以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において「インク組成物の硬化物」とは、インク組成物(インク組成物が溶剤を含む場合には、乾燥後のインク組成物)中の硬化性成分を硬化させて得られるものである。乾燥後のインク組成物の硬化物中には、溶剤が含まれなくてよい。
<インク組成物>
一実施形態のインク組成物は、発光性ナノ結晶粒子と、有機リガンドと、光重合性化合物と、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、を含有する。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、20質量%以上である。光重合性化合物は、少なくとも2種のメタクリロイル基含有化合物を含む。ここで、「メタクリロイル基含有化合物」とは、メタクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物である。
上記インク組成物は、インクジェット法に使用されるインクジェットインク組成物であり、カラーフィルタ等が有する光変換層の画素部を形成するために用いられる、光変換層形成用(例えばカラーフィルタ画素部の形成用)のインク組成物(光変換層形成用インクジェットインク組成物)である。上記インク組成物によれば、画素部(光変換層)の外部量子効率を向上させることができるだけでなく、画素部(光変換層)の表面均一性も向上させることができる。
上記インク組成物により上述した効果が得られる理由は、明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。すなわち、発光性ナノ結晶粒子の含有量を増加させた場合、硬化のための照射光の一部が発光性ナノ結晶粒子に吸収されやすくなり、発光性ナノ結晶粒子の分布によって光重合性化合物の硬化速度に違いが生じると推察される。そのため、発光性ナノ結晶粒子の含有量が多いインク組成物では、光重合性化合物の反応速度が速い場合には、上記硬化速度のばらつきが大きくなり、このばらつきに起因して、得られる画素部の表面均一性が低下すると推察される。一方、上記インク組成物では、比較的反応速度が遅いメタクリロイル基を有する化合物を用いること、及び、このメタクリロイル基含有化合物を2種以上用いることによって、発光性ナノ結晶粒子による光吸収の影響を低減することができ、表面均一性に優れる画素部が得られると推察される。
[発光性ナノ結晶粒子]
発光性ナノ結晶粒子は、励起光を吸収して蛍光又は燐光を発光するナノサイズの結晶体であり、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
発光性ナノ結晶粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光又は燐光)を発することができる。発光性ナノ結晶粒子は、605〜665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(赤色光)を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子(赤色発光性ナノ結晶粒子)であってよく、500〜560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(緑色光)を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子(緑色発光性ナノ結晶粒子)であってよく、420〜480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(青色光)を発する、青色発光性のナノ結晶粒子(青色発光性ナノ結晶粒子)であってもよい。インク組成物は、これらの発光性ナノ結晶粒子のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。また、発光性ナノ結晶粒子が吸収する光は、例えば、400nm以上500nm未満の範囲(特に、420〜480nmの範囲の波長の光)の波長の光(青色光)、又は、200nm〜400nmの範囲の波長の光(紫外光)であってよい。なお、発光性ナノ結晶粒子の発光ピーク波長は、例えば、分光蛍光光度計を用いて測定される蛍光スペクトル又は燐光スペクトルにおいて確認することができる。
赤色発光性のナノ結晶粒子は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下又は630nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上又は605nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶粒子は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下又は530nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上又は500nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶粒子は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下又は450nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上又は420nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子が発する光の波長(発光色)は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解によれば、発光性ナノ結晶粒子のサイズ(例えば粒子径)に依存するが、発光性ナノ結晶粒子が有するエネルギーギャップにも依存する。そのため、使用する発光性ナノ結晶粒子の構成材料及びサイズを変更することにより、発光色を選択することができる。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料を含む発光性ナノ結晶粒子(発光性半導体ナノ結晶粒子)であってよい。発光性半導体ナノ結晶粒子としては、量子ドット、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、量子ドットが好ましい。
発光性半導体ナノ結晶粒子は、第一の半導体材料を含むコアのみからなっていてよく、第一の半導体材料を含むコアと、第一の半導体材料とは異なる第二の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアのみからなる構造(コア構造)であってよく、コアとシェルからなる構造(コア/シェル構造)であってもよい。また、発光性半導体ナノ結晶粒子は、第二の半導体材料を含むシェル(第一のシェル)の他に、第一及び第二の半導体材料とは異なる第三の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェル(第二のシェル)を更に有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアと第一のシェルと第二のシェルとからなる構造(コア/シェル/シェル構造)であってもよい。コア及びシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、CdSe+CdS、CIS+ZnS等)であってよい。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料として、II−VI族半導体、III−V族半導体、I−III−VI族半導体、IV族半導体及びI−II−IV−VI族半導体からなる群より選択される少なくとも1種の半導体材料を含むことが好ましい。
具体的な半導体材料としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe2、CuGaSe2、CuInS2、CuGaS2、CuInSe2、AgInS2、AgGaSe2、AgGaS2、C、Si及びGeが挙げられる。発光性半導体ナノ結晶粒子は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、InP、InAs、InSb、GaP、GaAs、GaSb、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、Si、C、Ge及びCu2ZnSnS4からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
赤色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がCdSであり内側のコア部がCdSeであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がCdSであり内側のコア部がZnSeであるナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、InPのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、CdSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、ZnSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
緑色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
青色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、ZnSeのナノ結晶粒子、ZnSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSeであり内側のコア部がZnSであるナノ結晶粒子、CdSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
半導体ナノ結晶粒子は、同一の化学組成で、それ自体の平均粒子径を変えることにより、当該粒子から発光させるべき色を赤色にも緑色にも変えることができる。また、半導体ナノ結晶粒子は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いものを用いることが好ましい。カドミウム、セレン等を含有する半導体ナノ結晶粒子を発光性ナノ結晶粒子として用いる場合は、上記元素(カドミウム、セレン等)が極力含まれない半導体ナノ結晶粒子を選択して単独で用いるか、上記元素が極力少なくなるようにその他の発光性ナノ結晶粒子と組み合わせて用いることが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の形状は特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等であってもよい。しかしながら、発光性ナノ結晶粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性及び流動性をより高められる点で好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、所望の波長の発光が得られやすい観点、並びに、分散性及び保存安定性に優れる観点から、1nm以上であってよく、1.5nm以上であってよく、2nm以上であってもよい。所望の発光波長が得られやすい観点から、40nm以下であってよく、30nm以下であってよく、20nm以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
発光性ナノ結晶粒子は、分散安定性の観点から、その表面に後述する有機リガンドを有する。例えば、発光性ナノ結晶粒子の表面は、有機リガンドによってパッシベーションされていてよい。有機リガンドは、発光性ナノ結晶粒子の表面に配位結合していてよい。
発光性ナノ結晶粒子は、その表面に後述する高分子分散剤を有していてもよい。例えば、発光性ナノ結晶粒子の表面に結合する有機リガンドを高分子分散剤と交換することで発光性ナノ結晶粒子の表面に高分子分散剤を結合させてよい。ただし、インクジェットインクにした際の分散安定性の観点では、有機リガンドが配位したままの発光性ナノ結晶粒子に対して高分子分散剤が配合されることが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子としては、溶剤、光重合性化合物等の中にコロイド形態で分散しているものを用いることができる。分散状態にある発光性ナノ結晶粒子の表面は、後述する有機リガンドによってパッシベーションされていることが好ましい。溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン、テトラリン、ジフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、又はそれらの混合物が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子としては、市販品を用いることができる。発光性ナノ結晶粒子の市販品としては、例えば、NN−ラボズ社の、インジウムリン/硫化亜鉛、D−ドット、CuInS/ZnS、アルドリッチ社の、InP/ZnS等が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の外部量子効率がより向上する観点から、インク組成物の全質量を基準として、20質量%以上であり、22質量%以上、24質量%以上又は26質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、吐出安定性及び画素部の外部量子効率がより向上する観点から、インク組成物の全質量を基準として、好ましくは80質量%以下であり、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下であってもよい。これらの観点から、発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、例えば、20〜80質量%、22〜70質量%、24〜60質量%、24〜50質量%又は26〜40質量%であってよい。なお、上記発光性ナノ結晶粒子の含有量には、発光性ナノ結晶粒子に結合する有機リガンドの量は含まれない。また、本明細書中、「インク組成物の全質量」とは、インク組成物の硬化物に含有させるべき成分と言い換えることができる。すなわち、インク組成物が溶剤を含む場合には、インク組成物に含まれる溶剤以外の成分を意味し、特筆する場合を除き、溶剤の量はインク組成物の全質量には含まれない。「インク組成物の全質量」は、例えば、発光性ナノ結晶粒子と、有機リガンドと、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、光重合性化合物の合計である。
インク組成物は、発光性ナノ結晶粒子として、赤色発光性ナノ結晶粒子、緑色発光性ナノ結晶粒子及び青色発光性ナノ結晶粒子のうちの2種以上を含んでいてもよいが、好ましくはこれらの粒子のうちの1種のみを含む。インク組成物が赤色発光性ナノ結晶粒子を含む場合、緑色発光性ナノ結晶粒子の含有量及び青色発光性ナノ結晶粒子の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。インク組成物が緑色発光性ナノ結晶粒子を含む場合、赤色発光性ナノ結晶粒子の含有量及び青色発光性ナノ結晶粒子の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
[有機リガンド]
有機リガンドは、発光性ナノ結晶粒子の表面近傍に存在し、発光性ナノ結晶粒子を分散させる機能を有する。有機リガンドは、例えば、光重合性化合物、溶剤等との親和性を確保するための官能基(以下、単に「親和性基」ともいう。)と、発光性ナノ結晶粒子と結合可能な官能基(発光性ナノ結晶粒子への吸着性を確保するための官能基)と、を有しており、発光性ナノ結晶粒子の表面に配位結合することにより発光性ナノ結晶粒子の表面近傍に存在する。
親和性基としては、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基であってよい。当該脂肪族炭化水素基は、直鎖型であってもよく分岐構造を有していてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよく、不飽和結合を有していなくてもよい。置換の脂肪族炭化水素は、脂肪族炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子で置換された基であってもよい。置換の脂肪族炭化水素基は、例えば、(ポリ)オキシアルキレン基を含んでいてよい。ここで、「(ポリ)オキシアルキレン基」とは、オキシアルキレン基、及び、2以上のアルキレン基がエーテル結合で連結したポリオキシアルキレン基の少なくとも1種を意味する。
発光性ナノ結晶粒子と結合可能な官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基及びアルコキシシリル基が挙げられる。これらの中でも、チオール基を有する有機リガンドを用いる場合、従来のインク組成物(例えば光重合性化合物としてアクリロイル基を有する化合物を用いるインク組成物)では、チオール基と光重合性化合物との反応が進行して粘度が上昇してしまい、吐出安定性が低下する場合があったが、本実施形態では、光重合性化合物としてメタクリロイル基含有化合物を用いており、チオール基と光重合性化合物との反応が起こり難いため、充分な吐出安定性を得ることが容易である。
有機リガンドとしては、例えば、TOP(トリオクチルホスフィン)、TOPO(トリオクチルホスフィンオキサイド)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、グルコン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、N−ラウロイルサルコシン、N−オレイルサルコシン、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、フェニルホスホン酸、及びオクチルホスフィン酸(OPA)が挙げられる。
一実施形態において、有機リガンドは、下記式(1−1)で表される有機リガンドであってもよい。
[式(1−1)中、pは0〜50の整数を示し、qは0〜50の整数を示す。]
式(1−1)で表される有機リガンドにおいて、p及びqのうち少なくとも一方が1以上であることが好ましく、p及びqの両方が1以上であることがより好ましい。
有機リガンドは、例えば、下記式(1−2)で表される有機リガンドであってもよい。
式(1−2)中、A1は、カルボキシル基を含む1価の基を示し、A2は、ヒドロキシル基を含む1価の基を示し、Rは、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、Lは、置換又は無置換のアルキレン基を示し、rは0以上の整数を示す。カルボキシル基を含む1価の基におけるカルボキシル基の数は、2個以上であってよく、2個以上4個以下であってよく、2個であってよい。Lで示されるアルキレン基の炭素数は、例えば、1〜10であってよい。Lで示されるアルキレン基は、炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていてもよい。rは、例えば、1〜100の整数であってよく、10〜20の整数であってもよい。
有機リガンドは、画素部(インク組成物の硬化物)の外部量子効率に優れる観点から、下記式(1−2A)で表される有機リガンドであってもよい。
式(1−2A)中、rは上記と同義である。
一実施形態において、有機リガンドは、下記式(1−3)で表される有機リガンドであってもよい。
式(1−3)中、nは0〜50の整数を示し、mは0〜50の整数を示す。nは好ましくは0〜20であり、より好ましくは0〜10である。mは好ましくは0〜20であり、より好ましくは0〜10である。n及びmのうち少なくとも一方が1以上であることが好ましい。すなわち、n+mは1以上であることが好ましい。n+mは10以下であってよい。Zは、置換又は無置換のアルキレン基を示す。アルキレン基の炭素数は、例えば、1〜10であってよい。Zで示されるアルキレン基は、炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていてもよい。
一実施形態において、有機リガンドは、下記式(1−4)で表される有機リガンドであってよい。
式(1−4)で表される有機リガンドにおいて、lは、1〜20であってよく、3〜15であってよく、5〜10であってよく、7であってよい。
本実施形態では、インク組成物が、光重合性化合物とのHSP距離Δδ1が2.0〜7.0Mpa0.5である有機リガンドを含有することが好ましく、高分子分散剤とのHSP距離Δδ2が6.0〜12.0Mpa0.5である有機リガンドを含有することが好ましく、光重合性化合物とのHSP距離Δδ1が2.0〜7.0Mpa0.5であり、且つ、高分子分散剤とのHSP距離Δδ2が6.0〜12.0Mpa0.5である有機リガンドを含有することが好ましい。光重合性化合物とのHSP距離Δδ1が2.0〜7.0Mpa0.5である有機リガンドは、光重合性化合物に対して高い相溶性を有しながらも発光性ナノ結晶粒子の表面近傍に存在した状態を維持することができる。そのため、インク組成物がこのような有機リガンドを含む場合、発光性ナノ結晶粒子を光重合性化合物中により良好に分散させやすくなり、より良好な外部量子効率とより良好な吐出安定性が得られやすくなる。また、高分子分散剤とのHSP距離Δδ2が6.0〜12.0Mpa0.5である有機リガンドは、高分子分散剤に対して高い相溶性を有しながらも発光性ナノ結晶粒子の表面近傍に存在した状態を維持することができる。そのため、インク組成物がこのような有機リガンドを含む場合、発光性ナノ結晶粒子が光散乱性粒子と凝集することなく良好に分散しやすくなり、より良好な外部量子効率とより良好な吐出安定性が得られやすくなる。
ここで、HSP距離Δδとは、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)の座標における2成分間の距離であり、例えば、第1成分のHSP座標が(δd1、δp1、δh1)であり、第2成分のHSP座標(δd2、δp2、δh2)である場合、第1成分と第2成分のHSP距離Δδは、下記式によって定義される。
Δδ=[4(δd1−δd2)2+(δp1−δp2)2+(δh1−δh2)2]1/2
HSP距離Δδ1及びHSP距離Δδ2の算出には、それぞれ、光重合化合物全体としてのHSP値及び高分子分散剤全体としてのHSP値を用いる。
光重合化合物全体としてのHSP値は、包含される成分それぞれのHSP値と体積分率を用いて求めることができる。例えば、メタクリロイル基含有化合物Aとメタクリロイル基含有化合物Bとからなる光重合性化合物のHSP値(光重合性化合物全体のHSP値)をδmix(δdmix、δpmix、δhmix)とし、メタクリロイル基含有化合物Aとメタクリロイル基含有化合物Bの体積比をa:b(a+b=1)とすると、δmixは、以下の式で表すことができる。
δmix(δdmix、δpmix、δhmix)=[(a*δdA+b*δdB),(a*δpA+b*δpB),(a*δhA+b*δhB)]/(a+b)
高分子分散剤全体のHSP値は、ハンセンの溶解球を用いて算出することができる。HSP値が既知である任意の溶媒を選択しHSP座標の3次元空間にプロットしたとき、高分子分散剤を溶解する溶媒は似たところに集まり、その集まっている溶媒はハンセンの溶解球を構成する。そのハンセンの溶解球の中心点を高分子分散剤の溶解度パラメータと定めることができる。
ハンセン溶解度パラメータ値は、例えば、Charles M. Hansenによる「Hansen Solubility Parameters:A Users Handbook」等に記載されており、記載のないモノマーについてのハンセン溶解度パラメータ値、及び、高分子分散剤のHSPを求めるために利用するハンセンの溶解球は、コンピュータソフトウェア(Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP))を用いて推算することができる。
HSP距離Δδ1は、より好ましくは3.0Mpa0.5以上であり、更に好ましくは4.0Mpa0.5以上である。HSP距離Δδ1は、より好ましくは6.5Mpa0.5以下であり、更に好ましくは6.0Mpa0.5以下である。好ましくは、有機リガンド(特に発光性ナノ結晶粒子の表面に結合する有機リガンド)の70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上が上記HSP距離Δδ1を有する有機リガンドである。
HSP距離Δδ2は、より好ましくは6.5Mpa0.5以上であり、更に好ましくは7.0Mpa0.5以上である。HSP距離Δδ2は、より好ましくは11.0Mpa0.5以下であり、更に好ましくは10.0Mpa0.5以下である。好ましくは、有機リガンド(特に発光性ナノ結晶粒子の表面に結合する有機リガンド)の70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上が上記HSP距離Δδ2を有する有機リガンドである。
本実施形態では、有機リガンド全体としてのHSP座標と、光重合性化合物全体としてのHSP座標との距離(有機リガンドと光重合性化合物とのHSP距離)が2.0〜7.0Mpa0.5であることが好ましく、有機リガンド全体としてのHSP座標と、高分子分散剤全体としてのHSP座標との距離(有機リガンドと高分子分散剤とのHSP距離)が6.0〜12.0Mpa0.5であることが好ましい。
インク組成物における有機リガンドの含有量は、発光性ナノ結晶粒子の分散安定性の観点及び発光特性維持の観点から、発光性ナノ結晶粒子100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上又は40質量部以上であってよい。インク組成物における有機リガンドの含有量は、インク組成物の粘度を低く保ちやすい観点から、発光性ナノ結晶粒子100質量部に対して、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下又は30質量部以下であってよい。これらの観点から、有機リガンドの含有量は、発光性ナノ結晶粒子100質量部に対して、例えば、10〜50質量部であってよく、10〜15質量部であってもよい。
[光重合性化合物]
光重合性化合物は、光の照射によって重合する化合物であり、基本的には光重合開始剤と共に用いられる。本実施形態では、光重合性化合物は、少なくとも2種のメタクリロイル基含有化合物を含む。例えば、光重合性化合物は、メタクリロイル基含有化合物を2種含んでいてよく、3種含んでいてもよい。
メタクリロイル基含有化合物は、モノマーであってもオリゴマーであってもよい。メタクリロイル基含有化合物の分子量は、100以上であってよく、500以下であってよい。メタクリロイル基含有化合物の分子量は、インクジェットインクとしての粘度と、吐出後のインクの揮発性を両立しやすい観点から、好ましくは150〜400であり、より好ましくは200〜300である。
メタクリロイル基含有化合物は、メタクリロイルオキシ基を有する化合物であってもよい。メタクリロイル基含有化合物におけるメタクリロイル基(又はメタクリロイルオキシ基)の数は、1つであっても複数であってもよい。すなわち、メタクリロイル基含有化合物は、単官能メタクリロイル基含有化合物であっても、多官能メタクリロイル基含有化合物であってもよい。
単官能メタクリロイル基含有化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート(ラウリルメタクリレート)、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ノニルフェノキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルベンジルメタクリレート、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)、N−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、4−メタクリロイルモルホリン、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−tert−オクチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
単官能メタクリロイル基含有化合物としては、芳香族構造及び脂環族構造からなる群より選択される少なくとも1種の環状構造を有する単官能メタクリロイル基含有化合物(以下、「第1の単官能メタクリロイル基含有化合物」ともいう。)と、25℃における粘度が6mPa・s以下である単官能メタクリロイル基含有化合物(以下、「第2の単官能メタクリロイル基含有化合物」ともいう。)とを組み合わせて用いることが好ましい。第1の単官能メタクリロイル基含有化合物を用いる場合、比較的高いTgを有する重合体が得られるため、インク組成物の硬化物の表面のべたつき(タック)を低減することができる。すなわち、硬化物の表面タック性に優れる。一方、このような化合物を単独用いる場合には、インク組成物の粘度が高くなり、吐出性が低下する場合があるが、第2の単官能メタクリロイル基含有化合物を併用することによって、吐出性とタックの低減を両立しやすくなる。
芳香族構造は、例えば、炭素数6〜18の芳香環を有する構造であってよい。このような芳香環構造としては、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、フェナントレン環構造、アントラセン環構造等が挙げられる。脂環族構造は、例えば、炭素数5〜20の脂環を有する構造であってよい。このような脂環族構造としては、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等のシクロアルカン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造等のシクロアルケン構造が挙げられる。脂環族構造は、ビシクロウンデカン構造、デカヒドロナフタレン構造、ノルボルネン構造、ノルボルナジエン構造、イソボルニル構造等の縮合環の脂環構造であってもよい。
第1の単官能メタクリロイル基含有化合物の25℃における粘度は、典型的には、6mPa・sより大きい。第1の単官能メタクリロイル基含有化合物の25℃における粘度は、例えば、7mPa・s以上であり、10mPa・s以下である。なお、本明細書中、光重合性化合物の粘度は、E型粘度計によって測定される粘度である。
第1の単官能メタクリロイル基含有化合物としては、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が好ましく用いられる。
第2の単官能メタクリロイル基含有化合物の25℃における粘度は、6mPa・s以下である。第2の単官能メタクリロイル基含有化合物の25℃における粘度は、特に限定されず、例えば、1mPa・s以上であってよい。
第2の単官能メタクリロイル基含有化合物は、例えば、炭素数8〜18の炭化水素基を有する化合物であり、ドデシルメタクリレート(ラウリルメタクリレート)等が好ましく用いられる。また、第2の単官能メタクリロイル基含有化合物としては、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート等のエチレンオキサイド鎖を含む化合物やプロピレンオキサイド鎖を含む化合物も好ましく用いられる。
多官能メタクリロイル基含有化合物は、メタクリロイル基を2つ有する化合物(二官能メタクリロイル基含有化合物)であってよく、メタクリロイル基を3つ有す化合物(三官能メタクリロイル基含有化合物)であってよい。
二官能メタクリロイル基含有化合物としては、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等)、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコ−ルヒドロキシピバリン酸エステルジメタクリレ−ト、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2個の水酸基がメタクリロイルオキシ基によって置換されたジメタクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2個の水酸基がメタクリロイルオキシ基によって置換されたジメタクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2個の水酸基がメタクリロイルオキシ基によって置換されたジメタクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2個の水酸基がメタクリロイルオキシ基によって置換されたジメタクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2個の水酸基がメタクリロイルオキシ基によって置換されたジメタクリレート、N,N‘−メチレンビスメタクリルアミド、N,N‘−エチレンビスメタアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートが好ましく用いられる。
三官能メタクリロイル基含有化合物としては、グリセリントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、グリセリントリメタクリレートが好ましく用いられる。
上述のとおり、光重合性化合物は、2種以上の単官能メタクリロイル基含有化合物を含んでいてよい。また、光重合性化合物は、2種以上の多官能メタクリロイル基含有化合物を含んでいてもよい。光重合性化合物は、硬化物の表面のタックを低減することができる観点及び画素部の表面均一性をより向上させる観点から、好ましくは、少なくとも1種の単官能メタクリロイル基含有化合物と、少なくとも1種の多官能メタクリロイル基含有化合物とを含み、より好ましくは、上記第1の単官能メタクリロイル基含有化合物及び/又は上記第2の単官能メタクリロイル基含有化合物と、二官能メタクリロイル基含有化合物とを含み、更に好ましくは、上記第1の単官能メタクリロイル基含有化合物と、上記第2の単官能メタクリロイル基含有化合物と、二官能メタクリロイル基含有化合物と、を含む。
光重合性化合物における単官能メタクリロイル基含有化合物の含有量は、画素部の表面均一性をより向上させる観点から、光重合性化合物の全量100質量部に対して、好ましくは40質量部以上であり、より好ましくは50質量部以上であり、更に好ましくは60質量部以上である。光重合性化合物における単官能メタクリロイル基含有化合物の含有量は、硬化物の表面のタックを低減することができる観点から、光重合性化合物の全量100質量部に対して、好ましくは95質量部以下であり、90質量部以下又は80質量部以下であってもよい。
光重合性化合物における二官能メタクリロイル基含有化合物の含有量は、硬化物の表面のタックを低減することができる観点から、光重合性化合物の全量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上であり、10質量部以上又は20質量部以上であってもよい。光重合性化合物における二官能メタクリロイル基含有化合物の含有量は、画素部の表面均一性をより向上させる観点から、光重合性化合物の全量100質量部に対して、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下であり、更に好ましくは40質量部以下である。
上述したメタクリロイル基含有化合物は、アクリロイル基を有しないことが好ましい。また、光重合性化合物はアクリロイル基を有する化合物等のメタクリロイル基含有化合物以外の光重合性化合物を含んでいてもよいが、実質的にメタクリロイル基含有化合物のみを含むことが好ましい.光重合性化合物の全量に占めるメタクリロイル基含有化合物の割合は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上である。
光重合性化合物は、信頼性に優れる画素部(インク組成物の硬化物)が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であってよい。本明細書中、光重合性化合物がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における光重合性化合物の溶解量が、光重合性化合物の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。光重合性化合物の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び耐磨耗性が向上する観点から、インク組成物の全質量を基準として、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、及び、より優れた光学特性(例えば外部量子効率)が得られる観点から、インク組成物の全質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。これらの観点から、光重合性化合物の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、例えば、10〜60質量%、15〜50質量%、20〜40質量%又は20〜30質量%であってよい。
[光重合開始剤]
インク組成物に含まれる光重合開始剤としては、例えば光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤が好適である。
分子開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド等が好適に用いられる。これら以外の分子開裂型の光ラジカル重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンを併用してもよい。
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等が挙げられる。分子開裂型の光ラジカル重合開始剤と水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
光重合開始剤の含有量は、インク組成物の硬化性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、0.5質量部以上であってもよく、1質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。光重合開始剤の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の経時安定性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、40質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。これらの観点から、光重合開始剤の含有量は、光重合性化合物100質量部に対して、例えば、0.1〜40質量部であってよい。
[光散乱性粒子]
光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、画素部に照射された光源からの光を散乱させることができるため、優れた光学特性(例えば外部量子効率)を得ることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金等の単体金属;シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマス等の金属塩などが挙げられる。光散乱性粒子は、吐出安定性に優れる観点及び外部量子効率の向上効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高めることができ、優れた吐出安定性を得ることができる点で好ましい。
インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点及び外部量子効率の向上効果により優れる観点から、0.05μm(50nm)以上であってよく、0.2μm(200nm)以上であってもよく、0.3μm(300nm)以上であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点から、1.0μm(1000nm)以下であってもよく、0.6μm(600nm)以下であってもよく、0.4μm(400nm)以下であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05〜1.0μm、0.05〜0.6μm、0.05〜0.4μm、0.2〜1.0μm、0.2〜0.6μm、0.2〜0.4μm、0.3〜1.0μm、0.3〜0.6μm、又は0.3〜0.4μmであってもよい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05μm以上であってよく、1.0μm以下であってもよい。本明細書中、インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
インク組成物における光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物の全質量を基準として、例えば、0.1質量%以上であり、1質量%以上又は2質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、例えば、60質量%以下である。光散乱性粒子の含有量は、吐出安定性に優れる観点及び外部量子効率の向上効果により優れる観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、光散乱性粒子の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、好ましくは0.1〜10質量%である。
発光性ナノ結晶粒子の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、外部量子効率の向上効果に優れる観点から、0.05以上であってよく、0.1以上であってもよく、0.2以上であってもよく、0.5以上であってもよい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、外部量子効率の向上効果により優れ、インクジェット印刷時の連続吐出性(吐出安定性)に優れる観点から、5.0以下であってよく、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよい。これらの観点から、質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、例えば、0.05〜5.0であってよい。
[高分子分散剤]
高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を有する高分子化合物である。高分子分散剤は、光散乱性粒子を分散させる機能を有する。高分子分散剤は、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を介して光散乱性粒子に吸着(例えば結合)し、高分子分散剤同士の静電反発及び/又は立体反発により、光散乱性粒子をインク組成物中に分散させる。高分子分散剤は、光散乱性粒子の表面と結合して光散乱性粒子に吸着していることが好ましいが、発光性ナノ結晶粒子の表面に結合して発光性ナノ粒子に吸着していてもよく、インク組成物中に遊離していてもよい。
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
酸性官能基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、硫酸基(−OSO3H)、ホスホン酸基(−PO(OH)3)、リン酸基(−OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(−PO(OH)−)、メルカプト基(−SH)、が挙げられる。
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキサイド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。高分子分散剤は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミン等のポリアミン、ポリイミドなどであってよい。
高分子分散剤として、市販品を使用することも可能であり、市販品としては、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPERBYKシリーズ並びにBYK−シリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等を使用することができる。
インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した成分以外の成分を更に含有していてもよい。
インク組成物は、例えば溶剤を更に含有していてよい。ただし、本実施形態のインク組成物では光重合性化合物が分散媒としても機能するため、無溶剤で光散乱性粒子及び発光性ナノ結晶粒子を分散させることが可能である。この場合、画素部を形成する際に溶剤を乾燥により除去する工程が不要となる利点を有する。インク組成物が溶剤を含む場合、溶剤の含有量は、インク組成物の全質量(溶剤を含む)を基準として、0質量%超5質量%以下であってよい。
インク組成物は、例えば、チオール化合物を添加剤として更に含有することが好ましい。インク組成物がチオール化合物を含有する場合、外部量子効率の低下が抑制されやすくなり、より優れた外部量子効率の維持性能が得られる傾向がある。従来のインク組成物(例えば光重合性化合物としてアクリロイル基を有する化合物を用いるインク組成物)にチオール化合物を含有させた場合、当該チオール化合物のチオール基と光重合性化合物との反応が進行して粘度が上昇してしまい、吐出安定性が低下する場合があったが、本実施形態では、光重合性化合物としてメタクリロイル基含有化合物を用いており、チオール基と光重合性化合物との反応が起こり難いため、充分な吐出安定性を得ることが容易である。
チオール化合物は、チオール基を1つ以上有する化合物と定義される。チオール化合物は、分子内に複数のチオール基を有する化合物(多官能チオール化合物)であってよく、分子内に1つのチオール基を有する化合物(単官能チオール化合物)であってもよい。粘度安定性が向上する観点では、単官能チオール化合物が好ましい。また、チオール化合物は、前記した添加剤として用いる他、上述した有機リガンドとしてインク組成物に含有されていてよい。チオール化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能チオール化合物としては、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(2−(3−スルファニルブタノイルオキシ)エチル)−1,3,5−トリアジナン-2,4,6−トリオン、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリロパンチオール、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
単官能チオール化合物としては、β―メルカプトプロピオン酸、ドデカンチオール、3―メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、メトキシブチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
チオール化合物の含有量は、外部量子効率の低下がより抑制されやすくなる観点から、インク組成物の全質量を基準として、0.01質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。少量添加でも量子収率の低下をより効果的に抑制することができるため、チオール化合物の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、更により好ましくは3質量%以下である。チオール化合物の含有量が上記範囲内である場合、塗布膜形成時に、より良好な膜強度の確保が可能となることに加え、チオール化合物の表面へのブリードがより抑制され、かつ、良好な光学特性の確保が可能となる。
インク組成物は、例えば、酸化防止剤を更に含有することが好ましい。インク組成物が酸化防止剤を含有する場合、外部量子効率の低下が抑制されやすくなり、より優れた外部量子効率の維持性能が得られる傾向がある。酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等の従来公知の酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤とを併用してもよい。
インク組成物がリン系酸化防止剤を含有する場合、更に優れた外部量子効率が得られる傾向がある。リン系酸化防止剤としては、亜リン酸エステル化合物が好ましい。リン系酸化防止剤の具体例としては、例えば、トリフェニルホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチル−1−フェノキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、O,O'-ジアルキル(C8〜18)[又はビス(アルキル(C8〜9)フェニル)]ペンタエリスリトールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、アルカノール(C12〜15)・4,4'-イソプロピリデンジフェノール・トリフェニルホスファイト重縮合物、トリスイソデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル ジトリデシルホスファイト)、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、外部量子効率の向上効果がより一層得られる観点から、トリエチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト及びビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト及びビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
インク組成物がフェノール系酸化防止剤を含有する場合、インク組成物の硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。そのため、例えば、フェノール系酸化防止剤を含有するインク組成物の硬化物に対して耐熱試験を行った場合、耐熱試験後の外部量子効率が高くなる傾向がある。特に、チオール化合物及び/又はリン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、インク組成物の硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。
フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノールタイプであってよく、セミヒンダードフェノールタイプであってもよく、レスヒンダードフェノールタイプであってもよい。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)メシチレン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−ノニルフェノール、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミル−ヒドロキノン、2,4−ジメチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)−フェノール、6−t−ブチル−o−クレゾール、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2,4−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−〔3−(t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、2−t−アミルフェノール、2−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、1,1,3−トリス−(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−ブタン、4,4’−ブチリデン−ビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)等を挙げることができる。
市販品としては、株式会社ADEKA製の酸化防止剤である、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−60G、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330等、BASF社製の酸化防止剤である、Irganox1010、Irganox1010FF、Irganox1035、Irganox1035FF(W&C)、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox259、Irganox3114等、住友化学株式会社製の酸化防止剤である、SUMILIZER GP、SUMILIZER GS(F)、SUMILIZER GM(F)、SUMILIZER GA−80、SUMILIZER MDP−S、SUMILIZER WX−R、SUMILIZER WX−RC等などが挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、外部量子効率の低下がより抑制されやすくなる観点から、インク組成物の全質量を基準として、0.01質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。少量添加でも量子収率の低下をより効果的に抑制することができるため、酸化防止剤の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、更により好ましくは3質量%以下である。酸化防止剤の含有量が上記範囲内である場合、塗布膜形成時に、より良好な膜強度の確保が可能となることに加え、酸化防止剤の表面へのブリードがより抑制され、かつ、良好な光学特性の確保が可能となる。
インク組成物は、外部量子効率の低下が抑制されやすくなり、より優れた外部量子効率の維持性能が得られる観点から、好ましくは、チオール化合物及び酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、より好ましくは、チオール化合物、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。インク組成物の硬化物の耐熱性を向上させる観点では、インク組成物は、好ましくは、チオール化合物及び/又は酸化防止剤(但し、フェノール系酸化防止剤は除く)と、フェノール系酸化防止剤とを含有し、より好ましくは、チオール化合物及び/又はリン系酸化防止剤と、フェノール系酸化防止剤と、を含有する。ここで、「但し、フェノール系酸化防止剤は除く」とは、酸化防止剤の中からフェノール系酸化防止剤に該当する化合物を除くことを意味する。
インク組成物における、チオール化合物の含有量と酸化防止剤の含有量の合計は、外部量子効率の低下がより抑制されやすくなる観点から、インク組成物の全質量を基準として、0.01質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。少量添加でも量子収率の低下をより効果的に抑制することができるため、チオール化合物の含有量と酸化防止剤の含有量の合計は、インク組成物の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、更により好ましくは3質量%以下である。チオール化合物の含有量と酸化防止剤の含有量の合計が上記範囲内である場合、塗布膜形成時に、より良好な膜強度の確保が可能となることに加え、チオール化合物及び酸化防止剤の表面へのブリードがより抑制され、かつ、良好な光学特性の確保が可能となる。
チオール化合物及び/又は酸化防止剤(但し、フェノール系酸化防止剤は除く)とフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、フェノール系酸化防止剤の含有量は、耐熱性の向上効果が得られやすくなる観点から、チオール化合物の含有量と酸化防止剤(但し、フェノール系酸化防止剤は除く)の含有量の合計100質量部に対し、5質量部以上、50質量部以上又は90質量部以上であってよく、1000質量部以下、500質量部以下又は110質量部以下であってよい。
以上説明したインク組成物の粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2mPa・s以上であってよく、5mPa・s以上であってもよく、7mPa・s以上であってもよい。インク組成物の粘度は、20mPa・s以下であってよく、15mPa・s以下であってもよく、12mPa・s以下であってもよい。インク組成物の粘度は、例えば、2〜20mPa・s、2〜15mPa・s、2〜12mPa・s、5〜20mPa・s、5〜15mPa・s、5〜12mPa・s、7〜20mPa・s、7〜15mPa・s、又は7〜12mPa・sであってもよい。なお、上記粘度は、例えば、インクジェット印刷を実施する際のインク温度における粘度であり、E型粘度計によって測定される粘度である。インクジェット印刷を実施する際のインク温度は25〜60℃が好ましく、30〜55℃がより好ましく、30〜40℃が更に好ましい。インクジェット印刷を実施する際のインク温度は、インクジェット印刷をする際のインクジェットヘッド温度によって調整される。
インク組成物のインクジェット印刷時のインク温度における粘度が2mPa・s以上である場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインクジェットインクのメニスカス形状が安定するため、インクジェットインクの吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、インク組成物のインクジェット印刷時のインク温度における粘度が20mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインクジェットインクを円滑に吐出させることができる。
インク組成物の表面張力は、インクジェット方式に適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20〜40mN/mの範囲であることが好ましく、25〜35mN/mであることがより好ましい。表面張力を当該範囲とすることで吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易になると共に、飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、表面張力が20mN/m以上である場合、インク吐出孔周辺部がインクジェットインクで汚染することが防げるため、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずにインク組成物の充填が不充分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることがない。なお、本明細書記載の表面張力は、23℃で測定された表面張力をいい、リング法(輪環法ともいう)で測定されたものをいう。
本実施形態のインク組成物をインクジェット方式用のインク組成物として用いる場合には、圧電素子を用いた機械的吐出機構による、ピエゾジェット方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾジェット方式では、吐出に当たり、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがない。そのため、発光性ナノ結晶粒子の変質が起こり難く、画素部(光変換層)において、期待した通りの発光特性がより容易に得られやすい。
以上、インクジェットインク組成物の一実施形態について説明したが、上述した実施形態のインクジェットインク組成物は、インクジェット方式の他に、例えば、フォトリソグラフィ方式で用いることもできる。この場合、インク組成物は、バインダーポリマーとしてアルカリ可溶性樹脂を含有する。
インク組成物をフォトリソグラフィ方式で用いる場合、まず、インク組成物を基材上に塗布し、さらにインク組成物を乾燥させて塗布膜を形成する。このようにして得られる塗布膜は、アルカリ現像液に可溶性であり、アルカリ現像液で処理されることでパターニングされる。この際、アルカリ現像液は、現像液の廃液処理の容易さ等の観点から、水溶液であることが大半を占めるため、インク組成物の塗布膜は水溶液で処理されることとなる。一方、発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)を用いたインク組成物の場合、発光性ナノ結晶粒子が水に対して不安定であり、発光性(例えば蛍光性)が水分により損なわれる。このため本実施形態においては、アルカリ現像液(水溶液)で処理する必要のない、インクジェット方式が好ましい。
また、インク組成物の塗布膜に対してアルカリ現像液による処理を行わない場合でも、インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収しやすくなるため、時間が経過するにつれて発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)の発光性(例えば蛍光性)が損なわれてゆく。この観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜はアルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、光重合性化合物として、アルカリ不溶性の光重合性化合物を用いることにより得ることができる。インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の塗布膜の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、80℃、3分の条件で乾燥して得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
<インク組成物の製造方法>
上述した実施形態のインク組成物は、例えば、上述したインク組成物の構成成分を混合する工程を備える。インク組成物の製造方法は、上記構成成分の混合物の分散処理を行う工程を更に備えてよい。
インク組成物の製造方法は、例えば、光散乱性粒子を含有する、光散乱性粒子の分散体を用意する第1の工程と、光散乱性粒子の分散体及び発光性ナノ結晶粒子を混合する第2の工程と、を備える。光散乱性粒子の分散体は、高分子分散剤を更に含んでいてよい。この方法では、光散乱性粒子の分散体が光重合性化合物を更に含有してよく、第2の工程において、光重合性化合物を更に混合してもよい。上記方法によれば、光散乱性粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部の光学特性(例えば外部量子効率)を向上させることができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
光散乱性粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子と、場合により、高分子分散剤と、光重合性化合物とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱性粒子の分散体を調製してよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星攪拌機、ジェットミル等の分散装置を用いて行ってよい。光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子とを混合する前に光散乱性粒子と高分子分散剤とを混合することにより、光散乱性粒子をより充分に分散させることができる。そのため、優れた吐出安定性及び優れた外部量子効率をより一層容易に得ることができる。
インク組成物の製造方法は、第2の工程の前に、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物と、を含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程を更に備えていてもよい。この場合、第2の工程では、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、を混合する。発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程では、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物と、を混合し、分散処理を行うことにより発光性ナノ結晶粒子分散体を調製してよい。発光性ナノ結晶粒子としては、その表面に有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子を用いてよい。すなわち、発光性ナノ結晶粒子分散体は、有機リガンドを更に含んでいてもよい。混合及び分散処理は、電磁式スターラー、スリーワンモーター等の通常の攪拌装置や、ボルテックスミキサー、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星攪拌機、ジェットミル等の分散装置を用いて行ってよい。発光性ナノ結晶粒子に過度のエネルギーを与えすぎない観点から、電磁式スターラー、スリーワンモーター等の通常の攪拌装置又はボルテックスミキサーを用いることが好ましい。この方法によれば、発光性ナノ結晶粒子の性能を落とさず、充分に分散させることができる。そのため、画素部の光学特性(例えば外部量子効率)を向上させることができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
<インク組成物セット>
一実施形態のインク組成物セットは、上述した実施形態のインク組成物を備える。インク組成物セットは、上述した実施形態のインク組成物(発光性インク組成物)に加えて、発光性ナノ結晶粒子を含有しないインク組成物(非発光性インク組成物)を備えていてよい。非発光性インク組成物は、例えば、硬化性のインク組成物である。非発光性インク組成物は、従来公知のインク組成物であってよく、発光性ナノ結晶粒子を含まないこと以外は、上述した実施形態のインク組成物(発光性インク組成物)と同様の組成であってもよい。
非発光性インク組成物は、発光性ナノ結晶粒子を含有しないため、非発光性インク組成物により形成される画素部(非発光性インク組成物の硬化物を含む画素部)に光を入射させた場合に画素部から出射する光は、入射光と略同一の波長を有する。したがって、非発光性インク組成物は、光源からの光と同色の画素部を形成するために好適に用いられる。例えば、光源からの光が420〜480nmの範囲の波長を有する光(青色光)である場合、非発光性インク組成物により形成される画素部は青色画素部となり得る。
非発光性インク組成物は、好ましくは光散乱性粒子を含有する。非発光性インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、当該非発光性インク組成物により形成される画素部によれば、画素部に入射した光を散乱させることができ、これにより、画素部からの出射光の、視野角における光強度差を低減することができる。
<光変換層及びカラーフィルタ>
以下、上述した実施形態のインク組成物セットを用いて得られる光変換層及びカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。図1に示すように、カラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30と、を備える。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20と、を備えている。
光変換層30は、画素部10として、第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとを有している。第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。遮光部20は、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部10aと第2の画素部10bとの間、第2の画素部10bと第3の画素部10cとの間、第3の画素部10cと第1の画素部10aとの間に設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部20によって離間されている。
第1の画素部10a及び第2の画素部10bは、それぞれ上述した実施形態のインク組成物の硬化物を含む発光性の画素部(発光性画素部)である。第1の画素部10aは、第1の硬化成分13aと、第1の硬化成分13a中にそれぞれ分散された第1の発光性ナノ結晶粒子11a及び第1の光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2の画素部10bは、第2の硬化成分13bと、第2の硬化成分13b中にそれぞれ分散された第2の発光性ナノ結晶粒子11b及び第2の光散乱性粒子12bとを含む。硬化成分は、光重合性化合物の硬化(重合)によって得られる成分であり、光重合性化合物の重合体を含む。硬化成分には、上記重合体の他、インク組成物に含まれていた有機成分(有機リガンド、高分子分散剤、未反応の重合性化合物等)が含まれていてよい。第1の画素部10a及び第2の画素部10bにおいて、第1の硬化成分13aと第2の硬化成分13bとは同一であっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子12aと第2の光散乱性粒子12bとは同一であっても異なっていてもよい。
第1の発光性ナノ結晶粒子11aは、420〜480nmの範囲の波長の光を吸収し605〜665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第1の画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光性ナノ結晶粒子11bは、420〜480nmの範囲の波長の光を吸収し500〜560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第2の画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
発光性画素部における発光性ナノ結晶粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは20質量%以上であり、22質量%以上、24質量%以上又は26質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは80質量%以下であり、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下であってもよい。
発光性画素部における光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、例えば、0.1質量%以上であり、1質量%以上又は2質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、例えば、60質量%以下である。光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び画素部の信頼性に優れる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
第3の画素部10cは、上述した非発光性インク組成物の硬化物を含む非発光性の画素部(非発光性画素部)である。硬化物は、発光性ナノ結晶粒子を含有せず、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。すなわち、第3の画素部10cは、第3の硬化成分13cと、第3の硬化成分13c中に分散された第3の光散乱性粒子12cとを含む。第3の硬化成分13cは、例えば、重合性化合物の重合によって得られる成分であり、重合性化合物の重合体を含む。第3の光散乱性粒子12cは、第1の光散乱性粒子12a及び第2の光散乱性粒子12bと同一であっても異なっていてもよい。
第3の画素部10cは、例えば、420〜480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部10cは、420〜480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。なお、第3の画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
非発光性画素部における光散乱性粒子の含有量は、視野角における光強度差をより低減することができる観点から、非発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、光反射をより低減することができる観点から、非発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。
遮光部20は、隣り合う画素部を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光の漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部20を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部20の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
基材40は、光透過性を有する透明基材であり、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルム等の透明なフレキシブル基材などを用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA−10G」及び「OA−11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、420〜480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に好適に用いられる。
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20によって区画された画素部形成領域に画素部10を形成することにより製造できる。画素部10は、インク組成物(インクジェットインク)をインクジェット方式により基材40上の画素部形成領域に選択的に付着させる工程と、乾燥によりインク組成物から有機溶剤を除去する工程と、乾燥後のインク組成物に対して活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射し、インク組成物を硬化させて発光性画素部を得る工程と、を備える方法により形成することができる。インク組成物として上述した発光性インク組成物を用いることで発光性画素部が得られ、非発光性インク組成物を用いることで非発光性画素部が得られる。
遮光部20を形成させる方法は、基材40の一面側の複数の画素部間の境界となる領域に、クロム等の金属薄膜、又は、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜を形成し、この薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができ、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
インク組成物の乾燥では、有機溶剤の少なくとも一部が除去されればよく、有機溶剤の全てが除去されることが好ましい。インク組成物の乾燥方法は、減圧による乾燥(減圧乾燥)であることが好ましい。減圧乾燥は、通常、インク組成物の組成を制御する観点から、1.0〜500Paの圧力下、20〜30℃で3〜30分間行う。
インク組成物の硬化は、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等を用いてよい。照射する光の波長は、例えば、200nm以上であってよく、440nm以下であってよい。露光量は、例えば、10mJ/cm2以上であってよく、20000mJ/cm2以下であってよい。
以上、カラーフィルタ及び光変換層、並びにこれらの製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、光変換層は、第3の画素部10cに代えて又は第3の画素部10cに加えて、青色発光性のナノ結晶粒子を含有する発光性インク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。また、光変換層は、赤、緑、青以外の他の色の光を発するナノ結晶粒子を含有する発光性インク組成物の硬化物を含む画素部(例えば黄色画素部)を備えていてもよい。これらの場合、光変換層の各画素部に含有される発光性ナノ結晶粒子のそれぞれは、同一の波長域に吸収極大波長を有することが好ましい。
また、光変換層の画素部の少なくとも一部は、発光性ナノ結晶粒子以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含むものであってもよい。
また、カラーフィルタは、遮光部のパターン上に、遮光部よりも幅の狭い撥インク性を持つ材料からなる撥インク層を備えていてもよい。また、撥インク層を設けるのではなく、画素部形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、当該光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部形成領域の親インク性を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
また、カラーフィルタは、基材と画素部との間に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン等を含むインク受容層を備えていてもよい。
また、カラーフィルタは、画素部上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化すると共に、画素部に含有される成分、又は、画素部に含有される成分及び光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。保護層を構成する材料は、公知のカラーフィルタ用保護層として使用されているものを使用できる。
また、カラーフィルタ及び光変換層の製造では、インクジェット方式ではなく、フォトリソグラフィ方式で画素部を形成してもよい。この場合、まず、基材にインク組成物を層状に塗工し、インク組成物層を形成する。次いで、インク組成物層をパターン状に露光した後、現像液を用いて現像する。このようにして、インク組成物の硬化物からなる画素部が形成される。現像液は、通常アルカリ性であるため、インク組成物の材料としてはアルカリ可溶性の材料が用いられる。ただし、材料の使用効率の観点では、インクジェット方式がフォトリソグラフィ方式よりも優れている。これはフォトリソグラフィ方式では、その原理上、材料のほぼ2/3以上を除去することとなり、材料が無駄になるからである。このため、本実施形態では、インクジェットインクを用い、インクジェット方式により画素部を形成することが好ましい。
また、本実施形態の光変換層の画素部には、上記した発光性ナノ結晶粒子に加えて、発光性ナノ結晶粒子の発光色と概ね同色の顔料を更に含有させてもよい。顔料を画素部に含有させるため、インク組成物に顔料を含有させてもよい。
また、本実施形態の光変換層中の赤色画素部(R)、緑色画素部(G)、及び青色画素部(B)のうち、1種又は2種の発光性画素部を、発光性ナノ結晶粒子を含有させずに色材を含有させた画素部としてもよい。ここで使用し得る色材としては、公知の色材を使用することができ、例えば、赤色画素部(R)に用いる色材としては、ジケトピロロピロール顔料及び/又はアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色画素部(G)に用いる色材としては、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。青色画素部(B)に用いる色材としては、ε型銅フタロシアニン顔料及び/又はカチオン性青色有機染料が挙げられる。これらの色材の使用量は、光変換層に含有させる場合には、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)の全質量を基準として、1〜5質量%であることが好ましい。
また、カラーフィルタは、基材と本実施形態の画素部との間に、発光性ナノ結晶粒子を含まず、上記色材を含む通常のカラーフィルタ層を備えてもよい。すなわち、本実施形態のカラーフィルタは、基材と、基材上に設けられた、発光性ナノ粒子を含まず、色材を含むカラーフィルタ層と、当該カラーフィルタ層上に設けられた、本実施形態の画素部と、を備えるものであってよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた材料は全て、アルゴンガスを導入して溶存酸素をアルゴンガスに置換したものを用いた。酸化チタンについては、混合前に、1mmHgの減圧下、4時間、175℃で加熱し、アルゴンガス雰囲気下で放冷したものを用いた。実施例で用いた液状の材料は、混合前にあらかじめ、モレキュラーシーブス3Aで48時間以上脱水して用いた。
<光重合性化合物の用意>
表1に示す光重合性化合物を用意した。
<高分子分散剤の用意>
表2に示す高分子分散剤を用意した。
<光散乱性粒子分散体の準備>
アルゴンガスで満たした容器内で、酸化チタン(商品名:CR−60−2、石原産業株式会社製、平均粒子径(体積平均径):210nm)を5.23gと、高分子分散剤1を0.27gと、PhEMとLMとHDDMAとを45質量%/20質量%/35質量%の比にて混合して得られた混合モノマーを4.5gと、を混合した後、得られた混合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加え、ペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで混合物を分散処理し、ポリエステルメッシュフィルターにてジルコニアビーズを除去することで光散乱性粒子分散体1(酸化チタン含有量:55質量%)を得た。
高分子分散剤1を高分子分散剤2〜3に変更した以外は、上記と同様にして、光散散乱性粒子分散体2〜3を得た。
高分子分散剤1を高分子分散剤4に変更し、混合モノマーを、IBOMとHDDMAとを94質量%/6質量%の比にて混合して得られた混合モノマーに変更した以外は、上記と同様にして、光散乱性粒子分散体4を得た。
混合モノマーを、PhEMとLMとを50質量%/50質量%の比にて混合して得られた混合モノマーに変更した以外は、上記と同様にして、光散乱性粒子分散体5を得た。
混合モノマーを、PhEMとHDDMAとを50質量%/50質量%の比にて混合して得られた混合モノマーに変更した以外は、上記と同様にして、光散乱性粒子分散体6を得た。
混合モノマーに代えて、HDDAのみを用いた以外は、上記と同様にして、光散乱性粒子分散体7を得た。
混合モノマーに代えて、HDDMAのみを用いた以外は、上記と同様にして、光散乱性粒子分散体8を得た。
混合モノマーを、HDDAとPhEAとを70質量%/30質量%の比にて混合して得られた混合モノマーに変更した以外は、上記と同様にして、光散乱性粒子分散体9を得た。
<有機リガンド付きQD粒子(QD粉体)の準備>
(QD粉体1の準備)
[有機リガンド1の合成]
ポリエチレングリコール|average Mn350|(Sigma−Aldrich社製)をフラスコに投入した後、窒素ガス環境にて攪拌しながら、そこにポリエチレングリコール|average Mn350|と等モル量の無水コハク酸(Sigma−Aldrich社製)を添加した。フラスコの内温を80℃に昇温し、8時間攪拌することにより、淡い黄色の粘稠な油状物として下記式(A)で表される有機リガンド1を得た。
[リガンド交換によるQD粉体2の作製]
Nanosys社製のInPナノ結晶分散体(InP QD in Heptane Red InP QD、QD粒子(発光性ナノ結晶粒子)濃度30%、有機リガンド:オレイン酸)に対して、2.0倍量のPGMEAと、QD粒子の量(有機リガンドの量は含まない)に対し40質量%相当分の有機リガンド1と、を添加し、80℃にて1時間攪拌することにより、リガンド交換を実施した。この溶液に対して、4倍量のヘプタンを添加することにより、QD粒子を凝集させ、遠心分離にて沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってQD粒子を分離しした。得られたQD粒子を真空乾燥機にて乾燥させ、QD粉体1(QD粒子/有機リガンド=70質量%/30質量%)を得た。
(QD粉体2の準備)
Nanosys社製のInPナノ結晶分散体(InP QD in Heptane Red InP QD、QD粒子(発光性ナノ結晶粒子)濃度30%、有機リガンド:オレイン酸)に対して、4倍量のエタノールを添加することにより、QD粒子を凝集させ、遠心分離にて沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってQD粒子を分離した。得られたQD粒子を真空乾燥機にて乾燥させ、QD粉体2(QD粒子/有機リガンド=80質量%/20質量%)を得た。
(QD粉体3の準備)
[有機リガンド2の合成]
特開2002−121549号公報を参考にして、下記式(B)で表される有機リガンド2(3−メルカプトプロパン酸のトリエチレングリコールモノメチルエーテルエステル(トリエチレングリコールモノメチルエーテルメルカプトプロピオネート、TEGMEMP))を合成した。
[リガンド交換によるQD粉体3の作製]
Nanosys社製のInPナノ結晶分散体(InP QD in Heptane Green InP QD、QD粒子(発光性ナノ結晶粒子)濃度30%、有機リガンド:オレイン酸)に対して、2.0倍量のPGMEAと、QD粒子の量(有機リガンドの量は含まない)に対し40質量%相当分の有機リガンド2と、を添加し、80℃にて1時間攪拌することにより、リガンド交換を実施した。この溶液に対して、4倍量のヘプタンを添加することにより、QD粒子を凝集させ、遠心分離にて沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってQD粒子を分離しした。得られたQD粒子を真空乾燥機にて乾燥させ、QD粉体3(QD粒子/有機リガンド=70質量%/30質量%)を得た。
<インク組成物の調製>
(実施例1)
QD粉体1を3.43gと、光散乱性粒子分散体1を0.73gと、光重合開始剤(フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(IGM resin社製、商品名:Omnirad TPO))を0.4gと、光重合性化合物(pHEM:LM:HDDMA=45:20:35(質量比))を5.34gと、チオール化合物としてEHMP(3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、SC有機化学製、商品名)を0.1gと、を配合し、アルゴンガスで満たした容器内で均一に混合した後、グローブボックス内で、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過した。さらに、アルゴンガスを得られた濾過物を入れた容器内に導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、実施例1のインク組成物(インクジェットインク)を得た。発光性ナノ結晶粒子の含有量(有機リガンドの量は含まない)は、インク組成物の全質量を基準として、24質量%であった。光重合性化合物の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、57質量%であった。光重合開始剤の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、4.0質量%であった。光散乱性粒子の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、3.8質量%であった。高分子分散剤の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、0.2質量%であった。チオール化合物の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、1.0質量%であった。有機リガンド1の、光重合性化合物とのHSP距離Δδ1は5.6であり、高分子分散剤とのHSP距離Δδ2は7.3であった。
(実施例2〜実施例8及び比較例1〜3)
表3又は表4に記載の含有量となるように各成分の配合量を変更した(又は配合しなかった)こと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8及び比較例1〜3のインク組成物を得た。なお、複数の光重合性化合物を用いた実施例及び比較例では、光重合性化合物として、表3又は表4に記載の化合物を表3又は表4に記載の配合比率で混合して得られた混合モノマーを用いた。また、表3中、実施例5におけるHSP距離Δδ1及びΔδ2は、オレイン酸とのHSP距離であり、実施例6におけるHSP距離Δδ1及びΔδ2は、有機リガンド2とのHSP距離である。
(実施例9)
フェノール系酸化防止剤としてIrganox1010(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF社製、商品名)を0.1g追加したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9のインク組成物を得た。
(実施例10)
チオール化合物(EHMP)に代えて、リン系酸化防止剤であるJPE−10(ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、城北化学工業株式会社製、商品名)を0.1gとフェノール系酸化防止剤であるIrganox1010を0.1g追加したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10のインク組成物を得た。
(実施例11)
チオール化合物(EHMP)に代えて、フェノール系酸化防止剤であるIrganox1010を0.1g用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11のインク組成物を得た。
(実施例12)
チオール化合物(EHMP)に代えて、リン系酸化防止剤であるJPE−10を0.1g用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例12のインク組成物を得た。
<インク物性評価>
(粘度評価)
実施例及び比較例のインク組成物の粘度の評価は、40℃における粘度をE型粘度計を用いて測定することにより実施した。
(吐出性評価)
インク組成物を、調製後、23℃、50%RHの環境下で1週間保管した。保管後のインク組成物について、インクジェットプリンター(富士フイルムDimatix社製、商品名「DMP−2850」)を用いて吐出試験を実施した。吐出試験では、室温にてインク組成物を10分間連続で吐出させた。なお、本インクジェットプリンターのインクを吐出するヘッド部には16個のノズルが形成されており、1ノズル当たり、吐出一回あたりのインク組成物の使用量は10pLとした。実施例及び比較例のインク組成物の吐出性を以下の基準で評価した。
A:連続吐出性が非常に優れる(16個のノズル中、15ノズル以上で連続吐出可能)
B:連続吐出性が優れる(16個のノズル中、連続吐出可能なノズル数が9ノズル以上)
C:連続吐出性が悪い(16個のノズル中、連続吐出可能なノズル数が8ノズル以下)
D:吐出不可
(分散安定性評価)
LUM GmbH製の遠心沈降式分散安定性分析装置であるLUMiFugeを用いて酸化チタンの自然沈降速度を測定し、分散安定性の指標とした。回転数を4000 rpmとして865nmのレーザーを用いて測定し、求められた酸化チタンの沈降速度を相対遠心加速度で割り、自然沈降速度とした。
<塗膜物性評価>
インク組成物を、ガラス基板上に、膜厚が15μmとなるように、スピンコーターにて大気中で塗布した。塗布膜を窒素雰囲気下、主波長395nmのLEDランプを用いたUV照射装置で積算光量10000mJ/cm2になるようにUVを照射して硬化させて、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる層(光変換層)を形成した。これにより、評価用試料を得た。
(表面均一性評価)
菱化システムのVert Scan3.0 R4300を用いて硬化物表面のSa値を測定した。
(外部量子効率(EQE)の評価>
面発光光源としてシーシーエス株式会社製の青色LED(ピーク発光波長:450nm)を用いた。測定装置は、大塚電子株式会社製の放射分光光度計(商品名「MCPD−9800」)に積分球を接続し、青色LEDの上側に積分球を設置した。青色LEDと積分球との間に、作製した評価用試料を挿入し、青色LEDを点灯させて観測されるスペクトル、各波長における照度を測定した。
上記の測定装置で測定されるスペクトル及び照度より、以下のようにして外部量子効率を求めた。外部量子効率は、光変換層に入射した光(光子)のうち、どの程度の割合で蛍光として観測者側に放射されるかを示す値である。従って、この値が大きければ光変換層が発光特性に優れていることを示しており、重要な評価指標である。
EQE(%)=[P1(Red)又はP2(Green)]/E(Blue)×100
ここで、E(Blue)、P1(Red)及びP2(Green)はそれぞれ以下を表す。
E(Blue):380〜490nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表す。
P1(Red):590〜780nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表す。
P2(Green):500〜650nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表す。
これらは観測した光子数に相当する値である。なお、hは、プランク定数、cは光速を表す。
(タック性評価)
硬化物表面を指で触ることにより、表面のタック性を調査した。硬化物を触った際に表面がべたべたする場合はB、べたべた感を感じない場合はAとした。
(耐熱試験)
実施例1、9、10、11及び12のインク組成物の硬化物について耐熱試験を行った。具体的には、インク組成物の硬化物が形成されたガラス基板を180℃に熱したホットプレートに載せ30分後に取り出した。その後、上記方法にてEQEを測定した。この耐熱試験後のEQEが高い程、耐熱性が高いことを示す。