曰月糸田 » 石英ガラス部材、 その製造方法、 及びそれを用いた投影露光装置 技術分野
本発明は、 石英ガラス部材、 その製造方法、 並びにそれを用いた投影露光装置 に関する。 より詳しくは、 エキシマレ一ザ光等の紫外域、 真空紫外域の光源を利 用して所定のマスクパターンを基板上に転写する結像光学系に用いられるレンズ、 集積回路の回路パターンを焼き付けるために用いられるレチクル等のフォトマス ク、 回折光学素子 (D O E )、 光源用のエタロン板、 或いはこれらの母材、 となる 石英ガラス部材、 その製造方法、 並びにそれを用いた投影露光装置に関する。 背景技術
従来、 半導体製造用の投影露光装置としては、 図 1 6 A及び図 1 6 Bに示すよ うな構造を有するものが用いられている。
すなわち、 図 1 6 Aに示す投影露光装置 8 0 0においては、 水銀アーク灯等の 光源 5 0 1からの光束は楕円鏡 5 0 2により集光された後、 コリメ一夕レンズ 5 0 3により平行光束に変換される。 そしてこの平行光束は、 図 1 6 Bに示すよう な断面が四角形の光学素材 5 0 4 aの集合体よりなるフライアイレンズ 5 0 4を 通過することにより、 これの射出側に複数の光源像が形成される。 この光源像位 置には、 円形状の開口部を有する開口絞り 5 0 5が設けられている。 この複数の 光源像からの光束はコンデンサーレンズ 5 0 6によって集光され、 被照射物体と してのレチクル Rを重畳的に均一照明する。
このようにして照明光学系によって均一照明されたレチクル R上のパターンは、 複数のレンズよりなる投影光学系 5 0 7によって、 レジストが塗布されたウェハ W上に投影露光される。 このウェハ Wは 2次元的に移動するウェハステージ W S
上に載置されており、 図 1 6 Aの投影露光装置 8 0 0では、 ゥヱハ上での 1ショ ッ卜領域の露光が完了すると、 次のショッ ト領域への露光のために、 順次ウェハ ステージを 2次元移動させるいわゆるステップアンドリピート方式の露光が行わ れる。
また、 近年においては、 レチクル Rに対し長方形状または円弧状の光束を照射 し、 投影光学系 5 0 7に関して共役に配置されたレチクル Rとウェハ Wとを一定 方向に走査することにより、 高いスループッ卜でレチクル Rのパターンをウェハ W上へ転写することが可能な走査露光方式が提案されている。
更に、近年においては、ウェハ面上により微細なマスクパターン像を転写する、 すなわち解像度を向上させるために、 光源の波長を短くすることが提案されてい る。 例えば、 これまでの g線 (4 3 6 nm) や i線 ( 3 6 5 nm) から、 K r F ( 2 4 8 nm) や A r F ( 1 9 3 nm) エキシマレーザへと短波長化が進められ ている。
上記の投影露光装置内の光学系に用いられる光学部材としては、 使用する光源 の波長に対する透過率が高いことが望まれる。 これは、 投影露光装置の光学系は 多数の光学部材の組み合わせにより構成されており、 たとえレンズ 1枚当たりの 光損失が少なくとも、 それが光学部材の使用枚数分だけ積算されると、 トータル での透過率低下の影響が大きいからである。 透過率が悪い光学部材を用いると、 露光光を吸収することによって光学部材の温度が上昇して光学部材内の屈折率の 不均質化が生じ、 さらには光学部材の局所的熱膨張によって研磨面の変形をもら たす。 これによつて光学性能の劣化が生じる。 特に、 投影光学系においては、 よ り微細かつ鮮明な投影露光パターンを得るために、 光学部材の屈折率の高い均質 性が要求される。 これは、 屈折率のばらつきにより光の進み遅れが生じ、 これが 投影光学系の結像性能に大きく影響するからである。
—般に、 i線より長波長の光を利用した投影露光装置では、 その照明光学系あ るいは投影光学系のレンズ部材として多成分系の光学ガラスが用いられているが、
このような光学ガラスの場合、 光の波長が i線より短くなるとその光に対する内 部透過率が急激に低下し、 特に 2 5 0 nm以下の波長を有する光に対してはほと んど透過性を示さなくなる。 そこで、 波長 4 0 O n m以下の紫外域の光源を備え た投影露光装置の光学系に用いられる光学部材の材料としては、 紫外域での透過 率が高く、 均質性に優れた石英ガラスあるいはフッ化カルシウム単結晶が一般的 に用いられている。 この 2つの材料はェキシマレ一ザの結像光学系で色収差補正 を行う上で必要とされる材料である。
上記の光学材料のうち、 石英ガラスは光透過性が高いことに加えて、 耐エキシ マレーザ性が良好である ;温度変化に対して耐性がある ;耐食性及び弾性性能が 良好である ;室温付近の線膨張率が小さい (約 5 . 5 x 1 0— 7/K );等の優れ た性質を有する。そのため、投影露光装置において、耐紫外線性(UV durability) が良好であり、 且つ基板の発熱及びそれによる熱膨張が生じにくいといった光学 特性が要求されるレチクル等の光学部材の材料に適用する試みがなされている。 また、 フッ化カルシウム単結晶は、 特に 1 9 O nm以下の特定波長を有する光 と共に用いる光学部材の材料として使用された場合、 高い光透過性と高い耐紫外 線性を有していることからこのような光学部材への適用が検討されている。 発明の開示
しかしながら、 石英ガラスからなるレンズ、 フォトマスク基板等の光学部材で あっても、 2 5 O nm以下の特定波長を有する光に対しては、 光透過性ゃ耐紫外 線性等の光学特性が不十分であった。 これは、 先に延べたように、 複数のレンズ (レンズ群) で構成た光学系全体としての光透過率は各レンズの光透過率が積算 されたものとなることと、 光の内部吸収や内部散乱による石英ガラスの透過損失 の増大、 レーザ誘起により生じるカラ一センター、 発熱や蛍光による光学性能の 低下、 密度が変化するコンパクション等の問題があり、 特に 1 9 O nm以下の波 長を有する光と共に用いる場合にその傾向が顕著であるからである。
つまり、 A r Fエキシマレーザ(波長 1 9 3 n m)や F 2レーザ(波長 1 5 7 . 6 nm) 等の光源を用いた投影露光装置にこれらの光学部材を使用すると、 パ夕 —ン転写工程における線幅ムラ (焼き付けムラ; line width deviation) 等が問題 となり高い解像度を達成することは非常に困難であった。
更に、 フッ化カルシウム単結晶は、 温度変化に対する耐性が低く脆弱で傷つき 易いのでパターンの形成過程において破損が生じやすいという欠点があった。 ま た、フッ化カルシウム単結晶は、線膨張率が石英ガラスの約 4 0倍と大きいので、 高い精度のマスクパターンの形成が困難であると共に、 露光処理を行う場合の温 度を極めて厳密に管理しなければならないという欠点があつた。
このように、 投影露光装置に利用する光の波長が短くなるにつれて、 レンズ部 材ゃフォトマスク部材等の光学部材は、 より高い光学性能が要求されるようにな つてきているが、 2 5 0 nm以下の波長を有する光、 中でも 1 9 0 nm以下の波 長を有する光を利用した装置等を構成する光学系に適した所望の光学性能を有す る光学部材は未だ開発されていなかった。 また、 高い透過率や高い屈折率の均質 性を有する材料であっても、 このような材料を複数組み上げて光学系とした際に 所望の解像度が得られないことがあった。
そこで本発明は、 高い光透過性及び耐紫外線性を有する石英ガラス部材、 その 製造方法、 並びに高い解像度を得ることが可能な投影露光装置を提供することを 目的とする。
本発明者らは、 上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、 まず、 光学部材 内に生じる複屈折( birefringence )に影響を与える因子について検討したところ、 従来、 光学部材内に生じる複屈折は、 熱処理を施した光学部材を冷却する過程に おいて光学部材内に生じる熱応力の影響によって決定されると考えられていたが、 特に石英ガラス部材については、 その内部における構造分布 (S i 02の結合分 布) や不純物分布が大きく影響していることを見出した。
そこで、 本発明者らは石英ガラス部材内に存在する不純物について詳細に検討
した結果、 石英ガラス部材内部の構造分布や不純物の中でも特に水酸基濃度の分 布が石英ガラス部材内に生じる複屈折の分布に対して大きな影響を与えているこ とを見出した。 また、 本発明者らは、 熱処理後の冷却 (降温) 工程について検討 した結果、 複屈折の度合のより小さい石英ガラス部材を得るためには、 1 5 0 0 〜 1 8 0 0 °Cの温度領域における降温速度が、 石英ガラス内に生じるの複屈折の 度合を左右する大きな要因であることを見出した。
更に、 本発明者らは、 光学部材の材料の複屈折が投影光学系の結像性能と投影 露光装置の解像度とに大きく影響を与えることを突き止めた。 そして、 光学部材 の材料の複屈折の大きさ、 すなわち複屈折値 (絶対値) が 2 n m/ c m以下で且 つ光学部材内の複屈折の分布が中央対称であれば、 投影光学系の設計性能に近い 結像性能及び投影露光装置の設計性能に近い解像度が得られることを見出し、 特 開平 8— 1 0 7 0 6 0号公報において開示している。
しかしながら、 投影露光装置の解像度に対する要求がさらに高まり、 光源とし てより短波長の光を用いたり、 光学部材として大口径かつ厚みの大きなものを用 いる場合には、 上記従来の設計思想を採用しても投影光学系の良好な結像性能及 び投影露光装置の良好な解像度を得ることができない場合があった。
そこで、 本発明者らは更に研究した結果、 良好な透過率や良好な屈折率の均質 性を有する光学部材を使用しても所望の光学性能を有する投影光学系及び投影露 光装置を得ることができない原因として、 光学部材内の複屈折の分布状態が光学 部材ごとに異なるため、 複数の光学部材を投影光学系として組み上げた場合に光 学系全体で異なる複屈折の分布が積算され、 結果として光学系全体での光の波面 に乱れを生じさせ、 投影光学系の結像性能や投影露光装置の解像度に大きな影響 を与えていることを見出した。
すなわち、 従来の光学部材の複屈折の評価は、 その大きさ (絶対値) の大小で 議論されているに過ぎず、 また、 上記の光学部材内の複屈折値 (birefringence value) の分布という概念もなかった。 例えば、 石英ガラス部材の複屈折値を測
定する場合は、 部材の径の 9 5 %付近の数箇所の複屈折値を測定し、 その最大値 をその部材における複屈折値として用いることが当業者の認識であった。 ところ が、 石英ガラス部材内の複数の測定点において測定される複屈折値の分布を詳細 に測定したところ、 本発明者らは複屈折値は実際は不均一な分布を有しているこ とを見出したのである。
従って、 屈折率の均質性の高い石英ガラス部材であっても部材内の数力所の複 屈折値の最大値の管理だけでは部材内の複屈折の影響を十分に評価することがで きず、 特に、 複数の部材を組み合わせる場合に所望の性能の光学系を得ることは 非常に困難であることがわかった。 このような石英ガラス部材内の複屈折値の不 均一な分布は、 合成時の温度分布、 不純物の不均一な分布、 あるいは S i〇2の 構造欠陥の不均一な分布に起因して、 石英ガラス部材の冷却時に部材内に複屈折 値の不均一な分布が形成されるものと考えられる。
このように、複数の光学部材により構成された光学系全体での複屈折の評価は、 個々の光学部材の複屈折の大きさのみでは単純に表すことはできないため、 本発 明者らは、 光学部材内に複屈折値の不均一な分布が光学系に与える影響を詳細に 検討した。 その結果、 この複屈折値の不均一な分布を進相軸 (fast axis) の向き に注目してみた場合に、 進相軸の向きが同じである複屈折値の分布を有する光学 部材を用いて光学系を構成すると複屈折値が積算され、 光学系の性能に悪影響を 及ぼすこと、 反対に進相軸の向きの異なる光学部材を組み合わせることにより、 個々の部材の有する複屈折による悪影響が光学系全体では打ち消されることを初 めて見出した。 そして、 本発明者らは、 先に延べた石英ガラス部材内の水酸基濃 度が石英ガラス部材内に生じる複屈折に与える知見をあわせて本発明に到達した すなわち、 本発明の石英ガラス部材は、 2 5 O nm以下の特定波長を有する光 と共に使用される石英ガラス部材であって、 石英ガラス部材の光軸との交点を中 心とする光軸に垂直な面内の複数の箇所において測定される水酸基濃度の最大値 と最小値との差が 5 O p p m以下であり、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心
とする光軸に垂直な面内の複数の箇所において測定される複数の複屈折値とその 進相軸の向きとに基づいて求められる複数の符号付複屈折値が— 2. 0〜十 2. 0 nm/ cmであることを特徴とする。
このように、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の 水酸基濃度分布の最大値と最小値との差が 50 ppm以下で、 且つ石英ガラス部 材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の複数の箇所において求められ る複数の符号付複屈折値が— 2. 0〜十 2. O nm/cmである石英ガラス部材 は、 高い光透過性及び耐紫外線性を有する。 従って、 本発明の石英ガラス部材を 使用して投影露光装置の光学系を構成するレンズやフォトマスク基板に用いた場 合には、 光学系全体の光透過性の低下が抑制され、 また、 フォトマスク基板にお いては高い光透過性が得られると共に部材の局所的な熱膨張による複屈折の発生 が抑制されるので、 パターン転写工程において線幅ムラ (焼き付けムラ) を生じ ることのない高い解像度を有する投影露光装置を構成することができる。
また、 本発明の石英ガラスの製造方法は、 複数の管を有するパーナを備えた合 成炉内において、 パーナの複数の管から原料と燃焼ガスとを噴出させることによ り原料を酸水素火炎中で加水分解し、 内部における所定の面内の複数の箇所にお いて測定される水酸基濃度の最大値と最小値との差が 50 ppm以下となる石英 ガラスバルクを合成する石英ガラスバルク合成工程と、 1500〜 1 800°Cの 温度領域における冷却速度を 5〜 10°O mi nに制御し、 0. 0 1〜0. 1 5 MP a (abs) の圧力領域において石英ガラスバルクを冷却する石英ガラスバル ク冷却工程と、 石英ガラスバルクを切り出して所望の形状及び大きさを有する石 英ガラス部材を得る石英ガラスバルク切断工程と、 石英ガラス部材に熱処理を施 し、 光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の複数の箇所において測定され る水酸基濃度の最大値と最小値との差が 50 ppm以下であり、 光軸との交点を 中心とする光軸に垂直な面内の複数の箇所において測定される複数の複屈折値と その進相軸の向きとに基づいて求められる複数の符号付複屈折値が一 2. 0〜十
2. 0 nm/cmである石英ガラス部材を得る石英ガラス部材熱処理工程とを有 することを特徴とする。
石英ガラス部材内の複屈折の分布に大きな影響を及ぼす石英ガラス部材内の水 酸基濃度分布の制御は、 石英ガラスバルクを合成する合成工程において、 多重管 パーナの各管から噴出するガスの種類 (原料、 酸素又は水素) 及びその流量等の 噴出条件を適宜調節すると共に、 各種の石英ガラスバルクの合成法に応じてその 後の具体的な合成処理を適宜調節することにより主として行なうことができる。 例えば、 直接法においては、 夕ーゲッ トの摇動幅 (rocking width) を調節するこ とにより水酸基濃度分布を小さくすることができる。また、スート法においては、 水酸基濃度の最大値を 5 O ppm以下とすることにより、 水酸基濃度分布を小さ くすることができる。
更に、 上記のように石英ガラスバルク合成工程において石英ガラス部材内の水 酸基濃度分布の制御を施した後に、 石英ガラスバルクを冷却する冷却工程におい て、 従来の製造方法においては行われていなかった高温領域、 すなわち、 1 50 0〜 1800°Cの温度領域における冷却速度を 5〜 1 0°C/mi nに制御するこ ととと、 石英ガラスバルク切断工程後に得られる石英ガラス部材に施す熱処理の 条件を適宜調節することによって、 石英ガラス部材内の不純物の分布、 S i〇2 の構造分布を均質化することができる。 その結果、 内部の光軸との交点を中心と する光軸に垂直な面内において求められる複数の符号付複屈折値が— 2. 0〜十 2. 0 nm/cmである高い光透過性及び耐紫外線性を有する石英ガラス部材を 得ることができる。
従来は、石英ガラスバルクを冷却する冷却工程において、失透( devitrification ) を防止のため降温速度を通常 1 5°C/mi n以上としていていたのに対し、 本発 明の石英ガラス部材の製造方法は、 特に 1 500〜 1 800°Cの温度領域におけ る降温速度を 5〜 10 C/mi nに制御して失透を防止すると共に 0.0 1〜0. 1 5 MP aの圧力領域において冷却することにより加圧による石英ガラス部材内
の応力の発生を防止して石英ガラス部材内の不純物の分布、 S i02の構造分布 を均一化することを可能としたものである。
また、 本発明の石英ガラスの製造方法は、 複数の管を有するバ一ナを備えた合 成炉内において、 パーナの複数の管から原料と燃焼ガスとを噴出させることによ り原料を酸水素火炎中で加水分解し、 内部における所定の面内の複数の箇所にお いて測定される水酸基濃度の最大値と最小値との差が 50 ppm以下となる石英 ガラスバルクを合成する石英ガラスバルク合成工程と、 石英ガラスバルクを合成 炉内に保持した状態で当該石英ガラスバルクを合成炉の外部環境温度との温度差 に基づき冷却する石英ガラスバルク冷却工程と、 石英ガラスバルクを切り出して 所望の形状及び大きさを有する石英ガラス部材を得る石英ガラスバルク切断工程 と、 0. 0 1〜0. 1 5MPa (abs) の圧力領域における不活性ガス雰囲気中 において、 石英ガラス部材を 1600〜2300°Cの間の所定の温度にまで昇温 させる石英ガラス部材第一熱処理工程と 0. 0 1〜0. 1 5MPa (abs) の圧 力領域における不活性ガス雰囲気中において、 1 500〜 1 800°Cの温度領域 における冷却速度を 5〜10°C/mi nに制御して石英ガラス部材を冷却するこ とにより、 光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の複数の箇所において測 定される水酸基濃度の最大値と最小値との差が 5 Oppm以下であり、 光軸との 交点を中心とする光軸に垂直な面内の複数の箇所において測定される複数の複屈 折値とその進相軸の向きとに基づいて求められる複数の符号付複屈折値が一 2. 0〜+2. 0 nm/cmである石英ガラス部材を得る石英ガラス部材第二熱処理 工程とを有することを特徴とする。
上記の石英ガラス部材の方法は、 内部の水酸基濃度分布の制御のみを施した石 英ガラスバルクを製造し、 更に、 石英ガラスバルクを切断して部材の原形を製造 した後に当該部材の原形に熱処理を施す場合の方法である。この場合であっても、 部材の原形を上記の条件の下で昇温させ、 その後、 1 500〜 1800°Cの温度 領域における冷却速度を 5〜10°CZmi nに制御することによって、 石英ガラ
ス部材内の不純物の分布、 S i 0 2の構造分布を均質化することができる。 その 結果、 内部の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内において求められる複 数の符号付複屈折値が— 2 . 0〜十 2 . O n m/ c mである高い光透過性及び耐 紫外線性を有する石英ガラス部材を得ることができる。
更に、 本発明の投影露光装置は、 2 5 O n m以下の波長の光を露光光として出 射する露光光源と、 パターン原像の形成されたレチクルと、 露光光源から出力さ れる光をレチクルに照射する照射光学系と、 レチクルから出力されるパターン像 を感光基板上に投影する投影光学系と、 レチクルと感光基板の位置合わせを行う ァライメント系と、 を有する投影露光装置であって、 照射光学系を構成する光学 部材、 投影光学系を構成する光学部材及びレチクルのうち少なくとも一部が、 本 発明の石英ガラス部材からなるものであることを特徴とする。
前記本発明の石英ガラス部材により構成した光学系を備えることにより、 本発 明の投影露光装置は、 優れた解像度を得ることができる。
ここで、 本発明における 「符号付複屈折値」 の概念について説明する。
符号付複屈折値とは、 光学部材の複屈折値を求める際に屈折率楕円体 (index ellipsoid) において定義される進相軸の向きを考慮して複屈折値に符号を付した ものである。
より詳しくは、 光学部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内におい て、 光束の円形照射を受ける領域を略円形の有効断面とし、 この有効断面上にあ る複屈折測定点の微小領域内の進相軸の向きと、 光学部材の光軸との交点である 中心からの放射方向とが平行な場合に測定された複屈折値にプラス (或いはマイ ナス) の符号を付し、 垂直な場合にマイナス (或いはプラス) の符号を付するも のである。
また、 上記の複屈折値への符号の付し方は、 光学部材の光軸との交点を中心と する光軸に垂直な面内に複数の光束が照射される場合にも適用できる。 この場合 にも、 光学部材の光軸との交点である中心からの放射方向と、 複数の光束が照射
されているそれそれの有効断面上にある複屈折測定点の微小領域内の進相軸の向 きとが平行な場合に測定された複屈折値にプラス (或いはマイナス) の符号を付 し、 垂直な場合にマイナス (或いはプラス) の符号を付するものである。
更に、 上記の複屈折値への符号の付し方は、 光学部材の光軸との交点を中心と する光軸に垂直な面内に断面円形状以外の形状を有する光束、 例えば断面リング 状或いは断面楕円状の光束が照射される場合にも適用できる。 この場合にも、 光 学部材の光軸との交点である中心からの放射方向と、 複数の光束が照射されてい るそれそれの有効断面上にある複屈折測定点の微小領域内の進相軸の向きとが平 行な場合に測定された複屈折値にプラス (或いはマイナス) の符号を付し、 垂直 な場合にマイナス (或いはプラス) の符号を付するものである。
なお、 以下の説明においては、 光束が照射されている有効断面上にある複屈折 測定点の微小領域内の進相軸の向きと、 光学部材の光軸との交点である中心から の放射方向とが平行な場合に測定された複屈折値にプラスの符号を付し、 垂直な 場合にマイナスの符号を付する場合について説明する。
以下に、 図 1A、 図 1 B、 図 2A、 図 2B、 図 3 A、 及び図 3 Bを用いて符号 付複屈折値を更に具体的に説明する。
図 1Aは、 光学部材 L 1の有効断面上の中心〇からそれそれ r13 r 2, r 3 , r 4の距離にある複屈折測定点 Pi 15 P12, P13, P14における進相軸の向き を示す模式図である。 なお、 この図においては説明の便宜上、 複屈折測定点 Pi i ~P14は中心 01を通り半径方向にのびる直線 上に設定されている。 図中、 各測定点の円で示される微小領域の大きさは各測定点における光路差に相当する < また、 これらの微小領域内の線分 Wu, W12, W13, W14の向きは進相軸の向 きを示す。 測定点 P i i〜P 14の進相軸の向きは全て直線 Q iの方向すなわち半径 方向に平行であるので、測定点 P i〜P 14の複屈折値は全てプラスの符号を付し て表現される。このようにして得られた図 1 Aに示す測定点 P i〜P i 4の符号付 複屈折値 A115 A12, A13, A14の半径方向に対する分布を描くと、 例えば図
1 Bのようなプロフィールとなる。
図 2 Aは、 図 1 Aと同様に光学部材 L 2の有効断面上の中心〇2からそれそれ r 15 r 2, r 3 , r 4の距離にある複屈折測定点 P 2 i , Ρ22, Ρ23, Ρ24におけ る進相軸の向きを示す模式図である。 この場合には、 測定点 Ρ21〜Ρ24の進相軸 W21, W22, W23, W24の向きは全て直線 Q2の方向すなわち半径方向に垂直で あるので、 測定点 P21〜P24の符号付複屈折値 A21, A22, A23, A24は全て マイナスの符号を付して表現される。 このようにして得られた図 2 Aに示す測定 点?21〜 24の符号付複屈折値 21〜八24の半径方向に対する分布を描くと、 例えば図 2 Bのようなプロフィールとなる。
図 3Bは、 図 1 Aと同様に光学部材 L 2の有効断面上の中心 0からそれぞれ r
!, r 2, r 3 , r4, r 5の距離にある複屈折測定点 Ρ31, Ρ32, Ρ33, Ρ34に おける進相軸の向きを示す模式図である。 この場合には、 測定点!^ 〜 ^の進 相軸 W31, W32, W33, W34, W35の向きは、 測定点 P31〜P33においては直 線 Q 3の方向すなわち半径方向に平行であり、測定点 P34, P35においては半径 方向に垂直であるので、 測定点?31〜卩35にぉぃて得られる符号付複屈折値八3 1〜A35の半怪方向に対する分布は、 図 3Bに示すようなプロフィールとなる。 図 4 Aは、 光学系を構成する m個の石英ガラス部材を光源から順に配列させた 模式的側面図である。 また、 図 4Bは、 図 4 Aに示す m個の石英ガラス部材のう ち光源から i番目に配置される石英ガラス部材 L iの光軸に垂直な有効断面を示 す模式的断面図である。
本発明においては、 石英ガラス部材内の複屈折値の分布は光軸方向に平行な部 材の厚み方向については均一であり、 光軸に垂直な有効断面上の半径方向につい ては不均一であると仮定する。ここで、 「有効断面」とは石英ガラス部材の光軸に 垂直な面内のうち光束の照射を受ける領域を示す。 そして、 光軸との交点を有効 断面の中心とし、その半径を石英ガラス部材の有効断面の有効半径とする。また、 光学系全体の符号付複屈折特性値を測定する際には、 石英ガラス部材ごとにその
有効断面の大きさが相違するため、 図 4 Aに示すように各石英ガラス部材の最大 有効半径 r nが 1となるように予め全石英ガラス部材の有効断面の大きさをノー マライズする。
なお、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内に複数の 光束が照射される場合には、 個々の光束に対応する有効断面について各石英ガラ ス部材の最大有効半径 r nが 1となるように予め全石英ガラス部材の有効断面の 大きさをノーマライズする。
更に、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内に断面円 形状以外の形状を有する光束、 例えば断面リング状或いは断面楕円状の光束が照 射される場合にも、 個々の光束に対応する有効断面について各石英ガラス部材の 最大有効半径 r ηが 1となるように予め全石英ガラス部材の有効断面の大きさを ノーマライズする。
例えば、 断面リング状の光束が照射される場合には、 リングの最大外径が 1と なるように予め全石英ガラス部材の有効断面の大きさをノーマライズし、 符号付 複屈折値の測定については以下に説明する断面円形状の光束に対する測定と同様 に行えばよい。 また、 断面楕円状の光束が照射される場合には、 楕円の長軸の最 大外径が 1となるように予め全石英ガラス部材の有効断面の大きさをノーマライ ズし、 符号付複屈折値の測定については以下に説明する断面円形状の光束に対す る測定と同様に行えばよい。
投影光学系全体の符号付複屈折特性値を測定するためには、 先ず、 図 4 Βに示 すように、 1つの光学部材 L iについてその有効断面上に中心を〇iとし且つ中 心からの半径が互いに相違する複数の同心円 C uのモデルを仮定する。次に中心 O iからの半径が r」である j番目の同心円 C u上にある k番目の測定点 P i j k の複屈折値を測定する。 更に、 測定点 P i j kにおける進相軸の向きと半径方向と の関係から符号を付して測定点 P i j kの符号付複屈折値 A i j kとする。
ここで、 iは、投影光学系を構成する前記光学部材 Lの番号( i 二 1 , 2 , ··· ,
m; 2≤m) を示す。 また、 jは、 光学部材 Lにおける光軸に垂直な有効断面上 に想定される、 光軸を中心とし且つ該光軸からの半径が互いに相違する同心円 C の番号 (j = l, 2, …, n; 1≤n) を示す。 更に、 kは、 同心円 Cの円周上 にある測定点の番号 (k= l, 2, ···, h; 1≤h) を示す。 このようにして同 一の同心円 C i j上の所定の測定点 P i」 〜Ρ i hにおける符号付複屈折値 A i j! 〜Aijhを測定する。
次に、 下記式に従い、 光学部材 L iにおける同心円 の円周上にある測定点 の符号付複屈折値の相加平均である平均符号付複屈折値 B i」を算出する。
h n k=l
h (2)
次に、 このようにして求めた石英ガラス部材の平均符号付複屈折値 B i」が下記 式を満たす場合にその石英ガラス部材は、 高い光透過性及び耐紫外線性を示し、 更に、このような石英ガラス部材を使用した光学系全体は優れた結像性能を示し、 このような投影光学系を備える投影露光装置は優れた解像度を示す。
一 2. 0≤Β^≤ 2. 0 nm/cm ( 1) 図面の簡単な説明
図 1Aは、 符号付複屈折値の概念を示す模式図であり、 図 1 Bは、 図 1Aに示 す光学部材内における符号付複屈折値の分布を示すグラフである。
図 2 Aは、 符号付複屈折値の概念を示す別の模式図であり、 図 2Bは、 図 2 A に示す光学部材内における符号付複屈折値の分布を示すグラフである。
図 3 Aは、 符号付複屈折値の概念を示す別の模式図であり、 図 3Bは、 図 3 A に示す光学部材内における符号付複屈折値の分布を示すグラフである。
図 4 Aは、 光学系を構成する複数の石英ガラス部材を示す側面図であり、 図 4 Bは、 図 4 Aの光学系を構成する石英ガラス部材の断面図である。
図 5は、 本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系の一例を示す概 略構成図である。
図 6は、 本発明の石英ガラス部材の製造方法の一例を示すフローチャートであ る。
図 7は、 本発明において用いられる合成炉の概略構成図である。
図 8は、 本発明にかかる石英ガラス部材の製造に用いるパーナの一例を示す概 略構成図である。
図 9は、 本発明の石英ガラス部材の製造方法の各工程において施される熱処理 による石英ガラスバルク内の温度の時間変化の一例を示すプロフィールである。 図 1 0は、 本発明石英ガラス部材により構成された投影光学系の製造方法の一 例を示すフローチャートである。
図 1 1 Aは、 本発明の投影光学系を構成する光学部材内の符号付複屈折値の測 定点を示す光学部材の断面図であり、 図 1 1 Bは、 図 1 1 Aに示す光学部材内の 平均符号付複屈折値の分布を示すグラフである。
図 1 2 Aは、 本発明の投影光学系を構成する光学部材内の符号付複屈折値の測 定点を示す光学部材の別の断面図であり、 図 1 2 Bは、 図 1 2 Aに示す光学部材 内の平均符号付複屈折値の分布を示すグラフである。
図 1 3 Aは、 本発明の投影光学系を構成する光学部材内の符号付複屈折値の測 定点を示す光学部材の別の断面図であり、 図 1 3 Bは、 図 1 3 Aに示す光学部材 内の平均符号付複屈折値の分布を示すグラフである。
図 1 4は、 本発明の投影露光装置の一例を示す概略構成図である。
図 1 5 A及び図 1 5 Bは、 図 1 4に示す投影露光装置の照明光学系の構成の一 例を示す概略構成図である。
図 1 6 Aは、 従来の投影露光装置の一例を示す概略構成図であり、 図 1 6 Bは 図 1 6 Aの投影露光装置に用いられるフライアイレンズの断面図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、 場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説 明する。 なお、 図面中、 同一及び相当部分については同一符号を付するものとす る。
先ず、 本発明の石英ガラス部材について説明する。
本発明の石英ガラス部材は、 2 5 0 nm以下の特定波長を有する光と共に使用 される合成石英ガラス製石英ガラス部材であって、 石英ガラス部材の光軸との交 点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度の分布の最大値と最小値との差が 5 O p p m以下であり、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直 な面内の複数の箇所の複屈折値を測定し、 複数の複屈折値をその進相軸の向きが 光軸との交点に対して放射方向のときを正、 前記放射方向に垂直なときを負とし て求められる複数の符号付複屈折値が— 2 . 0〜十 2 . O nm/ c mである。 石英ガラス部材内に存在する水酸基は、 石英ガラスの構造を安定化させる作用 があり、 レーザが照射された際に石英ガラス中の酸素欠乏型の欠陥(V o ) (≡S i— S i三、 ここで、 三は三重結合ではなく、 3つの酸素と結合していることを 示す) に起因する 1 6 O nm付近の吸収帯が石英ガラス部材内に生成することを 抑制して石英ガラス部材の耐紫外線性を向上させる作用がある。 しかし、 その一 方で、 石英ガラス部材内の水酸基の分布状態は石英ガラス部材内の複屈折の分布 に大きな影響を及ぼすことが本発明者らが行なつた検討により明らかになつてい る。
このような石英ガラス部材内の水酸基濃度及び水酸基の分布状態の制御は、 後 述するように、 石英ガラスバルクを合成する合成工程において、 多重管パーナの 各管から噴出するガスの種類 (原料、 酸素又は水素) 及びその流量等の噴出条件 を適宜調節すると共に、 各種の石英ガラスバルクの合成法に応じてその後の具体 的な合成処理を適宜調節することにより可能である。 例えば、 石英ガラスバルク を堆積させるターゲット又は容器と、 パーナとの相対的な位置関係や、 夕一ゲッ
ト又は容器の回転数を調整しつつ石英ガラスバルクを合成することにより石英ガ ラス部材内の水酸基濃度及び水酸基の分布状態の制御を行うことが可能である。 上記のように石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の 水酸基濃度の分布の最大値と最小値との差が 5 O ppm以下であれば、 内部の光 軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内において求められる複数の符号付複屈 折値が— 2. 0〜十 2. 0 nm/ cmである高い光透過性及び耐紫外線性を有す る石英ガラス部材を得ることが容易にできる傾向が大きくなる。 また、 これらの 高レ、光透過性及び耐紫外線性を有する石英ガラス部材を複数枚使用して構成され る光学系においても光学系全体の光透過性の低下が抑制される。 更に、 複数の石 英ガラス部材を用いて光学系を構成する際に、 使用する石英ガラス部材の光軸と の交点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度の分布の最大値と最小値との 差が 5 Oppm以下であり、 且つ、 内部の光軸との交点を中心とする光軸に垂直 な面内において求められる複数の符号付複屈折値が— 2. 0〜十 2. Onm/c mであれば、 後述するように、 各々の石英ガラス部材の有する符号付複屈折値の 分布に基づいて互いの複屈折値の分布が打ち消し合うように容易に配置すること ができる。
一方、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基 濃度の分布の最大値と最小値との差が 5 Oppmを超えると、 石英ガラス部材内 部の複屈折の度合が大きくなると共に複屈折の分布も不均一となり、 石英ガラス 部材の各製造工程における諸条件、 例えば石英ガラスバルクの冷却工程における 降温速度等を調整しても複屈折の分布を均一化することが困難となる傾向が大き くなる。
また、 本発明の石英ガラス部材が 18 Onm以下の波長を有する真空紫外線レ 一ザと共に用いられる場合、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に 垂直な面内の水酸基濃度は 1 Oppb〜5 O ppmであることが好ましい。 石英 ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度が 50 p
pmを超えると、 水酸基が 15 Onm付近に吸収帯を有するため石英ガラス部材 の初期透過率が低下する傾向が大きくなる。 一方、 石英ガラス部材の光軸との交 点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度が 10 p p b未満であると石英ガ
リ :
ラス部材の構 k造が不安定となる傾向が大きくなると共に石英ガラス部材の光軸と の交点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度の最大値と最小値の差が 50 ppmを超える傾向が大きくなる。
更に、 本発明の石英ガラス部材が 180 nm〜250 nmの波長を有する紫外 線レーザと共に用いられる場合、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光 軸に垂直な面内の水酸基濃度は 10 ppb〜 1000 ppmであることが好まし い。 石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度 は 1 Oppb未満であると、 180nm〜250 nmの波長を有する紫外線レー ザのレーザビームに対して光透過性が低下する傾向がある。 一方、 石英ガラス部 材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度は 100 Oppm を超えると、 水酸基濃度分布の制御が困難になる。
また、 本発明者らは、 本発明の石英ガラス部材において内部の光軸との交点を 中心とする光軸に垂直な面内において求められる複数の平均符号付複屈折値 jが下記式を満たす場合に、 このような光学部材を用いて光学系を構成すること により、 光学系の良好な結像性能を得ることができることを見出した。 例えば、 このような光学系としては、投影露光装置の照射光学系、投影光学系が挙げられ、 また、 レチクル等に用いることにより、 レチクルの長寿命化が達成可能となる。 - 2. 0≤Bi j≤+ 2. 0 nm/cm ( 1)
h
Bij =^1_ (2) [式 ( 1 ) 及び ( 2 ) 中、
iは、 前記光学部材 Lの番号 (i = l , 2, ···, m; 2≤m) を示し、
jは、 前記光学部材 Lにおける光軸に垂直な有効断面上に想定される、 前記光 軸を中心とし且つ該光軸からの半径が互いに相違する同心円 Cの番号 ( j = 1, 2 , ···, n; 1≤n) を示し、
kは、 前記同心円 Cの円周上にある測定点の番号 (k二 1, 2, ···, h; 1≤ k) を示し、
Aukは、 光学部材 L iにおける同心円 の円周上にある k番目の測定点 P i」 kにおける前記符号付複屈折値を示し、
は、光学部材 L iにおける同心円 の円周上にある測定点の符号付複屈 折値の相加平均である平均符号付複屈折値を示す]
石英ガラス部材内の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内において求め られる複数の平均符号付複屈折値 Buが上記の範囲を超える場合、 すなわち、 平 均符号付複屈折値 B i jがー 2. Onm/c m未満である場合及び/または平均符 号付複屈折値 Buが +2. 0 nm/cmを超える場合、 光学部材の平均符号付複 屈折値 Β^、 更には、符号付複屈折値 Aijkの石英ガラス部材内におけるばらつ きが大きいことになる。 このような石英ガラス部材から構成された光学系に光を 照射した場合、 光の通る位置によって符号付複屈折値 Aijkの差が大きいため、 光束の波面に乱れを生じ、 光学系の結像性能が極端に低下する傾向がある。
更に、 本発明の投影光学系は、 光学部材 L iの中心 Oi周辺の符号付複屈折値 が、 0. 2 nmZcm以下であることが好ましい。 光学部材に照射される光のほ とんどは、 光学部材の中心部に光軸を持っため、 上記の条件を満たす光学部材を 用いることにより、 中心部に複屈折を有する光学部材を用いた場合と比較して複 屈折の影響を大幅に低減することが可能となる。
また、 本発明の石英ガラス部材は、 複数枚を組にして光学系を構成する場合に おいて石英ガラス部材 L iにおいて平均符号付複屈折値 B の半径方向の分布 が、 中心〇i以外に極値を持たないことが好ましい。 このように石英ガラス部材 の符号付複屈折値の分布が中心以外に極値を持たないものであれば、 光学系全体
での符号付複屈折特性値を見積もることが容易であり、 個々の部材の複屈折の影 響を効果的に打ち消し合って所望の光学性能を得ることが可能となる。
次に、 本発明の石英ガラス部材を使用して構成される光学系の一例について説 明する。 図 5は、 本発明の石英ガラス部材を使用して構成される投影光学系の一 例を示す概略構成図である。
図 5に示す投影光学系 1000は、 第 1物体としてのレチクル R側より順に、 正のパワーの第 1レンズ群 G 1と、 正のパワーの第 2レンズ群 G 2と、 負のパヮ 一の第 3レンズ群 G 3と、 正のパワーの第 4レンズ群 G 4と、 負のパワーの第 5 レンズ群 G 5と、正のパワーの第 6レンズ群 G 6とから構成されている。そして、 物体側 (レチクル R側) 及び像側 (ウェハ W側) においてほぼテレセントリック となっており、 縮小倍率を有するものである。 また、 この投影光学系の N. A. は 0. 6、 投影倍率が 1/4である。
この投影光学系においては、 L45、 L46、 L 63、 L 65、 L 66、 L 6 7の 6箇所に、 色収差を補正する目的でフッ化カルシウム単結晶を用いる。
上記の本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系は、 先に述べた
( 1) 〜 (2) 式の算出法により、 各光学部材 L 1 1〜L 6 10について光軸 A Xとの交点を中心とする光軸 AXに垂直な面内の平均符号付複屈折値の分布を計 測し、 更に以下に説明する光学系全体の符号付複屈折特性値 Hを算出して、 この 光学系全体の符号付複屈折特性値 Hがー 0 · 5〜十 0· 5 nmZcmとなる配置 条件を満たすように各光学部材が互いに組み合わされている。
ここで、 本発明の石英ガラス部材により構成された光学系における 「光学系全 体の符号付複屈折特性値 H」 について図 4 A及び図 4 Bに基づき説明する。
先ず、 下記式に従い、 各石英ガラス部材 L iごとに計測された平均符号付複屈 折値 B i jと石英ガラス部材 L iの見かけの厚み T iとの積である平均符号付複屈 折量を示し を算出する。
ここで、 Ί\は、 石英ガラス部材 L iの見かけの厚みを示す。 この見かけの厚 みとしては、 石英ガラス部材 L iの有効断面内の厚みの平均値、 又は、 光学系内 に配置し Eた場合に石英ガラス部材 L iの上下の位置に組み合わされる他の部材と
:
のマツチングによる実効的な厚みのどちらかが適宜選択されることになる。
次に、 下記式に従い、 光学系全体における平均符号付複屈折量 の総和を総 光路長 Dで除した符号付複屈折値の平均変化量 を算出する。
G | = ^ ~· (4)
J D
ここで、 Dは、 下記式で表される光学系全体の見かけの総光路長を示す
m
(5)
i=l
次に、 下記式に従い、 光学系全体における符号付複屈折値の平均変化量 G jの 総和を同心円の数 nで除した光学系全体の符号付複屈折特性値 Hを算出する。
n
このようにして求めた光学系全体の符号付複屈折特性値 Hが下記式を満たす場 合にその光学系全体は優れた結像性能を示し、 このような光学系を備える投影露 光装置は優れた解像度を示すことになる。
- 0.5≤H≤ + 0.5nm/cm (7)
各石英ガラス部材を上記の符号付複屈折値に基づく配置条件を満たすように組 み合わせることにより、 個々の石英ガラス部材の有する複屈折値の不均一な分布 を進相軸の向きに注目して定量的に評価することができ、 更に石英ガラス部材の 複屈折値の分布が互いに打ち消し合うようにそれぞれの符号付複屈折値から光学 系全体の符号付複屈折特性値を定量的に見積もりながら光学系を組み上げること
が可能となるので、 良好な結像性能を有する投影光学系を得ることができる。 また、 本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系は、 石英ガラス部 材が、投影光学系全体の実効光路に基づく符号付複屈折値のストレール(Strehl) 値が 0 . 9 3以上となる配置条件を更に満たすように互いに組み合わされている ことが好ましい。
本発明者らは石英ガラス部材内の複屈折の分布の評価について、 石英ガラス部 材有効断面の中心及びその周辺部の実効光路を考慮した符号付複屈折値のス卜レ —ル強度を用いることが有効であることを見出した。 本発明者らによりはじめて 導入された複屈折のストレール値は、 有効断面を通過する光線の実効光路を考慮 しているため、 光学系全体の符号付複屈折特性値による評価とあわせることによ り、 石英ガラス部材内の更に精密な複屈折の分布の評価を行うことができる。 この符号付複屈折値のストレール値による各石英ガラス部材の配置条件は下記 式に基づいて表現される。
0.93≤S (8)
(9)
[式 (7 ) 〜 (9 ) 中、 えは光源の波長を示す。 は、 光学系全体の光線追跡試験 により石英ガラス部材 L iについて得られる実効光路に基づく符号付複屈折値の 有効半径方向に対する分布から決定される符号付複屈折値の平均値を示す。びは、 光学系全体の光線追跡試験により石英ガラス部材 L iについて得られる実効光路 に基づいた符号付複屈折値の有効半径方向に対する分布から決定される符号付複 屈折値の標準偏差を示す。 S iは、 各石英ガラス部材 L iごとの実効光路に基づ
いた符号付複屈折値のストレール (Strehl) 強度を示す。 Sは、 各石英ガラス部 材 L iを全て組み合わせた場合における光学系全体の実効光路に基づいた符号付 複屈折値のストレール強度を示す。 ]
また、 本発明の石英ガラス部材により構成された光学系は、 各石英ガラス部材 L iにおいて平均符号付複屈折値 B uの半径方向における分布曲線の勾配の最 大値 F iが、 半径方向の幅 1 0 mm当たり 0 . 2 n m/ c m以下であることが好 ましい。 このような石英ガラス部材を用いて光学系を構成することにより、 光学 系良好な結像性能を得ることができる。 更にこのような光学系を投影露光装置に 備えた場合には、 ウェハ面全体にわたって均一な解像度が得られる。 平均符号付 複屈折値 B i」の半径方向における分布曲線の勾配の最大値 F iが大きいというこ とは、 石英ガラス部材の平均符号付複屈折値 Β ^、 更には、符号付複屈折値 A u kのばらつきが大きいことになる。 平均符号付複屈折値 B の半径方向における 分布曲線の勾配の最大値 F iが、 半径方向の幅 1 0 mm当たり 0 . 2 nm/ c m より大きい石英ガラス部材に光を照射した場合、 光の通る位置によって符号付複 屈折値 A i j kの差が大きいため、 光束の波面に乱れを生じ、 光学系の結像性能が 極端に低下する傾向がある。
次に、 本発明の石英ガラス部材の製造方法及び本発明の石英ガラス部材により 構成された光学系の製造方法について説明する。 なお、 ここでは、 石英ガラス部 材により構成された光学系としては、 投影露光装置に使用される投影光学系を例 に説明する。
図 6は、 本発明の石英ガラス部材の製造方法の一例を示すフローチャートであ る。
図示の通り、 本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系の製造方法 は、 主として石英ガラスバルク (石英ガラスインゴッ ト) を合成する石英ガラス バルク合成工程 1 0 0と、 合成した石英ガラスバルクを冷却する石英ガラスバル ク冷却工程 1 2 0と、 冷却した石英ガラスバルクを熱処理する石英ガラスバルク
熱処理工程 1 4 0と、 熱処理済みの石英ガラスバルクから石英ガラス部材の切り 出しを行う石英ガラスバルク切断工程 1 6 0と、 切り出した石英ガラス部材の熱 処理を行う石英ガラス部材の熱処理 1 8 0とから構成されている。
一般的な光学ガラスの場合、 部材内部に発生する歪を低減する手法として、 一 般に溶融後固化したガラスに対して徐冷操作が行われる。 これは、 溶融後固化し たガラスをゆつく りとした速度で温度を下げることにより、 部材内部に残留する 永久歪 (permanent strain) を取り除く操作である。 多成分系の光学ガラスにお いては、 例えば歪点 (strain point) 以上の十分に高い温度、 (光学ガラスの場合 通常数百。 C) で所定時間保持し、 その後できる限り遅い冷却速度で冷却すること により、 ほぼ無歪 (strain free) に近いガラスを得ることができる。
このような徐冷操作を行なうことができる理由は、 一般的な光学ガラスの製造 においては、 ガラス熔解 (glass melting) 時に均質化を目的として溶融状態にな つたガラスを白金製の撹拌翼などを用いて撹拌を行うため、 ガラスが完全に均質 化され、 ガラス内に熱膨張率などの熱的物性の偏りが存在しない状態を作り出す ことが可能なためである。 従って、 無限に長い時間でガラスを準静的に冷却する ことができれば理論上は光学ガラス内の歪をゼロにすることが可能になる。
しかし、 石英ガラスの場合は、 このような熔解により得られた光学ガラスとは 全く異なる挙動を示すことがわかった。 石英ガラスは、 その熱膨張率が一般的な 光学ガラスより一桁小さい。 そのため、 石英ガラスは、 その内部における歪の度 合を光学ガラスよりもはるかに容易に低減することが可能なはずである。しかし、 それにもかかわらず、 石英ガラスは、 上記の徐冷操作を行い、 光学ガラス並の非 常に遅い冷却速度で冷却した場合であってもその内部に歪が残留していまい、 十 分に除去できなレ、場合が多く見られるのである。
これは、 石英ガラスの合成工程における熱処理や合成工程とほぼ同等の温度領 域において施されるその他の熱処理の際に、 通常の徐冷操作を行ってもそれを取 り去ることができない程度の石英ガラス内の不均一な温度分布、 石英ガラス内の
不均一な不純物の分布、或いは S i 02の不均一な構造分布が発生しているからで あると考えられる。 例えば、 石英ガラスバルク内部に不純物が不均一な状態で分 布していると、 これに起因した不均一な熱膨張率分布が石英ガラスバルクの内部 に生じる。 そのため、 石英ガラスバルクを十分に時間をかけて冷却しても、 この 不均一な熱膨張率分布に起因する収縮の程度の差が内部に生じてしまうため、 歪 を生じてしまう。
更に、 石英ガラスは粘性が低下する温度が非常に高く、 また、 溶融温度と揮発 を起こす温度が近く、 溶融状態を得ようとすると石英ガラスの揮発が激しく進行 するようになるため、 光学ガラスのように、 撹拌翼を用いるような完全な均質化 を行う事ができない。
従って、 本発明の石英ガラス部材の製造方法では、 石英ガラスバルクを得る合 成工程の段階において、できる限りその内部に含まれる不純物や S i 02の構造分 布の分布状態を均一にして、 より均質な石英ガラスバルクを合成することを意図 した。
先ず、 石英ガラスバルク合成工程 1 0 0について説明する。
本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系に用いられる石英ガラス 部材は、 例えば、 a ) ケィ素化合物を酸水素火炎中で加水分解し、 得られたガラ ス微粒子を夕ーゲット上に堆積させると同時に透明ガラス化を行い、 透明石英ガ ラスを得る方法と、 b ) ケィ素化合物を酸水素火炎中で加水分解してガラス微粒 子 (いわゆるス一ト) を得、 該ガラス微粒子を堆積させて多孔質ガラス (いわゆ るスート体) を形成して該多孔質ガラスを軟化点 (好ましくは融点) 近傍以上の 温度で透明化させ、 透明石英ガラスを得る方法等を用いて合成する。
a ) の方法は直接法、 b ) の方法はスート法と呼ばれる。 ここで、 a ) のスー ト法における多孔質ガラスの形成方法は特に限定されず、 VA D法、 O V D法、 ゾルゲル法などが用いられる。
上記の直接法及びスート法において、 原料に用いるケィ素化合物としては、 へ
キサメチルジシロキサン (HMD S)、 ォクタメチルシクロテトラシロキサン (0 MCT S)、 テトラメチルシクロテトラシロキサン (TMCT S)等のシロキサン 類、 メチルトリメ トキシシラン、 テロラエ卜キシシラン、 テトラメ トキシシラン 等のシラン類、 等の有機ケィ素化合物; S i C l4、 S i HC 13等のケィ素の塩 化物; S i F4、 S i2F6等のケィ素のフッ化物;その他 S iH4、 S i2Hs等 のケィ素化合物が挙げられる。 これらのケィ素化合物の中でも、 有機ケィ素化合 物及びケィ素のフッ化物を用いることは、 石英ガラスへの塩素の混入量が低減さ れ、 耐紫外線性の優れた石英ガラスが得られる傾向にあるので好ましい。
以下に、 直接法 (火炎加水分解法とも呼ばれる) により石英ガラス部材を製造 する方法を説明する。
図 7に、 本発明において用いられる石英ガラスインゴッ卜 470を合成するた めの合成炉 400を示す。
石英製バ一ナ 410は多重管構造となっており、 炉の上部から夕一ゲット 42 0にその先端部を向けて設置されている。 炉壁は炉枠 440及び耐火物 430に より構成されており、 観察用の窓 (図示せず)、 I Rカメラ監視用窓 450、 及び 排気管 460に接続された排気口 490が設けられている。 炉の下部には、 石英 ガラスィンゴット 470形成用の夕一ゲット 420が配設されており、 夕一ゲッ ト 420は支持軸 480を介して炉の外にある XYステージ (図示せず) に接続 されている。 支持軸 480はモー夕により回転可能とされており、 XYステージ は X軸サーボモー夕および Y軸サーボモータにより X方向および Y方向に 2次元 的に移動可能とされている。
次に、 図 7における多重管構造を有するバ一ナ 4 10の一例を図 8に概略的に 示す。 図 8のパーナは、 中心部に配置された第一の管 60 1と、 第一の管の周囲 に同心円状に配置された第二の管 602と、 第二の管の周囲に同心円状に配置さ れた第三の管 603と、 第三の管の周囲に同心円状に配置された第四の管 604 と、 第四の管の外周と該第四の管の内周との間に配置された複数の第五の管 60
5と、 第四の管の周囲に同心円状に配置された第六の管 6 0 6と、 該第四の管の 外周と該第六の管の内周との間に配置された複数の第七の管 6 0 7と、 を備えた ものである。
ここで、 原料がハロゲン化ケィ素の場合、 第一の管 6 0 1からは窒素、 へリウ ム、 酸素、 水素等のキャリアガスで希釈されたハロゲン化ケィ素が噴出される。 なお、 ハロゲン化ケィ素が常温で液体の場合にはこれを加熱してガス化させ、 ま た、常温で気体の場合はそのままマスフローコントローラを用いて流量制御して、 それそれキャリアガスと共に第一の管 5 0 1に導入される。 また、 原料が有機ケ ィ素化合物の場合、 マスフローコントローラで流量制御をしながらベーパライザ によりガス化した後、 窒素、 ヘリウム等のキャリアガスと共に第 1の管 6 0 1に 導入される。 ここで、 ケィ素化合物の種類に応じて、 酸素ガス又は水素ガスが第 二の管 6 0 2から第七の管 6 0 7までの管の所定の管から所定の条件 (流量、 流 速等) で噴出される。 具体的には、 ハロゲン化ケィ素を原料に用いた場合には、 内側、 すなわち第二の管 6 0 2から順に酸素、 水素、 水素、 酸素、 水素、 酸素を 噴出させることによって、本発明にかかる石英ガラスを好適に得ることができる。 また、 有機ケィ素化合物を原料に用いた場合には、 内側、 すなわち第二の管 6 0 2から順に水素、 酸素、 水素、 酸素、 水素、 酸素を噴出させることによって、 本 発明にかかる石英ガラスを好適に得ることができる。
なお、 図 8においては、 同心円上に配置された五重の管とそれらの管の間に配 置された複数の細管とを備えたパーナについて説明したが、 同心円上に配置され た七重の管とそれらの管の間に配置された複数の細管とを備えたパーナを用いる ことによつても、 本発明にかかる石英ガラス部材を好適に得ることができる。 バ一ナ 4 1 0から酸素含有ガス、 水素含有ガスが噴出され、 これが混合され火 炎を形成する。 この火炎中に原料のケィ素化合物をキヤリアガスで希釈してバー ナの中心部から噴出させると、原料が加水分解されて石英ガラス微粒子(スート) が発生する。 これを、 回転、 揺動するターゲット上に堆積させ、 これと同時に溶
融 ·ガラス化することにより、 透明石英ガラスのインゴットが得られる。 このと き、 インゴット上部は火炎に覆われており、 インゴット上部の合成面の位置を常 にパーナから等距離に保つように夕ーゲットが Z方向に引き下げられる。
この石英ガラスバルク合成工程 1 0 0において、 多重管パーナの各管から噴出 するガスの種類 (原料、 酸素又は水素) 及びその流量等の噴出条件を適宜調節す ることにより、 石英ガラスバルク内の水酸基濃度及び水酸基の分布状態の制御を 行なうことができる。
具体的には、 多重管パーナ 4 1 0の各管から噴出するガスの種類 (原料、 酸素 又は水素) 及び流量等の噴出条件を適宜調節する他に、 夕ーゲット 4 2 0を揺動 幅がィンゴット直径の 1 0〜 5 0 %以下、 揺動速度 1 0 0 mm/ s e c以下で揺 動運動させる。 夕一ゲット 4 2 0の揺動幅が 1 0 %未満であると得られる石英ガ ラスバルク内部の水酸基濃度のばらつきが大きくなる傾向にあり、 また、 摇動幅 が 5 0 %を越えると石英ガラスバルクの形成が困難になる傾向にある。 更に、 揺 動速度が 1 0 O mm/ s e cを越えると石英ガラスバルクの形成が困難となる傾 向にある。 なお、 ターゲット 4 2 0の揺動運動の向きが反転するときに、 その揺 動速度は O mmZ s e cとなる。 このように、 ターゲット 4 2 0の揺動運動を行 なう目的の一つとして、 パーナ 4 1 0からの酸水素火炎の化学的組成上、 夕一ゲ ヅト上に形成される石英ガラスバルク 4 7 0の S i 0 2構造の中に水酸基がある 程度の濃度と分布を有して含有されることが挙げられる。 そのため、 パーナ 4 1 0とターゲット 4 2 0上の石英ガラスバルク 4 7 0が形成される合成面 (石英ガ ラスノ レク上部の酸水素火炎にさらされる面) の位置関係を常に一定の条件の下 で変化させることにより、 夕一ゲット 4 2 0上に形成される石英ガラスバルク 4 7 0内に水酸基を均一に分散させ、 不均一な分布を防止する。 このようなの夕一 ゲッ 卜 4 2 0の揺動運動により、 パーナ 4 1 0により加熱されるターゲッ ト上に 形成される石英ガラスバルク 4 7 0の合成面の位置が常に変化するので、 石英ガ ラスバルク 4 7 0内の水酸基などの不純物の分布の均一化を行なうことのみなら
ず、 温度分布も均一化も効果的に行なうことができるようになる。 その結果、 石 英ガラスバルク合成工程 1 0 0において規定される石英ガラスバルク内の S i〇 2の構造分布もより効果的に均一化される。 なお、 ターゲット 4 2 0は回転運動 のみを行い、 パーナ 4 1 0側を X Y揺動運動させても良く、 この場合にも同等の 作用効果が得られる。
また、 ターゲット 4 2 0の X Y揺動運動を行わない場合は、 パーナ 4 1 0から 噴出されるガスの酸水素比率を理論空燃比の 1 : 2より水素過剰側で燃焼させこ とにより、 石英ガラスバルク内の温度分布及び水酸基濃度分布を均一化すること ができる。 更に、 夕一ゲット 4 2 0上に形成される石英ガラスバルクの酸水素火 炎の当たる部位をターゲット 4 2 0の中心から 5 mm以上、 より好ましくは 1 5 mm以上オフセッ卜させることにより、 石英ガラスバルク内の水酸基濃度分布、 S i 02の構造分布を均一化することができる。 このオフセット量を大きくする ことにより、 石英ガラスバルクの合成面の中央部に原料ガスが集中して供給され るのを防ぐことができ、石英ガラスバルクの合成面の温度が低下する現象を防ぎ、 石英ガラスバルクの合成面内の水酸基濃度分布や温度分布を均一に保つことがで きる。 なお、 複数のパーナを用いて合成を行うことにより、 原料ガスが石英ガラ スバルクの合成面の中央に集中して供給されるのを防ぐことができ、 1つのバー ナでオフセッ卜を行ったときと同様の効果が得られる。
更に、 ターゲット 4 2 0の回転数は、 7 . 0〜 5 0 r p mとすることが好まし い。 このようにすることにより、 石英ガラスバルクの合成面内の水酸基濃度分布 を効果的に均一化することが可能となる。 ターゲット 4 2 0の回転数が、 5 O r p mを超えると、 夕一ゲット上に堆積される石英ガラス微粒子が減少してしまう という不具合が生じる。 一方、 7 . 0 r p m未満であると、 ターゲット上に石英 ガラス微粒子を均一に堆積させることが困難となる傾向が大きくなる。
上記の石英ガラスバルクの合成面内の水酸基濃度分布を効果的に均一化するた めの夕一ゲット 4 2 0の最適な回転数は、 夕一ゲット上に堆積される石英バルク
の直径の大きさにも依存する。 例えば、 ターゲット上に堆積される石英バルクの 直径の大きさが 2 0 0 mm以下の場合には、 ターゲット 4 2 0の回転数は、 2 0 ~ 5 0 r p mとすることが好ましい。 この場合には、 石英バルクの直径の大きさ が比較的小さいので、 ターゲット 4 2 0の回転数が 2 0 r p m未満となると、 夕 ーゲット上に石英ガラス微粒子を均一に堆積させることが困難となる傾向が大き くなり、 ひいては石英ガラスバルクの合成面内の水酸基濃度分布を均一化するこ とができなくなる。 また、 ターゲット上に堆積される石英バルクの直径の大きさ が 2 0 0 mmを超える場合には、 ターゲット 4 2 0の回転数は、 7 . 0〜2 0 r p mとすることが好ましい。 この場合には、 石英バルクの直径の大きさが比較的 大きいので、 ターゲット 4 2 0の回転数が、 2 0 r p mを超えると、 ターゲット 上に堆積される石英バルクの外周部の周速度が速くなりすぎる為、 夕ーゲッ 卜上 に堆積される石英ガラス微粒子が減少してしまうという不具合が生じる。 なお、 直径の大きさが 2 0 0 mm以下の石英バルクを合成し、 これを成形して直径 2 0 0 mmを超える部材を製造する場合には、 石英ガラスバルクの成長方向に沿って 圧力変形或いは熱変形させて大口径化することにより、 合成時に得られる水酸基 濃度分布の状態を維持した部材を製造することができる。
更に、 石英ガラス部材の有効断面の中心周辺の符号付複屈折値が— 0 . 2〜十 0 . 2 nm/ c mである石英ガラス部材を得る方法としては、 大口径の石英ガラ スバルクを製造し、 ここから所望の口径の石英ガラス部材を切り出すことが最も 簡易な方法である。 この場合、 石英ガラスバルクと、 石英ガラス部材の幾何学的 中心を一致させることが必要となる。 大口径の石英ガラスバルクは、 口径の小さ い石英ガラスバルクと比較して符号付複屈折値の分布がフラットとなる傾向があ るため、 ここから切り出された石英ガラス部材内の複屈折の分布もフラットとな る。 これは、 石英ガラスバルクの合成面中央部の温度勾配が、 石英ガラスバルク 側面に近い合成面周辺部の温度勾配より小さいことによると考えられる。
更に、 有効断面の中心周辺以外に符号付複屈折値の分布の極値を持たない石英
ガラスを得る際もやはり大口径の石英ガラスバルクを製造し、 その符号付複屈折 値の分布を確認して中心部以外に複屈折を持たないように石英ガラス部材を切り 出す。 あるいは、 複屈折が緩和される充分に高い温度で保持した後、 徐々に冷却 するァニール操作を行うことにより、中心部の複屈折が 0.2 nm/cm以下で、 中心部以外に極値を持たない符号付複屈折値の分布を有する石英ガラス部材を得 ることができる。
符号付複屈折値の最大値と最小値の差が 2. OnmZcm以下、 あるいは符号 付複屈折値の半径方向に対する符号付複屈折値の分布の勾配の最大値が、 幅 10 mmに対して 0. 2 nm/cm以下といった、 部材内の符号付複屈折値の分布の ばらつきの小さい石英ガラス部材を得る際にも大口径の石英ガラスバルクから切 り出す方法ゃ複屈折を緩和するようなァニール操作を行うことが効果的である。 また、 石英ガラスバルク合成工程の石英ガラスバルク上部 (合成面) の温度分布 を最適化する等、 合成条件を制御することによつても、 符号付複屈折値のばらつ きを小さくすることが可能である。
次に、 図 6に示す石英ガラスバルク冷却工程 120について説明する。
石英ガラスバルク合成工程 120においては、 1500〜1800°Cの温度領 域における降温速度を 5〜10°C/mi nに制御し、 0. 01〜0. 15MPa
(abs)の圧力領域における不活性ガス雰囲気中において前記石英ガラスバルクを 冷却する。
合成した石英ガラスバルクは、 1800°C以上の高温領域において粘性変形を させることができる。 そしてこの石英ガラスバルクを 1800°C以下に冷却する 際に、冷却速度を制御することで一般の光学ガラスのように撹拌できないまでも、 石英ガラスバルク内の水酸基等の不純物の分布状態及び S i 02の構造分布状態 の均質化をある程度行うことができる。 このような高温の温度領域で一旦生成し た石英ガラスバルク内の不純物の分布、 或いは石英ガラスバルク内の S i 02の 構造分布は、 1200°C未満の温度領域における徐冷操作では完全に消すことが
できない。 そのため、 1200°C以上の高温の温度領域における熱処理における が最終的な石英ガラスバルク内の複屈折の分布状態を決定する。
本発明者らは、 1500〜 1800°Cの温度領域における冷却速度、 より好ま しくは 1550〜1650°Cの温度領域における冷却速度が、 石英ガラス部材内 部の複屈折の大きさ及びその分布状態を左右する大きな要因であることを見いだ した。
石英ガラスバルク合成工程の段階で生成した石英ガラスバルク内の水酸基濃度 分布や S i02の構造分布は、 その後の熱処理や均質化工程において完全に消去 する事はできないが、 石英ガラスインゴットを冷却する際の温度管理を行うこと により、 内部に発生する複屈折の度合いの小さい石英ガラスバルクを得ることが できる。 特に重要なのは 1500〜1800°Cの温度領域における冷却速度、 よ り好ましくは 1550〜1650°Cの温度領域における冷却速度であり、 この温 度領域における冷却速度を 0. 1〜10°C/mi nとして制御し、 0. 0 1〜0. 15MPa (abs) の圧力領域における不活性ガス雰囲気中において石英ガラス バルクを冷却することにより、 石英ガラスバルク内の水酸基濃度分布や合成工程 において規定される石英ガラスバルク内の S i 02の構造分布をある程度緩和さ せることができる。 また、 石英ガラスバルク冷却工程において、 石英ガラスノ ル クに不必要な圧縮応力や引っ張り応力がかかることを防止するために、 石英ガラ スバルクの成形ワク (molding frame) 及び成形容器 (molding vessel) を設け ずに、石英ガラスバルクは合成炉内に平置き(自己保持)にすることが好ましい。 ここで、 1500〜 1800°Cの温度領域の熱履歴が支配的であるため、 18 00°Cを超える温度領域においては、 冷却速度を上記の条件で制御してもその影 響は小さい。 また、 1500°C未満の温度領域の熱履歴は、 後の石英ガラス部材 熱処理工程 180におけるァニール処理で調整可能であるため、 1500°C未満 の温度領域においては、 冷却速度を上記の条件で必ずしも制御する必要はない。 また、 1500〜 1800 °Cの温度領域における冷却速度が、 0. 1 °C/m i n
未満であると、 失透等の不具合が生じ、 一方、 10°C/mi nを超えると歪の不 具合が生じる。 更に、 この石英ガラスバルク冷却工程における不活性ガスの分圧 が、 0. O lMPa未満であると、 脱ガス等の不具合が生じ、 一方、 0. 15M P aを超えると歪の不具合が生じる。
なお、 図 6には図しないが、 合成炉内での石英ガラスバルクの温度を調整でき ない場合、 石英ガラスバルクをこの冷却速度以上で冷却させざるを得な!/、場合或 いは、 装置上の制約で、 石英ガラスバルク冷却工程における温度制御が充分に行 えない場合には、 石英ガラスバルクを室温まで一旦冷却して、 合成炉から石英ガ ラスバルクを取り出した後、 所定の熱処理装置において再度 1800°C以上の所 定温度まで昇温し、 1500〜 1800°Cの温度領域における冷却速度を 0. 1 ~ 10°C/mi nとして冷却しても良い。 この場合にも、 内部の複数の測定点に おける平均符号付複屈折値が— 2. 0〜+2. Onm/cmである石英ガラス部 材を得ることができる。 なお、 上記の説明において、 石英ガラスバルクを再度 1 800°C以上の所定温度まで昇温した際に、 例えば、 昇温速度が比較的速い場合 など、 石英ガラスバルクの内部温度を当該所定の温度に均一化する必要がある場 合には、 必要に応じて所定時間保持してもよい。
以上のように合成工程あるいは合成後の冷却工程において、 1800°C以上の 温度から冷却する際の冷却速度を制御することにより、 内部の複数の測定点にお ける平均符号付複屈折値が一 2. 0〜+2. 0 nm/cmである石英ガラス部材を 得ることができる。
次に、 図 6に石英ガラスバルク切断工程 160としてに示すように、 熱処理済 みの石英ガラスバルクを切り出して所望の形状及び大きさを有する石英ガラス部 材を得る。
次に、 図 6に示す石英ガラス部材熱処理工程 180について説明する。
石英ガラスバルク切断工程 160において、 切り出した石英ガラス部材を、 急 速加熱 短時間保持 急速冷却といった熱処理を施して石英ガラス部材内の符号
付複屈折値のばらつきを抑制する。 例えば、 先ず、 切り出した石英ガラス部材を
1 2 0 0 °C以下の所定温度にまで昇温する。 次に、 必要に応じてその所定温度に おいて切り出した石英ガラス部材の温度を所定時間保持して当該石英ガラス部材 の内部温度を均一化する。 次に、 1 2 0 0 °C以下の所定温度領域における冷却速 度を所定値に制御して冷却して、切り出した石英ガラス部材をァニール処理する ( なお、 上記の 「 1 2 0 0 °C以下の所定温度」 とは、 一般に徐冷点と呼ばれる 1 0 0 0 °C;〜 1 2 0 0 °Cの温度領域ないの温度である。 ァニール処理は、 石英ガラス バルク内の複屈折の大きさを低減し、 その分布状態を均一化する効果があるが、 1 5 0 0〜 1 8 0 0 °Cの温度よりも高温の熱履歴による歪分布を完全に均一化す ることはできない。 また、 ァニール処理後の冷却速度が速いと、 熱応力による歪 が石英ガラスバルク内に残存する現象が起こるため、 好ましくは 6 0 0 °C付近ま での冷却速度を 1 °C/分以下、 さらに好ましくは 0 . 5 °CZ分以下とする。
このようにして、 図 5に示した光学系を構成する様々な形状を有する石英ガラ ス部材の候補が製造される。 すなわち、 例えば、 図 5に示した投影光学系を製造 する場合、 図 5に示した石英ガラスレンズ L 1 1に対して同じ形状と大きさを有 する複数枚の石英ガラスレンズが製造される。
ここで、 本発明の石英ガラス部材の製造方法は、 上記のように石英ガラスバル クを得る段階で石英ガラスバルクの内部の水酸基濃度分布と S i 02の構造分布 を所望の状態に制御する場合の他に、 先ず、 内部の水酸基濃度分布の制御のみを 施した石英ガラスバルクを製造し、 更に、 石英ガラスバルクを切断して部材の原 形を製造した後に当該部材の原形に熱処理を施す場合もある。
この場合の石英ガラス部材の製造方法について、 図 6に従い説明する。 先ず、 石英ガラスバルク合成工程 1 0 0において、 複数の管を有するパーナを備えた合 成炉を使用して、 パーナの複数の管から原料と燃焼ガスとを噴出させることによ り原料を酸水素火炎中で加水分解し、 内部における所定の面内の複数の箇所にお いて測定される水酸基濃度の最大値と最小値との差が 5 0 p p m以下となる石英
ガラスバルクを合成する。 次に、 石英ガラスバルク冷却工程 120において、 石 英ガラスバルクを合成炉内に保持した状態で冷却速度を制御せずに当該石英ガラ スバルクを合成炉の外部環境温度との温度差に基づき冷却する。 次に、 石英ガラ スバルク切断工程 1 60において、 石英ガラスバルクを切り出して所望の形状及 び大きさを有する石英ガラス部材を得る。
そして、 このようにして得られた内部の水酸基濃度分布のみ所望の状態に制御 された石英ガラス部材を後段の石英ガラス部材処理工程 180において以下のよ うに熱処理する。 先ず、 図 6に図示しない石英ガラス部材第一熱処理工程におい て、 石英ガラス部材を 0. 0 1〜0. 1 5MPa (abs) の圧力領域における不 活性ガス雰囲気中に置き、 例えば、 1〜 1 0°C/mi nの昇温速度に制御して当 該石英ガラス部材を 1 600〜2300°Cの間の所定の温度にまで昇温させる。 次に、石英ガラス部材第二熱処理工程において、石英ガラス部材を 0. 0 1〜0. 15MPa (abs) の圧力領域における不活性ガス雰囲気中に置き、 当該石英ガ ラス部材を 1 500〜 1800°Cの温度領域における冷却速度を 5〜 10°CZm i nに制御して冷却する。このようにすることにより、、光軸との交点を中心とす る光軸に垂直な面内の複数の箇所において測定される水酸基濃度の最大値と最小 値との差が 5 Oppm以下であり、 光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内 の複数の箇所において測定される複数の複屈折値とその進相軸の向きとに基づい て求められる複数の符号付複屈折値が一 2. 0-+2. Onm/cmである石英 ガラス部材を得る事ができる。
なお、 石英ガラス部材処理工程 1 80は、 必要に応じて以下の熱処理工程をも うけてもよい。 すなわち、 石英ガラス部材第一熱処理工程と石英ガラス部材第二 熱処理工程との間に、 石英ガラス部材を 1 600〜2300°Cの保持温度におい て所定時間保持することにより、 昇温された石英ガラス部材の内部温度を十分均 —化する石英ガラス部材第三熱処理工程を設けてもよい。 この石英ガラス部材第 三熱処理工程を含む場合の石英ガラス部材処理工程 180に基づく熱処理による
石英ガラスバルク内の温度の時間変化の一例を示すプロフィールを、図 9に示す c 上記の本発明の石英ガラス部材により製造した石英ガラス部材を紫外線あるい は真空紫外線レーザ用の光学部材として用いる場合には、 石英ガラス中に含まれ る水素分子濃度が 5 X 1 0 1 7個 Z c m3以上であることが好ましい。 石英ガラス 部材内の水素濃度を制御して水素分子を多く含む石英ガラス部材得る方法が提案 されているが、 合成後に 5 0 0 °C以上の温度領域における高温熱処理を行うこと により石英ガラス部材中に含まれる水素分子が石英ガラス表面から抜けてしまう ことがある。 そこで、 本発明においては、 上記の各工程において、 例えば、 水素 ド一プ等の目的で行う熱処理ゃァニール処理などの石英ガラスバルク或いは石英 ガラス部材を昇温する必要が生じる場合には、 好ましくは 1 °C/分以上、 さらに 好ましくは 2 °C /分の速度で昇温することすることで、 拡散により石英ガラス表 面から水素分子が放出されるのを防止する。 なお、 先に述べたように、 水素ドー プ等の目的で行う熱処理ゃァニール処理後の冷却速度は、 熱応力による歪が石英 ガラス内部に残存する現象を防止するため、 好ましくは 6 0 0 °C付近までの降温 速度を 1 °C/分以下、 さらに好ましくは 0 . 5 °C/分以下とする。
更に、 得られる石英ガラスバルクが脈理 (striae) を有する場合であっても、 本発明に従い石英ガラスバルクを熱処理することにより、 石英ガラスバルク内の S i 0 2の構造分布と水酸基濃度分布を所望の状態に保持すると同時に脈理も除 去することが可能となる。 すなわち、 先ず、 室温の状態に置かれた脈理を有する 石英ガラスバルクを、 合成炉内において酸水素パーナで再び加熱するか又は雰囲 気炉内に移して再び加熱することにより、 合成工程における温度に近い 1 8 0 0 °C以上の温度領域まで昇温し、 石英ガラスバルクの粘性変形を伴う均質化操作 を行う。 次に、 必要に応じて 1 8 0 0 °C以上の温度領域で所定時間保持する。 次 に、 1 5 0 0〜 1 8 0 0 °Cの温度領域における冷却速度を 1 0 °C/m i nに制御 して冷却する。 その後、 必要に応じて 1 2 0 0 °C以下の所定の温度領域において 石英ガラスバルクのァニール処理を施す。 例えば、 1 0 0 0〜6 0 0 °Cまでの温
度領域における冷却速度を 10°C/hに制御して冷却する。
また、 得られる石英ガラス部材が脈理 (striae) を有する場合であっても、 上 記の説明と同様に本発明に従い石英ガラス部材を熱処理することにより、 石英ガ ラス部材内の S i 02の構造分布と水酸基濃度分布を所望の状態に保持すると同 時に脈理も除去することが可能となる。
更に、 本発明の石英ガラス部材が 180 nm以下の波長を有する真空紫外線レ 一ザと共に用いられる場合、 先に述べたように、 石英ガラス部材の光軸との交点 を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度は 1 0 ppb〜50 ppmであるこ とが好ましい。 このような石英ガラス部材は、 スート法のうち VAD法により製 造することができる。
すなわち、ケィ素化合物を酸水素火炎中で加水分解してガラス微粒子(スート) を得、 前記ガラス微粒子をターゲット上に堆積させて多孔質ガラス (ス一ト体) を形成させて、 得られた多孔質ガラスに脱水処理を施した後、 これを軟化点 (好 ましくは融点) 近傍以上の温度で透明化させて石英ガラスインゴットを得る方法 である。
実際には、 多重管構造を有するバ一ナを用いて、 各管から噴出するガスの種類 (原料、 酸素又は水素) 及びその噴出条件 (流量、 流速等) を適宜調節して石英 ガラス微粒子を合成する。
ここで、この製造方法により得られた石英ガラスのフッ素含有量は 0.5 wt % 以上であることが好ましく、 また、 フッ素含有量の分布は最大値と最小値との差 が 1. Owt %以下であることが好ましい。 フッ素含有量が 0. 5wt %未満で あると厚さ 1 cm当たりの内部吸収が 5 %ノ cmを越える等十分な光透過性が得 られない傾向にあり、 また、 フッ素含有量の分布において最大値と最小値との差 が 1. Owt %を越えると透過率のばらつきが増大する傾向にある。
石英ガラス部材の光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度は、 以下のようにして測定する。
はじめに、 中心より、 半径方向にテストピースを切り出し、 厚さ 1 0 mmに研 磨する。 次に、 赤外分光光度計を使用して水酸基の吸収波長である 1 3 8 0 nm または、 2 7 3 0 nmの吸収量を測定し、 水酸基濃度分布を計算して求める。 な お、 製造工程の再現性が良好な場合には、 石英ガラス部材の光軸との交点を中心 とする光軸に垂直な面内の水酸基濃度は、 或いは得られる石英ガラス部材ごとに 毎回行う必要はない。
図 1 0は、 本発明の石英ガラス部材により構成された光学系の製造方法の一例 を示すフローチャートである。
図示の通り、 本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系の製造方法 は、 主として石英ガラス部材を製造するステップ 2 0 0と、 得られた石英ガラス 部材内の符号付複屈折値 A i j kを測定するステップ 2 3 0と、 得られた符号付複 屈折値 A i」 kから平均符号付複屈折値 B i j及びとから平均符号付複屈折値 E i j を算出するステップ 2 4 0と、 ステップ 2 4 0において得られた石英ガラス部材 内の符号付複屈折値の分布データから使用する石英ガラス部材を選択するステツ プ 2 5 0と、 ステップ 2 5 0において選択された複数の石英ガラス部材を投影光 学系全体の複屈折複屈折特性値に基づく配置条件のもとに配列するステップ 2 6 0と、 ステップ 2 6 0において組み上げた投影光学系について実効光路に基づく 符号付複屈折値のストレール値を測定するステツプ 2 7 0と、 ステップ 2 7 0に おいて得られたス卜レール値に基づく配置条件のもとに石英ガラス部材を再び配 列するステップ 2 8 0とから構成されている。
以下、 図 1 0のフローチャートに従い、 本発明の石英ガラス部材により構成さ れた投影光学系の製造方法の詳細について説明する。
はじめに、 ステップ 2 0 0、 すなわち、 図 6に示した本発明の石英ガラス部材 の製造方法により製造した石英ガラス部材を複数準備する。
次に、 ステップ 2 3 0において準備した複数の石英ガラス部材について 1つず つその符号付複屈折値を測定する。 すなわち、 石英ガラス部材の光軸に垂直な有
効断面内に仮定される複数の同心円上にある複数の測定点 P i j kにおける符号付 複屈折値 A i j kを測定する。
以下に本発明において用いられる複屈折の測定法について説明する。 まず、 位 相変調法について説明する。 光学系は光源、 偏光子、 位相変調素子、 試料、 検光 子を配置している。光源としては H e - N eレーザ一またはレーザーダイォ一ド、 位相変調素子としては光弾性変換器が用いられる。 光源からの光は偏光子により 直線偏光となって位相変調素子に入射する。 試料上に投射される位相変調素子か らの光束は素子により直線偏光 円偏光 ~ 直線偏光と連続的に偏光状態が変化す る変調光である。 測定に際しては、 試料上の測定点に入射する光束を中心に試料 を回転させ、 検知器の出力のピークを見つけ、 そのときの振幅を測定することに よって進相軸 (または遅相軸) の方向と複屈折位相差の大きさを求める。 光源に ゼーマンレーザ一を用いれば試料を回転させない測定も可能になる。 また、 位相 シフト法、光へテロダイン干渉法も、本発明において使用することが可能である。 その他、 測定精度ではやや劣るが以下のような方法での測定も可能である。 回転検光子法では、 光源と光検出器の間の試料を偏光子と回転検光子で挟むよ うな装置構成となっている。 被測定資料の後においた検光子を回転させながら検 知器からの信号を測定し、 検知器からの信号の最大値と最小値から位相差を求め る。
位相補償法では、 光源、 偏光子、 試料、 位相補償版、 検光子、 光検出器を配置 する。 偏光子と検光子の軸はお互いに直交状態に置く、 被測定試料に入射した直 線偏光は試料の複屈折により楕円偏光になるので、 位相補償版を調節してやるこ とにより直線偏光に戻してやる。 補償版を調節することにより、 検知器での信号 はほとんどゼロになる。 最も良く消光した位相補償値が複屈折の量となる。
クロスニコル光学系の中で標準試料を置き比較する簡便な方法でも、 測定試料 の厚みが十分あれば、 測定は可能になる。
複屈折の測定値には、 先に述べたように進相軸の方向が部材の直径と平行な方
向な場合は十、 垂直な方向を—の符号を付ける。 なお、 複屈折の測定値が小さい ような場合は進相軸は必ずしも直径と完全に平行もしくは垂直にはならず、 傾き を持つことがある。 この場合は直径に対して 45度の角度より平行に近いものは 十、 垂直に近いものは—の符号を付けて取り扱えばよい。
次に、 ステップ 240においてステップ 230で得られた石英ガラス部材 L i ごとの符号付複屈折値 Aijkから平均符号付複屈折値 を求める。 ここで、 平 均符号付複屈折値 B は、 有効断面の中心 Oiから等距離 r」にある同心円 上にある複数の測定点における複数の符号付複屈折値の相加平均である。
図 1 1 A、 図 1 1 B、 図 12 A、 図 12B、 図 13 A及び図 13 Bを用いて、 符号付複屈折値 A i j kから平均符号付複屈折値 B i jを求める場合について説明す る。
図 1 1 Aは、 石英ガラス部材 L 1の有効断面上の中心 からそれそれ rい r 2, r 3 , r4の半径を有する同心円 Cu, C12, C13, C14と中心〇から半径方 向にのびる 2つの直線 Q 10 1及び Q 102との交点 Pi iい P121, P131, P 141P112, P122, P132, P142を測定点とした場合の模式図である。 この場 合には、 同一の同心円の円周上にある 2つの測定点から得られる符号付複屈折値 の相加平均が石英ガラス部材 L 1の同心円ごとの平均符号付複屈折値となる。 す なわち、 同心円 Cその場合には、 同心円 の円周上にある測定点 と測定 点 P i 2とにおいて得られる符号付複屈折値 A i と A 2との相加平均が同心 円 C i iの円周上にある点群の符号付複屈折値を代表する平均符号付複屈折値 B J iとなる。 以下同様にして、 同心円 C12〜C14について平均符号付複屈折値 B12 〜: B i 4が得られる。 そして平均符号付複屈折値 B i〜 B i 4を中心 0 からの距離 の関数として図示することにより、 石英ガラス部材 L 1の半径方向に対する平均 符号付複屈値の分布を定量的に理解することができる。 例えば、 平均符号付複屈 折値 B! 14が全て正の値を取り半径方向に単調増加をしている場合には、図 1 1 Bに示すような石英ガラス部材 L 1の半径方向に対する平均符号付複屈値の
分布のプロフィールを得ることができる。
図 12 Aは、 石英ガラス部材 L 2の有効断面上の中心 0
2からそれそれ rい r 2 r 3 , r
4の半径を有する同心円 C
21, C
22, C
23, C
24と中心 0
2から半径 方向にのびる 2つの直線 Q
201及び Q
202との交点 P
2 1 1 P
22 1, P
23い P
24 い P
212, P
222, P
232 P
242を測定点とした場合の模式図である。 この場 合にも、図 1 1 Aにおいて説明したように同心円 C
2
について平均符号付 複屈折値 B
21〜; B
24が得られる。 そして平均符号付複屈折値 B
2 24を中心 0
2からの距離の関数として図示することにより、 石英ガラス部材 L 2の半径方 向に対する平均符号付複屈値の分布を定量的に理解することができる。 例えば、 平均符号付複屈折値 B
2 i B
24が全て負の値を取り半径方向に単調減少をして いる場合には、 図 12 Bに示すような石英ガラス部材 L 2の半径方向に対する平 均符号付複屈値の分布のプロフィールを得ることができる。
図 13 Aは、 石英ガラス部材 L 3の有効断面上の中心 03からそれぞれ r 15 r 2, r 3 , r 4, r 5の半径を有する同心円 C31, C32, C33, C34, C35と中心 03から半径方向にのびる 2つの直線 Q301及び Q 302との交点 P31 1 P321
? 33 15 I 34 1 35 1 P 312 ' 1 322 ' 332 P 342 ' ! 352 ^ S'J LJT?.し し/こ 場合の模式図である。 この場合にも、 図 1 1 Aにおいて説明したように同心円 C 31 C35について平均符号付複屈折値 B21〜: B25が得られる。 そして平均符号 付複屈折値 B31 B35を中心◦ 3からの距離の関数として図示することにより、 石英ガラス部材 L 3の半径方向に対する平均符号付複屈値の分布を定量的に理解 することができる。 例えば、 平均符号付複屈折値 B 3 33が正の値、 B34及 び B 35が負の値を取り、 これらの平均符号付複屈折値 B 3 33が r 2付近にお いて極大値をとり r2から r5にかけて半径方向に単調減少をしている場合には、 図 13 Βに示すような石英ガラス部材 L 3の半径方向に対する平均符号付複屈値 の分布のプロフィールを得ることができる。
更にステップ 240では、 このようにして得られた石英ガラス部材ごとの平均
符号付複屈折値 B , jと石英ガラス部材ごとの見かけの厚み T iから、 ( 3 )式に従 い石英ガラス部材ごとの平均符号付複屈量 E を算出する。
次に、ステップ 250において使用する石英ガラス部材を選択する。この際に、 図 5に示す投影光学系において示すように、 石英ガラス部材は投影光学系内にお いて果たす役割に応じてその有効断面がそれそれ異なるため、 図 4 Aにおいて示 したように全ての石英ガラス部材について最大有効半径が 1となるようにその有 効断面をノーマライズする。そしてノーマライズされた共通の有効半径のもとで、 全石英ガラス部材の平均符号付複屈折値 の半径方向の分布をみることによ り、 以下の石英ガラス部材の選択を行い、 投影光学系の各部位に使用する石英ガ ラス部材の候補を絞り込む。
このステップ 250における石英ガラス部材の選択条件は、 選択条件 25 1 ; 石英ガラス部材 L iの中心 0 i周辺の符号付複屈折値が 0. 2 nmZ c m以下で あること、 選択条件 252 ;石英ガラス部材 L iにおいて光軸との交点を中心と する光軸に垂直な面内の複数の箇所の平均符号付複屈折値 Bi が— 2. 0〜+2. Onm/cmであること、 選択条件 253 ;各石英ガラス部材 L iにおいて平均 符号付複屈折値 B i ,jの半径方向における分布曲線の勾配の最大値 F iが、 半径方 向の幅 10mm当たり 0. 2 nmZcm以下であること、 選択条件 254 ;石英 ガラス部材 L iにおいて平均符号付複屈折値 Buの半径方向の分布が、 中心 Oi 以外に極値を持たないこと、 である。
以上の選択条件 251〜254の全てか或いは少なくとも 1っをクリアする石 英ガラス部材を使用することにより、 結像性能の高い投影光学系をより効率良く 構成することができる。
次に、 ステップ 260において先に (7) で示した投影光学系全体の符号付複 屈折特性値 Hが— 0. 5〜十 0. 5 nm/cmとなるように石英ガラス部材を配 列する。 この時、 投影光学系全体の符号付複屈折特性値 Hは、 先に示した (5) 〜 (6) 式により算出される。 このように配列された投影光学系は優れた結像性
能を示す。
次に、 ステップ 2 4 0において投影光学系全体の実効光路に基づく符号付複屈 折値のストレ一ル (Strehl) 値が 0 . 9 3以上となる配置条件を更に満たすよう に互いに組み合わせる。 複屈折のストレール値は、 有効断面を通過する光線の実 効光路を考慮しているため、 光学系全体の符号付複屈折特性値による評価とあわ せることにより、 石英ガラス部材内の更に精密な複屈折の分布の評価を行うこと ができる。 複屈折のストレール値 Sは、 光線追跡試験により得られる符号付複屈 折値の半径方向の分布のデータを用いて (9 ) 式及び ( 1 0 ) 式に基づき算出さ れる。
例えば、 図 5に示した投影光学系 1 0 0 0の場合、 フッ化カルシウム単結晶か ら製造したレンズ L 4 5、 L 4 6、 L 6 3、 L 6 5、 L 6 6、 L 6 7を除く石英 ガラスレンズ L 1 1〜L 6 1 0に対応する符号付複屈折値の半径方向に対する分 布の測定結果をス卜レ一ル値計算用のコンピュータに入力する。そして、光軸上、 近軸域、 軸外等と、 光学系の収差計算等に用いられる光線追跡に準ずる手法によ り、 各レンズ上の光線通過ポイントを求め、 そのポイントに対応する符号付複屈 折値を式 ( 1 0 ) に代入し、 ストレール値を求める。 つまり、 種々の入射角度で 投影光学系 1 0 0 0に入射する複数の光線に対応する複数のストレール値を求め、 このうちの最低値をそのサンプルの組み合わせのストレール値と定める。
なお、 フッ化カルシウム単結晶から製作される 6枚のレンズの符号付複屈折の 分布については、 理論値をコンピュータに代入しても良いし、 標準的な複屈折値 の分布を有する材料の実測値を入力しても良い。 或いはこれら 6枚のレンズ用材 料を同時に作製し、 石英ガラスレンズと共に評価を行うことも可能である。
なお、 以上の投影光学系の製造方法においては、 石英ガラス部材を選択するス テツプ 2 5 0と、 ストレ一ル値を測定するステップ 2 7 0、 及びストレ一ル値に 基づいて石英ガラス部材を配列するステップ 2 8 0とを設ける場合について説明 したが、 本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系の製造方法は上記
形態に限定されるものではなく、 本発明の石英ガラス部材により構成された投影 光学系の製造方法においては、 上記の 3つのステップはいずれも省略可能なステ ヅプである。
また、 上記の説明においては、 石英ガラス部材ごとに平均符号付複屈折値 B の半径方向に対する分布を測定した際に、 全ての石英ガラス部材についてその中 心周辺の複屈折値がほぼゼ口であって、 半径方向における平均符号付複屈折値 B uの分布が僅かに単調増加するか、 或いは僅かに単調減少するような分布の場合 には、 上記の投影光学系全体の符号付複屈折特性値の代わりに投影光学系全体の 複屈折の影響を評価する基準として以下の方法により算出される値を目安とする こともできる。 すなわち、 石英ガラス部材内の平均符号付複屈折値 の半径方 向の値の相加平均をとりその部材を代表する符号付複屈折値とし、 全石英ガラス 部材について加算した値である。 この加算値が光学系全体でゼロとなるように部 材を組み合わせることにより、 簡便に複屈折の影響を考慮した部材の選択を行う ことが可能である。
図 1 4は、 本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系を備える投影 露光装置の一例の概略構成図を示す。 図 1 4において、 投影光学系 3 0 4の光軸 に平行な方向を Z方向、 紙面内にあって Z方向に垂直な方向を Y方向、 紙面及び Z方向に垂直な方向を X方向とする。
図 1 4に示す投影露光装置は、 主として露光光源 3 0 3と、 パターン原像の形 成されたレチクル Rと、 露光光源 3 0 3から出力される光をレチクル Rに照射す る照射光学系 3 0 2と、 レチクル Rから出力されるパターン像をウェハ (感光基 板) W上に投影する投影光学系 3 0 4と、 レチクル Rとウェハ Wの位置合わせを 行うァライメン卜系 3 0 5とから構成されている。
ウェハ Wは、 レべリングステージ (図示せず) 上に載置され、 このレべリング ステージは、 駆動モーター 3 2 0により投影光学系の光軸方向 (Z方向) に微動 可能な Zステージ 3 0 1上に設置されている。 Zステージ 3 0 1は、 駆動モ一夕
—3 2 0よりステップ ·アンド · リピート方式で 2次元方向 (X Y ) 方向に移動 可能な X Yステージ 3 1 5に載置されている。 レチクル Rは水平面内で 2次元移 動可能なレチクルステージ 3 0 6上に載置されている。 露光光源 3 0 3からの露 光光は、 照明光学系 3 0 2を介してレチクル Rに形成されたパターンを均一に照 明し、 レチクル Rのパターン像は投影光学系 3 0 4によってウェハ Wのショット 領域に露光転写される。 この露光光には、 2 4 8 n m ( K r Fエキシマレ一ザ)、 1 9 3 n m ( A r Fエキシマレ一ザ)、 1 5 7 n m ( F 2レーザ) 等の波長を有す る露光光を用いることができる。
X Yステージ 3 1 5は、 ウェハ W上の 1つのショヅト領域に対するレチクル R のパターンの転写露光が終了すると、 ウェハ Wの次のショット領域が投影光学系 3 0 4の露光領域と一致するようにステッピング移動される。 ゥヱハ Wが載置さ れたレべリングステージの 2次元的な位置はレベリングステージに固定された移 動鏡 3 4 0との距離をレーザー干渉計 (図示せず) で計測することによって、 例 えば 0 . 0 1 / m程度の分解能で常時モニターされており、 レーザー干渉計の出 力はステージコントロール系 3 1 1に供給されている。
レチクル Rはレチクルステージ 3 0 6上で、 レチクル R上の転写パターンの中 心が投影光学系 3 0 4の光軸 A Xと一致するように位置決めされる。 レチクル R の位置決めは、 レチクル: の外周付近に設けられた複数のレチクルァライメント マーク (レチクルマーク) を用いて行われる。 レチクルマークは、 X方向の位置 決めを行うためのレチクルマークと、 Y方向の位置決めを行うためのレチクルマ ークの 2種類のものが設けられている。 ァライメント系 3 0 5は、 露光光源 3 0 3から露光光の一部を分岐して取り出した露光光を照明光 (ァライメン卜光) と して使用する。 ァライメント系 3 0 5は各レチクルァライメントマークの位置に 1つずつ設けられている。
照明光学系 3 0 2を通過した照明光は、 レチクル Rのパターン領域の外側に設 けられたレチクルマークに入射する。 レチクルマークは、 例えば、 パターン周囲
の不透明部に形成された矩形の透明窓からなる。 レチクルマーク部で反射された ァライメン卜光は、 ァライメン卜系 3 0 5に再び入射する。 一方レチクルマーク を通過したァライメント光は、 投影光学系 3 0 4を通ってウェハ W上の各ショッ ト領域の周囲に設けられた基板ァライメントマーク (ウェハマーク) 上に入射す る。 ウェハマークは各ショット領域の周囲にそれそれ設けるのではなく、 ウェハ の所定の位置、 例えばゥヱハの外周部領域にのみ設けてもよい。 ウェハマークも レチクルマークに対応して X方向の位置決めを行うためのウェハマ一クと、 Y方 向の位置決めを行うためのウェハマークの 2種類のものが設けられている。 ゥェ ハマ一クからの反射光は入射光と逆の経路を迪り、 投影光学系 3 0 4、 レチクル マーク部を通過してァライメント系 3 0 5に再び入射する。
このようにしてァライメント系 3 0 5は、 レチクル Rとウェハ Wとからのァラ ィメン卜光の反射を入力することにより、 レチクル Rとウェハ Wとの相対的な位 置を検出する。このァライメント系 3 0 5の出力は主制御系 3 1 2に供給される。 そして主制御系 3 1 2の出力がレチクル交換系 3 0 7とステージコントロール系 3 1 1に供給されることにより、 レチクル Rとウェハ Wとの空間的な位置が調整 される。 その結果、 ウェハ W上の各ショット領域に形成されているパターンと、 これから転写露光するレチクル Rのパターン像との重ね合わせ精度を高精度に維 持することができる。
図 1 5 A及び図 1 5 Bは、 図 1 4に示す投影露光装置の照明光学系 3 0 2の詳 細な構造を示す概略構成図である。
図 1 5 Aは、照明光学系 3 0 2を図 1 4の Y方向からみた場合の正面図であり、 図 1 5 Bは、 照明光学系 3 0 2を図 1 4の X方向からみた場合の正面図である。 なお、 いずれの図においても照明光学系 3 0 2に入射する露光光の一部を分岐し て使用するァライメント系 3 0 2を省略している。
露光光源 3 0 3 (図示せず) からは、 2 4 8 n m ( K r Fエキシマレ一ザ)、 1
9 3 n m ( A r Fエキシマレーザ)、 1 5 7 n m ( F 2レーザ) 等の波長を有する
ほぼ平行な光束が出力され、 このときの平行光束の断面形状は矩形状となってい る。 この露光光源 3 0 3からの平行光束は、 所定の断面形状の光束に整形する光 束整形部としてのビーム整形光学系 2 0に入射する。 このビーム整形光学系 2 0 は、 Y方向に屈折力を持つ 2つのシリンドリカルレンズ (2 0 A、 2 0 B ) で構 成されており、 光源側のシリンドリカルレンズ 2 O Aは、 負の屈折力を有し、 X 方向の光束を発散させる一方、 被照射面側のシリンドリカルレンズ 2 0 Bは、 正 の屈折力を有し、 光源側のシリンドリカルレンズ Aからの発散光束を集光して平 行光束に変換する。 従って、 ビーム整形光学系 2 0を介した露光光源 3 0 3から の平行光束は、 Y方向の光束幅が拡大されて光束断面が所定の大きさを持つ長方 形状に整形される。 なお、 ビーム整形光学系 2 0としては、 正の屈折力を持つシ リンドリカルレンズを組み合わせたものでも良く、 さらにはアナモルフィックプ リズム等でも良い。
ビーム整形光学系 2 0からの整形された光束は、 第 1リレー光学系 2 1に入射 する。 ここで、 第 1リレー光学系 2 1は、 2枚の正レンズからなる正の屈折力の 前群(2 1 A、 2 I B ) と、 2枚の正レンズからなる正の屈折力の後群(2 1 C 2 1 D ) とを有しており、 第 1リレー光学系 2 1の前群 (2 1 A、 2 I B ) は、 この前群のレチクル R側 (後側) の焦点位置に集光点 (光源像) Iを形成し、 第 1 リレー光学系 2 1の後群 (2 1 C:、 2 1 D ) は、 その前群 (2 1 A、 2 I B ) の焦点位置に光源側 (前側) の焦点位置が一致するように配置されている。 そし て、 この第 1リレー光学系 2 1は、 露光光源 3 0 3の射出面と後述する第 1多光 源像形成手段としてのオプティカルィンテグレー夕 3 0の入射面とを共役にする 機能を有している。 この第 1 リレー光学系 2 1の機能によって、 露光光源 3 0 3 からの光の角度ずれに伴うオプティカルィンテグレー夕 3 0を照明する光束のず れを補正し、 露光光源 3 0 3からの光の角度ずれに対する許容度を大きく してい る。なお、露光光源 3 0 3からの光を第 1多光源形成手段へと導く導光光学系は、 ビーム整形光学系 2 0と第 1 リレー光学系 2 1とで構成される。
第 1リレー光学系 2 1を介した光束は、 直線状に 3列配列された複数の光源像 を形成する第 1多光源形成手段としてのオプティカルィンテグレー夕 3 0に入射 する。 このオプティカルインテグレ一夕 3 0は、 ほぼ正方形状のレンズ断面を有 する複数の両凸形状のレンズ素子が複数配置されて構成されており、 ォプティカ ルインテグレー夕 3 0全体としては長方形状の断面を有している。 そして、 各々 の両凸形状のレンズ素子は、 Y方向と X方向とで互いに等しい曲率 (屈折力) を 有している。
このため、 オプティカルィンテグレー夕 3 0を構成する個々のレンズ素子を通 過する平行光束は、 それそれ集光されて各レンズ素子の射出側には光源像が形成 される。 従って、 オプティカルインテグレ一夕 3 0の射出側位置 A1にはレンズ 素子の数に相当する複数の光源像が形成され、 ここには実質的に 2次光源が形成 される。
オプティカルィンテグレ一夕 3 0によって形成された複数の 2次光源からの光 束は、 第 2リレー光学系 4 0によって集光されて、 さらに複数の光源像を形成す る第 2多光源像形成手段としてのオプティカルインテグレー夕 5 0に入射する。 このオプティカルィンテグレ一夕 5 0は、 長方形のレンズ断面を有する複数の 両凸形状のレンズ素子が複数配置されて構成されており、 このレンズ素子は断面 形状がオプティカルインテグレ一夕 3 0の断面形状と相似になるように構成され ている。 そして、 オプティカルインテグレ一夕 5 0全体としては正方形状の断面 を有している。 また、 各々のレンズ素子は、 図 1 5 Aの紙面方向と図 1 5 Bの紙 面方向とで互いに等しい曲率 (屈折力) を有している。
このため、 オプティカルィンテグレ一夕 5 0を構成する個々のレンズ素子を通 過するオプティカルィンテグレー夕 3 0からの光束は、 それそれ集光されて各レ ンズ素子の射出側には光源像が形成される。 従って、 オプティカルインテグレ一 夕 5 0の射出側位置 A2には、 正方形状に配列された複数の光源像が形成され、 ここには実質的に 3次光源が形成される。
なお、 第 2リレー光学系 40は、 オプティカルインテグレー夕 30の入射面位 置 B1とオプティカルィンテグレー夕 50の入射面位置 B2とを共役にすると共 に、 オプティカルィンテグレー夕 30の射出面位置 A1とオプティカルィンテグ レー夕 50の射出面位置 A2とを共役にしている。 更に、 上記の説明においてォ プティカルインテグレー夕 30及びオプティカルインテグレー夕 50は、 フライ アイレンズの形状で示したが本発明の投影露光装置の照明系に使用されるォプテ ィカルインテグレー夕の形状は特に限定されるものではなく、 例えば極めて微小 な複数のレンズ素子から構成されるマイクロフライアイや、 ロヅド状内面反射型 の光学素子 (カレイ ドスコープロヅド) や、 回折光学素子 (D〇E) 等を用いる ことが可能である。
この 3次光源が形成される位置 A2若しくはその近傍位置には、 所定形状の開 口部を有する開口絞り A Sが設けられており、 この開口絞り A Sにより円形状に 形成された 3次光源からの光束は、 集光光学系としてのコンデンサー光学系 60 により集光されて被照射物体としてのレチクル R上をスリッ ト状に均一照明する, また、 図 14に示す投影光学系 304は、 投影光学系全体の符号付複屈折特性 値が一 0. 5〜十 0. 5 nm/cmとなる配置条件を満たすように各石英ガラス 部材が互いに組み合わされている。 また、 各石英ガラス部材が、 投影光学系全体 の実効光路に基づく符号付複屈折値のストレール (Strehl) 値が 0. 93以上と なる配置条件を更に満たすように互いに組み合わされている。 更に、 使用されて いる石英ガラス部材は、 その有効断面の中心周辺の符号付複屈折値が、 —0. 2 〜+0. 2 nm/cmであり、 平均符号付複屈折値の半径方向の分布が、 中心以 外に極値を持たないものであり、 光軸との交点を中心とする光軸に垂直な面内の 複数の箇所の平均符号付複屈折値 B がー 2. 0〜+ 2. O nm/cmであり、 平均符号付複屈折値 B の半径方向における分布曲線の勾配の最大値 Fiが、 半 径方向の幅 1 Omm当たり 0. 2 nm/cm以下である。
このように本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系、 照射光学系
及びレチクルを備えることにより、 石英ガラス部材の複屈折による影響を最小限 に抑制することができるので、 解像度の高い投影露光装置を得ることが可能とな る。
以下、 実施例及び比較例を挙げて本発明の石英ガラス部材、 その製造方法及び 石英ガラス部材により構成された光学系を用いた投影露光装置について詳細に説 明するが、 本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例 1 ]
図 7に示す合成炉を用いて、 図 6の製造法に従い、 直接法 (火炎加水分解法) により石英ガラス部材を製造した。 まず、 石英ガラス合成工程において、 合成炉 内の温度を 1300〜 1 500。Cに保持して四塩化ケィ素を多重管パーナの中央 部より噴出させ、 酸水素火炎中で加水分解してガラス微粒子を得た。 このとき、 図 8に示したものと同様の構造を有する多重管パーナを使用した。 ここで、 原料 ガス、 酸素ガス及び水素ガスの噴出条件は、 以下のように設定した。 なお、 この 際に、 図 8の多重管パーナに関して説明した要素に相当する要素については同一 の表現を用いて説明する。 すなわち、 原料ガスの流量を 30 g/min、 第一の 水素ガスの流量を 75 s lm、 第一の水素ガスの流速を 53m/s e c、 第二の 水素ガスの流量を 1 50 s lm、 第二の水素ガスの流速を 6 m/s e c、 第三の 水素ガスの流量を 500 s lm、 第三の水素ガスの流速を 3 m/s e c、 第一の 酸素ガスの流量を 37. 5 s lm、 第一の酸素ガスの流速を 37 m/s e c、 第 二の酸素ガスの流量を 75 s lm、 第二の酸素ガスの流速を 2 1 m/s e c、 第 三の酸素ガスの流量を 250 s lm、 第三の酸素ガスの流速を 9 m/s e cとし た。
このガラス微粒子を回転及び揺動が行われている夕一ゲット上に堆積すると同 時に透明化して 040 Omm t 800 mmの石英ガラスバルク 470を得た。 このとき、 ターゲッ トの回転速度を 7. 50 rpmに設定した。 また、 X軸方向 の揺動幅(ストローク)を、 X方向に 4 Omm, Y方向に 1 2 Ommに設定した。
このようにして、 内部における所定の面内の複数の測定点における水酸基濃度の 最大値が 1030 ppm、 最小値が 980 ppm、 すなわち内部における所定の 面内の複数の測定点における水酸基濃度の最大値と最小値との差が 5 0 p pmの 石英ガラスバルクを得た。 なお、 使用する炉とバーナーを変えて、 上記の合成条 件のもとで 10回の予備合成試験を先行して行なった結果、 上記の合成条件にお ける石英ガラスバルク内の水酸基濃度とその分布状態の再現性は、 ± 1 Oppm となり、 十分に信頼できる範囲あることを予め確認した。
次に、 石英ガラスバルク合成工程終了後、 排気流量を 1/1 0まで減少させ、 排気口及び炉の開口部からの熱のロスを防ぎながら、 石英ガラスバルク冷却工程 において、 1 500〜1800°Cの温度領域における冷却速度を 10°CZmi n に制御し、 0. 0 1〜0. 1 5MP a (abs) の圧力領域において合成した石英ガ ラスバルクを 1000°Cまで冷却した。 特に合成炉の開口部は、 合成炉内の熱を 保持するための開閉機構により調節した。
次に、 室温にまで冷却した石英ガラスバルクを石英ガラスノ レク切断工程にお いて切断し、 025 Ommx t 7 Ommの円筒形状のテストピースを切り出した。 このとき、 石英ガラスバルク外径から割り出した石英ガラスノ レク回転対称な中 心位置と切り出されるテストピースの中心位置を合わせた。
次に、 石英ガラス部材熱処理工程において、 ァニール処理のためこのテストビ —スを 1000°Cまで昇温して 1 0時間保持した。 その後、 このテストピースを 10°C/hの冷却速度に制御して 500°Cまで冷却し 10時間保持した。 その後 このテストピースを l°C/hの冷却速度に制御して再び室温にまで冷却し熱処理 済みのテストピースを得た。 このとき、 熱処理ゃァニールを行ったテストピース の熱処理中心とテストピースの中心位置を合わせた。
次に、 熱処理済みの円板状のテストピースについて、 平均符号付複屈折値 の半怪方向の分布を測定した。なお、複屈折の測定は、位相変調法により行った。 また、 測定点は、 図 13 Aに示したようにテストピースについて有効断面上に想
定される複数の同心円と、 有効断面の中心から半径方向にのびる 2つの直線との 交点とした。
この測定の結果、 熱処理済みの円板状のテストピースの平均符号付複屈折値 B の半径方向のばらつきは一 0 · 9 nm/cm〜― 0. l nm/cmの範囲内に あることを確認した。 また、 このテストピースの中心周辺の符号付複屈折値 Ai0 はいずれも一 0. 2〜十 0. 2 nm/cm以下であることを確認した。 また、 こ のテストピースが中心以外に平均符号付複屈折値 B uの極値を持たないことを 確認した。 更に、 平均符号付複屈折値 の半径方向の分布曲線の勾配の最大値 Fiが 10mmあたり 0. 2 nmZc m以下であることを確認した。
[実施例 2 ]
図 7に示す合成炉を用いて、 図 6の製造法に従い、 直接法 (火炎加水分解法) により石英ガラス部材を製造した。 基本的には、 図 6の製造法の各工程における 処理条件を以下に示すように変更した以外は実施例 1と同様にしてテストピース を製造した。
先ず、 石英ガラスバルク合成工程においては、 多重管パーナから噴出されるガ スの酸ガス/水素ガス比率を 1 : 3とし、 理論空燃比の 1 : 2より水素ガスリッ チな側の雰囲気中で燃焼させた。具体的には、原料ガスの流量を 30 g/mi n、 第一の水素ガスの流量を 75 s lm、 第一の水素ガスの流速を 52m/s e c、 第二の水素ガスの流量を 150 s lm、 第二の水素ガスの流速を 6m/ s e c、 第三の水素ガスの流量を 500 s lm、 第三の水素ガスの流速を 3 m/ s e c、 第一の酸素ガスの流量を 25 s lm、 第一の酸素ガスの流速を 25m/s e c、 第二の酸素ガスの流量を 50 s lm、 第二の酸素ガスの流速を 14m/s e c、 第三の酸素ガスの流量を 165 s lm、 第三の酸素ガスの流速を 6m/ s e cと した。
また、 石英ガラスバルクの酸水素火炎の当たる部位をターゲットの回転中心か ら 15mmの位置にオフセットした。 更に、 このとき、 ターゲットの回転速度を
7. 50 r pmとした。 そして、 ターゲットの XY揺動運動は行わなかった。 このようにして、 内部における所定の面内の複数の測定点における水酸基濃度 の最大値が 1050 ppm, 最小値が 1005 ppm、 すなわち内部における所 定の面内の複数の測定点における水酸基濃度の最大値と最小値との差が 45 pp mの石英ガラスバルクを得た。
次に、 石英ガラスバルクを特に温度制御を行わずに炉内に保持して冷却した。 得られた石英ガラスバルクから ø 400 X t 100の円筒形状のテス卜ピースを 切り出した。
ここで、 得られたテストピースは脈理を有するものであったため、 一旦室温ま で冷却した後、 テストピースを石英ガラス部材熱処理工程において、 カーボン発 熱体を熱源として備える熱処理炉内に配置し、 図 9に示した条件の下でテス卜ピ 一スにァニール処理を施した。
すなわち、 図 9に示すように、 0. IMP aの窒素ガス雰囲気中で昇温速度を 2 °C/m inに制御して熱処理炉内の温度を室温から 2000°Cまで昇温し、 約 0. 5時間保持した。 その後、 このテストピースを 2000°Cから 1000°Cま での温度領域における冷却速度を 10°C/mi nに制御して冷却した。 次に、 1 00分経過後に冷却を停止し、 テストピースの内部温度を均一化するために、 1 000°Cの状態で 1時間保持した。 次に、 ァニール処理のため、 100 o°cから 600°Cまでの温度領域における冷却速度を 10°C/hに制御してこのテストビ —スを冷却した。その後、 600°Cから室温の温度領域における冷却速度を 10°C /hに制御してこのテストピースを冷却した。
熱処理済みの円板状のテストピースについて、 平均符号付複屈折値 B i jの半 径方向の分布を測定したところ、 熱処理済みの円板状のテストピースの平均符号 付複屈折値 B i jの半径方向のばらつきは + 0. l nm/cm〜+ l . 0 nm/ cmの範囲内にあった。
このテストピースの中心周辺の符号付複屈折値 Ai。はいずれも— 0. 2〜十 0.
2 nm/cm以下であることを確認した。 また、 このテストピースが中心以外に 平均符号付複屈折値 の極値を持たないことも確認した。 更に、 平均符号付複 屈折値 Buの半径方向の分布曲線の勾配の最大値 Fiが 10 mmあたり 0. 2 n m/ c m以下であることを確認した。
[実施例 3 ]
図 6の製造法に従い、ス一ト法により石英ガラス部材を製造した。基本的には、 図 6の製造法の各工程における処理条件を以下に示すように変更した以外は実施 例 1と同様にしてテストピースを製造した。
まず、 石英ガラスバルク合成工程において、 酸水素火炎中でけい素化合物を加 水分解し、直径 180mm、長さ 500 mmの多孔質ガラス(ス一ト体)を得た。 このときの多重管パーナから噴出されるガスの噴出条件は、 ス一ト法で一般的に 行われている条件とした。 また、 ターゲットの回転速度は、 20 rpmに設定し た。
このスート体を塩素ガス/ヘリウムガス比率が 1 : 20の混合ガス雰囲気下に おいて、 1 100°Cにて 20時間脱水処理を行った。 その後、 1650°Cにて 1 5時間透明化処理を行った。 透明化処理後、 冷却速度を 5 °C/m inに制御して ス一ト体を 500°Cまで冷却した。 その後、 冷却速度を 5°C/mi nに制御して スート体を室温まで冷却した。
このようにして、 内部における所定の面内の複数の測定点における水酸基濃度 は全て 1 ppm以下であった。 すなわち内部における所定の面内の複数の測定点 における水酸基濃度の最大値と最小値との差が 1 ppm以下の石英ガラスバルク を得た。
得られた石英ガラスバルクから ø 250 X t 70の円筒形状のテストピースを 切り出した。 次にテストピースを石英ガラス部材熱処理工程を実施例 1と同様の 条件のもとで行なった。
熱処理済みの円板状のテストピースについて、 平均符号付複屈折値 B の半径
方向の分布を測定したところ、 熱処理済みの円板状のテストピースの平均符号付 複屈折値 B uの半径方向のばらつきは— 0. l nm/cm〜十 1. 8 nm/cm の範囲内にあった。
このテストピースの中心周辺の符号付複屈折値 Ai。はいずれも— 0. 2〜+0 2 nmZcm以下であることを確認した。 また、 このテストピースが中心以外に 平均符号付複屈折値 の極値を持たないことを確認した。 更に、 平均符号付複 屈折値 B の半径方向の分布曲線の勾配の最大値 Fiが 10mmあたり 0. 2 n m / c m以下であることを確認した。
また、 得られた石英ガラスのフッ素含有量は 0. 5wt%以上であり、 フッ素 含有量の分布は最大値と最小値との差が 1.0wt%以下であることを確認した。
[比較例 1 ]
図 7に示す合成炉を用いて、 図 6の製造法に従い、 直接法により石英ガラス部 材を製造した。 基本的には、 図 6の製造法の各工程における処理条件を以下に示 すように変更した以外は実施例 1と同様にしてテストピースを製造した。 合成時 のターゲットの回転速度は、 5. O rpmに設定した。 また、 合成時の XY摇動 を止めて、 ターゲットを X方向に ±0、 Y方向に ± 0の原点に停止させた状態で 回転のみさせた。
[比較例 2 ]
図 7に示す合成炉を用いて、 図 6の製造法に従い、 ス一ト法により石英ガラス 部材を製造した。 基本的には、 図 6の製造法の各工程における処理条件を以下に 示すように変更した以外は実施例 1と同様にしてテストピースを製造した。
合成時のターゲットの回転速度は、 5. O rpmに設定した。 また、 冷却工程 では、 温度制御をしなかった。 そのため、 1 500〜 1800°Cの温度領域にお ける冷却速度は、 100~20 (TCZhとなっていた。
く石英ガラス部材の評価試験 >
実施例 1、 実施例 2、 比較例 1及び比較例 2のテストピースに対して、 K r F
エキシマレーザ (波長; 2 4 8 n m) を 1 0分間照射し、 それぞれの初期透過率 と 1 0分経過後の透過率を測定した。 また、 スート法により製造した実施例 3の テストピースについては、 F2レーザ (波長; 1 5 7 nm) を 1 0分間照射し、 初期透過率と 1 0分経過後の透過率を測定した。 そして、 それそれのテストビー スのレ一ザ照射後 1 0分間における透過率の低下量を算出して比較することによ り、 それそれのテストピースのレーザ耐久性を評価した。
これらのテス卜ピースの試験結果を、 2 ; レーザ照射後 1 0分間における透過 率の低下量が 5 %未満、 1;レーザ照射後 1 0分間における透過率の低下量が 5 % 以上とした評価基準に基づいて表 1に示す。
衷 1
水酸^濃度の環 石英ガラ スバルク 符号付拟^折値 Bu 照 レーザ ! 射条 ί牛 iVJUll透過率 レーザ 人 と Ιύ小 ίιϋの 冷 ¾に Γ.¾における Uim/cin ') (%/cm) frl久件. 差 (ppm 冷却速度 (°C/min)
'雄 (列 1 50 10 KrF エキシマ 400 mJ/cnv1, 99.9 2 レーザ 1 κιΐζ
突施例 2 5 10 +0.1〜十 1.0 KrF エキシマ 400 mJ/cm:i, 99.9 2 レーザ 1 κιΐζ
'飾例 3 】≥ 5 — 0.1〜― 1.8 F2エキシマレ 50 mJ/cni:i, 95.0 2 一ザ 1 KHz
at m 1 250 10 —2.3〜+ 2.1 KrF エキシマ 400 mJ/cin;!, 99.9 1 レーザ 500 Hi
比 '|«ί列 2 50 湖〜 200
KrF エキシマ 400 inJ/cnv
!, 99.9 1
レーザ 1 KHz
ο
i
表 1からわかるように実施例 1〜 3のテストピースは、内部の複屈折が小さく、 初期透過率、 レーザ耐久性に優れたものであり、 2 5 0 n m以下の波長域の紫外 線光学系に用いられる光透過性部材として適したものであること確認された。 <石英ガラス部材から構成された光学系を備えた投影露光装置の評価試験 > 実施例 1〜 3及び比較例 1〜 2のテストピースを使用して以下に示す図 5に示 した構成の投影光学系 1 0 0 0を組み上げ、 図 1 4に示した投影露光装置にセッ 卜した場合の解像度を測定した。
なお、 上記の実施例 1 ~ 3及び比較例 1〜2のテストピースは、 これらを使用 して投影光学系を実際に組むためにそれそれ複数個用意した。 すなわち、 先ず複 数の石英ガラスバルクを先に述べた製造法と同じ条件のもとに製造し、 次いで製 造した複数の石英ガラスバルクから切り出すテストピースの平均符号付複屈折値
B i jの半径方向の分布特性が上記の実施例 1〜 3及び比較例 1〜 2のテストピ ースと一致するものをそれそれ複数個用意した。
[実施例 1〜 3から構成された投影光学系を備えた投影露光装置 1 ]
上記の実施例 1〜3において得られるテストピースをそれそれレンズ状に加工 して図 5に示す投影光学系 1 0 0 0を組んだ。 より詳しくは、 投影光学系 1 0 0 0を構成する石英ガラス部材のうち、 フッ化カルシウム結晶から製造したレンズ L 4 5、 L 4 6、 L 6 3、 L 6 5、 L 6 6、 L 6 7を除く残り 2 3枚を実施例 1 〜 3において得られるテストピースから構成した。 そして、 完成した投影光学系 に対して投影光学系系全体の符号付複屈折特性値 H、 及び符号付複屈折値のスト レール値 Sを算出して最も良好な値を示した配置のものを実施例 1とした。更に、 図 1 4に示した投影露光装置の投影光学系として使用した場合の解像度を測定し た。
[比較例 1及び比較例 2から構成された投影光学系を備えた投影露光装置 2 ] 比較例 1及び比較例 2において得られたテス卜ピースを用いた以外は上記の実 施例 1 ~ 3から構成された投影光学系と同様にして投影光学系を組んだ。 更に、
図 1 4に示した投影露光装置の投影光学系として使用した場合の解像度を測定し た。
以上の 2つの投影光学系の符号付複屈折に基づく光学特性とこれらを使用した 投影露光装置の解像度の測定値を表 2に示す。
表 2
表 2に示す 2つの投影露光装置の有する解像度の値から、 実施例 1〜 3のテス トビースから構成された投影光学系を使用した投影露光装置は、 優れた解像度を 示すことが明らかとなった。 また、 符号付複屈折値に基づく配置条件、 すなわち 投影光学系全体の符号付複屈折特性値 Hが— 0 . 5〜十 0 . 5 n m/ c mである 条件を満たす本発明の石英ガラス部材により構成された投影光学系は良好な結像 性能を示すことが確認された。 また、 本発明の石英ガラス部材により構成された 投影光学系を投影露光装置の投影光学系として使用した場合には、 非常に高い解 像度が達成されることが確認された。 実施例 1〜 3のテストピースを使用した投 影露光装置においては、 0 . 1 2〃mという高い解像度が達成されている。 一方、 比較例 1及び比較例 2のテストピースから構成された投影光学系は、 符 号付複屈折特性値 Hが + 0 . 5 nmZ c m以上であり良好な結像特性を示さず、 これらを用いた投影露光装置は、 実施例 1〜 3のように良好な値の解像度を得る ことができなかった。 産業上の利用可能性
以上説明したように、 本発明によれば、 石英ガラス部材内の複屈折値の不均一 な分布を進相軸の向きに注目して定量的に評価しつつ石英ガラス部材内の水酸基 濃度分布を所定の濃度範囲に制御してその分布状態を有効に均一化することがで きる。 更に、 石英ガラス部材内の複屈折の分布が互いに打ち消し合うようにそれ それの符号付複屈折値から光学系全体の符号付複屈折特性値を定量的に見積もり ながら光学系を組み上げることが可能となる。 従って、 石英ガラス部材内の複屈 折値の不均一な分布がその光透過性に与える影響、 或いは石英ガラス部材を使用 した光学系を備えた投影露光装置の解像度に与える影響を有効に抑制にすること が可能となり、 高い光透過性及び耐紫外線性を有する石英ガラス部材、 その製造 方法、 並びに高い解像度を得ることが可能な投影露光装置を提供することができ る。