(本開示の概要)
本開示の一態様に係る散乱体測定方法は、散乱体が存在する第1空間を通過する第1照射光を照射することと、前記第1照射光が前記散乱体で散乱されることにより生じる第1散乱光を受光することと、前記散乱体が前記第1空間から、前記第1空間とは少なくとも一部が異なる第2空間に移動した後に、前記第2空間を通過する第2照射光を照射することと、前記第2照射光が前記散乱体で散乱されることにより生じる第2散乱光を受光することと、前記第1散乱光を受光した第1時刻と前記第2散乱光を受光した第2時刻との差、及び、前記第1時刻から前記第2時刻までに前記散乱体が移動した距離に基づいて、前記散乱体の速度を算出することとを含む。
これにより、照射光を照射した方向と散乱光が戻ってくるまでの時間とに基づいて、散乱体の位置及び速度を精度良く算出することができる。また、算出した速度を用いて散乱体の種別の判定又は散乱体の拡散範囲の推定なども行うことができる。このように、散乱体の位置を精度良く検出することができ、かつ、散乱体の種別の判定を支援することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第1空間及び前記第2空間はそれぞれ、前記散乱体測定方法による測定の対象となる対象空間を仮想的に分割することにより得られた、各々が所定形状の複数の単位空間の1つであってもよい。
これにより、第1空間及び第2空間の大きさを同じにすることができるので、第1空間及び第2空間の各々から戻ってくる第1散乱光及び第2散乱光の強度の比較が容易になる。このため、第2空間に存在する散乱体が、第1空間から移動してきた散乱体であることを精度良く判定することができるので、散乱体の速度の算出精度を高めることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第2空間は、前記複数の単位空間のうちの、前記第1空間に隣接する単位空間であってもよい。
これにより、隣接する2つの単位空間を利用して散乱体の移動を検出するので、散乱体が広く拡散する前に散乱体の速度を精度良く算出することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第1空間は、人の頭の少なくとも一部が存在する空間、又は、人の頭の少なくとも一部に最も近い空間であってもよい。
これにより、人の口から呼出された直後の飛沫を検出することができるので、算出される速度が飛沫の速度と同等になる。したがって、速度と閾値との比較による飛沫の判定精度を高めることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法は、さらに、前記第1照射光を照射する前に、前記頭の少なくとも一部が存在する空間、又は、前記頭の少なくとも一部に最も近い空間を前記第1空間として特定することを含んでもよい。
これにより、第1照射光を照射する前に、人の頭の位置を特定することができるので、人の口から呼出される飛沫を速やかに検出することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法は、さらに、前記速度と閾値とを比較し、前記速度が前記閾値以上である場合に、前記散乱体が人の口から呼出される飛沫であると判定することを含んでもよい。
これにより、散乱体が飛沫であるか否かが判定されるので、飛沫の飛散方向及び飛散範囲を精度良く検出することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記閾値は、5m/sであってもよい。
人の口から呼出される飛沫の初速度は約8m/s以上である。また、飛沫以外のエアロゾル粒子は、通常、飛沫よりも十分に低い速度で空中を浮遊している。したがって、閾値が5m/sであることで、散乱体が飛沫であるか否かを精度良く判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第1照射光及び前記第2照射光はそれぞれ、等しい周波数間隔の光であり、前記第1散乱光を受光することでは、光路差を変更可能な干渉部を通過した後の前記第1散乱光を受光し、前記第2散乱光を受光することでは、前記干渉部を通過した後の前記第2散乱光を受光し、前記算出することでは、前記光路差を掃引させて得られる前記第1散乱光及び前記第2散乱光の各々の第1の干渉フリンジに対応する信号成分を抽出し、前記信号成分に基づいて前記速度を算出してもよい。
散乱光には、エアロゾル粒子からのミー散乱光だけでなく、空気を構成する分子によるレイリー散乱光がノイズ成分として含まれる。これに対して、本態様によれば、レイリー散乱光を信号処理によって除去することができるので、エアロゾル粒子の検出精度を高めることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記干渉部が掃引する前記光路差は、前記第1照射光及び前記第2照射光の各々の中心波長の1/4より長く、かつ、前記第1散乱光及び前記第2散乱光の各々の干渉フリンジの間隔の1/2より短くてもよい。
これにより、レイリー散乱光を信号処理によって精度良く除去することができるので、エアロゾル粒子の検出精度を更に高めることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第1照射光及び前記第2照射光からなる群から選択される少なくとも一方は、偏光された光であり、前記速度は、前記散乱体の落下速度であり、さらに、前記第1散乱光及び前記第2散乱光からなる群から選択される少なくとも一方であって、前記偏光された光に対応する散乱光の偏光解消度を計測することを含んでもよい。
これにより、偏光解消度及び落下速度を用いることで、検出された散乱体の種別を判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法は、さらに、前記偏光解消度に基づいて、前記散乱体が非球形粒子であるか否かの第1の判定を行うことと、前記散乱体が非球形粒子ではないと判定された場合に、前記落下速度に基づいて、前記散乱体がPM2.5であるか否かの第2の判定を行うこととを含んでもよい。
これにより、偏光解消度及び落下速度を用いることで、検出された散乱体がハウスダストなどの非球形粒子及びPM2.5のいずれであるかを判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第1の判定では、前記偏光解消度が10%以上である場合に、前記散乱体が非球形粒子であると判定し、前記偏光解消度が10%未満である場合に、前記散乱体が非球形粒子ではないと判定してもよい。
これにより、ハウスダストなどの非球形粒子をより精度良く判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第2の判定では、前記落下速度が0.001m/s未満である場合に、前記散乱体がPM2.5であると判定してもよい。
これにより、呼吸器に影響を与える恐れがあるPM2.5を、より精度良く判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第1照射光及び前記第2照射光はそれぞれ、飛沫の蛍光波長成分を含まない光であり、前記第2の判定では、(a)前記落下速度が0.001m/s以上であり、かつ、前記散乱光に含まれる400nm以上1000nm以下の波長成分の受光強度が閾値より大きい場合、前記散乱体が花粉であると判定し、(b)前記落下速度が0.001m/s以上であり、かつ、前記散乱光に含まれる400nm以上1000nm以下の前記波長成分の受光強度が前記閾値以下である場合、前記散乱体が飛沫であると判定してもよい。
これにより、アレルギー症状を引き起こす恐れがある花粉と、病気の感染リスクがある飛沫とを、より精度良く判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第2の判定では、前記落下速度が0.1m/s以上である場合に、前記散乱体が飛沫であると判定してもよい。
これにより、飛沫を精度良く判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第2の判定では、前記落下速度が0.001m/s以上0.1m/s未満である場合に、前記散乱体が花粉であると判定してもよい。
これにより、花粉を精度良く判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定方法では、前記第2空間は、前記第1空間の鉛直下方に位置してもよい。
これにより、落下した散乱体からの散乱光が受光されやすくなるので、落下速度を容易、かつ、精度良く算出することができる。落下速度の算出精度が高まることで、散乱体の種別の判別精度も高めることができる。
また、本開示の一態様に係るプログラムは、上記散乱体測定方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
これにより、散乱体の位置を精度良く検出することができ、かつ、散乱体の種別の判定を支援することができる。
また、本開示の一態様に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、散乱体を測定するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記プログラムが前記コンピュータによって実行されるときに、前記散乱体が存在する第1空間を通過する第1照射光を照射することと、前記第1照射光が前記散乱体で散乱されることにより生じる第1散乱光を受光することと、前記散乱体が前記第1空間から、前記第1空間とは少なくとも一部が異なる第2空間に移動した後に、前記第2空間を通過する第2照射光を照射することと、前記第2照射光が前記散乱体で散乱されることにより生じる第2散乱光を受光することと、前記第1散乱光を受光した第1時刻と前記第2散乱光を受光した第2時刻との差、及び、前記第1時刻から前記第2時刻までに前記散乱体が移動した距離に基づいて、前記散乱体の速度を算出することと、が実行される。
また、本開示の一態様に係る散乱体測定装置は、散乱体が存在する第1空間を通過する第1照射光を照射する光源と、前記第1照射光が前記散乱体で散乱されることにより生じる第1散乱光を受光する受光素子と、信号処理回路と、を備え、前記光源は、さらに、前記散乱体が前記第1空間から、前記第1空間とは少なくとも一部が異なる第2空間に移動した後に、前記第2空間を通過する第2照射光を照射し、前記受光素子は、さらに、前記第2照射光が前記散乱体で散乱されることにより生じる第2散乱光を受光し、前記信号処理回路は、前記第1散乱光を受光した第1時刻と前記第2散乱光を受光した第2時刻との差、及び、前記第1時刻から前記第2時刻までに前記散乱体が移動した距離に基づいて、前記散乱体の速度を算出する。
これにより、散乱体の位置を精度良く検出することができ、かつ、散乱体の種別の判定を支援することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定装置では、さらに、前記光源から照射された第1照射光及び第2照射光からなる群から選択される少なくとも一方を偏光する第1偏光フィルタと、前記第1散乱光及び前記第2散乱光からなる群から選択される少なくとも一方であって、前記第1偏光フィルタによって偏光された光に対応する散乱光を第3散乱光と第4散乱光とに分岐させるビームスプリッタと、前記第3散乱光の光路上に配置され、前記偏光された光の偏光面に平行な偏光成分を透過させる第2偏光フィルタと、前記第4散乱光の光路上に配置され、前記偏光された光の偏光面に垂直な偏光成分を透過させる第3偏光フィルタとを備え、前記受光素子は、前記第2偏光フィルタを通過した後の前記第3散乱光を受光する第1受光素子と、前記第3偏光フィルタを通過した後の前記第4散乱光を受光する第2受光素子とを含み、前記速度は、前記散乱体の落下速度であり、前記信号処理回路は、さらに、前記第1受光素子による前記第3散乱光の受光強度と前記第2受光素子による前記第4散乱光の受光強度とに基づいて、偏光解消度を取得し、前記偏光解消度に基づいて、前記散乱体が非球形粒子であるか否かを判定し、前記散乱体が非球形粒子ではないと判定された場合に、前記落下速度に基づいて、前記散乱体がPM2.5であるか否かを判定してもよい。
これにより、2つの偏光フィルタと2つの受光素子とを用いて、偏光解消度を容易に算出することができる。また、偏光解消度及び落下速度を用いることで、検出された散乱体の種別を判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係る散乱体測定装置の一例であるエアロゾル分析装置は、エアロゾル粒子に向けて照射光を照射する光源と、前記エアロゾル粒子が前記照射光を散乱させることで発生する散乱光を受光し、受光強度に応じた信号を出力する受光部と、前記受光部から出力される信号を処理する信号処理回路とを備え、前記信号処理回路は、前記信号に基づいて前記エアロゾル粒子の速度を算出する。
これにより、照射光をエアロゾル粒子に照射し、エアロゾル粒子による散乱光を受光するので、照射光の照射方向と散乱光を受光するまでの時間とに基づいたTOF(Time Of Flight)方式により、エアロゾル粒子の位置を精度良く検出することができる。また、エアロゾル粒子の速度を算出するので、算出した速度を用いてエアロゾル粒子の種別の判定又は拡散範囲の推定なども行うことができる。このように、本態様に係るエアロゾル分析装置によれば、エアロゾル粒子の位置を精度良く検出することができ、かつ、エアロゾル粒子の種別の判定を支援することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル分析装置では、前記受光部は、前記複数の単位空間の1つである第1空間に前記照射光が照射された場合に発生する第1光と、前記複数の単位空間の1つであり、前記第1空間とは異なる第2空間に前記照射光が照射された場合に発生する前記散乱光である第2光とを受光し、前記第1光の受光強度に応じた第1信号及び前記第2光の受光強度に応じた第2信号を出力し、前記信号処理回路は、前記第1信号と前記第2信号とに基づいて、前記第1光と前記第2光との受光時刻の差、及び、前記第1空間と前記第2空間との距離を決定し、決定した受光時刻の差及び距離に基づいて前記速度を算出してもよい。
これにより、少なくとも2回の照射光の照射によってエアロゾル粒子の速度を速やかに算出することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル分析装置では、前記制御部は、前記対象空間に人が存在するか否かを判定し、人が存在すると判定された場合に当該人の頭の一部を含む単位空間、又は、人の頭の一部に最も近い単位空間と、当該単位空間に隣接する1つ以上の単位空間とに向けて前記照射光を照射させてもよい。
これにより、人の口から呼出された直後の飛沫を検出することができるので、算出される速度が飛沫の初速度と同等になる。したがって、速度と閾値との比較による飛沫の判定精度を高めることができる。
また、本開示の一態様に係る散乱体測定方法の一例であるエアロゾル分析方法は、エアロゾル粒子に向けて照射光を照射し、前記エアロゾル粒子が前記照射光を散乱させることで発生する散乱光を受光し、受光強度に応じた信号に基づいて前記エアロゾル粒子の速度を算出する。
これにより、エアロゾル粒子の位置を精度良く検出することができ、かつ、エアロゾル粒子の種別の判定を支援することができる。
ところで、一般的には、室内には、人の健康に影響を及ぼす恐れのあるエアロゾルが存在している。例えば、エアロゾルには、ウイルス若しくは細菌を含む飛沫、又は、ハウスダスト、花粉、PM2.5などが含まれる。エアロゾルを接触又は呼吸によって人体に取り込んだ場合、感染症、アレルギー性鼻炎又は気管支喘息などを発症するリスクがある。
従来、花粉センサ又はPM2.5センサが内蔵された空気清浄機が知られている。空気清浄機は、吸引した空気中に花粉又はPM2.5が検出された場合に、アラートを表示する機能、又は、運転モードを変更する機能を有する。
しかしながら、空気清浄機は、設置された場所で空気を吸引して測定するため、室内にどのように何のエアロゾルが分布するのかを把握することができない。これに対して、例えば、特許文献3及び4に開示されているように、エアロゾルを可視化して表示する端末装置が知られている。
しかしながら、特許文献3及び4に記載された技術では、エアロゾル粒子の位置及び種別を精度良く判別することができないという問題がある。
これに対して、本開示の一態様に係る散乱体測定方法の一例であるエアロゾル分析方法は、偏光された照射光をエアロゾル粒子に照射し、前記エアロゾル粒子が前記照射光を散乱させることで発生する散乱光を受光し、受光した散乱光の偏光解消度に基づいて、前記エアロゾル粒子が非球形粒子であるか否かの第1の判定を行い、前記エアロゾル粒子が非球形粒子ではないと判定された場合に、前記エアロゾル粒子の落下速度に基づいて、前記エアロゾル粒子がPM2.5であるか否かの第2の判定を行う。
これにより、照射光をエアロゾル粒子に照射し、エアロゾル粒子による散乱光を受光するので、照射光の照射方向と散乱光を受光するまでの時間とに基づいたTOF方式により、エアロゾル粒子の位置を算出することができる。また、偏光解消度及び落下速度を用いることで、検出されたエアロゾル粒子がハウスダストなどの非球形粒子及びPM2.5のいずれであるかを判別することができる。このように、本態様に係るエアロゾル分析方法によれば、エアロゾル粒子の位置及び種別を精度良く判別することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル分析方法において、前記照射では、前記照射光を前記エアロゾル粒子に2回照射し、前記受光では、前記散乱光を2回受光し、前記第2の判定では、1回目の前記照射光を散乱させた時点での前記エアロゾル粒子の第1位置と、2回目の前記照射光を散乱させた時点での前記エアロゾル粒子の第2位置との鉛直方向における距離、及び、2回の前記散乱光の受光の時間間隔に基づいて前記落下速度を算出してもよい。
これにより、演算によって簡単に落下速度を算出することができる。また、落下速度を得るための専用の構成を必要としないので、エアロゾル分析装置の構成を簡素化することができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル分析方法において、前記照射では、1回目の前記照射光を第1空間に向けて照射した後、前記照射光に基づく前記散乱光が受光された場合に、前記第1空間の鉛直下方に位置する第2空間に向けて2回目の前記照射光を照射してもよい。
これにより、落下したエアロゾル粒子からの散乱光が受光されやすくなるので、落下速度を容易、かつ、精度良く算出することができる。落下速度の算出精度が高まることで、エアロゾル粒子の種別の判別の精度も高めることができる。
また、本開示の一態様に係るエアロゾル分析装置は、照射光をエアロゾル粒子に照射する光源と、前記光源から照射された照射光を偏光する第1偏光フィルタと、前記第1偏光フィルタを通過した照射光を前記エアロゾル粒子が散乱させることで発生する散乱光を第1散乱光と第2散乱光とに分岐させるビームスプリッタと、前記第1散乱光の光路上に配置され、前記照射光の偏光面に平行な偏光成分を透過させる第2偏光フィルタと、前記第2偏光フィルタを通過した後の前記第1散乱光を受光する第1受光素子と、前記第2散乱光の光路上に配置され、前記照射光の偏光面に垂直な偏光成分を透過させる第3偏光フィルタと、前記第3偏光フィルタを通過した後の前記第2散乱光を受光する第2受光素子と、前記第1受光素子による受光強度と前記第2受光素子による受光強度とに基づいて、偏光解消度を取得する信号処理回路とを備え、前記信号処理回路は、さらに、前記偏光解消度に基づいて、前記エアロゾル粒子が非球形粒子であるか否かを判定し、前記エアロゾル粒子が非球形粒子ではないと判定された場合に、前記エアロゾル粒子の落下速度に基づいて、前記エアロゾル粒子がPM2.5であるか否かを判定する。
これにより、照射光の照射方向と散乱光を受光するまでの時間とに基づいたTOF方式により、エアロゾル粒子の位置を算出することができる。また、偏光解消度及び落下速度を用いることで、検出されたエアロゾル粒子がハウスダストなどの非球形粒子及びPM2.5のいずれであるかを判別することができる。このとき、互いに直交する偏光成分を透過させる2つの偏光フィルタと2つの受光素子とを用いて、偏光解消度を容易に算出することができる。このように、本態様に係るエアロゾル分析装置によれば、エアロゾル粒子の位置及び種別を精度良く判別することができる。
本開示において、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部、又はブロック図の機能ブロックの全部又は一部は、半導体装置、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路によって実行されてもよい。LSI又はICは、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、一つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、若しくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
さらに、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部の機能又は操作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは一つ又は複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システム又は装置は、ソフトウェアが記録されている一つ又は複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、及び必要とされるハードウェアデバイス、例えばインターフェース、を備えていても良い。
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、本明細書において、平行又は垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、立方体などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態1)
[1.概要]
まず、実施の形態1に係る散乱体測定装置の概要について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る散乱体測定装置の構成を示す図である。
本実施の形態に係る散乱体測定装置1は、照射光L1を照射し、空間内に存在するエアロゾル粒子90が照射光L1を散乱させることで発生する散乱光L2を取得し、取得した散乱光L2を処理することで、エアロゾル粒子90の有無、位置、種別及び濃度などを判別する。なお、エアロゾル粒子90は、照射光L1を散乱させる散乱体の一例である。また、エアロゾル粒子90が存在する空間は、照射光L1が照射される照射空間であり、散乱体測定装置1による測定の対象となる対象空間の一部である。
具体的には、散乱体測定装置1は、エアロゾル粒子90が存在する第1空間に照射光L1を第1照射光として照射し、所定期間経過後に、エアロゾル粒子90が存在する第2空間に照射光L1を第2照射光として照射する。第1照射光に対応する散乱光L2を第1散乱光として受光した第1時刻と、第2照射光に対応する散乱光L2を第2散乱光として受光した第2時刻との差、及び、第1時刻から第2時刻までにエアロゾル粒子90が移動した距離に基づいて、エアロゾル粒子90の移動速度を算出する。散乱体測定装置1は、例えば、算出した移動速度に基づいてエアロゾル粒子90が飛沫であるか否かを判別する。
図1に示されるように、散乱体測定装置1は、光源10と、ミラー20と、受光部30と、信号処理回路40と、制御部50とを備える。
光源10は、エアロゾル粒子90が存在する空間を通過する照射光L1を照射する。照射光L1は、例えばパルス光であるが、連続光であってもよい。照射光L1は、特定の波長帯域にピークを有する単色光であってもよく、ブロードな波長帯域を含む光であってもよい。照射光L1は、例えば、紫外光、青色光、白色光又は赤外光などである。
光源10は、例えば、レーザ光を照射光L1として出射する半導体レーザ素子である。あるいは、光源10は、LED(Light Emitting Diode)であってもよく、ハロゲンランプなどの放電ランプであってもよい。
照射光L1は、エアロゾル粒子90によって散乱され、その一部である散乱光L2が散乱体測定装置1に戻ってくる。散乱光L2は、エアロゾル粒子90が照射光L1を散乱させることで発生する後方散乱光である。散乱光L2は、エアロゾル粒子90によるミー散乱に基づく光である。
ミラー20は、散乱光L2を反射する。散乱光L2に対してミラー20を適切な角度で配置することにより、散乱光L2の進路を所望の方向に曲げることができる。
受光部30は、散乱光L2を受光し、受光強度に応じた信号を出力する。受光強度は、散乱光L2の強度であり、例えば、受光部30が出力する信号の信号レベルで表される。
受光部30は、光電変換を行う素子であり、例えば、PMT(Photomultiplier Tube)である。あるいは、受光部30は、PMTとフォトンカウンタとを有してもよい。また、受光部30は、アバランシェフォトダイオード(APD)であってもよい。
信号処理回路40は、受光部30から出力される信号に基づいてエアロゾル粒子90の速度を算出する。本実施の形態では、信号処理回路40は、さらに、算出した速度と閾値とを比較する。信号処理回路40は、算出した速度が閾値以上である場合に、エアロゾル粒子90が人の口から呼出される飛沫であると判定する。信号処理回路40は、算出した速度が閾値未満である場合に、エアロゾル粒子90が飛沫ではないと判定する。例えば、信号処理回路40は、算出した速度が閾値未満である場合に、エアロゾル粒子90が花粉又はPM2.5であると判定してもよい。
飛沫は、エアロゾル粒子の一種である。飛沫は、人の口から呼出される。飛沫は、人の咳、くしゃみ又は発話によって動的に発生する微小液滴である。飛沫には、ウイルス又は細菌などが含まれている場合がある。飛沫は、人の動作によって発生するので、発生した時点で大きい初速度を有する。
一般的には、エアロゾル粒子には、飛沫だけでなく、塵埃などのハウスダスト、黄砂、大気汚染エアロゾル、PM2.5などの浮遊粒子状物質、花粉などの生物系粒子などが含まれる。飛沫以外のエアロゾル粒子は、通常、飛沫よりも十分に低い速度で空中を浮遊している。
飛沫の判定に用いる閾値は、人がくしゃみ又は咳を行った場合に人の口から呼出される飛沫の初速度よりも低い値である。一般的な人のくしゃみ又は咳による飛沫の初速度は、水平方向に約8m/sである。口から離れる程、飛沫の水平方向における速度は低下する。本実施の形態では、口の直近でエアロゾル粒子90を検出できないことも考慮に入れて、閾値は、例えば、5m/sである。
なお、閾値は、5m/sより小さくてもよい。この場合に、閾値は、例えば、飛沫以外のエアロゾル粒子の水平方向における移動速度よりも大きい値である。室内が無風状態である場合、飛沫以外のエアロゾル粒子は、主に人の移動などに基づいて発生する空気の流れによって移動する。人の歩行速度は、一般的に2m/sより遅い。このため、例えば、閾値は、2m/s以上であってもよい。
また、エアロゾル粒子90が存在する空間内に、空調機器などによって気流が生成されている場合、閾値は、気流速度より大きく、飛沫の初速度よりも低い値であってもよい。
また、信号処理回路40は、照射光L1が照射されてから散乱光L2を受光するまでに要する時間に基づいて、TOF方式によってエアロゾル粒子90までの距離を算出する。さらに、信号処理回路40は、算出した距離と照射光L1を照射した方向とに基づいてエアロゾル粒子90の位置を特定する。照射光L1の照射方向が変更されながらエアロゾル粒子90の位置の特定を繰り返すことで、信号処理回路40は、対象空間内のエアロゾル粒子90の分布を作成する。
信号処理回路40は、複数の回路部品を含む1つ又は複数の電子回路で構成されている。1つ又は複数の電子回路はそれぞれ、汎用的な回路でもよく、専用の回路でもよい。つまり、信号処理回路40が実行する機能は、電子回路などのハードウェアで実現される。あるいは、信号処理回路40は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで実現されてもよい。信号処理回路40が実行する機能は、プロセッサで実行されるソフトウェアで実現されてもよい。
制御部50は、光源10を制御する。具体的には、制御部50は、照射光L1の照射方向を変更する。照射光L1の照射方向は、例えば、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラー(図示せず)などによって変更される。本実施の形態では、エアロゾル粒子90が存在する対象空間は、各々が所定形状を有する複数の単位空間に仮想的に分割される。単位空間の所定形状の大きさは、照射光L1が単位時間に進む距離及び光源10の走査距離、あるいは、照射光L1が単位時間に進む距離及び受光部30の受光可能な範囲などで規定することができる。したがって、単位時間によって、単位空間の大きさを変更することが可能となる。制御部50は、光源10を制御することで、複数の単位空間の各々に向けて照射光L1を照射させる。具体的な動作については、後で説明する。
制御部50は、複数の回路部品を含む1つ又は複数の電子回路で構成されている。1つ又は複数の電子回路はそれぞれ、汎用的な回路でもよく、専用の回路でもよい。つまり、制御部50が実行する機能は、電子回路などのハードウェアで実現される。あるいは、制御部50は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで実現されてもよい。制御部50が実行する機能は、プロセッサで実行されるソフトウェアで実現されてもよい。制御部50と信号処理回路40とは、メモリなどのハードウェア資源を共用してもよい。
散乱体測定装置1が備える各構成要素は、例えば、図示しない筐体の内部に収容されている。筐体は、散乱体測定装置1の外郭筐体であり、遮光性を有する。筐体には、照射光L1及び散乱光L2を通過させるための開口が設けられている。開口は、照射光L1と散乱光L2との各々に対応させて1つずつ設けられていてもよい。
また、散乱体測定装置1は、散乱光L2を集光する集光部を備えてもよい。例えば、散乱光L2が通過する開口には、集光部の一例である集光レンズが設けられていてもよい。集光レンズは、筐体の内部に設けられていてもよい。例えば、集光レンズは、散乱光L2が通過する開口とミラー20との間に設けられていてもよく、ミラー20と受光部30との間に設けられていてもよい。なお、集光レンズの代わりに集光ミラーが設けられていてもよい。
[2.エアロゾル粒子の検出]
次に、散乱体測定装置1によるエアロゾル粒子90の検出方法について説明する。まず、図2を用いて、エアロゾル粒子90の位置を検出する方法について説明する。図2は、本実施の形態に係る散乱体測定装置1によるエアロゾル粒子90の検出の様子を模式的に示す図である。
図2に示されるように、散乱体測定装置1は、照射光L1を対象空間の所定方向に向けて照射する。具体的には、散乱体測定装置1は、対象空間の一部である第1空間を通過する照射光L1を照射する。照射光L1が照射された方向に、具体的には、第1空間内にエアロゾル粒子90が存在する場合、エアロゾル粒子90によって照射光L1が散乱されて散乱光L2が発生する。散乱体測定装置1は、散乱光L2を取得し、取得した散乱光L2に基づいてエアロゾル粒子90の位置を特定する。
ここで、対象空間について、図3Aを用いて説明する。図3Aは、対象空間の一例を示す図である。対象空間100は、図3Aに示すように、散乱体測定装置1による測定の対象となる空間である。なお、図3Aには、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を示している。
対象空間100は、例えば、住居、オフィス、介護施設又は病院などの建物の一部屋である。対象空間100は、例えば、壁、窓、ドア、床及び天井などで仕切られた空間であり、閉じられた空間であるが、これに限らない。例えば、対象空間100は、屋外の開放された空間であってもよい。また、対象空間100は、バス又は飛行機などの移動体の内部空間であってもよい。
通常、散乱体が移動する状況を考慮して、散乱体の移動する範囲と等しい空間か、あるいは、散乱体の移動する範囲より広い空間が、対象空間100として設定される。
本実施の形態に係る散乱体測定装置1は、図3Aに示すように、照射光L1の照射方向を対象空間100内で走査する。図3Aに示す例の場合、左上から右上にかけて走査し、その後、1段下方向に下げて、左から右に走査する。これを繰り返し、対象空間全体を走査する。なお、図3Aでは、走査方向を白抜きの矢印で表している。
対象空間100は、図3Aに示すように、各々が所定形状を有する複数の単位空間95に仮想的に分割される。一例として、分割された単位空間について、図3Bを用いて詳細に説明する。図3Bは、対象空間を仮想的に分割することで得られる単位空間の一例を示す図である。具体的には、図3Bは、図3Aの左上の4つの単位空間を示している。単位空間95は、例えば、一辺の長さが30cmの立方体である。
一例として、照射光L1は、レーザ光であり、レーザ光の直径は5mmである。例えば、レーザ光は、単位空間95の重心を通る。レーザ光の照射周期は、1μsecで、パルス幅は2nsecである。一例として、対象空間100の大きさは、大凡10m×10m×10mである。
ここで、対象空間100を1秒で走査して、散乱体の速度の測定を行うことを考える。まず、図3Aのxz平面である10m×10mを走査することを考える。
図3Bの1つの単位空間95のxz平面の大きさを30cm×30cmと仮定すると、10m×10mを走査するレーザ光の点は、33点×33点=1089点となる。例えば、1点で1μsecの照射を1000回行って測定を行うので、1点の測定時間は1msである。得られた測定値を平均化して、1つの単位空間95の測定値とする。
全ての1089点における測定を行うと、1ms×1089点でトータル約1秒となる。つまり、約1秒で10m×10mの範囲を測定することが可能である。
一方、奥行き10mまで測定可能とすると、1点でのパルス幅は2nsecであるので、奥行きの距離の分解能は30cmとなる。よって、10m×10m×10mの範囲の対象空間100の測定点は、33×33×33=35937個分の単位空間95での測定を約1秒で行うことができる。
本開示では、散乱体が移動する状況を考慮して、散乱体の移動する範囲と等しい範囲か、あるいは、散乱体が移動する範囲より広い空間が、対象空間100として設定される。設定した対象空間100から散乱体の動きを抽出できるように、単位空間95の大きさを決定し、決定した大きさの単位空間95で対象空間100を仮想的に分割する。このことにより、対象空間100の全体に渡って、散乱体の動きを精度良く捉え、高速で散乱体の速度を測定することが可能となる。なお、受光部30は、単位空間95に含まれる散乱体の散乱光を受光できればよい。
散乱体測定装置1は、単位空間95毎に照射光L1を照射する。照射方向は、連続的に変更されてもよく、離散的に変更されてもよい。例えば、連続光又はパルス光である照射光を、その照射方向を順次変更しながら照射してもよい。
図2には、2つの単位空間95及び96が示されている。単位空間95には、人99から呼出された飛沫であるエアロゾル粒子90が存在している。単位空間95に照射光L1が照射された場合、エアロゾル粒子90が照射光L1を散乱させることで、散乱光L2を発生させる。
なお、単位空間の形状は、立方体に限らず、直方体であってもよい。あるいは、単位空間の形状は、球体でもよい。隣り合う2つの単位空間は、互いに接していてもよく、一部が重なっていてもよく、あるいは、離れていてもよい。単位空間の一辺の長さは、例えば、単位空間が立方体である場合、0.3m(30cm)である。単位空間の一辺の長さが長い程、受光される散乱光の信号強度が強くなる。よって、単位空間の一辺の長さは、受光される散乱光の信号強度が検知できるように決定されてもよい。
信号処理回路40は、TOF方式により、散乱光L2が発生した位置、すなわち、エアロゾル粒子90を含む単位空間95までの距離を算出する。本実施の形態では、図2に示されるように、照射光L1はパルス光であるので、照射した照射光L1に基づく散乱光L2が受光されるまでの時間を容易に判別することができる。信号処理回路40は、照射光L1を照射してから散乱光L2が受光されるまでの時間に基づいて、散乱光L2を発生させたエアロゾル粒子90を含む単位空間までの距離を算出する。
[3.エアロゾル粒子の移動速度の算出]
次に、エアロゾル粒子90が飛沫であるか否かを判別するのに用いるエアロゾル粒子90の移動速度の算出方法について説明する。
図4A及び図4Bはそれぞれ、本実施の形態に係る散乱体測定装置1によるエアロゾル粒子の速度の算出方法を説明するための図である。図4A及び図4Bでは、エアロゾル粒子90が単位空間95から単位空間96に移動した場合が示されている。図4Aでは、単位空間95と単位空間96とが、1つの面を共有して水平方向に隣接している。図4Bでは、単位空間95と単位空間96とは、1つの辺を共有して斜めに隣接している。
単位空間95は、複数の単位空間の1つである第1空間の一例である。単位空間96は、複数の単位空間の1つであり、第1空間とは異なる第2空間の一例である。単位空間95にエアロゾル粒子90が存在する場合に、照射光L1が第1照射光として単位空間95に照射されたとき、単位空間95で散乱光L2が第1散乱光として発生する。単位空間96にエアロゾル粒子90が存在する場合に、照射光L1が第2照射光として単位空間96に照射されたとき、単位空間96で散乱光L2が第2散乱光として発生する。
本実施の形態では、制御部50が光源10を制御することで、単位空間95と単位空間96とにそれぞれ、異なるタイミングで照射光L1を照射する。受光部30は、単位空間95で発生した第1散乱光を受光し、受光した第1散乱光の受光強度に応じた第1信号を出力する。また、受光部30は、単位空間96で発生した第2散乱光を受光し、受光した第2散乱光の強度に応じた第2信号を出力する。
信号処理回路40は、第1信号と第2信号とに基づいて、第1散乱光を受光した第1時刻と第2散乱光を受光した第2時刻との差、及び、第1時刻から第2時刻までにエアロゾル粒子90が移動した距離を決定する。第1時刻から第2時刻までにエアロゾル粒子90が移動した距離は、単位空間95と単位空間96との距離と同じであるとみなすことができる。信号処理回路40は、決定した受光時刻の差及び距離に基づいてエアロゾル粒子90の速度を算出する。具体的には、信号処理回路40は、以下の式(1)に基づいてエアロゾル粒子90の速度vを算出する。
式(1)において、piは、第1空間の位置であり、例えば、単位空間95の位置であるp1である。pi+1は、第2空間の位置であり、例えば、単位空間96の位置であるp2である。tiは、第1散乱光の受光時刻であり、例えば、単位空間95からの散乱光を受光した第1時刻であるt1である。ti+1は、第2散乱光の受光時刻であり、例えば、単位空間96からの散乱光を受光した第2時刻であるt2である。
単位空間95の位置p1及び単位空間96の位置p2はいずれも、対象空間中の三次元位置を示す座標である。具体的には、p1及びp2はそれぞれ、単位空間の中心位置を示している。
例えば、単位空間95の位置p1は、x軸、y軸及びz軸を三軸とする三次元直交座標系において(x1,y1,z1)と表すことができる。同様に、単位空間96の位置p2は、(x2,y2,z2)と表すことができる。例えば、xy平面が水平面を表し、z軸が鉛直方向を表す。
図4Aに示される例では、単位空間95と単位空間96とが水平方向に隣接している。このため、単位空間95と単位空間96との距離は、単位空間の一辺の長さである。つまり、時刻t1から時刻t2にかけてのエアロゾル粒子90の移動距離は、単位空間の一辺の長さで表される。
図4Bに示される例では、単位空間95と単位空間96とは、斜め方向に隣接している。このため、単位空間95と単位空間96との距離は、単位空間の対角線の長さである。つまり、時刻t1から時刻t2にかけてのエアロゾル粒子90の移動距離は、単位空間の対角線の長さで表される。
なお、図4A及び図4Bでは、単位空間が全て同じ形状及び同じ大きさである場合を想定している。単位空間の大きさ及び形状が異なっている場合には、各単位空間の中心位置間の距離を算出することで、エアロゾル粒子90の移動距離を得ることができる。図4A及び図4Bのいずれの場合も、単位空間95及び単位空間96の各々からの散乱光の受光時刻の差に基づいて、式(1)によりエアロゾル粒子90の速度vを算出することができる。
[4.動作]
続いて、本実施の形態に係る散乱体測定装置1の動作について、図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態に係る散乱体測定装置1の動作を示すフローチャートである。
図5に示されるように、まず、散乱体測定装置1は、対象空間の走査を開始する(S10)。具体的には、制御部50は、照射光L1を単位空間毎に照射する。例えば、制御部50は、複数の単位空間の1つに向けて照射光L1を照射し、受光部30によって散乱光L2が受光されない場合には、別の単位空間に向けて照射光L1を照射することを繰り返す。
次に、受光部30が散乱光Siを検出する(S12)。なお、散乱光Siは、照射光L1の照射によって得られたi番目の散乱光L2であることを意味する。iは自然数である。受光部30は、散乱光Siの強度に応じた第1信号を出力する。
次に、信号処理回路40は、第1信号に基づいて、検出された散乱光Siの発生源であるエアロゾル粒子90が存在する単位空間、すなわち、照射光L1を照射した単位空間の位置piと、散乱光Siの受光時刻tiとをメモリに記憶する(S14)。位置piは、例えばTOF方式によって算出されてもよい。
次に、制御部50は、光源10を制御することで、散乱光Siを発生させた単位空間の周辺を走査する(S16)。例えば、図2に示される単位空間95からの散乱光L2が散乱光Siとして受光された場合、制御部50は、単位空間95に隣接する単位空間96を通過する照射光L1を光源10に照射させる。これにより、単位空間95に存在するエアロゾル粒子90の移動先を探索する。
なお、人99が咳又はくしゃみを行うことで、飛沫が呼出される方向は、あらゆる方向が想定される。水平方向に飛沫を呼出する場合は、図4Aに示されるように、単位空間95の水平方向に隣接する単位空間96に飛沫が移動する。また、斜め下方向に飛沫を呼出する場合は、図4Bに示されるように、単位空間95の斜め下方に隣接する単位空間96に飛沫が移動する。図には示されていないが、真下に向けて飛沫を呼出する場合、及び、人99の姿勢によっては真上に向けて飛沫を呼出する場合も起こりうる。
このため、本実施の形態では、制御部50は、エアロゾル粒子90が検出された場合に、検出された単位空間に隣接する1つ以上の単位空間に向けて照射光L1を照射させる。制御部50は、人99の顔の位置及び向きが判別できる場合、顔の正面方向に位置する単位空間に向けて優先的に照射光L1を照射させてもよい。
次に、受光部30が散乱光Si+1を検出し(S18)、散乱光Si+1の強度に応じた第2信号を出力する。信号処理回路40は、第2信号に基づいて、検出された散乱光Si+1の発生源であるエアロゾル粒子90が存在する単位空間の位置pi+1と、散乱光Si+1の受光時刻ti+1とをメモリに記憶する(S20)。
次に、信号処理回路40は、メモリに記憶された位置pi及び時刻tiと位置pi+1及び時刻ti+1とに基づいて、式(1)によりエアロゾル粒子90の速度vを算出する(S22)。次に、信号処理回路40は、算出した速度vと閾値v0とを比較する(S24)。算出した速度vが閾値v0以上である場合(S24でYes)、信号処理回路40は、エアロゾル粒子90が飛沫であると判定する(S26)。算出した速度vが閾値v0未満である場合(S24でNo)、信号処理回路40は、エアロゾル粒子90が飛沫ではないと判定し、ステップS10に戻って対象空間の走査を繰り返す。
以上のように、本実施の形態によれば、エアロゾル粒子90の速度vと閾値v0とを比較することで、エアロゾル粒子90が飛沫であるか否かを判別することができる。このため、照射光L1を照射する方向を単位空間毎に変更することで、対象空間内において飛沫が存在する範囲を検出することができる。これにより、飛沫の飛散範囲及び飛散方向を精度良く判別することができるので、例えば、飛沫の分布図などを作成してユーザに提示することができる。また、飛沫の位置が判別されるので、次亜塩素酸などの浄化物質を飛沫に向けて適切に供給し、飛沫に含まれるウイルスの除去を効果的に行うこともできる。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
実施の形態1では、照射光L1が照射対象の単位空間にまで到達する場合を想定しており、対象空間内に障害物が少ない場合に有用である。一方で、障害物が多い場合には、照射光L1が照射対象の単位空間にまで到達しないことが起こりうる。実施の形態2では、対象空間内に障害物が存在する場合の処理について説明する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
[1.構成]
図6は、本実施の形態に係る散乱体測定装置101の概略構成の一例を示す図である。図6に示されるように、本実施の形態に係る散乱体測定装置101は、実施の形態1に係る散乱体測定装置1と比較して、制御部50の代わりに制御部150を備える点と、新たに音検出部160を備える点とが相違する。
音検出部160は、例えば、人99の咳又はくしゃみと同時に発せられる声を検出し、その発生源、すなわち、人99の口の位置を特定する。音検出部160は、例えば、複数の方向に対して指向性を有するマイクロフォンであり、音の発生源の位置を検出する。音検出部160は、音の発生源の位置を示す位置情報を制御部150に出力する。
制御部150は、対象空間に人99が存在するか否かを判定する。制御部150は、人99が存在すると判定された場合に人99の口を含む単位空間、又は、人99の口に最も近い単位空間と、当該単位空間とに隣接する1つ以上の単位空間とに向けて照射光L1を照射させる。例えば、音検出部160によって咳又はくしゃみと同時に発せされる声が検出できた場合に、制御部150は、人99が存在すると判定する。つまり、音検出部160から出力された位置情報を取得した場合に、制御部150は、人99が存在すると判定する。
制御部150は、音検出部160から出力される位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて光源10を制御する。具体的には、制御部150は、位置情報が示す位置を含む単位空間と、当該単位空間に隣接する1つ以上の単位空間とに向けて照射光L1を照射する。位置情報が示す位置を含む単位空間は、人99の口を含む単位空間、又は、人99の口に最も近い単位空間である。
また、制御部150は、単位空間に向けて照射光L1を照射した場合において、受光部30による受光強度と閾値との比較結果に基づいて光源10を制御する。具体的には、制御部150は、受光部30による受光強度が閾値より大きい場合、閾値より受光強度が大きい光を発生させた単位空間の周囲の単位空間に向けて照射光L1を照射する。受光部30による受光強度が閾値以下である場合、制御部150は、実施の形態1と同様に、エアロゾル粒子90が飛沫であるか否かを判定するための処理を行う。
閾値は、例えば、散乱光L2として想定される強度の最大値よりも大きく、照射光L1の強度以下の値である。例えば、障害物に照射光L1が当たって反射された反射光を受光部30が受光した場合に、その受光強度が閾値より大きくなるように、閾値が設定される。
図7は、本実施の形態に係る散乱体測定装置101によるエアロゾル粒子90の検出の様子を模式的に示す図である。図7に示されるように、散乱体測定装置101と人99との位置関係によっては、単位空間95に向けて照射光L1を照射したとしても、人99に照射光L1が当たり、散乱体測定装置101は、エアロゾル粒子90が発生させる散乱光L2を取得することができない。散乱体測定装置101は、散乱光L2の代わりに、人99によって反射された反射光を取得する。
人99などの障害物は、エアロゾル粒子90に比べて十分に大きいので、強い光を反射させる。例えば、人99からの反射光とエアロゾル粒子90からの散乱光とでは、相対強度比で6桁程度の差がある。このため、上述したように、受光部30によって受光された光がエアロゾル粒子90からの散乱光であるか、障害物からの反射光であるかを、受光強度と閾値とを比較することで判別することができる。
制御部150は、単位空間95に向けて照射光L1を照射した場合に、受光部30が散乱光L2を受光できなかったとき、単位空間95の周囲に位置する単位空間96及び単位空間97に照射光L1を出射する。これにより、散乱体測定装置101は、人99の口に最も近い単位空間95でエアロゾル粒子90が検出できなかったとしても、エアロゾル粒子90が単位空間96又は97に移動したタイミングで、各単位空間においてエアロゾル粒子90を検出することが可能になり、エアロゾル粒子90の速度を算出することができる。
なお、対象空間が屋内空間である場合には、人99以外の障害物として、壁、床、天井、梁、柱及び家具などが存在する。これらの障害物は通常動きがないので、対象空間内を予め走査をしておくことで、障害物を含む単位空間及び障害物からの反射光の強度を検出することができる。例えば、散乱体測定装置101は、検出した障害物を含む単位空間と反射光の強度とを対応付けて記憶するメモリ(図示せず)を備える。
これにより、メモリに記憶された情報に一致しない単位空間から強度が強い光が検出された場合に、散乱体測定装置101は、当該単位空間に人99の一部が存在すると判別することができる。また、人99の一部が存在すると判別できる単位空間が複数箇所、高さ方向に連続して検出された場合、散乱体測定装置101は、複数の単位空間のうち最も高い位置の単位空間を、人99の頭の位置として決定することができる。
[2.動作]
続いて、本実施の形態に係る散乱体測定装置101の動作について、図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態に係る散乱体測定装置101の動作を示すフローチャートである。
図8に示されるように、まず、音検出部160が人99の咳又はくしゃみを検出する(S30)。制御部150は、光源10を制御することで、咳又はくしゃみが発生した単位空間に向けて照射光L1を照射させる。これにより、受光部30が散乱光Siを検出し、散乱光Siの強度siに応じた信号を出力する(S12)。
信号処理回路40は、散乱光Siの強度siと閾値s0とを比較する(S32)。散乱光Siの強度siが閾値s0以下である場合(S32でYes)、信号処理回路40は、検出された散乱光Siの発生源であるエアロゾル粒子90が存在する単位空間の位置piと、散乱光Siの受光時刻tiとをメモリに記憶する(S14)。以降、実施の形態1と同様に、散乱体測定装置101は、ステップS16からステップS26までの処理を行うことで、エアロゾル粒子90が飛沫であるか否かを判定する。
散乱光Siの強度siが閾値s0より大きい場合(S32でNo)、信号処理回路40は、検出された散乱光Siの受光時刻tiをメモリに記憶する(S34)。次に、制御部150は、光源10を制御することで、散乱光Siを発生させた単位空間の周辺を走査する(S36)。例えば、図7に示される単位空間95からの散乱光の強度siが閾値s0より大きい場合、制御部150は、単位空間95に隣接する単位空間96に向けて照射光L1を光源10に照射させる。これにより、単位空間95で検出できなかったエアロゾル粒子90の移動先を探索する。
次に、受光部30が散乱光Si+1を検出し(S38)、散乱光Si+1の強度si+1に応じた第1信号を出力する。信号処理回路40は、第1信号に基づいて、検出された散乱光Si+1の発生源であるエアロゾル粒子90が存在する単位空間の位置pi+1と、散乱光Si+1の受光時刻ti+1とをメモリに記憶する(S40)。
次に、制御部150は、光源10を制御することで、散乱光Si+1を発生させた単位空間の周辺を走査する(S42)。例えば、図7に示される単位空間96からの散乱光L2が散乱光Si+1として受光された場合、制御部150は、単位空間96に隣接する単位空間97に向けて照射光L1を光源10に照射させる。これにより、単位空間96に存在するエアロゾル粒子90の移動先を探索する。
次に、受光部30が散乱光Si+2を検出し(S44)、散乱光Si+2の強度si+2に応じた第2信号を出力する。信号処理回路40は、第2信号に基づいて、検出された散乱光Si+2の発生源であるエアロゾル粒子90が存在する単位空間の位置pi+2と、散乱光Si+2の受光時刻ti+2とをメモリに記憶する(S46)。
次に、信号処理回路40は、メモリに記憶された位置pi+1及び時刻ti+1と位置pi+2及び時刻ti+2とに基づいて、エアロゾル粒子90の速度vを予測する(S48)。具体的には、信号処理回路40は、以下の式(2)に基づいてエアロゾル粒子90の速度viを算出する。
信号処理回路40は、式(2)に基づいて算出された速度viと時刻tiとに基づいて、エアロゾル粒子90の初速度vを予測する。例えば、時刻tiと時刻ti+1との差が、例えば1秒以下などの十分に小さい場合には、初速度v=速度viとしてもよい。
次に、信号処理回路40は、予測した速度vと閾値v0とを比較する(S24)。予測した速度vが閾値v0以上である場合(S24でYes)、信号処理回路40は、エアロゾル粒子90が飛沫であると判定する(S26)。算出した速度vが閾値v0未満である場合(S24でNo)、信号処理回路40は、エアロゾル粒子90が飛沫ではないと判定し、ステップS10に戻って対象空間の走査を繰り返す。
以上のように、本実施の形態によれば、人99などの障害物によってエアロゾル粒子90からの散乱光L2を取得できない場合であっても、周囲を探索することにより、エアロゾル粒子90の速度を算出することができる。これにより、実施の形態1と同様に、飛沫の飛散範囲及び飛散方向を精度良く判別することができるので、例えば、飛沫の分布図などを作成してユーザに提示することができる。また、飛沫の位置が判別されるので、次亜塩素酸などの浄化物質を飛沫に向けて適切に供給し、飛沫に含まれるウイルスの除去を効果的に行うこともできる。
なお、本実施の形態では、散乱体測定装置101が、咳又はくしゃみの検出を行う音検出部160を備える例を示したが、これに限らない。例えば、散乱体測定装置101は、人99が行う咳又はくしゃみの動作を検出する赤外線センサ又はカメラなどを有してもよい。
また、音検出部160は、咳又はくしゃみの発生源の位置を特定しなくてもよい。散乱体測定装置101は、咳又はくしゃみが検出された場合に、実施の形態1と同様に制御部150が、光源10を制御することで、対象空間の走査を開始してもよい。つまり、最初に照射光L1が照射される単位空間は、人99の口を含む単位空間又は口に最も近い単位空間でなくてもよい。
また、散乱体測定装置101は、音検出部160を備えなくてもよく、実施の形態1と同様に、対象空間を常時走査していてもよい。この場合、散乱体測定装置101は、散乱光Siが検出された場合に、図8に示されるステップS12以降の処理を行ってもよい。
また、散乱体測定装置101は、散乱光Siの強度siが閾値s0より大きい場合に(図8のS32でNo)、エアロゾル粒子90の検出を行わずに、対象空間の走査を継続して行ってもよい。あるいは、散乱光Siの強度siが閾値s0より大きい場合に(図8のS32でNo)、ステップS30に戻って、再び咳が検出されるまで待機してもよい。
なお、閾値v0は、音検出部160で咳が検出された場合と、くしゃみが検出された場合とで異なる値であってもよい。例えば、信号処理回路40は、音検出部160で咳が検出された場合には、閾値v0を5m/sに設定し、音検出部160でくしゃみが検出された場合には、閾値v0を7m/sに設定してもよい。
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
実施の形態2で説明した通り、受光される光の強度に基づいて人99の頭の位置を判別することができる。実施の形態3では、人99の頭の位置と、その周辺で検出されるエアロゾル粒子90の位置とに基づいてエアロゾル粒子90の速度を算出する。以下では、実施の形態2との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
本実施の形態に係る散乱体測定装置の構成は、実施の形態2に係る散乱体測定装置101の構成を同じである。このため、以下では、実施の形態2に係る散乱体測定装置101の構成を用いて説明する。
[1.エアロゾル粒子の検出]
図9は、本実施の形態に係る散乱体測定装置101によるエアロゾル粒子90の検出の様子を模式的に示す図である。上述したように、対象空間内の人99以外の障害物を予め検出し記憶しておくことで、記憶された単位空間以外で強い光を発する単位空間を、人99の頭の一部を含む単位空間として特定することができる。散乱体測定装置101は、人99の頭の一部を含む単位空間95を特定した後、単位空間95の周辺を重点的に走査する。具体的には、散乱体測定装置101は、単位空間95に隣接する複数の単位空間の各々に向けて照射光L1を照射し、エアロゾル粒子90からの散乱光L2が発生する単位空間を探索する。
例えば、図9に示される例では、単位空間95に隣接する単位空間96に照射した照射光L1をエアロゾル粒子90が散乱させることで、散乱光L2を発生させる。1散乱体測定装置101は、エアロゾル粒子90が発生した時刻と、散乱光L2を受光した時刻と、単位空間95及び単位空間96間の距離とに基づいてエアロゾル粒子90の速度を算出する。
エアロゾル粒子90が発生した時刻は、例えば、音検出部160が咳又はくしゃみを検出した時刻である。あるいは、赤外線センサ又はカメラによって人99の咳又はくしゃみの動作を検出した時刻であってもよい。
[2.動作]
続いて、本実施の形態に係る散乱体測定装置101の動作について、図10を用いて説明する。図10は、本実施の形態に係る散乱体測定装置101の動作を示すフローチャートである。
図10に示されるように、まず、音検出部160が人99の咳又はくしゃみを検出する(S30)。制御部150は、音検出部160が人99の咳又はくしゃみを検出した時刻tiを記憶する(S62)。次に、制御部150は、光源10を制御することで、咳又はくしゃみが発生した位置の周辺に向けて照射光L1を照射させることで、人99の頭の一部を含む単位空間を探索する(S64)。具体的には、受光部30が光Siを検出し、検出した光Siの強度siに応じた第1信号を生成する(S66)。信号処理回路は、第1信号に基づいて、強度siが閾値s0より大きいか否かを判定する(S68)。
強度siが閾値s0より大きい場合に(S68でYes)、信号処理回路40は、検出された単位空間の位置pi+1をメモリに記憶する(S50)。強度siが閾値s0以下である場合に(S68でNo)、ステップS44に戻り、異なる単位空間に対して照射光L1を照射する。なお、信号処理回路40は、強度siが閾値s0よりも大きい光を発生させる複数の単位空間のうち、最も高い位置に位置する単位空間を、人99の頭の一部を含む単位空間として決定してもよい。
次に、制御部150は、光源10を制御することで、人99の頭の一部を含む単位空間の周辺を走査する(S52)。これにより、人99の近傍に発生したはずのエアロゾル粒子90を探索する。例えば、制御部150は、図9に示される単位空間95に隣接する単位空間96を通過する照射光L1を光源10に照射させる。
次に、受光部30が散乱光Si+1を検出し(S54)、散乱光Si+1の強度si+1に応じた第2信号を出力する。信号処理回路40は、第2信号に基づいて、検出された散乱光Si+1の発生源であるエアロゾル粒子90が存在する単位空間の位置pi+1と、散乱光Si+1の受光時刻ti+1とをメモリに記憶する(S56)。
次に、信号処理回路40は、メモリに記憶された位置pi及び時刻tiと位置pi+1及び時刻ti+1とに基づいて、式(1)によりエアロゾル粒子90の速度vを算出する(S58)。次に、信号処理回路40は、算出した速度vと閾値v0とを比較する(S24)。算出した速度vが閾値v0以上である場合(S24でYes)、信号処理回路40は、エアロゾル粒子90が飛沫であると判定する(S26)。算出した速度vが閾値v0未満である場合(S24でNo)、信号処理回路40は、エアロゾル粒子90が飛沫ではないと判定し、ステップS30に戻って音検出部160が人99の咳又はくしゃみを検出するのを待つ。
以上のように、本実施の形態によれば、頭の一部を含む単位空間95を基準の位置として、単位空間95の周辺の単位空間からの散乱光L2を受光する。散乱光L2の受光時刻ti+1及び位置pi+1と、頭の位置piと、咳又はくしゃみが検出された時刻tiとに基づいて、式(1)により、エアロゾル粒子90の速度が算出される。これにより、エアロゾル粒子90が飛沫であるか否かを精度良く判別することができる。
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。
散乱光には、ノイズ成分として、空気を構成する分子によるレイリー散乱光が含まれる場合がある。実施の形態4では、散乱光を干渉させることで、散乱光に含まれるノイズ成分を除去する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図11は、本実施の形態に係る散乱体測定装置201の概略構成を示すブロック図である。図11に示されるように、散乱体測定装置201は、実施の形態1に係る散乱体測定装置1と比較して、光源10及び信号処理回路40の代わりに、光源210及び信号処理回路240を備える点が相違する。また、散乱体測定装置201は、新たに、干渉部270を備える。
光源210は、等しい周波数間隔LW2の複数本のピークを有するレーザ光を含むマルチレーザ光を、照射光L1として出射する。照射光L1の中心波長λは、例えば400nmである。複数本のピークの周波数間隔LW2は、例えば10GHz以下であり、一例として6GHzである。複数本のピークの各々の半値全幅LW1は、例えば、周波数間隔LW2の1/10以下の値であり、一例として360MHzである。
上述したマルチレーザ光の周波数間隔は、例えば、5GHz以下とすることができる。これにより、効率良く大気散乱信号を除去することができる。
照射光L1がエアロゾル粒子90に照射されることで発生する散乱光L2は、等しい周波数間隔MW2の複数本のピークを有するミー散乱光を含む。周波数間隔MW2は、照射光L1の周波数間隔LW2に等しい。複数本のピークの各々の半値全幅MW1は、照射光L1の各ピークの半値全幅LW1に等しい。
また、散乱光L2は、空気中を通過するので、空気を構成する分子によるレイリー散乱光を含む。レイリー散乱光の半値全幅RWは、分子の熱運動により広がる。実測でのレイリー散乱光の半値全幅RWは、3.4GHzから3.9GHz程度である。一例として、レイリー散乱光の半値全幅RWは、3.6GHzである。
干渉部270は、光路差を変更可能な干渉計である。干渉部270は、散乱光L2の光路上に設けられており、散乱光L2が入射する。干渉部270を通過した後の散乱光L2が受光部30に受光される。
干渉部270は、互いに光路長が異なる複数の散乱光に散乱光L2を分離し、複数の散乱光を干渉させる。干渉光を受光することで、インターフェログラムを形成することができる。インターフェログラムは、干渉によって生じる干渉フリンジのことである。干渉部270は、例えば、マイケルソン干渉計、マッハツェンダー干渉計、ファブリペロー干渉計などである。
ここで、散乱光L2に干渉部270を通過させた場合に生成されるインターフェログラムにおける干渉フリンジの間隔をΔxとする。Δxは、光速C(=3×108m/s)を周波数間隔MW2で割った値である。例えば、周波数間隔MW2が6GHzであり、波長λが400nmである場合、Δxは50mmになる。
本実施の形態では、干渉部270は、照射光L1の中心波長の1/4より大きく、かつ、干渉フリンジの間隔Δxの1/2より小さい範囲で光路差を掃引する。干渉部270によって生成される光路差をdxとし、dx=0での干渉フリンジを第0の干渉フリンジ、dx=Δxでの干渉フリンジを第1の干渉フリンジ、dx=n×Δxでの干渉フリンジを第nの干渉フリンジと定義する。本実施の形態では、干渉部270における光路差dxを調整することで、周波数間隔に対応した第1の干渉フリンジの近傍の信号を取得し、取得した信号からレイリー散乱光成分を除去することで、ミー散乱光を選択的に取得する。第1の干渉フリンジでは、空気を構成する分子によるレイリー散乱の影響が極めて小さく、エアロゾル粒子90からのミー散乱光の強度に対する依存性が高い。具体的には、エアロゾル粒子90からのミー散乱光の強度に応じて、第1の干渉フリンジの信号強度が単調に増加する。このため、第1の干渉フリンジの信号強度を測定することにより、エアロゾル粒子90からのミー散乱光の強度を精度良く取得することができる。
信号処理回路240は、光路差dxを掃引させて得られる散乱光L2のインターフェログラムから、第1の干渉フリンジに対応する信号成分を抽出し、抽出した信号成分に基づいて速度を算出する。具体的には、信号処理回路240は、干渉部270を通過した散乱光L2に基づいてインターフェログラムを生成する。信号処理回路240は、生成したインターフェログラムに基づいて第1の干渉フリンジの信号強度を取得し、当該信号強度に基づいてエアロゾル粒子90からのミー散乱光の受光強度を取得することができる。これにより、信号処理回路240は、エアロゾル粒子90の速度を精度良く算出することができる。
なお、信号処理回路240は、第1の干渉フリンジの近傍の信号に基づいてフーリエ変換を行ってもよい。信号処理回路240は、フーリエ変換によって波長スペクトルデータを生成し、その最大値をミー散乱光の強度として取得することができる。
以上のように、本実施の形態に係る散乱体測定装置201によれば、散乱光L2からレイリー散乱光を除去することができる。したがって、エアロゾル粒子90からのミー散乱光に基づいて精度良くエアロゾル粒子90の速度を算出することができる。
なお、散乱体測定装置201は、散乱光L2の経路上に設けられた、散乱光L2を集光する集光部を備えてもよい。例えば、散乱光L2を透過させる開口(図示せず)とミラー20との間、ミラー20と干渉部270との間、干渉部270と受光部30との間の少なくとも1ヶ所に、1つ以上の集光部が設けられていてもよい。
集光部は、例えば、集光レンズ及びコリメートレンズの少なくとも1つを含むレンズ群である。集光部は、エアロゾル粒子90からの散乱光L2を集光し、平行光に変換して出射する。集光部が設けられていることにより、散乱光L2の検出精度を高めることができる。また、干渉部270による干渉効果を高めることができる。
(実施の形態5)
続いて、実施の形態5について説明する。
実施の形態5では、散乱光の偏光解消度に基づいて散乱体の種別を判別する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
[1.構成]
まず、本実施の形態に係る散乱体測定装置の概要について、図12を用いて説明する。図12は、本実施の形態に係る散乱体測定装置301の構成を示す図である。
本実施の形態に係る散乱体測定装置301は、空間に対して照射光を照射し、空間内に存在するエアロゾル粒子90が照射光を散乱させることで発生する散乱光を受光し、受光した散乱光を処理することで、エアロゾル粒子90の位置及び種別を判別する。
図12に示されるように、散乱体測定装置301は、光源10と、偏光フィルタ312と、ミラー20と、ビームスプリッタ330と、偏光フィルタ340と、偏光フィルタ342と、受光素子350と、受光素子352と、信号処理回路360とを備える。光源10及びミラー20は、実施の形態1と同じである。
偏光フィルタ312は、光源10から出射された照射光L1の光路上に配置されている。偏光フィルタ312は、照射光L1を偏光する第1偏光フィルタの一例である。具体的には、偏光フィルタ312は、光源10から出射された照射光L1を直線偏光する。偏光フィルタ312を通過した照射光L11は、直線偏光されており、特定の偏光面を有する光になる。
本実施の形態では、光源10と偏光フィルタ312とが、偏光された照射光L11をエアロゾル粒子90に照射する光源を構成している。図12に示されるように、偏光フィルタ312を通過し、偏光された照射光L11がエアロゾル粒子90に照射される。照射光L11は、エアロゾル粒子90によって散乱され、その一部である散乱光L12が散乱体測定装置301に戻ってくる。散乱光L12は、エアロゾル粒子90が照射光L11を散乱させることで発生する後方散乱光である。散乱光L12は、エアロゾル粒子90によるミー散乱に基づく光である。
ビームスプリッタ330は、散乱光L12を第3散乱光L12aと第4散乱光L12bとに分岐させる。ビームスプリッタ330は、ミラー20で反射された散乱光L12の進行方向に対して45°の角度で配置されており、散乱光L12の一部を透過して第3散乱光L12aとして出射させ、散乱光L12の残りを反射して第4散乱光L12bとして出射させる。ビームスプリッタ330は、例えば、透過率と反射率とが等しいハーフミラーであり、第3散乱光L12aと第4散乱光L12bとは、光強度が実質的に等しい。なお、ビームスプリッタ330の透過率と反射率とは異なっていてもよい。
偏光フィルタ340は、第3散乱光L12aの光路上に配置され、照射光L11の偏光面に平行な偏光成分(以下、単に平行成分と記載する)を透過させる第2偏光フィルタの一例である。偏光フィルタ340は、照射光L11の偏光面に平行ではない成分を実質的に遮断して透過させない。このため、偏光フィルタ340を透過した後の第3散乱光L12aは、透過前の第3散乱光L12aのうち、平行成分のみを有する光になる。
偏光フィルタ342は、第4散乱光L12bの光路上に配置され、照射光L11の偏光面に垂直な偏光成分(以下、単に、垂直成分と記載する)を透過させる第3偏光フィルタの一例である。偏光フィルタ342は、照射光L11の偏光面に垂直ではない成分を実質的に遮断して透過させない。このため、偏光フィルタ342を透過した後の第4散乱光L12bは、透過前の第4散乱光L12bのうち、垂直成分のみを有する光になる。
受光素子350は、偏光フィルタ340を透過した後の第3散乱光L12aを受光する第1受光素子の一例である。受光素子350は、受光強度に応じた電気信号を出力する。受光素子350による受光強度は、散乱光L12に含まれる、照射光L11の偏光面に平行な偏光成分の強度に対応しており、受光素子350が出力する電気信号の信号レベルに相当する。
受光素子350は、例えば、PMT(Photomultiplier Tube)である。あるいは、受光素子350は、PMTとフォトンカウンタとを有してもよい。また、受光素子350は、アバランシェフォトダイオード(APD)であってもよい。
受光素子352は、偏光フィルタ342を透過した後の第4散乱光L12bを受光する第2受光素子の一例である。受光素子352は、受光強度に応じた電気信号を出力する。受光素子352による受光強度は、散乱光L12に含まれる、照射光L11の偏光面に垂直な偏光成分の強度に対応しており、受光素子352が出力する電気信号の信号レベルに相当する。受光素子352は、受光素子350と同じ構成を有する。
信号処理回路360は、照射光L11の照射方向と、照射光L11を照射してから散乱光L12を受光するまでの時間とに基づいてエアロゾル粒子90の位置を算出する。信号処理回路360は、エアロゾル粒子90による散乱光L12の偏光解消度と、エアロゾル粒子90の落下速度とに基づいて、エアロゾル粒子90の種別を判別する。具体的には、信号処理回路360は、散乱光L12の偏光解消度に基づいて、エアロゾル粒子90が非球形粒子であるか否かの第1の判定を行う。さらに、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90が非球形粒子ではないと判定された場合に、エアロゾル粒子90の落下速度に基づいて、エアロゾル粒子90がPM2.5であるか否かの第2の判定を行う。信号処理回路360の具体的な処理については、後で説明する。
信号処理回路360は、実施の形態1に係る信号処理回路40と同様に、複数の回路部品を含む1つ又は複数の電子回路で構成されている。
散乱体測定装置301が備える各構成要素は、例えば、図示しない筐体の内部に収容されている。筐体は、散乱体測定装置301の外郭筐体であり、遮光性を有する。筐体には、照射光L11及び散乱光L12を通過させるための開口が設けられている。開口は、照射光L11と散乱光L12とのそれぞれに対応させて1つずつ設けられていてもよい。散乱体測定装置301は、ミラー20の光入射側に配置された、散乱光L12を集光するレンズなどの光学素子を備えてもよい。
筐体の内部における各構成要素の配置は、特に限定されない。各構成要素は、照射光L11、散乱光L12、第3散乱光L12a及び第4散乱光L12bの光路に応じて適切な位置に配置される。例えば、散乱体測定装置301は、ミラー20を備えなくてもよく、散乱光L12が直接ビームスプリッタ330に入射してもよい。また、散乱体測定装置301は、複数のミラー20を備えてもよい。
また、受光素子350と受光素子352とは、互いに異なる構成を有してもよい。例えば、受光素子352の感度は、受光素子350の感度より高くてもよい。例えば、信号処理回路360が、感度の差を補正してもよい。また、ビームスプリッタ330による透過率と反射率とが異なる場合に、信号処理回路360は、透過率と反射率との差を補正してもよい。
[2.エアロゾル粒子の種別の判別]
次に、エアロゾル粒子の種別の判別方法について説明する。
エアロゾル粒子90は、例えば、図2に示されるように、人99の口から放出される飛沫である。飛沫は、人99の咳、くしゃみ又は発話によって動的に発生する微小液滴である。飛沫には、ウイルス又は細菌などが含まれている場合がある。
一般的には、エアロゾル粒子には、飛沫だけでなく、塵埃などのハウスダスト、黄砂、大気汚染エアロゾル、PM2.5などの浮遊粒子状物質、花粉などの生物系粒子などが含まれる。エアロゾル粒子は、その形状及び大きさに基づいて分類が可能である。
具体的には、エアロゾル粒子は、球形粒子と非球形粒子とに分類可能である。球形粒子には、PM2.5、花粉、飛沫などが含まれる。非球形粒子には、ハウスダスト、黄砂、大気汚染エアロゾルなどが含まれる。
[2−1.偏光解消度に基づく第1の判定]
信号処理回路360は、散乱光L12の偏光解消度δに基づいて球形粒子と非球形粒子とを判定する。偏光解消度δは、以下の式(3)で表される。
式(3)において、P‖は、照射光L11の偏光面に平行な偏光成分の強度である。P⊥は、照射光L11の偏光面に垂直な偏光成分の強度である。P‖は、受光素子350による受光強度に相当する。P⊥は、受光素子352による受光強度に相当する。本実施の形態では、信号処理回路360は、受光素子350による受光強度P‖と受光素子352による受光強度P⊥とに基づいて、偏光解消度δを取得する。具体的には、信号処理回路360は、式(3)に基づいて偏光解消度δを算出する。さらに、信号処理回路360は、偏光解消度δに基づいて、エアロゾル粒子90が非球形粒子であるか否かを判定する。
偏光された照射光L11を球形粒子が散乱させることで発生する散乱光L12は、偏光面が維持される。このため、散乱光L12には、垂直成分がほとんど含まれないので、受光強度P⊥が小さくなる。したがって、球形粒子の場合、偏光解消度δが小さくなる。
これに対して、偏光された照射光L11を非球形粒子が散乱させることで発生する散乱光L12は、偏光面が維持されない。このため、散乱光L12には、垂直成分が含まれるので、受光強度P⊥が大きくなる。したがって、非球形粒子の場合、偏光解消度δが大きくなる。
本実施の形態では、信号処理回路360は、偏光解消度δと閾値とを比較することで、エアロゾル粒子90の種別を判別する。信号処理回路360は、偏光解消度δが閾値以上である場合に、エアロゾル粒子90が非球形粒子であると判定する。信号処理回路360は、偏光解消度δが閾値未満である場合に、エアロゾル粒子90が非球形粒子ではない、すなわち、球形粒子であると判定する。偏光解消度δは、一般的にパーセントで表されるため、閾値は、例えば10%である。
なお、非特許文献1及び非特許文献2に示されるように、偏光解消度δは、後方散乱係数及びライダー比を利用することで、理論的に算出することが可能である。例えば、非球形粒子の一例である塩化ナトリウムの微小結晶の偏光解消度δは、18%である。球形粒子の一例である液滴の偏光解消度δは、0%になる。
また、非特許文献3には、室内のモデル環境で偏光解消度δを実測した例が開示されている。非球形粒子の一例である黄砂の偏光解消度δは、16%から21%の範囲である。塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムなどの液滴の偏光解消度δはいずれも、5%未満である。
したがって、閾値を10%とすることで、非球形粒子と球形粒子とを精度良く判別することができる。なお、閾値は、10%でなくてもよい。閾値は、例えば5%以上16%未満の値であってもよい。
[2−2.落下速度に基づく第2の判定]
信号処理回路360は、第1の判定によってエアロゾル粒子90が非球形粒子ではないと判定された場合に、エアロゾル粒子90の落下速度に基づいて第2の判定を行う。具体的には、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90がPM2.5、花粉及び飛沫のいずれであるかを判定する。
図13Aは、本実施の形態に係る散乱体測定装置301による第1照射光の照射時のエアロゾル粒子90を示す図である。図13Bは、本実施の形態に係る散乱体測定装置301による第2照射光の照射時のエアロゾル粒子90を示す図である。
本実施の形態では、散乱体測定装置301は、照射光L11をエアロゾル粒子90に2回照射する。つまり、散乱体測定装置301は、1回目に照射される第1照射光と、2回目に照射される第2照射光とを照射する。このため、散乱体測定装置301は、2回の照射光L11の照射によって発生する散乱光L12を2回受光する。つまり、散乱体測定装置301は、第1照射光がエアロゾル粒子90によって散乱されることによって生じる第1散乱光と、第2照射光がエアロゾル粒子90によって散乱されることによって生じる第2散乱光とを受光する。
例えば、図13Aに示されるように、エアロゾル粒子90は、第1空間の一例である単位空間95内に位置している。このため、散乱体測定装置301は、単位空間95に向けて1回目の照射光L11を第1照射光として照射することで、エアロゾル粒子90からの1回目の散乱光L12を第1散乱光として取得することができる。
エアロゾル粒子90は、重力を受けて自由落下する。したがって、一定の期間が経過した後、図13Bに示されるように、エアロゾル粒子90は、第2空間の一例である単位空間96に位置している。このため、散乱体測定装置301は、単位空間96に向けて2回目の照射光L11を第2照射光として照射することで、エアロゾル粒子90からの2回目の散乱光L12を第2散乱光として取得することができる。なお、単位空間96は、単位空間95の鉛直下方に位置する空間である。
信号処理回路360は、1回目の照射光L11を散乱させた時点でのエアロゾル粒子90の第1位置と、2回目の照射光L11を散乱させた時点でのエアロゾル粒子90の第2位置との鉛直方向における距離、及び、2回の散乱光L12の受光の時間間隔に基づいて、エアロゾル粒子90の落下速度Ut(単位:m/s)を算出する。第1位置と第2位置との鉛直方向における距離は、エアロゾル粒子90の落下距離である。信号処理回路360は、落下距離(単位:m)を受光の時間間隔(単位:秒)で割ることにより、落下速度Utを算出する。
なお、エアロゾル粒子90は、空間中に1つのみが単独で存在する場合は少なく、通常、一定の範囲に複数のエアロゾル粒子90がまとまって存在する。つまり、散乱体測定装置301は、複数のエアロゾル粒子90の集合体からの散乱光L12を取得する。この場合において、エアロゾル粒子90の第1位置及び第2位置は、例えば、集合体の中心位置とすることができる。なお、第1位置及び第2位置は、エアロゾル粒子90が存在する単位空間毎に規定されてもよい。例えば、図13A及び図13Bに示される例では、2回の照射の間にエアロゾル粒子90が単位空間95から単位空間96に移動しているので、エアロゾル粒子90は、鉛直方向に1つの単位空間分、移動したことになる。つまり、エアロゾル粒子90の落下距離は、1つの単位空間の鉛直方向の長さに相当する。
信号処理回路360は、算出した落下速度Utと閾値とを比較することで、エアロゾル粒子90の種別を判別する。本実施の形態では、信号処理回路360は、落下速度Utと、互いに異なる複数の閾値の各々とを比較する。例えば、信号処理回路360は、落下速度Utが第1閾値未満である場合に、エアロゾル粒子90がPM2.5であると判定する。信号処理回路360は、落下速度Utが第1閾値以上第2閾値未満である場合に、エアロゾル粒子90が花粉であると判定する。信号処理回路360は、落下速度Utが第2閾値以上である場合に、エアロゾル粒子90が飛沫であると判定する。
第1閾値は、例えば、0.001m/sである。第2閾値は、第1閾値より大きい値である。第2閾値は、例えば、0.1m/sである。第1閾値及び第2閾値は、エアロゾル粒子90の粒径に基づいて定められる。
図14は、エアロゾル粒子の粒径と落下速度との関係を示す図である。図14において、横軸はエアロゾル粒子の粒径Dp(単位:μm)を表し、縦軸はエアロゾル粒子の落下速度Ut(単位:m/s)を表している。
図14に示されるように、通常、粒径Dpが大きくなる程、落下速度Utは速くなる。エアロゾル粒子の種別毎の落下速度Ut(単位:m/s)は、ストークスの重力沈降速度式と呼ばれる式(4)に基づいて算出される。
式(4)において、μは粘性係数(単位:Pa・s)である。ρpは、粒子の密度(単位:kg/m3)である。Dpは、粒子の直径(単位:m)である。gは、重力加速度(単位:m/s2)である。
エアロゾル粒子のように小さい粒子は、静止空気中で重力によって自由落下した場合に、速やかに一定速度に達する。このときの一定速度は、終末沈降速度と呼ばれ、式(4)で表される落下速度Utである。なお、式(4)は、一定速度で自由落下するエアロゾル粒子に働く流体抵抗力と重力とが釣り合うことから求められる。
球形粒子に含まれるPM2.5、花粉及び飛沫の中では、PM2.5の粒径Dpが最も小さい。PM2.5の粒径Dpは、例えば、2.5μm以下である。一例として、1μmの粒子が1m落下するのに要する時間は、無風状態を想定した場合に、約9時間とされている。式(4)を用いて算出した場合、粒径が1μmの粒子の落下速度Utは、3.0×10−5m/sである。粒径が2.5μmの粒子の落下速度Utは、1.9×10−4m/sである。
花粉の粒径Dpは、10μmから50μmの範囲である。一例として、スギ花粉の粒径Dpの平均値は、27μmである。この花粉が1mを落下するのに要する時間は、1分程度である。式(4)を用いて算出した場合、粒径が15μmの花粉の落下速度Utは、5.9×10−3m/sである。粒径が50μmの花粉の落下速度Utは、6.5×10−2m/sである。
飛沫の粒径Dpは、5μmから100μmの範囲である。例えば、100μmの飛沫が1mを落下するのに要する時間は、約30秒である。式(4)を用いて算出した場合、粒径が100μmの飛沫の落下速度Utは、0.30m/sである。通常、人99の口から飛沫が放出された場合、粒径Dpが100μm程度の大きいサイズの飛沫が一定量含まれる。このため、エアロゾル粒子90の集合体の中に、落下速度Utが速いエアロゾル粒子90が含まれる場合には、当該集合体に含まれるエアロゾル粒子90を飛沫であると判定することができる。なお、非特許文献4には、飛沫の粒径と落下速度との関係を実測した例が開示されている。
したがって、PM2.5を判別するための第1閾値は、例えば0.001m/sになる。なお、第1閾値は、2×10−4m/s以上、5×10−3m/s以下の範囲の値であってもよい。飛沫を判別するための第2閾値は、例えば0.1m/sになる。なお、第2閾値は、0.07m/s以上、0.29m/s以下の範囲の値であってもよい。
なお、ここでは、散乱体測定装置301が、2回目の照射光L11の照射によって、落下後のエアロゾル粒子90からの散乱光L12を取得できた例を説明したが、これに限らない。散乱体測定装置301は、3回以上の照射光L11を照射してもよい。信号処理回路360は、散乱光L12が取得できたときの照射光L11を「2回目の照射光L11」とみなすことで、上述した処理と同様にして落下速度を算出することができる。
また、エアロゾル粒子90がPM2.5である場合、PM2.5はほとんど落下しないので、単位空間96に照射光L11を照射したとしても散乱光L12を取得できない場合が起こりうる。この場合、3回目以降の照射光L11は、単位空間95に一部が重なる空間に向けて照射されてもよい。例えば、図13Aに示される単位空間95の下半分と単位空間96の上半分とを含む空間に照射光L11が照射されてもよい。言い換えると、2回目以降に照射光L11が照射される第2空間は、第1空間の鉛直下方に位置し、かつ、第1空間と一部が重複していてもよい。
また、一定期間が経過した後も、エアロゾル粒子90の落下が検出されない場合に、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90がPM2.5であると判別してもよい。例えば、散乱体測定装置301は、単位空間95においてエアロゾル粒子90が検出された後、一定期間において、単位空間96においてエアロゾル粒子90が検出されない場合、当該一定期間の経過後に単位空間95に向けて照射光L11を照射する。このときに、エアロゾル粒子90が検出された場合に、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90が落下していないと判定し、エアロゾル粒子90がPM2.5であると判定してもよい。
[3.動作]
続いて、本実施の形態に係る散乱体測定装置301の動作、すなわち、散乱体測定方法について、図15を用いて説明する。図15は、本実施の形態に係る散乱体測定装置301の動作を示すフローチャートである。
図15に示されるように、まず、光源10が、照射光L1を出射する(S110)。次に、偏光フィルタ312が、照射光L1を偏光する(S112)。偏光された照射光L11は、散乱体測定装置301の外部に出射される。照射光L11の照射方向にエアロゾル粒子90が存在する場合には、エアロゾル粒子90が照射光L11を散乱することで、散乱光を発生させる。発生させた散乱光のうち、後方散乱光である散乱光L12が散乱体測定装置301に戻ってくる。
次に、散乱体測定装置301では、偏光フィルタ340及び偏光フィルタ342が、散乱光L12を偏光する(S114)。具体的には、ビームスプリッタ330が散乱光L12を第3散乱光L12aと第4散乱光L12bとに分岐させた後、偏光フィルタ340が第3散乱光L12aのうち、照射光L11の偏光面に平行な偏光成分を透過させ、偏光フィルタ342が第4散乱光L12bのうち、照射光L11の偏光面に垂直な偏光成分を透過させる。
次に、受光素子350が、偏光フィルタ340を透過した後の第3散乱光L12aを受光し、受光素子352が、偏光フィルタ342を透過した後の第4散乱光L12bを受光する(S116)。受光素子350では、散乱光L12に含まれる平行成分の受光強度P‖に応じた電気信号が生成され、信号処理回路360に出力される。受光素子352では、散乱光L12に含まれる垂直成分の受光強度P⊥に応じた電気信号が生成され、信号処理回路360に出力される。
次に、信号処理回路360は、受光素子350による受光強度P‖と受光素子352による受光強度P⊥とに基づいて、式(3)により偏光解消度δを算出する(S118)。次に、信号処理回路360は、算出した偏光解消度δと閾値とを比較する(S120)。ここでの閾値は、例えば10%である。
偏光解消度δが10%以上である場合(S120でYes)、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90が非球形粒子であると判定する(S122)。具体的には、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90が黄砂又はハウスダストであると判定する。
偏光解消度δが10%未満である場合(S120でNo)、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90が非球形粒子ではないと判定し、エアロゾル粒子90の落下速度の判定を行う(S124)。具体的には、信号処理回路360は、2回の散乱光L12の受光の時間間隔と、エアロゾル粒子90の落下距離とに基づいて、エアロゾル粒子90の落下速度Utを算出する。信号処理回路360は、算出した落下速度Utと、PM2.5を判別するための第1閾値とを比較する。ここでの第1閾値は、例えば0.001m/sである。
落下速度Utが0.001m/s未満である場合(S124でNo)、すなわち、エアロゾル粒子90が実質的に落下していないとみなせる場合、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90がPM2.5であると判定する(S126)。落下速度Utが0.001m/s以上である場合(S124でYes)、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90がPM2.5ではないと判定し、落下速度Utと第2閾値とを比較する(S128)。ここでの第2閾値は、例えば0.1m/sである。
落下速度Utが0.1m/s未満である場合(S128でNo)、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90が花粉であると判定する(S130)。落下速度Utが0.1m/s以上である場合(S128でYes)、信号処理回路360は、エアロゾル粒子90が飛沫であると判定する(S132)。
散乱体測定装置301は、以上のステップS110からステップS132までの処理を、照射光L11の照射方向を変えながら繰り返し行う。例えば、対象空間内の複数の単位空間の各々に対して照射光L11を照射し、散乱光L12が受光できた場合に、散乱光L12の発生源となったエアロゾル粒子90の位置及び種別を判別する。これにより、散乱体測定装置301は、例えば、対象空間内のエアロゾル粒子90の位置及び種別を示す分布図を生成することができる。このように、本実施の形態によれば、エアロゾル粒子90の位置及び種別を精度良く判別することができる。
(実施の形態6)
続いて、実施の形態6について説明する。
実施の形態5では、落下速度と第2閾値とを比較することで、花粉と飛沫とを判別する例について説明した。これに対して、実施の形態6では、検出対象のエアロゾル粒子が発する蛍光を利用することで、飛沫と花粉とを判別する。以下では、実施の形態5との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
[1.構成]
図16は、本実施の形態に係る散乱体測定装置401の概略構成を示すブロック図である。図16に示されるように、散乱体測定装置401は、実施の形態5に係る散乱体測定装置301と比較して、信号処理回路360の代わりに信号処理回路460を備える点が相違する。また、散乱体測定装置401は、新たに、ビームスプリッタ430と、受光素子450と、分光部470と、分光部472とを備える。以下では、新たに追加された構成要素を光の経路の順に沿って説明する。
分光部470は、光源10が出射する光を分光することで、特定の波長成分の光を照射光L1として出射させる。分光部470から出射される照射光L1は、偏光フィルタ312によって偏光され、偏光された照射光L11として空間に向けて照射される。偏光された照射光L11は、偏光前の照射光L1と同じ波長成分を有する。
本実施の形態では、照射光L11は、飛沫の蛍光波長成分を含まない光である。詳細については後で説明するが、飛沫の蛍光波長成分は、約300nm以上約410nm以下の波長帯域の光である。
照射光L11は、例えば、花粉を構成するアミノ酸などの有機物を励起する励起光である。具体的には、照射光L11は、300nm以上500nm以下の波長帯域にピークを有する光である。一例として、照射光L11は、355nmにピークを有する光である。つまり、特定の波長成分は、例えば355nmである。
詳細については後で説明するが、355nmにピークを有する照射光L11は、花粉を強く励起するのに対して、飛沫をほとんど励起しない。つまり、355nmにピークを有する照射光L11は、花粉に照射された場合に花粉から強い蛍光が発せられるのに対して、飛沫に照射された場合に飛沫からは蛍光がほとんど発せられない。このため、蛍光の受光強度に基づいて、花粉と飛沫とを判別することができる。
分光部470は、例えば、回折格子又はプリズムであるが、これに限らない。分光部470は、特定の波長帯域のみを透過するバンドパスフィルタであってもよい。
ビームスプリッタ430は、偏光フィルタ340を透過した後の第3散乱光L12aを2つの第3散乱光L12c及びL12dに分岐させる。ビームスプリッタ430は、偏光フィルタ340を透過した後の第3散乱光L12aの進行方向に対して45°の角度で配置されており、第3散乱光L12aの一部を反射して第3散乱光L12cして出射させ、第3散乱光L12aの残りを透過して第3散乱光L12dとして出射させる。
ビームスプリッタ430は、例えば、透過率と反射率とが等しいハーフミラーであり、第3散乱光L12cと第3散乱光L12dとは、光強度が実質的に等しい。この場合、受光素子350に入力される第3散乱光L12cは、第3散乱光L12aの半分の強度になる。このため、信号処理回路460は、受光素子350から出力される電気信号の信号レベルを2倍に補正する。これにより、実施の形態5と同様に、信号処理回路460は、式(3)を用いて偏光解消度δを算出することができる。あるいは、受光素子350から出力される電気信号を増幅する増幅器が設けられてもよい。
あるいは、ビームスプリッタ330の透過率及び反射率を異ならせてもよい。例えば、ビームスプリッタ330の透過率を2/3とし、反射率を1/3にする。この場合、ビームスプリッタ330による反射光である第4散乱光L12bの強度は、透過光である第3散乱光L12aの強度の半分になる。これにより、第3散乱光L12cと第4散乱光L12bとの強度比率が同じになるので、信号処理回路460は、実施の形態5と同様にして、偏光解消度δを算出することができる。なお、ビームスプリッタ430の透過率と反射率とが異なっていてもよい。
分光部472は、第3散乱光L12dを分光することで、特定の波長成分の光を受光素子450に入射させる。本実施の形態では、分光後の第3散乱光L12dは、400nm以上1000nm以下の波長成分の光である。
具体的には、分光部472は、励起光が照射された場合に花粉が発する蛍光の波長成分の光を透過させ、それ以外の波長成分の光の透過を遮断する。例えば、分光部472は、励起光が照射された場合に飛沫が発する蛍光の波長成分の光を遮断する。また、分光部472は、照射光L11の波長成分の光を遮断する。これにより、受光素子450には、花粉が発する蛍光のみが入射されるので、受光素子450の受光強度に基づいて花粉の判別を容易に行うことができる。
分光部472は、例えば、回折格子又はプリズムであるが、これに限らない。分光部472は、特定の波長帯域のみを透過するバンドパスフィルタであってもよい。
受光素子450は、分光部472によって分光された第3散乱光L12dを受光する第3受光素子の一例である。受光素子450は、受光強度に応じた電気信号を出力する。受光素子450による受光強度は、散乱光L12に含まれる、特定波長の蛍光成分の強度に対応しており、受光素子450が出力する電気信号の信号レベルに相当する。受光素子450は、例えば、受光素子350と同じ構成を有する。
信号処理回路460は、実施の形態5に係る信号処理回路360と同様に、偏光解消度δ及び落下速度Utの算出を行う。さらに、信号処理回路460は、偏光解消度δに基づく第1の判定と、落下速度Utに基づく第2の判定とを行う。本実施の形態では、信号処理回路460は、第2の判定において、落下速度Utが第1閾値以上である場合に行う処理が信号処理回路360とは異なる。具体的には、信号処理回路460は、落下速度Utが第1閾値以上である場合に、蛍光強度に基づいてエアロゾル粒子90が花粉であるか飛沫であるかを判定する。信号処理回路460の具体的な処理については、以下で説明する。
[2.蛍光強度に基づく判定]
ここで、蛍光強度に基づくエアロゾル粒子90の種別の判定方法について説明する。
本実施の形態に係る散乱体測定装置401は、花粉と飛沫との蛍光波長の差異を利用してエアロゾル粒子90の種別を判定する。以下ではまず、花粉と飛沫との三次元蛍光スペクトルについて説明する。三次元蛍光スペクトルは、励起蛍光マトリクス(EEM:Excitation-Emission Matrix)、あるいは、蛍光指紋とも呼ばれ、励起波長と受光波長との組み合わせに対する受光強度を示す情報である。
図17は、唾液の三次元蛍光スペクトルの一例である。図18は、スギ花粉の三次元蛍光スペクトルの一例である。図17及び図18のいずれも、横軸が受光波長(単位:nm)を表し、縦軸が励起波長(単位:nm)を表している。縦軸及び横軸で定義されるグラフ領域に描かれている実線は、受光強度の等強度線である。
図17に示される例では、唾液は、約250nmから約310nmの波長帯域の励起光が照射された場合に、約300nmから約410nmの波長帯域の蛍光を発する。唾液は、約260nmから約280nmの波長帯域の励起光が照射された場合に、約320nmから約370nmの波長帯域に強い強度の蛍光を発する。唾液に対する励起光のピーク波長は約260nmであり、当該ピーク波長の励起光が唾液に照射された場合に発する蛍光のピーク波長は約350nmである。飛沫は、唾液が口から放出される際に微粒子化されたものである。したがって、飛沫の三次元蛍光マトリクスは、唾液の三次元蛍光マトリクスと同じである。
図18に示される例では、スギ花粉は、約320nmから約370nmの波長帯域の励起光が照射された場合に、約430nmから約490nmの波長帯域の強い蛍光を発する。スギ花粉に対する励起光のピーク波長の1つは約350nmであり、当該ピーク波長の励起光が照射された場合にスギ花粉が発する蛍光のピーク波長は、約460nmである。また、スギ花粉は、約420nmから約470nmの波長帯域の励起光が照射された場合に、約470nmから約520nmの波長帯域の強い蛍光を発する。スギ花粉に対する励起光のピーク波長の1つは約450nmであり、当該ピーク波長の励起光が照射された場合にスギ花粉が発する蛍光のピーク波長は、約500nmである。
図17と図18とに示されるように、唾液、すなわち、飛沫と花粉とでは、特定の波長の励起光を照射した場合に発せられる蛍光の強度が異なっている。本実施の形態では、励起光として照射する照射光L11の波長と、蛍光である散乱光L12の受光波長と、散乱光L12の受光強度とに基づいて、飛沫と花粉とを判別することができる。
例えば、分光部470によって分光された後の照射光L11の波長が355nmである場合、図17に示されるように、飛沫は蛍光を発しない。これに対して、図18に示されるように、照射光L11の波長が355nmである場合、花粉は、約460nmの波長の蛍光を発する。
ここで、分光部472は、400nm以上1000nm以下の波長帯域を通過させるバンドパスフィルタである場合を想定する。エアロゾル粒子90が花粉である場合、所定の強度の第3散乱光L12dが受光素子450に入射される。このとき、第3散乱光L12dに含まれる照射光L11の波長成分は、分光部472によって遮断される。したがって、受光素子450には、花粉による蛍光成分のみが入射される。
一方で、エアロゾル粒子90が飛沫である場合、飛沫が蛍光を発しないので、第3散乱光L12dの強度は十分に小さい。また、第3散乱光L12dに照射光L11の波長成分が含まれる場合であっても分光部472によって遮断される。したがって、受光素子450では第3散乱光L12dがほとんど検出されない。
したがって、信号処理回路460は、受光素子450による受光強度と閾値とを比較することにより、エアロゾル粒子90が花粉であるか飛沫であるかを判定することができる。具体的には、信号処理回路460は、受光素子450による受光強度が閾値より大きい場合に、エアロゾル粒子90が花粉であると判定する。信号処理回路460は、受光素子450による受光強度が閾値以下である場合に、エアロゾル粒子90が飛沫であると判定する。なお、閾値は、例えば0であるが、これに限らない。
[3.動作]
続いて、本実施の形態に係る散乱体測定装置401の動作、すなわち、散乱体測定方法について、図19を用いて説明する。図19は、本実施の形態に係る散乱体測定装置401の動作を示すフローチャートである。
図19に示されるように、信号処理回路460が落下速度Utと第1閾値との比較を行う工程(S124)までの処理は、実施の形態5において図15を用いて説明した処理と同じである。本実施の形態に係る散乱体測定装置401では、落下速度Utが第1閾値以上である場合(S124でYes)、信号処理回路460は、蛍光強度と閾値Thとの比較を行う(S140)。閾値Thは、例えば0である。
具体的には、分光部472が第3散乱光L12dを分光することで、400nm以上1000nm以下の波長成分のみを受光素子450に入射させる。これにより、受光素子450による受光強度は、エアロゾル粒子90からの散乱光L12に含まれる400nm以上1000nm以下の波長成分の強度に相当する。400nm以上1000nm以下の波長成分の受光強度が閾値Thより大きい場合(S140でNo)、信号処理回路460は、エアロゾル粒子90が花粉であると判定する。400nm以上1000nm以下の波長成分の受光強度が閾値Th以下である場合(S140でYes)、信号処理回路460は、エアロゾル粒子90が飛沫であると判定する。
本実施の形態によれば、花粉及び飛沫の判定に落下速度を用いないので、飛沫の粒径のサイズによらずに飛沫と花粉とを精度良く判別することができる。具体的には、花粉より小さいサイズの飛沫であっても判別することができる。
また、信号処理回路460は、受光素子450による受光強度と照射光L11の波長とに基づいて三次元蛍光マトリクスを生成し、生成した三次元蛍光マトリクスに基づいて花粉と飛沫とを判別してもよい。具体的には、互いに異なる波長成分を含む複数の照射光L11をエアロゾル粒子90に照射し、第3散乱光L12aを、互いに異なる複数の受光波長に分光することで、受光波長毎の受光強度を取得してもよい。これにより、信号処理回路460は、励起波長と受光波長と受光強度とに基づく三次元蛍光マトリクスを生成する。
図17及び図18に示される花粉及び飛沫の各々の三次元蛍光スペクトルは、信号処理回路460が有するメモリに予め記憶されている。信号処理回路460は、生成した三次元蛍光マトリクスと、メモリに記憶された三次元蛍光マトリクスとを比較することで、より精度良く飛沫及び花粉を判別することができる。
また、例えば、偏光解消度δが閾値以上である場合であっても、受光素子450による受光強度が閾値より大きい場合には、信号処理回路460は、エアロゾル粒子90が花粉であると判定してもよい。具体的には、図19において、ステップS120で偏光解消度δが10%以上であると判定された場合(S120でYes)、信号処理回路460は、ステップS140の処理である蛍光強度の判定処理を行ってもよい。これにより、花粉が完全な形ではなく、崩れた形状を有する場合であっても、エアロゾル粒子90が花粉であるか否かを判定することができる。
(実施の形態7)
続いて、実施の形態7について説明する。
散乱光には、ノイズ成分として、空気を構成する分子によるレイリー散乱光が含まれる場合がある。実施の形態7では、散乱光を干渉させることで、散乱光に含まれるノイズ成分を除去する。以下では、実施の形態5との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図20は、本実施の形態に係る散乱体測定装置501の概略構成を示すブロック図である。図20に示されるように、散乱体測定装置501は、実施の形態5に係る散乱体測定装置501と比較して、光源10及び信号処理回路360の代わりに、光源210及び信号処理回路560を備える点が相違する。また、散乱体測定装置501は、新たに、干渉部270を備える。光源210及び干渉部270は、実施の形態4に係る散乱体測定装置201が備える光源210及び干渉部270と同じである。
信号処理回路560は、実施の形態5と同様の処理に加えて、干渉部270を通過した散乱光L12に基づいてインターフェログラムを生成する。本実施の形態では、信号処理回路560は、第3散乱光L12a及び第4散乱光L12bの各々についてのインターフェログラムを生成する。信号処理回路560は、生成したインターフェログラムに基づいて第1の干渉フリンジの信号強度を取得し、当該信号強度に基づいてエアロゾル粒子90からのミー散乱光の平行成分の受光強度及び垂直成分の受光強度の各々を取得することができる。これにより、信号処理回路560は、偏光解消度δを精度良く算出することができる。
なお、信号処理回路560は、第1の干渉フリンジの近傍の信号に基づいてフーリエ変換を行ってもよい。信号処理回路560は、フーリエ変換によって波長スペクトルデータを生成し、その最大値をミー散乱光の強度として取得することができる。
以上のように、本実施の形態に係る散乱体測定装置501によれば、散乱光L12からレイリー散乱光を除去することができる。したがって、エアロゾル粒子90からのミー散乱光に基づいて精度良くエアロゾル粒子90の位置及び種別を判別することができる。
なお、本実施の形態では、干渉部270がミラー20とエアロゾル粒子90との間に配置される例を示したが、これに限らない。例えば、散乱体測定装置501は、2つの干渉部270を備えてもよい。2つの干渉部270は、ビームスプリッタ330と、偏光フィルタ340及び342の各々との間に配置されてもよい。あるいは、2つの干渉部270は、偏光フィルタ340と受光素子350との間、及び、偏光フィルタ342と受光素子352との間に配置されてもよい。
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係る散乱体測定装置及び散乱体測定方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
例えば、エアロゾル粒子90からの散乱光L2の強度は、エアロゾル粒子90の濃度が高い程、強くなる。このため、信号処理回路40は、散乱光L2の強度に基づいて単位空間中のエアロゾル粒子90の濃度の増減を判定することができる。信号処理回路40は、飛沫が発生した後の散乱光L2の強度から、飛沫の発生前の散乱光の強度をノイズ成分として除去する。信号処理回路40は、除去後の強度が同等になる2つの単位空間を、エアロゾル粒子90の移動前の第1空間及び移動後の第2空間として、エアロゾル粒子90の速度を判定する。なお、飛沫の発生タイミングは、例えば、音検出部160による咳又はくしゃみの発生した時刻である。
例えば、花粉などの他のエアロゾル粒子が存在する単位空間に向けて、人が咳又はくしゃみを行った場合、当該単位空間に飛沫が発生し、当該単位空間からの散乱光L2の強度は、飛沫が発生する前の強度よりも大きくなる。このため、信号処理回路40は、飛沫の発生前の単位空間95からの散乱光の強度と、飛沫の発生後の単位空間95からの散乱光の強度とに基づいて、その差分が飛沫に相当する散乱光の強度とみなすことができる。
説明を簡単にするため、飛沫の発生前の単位空間95からの散乱光Siの強度を5とし、飛沫の発生後の単位空間95からの散乱光Siの強度を15とすると、飛沫に相当する散乱光の強度は、10(=15−5)になる。したがって、当該単位空間の周辺を探索した場合に、単位空間からの散乱光Si+1の強度が10になる単位空間が、飛沫の移動先であると判別することができる。例えば、散乱光Si+1の強度が5になる単位空間が存在したとしても、飛沫の移動先の単位空間ではないと判別することができる。これにより、飛沫の移動速度を精度良く算出することができる。
また、飛沫の移動先に、花粉などの他のエアロゾル粒子が存在する場合も同様である。例えば、他のエアロゾル粒子が存在しない単位空間95に飛沫が発生し、その後、他のエアロゾル粒子が存在する単位空間96に飛沫が移動した場合を想定する。この場合、単位空間95からの散乱光は、飛沫に基づく散乱光であり、その強度は10になる。単位空間96からの散乱光は、飛沫と他のエアロゾル粒子とに基づく散乱光であり、その強度は15になる。飛沫の発生前の単位空間96からの散乱光は、他のエアロゾル粒子に基づく散乱光であり、その強度は5である。したがって、飛沫が発生した後の単位空間96からの散乱光の強度は、発生前の強度を除外することで、10(=15−5)になり、飛沫が移動したことを精度良く検出することができる。
また、例えば、照射光L1を照射する光源10の光出射側には、分光器が設けられていてもよい。これにより、特定の波長成分の光のみを照射光L1として出射してもよい。
同様に、受光部30の光入射側には、分光器が設けられていてもよい。これにより、特定の波長成分の光のみを受光部30に受光させてもよい。
また、例えば、人99の咳又はくしゃみの検出には、赤外線又は可視光イメージセンサが用いられてもよい。人99の動作を撮影することにより、咳又はくしゃみを検出することができる。あるいは、人99に取り付けられた加速度センサなどに基づいて、咳又はくしゃみを検出してもよい。
例えば、散乱体測定装置301は、非球形粒子とPM2.5とを判別し、花粉及び飛沫の少なくとも一方を判別しなくてもよい。例えば、信号処理回路360は、落下速度と第2閾値との比較を行わなくてもよい。信号処理回路360は、落下速度が第1閾値未満である場合にエアロゾル粒子90がPM2.5であると判定し、落下速度が第1閾値以上である場合にエアロゾル粒子90がPM2.5ではないと判定してもよい。つまり、散乱体測定装置301は、エアロゾル粒子90が花粉であるか飛沫であるかを特定しなくてもよい。
また、例えば、偏光解消度の算出には、偏光された照射光L11が少なくとも1回、エアロゾル粒子90に照射されればよい。つまり、エアロゾル粒子90に複数回、照射光を照射する場合に、偏光された照射光L11を1回のみ照射し、残りの回数は、偏光される前の照射光L1を照射してもよい。例えば、偏光フィルタ312は可動式であってもよく、照射光L1の光路上と光路外とで移動可能であってもよい。あるいは、散乱体測定装置301は、複数の光源10を備えてもよく、1つの光源10から出射される照射光L1の光路上には偏光フィルタ312が配置されていなくてもよい。
また、例えば、エアロゾル粒子90を検出する前、すなわち、エアロゾル粒子90からの散乱光を受光する前は、対象空間を粗く走査し、エアロゾル粒子90からの散乱光を受光した後、対象空間を細かく走査してもよい。具体的には、エアロゾル粒子90からの散乱光を受光する前は、大きなサイズの単位空間毎に照射光を照射し、エアロゾル粒子90からの散乱光を受光した後は、小さいサイズの単位空間毎に照射光を照射してもよい。このように、対象空間を走査中に、所定のタイミングにおいて単位空間の大きさ又は形状を変更してもよい。
なお、所定のタイミングは、エアロゾル粒子90の検出ではなく、人の検出であってもよい。例えば、人の頭部の少なくとも一部が検出された場合に、単位空間のサイズを小さくし、当該人の頭部の近傍を中心に単位空間毎に照射光を照射してもよい。これにより、対象空間が広い場合であっても、対象空間を粗く走査することで、速やかに人の頭の位置を検出することができる。人の頭の位置を検出しておくことで、人の口から放出される飛沫を放出直後に検出しやすくすることができる。
また、例えば、飛沫、花粉又は非球形粒子などであるエアロゾル粒子90が散乱体の一例である例を示したが、これに限らない。散乱体には、大気を構成する分子が含まれてもよい。
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、散乱体測定装置が備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。また、散乱体測定装置は、単一の装置として実現されてもよい。
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
また、上記実施の形態において、信号処理回路などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、信号処理回路などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。