JP5458348B2 - コエンザイムq10強化糖質突然変異植物体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体およびその製造方法に関する。
ユビキノンは、電子伝達系の成分の1つであり、キノン骨格にイソプレノイド(炭素数が5のイソペンテニル二リン酸(IPP)を基本単位とする天然の有機化合物)が付加した化合物であって、2,3-dimethoxy-5-methyl-6-polyprenyl-1,4-benzoquinoneの構造を持ち、補酵素Q(コエンザイムQ、CoQ)とも称される重要な役割を果たしている生体成分である。天然には側鎖のイソプレノイド単位により主にコエンザイムQ5からコエンザイムQ12までの同族体が存在している。
コエンザイムQは、動植物の組織中、および微生物中に存在し、生理的、生化学的に重要な機能を果たしていることが知られているが、医薬的な効果が認められているのは、コエンザイムQの中でもコエンザイムQ10(UQ-10(ユビキノン-10)と称する場合もある)のみである。
コエンザイムQ10(以下、コエンザイムQ10(CoQ10)と記載することもある)は呼吸鎖電子伝達系の酸化還元に関わる重要な物質で、近年はエネルギー産生賦活作用だけでなく抗酸化機能が注目され、従来の医薬用途に加えてサプリメントや化粧品として社会に普及している。現在CoQ10は植物由来の成分を原料とした化学合成、またはCoQ10を含む微生物からの抽出精製により生産されている。
高橋・門脇らは、CoQ10合成酵素遺伝子の導入により、イネなどの植物においてCoQ10を生産する方法を開発し(特許文献1参照)、この方法を用いて、本来蓄積するコエンザイムQ9(CoQ9)の代わりに、主にCoQ10を蓄積する組換えイネ種子(CoQ10強化米)を作出した。上記CoQ10強化米においては、10μg/g程度のCoQ10が蓄積していた。しかしながら、開発した組換え米のCoQ10含量は、食用や抽出原料として用いるには不十分であることから、より効率的な生産法の開発が望まれていた。
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
特開2006−212019号 Kamei, M. et al. (1986) Internat. J. Vit. Nutr. Res., 56, 57-63. Yano, M. et al. (1984) Japan. J. Breed., 34, 43-49. Matsuo, T. et al. (1987) Japan. J. Breed., 37, 17-21.
本発明は、コエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。
まず、イネ種子においては、CoQ9は白米部分には少量しか含まれないことが知られている(Kamei, M. et al. (1986) Internat. J. Vit. Nutr. Res., 56, 57-63.)。このことから、白米部分の重量が小さいイネ系統では、種子の重量当たりのCoQ9含量が高くなると推察された。一方、九州大学の佐藤らにより、デンプン含量及び種子重量が減少した品種 金南風(キンマゼ)由来の変異体、EM5及びEM22が作出・分離されていた(Yano, M. et al. (1984) Japan. J. Breed., 34, 43-49.およびMatsuo, T. et al. (1987) Japan. J. Breed., 37, 17-21.)。そこで高橋・門脇らはEM5及びEM22のCoQ9含量を測定したところ、日本晴の数倍のCoQ9を含むことが明らかとなった(図1)。さらに特開2006-212019号に記載される方法により、EM5及びEM22を用いてCoQ10強化米を作出したところ、種子のCoQ10含量が日本晴型のCoQ10強化米と比べ、EM5型のCoQ10強化米では2倍以上、EM22型のCoQ10強化米では3倍以上と、野性型のEM5及びEM22のCoQ9含量増加に相応して高まることが確認された(図2)。
現在まで、CoQ10合成酵素遺伝子を導入し、CoQ10を蓄積させる植物に、本発明のようなイネのデンプン合成変異体を用いたという報告はない。また、デンプン合成変異体を用いてCoQ10強化米を作成すると、上述のように日本晴を用いた場合と比べ、CoQ10含量が2〜3倍に高まり、これは当業者でも予想できないほどの高い値であった。
このように本発明では、CoQ10が強化された糖質突然変異植物体の製造方法、およびCoQ10が強化された糖質突然変異植物体を提供する。
〔1〕 以下の工程(1)および(2)を含むことを特徴とする、コエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体の製造方法;
(1)糖質突然変異植物細胞に、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAもしくは当該DNAを含むベクターを導入し形質転換する工程、
(2)形質転換された糖質突然変異植物細胞を再生する工程。
〔2〕 前記ポリプレニル2リン酸合成酵素がデカプレニル2リン酸合成酵素である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 形質転換に用いる糖質突然変異植物体がデンプン含量および/または種子重量が減少した変異体である、〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記変異体がイネ科植物である、〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法によって製造される、コエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体。
〔6〕 〔5〕に記載のコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体の子孫またはクローンである、コエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体。
〔7〕 〔5〕または〔6〕に記載のコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体を片親として用い、他方の親に非形質転換植物体あるいは〔5〕または〔6〕に記載のコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体を用い交配することによって作出される子孫であるコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体。
〔8〕 〔5〕〜〔7〕のいずれかに記載のコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体の繁殖材料。
本発明によって提供される製造方法によって、CoQ10が強化された植物を得ることができるようになる。また本発明の製造方法によって得られる植物体の繁殖材料(例えばコメ等)は、そのまま食用となるだけでなく、CoQ10の抽出原料として利用することも可能である。
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、CoQ10が強化された糖質突然変異植物体の製造方法を提供する。即ち、以下の工程(1)および(2)を含むことを特徴とする、CoQ10強化糖質突然変異植物体の製造方法である;
(1)糖質突然変異植物細胞に、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAもしくは当該DNAを含むベクターを導入し形質転換する工程、
(2)形質転換された糖質突然変異植物細胞を再生する工程。
本製造方法においては、まず糖質突然変異植物細胞に、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAもしくは当該DNAを含むベクターを導入し形質転換を行う。
「ポリプレニル2リン酸合成酵素」とは、直鎖状イソプレノイドの生成を触媒する酵素である。本発明におけるポリプレニル2リン酸合成酵素としては、例えばデカプレニル2リン酸合成酵素(decaprenyl diphosphate synthase;ddsA)を挙げることができる。ddsA遺伝子は、Gluconobacter suboxydansからクローニングされ、大腸菌内で発現された場合に、大腸菌が最終産物としてCoQ10を産生することが公知である(特開平10−57072号、Okadaら(Eur.J.Biochem., 255, 52-59(1998))。
Gluconobacter suboxydans由来のデカプレニル2リン酸合成酵素遺伝子の塩基配列を配列番号:1に、当該塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号:2に示す。
本発明においては、上記配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるデカプレニル2リン酸合成酵素以外であっても、ポリプレニル2リン酸合成酵素の機能を有している限り、本発明のポリプレニル2リン酸合成酵素として利用することができる。例えば、ポリプレニル2リン酸合成酵素の変異体、もしくはポリプレニル2リン酸合成酵素の部分断片ペプチド等を用いることができる。
本発明では、ポリプレニル2リン酸合成酵素は、Gluconobacter suboxydans由来のデカプレニル2リン酸合成酵素であることが好ましい。ただし、その由来する生物種は特に制限されず、Gluconobacter suboxydans以外の生物におけるデカプレニル2リン酸合成酵素と同等な酵素(デカプレニル2リン酸合成酵素のホモログ・オルソログ等)も本発明におけるポリプレニル2リン酸合成酵素に含まれる。
なお、本発明におけるポリプレニル2リン酸合成酵素遺伝子は、必ずしも、配列表に具体的に記載された配列からなるDNAに限定されない。また、本発明におけるポリプレニル2リン酸合成酵素は、必ずしも、配列表に具体的に記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質に限定されない。例えば本発明におけるポリプレニル2リン酸合成酵素遺伝子には、例えば、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAに対応する他の生物における内在性の遺伝子(ポリプレニル2リン酸合成酵素遺伝子のホモログ等)が含まれる。配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAに対応する他の生物に内在性のDNAは、一般的に、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAと高い相同性を有する。高い相同性とは、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上(例えば、95%以上、さらには96%、97%、98%または99%以上)の相同性を意味する。この相同性は、mBLASTアルゴリズム(Altschul et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-7)によって決定することができる。
また、該DNAは、生体内から単離した場合、配列番号:1に記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすると考えられる。ここで「ストリンジェントな条件」としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件として「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」および「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件を挙げることができる。当業者においては、他の生物におけるポリプレニル2リン酸合成酵素遺伝子に相当する内在性の遺伝子を、ポリプレニル2リン酸合成酵素遺伝子の塩基配列を基に適宜取得することが可能である。
また本発明においては、配列番号:2に記載されたアミノ酸配列と高い相同性を有し、かつ、ポリプレニル2リン酸合成酵素が有する機能を持つタンパク質を用いることができる。このようなタンパク質には、例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が付加、欠失、置換、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質が含まれる。
また本発明のポリプレニル2リン酸合成酵素には、例えば、ポリプレニル2リン酸合成酵素と機能的に同等なタンパク質(ポリペプチド)が含まれる。ここで「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質がポリプレニル2リン酸合成酵素と同様の(同等の)生物学的あるいは生化学的機能(活性)を有することを指す。このような機能としては、例えば、直鎖状イソプレノイドの生成を触媒する機能等を挙げることができる。
あるDNAがポリプレニル2リン酸合成酵素と同等の機能を有するタンパク質をコードするか否か、また対象となるタンパク質(ポリペプチド)が、ポリプレニル2リン酸合成酵素と同等の生物学的あるいは生化学的な機能(活性)を有しているか否かは、当業者であれば適宜評価することができる。
あるタンパク質(ポリペプチド)と機能的に同等なタンパク質(ポリペプチド)を調製するための、当業者によく知られた方法としては、例えばタンパク質(ポリペプチド)中のアミノ酸配列に変異を導入する方法が挙げられる。具体的には当業者であれば部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci USA. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列に適宜変異を導入することにより、該タンパク質(ポリペプチド)と機能的に同等なタンパク質(ポリペプチド)を調製することができる。また、タンパク質(ポリペプチド)をコードするアミノ酸の変異は自然に生じることもある。このように、人工的か自然に生じたものかを問わず、ポリプレニル2リン酸合成酵素(配列番号:2)のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸配列が変異したアミノ酸配列を有し、該タンパク質(ポリペプチド)と機能的に同等なタンパク質(ポリペプチド)は、本発明のタンパク質(ポリペプチド)に含まれる。
上記変異体における、変異するアミノ酸数は、ポリプレニル2リン酸合成酵素の有する機能が保持される限り制限はないが、通常15アミノ酸以内であり、好ましくは10アミノ酸以内であり、より好ましくは5アミノ酸以内であり、さらに好ましくは1〜4アミノ酸等の少数である。
変異するアミノ酸残基としては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。
あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するタンパク質(ポリペプチド)がその生物学的機能(活性)を維持し得ることはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413)。
具体的なアミノ酸配列(例えば、配列番号:2)が開示された場合においては、当業者であれば、これらアミノ酸配列を基に、適宜アミノ酸が改変された配列からなるタンパク質(ポリペプチド)を作製し、当該タンパク質(ポリペプチド)について、上述の機能を有するか否かを評価し、ポリプレニル2リン酸合成酵素を適宜選択することが可能である。
ポリプレニル2リン酸合成酵素のアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加されたタンパク質には、このタンパク質を含む融合タンパク質(ポリペプチド)が含まれる。融合ポリペプチドは、ポリプレニル2リン酸合成酵素のタンパク質(ポリペプチド)と他のペプチド又はポリペプチドとが融合したものである。融合ポリペプチドを作製する方法は、ポリプレニル2リン酸合成酵素(例えば、配列番号:2)をコードするDNA(例えば、配列番号:1)と他のペプチド又はポリペプチドをコードするDNAをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。ポリプレニル2リン酸合成酵素との融合に付される他のペプチド又はポリペプチドは、特に制限されない。
ポリプレニル2リン酸合成酵素との融合に付される他のペプチドとしては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするポリヌクレオチドと融合させ、これにより調製された融合ポリヌクレオチドを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
またあるタンパク質(ポリペプチド)と機能的に同等なタンパク質(ポリペプチド)を調製する当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者であれば、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNA(配列番号:1に記載の塩基配列)もしくはその一部をもとに相同性の高いDNAを単離して、該DNAからポリプレニル2リン酸合成酵素と機能的に同等なタンパク質(ポリペプチド)を単離することも通常行いうることである。
本発明には、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAとハイブリダイズするDNAによってコードされるタンパク質であって、ポリプレニル2リン酸合成酵素と機能的に同等なタンパク質が含まれる。
ポリプレニル2リン酸合成酵素と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSC及び0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
また、ハイブリダイゼーションにかえて、遺伝子増幅技術(PCR)(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley&Sons Section 6.1-6.4)を用いて、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNA(例えば、配列番号:1)の一部を基にプライマーを設計し、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAと相同性の高いDNA断片を単離し、該DNAを基にポリプレニル2リン酸合成酵素と機能的に同等なタンパク質を取得することも可能である。
ポリプレニル2リン酸合成酵素は「成熟」ポリペプチドの形であっても、融合ポリペプチドのような、より大きいポリペプチドの一部であってもよい。ポリプレニル2リン酸合成酵素には、リーダー配列、プロ配列、多重ヒスチジン残基のような精製に役立つ配列、または組換え生産の際の安定性を確保する付加的配列などが含まれていてもよい。
これらハイブリダイゼーション技術や遺伝子増幅技術により単離されるDNAによってコードされる、ポリプレニル2リン酸合成酵素と機能的に同等なタンパク質は、通常、ポリプレニル2リン酸合成酵素(例えば、配列番号:2)とアミノ酸配列において高い相同性を有する。本発明のタンパク質には、ポリプレニル2リン酸合成酵素と機能的に同等であり、かつ該タンパク質のアミノ酸配列と高い相同性を有するタンパク質も含まれる。高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の同一性を指す。タンパク質の相同性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムに従えばよい。
アミノ酸配列の同一性は、例えば、Karlin and Altschul によるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al. J. Mol. Biol.215: 403-410, 1990)。BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えば、score = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAは、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードし得るものであればいかなる形態でもよい。即ち、mRNAから合成されたcDNAであるか、ゲノムDNAであるか、化学合成DNAであるかなどを問わない。また、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。
ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAは、当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、ポリプレニル2リン酸合成酵素を発現している細胞よりcDNAライブラリーを作製し、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNA(例えば、配列番号:1に記載の塩基配列)の一部をプローブとしてハイブリダイゼーションを行うことにより調製できる。cDNAライブラリーは、例えば、文献(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))に記載の方法により調製してもよく、あるいは市販のcDNAライブラリーを用いてもよい。また、ポリプレニル2リン酸合成酵素を発現している細胞よりRNAを調製し、逆転写酵素によりcDNAを合成後、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNA(例えば、配列番号:1に記載の塩基配列)に基づいてオリゴDNAを合成し、これをプライマーとして用いてPCR反応を行い、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするcDNAを増幅させることにより調製することも可能である。
また、得られたcDNAの塩基配列を決定することにより、それがコードする翻訳領域を決定でき、ポリプレニル2リン酸合成酵素のアミノ酸配列を得ることができる。また、得られたcDNAをプローブとしてゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することができる。
具体的には、次のようにすればよい。まず、ポリプレニル2リン酸合成酵素を発現する細胞、組織、器官からmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299)、AGPC法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159)等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うこともできる。また、本明細書に記載されたプライマー等を用いて、5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932) に従い、cDNAの合成および増幅を行うことができる。得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列は、公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認することができる。
また、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAの作成においては、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮し、より発現効率の高い塩基配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucelic Acids Research (1981) 9, r43-74)。また、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAは、市販のキットや公知の方法によって改変することができる。改変としては、例えば、制限酵素による消化、合成オリゴヌクレオチドや適当なDNAフラグメントの挿入、リンカーの付加、開始コドン(ATG)及び/又は終止コドン(TAA、TGA、又はTAG)の挿入等が挙げられる。
また本発明のポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAが挿入されたベクターとしては、形質転換植物体作製のために植物細胞内でポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAを発現させるためのベクターだけでなく、組み換えタンパク質の生産に用いる上記ベクターも含まれる。このようなベクターとしては、好ましくは、植物細胞で転写可能なプロモーター配列と転写産物の安定化に必要なポリアデニレーション部位を含むターミネーター配列を含む。植物細胞の形質転換に用いられるベクターとしては、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター)を有するベクターや外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることも可能である。
本発明の製造方法で用いられるベクターは、ポリプレニル2リン酸合成酵素を恒常的または誘導的に発現させるためのプロモーターを含有してもよい。恒常的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、イネのアクチンプロモーター、トウモロコシのユビキチンプロモーター等が挙げられる。
また、誘導的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば細菌・ウイルスの感染や侵入、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化合物の散布などの外因によって発現することが知られているプロモーターなどが挙げられる。このようなプロモーターとしては、例えば、細菌・ウイルスの感染や侵入によって発現するイネキチナーゼ遺伝子のプロモーターやタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーター、低温によって誘導されるイネの「lip19」遺伝子のプロモーター、高温によって誘導されるイネの「hsp80」遺伝子と「hsp72」遺伝子のプロモーター、乾燥によって誘導されるシロイヌナズナの「rab16」遺伝子のプロモーター、紫外線の照射によって誘導されるパセリのカルコン合成酵素遺伝子のプロモーター、嫌気的条件で誘導されるトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。また、イネキチナーゼ遺伝子のプロモーターとタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーターはサリチル酸などの特定の化合物によって、「rab16」は植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導される。
当業者においては、所望のDNAを有するベクターを、一般的な遺伝子工学技術によって、適宜、作製することが可能である。通常、市販の種々のベクターを利用することができる。
本発明におけるポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAは、通常、適当なベクターへ担持(挿入)され、宿主細胞へ導入される。該ベクターとしては、挿入したDNAを安定に保持するものであれば特に制限されず、例えば宿主に大腸菌を用いるのであれば、クローニング用ベクターとしてpBluescriptベクター(Stratagene社製)などが好ましいが、市販の種々のベクターを利用することができる。ベクターへのポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAの挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる。
上記宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。宿主細胞へのベクター導入は、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、リポフェクション法(GIBCO-BRL社製)、マイクロインジェクション法などの公知の方法で行うことが可能である。
また、植物の生体内でポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAを発現させる方法としては、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAを適当なベクターに組み込み、例えば、エレクトロポレーション法、アグロバクテリウム法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法などにより生体内に導入する方法などが挙げられる。ベクターへのポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAの挿入などの一般的な遺伝子操作は、常法に従って行うことが可能である(Molecular Cloning, 5.61-5.63)。植物体内への投与は、ex vivo法であっても、in vivo法であってもよい。また、植物体内へポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAを導入する方法としては、好ましくは、アグロバクテリウムを介して遺伝子を導入する方法が挙げられる。
本発明における「植物」には、単子葉植物および双子葉植物のいずれもが含まれ、さらに藻類、シダ類、苔類も含まれる。単子葉植物としては、例えばイネ科植物、が挙げられる。イネ科植物に属する植物としては、例えば、イネ、トウモロコシ、コムギ、エンバク(カラスムギ)、オオムギ、ソルガム、オートムギ、ライムギ、ハトムギ、インドヒエ、アワ、サトウキビ等が挙げられるが、これらに限定されない。また双子葉植物としては、アブラナ科植物、マメ科植物、ナス科植物、ウリ科植物、ヒルガオ科植物等が挙げられる。アブラナ科植物に属する植物としては、例えばシロイヌナズナ、セイヨウワサビ、カラシナ、タカナ、カリフラワー、キャベツ、ブロッコリー、アブラナ、ハクサイ、コマツナ、カブ、ダイコン、ワサビ等、マメ科植物に属する植物としては、例えばダイズ、エンドウマメ、インゲンマメ、ラッカセイ等、ナス科植物としては、例えばナス、ジャガイモ、トマト、タバコ等、ウリ科植物としては、例えばキュウリ、スイカ、カボチャ、ヒョウタン、ヘチマ、トウガン、メロン等、ヒルガオ科植物としては、例えばサツマイモを挙げることができるが、これらに制限されない。
また特に示さない限り、本発明における植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、植物種子のいずれをも意味する。植物器官の例として、根、葉、茎、花、種子、胚、果実等が挙げられる。本発明において、植物としてイネを用いる場合、イネの米ヌカあるいは胚も植物器官から得られるものとして、本発明に含まれる。植物細胞としては特に制限はなく、例えば、イネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギなどの細胞が挙げられる。本発明の植物細胞には、種々の形態の植物細胞、培養細胞(例えば懸濁培養細胞)、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根、葉の切片、カルス等も含まれる。
本製造方法においては、次いで、形質転換された糖質突然変異植物細胞を再生する。
本発明のベクターが導入される細胞には、組み換えタンパク質の生産に用いる上記した細胞の他に、形質転換植物体作製のための植物細胞が含まれる。
植物細胞へのベクターの導入は、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法など当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。例えば、イネの場合、形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールによりプロトプラストへ遺伝子導入し植物体を再生させる方法、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し植物体を再生させる方法、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法、およびアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法など、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
本発明のDNAを含むベクターの導入により形質転換した植物細胞を効率的に選択するために、上記組み換えベクターは、適当な選抜マーカー遺伝子を含む、もしくは選抜マーカー遺伝子を含むプラスミドベクターと共に植物細胞へ導入してもよい。この目的に使用される選抜マーカー遺伝子は、例えば抗生物質ハイグロマイシンに耐性であるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、カナマイシンまたはゲンタマイシンに耐性であるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、および除草剤ホスフィノスリシンに耐性であるアセチルトランスフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。
組み換えベクターを導入した植物細胞は、導入された選抜マーカー遺伝子の種類に従って適当な選抜用薬剤を含む公知の選抜用培地に置床し培養する。これにより形質転換された植物培養細胞を得ることができる。
形質転換された植物細胞は、再分化させることにより植物体を再生させることが可能である。再分化の方法は植物細胞の種類により異なるが、例えば、イネであればFujimuraら(Plant Tissue Culture Lett. 2:74 (1995))の方法が挙げられ、トウモロコシであればShillitoら(Bio/Technology 7:581 (1989))の方法やGorden-Kammら(Plant Cell 2:603(1990))が挙げられる。
一旦、ゲノム内に本発明のDNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。本発明には、ポリプレニル2リン酸合成酵素をコードするDNAが導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の子孫およびクローン、並びに該植物体、その子孫、およびクローンの繁殖材料も含まれる。
本明細書において「突然変異植物体」とは、突然変異が生体の形質的変化として現れている植物個体をさし、例えば天然に存在する植物体と比較して、ゲノム情報の少なくとも一部の構造および/または機能が変更されている植物体をいう。突然変異植物体は、当業者に公知の手法(例えば、野生型植物の形質転換、形質転換によって得られた植物との交雑、アンチセンス核酸による遺伝子発現の抑制、RNA干渉による遺伝子発現の抑制等)によって作製することができる。
本発明において用いられる「糖質突然変異植物体」とは、糖質(例えばデンプン等)の含量および/または種子重量が天然の植物と比較して変化(減少)している植物である。本発明においては、例えば、イネ科植物の変異体を用いることができる。このようなイネ科植物としては、例えば九州大学の佐藤らによって作出・単離されたイネ品種である金南風(キンマゼ)由来の変異体であるEM5型あるいはEM22型の変異体を用いることができるが、これらに限定されず、同様の形質を有するイネ科植物であれば用いることができる。
また本発明は、上記本発明の製造方法によって製造されるコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体を提供する。本発明には、本発明の製造方法によって製造されるコエンザイムQ10強化突然変異植物体の子孫またはクローンも含まれる。なお本明細書においては、これらのコエンザイムQ10強化突然変異植物体の子孫またはクローンを、単にコエンザイムQ10強化突然変異植物体と記載する場合がある。
さらに本発明は、本発明のコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体を片親として用い、他方の親に非形質転換植物体あるいは、本発明のコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体を用い交配することによって作出される子孫であるコエンザイムQ10強化糖質突然変異植物体を提供する。
さらに本発明は、上記コエンザイムQ10強化突然変異植物体の繁殖材料を提供する。繁殖材料としては、例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等を挙げることができる。
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
1.EM変異体種子のCoQ9含量の測定
以下の参考例1の方法に従い、日本晴、EM5変異体、EM22変異体の種子(玄米)のCoQ9含量測定を行った(図1)。測定は種子1粒を用いて行った。各サンプル4粒ずつ解析し、図Aには平均値を示した。日本晴、EM5変異体、EM22変異体の種子のCoQ9含量はそれぞれ3.4μg/g、6.4μg/g、10.8μg/gであり、日本晴種子と比べEM5変異体の種子には約2倍、EM22変異体の種子には約3倍のCoQ9が含まれることが示された。
2.EM変異体型CoQ10強化イネの作出
特許文献1(特開2006−212019号)に示された遺伝子導入用プラスミド(S14ddsAコンストラクト)を用いて、EM5変異体及びEM22変異体を形質転換した。具体的には、アグロバクテリウムEHA105株をエレクトロポレーションによって形質転換し、WO01/06844に記載の形質転換法に従い上記イネを形質転換した。形質転換したイネを、ハイグロマイシン(50 mg/L)を含む培地にて選抜した。ddsA遺伝子が植物細胞に導入されたことは、PCR増幅実験により確認した(データなし)。
3.EM変異体型CoQ10強化イネ種子のCoQ10含量の測定
実施例2によって得られたEM5型及びEM22型のCoQ10強化イネ(EM5-S14ddsAイネ及びEM22-S14ddsAイネ)のT1世代種子、及び対照用の日本晴型のCoQ10強化イネ(日本晴-S14ddsAイネ)のT1世代種子を用いて、CoQ9及びCoQ10含量の測定を行った(表1及び図2)。測定は参考例1に記載された方法に従い、種子1粒を用いて行った。各サンプル8粒ずつ解析し、表1(EM変異体型組換えイネ種子のCoQ含量(例:EM22-S14ddsA 1)には例としてEM22-S14ddsA 1のCoQ9及びCoQ10含量を、図2には各組換えイネの1粒ごとのCoQ10含量を示した(それぞれA: 新鮮重当たり、B: 種子1粒当たり、のCoQ含量)。
Figure 0005458348
ddsA遺伝子が植物に1コピー導入されたと仮定すると、理論上、T1世代種子には導入遺伝子をホモ:ヘミ:ヌルに保持する種子が1:2:1の割合で混在する。実際、表1の#2及び#5のように、CoQ10を少ししか蓄積せず、主にCoQ9を蓄積する種子が各組換えイネのT1種子8粒中に0〜4粒存在した。そこで、ヌルの種子(ddsA遺伝子を保持しない種子)と推定される、CoQ10をほとんど蓄積しない種子を除外し、各個体のT1ホモ及びT1ヘミ種子(CoQ10強化米)のCoQ10含量の平均値を推計した。日本晴型のCoQ10強化米の推計CoQ10含量は最大で10μg/g (日本晴-S14ddsA 58)であった。一方、EM5型及びEM22型のCoQ10強化米の推計CoQ10含量はそれぞれ最大で24μg/g (EM5-S14ddsA 4及び17)、及び35μg/g (EM22-S14ddsA 1及び17)であり、日本晴型のCoQ10強化米と比べ、EM5型のCoQ10強化米には2倍以上、及びEM22型のCoQ10強化米には3倍以上のCoQ10が含まれると試算された。
〔参考例1〕脂溶性生理活性物質の抽出方法
脂溶性生理活性物質(例えば、コエンザイムQ類、脂溶性ビタミン類等)を抽出するには、先ず、植物から採取した種子を集積し、これら種子を、好ましくはこれら種子から分離した胚を粉末化する。これら植物から採取した種子および/または胚を粉末化する手法としては、特に限定されないが、乳鉢を用いて粉末化する方法、ボールミル装置を用いて粉末化する方法といった各種の粉末化方法を挙げることができる。
次に、粉末化した種子および/または胚をセルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する。ここで、セルロース加水分解酵素とは、セルラーゼと称される一群の酵素と同義であり、分子内部から切断するエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)と、糖鎖の還元末端と非還元末端のいずれかから分解してセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(EC 3.2.1.91)の両者を含む意味である。セルロース加水分解酵素としては、例えばAspergillus niger由来のセルラーゼ等を使用することができる。
またセルロース加水分解酵素を含む緩衝液とは、セルロース加水分解酵素に至適な塩濃度およびpHに維持した溶液を意味する。具体的に使用するセルロース加水分解酵素が決定されれば、緩衝液の組成およびpH等については、当業者により適宜選択することができる。
さらにセルロース加水分解酵素を含む緩衝液で粉末化した種子及び/または胚を処理する際の処理条件としては、反応温度、攪拌の有無および反応時間等を挙げることができる。これらの処理条件は、粉末化した種子および/または胚の量およびセルロース加水分解酵素の種類等に応じて適宜設定することができる。
次に、処理後の緩衝液から脂溶性生理活性物質を抽出する。この抽出工程では、有機溶媒を利用した抽出処理が行われる。有機溶媒としては、例えばペンタン、へキサン、へプタン、オクタン等の低極性有機溶媒を使用することが好ましく、特にヘキサンが好ましい。有機溶媒の量は、特に限定されないが、種子および/または胚の粉体20 mgに対して5〜25 ml、好ましくは10〜20 ml、より好ましくは12〜16 mlとする。
本抽出工程によって、有機溶媒層種子に蓄積された脂溶性生理活性物質を抽出することができる。有機溶媒層に抽出された脂溶性生理活性物質は、有機溶媒を除去することによって乾燥状態で回収することができる。また、脂溶性生理活性物質を含む有機溶剤をそのまま保存することもできるし、当該有機溶剤を用いて種子に含まれていた脂溶性生理活性物質を定量することもできる。
有機溶剤中に抽出した脂溶性生理活性物質を検出する際には、特に限定されないが、例えば高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等を適用することができる。中でも、高速液体クロマトグラフィーを使用することが好ましい。
上述の脂溶性生理活性物質の抽出方法によれば、種子および/または胚の粉体をセルロース加水分解酵素によって処理することによって、有機溶媒層に脂溶性生理活性物質を抽出することができる。脂溶性生理活性物質の抽出方法では、セルロース加水分解酵素によって処理する粉体の量が種子1粒に相当するような微量であっても、脂溶性生理活性物質を確実に抽出することができる。脂溶性生理活性物質の抽出方法は、粉体サンプル量が僅少である場合にも適用できる。
この脂溶性生理活性物質の抽出方法は、オートクレーブ処理といった従来の手法には必須であった処理工程を省くことができる。
この脂溶性生理活性物質の抽出方法の具体例を、以下の(1)に示すことができるが、本発明の技術的範囲はこれら具体例に限定されるものではない。
(1)
CoQ10をミトコンドリアで発現するように組み換えられたイネを用いて、本脂溶性生理活性物質の抽出方法によりCoQ10を抽出した。本例では主としてCoQ9を産生する野生型イネを用いてCoQ9を抽出した。
まず、形質転換イネから採取した玄米を乳鉢で粉砕し、得られた玄米パウダーの100 mgあるいは20 mgを1.5 mlのエッペンドルフチューブに入れ、そこにpH5.0の酢酸buffer(1 ml)に溶解させた各加水分解酵素(セルラーゼ)を添加した(工程1)。次に、37℃の温浴に各エッペンドルフチューブが完全に漬かるように横に寝かせて入れ24時間静置した(工程2)。24時間の静置後、エッペンドルフチューブから別容器に移した溶液にヘキサン4 mlをそれぞれ加え、ミキサーで30秒間攪拌した(工程3)。その後、2000 rpmで2分間遠心を行い、へキサン層を3 ml回収した(工程4)。さらに、へキサン4 mlで2回(工程3と併せて合計3回)同様に抽出および回収を行った(工程5)。最後に、回収した全てのへキサン層をナス型フラスコに集め、エバポレーターで濃縮乾固した(工程6)。
工程6で回収したCoQ10は以下の方法によって分析した。先ず、工程6において濃縮乾燥したへキサン層をアセトニトリル/メタノール=1/1の混合溶液2 mlに溶解し、その50μlをHPLC装置に注入した。HPLC装置及び分析条件は以下の通りである。
装置:液体クロマトグラフHP-1000(Hewlett Packard)
移動層:MeOH/MeCN=60/40→(15 min)→90/10(5 min維持)
流速:1.0 ml
検出器:可変波長型UV-VIS(測定波長275 nm)
カラム:CAPCELL PACK C8 SHISEIDO TYPE : UG120 5 mm SIZE: 4.6 mmφ×250 mm
日本晴とEM変異体のCoQ9含量を比較したグラフである。 日本晴型組換え米とEM変異型組換え米のCoQ10含量を比較したグラフである。 A: 新鮮重当たり、B: 種子1粒当たり。

Claims (5)

  1. 以下の工程(1)および(2)を含むことを特徴とする、コエンザイムQ10強化イネの製造方法;
    (1)EM5細胞またはEM22細胞に、デカプレニル2リン酸合成酵素活性を有し、配列番号:2のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するタンパク質をコードするDNAもしくは当該DNAを含むベクターを導入し形質転換する工程、
    (2)形質転換された前記細胞を再生する工程。
  2. 請求項1に記載の製造方法によって製造される、コエンザイムQ10強化イネ
  3. 請求項に記載のコエンザイムQ10強化イネの子孫またはクローンである、コエンザイムQ10強化イネ
  4. 請求項2または3に記載のコエンザイムQ10強化イネを片親として用い、他方の親に非形質転換イネあるいは請求項2または3に記載のコエンザイムQ10強化イネを用い交配することによって作出される子孫であるコエンザイムQ10強化イネ
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載のコエンザイムQ10強化イネの繁殖材料。
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