JP6988324B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法 - Google Patents
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(1)本発明の一態様に係るガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮と、前記鋼製外皮に充填されたフラックスとを備え、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、合金成分として、C:0.05〜0.18%、Si:0.3〜1.4%、Mn:1.2〜3.5%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.8〜3.5%、Cr:0.01〜1.40%、Mo:0.15〜1.00%、Ti:0.04〜0.30%、及びAl:0.200%以下を含有し、さらに、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、弗化物:F換算値の合計で0.10%超0.30%以下、Si酸化物:SiO2換算値で0.010〜0.400%、及びNa化合物及びK化合物:Na換算値及びK換算値の合計で0.06〜0.35%を含有し、残部が鋼製外皮、鉄粉、及び鉄合金粉のいずれか一種以上の形態としてのFeと不純物とからなり、下記式(1)で示されるPtsが0.60〜1.50である。
Pts=[C]+[Si]/7+[Mn]/5+[Cu]/7+[Ni]/20+[Cr]/8+[Mo]/2+[Ti]/5・・・式(1)
但し、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[Ti]は、前記合金成分として含まれるC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Tiのそれぞれの前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%を示し、前記フラックス入りワイヤに含まれない元素の含有量については0%とみなす。
(2)上記(1)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、前記合金成分としてB:0〜0.010%、Mg:0〜0.50%、及びSn:0〜0.40%からなる群から選択される一種以上をさらに含有してもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、Ca化合物:Ca換算値で0〜0.300%であってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記鋼製外皮が、前記鋼製外皮の全質量に対する質量%で、前記合金成分としてAl:0.003〜0.20%を含有してもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、Zr化合物:Zr換算値で0〜0.30%をさらに含有してもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、前記鋼製外皮がシームレス形状であってもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、前記鋼製外皮の外表面に送給潤滑剤をさらに備え、前記送給潤滑剤の、前記フラックス入りワイヤ10kg当たりの量が0.20〜1.00gであってもよい。
(8)本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法では、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて鋼板をガスシールドアーク溶接する。
Cは、合金成分としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、固溶強化により溶接金属の強度を向上させる。しかし、C含有量が0.05%未満であると溶接金属の強度が得られない。一方、C含有量が0.18%を超えると、溶接金属の強度が過度に高くなり靭性が低下する。また、C含有量が0.18%を超えると、溶接割れ感受性が高くなる。従って、C含有量は0.05〜0.18%とする。C含有量の下限値を0.07%、又は0.08%としてもよい。C含有量の上限値を0.16%、又は0.17%としてもよい。
Siは、合金元素、酸化物、及び弗化物からなる群から選択される一種以上の態様でフラックス入りワイヤに含まれ、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、溶接金属の脱酸元素として働く。従って、本実施形態に係るフラックス入りワイヤでは、合金成分として含まれるSiの量が0.3〜1.4%の範囲内とされる。Si含有量が0.3%未満であると、溶接金属が脱酸不足となり靭性が低下する。一方、Si含有量が1.4%を超えると、溶接金属の靭性が損なわれる。また、Si含有量が過剰であると、スパッタ量も増加し、さらに、Si酸化物に起因するスラグ巻込みが発生しやすくなる。Si含有量の下限値を0.4%、又は0.5%としてもよい。Si含有量の上限値を1.0%、又は1.2%としてもよい。
Mnは、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、溶接金属の靭性確保及び強度向上の働きを有する。Mn含有量が1.2%未満であると、溶接金属の強度が低く靭性が十分に確保できなくなる。一方、Mn含有量が3.5%を超えると、溶接金属の靭性が安定して得られない。また、Mn含有量が過剰であると、スパッタも増加する。従って、Mn含有量は1.2〜3.5%とする。Mn含有量の下限値を1.4%、又は1.6%としてもよい。また、Mn含有量の上限値を2.4%、又は3.0%としてもよい。
[S:0.030%以下]
P及びSは、溶接金属の靱性を損ね、溶接金属の凝固割れ発生を助長する一方で、有利な効果を有しない。従って、本実施形態に係るフラックス入りワイヤはP及びSを含む必要がなく、P及びSの含有量の下限値は0%である。しかしながら、鋼製外皮及びフラックス中に不純物としてP及びSが含まれる場合がある。P及びSは可能な限り除去されるべきであるが、0.030%以下のP及び0.030%以下のSの含有は許容される。P及びSそれぞれの上限値を0.020%、又は0.025%としてもよい。
Cuは、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、析出強化作用を有し、変態温度を低下させ組織を微細化して靭性を安定させる。また、Cuはワイヤ外皮の銅めっきに含まれてもよい。Cuが0.05%未満であると、安定した靭性が得られない。一方、Cuが0.50%を超えると、析出脆化が生じて靭性が低下する。また、高温割れが発生しやすくなる。従って、Cuは0.05〜0.50%とする。Cu含有量の下限値を0.10%、又は0.15%としてもよい。また、Cu含有量の上限値を0.40%、又は0.45%としてもよい。
Niは、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、溶接金属の変態温度を低下させて組織を微細化すると共に、溶接金属中に固溶して靭性を低下させることなく強度を高める作用を有する。Ni含有量が0.8%未満であると、靭性の低下を防止する効果が十分に得られない。一方、Ni含有量が3.5%を超えると、凝固割れが発生しやすくなる。従って、Ni含有量は0.8〜3.5%とする。Ni含有量の下限値を0.9%、又は1.0%としてもよい。また、Ni含有量の上限値を3.0%、又は3.2%としてもよい。
Crは、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、溶接金属の変態温度を低下させ、溶接金属の組織を微細化して靭性を向上させる作用を有する。Cr含有量が0.01%未満であると、これらの効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が1.40%を超えると、溶接金属の硬化が著しくなり靭性が低下する。従って、Crは0.01〜1.40%とする。Cr含有量の下限値を0.02%、又は0.03%としてもよい。また、Cr含有量の上限値を0.70%、又は1.00%としてもよい。
Moは、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、Ni及びCrと同様に、溶接金属の変態温度を低下させ、組織を微細化して靭性を向上させる。Mo含有量が0.15%未満であると、これらの効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が1.00%を超えると、靭性が安定して得られない。従って、Mo含有量は0.15〜1.00%とする。Mo含有量の下限値を0.20%、又は0.25%としてもよい。また、Mo含有量の上限値を0.70%、又は0.80%としてもよい。
Tiは、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、脱酸剤として作用するとともに溶接金属中にTiの微細酸化物を生成し溶接金属の靭性を向上させる。Ti含有量が0.04%未満であると、溶接金属の靭性が安定して得られない。一方、Ti含有量が0.30%を超えると、溶接金属中の固溶Tiが多くなって靭性が低下する。また、Tiが0.30%を超えると溶接時に生成するスラグ量が増加してスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、Tiは0.04〜0.30%とする。Ti含有量の下限値を0.07%、又は0.09%としてもよい。また、Ti含有量の上限値を0.25%、又は0.27%としてもよい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいてBの含有は必須ではなく、従ってその含有量の下限値は0%である。しかしBは、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれた場合、溶接金属の焼入れ性を高め、溶接金属の引張強さの確保に寄与する。従って、B含有量の下限値を0.0005%、又は0.0007%としてもよい。一方、0.010%超のBは、溶接金属を過剰に硬化させることにより、溶接金属の靱性を損なう場合がある。従って、B含有量の上限値は0.010%とすることが好ましい。B含有量の上限値を0.007%、又は0.005%としてもよい。
Alは、本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいてAlの含有は必須ではない。従ってその含有量の下限値は0%である。合金Al含有量が0.200%を超えると、アークが不安定となり、スパッタ発生量が増加する。さらに、合金Al含有量が0.200%を超えると、溶接金属の靱性が損なわれる。従って、Alの含有量は0.200%以下とする。ただし、極少量含まれるAlは、ビード形状を改善する効果を有するので、Al含有量の下限値を0.004%、又は0.006%としてもよい。なお、鋼製外皮の全質量に対する質量%で、鋼製外皮が0.003〜0.100%、又は0.003〜0.200%のAlを含む場合がある。鋼製外皮に含まれるAlはビード形状を改善する効果が大きい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいてMgの含有は必須ではない。従ってMgの含有量の下限値は0%である。しかしMgは、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれる場合、脱酸効果を有し、これにより溶接金属の酸素量を低減して溶接金属の靱性を向上させる。従って、Mg含有量の下限値を0.03%、又は0.06%としてもよい。一方、Mg含有量が0.50%を超えると、生成スラグ量が増加してスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、Mg含有量の上限値を0.50%とする。Mg含有量の上限値を0.20%、又は0.35%としてもよい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいてSnの含有は必須ではなく、従ってその含有量の下限値は0%である。しかし、Snは溶接金属の耐食性を向上させる働きがあるので、Sn含有量の下限値を0.07%としてもよい。一方、Sn含有量が0.40%を超える場合、液体金属脆化割れが生じるおそれがある。従って、Sn含有量の上限値を0.40%とする。Sn含有量の上限を0.35%、又は0.30%としてもよい。
Siは、珪砂(SiO2)、ジルコンサンド(ZrSiO4)、珪酸ソーダ(Na2SiO3)、及び珪酸カリウム(K2SiO3)等のSi酸化物としてフラックス入りワイヤのフラックスに含まれた場合、ビード止端部のなじみを良好にしてビード外観及びビード形状を良好にする働きを有する。
Na2O、及びNa2SiO3等の酸化物としてフラックス入りワイヤに含有されたNa、並びにK2O、及びK2SiO3等の酸化物としてフラックス入りワイヤに含有されたKは、アークを安定化して、スパッタ量を抑制する働きを有する。なお、Naは後述するNaF等の弗化物として、Kは後述するK2SiF6等の弗化物として含まれた場合はアークを安定化する働きを持ち、さらに拡散性水素量の低減に寄与するが、これは後述されるFの効果として理解される。Na化合物及びK化合物は、珪酸ソーダ及び珪酸カリウムからなる水ガラスの固質成分、Na2O、K2O、K2SiO3、Na2SiO3、NaF、及びK2SiF6等の粉末の形態で含有させることができる。
Fは、蛍石(CaF2)、弗化ソーダ(NaF)、弗化カリウム(KF)、弗化リチウム(LiF)、弗化マグネシウム(MgF2)、珪弗化カリウム(K2SiF6)、六弗化ジルコン酸カリウム(K2ZrF6)、氷晶石(Na3AlF6)、弗化アルミニウム(AlF3)等の弗化物としてフラックス入りワイヤに含有され、溶接金属の拡散性水素量を低減して低温割れを防止する効果を有する。また、NaF、Na3AlF6、AlF3、K2SiF6、及びMgF2等は、含有量が適切であれば、アーク安定剤としての働きも有する。しかし、F含有量が0.10%以下である場合は、低温割れを十分に抑制できない。一方、弗化物はスパッタを増大させる働きを有し、特にF含有量が0.30%を超えると、アークが荒く不安定になりスパッタ発生量が許容上限を超える。従って、F含有量は0.10%超0.30%以下とする。F含有量の下限値を0.11%、または0.12%としてもよい。F含有量の上限値を0.25%、または0.27%としてもよい。
Caは、上述のように弗化物(蛍石)、又はCa酸化物のようなCa化合物としてフラックス入りワイヤに含まれる場合がある。ただし、Ca化合物はスパッタ量を特に増大させやすい化合物である。従って、Ca化合物は含まれないことが好ましく、その含有量の下限値は、フラックスワイヤの全質量に対するCa換算値で0%である。但し、Caが不純物としてフラックス中に混入する場合がある。不純物としてのCa化合物は、フラックスワイヤの全質量に対するCa換算値で約0.300%まで含有を許容される。Ca化合物の含有量の上限値をフラックスワイヤの全質量に対するCa換算値で0.200%、又は0.150%としてもよい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいてZr化合物の含有は必須ではない。従ってZr化合物の含有量の下限値は0%である。しかし、Zr化合物は、フラックス入りワイヤに含まれる場合、脱酸効果を有しておりこれにより溶接金属の酸素量を低減させる。また、Zr化合物にはビード止端部の形状を改善する効果がある。このため、0.06%以上のZr化合物を含有させても良い。一方、Zr化合物の含有量が0.30%を超えると、生成スラグ量が増加してスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、Zr化合物の含有量の上限値は0.30%とされる。Zr化合物の含有量の上限値を0.20%、又は0.25%としてもよい。Zr化合物は、ZrSiO4やK2ZrF6などとして含有される。
C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo及びTiの含有量(フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%)を独立変数とし、溶接金属の強度及び靭性を従属変数とする重回帰分析を行い、C含有量の係数を1として他の成分の回帰係数として表現したのが下記式(1)のPtsである。この式(1)によりフラックス入りワイヤの成分に基づいて算出される溶接金属の強度及び靭性の推定値をPtsとした。
Pts=[C]+[Si]/7+[Mn]/5+[Cu]/7+[Ni]/20+[Cr]/8+[Mo]/2+[Ti]/5・・・式(1)
但し、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[Ti]は、合金元素として含まれるC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Tiのそれぞれのフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%を示す。フラックス入りワイヤに含まれない元素の含有量については「0%」とみなす。
本実施形態に係るガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分の残部は、Fe及び不純物である。Feは、鋼製外皮、充填率調整のための鉄粉、並びにFe−Si、Fe−Mn、及びFe−Ti合金などの鉄合金粉からなる群から選択されるいずれか一種以上の形態としてフラックス入りワイヤに含まれることとなる。鉄粉の種類は特に限定されないが、溶接金属の酸素量の増加を抑制するためにアトマイズ鉄粉が望ましい。不純物とは、本実施形態に係るフラックス入りワイヤを工業的に製造する際に、原料、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に係るフラックス入りワイヤに悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。例えば不純物として鋼製外皮の製鋼時に含有されうるAlは、上述されたように溶接金属中に非金属介在物を形成して靭性を低下させるので少ない方が好ましいが、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.200%以下であれば許容される。P及びSは、上述されたように溶接金属の靭性を低下させるが、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.030%以下であれば許容される。Nは、固溶Nとして溶接金属に含まれた場合に溶接金属の靭性を損なうが、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.01%以下であれば許容される。
本実施形態に係るガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成型し、その内部にフラックスを充填した構造である。ワイヤの種類としては、成形された鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無いワイヤと、鋼製外皮に合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するワイヤとに大別できる。本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおいては、何れの断面構造のワイヤをも採用することができるが、鋼製外皮に継目を有するワイヤは、保存時に継ぎ目から水分が侵入し、この水分が水素源となって低温割れを生じさせる場合がある。一方、鋼製外皮に継目が無いワイヤ、即ちシームレス形状を有するワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックスの吸湿が無いので、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、一層好ましい。
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、鋼製外皮の外表面に送給潤滑剤をさらに備えてもよい。フラックス入りワイヤの表面の送給潤滑剤は、特に半自動溶接の場合にフラックス入りワイヤの送給性を良好にして、アークが安定でスパッタの発生量を少なくするとともに、溶接欠陥の発生を防止する。フラックス入りワイヤの表面の送給潤滑剤の量がワイヤ10kg当たり0.20g未満であると、ワイヤ送給性が不良となりアークが不安定でスパッタ発生量が多くなる場合がある。また、この場合、スラグ巻込み欠陥が生じやすくなる場合がある。一方、フラックス入りワイヤ表面の送給潤滑剤がワイヤ10kg当たり1.00gを超えると、送給ローラ部でフラックス入りワイヤがスリップして、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる場合がある。また、この場合、溶接金属の拡散性水素量が多くなって低温割れが生じやすくなる場合がある。
Claims (8)
- 鋼製外皮と、前記鋼製外皮に充填されたフラックスとを備えるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、
前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、合金成分として、
C:0.05〜0.18%、
Si:0.3〜1.4%、
Mn:1.2〜3.5%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cu:0.05〜0.50%、
Ni:0.8〜3.5%、
Cr:0.01〜1.40%、
Mo:0.15〜1.00%、
Ti:0.04〜0.30%、及び
Al:0.200%以下を含有し、
さらに、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、
弗化物:F換算値の合計で0.10%超0.30%以下、
Si酸化物:SiO2換算値で0.010〜0.400%、及び
Na化合物及びK化合物:Na換算値及びK換算値の合計で0.06〜0.35%
を含有し、
残部が鋼製外皮、鉄粉、及び鉄合金粉のいずれか一種以上の形態としてのFeと不純物とからなり、
下記式(1)で示されるPtsが0.60〜1.50であることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
Pts=[C]+[Si]/7+[Mn]/5+[Cu]/7+[Ni]/20+[Cr]/8+[Mo]/2+[Ti]/5・・・式(1)
但し、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[Ti]は、前記合金成分として含まれるC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Tiのそれぞれの前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%を示し、前記フラックス入りワイヤに含まれない元素の含有量については0%とみなす。 - 前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、前記合金成分として
B:0〜0.010%、
Mg:0〜0.50%、及び
Sn:0〜0.40%
からなる群から選択される一種以上をさらに含有する
ことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、
Ca化合物:Ca換算値で0〜0.300%
であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 前記鋼製外皮が、前記鋼製外皮の全質量に対する質量%で、前記合金成分として
Al:0.003〜0.20%を含有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、
Zr化合物:Zr換算値で0〜0.30%
をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 前記鋼製外皮がシームレス形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 前記鋼製外皮の外表面に送給潤滑剤をさらに備え、
前記送給潤滑剤の、前記フラックス入りワイヤ10kg当たりの量が0.20〜1.00gである
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて鋼板をガスシールドアーク溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
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