JP7482416B2 - エアロゾル計測装置 - Google Patents

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Description

本開示は、エアロゾル計測装置に関する。
従来、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)を用いて大気中のエアロゾルを計測する技術が知られている。ライダーは、大気中に出射したパルス状の光の散乱光を測定し、解析することにより黄砂、花粉、埃又は微小水滴などの空気中を浮遊するエアロゾルを観測する技術である。
散乱光には、通常、ミー散乱光とレイリー散乱光とが含まれる。ミー散乱光は、出射光の波長と同等以上の粒径の微粒子によって起こる散乱現象であるミー散乱により発生する散乱光である。ミー散乱光は、例えば、計測対象物であるエアロゾルからの散乱光である。レイリー散乱は、出射光の波長よりも小さな微粒子及び大気分子によって起こる散乱現象である。散乱光からレイリー散乱光を除外することで、ミー散乱光を得ることができる。
例えば、特許文献1には、単一のレーザ光による散乱光をミー散乱光とレイリー散乱光とにフィルタを用いて分光分離する技術が開示されている。また、例えば、特許文献2には、マルチ縦モードのレーザ光のスペクトルのモード間隔が一定であることを利用して、出射したレーザ光と同じスペクトル間隔の光を選択的に透過させる干渉計を用いて散乱光を分光する技術が開示されている。
国際公開第2003/073127号 特許第6243088号公報
しかしながら、上記の従来技術では、温度変化などによってレーザ光のピーク波長が変化した場合に、光路差をレーザ光の1波長分掃引させながら同調させる必要があるので、測定方法が複雑化する。
そこで、本開示は、エアロゾルを簡単に計測することができるエアロゾル計測装置を提供する。
本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、光源と、前記光源から出射された出射光、及び前記エアロゾルで散乱された散乱光が通過するエタロンと、前記光源と前記エタロンとの間に配置され、前記出射光に含まれる第1偏光波が通過する第1偏光子と、前記エタロンと前記エアロゾルとの間に配置され、前記第1偏光波を第2偏光波に変換する波長板と、前記エタロンを通過する前記散乱光に含まれる前記第2偏光波が通過する第2偏光子と、を備える。
また、本開示の別の一態様に係るエアロゾル計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、光源と、前記光源から出射された出射光が通過する第1のエタロンと、前記エアロゾルで散乱された散乱光が通過する第2のエタロンと、前記光源と前記第1のエタロンとの間に配置され、前記出射光に含まれる第1偏光波が通過する第1偏光子と、前記第1のエタロンと前記エアロゾルとの間、又は前記第2のエタロンと前記エアロゾルとの間に配置され、前記第1偏光波を第2偏光波に変換する波長板と、前記第2のエタロンを通過する前記散乱光に含まれる前記第2偏光波が通過する第2偏光子と、を備える。
また、本開示の別の一態様に係るエアロゾル計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、光源と、前記光源から出射された出射光、及び前記エアロゾルからの散乱光が通過するエタロンと、前記散乱光の受光強度に応じた信号を出力する受光器と、を備え、前記エタロン内における前記出射光の偏光成分と、前記エタロン内における前記散乱光との偏光成分とが異なる。
また、本開示の一態様は、上記エアロゾル計測装置が実行する方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することができる。あるいは、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
本開示によれば、エアロゾルを簡単に計測することができる。
図1は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図2は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の動作を示すフローチャートである。 図3は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置が照射するマルチレーザ光のスペクトルの一例を示す図である。 図4は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の光学素子を通過する第0の透過光及び第1の透過光を説明するための図である。 図5は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の光学素子を通過する第0の透過光及び第2の透過光を説明するための図である。 図6は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置が照射したマルチレーザ光を散乱させることで発生する散乱光のスペクトルの一例を示す図である。 図7は、ミー散乱光とレイリー散乱光とを含む散乱光をマイケルソン干渉計で干渉させた場合のインターフェログラムの計算結果を表す図である。 図8は、図7の一部を拡大して示す図である。 図9は、エアロゾルによる散乱がなく、大気散乱だけを考慮した場合のマイケルソン干渉計による干渉フリンジの周波数間隔の依存性を説明するための図である。 図10は、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の効果を説明するための図である。 図11は、実施の形態2に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図12は、実施の形態3に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図13は、実施の形態3の変形例に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図14は、実施の形態4に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図15は、実施の形態4の変形例1に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図16は、実施の形態4の変形例2に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。 図17は、実施の形態4の変形例3に係るエアロゾル計測装置の構成を示す図である。
(本開示の概要)
本開示の第1の態様に係るエアロゾル計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、光源と、前記光源から出射された出射光、及び前記エアロゾルで散乱された散乱光が通過するエタロンと、前記光源と前記エタロンとの間に配置され、前記出射光に含まれる第1偏光波が通過する第1偏光子と、前記エタロンと前記エアロゾルとの間に配置され、前記第1偏光波を第2偏光波に変換する波長板と、前記エタロンを通過する前記散乱光に含まれる前記第2偏光波が通過する第2偏光子と、を備える。
また、例えば、本開示の第2の態様に係るエアロゾル計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、光源と、前記光源から出射された出射光が通過する第1のエタロンと、前記エアロゾルで散乱された散乱光が通過する第2のエタロンと、前記光源と前記第1のエタロンとの間に配置され、前記出射光に含まれる第1偏光波が通過する第1偏光子と、前記第1のエタロンと前記エアロゾルとの間、又は前記第2のエタロンと前記エアロゾルとの間に配置され、前記第1偏光波を第2偏光波に変換する波長板と、前記第2のエタロンを通過する前記散乱光に含まれる前記第2偏光波が通過する第2偏光子と、を備える。
また、例えば、本開示の第3の態様に係るエアロゾル計測装置は、大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、光源と、前記光源から出射された出射光、及び前記エアロゾルからの散乱光が通過するエタロンと、前記散乱光の受光強度に応じた信号を出力する受光器と、を備え、前記エタロン内における前記出射光の偏光成分と、前記エタロン内における前記散乱光の偏光成分とが異なる。
また、例えば、本開示の第4の態様に係るエアロゾル計測装置は、入射する光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光として出射する少なくとも1つのエタロンと、前記少なくとも1つのエタロンに向けて出射光を出射することで、前記少なくとも1つのエタロンを介して、前記複数の発振周波数を有する光を照射光として、大気中に含まれる散乱体に照射する光源と、前記光源と前記少なくとも1つのエタロンとの間に配置され、前記出射光に含まれる第1偏光波を通過させる第1偏光子と、前記少なくとも1つのエタロンと前記散乱体との間において、前記照射光、及び、前記照射光を前記散乱体が散乱させることで発生する散乱光のいずれか一方の光路上に配置され、入射する光に含まれる前記第1偏光波を第2偏光波に変換する波長板と、前記散乱光が前記少なくとも1つのエタロンの内部で干渉されることで前記少なくとも1つのエタロンを通過するミー散乱光のうち、前記第2偏光波を通過させる第2偏光子と、前記第2偏光子を通過した前記第2偏光波を受光し、受光強度に応じた信号を出力する受光器とを備える。
このように、上記各態様に係るエアロゾル計測装置では、1つのエタロンを、又は、第1のエタロン及び第2のエタロンを用いた光の干渉を利用することで、散乱光に含まれるレイリー散乱光を除去することができ、エアロゾルに起因するミー散乱光を取得することができる。このため、複雑な信号処理を必要とせずに、受光器によって受光されたミー散乱光の受光強度に基づいてエアロゾルを簡単に計測することができる。
また、例えば、エタロンと受光器とを近くに配置することにより、エアロゾル計測装置の小型化を実現することができる。なお、光源が出射する出射光がエタロンに入射する際、出射光の一部は、エタロンの入射面で反射される。このため、エタロンの入射面で反射された出射光の一部は、迷光として受光器で受光される恐れがある。
これに対して、本態様に係るエアロゾル計測装置では、光源とエタロンとの間に第1偏光子が配置され、かつ、受光器の光入射側に第2偏光子が配置されている。迷光は、第1偏光子を通過した出射光の一部であるので、迷光の主な偏光成分は第1偏光波である。受光器の光入射側に配置された第2偏光子が第1偏光波の透過を抑制するので、迷光が受光器に入射するのを抑制することができる。
なお、エタロンを通過後の出射光である照射光、及び、散乱光のいずれか一方は波長板を通過するので、エタロンを通過したミー散乱光の主な偏光成分は第2偏光波に変換されている。このため、ミー散乱光に含まれる第2偏光波は、第2偏光子を通過し、受光器によって受光される。
以上のように、各態様に係るエアロゾル計測装置によれば、迷光を抑制しながら、ミー散乱光を受光器によって受光することができるので、S/N比が向上し、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、本開示の第1の態様に係るエアロゾル計測装置は、さらに、前記波長板と前記エタロンとの間に配置され、前記第2偏光波を通過させる第3偏光子を備えてもよい。また、例えば、本開示の第2の態様に係るエアロゾル計測装置は、さらに、前記第2偏光波を通過させる第3偏光子を備えてもよい。前記波長板は、前記エアロゾルと前記第2のエタロンとの間に配置され、前記第3偏光子は、前記波長板と前記第2のエタロンとの間に配置されてもよい。
散乱光に第1偏光波以外の偏光成分が含まれる場合、波長板を通過した後の散乱光には、第2偏光波以外の偏光成分が含まれる。上記各態様に係るエアロゾル計測装置によれば、波長板を通過した後の散乱光に含まれる第2偏光波以外の偏光成分の透過を第3偏光子によって抑制することができる。このため、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、本開示の第1の態様に係るエアロゾル計測装置は、さらに、前記エアロゾルと前記エタロンとの間に配置され、前記散乱光を集光する集光部を備えてもよい。また、例えば、本開示の第2の態様に係るエアロゾル計測装置は、さらに、前記エアロゾルと前記第2のエタロンとの間に配置され、前記散乱光を集光する集光部を備えてもよい。
これにより、エタロン内での干渉効率を高めることができる。また、光の受光感度を高めることができるので、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、前記エタロン又は前記第1のエタロンは、前記出射光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光を生成してもよい。
また、例えば、前記周波数間隔は、3.9GHz以下であってもよい。
これにより、レイリー散乱光の透過をエタロンが精度良く抑制することができるので、受光器には、エアロゾルに基づくミー散乱光を受光させることができる。したがって、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、前記第1のエタロンと前記第2のエタロンとは、互いに同じ光学特性を有してもよい。
これにより、2つのエタロンの光学特性が同じであるので、第2のエタロンを通過する散乱光に含まれるミー散乱光を高強度で抽出することができる。
また、例えば、前記第1偏光波と前記第2偏光波とは、直交していてもよい。
これにより、第1偏光波と第2偏光波とが互いに干渉し合うことを十分に抑制することができる。このため、第2偏光波を主に含むミー散乱光が、第1偏光波を主に含む迷光と干渉し、ミー散乱光の強度が変化することが抑制される。つまり、ミー散乱光の強度が迷光に起因して変化することが抑制されるので、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、前記第2偏光子を通過した前記第2偏光波を受光し、受光強度に応じた信号を出力する受光器をさらに備えてもよい。
これにより、例えば、エタロンと受光器とを近くに配置することにより、エアロゾル計測装置の小型化を実現することができる。
また、例えば、前記波長板は、1/2波長板であってもよい。
これにより、1/2波長板が偏光方位を90°回転させるので、第1偏光波と第2偏光波とが互いに干渉し合うことを十分に抑制することができる。このため、第2偏光波を主に含むミー散乱光が、第1偏光波を主に含む迷光と干渉し、ミー散乱光の強度が変化することが抑制される。つまり、ミー散乱光の強度が迷光に起因して変化することが抑制されるので、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、前記散乱光は、ミー散乱光であってもよい。
また、例えば、前記光源は、レーザ素子又は発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)であってもよい。
これにより、高強度の出射光を光源が出射することができるので、エタロンによって強度が減衰したとしても、十分な強度の照射光を散乱体に照射することができる。
また、例えば、前記波長板は、前記散乱光の光路上に配置され、前記少なくとも1つのエタロンには、前記波長板を通過した前記散乱光が入射してもよい。また、例えば、前記波長板は、前記照射光の光路上に配置され、前記散乱体には、前記波長板を通過した前記照射光が照射されてもよい。
これにより、波長板の配置の自由度を高めることができる。
また、例えば、本開示の一態様に係るエアロゾル計測装置は、さらに、前記散乱体と前記波長板との間に配置され、前記第1偏光波を通過させる第3偏光子を備えてもよい。
例えば、エアロゾルの形状が非球形である場合には、照射光の偏光が一部解消され、散乱光には、第1偏光波以外の偏光成分が含まれる。本態様に係るエアロゾル計測装置によれば、散乱光に含まれる第1偏光波以外の偏光成分の透過を第3偏光子によって抑制することができる。このため、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、前記少なくとも1つのエタロンは、単一のエタロンであってもよい。
これにより、エタロンが熱の影響を受けて膨張し、エタロンの光学特性が変化したとしても、出射光と散乱光とが同じ単一のエタロンを通過するので、エタロンの光学特性の変化による影響を十分に抑えることができる。したがって、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
また、例えば、前記少なくとも1つのエタロンは、互いに同じ光学特性を有する第1のエタロン及び第2のエタロンを含み、前記光源は、前記第1のエタロンに向けて前記出射光を出射することで、前記第1のエタロンを介して前記照射光を前記散乱体に照射し、前記第1偏光子は、前記光源と前記第1のエタロンとの間に配置され、前記第2偏光子は、前記第2のエタロンと前記受光器との間に配置されていてもよい。
これにより、出射光及び照射光の光路と散乱光の光路とを容易に分離させることができる。このため、エアロゾル計測装置の各素子の配置及び光路の設計の自由度を高めることができる。
また、本開示の一態様に係るエアロゾル計測方法は、出射光に含まれる第1偏光波を通過させる第1偏光子と、入射する光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光として出射する少なくとも1つのエタロンとを、前記出射光がこの順で通過するように前記出射光を出射することで、前記複数の発振周波数を有する光を照射光として、大気中に含まれる散乱体に照射するステップと、入射する光に含まれる前記第1偏光波を第2偏光波に変換する波長板に、前記照射光、及び、前記照射光を前記散乱体が散乱させることで発生する散乱光のいずれか一方を通過させるステップと、前記散乱光が前記少なくとも1つのエタロンの内部で干渉されることで前記少なくとも1つのエタロンを通過するミー散乱光のうち、前記第2偏光波を通過させる第2偏光子を通過した前記第2偏光波を受光し、受光強度に応じた信号を出力するステップとを含む。
これにより、上述したエアロゾル計測装置と同様に、S/N比が向上し、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
本開示において、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部、又はブロック図の機能ブロックの全部又は一部は、半導体装置、半導体集積回路(IC)、又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路によって実行されてもよい。LSI又はICは、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、一つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、若しくはULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
さらに、回路、ユニット、装置、部材又は部の全部又は一部の機能又は操作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは一つ又は複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システム又は装置は、ソフトウェアが記録されている一つ又は複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、及び必要とされるハードウェアデバイス、例えばインタフェース、を備えていてもよい。
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、本明細書において、垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、円柱又は角柱などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態1)
[1.構成]
まず、実施の形態1に係るエアロゾル計測装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1の構成を示す図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1は、大気中に向けて照射光L2を照射し、大気中に含まれる散乱体2が照射光L2を散乱させることで発生する散乱光L3を検出し、検出した散乱光L3の信号を処理することで、散乱体2に含まれるエアロゾルの有無及び濃度を計測する。散乱体2は、エアロゾル計測装置1による計測の対象空間中に存在する。
対象空間は、例えば、住居、オフィス、介護施設又は病院などの建物の一部屋である。対象空間は、例えば、壁、窓、ドア、床及び天井などで仕切られた空間であり、閉じられた空間であるが、これに限らない。対象空間は、屋外の開放された空間であってもよい。また、対象空間は、バス又は飛行機などの移動体の内部空間であってもよい。
散乱体2は、計測対象物であるエアロゾル、及び、大気を構成する分子を含む。エアロゾルは、具体的には、対象空間内を浮遊している塵埃、PM2.5などの浮遊粒子状物質、生物系粒子、又は、微小水滴などである。生物系粒子には、空中に浮遊するカビ若しくはダニ、又は花粉なども含まれる。また、微小水滴には、咳又はくしゃみなどの人体から動的に発生する物質が含まれる。
計測対象物であるエアロゾルは、大気を構成する分子に比べて十分に大きい。本実施の形態では、エアロゾルの粒径が照射光L2の波長以上であるので、エアロゾルは、照射光L2を散乱させることでミー散乱光を発生させる。大気を構成する分子は、照射光L2の波長よりも十分に小さいので、照射光L2を散乱させることでレイリー散乱光を発生させる。したがって、エアロゾル計測装置1が取得する散乱光L3には、ミー散乱光とレイリー散乱光とが含まれる。ここでのミー散乱光は、ミー散乱による後方散乱光である。本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1は、散乱光L3からミー散乱光を抽出し、抽出したミー散乱光に基づいてエアロゾルの有無及び濃度を計測する。
本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1は、対象空間内の異なる方向に向けて照射光L2を照射する。照射光L2の照射方向は、例えば、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラー(図示せず)などによって変更される。あるいは、エアロゾル計測装置1全体の向きを変更することで、照射光L2の照射方向が変更されてもよい。エアロゾル計測装置1は、照射光L2で対象空間内を走査することにより、対象空間内のエアロゾルの分布を作成することができる。
図1に示されるように、エアロゾル計測装置1は、エタロン10と、光源20と、ミラー22と、第1偏光子30と、集光部40と、集光レンズ45と、波長板50と、第2偏光子60と、受光器70と、分析部80とを備える。なお、集光部40の一例が集光レンズ40aである。以下では、エアロゾル計測装置1が備える各構成要素について説明する。
エタロン10は、入射する光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光として出射する。複数の発振周波数を有する光は、周波数スペクトルにおいて複数本のピークを有するマルチ光とも呼称される。本実施の形態では、エタロン10は、単一のエタロンである。つまり、エタロン10は、一体的に構成された1つの部材である。エタロン10の形状は、例えば、円柱体又は角柱体などである。
図1に示されるように、エタロン10は、透光部11と、2つの多層膜12及び13とを有する。透光部11は、例えば石英又は水晶などの透明な材料又は空気を用いて形成されている。透光部11は、2つの多層膜12及び13に挟まれており、2つの多層膜12及び13の各々に接触している。2つの多層膜12及び13はそれぞれ、複数の誘電体膜の積層構造を有する誘電体多層膜である。例えば、2つの多層膜12及び13はそれぞれ、屈折率が低い誘電体膜と屈折率が高い誘電体膜とを交互に積層することで形成されている。誘電体膜としては、例えば、チタン酸化膜、ハフニウム酸化膜、シリコン酸化膜などが用いられる。なお、透光部11は、空気層であってもよく、2つの多層膜12及び13は、一定距離を保つように枠体などによって固定されていてもよい。
エタロン10には、光源20から発せられた出射光L1のうち、第1偏光子30を通過した第1偏光波が入射する。つまり、第1偏光子30を通過した後の出射光L1aの偏光成分は、第1偏光波である。本実施の形態では、第1偏光波は、例えばp波(p偏光とも呼称される)である。あるいは、第1偏光波は、s波(s偏光とも呼称される)であってもよい。
エタロン10は、出射光L1aを内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で複数の発振周波数を有する光を照射光L2として出射する。
本実施の形態では、出射光L1aは、エタロン10の多層膜12から入射し、多層膜13から出射される。多層膜12の、透光部11とは反対側の第1面12aは、出射光L1aが入射する入射面である。多層膜13の、透光部11とは反対側の第2面13aは、照射光L2が出射される出射面である。出射面である第2面13aは、入射面である第1面12aとは反対側の面である。第1面12aと第2面13aとは、互いに平行である。第1面12a及び第2面13aに直交する方向は、エタロン10の中心軸に平行である。
エタロン10から出射された照射光L2は、散乱体2に照射される。照射光L2が散乱体2によって散乱されることにより、散乱体2から散乱光L3が発生する。散乱光L3は、集光レンズ40aによって集光される。集光された散乱光L3は、波長板50を通過する。エタロン10には、波長板50を通過した散乱光L4が入射する。散乱光L4は、波長板50によって偏光方位が変換された散乱光である。
本実施の形態では、散乱光L4は、エタロン10の多層膜13から入射し、散乱光L4の一部であるミー散乱光L5が、多層膜12から出射される。多層膜13の、透光部11とは反対側の第2面13aは、散乱光L4が入射する入射面である。多層膜12の、透光部11とは反対側の第1面12aは、ミー散乱光L5が出射される出射面である。つまり、出射光L1の入射面と散乱光L4の入射面とは異なっている。
また、図1に示されるように、エタロン10は、出射光L1aが通過する経路を含む第1部分10aと、散乱光L4が通過する経路を含む第2部分10bとを有する。図1では、第1部分10aと第2部分10bとの境界を破線で模式的に表している。第1部分10aと第2部分10bとは、互いに異なる部分である。例えば、エタロン10の形状が円柱状である場合、第1部分10aと第2部分10bとは、中心軸を含む面で仮想的にエタロン10を分割したときの半円柱状の部分に相当する。なお、円柱状のエタロン10の円形の上面及び底面が光の入射面及び出射面に相当する。
散乱光L3には、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光が含まれる。散乱光L3の偏光方位が変換された散乱光L4も同様に、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光が含まれる。このため、エタロン10を通過する際に、散乱光L4が干渉を起こす。本実施の形態では、エタロン10の厚みが調整されており、散乱光L4に含まれるミー散乱光L5を通過させ、レイリー散乱光の通過を抑制する。これにより、散乱光L4からレイリー散乱光を適切に除去することができるので、エアロゾルに起因するミー散乱光L5を受光器70に受光させることができる。上記の記載である「散乱光L4からレイリー散乱光を適切に除去することができるので、エアロゾルに起因するミー散乱光L5を受光器70に受光させることができる。」ことについては、下記[3.エタロンの機能]の箇所で、詳細に説明する。
本実施の形態では、エタロン10は、光源20から出射され、かつ、第1偏光子30を通過した出射光L1aの光路上に位置している。具体的には、エタロン10は、ミラー22と、エアロゾル計測装置1の外郭筐体に設けられた開口との間に位置している。当該開口は、エタロン10から出射される照射光L2が通過するために設けられている。さらに、エタロン10は、散乱体2から発生する散乱光L3の光路上に位置している。具体的には、エタロン10は、集光レンズ40aと集光レンズ45との間に位置している。
光源20は、エタロン10に向けて出射光L1を出射する。光源20は、出射光L1を出射することによって、エタロン10を介して、照射光L2を大気中に含まれる散乱体に照射する。なお、「エタロン10に向けて出射光L1を出射する」とは、出射光L1を直接的にエタロン10に向けて出射するだけでなく、図1に示されるように、ミラー22などの光学部材を介してエタロン10に出射光L1を入射させることも意味する。
出射光L1は、例えばパルス光であるが、連続光であってもよい。出射光L1は、特定の波長帯域にピークを有する単色光であってもよく、ブロードな波長帯域を含む光であってもよい。ピークの帯域幅は、例えば、10pmから10nmの範囲である。出射光L1は、例えば、紫外光、青色光又は赤外光などである。出射光L1は、ミラー22で反射された後、第1偏光子30を通過する。第1偏光子30を通過した後の出射光L1aは、エタロン10の内部で干渉されて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光である照射光L2として大気中に出射される。
光源20は、例えば、パルスレーザ光を出射光L1として発する半導体レーザ素子である。出射光L1のビームモードは、例えばマルチモードであるが、シングルモードであってもよい。一例として、光源20は、405nmの近傍にピークを有するレーザ光を出射光L1として発する。あるいは、光源20は、LED(Light Emitting Diode)素子であってもよい。また、光源20は、ハロゲンランプなどの放電ランプであってもよい。
ミラー22は、出射光L1を反射する。出射光L1に対してミラー22を適切な角度で配置することにより、出射光L1の進路を所望の方向に曲げることができる。本実施の形態では、ミラー22は、出射光L1を反射して、第1偏光子30に入射させる。なお、エアロゾル計測装置1は、ミラー22を備えなくてもよい。
本実施の形態では、光源20から出射され、かつ、第1偏光子30を通過した出射光L1aは、エタロン10の第1面12aに対して垂直に入射する。あるいは、出射光L1aは、エタロン10の第1面12aに対して斜めに入射してもよい。
第1偏光子30は、光源20とエタロン10との間に配置されている。具体的には、第1偏光子30は、出射光L1の光路上に配置されている。図1に示される例では、第1偏光子30は、ミラー22とエタロン10との間に配置されている。第1偏光子30は、光源20とミラー22との間に配置されていてもよい。
第1偏光子30は、出射光L1に含まれる第1偏光波を通過させる。第1偏光子30は、第1偏光波以外の偏光成分の通過を抑制する。つまり、第1偏光子30を通過した後の出射光L1aは、実質的に第1偏光波のみを含んでいる。本実施の形態では、第1偏光子30は、第1偏光波の一例であるp波を通過させる。
集光部40は、大気中に含まれる散乱体2が照射光L2を散乱させることで発生する散乱光L3を集光する。集光部40の一例として、例えば、凸状の集光レンズ40a、又は、少なくとも1つの反射鏡などがある。例えば、集光レンズ40aで集光された光は、コリメートレンズを含むレンズ群により、平行光に変換されて出射される。よって、集光レンズ40aによって集光された散乱光L3は、波長板50に入射する。散乱光L3の信号強度が強い場合は、特に、集光部40が配置されていなくてもよい。
波長板50は、エタロン10と散乱体2との間において、散乱光L3の光路上に配置されている。本実施の形態では、波長板50は、集光レンズ40aとエタロン10との間に配置されている。波長板50は、入射する光に含まれる第1偏光波を第2偏光波に変換する。
具体的には、波長板50は、1/2波長板である。波長板50は、第1偏光波の偏光方位を90°回転させることにより、第2偏光波に変換する。すなわち、第1偏光波の偏光方位と第2偏光波の偏光方位とは直交している。本実施の形態では、第1偏光波がp波であり、第2偏光波がs波である。なお、第1偏光波がs波であり、第2偏光波がp波であってもよい。
波長板50を通過した散乱光L4は、散乱光L3の偏光方位が90°回転した光である。散乱光L3がp波を主に含む場合、散乱光L4はs波を主に含む。散乱光L4が含むs波の強度は、散乱光L3が含むp波の強度とほぼ同じである。
散乱光L4は、エタロン10に入射する。本実施の形態では、散乱光L4は、エタロン10の第2面13aに対して正面から、すなわち、入射角が0°で入射する。
集光レンズ45は、波長板50を通過した散乱光L4のうち、エタロン10を通過したミー散乱光L5を集光する。集光レンズ45は、例えば凸レンズである。集光レンズ45は、受光器70の受光面にミー散乱光L5を集光する。受光器70の受光面の光入射側には、第2偏光子60が配置されている。集光レンズ45によって集光されたミー散乱光L5は、第2偏光子60を介して受光器70に入射する。
第2偏光子60は、エタロン10と受光器70との間に配置されている。具体的には、第2偏光子60は、ミー散乱光L5の光路上に配置されている。図1に示される例では、第2偏光子60は、集光レンズ45と受光器70との間に配置されている。第2偏光子60は、エタロン10よりも受光器70に近い位置に配置されている。例えば、第2偏光子60は、受光器70の受光面を接触して覆っていてもよい。
第2偏光子60は、ミー散乱光L5のうち、第2偏光波を通過させる。第2偏光子60は、第2偏光波以外の偏光成分の通過を抑制する。具体的には、第2偏光子60は、第1偏光波の通過を抑制する。第2偏光子60を通過した後のミー散乱光L5aは、実質的に第2偏光波のみを含んでいる。本実施の形態では、第2偏光子60は、s波を通過させ、p波の通過を抑制する。
受光器70は、第2偏光子60を通過したミー散乱光L5aを受光し、受光強度に応じた信号を出力する。受光強度は、ミー散乱光L5aの強度であり、例えば、受光器70が出力する信号の信号レベルで表される。
受光器70は、光電変換を行う素子であり、例えば、PMT(Photomultiplier Tube)である。あるいは、受光器70は、PMTとフォトンカウンタとを有してもよい。また、受光器70は、アバランシェフォトダイオードであってもよい。
分析部80は、受光器70から出力された信号を分析することで、散乱体2に含まれるエアロゾルを分析する。例えば、分析部80は、信号の信号レベルに基づいてエアロゾルの有無及び濃度を決定する。具体的には、分析部80は、信号レベルとエアロゾルの濃度とを対応付けた対応情報を参照することで、信号レベルに対応するエアロゾルの濃度を決定する。対応情報は、例えば、分析部80が備えるメモリ(図示せず)に予め記憶されている。
また、分析部80は、照射光L2が照射されてから、ミー散乱光L5aを受光するまでに要する時間に基づいて、TOF(Time Of Flight)方式によってエアロゾルまでの距離を算出する。分析部80は、算出した距離と照射光L2を照射した方向とに基づいて、対象空間内のエアロゾルの位置を特定する。照射光L2の照射方向を変更しながらエアロゾルの位置の特定を繰り返すことで、分析部80は、対象空間内でのエアロゾルの分布を作成する。
分析部80は、複数の回路部品を含む1つ又は複数の電子回路で構成されている。1つ又は複数の電子回路はそれぞれ、汎用的な回路でもよく、専用の回路でもよい。つまり、分析部80が実行する機能は、電子回路などのハードウェアで実現される。あるいは、分析部80は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどで実現されてもよい。分析部80が実行する機能は、プロセッサで実行されるソフトウェアで実現されてもよい。
エアロゾル計測装置1が備える各構成要素は、例えば、図示しない筐体の内部に収容されている。筐体は、エアロゾル計測装置1の外郭筐体であり、遮光性を有する。筐体には、照射光L2及び散乱光L3を通過させるための開口が設けられている。開口は、照射光L2と散乱光L3との各々に対応させて1つずつ設けられていてもよい。集光レンズ40aは、当該開口に設けられていてもよい。
[2.動作]
次に、エアロゾル計測装置1の動作について、図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1の動作を示すフローチャートである。
図2に示されるように、まず、光源20が出射光L1を出射する(S10)。出射光L1は、ミラー22に反射されて進行方向が曲げられて、第1偏光子30を通過する。第1偏光子30は、出射光L1に含まれる第1偏光波を通過させ、第1偏光波以外の偏光成分を除去する(S12)。
第1偏光子30を通過した後の出射光L1aは、エタロン10の第1面12aに入射する。出射光L1aは、エタロン10を通過することによって、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光であるマルチ光に変換される。つまり、エタロン10は、入射する光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光を照射光L2として出射する(S14)。照射光L2は、大気中の散乱体2に向けて照射されて散乱体2によって散乱される。なお、照射光L2の偏光方位は、出射光L1aの偏光方位と同じである。
次に、集光レンズ40aは、散乱体2から発生する散乱光L3を集光する(S16)。集光レンズ40aによって集光された散乱光L3は、波長板50を通過する。波長板50は、散乱光L3の偏光方位を回転させることにより、散乱光L3に含まれる第1偏光波を第2偏光波に変換する(S18)。波長板50を通過した散乱光L4は、エタロン10の第2面13aに対して正面から入射する。エタロン10を通過することによって、ミー散乱光L5が抽出される。つまり、波長板50を通過した散乱光L4をエタロン10の内部で干渉させて、エタロン10を通過させる(S20)。言い換えると、エタロン10は、散乱光L4のうち、レイリー散乱光を実質的に除去し、ミー散乱光L5のみを通過させる。エタロン10を通過したミー散乱光L5は、第2偏光子60に入射する。第2偏光子60は、ミー散乱光L5に含まれる第2偏光波を通過させ、第2偏光波以外の偏光成分を除去する(S22)。
次に、受光器70は、第2偏光子60を通過した後のミー散乱光L5aを受光し、受光強度に応じた信号を出力する(S24)。
分析部80は、受光器70から出力された信号を分析することで、散乱体2に含まれるエアロゾルを分析する(S26)。
エアロゾル計測装置1は、以上のステップS10からステップS26までの処理を、照射光L2の照射方向を変えながら繰り返し行う。例えば、対象空間内の所定の方向に向かって照射光L2を出射し、散乱光L3が取得できた場合に、散乱光L3の発生源となった散乱体2に含まれるエアロゾルの位置及び濃度を特定する。これにより、エアロゾル計測装置1は、例えば、対象空間内のエアロゾルの位置及び濃度を示す分布図を生成することができる。なお、エアロゾル計測装置1は、エアロゾルの位置のみを示す分布図を生成してもよい。
[3.エタロンの機能]
続いて、エタロン10の具体的な機能について説明する。
上述したように、エタロン10は、光源20から出射され、かつ、第1偏光子30を通過したレーザ光である出射光L1aを内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光からなるマルチレーザ光である照射光L2として出射する。なお、エタロン10は、通過する光の偏光成分の除去及び変換を実質的に行わない。すなわち、エタロン10を通過する前の光の偏光成分と、エタロン10を通過した後の光の偏光成分とは同じである。以下ではまず、マルチレーザ光について図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1が出射するマルチレーザ光のスペクトルの一例を示す図である。図3の部分(a)及び(b)の各々において横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。
図3の部分(a)は、エタロン10を通過した後のマルチレーザ光である照射光L2の周波数スペクトルを示している。周波数スペクトルに含まれる複数のピークの周波数がそれぞれ、照射光L2に含まれる複数の発振周波数に対応している。複数本のピークの周波数間隔LW2が互いに等しく、例えば3GHzである。ここでは、複数本のピークの信号強度が互いに等しい例を示しているが、互いに異なっていてもよい。照射光L2の中心波長λは、例えば405nmである。
図3の部分(b)は、図3の部分(a)の拡大図であり、スペクトルの1つのピーク、すなわち、照射光L2に含まれる1つの発振周波数に対応する光のみを拡大して示している。当該ピークの半値全幅LW1は、例えば360MHzである。半値全幅LW1は、周波数間隔LW2の1/20以上1/5以下であるが、1/10以上1/8以下であってもよい。
本実施の形態では、出射光L1aがエタロン10を通過することで、エタロン10内で干渉されて、照射光L2として出射される。エタロン10は、入射する光と、エタロン10内で反射を繰り返す光との干渉を利用する。入射する光の位相と、エタロン10内の反射を繰り返す光の位相とが一致した場合、光を強め合う干渉が起こり、エタロン10内で光が増強されて透過する。エタロン10の多層膜12及び13は、光を透過したり、反射したりすることができる。多層膜12及び13の各々の透過率は、例えば75%であるが、これに限らない。
ここで、図4及び図5はそれぞれ、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1のエタロン10を通過する光を説明するための図である。具体的には、図4は、第0の透過光及び第1の透過光を模式的に表している。図5は、第0の透過光及び第2の透過光を模式的に表している。
エタロン10は、入射する光の一部をそのまま透過させる。図4及び図5に示されるように、エタロン10の多層膜12及び13で反射されずにそのまま透過する光が第0の透過光である。
第1の透過光は、図4に示されるように、入射した光が多層膜13で1回反射された後、多層膜12で1回反射された光である。第0の透過光と第1の透過光との位相が一致することによって干渉が起こり、第1の干渉フリンジに対応する光が出射される。干渉フリンジについては、図7及び図8を用いて後で説明する。
第2の透過光は、図5に示されるように、入射した光が多層膜13及び多層膜12でそれぞれ2回ずつ反射された光である。第0の透過光と第2の透過光との位相が一致することによって干渉が起こり、第2の干渉フリンジに対応する光が出射される。
入射する光の位相と、反射を繰り返す光の位相とが一致しない場合、光入射側に反射され、エタロン10を通過する光が弱くなる。この結果、透過光は、周期的なスペクトルを有する。つまり、エタロン10は、出射光L1aが入射した場合に、等しい周波数間隔LW2で離れた複数の発振周波数を有する照射光L2を出射することができる。
周波数間隔LW2を実現するためのエタロン10の長さΔxは、以下の式(1)に基づいて定められる。なお、エタロン10の長さΔxは、図4及び図5に示されるように、多層膜12と多層膜13との距離、すなわち、透光部11の厚さである。
Figure 0007482416000001
式(1)において、nは、真空中の屈折率であり、例えば1.0である。nは、エタロン10の透光部11の屈折率であり、石英の場合1.47である。cは、光速であり、3×10m/sである。LW2=3GHzである場合、上記式(1)より、エタロン10の長さΔxが34mmになる。また、エタロン10の長さΔxは、製造上、80mm程度が限界である。このため、LW2の下限値は、1.3GHz程度になる。
エタロン10によって、ファブリペロー干渉を起こす場合の光路差dxは、以下の式(2)で表される。
Figure 0007482416000002
例えば、Δx=34mmの場合、光路差dxは100mmになる。
次に、図3に示される照射光L2を散乱体2が散乱させることで発生する散乱光L3について、図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1が出射したマルチレーザ光を散乱させることで発生する散乱光L3の周波数スペクトルの一例を示す図である。図6の部分(a)及び(b)の各々において、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。
図6の部分(a)は、散乱光L3の周波数スペクトルを示している。散乱光L3は、照射光L2と同様に、等しい周波数間隔MW2で離れた複数の発振周波数を有する光からなる。周波数スペクトルに含まれる複数のピークがそれぞれ、照射光L2に含まれる複数本のピークに対応している。散乱光L3の周波数間隔MW2は、照射光L2の周波数間隔LW2に等しい。ここでは、複数本のピークの信号強度が互いに等しい例を示しているが、互いに異なっていてもよい。
図6の部分(b)は、図6の部分(a)の拡大図であり、スペクトルの1つのピーク、すなわち、散乱光L3に含まれる1つの光のみを拡大して示している。
上述したように、散乱光L3は、ミー散乱光とレイリー散乱光とを含んでいる。ミー散乱光のスペクトルは、散乱前の照射光L2のスペクトルと実質的に同じである。一方で、レイリー散乱光は、大気を構成する分子の熱運動によって周波数幅が広がる。また、レイリー散乱光の強度は、通常、ミー散乱光の強度よりも低い。
このため、図6の部分(b)に示されるように、散乱光L3のスペクトルは、図3に示される照射光L2のスペクトルと比較して、ピークの裾野が広がった形状を有する。中心の高いピークがミー散乱光に相当し、裾野部分がレイリー散乱光に相当する。なお、図6の部分(b)では、大気を構成する分子によるレイリー散乱光の信号強度と、エアロゾルによるミー散乱光の信号強度とを3:1としている。なお、ここでの信号強度は、ピークの面積で表される。また、ミー散乱光を表すピークの半値全幅MW1は、照射光L2の半値全幅LW1に等しい。
レイリー散乱光を表す裾野部分の半値全幅RWは、一般的な実測によれば、3.4GHzから3.9GHz程度であることが知られている。一例として、レイリー散乱光の半値全幅RWは、3.6GHz(Δλ=1.9pm)とすることができる。
なお、Δλは、以下の式(3)に基づいて算出される。
Figure 0007482416000003
式(3)において、Δf=RWである。cは、光速であり、3×10m/sである。λは、中心波長であり、ここでは405nmである。
波長板50を通過した後の散乱光L4の周波数スペクトルは、散乱光L3の周波数スペクトルと同じになる。本実施の形態では、エタロン10に散乱光L4を通過させることによって、3GHzの周波数間隔で現れる複数本のピークを有する光、すなわち、ミー散乱光を透過させ、他の周波数成分の光、すなわち、レイリー散乱光を除去することができる。
図7は、エアロゾルによるミー散乱光と大気を構成する分子によるレイリー散乱光とを含む散乱光を、マイケルソン干渉計で干渉させた場合のインターフェログラムの計算結果を表す図である。図7において、横軸は干渉を起こす光路差dxを表し、縦軸は干渉光の強度を表している。図8は、図7の破線で囲まれた領域VIIIを拡大した図である。
図7及び図8に示されるように、光路差dxがΔxの整数倍になる度に、干渉フリンジが現れる。dx=0の干渉フリンジを第0の干渉フリンジと定義し、dx=n×Δxの干渉フリンジを第nの干渉フリンジと定義する。nは自然数である。図8は、第0の干渉フリンジ、第1の干渉フリンジ、第2の干渉フリンジを表している。第1の干渉フリンジは、図4に示される第0の透過光と第1の透過光との干渉によって生じる光である。第2の干渉フリンジは、図5に示される第0の透過光と第2の透過光との干渉によって生じる光である。
受光器70では、第0の干渉フリンジから第nの干渉フリンジまでを合わせた干渉光がミー散乱光L5aとして受光される。本実施の形態では、エタロン10の長さΔxを調整することにより、大気散乱に起因するレイリー散乱光に基づく干渉フリンジを除去することができる。レイリー散乱光を除去するのに適した長さΔxの決定方法について説明する。
図9は、エアロゾルによる散乱がなく、大気散乱だけを考慮した場合のマイケルソン干渉計による干渉フリンジの周波数間隔の依存性を説明するための図である。図9の部分(a)から(l)ではそれぞれ、横軸がdxを表し、縦軸が信号強度を表している。図9の部分(a)から(l)はそれぞれ、照射光L2の周波数間隔LW2が2.4GHz、3.0GHz、3.6GHz、3.7GHz、3.8GHz、3.9GHz、4GHz、5GHz、6GHz、10GHz、15GHz、30GHzの場合のインターフェログラムの計算結果を表している。
図9に示されるように、周波数間隔LW2が大きくなるにつれて、出現する干渉フリンジの個数が増加し、かつ、出現する干渉フリンジの信号強度が大きくなっている。例えば、周波数間隔LW2が2.4GHzの場合は、実質的に第0の干渉フリンジのみが出現しており、第1以上の干渉フリンジが出現していない。周波数間隔LW2が3.0GHzから4GHzの範囲では、第0の干渉フリンジと第1の干渉フリンジとが出現しており、第2以上の干渉フリンジが出現していない。周波数間隔LW2が5GHzの場合には、第0の干渉フリンジ及び第1の干渉フリンジに加えて、第2の干渉フリンジが出現している。図9では、第1の干渉フリンジ以上が現れている範囲を破線の枠で表している。
大気散乱だけを考慮に入れた場合に第2以上の干渉フリンジが現れているということは、レイリー散乱光のみによる干渉が起きていることを意味する。すなわち、エタロン10にレイリー散乱光を入射させた場合に、レイリー散乱光が透過することを意味する。したがって、周波数間隔LW2は3.9GHz以下であれば、第1の干渉フリンジが小さくなるので、レイリー散乱光の透過が抑制される。
すなわち、周波数間隔LW2が3.9GHzの場合の第1の干渉フリンジの大きさは、周波数間隔LW2の第1の干渉フリンジの大きさの50%以下になっている。このため、第1の干渉フリンジが小さくなっているので、レイリー散乱光がエタロン10を透過するのを抑制することができる。
以上のことから、周波数間隔LW2は3.9GHz以下であることで、散乱光L4からレイリー散乱光を効率良く除去することができる。周波数間隔LW2が3.9GHzである場合、式(1)により、石英で作られたエタロン10の長さΔxは、約26mmとなる。つまり、長さΔxが26mm以上のエタロン10を用いることで、レイリー散乱光を効率良く除去することができ、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
[4.迷光の抑制]
以上のように、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1では、エタロン10を用いた光の干渉を利用することで、散乱光に含まれるレイリー散乱光を除去することができ、エアロゾルに起因するミー散乱光を取得することができる。このため、複雑な信号処理を必要とせずに、受光器70によるミー散乱光の受光強度に基づいてエアロゾルを簡単に計測することができる。
また、本実施の形態では、エタロン10、光源20及び受光器70をできるだけ近くに配置することにより、エアロゾル計測装置1の小型化を実現することができる。一方で、図10に示されるように、光源20が出射する出射光L1がエタロン10に入射する際、出射光L1の一部は、入射面である第1面12aで反射される。このため、第1面12aで反射された反射光L1rは、迷光として受光器70で受光される恐れがある。反射光L1rは、ミー散乱光L5に比べて強度が大きい。このため、反射光L1rが受光器70で受光された場合には、エアロゾルの検出に必要なミー散乱光L5の受光強度を検出できなくなる。
これに対して、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1では、光源20とエタロン10との間に第1偏光子30が配置され、かつ、受光器70の光入射側に第2偏光子60が配置されている。反射光L1rは、第1偏光子30を通過した出射光L1aの一部である。すなわち、反射光L1rの主な偏光成分は、第1偏光波である。受光器70の光入射側に配置された第2偏光子60が第1偏光波の透過を抑制するので、反射光L1rが受光器70に入射するのを抑制することができる。
なお、散乱光L3は波長板50を通過するので、ミー散乱光L5の主な偏光成分は第2偏光波に変換されている。このため、ミー散乱光L5に含まれる第2偏光波は、第2偏光子60を通過し、受光器70によって受光される。なお、図10では、第1偏光波を主に含む光を太実線で表し、第2偏光波を含む光を太破線で表している。
また、第1偏光子30、波長板50及び第2偏光子60が設けられていない場合、強度が強い出射光L1と強度が弱い散乱光L3とがエタロン10内で干渉する恐れがある。出射光L1と散乱光L3との干渉が起きた場合、エタロン10を通過するミー散乱光L5の強度が変化し、エアロゾルを精度良く検出できなくなるという問題がある。
これに対して、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置1では、エタロン10の内部において、第1偏光波を主に含む出射光L1aと、第2偏光波を主に含む散乱光L4とが通過する。第1偏光波と第2偏光波とでは干渉がほとんど起きないため、ミー散乱光L5aの強度の変化が抑制され、エアロゾルを精度良く検出することができる。
以上のように、迷光を抑制しながら、ミー散乱光L5aを受光器70によって適切な強度で受光することができるので、S/N比が向上し、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
実施の形態1に係るエアロゾル計測装置1は、単一のエタロン10を備える。これに対して、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置は、複数のエタロンを備える。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図11は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置101の構成を示す図である。図11に示されるように、エアロゾル計測装置101は、エタロン10の代わりに2つのエタロン110及び115を備える。
エタロン110及び115はそれぞれ、互いに同じ光学特性を有する第1のエタロン及び第2のエタロンの一例である。例えば、エタロン110及び115はそれぞれ、実施の形態1に係るエタロン10と同じ光学特性を有し、入射する光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光を出射する。つまり、エタロン110及び115の各々に同じ光を入射した場合、エタロン110から出射される光の周波数間隔と、エタロン115から出射される光の周波数間隔とは同じである。
エタロン110は、出射光L1の光路上に配置されている。具体的には、エタロン110は、第1偏光子30と散乱体2との間に配置されている。エタロン110には、光源20が出射した出射光L1のうち、第1偏光子30を通過した第1偏光波を主に含む出射光L1aが入射する。エタロン110は、入射した出射光L1aを内部で干渉させて、互いに異なる周波数間隔で複数の発振周波数を有する照射光L2を散乱体2に向けて照射する。
エタロン110は、実施の形態1に係るエタロン10と同様に、透光部111と、多層膜112及び113とを有する。透光部111と、多層膜112及び113はそれぞれ、エタロン10の透光部11と、多層膜12及び13と同じである。
エタロン115は、散乱光L3又は散乱光L4の光路上に配置されている。具体的には、エタロン115は、波長板50と第2偏光子60との間に配置されている。エタロン115には、散乱体2から発せられる散乱光L3が波長板50を通過することで、波長板50から出射される散乱光L4が入射する。エタロン115は、入射した散乱光L4を内部で干渉させることにより、散乱光L4からレイリー散乱光を除去し、ミー散乱光L5を通過させる。
エタロン115は、実施の形態1に係るエタロン10と同様に、透光部116と、多層膜117及び118とを有する。透光部116と、多層膜117及び118はそれぞれ、エタロン10の透光部11と、多層膜12及び13と同じである。
以上のように、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置101では、2つのエタロン110及び115を備えるので、出射光L1aの光路と散乱光L4の光路とを容易に分離することができる。つまり、出射光L1a側と散乱光L4側とで異なるエタロンを通過するので、出射光L1aと散乱光L4とがエタロン内で干渉するのを抑制することができる。これにより、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
実施の形態1及び2に係るエアロゾル計測装置1及び101では、散乱光L3が波長板50に入射する。これに対して、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置は、照射光L2が波長板50に入射する。以下では、実施の形態1及び2との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図12は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置201の構成を示す図である。図12に示されるように、エアロゾル計測装置201は、実施の形態2に係るエアロゾル計測装置101と比較して、波長板50の配置が相違している。
具体的には、波長板50は、エタロン110から出射される照射光L2の光路上に配置されている。つまり、波長板50には、照射光L2が入射し、照射光L2の偏光方位が変換される。具体的には、波長板50は、照射光L2の偏光方位を90°回転させる。照射光L2は、第1偏光波と同じ偏光方位を有するので、波長板50から出射される照射光L2aは、第2偏光波になる。第1偏光波がp波である場合、波長板50から出射される照射光L2aはs波になる。
照射光L2aが散乱体2によって散乱されることにより発生する散乱光L3は、照射光L2aと同じ偏光方位を主に含む。つまり、散乱光L3は、実施の形態1及び2に係る散乱光L4と同等である。散乱光L3は、波長板50を通過することなく、エタロン115に入射される。本実施の形態に係る散乱光L3が実施の形態1及び2に係る散乱光L4と同等であるので、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置201は、実施の形態1及び2に係るエアロゾル計測装置1及び101と同様に、迷光の影響を抑えながら、エアロゾルを精度良く計測することができる。
以上のように、波長板50が照射光L2の光路上に配置され、散乱光L3の光路上には配置されていない場合であっても、実施の形態1及び2と同様に、エアロゾルの計測精度を高めることができる。
なお、エアロゾル計測装置201は、実施の形態1と同様に、1つのみのエタロン10を備えてもよい。図13は、本実施の形態の変形例に係るエアロゾル計測装置202の構成を示す図である。
図13に示されるように、エアロゾル計測装置202は、実施の形態3に係るエアロゾル計測装置201と比較して、2つのエタロン110及び115の代わりに、エタロン10を備える。エタロン10は、実施の形態1と同じである。
エアロゾル計測装置202では、波長板50は、散乱体2とエタロン10との間に配置されている。つまり、実施の形態3と同様に、波長板50には、エタロン10から出射される照射光L2が入射し、その偏光方位を90°回転させる。照射光L2は、第1偏光波と同じ偏光方位を有するので、波長板50から出射される照射光L2aは、第2偏光波になる。
以降、実施の形態3と同様に、照射光L2aが散乱体2によって散乱されることにより発生する散乱光L3が、エタロン10及び第2偏光子60を順に通過して受光器70に受光される。したがって、エアロゾル計測装置202は、実施の形態1から3に係るエアロゾル計測装置1、101及び201と同様に、迷光の影響を抑えながら、エアロゾルを精度良く計測することができる。
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。
本実施の形態に係るエアロゾル計測装置は、散乱光L3又はL4の光路上に配置された第3偏光子を備える。以下では、実施の形態1から3との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図14は、本実施の形態に係るエアロゾル計測装置301の構成を示す図である。図14に示されるように、エアロゾル計測装置301は、実施の形態2に係るエアロゾル計測装置101と比較して、新たに第3偏光子90を備える点が相違している。
第3偏光子90は、散乱体2とエタロン115との間に配置されている。具体的には、第3偏光子90は、集光部40と波長板50との間に配置されている。第3偏光子90は、第1偏光波を通過させ、第1偏光波以外の偏光成分の通過を抑制する。つまり、第3偏光子90は、第1偏光子30と同じ光学特性を有する偏光子である。
散乱体2が発生させる散乱光L3は、照射光L2を散乱体2が散乱させることにより生じる光である。このとき、散乱体2の形状によって、散乱の際に偏光が一部解消される場合がある。
具体的には、散乱体2に含まれるエアロゾルの形状が球形である場合には、照射光L2と散乱光L3とでその偏光方位は同じである。すなわち、照射光L2がp波である場合には、散乱光L3もp波になる。一方で、散乱体2に含まれるエアロゾルの形状が非球形である場合、照射光L2の偏光が部分的に解消されて、異なる偏光方位の光が散乱光L3に含まれる。具体的には、照射光L2がp波である場合に、散乱光L3には、p波だけでなく、s波、又は、p波及びs波のいずれでもない偏光成分も含まれる。
第3偏光子90は、散乱光L3のうち、照射光L2と同じ偏光成分を通過させ、照射光L2とは異なる偏光成分の通過を抑制する。照射光L2がp波である場合には、第3偏光子90を通過した散乱光L3aは、p波以外の偏光成分が除去され、p波のみを含んでいる。
図14に示されるように、散乱光L3aは、波長板50を通過した後、エタロン115に入射する。散乱光L3aには実質的にはp波のみが含まれるので、波長板50を通過した散乱光L4はs波のみが含まれる。エタロン115には、実質的にs波のみを含む散乱光L4が入射するので、エアロゾルの計測精度を更に高めることができる。
なお、波長板50と第3偏光子90との位置関係は、逆であってもよい。図15は、本実施の形態の変形例1に係るエアロゾル計測装置302の構成を示す図である。図15に示されるように、エアロゾル計測装置302は、エアロゾル計測装置301と比較して、第3偏光子90の代わりに第3偏光子91を備える。
第3偏光子91は、散乱体2とエタロン115との間に配置されている。具体的には、第3偏光子91は、波長板50とエタロン115との間に配置されている。第3偏光子91は、第2偏光波を通過させ、第2偏光波以外の偏光成分の通過を抑制する。つまり、第3偏光子91は、第2偏光子60と同じ光学特性を有する偏光子である。
上述したように、散乱体2に含まれるエアロゾルの形状が非球形である場合、照射光L2の偏光が部分的に解消されて、異なる偏光方位の光が散乱光L3に含まれる。このため、散乱光L3が波長板50を通過した場合、波長板50を通過した散乱光L4には、照射光L2と同じ偏光成分(すなわち、第1偏光波)を波長板50で変換した偏光成分(すなわち、第2偏光波)以外の偏光成分が含まれる。具体的には、照射光L2がp波である場合に、散乱光L4には、s波だけでなく、p波、又は、p波及びs波のいずれでもない偏光成分も含まれる。
第3偏光子91は、散乱光L4のうち、照射光L2と同じ偏光成分を波長板50で変換した偏光成分を通過させ、当該偏光成分の通過を抑制する。照射光L2がp波である場合には、第3偏光子91を通過した散乱光L4aは、s波以外の偏光成分が除去され、s波のみを含んでいる。
図15に示されるように、第3偏光子91を通過した散乱光L4aは、エタロン115に入射する。エタロン115には、実質的にs波のみを含む散乱光L4が入射するので、エアロゾルの計測精度を更に高めることができる。
なお、図15に示される例において、波長板50は、実施の形態3と同様に、エタロン110と散乱体2との間に配置されていてもよい。すなわち、波長板50には、照射光L2が入射してもよい。
また、エアロゾル計測装置301又は302は、実施の形態1と同様に、1つのみのエタロン10を備えてもよい。図16及び図17はそれぞれ、本実施の形態の変形例2及び3に係るエアロゾル計測装置303及び304の構成を示す図である。
図16及び図17に示されるように、エアロゾル計測装置303及び304はそれぞれ、実施の形態4及びその変形例に係るエアロゾル計測装置301及び302と比較して、2つのエタロン110及び115の代わりに、エタロン10を備える。エタロン10は、実施の形態1と同じである。
図16に示されるように、エアロゾル計測装置303では、散乱体2とエタロン10との間に第3偏光子90が配置されている。具体的には、第3偏光子90は、集光部40と波長板50との間に配置されている。この場合、実施の形態4と同様に、散乱光L3は、集光部40、第3偏光子90、波長板50の順に通過して、エタロン10に入射する。第3偏光子90を通過した散乱光L3aは、実質的にp波のみが含まれるので、波長板50を通過した後の散乱光L4は、実質的にs波のみが含まれる。つまり、エタロン10には、実質的にs波のみを含む散乱光L4が入射するので、エアロゾルの計測精度を更に高めることができる。
また、図17に示されるように、エアロゾル計測装置304では、波長板50とエタロン10との間に、第3偏光子91が配置されている。この場合も、実施の形態4の変形例と同様に、第3偏光子91を通過した散乱光L4aは、エタロン10に入射する。エタロン10には、実質的にs波のみを含む散乱光L4が入射するので、エアロゾルの計測精度を更に高めることができる。
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係るエアロゾル計測装置及びエアロゾル計測方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では、波長板50は1/2波長板でなくてもよい。例えば、波長板50は、1/4波長板であってもよい。
また、例えば、実施の形態2から4に係るエアロゾル計測装置101、201、301及び302はそれぞれ、2つのエタロン110及び115を備えるが、単一のエタロン10を備えてもよい。
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、エアロゾル計測装置が備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。また、エアロゾル計測装置は、単一の装置として実現されてもよい。
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
また、上記実施の形態において、分析部などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、分析部などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、エアロゾルを簡単に計測することができるエアロゾル計測装置などとして利用でき、例えば、屋内での有害な微粒子の計測及び屋外での気象観測などに利用することができる。
1、101、201、202、301、302、303、304 エアロゾル計測装置
2 散乱体
10、110、115 エタロン
10a 第1部分
10b 第2部分
11、111、116 透光部
12、13、112、113、117、118 多層膜
12a 第1面
13a 第2面
20 光源
22 ミラー
30 第1偏光子
40 集光部
40a、45 集光レンズ
50 波長板
60 第2偏光子
70 受光器
80 分析部
90、91 第3偏光子
L1、L1a 出射光
L1r 反射光
L2、L2a 照射光
L3、L3a、L4、L4a 散乱光
L5、L5a ミー散乱光

Claims (14)

  1. 大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、
    光源と、
    前記光源から出射された出射光、及び前記エアロゾルで散乱された散乱光が通過するエタロンと、
    前記光源と前記エタロンとの間に配置され、前記出射光に含まれる第1偏光波が通過する第1偏光子と、
    前記エタロンと前記エアロゾルとの間に配置され、前記第1偏光波を第2偏光波に変換する波長板と、
    前記エタロンを通過する前記散乱光に含まれる前記第2偏光波が通過する第2偏光子と、
    を備えるエアロゾル計測装置。
  2. さらに、前記波長板と前記エタロンとの間に配置され、前記第2偏光波が通過する第3偏光子を備える、
    請求項1に記載のエアロゾル計測装置。
  3. さらに、前記エアロゾルと前記エタロンとの間に配置され、前記散乱光を集光する集光部を備える、
    請求項1又は2に記載のエアロゾル計測装置。
  4. 前記エタロンは、前記出射光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光を生成する、
    請求項1から3のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置。
  5. 前記周波数間隔は、3.9GHz以下である、
    請求項4に記載のエアロゾル計測装置。
  6. 大気中に含まれるエアロゾルを計測するためのエアロゾル計測装置であって、
    光源と、
    前記光源から出射された出射光が通過する第1のエタロンと、
    前記エアロゾルで散乱された散乱光が通過する第2のエタロンと、
    前記光源と前記第1のエタロンとの間に配置され、前記出射光に含まれる第1偏光波が通過する第1偏光子と、
    前記第1のエタロンと前記エアロゾルとの間、又は前記第2のエタロンと前記エアロゾルとの間に配置され、前記第1偏光波を第2偏光波に変換する波長板と、
    前記第2のエタロンを通過する前記散乱光に含まれる前記第2偏光波が通過する第2偏光子と、
    を備えるエアロゾル計測装置。
  7. 前記第1のエタロンは、前記出射光を内部で干渉させて、互いに等しい周波数間隔で離れた複数の発振周波数を有する光を生成する、
    請求項6に記載のエアロゾル計測装置。
  8. 前記周波数間隔は、3.9GHz以下である、
    請求項7に記載のエアロゾル計測装置。
  9. さらに、前記第2偏光波が通過する第3偏光子を備え、
    前記波長板は、前記エアロゾルと前記第2のエタロンとの間に配置され、
    前記第3偏光子は、前記波長板と前記第2のエタロンとの間に配置される、
    請求項6から8のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置。
  10. 前記第1のエタロンと前記第2のエタロンとは、互いに同じ光学特性を有する、
    請求項6から9のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置。
  11. さらに、前記エアロゾルと前記第2のエタロンとの間に配置され、前記散乱光を集光する集光部を備える、
    請求項6から10のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置。
  12. 前記第1偏光波と前記第2偏光波とは、直交している、
    請求項1から11のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置。
  13. 前記第2偏光子を通過した前記第2偏光波を受光し、受光強度に応じた信号を出力する受光器をさらに備える、
    請求項1から12のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置。
  14. 前記波長板は、1/2波長板である、
    請求項1から13のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置。
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