、樹脂充填材
に亀裂が生じにくい。したがって、例えば高電圧を発生
する二次コイルと外周コアとの間で樹脂絶縁材の亀裂に
沿って放電が発生することを防止できる。
【0016】本発明の請求項11、12または17記載
の点火コイルによると、一次コイルおよび二次コイルの
うち少なくとも一方の線材を樹脂絶縁材と分離可能とな
る分離材で被覆することにより、分離材で被覆したコイ
ルの線材間に樹脂絶縁材が浸透してもコイルと樹脂絶縁
材とはそれぞれ別々に膨張および収縮できる。したがっ
て、コイルの膨張および収縮に伴い樹脂絶縁材に加わる
拘束力が低下するので、樹脂絶縁材に亀裂が生じること
を防止し、亀裂に沿って放電が発生することを防止でき
る。
【0017】本発明の請求項13、14または15記載
の点火コイルによると、少なくとも一方のコイルの線材
は自己融着線材で巻回されている。ここで自己融着線材
とは、加熱することにより線材本体の外周側が溶けて互
いにくっつき合い、冷却することにより互いに結合する
線材を表す。したがって、自己融着線材を仮りの芯材に
巻回した後形成したコイルを加熱して線材本体の外周側
を溶かし、その後冷却することによりコイルを巻回する
ためのスプールを用いることなくコイルの形状を保持す
ることができる。したがって、スプールの厚み分点火コ
イルの径を小径化することができる。さらに、部品点数
が低減し、製造コストが低減する。
【0018】本発明の請求項16記載の点火コイルによ
ると、分離材が融着材を兼ねているので線材に被覆を施
す工数が減少する。したがって、線材の加工が容易にな
るとともに加工時間が低減する。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示す
複数の実施例について図面に基づいて説明する。 (第1実施例)本発明の第1実施例による点火コイルを
図1〜図4に示す。
【0020】図3に示す点火コイル10は、図示しない
エンジンブロックの上部に気筒毎に形成されたプラグホ
ール内に収容され、図示しない点火プラグと図3の下側
で電気的に接続している。点火コイル10は、樹脂材料
からなる円筒状のハウジング11を備えており、このハ
ウジング11内に形成された収容室11aに、コア1
2、磁石13、14、二次スプール21、二次コイル2
2、一次スプール23、一次コイル24、補助コア25
等が収容されている。収容室11aには樹脂絶縁材とし
てエポキシ樹脂26が充填されている。第1実施例にお
いて、コア12、磁石13、14、二次スプール21、
二次コイル22および一次スプール23は特許請求の範
囲に記載した「内周部」を構成し、一次コイル24、補
助コア25およびハウジング11は特許請求の範囲に記
載した「外周部」を構成している。
【0021】図1に示すように、円柱状のコア12は薄
い珪素鋼板を横断面がほぼ円形となるように径方向に積
層して組立てられている。図3に示すように、コイルに
より励磁されて発生する磁束の方向とは逆方向の極性を
有する磁石13、14がそれぞれコア12の軸方向両端
に装着されている。図1および図2に示すようにコア1
2の外周に軸方向にわたって筒状のゴム材50が装着さ
れている。
【0022】二次スプール21はゴム材50を装着した
コア12の外周に配設されており、樹脂材料で成形され
ている。二次コイル22は二次スプール21の外周に巻
回されており、図3に示す高圧ターミナル40と電気的
に接続されている。図1および図2に示すように、一次
スプール23は二次コイル22の外周に配設されてお
り、樹脂材料で成形されている。例えばPET(ポリエ
チレンテレフタレート)からなる分離部材としての薄膜
フィルム51は図4に示す一次スプール23の外周に巻
かれており、図1および図2に示すように薄膜フィルム
51の外周に一次コイル24が巻回されている。薄膜フ
ィルム51の巻き方は、図5に示す変形例1のように巻
き端51aを重ねてもよいし、図6に示す変形例2のよ
うに隙間51bを開けてもよい。PETから形成された
薄膜フィルム51は、一次スプール23およびエポキシ
樹脂26の両方との接着力が小さい。したがって、周囲
温度の変化に伴い線膨張率の異なる一次スプール23お
よび一次コイル24が膨張および収縮するときに、一次
スプール23および一次コイル24は互いに拘束しない
ように別々に膨張および収縮できる。一次コイル24は
図3に示すターミナル31を介して図示しないスイッチ
ング回路と電気的に接続されている。
【0023】図1および図2に示すように、補助コア2
5は一次コイル24の外周に装着されている。補助コア
25は、薄い珪素鋼板を筒状に巻回し巻回開始端と巻回
終了端とを接続していないので軸方向に隙間を形成して
いる。補助コア25は磁石13の外周位置から磁石14
の外周位置にわたる軸方向長さを有する。エポキシ樹脂
26は収容室11a内に充填されている。エポキシ樹脂
26は、点火コイル10内の各部材間に浸透し、部材間
の電気絶縁を確実なものとしている。またエポキシ樹脂
26は、二次スプール21および一次スプール23を成
形する樹脂材料と接触すると大きな接着力が働く。
【0024】図3に示すように、制御信号入力用のコネ
クタ30はプラグホールから突出するようにハウジング
11の上端部に設けられており、このコネクタ30に一
次コイル24に制御信号を供給するターミナル31がイ
ンサート成形されている。ターミナル31を介して一次
コイル24へ制御信号を供給するスイッチング回路は点
火コイル10の外部に設けられている。
【0025】高圧ターミナル40は、ハウジング11の
下端部11bにインサート成形されており、スプリング
41と電気的に接続している。スプリング41は二次コ
イル22と電気的に接続するとともにプラグホールに点
火コイル10を挿入した際に点火プラグと電気的に接続
する。ハウジング11の開口端にゴムからなるプラグキ
ャップ16が装着されており、このプラグキャップ16
に点火プラグを挿入する。スイッチング回路から一次コ
イル側に制御信号を供給すると二次コイル22に高電圧
が発生し、この高電圧が高圧ターミナル40、スプリン
グ41を介して点火プラグに印加される。
【0026】以上説明した第1実施例では、一次スプー
ル23と一次コイル24との間に介在する薄膜フィルム
51は、一次コイル24を構成する線材間に浸透したエ
ポキシ樹脂26および一次スプール23との接着力が小
さい。したがって、周囲温度の変化に伴い点火コイル1
0の各部材が膨張および収縮するとき、薄膜フィルム
51よりも内周側の部材、つまり一次スプール23、二
次コイル22、二次スプール21、コア12、および薄
膜フィルム51よりも内周側のエポキシ樹脂26と、
薄膜フィルム51よりも外周側の部材、つまり一次コイ
ル24、補助コア25、ハウジング11、および薄膜フ
ィルム51よりも外周側のエポキシ樹脂26とが薄膜フ
ィルム51を境にして互いに分離して膨張および収縮す
る。これにより、薄膜フィルム51の内周部および外周
部が膨張および収縮するときに互いに及ぼし合う力が薄
膜フィルム51により分断される。したがって、膨張お
よび収縮するときに外周部よりも大きな力を受けやすい
内周部に働く力が低減されるので、内周部のひずみが低
減される。例えば内周部を構成する部材として二次スプ
ール21のひずみが低減されることにより、二次スプー
ル21のじん性が低下する低温時において二次スプール
21に亀裂が発生することを防止できる。これにより、
二次スプール21に発生した亀裂に沿って二次コイル2
2を構成する線材間で放電することを防止するととも
に、この亀裂に沿って二次コイル22とコア12との間
で放電し、二次コイル22とコア12との間の絶縁が破
壊されることを防止できる。したがって、二次コイル2
2に所望の高電圧が発生し、この高電圧により点火プラ
グに良好な火花が発生する。
【0027】二次スプール21だけでなく、二次スプー
ル21とコア12との間に充填されている内周部として
のエポキシ樹脂26も膨張および収縮によるひずみが低
減され、コア12との接触面において亀裂の発生が防止
されるので、二次コイル22とコア12との間の絶縁が
破壊されることを防止できる。 (第2実施例)本発明の第2実施例を図7および図8に
示す。第1実施例と実質的に同一構成部分には同一符号
を付す。
【0028】第2実施例では、薄膜フィルム51は一次
コイル24と補助コア25との間に介在している。第2
実施例において、コア12、磁石13、14、二次スプ
ール21、二次コイル22、一次スプール23および一
次コイル24は特許請求の範囲に記載した「内周部」を
構成し、補助コア25およびハウジング11は特許請求
の範囲に記載した「外周部」を構成している。薄膜フィ
ルム51の位置は第1実施例と異なるが、第1実施例と
同様に薄膜フィルム51を境にして内周部および外周部
が膨張および収縮するときに互いに及ぼし合う力が薄膜
フィルム51により分断される。したがって、内周部を
構成する部材、例えば二次スプール21に亀裂が発生す
ることを防止し、点火コイル10内の絶縁破壊を防止で
きる。
【0029】以上説明した本発明の実施の形態を示す第
1実施例および第2実施例によると、分離部材としてP
ETの薄膜フィルム51を用いたが、分離材としてPE
Tを一次スプール23に塗布して分離部材を形成しても
よい。一次スプール23に塗布する分離材としてPET
に代えてシリコン、ろう等を用いてもよい。また、ゴム
材を一次スプール23等に巻いたり、予めチューブ状に
形成したゴム材を一次スプール23等に嵌め込んでもよ
い。また、複数の薄膜フィルム51を複数箇所に配設し
てもよい。さらに、シリコンからなるフィルムを用いて
もよい。
【0030】上記複数の実施例では、スプールおよびエ
ポキシ樹脂26との接着力が小さい薄膜フィルム51を
分離部材として用いたが、スプールおよびエポキシ樹脂
26の少なくともいずれか一方との接着力が小さい分離
部材を用いても、分離部材を境にして点火コイルの内周
部と外周部とをそれぞれ別々に膨張および収縮可能に分
離できる。
【0031】上記複数の実施例では、薄膜フィルム51
を用いることにより点火コイルの内周部と外周部とを分
離したが、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイ
ド)または薄膜フィルム51を形成したPETでスプー
ルを形成することにより、スプール自体を分離部材とし
て用いることができる。これにより、分離部材を新たに
設ける必要がないので部品点数および製造工数が低減す
る。
【0032】また、一次コイル24にPET、シリコ
ン、ろう等を分離材として塗布し、一次スプール23に
エポキシ樹脂26が接触しないようにすることもでき
る。一次コイル24に分離材を塗布することにより一次
コイル24に接する樹脂絶縁材に亀裂が生じることを防
止できる。一次コイル24に分離材を塗布する代わり
に、一次コイル24の線材をエポキシ樹脂26と接着し
ない材質、例えばナイロンやフッ素で被覆してもよい。
これにより、一次コイル24と樹脂絶縁材26とが別々
に膨張および収縮できるので、一次コイル24の膨張お
よび収縮に伴い樹脂絶縁材26を介して一次スプール2
3に加わる拘束力が低下する。したがって、一次スプー
ル23および一次スプール23に接する樹脂絶縁材26
に亀裂が生じることを防止することができる。
【0033】(第3実施例)本発明の第3実施例を図9
および図10に示す。第1実施例と実質的に同一構成部
分には同一符号を付す。図9に示すように、点火コイル
60のハウジング61は第1のハウジング62および第
2のハウジング63を有し、第1のハウジング62の低
電圧側開口部に複数のターミナル65をインサート成形
したコネクタ64が配設されている。第3実施例では、
スイッチング回路としてのイグナイタ66を点火コイル
60内に配設している。
【0034】図10に巻回前の一次コイル70の線材7
1の構成を示す。線材71は自己融着線材である。線材
本体としての銅線72の外周に絶縁層73が形成されて
おり、絶縁層73の外周に分離材としてナイロンまたは
フッ素を被覆した分離層74が形成され、分離層74の
外周に融着材を被覆した融着層75が形成されている。
【0035】図10に示す構成の線材71を仮の芯材に
コイル状に巻回したのち加熱することにより融着層75
が融解し、線材71同士が互いにくっつきあう。この状
態で冷却すると、溶けた融着材が固化し線材同士が互い
に結合し、芯材から外してもコイル形状を保持する。し
たがって、スプールを用いることなく一次コイル70を
組付けることができる。
【0036】このように形成した一次コイル70は、コ
イルの外周側および内周側を融着材で覆い、融着材の内
部に分離材を塗布したコイルが存在しているものと同じ
構造と見なすことができる。温度変化に伴い線膨張率の
異なる一次コイル70および一次コイル70の内周側お
よび外周側のエポキシ樹脂26が膨張および収縮を繰り
返すと融着材はエポキシ樹脂26との接着力が大きいの
でエポキシ樹脂26とともに膨張および収縮する。分離
材は融着材との接着力が小さいので、分離材を境にして
一次コイル70と一次コイル70の内周側および外周側
のエポキシ樹脂26とが分離され、それぞれ別々に膨張
および収縮可能になる。
【0037】第3実施例では、スプールに巻回しなくて
も一次コイル70の形状を保持できるので、一次スプー
ルを省略し、一次スプールの厚み分だけ点火コイル60
の径を小径化できる。さらに、一次スプールを省略する
ことができるので、部品点数を減少し、製造コストを低
減することができる。第3実施例では、内周側に分離層
74、外周側に融着層75を形成したが、外周側に分離
層74、内周側に融着層75を形成してもよい。また、
分離材と融着材とを混合し、分離性および融着性の両方
の性質を兼ねた被覆層を一つ形成してもよい。また、分
離材であれば融着性を有し、融着材であれば分離性を有
する材料を用いることにより両方の性質を兼ねた一つの
被覆層を一つの材質で形成することも可能である。線材
に分離層を形成せず、融着材で結合したコイルの内周側
または外周側に分離部材を配設してもよい。
【0038】第3実施例では、一次コイル70だけに融
着層75を形成し、一次スプールを省略したが、二次コ
イルだけに融着層を形成してもよいし、両方のコイルに
融着層を形成してもよい。この場合、融着層を形成した
コイルに分離層を形成しておく。以上説明した本発明の
実施の形態を示す上記複数の実施例では、一次コイルの
内周側に二次コイルを配設したが、一次コイルと二次コ
イルの位置を逆にし、二次コイルを外周側、一次コイル
を内周側に配設することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による点火コイルを示す図
3のI−I線断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本発明の第1実施例による点火コイルを示す縦
断面図である。
【図4】第1実施例の一次スプールを示す正面図であ
る。
【図5】第1実施例の変形例1による薄膜フィルムの巻
き方を示す斜視図である。
【図6】第1実施例の変形例2による薄膜フィルムの巻
き方を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施例による点火コイルを示す横
断面図である。
【図8】図7のVIII− VIII 線断面図である。
【図9】本発明の第3実施例による点火コイルを示す縦
断面図である。
【図10】第3実施例による巻回前の一次コイルの線材
を示す横断面図である。
【符号の説明】
10 点火コイル 11 ハウジング 12 コア 13、14 磁石 21 二次スプール 22 二次コイル 23 一次スプール 24 一次コイル 26 エポキシ樹脂(樹脂絶縁材) 50 ゴム材 51 薄膜フィルム(分離部材) 70 一次コイル 71 線材 74 分離層(分離材) 75 融着層(融着材)
フロントページの続き (72)発明者 大須賀 一豊 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 (72)発明者 川井 一秀 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の点火装置に印加する高電圧を
    発生する内燃機関用点火コイルであって、 棒状のコアと、 前記コアの外周に巻回された一次コイルおよび二次コイ
    ルと、 前記一次コイルを巻回する一次スプール、および前記二
    次コイルを巻回する二次スプールと、 前記点火コイル内に充填される樹脂絶縁材とを備え、 前記点火コイルの内周部と外周部とがそれぞれ別々に膨
    張および収縮可能に分離されていることを特徴とする内
    燃機関用点火コイル。
  2. 【請求項2】 前記内周部と前記外周部との間に分離部
    材を介在させることを特徴とする請求項1記載の内燃機
    関用点火コイル。
  3. 【請求項3】 前記分離部材は前記一次スプールと前記
    一次コイルとの間に介在することを特徴とする請求項2
    記載の内燃機関用点火コイル。
  4. 【請求項4】 前記一次スプールが前記分離部材を兼ね
    ていることを特徴とする請求項3記載の内燃機関用点火
    コイル。
  5. 【請求項5】 前記分離部材はポリエチレンテレフタレ
    ートまたはシリコンのうちいずれか一方からなる薄膜で
    あることを特徴とする請求項2または3記載の内燃機関
    用点火コイル。
  6. 【請求項6】 前記一次スプールに分離材を塗布するこ
    とを特徴とする請求項1記載の内燃機関用点火コイル。
  7. 【請求項7】 前記一次コイルに分離材を塗布すること
    を特徴とする請求項1記載の内燃機関用点火コイル。
  8. 【請求項8】 前記樹脂絶縁材と接着しにくい材質で前
    記一次コイルの線材を被覆することを特徴とする請求項
    1記載の内燃機関用点火コイル。
  9. 【請求項9】 前記一次スプールの表面は前記一次スプ
    ールの表面と接する部材と別々に膨張および収縮可能に
    分離されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機
    関用点火コイル。
  10. 【請求項10】 前記一次コイルおよび前記二次コイル
    の外周に外周コアを配設し、前記外周コアの内周面は前
    記外周コアの内周面と接する部材と別々に膨張および収
    縮可能に分離されていることを特徴とする請求項1記載
    の内燃機関用点火コイル。
  11. 【請求項11】 内燃機関の点火装置に印加する高電圧
    を発生する内燃機関用点火コイルであって、 棒状のコアと、 前記コアの外周に巻回された一次コイルおよび二次コイ
    ルと、 前記点火コイル内に充填される樹脂絶縁材とを備え、 前記一次コイルおよび前記二次コイルのうち少なくとも
    一方の線材を前記樹脂絶縁材と分離可能となる分離材で
    被覆することを特徴とする内燃機関用点火コイル。
  12. 【請求項12】 前記一次コイルおよび前記二次コイル
    のうち、外周側に配設されるコイルの線材を前記分離材
    で被覆することを特徴とする請求項11記載の内燃機関
    用点火コイル。
  13. 【請求項13】 前記一次コイルおよび前記二次コイル
    のうち、外周側に配設されるコイルの線材は自己融着線
    材であることを特徴とする請求項12記載の内燃機関用
    点火コイル。
  14. 【請求項14】 前記一次コイルおよび前記二次コイル
    のうち、少なくとも前記分離材で被覆されているコイル
    の線材は自己融着線材であることを特徴とする請求項1
    1または12記載の内燃機関用点火コイル。
  15. 【請求項15】 前記分離材の内周側または外周側に融
    着材を被覆することを特徴とする請求項13または14
    記載の内燃機関用点火コイル。
  16. 【請求項16】 前記分離材は融着材を兼ねていること
    を特徴とする請求項13または14記載の内燃機関用点
    火コイル。
  17. 【請求項17】 前記一次コイルが内周に、前記二次コ
    イルが外周に配設されていることを特徴とする請求項1
    1〜16のいずれか一項記載の内燃機関用点火コイル。
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