明細書
2—ヒ ドロキシイソフラバノンシンターゼをコ一ドするポリヌクレオチド 技術の分野
本発明は、 新たに同定された 2—ヒドロキシィソフラバノンシン夕一ゼ及びこ れをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、 該ポリヌクレオチド により形質転換された形質転換体に関する。 背景技術
イソフラボン類は、 イソフラボン骨格を有する化合物であり、 特にマメ科植物 に多く含まれる。 植物において、 イソフラボン類はフアイ トァレキシンとして作 用することが知られている。 ファイ トァレキシンとは、 微生物の感染等のストレ スに対して、 植物が産生する抗菌性物質である。
また、 イソフラボン類、 特にダイゼインやゲニスティンは、 エストロジェン様 の作用を有する生理活性物質であり、 乳ガンや骨粗鬆症の予防の機能を有すると して注目されている。
また、 6 , 7 , 4 ' 一トリヒドロキシイソフラボン、 7, 8 , 4 ' 一トリヒド ロキシイソフラボン等、 強力な抗酸化物質として注目されている物質もある。 一方、イソフラボン類に富むマメ科植物を家畜の飼料として用いていたところ、 家畜の不妊化という問題が生じたという実例もある。
従って、 イソフラボン類の生産や、 植物の食品としての機能を高める、 植物の 耐病性を高める、 家畜の飼料として適当な植物を供給する等を目的とした镇物に おけるイソフラボン類の生産量の制御の可能性が注目を集めている。
ところで、 イソフラボンの骨格は、 図 1に示すように、 フラバノン類から 2— ヒドロキシィソフラバノン類への酸化的ァリール転位反応を経て生合成され、 そ の反応を触媒する酵素、 即ち 2—ヒドロキシィソフラバノンシン夕一ゼの存在が 知られている。 従って、 2—ヒドロキシイソフラバノンシン夕一ゼは、 イソフラ ボン類の合成において非常に重要な酵素である。
上記のような有用な活性を有するイソフラボン類の生産や、 植物におけるそれ らの生産量の制御のためには、 2—ヒドロキシイソフラバノンシン夕一ゼの単離 •精製や、 そのアミノ酸配列及びそれをコードする DNA配列の解明が重要であ るにもかかわらず、 これまでのところ、 その単離 '精製も、 アミノ酸配列 . cD N A配列の解明も実現されていなかった。
本発明者らは、 2—ヒドロキシィソフラバノンシン夕'一ゼの cDNAの単離と DN A及びアミノ酸配列の決定をなすべく、 植物材料、 培養条件、 mRNA誘導 等を、 鋭意研究した結果、 カンゾゥ (Glycyrrhiza echinata) のカルス培養 物を、 酵母抽出物によりエリシ夕一処理した後、 6~ 12時間経過した細胞から 作製した cDNAライブラリーから、 2—ヒドロキシイソフラバノンシン夕一ゼ をコードする cDN Aをクローニングすることに成功した。 発明の開示
ポリべプチド
本発明は、 配列番号: 2で表されるアミノ酸配列を実質的に含むアミノ酸配列 を有する 2—ヒドロキシィソフラバノンシン夕一ゼに関する。
以下、 「2—ヒドロキシィソフラバノンシン夕一ゼ」 を 「I F S」 と略す。 「配列番号: 2で表されるアミノ酸配列を実質的に含む」 とは、 当該アミノ酸 配列に、 欠失、 置換、 付加、 挿入等の変異があるものを含むことを意味する。 即 ち、 本発明の I FSは、 上記酵素活性が保たれる限り、 そのような変異を有する ものをも含む。 欠失、 置換、 付加、 挿入されるアミノ酸の数は、 例えば 1〜20 個、 好ましくは 1〜10個、 特に 1〜 5個であり得る。 例えば、 アミノ酸残基を 同様の特性の別のアミノ酸残基で置換したものであり得る。 典型的なかかる置換 は、 A l a、 Va l、 L e uおよび]: 1 e間、 36 ぉょび111 1^間、 酸性残基 八3 ぉょび01\1間、 A s nおよび Gi n間、 塩基性残基 L y sおよび A r g 間、 または芳香族残基 P h eおよび T y r間の置換である。
さらに、 本発明は、 請求の範囲 1記載の I F Sの抗原活性を有するポリぺプチ ドをも含む。
ポリヌクレオチド
さらに、 本発明は、 上記 2—ヒドロキシイソフラバノンシン夕一ゼをコードす るヌクレオチド配列または該ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を実 質的に含むポリヌクレオチドに関する。
ここで、 「2—ヒ ドロキシイソフラバノンシン夕ーゼをコードするヌクレオチ ド配列または該ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を実質的に含むポ リヌクレオチド」 とは、 当該ヌクレオチド配列からなる、 上記 I F Sをコードす る配列からなるポリヌクレオチドのほか、 該配列と縮重による配列の相違を有し うるポリヌクレオチド、 または 5, 側末端または 3, 側末端、 またはその両方に 用途に応じて適当な配列が付加されたポリヌクレオチドを含む意図である。 また、 本発明は、 配列番号: 1に含まれるヌクレオチド配列に対して 5 0 %以 上の相同性を有し、 且つ I F Sをコ一ドするヌクレオチド配列または該ヌクレオ チド配列に相補的な配列を実質的に含むポリヌクレオチドに関する。
「配列番号: 1に含まれるヌクレオチド配列」 とは、 配列番号: 1のヌクレオ チド配列またはその一部のヌクレオチド配列を意味する。
また、 「実質的に含む」 とは、 配列番号: 1に含まれるヌクレオチド配列に対 して 5 0 %以上の相同性を有し、 且つ I F Sをコ一ドするヌクレオチド配列また は該ヌクレオチド配列に相補的な配列からなるポリヌクレオチドのほか、 これら の 5 ' 側末端または 3, 側末端、 またはその両方に用途に応じて適当な配列が付 加されたポリヌクレオチドを含む意図である。
上記相同性は、 好ましくは 7 0 %、 より好ましくは 8 0 %以上、 さらに好まし くは 9 0 %以上、 特に 9 5 %以上である。
従って、 本発明は、 配列番号: 1の 1 4 4〜 1 7 1 2のヌクレオチド配列に対 して 7 0 %以上の相同性を有し、 且つ I F Sをコードするヌクレオチド配列また は該ヌクレオチド配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチドにも関する。 さらに、 本発明は、 配列番号: 1のヌクレオチド配列の少なくとも一部または 配列番号: 1の 1 4 4〜 1 7 1 2のヌクレオチド配列またはこれらに相補的なヌ クレオチド配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも一部にストリンジェント な条件下でまたは温和な条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに関す る。
これらのポリヌクレオチドには、 配列番号: 1のヌクレオチド配列または配列 番号: 1の 144〜1712のヌクレオチド配列またはこれらに相補的なヌクレ ォチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェン卜な条件下でまたは温和 な条件下でハイブリダィズする I F Sをコードするポリヌクレオチドのほか、 こ れらのポリヌクレオチドの断片であって、 プライマー又はプローブとして機能し うるものをも含む。
なお、 温和なハイブリダィゼ一ションの条件及びストリンジェントなハイプリ ダイゼーシヨンの条件は、 例えば、 Sambrook 等、 Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd. Vol.1, pp.1. 101-104, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989) (こ言 3載されて ヽる。
さらに、 本発明は、 カンゾゥ、 好ましくは Glycyrrhiza echinataの細胞を ェリシター処理し、 1〜12時間好ましくは、 1〜8時間、 特に 3〜6時間後の 細胞から作製した cDNAライブラリ一から、 請求の範囲第 6項、 第 8項, 第 9 項記載のポリヌクレオチドをプローブとしてクロ一ニングして得られる、 2—ヒ ドロキシイソフラバノンシンターゼをコードするポリヌクレオチドまたは cDN Aにも関する。 ェリシター処理は、 好ましくは酵母抽出物により行われる。
プローブ、 プライマ一
また、 本発明は、 I F Sをコードするポリヌクレオチド又は I F Sの c DNA のプライマ一またはプローブとして機能し得るポリヌクレオチド (以下、 本発明 のプライマーまたはプローブと記す) に関する。 これらは、 例えば配列番号: 1 に含まれるヌクレオチド配列またはこれに相補的なヌクレオチド配列に対して 5 0%以上、 好ましくは 70%、 より好ましくは 80%以上、 さらに好ましくは 9 0%以上、 特に 95 %以上の相同性を有し、 2—ヒドロキシイソフラバノンシン ターゼをコ一ドするポリヌクレオチドのプロ一ブまたはプライマ一として機能し 得るヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであり得る。
好ましくは、 本発明のプライマ一またはプローブは、 配列番号: 1に含まれる ヌクレオチド配列の少なくとも 15個の連続したヌクレオチド配列またはこれに 相補的なヌクレオチド配列に対して 70%以上、 好ましくは 80%以上、 さらに 好ましくは 90%以上、 特に 95 %以上の相同性を有するポリヌクレオチドであ
る
また、 本発明のプライマーまたはプローブは、 配列番号: 1の少なくとも 1 5 個の連続した配列またはそれに相補的な配列とストリンジェン卜な条件下でハイ ブリダィズしうるポリヌクレオチドであってもよい。 例えば、 本発明のプライマ —またはプローブは、 配列番号: 1中の少なくとも 1 5個の連続するヌクレオチ ド配列を有するポリヌクレオチドであり得る。
ポリべプチド
また、 本発明は、 配列番号: 1の 1 4 4〜 1 7 1 2のヌクレオチド配列に対し て 7 0 %以上の相同性を有し、 且つ I F Sをコ一ドするヌクレオチド配列でコ一 ドされる I F S、 並びに配列番号: 1の 1 4 4〜 1 7 1 2のヌクレオチド配列ま たはこれに相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズし且つ I F Sをコードするポリヌクレオチドでコ -ドされる I F Sに関する。
組み換え体 D N A及び R N A
また、 本発明は、 )宿主細胞中で、 配列番号 2 :で表されるアミノ酸配列を 実質的に含むアミノ酸配列を有する I F Sをコードするヌクレオチド配列または 該ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を実質的に含むポリヌクレオチ ドを発現し得る発現系を含む組み換え体 D N Aまたは R N A ;
(b )宿主細胞中で、 配列番号: 1の 1 4 4〜 1 7 1 2のヌクレオチド配列に対 して 7 0 %以上の相同性を有し、 且つ I F Sをコードするヌクレオチド配列を有 するポリヌクレオチドを発現し得る発現系を含む組換え体 D N Aまたは R N A;
(c)宿主細胞中で、 配列番号: 1の 1 4 4〜 1 7 1 2のヌクレオチド配列また はこれに相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにス トリンジェン 卜な条件下でハイブリダィズし且つ I F Sをコードするポリヌクレオチドを発現 し得る発現系を含む組換え体 D N Aまたは R N A ;
(d)適当な調節配列にセンス方向で発現できるように連結した請求の範囲第 4 項のポリヌクレオチドを含み、 植物細胞に導入して I F Sを生産するようにまた は過剰生産するように形質転換することができる組換え体 D N Aまたは R N A;
(e)適当な調節配列にセンス方向で発現できるように連結した請求の範囲第 7
項のポリヌクレオチドを含み、 植物細胞に導入して I F Sを生産するようにまた は過剰生産するように形質転換することができる組換え体 D N Aまたは R N A ;
( f )適当な調節配列にアンチセンス方向で発現できるように連結した請求の範 囲第 4項のポリヌクレオチドを含み、 植物細胞に導入して I F S発現のアンチセ ンス阻害を起こし得る組換え体 D N Aまたは R N A ;
( g)適当な調節配列にアンチセンス方向で発現できるように連結した請求の範 囲第 6項のポリヌクレオチドを含み、 植物細胞に導入して I F S発現のアンチセ ンス阻害を起こし得る組換え体 D N Aまたは R N Aに関する。。
また、 本発明は、 上記(a)〜( の組み換え体 D N Aまたは R N Aの一つを含 む宿主細胞に関する。
さらに、 本発明は、 該宿主細胞を培養することを含む 2—ヒドロキシイソフラ バノンシン夕一ゼの製造方法にも関する。 該製造方法は、 さらに、 生産されたポ リベプチドを回収する工程を含んでいてもよい。
さらに、 本発明は、 上記組み換え体 D N Aまたは R N Aの一つを植物細胞に導 入することにより、 2—ヒドロキシィソフラバノンシンタ一ゼが触媒する酵素反 応の生成物またはその誘導体を生産するようにまたは生産量が変化するように形 質転換されたトランスジエニック植物に関する。このトランスジエニック植物は、 天然の状態で I F Sを生産する植物または生産しない植物であり得る。
上記(f )または(g)の組み換え体 D N Aまたは R N Aを植物細胞に導入するこ とにより、 2—ヒドロキシイソフラバノンシン夕ーゼが触媒する酵素反応の生成 物またはその誘導体の生産量が低下するように形質転換されたトランスジェニッ ク植物に関する。 このトランスジエニック植物は、 天然の状態で I F Sを生産す る植物、 例えばマメ科植物である。
天然の状態で I F Sを生産する植物を形質転換する場合には、 I F Sを生産し ないように、 または I F Sの生産量を増加または減少するように形質転換するこ とができ、 天然の状態で I F Sを生産しない植物を形質転換する場合には、 I F Sを生産するように形質転換することができる。
また、 本発明のポリペプチドのモノクローナル抗体、 ポリクローナル抗体は、 当該分野においてよく知られらた方法により製造することができ、 本発明はかか
る抗体をも含む。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の 2—ヒドロキシイソフラバノンシンクーゼが関与する反応を 示す反応式である。
図 2は、 本発明のポリヌクレオチドで形質転換した酵母ミクロソ一ムの酵素ァ ッセ一の結果を示す図である。
図 3は、 本発明のポリヌクレオチドで形質転換した酵母ミクロソ一ムの酵素ァ ッセ一の結果を示す写真である。
図 4は、 本発明のポリヌクレオチドで形質転換した酵母ミクロソ一ムの酵素ァ ッセ一の結果を示す図である。
図 5は、 本発明のポリヌクレオチドで形質転換した酵母ミクロソ一ムによる反 応生成物の質量スぺクトル分析の結果を示す図である。
図 6は、 本発明のポリヌクレオチドで形質転換した酵母ミクロゾームによる反 応生成物の質量スぺクトル分析の結果を示す図である。
図 7は、 本発明のポリヌクレオチドで形質転換した酵母ミクロソ一ムの酵素ァ ッセ一の結果を示す写真である。
図 8は、 本発明のポリヌクレオチドで形質転換した酵母ミクロソ一ムの S D S / P A G E及びィムノブロッ ト分析の結果を示す写真である。
図 9は、 本発明により得られた mR N Aのノーザンプロッ ト分析の結果を示す 写真である。
図 1 0は、 本発明のポリヌクレオチドを用いたタバコの形質転換に使用したバ イナリ一^ ^クタ一を示す説明図である。
図 1 1は、 本発明のポリヌクレオチドを用いたタバコの形質転換におけるイン サートチェックの方法を示す説明図である。
図 1 2は、 図 1 1のィンサ一トチェックの結果を示す写真である。
図 1 3は、 本発明のポリヌクレオチドを用いて形質転換したタバコのゲノミッ ク P C Rの結果を示す写真である。
図 1 4は、 本発明のポリヌクレオチドを用いて形質転換したタバコのゲノミッ
ク: P C Rの方法を示す説明図である。 発明を実施するための最良の形態
1 . 定義
本明細書の理解を容易にするために、 用語の定義を下記に示す。
本明細書において、 「2—ヒ ドロキシイソフラバノンシン夕ーゼ (以下、 I F Sと記す)」 は、 シトクロム P 4 5 0の機能解析において通常使用される方法を 用いると、 フラバノン類を基質として、 水酸化反応とァリール転位反応により 2 ーヒドロキシィソフラバノン類を合成する酵素活性を有するポリべプチドを意味 する。
即ち、 例えば、 酵母等の真核細胞で発現させたときに、 そのミクロゾームが、 N A D P H補酵素等の存在下、 好気的条件下で、 かかる反応を触媒する活性を有 するポリべプチドであること、 または P 4 5 0還元酵素及びジラウリルホスファ チジルコリン等のリン脂質と混合して電子伝達系を再構成すれば同条件下でかか る反応を触媒する活性を有するポリペプチドであることを意味する。
本発明の I F Sは、 天然に存在するポリペプチドを単離したもの、 遺伝子組換 え技術により製造されたもの、 または当該分野で知られた技術により合成された もののいずれでもよい。
また、 本発明の I F Sには、 Glycyrrhi za echinata 由来のものの他、 Glycyrrhi za属の他の種由来のポリべプチド、 マメ科植物の他の属の植物由来 のポリべプチド、 または他の科の植物由来のポリべプチドも含まれる。
本明細書において 「本発明のポリヌクレオチド」 は、 上記で説明した、 請求の 範囲第 2項〜第 9項のいずれか 1項に記載されたポリヌクレオチドを意味し、 I F Sの c D N A、 I F Sをコードするポリヌクレオチド、 これらを得るためのプ ローブまたはプライマー等であり得る。
本発明の I F Sをコードするポリヌクレオチド (配列番号: 1の c D N A ) を 含むプラスミ ドを保有する Escherichia col i K 1 2株の形質転換体 CYP Ge- 8 は、平成 1 1年 2月 1日より、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵 便番号 3 0 5 茨城県つくば巿東一丁目 1番 3号) に寄託されており、 受託番号
FERM P- 17 189が付与されている。 そして平成 12年 1月 3 1曰にブ ダぺスト条約に基づく寄託への移管請求が当局により受領され、 受託番号 FER M BP— 70 10が付与されている。 本発明は、 受託番号 FERM BP— 7 0 10の Escherichia coli K 1 2株から常法により得られ、 I FSをコード するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドにも関する。
「ポリヌクレオチド」 とは、 ポリ リボヌクレオチドまたはポリデォキシリボヌ クレオチドをいい、 未修飾 RN Αもしくは DN Α、 または修飾 RN Αもしくは!) N Aであり得る。
本発明において、 「ポリヌクレオチド」 は、 天然に存在する状態から単離され たものであり得る。 また、 本明細書において、 「ポリヌクレオチド」 の語は、 1 本鎖 DNA、 2本鎖 DNA、 1本鎖および 2本鎖領域の混在する D N A、 1本鎖 RNA、 2本鎖 RNA、 および 1本鎖および 2本鎖領域の混在する RNA、 1本 鎖、 2本鎖または 1本鎖および 2本鎖領域の混在する DNAおよび RNAを含む ハイプリッ ド分子を含む。
また、 「ポリヌクレオチド」 の語は、 1個またはそれ以上の修飾塩基を含む D NAまたはRNA、 および安定性または他の理由のために修飾された骨格を有す る DN Aまたは RNAを含む。
「修飾塩基」 の語は、 例えばトリチル化された塩基およびイノシンのような塩 基を含む。 従って、 「ポリヌクレオチド」 は、 化学的、 酵素的、 あるいは代謝的 に修飾された形態のポリヌクレオチドであり得る。
また、 本明細書において、 「ポリヌクレオチド」 の語は、 オリゴヌクレオチド をも含むものとする。
「ポリペプチド」 は、 ペプチド結合または修飾されたペプチド結合により互い に結合した 2個またはそれ以上のアミノ酸を含んでなるぺプチドまたはタンパク 質をいう。 「ポリペプチド」 は、 短鎖 (いわゆるペプチド、 オリゴペプチドまた はオリゴマー) および長鎖 (タンパク質) の両方をいう。
「ポリペプチド」 は、 翻訳後修飾プロセッシングのごとき天然プロセスによつ てか、 または当該分野でよく知られた化学的修飾法によって修飾されたアミノ酸 配列を包含する。 かかる修飾は、 当該技術分野においてよく知られている。 ぺプ
チド骨格、 ァミノ酸側鎖およびアミノ末端およびカルボキシル末端を包含するポ リぺプチドのいずれの場所においても修飾が起こり得る。 ポリべプチドは多くの タイプの修飾を含みうる。 ュビキチネーシヨンの結果としてポリべプチドは分岐 されていてもよく、 また、 分岐を有してまたは有さずに環化されていてもよい。 修飾には、 ァセチル化、 ァシル化、 ADP—リボシル化、 アミ ド化、 フラビンの 共有結合、 ヘム部分の共有結合、 ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有 結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、 架橋、 環化、 ジスルフィ ド結合の形成、脱メチル化、 共有結合による架橋の形成、 シスチンの形成、 ピログルタミン酸の形成、 ホルミル化、 ガンマ一カルボキシル 化、 グリコシレーシヨン、 GP Iアンカ一形成、 ヒドロキシル化、 ヨウ素化、 メ チル化、 ミ リス トイル化、 酸化、 蛋白分解的プロセッシング、 ホスホリレーショ ン、 プレニレル化、 ラセミ化、 セレノィル化、 硫酸化、 アルギニン化のごときト ランスファ一一 RN Aにより媒介される蛋白へのアミノ酸付加、 およびュビキチ ネーシヨンがある。
「アンチセンス阻害」 は、 標的の一次転写産物または mRNAの全てまたは一 部に相補的で、 その一次転写産物または mRNAのプロセッシング、 移動、 及び /または翻訳を妨げるアンチセンス RNAにより、 標的遺伝子の発現を阻止する ことをいう。 アンチセンス RNAの相補性は、 特定の遺伝子転写産物のいかなる 部分、 すなわち、 5, ノンコーディング配列、 3, ノンコーディング配列、 イン トロン、 またはコーディング配列、 とでもよい。 加えて、 本明細書に用いられる アンチセンス RN Aは、 アンチセンス RN Aの遺伝子発現を妨げる効力を増すリ ボザィム配列の領域を含むことができる。
本明細書に用いられる 「適当な調節配列」 は、 本発明のポリヌクレオチドの上 流 ( 5 ')、 内部、 及び/または下流 (3') に位置し、 本発明のポリヌクレオチ ドの発現を制御する、 天然またはキメラのヌクレオチド配列をいう。
「3' ノンコーディング配列」 は、 ポリアデニレーシヨンシグナル、 及び mR N Aのプロセッシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことのできる他のあらゆ る調節シグナルを含む、 遺伝子の DNA配列部分をいう。 ポリアデニレ一シヨン シグナルは、 通常、 mRNA前駆体の 3' 末端へのポリアデニル酸部分の付加に
影響を及ぼすことを特徴とする。
「植物」 は、 真核生物及び原核生物の両方の光合成生物をいう。
本明細書において、 種々の表現方法により、 本発明のポリヌクレオチドを説明 したが、 本発明のポリヌクレオチドには、 本発明において明らかとなった c DN A配列の情報に基づき、 当業者が当該分野で知られている方法により得ることが でき且つ I F S活性を確認することのできる全てのヌクレオチド配列と、 該情報 に基づき、 I F Sを得るために使用されるプローブまたはプライマ一として利用 される得る全てのヌクレオチド配列が含まれ、 本発明はこれらの全てを包含する 意図である。
2. 形質転換体の作製及び I F Sの生産
本発明の形質転換体は、 本発明の組み換え体 DN Aまたは RN Aを、 該組み換 え体 DN Aまたは RN Aを作製する際に用いた発現ベクターに適合する宿主中に 導入することにより得られる。 精製されたポリヌクレオチドを、 適当なベクタ一 の制限酵素部位又はマルチクロ一ニングサイ トに揷入して組換え体 D N Aまたは RNAを作製し、 当該組換え体 DNAまたは RNAを用いて、 宿主細胞を形質転 換する。
DNA断片を挿入するためのベクタ一 DNAは、 宿主細胞中で複製可能なもので あれば特に限定されず、 例えば、 プラスミ ド DNA、 ファージ DNA 等が挙げられ る。プラスミ ド DNAとしては、例えばプラスミ ド pUC118(宝酒造社製)、 pUC119 (宝酒造社製)、 pBluescript SK ( + ) (Stratagene社製)、 pGEM-T(Promega 社製) 等が挙げられ、 ファージ DNA としては、 例えば M13mpl8 、 M13mpl9 等 が挙げられる。
宿主としては、 目的とする遺伝子を発現できるものであれば特に限定されず、 真核細胞及び原核細胞のいずれをも用いることができるが、 好ましくは真核細胞 を用いる。 例えば、 大腸菌 (Escherichia coli) 、 バチルス · ズブチリス ( Bacillus subtilis) 等の細菌、 サ ッ カ ロ ミ セ ス * セ レ ビ シェ (Saccharomyces cerevisiae )等の酵母、 昆虫細胞、 C 0 S細胞、 C H 0細胞 等の動物細胞などが挙げられる。
大腸菌等の細菌を宿主として用いる場合は、 本発明の組換え体 DNAまたは R
NAが該宿主中で自立複製可能であり、 プロモ一夕一、 本発明のポリヌクレオチ ド、 転写終結配列を含む構成であることが好ましい。 例えば、 大腸菌としては XLl-Blue (Stratagene 社製)、 JM109(宝酒造社製) 等が挙げられ、 発現べク 夕一としては、 例えば pBTrp2等が挙げられる。 プロモー夕一としては、 大腸菌 等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。 例えば、 trp プ ロモ一夕一、 lac プロモ一夕一、 P L プロモーター、 P R プロモ一夕一などの 大腸菌やファージ等に由来するプロモーターが用いられる。 形質転換は、 例えば
Hanahan C 方 ¾S [Techniques for Transformation of E. coli In DNA Cloning, vol.1, Glover, D.M. (ed. ) ppl09-136, IRLPress (1985)〗 によ り行うことができる。
酵母を宿主として用いる場合は、 発現ベクターとして、 例えば YEpl3、 YCp50 等が挙げられる。 プロモーターとしては、 例えば gal 1 プロモ一夕一、 gal 10 プロモーター等が挙げられる。 酵母への組換え体 DN Aまたは RN Aの導入方法 と し て は 、 例 え ば エ レ ク ト ロ ボ レ 一 シ ヨ ン 法 ( Methods. En z ymo 1 . , 194 , 182 - 187( 1990) ) 、 ス フ ェ 口 プ ラ ス ト 法
( Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84,1929- 1933( 1978) )、 酢酸 リ チ ゥ ム法
( J.Bacteriol. , 153, 163-168(1983)) 等力挙げられる。
動物細胞を宿主として用いる場合は、 発現べクタ一として例えば pcDNAI、 pcDNAI/Amp (インビトロジェン社) 等が用いられる。 動物細胞への組換え体 D NAまたは UNAの導入方法としては、 例えば、 エレクト口ポレーシヨン法、 リ ン酸カルシウム法等が挙げられる。
ベクター DNA としてプラスミ ド DNAを用いる場合、 例えば EcoRI DNA断片 を揷入する際、 プラスミ ド DNAを制限酵素 EcoRI (NEB 社製) を用いて消化し ておく。 次いで、 DNA断片と切断されたベクター DNA とを混合し、 これに、 例 えば T4 DNAリガーゼ (宝酒造社製) を作用させて組換え体 DNAを得る。
上記形質転換株のスクリーニングは、 目的遺伝子の一部を含む DNA 断片をプ ローブとしたコロニーハイブリダィゼ一シヨン、 あるいは、 目的の遺伝子の塩基 配列に基づいた 5' プライマーを合成し、 次いで、 相補鎖 DNA の塩基配列に基 づいた 3, プライマ一を合成し、 これらのプライマ一を用いた PCR法により、
目的とする遺伝子を含むコロニーを選択することができる。
前記のようにして得られた組換え体 D N Aまたは R N Aを保有する形質転換体 を培養すれば、 本発明のポリペプチドを生産することができる。 培養方法は、 通 常の固体培養法でもよいが、 液体培養法を採用することが好ましい。
形質転換体を培養する培地としては、 例えば酵母エキス、 ペプトン、 肉エキス 等から選ばれる 1種以上の窒素源に、 リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウム、 塩化第二鉄等の無機塩類の 1種以上を添加し、 更に必要により糖質原料、 抗生物 質、 ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。 また、 必要により培地に IPTG 等を添加して、 遺伝子の発現を誘導してもよい。 培養開始時の培地の pHは 7 . 2 〜 7 . 4 に調節し、 培養は通常 36〜 38 °C、 好ましくは 37 °C前後で 14〜 20時 間、 通気撹拌培養、 振盪培養等により行う。
培養終了後、 培養物より本発明の I F Sを採取するには、 通常のタンパク質精 製手段を用いることができる。すなわち、 リゾチーム等の酵素を用いた溶菌処理、 超音波破碎処理、 磨砕処理等により、 界面活性剤の存在下で、 菌体を破壊し、 I F Sを可溶化させた後、 菌体外に排出させる。 次いで、 濾過又は遠心分離等を用 いて不溶物を除去し、 粗ポリペプチド溶液を得る。
上記粗ポリペプチド溶液から、 I F Sをさらに精製するには、 界面活性剤を適 宜用いながら、 通常のタンパク質精製法を使用することができる。 例えば、 硫安 塩析法、 イオン交換クロマトグラフィー、 疎水クロマトグラフィー、 ゲルろ過ク 口マトグラフィー、 ァフィ二ティークロマトグラフィー、 電気泳動法等を、 単独 又は適宜組み合わせることにより行う。
上記方法により得られた I F Sは、 P450 還元酵素及びジラウリルホスファチ ジルコリン等のリン脂質と共にミセル系を形成後、 N A D P Hと酸素分子の存在 下で、 フラバノン類を基質として、 水酸化反応とァリール転位反応により 2—ヒ ドロキシイソフラバノン類を合成することができる。 また、 形質転換体が真核細 胞である場合、 形質転換後、 培養して得られた細胞を破碎し、 遠心分離を行うこ とにより得られるミクロソ一ムは、 同様の反応により 2—ヒドロキシィソフラバ ノン類を合成することができる。 本発明は、 本発明の酵素の反応により得られる 化合物またはその誘導体の製造のための本発明のポリヌクレオチドの使用にも関
する。 かかる化合物またはその誘導体としては、 例えばダイゼイン、 ゲニスティ ン、 6 , 7 , 4 ' — ト リヒ ドロキシイソフラボン、 7, 8 , 4, 一 トリヒ ドロキ シイソフラボン、 フオルモノネチン、 2, 一ヒ ドロキシフオルモノネチン、 メデ ィカルピン等が挙げられる。
3 . トランスジエニック植物
本発明の I F Sをコードするポリヌクレオチドを、 適当なプロモ一夕一、 夕一 ミネ一夕等、 植物細胞で発現可能な転写制御領域と共に植物細胞に導入すること により、 I F S、 I F Sが触媒する酵素反応の生成物またはその誘導体を生産す るように形質転換されたトランスジエニック植物を得ることができる。 これによ り、 本来は I F Sを発現しない種の植物において、 I F Sを発現させ、 さらにこ れにより触媒される反応の反応生成物である 2—ヒドロキシィソフラバノン類、 ひいてはその誘導体であるイソフラボン類を生産させることが可能になる。 ィソ フラボン類としては、 上記で例示したものが挙げられる。 従って、 本発明はこれ らの物質を生産する植物を得るためのポリヌクレオチドの使用にも関する。 この 方法は、 本来イソフラボン類を含まない植物にイソフラボン類を発現させ、 耐病 性を高めたり、 ィソフラボン類を多く含む食品として提供される植物を提供する のに有用である。
植物細胞で発現可能な転写制御領域としては、 前述したような、 植物全体で発 現する CaMV 35SRNAプロモ一夕一、 CaMV 19SR Aプロモ一夕一、 ノノ リン合成 酵素プロモータ一等、 緑色組織で発現する RubisCO 小サブュニッ トプロモー夕 —等、 種子などの部位特異的に発現するナピン (napin)、 ファセォリ ン ( phaseolin) 等の遺伝子のプロモー夕一領域等が挙げられる。 また、 3, 末 端に、 ノパリ ン合成酵素夕一ミネ一夕一、 RubisCO 小サブュニヅ ト 3, 側部位 等の夕一ミネ一夕一が連結されてもよい。
また、 プロモ一夕一領域に、 ェンハンサーを導入することにより、 発現の増加 をもたらすことができる。 「ェンハンサ一」 は、 プロモ一夕一活性を高めること のできる D N A配列である。 ェンハンサ一は、 プロモーターの本来の要素、 ある いは、 プロモー夕一のレベル及び/または組織特異性を高めるために挿入した異 種要素であってもよい。 ェンハンサーとしては、 3 5 Sプロモーターに見出され
る-ようなウイノレスのェンノヽンサ一( Odel l 等、 Plant Mol . Biol . ( 1988 ) 10 : 263-272 )、ォビン遺伝子力 らのェンノヽンサ一(Fro纖等、 Plant Cell ( l 989 ) 1 : 9フフ- 984 )が挙げられ、 本発明のポリヌクレオチドに作動できるように連結さ れたプロモー夕一に配置すると増加した転写をもたらす、 あらゆる他の種類のェ ンハンサ一が含まれる。 これにより、 イソフラボン類の含有量の高いトランス ジエニック植物を得ることができる。 イソフラボン類としては、 上記で例示した ものが挙げられる。 従って、 本発明は、 イソフラボン類の生産量の増大した植物 を提供するための本発明のポリヌクレオチドの使用にも関する。 そのような方法 は、 例えば耐病性の高められた植物、 イソフラボン類を多く含む食品として提供 されるための植物の提供に有用である。
さらに、 本発明においては、 アンチセンス阻害により植物における I F Sの発 現を抑制することができる。 即ち、 本発明のポリペプチドのアンチセンス R N A を、 プロモーター等の発現調節配列と共に含むベクターを植物細胞に導入するこ とにより、 I F Sの発現を阻害することもできる。 これにより、 イソフラボン類 を含まないか、 低下した量で含有する トランスジヱニック植物を得ることができ る。 イソフラボン類としては、 上記で例示したものが挙げられる。
従って、 本発明はこれらの物質の生産が抑制された植物を得るためのポリヌク レオチドの使用にも関する。 この方法は、 例えば家畜の不妊化を起こさせない飼 料の提供に有用である。
トランスジエニック植物は、当該分野において広く知られている方法、例えば、 ァグロパクテリゥム法、 パーティクルガン法、 エレク トロボレ一シヨン法、 P E G法等により得ることができ、 宿主細胞に適する方法が選択される。
ァグロパクテリゥム法としては、 例えばバイナリ一ベクターを用いる方法があ る。 これは、 T iプラスミ ド由来の T一 D N A、 大腸菌などの微生物で機能可能 な複製起点、 及びべクタ一を保持する植物細胞または微生物細胞を選択するため のマーカ一遺伝子を含むベクターを植物に感染させ、 この植物から採取した種子 を生育させ、 マーカ一遺伝子の発現を指標としてベクターが導入された植物を選 択する方法である。 得られた植物について、 I F S活性を測定するか、 I F Sに より触媒される反応の生成物またはその誘導体としてのィソフラボン類等の含量
が変化したものを選択することによって、 目的とする形質転換植物を取得するこ と力 Sできる (Plant Physiol., 91, 1212 (1989)、 WO94/02620, Plant Mol. Biol., 9, 135 (1987)、 Bio/Technology, 6, 915 (1988))。
また、 パーティクルガン法は、 例えば下記の文献に記載されている方法により 行われる。 Pro. Natl . Acad. Sci. USA, 86, 145 ( 1989)、 TIBTECH, 8, 145 (1990)、 Bio/Technology, ら, 923 (1988)、 Plant Physiol. , 87, 671 (1988 )、 Develop. Genetics, 11, 289 (1990)、 Plant cell Tissue &〇rgan Culture, 33, 227 (1993))。
エレク トロポレーシヨン法は、 例えば下記の文献に記載された方法により行う こと力 Sできる。 Plant Physiol. , 99, 81(1992)、 Plant Physiol. , 84, 856 (1989)、 Plant Cell Reports, 10, 97 (1991)。
実施例
本発明は、 以下の実施例においてさらに説明される。 別に記載しない限り、 全 ての割合及びパーセンテージは重量によるものである。 これらの実施例は、 例示 であって、 本発明を限定するものではない。 当該技術分野の技術者は、 本発明の- 記載及び当該分野で知られている情報により様々な改良及び修正を行い得る。
1. 植物材料及び培養方法
Glycyrrhiza echinata (以下、 カンゾゥと記す) の葉及び葉柄からカルス 培養物を形成した。 ひ一ナフ夕レン酢酸(lmg )及び N6-ベンジルアデニン (lmg/1)を含有する 1/2濃度の Murashige-Skoog's 培地( 0.3 %(w/v)ゲラン ガムで固化) 中、 12時間光照射して (6, 000 ルクス)、 12時間暗所にて培養 した。 この培養物を、 2, 4—ジクロロフエノキシ酢酸(0. lmg/1)及び力イネ チン( ling/ 1 )を添加した M S培地に懸濁し、培養した。この培養液に対して、 0.2 % (w/v) の酵母抽出物(YE,Difco 社製)を添加することによりエリシ夕一処理を 行った。 その後、 培養細胞を減圧濾過により集め、 すぐに液体窒素で凍結し、 -80 °Cで保存した。
2. cDN Aライブラリ一及びスクリーニング
上記ェリシ夕一処理から 6時間後及び 1 2時間後の上記カンゾゥの培養細胞か ら、 Straight A's mRNA isolation system (Novagen社製)を用いて、 ポリ
(A) を有する Aを単離した。 これらのポリ (A) を有する RNA (各 2.5 g)を混合し、 ZAP— cDNA合成キッ ト(Stratagene 社製)を用いて、 これに対 する cDNAを合成し、 c D N Aライブラ リーを作製した。 この cDNAライブ ラリーのプラーク (2 X 10 =) をハイボンド— N+膜(Amersham社製)に転写 し、 E CLダイレク ト核酸標識システム(Amershara社製)を用いて、 セィヨウヮ サビペルォキシダ一ゼ (以下、 HRPと記す) で標識した配列番号: 3の配列を 有するポリヌクレオチドをプローブとしてスクリーニングした。 このポリヌクレ ォチドは、上記と同様のエリシ夕一処理から 8時間後のカンゾゥの培養細胞から、 l( A/C) G- 3 , ( I はイ ノ シ ンで あ る ) (配列番号 : 8 ) 及び 5 , -AATACGACTCACTATAG- 3, (配列番号 : 9 ) の合成ポリヌクレオチドを用い た P CR(95 °Cで 3分、 その後 95 °Cで 1分間、 45 °Cで 1分間、 72 °Cで 2分間 を 30サイクル、 最後に 72 °Cで 10分間)により増幅して得られる断片の一つで ある。 ハイブリダィゼ一シヨンは、 500mM の N a C 1及び 5 %(w/v)のブロッキ ング試薬を含有する E CLハイブリダィゼ一シヨンバッファ一を用い、 42°Cで 6時間行った。 膜の洗浄を、 0.4 %SD Sを含有する 55°Cの 1 X S S Cで 10 分間 x 2回、 及び室温の 2 X S S Cで 10分間を 2回で行った。 HRP標識ハイ ブリツ ド複合体を検出するために, E CL検出試薬 (Amersham社製) を膜に添 加した。 この膜を K o d ak XAR— 5フィルムに 1分間暴露した。 可能性の あるクローンを製造者のプロ トコルによる in vivo excision によ り pBluescript SK (―) ファージミ ドに揷入した。 揷入した DNAの長さを、 T3
( 5 , -AT TAAC C C T C AC T AAAG - 3 , ) (西己列番号 : 1 0 ) 及び T7 ( 5 , -AATACGACTCACTATAG- 3 ' ) (配列番号: 9) プライマ一を用いての P C Rに より調べ、 約 2000塩基の長さを有する完全長のヌクレオチド配列を有するクロ
—ンを得た。 このうちの一つが、 配列番号: 1の配列を有する cDNAであり、 以下の実験により I F Sであることが確認された (以下、 この完全長の cDNA を CYP Ge-8 と記す)。
3. 発現ベクターの構築、 酵母細胞での発現及びミクロソ一ムでの製造
CYP Ge- 8 のコード領域を、 KOD ポリメラーゼおよび錡型として CYP GE-8
cDNA クローンを用い、 センスプライマ一として、 下記のプライマー: Ge-8S1 (配列番号: 4)、アンチセンスプライマーとして下記のプライマ一: Ge-8A1 (配 列番号: 5) を用いた P CRにより増幅した。
Ge - 8S1: 5 ' -AAACAGGTACCATGTTGGTGGAACTTGC- 3 '
Ge-8A1: 5 ' -CGCGCGAATTCTTTACGACGAAAAGAGTT- 3 '
センスプライマ一は開始コドン(ATG)の上流に Kpn I認識部位 (GGTA CC) を有し、 アンチセンスプライマ一は終止コ ドン (ΤΑΑ) の下流に EcoRi 認識部位 (GAATTC) を有する。 P CR生成物を Kp n Iおよび E c 0 R I で処理して得られた断片を、 URA3選択マ一力一を有する pYES2 発現べクタ — ( Invi t ro gen社製)の同じ制限酵素認識部位にクロ一ニングした。 このように して得られたプラスミ ド pYES Ge-8でプロテアーゼ欠損酵母 ( Saccharoiuyces cerevisiae)BJ2168 ¾ (a;prcl-407, prbl-1122, pep4-3, leu2, trpl, ura3-52: 二ヅポンジーン社製) を酢酸リチウム法により形質転換した。 形質転 fe¾体 b>、 yeast nitrogen base without amino acids (Difcoネ 1製) 6.7itig7iril、 グルコース 20mg/inl、 ロイシン 30 g/inl、 トリプトファン 20 g/ml、 及び カザミノ酸 5 mg/itilを含有する培地で選択した。
P450 タンパク質の誘導のために形質転換酵母を上記培地(25ral)で 10時間液 体培養し、 細胞を遠心分離 (3, 000 X g) で回収した。 細胞をグルコースを含ま ない 40倍量(1000ml)の YP GE培地(lOg 酵母抽出物(Difco社製)、 lOg/1 バクトペプトン(Difco社製)、 20g/lガラクト一ス、 3 %(w/v)エタノール、 2 mg/1へミンを含有する) に移し、 24 時間から 36時間培養した。 集菌して得ら れた酵母細胞を、 10 のスクロース及び 14πιΜ の 2—メルカプトエタノールを含 有する 0.1 Mリン酸カリウム (ρΙΠ.5) にガラスビーズ(0.35 〜 0.6賺径)と 共に懸濁し、 ボルテックスミキサーで 10 分間細胞を激しく攪拌して破壊した。 これを、 10, 000 X g及び 15, 000 X gで各々 10分間遠心分離し、 得られた上 清を 160, 000 X g 90分間の超遠心にかけミクロゾームを製造した。 pYES2で 形質転換した酵母細胞を対照として使用した。
4. 酵素アツセ一
a)基質の調製
酵素アツセ一の放射性標識基質として(2S)- ["C]リキリチゲニン(7,4' -ジヒド 口キシフラバノン) 及び(2S)- ["C]ナリンゲニン(5,フ, 4'-トリヒ ドロキシフラ バノン) を合成した。 ["C]マロニル CoA及び 4-クマロイル CoAを、 エリシ夕 一処理後 12時間のカンゾゥ培養細胞の細胞フリ一抽出液及び NADPHと 30 °Cで 3時間インキュベートすることにより、 (2s)- [14c]リキリチゲニン(7,4 '- ジヒドロキシフラバノン) を製造した。
また、 NADPHを添加しない以外は上記と同様の方法により(2s)-[15c]ナリ ンゲニン(5,フ, 4'-トリヒドロキシフラバノン) を合成した。
これにより得られた(2S)-[14C]リキリチゲニン (以下標識リキリチゲニンと記 す) 及び(2s)-["c]ナリンゲニン (以下、 標識ナリンゲニンと記す) を TLCに より精製した。 (各々 6.4kBq/nra。l, 0.08皿 ol)
b )標識リキリチゲニンとの反応
上記の精製した標識リキリチゲニンを 2—メ トキシエタノール 30 1中に溶 解し、 1ml の上記酵母ミクロソームに加え、 1 の NAD P Hの存在下、 30 °Cで 2時間ィンキュベートした。
30 1の酢酸で反応を終結させた後、 混合物中の酢酸ェチル抽出物を、 TL Cラジオクロマトスキャナーで分析した。 TLCはセルロース (フナコシ (株) 製フナセル S F)を用い、 15 %酢酸で展開した。結果を図 2 Aに示す。図より、 未反応基質(Rf 0.51)の他に、 三つの放射活性化合物 [P 1 (Rf0.74), P 2 (Rf0.64), P 3 (Rf0.38)]の存在が認められる。 Rf 値から、 P 3がイソフラボ ン、 ダイゼイン (7, 4, ージヒドロキシイソフラボン) である可能性が高いと された。
反応生成物のィソフラボンへの酸触媒転化のために、 濃縮された酢酸ェチル抽 出物を、 メタノール中の 10%H C 1 500 /1に溶解し、 室温で 1時間、 50 °Cで 10分間攪拌した。 得られた反応混合物を酢酸ェチルで抽出し、 同条件で TLC を行った後、 T L Cラジオクロマ卜スキャナーで分析した。結果を図 2 Bに示す。 図に示されるように、 P 1の Rf における相対的放射活性が減少し、 P 3の放射 活性が増加した。 これにより、 P 1は容易に脱水してダイゼインを生じさせる 2,7,4' -トリヒドロキシイソフラバノンである可能性が高い。
さらに、 放射活性 P 1を図 3 Aにォ一トラジオグラムを示した T L C板から単 離して、 HC 1と反応させ、 T L Cォ一トラジオグラフィーで分析したところ、 図 3 Bに示すように、 純粋な放射活性生成物 P 3 (ダイゼイン) が生じた。 さらに、 CYP Ge- 8が I F Sであることを示すために、 1 mlの上記ミクロソ —ムに、 非標識リキリチゲニン 10 gを添加し、 1 mMの NAD P Hの存在下、 30 °Cで 2時間インキュベートした。 反応液を酢酸ェチルで抽出後、 酢酸ェチル 層を H P L C (カラム, Shim-pack CLC-ODS (6.0 X 150醒;島津社製);溶媒, H 20中 40 %メタノール) で分析した。 溶出液を 285nmでモニターした。 結果 を図 4 Aに示す。 予想通り、 ダイゼインのビーク(Rt21.0min)及び二つの別の ピーク(Rt5.5, 7.9min)が見られた。 酢酸ェチル抽出物を酸で処理すると、 図 4Bに示すように、 ダイゼインの強いピークが現れた。 図 4 Aの Rt5.5 minの 生成物は P 1であることが、 TL C分析により確認された。
質量スぺク トル分析のために、 上記酵母ミクロソ一ムとリキリチゲニンとのィ ンキュベーシヨンをさらに大規模に (上記規模の 200 倍) 行った。 反応混合物 の酢酸ェチル抽出物を Kieselgel F2s5 (Merck社製) で、 溶媒としてトルエン /酢酸ェチル /メタノール/石油ベンジン (6 : 4 : 1 : 3) を用いて、 分離用 TLCを行った。 P 1 (Rf0.2)及び P 3 (Rf0.3)のスポッ トを集め、 さらに HP L Cで精製し、 その質量スペク トルを JEOL JMS-AX505H質量分析計により、 電 子衝撃 (E I) モードで、 イオン化電圧 70 eVで記録した。
P 1の質量スペク トルを図 5に、 P 3の質量スペクトルを図 6に示す。 これに より、 P 1が 2, 7, 4 ' 一トリヒ ドロキシイソフラバノンであり、 P 3がダイ ゼィンであることが確認された。
c)標識ナリンゲニンとの反応
基質として、 標識リキリチゲニンの代わりに標識ナリンゲニンを用いること以 外は、 上記と同じ方法により、 酵母ミクロソ一ムとのインキュベーション及び T LC分析を行った。 図 7 Aに示すように、 放射性スポッ トとして P 4 (RfO.69) 及び P 5 (Rf0.64) が確認された。 その後、 P 4のスポッ トを集め、 HC 1処 理したところ、 図 7Bに示すように新たなスポッ トが得られた。 このスポッ トは ゲニスティンのサンプルと同じ移動度を示した。 従って、 P 4は 2,5,7,4'-テ
トラヒ ドロキシィソフラボンであることが確認された。
上記の実験により、 CYP Ge-8によりコードされるタンパク質が、 リキリチゲ ニンにもナリンゲニンにも作用し、 各々酸処理によりダイゼイン、 ゲニスティン を生成し得る 2,フ, 4'一トリヒドロキシイソフラバノン及び 2, 5,フ, 4'-テトラ ヒドロキシィソフラバノンを生成すること、即ち I F Sであることが証明された。 なお、 上記実施例においては、 H C 1処理により脱水反応を行っているが、 カン ゾゥの細胞においては、 デヒドラ夕一ゼの作用により脱水反応が進むと考えられ
5. P450抗血清及びィムノブロット分析
植物シトクロム P450 のアミノ酸配列についての共通配列を調べ、 鋭意研究の 後、 抗原として、 下記の二つのオリゴペプチド配列 (Leu Pro Phe Gly Ser Gly Arg Arg Ser Cys (酉己列番号: 6 ) 及び Tyr Leu Gin Ala lie Val Lys Glu Thr Leu Arg Leu (配列番号: 7) )を設計した。 これらの配列を各々ベースとして、 化学的に合成された N-ァセチル化ァミノ末端を持つ多抗原性ペプチドを、 二羽 のゥサギに皮下注射した。 血中の抗ペプチド抗体力価を ELISA により調べたと ころ、 P450 酵素に対する抗体が産生されていることがわかった。 この P450 抗 血清を用いてィムノブ口ヅティングを行った。
まず、 上記酵母のミクロソ一ムを SD S/ 10 %PAGEで分離し、 ハイボン ド— C膜(Amersham社製)に転写し (約 10 〃 gタンパク質)、 P450 抗血清の 1:2000 希釈液と、 室温で 1時間インキュベートした。 免疫反応性のタンパク質 を、 製造者のプロ卜コノレ(こ従レヽ ECL Western blotting analysis system (Amersham社製)で検出した。
図 8 Aに示すように、 S D S/P AGEにおいて、 分子量約 59kDa の新しい バン ドが検出された。 これはアミノ酸配列に基づいて計算された分子量 59,428Daと合致する。
図 8 Bに示すように、 CYPGe-8 を発現していると予測される細胞のミクロソ ームを用いたィムノブロッ トでは、 同じく 59kDaに顕著なシグナルが示された。 6. ノ一ザンブロヅ ト分析
「1. 植物材料及び培養方法」 の欄で記載したのと同じ培養条件で培養した力
ンゾゥの懸濁培養細胞を、 エリシ夕一処理の後、 3, 6, 12, 24, 48時間 (こ収獲した。 mRN A¾ Straight Ά' s mRNA isolation system(Novagen ¾ 製)を用いて抽出した。 ノーザンプロッ ト分析のために、 mRNA(900ng)を 1 %ァガロース一ホルムアルデヒ ドゲルで電気泳動し、 ハイボン ドー N+膜 (Amersham社製)に転写した。 電気泳動後のゲルを臭化工チジゥムで染色するこ とにより、 RNA量を確認した。 CYP Ge-8 のコード領域を前記の Ge-8S1、 Ge-8A1 プライマーを用いて P CRで増幅した。 これを化学発光用の AlkPhos Direct systera(Amersham社製)を用いてアルカリホスファタ一ゼ標識し、 ハ ィブリダイゼ一ション用のプローブとした。 ブロヅ トを 500mMの NaCl及び 4 のブロック試薬を含むハイブリダィゼ一シヨンバッファ一中で、 55 。じで 12 時 間、 プローブとハイブリダィズさせた。 製造者のプロ 卜コルに従い、 膜を一次洗 浄バッファ一により 55 °Cで 10 分間 2回洗浄し、 膜を二次洗浄バッファ一によ り室温で 5分間 2回洗浄した。
図 9に示すように、 エリシタ一処理後、 3〜 6時間経過時の細胞における mR N Aの蓄積が多いことがわかる。
7. タバコへのカンゾゥ I F S cDNAの導入
a. I FSを組み込んだバイナリ一べク夕一の作成(植物発現用べク夕一の構築) PBH21 プラスミ ド (図 10 (A)参照) の GUS遺伝子を I F S c DNAに 置き換えたバイナリ一ベクターを作成するために、以下の手順で実験を行なつた。 a-l) GUS遺伝子を取り除いた pBI121 (pBI-GUS )の作成
PBI121プラスミ ド(Clontech社製)を SacI,SmaI (宝酒造社製)処理し、 GUS 遺伝子を除去した。 次に T 4 DNA ポリメラ一ゼ (宝酒造社製) により末端を平滑 化、 ベクターを DNA Ligation kit ver .2 (宝酒造社製)によりセルフライ ゲーシヨンさせた。 その後大腸菌 DH5 ひへ形質転換し、 得られたコロニーを pBI12135S,pBI121 Anti プライマーを用いてインサートチェックした。 その 結果、 PBI121 プラスミ ドの CaMV 35Sプロモーターと Nos-夕一ミネ一夕一と の間に GUS遺伝子を持たないプラスミ ド、 pBI- GUSプラスミ ドが得られた。 a-2) 両端に BamHI部位を組み込んだ I F S cDNAの作成
I F S cDNAの CDS (コード領域 ) の両端 (5 '末端、 3,末端) に BamHI部位
を-組み込んだプライマ一、 Ge- 8Sl(BamHI)プライマ一 (配列番号: 1 1) と Ge-8ASl(BamHI)プライマー (配列番号: 12) を作成した。
Ge-8S1 (BamHI)プライマ一
5 ' -AAACAGGATCCATGTTGGTGGAACTTG-3 '
Ge - 8ASl(BamHI)プラィマ一
5 ' -GCGCGGGATCCTTACGACGAAAAGAG-3 '
そして Ge-8 プラスミ ド (配列番号: 1のヌクレオチド配列を有する cDNA を組み込んだプラスミ ド) をテンプレートとし、 前述のプライマ一、 Ge-8S1 (BamHI)プライマ一と Ge-8AS1 (BamHI )プライマーを用いて PCR を行なった。 反応は 98 °C 1分間を 1サイクル、 98 °C 15秒間、 55。C 10秒間、 74 °C 30秒間 を 20サイクル、 74 °C 5分間を 1サイクルで行った。 DNAポリメラ一ゼには KOD ポリメラーゼ (東洋紡社製) を使用した。 このようにして 5'末端と 3'末端(両 端)に BamHI部位を持つ I F S cDNAを得た。
次に、 得られた I F S cDNAを T 4ポリヌクレオチド キナ一ゼ (宝酒造社製) 処理し、 5'末端をリン酸化した。 そして pBluescript (Stratagene社製) の EcoRV部位にサブクローニングし、 シーケンスで配列が正しいか、 即ち KOD で 増幅した時に変異が起きていないかを確認した。 シーケンスの結果、 変異の起き ていない、 5', 3'両末端に BamHI部位を持つ I F Sプラスミ ドが得られた。 a-3) a-l) で作成した pBI- GUS プラスミ ドと a-2) で作成した I F S cDNA とのライゲ一シヨン
a-l) で作成した pBI-GUS プラスミ ドを BamHI (宝酒造社製)処理し、 さらに CIAP (Calf Intestine Aikaline Phosphatase; 宝酒造社製)処理し、 これを、 a-2) で作成した IF Sプラスミ ド (BamHI 部位を両端に持つ)を BamHI処理し て得た 5 ' , 3 '両末端に BamHI の突出末端を持つ I F S cDNA と、 DNA Ligation kit ver.2 (宝酒造社製) によりライゲ一シヨンし、 これにより 大腸菌 DH5 ひを形質転換し、 得られたコロニーのインサートチェックを行なつ た (図 1 1 (A) 〜 (D) 参照)。 ィンサ一トチェックには、 下記のプライマ一 を利用した。
PBI121 35S プライマ一(配列番号: 13)
—5 ' -CTATATAAGGAAGTTCATTTCATTTGG-3 '
PBI121 Antiプライマ一(配列番号: 14 )
5 ' - GAC C GG C AACAG GAT T CAAT C T T AAG - 3 '
Ge-8 SI プライマー(配列番号: 4 )
5 ' -AAACAGGTACCATGTTGGTGGAACTTGC-3 '
Ge-8 Al プライマー(配列番号: 5 )
5 ' -CGCGCGAATTCTTTACGACGAAAAGAGTT-3 '
その結果、 図 12 (A) ~ (D) に示すように、 pBI121の GUS部分にセンス 方向の I F S cDNAが導入されたものが 4クロ一ン (pBIGe-8S8, pBIGe-8S9, pBIGe - 8S11, pBIGe - 8S13) (図 10 ( B )参照)、アンチセンス方向の I F S cDNA が導入されたものが 2クローン(pBIGe-8A4, pBIGe- 8A10) (01 0 (C)参照) 得られた。 なお、 図 12の (A;) 〜 (D) の写真は、 各々図 1 1の (A) 〜 (D) で示されるインサートチェックの結果を示している。 また、 図中、 pBIGe-8S8, pBIGe-8S9, pBIGe - 8S11, pBIGe - 8S13, pBIGe-8A4, pBIGe-8A10を、 各々 8,9, 11, 13, 4, 10として示した o
b .バイナリ一ベクタ一のァグロバクテリゥムへの組み込み
a . で作成したバイナリ一ベクターをァグロバクテリウムへ導入するのには、 tri-parental mating法 (A. Hoekema et al . , Nature, 303, 179 ( 1983); M. Be van et al . , ucleic Acids Res., 12, 8711 (1984)参照)を用いた。 (な お、 接合伝達能を供給するのにはへルパープラスミ ド pRK2013 を持つ大腸菌 HB101 を用いた。) センス方向に I F S cDNA を組み込んだバイナリーベクター pBIGe-8 S8 (図 10 (B) 参照)、 及びアンチセンス方向に I F S cDNAを組み 込んだバイナリーベクター pBIGe- 8 A4 (図 1 0 ( C) 参照) をそれぞれ Agrobacterium tumef aciens LBA 404に 人し,こ。
c .植物の形質転換
(1曰巨)
c-1)リーフディスクの作成
約 3週間培養したタバコ(Nicotians tabacum SRI)無菌植物体から上部 2 - 3枚の葉を切り出し、 0.5crti X 1cm四方のリーフディスクを作成した。 作成
したリーフディスクを MS-NB培地に置き、 25 °C ,光照射の条件で一晚培養した。 c-2) ァグロパクテリゥムの培養
b .で得られた 2種類のァグロパクテリゥムを LB+カナマイシン(50 L g/ml) 液体培地 10mlに植菌し、 28 °Cで一晩振とう培養した。
(2曰 g)
c-3) リーフディスクへのァグロパクテリゥムの感染及び共存培養
一晩培養した c-2) のァグロパクテリゥム培養液に、 c-1で作成したリーフデ イスクを約 2 分間浸した。 その後リーフディスクを取り出し、 滅菌べ一パー夕 オルで余分な菌液をぬぐい、共存培養用培地(滅菌濾紙をひいたもの)に置いた。 この状態で 2 日間 25 °C darkの条件で培養した。
( 曰目以降)
c-4) 再分化培地での培養
2 日間の共存培養後、 リーフディスクを再分化培地に移した。 25 °C、 16 時間 light/8 時間 dark の条件で培養した。 2-3 週間後にリーフディスクが部分的 にカルス化した。 さらに 1-2週間後にはシュートの再分化が観察された。
再分化してきたシュートを切り出し、 発根培地へ移植した。
本実施例で用いた培地組成を下記に示す:
MS-NB 培地: (MS 培地、 lmg/ 1 ベンジルアデニン, 0. lmg/1 ナフ夕レン酢酸 , 3g/lゲルライ ト (和光純薬工業製)
共存培養培地: (MS培地, 3g/lゲルライ ト)
再分化培地:(MS 培地, lmg/1 ベンジルアデニン, 0. lmg/1 ナフ夕レン酢酸 , 3g/l Gelrite, lOOmg/1カナマイシン, 400mg/l 力ノレべニシリン)
発根培地:
最初の 3週間: (MS培地, 3^1 ゲルライ ト, lOOmg/1 カナマイシン, 200mg/l カルべニシリン)
3週間以降: (1/2MS培地, 3g/l ゲルライ ト, lOOmg/1 カナマイシン, 200mg/l カルべニシリン)
c-6) ゲノミック PCRによる導入遺伝子の確認
発根培地で約 3 週間培養した株のうち、 センス I F S cDNA を導入した 4株
(S-l, S- 2, S-3, S-5) について図 14に示すようにゲノミヅク PCRを行い、 導入遺伝子の確認を行った。 なお control として、 遺伝子を導入していない夕 バコ無菌植物体を使用した。
まずそれそれの株、 上部 2-3枚の葉を切り出し、 Dneasy Plant Mini kit (QIAGEN社製)による DNA抽出を行った。この DNAlOOngをテンプレートにして、 95 °C 10分間を 1サイクル、 95 °C 1分間、 57°C 1分間、 72 °C 1分 30秒間を 45 サイクル、 72 °C 5分間を 1サイクルの条件で PCRを行った。 DNA ポリメラ一 ゼには Ampli taq Gold™ (パーキンエルマ一社製)を使用した。
プライマ一としては、 a- 1)でインサートチェックに使用したプライマーを使 用した。
また、 用いたブラィマーの組み合わせは下記の通りである。
(1) Ge-8S1 + pBI121Anti
(2) Ge - 8S1 + Ge-8A1
(3) PBI12135S + pBI121Anti
なお、 (3)の pBI12135S,pBI121 Antiのプライマ一ペアにおいてはァニーリ ング温度を 50 °Cに設定した。
結果を図 13に示す。 図 13は、 ゲノミック P CR(1)(2)(3)の結果を示す写 真である。 これにより、 S-l, S-2, S-3, S-5株の全てにおいて、 天然のタバコ 植物体 (図中, C) にはないバンドが見られ、 I F S cDNAがセンス方向に導入さ れていることが分かった。 産業上の利用可能性
以上のように、 本発明により、 2—ヒドロキシイソフラバノンシン夕一ゼをコ 一ドするヌクレオチド配列を実質的に含むポリヌクレオチドが提供される。 この ポリヌクレオチドを用いて、 I FSを発現する形質転換体を得ることができる。 これは、 イソフラボン類の生産、 イソフラボン類に富む食品材料の提供、 植物の 耐病性の強化等の点で有用である。