JP3571133B2 - 4−クマル酸:補酵素aリガーゼ遺伝子、及び該遺伝子を用いた植物中のリグニンの低減方法 - Google Patents

4−クマル酸:補酵素aリガーゼ遺伝子、及び該遺伝子を用いた植物中のリグニンの低減方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、植物の4−クマル酸:補酵素Aリガーゼ遺伝子(以下4CL遺伝子という場合がある)、及び該遺伝子の全部、又はその一部を用いて作製したアンチセンス遺伝子、又はセンス遺伝子を導入することにより、形質転換植物中のリグニン含量を低減せしめる方法及び同方法により作出された植物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙パルプ産業においては、主に木材チップをアルカリ蒸解行程や各種薬剤を使用する漂白行程で処理することにより、木材成分中のリグニンを溶出、除去し、紙の原材料となるパルプを生産している。材料となる木材チップの蒸解適性は、チップ中のリグニン含量やその分子構造に影響を受けるところが大きく、原料中のリグニンの量や質を人為的に低下、変質することができれば、パルプ生産におけるコストを大幅に減らすことが可能となる。
【0003】
また、飼料用の植物に関しては、植物中のリグニン存在が家畜の胃腸中での飼料の消化性に悪影響を与えることが知られており(特表平6−510429号公報)低リグニン含量の飼料用作物が得られれば、食肉、乳製品の生産性にも大きく貢献できる。
【0004】
このような観点に立ち、近年遺伝子組み換え技術を用いて、リグニンの生合成に関与する酵素の遺伝子の発現を不活化、或は抑制することにより最終生成物であるリグニンの量を低減させる試みがなされてきた。
【0005】
特表平6−509465号公報、及び特開平6−181775号公報に見られる例では、植物中でリグニン前駆体生合成の最終段階に関与すると考えられている、シンナミルアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の発現を抑制し、リグニン量のコントロールを試みている。しかし、C. ハルピンらは、この方法が、リグニンの絶対量を低減させる方法としては効果的でないことを示している(Plant Journal, 6, 339−350, 1994 )。
【0006】
また、1990年にはC. J. ラムらが、マメのフェニルアラニンアンモニアリアーゼをコードするcDNAをカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターに連結した遺伝子をタバコに導入したところ、リグニン量の少ない形質転換タバコが得られたと報告している。しかし、この方法により作出された形質転換タバコは、形態異常を起こしており、正常に生育しないため、この方法を広く植物の育種に利用することは実際上非常に難しい。
【0007】
更に、U. N. ディベディらは、アスペンから単離したS−アデノシル−L− メチオニン: カフェ酸/5− ヒドロキシフェルラ酸 3/5−O− メチル− トランスフェラーゼの遺伝子を用いてアンチセンス遺伝子を構築し、タバコに導入したが、形質転換植物中のリグニンの分子構造に変化が見られたものの、リグニンの絶対量にはほとんど変化がなかった(Plant Molecular Biology 26, 61−71, 1994 )。
【0008】
遺伝子組み換え操作により、人為的に植物細胞壁中のリグニン量を低下させた例は、1994年に、W. ニイらがアルファルファのカフェ酸 3−O− メチル− トランスフェラーゼ(以下OMTとする)の遺伝子を用いたアンチセンス遺伝子を導入することにより、低リグニン含量の形質転換タバコを作出している。しかし、このOMTは本発明で着目した4CLとは全く別の触媒機能を持つ酵素である。
【0009】
本発明で着目した4CLの遺伝子は、1988年にパセリにおいて初めてその塩基配列が報告された。その後ポテト、マメ、イネ、アラビドプシス等で単離され、その一次構造が明らかにされてきた(Genetic engineering of Plant Secondary Metabolism, Plenum Press, 313−355, 1994)。しかし、タバコ4CL遺伝子に関する報告は、現段階では本発明をおいて他にはない。
【0010】
上述のように、4CL遺伝子は複数の植物種から単離されていたにも関わらず、この遺伝子をリグニンの生合成を制御する為に応用された例はない。単離された4CL遺伝子を用いて構築された各種の遺伝子を植物に導入した例はあるが、形質転換植物中のリグニン含量を低下させることに成功した報告はなされていない。
【0011】
1994年に行われた、1994 Annual Meeting of the American Society of Plant Physiologistsの要旨集の中で、 D. リーらはポテトの4CL遺伝子を用いて構築したアンチセンス遺伝子、及びセンス遺伝子をタバコに導入し、形質転換タバコ中に存在する4CLタンパク質の量を低下させたということを報告しているが、形質転換タバコ中のリグニンに関する記述は全くない(Supplement to Plant Physiology, 105, 37, 1994 )。
【0012】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、リグニン生合成に関与する新たな酵素の遺伝子に着目し、遺伝子組み換え技術により該遺伝子の働きを変化させることで、植物の細胞壁中に存在するリグニンの低減を行うことを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これまでに述べた状況に鑑み、鋭意努力の結果、ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)を用いることによりタバコから4CLをコードするcDNAを単離し、このcDNA断片を用いたアンチセンス、及びセンス遺伝子を植物に導入することにより、形質転換植物中のリグニンを低減させることができることを初めて見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち本発明は、植物から4−クマル酸:補酵素Aリガーゼ遺伝子を単離し、この遺伝子の少なくとも1つの一部分、又は全部を含む遺伝子を新たに植物に導入して形質転換植物を作り出すことにより、該形質転換植物中のリグニン含量を低減せしめる方法にある。
以下、本発明の詳細を説明する。
【0015】
〈1〉使用され得る植物
本発明で使用できる植物は、細胞、組織、器官からの再分化法が確立され、且つ遺伝子導入系が構築されているのもであればいずれの植物種にも適用できる。特に、飼料用作物、或いはEucalyptus( ユーカリ)属、Populus (ポプラ)属、Acacia(アカシア)属、Pinus (マツ)属等に分類される製紙原材料に供される林木を用いると利用上の効果が著しい。
【0016】
〈2〉4CLをコードする遺伝子
本発明で使用され得る4CLの遺伝子は、植物由来であり、酵素番号のEC6. 2. 1. 12に分類される酵素で、少なくとも4−クマル酸と補酵素A(Coenzyme A、或いは単にCoA といわれる)との間の化学結合の形成反応を触媒する酵素のアミノ酸配列をコードする構造遺伝子、その相補DNA( cDNA) の一部、或いは全部を含むものである。この遺伝子を単離するには、幾つかの遺伝子クローニング方法を使用することができる。例えば、酵素を精製し、そのアミノ酸配列を決定し、この配列をもとに合成ヌクレオチドを作製し、ハイブリダイゼーション法により遺伝子ライブラリーから選択できる。
【0017】
また、酵素の精製を経ず、既知の遺伝子塩基配列情報を基にポリメラーゼチェインリアクション(以下PCRと略す)に用いるプライマーを作製し、PCRを行うことにより遺伝子の特定の領域、或いは全領域を増幅し、単離する方法もある。
【0018】
〈3〉単離した遺伝子断片を用いたアンチセンス遺伝子、及びセンス遺伝子のの構築
上記のようにして得られた遺伝子を用いて、適切なプロモーターとターミネーター配列の制御の元に、植物細胞中で転写、発現し得る新規な遺伝子を構築することができる。プロモーター領域に隣接して導入される4CLの遺伝子は、プロモーターに対して本来の向きとは逆方向に(この場合をアンチセンス遺伝子と定義する)、又は順方向(この場合をセンス遺伝子と定義する)に導入され得る。ここで言う逆方向とは、本来のアミノ酸配列を規定する向きとは反対の向き、順方向とは本来のアミノ酸を規定する向きのことを指す。導入される4CL遺伝子はタンパク質コード領域、非コード領域のいずれも使用できるが、コード領域を使用することが望ましい。
【0019】
本発明では、アンチセンス遺伝子、センス遺伝子のいずれを使用した場合でもリグニン低減効果が発揮されるが、特にセンス遺伝子を用いた場合がより効果的である。
【0020】
プロモーターとしては、例えばカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターや4CL遺伝子に本来含まれているプロモーター部位を挙げることができるが、植物の茎、特に木部組織で特異的に働くプロモーターを使用すると一層効果が上がると考えられる。ターミネーターとしては、植物細胞で機能するものであればよく、例えばノパリン合成酵素遺伝子のターミネーターを挙げることができる。
【0021】
アンチセンス遺伝子、及びセンス遺伝子を構築するために用いられる4CL遺伝子は、植物由来の遺伝子であれば十分に機能すると考えられるが、特に形質転換を行う植物と同じ属、又は同じ種に属する植物から単離したものを利用することが望ましい。
【0022】
〈4〉構築した導入遺伝子の植物ゲノムへの組み込み
以上のようにして構築した導入遺伝子は、エレクトロポレーション法、パーティクルガンを用いる方法、及びアグロバクテリウムを用いる方法等、化学的、物理的、生物的方法を用いて植物のゲノムに導入することが可能である。遺伝子が導入された植物細胞は、抗生物質等の薬剤耐性の性質を利用することにより選抜され、再分化させることができる。植物に導入された遺伝子は、本来植物がゲノム中に持つ4CL遺伝子の働きを抑制し、正常なリグニンの生合成を阻害する。
【0023】
【作用】
従って、本発明によれば、4CLのアンチセンス遺伝子、及びセンス遺伝子、すなわち、4CL遺伝子の少なくとも1つの一部分、又は、全部を含む遺伝子を新たに植物に導入することにより、リグニン含量が低減された形質転換植物を得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0025】
〈1〉植物材料
本実施例では、植物材料としてタバコ(Nicotiana tabacum L.) のサムソン(Samsun)NN株とSR1 株を用いた。両株ともに、種子を発芽させて得た苗を温室で栽培したが、場合により無菌苗も作製した。
【0026】
〈2〉タバコ植物体由来のcDNAの合成
発芽後4ヶ月を経過したSamsun NN 株、及びSR1 株の植物体の葉と茎を材料に各々独立にRNAを抽出し、更にカラムクロマトグラフィーによりポリ(A) +RNAを得た。各々の株のポリ(A) +RNA画分を材料に、ファルマシア社製cDNA合成キットを用いて2本鎖cDNAを合成し、SR1 株については得られたcDNAを更にストラタジーン社製のλZAPIIベクターに連結して、パッケージング処理し、cDNAライブラリーを構築した。
【0027】
〈3〉4CLのcDNA単離の為のPCRプライマーのデザイン
タバコから4CLをコードするcDNAを単離するために、既に報告されているパセリ、ポテト、マメ、及びイネの4CL遺伝子のアミノ酸コード領域を比較し、これらの植物間で保存されている4CL中のアミノ酸配列を探策した。そして、2つのアミノ酸配列の領域(Ala−Gln−Gln−Val−Asp−Gly 、及びGly−Glu−Ile−Cys−Ile−Arg )が、これらの植物間で保存されていることを突き止め、これらのアミノ酸配列に対応する17塩基からなるオリゴヌクレオチド2本を化学合成したこれらの塩基配列は、表1にある配列番号1、及び表2にある配列番号2で示した。
【0028】
【表1】
配列番号:1
配列の長さ:17
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:合成DNA
配列
GCNCARCARGTNGAYGG
【0029】
【表2】
配列番号:2
配列の長さ:17
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:合成DNA
配列
CGDATRCADATYTCNCC
【0030】
〈4〉タバコ4CLのcDNA部分断片の単離
上記のように作製したオリゴヌクレオチドをプライマーに、サムソン NN 株由来のc DNAを鋳型としてPCRを行った。反応条件は、変性を94℃、30秒、プライマーと鋳型とのアニールを46℃、30秒、伸長反応を74℃、90秒の条件で行った。反応には、宝酒造社製のTaqポリメラーゼを用いた。反応液の一部を1. 8%アガロースゲルの電気泳動で分離したところ、予想したサイズにDNAの増幅物が認められた。増幅断片をアガロースより切り出し、末端を平滑処理した後に、宝酒造社製のプラスミドベクターpUC19のSma I部位にクローニングした。クローニングしたDNAサンプルを20個拾い出し、これらを制限酵素を用いて解析したところ、増幅断片中には異なる塩基配列を持つDNA断片が少なくとも3種存在することが示唆された。更に、これらの異なる断片の候補の塩基配列をダイデオキシ法により決定したところ、増幅断片には表3と表4にある配列番号3、及び表5と表6にある配列番号4で示した2種の異なるDNA断片の存在が確認された。これらのDNA断片は542塩基対からなっており、その塩基配列は既に知られている双子葉植物の4CL遺伝子の塩基配列との75%以上の高い相同性を有していた。このことから、増幅されたDNAはタバコの4CLをコードするcDNAの一部であると結論した。尚、配列番号3、及び配列番号4で表されるDNAを含むプラスミドを保持した大腸菌を通産省工業技術院生命工学技術研究所の特許微生物寄託センターに寄託した。配列番号3のDNAを含むプラスミドを保持する大腸菌(識別の為の表示NT4CL2)についてはFERM P−15336、配列番号4のDNAを含むプラスミドを保持する大腸菌(識別の為の表示NT4CL6)についてはFERM P−15337の寄託番号で登録されている。
【0031】
【表3】
配列番号:3
配列の長さ:542
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA
起源
生物名:Nicotiana tabacum L.
株名:Samsun NN
【0032】
【表4】
Figure 0003571133
【0033】
【表5】
配列番号:4
配列の長さ:542
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA
起源
生物名:Nicotiana tabacum L.
株名:Samsun NN
【0034】
【表6】
Figure 0003571133
【0035】
〈5〉4CLcDNAの全長鎖の単離
他の植物由来の4CL遺伝子と高い相同性を持つcDNA断片が得られたため、このcDNA断片の塩基配列を基に更にPCRプライマーを作製し、得られたcDNA断片に対して5´側、及び3´側に相当する塩基配列の未知のcDNA部分を増幅した。PCRの鋳型には、SR1 株由来のcDNAを用いて作製したcDNAライブラリーからファージDNAを調製し、これを用いた。未知の5´領域、及び3´領域に相当する部分に対応するPCRプライマーは、ストラタジーン社製のブルースクリプトIIファージミドベクター用のマルチプルクローニング領域の塩基配列を持つ17塩基のオリゴヌクレオチドを使用した。反応条件は、変性94℃、30秒、アニール60℃、30秒、伸長反応74℃、90秒の条件で行った。PCR反応の結果、cDNAの未知な5´領域、及び3´領域に相当するcDNA部分が得られたので、更にこれらの塩基配列情報を基にPCRプライマーを作製し、先と同様の条件でPCRを行うことで、最終的に表7から表12にある配列番号5に示した1860塩基対からなるcDNAを得た。得られた全長鎖cDNAは、その末端を平滑化した後に、プラスミドベクターpUC19のSma I部位に導入し、このベクターをpNT4CL1と命名した。尚、pNT4CL1を保持する大腸菌についても、通産省工業技術院生命工学技術研究所の特許微生物寄託センターに寄託した(識別の為の表示NT4CL18、寄託番号FERM P−15338)。
【0036】
【表7】
配列番号:5
配列の長さ:1860
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA
起源
生物名:Nicotiana tabacum L.
株名:SR1
配列の特徴
特徴を示す記号:CDS
存在位置:1..1629
特徴を決定した方法:S
【0037】
【表8】
Figure 0003571133
【0038】
【表9】
Figure 0003571133
【0039】
【表10】
Figure 0003571133
【0040】
【表11】
Figure 0003571133
【0041】
【表12】
Figure 0003571133
【0042】
〈6〉4CLcDNAの同定
上記の方法で得られたcDNAがタバコの4CLをコードしているか、否かを確かめるために、得られたcDNA全長鎖をファルマシア社製の発現ベクターpTrc99Aに読み枠を合わせて結合させたベクターpTCLF1を作製した。このpTCLF1を大腸菌JM109株に導入して、cDNAにコードされる蛋白質を生産させた。pTCLF1で形質転換した大腸菌の菌体破砕液をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミド電気泳動にかけ、分離したタンパク質を和光純薬社製の銀染色キットを用いて染色したところ、分子量約60キロダルトンの新たなタンパク質が生産されていた。更に、電気泳動に供した菌体破砕液中には4CLの活性が検出された。尚、cDNAを組み込んでいない発現ベクターpTrc99Aで形質転換した大腸菌の菌体破砕液からは4CL活性は検出されず、また、SDSポリアクリルアミド電気泳動後の染色でも新たなタンパク質の生産は認められなかった。以上のことから、配列番号5に塩基配列を示したcDNAは、タバコの4CLをコードしていることが明らかとなった。
【0043】
〈7〉単離した4CLcDNAを用いたアンチセンス遺伝子、及びセンス遺伝子の構築 始めに、クローンテック社製のTiプラスミドベクターpBI121からGUS遺伝子を制限酵素消化によって除去し、GUS遺伝子の除かれたプラスミドベクターをセルフライゲーションして得たTiプラスミドベクターをpBI121DGと命名した。次にpNT4CL1を制限酵素Xba Iで消化し、タバコ4CLcDNAの全領域を取り出した。そして、このcDNA断片をpBI121DG上のカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターに対して逆方向、及び順方向に導入した。ここで、逆方向とは、本来のアミノ酸配列を規定する向きとは反対の向き、順方向とは、本来のアミノ酸配列を規定する向きのことを指す。タバコ4CLcDNAを逆方向に導入して得られたプラスミドDNAをpANT4CL、順方向に導入して得られたそれをpSNT4CLと命名した。即ち、pANT4CLはタバコ4CLのアンチセンス遺伝子を、pSNT4CLはタバコ4CLのセンス遺伝子をも持つTiプラスミドベクターである。
【0044】
〈8〉タバコアンチセンス遺伝子、及びセンス遺伝子の植物への組み込み
pANT4CL、又はpSNT4CLを保持するアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株を用いて、タバコSR1 株に4CLアンチセンス、及びセンスDNAを導入し、形質転換植物体を得た。また、pBI121DGを保持するアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株を用いて形質転換植物体を得、これを対照とした。上記のように作製した遺伝子を用いてタバコを形質転換し、対照個体4個体(表13中の個体番号#1〜#4で表される)、アンチセンス4CL遺伝子を導入した形質転換体5個体(表13中の個体番号#5〜#9で表される)、及びセンス4CL遺伝子を導入した形質転換植物体5個体(表13中の個体番号#10〜#14で表される)を得た。これらに各々の遺伝子が導入されていることは、各個体由来の全DNAを用いたサザン解析、PCR解析によって確かめた。
【0045】
〈9〉形質転換植物中のリグニン分析
形質転換植物を節間数が12になるまで成長させた後、各植物体の茎から木部組織を取り出し、摩砕処理して木粉を得た。この木粉をソックスレー抽出器中、エタノール・トルエン混合液(エタノール1容:トルエン2容)、エタノール、熱水で順次抽出処理し、残さを1週間真空乾燥した。以上の操作によって得られた脱脂木粉中のリグニンを、アセチルブロマイド法(Wood Sci. Technol., 22, 271−280, 1988 )により定量した。その結果を表13に示した。
【0046】
【表13】
Figure 0003571133
【0047】
アンチセンス遺伝子を導入した形質転換個体では、個体の木部組織中に存在するリグニンが、対照個体の平均値に対して最大で約18%減少していた。また、センス遺伝子を導入した形質転換個体では、対照個体に対して最大で約34%のリグニン量の減少が確認された。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、4CL遺伝子を用いたアンチセンス遺伝子、或はセンス遺伝子を植物に導入することにより、形質転換植物中のリグニン含量を低下させることができる。このことは、パルプ製造において、リグニン除去に必要なエネルギー、各種薬品の所要量を減少させ、その結果として生産コストの低減をもたらす。また、低リグニン含量の飼料用植物の育種が可能になったことで、易消化性の飼料を供給でき、畜産業の生産性向上に寄与することができる。

Claims (3)

  1. 配列番号5(アミノ酸番号1〜542)に示したアミノ酸配列をコードする4−クマル酸:補酵素Aリガーゼ遺伝子を新たに植物に導入し、植物中のリグニンを低減させる方法。
  2. 新たに植物に導入する遺伝子が、4−クマル酸:補酵素Aリガーゼ遺伝子を含むアンチセンス遺伝子である請求項1に記載の方法。
  3. 新たに植物に導入する遺伝子が、4−クマル酸:補酵素Aリガーゼ遺伝子を含むセンス遺伝子である請求項1に記載の方法。
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