以下、各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている。なお、同一または相当する部分には同一または類似する参照符号を付して、その説明を繰り返さない場合がある。
実施の形態1.
[冷凍装置の全体構成]
図1は、本開示の実施の形態1に従う熱源側ユニットが用いられる冷凍装置の全体構成図である。なお、この図1の全体構成図は、冷凍装置における各機器の接続関係及び配置構成を機能的に示し、物理的な空間における配置を必ずしも示していない。
図1を参照して、冷凍装置1は、熱源側ユニット2と、負荷側ユニット3とを備える。熱源側ユニット2は、圧縮機10と、凝縮器20と、ファン22と、受液器30と、過冷却熱交換器40と、ファン42と、サイトグラス45と、配管80〜83,85とを含む。熱源側ユニット2は、さらに、配管86,87と、冷媒量検出部70と、圧力センサ90,92と、制御装置100とを含む。
熱源側ユニット2は、さらに、過冷却熱交換器40の出口温度OTを検出するための温度センサ、凝縮温度CTを検出するための温度センサ、および外気温度ATを検出するための温度センサを含む。図1の場合、外気温度ATを検出するための温度センサは、凝縮器20への外気の吸入口に設けられる。凝縮温度CTを検出するための温度センサは、凝縮器20の出側に設けられる。熱源側ユニット2は、さらに、蒸発温度ETを検出するための温度センサを含む。図1の場合、蒸発温度ETを検出するための温度センサは、蒸発器60の内部に設けられる。
なお、蒸発温度ETは、圧力センサ90によって検出された圧縮機10の吸入圧力LPを、冷媒飽和ガス温度に換算することによって算出してもよい。同様に、凝縮温度CTは、圧力センサ92によって検出された圧縮機10の吐出圧力HPを、冷媒飽和液温度に換算することによって算出してもよい。
負荷側ユニット3は、膨張弁50と、蒸発器60と、ファン62と、配管84とを含む。負荷側ユニット3は、液延長配管910およびガス延長配管900を通じて熱源側ユニット2に接続されている。液延長配管910およびガス延長配管900をそれぞれ第1配管および第2配管とも称する。また、液延長配管910およびガス延長配管900は、現地において冷凍装置1を据え付ける際、もしくは既存の負荷側ユニット3に新たに熱源側ユニット2を取り付ける際に熱源側ユニット2と負荷側ユニット3との間に接続される配管であるので、現地接続配管とも称する。図1において、液延長配管910は、過冷却熱交換器40の出側から膨張弁50に至る配管83の一部である。ガス延長配管900は、蒸発器60の出側から圧縮機10の吸い込み口に至る配管85の一部である。
なお、熱源側ユニット2は、複数のサブユニットに分割されていてもよい。たとえば、凝縮器20および過冷却熱交換器40によって第1のサブユニットが構成され、圧縮機10、受液器30、冷媒量検出部70、および制御装置100によって第2のサブユニットが構成されてもよい。受液器30を第2のサブユニット内でなく、第1のサブユニット内に設けてもよい。もしくは、熱源側ユニット2および負荷側ユニット3を1つのユニットとして構成してもよい。したがって、上記の「ユニット」という用語は便宜上の用語であって、必ずしも1つの筐体に内蔵されていることを意味しない。
配管80は、圧縮機10の吐出ポートと凝縮器20とを接続する。配管81は、凝縮器20と受液器30とを接続する。配管82は、受液器30と過冷却熱交換器40とを接続する。配管83は、過冷却熱交換器40と膨張弁50とを接続する。配管84は、膨張弁50と蒸発器60とを接続する。配管85は、蒸発器60と圧縮機10の吸入ポートとを接続する。配管86は、配管82と冷媒量検出部70とを接続する。配管87は、冷媒量検出部70と配管85とを接続する。
上記の配管を介して、圧縮機10、凝縮器20、受液器30、過冷却熱交換器40、膨張弁50、および蒸発器60の順に冷媒が循環する冷媒回路RCが構成される。
圧縮機10は、配管85から吸入される冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を配管80へ吐出する。圧縮機10は、制御装置100からの制御信号に従って回転数を調整するように構成される。圧縮機10の回転数を調整することによって冷媒の循環量が調整され、冷凍装置1の能力を調整することができる。圧縮機10として種々のタイプの圧縮機を採用でき、たとえば、スクロールタイプ、ロータリータイプ、スクリュータイプ等の圧縮機を採用できる。
凝縮器20は、圧縮機10から配管80を介して流入した冷媒を凝縮する。凝縮器20において凝縮された冷媒は、配管81へ流入する。凝縮器20は、圧縮機10から吐出された高温高圧のガス冷媒が外気などと熱交換(放熱)を行うように構成される。この熱交換により、冷媒は凝縮されて液相に変化する。ファン22は、凝縮器20において冷媒が熱交換を行なう外気を凝縮器20に供給する。ファン22の回転数を調整することにより、圧縮機10出側の冷媒圧力(高圧側圧力)を調整できる。
受液器30は、凝縮器20によって凝縮された高圧の液冷媒を貯留する。過冷却熱交換器40は、受液器30から配管82を介して流入した液冷媒がさらに外気などと熱交換(放熱)を行なうように構成される。冷媒は、過冷却熱交換器40を通過することによって、過冷却された液冷媒となる。ファン42は、過冷却熱交換器40において冷媒が熱交換を行なう外気を過冷却熱交換器40に供給する。ファン22,42、凝縮器20、および過冷却熱交換器40は、一体で構成されることが多い。サイトグラス45は、配管83を流れる冷媒中の気泡(フラッシュガス)を目視により確認するための窓である。
膨張弁50は、過冷却熱交換器40から配管83を介して流入した冷媒を減圧する。膨張弁50によって減圧された冷媒は、配管84へ流入する。膨張弁50の開度を閉方向に変化させると、膨張弁50出側の冷媒圧力は低下し、冷媒の乾き度は上昇する。膨張弁50の開度を開方向に変化させると、膨張弁50の出側の冷媒圧力は上昇し、冷媒の乾き度は低下する。膨張弁50に代えてキャピラリチューブを用いてもよい。この開示では、膨張弁およびキャピラリチューブを総称して膨張機構と称する。
蒸発器60は、膨張弁50から配管84を介して流入した冷媒を蒸発させる。蒸発器60において蒸発した冷媒は、配管85へ流入する。蒸発器60は、膨張弁50により減圧された冷媒が負荷側ユニット3内の空気と熱交換(吸熱)を行うように構成される。冷媒は、蒸発器60を通過することにより蒸発して過熱蒸気となる。ファン62は、蒸発器60において冷媒が熱交換を行う外気を蒸発器60に供給する。
冷媒量検出部70は、配管82から分岐する配管86と、配管85に接続される配管87との間に設けられる。配管86、冷媒量検出部70、及び配管87は、凝縮器20の出側の冷媒の一部を、負荷側ユニット3を通過することなく圧縮機10へ戻す「バイパス回路BC」を構成する。したがって、バイパス回路BCの一端は、受液器30と過冷却熱交換器40との間に接続される。
冷媒量検出部70は、キャピラリチューブ71と、ヒータ72と、温度センサ73,74とを含む。この開示では、ヒータ72など、配管87を通過する冷媒を加熱する機構を総称して加熱器とも称する。温度センサ73を加熱前温度センサとも称し、温度センサ74を加熱後温度センサとも称する。
キャピラリチューブ71は、配管86と配管87との間に接続され、バイパス回路BCに流れる冷媒の圧力を減圧する。キャピラリチューブ71は、配管86から液冷媒が供給される場合にキャピラリチューブ71を通過した冷媒がヒータ72によって加熱されてもガス単相となることなく気液二相であるように、ヒータ72の加熱量も考慮して適宜設計される。なお、キャピラリチューブ71に代えて膨張弁を用いてもよい。
ヒータ72及び温度センサ73,74は、配管87に設けられる。ヒータ72は、キャピラリチューブ71を通過した冷媒を加熱する。冷媒は、ヒータ72によって加熱されることによりエンタルピーが上昇する。ヒータ72は、上述のように、キャピラリチューブ71を通過した冷媒がヒータ72によって加熱されてもガス単相となることなく気液二相であるように、キャピラリチューブ71の仕様とともにその加熱量が設定される。ヒータ72は、配管87の外部から冷媒を加熱してもよいし、ヒータ72から冷媒への伝熱をより確実にするために配管87の内部に設置してもよい。
温度センサ73は、ヒータ72による冷媒加熱前の冷媒温度、すなわち、キャピラリチューブ71とヒータ72との間の冷媒の温度T1を検出し、その検出値を制御装置100へ出力する。一方、温度センサ74は、ヒータ72による冷媒加熱後の冷媒温度、すなわち、ヒータ72の下流であって配管85に合流する前の冷媒の温度T2を検出し、その検出値を制御装置100へ出力する。温度センサ73,74は、配管87の外部に設置してもよいし、冷媒の温度をより確実に検出するために配管87の内部に設置してもよい。
上記の構成を有する冷媒量検出部70によって、冷媒回路RCへの冷媒の充填量の適否を判定することができる。その原理及び具体的方法については、後ほど詳しく説明する。
圧力センサ90は、配管85内の冷媒の圧力LPを検出し、その検出値を制御装置100へ出力する。すなわち、圧力センサ90は、圧縮機10の吸入側の冷媒圧力(すなわち、低圧側圧力LP)を検出する。圧力センサ92は、配管80内の冷媒の圧力HPを検出し、その検出値を制御装置100へ出力する。すなわち、圧力センサ92は、圧縮機10の吐出側の冷媒圧力(すなわち、高圧側圧力HP)を検出する。
制御装置100は、熱源側ユニット2における各機器の制御を実行する。制御装置100は、一例として、CPU(Central Processing Unit)102およびメモリ104を含むコンピュータをベースに構成される。
図2は、制御装置の構成の一例を示すブロック図である。図2を参照して、制御装置100は、CPU102と、メモリ104と、ストレージ106と、インタフェース(I/F)108〜114とを含む。制御装置100には、インタフェース108,110を介して出力装置120および入力装置122が接続される。さらに、制御装置100は、インタフェース112を介して圧縮機10に制御信号を出力する。さらに、制御装置100は、インタフェース114を介して、温度センサ73,74および圧力センサ90,92などの各種センサからその検出値を受信する。
メモリ104は、CPU102の主記憶として用いられる不揮発性メモリである。メモリ104をRAM(Random Access Memory)とも称する。ストレージ106は、不揮発性メモリであり、ROM(Read Only Memory)とハードディスクなどの外部記憶装置とを含む。
CPU102は、ストレージ106に格納されているプログラムをメモリ104に展開して実行する。ストレージ106に格納されているプログラムには、制御装置100の処理手順が記載されている。CPU102は、このプログラムに従って、熱源側ユニット2における各機器の制御を実行する。
出力装置120は、CPU102からデータまたは制御信号を受け取って外部に出力したり、ユーザに報知したりするための周辺機器である。出力装置120として、たとえば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカなどが挙げられる。また、出力装置120は、基板に設けられたLED(Light Emitting Diode)であってもよい。また、出力装置120は、リレー信号を出力する出力回路であってもよい。
入力装置122は、データまたは制御信号を、制御装置100の内部のCPU102に入力するための周辺機器である。入力装置122として、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。また、出力装置120は、基板に設けられたプッシュスイッチ、スライドスイッチ、またはロータリスイッチであってもよい。
なお、制御装置100による処理は、コンピュータによるソフトウェア処理に限らず、電子回路によるハードウェア処理によって実現されてもよい。また、ソフトウェア処理とハードウェア処理との組み合わせによって実現されてもよい。電子回路は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって構成可能である。
[冷媒充填量の適否についての判定原理]
以下、冷媒回路RCに空の状態から新たに冷媒を充填する場合において、冷媒量検出部70を用いて冷媒充填量の適否を判定する原理について説明する。たとえば、現地に新たに冷凍装置1を据え付ける場合、または冷蔵庫もしくはショーケースなどの既存の負荷側ユニット3に新品の熱源側ユニット2を接続する場合などが想定される。
図3は、冷媒の充填を開始したばかりの冷媒不足の状態における、ヒータによる冷媒温度の変化を説明する図である。図3(A)は、ヒータ72周辺の冷媒の状態を概念的に示す図である。図3(B)は、ヒータ72による冷媒温度の変化の一例を示す図である。
図1とともに図3(A)を参照して、冷媒の充填を開始した当初には、冷媒不足状態のため凝縮器20の出口において冷媒は気液二相化しており、受液器30には、液冷媒が溜まっていない。これにより、配管86には気液二相の冷媒が流れ、キャピラリチューブ71を通過した冷媒はガス成分が多くなり、冷媒の質量流量は低下する。
図3(B)を参照して、横軸は、配管87の延設方向の位置を示しており、P1,P2は、それぞれ温度センサ73,74が設置されている位置を示す。縦軸は、配管87の各位置における冷媒温度を示す。
図3(B)に示すように、キャピラリチューブ71を通過した冷媒はガス成分が多く冷媒の質量流量が低下するため、ヒータ72によって冷媒が加熱されると、冷媒の温度が上昇する。すなわち、ヒータ72による冷媒加熱後の冷媒の温度T2は、ヒータ72による冷媒加熱前の冷媒の温度T1よりも高くなる。以下の説明において、T2−T1を温度上昇量という。図3(B)の場合の温度上昇量はΔToである。
図4は、適正な冷媒量まで充填された状態における、ヒータによる冷媒温度の変化を説明する図である。図4(A)は、ヒータ72周辺の冷媒の状態を概念的に示す図である。図4(B)は、ヒータ72による冷媒温度の変化の一例を示す図である。
図1とともに図4(A)を参照して、冷媒が適正量まで充填されると、凝縮器20の出口において冷媒はほぼ液相化しており、受液器30に液冷媒が溜まっている。これにより、配管86には液冷媒が流れ、キャピラリチューブ71を通過した冷媒は、液成分が多い状態となる。そして、キャピラリチューブ71を通過した冷媒は、ヒータ72により加熱されて乾き度が上昇する。
図4(B)を参照して、横軸は、配管87の延設方向の位置を示しており、P1,P2は、それぞれ温度センサ73,74が設置されている位置を示す。縦軸は、配管87の各位置における冷媒温度を示す。なお、この図4(B)では、冷媒が単一の沸点を有する場合、すなわち単一成分冷媒または共沸混合冷媒である場合が示されている。
図4(B)に示すように、キャピラリチューブ71を通過した冷媒は液成分が多く冷媒の質量流量が多い状態であるため、ヒータ72によって冷媒が加熱されても冷媒の温度は基本的に変化しない。なぜなら、加熱エネルギは冷媒の潜熱変化に利用されるからである。したがって、ヒータ72による冷媒加熱後の冷媒の温度T2は、ヒータ72による冷媒加熱前の冷媒の温度T1と略同等となる。すなわち、温度上昇量(T2−T1)はほぼ0である。
なお、特に図示しないが、冷媒が複数の沸点を有する非共沸混合冷媒の場合には、冷媒の充填量が適正な場合であっても、ヒータ72による加熱によって冷媒の温度は多少上昇する。しかし、その温度上昇量は、高々10℃程度である。したがって、ヒータ72による加熱量を調整することにより、充填量が不足している場合における冷媒の温度上昇と、充填量が適正な場合における冷媒の温度上昇とを区別可能である。
図5は、冷媒の充填量に応じた温度上昇量の差を説明する図である。図5の例では、図5(A)〜図5(C)の順に受液器30に溜まっている液冷媒の量が多くなる。したがって、配管86のキャピラリチューブ71を通過した冷媒の液成分の割合は、図5(A)〜図5(C)の順に多くなる。
液成分の割合が最も小さい図5(A)の場合には、ヒータ72によって冷媒が加熱されることによって位置P1に比較的近い位置Paにおいて冷媒の乾き度が1になる。位置Paよりも位置P2に近い領域では、ヒータ72による加熱によって冷媒の温度が上昇する。この結果、位置P2における温度上層量はΔTaである。温度上昇量ΔTaは、図3(B)の場合におけるΔToよりも小さい。
液成分の割合が中程度の図5(B)の場合には、ヒータ72によって冷媒が加熱されることによって、図5(A)の場合よりも位置P2に近い位置Pbにおいて冷媒の乾き度が1になる。位置Pbよりも位置P2に近い領域では、ヒータ72による加熱によって冷媒の温度が上昇する。したがって、位置P2における温度上昇量はΔTbであり、図5(A)の場合におけるΔTaよりも小さい。
液成分の割合が最も大きい図5(C)の場合には、ヒータ72によって冷媒が加熱されることによって、図5(B)の場合よりもさらに位置P2に近い位置Pcにおいて冷媒の乾き度が1になる。位置Pcよりも位置P2に近い領域では、ヒータ72による加熱によって冷媒の温度が上昇する。この結果、位置P2における温度上昇量はΔTcであり、図5(B)の場合におけるΔTbよりもさらに小さい。
上記のとおり、冷媒量検出部70においてヒータ72によって冷媒を加熱したときの冷媒の温度上昇量に基づいて、冷媒回路RCへの冷媒の充填量が適正かどうかを判定することができる。また、温度上昇量の大きさに基づいて、現時点において冷媒回路に充填された冷媒が、適正充填量に対してどの程度まで充填されているかを知ることができる。
なお、上記の判定方法は、受液器および過冷却熱交換器が設けられていない冷凍装置にも適用可能である。この場合も、バイパス回路BCを構成する配管(86および87)の一端は凝縮器20の出側に接続される点において、図1の場合と同様である。バイパス回路BCは、凝縮器20を通過した冷媒の一部を、負荷側ユニット3を通過することなく圧縮機10へ戻す。
[冷媒回路への冷媒の充填手順]
図6は、図1の冷凍装置において、冷媒回路への冷媒の充填手順を示すフローチャートである。ここで、冷媒の充填手順は、初期充填、追加充填、および最終充填の順に進む。ここで、追加充填は連続的に行われ、上記の温度上昇量の基づく適正値に冷媒充填量が近づくと充填速度を低下させる点に特徴がある。最終充填は、季節等による外気状況の変化によって冷媒充填量にばらつきが生じることを防止するために実行される。以下、図1および図6を参照して、冷媒充填時における冷媒充填量の制御手順について説明する。
まず、ステップS100において、制御装置100は、図2の入力装置122を介して、ユーザから冷媒の充填量の制御開始の入力を受け付ける。
その次のステップS110において、制御装置100は、入力装置122を介して、ユーザから、冷媒量に対する影響が大きい構成要素の仕様の入力を受け付ける。具体的に必要な構成要素の仕様は以下のとおりである。
(i)熱源側ユニット2と負荷側ユニット3とを接続するためのガス延長配管900の径及び長さ。ガス延長配管は、図1の配管85に相当する。
(ii)熱源側ユニット2と負荷側ユニット3とを接続するための液延長配管910の径及び長さ。液延長配管は、図1の配管83に相当する。
(iii)凝縮器20の内容積。
(iv)蒸発器60の内容積。
(v)受液器30の内容積。
(vi)圧縮機10の吸入圧力の低下により圧縮機10を停止する圧力値(定圧カット切値とも称する)。これに代えて目標蒸発温度でもよい。
上記の仕様情報は、冷媒の初期充填および最終充填において充填量を決定するために特に必要になる。なお、ガス延長配管900および液延長配管910の内容積に比べてそれ以外の配管の内容積は小さいので無視できる。
その次のステップS120において、制御装置100は、初期充填量の冷媒を冷媒回路RC内に充填するように指示する。初期充填量は、圧縮機10を動作させるのに最低限必要な冷媒の量である。たとえば、制御装置100は、図2の出力装置120としてのディスプレイに初期充填量を表示するようにしてもよいし、音声出力により初期充填量を報知してもよい。自動的に所望の充填量の冷媒を充填可能な機構が備えられている場合には、制御装置100は初期充填量の冷媒を自動的に冷媒回路RC内に充填するように指示する。
その次のステップS130において、制御装置100は、圧縮機10に運転を開始させる。圧縮機10の回転周波数は、圧力損失を抑制するために、比較的小さな値、たとえば50Hzまたは60Hzに固定される。しかしながら、圧力損失の影響が少ない周波数範囲であれば、必ずしも上記の値に固定して使用する必要はない。
圧縮機10の運転開始当初は、吸入圧力LPが閾値より小さい(定圧カットとも称する)ために、圧縮機10が停止することがある(ステップS140でYES)。この場合には、制御装置100は、処理をステップS130に戻し、圧縮機10の運転を再度開始する。
圧縮機10が連続運転状態になると(ステップS140でNO)、次のステップS150において、制御装置100は、冷媒量検出部70に設けられたヒータ72をオン(ON)する。
ヒータ72をオンしてから一定時間内(たとえば、2分以内)に圧縮機10が停止した場合には(ステップS170でNO、ステップS160でYES)、制御装置100は処理をステップS260に進める。
ステップS260において、制御装置100は、冷媒量検出部70に設けられたヒータ72をオフ(OFF)する。さらに、制御装置100は、次のステップS270において、圧縮機10の異常停止回数をカウントするための変数Nを1つ増やす。なお、変数Nの初期値は0である。制御装置100は、圧縮機10の異常停止回数を表す変数Nが上限値(たとえば、4)に達していない場合(ステップS280でNO)には、処理をステップS130に戻し、圧縮機10の運転を再度開始する。
制御装置100は、圧縮機10の異常停止回数を表す変数Nが上限値(たとえば、4)に達した場合(ステップS280でYES)には、処理をステップS290に進める。ステップS290において、制御装置100は、図2の出力装置120によってユーザにエラーを報知する。さらに、制御装置100は、圧縮機の発停の頻度を抑制するように指示する。たとえば、制御装置100は、圧縮機10の回転周波数を変更するように指示する。
ヒータ72をオンしてから圧縮機10が停止せずに一定時間が経過すると(ステップS170でYES,ステップS160およびS180でNO)、制御装置100は処理をステップS190に進める。
ステップS190において、制御装置100は、各部のデータを取得する。具体的に、制御装置100は、冷媒量検出部70の温度センサ73,74からそれぞれ温度T1,T2の検出値を取得する。さらに、制御装置100は、温度センサによって、凝縮温度CT、過冷却熱交換器40の出口温度OT、外気温度AT、および蒸発温度ETを取得する。さらに、制御装置100は、圧力センサ90、92により、圧縮機10の吸入側の冷媒圧力(すなわち、低圧側圧力LP)及び圧縮機10の吐出側の冷媒圧力(すなわち、高圧側圧力HP)を検出する。
次のステップS200において、制御装置100は、取得された温度T2と温度T1との差(T2−T1)、すなわち、ヒータ72による冷媒の温度上昇量が、閾値Tth1よりも小さいか否かを判定する。ただし、取得された温度T1およびT2にはばらつきがあるので、この判定は、現時点までの連続する複数個のデータ(たとえば、3分間の取得データ)の平均値を用いて行われる。さらに、制御装置100は、一定時間(たとえば、15分間)連続して、T2−T1<Tth1が満たされるか否かを判定する。
閾値Tth1は、温度センサの誤差を考慮して、たとえば、4〜5℃程度に設定される。T2−T1が閾値Tth1よりも小さいということは、温度T1と温度T2とはほぼ等しいことを意味する。
図7は、温度データの平均化の一例を説明するためのタイミング図である。図7を参照して、時間軸上にデータサンプリングのタイミングが示されていている。データサンプリングは20秒ごとに実行される。
図7に示すように、制御装置100は、1分ごとに、現時点までの直近の3分間に取得された9個のデータを平均する。したがって、ヒータ72がオンされてから3分経過した時点で、制御装置100は、20秒経過後から180秒経過後までの9個のデータの平均値Ave1を計算する。ヒータ72がオンされてから4分経過した時点で、制御装置100は、80秒経過後から240秒経過後までの9個のデータの平均値Ave2を計算する。ヒータ72がオンされてから5分経過した時点で、制御装置100は、140秒経過後から300秒経過後までの9個のデータの平均値Ave3を計算する。
その後についても同様である。したがって、図7に示すように、ヒータ72がオンされてから14分経過した時点で、制御装置100は、680秒経過後から840秒経過後までの9個のデータの平均値Ave14を計算する。ヒータ72がオンされてから15分経過した時点で、制御装置100は、740秒経過後から900秒経過後までの9個のデータの平均値Ave15を計算する。
制御装置100は、上記の15個の平均値Ave1〜Ave15の各々を用いて計算した温度上昇量(T2−T1)が全て閾値Tth1よりも小さいか否かを判定する。もし、計算された15個の温度上昇量が全て閾値Tth1よりも小さければ、一定時間連続して判定条件が満たされたことになる。もし、平均値Ave1,Ave2の各々を用いて計算された温度上昇量(T2−T1)が閾値Tth1以上であった場合、少なくとも16分経過後と17分経過後でそれぞれ平均値を計算する必要がある。
上記の平均化の計算は、ウィンドウ幅が3分間の移動平均を行い、移動平均値を1分ごとに出力することと同じである。出力された移動平均値を用いて計算した温度上昇量が15回連続して閾値Tth1未満となったときに、冷媒回路に冷媒が十分に充填されたと判定される。
図6に戻って、ステップS200の判定処理よりも後の手順について説明する。以下では、上記の判定条件(すなわち、T2−T1<Tth1)が一定時間連続して満たされていない場合(ステップS200でYES)と、満たされた場合(ステップS200でNO)とに分けて説明する。一定時間としてたとえば15分が設定されるが、これに限定されない。
(1.ステップS200でNO)
上記の判定条件が一定時間連続して満たされていない場合(ステップS200でNO)、制御装置100は、冷媒の充填量が不足しているものと判定する。この場合、制御装置100は、次のステップS210において、冷媒回路RCへの冷媒の追加充填を開始または継続するように指示する。一旦追加充填を開始すると冷媒の充填は継続的に実行される。
たとえば、制御装置100は、図2の出力装置120としてのディスプレイに冷媒の追加を開始または継続するよう表示するようにしてもよいし、音声出力によりその旨を報知してもよい。自動的に所望の充填速度で冷媒を充填可能な機構が備えられている場合には、制御装置100は自動的に冷媒充填の開示または継続を実行するように当該機構に指示してもよい。
さらに、ステップS210において、制御装置100は、冷媒の温度上昇量(T2−T1)に応じて、冷媒の充填速度を変更するように指示する。具体的には、図8に示すように、冷媒の温度上昇量が比較的大きい場合は、冷媒の温度上昇量が比較的小さい場合に比べて、冷媒の充填速度が大きく設定される。
図8は、図6のステップS210の手順をより詳細に示すフローチャートである。図8を参照して、閾値Tth1よりも大きな閾値Tth2が予め設定される。閾値Tth2は、たとえば、図5(C)に示すように適正な充填量よりも若干少なめの充填量における温度上昇量(T2−T1)に設定される。
ステップS400において、制御装置100は、冷媒量検出部70における冷媒の温度上昇量(T2−T1)が閾値Tth2以上である否かを判定する。温度上昇量が閾値Tth2以上の場合(ステップS400でYES)、制御装置100は、次のステップS410において、高流量での冷媒の充填を開始または継続するように指示する。これによって、ある程度の量まで高流量で連続的に冷媒を冷媒回路に充填できるので、冷媒充填作業に要する全体の時間を短縮できる。
一方、温度上昇量が閾値Tth1以上であるが閾値Tth2未満の場合(ステップS400でYES)、制御装置100はステップS420に処理を進める。ステップS420において、制御装置100は、冷媒の充填速度をステップS410の場合よりも減速するように指示する。これによって、冷媒回路RCへの冷媒の過充填を防止できる。
一例として、上記のステップS410における冷媒の充填速度は1分間に最大充填冷媒量の3%程度である。上記のステップS430における冷媒の充填速度は1分間に最大充填冷媒量の1%程度である。
冷媒充填速度を3段階以上に切り替えてもよい。たとえば、上記の閾値Tth2よりも大きい閾値Tth3をさらに設定してもよい。この場合、制御装置100は、冷媒量検出部70における温度上昇量(T2−T1)が閾値Tth3以上であれば、上記のステップS410における充填速度よりもさらに高速度で冷媒を冷媒回路に充填する。
図6に戻って、圧縮機10が停止しなければ(ステップS180でNO)、制御装置100は、ステップS200でYESとなるまで、上記のステップS190,S200,S210を繰り返し実行する。
一方、この繰り返しの実行中に圧縮機10が停止した場合(ステップS180でYES)には、制御装置100は、冷媒の追加充填を一時停止する(ステップS250)。その後、制御装置100は、前述のステップS260〜S280を実行する。
具体的に、ステップS260において、制御装置100は、冷媒量検出部70に設けられたヒータ72をオフする。次のステップS270において、制御装置100は、圧縮機10の異常停止回数をカウントするための変数Nを1つ増やす。
ステップS280において、制御装置100は、圧縮機10の異常停止回数Nが上限値に達していない場合(ステップS280でNO)には、ステップS130に戻って圧縮機10の運転を再度開始する。制御装置100は、圧縮機10の異常停止回数Nが上限値に達した場合(ステップS280でYES)には、処理をステップS290に進める。ステップS290において、制御装置100は、図2の出力装置120によってユーザにエラーを報知する。さらに、制御装置100は、圧縮機の発停の頻度を抑制するように指示する。たとえば、制御装置100は、圧縮機10の回転周波数を変更したり、冷媒充填速度を制限したりするように指示する。
(2.ステップS200でYES)
上記の判定条件が一定時間連続して満たされた場合(ステップS200でYES)、制御装置100は、冷媒の充填量はほぼ適正であると判定する。この場合、制御装置100は、次のステップS220において、冷媒回路RCへの冷媒の充填を停止する。その次のステップS230において、制御装置100は、冷媒量検出部70におけるヒータ72をオフする。
さらに、制御装置100は、その次のステップS240において、一年間を通して冷媒不足とならないように季節等の外気状況の変化に応じた冷媒の不足分を算出する。この冷媒の不足分は、最終的に冷媒回路RCに追加充填すべき不足冷媒量を意味する。不足冷媒量の算出方法については後述する。
制御装置100は、算出した不足冷媒量の冷媒を冷媒回路RCに充填するように指示する。たとえば、制御装置100は、図2の出力装置120としてのディスプレイに不足冷媒量を表示するようにしてもよいし、音声出力により不足冷媒量を報知してもよい。自動的に所望の充填量の冷媒を充填可能な機構が備えられている場合には、制御装置100は不足分の冷媒を自動的に冷媒回路RC内に充填するように当該機構に指示してもよい。
以上により、冷媒充填量の制御手順が終了する。なお、ステップS240において、既に充填した冷媒の総量が十分な場合(すなわち、算出した不足冷媒量がほぼ0の場合)には、最終的な冷媒の充填を実行する必要はない。
[不足冷媒量の算出方法]
不足冷媒量は、凝縮器20、液延長配管910、ガス延長配管900、蒸発器60、および受液器30のそれぞれの内容積、ならびに、一年間で想定される冷媒の最大密度と冷媒封入時点の冷媒密度との差分に基づいて計算される。計算された不足冷媒量を冷媒回路RCに充填することによって、季節等による外気状況の変化で、冷媒充填量にばらつきが出てしまうことを防止できる。
不足冷媒量ΔMrは、冷凍装置1の構成のうち冷媒量の変動が大きい5つの要素の各々の不足冷媒量の和として表される。すなわち、
ΔMr=ΔMrcond+ΔMrPL+ΔMrPG+ΔMreva+ΔMrrec …(1)
によって不足冷媒量ΔMrを算出できる。ここで、ΔMrcondは、凝縮器20の不足冷媒量である。ΔMrPLは、液延長配管910の不足冷媒量である。ΔMrPGは、ガス延長配管900の不足冷媒量である。ΔMrevaは、蒸発器60の不足冷媒量である。ΔMrrecは、受液器30の不足冷媒量である。以下、各不足冷媒量の算出方法を詳細に説明する。
(1.凝縮器20の不足冷媒量ΔMrcond)
制御装置100は、予め設定された凝縮器20内の冷媒密度ρcondと凝縮温度(CT)との関係を用いることにより、検出された凝縮器出口温度(充填時の凝縮温度CT)から充填時の凝縮器20内の冷媒密度を算出する。制御装置100は、予め設定された基準密度と算出した充填時の凝縮器20内の冷媒密度との差分値を密度変動Δρcondとして求める。基準密度とは、温度により変動する凝縮器20内の冷媒密度の最大値である。制御装置100は、算出した密度変動Δρcondと凝縮器20の内容積Vcondとを乗算することにより、凝縮器20の不足冷媒量ΔMrcondを求める。
たとえば、冷媒密度が最大となるときの凝縮温度を53℃とすれば、密度変動Δρcondは、
Δρcond=1.7×(53−CT) …(2)
によって表される。上式(2)において、CTは充填時の凝縮温度を表し、1.7は実験的に求められた係数である。上記の凝縮温度および係数は一例であって、冷媒の種類および運転条件などに応じて異なる。
(2.液延長配管910の不足冷媒量ΔMrPL)
制御装置100は、予め設定された液延長配管910内の冷媒密度ρPLと液延長配管910内の冷媒温度との関係を用いることにより、検出された過冷却熱交換器の出口温度OTから充填時の液延長配管910内の冷媒密度を算出する。制御装置100は、予め設定された基準密度と算出した充填時の液延長配管910内の冷媒密度との差分値を密度変動ΔρPLとして求める。基準密度とは、温度により変動する液延長配管910内の冷媒密度の最大値である。制御装置100は、算出した密度変動ΔρPLと液延長配管910の内容積VPLとを乗算することにより、液延長配管910内の不足冷媒量ΔMrPLを求める。
たとえば、冷媒密度が最大となるときの液管温度を17℃とすれば、密度変動ΔρPLは、
ΔρPL=−5×(17−OT) …(3)
によって表される。上式(3)において、OTは充填時の過冷却熱交換器40の出口温度を表し、−5は実験的に求められた係数である。上記の液管温度および係数は一例であって、冷媒の種類および運転条件などに応じて異なる。
(3.ガス延長配管900の不足冷媒量ΔMrPG)
制御装置100は、予め設定されたガス延長配管900内の冷媒密度ρPGと蒸発温度ETとの関係を用いることにより、検出された充填時の蒸発温度ETから充填時のガス延長配管900内の冷媒密度を算出する。制御装置100は、予め設定された基準密度と算出した充填時のガス延長配管900内の冷媒密度との差分値を密度変動ΔρPGとして求める。基準密度とは、温度により変動するガス延長配管900内の冷媒密度の最大値である。制御装置100は、算出した密度変動ΔρPGとガス延長配管900の内容積VPGとを乗算することにより、ガス延長配管900内の不足冷媒量ΔMrPGを求める。
より詳細には、ガス延長配管900の冷媒密度は蒸発温度ETにより変化する。蒸発温度ETが変動する幅ΔETを、たとえば5℃とする。実際に使用する目標蒸発温度(ETm)と充填時の蒸発温度ETとが異なる場合も想定すれば、ガス延長配管900の密度変動ΔρPGは、
ΔρPG=0.8×(ΔET(=5)+(ETm−ET)) …(4)
によって表される。上式(4)において、0.8は実験的に求められた係数である。上記の蒸発温度の変動幅および係数は一例であって、冷媒の種類および運転条件などに応じて異なる。
(4.蒸発器60の不足冷媒量ΔMreva)
制御装置100は、充填時の蒸発器60内の冷媒密度を算出するのに、予め設定された蒸発器60内の冷媒密度ρevaと蒸発温度ETと蒸発器60の入口温度との関係を用いる。制御装置100は、充填時の蒸発温度ETと充填時と過冷却熱交換器40の出口温度OTとをさらに用いて、充填時の蒸発器60内の冷媒密度を算出する。制御装置100は、予め設定された基準密度と充填時の冷媒密度との差分値を密度変動Δρevaとして求める。制御装置100は、算出した密度変動Δρevaと蒸発器60の内容積Vevaとを乗算することにより、蒸発器60内の不足冷媒量ΔMrevaを求める。
より詳細には、蒸発器60の冷媒密度ρevaは、蒸発温度ETと蒸発器60の入口温度とにより変化する。蒸発温度ETが変動する幅ΔETを、たとえば5℃とする。実際に使用する目標蒸発温度(ETm)と充填時の蒸発温度ETとが異なる場合も想定すれば、蒸発器60の密度変動Δρevaは、
Δρeva=3×(ΔET(=5)+(ETm−ET))+(OT−17)×29/28 …(5)
によって表される。上記(5)において、3および29/28は実験的に求められた係数である。上記の蒸発温度の変動幅、冷媒密度が最大となる液管温度(17℃)、および係数は一例であって、冷媒の種類および運転条件などに応じて異なる。
(5.受液器30の不足冷媒量ΔMrrec)
制御装置100は、予め設定された受液器30内の冷媒密度ρrecと凝縮温度(CT)との関係を用いることにより、検出された凝縮器出口温度(充填時の凝縮温度CT)から充填時の受液器30内の冷媒密度を算出する。制御装置100は、予め設定された基準密度と算出した充填時の受液器30内の冷媒密度との差分値を密度変動Δρrecとして求める。基準密度とは、温度により変動する受液器30内の冷媒密度の最大値である。制御装置100は、算出した密度変動Δρrecと受液器30の内容積Vrecとを乗算することにより、受液器30の不足冷媒量ΔMrrecを求める。
たとえば、冷媒密度が最大となるときの凝縮温度を60℃とすれば、密度変動Δρrecは、
Δρrec=3.3×(60−CT) …(6)
によって表される。上式(6)において、CTは充填時の凝縮温度を表し、3.3は実験的に求められた係数である。上記の凝縮温度および係数は一例であって、冷媒の種類および運転条件などに応じて異なる。
[冷媒量検出部の配置位置]
以上のように、本実施の形態の熱源側ユニット2では、冷媒量検出部70におけるヒータ72による冷媒の温度上昇量に基づいて、冷媒の充填量の適否が判定される。したがって、冷媒量の判定精度は、ヒータ72による冷媒の温度上昇量の検出精度に依存する。
そこで、冷媒量検出部70は、温度上昇量の検出の外乱となる風の影響を受けにくい箇所に配設される。具体的には、冷媒量検出部70は、凝縮器20と比較して、気流の影響が小さい箇所に配設するのが好ましい。影響低減の対象となる風には、凝縮器20を通過した風、凝縮器20を通過する前の風、及び自然の風が含まれる。これにより、冷媒量検出部70が風の影響を受けて上記の温度上昇量に誤差が生じるのを抑制することができる。
図9は、冷凍装置1の熱源側ユニット2の構造を概略的に示す図である。図9を参照して、熱源側ユニット2の内部は、仕切板206によって熱交換室202と機械室204とに仕切られている。熱交換室202には、凝縮器20、受液器30及び過冷却熱交換器40(いずれも図示せず)、並びにファン22,42が収容されている。凝縮器20及び過冷却熱交換器40(以下、纏めて「熱交換部」と称する場合がある。)並びにファン22,42は、熱源側ユニット2の筐体の側面に設けられており、この例では、熱交換部が背面側に設けられるとともにファン22,42が前面側に設けられ、熱交換室202の背面側から前面側に向けて熱交換部の排熱風が流れる。機械室204には、圧縮機10、各配管、圧力センサ90,92及び制御装置100が収容されている。
そして、本実施の形態1に従う熱源側ユニット2においては、冷媒量検出部70は、機械室204に収容されている。熱交換室202内には、ファン22,42の動作に伴なう風、又はファン停止中には自然の風が流れており、このような風が流れる熱交換室202内に冷媒量検出部70が配置されると、冷媒量検出部70(特に温度センサ73,74)が風の影響を受けることによってヒータ72による冷媒の温度上昇量の測定に誤差が生じ得る。この例では、冷媒量検出部70は、熱交換室202とは仕切板206によって仕切られた機械室204に収容されているので、風の影響を受けない。したがって、この熱源側ユニット2によれば、ヒータ72による冷媒の温度上昇量を精度良く測定することができる。
なお、上記では、受液器30は、熱交換室202に配設されるものとしたが、機械室204に配設してもよい。気流の影響が小さい箇所であれば、その他の位置であってもよい。
[実施の形態1の効果]
以下、冷媒充填量の適否を判定するための他の方法と比較して、本実施の形態1の効果について説明する。
図10は、その他の冷媒充填量の適否を判定する手法を説明するための図である。具体的に、図10(A)は、過冷却熱交換器40の出口における過冷却度と、冷媒回路RCに充填された冷媒の総充填量との関係を示す。図10(B)は、温度効率εと冷媒回路RCに充填された冷媒の総充填量との関係を示す。温度効率εについては後述する。
図10(A)および図10(B)において、適切な量の冷媒が充填されたときの充填量をEとする。この冷媒充填量Eは、冷媒量検出部70における温度上昇量(T2−T1)が閾値Tth1未満になったときの冷媒充填量にほぼ対応している。
(方法1)
過冷却熱交換器40の出口における過冷却度によって、充填された冷媒量の適否を判定することができる。ここで、過冷却度は、凝縮温度CTから過冷却熱交換器40の出口温度OTを減算することによって求められる。過冷却度が閾値Sthを超えたときに適正量の冷媒が冷媒回路RCに充填されたと判断される。
図10(A)に示すように、この判定方法では、冷凍装置1の運転条件の影響が大きい。運転条件Aの場合には、冷媒量がR1のとき適正と判断されるのに対し、運転条件Bの場合には、冷媒量がR2のとき適正と判断される。この原因は、冷凍装置1の運転条件に応じて過冷却度が大きく異なるからである。したがって、どのような運転条件であっても判定可能にするためには、過冷却度の閾値Sthをかなり小さく設定しなければならない。結果として、冷媒の過冷却度が閾値Sthを超えたときの冷媒充填量R1,R2は、冷媒量検出部70における温度上昇量が閾値Tth1未満となったときの冷媒充填量Eよりもかなり小さい。
(方法2)
他の方法として、過冷却熱交換器40の出口における冷媒の過冷却度を、過冷却熱交換器の最大温度差で除算した値である温度効率εを用いて、冷媒不足を判定できる。外気で過冷却熱交換器40を冷却する場合、温度効率εは、凝縮温度CT、過冷却熱交換器40の出口温度OT、および外気温度ATを用いて、
ε=(CT−OT)/(CT−AT) …(7)
で表される。温度効率εが閾値εthを超えたときに、適正量の冷媒が冷媒回路RCに充填されたと判断される。
図10(B)に示すように、この方法の場合には、運転条件A,Bによる影響は小さい。しかしながら、僅かではあるが、冷凍装置の運転条件に応じて温度効率εが変化するので、この温度効率εの違いを考慮して閾値εthを設定する必要がある。結果として、温度効率εが閾値εthに達したときの冷媒充填量R3は、冷媒量検出部70における温度上昇量が閾値Tth1に達したときの冷媒充填量Eよりも若干小さくなる。さらに、方法2には次のような重大な問題がある。
第1に、運転条件によっては誤差が大きくなるために、温度効率εを判定できない場合がある。まず、過冷却熱交換器40が空冷のとき、上式(7)に示すように、凝縮温度CT−外気温度ATによって過冷却熱交換器40の最大温度差が求められる。ここで、凝縮器20のファン22の風量が低下したことにより凝縮器20の熱交換性能が低下した場合には、凝縮温度CTと外気温度ATとの差が大きすぎるために問題となる。このような場合、十分な量の冷媒が冷媒回路に封入された状態でも温度効率が小さくなる場合があるので、結果として過充填となる場合があるために冷媒不足か否かの判定を実施できない。
さらに、蒸発温度が低くかつ圧縮機10の運転周波数が低いために凝縮負荷が小さい場合には、凝縮温度CTと外気温度ATとの差が小さすぎるために問題となる。このような場合、温度センサの誤差により算出した温度効率が真値に対して大幅にずれることがあるため、冷媒不足か否かの判定を実施できない。
一方、過冷却熱交換器40が2重管またはプレート熱交換方式のとき、過冷却熱交換器40の最大温度差は、凝縮温度CTと過冷却熱交換器40の中間圧側飽和温度との差によって求められる。ここで、凝縮温度CTと過冷却熱交換器40の中間圧側飽和温度との差が小さすぎる場合に問題となる。この場合、温度センサの誤差により算出した温度効率が真値に対して大幅にずれることがあるため、冷媒不足か否かの判定を実施できない。
第2に、非共沸混合冷媒の場合には、同じ圧力であっても、飽和液の冷媒温度と飽和ガスの冷媒温度に差(すなわち、温度勾配)があるので問題となる。たとえば、共沸冷媒の場合には、(方法1)の図10(A)に示すように、冷媒不足になると過冷却度(すなわち、CT−OT)は零になる。一方、非共沸冷媒の場合、冷媒不足となった場合でも温度勾配があるために過冷却度(すなわち、CT−OT)は零にならない。この結果、判定精度が低下したり、温度効率εの閾値εthを大きくに設定しないと判定が困難になったりする。
本実施の形態1の冷媒量検出部70を用いた冷媒充填量の判定では、ヒータ72の加熱量を調整することによって、上記のいずれの問題も改善することができる。すなわち、運転条件による判定結果のばらつきを小さくでき、判定が困難になる運転状態も殆ど生じない。上記の方法1,2のように適正な冷媒量Eよりも小さな冷媒量を適正と判定することもなく、精度の良い判定結果が得られる。さらに、図4(B)を参照して説明したように、非共沸混合冷媒の場合にも適正な充填量を精度良く判定できる。
また、本実施の形態1の場合には、冷媒回路RCへの冷媒の充填を連続的に実行し、ほぼ適正となる充填量の少し前の段階で冷媒の充填速度が遅くなるように制御される。これによって、冷媒回路RCへの冷媒の過充填を防止した上で、充填作業に要する時間を短縮できる。
また、本実施の形態1では、式(1)に従って計算される不足冷媒量の冷媒を冷媒回路に最終的に充填することによって、一年間を通じて冷媒不足とならないような適量の冷媒を冷媒回路に封入できる。
実施の形態2.
冷媒量検出部が設けられるバイパス回路BCに冷媒が流れると、負荷側ユニット3の蒸発器60に流れる冷媒量が減少する。したがって、バイパス回路BCに冷媒を流し続けると、冷凍装置の性能に影響を与える可能性がある。
そこで、この実施の形態2では、バイパス回路BCに開閉弁が設けられる。冷媒の充填作業中には開閉弁は開放される。その後の通常動作中には、開閉弁は閉鎖される。
図11は、実施の形態2に従う熱源側ユニットが用いられる冷凍装置の全体構成図である。図11を参照して、この冷凍装置1Aは、熱源側ユニット2Aと、負荷側ユニット3とを備える。熱源側ユニット2Aは、図1に示した実施の形態1の熱源側ユニット2において、冷媒量検出部70に代えて冷媒量検出部70Aを含む。
冷媒量検出部70Aは、図1に示した実施の形態1の冷媒量検出部70において、電磁弁79をさらに含む。電磁弁79は、キャピラリチューブ71の上流の配管86に設けられ、制御装置100からの指示に従って開閉する。電磁弁79をキャピラリチューブ71の下流の配管87に設けることもできるが、キャピラリチューブ71の上流の配管86に設けたほうが望ましい。電磁弁79が開状態になると、キャピラリチューブ71及び配管87に冷媒が流れ、冷媒量の適否が判定可能になる。電磁弁79が閉状態のときは、キャピラリチューブ71及び配管87への冷媒の流れが遮断されるので、冷媒量の適否の判定は実行不可となる。
図11のその他の点は図1と同様であるので、同一または相当する部分には、同一または類似の参照符号を付すことによってその説明を繰り返さない。
図12は、電磁弁79とヒータ72との動作パターンを示す図である。図12を参照して、冷媒充填量の制御中には、電磁弁79はオン(開)され、ヒータ72もオンされる。通常時、すなわち、冷媒充填量の制御の非実行時は、電磁弁79はオフ(閉)され、ヒータ72もオフされる。
さらに、電磁弁79がオフの場合には、ヒータの故障判定も可能である。図12を参照して、ヒータ故障の判定中には、電磁弁79はオフ(閉)され、ヒータ72がオンされる。ヒータ故障の具体的検出方法は後で図14を参照して説明する。
なお、図11では、電磁弁79は、配管86に設けられるものとしたが、電磁弁79は、キャピラリチューブ71の下流の配管87に設けてもよい。但し、バイパス回路BCにおいて電磁弁79を上流側に配設した方が、通常時にバイパス回路BCに寝込む液冷媒の量を少なくすることができるので、配管86に電磁弁79を設ける方が好ましい。さらには、電磁弁79は、配管82から配管86が分岐される分岐部にできるだけ近い箇所に設けるのがより好ましい。
図13は、図11の冷凍装置において、冷媒回路RCへの冷媒の充填手順を示すフローチャートである。
図13のフローチャートは、図6のフローチャートを変更したものである。図13のフローチャートでは、電磁弁79を開にするステップS154が追加される。このステップS154は、ヒータ72をオンにするステップS150の後で、圧縮機10が停止していないかを確認するステップS160の前に実行される。さらに、図13のフローチャートでは、電磁弁79を閉にするステップS225が、ヒータ72をオフにするステップS230およびS260の後にそれぞれ実行される。
また、図13のフローチャートでは、ヒータ72の故障を判定するステップS152が実行される。このステップS152は、ヒータ72をオンにするステップS150の後で、電磁弁79を開にするステップS154の前に実行される。すなわち、ヒータの故障判定は、バイパス回路BCに冷媒を流していない状態で実行される。この状態でヒータ72をオンしても、温度センサ73,74によって検出される温度T1,T2がほとんど上昇しない場合にヒータ72の故障と判定される。これにより、実際には冷媒不足が生じているにも拘わらず、冷媒不足は生じていないと誤判定することを防止できる。ヒータ72の故障を判定するステップS152の具体的なフローチャートは、図14を参照して後で説明する。
さらに、図13のフローチャートでは、電磁弁79の故障を判定するステップS192が追加される。電磁弁の故障を判定するステップS192は、データを取得するステップS190の後で、温度上昇量(T2−T1)が閾値Tth1未満であるか否かを判定するステップS200の前に実行される。
電磁弁79を設けることにより、冷媒充填量の制御中に限定してバイパス回路BCに冷媒を流すことができる。しかし、電磁弁79が閉故障した場合には、バイパス回路BCにおいて冷媒の流れが生じない。この場合、温度T2と温度T1との差(T2−T1)が小さくなるために、実際には冷媒不足が生じているにも拘わらず、冷媒不足は生じていないと誤判定する可能性がある。そこで、温度T2と温度T1との差(T2−T1)が小さくても、温度T1,T2のいずれかが閾値以上の場合には、電磁弁79が閉故障しているものと判定される。電磁弁79の故障を判定するステップS192の具体的なフローチャートは、図15を参照して後で説明する。
図13のその他の点は図6の場合と同様であるので、同一または相当するステップには同一または類似の参照符号を付すことにより説明を繰り返さない。
図14は、冷媒量検出部におけるヒータの故障を判定する手順を示すフローチャートである。
図14に示す手順を開始する時点において、制御装置100は、冷媒量検出部70に設けられたヒータ72をオン状態にするように制御している(図13のステップS150)。
ステップS500において、制御装置100は、冷媒量検出部70Aの温度センサ73,74からそれぞれ温度T1,T2の検出値を取得する。温度T1,T2の検出は、ヒータ72をオンしてから定められた時間が経過した後に実行される。
その次のステップS510において、制御装置100は、取得された温度T1又はT2が閾値Tth2よりも高いか否かを判定する。閾値Tth2は、ヒータ72が動作しているか否かを判定するための値である。たとえば、図6および図13のステップS200における閾値Tth1が4〜5℃程度の小さい値に設定されるのに対して、閾値Tth4は10〜20℃程度の値に設定される。
この結果、取得された温度T1およびT2の少なくとも一方が閾値Tth2よりも低い場合に(ステップS510でYES)に、制御装置100は処理をステップS520に進める。ステップS520において、制御装置100は、ヒータ72が故障している旨を出力装置120を介してユーザに報知する。これにより、実際には充填量が不十分であるにも拘わらず、ヒータ72の故障により冷媒の充填量が適正であると誤判定することを防止できる。
図15は、電磁弁の故障判定を行う手順を示すフローチャートである。図15を参照して、ステップS600において、制御装置100は、ヒータ72がオン状態でありかつ正常であるかを確認する。ヒータ72が異常な場合(ステップS600でNO)、以下のステップは実行されない。
次のステップS610において、制御装置100は、電磁弁79の開指令が出力されているかを確認する。電磁弁79の開指令が出力されていない場合(ステップS610でNO)、以下のステップは実行されない。
その次のステップS620において、制御装置100は、冷媒の温度上昇量(T2−T1)と閾値Tth1とを比較する。冷媒の温度上昇量(T2−T1)が閾値Tth1よりも小さいと判定されると(ステップS620でYES)、制御装置100はステップS640に処理を進める。なお、冷媒の温度上昇量(T2−T1)が閾値Tth1以上の場合(ステップS420でNO)は、制御装置100は、冷媒の充填量が不足していると判断する(ステップS630)。
ステップS640において、制御装置100は、取得された温度T1,T2が閾値Tth3よりも低いか否かを判定する。閾値Tth3は、バイパス回路BCにおいて冷媒が流動していないために、ヒータ72によって冷媒が過熱したことを検知するための値であり、ヒータ72の加熱量等に基づいて適宜設定される。たとえば、閾値Tth1が4〜5℃程度の小さい値に設定されるのに対して、閾値Tth3は80℃程度の大きい値に設定される。
上記のステップS640において、温度T1,T2のいずれかが閾値Tth3以上であると判定されると(ステップS640においてNO)、制御装置100は、電磁弁79が閉故障していると判定する(ステップS650)。なお、ステップS640において電磁弁79が閉故障していると判定された場合に、電磁弁が故障している旨のアラームを出力するようにしてもよい。
一方、ステップS640において、温度T1,T2のいずれも閾値Tth3よりも低いと判定されると(ステップS640においてYES)、制御装置100は、電磁弁79は正常に作動していると判断する。これにより、故障判定処理は終了する。
以上のように、この実施の形態2では、バイパス回路BCに電磁弁79が設けられる。そして、冷媒充填量の制御中に電磁弁79が開けられ、冷媒充填量の制御の非実行時には電磁弁79が閉じられる。これにより、冷媒を充填しない通常動作時においてバイパス回路BCに冷媒を流し続けることによって生じる冷凍装置の性能低下を防止することができる。
また、この実施の形態2では、ヒータ72の故障が検知される。これにより、ヒータ72の故障によりバイパス回路BCにおいて冷媒が加熱されていないために、実際には冷媒不足が生じているにも拘わらず、冷媒不足は生じていないと誤判定してしまうのを防止できる。
また、この実施の形態2では、電磁弁79の閉故障が検知される。これにより、電磁弁79の閉故障によりバイパス回路BCにおいて冷媒が流動しないために、実際には冷媒不足が生じているにも拘わらず、冷媒不足は生じていないと誤判定してしまうのを防止できる。
実施の形態3.
実施の形態3では、冷媒量検出部における熱源として、ヒータ72に代えて、圧縮機出側の高温高圧の冷媒が用いられる。これにより、ヒータ72を別途設けることなく冷媒量検出部を構成することができる。
図16は、実施の形態3に従う熱源側ユニットが用いられる冷凍装置の全体構成図である。
図16を参照して、この冷凍装置1Bは、熱源側ユニット2Bと、負荷側ユニット3とを備える。熱源側ユニット2Bは、図11に示した実施の形態2の熱源側ユニット2Aにおいて、冷媒量検出部70Aに代えて冷媒量検出部70Bを含む。冷媒量検出部70Bは、図11に示した実施の形態2の冷媒量検出部70Aにおいて、ヒータ72に代えて熱交換部78を含み、温度センサ75〜77をさらに含む。
熱交換部78は、圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒と、キャピラリチューブ71を通過した冷媒との間で熱交換を行なうように構成される。
温度センサ73は、熱交換部78の上流側の冷媒温度、すなわち、キャピラリチューブ71と熱交換部78との間の冷媒の温度T1を検出する。一方、温度センサ74は、熱交換部78の下流側の冷媒温度、すなわち、熱交換部78の下流であって配管85に合流する前の冷媒の温度T2を検出する。
また、温度センサ75は、圧縮機10から吐出される高温高圧の冷媒の温度T3を検出し、その検出値を制御装置100へ出力する。温度センサ76は、圧縮機10から吐出されて熱交換部78を通過した冷媒の温度T4を検出し、その検出値を制御装置100へ出力する。すなわち、温度センサ75,76は、圧縮機10から凝縮器20へ供給される冷媒について、それぞれ熱交換部78の通過前及び通過後の冷媒の温度を検出する。温度センサ77は、圧縮機10に吸入される冷媒の温度T5を検出し、その検出値を制御装置100へ出力する。
制御装置100は、配管87を流れる冷媒を熱交換部78によって加熱したときの冷媒の温度上昇量に基づいて、冷凍装置1Bにおいて冷媒充填量の適否を判定する。より詳しくは、制御装置100は、熱交換部78による冷媒の温度上昇量が閾値以上になると、冷媒充填量が不足していると判定する。
ここで、熱交換部78の加熱量は、冷凍装置1Bの運転状態によって変化するため、熱交換部78における配管87内の冷媒の温度上昇量も、冷凍装置1Bの運転状態によって変化する。特に、冷媒が非共沸冷媒の場合は、冷媒不足が生じていなくても、配管87を流れる気液二相の冷媒が熱交換部78において加熱されると温度が上昇し、その温度上昇量は加熱量に依存する。また、冷媒が共沸冷媒であっても、熱交換部78の加熱量が大きい場合には、冷媒の温度が上昇し得る。
そこで、この実施の形態3では、熱交換部78の加熱量が推定され、その加熱量に基づいて、冷媒不足が生じているか否かを判定するための閾値Tth6(熱交換部78における冷媒の温度上昇量の閾値)が設定される。これにより、冷凍装置1Bの運転状態によって熱交換部78の加熱量が変化しても、冷媒不足を精度良く検知することができる。
図17は、図16の冷凍装置において、冷媒回路RCへの冷媒の充填手順を示すフローチャートである。
図17のフローチャートは、図13のフローチャートを変更したものである。図17のフローチャートでは、図13におけるヒータに関係するステップS150,S152,S230,S260が削除される。ステップS170では、電磁弁79を開状態にしてから定められた時間(たとえば、2分)が経過したか否かが判定される。また、閾値Tth6を設定するステップS194が、ステップS190とステップS200との間に実行される。さらに、ステップS200において、温度上昇量(T2−T1)と比較される閾値は、上記のステップS194で設定された閾値Tth6に変更される。図17のその他の点は図13の場合と同様であるので、同一または相当するステップには同一または類似の参照符号を付すことにより説明を繰り返さない。
図18は、図17の閾値を設定するステップS194の詳細な手順を示すフローチャートである。
ステップS700において、制御装置100は、バッファに格納したデータから必要なデータを取り出す。具体的に、制御装置100は、温度センサ73〜77による温度T1〜T5の検出値、圧縮機10の回転数R、および圧力センサ90,92の圧力LP,HPの検出値を取得する。
次のステップS710において、制御装置100は、圧縮機10から熱交換部78に流れる冷媒流量Gを計算する。さらに、制御装置100は、圧縮機10から熱交換部78に流れる冷媒の、熱交換部78前後のエンタルピー差Hを計算する。
具体的に、冷媒流量G(kg/hr)は、次式によって算出できる。
冷媒流量G=V×R×D …(8)
ここで、Vは、圧縮機10の押しのけ量(m3)であり、すなわち、圧縮機1回転あたりの冷媒吸込み量である。Rは、圧縮機10の回転数(1/hr又は1/s)である。Dは、冷媒の密度(kg/m3)である。密度Dは、圧縮機10の吸入側の冷媒温度と圧力とによって決まる量であり、温度センサ77により検出される温度T5と、圧力センサ90により検出される圧力LPとから算出することができる。
また、エンタルピー差H(kJ/kg)は、次式によって算出することができる。
エンタルピー差H=H3−H4 …(9)
ここで、H3は、圧縮機10から熱交換部78に供給される冷媒のエンタルピーであり、H4は、熱交換部78を通過した後の冷媒のエンタルピーである。
図19は、エンタルピーの算定方法を説明するための図である。図19を参照して、エンタルピーH3は、圧縮機10の吐出圧力と熱交換部78通過前の冷媒温度とによって決まる量である。エンタルピーH3は、圧力センサ92により検出される圧力HPと、温度センサ75により検出される温度T3とから求めることができる。また、エンタルピーH4は、圧縮機10の吐出圧力と熱交換部78通過後の冷媒温度とによって決まる量である。エンタルピーH4は、圧力HPと、温度センサ76により検出される温度T4とから求めることができる。
再び図18を参照して、次のステップS720において、制御装置100は、熱交換部78の加熱量を計算する。具体的に、熱交換部78の加熱量(W=J/s)は、たとえば、次式によって算出される。
加熱量=G×H …(10)
その次のステップS730において、制御装置100は、算出された熱交換部78の加熱量に基づいて、冷媒不足が生じているか否かを判定するための閾値Tth6を設定する。上記で説明したように、閾値Tth6は、熱交換部78において配管87を流れる冷媒の温度上昇量と比較するために用いられる。
加熱量と閾値Tth6との関係は、使用される冷媒の種類に応じて事前評価やシミュレーション等により予め求められ、制御装置100のストレージ106に記憶されている。定性的には、加熱量が大きい程、閾値Tth6は大きく、また、加熱量が同じ場合、非共沸冷媒の閾値は、共沸冷媒の閾値よりも大きい。
以上のように、この実施の形態3によれば、冷媒量検出部70Bにおける熱源として、ヒータ72に代えて、圧縮機10出側の高温高圧の冷媒を用いた熱交換部78が設けられる。したがって、ヒータ72を設けることなく冷媒量検出部を構成することができる。
ここで、熱交換部78の加熱量は、冷凍装置1Bの運転状態によって変化する点に注意する必要がある。この実施の形態3によれば、熱交換部78において配管87を流れる冷媒の温度上昇量の閾値Tth6は、熱交換部78の加熱量に基づいて設定される。したがって、冷凍装置1Aの運転状態が変化しても冷媒不足を精度良く検知することができる。
なお、図16に示す冷凍装置1Bにおいて、電磁弁79を設けないように変更することもできる。この場合、図17のフローチャートにおいて、電磁弁79に関係するステップS154,S192,S235,S265が削除される。ステップS170では、圧縮機10の運転を開始してから定められた時間(たとえば、2分)が経過したか否かが判定される。
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態1〜3の図6、図13、および図17のフローチャートにおける冷媒の追加充填を実行するステップS210の内容が変更される。実施の形態1〜3の場合には図8を参照して説明したように、ステップS210において制御装置100は、冷媒の温度上昇量(T2−T1)に応じて冷媒の充填速度を変更した。これに対して、実施の形態4の場合には、過冷却度および温度効率に基づいて充填速度が変更される。
ここで、過冷却度は、凝縮温度CTから過冷却熱交換器40の出口温度OTを減算することによって得られる。温度効率εは、過冷却熱交換器40の出口における冷媒の過冷却度を、過冷却熱交換器40の最大温度差で除算した値である。
まず、実施の形態4の前提となる過冷却度および温度効率と冷媒回路に充填された冷媒の量との関係について説明する。この関係は、既に図10を参照して説明したが、以下に要点を述べる。
図10(A)に示すように、冷媒回路RCに充填される冷媒の総量が増加するにつれて過冷却度は増加し、適正量の冷媒が充填された後は過冷却度は定常値になる。しかしながら、定常値になったときの過冷却度の値は、冷凍装置の運転条件によって大きく異なる。したがって、どのような運転条件においても判定可能にするために、過冷却度の閾値Sthは、比較的に小さな値に設定される。この結果、冷媒の過冷却度が閾値Sthを超えたときの冷媒充填量R1,R2は、冷媒量検出部70における温度上昇量が閾値Tth1未満となったときの冷媒充填量Eよりもかなり小さい。
図10(B)に示すように、冷媒回路RCに充填される冷媒の総量が増加するにつれて温度効率εは増加し、適正量の冷媒が充填された後は温度効率εは定常値になる。定常値になったときの温度効率εの値は、冷凍装置の運転条件に応じて変化するがその変化量は小さい。運転条件によるこのわずかな温度効率εの違いを考慮して閾値εthが設定される。結果として、温度効率εが閾値εthを超えたときの冷媒充填量R3は、冷媒量検出部70における温度上昇量が閾値Tth1未満となったときの冷媒充填量Eよりも若干小さい。
実施の形態4では、上述した過冷却度が閾値Sthを超えたときのタイミング、および温度効率εが閾値εthを超えたときのタイミングが、冷媒充填速度を切り替えるタイミングとして利用される。これによって、冷媒量検出部70における温度上昇量が閾値Tth1未満となるタイミングよりも時間的に前のタイミングで、冷媒充填速度を切り替えることができる。以下、図面を参照して具体的に説明する。
図20は、実施の形態4において、追加充填における充填速度の切り替え手順を示すフローチャートである。図20のフローチャートは、図6、図13、および図17のステップS210をさらに詳細に示すものであり、図8のフローチャートに代わりに用いられる。また、図20の各ステップは、図6、図13、および図17のステップS200において、T2−T1<Tth1が満たされない場合(ステップS200でNO)に実行される。
図20を参照して、ステップS800において、制御装置100は、凝縮温度CTから過冷却熱交換器40の出口温度OTを減算することによって過冷却度を計算する。そして、制御装置100は、過冷却度(CT−OT)が閾値Sthを超えているか否かを判定する。
この判定の結果、過冷却度が閾値Sth以下の場合(ステップS800でNO)には、ステップS810において制御装置100は、高流量での冷媒の充填を開始または継続するように指示する。これによって、ある程度の量まで高流量で連続的に冷媒を冷媒回路に充填できるので、冷媒充填作業に要する全体の時間を短縮することができる。
一方、過冷却度が閾値Sthを超えている場合(ステップS800でYES)には、制御装置100は、処理をステップS820に進める。ステップS820において、制御装置100は、凝縮温度CT、過冷却熱交換器40の出口温度OT、および外気温度ATを用いて、前述の式(7)に従って温度効率εを計算する。
その次のステップS830において、制御装置100は、算出した温度効率εが閾値εthを超えているか否かを判定する。この判定の結果、温度効率εが閾値εth以下の場合(ステップS830でNO)には、制御装置100は、ステップS840に処理を進める。ステップS840において、制御装置100は、冷媒の充填速度を上記のステップS810の場合(すなわち、過冷却度≦Sth)よりも減速するように指示する。
一方、温度効率εが閾値εthよりも大きい場合には、制御装置100は、ステップS850に処理を進める。ステップS850において、制御装置100は、冷媒の充填速度をステップS840の場合(すなわち、温度効率ε≦εth)よりもさらに減速するように指示する。すなわち、上記のステップS840の場合の冷媒充填速度を中程度とすれば、ステップS850の場合の充填速度はそれよりもかなり低速になる。これによって、冷媒回路RCへの冷媒の過充填を防止できる。
以上のとおり、本実施の形態4によれば、実施の形態1〜3の場合と同様に、冷媒回路RCへの冷媒の充填が連続的に実行され、冷媒の充填量の増加に応じて充填速度を減速するように制御される。これによって、冷媒回路RCへの冷媒の過充填を防止した上で、充填作業に要する時間を短縮できる。
上記では、冷媒の充填速度を3段階に切り替えたが2段階に切り替えてもよい。この場合、過冷却熱交換器40の出口での過冷却度が閾値Sthを超えたときに充填速度を減速してもよいし、温度効率εがεthを超えたときに充填速度を減速してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。