実施形態1.
本発明の実施形態1における冷凍サイクル装置の構成を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る冷凍サイクル装置1は冷凍サイクル部2と演算処理部5と、記憶部10と、報知部11とを備える。
冷凍サイクル部2は、圧縮機20、熱交換器21、22、減圧器23、これらを接続し、これらの機器間で冷媒を流し循環させるために各機器間を接続する配管である冷媒回路24、及び冷凍サイクル部2の運転状態を示す運転状態情報を計測するための測定部25〜27と、を備える。運転状態情報とは、具体的には圧縮機20の運転周波数、冷媒回路24の所定位置での冷媒の圧力及び温度、熱交換器21、22で、冷媒と熱交換する対象である流体の所定位置での温度、これらの情報から得られる冷媒の熱交換器21、22での飽和温度のうち、少なくとも1つを含む情報のことを言う。運転状態情報計測のための測定部25〜27は、圧縮機20の運転周波数を計測する運転周波数測定部25と、後述する対象流体の温度を計測するための対象流体温度測定部26と、及び冷媒状態量測定部27と、を備える。なお、各測定部25〜27は、センサと、センサからの信号を処理する測定回路とを含む。冷媒状態量とは、冷媒の圧力と温度の少なくとも一方のことである。冷媒回路24に付した実線、及び破線の矢印は、それぞれ冷媒回路24を循環する冷媒の循環方向を示し、冷媒回路24に対する圧縮機20の接続の方向により、又は四方弁等を装備した場合は、その弁切り替えにより、実線矢印、破線矢印のいずれか一方に冷媒の循環方向を変えることができる。熱交換器21、22は一方が凝縮器、他方が蒸発器である。冷媒の循環方向が実線で示す方向の場合、熱交換器21が凝縮器、熱交換器22が蒸発器となり、冷媒の循環方向が破線で示す方向の場合、熱交換器21が蒸発器、熱交換器22が凝縮器となる。
図1では、熱交換器21、22に流す熱交換用の流体をそれぞれ熱交換用流体210、220として示し、熱交換器21については、熱交換器21と冷熱負荷3との間で熱交換用の流体を流すための熱交換用流体送出部4(以下具体例としてポンプ4とする)も示す。熱交換器21の熱交換用流体210は、熱交換器21が凝縮器であるか蒸発器であるかにより加熱又は冷却されて冷熱負荷3に供給され利用される。以下では熱交換器21の熱交換用流体210を、冷熱負荷3で利用するために加熱又は冷却される対象となる流体という意味で、対象流体210(例えば水)と呼び、熱交換器21を対象熱交換器21、熱交換用流体220を非対象流体220、熱交換器22を非対象熱交換器22と呼ぶ。対象熱交換器21が凝縮器の場合は対象流体210は加熱され、蒸発器の場合は対象流体210は冷却される。以下では、冷媒の循環方向が実線で示す方向であり、冷熱負荷3に対象熱交換器21(凝縮器)で加熱された対象流体210が供給される場合について説明する。以下の説明では特に断らない限り、対象熱交換器21を凝縮器21、非対象熱交換器22を蒸発器22と呼ぶ。
圧縮機20は運転容量を可変することが可能であり、たとえば、インバータにより制御されるモータ(図示せず)によって駆動される容積式圧縮機から構成されている。図1においては、圧縮機20は1台のみとなっているが、これに限定されず、2台以上の圧縮機が並列もしくは直列に接続されたものであってもよい。
凝縮器21は、冷媒回路24内を流れる冷媒と対象流体210との間で熱交換を行う。熱交換により、冷媒は冷却されてガスから液体に凝縮し、対象流体210は加熱される。凝縮器21として、例えば、プレート式熱交換器が使用できる。図1においては、凝縮器21は1個の熱交換器で構成されているが、これに限定されず2個以上の凝縮器21が並列もしくは直列に接続されたものであってもよい。対象流体210は、例えば水、又は空気等の流体で、ポンプ4によって凝縮器21から冷熱負荷3に供給される。
減圧器23は、ステッピングモータ(図示せず)により絞りの開度を調整することが可能な電子膨張弁または受圧部にダイアフラムを採用した機械式膨張弁またはキャピラリ−チューブであり、冷媒回路24内を流れる冷媒の流量の調節等を行う。この減圧器23を通過した後の冷媒の圧力は減少する。図1においては、減圧器23は1個のみの構成となっているが、これに限定されず2個以上の減圧器23が並列もしくは直列に接続されたものであってもよい。
蒸発器22は、冷媒回路24内を流れる冷媒と非対象流体220との間で熱交換を行う。熱交換により、冷媒は加熱されて液体から気体になり、非対象流体220は冷却される。熱交換器の形式はどの様なものであってもよく、例えば、間隔をおいて薄板を多数並べて、周縁部をシールし、各薄板間に形成された空間を交互に冷媒用の流路と非対象流体220の流路とするプレート式熱交換器や、二重になった管の内外で熱交換を行う二重管式熱交換器や、伝熱管と多数のフィンで構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器等の形式の熱交換器を使用することができる。図1においては、蒸発器22は1個の蒸発器22で構成されているが、これに限定されず2個以上の蒸発器22が並列もしくは直列に接続されたものであってもよい。非対象流体220は、フィン・アンド・チューブ型熱交換器の場合は空気であり、送風ファンなどの送出部(図示せず)により蒸発器22に供給され、その他のタイプの熱交換器の場合、非対象流体220は水、又は空気等の流体で、ポンプなどの送出部(図示せず)によって蒸発器22に供給される。
冷凍サイクル部2に用いられる冷媒は例えば、R410A、R407C、R404AなどのHFC冷媒、R22、R134aなどのHCFC冷媒、もしくは炭化水素、ヘリウムのような自然冷媒などがあるが、これらに限定されず、同様の冷媒作用をするものであれば上記以外のものであってもよい。
冷熱負荷3は、対象流体210が供給される対象となる機器で、例えば温水暖房機の室内機などが考えられる。
運転周波数測定部25、対象流体温度測定部26、冷媒状態量測定部27については、図2にそのセンサ配置の具体例を示す。図2において白抜きの矢印は、そこを流れる冷媒又は対象流体210、非対象流体220の流れの方向を例示する。図2に示すように、運転周波数測定部25のセンサは、圧縮機20に取り付けられる。センサ信号を処理する測定回路は図示を省略した。対象流体温度測定部26は、凝縮器21の対象流体210入口にセンサが設置され、対象流体210の流入温度を計測する対象流体流入温度測定部261と、凝縮器21の対象流体210出口にセンサが設置され、対象流体210の流出温度を計測する対象流体流出温度測定部262とで構成される。冷媒状態量測定部27は、圧縮機20の吐出側の冷媒圧力を計測する吐出冷媒圧力測定部27a1で構成される。吐出冷媒圧力測定部27a1のセンサ設置位置は圧縮機20の吐出側から凝縮器21に至るまでの区間であれば、何処の場所に設けられていてもよい。
図2では凝縮器21で冷媒と対象流体210とが対向流の形態をとって熱交換しているが、冷媒と対象流体210とが並行流の形態をとって熱交換を行う構成であってもよい。
図1に戻り、演算処理部5は、CPU、RAM等のメモリで構成され、運転状態情報取得部6と、流量演算部7と、異常判定部8と、機器駆動制御部9とを備える。運転状態情報取得部6は、冷凍サイクル部2の運転状態に関する情報(運転状態情報)を取得する。流量演算部7は、取得した運転状態情報に基づき対象流体210の流量を求める。異常判定部8は、流量演算部7で求めた対象流体210の流量から、流量の異常有無を判定し、異常の場合は、必要な措置を設定するとともに、設定された措置に基づき、対象となる冷凍サイクル部2の構成機器(圧縮機20と減圧器23)、冷凍サイクル部2に関連する機器(ポンプ4)の少なくとも1つに対して指示を出す。機器駆動制御部9は、通常運転時の機器の駆動制御と共に、異常判定部8で異常という判定がなされた場合に設定された必要な措置に基づき、対象となる機器に対して駆動制御を行う。
運転状態情報取得部6は、運転周波数測定部25、対象流体温度測定部26(対象流体流入温度測定部261と、対象流体流出温度測定部262)、冷媒状態量測定部27(吐出冷媒圧力測定部27a1)から入力した測定値に基づき、圧縮機20の運転周波数、吐出冷媒圧力、凝縮器21における対象流体210の対象流体流入温度Twci、及び対象流体流出温度Twcoを取得する。
流量演算部7は、冷媒循環量設定部70、流量仮定値設定部71、熱伝達率設定部72、熱通過率算定部73、流量算定部74、及び流量再算定判定部75を備える。
冷媒循環量設定部70は、冷媒回路24を循環する冷媒の循環量Grを、例えば下記(1)式に従って算定し設定する。(1)式において、Vstは圧縮機20のピストン押しのけ量[m3]、Fは運転状態情報取得部6により取得された圧縮機20の運転周波数[Hz]、ρsは圧縮機20に吸入される冷媒の密度[kg/m3]、ηvは体積効率[無次元]である。冷媒の密度ρsは例えば記憶部10にあらかじめ記憶されている密度データを使用する。体積効率ηvは0.8〜0.9程度の値を定数として与える。
Vst:圧縮機20のピストン押しのけ量[m
3]
F :圧縮機20の運転周波数[Hz]
ρs :圧縮機20に吸入される冷媒の密度[kg/m
3]
ηv :体積効率[無次元]
流量仮定値設定部71は、対象流体210の流量仮定値Gwkを、上記で求めた冷媒循環量Grと取得した運転状態情報より下記(2)式から求める。
Twci:凝縮器21への対象流体流入温度[℃]
Twco:凝縮器21からの対象流体流出温度[℃]
ρw:凝縮器21での対象流体密度[kg/m
3]
Cpw:凝縮器21での対象流体定圧比熱[kJ/kg・K]
ΔHcond:熱交換器21出入口での冷媒のエンタルピ差[kJ/kg]
流量仮定値設定部71は、(2)式でのGwk算定の際に対象流体210の密度ρwと定圧比熱Cpwとを定数として予め与えられた値に設定する。
記憶部10は、凝縮器21出入口での冷媒のエンタルピ差ΔHcondを予め機器の標準運転データとして記憶し、流量仮定値設定部71は、(2)式でのGwk算定の際に、この記憶されているエンタルピ差ΔHcondを参照するなどの方法で取得し利用する。
熱伝達率設定部72は、冷媒循環量Grと対象流体210の流量仮定値Gwkとを用いて、下記(3)式及び(4)式に基づき冷媒側熱伝達率αr[kW/(m2・K)]と対象流体側熱伝達率αw[kW/(m2・K)]を求める。
なお、比例係数βrとβw、累乗係数γrとγwは実測データ、もしくはシミュレーションデータ、熱伝達の理論式等より、それぞれ予め定数として記憶部10に記憶され、これを読み出して使用される。
熱通過率算定部73は、熱伝達率設定部72が求めた冷媒側熱伝達率αr、及び対象流体側熱伝達率αwを用いて、下記(5)式により熱通過率Kを算定する。熱通過率Kは冷媒と対象流体210との間の単位温度差、単位面積、単位時間当たりの熱の通過量である。
流量算定部74は、熱通過率Kと、取得した運転状態情報とを用いて、下記(6)式に従って、対象流体210の推算流量Gwsを算定する。なお、(6)式における対象流体210の密度ρwと対象流体210の定圧比熱Cpwとは、既に説明したとおり予め定数として与えておく。伝熱面積Aも凝縮器21に対してあらかじめ与えられた定数である。これらは記憶部10に記憶させておく。凝縮器21での冷媒の飽和温度、すなわち凝縮温度CTは測定された吐出冷媒圧力に基づき算定される。凝縮器21での冷媒の凝縮温度CTは、凝縮器21での冷媒の圧力がわかれば算定することができる。凝縮器21での冷媒の圧力は、吐出冷媒圧力と、凝縮器21までの冷媒回路24の配管内での冷媒の圧力損失から算定する。
また、凝縮温度CTは、例えば予め記憶された冷媒の物性を用いて、吐出冷媒圧力の検出値に対する飽和温度を凝縮温度CTとして算出することで求めることもできる。
CT:凝縮器21での冷媒の飽和温度(凝縮温度)[℃]
A :凝縮器21の熱交換に係る伝熱面積[m
2]
流量再算定判定部75は、流量算定部74で算定した対象流体210の推算流量Gwsが、流量仮定値設定部71で設定した対象流体210の流量仮定値Gwkと実質的に等しいか否かを判定する。ここで「実質的に等しい」とは、推算流量Gwsと流量仮定値Gwkとの偏差が所定値以下であること、又は推算流量Gwsと流量仮定値Gwkとの比が所定値の範囲内にあることを言う。例えば、推算流量Gwsが流量仮定値Gwkに対して、所定の判定基準値の範囲(例えば±1%など)に入っていることを言う。この判定基準値は記憶部10に記憶され、判定時に読み出されて使用される。流量再算定判定部75は、推算流量Gwsが流量仮定値Gwkと等しければ対象流体210の流量Gwを推算流量Gwsと等しい値であると判定する。推算流量Gwsが流量仮定値Gwkと等しくなければ、流量再算定判定部75は、流量仮定値Gwkを推算流量Gwsに置き換えて、この置き換えた流量仮定値Gwkを使って、熱伝達率設定部72、熱通過率算定部73、流量算定部74にそれぞれの処理を再度実行するよう指示し、熱伝達率設定部72、熱通過率算定部73、流量算定部74は置き換えた流量仮定値Gwkを使ってそれぞれの処理を既に説明した順に実行する。流量再算定判定部75は、再度、得られた推算流量Gwsを最新の流量仮定値Gwk、すなわち前回の推算流量Gwsと等しいかどうかを判定する。その後の処置は既に説明したとおりである。
異常判定部8は、流量異常判定部80と異常時処理部81とを備える。
流量異常判定部80は、流量再算定判定部75によって、推算流量Gwsが流量仮定値Gwkに対して、所定の範囲に入っていると判定され、対象流体210の流量Gwが推算流量Gwsに等しいと判定されたときに、流量Gwと所定の流量異常判定基準値と比較して適正な流量であるかどうか、すなわち流量が異常かどうかを判定する。比較対象とする流量異常判定基準値は、例えば、予め流量異常判定基準値Gwcbを機器使用運転流量下限値の50%に設定しておき、判定条件を「Gw>Gwcb」とする。流量Gwがこの判定条件を満たせば流量正常と判定し、判定条件を満たさなければ流量異常と判定する。流量異常判定基準値Gwcbは機器使用運転流量下限値の50%としたが、これに限られたものではなく、例えば下限値の80%とする等、装置の運用によって流量異常判定基準値を変更してもよい。流量異常判定基準値は記憶部10に記憶され、読み出して利用される。
異常時処理部81は、流量異常判定部80で流量についての判定結果を受けて実行する処理に必要な指示を出力する。指示先は機器駆動制御部9と報知部11の少なくとも一方である。
機器駆動制御部9は、冷凍サイクル部2を構成する機器の通常時の駆動を制御すると共に、異常時処理部81からの指示を受けて、流量異常が生じたときに必要なあらかじめ定められている冷凍サイクル装置1の保護用の機器制御を実行する。流量異常時に制御対象となる機器は、圧縮機20、減圧器23、及びポンプ4であり、少なくともいずれかを制御する。圧縮機20に対しては運転停止又は運転周波数変更、ポンプ4に対しては運転停止又は減速、及び減圧器23に対しては絞り開度の制御、急閉等がある。
流量異常と判定され、機器駆動制御部9に対して指示を出すときは、例えば、圧縮機20を対象とする場合、即時運転停止、増速禁止、もしくは、数秒経過ごとに圧縮機20の運転周波数を数Hzずつ減速、などの運転制御の指示があり得る。また装置の制御において、これらの保護動作は流量低下に対して単一の設定でもよいし、流量低下の程度に応じて複数の設定であってもよい。複数設定する場合であれば、例えば複数の流量基準値を設定し、流量と各流量基準値との大小関係に基づき、段階的に保護動作を行うという設定にする。このような保護制御を実施することで、流量異常による圧縮機20の故障などをより確実に防止することができる。
報知部11は、LED(Light Emitting Diode)、CRT(Cathode Ray Tube)等の表示画面や液晶画面であり、画面上に情報を出力する。判定結果が流量異常の場合は、異常時処理部81からの指示により流量異常の表示出力を行う。更に、報知部11はスピーカー等の音声出力部を備え、画面への表示出力に代え、又は画面への表示出力と共に警報などの音声で情報を出力してもよい。更に、報知部11は通信回線を有し、遠隔地への通信データ出力などを実施してもよい。また、異常の場合は緊急を要すため、報知部11に電話回線などを加え、これを通じて、冷凍サイクル装置1のサービスマンへ異常発生を直接出力し、報知してもよい。
報知部11は、判定結果が流量正常の場合にも、異常時処理部81からの指示により、報知部11の基板上に配置されたLEDや液晶などの出力端末で流量正常の表示出力をしてもよい。更に、遠隔地への通信データ出力を実施してもよい。
報知部11は、判定結果の他に、算定した流量Gwの値を表示してもよい。具体的には、流量Gwが30m3/hである場合には、当該値を表示することとしてもよい。流量Gwを表示することで、機器のユーザや管理者に、運転状態をわかりやすく明示することができ、機器の保守管理、メンテナンスが容易になる。
記憶部10は、半導体メモリ、ハードディスク装置等のメモリ装置で構成され、流量演算部7での流量演算、異常判定部8での判定に必要な各種データ、及び流量演算結果を記憶する。
冷凍サイクル装置1の一般的な運転動作について図2に基づき説明する。圧縮機20から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器21へ送られ、ポンプ4等の対象流体送出部により凝縮器21に供給される対象流体210との熱交換作用により冷媒は凝縮液化する。凝縮液化した冷媒は、減圧器23にて減圧され、二相冷媒となり蒸発器22に送られ、非対象流体220との熱交換作用により蒸発し、低圧のガス冷媒となる。蒸発器22にてガス化されたガス冷媒は再び圧縮機20へ戻る。凝縮器21で加熱された対象流体210は、要求される冷熱負荷3へ導かれる。圧縮機20は、例えば、冷熱負荷3からの要求に応じ、凝縮器21内に所望の流量の冷媒が流れるように、演算処理部5の機器駆動制御部9によって制御される。例えば、凝縮器21に流入する対象流体210に対して、凝縮器21における対象流体流出温度、つまり、対象流体流出温度測定部262からの信号がある一定の値になるように、圧縮機20の運転容量が制御される。
各測定部からの測定値はそれぞれ運転状態情報取得部6に入力される。運転状態情報取得部6は入力された測定値から圧縮機20の運転周波数F、吐出冷媒圧力、凝縮器21での対象流体流入温度Twci、対象流体流出温度Twoを運転状態情報として取得し、その運転状態情報は流量演算部7に入力される。流量演算部7は運転状態情報と、記憶部10に記憶されている(1)〜(6)式、及び(1)〜(6)式の算定に必要となる各種データを記憶部10から取得し、これらに基づき、対象流体210の流量Gwを算定する。異常判定部8は、流量Gwを流量異常判定基準値と比較し「流量異常の有無」を判定するとともにその判定結果に基づき必要な処理を設定する。機器駆動制御部9及び報知部11は、異常判定部8で設定した必要な処理の内容を入力し、必要な処理を実行する。すなわち、機器駆動制御部9は、設定した異常時の処理の内容に基づいて圧縮機20、減圧器23、ポンプ4のうち、少なくともいずれか1つに対して運転停止、減速、急閉などの制御を行う。報知部11は、設定した処理内容に基づいて、必要な表示、警報等の出力を実行する。
次に図3のフロー図を使って冷凍サイクル装置1の動作を流量評価と流量異常判定処理について説明する。図3は対象流体210の流量評価処理と流量異常判定処理とを示す。流量評価処理はステップST1からステップST9まで、流量異常判定処理はステップST10からステップST12までである。
運転状態情報取得部6は所定の頻度で各測定部からの測定値を入力して運転状態情報を取得する(ステップST1)。運転状態情報は、圧縮機20の運転周波数、吐出冷媒圧力、凝縮器21での対象流体流入温度Twciと対象流体流出温度Twcoである。運転周波数は運転周波数測定部25からの測定値、吐出冷媒圧力は吐出冷媒圧力測定部27a1の測定値、対象流体流入温度Twciと対象流体流出温度Twcoはそれぞれ対象流体流入温度測定部261、対象流体流出温度測定部262の測定値から運転状態情報取得部6が取得する。
次に、冷媒循環量設定部70は冷媒循環量Grを設定する(ステップST2)。冷媒循環量Grは、例えば運転状態情報取得部6が取得した運転状態情報から(1)式に基づき算定され設定される。
流量仮定値設定部71は、対象流体210に対する流量仮定値Gwkを設定する(ステップST3)。流量仮定値Gwkは、例えば設定された冷媒循環量Grと運転状態情報(対象流体流入温度Twciと対象流体流出温度Twco)から(2)式に基づき算定され設定される。なお、(2)式の凝縮器21の出入口エンタルピ差ΔHcondは例えば標準運転データとして記憶部10に記憶されているものを読み出して使用する。対象流体210の密度ρw、定圧比熱Cpwも例えば記憶部10に記憶されている値を読み出して利用する。
次に、熱伝達率設定部72は、凝縮器21に対する冷媒側熱伝達率αrと対象流体側熱伝達率αwとを設定する(ステップST4)。冷媒側熱伝達率αr及び対象流体側熱伝達率αwは、それぞれ、冷媒循環量Grと(3)式、及び、流量仮定値Gwkと(4)式、に基づき算定され設定される。比例係数βr、βw、累乗係数γr、γwはあらかじめ決められ例えば記憶部10に記憶されており、熱伝達率設定部72は、(3)式と(4)式に基づき冷媒側熱伝達率αrと対象流体側熱伝達率αwとを算定する際に、これらを読み出して使用する。
熱通過率算定部73は、設定された冷媒側熱伝達率αr及び対象流体側熱伝達率αwと、(5)式とに基づき凝縮器21での熱通過率Kを算定する(ステップST5)。
その後、流量算定部74は、算定された熱通過率Kと、運転状態情報と、(6)式とから対象流体210の流量を推算流量Gwsとして算定する(ステップST6)。運転状態情報は、凝縮器21における対象流体流入温度Twci、対象流体流出温度Twco、及び運転状態情報測定値から得られる飽和温度(この場合は凝縮温度CT)である。凝縮温度CTについては、運転状態情報取得部6は、取得された吐出冷媒圧力から、凝縮器21での冷媒圧力を求め、この冷媒圧力から凝縮温度CTを求める。
次に、流量再算定判定部75は、推算流量Gwsが流量仮定値Gwkと等しいかどうかを判定する(ステップST7)。ここで「等しい」とは、推算流量Gwsが流量仮定値Gwkに対して所定の再算定判定基準値の範囲内に入っていることを言う。
流量再算定判定部75は、推算流量Gwsが流量仮定値Gwkと実質的に等しければ(ステップST7;YES)、対象流体210の流量Gwを推算流量Gwsに等しい値に設定する(ステップST9)。これにより流量評価処理が完了する。推算流量Gwsが流量仮定値Gwkと実質的に等しくなければ(ステップST7;NO)、流量仮定値Gwkを推算流量Gwsに置き換えて(ステップST8)、この置き換えた流量仮定値Gwkを使って、ステップST4からステップST7までの処理が繰り返される。従って、ステップST7でYESの判定がなされるまで、すなわち推算流量Gwsが最新の流量仮定値Gwkと実質的に等しくなるまで、ステップST4からステップST8までの処理が繰り返される。異常判定処理を行わない場合は、ステップST9で処理は終了する。
異常判定処理を行う場合はステップST10以降の処理に移る。流量異常判定部80は、対象流体210の流量Gwが、所定値と比較して適正な流量であるかどうか、すなわち流量が正常か異常かを判定する(ステップST10)。適正と判定された場合(ステップST10;YES)は、異常時処理部81は、報知部11を介して流量正常と出力し(ステップST11)、適正と判定されなかった場合(ステップST10;NO)は、流量異常と出力し、機器駆動制御部9を介して必要な機器制御を実行する(ステップST12)。報知部11を介した出力、機器駆動制御部9を介しての機器制御は必須ではない。また、いずれか一方を実行してもよい。
以上説明した冷凍サイクル装置1によれば、流量測定装置を設置せずに、対象流体210の絶対流量を求め、流量を常時監視することができる。そのため、流量測定装置を使用していた従来例と異なり冷凍サイクル装置1の機器構成が簡便になり、装置費用の低減を図ることもでき、機器の保守管理、メンテナンス性向上などの効果も奏することができる。従って、簡便な機器構成で対象流体210の流量異常の判定も実施できる。
また、冷媒側熱伝達率や対象流体側熱伝達率の変動を考慮して熱交換器の熱通過率を算定し、対象流体流量を求めることにより、冷凍サイクル運転状態の変化、例えば冷媒循環量の増減などに影響されることなく、高精度に流量の絶対値を取得できる。従って、異常判定を行う場合、流量の評価精度が向上するため誤判定を低減できる。
更に、異常判定部8を設けることにより、対象流体210の絶対流量及びその流量の異常/正常の判定結果を出力・表示させることができるので、冷凍サイクル装置1のユーザーや管理者に当該装置の運転状態を従来装置よりもわかりやすく明示することができ、機器の保守管理、メンテナンスなどが容易になる。
また、対象熱交換器21が凝縮器の場合、対象流体210の流量低下を検知することにより、圧縮機20の吐出冷媒圧力(高圧)異常上昇を回避し、圧縮機20を保護することができる。圧縮機20の運転に対して、圧縮機容量制御による高圧保護制御などが設けられている場合は、保護制御の頻発を回避して、加熱能力の確保が可能となり、安定した温度での対象流体210の供給が可能となる。
実施形態1の変形例について説明する。図3のステップST2において、冷媒循環量Grを(1)式から算定する際に、冷媒の密度ρsを一定値としたが、冷媒の圧力と温度とに基づき求めた密度としてもよい。このときは図4に示すように、圧縮機20の吸入側の冷媒の圧力と温度を計測するためにそれぞれ吸入冷媒圧力測定部27a2、吸入冷媒温度測定部27b1を設置する。図3のステップST1において、運転状態情報取得部6は、それぞれの測定部の測定値を入力して、吸入冷媒圧力と吸入冷媒温度とを取得する。図3のステップST2において、冷媒循環量設定部70は、取得された吸入冷媒圧力と吸入冷媒温度とに基づき、冷媒の密度ρsを算定し、この密度を使って(1)式に基づき冷媒の循環量Grを算定する。
冷媒の密度ρsは冷媒の温度と圧力とに依存する量なので、このようにして求めた冷媒の密度ρsを使用することにより、より精度の高い冷媒循環量Grを取得することができる。従って、冷媒側熱伝達率や対象流体側熱伝達率の変動を考慮して熱交換器の熱通過率を算定し、対象流体流量を求めることになり、冷凍サイクル運転状態の変化、例えば冷媒循環量の増減、冷媒や対象流体の温度条件の変化などに影響されることなく、高精度に流量の絶対値を取得できるので、この冷媒循環量Grを使って得られる対象流体210の流量Gwの評価精度も向上する。
なお、図1に示す構成をとる冷凍サイクル装置1において、図4に示すようにセンサを設置した場合は、機器駆動制御部9は、減圧器23の絞りの開度を制御して圧縮機20の吸入側における冷媒の圧縮機吸入過熱度が所定値となるように蒸発器22を流れる冷媒の流量を制御することができる。これにより液冷媒が圧縮機20に戻らない運転を実現する。蒸発器22での冷媒の蒸発温度は吸入冷媒圧力測定部27a2の測定値から取得した吸入冷媒圧力に基づき圧力損失を考慮して求めた蒸発器22での冷媒圧力を飽和温度換算することにより求められる。圧縮機吸入過熱度は、吸入冷媒温度測定部27b1の測定値から取得した吸入冷媒温度から蒸発温度を引くことにより圧縮機吸入過熱度が求められる。なお、蒸発温度については、吸入冷媒圧力から求めるのではなく、図5に示すように蒸発器22における冷媒温度を計測するための低圧冷媒温度測定部27b2を設け、その温度測定値を蒸発温度として用いてもよい。
図4において、吸入冷媒圧力測定部27a2や低圧冷媒温度測定部27b2の設置位置は、それぞれ図示する位置に限られたものではなく、吸入冷媒圧力測定部27a2は蒸発器22から圧縮機20の吸入側に至るまでの区間に設置されていればよく、低圧冷媒温度測定部27b2は蒸発器22内部の冷媒配管、もしくは蒸発器22の出入口付近、に設けられていてもよい。
なお、減圧器23の制御動作は上記に限定されたものではなく、例えば図6に示すように液冷媒温度を測定する液冷媒温度測定部27b3を設け、凝縮温度から液冷媒温度を引くことにより求められる過冷却度が所定値となるように減圧器23の絞りの開度を制御することにより冷媒流量を制御してもよい。これにより圧縮機吐出圧力の上昇や吐出冷媒温度の上昇を抑制し、圧縮機20を保護することができる。
図6において、液冷媒温度測定部27b3の位置は図示した位置に限られるものではなく、凝縮器21から減圧器23に至るまでの区間であれば、何処の場所に設けられていてもよい。
他の変形例について説明する。図3のステップST2において、冷媒循環量設定部70は、冷媒循環量Grを(1)式に基づき算定するとしたが、これに限定する必要はない。例えば、圧縮機20の性能特性は、圧縮機運転周波数F、吸入過熱度SHS、吸入冷媒圧力Ps(蒸発温度ET)、吐出冷媒圧力Pd(凝縮温度CT)に依存する。このため、上記の各要素をパラメータとして冷媒循環量Gr、冷熱能力Qc等の性能値を算出することができる。そこで、シミュレーションや実際に計測することにより求めた冷媒循環量Gr或いは冷熱能力Qcの性能値と、圧縮機周波数F、吸入冷媒圧力Ps、及び吐出冷媒圧力Pdとの関係を示すパラメータテーブルを予め用意しておく。そして、運転状態情報取得部6によって取得された測定結果と、上述のパラメータテーブルとに基づいて冷媒循環量の予測値fGrを特定し、特定した当該予測値fGrを補正することで、冷媒循環量Grを算出することとしてもよい。具体的には、下記(7)式に基づいて冷媒循環量Grを算出してもよい。これにより、冷媒の循環量を高精度に求めることができる。なお、γGr(SHS)は、パラメータを吸入過熱度SHSとする関数γGrに基づく補正係数である。
更に、実施形態1の他の変形例について説明する。図3のステップST3において、流量仮定値設定部71は、(2)式に基づき対象流体210の流量仮定値を求める際に、凝縮器21での対象流体210の密度ρwと定圧比熱Cpwを、あらかじめ設定された一定値としていたが、これに限定される必要はない。凝縮器21での対象流体210の密度ρwと定圧比熱Cpwは凝縮器21での対象流体210の温度Twcに依存するので、密度ρwと定圧比熱Cpwを下記(8)式及び(9)式に示すように温度Twcの関数形式で与え、凝縮器21での対象流体210の温度Twcと(8)式及び(9)式から密度ρwと定圧比熱Cpwを求めてもよい。なお、温度Twcは、凝縮器21での対象流体流入温度Twci、対象流体流出温度Twco、又は両者の平均値などの値とする。
また、密度ρwと定圧比熱Cpwを関数形式で与えるのではなく、Twcをパラメータとするデータテーブル形式で与えてもよい。いずれの場合も、記憶部10に記憶させて、流量仮定値設定部71は、必要に応じてこれらを読み出して使用する。
このように、密度ρwと定圧比熱Cpwを対象流体210の温度に依存する量とするので、運転条件の変動があっても、流量仮定値Gwkを精度よく算定できるため、流量Gwの評価精度が向上する。
更に、他の変形例について説明する。図3のステップST3において、流量仮定値設定部71は、上記説明では(2)式に基づき対象流体210の流量仮定値を求める際に、冷媒循環量設定部で設定した冷媒循環量Grと出入口冷媒エンタルピ差ΔHcondとを利用しているが、これに限定される必要はない。冷媒循環量Grと出入口冷媒エンタルピ差ΔHcondとの積は凝縮器21における冷熱能力Qc(ここでは凝縮能力又は加熱能力)を意味している。従って、この冷熱能力Qcを圧縮機20の特性としてあらかじめパラメータテーブル又は関数表示の近似式で与えておくことで、流量仮定値設定部71は、当該パラメータテーブル等に基づいて、冷熱能力をQcを特定し、特定したQcを、冷媒循環量Grと出入口冷媒エンタルピ差ΔHcondとの積(=Gr×ΔHcond)として式(2)へ代入することで、簡便に対象流体210の流量仮定値を求めることができる。
具体的には、パラメータを運転周波数F、凝縮温度CT、蒸発温度ETとして冷熱能力Qcがデータテーブルとして与えられた場合には、流量仮定値設定部71は、運転周波数F、凝縮温度CT、蒸発温度ETに基づいて特定した冷熱能力Qcを、媒循環量Grと出入口冷媒エンタルピ差ΔHcondとの積(=Gr×ΔHcond)として(2)式へ代入する。これにより、簡便に対象流体210の流量仮定値を求めることができる。
更に、これまでの説明では、図3のステップST3において、流量仮定値設定部71は、(2)式に基づき対象流体210の流量仮定値Gwkを求めているが、これに限る必要はない。例えば、機器使用時の設定流量を記憶部10に記憶させておき、これを読み出して流量仮定値Gwkとして設定してもよい。
また、図3のステップST3において、流量仮定値設定部71は、冷媒側熱伝達率αr、対象流体側熱伝達率αwを初期設定し、図3のステップST5、ST6を実行して得られる推算流量Gwsを流量仮定値Gwkとしてもよい。また、熱通過率Kを初期設定し、図3のステップST6を実行して得られる推算流量Gwsを流量仮定値Gwkとしてもよい。
更に、図3のステップST5において、熱通過率算定部73は、(5)式に基づき熱通過率Kを算定するとしたが、これに限定される必要はない。例えば、下記(10)式に基づいて熱通過率Kを算定してもよい。(10)式は、(5)式に対して凝縮器21の熱交換の際の伝熱壁による熱伝導抵抗の項を付加したものである。
δ:伝熱壁の厚さ[m]
λ:伝熱壁の熱伝導率[kW/(m
2・K)]
(10)式で算定した熱通過率Kを使用することにより、凝縮器21の熱交換の際の伝熱壁による熱伝導抵抗を考慮したKを使って推算流量Gwsを算定することになるので推算流量Gwsの算定精度が向上し、流量Gwの評価精度が向上する。
また、図3のステップST6において、流量算定部74は、(6)式に基づき対象流体210の推算流量Gwsを算定する際に、凝縮器21での対象流体210の密度ρwと定圧比熱Cpwを、あらかじめ設定された一定値としていたが、これに限定される必要はない。凝縮器21での対象流体210の密度ρwと定圧比熱Cpwは凝縮器21での対象流体210の温度Twcに依存するので、密度ρwと定圧比熱Cpwを上記(8)式及び(9)式に示すように温度Twcの関数形式で与え、凝縮器21での対象流体210の温度Twcと(8)式及び(9)式から密度ρwと定圧比熱Cpwを求めてもよい。なお、温度Twcは、凝縮器21での対象流体210の流入温度Twci、流出温度Twco、又は両者の平均値などの値とする。
また、密度ρwと定圧比熱Cpwを関数形式で与えるのではなく、Twcをパラメータとするデータテーブル形式で与えてもよい。いずれの場合も、記憶部10に記憶させて、流量仮定値設定部71は、必要に応じてこれらを読み出して使用する。
このように、密度ρwと定圧比熱Cpwを対象流体210の温度に依存する量とするので、運転条件の変動があっても推算流量Gwsを精度よく算定することができ、流量Gwの評価精度が向上する。
更に、図3のステップST6において、流量算定部74は、(6)式に基づき対象流体210の推算流量Gwsを算定する際に使用する凝縮器21での冷媒の飽和温度(凝縮温度CT)を圧縮機20の吐出冷媒圧力から求めるとしたが、これに限定する必要はない。凝縮器21の入口近傍の冷媒温度を測定し、この温度を凝縮器21での冷媒の飽和温度(凝縮温度CT)としてもよい。従って、図7に示すように、凝縮器21の入口近傍に高圧冷媒温度測定部27b4のセンサを設置し、運転状態情報取得部6は、高圧冷媒温度測定部27b4の測定値から凝縮器21の入口近傍の冷媒温度を得る。
このようにして凝縮器21での冷媒の飽和温度(凝縮温度CT)を取得することにより、冷媒回路24の配管内での冷媒の圧力損失の見積もり誤差等を低減することができるため、凝縮器21での冷媒の飽和温度(凝縮温度CT)を高精度に得ることができる。従って、(6)式により算定される対象流体210の推算流量Gwsの算定精度が向上し、流量Gwの評価精度が向上する。
なお、冷凍サイクル装置1において、対象流体210の流量Gwを求めるためには、異常判定部8、機器駆動制御部9、報知部11は必ずしも必要な構成要素ではなく省略することができる。
また、本実施形態では、冷媒回路24が、圧縮機20、熱交換器21、22、減圧器23から構成されている。これに限らず、冷媒回路24は、例えば四方弁、アキュムレータ、及びレシーバ等を含んで構成されていてもよい。
実施形態2.
本発明における実施形態2に係る冷凍サイクル装置1は流量較正機能を備えたものである。流量較正は、冷凍サイクル装置の据え付けの際の試運転時等に実施される。流量較正の結果に基づいて、流量Gwの補正の要否と、補正方式が設定され、これらの情報が記憶部10に記憶される。本実施形態に係る冷凍サイクル装置1では、記憶された補正方式に従って流量Gwが補正され、補正後の流量Gwが最終的な流量Gwとして算出される。本実施形態2に係る冷凍サイクル装置1の流量較正時の構成を図8に示す。
図8及び図1を参照するとわかるように、本実施形態2に係る冷凍サイクル装置2は、冷凍サイクル部2を構成する対象熱交換器21(以下では凝縮器21とする)を流れる対象流体210の流路に、流量計12が設置されている点、演算処理部5が流量較正部13を備えている点で、実施形態1に係る冷凍サイクル装置1と異なっている。流量較正部13は、補正要否判定部14、補正方式設定部15を備える。なお、異常判定部8と機器駆動制御部9は較正処理に不要なため、図8では図示を省略した。
流量計12は、凝縮器21を流れる対象流体210の実流量Gwaを測定する。常設ではなく流量較正時にのみ設置すればよいので、一時借用するなどして利用することができる。流量較正は冷凍サイクル部2、冷熱負荷3、ポンプ4を所定の運転条件で運転して実施される。そのときの流量計12の測定値は運転状態情報取得部6に入力され、運転状態情報取得部6は、この測定値から対象流体210の実流量Gwaを取得する。
補正要否判定部14は、流量計12で流量測定したときに流量再算定判定部75で求められた流量Gw、及び流量計で測定された実流量Gwaを入力し、両者の乖離度を例えば(11)式に従って算定する。乖離度が補正要否判定基準値よりも小さい場合は補正不要、大きい又は等しい場合は補正必要と判定する。
補正方式設定部15は、補正必要という判定結果の場合に、その補正方式を設定し記憶部10に記憶させ、その後の流量Gwの算定時に行う補正に利用できるようにする。補正方式には例えば、流量Gwを一次式に入れて補正する(流量Gwに比例係数を乗じる補正、流量Gwに定数を加減するだけの補正を含む)補正方式や、推算流量Gwsの算定に使用する運転状態情報(圧力、温度)を例えば一次式に入れて補正する(測定され取得された圧力や温度に比例係数を乗じる補正、定数を加減するだけの補正を含む)ことにより推算流量Gwsを補正する補正方式等がある。補正対象となる運転状態情報は凝縮器21での対象流体流入温度Twci、対象流体流出温度Twco、吐出冷媒圧力、及び高圧冷媒温度の少なくともいずれか1つである。また、補正対象は、対象流体を算出する途中で算出される演算値等であってもよい。この演算値は、例えば式(6)の分母の対数項ln{(CT−Twci)/(CT−Twco)}等である。
このように補正方式が決まり補正方式の手順を記憶部10に記憶させた後は、通常の冷凍サイクル装置1の運転が開始される。なお、冷凍サイクル装置1の構成は、図1に示される構成と同じである。ただし、流量演算部7の各要素が実行する処理内容は、補正方式に応じた部分が実施形態1の場合とは一部異なる。
例えば、流量Gwを一次式に代入する等の所定の処理を施す補正方式を実行する場合は、流量再算定判定部75は、推算流量Gwsが流量仮定値Gwkと等しいと判定した後、記憶部10から流量較正時に記憶された補正方式に係る関数又はデータを読み出す。そして、読み出した関数又はデータに基づき流量Gwの補正を行い、補正後の値を新たに流量Gwとする。運転状態情報(圧力、温度)を所定の方式で補正する場合は、運転状態情報取得部6が、対象となる運転状態情報に対して同様の補正処理を実行する。
なお、図8では実流量Gwaを取得するために流量計12を設置したが、流量計12の測定値ではなく所定の運転条件、例えば定格条件での標準流量を記憶部10に記憶させ、これを読み出して使用してもよい。この方法に依れば流量計12を接続する必要がなく簡便に流量較正が実施できる。一方、流量計12を使用する場合は、較正精度が向上するので、より精度のよい補正を実行することが可能となる。
流量較正処理について図9のフロー図に従って説明する。まず、図8の構成を有する冷凍サイクル装置1を所定の運転条件にて運転し、流体の流量補正に適した運転状態となるように機器の運転制御を行う(ステップST20)。ここでは各種測定部による運転制御に必要な運転状態情報の測定と測定結果の運転状態情報取得部6への入力が行われる(フロー図では明示していない)。所定の運転条件とは、例えば機器の定格条件のことを意味し、対象流体210の温度、外気温、圧縮機20の運転周波数などの定められた運転条件を意味する。運転制御では、まず各測定部で運転時の冷凍サイクル部2及び対象流体210の圧力、温度などの運転状態情報を測定し、運転状態情報取得部6が測定値を取得する。次に、演算処理部5において、取得した運転状態情報に基づいて、圧縮機20の吸入過熱度に代表される指標について、制御目標値に対する偏差などの制御値を演算する。そして、算出した偏差が小さくなるように、機器駆動制御部9(図示省略)を介して各アクチュエータ(圧縮機20、減圧器23、対象流体210用のポンプ4等)を制御する。以下、各アクチュエータの動作について説明する。
機器駆動制御部9は、凝縮器21での対象流体流出温度が目標値(例えば45℃)となるように圧縮機20の運転周波数を調整する。減圧器23は、圧縮機20の吸入過熱度(圧縮機20の吸入冷媒温度から圧縮機20の吸入冷媒圧力を飽和温度換算した値を引いた値)が目標値(例えば5℃)となるように、絞りの開度を調整制御する。
なお、対象流体210の流量補正に適した運転状態となるような運転制御は、上記に示す制御方法に限定されるものではない。例えば、圧縮機20を、運転周波数が一定になるように制御してもよい。また、例えば凝縮温度及び蒸発温度が目標値となるように、圧縮機20の運転周波数を制御してもよい。また、例えば凝縮温度及び蒸発温度のいずれか1つが目標値となるように圧縮機20の運転周波数を制御してもよい。このとき、蒸発器22が空気熱交換器である場合は、空気を蒸発器22に送出する手段であるファンの回転数を同時に制御してもよい。なお、圧縮機20で凝縮温度のみを制御する場合において、蒸発器22が空気熱交換器である場合は、送風用のファンの回転数を制御することで、蒸発温度を制御することができる。また、蒸発器22が水熱交換器である場合は、減圧器23の絞りの開度を制御することで、蒸発温度を制御することができる。
また、上記の運転制御では、減圧器23の絞りの開度調整による圧縮機20の吸入過熱度制御について説明した。これに限らず、蒸発器22出口における蒸発器22出口過熱度(蒸発器22出口付近の冷媒温度(低圧冷媒温度)から蒸発器22の飽和温度を差し引いた値)を、目標値に収束させるための蒸発器出口過熱度制御や、凝縮温度から液冷媒温度測定部27b3の測定値を引くことにより求められる過冷却度を、目標値に収束させるための過冷却度制御を実施してもよい。更に、吐出冷媒温度を目標値に収束させるための吐出冷媒温度制御や、吐出冷媒温度から凝縮温度を引くことにより求められる吐出冷媒過熱度を目標値に収束させるための吐出冷媒過熱度制御を行ってもよい。
次に、ステップST20の機器の運転制御の安定を判別する(ステップST21)。制御目標値である、圧縮機吸入過熱度と対象流体流出温度測定部262の測定値がそれぞれ目標に対して所定の範囲(例えば±2%など)に入っているか否かにより冷凍サイクルの安定度を判定する。この判定を実行する判定部は図8では省略している。判定の結果がYESであればST22へ、NOであれば補正せず終了する。なお、ここで終了した場合は再度流量較正処理へ戻っても良いし、そのまま図3に示す流量評価&異常判定処理へ移行してもよい。
次に、運転状態情報取得部6は、各測定部からの入力により流量算定のために必要な運転状態情報を取得するとともに流量計12から対象流体210の実流量Gwaを取得する(ステップST22)。なお、実流量Gwaについては、例えば記憶部10に予め所定の運転条件での標準流量値を記憶させておいて、それを実流量Gwaとして用いてもよいし、対象流体210の流路に流量計12を接続して流量を測定し、測定された流量を実流量Gwaとして用いてもよい。運転状態情報はステップST20で既に取得されているが、流量算定用として明示した。このステップST22は図3のフロー図のステップST1と同じ内容である。
流量演算部7は、運転状態情報取得部6が取得した運転状態情報に基づき対象流体210の流量Gwを算定する(ステップST23)。ステップST23は、図3のステップST2〜ST9の内容と同一である。
流量Gwが算定されたら、補正要否判定部14は、流量Gwの実流量Gwaからの乖離度を算定し、補正要否判定基準値よりも大きいかどうか判定する(ステップST24)。乖離度絶対値が補正要否判定基準値(例えば5%)よりも大きい場合(ステップST24;YES)、算定された流量Gwは補正の必要があると判断され、補正方式設定部15は、流量Gwが実流量wcaと所定の誤差範囲で等しくなるように補正方式を設定し、記憶部10に記憶する(ステップST25)。補正方式については既に説明したとおりである。一方、乖離度が補正要否判定基準値よりも大きくない場合(ステップST24;NO)、算定された流量Gwは補正の必要がないと判断され、流量較正処理を終了する。
流量較正処理終了後の流量評価&異常判定処理は図3に示すフロー図と同じであるが、一部のステップの内容を次のように変更する。流量Gwの直接補正処理を施す補正方式の場合は、流量再算定判定部75は、図3のステップST9で得られるGwに記憶部10に記憶されている補正方式、例えば一次式を読み出し、この一次式に流量Gwを代入して求めた値を新たにGwとする。また、運転状態情報に補正処理を施して間接的に流量Gwを補正するという補正方式の場合は、運転状態情報取得部6は、補正対象となる運転状態情報に対する補正方式、例えば一次式を記憶部10から読み出し、この一次式に図3のステップST1で得られる補正対象として設定されている運転状態情報を代入して求めた値を新たにその運転状態情報とする。
なお、較正処理により補正不要と判定されたときの補正方式を流量Gwに1を乗じる補正とするか、0を加減算する補正にすれば補正の有無に依らず流量評価処理を統一できる。
このようにして定めた補正方式により対象流体の流量Gwの補正を行うことで、各測定部のバラツキ等に起因して測定値に生じる誤差による流量Gwの誤差を除去あるいは低減することができる。そのため流量を高精度に評価することができる。また、流量異常判定に用いる流量Gwの評価精度を向上させることができるので、異常判定における誤判定を低減できる。
上記の説明では対象熱交換器21は凝縮器であるとしたが、蒸発器の場合であっても所定の運転条件での運転が実施できれば、補正に関する処理はそのまま実施でき、本実施形態2で説明した効果と同様の効果を奏することができる。
実施形態3.
実施形態3では対象熱交換器21(凝縮器21の場合を例示する)へのスケール付着や汚れ等、流量異常以外の異常の判定が可能な冷凍サイクル装置1について説明する。実施形態3に係る冷凍サイクル装置1の構成例を図10に示す。図1と異なる点は異常判定部8が、流量異常判定部80、異常時処理部81に加えて流路異常判定部82を備えていることである。その他については図1と同じであるから説明を省略する。流路とは対象熱交換器21の熱交換に係る流路を言う。すなわち対象熱交換器21における対象流体210の流路、及び対象熱交換器21における冷媒回路24を含む。
運転状態情報取得部6が取得する運転状態情報は、凝縮器21の飽和温度(凝縮温度)、冷媒流入温度、凝縮器21での対象流体210の流入温度、流出温度である。凝縮温度は、これまで説明したように圧縮機20の吐出冷媒圧力等から求めることができる。
流路異常判定部82は、凝縮器21での温度情報に基づき凝縮器21の流路の異常を判定する。温度情報については後述するが、運転状態情報取得部6で取得した運転状態情報を利用する。運転状態情報は、図10においては流量演算部7を介して流路異常判定部82に入力されるとしているが、運転状態情報取得部6から直接入力されてもよい。
異常時処理部81は、流量異常判定部80での流量異常判定結果に加えて流路異常判定部82での流路異常判定結果を入力して、両判定結果から異常時の処理を設定し、機器駆動制御部9及び報知部11の少なくとも一方に必要な指示を出力する。
流路異常判定について、図11に基づき説明する。図11は横軸を凝縮器21の位置、縦軸を温度とし、冷媒及び対象流体210の温度の凝縮器21の位置による依存性を示したものである。冷媒の温度については正常時と異常時の両方について例示している。図11の上方の図は凝縮器21とその中での冷媒の状態を示す模式図である。対象流体210と冷媒とが対向流の場合についての図である。横軸の位置aが凝縮器21への対象流体210の入口であり、冷媒の出口、横軸の位置bが凝縮器21への対象流体210の出口であり、冷媒の入口である。冷媒は気相状態で位置dから凝縮器21に入り、位置cまでは気相状態、位置cから位置bまでは気相、液相の二相混合状態、位置bからは液相状態で位置aで凝縮器21から出て行く。対象流体210は位置aから凝縮器21に入り、位置dから出て行く。
冷媒温度は、位置dでTci、位置cから位置bまで凝縮温度CT、位置aでTco、である。対象流体温度は、凝縮器21の入口(位置a)でTwci、出口(位置d)でTwcoで、入口から出口まで単調に温度が増加する。
図11で正常時とは凝縮器21や対象流体210の送出手段であるポンプ4に異常がなく所望の流量を出力している状態、異常時とは凝縮器21のスケール付着や汚れ、破損、若しくはポンプ4の故障により凝縮器21が熱交換器としての機能を低下させている状態である。この時、凝縮器21での熱交換量Qc[kW]は次式で表される。
Kt:温度差基準の熱通過率[kW/(m
2・K)]
ΔT:凝縮器冷媒温度(凝縮温度)と対象流体温度の差[℃]
凝縮器21が正常時に対してスケール付着や汚れがあった場合、経年劣化で破損した場合、対象流体送出部であるポンプ4が故障した場合には伝熱面積Aもしくは熱通過率Ktが低下するため、同一の負荷を処理するためにはΔTが大きくなる。従って、図11に示すように凝縮器21の入口冷媒温度Tci、凝縮温度CTが上昇する。その結果、凝縮器21における対象流体210の流入温度Twci及び流出温度Twcoの平均値と、凝縮温度CTとの温度差が正常時の温度差よりも増加する。凝縮器21の温度は二相域が支配的であるため、凝縮温度CTと対象流体210の出入口平均温度(Twci+Twco)/2との温度差をdTcとして、dTcを(12)式におけるΔTとすることにより、凝縮温度CT、凝縮器入口冷媒温度Tci、dTcの少なくとも1つを凝縮器21の汚れやポンプ4等の対象流体送出部の故障の指標として選択することができる。
例えば、正常時のΔTを初期運転時に記憶部10に記憶しておき、異常状態をA×Ktの値が正常時の50%に低下した状態として、異常時の判定基準(流路異常判定基準値)を正常時のΔTの2倍として設定しておけば、凝縮器21のスケール付着、汚れ、破損、ポンプ4等の対象流体送出部の故障による異常を判定することができる。
なお、ここでは凝縮温度CT、凝縮器入口冷媒温度Tci、ΔTを凝縮器21の性能低下の指標として説明したが、指標はこれに限定されるものではなく、凝縮器21の過冷却度SCや過冷却度SCをΔTで除した液相部の冷媒の温度効率のような指標を指標として流路異常検知に使用しても良い。過冷却度SCは図11に示すように凝縮器21の凝縮温度CTから凝縮器出口冷媒温度Tcoを差し引いた値である。この場合は運転状態情報取得部6は凝縮器出口冷媒温度を取得する。
流路異常判定によれば、流量異常も含めて、対象熱交換器21の配管にスケール付着や汚れがあった場合や経年劣化で破損した場合、ポンプ4等の異常による流量低下等、対象流体210の流路(対象熱交換器21を含む)の異常全般の有無を判定することができる。
流路異常判定と流量異常判定とを併用すれば、流路異常判定で異常と判定された場合に、流量異常判定結果を参照することにより、その異常が流量異常に依るものなのかそれ以外の要因によるものなのかを判別することが可能となる。異常要因を特定できることで異常時処理部81で指示する機器駆動制御部9による機器制御を装置保護等の観点からより適切なものとすることができる。
なお、上記各実施形態での説明では、対象熱交換器21が凝縮器21であり、非対象熱交換器22が蒸発器22であるとして説明したが、それぞれの熱交換器の役割を逆にしてもよい。対象熱交換器21が蒸発器21で、非対象熱交換器22が凝縮器22の場合は、図1の冷媒回路24を流れる冷媒の方向は破線矢印に示される方向になる。この場合、蒸発器21における対象流体流入温度測定部261と対象流体流出温度測定部262のそれぞれのセンサの設置位置を、図12に示されるように、互いに入れ替えることになる。そして、圧縮機20の吐出側と吸入側を逆にして冷媒回路24に接続するか、又は例えば冷媒回路24に四方弁を付加し、弁の切り替え制御により冷媒の流れる方向を破線矢印に示される向きにする必要がある。また、対象流体210の流量仮定値Gwkは、下記(13)式を用いて求める。そして、対象流体21の推算流量Gwsは、下記(14)を用いて求める。
Twi:蒸発器21への対象流体流入温度[℃]
Two:蒸発器21からの対象流体流出温度[℃]
ρw:蒸発器21での対象流体密度[kg/m
3]
Cpw:蒸発器21での対象流体定圧比熱[kJ/kg・K]
ΔHeva:蒸発器21出入口での冷媒のエンタルピ差[kJ/kg]
ET:蒸発器21での蒸発温度[℃]
A :蒸発器21の熱交換に係る伝熱面積[m
2]
次に、熱交換器21を蒸発器21として利用する場合の異常判定手順について、図13を参照しつつ説明する。図13に示される座標系の横軸は、蒸発器21での位置を示し、縦軸は、蒸発器21及び対象流体210の温度を示している。また、図13における破線は、流路に異常が無く正常に熱交換が行われている正常状態時の、蒸発器21における位置と温度との関係を示しており、実線は、流路に異常がある異常状態時の、蒸発器21における位置と温度との関係を示している。
なお、正常状態とは、蒸発器21やポンプ4等に異常がなく、所望の流量の対象流体210が循環している状態である。また、異常状態とは、蒸発器21に汚れの付着や破損が生じ、或いはポンプ4の出力が何らかの要因で低下し、循環する対象流体210の流量が低下した状態である。
また、位置aは、蒸発器21における対象流体210の入口の位置を示し、位置bは、蒸発器21における対象流体210の出口の位置を示している。冷媒は液相状態で位置dから凝縮器21に入り、位置cまでは液相状態、位置cから位置bまでは液相、気相の二相混合状態、位置bから位置aまでは気相状態となる。一方、対象流体210は位置aから凝縮器21に入り、位置dから流出する。
冷媒と対象流体との間で交換される熱量Qe(熱交換量)は、下記(15)式で示される。
Kh:エンタルピ基準の熱通過率[kW/(m
2・KJ/kg)]
ΔH:蒸発器の冷媒温度(蒸発温度)と対象流体温度のエンタルピ差[kJ/kg]
蒸発器21の状態が異常状態である場合には、上記(15)式に示される伝熱面積Aもしくは熱通過率Khが低下する。このため、冷媒と対象流体との間での熱交換量Qeが一定であるとすると、ΔHが大きくなければならない。したがって、図13を参照するとわかるように、異常状態では、蒸発温度TEが次第に低下していき、対象流体210の入口での温度Twiと出口での温度Twoとの平均温度(Twi+Two)/2との温度差dTeが増加する。
そこで、冷凍サイクル装置1では、蒸発温度ETと、当該蒸発温度ETと対象流体の平均温度との温度差dTeとを指標として、流量の異常を検知する。具体的には、冷凍サイクル装置1の立ち上げ時等に、正常時のdTeの値dTe1を記憶しておく。そして、異常状態が、伝熱面積Aと熱通過率Khの積(=A×Kh)が、正常状態のときの値の50%以下になったときと定義して、温度差dTeについての閾値を、正常時のdTeの値dTe1の2倍に設定する。冷凍サイクル装置1では、温度差dTeと、閾値(=2・dTe1)とを比較して、温度差dTeが、閾値以上となった場合に、装置に異常が発生したと判断する。
図14は図1、図2、図4〜6、図7、図8、図10に示す冷凍サイクル装置1の制御に関連するハードウェア構成例を示すブロック図である。冷凍サイクル装置1は、制御部100、主記憶部110、外部記憶部120、入出力部130、及び入出力部130を備える。操作部140、表示部150を備えてもよい。主記憶部110、外部記憶部120、入出力部130、操作部140、表示部150、はいずれも内部バス160を介して制御部100に接続されている。
制御部100はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部120に記憶されている制御プログラム200に従って、本装置の処理を実行するとともに実施形態1〜3に記載した記憶対象となるデータを記憶する。
主記憶部110はRAM(Random−Access Memory)等から構成され、外部記憶部120に記憶されている制御プログラム200をロードし、制御部100の作業領域として用いられる。制御プログラム200を破線で表示しているのは、制御プログラム200は冷凍サイクル装置1の動作時にだけ外部記憶部120から主記憶部110に読み出されるためである。
外部記憶部120は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random−Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成される。外部記憶部120は、これまでの実施の形態で説明した各種処理を制御部100に行わせるためのプログラムを記憶する。また、このプログラムを実行する制御部100の指示に従って、外部記憶部120に記憶されているデータを制御部100に供給し、制御部100から供給されたデータを記憶する。図1、図2、図4〜6、図7、図8、図10の記憶部10は、外部記憶部120により構成される。
操作部140はキーボードおよびマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボードおよびポインティングデバイス等を内部バス160に接続するインタフェース装置から構成されている。図1、図2、図4〜6、図7、図8、図10では明示していないが、ユーザーからの入力はこの操作部140を介して実行される。
表示部150は、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)などから構成される。図1、図2、図4〜6、図7、図10の報知部11はこの表示部150である。表示部150に変えて、又は表示部150と共にスピーカーや無線通信部を備えてもよい。
図1、図2、図4〜6、図7、図8、図10に示す冷凍サイクル装置1の演算処理部5は制御部100と主記憶部110で構成され、記憶部10は外部記憶部120で構成される。なお、入出力部130は図1、図2、図4〜6、図7、図8、図10では明示していないが、各センサ25〜27からの信号の入力、報知部11への出力、機器駆動制御部9から圧縮機20、減圧器23、ポンプ4への制御用信号の出力は入出力部130を介して行われる。
このような構成により、図3及び図9に示すフロー図に記載された処理手順を上記制御プログラム200に実行させることができる。そして、その実行により図1、図2、図4〜6、図7、図8、図10に示す各構成要素はその機能を果たすことができ、その結果実施形態1〜3に係る発明の内容を実現することができる。
なお、制御プログラム200は、必ずしも外部記憶部120に記憶される必要はなく、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に制御プログラム200を記憶し、制御部100が記録媒体の読み取り装置を介して記録媒体に記録された制御プログラム200を読み込み、これを実行してもよい。