JPWO2020110856A1 - フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の一態様に係るフラックス入りワイヤは、筒状の鋼製外皮と、鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備え、フラックスの成分が、弗化物:F換算値で0.10〜0.30%、酸化物:0.05〜0.28%、炭酸塩:0〜0.50%、及び鉄粉:0〜10%、を含み、フラックスにおいて、Si酸化物の含有量:SiO2換算値で0〜0.150%、Na化合物の含有量及びK化合物の含有量の合計:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で0.010〜0.200%、Ca化合物の含有量:Ca換算値で0〜0.100%、CaOの含有量:0〜0.15%、Zr化合物の含有量:Zr換算値で0〜0.200%、及びTiO2の含有量:0〜0.07%であり、弗化物、酸化物、及び炭酸塩を除く化学成分が所定範囲内であり、あらゆる形態のSiの合計含有量が、0.30%未満である。

Description

本発明は、フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法に関する。
本願は、2018年11月27日に、日本に出願された特願2018−221542号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、自動車の車体軽量化を目的として、自動車用鋼板には高強度化が求められている。鋼板の強度を向上させることにより、鋼板の厚さを減少させて車体重量を減少させながら、車体の安全性を確保することが出来る。例えば、近年の自動車用鋼板は、厚さが0.8〜3.6mmであり、引張強さ(TS)が590〜1180MPaの鋼板や1.5GPaのホットスタンプである。
しかしながら、鋼板の強度を向上させた場合、鋼板の溶接部に低温割れが生じやすくなる。低温割れとは、溶接後、溶接部の温度が常温付近に低下してから溶接部に発生する割れの総称である。特に薄鋼板の溶接では溶接金属のルート部に割れが発生することがある。従って、鋼板の高強度化に伴い、溶接部における低温割れ抑制を求める声が高まっている。
図1に、薄板の溶接継手の溶接部に生じる低温割れの模式図を示す。図1は、重ね隅肉溶接継手3の断面図である。通常の重ね隅肉溶接継手3は、溶接金属31及び母材となる鋼材32とから構成される。典型的には、溶接金属31に、図1に示されるように低温割れ33が生じる。このような低温割れ33の発生は避ける必要がある。
低温割れを抑制するための技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。ここでは、CaFなどが含有され、その含有量の合計値αが全質量に対する質量%で3.3〜6.0%であり、Ti酸化物などが含有され、その含有量の合計値βが全質量に対する質量%で0.4〜1.2%であり、CaCOなどが含有され、その含有量の合計が、全質量に対する質量%で0.1〜0.5%であり、フラックス中の鉄粉の含有量が、全質量に対する質量%で10%未満であるフラックス入りワイヤが開示されている。このフラックス入りワイヤによれば、引張強さ780MPa以上の高強度鋼の溶接に用いられるフラックス入りワイヤであって、溶接金属の靭性に優れ、かつ低温割れを防止するための予熱作業が不要となる、または、予熱作業を著しく低減できるフラックス入りワイヤを提供することができるとされている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術によるフラックス入りワイヤは、多量のスラグを発生させる。溶接ビードの表面に付着するスラグは、溶接部の電着塗装性を悪化させ、これにより耐食性を低下させる。ここで、電着塗装性とは、電着塗装処理後に塗装がされなかった部位(電着塗装不良部位)の面積により評価される特性をいう。そのため、耐食性確保のための電着塗装性が要求される部材では、特許文献1に記載の技術を適用することが困難であった。
スラグによって生じた電着塗装不良の一例を図2−1〜図2−3に示す。図2−1は、溶接後且つ電着塗装前の溶接ビードの写真である。このビードの中央部及び端部にスラグが付着している様子が図2−1に示されている。図2−2は、図2−1に示された溶接ビードに電着塗装を施した試料の写真である。スラグが付着している箇所に塗装不良が生じている様子が図2−2に示されている。図2−3は、図2−2の電着塗装後の溶接ビードに腐食試験を実施した後の試料の写真である。電着塗装部に錆が生じている様子が図2−3に示されている。
スラグが電着塗装性を低下させる理由は、スラグの主成分であるSi酸化物及びMn酸化物などが絶縁体である点にある。このようなスラグの付着箇所は、電着塗装時に通電しないので、塗装が付着しない。溶接後にスラグを除去することによって電着塗装性を向上させることは可能であるが、部品の製造効率を考慮すると、溶接後にスラグ除去を行うことは好ましくない。
一般的に、溶接ワイヤには溶接部の脱酸を目的としてSi、Mnが添加されており、Si、Mn系スラグは、従来のソリッドワイヤを用いた溶接においてすら、生じるものである。このため、これの発生量を削減するための試みが続けられている。例えば特許文献2では、めっきを含めたワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.2〜0.5%、Mn:0.3〜0.8%、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.1〜0.3%、Ti:0.001〜0.2%、Cu:0〜0.5%、Cr:0〜2.5%、Nb:0〜1.0%、V:0〜1.0%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、X=2×〔Si〕+〔Mn〕+3×〔Ti〕+5×〔Al〕との式で定義されるXの値が、質量%で1.5〜3.5%の範囲内にあるガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤが開示されている。特許文献3では、スラグの低減を目的としたものではないが、ワイヤ全質量に対する質量%で、Si:0.10%未満、C:0.01〜0.15%、Mn:1.80〜2.50%、S:0.001〜0.070%、Mo:0.30%以下を含有し、P:0.030%以下、O:0.010%以下で、その他はFe及び不可避的不純物よりなり、TiおよびAlの1種または2種の合計を0.20%以下含有することを特徴とするパルスMAG溶接用ソリッドワイヤが開示されている。
しかし、これらソリッドワイヤを用いたとしても、例えばSi含有量やMn含有量が高い鋼部材を溶接する場合には、特に溶接ビードの止端部に沿ってSi、Mn系スラグが筋状に発生することがあった。従って、自動車用鋼板の溶接に、ソリッドワイヤよりもスラグを多量に発生させるフラックス入りワイヤを適用した例は見られない。Si含有量及びMn含有量等を単に減少させてこの問題に対応しようとした場合、脱酸不足によるブローホール発生などが生じる。
特許文献4には、鋼製外皮内にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤであって、ワイヤ全質量あたり、Cを0.01〜0.12質量%、Siを0.05質量%以上0.30質量%未満、Mnを1.0〜3.5質量%、Niを0.1質量%以上1.0質量%未満、Moを0.10〜0.30質量%、Crを0.1〜0.9質量%、TiOを4.5〜8.5質量%、SiOを0.10〜0.40質量%、Alを0.03〜0.23質量%、Na化合物若しくはK化合物又はその両方を、Na換算値及びK換算値の合計で0.01〜0.30質量%、及びFeを80質量%以上含有するガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。
特許文献5には、鋼製外皮内にフラックスが充填されたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、ワイヤ全質量あたり、C:0.01質量%以上0.20質量%以下、Mn:0.5質量%以上5.0質量%以下、TiO:2.0質量%以上10.0質量%以下、Ni:0.10質量%以上5.00質量%以下を含有し、P:0.050質量%以下、S:0.050質量%以下であり、前記TiOについて、106μm以下の粒度のワイヤ全質量あたりの含有量をα1(質量%)とし、106μm超の粒度のワイヤ全質量あたりの含有量をα2(質量%)としたときの比であるα1/α2の値が、0.90以上1.50以下であるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。
特許文献6には、鋼製外皮にフラックスを充填してなる高張力鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.08〜0.16%、Si:0.3〜0.75%、Mn:1.2〜2.1%、Cu:0.15〜0.45%、Ni:0.8〜3.0%、Cr:0.35〜0.65%、Mo:0.2〜0.6%、Ti:0.04〜0.30%を含有し、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、弗素化合物:F換算値の合計で0.01〜0.1%、SiO:0.01〜0.2%、Na及びK化合物:NaO換算値とKO換算値の合計で0.02〜0.15%を含有し、下記式で示されるPtsが0.8〜1.2であり、残部が鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避的不純物からなることを特徴する高張力鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。
Pts=[C]+[Si]/7+[Mn]/5+[Cu]/7+[Ni]/20+[Cr]/8+[Mo]/2+[Ti]/5
特許文献7には、鋼製外皮と、前記鋼製外皮に充填されたフラックスと、を備え、前記フラックスが、F換算値の合計値αが0.21%以上である弗化物と、含有量の合計値βが0.30〜3.50%である酸化物と、含有量の合計値が0〜3.50%である炭酸塩とを含み、CaOの含有量が0〜0.20%であり、鉄粉の含有量が0%以上10.0%未満であり、Y値が5.0%以下であり、CaFの含有量が0.50%未満であり、Ti酸化物の含有量が0.10〜2.50%であり、βに対するαの比が0.10〜4.00であり、MgCO、NaCO、およびLiCOの含有量の合計値が0〜3.00%であり、前記弗化物、前記酸化物、前記CaO、前記炭酸塩、および前記鉄粉を除く化学成分が所定範囲内であり、Ceqが0.10〜0.44%であるフラックス入りワイヤが開示されている。
しかし、これら特許文献に記載の技術においては、スラグが電着塗装性に及ぼす影響について何ら検討されていない。また、スラグの量又は成分を制御することについても、これら特許文献には言及がない。
国際公開第2014/119082号 日本国特許第5652574号公報 日本国特許第5037369号公報 日本国特許第6322093号公報 日本国特許第6399984号公報 日本国特許第6219259号公報 国際公開第2017/154122号
本発明は、高強度鋼板の溶接に適用された場合であっても、溶接部の機械特性及び電着塗装性を確保しながら低温割れ、及びブローホール発生を抑制可能なフラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係るフラックス入りワイヤは、筒状の鋼製外皮と、前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備え、前記フラックスの成分が、弗化物:F換算値で0.10〜0.30%、酸化物:前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.05〜0.28%、炭酸塩:前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0〜0.50%、及び鉄粉:前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜10%、を含み、前記フラックスにおいて、Si酸化物の含有量:SiO換算値で0〜0.150%、Na化合物の含有量及びK化合物の含有量の合計:NaO換算値及びKO換算値の合計で0.010〜0.200%、Ca化合物の含有量:Ca換算値で0〜0.100%、CaOの含有量:前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜0.15%、Zr化合物の含有量:Zr換算値で0〜0.200%、及びTiOの含有量:前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜0.07%であり、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.25%、Si:0〜0.250%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ti:0.10〜0.30%、Al:0〜0.300%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜1.50%、Mo:0〜0.70%、B:0〜0.0100%、Nb:0〜0.300%、Sn:0〜0.010%、Mg:0〜0.40%、Zr:0〜0.40%、V:0〜0.40%、及び残部:Fe及び不純物であり、あらゆる形態のSiの合計含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.30%未満である。
(2)上記(1)に記載のフラックス入りワイヤでは、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、Si:0〜0.200%であり、あらゆる形態のSiの合計含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.20%以下であってもよい。
(3)上記(1)に記載のフラックス入りワイヤでは、前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、Mn:0.5〜2.6%であってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のフラックス入りワイヤでは、前記鋼製外皮がシームレス形状であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のフラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮の外表面に送給潤滑剤をさらに備え、前記送給潤滑剤の、前記フラックス入りワイヤ10kg当たりの量が0.20〜1.00gであってもよい。
(6)本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法は、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のフラックス入りワイヤを用いて鋼材をガスシールドアーク溶接する。
(7)上記(6)に記載の溶接継手の製造方法では、下記式1によって算出される前記鋼材のPcmが0.25%以上であってもよい。
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B:式1
(8)上記(6)又は(7)に記載の溶接継手の製造方法では、前記鋼材が、板厚0.8〜3.6mm且つ引張強さ590〜1800MPaの鋼板であってもよい。
本発明によれば、高強度鋼板の溶接に適用された場合であっても、溶接部の電着塗装性を確保しながら低温割れを抑制可能なフラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法を提供することができる。例えば本発明を自動車用鋼板に適用した場合、スラグによる電着塗装性の低下を最小限に抑制することが出来るので、スラグ除去に係る工程を省略しながら車体の溶接部の耐食性を高めることが出来る。また、本発明は低温割れを抑制できるので、例えば低温割れ感受性が極めて高い高強度自動車用鋼板にも容易に適用することが出来る。
低温割れの模式図である。 スラグが付着した溶接ビードの一例を示す写真である。 スラグに起因する電着塗装不良の一例を示す写真である。 電着塗装不良に起因する耐食性低下の一例を示す写真である。 本実施形態に係るフラックス入りワイヤの一例を示す図である。 本実施形態に係るフラックス入りワイヤの一例を示す図である。 低温割れ評価用の溶接継手の模式図である。
本発明者らは、低温割れの抑制と電着塗装性の確保とを一挙に達成可能な溶接材料について鋭意検討を重ねた。その結果、下記の知見を得た。
(A)低温割れ防止に関し、本発明者らは、弗化物を利用するフラックスを用いることが有効であると考えた。溶接時に溶接金属またはHAZに低温割れを生じさせる因子は、溶接金属またはHAZの硬さ、継手拘束力、及び溶接金属中の拡散性水素量である。弗化物は、低温割れを生じさせる因子の一つである溶接金属の拡散性水素量を減少させて、溶接金属の耐低温割れ性を顕著に向上させる働きを有する。この理由は明らかではないが、水素(H)と、弗化物中の弗素(F)とが溶接中に結合して弗化水素(HF)となり、このHFが溶接金属外に放出されるからであると推測される。例えば自動車用鋼板(板厚0.8〜3.6mmの高強度薄板)のような高強度薄板の溶接においても、弗化物を利用するフラックスは低温割れの発生を充分に抑制することができる。但し、フラックスはスラグ量を増大させ、溶接部の電着塗装性を悪化させる。また、フラックスによって生じる場合があるスパッタは、溶接部に付着して溶接部表面に凹凸を生じさせ、電着塗装不良の原因となる。従って、電着塗装性を向上させるための手段が別途必要となる。
(B)本発明者らは、フラックス入りワイヤにおける合金Si量、及びSi化合物量を可能な限り低下させ、絶縁体であるSi酸化物の生成量を溶接時に減少させることにより、電着塗装性が改善されることを見出した。しかしながら、合金Si量を減少させると、溶接部の脱酸が不十分となるので溶接部の機械特性が損なわれた。本発明者らはさらに、溶接部の機械特性を保ちながら電着塗装性を確保する手段についても検討を重ねた。
(C)本発明者らは、スラグの成分を、Ti酸化物主体とすることにより、電着塗装性が一層改善することを知見した。これは、Ti酸化物が導電性を有するからであると考えられる。また、フラックス入りワイヤにおけるTiは、溶接中に溶融池を脱酸(Tiがシールドガス中の酸素と反応し、Ti酸化物になる。)するため、溶接部(溶接金属)の機械特性を高め、且つブローホール発生を抑制する作用を持つことも確認できた。即ち、Tiを利用することで、溶接部の機械特性を保ちながら電着塗装性を確保することが可能となった。
なお、通常のフラックス入りワイヤのフラックスにTiOが含まれる場合がある。このフラックス入りワイヤのフラックス中のTiOは、電着塗装性の確保の観点からは好ましくない。本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、TiOを低減する必要があるが、合金成分としてのTiの含有量を最適化する必要がある。合金成分としてフラックス入りワイヤに存在するTiは、溶接の際にTi酸化物へと変化し、スラグに導電性を付与する。
(D)さらに本発明者らは、スラグの成分においてNa化合物、K化合物、及び弗化物の量を最適化することにより、スパッタ低減及びアーク安定性の向上を達成し、スパッタによる電着塗装不良の回避、及びシールド不良によるブローホール発生の抑制が可能になることも知見した。
本発明の実施形態に係るフラックス入りワイヤは、上述の本発明者らの知見に基づき、各成分組成それぞれの単独及び共存による相乗効果によりなし得たものである。以下にそれぞれの各成分組成の限定理由について説明する。なお、以下においては、フラックス入りワイヤの化学成分をフラックス入りワイヤの全質量に対する割合である質量%で表すものとし、その質量%に関する記載を単に%と記載して説明する。以下、「フラックス入りワイヤ」を単に「ワイヤ」と記載することがある。通常、用語「ワイヤ」は、フラックス入りワイヤ及びフラックスを含まない中実のワイヤ(ソリッドワイヤ)の両方を意味するが、本実施形態においては、単に「ワイヤ」と記載した場合は、フラックス入りワイヤを意味する。
本実施形態に係るワイヤは、図3及び図4に示されるように、筒状の鋼製外皮11と、この鋼製外皮11の内部に充填されたフラックス12とを備える。なお、本実施形態に係るワイヤは、図4に示されるように、鋼製外皮11の材料である鋼帯の突き合わせ部に該当する継ぎ目13を備えるワイヤ2(シームありワイヤ)であってもよい。一方、継ぎ目13を溶接することによりワイヤを図3に示されるようなワイヤ1(シームレスワイヤ)としてもよい。鋼製外皮11の表面にめっきが設けられていても、潤滑剤が塗布されていてもよい。
なお、「フラックス入りワイヤの全質量(ワイヤの全質量)」とは、鋼製外皮11の質量とフラックスの質量12との合計値である。以下に挙げる成分は、合金成分(即ち、酸化物又は弗化物等の化合物ではない状態として)である場合、鋼製外皮11の成分であっても、鋼製外皮11の表面のめっきの成分であっても、金属粉又は合金粉の成分であっても良い。一方、ワイヤ1における酸化物又は弗化物は、フラックス12の成分とされることが通常である。
まず、ワイヤの合金成分について説明する。以下に説明する合金成分としてのC、Si、Mn、P、S、Ti、Al、Cu、Ni、Cr、Mo、B、Nb、Sn、Zr、Mg、及びVの含有量は、酸化物、弗化物、又は炭酸塩の形態ではなく、単体金属または合金として存在する成分(P及びSも、便宜上、合金成分に含まれるものとする)としてワイヤ中に存在するこれら元素の含有量を意味する。特に断りが無い限り、以下に説明する合金成分の数値範囲は、酸化物、弗化物、又は炭酸塩の形態でワイヤに含まれる元素の含有量を含まない。
[C:0.03〜0.25%]
Cは、アークを安定化し、溶滴を細粒化する作用を有する。C含有量が0.03%未満では、溶滴が大きくなってアークが不安定になる。また、C含有量が0.03%未満では、所望の引張強さを有する溶接部を得ることができない。従って、C含有量は0.03%以上とする。C含有量は、好ましくは0.06%以上、0.10%以上、又は0.15%以上である。
一方、C含有量が0.25%を超える場合、溶融池の粘性が低くなり、これによりビード形状が不良となる。また、C含有量が0.25%を超える場合、溶接部が過剰に硬化することにより、溶接部の耐割れ性が低下するおそれもある。従って、C含有量は0.25%以下とする。C含有量は、好ましくは0.22%以下、0.20%以下、又は0.18%以下である。
[Si:0〜0.250%]
Siは、合金元素としてワイヤに存在する場合、溶接金属の脱酸元素として働く。通常の溶接ワイヤでは、脱酸元素として合金Siが積極的に添加される。即ち、アーク溶接時に合金Siを用いて溶融池の脱酸を促進することにより、溶融金属凝固時のCO反応によるブローホールの発生を防止すると共に、溶接金属合金成分の酸化消耗を抑制し溶接部の引張強さを向上させる。しかしながら、電着塗装性の観点では、溶接時に生じるSi酸化物を極力低減させることが望ましい。従って本実施形態に係るワイヤでは、Si含有量を、溶接材料としてはかなり低い水準である0.250%以下とする必要がある。Si含有量は、好ましくは0.200%以下、0.150%以下、又は0.100%以下である。
電着塗装性を確保する観点からは、合金成分としてのSi含有量を0%とすることが好ましい。ただし、ワイヤの製造コスト、及びビード形状の安定性確保の観点から、Si含有量を0.001%以上、0.005%以上、又は0.010%以上と規定してもよい。
[Mn:0.5〜3.0%]
Mnは、Siと同様に脱酸作用を有する元素である。即ち、Mnはアーク溶接時における溶融池の脱酸を促進し、溶着金属の引張強さを向上させる。従って、Mn含有量は0.5%以上とする。Mn含有量を0.8%以上、1.0%以上、又は1.2%以上としてもよい。
一方、Mn含有量が過剰である場合、絶縁性のMn系スラグが溶接ビードの表面に著しく発生し、電着塗装不良が発生するおそれが高まる。従って、Mn含有量は3.0%以下とする。Mn含有量は、好ましくは2.6%以下、2.5%以下、2.0%以下、又は1.8%以下である。
[P:0.030%以下]
[S:0.030%以下]
P及びSは、溶接金属の靱性を損ね、溶接金属の凝固割れ発生を助長する一方で、有利な効果を有しない。従って、本実施形態に係るワイヤはP及びSを含む必要がなく、P及びSの含有量の下限値は0%である。しかしながら、鋼製外皮及びフラックス中に不純物としてP及びSが含まれる場合がある。P及びSは可能な限り除去されるべきであるが、0.030%以下のP及び0.030%以下のSの含有は許容される。P及びSそれぞれの上限値を0.020%、又は0.025%としてもよい。また、精錬コストを考慮して、P及びSそれぞれの下限値を0.001%以上、0.002%以上、又は0.005%以上としてもよい。
[Ti:0.10〜0.30%]
Tiは、合金元素としてワイヤに存在する場合、脱酸剤として作用する。さらにTiは、溶接金属中にTiの微細酸化物を生成することにより、溶接金属の靭性を向上させる効果も有する。加えて、本発明者らは、Ti酸化物を主体とするスラグは電着塗装性を損なわないことを見出した。これは、Ti酸化物が導電性を有するからであると推定される。従って、シールドガス中の酸素をTiと反応させ、スラグの成分をTi酸化物主体とすることで、溶接金属の機械特性を向上させながら溶接部の電着塗装性を確保することが可能となる。さらに、TiはSiの代わりに溶接金属の脱酸元素として作用する。このため、Tiには、溶接金属凝固時のCOガス生成を抑制することによりブローホール生成を抑制する働きもある。上述の効果を得るために、Ti含有量を0.10%以上とする。Ti含有量は、好ましくは0.12%以上、0.15%以上、又は0.18%以上である。
一方、Ti含有量が0.30%を超えると、溶接金属中の固溶Tiが過剰となることにより、溶接部の靭性及び伸びが低下する。また、アークの発生状態が不安定となってシールド不良やスパッタ発生の原因となる。従って、Ti含有量は0.30%以下とする。Ti含有量を0.25%以下、0.22%以下、又は0.20%以下としてもよい。
[Al:0〜0.300%]
Alは、本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために必須ではない。従ってAl含有量の下限値を0%としてもよい。しかし、Alは脱酸元素であって、アーク溶接時における溶融金属の脱酸を促進することにより、溶着金属の引張強さを向上させる。そのため、Al含有量を0.001%以上とすることが好ましい。Al含有量は、さらに好ましくは0.005%以上、0.010%以上、又は0.050%以上である。
一方、Al含有量が過剰であると、Al系酸化物が溶融金属中に過剰に生成し、これにより溶接金属の伸びが低下するおそれがある。また、Al系スラグは絶縁性であるため、溶接ビードの表面に生成した量が著しい場合、電着塗装不良を発生させるおそれがある。従って、Al含有量を0.300%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.250%以下、0.200%以下、又は0.150%以下である。
[Cu:0〜0.50%]
Cuは、本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために必須ではない。従ってCu含有量の下限値を0%としてもよい。しかし、ワイヤ送給性及びワイヤ導電性を安定化するために、ワイヤの鋼製外皮の表面にCuをめっきしてもよい。この場合、ワイヤの全質量に対する質量%で、Cu含有量が0.2%から0.3%程度となるようにCuめっきすることが好ましい。また、Cuは析出強化作用を有し、溶接金属において変態温度を低下させ、組織を微細化することによりその靭性を安定させる。従って、ワイヤにおいて、Cuは、Cuめっき以外の形態であってもよい。Cu含有量は、好ましくは0.05%以上、0.10%以上、又は0.20%以上である。
一方、Cuの含有量が過剰になると、溶接割れが発生しやすくなる。従って、Cu含有量を0.50%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.45%以下、0.40%以下、又は0.30%以下である。
[Ni:0〜3.0%]
Niは、本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために必須ではない。従ってNi含有量の下限値を0%としてもよい。しかしNiは、合金元素としてワイヤに存在する場合、溶接部の引張強さと伸びを向上させる効果を有する。従って、Ni含有量を0.01%以上、0.1%以上、0.5%以上、0.8%以上、又は1.0%以上としてもよい。一方、Ni含有量が過剰である場合、溶接割れが発生しやすくなる。従って、Ni含有量は3.0%以下とする。Ni含有量は、好ましくは2.5%以下、2.0%以下、又は1.5%以下である。
[Cr:0〜1.50%]
Crは、本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために必須ではない。従ってCr含有量の下限値を0%としてもよい。しかしCrは、合金元素としてワイヤに存在する場合、溶接部の焼入れ性を高めて引張強さを向上させる効果を有する。従って、Cr含有量を0.01%以上、0.10%以上、0.30%以上、又は0.50%以上としてもよい。一方、Cr含有量が過剰である場合、溶接部の伸びが低下する。従って、Cr含有量は1.50%以下とする。Cr含有量は、好ましくは1.25%以下、1.00%以下、0.80%、0.60%又は0.40%以下である。
[Mo:0〜0.70%]
Moは、本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために必須ではない。従ってMo含有量の下限値を0%としてもよい。しかしMoは、合金元素としてワイヤに存在する場合、溶接部の焼入れ性を高めて引張強さを向上させる効果を有する。従って、Mo含有量を0.01%以上、0.10%以上、0.20%以上、又は0.30%以上としてもよい。一方、Mo含有量が過剰である場合、溶接部の伸びが低下する。従って、Mo含有量は0.70%以下とする。Mo含有量は、好ましくは0.60%以下、0.50%以下、0.40%又は0.30%以下である。
[B:0〜0.0100%]
Bは、本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために必須ではない。従ってB含有量の下限値を0%としてもよい。しかしBは、合金元素としてワイヤに存在する場合、溶接部の焼入れ性を高めて引張強さを向上させる効果を有する。従って、B含有量を0.0001%以上、0.0020%以上、0.0030%以上、又は0.0040%以上としてもよい。一方、B含有量が過剰である場合、溶接部の伸びが低下する。従って、B含有量は0.0100%以下とする。B含有量を0.0080%以下、0.0060%以下、又は0.0050%以下としてもよい。
[Nb:0〜0.300%]
Nbは、本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために必須ではない。従ってNb含有量の下限値を0%としてもよい。しかしNbは、合金元素としてワイヤに存在する場合、溶接金属中で微細炭化物を形成することにより、析出強化を生じさせて溶接金属の引張強さを向上させる効果を有する。従って、Nb含有量を0.001%以上、0.005%以上、0.010%以上、又は0.050%以上としてもよい。一方、Nb含有量が過剰である場合、溶接部の靭性が低下するおそれがある。従って、Nb含有量は0.300%以下とする。Nb含有量を0.250%以下、0.200%以下、0.050%又は0.030%以下としてもよい。
[Sn:0〜0.010%]
Snは、本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために必須ではない。従ってSn含有量の下限値を0%としてもよい。しかしSnは、合金元素としてワイヤに存在する場合、溶接金属の耐食性を向上させる働きがある。従って、Sn含有量を0.001%以上、0.002%以上、又は0.005%以上としてもよい。一方、Sn含有量が0.010%を超える場合、液体金属脆化割れが生じるおそれがある。従って、Sn含有量を0.010%以下とする。Sn含有量を0.009%以下、0.008%以下、又は0.007%以下としてもよい。
[Zr:0〜0.40%]
本実施形態に係るワイヤにおいてZrは必須ではない。従って、Zrの含有量の下限値を0%としてもよい。しかしZrは、合金元素としてワイヤに存在する場合、Tiと同様にスラグの導電性を高める効果がある。従って、Zr含有量の下限値を0.001%、0.03%、0.05%、又は0.10%としてもよい。一方、Zr含有量が0.40%を超えると、溶接金属の伸びや靱性が低下する。従って、Zr含有量の上限値を0.40%とする。V含有量を0.35%以下、0.30%以下、又は0.20%以下としてもよい。
[Mg:0〜0.20%]
本実施形態に係るワイヤにおいてMgは必須ではない。従ってMgの含有量の下限値を0%としてもよい。しかしMgは、合金元素としてワイヤに存在する場合、脱酸効果を有し、これにより溶接金属の酸素量を低減して溶接金属の靱性を向上させる。従って、Mg含有量の下限値を0.03%、0.05%、又は0.08%としてもよい。一方、Mg含有量が0.20%を超えると、生成スラグ量が増加してスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、Mg含有量の上限値を0.20%とする。Mg含有量を0.18%以下、0.15%以下、又は0.10%以下としてもよい。
[V:0〜0.40%]
本実施形態に係るワイヤにおいてVは必須ではない。従ってVの含有量の下限値を0%としてもよい。しかしVは、合金元素としてワイヤに存在する場合、溶接金属の強度を向上させることができる。従って、V含有量の下限値を0.001%、0.03%、0.05%、又は0.10%としてもよい。一方、V含有量が0.40%を超えると、溶接金属の靱性を低下することがある。従って、V含有量の上限値を0.40%とする。V含有量を0.35%以下、0.30%以下、又は0.20%以下としてもよい。
次に、ワイヤの化合物成分などについて説明する。ワイヤの化合物成分は、弗化物、酸化物、及び炭酸塩に大別される。これら化合物成分は、原則的にフラックスに含まれる。また、フラックスとして鉄粉が含まれる場合もある。
[弗化物:F換算値の合計で0.10〜0.30%]
Fは、蛍石(CaF)、弗化ソーダ(NaF)、弗化カリウム(KF)、弗化リチウム(LiF)、弗化マグネシウム(MgF)、珪弗化カリウム(KSiF)、六弗化ジルコン酸カリウム(KZrF)、氷晶石(NaAlF)、弗化アルミニウム(AlF)等の弗化物を構成する成分であり、溶接金属の拡散性水素量を低減して低温割れを防止する効果を有する。また、NaF、NaAlF、AlF、KSiF、及びMgF等は、含有量が適切であれば、アーク安定剤としての働きも有する。しかし、下記により算出されるF換算値の合計(以下、単にF換算値ともいう。)が0.10%未満である場合は、低温割れを十分に抑制できない。一方、弗化物はスパッタを増大させる働きを有し、特にF換算値が0.30%を超えると、アークが荒く不安定になりスパッタ発生量が許容上限を超える。従って、F換算値は0.10〜0.30%とする。F換算値の上限値を0.28%、0.25%、又は0.20%としてもよい。F換算値の下限値を0.12%、0.15%、又は0.18%としてもよい。
また、弗化物の一種であるCaFは、スパッタ量を増大させて溶接ビード形状を悪化させるおそれがある。従って、原則的に弗化物の種類に制限はないものの、CaF量は少ないほうが好ましい。具体的には、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での、弗化物の含有量に対するCaFの含有量の比が0〜0.50であることが一層好ましい。
なお、F換算値(即ち、フラックス入りワイヤ中の弗化物のF換算値)とは、ワイヤ中の弗化物におけるFの、ワイヤ全質量に対する質量%での含有量である。F換算値は、ワイヤの全質量に対する質量%での弗化物の含有量に、弗化物の物質量に占める弗素の原子量の割合を乗じることによって算出できる。例えば、ワイヤの弗化物が全て弗化カリウム(KF)である場合、ワイヤのF換算値は下記の計算によって求められる。
(ワイヤのF換算値)=(ワイヤの全質量に対する質量%でのKF含有量)×〔(Fの原子量)/{(Kの原子量)+(Fの原子量)}〕
ワイヤの弗化物が二種以上の弗化物からなる場合、各弗化物から上述の式で算出される値を合計したものが、ワイヤのF換算値となる。したがって、例えば、フラックス入りワイヤの弗化物が、CaF、MgF、NaAlF、LiF、NaF、KZrF、BaF、及びKSiFである場合、フラックス入りワイヤの全質量に対するF換算値の合計は、以下の数式によって求められる。
(F換算値の合計)=0.487×[CaF]+0.610×[MgF]+0.732×[LiF]+0.452×[NaF]+0.402×[KZrF]+0.217×[BaF]+0.517×[KSiF]+0.543×[NaAlF
ここで、上記で括弧で囲まれた化学式は、各化学式に対応する弗化物の、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量である。
なお、後述する「Ca換算値」、及び「Zr換算値」の定義も、それぞれ、F換算値と同様に、ワイヤ中のCa化合物、及びZr化合物におけるCa、及びZrの、ワイヤ全質量に対する質量%での含有量である。「Ca換算値」、及び「Zr換算値」は、F換算値と同様に算出することができる。後述する「NaO換算値」及び「KO換算値」は、ワイヤ中のNa及びKをすべてNa0及びKOと見做した場合のNaO及びKOの質量%での含有量である。「NaO換算値」及び「KO換算値」は、ワイヤ中のNaの含有量及びKの含有量から算出することができる。
[酸化物:ワイヤの全質量に対する質量%で0.05〜0.28%]
酸化物は、溶接の際にスラグを形成し、溶接ビードの形状を整える作用を有する。上述の作用を得るために、酸化物の含有量は、ワイヤの全質量に対する質量%で0.05%以上とする。酸化物の含有量を0.08%以上、0.10%以上、又は0.15%以上としてもよい。一方、過剰な量のスラグは電着塗装不良を招くおそれがある。従って、酸化物の含有量は、ワイヤの全質量に対する質量%で0.28%以下とする。酸化物の含有量を0.25%以下、0.22%以下、又は0.20%以下としてもよい。なお、酸化物とは、例えばSi酸化物、Ca酸化物(CaO等)、及びTi酸化物(TiO等)などであり、これらの個々の酸化物の含有量については後述される。
[炭酸塩:ワイヤの全質量に対する質量%で0〜0.50%]
本実施形態に係るワイヤにおいて炭酸塩は必須ではない。従って炭酸塩の含有量の下限値を0%としてもよい。一方、炭酸塩は、溶接の際に分解して炭酸ガスを発生させ、溶接金属への水素侵入を防止する働きを有する。従って、炭酸塩の含有量を0.05%以上、0.08%以上、又は0.10%以上としてもよい。ただし、過剰な量の炭酸塩は、アークを不安定にし、ビード形状不良等を招くおそれがある。従って、炭酸塩の含有量の上限値は0.50%とする。炭酸塩の含有量を0.45%以下、0.40%以下、又は0.30%以下としてもよい。なお、炭酸塩として、例えば、MgCO、NaCO、LiCO、CaCO、KCO、BaCO、FeCO、及び、MnCOなどが挙げられる。これら個々の炭酸塩の含有量自体は、特に限定されない。即ち、炭酸塩の具体的な種類は特に限定されない。
[鉄粉:ワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜10%]
本実施形態に係るワイヤにおいて鉄粉は必須ではない。従って鉄粉の含有量の下限値を0%としてもよい。一方、鉄粉は、フラックスの充填率の調整のために用いることができる。例えば鉄粉の含有量を0.1%以上、0.5%以上、1.0%以上などとしてもよい。ただし、過剰な量の鉄粉は、鉄粉表面に生成する酸化被膜が原因となりスラグ量を増大させ、電着塗装不良を招くおそれがある。従って、鉄粉の含有量は、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で10%以下とする。鉄粉の含有量を9%以下、8%以下、又は7%以下としてもよい。鉄粉の種類は特に限定されないが、溶接金属の酸素量の増加を抑制するためにアトマイズ鉄粉が望ましい。
酸化物、弗化物、炭酸塩、及び鉄粉に関し上述したが、以下に、これらの成分を構成する化合物の含有量について説明する。なお、以下に説明される化合物の含有量の説明は、上述された酸化物、弗化物、炭酸塩、及び鉄粉をさらに詳細に規定するものとして理解されるべきである。例えば、本実施形態に係るワイヤでは、酸化物の含有量がワイヤの全質量に対する質量%で0.05〜0.28%であり、Si酸化物の含有量がSiO換算値で0〜0.150%であるとされる。この規定は、酸化物が上述の範囲内で含まれ、これに加えてSi酸化物が上述の範囲内で含まれる、という意味ではない。この規定は、酸化物の量が上述の範囲内とされ、さらに、Si酸化物を上述の範囲内とするように酸化物の種類が選択される、ということを意味する。
[Si酸化物:SiO換算値で0〜0.150%]
Si酸化物は、珪砂(SiO)、ジルコンサンド(ZrSiO)、珪酸ソーダ(NaSiO)、及び珪酸カリウム(KSiO)等の形態としてワイヤのフラックスに存在する場合がある。Si酸化物は、ビード止端部のなじみを良好にしてビード外観及びビード形状を良好にする働きを有するので、通常のワイヤにおいては所定量以上とされる。しかしながら、本実施形態に係るワイヤにおいては、Si酸化物の含有量を可能な限り低減する必要がある。フラックス中のSi酸化物は、溶接時にスラグ中に排出され、ビード表面に絶縁領域を生じさせる。この絶縁領域において電着塗装性が悪化する。従って、Si酸化物の含有量はSiO換算値で0.150%以下とされる。Si酸化物の含有量は、好ましくはSiO換算値で0.100%以下、0.080%以下、0.050%以下、又は0.040%以下である。また、Si酸化物の含有量の下限値はSiO換算値で0%としてもよい。但し、ワイヤの製造効率を向上させるために、フラックスのバインダーとして水ガラス等のSi酸化物系の材料を用いることは、Si酸化物が上述の範囲内である限り許容される。Si酸化物の含有量をSiO換算値で0.020%以上、0.025%以上、又は0.030%以上と規定してもよい。
なお、「フラックス入りワイヤ中のSi酸化物のSiO換算値」とは、ワイヤ中のSi酸化物におけるSiが全てSiOであると見なした場合の、SiOのワイヤの全質量に対する質量%での含有量を意味する。ワイヤ中のSi酸化物のSiO換算値は、ワイヤにおけるSi酸化物を構成するSiの量(換言すると、Si酸化物のSi換算値)を求め、これに2.14を乗じることにより得られる。2.14とは、下記式で得られる値である。下記式における28.1はSiの原子量であり、16.0は酸素の原子量である。
2.14=(28.1+16.0×2)/28.1
[Na化合物及びK化合物:NaO換算値及びKO換算値の合計で0.010〜0.200%]
NaO、及びNaSiO等の酸化物を構成するNa、並びにKO、及びKSiO等の酸化物を構成するKは、アークを安定化して、スパッタ量を抑制する働きを有する。アークが不安定になると溶接部のシールド状態が乱れ、大気(窒素)の巻き込みによるブローホールの原因となる。また、アークが不安定になると、ワイヤ溶滴先端の溶滴の移行の形態が乱れ、溶融金属の流動状態も不安定となる。これらの結果、溶融金属表面に生成するスラグが局所的に集積し、電着塗装性を低下させる恐れがある。また、スパッタの付着した鋼板表面では、凹凸な表面形状に起因して電着塗装の膜厚がばらつく。このため、スパッタの抑制も電着塗装性向上の観点で必要な要素となる。
なお、Naは後述するNaF等の弗化物として、Kは後述するKSiF等の弗化物として存在する場合はアークを安定化する働きを持ち、さらに拡散性水素量の低減に寄与するが、これは後述されるFの効果として理解される。Na化合物及びK化合物は、珪酸ソーダ及び珪酸カリウムからなる水ガラスの固質成分、NaO、KO、KSiO、NaSiO、NaF、及びKSiF等の粉末の形態とすることができる。
以上の効果を得るために、本実施形態に係るワイヤにおいては、Na化合物及びK化合物の含有量を、NaO換算値及びKO換算値の合計で0.010%以上とする。Na化合物及びK化合物の含有量を、NaO換算値及びKO換算値の合計で0.020%以上、0.050%以上、又は0.100%以上としてもよい。一方、NaO換算値及びKO換算値の合計が0.200%を超えると、逆にアークが強くなってスパッタ発生量が多くなる。このため、ビード表面の局所的なスラグの集積やスパッタ付着に伴う凹凸形状に起因して、電着塗装性が損なわれるおそれがある。従って、NaO換算値及びKO換算値の合計の上限値を0.200%とする。Na化合物及びK化合物の含有量を、NaO換算値及びKO換算値の合計で0.190%以下、0.180%以下、又は0.160%以下としてもよい。
[Ca化合物:Ca換算値で0〜0.100%]
[CaO:ワイヤの全質量に対する質量%で0〜0.15%]
Caは、上述のように弗化物(蛍石)、又はCa酸化物のようなCa化合物としてワイヤに存在する場合がある。ただし、Ca化合物はスパッタ量を特に増大させやすい化合物である。従って、Ca化合物の含有量を、フラックスワイヤの全質量に対するCa換算値で0%とすることが好ましい。但し、Caが不純物としてフラックス中に混入する場合がある。不純物としてのCa化合物の含有量は、フラックスワイヤの全質量に対するCa換算値で約0.100%までとする。Ca化合物の含有量の上限値をフラックスワイヤの全質量に対するCa換算値で0.090%、0.080%、又は0.050%としてもよい。また、Ca化合物の含有量の下限値をフラックスワイヤの全質量に対するCa換算値で0.001%、0.010%、又は0.020%としてもよい。
Ca化合物の中でも、特に溶接作業性へ影響が大きいCaOに関しては、別の限定を設ける。具体的には、CaOの含有量を、ワイヤの全質量に対する質量%で0〜0.15%の範囲内とする。CaOの含有量を、0.01%以上、0.02%以上、又は0.03%以上としてもよい。CaOの含有量を、0.13%以下、0.11%以下、0.08%以下又は0.05%以下としてもよい。
[Zr化合物:Zr換算値で0〜0.200%]
本実施形態に係るワイヤにおいてZr化合物は必須ではない。従ってZr化合物の含有量の下限値は0%である。しかし、Zr化合物は、ワイヤに存在する場合、脱酸効果を有しておりこれにより溶接金属の酸素量を低減させる。また、Zr化合物にはビード止端部の形状を改善する効果がある。このため、Zr化合物の含有量を0.020%以上、0.060%以上、又は0.090%以上としても良い。一方、Zr化合物の含有量が0.200%を超えると、生成スラグ量が増加してスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、Zr化合物の含有量の上限値は0.200%とされる。Zr化合物の含有量の上限値を0.180%、0.150%、又は0.100%としてもよい。Zr化合物は、例えばZrSiOやKZrFなどである。
[TiO:フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0〜0.07%]
フラックスに含まれるTiOは、溶接金属に移行せず、スラグとして溶接金属の外に排出される。TiOは、TiO等のその他のTi酸化物とは異なり、導電性が低い。従って、TiOは電着塗装性を損なうおそれがある。電着塗装性の確保のために、TiOの含有量を0.07%以下とする。また、TiOは本実施形態に係るワイヤの課題を解決するために不要であるので、TiOの下限値は0%である。TiOの含有量を0.06%以下、0.05%以下、又は0.04%以下としてもよい。TiOの含有量を0.01%以上、0.02%以上、又は0.03%以上としてもよい。
なお、本実施形態に係るワイヤの成分である弗化物、Si酸化物、Na化合物、K化合物、Ca化合物、及びZr化合物のうち2以上に該当する化合物の含有量は、その化合物が属する物質それぞれの含有量に算入することとする。例えばZrSiOはZr化合物に該当し、且つSi酸化物にも該当するが、ZrSiOがワイヤに存在する場合、ZrSiOの含有量は、Zr化合物の含有量(Zr換算値)、及びSi酸化物の含有量(SiO換算値)のいずれにも算入するものとする。換言すると、ZrSiOの含有量のうちZrが占める部分が、Zr化合物の含有量(Zr換算値)に算入され、ZrSiOの含有量のうちSiが占める部分が、Si酸化物の含有量(SiO換算値)に算入される。同様に、KZrFがワイヤに存在する場合、KZrFの含有量は、Zr化合物の含有量(Zr換算値)、K化合物の含有量(KO換算値)及び弗化物の含有量(F換算値)のいずれにも算入するものとする。
[残部:Fe及び不純物]
本実施形態に係るワイヤの成分の残部は、Fe及び不純物である。Feは、鋼製外皮、充填率調整のための鉄粉、並びにFe−Si、Fe−Mn、及びFe−Ti合金などの鉄合金粉からなる群から選択されるいずれか一種以上の形態としてワイヤに存在することとなる。不純物とは、本実施形態に係るワイヤを工業的に製造する際に、原料、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に係るワイヤに悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。例えば、不純物として鋼製外皮の製鋼時に混入されうるAlは、上述されたように電着塗装性を低下させ得るので少ない方が好ましいが、ワイヤの全質量に対する質量%で0.300%以下であれば許容される。P及びSは、上述されたように溶接金属の靭性を低下させるが、ワイヤの全質量に対する質量%で0.030%以下であれば許容される。Nは、固溶Nとして溶接金属に存在する場合に溶接金属の靭性を損なうが、ワイヤの全質量に対する質量%で0.01%以下であれば許容される。
上述のように、本実施形態に係るワイヤでは、電着塗装性を損なう恐れがある絶縁性スラグの量を可能な限り低減するために、合金Si量及びSi酸化物量を極めて低い水準としている。これに加えて、Si弗化物(例えばKSiF等)及びSi炭化物(例えばSiC等)といった、合金及び酸化物以外の形態のSiの含有量も所定範囲内とすることが好ましい。合金形態、及び酸化物形態以外のSiであっても、溶接時に絶縁性スラグを形成するからである。従って、本実施形態に係るワイヤにおいて、合金形態、酸化物形態、炭化物形態、及び弗化物形態等のあらゆる形態のSiの合計含有量を、ワイヤの全質量に対する質量%で0.30%未満とする。好ましくは、あらゆる形態のSiの合計含有量を、0.25%以下、0.20%以下、0.15%以下又は0.12%以下にする。
本実施形態に係るワイヤにおいて、フラックス充填率(ワイヤの全質量に対するフラックスの全質量の割合)は特に限定しないが、生産性の観点から5〜20%とするのが好ましい。
[ワイヤの形状:好ましくはシームレス形状]
本実施形態に係るワイヤは、図3及び図4に示されるように、鋼製外皮11を筒状に成型し、その内部にフラックス12を充填した構造である。ワイヤの種類としては、成形された鋼製外皮11の突き合わせ部を溶接して得られる、鋼製外皮11に継ぎ目13の無いワイヤ1と、鋼製外皮11の突き合わせ部の溶接を行わないままとした、鋼製外皮11に継ぎ目13を有するワイヤ2とに大別できる。本実施形態に係るワイヤにおいては、何れの断面構造をも採用することができる。本実施形態に係るフラックス入りワイヤが、継ぎ目13をかしめることによって得られるかしめワイヤであってもよい。
鋼製外皮11に継ぎ目13を有するワイヤ2は、保存時に継ぎ目13から水分が侵入し、この水分が水素源となって低温割れを生じさせる場合がある。一方、鋼製外皮11に継ぎ目13が無いワイヤ1、即ちシームレス形状を有するワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックス12の吸湿が無いので、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、一層好ましい。
[ワイヤ表面の送給潤滑剤:好ましくはワイヤ10kg当たり0.20〜1.00g]
本実施形態に係るワイヤは、鋼製外皮の外表面に送給潤滑剤をさらに備えてもよい。ワイヤの表面の送給潤滑剤は、特に半自動溶接の場合にワイヤの送給性を良好にして、アークが安定でスパッタの発生量を少なくするとともに、溶接欠陥の発生を防止する。ワイヤの表面の送給潤滑剤の量がワイヤ10kg当たり0.20g未満であると、ワイヤ送給性が不良となりアークが不安定でスパッタ発生量が多くなる場合がある。また、この場合、スラグ巻込み欠陥が生じやすくなる場合がある。一方、ワイヤ表面の送給潤滑剤がワイヤ10kg当たり1.00gを超えると、送給ローラ部でワイヤがスリップして、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる場合がある。また、この場合、溶接金属の拡散性水素量が多くなって低温割れが生じやすくなる場合がある。
送給潤滑剤は、動植物油、鉱物油あるいは合成油の何れでもよい。動植物油としてはパーム油、菜種油、ひまし油、豚油、牛油、魚油等を、鉱物油としてはマシン油、タービン油、スピンドル油等を用いることができる。合成油としては炭化水素系、エステル系、ポリグリコール系、ポリフェノール系、シリコーン系、フロロカーボン系を用いることができる。さらに、油脂またはエステルの1種以上の基油に硫黄を含有する硫化油脂、硫化エステル、硫化脂肪酸または硫化オレフィンの1種または2種以上である硫黄含有の潤滑油を用いることもできる。なお、上述したワイヤの成分規定は、ワイヤの鋼製外皮及びフラックスに関するものであり、送給潤滑剤の成分は含まない。送給潤滑剤の塗布量はワイヤの質量に対して非常に小さく、スラグいので、ワイヤの成分を規定するにあたり、送給潤滑剤は実質的な影響を有しない。
本実施形態に係るワイヤは、通常のワイヤの製造工程によって製造することができる。すなわち、まず、鋼製外皮となる鋼帯とフラックスとを準備する。次いで、鋼帯を、長手方向に送りながら成形ロールにより成形してオープン管(U字型)とし、これを鋼製外皮とする。鋼帯の成形の途中でオープン管の開口部からフラックスを供給する。鋼帯の成形の後に、開口部の相対するエッジ面を突合せシーム溶接し、継目無し管を得る。この継目無し管を、伸線し、この伸線を行う伸線工程の途中又は伸線工程の完了後に継目無し管を焼鈍処理する。以上の工程により、所望の線径を有し、鋼製外皮の内部にフラックスが充填されたシームレスワイヤを得る。シームを有するワイヤは、オープン管の開口部からフラックスを供給した後、シーム溶接をしない継目有りの管とし、その管を伸線することで得られる。
次に、本実施形態に係る溶接継手の製造方法について説明する。本実施形態に係る溶接継手の製造方法は、上述された本実施形態に係るワイヤを用いて鋼材をガスシールドアーク溶接することを特徴とする。本実施形態に係る溶接継手の製造方法は、高強度鋼板の溶接に適用された場合であっても、溶接部の電着塗装性を確保しながら低温割れを抑制可能である。
鋼材の種類は特に限定されない。例えば、鋼材を自動車用鋼板とした場合、従来技術と比較して極めて優れた電着塗装性及び耐低温割れ性を発揮することができるので好ましい。自動車用鋼板とは、例えば厚さが0.8〜3.6mm、及び引張強さ(TS)が590〜1180MPaの鋼板や1.5GPaのホットスタンプである。
また、鋼材のPcmが0.25%以上であることが好ましい。Pcmとは、日本溶接学会(JWES)が定めた溶接割れ感受組成と呼ばれる数値である。Pcmは、低温割れに対する鋼材の化学成分の影響を表したものである。Pcmは下記式1によって算出される。
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B:式1
一般に、鋼材のPcmが高いほど、鋼材の溶接部に低温割れが発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態に係る溶接継手の製造方法は、鋼材のPcmが0.25%以上であっても低温割れを充分に抑制することが出来るので、様々な鋼材の溶接に適用可能である。
本実施形態に係る溶接継手の製造方法において、溶接条件は特に限定されず、通常の範囲内から適宜選択可能である。
(付記)
(i)本発明の別の態様に係るフラックス入りワイヤは、筒状の鋼製外皮と、前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備えるフラックス入りワイヤであって、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、合金成分として、C:0.03〜0.25%、Si:0.001〜0.250%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ti:0.10〜0.30%、Al:0.001〜0.300%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜1.50%、Mo:0〜0.70%、B:0〜0.0100%、Nb:0〜0.050%、Sn:0〜0.010%、及びMg:0〜0.20%を含有し、さらに、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、弗化物:F換算値の合計で0.10〜0.30%、Si酸化物:SiO換算値で0〜0.150%、Na化合物及びK化合物:Na換算値及びK換算値の合計で0.100〜0.200%、Ca化合物:Ca換算値で0〜0.100%、及びZr化合物:Zr換算値で0〜0.200%を含有し、残部が前記鋼製外皮、鉄粉、及び鉄合金粉のいずれか一種以上の形態としてのFeと不純物とからなる。
(ii)上記(i)に記載のフラックス入りワイヤでは、あらゆる形態のSiの合計含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.30%以下であってもよい。
(iii)上記(i)又は(ii)に記載のフラックス入りワイヤでは、前記鋼製外皮がシームレス形状であってもよい。
(iv)上記(i)〜(iii)のいずれか一項に記載のフラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮の外表面に送給潤滑剤をさらに備え、前記送給潤滑剤の、前記フラックス入りワイヤ10kg当たりの量が0.20〜1.00gであってもよい。
(v)本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法は、上記(i)〜(iv)のいずれか一項に記載のフラックス入りワイヤを用いて鋼材をガスシールドアーク溶接する。
(vi)上記(v)に記載の溶接継手の製造方法では、下記式1によって算出される前記鋼材のPcmが0.25%以上であってもよい。
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B:式1
(vii)上記(v)又は(vi)に記載の溶接継手の製造方法では、前記鋼材が、板厚0.8〜3.6mm且つ引張強さ590〜1180MPaの鋼板であってもよい。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
以下の手順により、表1−1〜表2−2に示す各種成分のワイヤを試作した。まず、鋼製外皮となる鋼帯とフラックスとを準備した。次いで、鋼帯を、長手方向に送りながら成形ロールにより成形してオープン管(U字型)とし、これを鋼製外皮とした。鋼帯の成形の途中でオープン管の開口部からフラックスを供給した。鋼帯の成形の後に、開口部の相対するエッジ面を突合せシーム溶接し、継目無し管を得た。この継目無し管を、伸線し、この伸線を行う伸線工程の途中又は伸線工程の完了後に継目無し管を焼鈍処理した。以上の工程により、所望の線径を有し、鋼製外皮の内部にフラックスが充填されたシームレスワイヤを得た。また、フラックスを含まない中実のソリッドワイヤ(比較例B15)も、本発明の効果を確認するために作成し、評価した。ソリッドワイヤは、所定の化学成分を有する原材料を伸線及び焼鈍することによって得られた。
表に記載の「弗化物」は、溶接材料における弗化物のF換算値であり、「酸化物」は溶接材料における酸化物のワイヤ全質量に対する質量%であり、「炭酸塩」は溶接材料における炭酸塩のワイヤ全質量に対する質量%であり、「鉄粉」は溶接材料における鉄粉のワイヤ全質量に対する質量%であり、「Si酸化物」は、溶接材料におけるSi酸化物のSiO換算値であり、「Na化合物+K化合物」は、溶接材料におけるNa化合物のNaO換算値と、K化合物のKO換算値との合計値であり、「Ca化合物」は、溶接材料におけるCa化合物のCa換算値であり、「CaO」は、溶接材料におけるCaOのワイヤ全質量に対する質量%であり、「Zr」は、溶接材料におけるZr化合物のZr換算値であり、「総Si」は、あらゆる形態のSiの合計含有量である。なお、上述の項目のうち2以上に該当する物質の含有量は、その物質が属する項目それぞれの値に算入した。例えば、Zr化合物及びSi酸化物の何れにも該当するZrSiOの含有量は、Zr化合物のZr換算値にもSi酸化物のSiO換算値にも算入した。本発明で規定される範囲から外れる数値、又は本発明の合否基準に満たない値には下線を付した。また、化学成分や化合物などの含有量に係る表中の空欄は、その化学成分や化合物などが意図的に添加されていないことを意味する。
試作した溶接材料(フラックス入りワイヤ及びソリッドワイヤ)を用いて、以下に説明する評価を実施した。
(1)溶着金属の機械特性
溶着金属の引張強さは、以下の手順で評価した。まず、BT−HT630に規定される板厚20mmの鋼板を用いて、JIS Z3111:2005に準じて、表4に示す「溶着金属試験」の溶接条件で溶着金属を作製した。この溶着金属部からA0号引張試験片を採取し、これに引張試験を行うことによって測定した。引張強さの基準としては、JIS Z3312:2009の軟鋼および高張力鋼用ソリッドワイヤ「YGW14」または「YGW17」を目安に、420MPa以上の引張強さを有する溶着金属を、引張強さに関して合格と判断した。
(2)電着塗装性(塗装不良面積率)
電着塗装性の評価に対しては、板厚2.9mmの鋼板を、表4に示す「重ね隅肉溶接試験」の条件で溶接し、その溶接ビード部を評価した。作製した溶接継手を脱脂処理及び化成処理し、その後に、膜厚が20μmとなるように、溶接継手に電着塗装を施した。そして、溶接ビードの電着塗装部を写真撮影し、その画像から、溶接ビード面積に対する電着塗装不良部の面積の比率を測定した。尚、電着塗装不良である部位は、絶縁性の酸化物が露出しているため、色の違いから識別可能である。電着塗装部の画像の例を図2−2に示す。塗装不良面積が面積率で10%以下となったワイヤを、電着塗装性が良好なものであると判断した。なお、重ね隅肉継手の作製に使用した鋼板は、C=0.2%、Si=0.3%、Mn=1.3%,Pcm=0.27%の1.5GPa級ホットスタンプ用鋼板である。
(3)溶接部の耐低温割れ性
溶接部の耐低温割れ性も、板厚2.9mmの鋼板を重ね隅肉溶接することによって評価した。低温割れを誘発するために、図5に示される低温割れ評価用の溶接継手4を作製した。ここでは、薄板試験片(図5中の鋼板(上板)44及び鋼板(下板)45)の端部に溶接を施し(図5中の拘束溶接部42)、これにより薄板試験片を板厚20mmの拘束板41に拘束した。この状態で、低温割れ評価用の重ね隅肉溶接を実施して、重ね隅肉溶接部43を形成した。溶接後2日以上経過した後に重ね隅肉溶接部43の断面を観察し、観察用断面作成部46における3断面で割れ発生の有無を調査した。なお、溶接条件および使用した鋼板は電着塗装性の評価と同じである。
(4)耐ピット性
本発明の溶接ワイヤは、Siの添加量を少なく規定しているので、溶接金属の脱酸不足によるブローホールの発生が懸念される。また、本発明のワイヤにおける合金元素のTiやAl、フラックス成分の弗化物やSi酸化物、NaやKの化合物はアークの安定性に影響を及ぼし、シールド不良に伴うブローホール発生の原因となる。
溶融金属内にブローホールが発生すると、ピットとして溶接金属表面の穴として観察される。そこで、溶接金属表面のピット発生状況を目視で調査し、溶接ビード上に1つでも
ピットの発生したものは脱酸能力もしくはアーク安定性(シールド状態)が不良であると判断した。
本発明の範囲内である発明例A1〜A24は、良好な機械特性を有する溶接金属が得られるとともに、低温割れ抑制が可能であり、さらに電着塗装性に優れた。一方、本発明の範囲外である比較例B1〜B17については、評価項目の1つ以上に関し不合格となり、総合評価が不合格と判定された。
具体的には、比較例B1は、合金Si量が過剰であったのでスラグが過剰となり、且つ合金Ti量が不足したのでスラグに導電性を充分に付与することができず、電着塗装性が不足した。
比較例B2は、合金Ti量が不足したのでスラグに導電性を充分に付与することができず、電着塗装性が不足した。
比較例B3は、合金Ti量が不足ししたので、溶融金属の脱酸不足によるピットが発生した。
比較例B4は、合金Mn量が不足したので、溶接金属に十分な引張強さを付与することができなかった。
比較例B5は、合金Mn量が過剰であったので、絶縁性のMn系スラグが溶接ビードの表面に著しく発生し、電着塗装不良が発生した。
比較例B6は、合金Ti量が過剰であったので、アークの発生状態が不安定となってシールド不良が生じ、耐ピット性が不足した。
比較例B7は、合金Al量が過剰であったので、絶縁性のAl系スラグが溶接ビードの表面に著しく生成し、電着塗装不良が発生した。
比較例B8は、合金C量が不足したので、溶接金属に十分な引張強さを付与することができなかった。
比較例B9は、合金成分が所定範囲内であったが、弗化物量が不足したので耐低温割れ性を確保することができなかった。
比較例B10は、合金成分が所定範囲内であったが、Si酸化物量(SiO換算値)が過剰であったので絶縁性スラグが多量に発生し、電着塗装不良が発生した。
比較例B11は、合金成分が所定範囲内であったが、弗化物量が過剰であったのでスパッタが多く発生し、スパッタの付着した鋼板表面の凹凸な表面形状に起因して電着塗装性が損なわれた。
比較例B12は、合金成分が所定範囲内であったが、Na化合物及びK化合物の合計量が過剰であったのでスパッタが多く発生し、スパッタの付着した鋼板表面の凹凸な表面形状に起因して電着塗装性が損なわれた。
比較例B13は、合金成分が所定範囲内であったが、Na化合物及びK化合物の合計量が不足したのでスパッタが多く発生し、スパッタの付着した鋼板表面の凹凸な表面形状に起因して電着塗装性が損なわれた。また、比較例B13は、Na化合物及びK化合物の合計量が不足したので、アークの安定性が損なわれたのでシールド不良が生じ、耐ピット性も損なわれた。
比較例B14は、合金C量が過剰であったので、溶接金属に過剰硬化が生じ、耐低温割れ性が損なわれた。
比較例B15は、弗化物を含有しないソリッドワイヤであるため、溶接金属への拡散性水素の混入による水素脆化割れが発生した。
比較例B16は、酸化物の合計量が過剰であったので、スラグが過剰となり、電着塗装性が不足した。
比較例B17は、TiO量が過剰であったので、スラグが過剰となり、電着塗装性が不足した。TiOは、Ti酸化物の一種であるものの導電性が低いので、スラグを改質する作用を持たない。
本発明によれば、高強度鋼板の溶接に適用された場合であっても、溶接部の機械特性及び電着塗装性を確保しながら低温割れを抑制可能なワイヤ、及び溶接継手の製造方法を提供することが出来る。例えば本発明を自動車用鋼板に適用した場合、スラグによる電着塗装性の低下を最小限に抑制することが出来るので、スラグ除去に係る工程を省略しながら車体の溶接部の耐食性を高めることが出来る。また、本発明は低温割れを抑制できるので、例えば低温割れ感受性が極めて高い高強度自動車用鋼板にも容易に適用することが出来る。従って、本発明は高い産業上の利用可能性を有する。
1、2 フラックス入りワイヤ
11 鋼製外皮
12 フラックス
13 継ぎ目
3 重ね隅肉溶接継手
31 溶接金属
32 鋼材
33 低温割れ
4 低温割れ評価用の溶接継手
41 拘束板(板厚20mm)
42 拘束溶接部
43 重ね隅肉溶接部
44 鋼板(上板)
45 鋼板(下板)
46 観察用断面作成部

Claims (8)

  1. 筒状の鋼製外皮と、
    前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスと
    を備えるフラックス入りワイヤであって、
    前記フラックスの成分が、
    弗化物:F換算値で0.10〜0.30%、
    酸化物:前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.05〜0.28%、
    炭酸塩:前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0〜0.50%、及び
    鉄粉:前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜10%、
    を含み、
    前記フラックスにおいて、
    Si酸化物の含有量:SiO換算値で0〜0.150%、
    Na化合物の含有量及びK化合物の含有量の合計:NaO換算値及びKO換算値の合計で0.010〜0.200%、
    Ca化合物の含有量:Ca換算値で0〜0.100%、
    CaOの含有量:前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜0.15%、
    Zr化合物の含有量:Zr換算値で0〜0.200%、及び
    TiOの含有量:前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0〜0.07%
    であり、
    前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、
    C:0.03〜0.25%、
    Si:0〜0.250%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    Ti:0.10〜0.30%、
    Al:0〜0.300%、
    Cu:0〜0.50%、
    Ni:0〜3.0%、
    Cr:0〜1.50%、
    Mo:0〜0.70%、
    B:0〜0.0100%、
    Nb:0〜0.300%、
    Sn:0〜0.010%、
    Mg:0〜0.40%、
    Zr:0〜0.40%、
    V:0〜0.40%、及び
    残部:Fe及び不純物
    であり、
    あらゆる形態のSiの合計含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.30%未満である
    ことを特徴とするフラックス入りワイヤ。
  2. 前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、
    Si:0〜0.200%であり、
    あらゆる形態のSiの合計含有量が、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で0.20%以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載のフラックス入りワイヤ。
  3. 前記弗化物、前記酸化物、及び前記炭酸塩を除く化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、
    Mn:0.5〜2.6%である
    ことを特徴とする請求項1に記載のフラックス入りワイヤ。
  4. 前記鋼製外皮がシームレス形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフラックス入りワイヤ。
  5. 前記鋼製外皮の外表面に送給潤滑剤をさらに備え、
    前記送給潤滑剤の、前記フラックス入りワイヤ10kg当たりの量が0.20〜1.00gである
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフラックス入りワイヤ。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のフラックス入りワイヤを用いて鋼材をガスシールドアーク溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
  7. 下記式1によって算出される前記鋼材のPcmが0.25%以上であることを特徴とする請求項6に記載の溶接継手の製造方法。
    Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B:式1
  8. 前記鋼材が、板厚0.8〜3.6mm且つ引張強さ590〜1800MPaの鋼板であることを特徴とする請求項6又は7に記載の溶接継手の製造方法。
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