JPWO2020121394A1 - 医療機器およびクリップユニットをリリースする方法 - Google Patents
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Abstract
Description
クリップユニットは、クリップ本体と、押さえ管と、つる巻きバネとを有している。クリップ本体は、第一アームおよび第二アームから構成されたアーム部材を有している。アーム部材は、自然状態において、第一アームの先端と第二アームの先端との間に距離を空けて離間している。
処置具本体は、外套管と、挿入部と、操作部材とを有している。挿入部は、外套管内に進退可能に挿通され、シースと、操作ワイヤと、連結部材とを有している。連結部材は、クリップ本体と操作ワイヤとを連結するために設けられている。操作部材は、挿入部の基端側に取付けられており、操作部本体と、スライダと、破断機構とを有している。スライダは、操作部本体のスリットに係合することで、操作部本体に対して、前進および後退することができる。破断機構は、操作部に内蔵されている。破断機構に作用する引張り力量が所定の引張強度以上に達すると、破断機構が破断する。
前記リンク部材は、前記テールが前記シースの内周面と接触することで、前記クリップユニットと前記動力伝達部材とを前記係合形態から前記離間形態へ遷移してもよい。
前記ガイド部材が前記シース内に配置されることにより、前記テール及び前記第二テールがほぼ同時に前記シースの前記内周面に接触してもよい。
本実施形態に係る医療機器1は、図示しない内視鏡に形成されたチャンネルを通して患者の体内に挿入されて使用される。本明細書において、操作者が内視鏡を操作するための内視鏡操作部が位置する側を基端側と定義し、体内に挿入された内視鏡挿入部の先端部が位置する側を先端側と定義する。
クリップ10は、図1Aおよび図1Bに示すように、アーム部材11と、押さえ管31と、弾性部材(つる巻きバネ、バネ)36とを備えて構成されている。
押さえ管31は、筒状(好ましくは円筒状)に形成され、アーム部材11の基端部が進入できる内径を有する。すなわち、押さえ管31には、後述する第一アーム12および第二アーム13を有するアーム部材11が進入可能なルーメンが形成されている。弾性部材36は、押さえ管31のルーメン内部に配置されている。
第一アーム12および第二アーム13は、このように構成されることで、曲げに対する強度が向上するとともに、後述する外套管50に対する摩擦抵抗を減少し、スムーズに進退することができる。
アーム部材11は、例えば、コバルトクロム合金などで形成された板材を、第一アーム12および第二アーム13、中央部14、第一被係止部16、17、第二被係止部21、22、突部18、19、23、24を平面状に展開した形状に打抜くことで形成される。図1Bに示すように、アーム部材11は、この打抜いた部材を、第一アーム12と中央部14との接続部、および第二アーム13と中央部14との接続部で折り曲げて、側面視でC字状となり、一体に形成される。
アーム部材11の第一アーム12と第二アーム13とは、それぞれの先端が互いに離間する方向、すなわち、アーム部材11が開く方向へ移動する弾性復元力を有する。
本実施形態において、アーム部材11の第一被係止部16、17および第二被係止部21、22と、押さえ管31の係止部32とは、後述するように、クリップ10の閉形態から開形態への遷移を規制するロック機構である。
本実施形態に係るクリップ10のアーム部11は、第一アーム12と第二アーム13とのそれぞれの先端が互いに離間する方向へ移動する弾性復元力を有する。そのため、図示していないが、外套管50が基端側へ移動し、クリップ10の第一アーム12および第二アーム13が外套管50の内壁に当接する状態を解除すると、第一アーム12および第二アーム13が押さえ管31の先端部の内壁に設けられたテーパー面31aに当接しながら開き幅が増大し、開く状態になる。その結果、第一アーム12と第二アーム13との弾性復元力により、アーム部11は押さえ管31から突出する方向に付勢される。すなわち、第一アーム12と第二アーム13との弾性復元力には、アーム部11を先端側へ移動させる作用がある。
押さえ管31および係止部32は、例えば64チタン合金(Ti−6AL−4V)、コバルトクロム合金などの材料で一体に形成されている。
弾性部材36は、押さえ管31内に収容された状態で、先端部が突部18、19、23、24に係止されるとともに基端部が係止部32に係止されている。弾性部材36の基端部と係止部32とは、溶着などにより固定してもよい。
弾性部材36内には、第一アーム12における突部18、19よりも基端側の部分、第二アーム13における突部23、24よりも基端側の部分、および中央部14が挿通可能である。突部18、19、23、24が基端側に移動したときに、突部18、19、23、24は、弾性部材36の座巻き部36bに係止される。一方、突部18、19、23、24が基端側に移動したときに、弾性部材36は、軸線方向Yにおいて、突部18、19、23、24によって圧縮される。弾性部材36が圧縮されると、軸線方向Yにおいて、アーム部材11を押さえ管31内から押し出す弾性力が発生する。
弾性部材36が座巻き部36bを備えない場合でも、弾性部材36の先端にワッシャなどの別部材を取付けることで同様の効果が得られる。
続いて、処置具本体40の構成を説明する。
図1Aおよび図1Bに示すように、処置具本体40は、外套管50と、挿入部60と、操作部100とを有している。挿入部60は、外套管50内に進退可能である。操作部100は、挿入部60の基端部に取付けられている。
本実施形態において、先端部材67の先端部67aの内部に形成されたルーメンは、少なくともリンク部材63の一部が挿入できる内径を有する。テーパー形状の内周面67eが形成されている先端部材67の斜面部67bは、後述するように、リンク部材63の一対のテール63cに当接することにより、リンク部材63の一対のレッグ63aが閉じている状態を解除できる。すなわち、先端部材67の斜面部67bは、リンク部材63とクリップ10との係合を解除する(リリースする)リリース機構である。
これらの構成により、支持部67dに対するクリップ10のぐらつきを極力小さく抑えることができる。また、支持部67dに対するクリップ10のある程度の傾きが生じた場合でも、クリップ10が支持部67dに接触することにより、クリップ10がそれ以上傾かないように支持部67dによって支持される。すなわち、クリップ10が支持部67dに対して微小に傾くことができる。このため、内視鏡のチャンネルなどの屈曲形状に対してもスムーズに医療機器1を挿入することができる。
拡径部72は、例えば金属などで円筒状に形成されている。拡径部72の外径は、コイルシース66の内径よりも小さく、先端部材67の基端部67cの内径よりも大きい。
本実施形態において、接続部材72aは、拡径部72とリンク部材63とを接続するために設けられている。接続部材72aは、例えば、動力伝達部材62と同じ構成を有してもよい。例えば、一本のワイヤにより接続部材72aを形成する場合、先端および基端がそれぞれリンク部材63の基端および拡径部72の先端にロウ付けや抵抗溶接などにより固定されていてもよい。
本実施形態において、リンク部材63の幅は、自然状態にあるリンク部材63の軸線C1に直交する方向の外径である。リンク部材63の幅は、弾性部材36の内径、押さえ管31の係止部32の内径、および先端部材67の先端部67aの内径よりも小さい。一方、リンク部材63の幅は、先端部材67の基端部67cの内径よりも大きくてもよい。
操作部本体101は、コイルシース66の基端部に取付けられている。操作部本体101は、軸線方向Yに延びる棒状に形成され、基端部に指掛け部101aが設けられている。操作部本体101には、軸線方向Yに延びるスリット101bが形成されている。
(医療機器1の初期状態)
本実施形態において、詳細な説明を省略するが、操作者は、例えば、体内に挿入した内視鏡のチャンネルを経由して、医療機器1を標的組織Tの近傍に導入し、内視鏡の先端からクリップ10のアーム部材11を突出させることができる。そして、操作者は、アーム部材11を開いた状態で標的組織Tに向かって押し込むことにより、標的組織Tをアーム部材11の第一アーム12および第二アーム13の間に位置させることができる。本実施形態において、標的組織Tが開形態にあるアーム部材11の第一アーム12および第二アーム13の間に位置する状態を、医療機器1の初期状態と称する。
本実施形態において、アーム部材11の開き幅が最大である状態を開形態の一例として説明するが、開形態はこれに限定されない。所定の標的組織Tを好適に処置するために、クリップ10のアーム部材11が標的組織Tのサイズに合わせて適宜な幅で開いた状態は、本実施形態における「開形態」に含まれる。
図2Aおよび図2Bには、操作者がスライダ102を基端側へ引く(後退させる)操作において、アーム部材11の第一被係止部16、17、第二被係止部21、22が押さえ管31の係止部32に接触し、係止部32を乗越えようとする際の状態が示されている。
リンク部材63と係合しているアーム部材11は、図2Bに示すように、突部18、19によって、弾性部材36が一部圧縮された状態になる。また、アーム部材11の第一アーム12および第二アーム13は、押さえ管31の先端側の内周面に形成されたテーパー面31aに当接している。この状態において、第一アーム12および第二アーム13は、テーパー面31aに当接しながら基端側へ引き戻されると、テーパー面31aによって互いの距離が近くなる。すなわち、アーム部材11の開き幅が減少し、標的組織Tの根元をより強く緊縛している。この際、アーム部材11の第一アーム12および第二アーム13は、互いに接触する状態、あるいは互いの距離が略ゼロである状態であってもよい。本実施形態において、アーム部材11の第一アーム12および第二アーム13は、互いに接触する状態、あるいは互いの距離が略ゼロである状態を、アーム部材11の閉形態と定義する。
この状態において、押さえ管31内において、弾性部材36は、軸線Y方向に圧縮されるが、隣り合う素線36aが一定の距離を開けて離間する状態である。
その結果、操作者がアーム部材11の第一アーム12および第二アーム13を再び開形態へ戻すことができる。すなわち、上述の接触状態までスライダ102が引き戻される過程において、操作者が内視鏡を操作することにより、改めてクリップ10を用いて、標的組織Tにクリップ10を掴み直すことができる。
上述の医療機器1の接触状態から、操作者がさらにスライダ102を引戻すと、アーム部材11の第一アーム12および第二アーム13は、さらに基端側へ移動される。その際、図3Aおよび図3Bに示すように、第一アーム12および第二アーム13は、互いに接近する方向に弾性変形し、係止部32内に挿入される。具体的に、第一アーム12の第一被係止部16、17は、弾性変形した状態で係止部32内を挿入される。
その結果、図3Aに示すように、第一アーム12の第一被係止部16、17が係止部32を通過すると、第一被係止部16の先端部と、第一被係止部17の先端部との両方とも、係止部32に当接する。アーム部材11は、第一被係止部16、17および第二被係止部21、22が係止部32を乗越えた乗り越え状態になる。このとき、アーム部材11の第一アーム12および第二アーム13は、閉形態を維持したままである。また、クリップ10と動力伝達部材62とが互いに係合する係合形態は、維持されている。
アーム部材11を押さえ管31の基端側に移動させようとする力量、すなわち、スライダ102を基端側へ引き戻す力量を解除すると、弾性部材36の弾性力によって、アーム部材11の第一被係止部16、17および第二被係止部21、22が係止部32に対して先端側に係止され、医療機器1が係止状態になる。
前述したように、ガイド部材64は、外径が先端部材67の基端部67cの内径よりわずかに小さく形成されている。このため、ガイド部材64が先端部材67の基端部67cに進入する際、基端部67cに対するぐらつきが殆どない状態で軸線Y方向に沿って移動することができる。その結果、操作者がスライダ102を基端側へ引き戻す際、ガイド部材64の先端側に連結されたリンク部材63も、先端部材67内において、殆どぐらつきがない状態で軸線Y方向に沿って基端側へ移動することができる。
その後、操作者は、以下の手順でスライダ102を操作することにより、リンク部材63とクリップ10との係合を解除し、クリップ10を留置することができる。
操作者は、スライダ102をさらに基端側へ引き戻すと、クリップ10のアーム部材11の第一被係止部16、17および第二被係止部21、22が係止部32に係止する状態が解除され、アーム部材11がさらに基端側へ移動される。言い換えると、アーム部材11の基端側への移動に伴い、第一被係止部16、17および第二被係止部21、22が同様に基端側へ移動し、係止部32から離間する。なお、押さえ管31内において、弾性部材36がさらに圧縮される。
この際、図4Aに示すように、リンク部材63は、先端部材67内において、リンク部材63の一対のテール63cが先端部材67の斜面部67bに当接するまで、基端側へ移動される。なお、前述したように、リンク部材63が先端部材67内に移動する際のぐらつきは、ガイド部材64によって防げる。このため、リンク部材63は、先端部材67内において、ほぼ軸線Y方向に沿って基端側へ移動することができる。その結果、リンク部材63の一対のテール63cは、ほぼ同時に先端部材67の斜面部67bに当接する。この過程において、クリップ10と動力伝達部材62とが互いに係合する係合形態は、維持されている。
本実施形態において、基端面63dの先端の一点のみが内周面67eに接触することを例として説明するが、リンク部材63の一対のテール63cと先端部材67の斜面部67bとが当接する形態は、これに限定されない。例えば、一対のテール63cと先端部材67とが対向する部分において、いずれか一方のみにおいて斜面が形成され、もう一方において突起などが形成されてもよい。
この過程において、テール63cと内周面67eとの接触部分において、テール63cと斜面部67bとが互いに押圧している。このため、基端側へ引き戻す力量と、テール63cと内周面67eとの接触部分においてテール63cが斜面部67bから受ける押圧力と、の二つの力量は、リンク部材63に作用している。なお、この二つの力量の作用線は一致していないため、リンク部材63には、この二つの力量によるモーメントが作用している。
リンク部材63とアーム部材11との係合が解除されると、図5Aおよび図5Bに示すように、押さえ管31内において、弾性部材36はさらに圧縮される状態になる。この状態において、例えば、弾性部材36は、軸線方向Yに隣り合う素線36aが互いに密着した状態で圧縮されてもよい。
本実施形態において、閉形態にあるアーム部材11によって標的組織Tが把持された状態において、リンク部材63の一対のテール63cが先端部材67の斜面部67bに当接し、一対のレッグ63aが開く状態で所在する位置を、リンク部材63の第二の位置と定義する。すなわち、本実施形態において、リンク部材が動力伝達部材62によって第二の位置まで移動されると、クリップ10と動力伝達部材62とは、係合形態から離間形態に遷移される。
その結果、標的組織Tが把持された状態で、クリップ10を体内に留置することができる。
以上で、本実施形態に係る医療機器1を用いて、標的組織Tを結紮する手技が終了する。
本実施形態に係る医療機器1によれば、操作部100のスライダ102を引き戻すことにより、クリップ10のアーム部材11が開形態になる際、リンク部材63の第一の位置から、クリップ10のアーム部材11が閉形態になる際、リンク部材63が先端部材67に当接する第二の位置まで、リンク部材63とアーム部材11とを一緒に移動させると、リンク部材63とアーム部材11との係合を解除することができる。
すなわち、本実施形態に係る医療機器1によれば、リンク部材63の第一の位置から第二の位置までのストロークを確保し、スライダ102を操作し動力伝達部材62の基端側への引き戻す量を制御するのみで、より容易にクリップ10を留置することができる。
以上、リンク部材63が一対のレッグ63aを備える例を説明したが、本実施形態に係る医療機器1の構成は、これに限らない。医療機器1は、例えば、リンク部材63が一対のレッグ63aのいずれか一方のみを備える構成であってもよい。すなわち、本実施形態に係る医療機器1において、リンク部材63は、一体的に形成されたレッグ63a、変形部63b、およびテール63cを1組のみを有して構成されてもよい。
この場合、医療機器1は、リンク部材63の折り返し部63eがフックなどの形状を有し、アーム部材11の中央部14に引っ掛かることにより、アーム部材11とリンク部材63とが互いに係合される。また、リンク部材63は、レッグ63aと一体的に形成されたテール63cが先端部材67の斜面67eに当接することにより、同様に変形部63bが大きく弾性変形することができる。その結果、リンク部材63のレッグ63aは、軸線C1から離間する方向、すなわち、リンク部材63の長手軸方向から外側へ回転する。このとき、リンク部材63の折り返し部63eとアーム部材11の中央部14との係合が解除されることにより、リンク部材63とアーム部材11との係合が解除される。
リンク部材63が一つのレッグ63aのみを備える医療機器1は、一対のテール63cを備えてもよい。この医療機器1において、ガイド部材64により、クリップ10が軸線C1に沿って基端側へ引き戻され、一対のテール63cがほぼ同時に先端部材67の斜面67eに当接することができる。しかしながら、一対のテール63cのうち、レッグ63aと一体的に形成されたテール63cのみが変形部63bの弾性変形によって回転でき、もう一方のテール63cが斜面67eに当接した状態が維持される。その結果、医療機器1において、レッグ63aが同様上述の実施形態同様に軸線C1から離間する方向において安定して回転することができる。
また、アーム部材11の中央部14がリンク部材63の一対のレッグ63aによって挟まれ、すなわち、アーム部材11とリンク部材63とが直接係合される例を説明したが、本実施形態に係る医療機器1の構成は、これに限らない。例えば、アーム部材11とリンク部材63との間に、その他の部材をさらに配置してもよい。
次に、本実施形態に係る医療機器1の一変形例を説明する。以下、本実施形態に係る医療機器1と同じ構成の説明を省略し、本実施形態と異なる点を中心に説明する。
図8Aおよび図8Bに示すように、リンク部材73は、先端側に一対の開閉可能なレッグ73aと、一対の変形部(支点部)73bと、基端側に傾斜面が形成された一対のテール73cとを有して形成されている。本実施形態において、リンク部材73は、例えば、ステンレス鋼のような金属材料によって一体化で形成されてもよい。
本変形例に係る医療機器1Aは、その他の構成は上記実施形態に係る医療機器1の構成と同様であってもよい。
その結果、リンク部材73とアーム部材11との係合状態が解除され、押さえ管31内に設けられた弾性部材36の弾性力によって、アーム部材11を含むクリップ10が先端側へ移動される。このように、上記実施形態に係る医療機器1同様に、本変形例に係る医療機器1Aのクリップ10は、体内に留置されることができる。
以下、本発明に係るクリップ装置を用いて、クリップを体内に留置する操作を行う際、操作者がスライダ102を引き戻す量とスライダ102を引き戻すのに必要な操作力量との関係の観点から、再度本発明に係るクリップ装置の作用を説明する。
図9において、横軸が操作者によるスライダ102を基端側へ引き戻す量を示し、縦軸がスライダ102を引き戻す際必要な力量を示している。また、図9において、実線は本発明に係る医療機器1あるいは医療機器1Aを示し、破断線は従来の内視鏡処置具を示している。
なお、以下の説明では、上記実施形態に係る医療機器1の例を説明するが、上記変形例に係る医療機器1Aについては、同様な効果を有する。
領域R1において、従来の内視鏡処置具の場合、同等な操作が行われるため、操作者がスライダを引き戻す量が増大にしたがって、必要な力量が増大する。
領域R2において、医療機器1の接触状態までの操作では、アーム部材11の閉形態を維持しながら、アーム部材11を基端側へ引き戻す操作のみであるため、操作者がスライダ102を引き戻す量に従って、必要な力量が一旦減少する。医療機器1の接触状態から医療機器1の係止状態までの操作では、アーム部材11は、第一被係止部16,17および第二被係止部21,22が係止部32に接触しながら基端側へ引き戻されるため、操作者がスライダ102を引き戻す量に従って、必要な力量が増大する。図9に示すクリップ10を乗り越え状態にするのに必要な力量F1は、例えば、20〜50N(ニュートン)程度である。
領域R2において、従来の内視鏡処置具の場合、同等な操作が行われるため、操作者がスライダを引き戻す量と必要な力量との関係は、本実施形態に係る医療機器1と同等である。
ただし、図9に示すように、本実施形態に係る医療機器1によれば、リンク部材63とクリップ10との係合を解除するために必要な力量、すなわち、クリップ10を留置するために必要な力量は、クリップ10を乗り越え状態にするのに必要な力量F1よりも小さい。
また、領域R3において、領域R2に比べてスライダ102を引戻す単位移動量当たりのスライダ102を引戻す為に必要な力量の増加率が小さくなる。言い換えれば、領域R3では比較的勾配の緩やかな急激な力量特性の変化を示すのに対し、係止部32に第一被係止部16、17、第二被係止部21、22が接触した領域R2では比較的勾配の急激な力量特性の変化を示している。
前述のように、従来の内視鏡処置具では、破断機構を破断させるために必要な力量は、処置対象の組織の物性(硬さ)によって、大きく設定する必要がある。このため、図9に示す領域R3′において、クリップと動力伝達部材との係合を解除するために必要な力量、すなわちクリップを留置するために必要な力量は、クリップ10を乗り越え状態にするのに必要な力量F1以上になる。その後、操作者がスライダを引き戻す力量が破断機構を破断させるために必要な力量に達すると、破断機構が破断し、クリップと動力伝達部材との係合を解除することができる。
上述のように、本実施に係る医療機器1または医療機器1Aによれば、医療機器1のアーム部材11が開形態にある状態からクリップ10を体内に留置する操作において、操作者がスライダ102を基端側へ引き戻すために必要な力量は、クリップ10を乗り越え状態に遷移させるのに必要な力量F1以下である。一方、従来の内視鏡処置具の場合、クリップを体内に留置する操作において、操作者がスライダを基端側へ引き戻すために必要な力量は、クリップを乗り越え状態に遷移させるのに必要な力量F1よりも大きい。
このため、本実施形態に係る医療機器1によれば、異なる物性(硬さ)の標的組織Tを処置しても、クリップ10を体内に留置するために必要な力量を所定の値以下に制御し、操作性の向上を図ることができる。
以上で、医療機器2において、リンク部材63が一対のレッグ63aを有する構成の例を説明したが、この場合においても、上述同様に、リンク部材63が一つのレッグ63aのみを有してもよい。また、医療機器2において、リンク部材63と処置具10Aとは、他の部材を介して連結されてもよい。さらに、医療機器2において、スネアループ81の形状は、特に制限されない。例えば、スネアループ81は、六角形状に形成されてもよいし、半月形状に形成されてもよい。このように構成された医療機器2は、上述同様の効果を有する。
2 医療機器(結紮装置)
10 クリップユニット(クリップ)
10A 処置具
11 アーム部材
12 第一アーム
13 第二アーム
16,17 第一被係止部
18,19,23,24 突部
21,22 第二被係止部
31 押さえ管
32 係止部
36 弾性部材(つる巻きバネ、バネ)
36a 素線
40 処置具本体
50 外套管
60 挿入部
61 シース部(シース)
62 動力伝達部材(操作ワイヤ、ワイヤ)
63,73 リンク部材
63a,73a レッグ
63b,73b 変形部
63c,73c テール
63d,73d 基端面
63e,73e 折り返し部
64 ガイド部材
67 先端部材
67a 先端部
67b 斜面部
67c 基端部
67d 支持部
67e 内周面(斜面)
72 拡径部
72a 接続部材
80 固定部材
100 操作部
101 操作部本体(ハンドル)
102 スライダ
T 標的組織
前記リンク部材は、前記テールが前記シースの内周面と接触することで、前記クリップユニットと前記動力伝達部材とを前記係合形態から前記離間形態へ遷移してもよい。
本発明の第六の態様によれば、上記第四の態様に係る医療機器において、前記リンク部材は、前記テールが前記シースの前記内周面に当接する際、前記変形部が弾性変形し、前記レッグが前記長手軸から離れる方向へ移動し、前記テールが前記長手軸に向かって移動するよう構成されてもよい。
前記ガイド部材が前記シース内に配置されることにより、前記テール及び前記第二テールがほぼ同時に前記シースの前記内周面に接触してもよい。
本発明の第十三の態様によれば、上記第四の態様に係る医療機器において、前記シースの前記内周面は、テーパー形状に形成され、前記テールは、前記テーパー形状に形成された前記シースの前記内周面に当接することにより、前記動力伝達部材と前記クリップユニットとの前記係合を解除するよう構成される外周面を備え、前記テールの前記外周面および前記長手軸がなす角と、前記シースの前記テーパー形状に形成された前記内周面および前記長手軸がなす角とは異なる値であってもよい。
本発明の第十四の態様によれば、上記第一の態様に係る医療機器において、前記動力伝達部材と前記クリップユニットとの前記係合を解除するための力量は、前記クリップユニットが対象組織を把持し、かつ、前記閉形態から前記開形態への遷移が制限される状態において、前記クリップユニットを中空の押さえ管に係止するための力量よりも小さい値であってもよい。
本発明の第十五の態様によれば、医療機器は、クリップユニットと、前記クリップユニットを操作する動力伝達部材と、前記動力伝達部材が挿通できる内径を有するシースと、前記クリップユニットと前記動力伝達部材とを連結し、前記シースの内径に少なくとも一部が挿通可能に構成され、前記シースの内周面と接触することで前記クリップユニットと前記動力伝達部材との連結を解除するよう構成されるリンク部材と、を備える。
本発明の第十六の態様によれば、上記第十五の態様に係る医療機器において、前記リンク部材は、前記シースの前記内周面に当接して前記クリップユニットおよび前記動力伝達部材の前記連結を解除するよう変形可能に構成されてもよい。
本発明の第十七の態様によれば、上記第十六の態様に係る医療機器において、前記リンク部材は、前記シースの前記内周面に当接するよう移動されると、前記リンク部材の先端部が前記動力伝達部材の前記長手軸に対して外側へ回転して前記リンク部材を前記動力伝達部材から取り外すよう変形可能に構成されてもよい。
本発明の第十八の態様によれば、上記第十五の態様に係る医療機器において、前記動力伝達部材と前記クリップユニットとの前記係合を解除するための力量は、前記クリップユニットが対象組織を把持し、かつ、前記閉形態から前記開形態への遷移が制限される状態において、前記クリップユニットを中空の押さえ管に係止するための力量よりも小さい値であってもよい。
本発明の第十九の態様によれば、クリップユニットをリリースする方法は、前記クリップユニットと前記クリップユニットを操作する動力伝達部材とを連結する前記リンク部材を移動させることで、前記リンク部材を前記リンク部材の少なくとも一部が挿通可能な内径を有するシースの内周面に接触させ、前記リンク部材を前記シースの内周面に接触させることで、前記リンク部材による前記クリップユニットと前記動力伝達部材との連結を解除することを含む。
アーム部材11は、例えば、コバルトクロム合金などで形成された板材を、第一アーム12および第二アーム13、中央部14、第一被係止部16、17、第二被係止部21、22、突部18、19、23、24を平面状に展開した形状に打抜くことで形成される。図1Bに示すように、アーム部材11は、この打抜いた部材を、第一アーム12と中央部14との接続部、および第二アーム13と中央部14との接続部で折り曲げて、平面視でC字状となり、一体に形成される。
アーム部材11の第一アーム12と第二アーム13とは、それぞれの先端が互いに離間する方向、すなわち、アーム部材11が開く方向へ移動する弾性復元力を有する。
ただし、図9に示すように、本実施形態に係る医療機器1によれば、リンク部材63とクリップ10との係合を解除するために必要な力量、すなわち、クリップ10を留置するために必要な力量は、クリップ10を乗り越え状態にするのに必要な力量F1よりも小さい。
また、領域R3において、領域R2に比べてスライダ102を引戻す単位移動量当たりのスライダ102を引戻す為に必要な力量の増加率が小さくなる。言い換えれば、領域R3では比較的勾配の緩やかな力量特性の変化を示すのに対し、係止部32に第一被係止部16、17、第二被係止部21、22が接触した領域R2では比較的勾配の急激な力量特性の変化を示している。
Claims (11)
- 一対のアームから構成され、前記一対のアームが離間した開形態と前記一対のアームが閉じた閉形態とに遷移するクリップユニットと、
前記クリップユニットを操作する動力伝達部材と、
前記クリップユニットと前記動力伝達部材とを係合させるリンク部材と、
前記クリップユニットと前記動力伝達部材との係合を解除させるリリース機構と、
を備え、
前記リンク部材は、
前記クリップユニットが前記開形態にあるときに、第一の位置に配置され、
前記クリップユニットが前記閉形態にあるときに、第二の位置に配置され、
前記動力伝達部材の操作により、前記リンク部材が前記第一の位置から前記第二の位置に移動でき、
前記リンク部材が前記動力伝達部材によって前記第二の位置に移動させて前記リリース機構と当接することにより、前記リンク部材による前記動力伝達部材と前記クリップユニットとの係合が解除される
医療機器。 - 前記クリップユニットが前記開形態にあるときに、前記リンク部材は、前記リリース機構と離間した位置に配置される請求項1に記載の医療機器。
- 前記クリップユニットは、前記閉形態から前記開形態への遷移を規制するロック機構をさらに備え、
前記ロック機構によって前記クリップユニットの前記閉形態から前記開形態への前記遷移が規制され状態において、前記リンク部材は、前記動力伝達部材によって移動されて前記リリース機構と接触する
請求項2に記載の医療機器。 - 前記リリース機構は、前記リンク部材の少なくとも一部が挿入できる内径を有するシースを備え、
前記リンク部材は、
前記動力伝達部材の長手軸に交差する方向に延びて形成された変形部と、
前記変形部から前記クリップユニット側に向かって延びて形成されたレッグと、
前記変形部から前記動力伝達部材側に向かって延びて形成されたテールと、を備え、
前記クリップユニットと前記動力伝達部材は、互いに係合する係合形態と、互いの係合が解除されて離間する離間形態とを有し、
前記リンク部材は、前記テールが前記シースの内周面と接触することで、前記クリップユニットと前記動力伝達部材とを前記係合形態から前記離間形態へ遷移する
請求項1に記載の医療機器。 - 前記リンク部材は、前記テールが前記シースの前記内周面に接触することにより、前記レッグが前記長手軸から離間する方向に移動し変形する
請求項4に記載の医療機器。 - 前記シースは、前記内周面の一部がテーパー形状に形成され、
前記リンク部材は、テーパー形状の前記内周面に接触することにより、前記レッグが前記長手軸から離間する方向に移動し変形する
請求項5に記載の医療機器。 - 前記変形部は、前記レッグ及び前記テールの剛性よりも低い剛性を有する請求項4に記載の医療機器。
- 前記リンク部材は、
前記動力伝達部材の前記長手軸に交差する方向において前記変形部と反対側に延びて形成された第二変形部と、
前記第二変形部から前記クリップユニット側に向かって延びて形成された第二レッグと、
前記第二変形部から前記動力伝達部材側に向かって延びて形成された第二テールと、をさらに備え、
前記リンク部材は、前記テール及び前記第二テールが前記シースの前記内周面に接触することにより、前記レッグ及び前記第二レッグが互いに離間する方向に移動して変形し、前記クリップユニットと前記動力伝達部材とを前記係合形態から前記離間形態へ遷移する
請求項4に記載の医療機器。 - 前記リンク部材は、テーパー形状に形成された前記内周面における前記シースの最小内径と略同等の外径を有し、筒状に形成されたガイド部材をさらに備え、
前記ガイド部材が前記シース内に配置されることにより、前記テール及び前記第二テールがほぼ同時に前記シースの前記内周面に接触する
請求項8に記載の医療機器。 - 前記クリップユニットは、
筒状に形成され、前記一対のアームが挿入される中空の押さえ管と、
前記一対のアームおよび前記押さえ管を係合させる弾性部材と、
をさらに備え、
前記弾性部材は、
前記クリップユニットの前記閉形態から前記開形態への遷移が規制され状態において、さらに弾性変形することができ、
前記クリップユニットと前記動力伝達部材とが前記係合形態から前記離間形態へ遷移されると、前記弾性部材の弾性力により、前記長手軸に沿って前記クリップユニットを前記動力伝達部材から離間させる
請求項4に記載の医療機器。 - 前記リンク部材は、前記シースのテーパー形状の前記内周面に対向して形成された外周面を有し、
前記リンク部材の前記外周面および前記長手軸が成す角度と、前記シースのテーパー形状の前記内周面および前記長手軸が成す角度とは異なる値である
請求項4に記載の医療機器。
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