以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
[ショベルの概要]
最初に、図1、図2を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。
図1、図2は、それぞれ、本実施形態に係るショベル100の上面図及び側面図である。
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメントATを構成するブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10を備える。
下部走行体1は、後述の如く、左右一対のクローラ1C、具体的には、左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。下部走行体1は、左クローラ1CL及び右クローラ1CRが走行油圧モータ2M(2ML,2MR)でそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2A(旋回アクチュエータの一例)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
尚、バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメント、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット、ブレーカ等が取り付けられてもよい。
キャビン10は、オペレータが搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素(被駆動要素)を駆動する。
また、ショベル100は、キャビン10のオペレータにより操作可能に構成されるのに代えて、或いは、加えて、所定の外部装置(例えば、後述の支援装置200や管理装置300)のオペレータによって遠隔操作が可能に構成されてもよい。この場合、ショベル100は、例えば、後述の空間認識装置70が出力する画像情報(撮像画像)を外部装置に送信する。また、後述するショベル100の表示装置D1に表示される各種の情報画像(例えば、各種設定画面等)は、同様に、外部装置に設けられる表示装置にも表示されてよい。これにより、オペレータは、例えば、外部装置に設けられる表示装置に表示される内容を確認しながら、ショベル100を遠隔操作することができる。そして、ショベル100は、外部装置から受信される、遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素を駆動してよい。ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。以下、オペレータの操作には、キャビン10のオペレータの操作装置26に対する操作、及び外部装置のオペレータの遠隔操作の少なくとも一方が含まれる前提で説明を進める。
また、ショベル100は、オペレータの操作の内容に依らず、自動で油圧アクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能(以下、「自動運転機能」或いは「マシンコントロール機能」)を実現する。
自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、操作対象の動作要素(油圧アクチュエータ)以外の動作要素(油圧アクチュエータ)を自動で動作させる機能(いわゆる「半自動運機能」)が含まれてよい。また、自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作がない前提で、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「完全自動運転機能」)が含まれてよい。ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、自動運転機能には、ショベル100の周囲の作業者等の人のジェスチャをショベル100が認識し、認識されるジェスチャの内容に応じて、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(「ジェスチャ操作機能」)が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、自動運転の対象の動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
[ショベルの構成]
次に、図1、図2に加えて、図3、図4(図4A〜図4D)を参照して、ショベル100の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係るショベル100の油圧システムの構成の一例を説明する図である。図4A〜図4Dは、本実施形態に係るショベル100の油圧システムにおけるアタッチメントAT及び上部旋回体3に関する操作系の構成部分の一例を示す図である。具体的には、図4A〜図4Dは、それぞれ、アーム5、ブーム4、バケット6、及び上部旋回体3に関する操作系の構成部分の一例を示す図である。
本実施形態に係るショベル100の油圧システムは、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、パイロットポンプ15と、コントロールバルブ17と、操作装置26と、吐出圧センサ28と、操作圧センサ29と、コントローラ30とを含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧システムは、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ2ML,2MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
エンジン11は、油圧システムのメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、コントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。レギュレータ13は、後述するメインポンプ14L,14Rのそれぞれに対応するレギュレータ13L,13Rを含む。
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、上述の如く、エンジン11により駆動されることにより、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、コントローラ30による制御下で、上述の如く、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御される。メインポンプ14は、メインポンプ14L,14Rを含む。
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットラインを介して操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26に対する操作や遠隔操作の状態に応じて、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ2ML,2MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)に選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する制御弁171〜176を含む。制御弁171は、走行油圧モータ2MLに対応する。また、制御弁172は、走行油圧モータ2MRに対応する。また、制御弁173は、旋回油圧モータ2Aに対応し、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応する。また、制御弁175は、ブームシリンダ7に対応し、制御弁175L,175Rを含む。制御弁176は、アームシリンダ8に対応し、制御弁176L,176Rを含む。
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの動作要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ2ML,2MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。
図3、図4A〜図4Dに示すように、操作装置26は、油圧パイロット式である。操作装置26は、その二次側のパイロットラインを通じて、直接的に、或いは、その二次側のパイロットラインに設けられる後述のシャトル弁32を介して、コントロールバルブ17に接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット圧が入力されうる。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動することができる。操作装置26は、アタッチメントAT、即ち、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、バケット6(バケットシリンダ9)、並びに、上部旋回体3を操作するための左操作レバー26L及び右操作レバー26Rを含む。また、操作装置26は、下部走行体1を操作するための走行レバー26Dを含み、走行レバー26Dは、左クローラ1CLを操作するための左走行レバー26DLと、右クローラ1CRを操作するための右走行レバー26DRを含む。
左操作レバー26Lは、上部旋回体3の旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、キャビン10内のオペレータから見た前後方向(つまり、上部旋回体3の前後方向)に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。また、左操作レバー26Lは、キャビン10内のオペレータから見た左右方向(つまり、上部旋回体3の左右方向)に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、キャビン10内のオペレータから見た前後方向に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。また、右操作レバー26Rは、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。
左走行レバー26DLは、上述の如く、左クローラ1CLの操作に用いられ、図示しない左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、キャビン10内のオペレータから見た前後方向に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。左走行レバー26DLの前進方向及び後進方向の操作に対応する二次側のパイロットラインは、それぞれ、制御弁171の対応するパイロットポートに直接的に接続される。つまり、走行油圧モータ2MLを駆動する制御弁171のスプール位置には、左走行レバー26DLの操作内容が反映される。
右走行レバー26DRは、上述の如く、右クローラ1CRの操作に用いられ、図示しない右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、キャビン10内のオペレータから見た前後方向に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。右走行レバー26DRの前進方向及び後進方向の操作に対応する二次側のパイロットラインは、それぞれ、制御弁172の対応するパイロットポートに直接的に接続される。つまり、走行油圧モータ2MLを駆動する制御弁172のスプール位置には、左走行レバー26DLの操作内容が反映される。
また、操作装置26(左操作レバー26L、右操作レバー26R、左走行レバー26DL、及び右走行レバー26DR)は、パイロット圧を出力する油圧パイロット式ではなく、電気信号(以下、「操作信号」)を出力する電気式であってもよい。この場合、操作装置26からの電気信号(操作信号)は、コントローラ30に入力され、コントローラ30は、入力される電気信号に応じて、コントロールバルブ17内の各制御弁171〜176を制御することにより、操作装置26に対する操作内容に応じた、各種油圧アクチュエータの動作を実現する。例えば、コントロールバルブ17内の制御弁171〜176は、コントローラ30からの指令により駆動する電磁ソレノイド式スプール弁であってもよい。また、例えば、パイロットポンプ15と各制御弁171〜176のパイロットポートとの間には、コントローラ30からの電気信号に応じて動作する油圧制御弁(以下、「操作用制御弁」)が配置されてもよい。操作用制御弁は、例えば、比例弁31であってよく、シャトル弁32は、省略される。この場合、電気式の操作装置26を用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、その操作量(例えば、レバー操作量)に対応する電気信号によって、操作用制御弁を制御しパイロット圧を増減させることで、操作装置26に対する操作内容に合わせて、各制御弁171〜176を動作させることができる。以下、操作用制御弁は、比例弁31である前提で説明を進める。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。吐出圧センサ28により検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28は、メインポンプ14L,14Rのそれぞれの吐出圧を検出する吐出圧センサ28L,28Rを含む。
操作圧センサ29は、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26におけるそれぞれの動作要素(即ち、油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。操作圧センサ29による操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に対応するパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。操作圧センサ29は、操作圧センサ29LA,29LB,29RA,29RB,29DL,29DRを含む。
操作圧センサ29LAは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する前後方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインの作動油の圧力(以下、「操作圧」)の形で検出する。
操作圧センサ29LBは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する左右方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
操作圧センサ29RAは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する前後方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
操作圧センサ29RBは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する左右方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
操作圧センサ29DLは、オペレータによる左走行レバー26DLに対する前後方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、左走行レバー26DLの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
操作圧センサ29DRは、オペレータによる右走行レバー26DRに対する前後方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、右走行レバー26DRの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
尚、操作装置26(左操作レバー26L、右操作レバー26R、左走行レバー26DL、及び右走行レバー26DR)の操作内容は、操作圧センサ29以外のセンサ(例えば、右操作レバー26R、左走行レバー26DL、及び右走行レバー26DRに取り付けられるポテンショメータ等)で検出されてもよい。
コントローラ30は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置(「主記憶装置」とも称する)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種入出力用のインタフェース装置等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、不揮発性の補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。
ここで、図3に示すように、ショベル100の油圧システムにおいて、油圧アクチュエータを駆動する駆動系の油圧システムの部分は、エンジン11により駆動されるメインポンプ14L,14Rのそれぞれから、センタバイパス油路40L,40R、パラレル油路42L,42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
センタバイパス油路40Lは、メインポンプ14Lを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁171,173,175L,176Lを順に通過し、作動油タンクに至る。
センタバイパス油路40Rは、メインポンプ14Rを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁172,174,175R,176Rを順に通過し、作動油タンクに至る。
制御弁171は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクに排出させるスプール弁である。
制御弁172は、メインポンプ14Rから吐出される作動油を走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁173は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁174は、メインポンプ14Rから吐出される作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁175L,175Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁176L,176Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rは、それぞれ、パイロットポートに作用するパイロット圧に応じて、油圧アクチュエータに給排される作動油の流量を調整したり、流れる方向を切り換えたりする。
パラレル油路42Lは、センタバイパス油路40Lと並列的に、制御弁171,173,175L,176Lにメインポンプ14Lの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路42Lは、制御弁171の上流側でセンタバイパス油路40Lから分岐し、制御弁171,173,175L,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Lの作動油を供給可能に構成される。これにより、パラレル油路42Lは、制御弁171,173,175Lの何れかによってセンタバイパス油路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
パラレル油路42Rは、センタバイパス油路40Rと並列的に、制御弁172,174,175R,176Rにメインポンプ14Rの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路42Rは、制御弁172の上流側でセンタバイパス油路40Rから分岐し、制御弁172,174,175R,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Rの作動油を供給可能に構成される。パラレル油路42Rは、制御弁172,174,175Rの何れかによってセンタバイパス油路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
レギュレータ13L,13Rは、それぞれ、コントローラ30による制御下で、メインポンプ14L、14Rの斜板の傾転角を調節することによって、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節する。
吐出圧センサ28Lは、メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することができる。
センタバイパス油路40L,40Rには、最も下流にある制御弁176L,176Rのそれぞれと作動油タンクとの間には、ネガティブコントロール絞り(以下、「ネガコン絞り」)18L,18Rが設けられる。これにより、メインポンプ14L,14Rにより吐出された作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rで制限される。そして、ネガコン絞り18L、18Rは、レギュレータ13L,13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」)を発生させる。
ネガコン圧センサ19L,19Rは、ネガコン圧を検出し、検出されたネガコン圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
コントローラ30は、吐出圧センサ28L,28Rにより検出されるメインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御し、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて、レギュレータ13Lを制御し、メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することにより、吐出量を減少させてよい。レギュレータ13Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14L,14Rの吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないように、メインポンプ14L,14Rの全馬力制御を行うことができる。
また、コントローラ30は、ネガコン圧センサ19L,19Rにより検出されるネガコン圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することにより、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させる。
具体的には、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態(図3に示す状態)の場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、センタバイパス油路40L,40Rを通ってネガコン絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンタバイパス油路40L,40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作装置26を通じて操作された場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータを確実に駆動させることができる。
また、図3、図4A〜図4Dに示すように、ショベル100の油圧システムにおいて、操作系に関する油圧システム部分は、パイロットポンプ15と、操作装置26(左操作レバー26L、右操作レバー26R、左走行レバー26DL、及び右走行レバー26DR)と、比例弁31と、シャトル弁32と、減圧用比例弁33とを含む。
比例弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32とを接続するパイロットラインに設けられ、その流路面積(作動油が通流可能な断面積)を変更できるように構成される。比例弁31は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26(具体的には、左操作レバー26L、右操作レバー26R)が操作されていない場合であっても、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31及びシャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁(具体的には、制御弁173〜176)のパイロットポートに供給できる。そのため、コントローラ30は、比例弁31を制御することにより、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能を実現することができる。比例弁31は、比例弁31AL,31AR,31BL,31BR,31CL,31CR,31DL,31DRを含む。
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有し、2つの入口ポートに入力されたパイロット圧のうちの高い方のパイロット圧を有する作動油を出口ポートに出力させる。シャトル弁32は、2つの入口ポートのうちの一方が操作装置26に接続され、他方が比例弁31に接続される。シャトル弁32の出口ポートは、パイロットラインを通じて、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。そのため、シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と比例弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。つまり、コントローラ30は、操作装置26から出力される二次側のパイロット圧よりも高いパイロット圧を比例弁31から出力させることにより、オペレータによる操作装置26の操作に依らず、対応する制御弁を制御し、下部走行体1、上部旋回体3、アタッチメントATの動作を制御することができる。シャトル弁32は、シャトル弁32AL,32AR,32BL,32BR,32CL,32CR,32DL,32DRを含む。
減圧用比例弁33は、操作装置26とシャトル弁32とを接続するパイロットラインに設けられる。減圧用比例弁33は、例えば、その流路面積を変更できるように構成される。減圧用比例弁33は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26(具体的には、レバー装置26A〜26C)が操作されている場合に、操作装置26から出力されるパイロット圧を強制的に減圧させることができる。そのため、コントローラ30は、操作装置26が操作されている場合であっても、操作装置26の操作に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、コントローラ30は、例えば、操作装置26が操作されている場合であっても、操作装置26から出力されるパイロット圧を減圧させ、比例弁31から出力されるパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31及び減圧用比例弁33を制御することで、例えば、操作装置26の操作内容とは無関係に、所望のパイロット圧をコントロールバルブ17内の制御弁のパイロットポートに確実に作用させることができる。よって、コントローラ30は、例えば、比例弁31に加えて、減圧用比例弁33を制御することで、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能をより適切に実現することができる。減圧用比例弁33は、後述の如く、減圧用比例弁33AL,33AR,33BL,33BR,33CL,33CR,33DL,33DRを含む。
また、減圧用比例弁33は、切替弁に置換されてもよい。切替弁は、コントローラ30による制御下で、操作装置26とシャトル弁32(32AL,32AR)との間のパイロットラインの連通状態と、非連通状態とを切り替える。
図4Aに示すように、左操作レバー26Lは、オペレータが前後方向に傾倒する態様で、アーム5に対応するアームシリンダ8を操作するために用いられる。つまり、左操作レバー26Lは、前後方向に傾倒される場合、アーム5の動作を操作対象とする。左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、前後方向への操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
シャトル弁32ALは、二つの入口ポートが、それぞれ、アーム5の閉じ方向の操作(以下、「アーム閉じ操作」)に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインと、比例弁31ALの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが制御弁176Lの右側のパイロットポート及び制御弁176Rの左側のパイロットポートに接続される。
シャトル弁32ARは、二つの入口ポートが、それぞれ、アーム5の開き方向の操作(以下、「アーム開き操作」)に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインと、比例弁31ARの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが制御弁176Lの左側のパイロットポート及び制御弁176Rの右側のパイロットポートに接続される。
つまり、左操作レバー26Lは、シャトル弁32AL,32ARを介して、前後方向への操作内容に応じたパイロット圧を制御弁176L、176Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32ALの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32ALを介して、制御弁176Lの右側のパイロットポートと制御弁176Rの左側のパイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32ARの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32ARを介して、制御弁176Lの左側のパイロットポートと制御弁176Rの右側のパイロットポートに作用させる。
比例弁31ALは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31ALは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32ALの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31ALは、シャトル弁32ALを介して、制御弁176Lの右側のパイロットポート及び制御弁176Rの左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
比例弁31ARは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31ARは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32ARの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31ARは、シャトル弁32ARを介して、制御弁176Lの左側のパイロットポート及び制御弁176Rの右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
つまり、比例弁31AL、31ARは、左操作レバー26Lの操作状態に依らず、制御弁176L,176Rを任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
減圧用比例弁33ALは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33ALは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、左操作レバー26Lのアーム閉じ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33ALは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、左操作レバー26Lのアーム閉じ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32ALの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33ALは、左操作レバー26Lでアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、アーム閉じ操作に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33ALは、左操作レバー26Lでアーム閉じ操作がされている場合であっても、シャトル弁32ALの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31ALからシャトル弁32ALの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31AL及び減圧用比例弁33ALを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁176L,176Rのアーム閉じ側のパイロットポートに作用させることができる。
減圧用比例弁33ARは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33ARは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、左操作レバー26Lのアーム開き操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33ARは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、左操作レバー26Lのアーム開き操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32ARの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33ARは、左操作レバー26Lでアーム開き操作が行われている場合であっても、必要に応じて、アーム開き操作に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33ARは、左操作レバー26Lでアーム開き操作がされている場合であっても、シャトル弁32ARの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31ARからシャトル弁32ARの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31AR及び減圧用比例弁33ARを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁176L,176Rのアーム開き側のパイロットポートに作用させることができる。
このように、減圧用比例弁33AL,33ARは、左操作レバー26Lの前後方向への操作状態に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33AL,33ARは、シャトル弁32AL,32ARの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31AL,31ARのパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを通じて確実に制御弁176L,176Rのパイロットポートに作用するように補助することができる。
尚、コントローラ30は、減圧用比例弁33ALを制御する代わりに、比例弁31ARを制御することによって、左操作レバー26Lのアーム閉じ操作に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、左操作レバー26Lでアーム閉じ操作が行われる場合に、比例弁31ARを制御し、比例弁31ARからシャトル弁32ARを介して制御弁176L,176Rのアーム開き側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、左操作レバー26Lからシャトル弁32ALを介して制御弁176L,176Rのアーム閉じ側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁176L,176Rのアーム開き側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁176L,176Rを強制的に中立位置に近づけて、左操作レバー26Lのアーム閉じ操作に対応するアームシリンダ8の動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、減圧用比例弁33ARを制御する代わりに、比例弁31ALを制御することによって、左操作レバー26Lのアーム開き操作に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
また、減圧用比例弁33AL,33ARは、それぞれ、切替弁に置換されてもよい。以下、減圧用比例弁33BL,33BR,33CL,33CR,33DL,33DRについても同様であってよい。
減圧用比例弁33ALに対応する切替弁は、アーム閉じ操作に対応する左操作レバー26Lの二次側ポートと、シャトル弁32ALとの間のパイロットラインに設けられ、コントローラ30から入力される制御指令に応じて、当該パイロットラインの連通・非連通を切り替える。例えば、当該切替弁は、通常、当該パイロットラインを連通状態に維持する常開型であり、コントローラ30からの制御指令に応じて、当該パイロットラインを非連通にし、左操作レバー26Lから出力される、アーム閉じ操作に対応する作動油を作動油タンクに排出してよい。
減圧用比例弁33ARに対応する切替弁は、アーム開き操作に対応する左操作レバー26Lの二次側ポートと、シャトル弁32ARとの間のパイロットラインに設けられ、コントローラ30から入力される制御指令に応じて、当該パイロットラインの連通・非連通を切り替える。例えば、当該切替弁は、通常、当該パイロットラインを連通状態に維持する常開型であり、コントローラ30からの制御指令に応じて、当該パイロットラインを非連通にし、左操作レバー26Lから出力される、アーム開き操作に対応する作動油を作動油タンクに排出してよい。
つまり、切替弁は、シャトル弁32AL,32ARに左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作に対応するパイロット圧が入力されないようにすることができる。
操作圧センサ29LAは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する前後方向への操作内容を圧力(操作圧)の形で検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lに対する前後方向への操作内容を把握できる。検出対象の左操作レバー26Lに対する前後方向への操作内容には、例えば、操作方向、操作量(操作角度)等が含まれうる。以下、左操作レバー26Lに対する左右方向の操作内容、並びに、右操作レバー26Rに対する前後方向及び左右方向の操作内容についても同様である。
コントローラ30は、オペレータによる左操作レバー26Lに対するアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介して、制御弁176Lの右側のパイロットポート及び制御弁176Rの左側のパイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによる左操作レバー26Lに対するアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介して、制御弁176Lの左側のパイロットポート及び制御弁176Rの右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、アーム5の開閉動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
また、コントローラ30は、上述の如く、減圧用比例弁33AL,33ARや切替弁を制御し、アーム5の操作に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインからシャトル弁32AL,32ARに入力されるパイロット圧を相対的に低くすることができる。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作に対応するパイロット圧よりも小さいパイロット圧を、比例弁31AL,31AR及びシャトル弁32AL,32ARを介して、制御弁176L,176Rの対応するパイロットポートに作用させることができる。そのため、例えば、コントローラ30は、左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作に関する操作量に対するアーム5の動作速度や動作加速度等を緩慢にすることができる。
また、例えば、図4Bに示すように、右操作レバー26Rは、オペレータが前後方向に傾倒する態様で、ブーム4に対応するブームシリンダ7を操作するために用いられる。つまり、右操作レバー26Rは、前後方向に傾倒される場合、ブーム4の動作を操作対象とする。右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、前後方向への操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
シャトル弁32BLは、二つの入口ポートが、それぞれ、ブーム4の上げ方向の操作(以下、「ブーム上げ操作」)に対応する右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインと、比例弁31BLの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに接続される。
シャトル弁32BRは、二つの入口ポートが、それぞれ、ブーム4の下げ方向の操作(以下、「ブーム下げ操作」)に対応する右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインと、比例弁31BRの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁175Rの右側のパイロットポートに接続される。
つまり、右操作レバー26Rは、シャトル弁32BL,32BRを介して、前後方向への操作内容に応じたパイロット圧を制御弁175L,175Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32BLの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32BLを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポートと制御弁175Rの左側のパイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32BRの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32BRを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用させる。
比例弁31BLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31BLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32BLの他方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁31BLは、シャトル弁32BLを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
比例弁31BRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31BRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32BRの他方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁31BRは、シャトル弁32BRを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
つまり、比例弁31BL,31BRは、右操作レバー26Rの操作状態に依らず、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
減圧用比例弁33BLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33BLは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、右操作レバー26Rのブーム上げ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33BLは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、右操作レバー26Rのブーム上げ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32BLの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33BLは、右操作レバー26Rでブーム上げ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、ブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33BLは、右操作レバー26Rでブーム上げ操作がされている場合であっても、シャトル弁32BLの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31BLからシャトル弁32BLの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31BL及び減圧用比例弁33BLを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁175L,175Rのブーム上げ側のパイロットポートに作用させることができる。
減圧用比例弁33BRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33BRは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、右操作レバー26Rのブーム下げ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33BRは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、右操作レバー26Rのブーム下げ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32BRの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33BRは、右操作レバー26Rでブーム下げ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、ブーム下げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33BRは、右操作レバー26Rでブーム下げ操作がされている場合であっても、シャトル弁32BRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31BRからシャトル弁32BRの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31BR及び減圧用比例弁33BRを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートに作用させることができる。
このように、減圧用比例弁33BL,33BRは、右操作レバー26Rの前後方向への操作状態に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33BL,33BRは、シャトル弁32BL,32BRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31BL,31BRのパイロット圧がシャトル弁32BL,32BRを通じて確実に制御弁175L,175Rのパイロットポートに作用するように補助することができる。
尚、コントローラ30は、減圧用比例弁33BLを制御する代わりに、比例弁31BRを制御することによって、右操作レバー26Rのブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、右操作レバー26Rでブーム上げ操作が行われる場合に、比例弁31BRを制御し、比例弁31BRからシャトル弁32BRを介して制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、右操作レバー26Rからシャトル弁32BLを介して制御弁175L,175Rのブーム上げ側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁175L,175Rを強制的に中立位置に近づけて、右操作レバー26Rのブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、減圧用比例弁33BRを制御する代わりに、比例弁31BLを制御することによって、右操作レバー26Rのブーム下げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
操作圧センサ29RAは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する前後方向への操作内容を圧力(操作圧)の形で検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、右操作レバー26Rに対する前後方向への操作内容を把握できる。
コントローラ30は、オペレータによる右操作レバー26Rに対するブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによる右操作レバー26Rに対するブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに供給できる。即ち、コントローラ30は、ブーム4の上げ下げの動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
図4Cに示すように、右操作レバー26Rは、オペレータが左右方向に傾倒する態様で、バケット6に対応するバケットシリンダ9を操作するために用いられる。つまり、右操作レバー26Rは、左右方向に傾倒される場合、バケット6の動作を操作対象とする。右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、左右方向への操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
シャトル弁32CLは、二つの入口ポートが、それぞれ、バケット6の閉じ方向の操作(以下、「バケット閉じ操作」)に対応する右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインと、比例弁31CLの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁174の左側のパイロットポートに接続される。
シャトル弁32CRは、二つの入口ポートが、それぞれ、バケット6の開き方向の操作(以下、「バケット開き操作」)に対応する右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインと、比例弁31CRの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁174の右側のパイロットポートに接続される。
つまり、右操作レバー26Rは、シャトル弁32CL,32CRを介して、左右方向への操作内容に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32CLの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32CLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32CRの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32CRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに作用させる。
比例弁31CLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31CLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32CLの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31CLは、シャトル弁32CLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
比例弁31CRは、コントローラ30が出力する制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31CRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32CRの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31CRは、シャトル弁32CRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
つまり、比例弁31CL,31CRは、右操作レバー26Rの操作状態に依らず、制御弁174を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
減圧用比例弁33CLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33CLは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、右操作レバー26Rのバケット閉じ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33CLは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、右操作レバー26Rのバケット閉じ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32CLの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33CLは、右操作レバー26Rでバケット閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、バケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33CLは、右操作レバー26Rでバケット閉じ操作がされている場合であっても、シャトル弁32CLの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31CLからシャトル弁32CLの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31CL及び減圧用比例弁33CLを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁174のバケット閉じ側のパイロットポートに作用させることができる。
減圧用比例弁33CRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33CRは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、右操作レバー26Rのバケット開き操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33CRは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、右操作レバー26Rのバケット開き操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32CRの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33CRは、右操作レバー26Rでバケット開き操作が行われている場合であっても、必要に応じて、バケット開き操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33CRは、右操作レバー26Rでバケット開き操作がされている場合であっても、シャトル弁32CRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31CRからシャトル弁32CRの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31CR及び減圧用比例弁33CRを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁174のバケット開き側のパイロットポートに作用させることができる。
このように、減圧用比例弁33CL,33CRは、右操作レバー26Rの左右方向への操作状態に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33CL,33CRは、シャトル弁32CL,32CRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31CL,31CRのパイロット圧がシャトル弁32CL,32CRを通じて確実に制御弁174のパイロットポートに作用するように補助することができる。
尚、コントローラ30は、減圧用比例弁33CLを制御する代わりに、比例弁31CRを制御することによって、右操作レバー26Rのバケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、右操作レバー26Rでバケット閉じ操作が行われる場合に、比例弁31CRを制御し、比例弁31CRからシャトル弁32CRを介して制御弁174のバケット開き側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、右操作レバー26Rからシャトル弁32CLを介して制御弁174のバケット閉じ側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁174のバケット開き側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁174を強制的に中立位置に近づけて、右操作レバー26Rのバケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、減圧用比例弁33CRを制御する代わりに、比例弁31CLを制御することによって、右操作レバー26Rのバケット開き操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
操作圧センサ29RBは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する左右方向への操作内容を圧力(操作圧)の形で検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、右操作レバー26Rの左右方向への操作内容を把握できる。
コントローラ30は、オペレータによる右操作レバー26Rに対するバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによる右操作レバー26Rに対するバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、バケット6の開閉動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
また、例えば、図4Dに示すように、左操作レバー26Lは、オペレータが左右方向に傾倒する態様で、上部旋回体3(旋回機構2)に対応する旋回油圧モータ2Aを操作するために用いられる。つまり、左操作レバー26Lは、左右方向に傾倒される場合、上部旋回体3の旋回動作を操作対象とする。左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、左右方向への操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
シャトル弁32DLは、二つの入口ポートが、それぞれ、上部旋回体3の左方向の旋回操作(以下、「左旋回操作」)に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインと、比例弁31DLの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁173の左側のパイロットポートに接続される。
シャトル弁32DRは、二つの入口ポートが、それぞれ、上部旋回体3の右方向の旋回操作(以下、「右旋回操作」)に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインと、比例弁31DRの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁173の右側のパイロットポートに接続される。
つまり、左操作レバー26Lは、シャトル弁32DL,32DRを介して、左右方向への操作内容に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32DLの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32DLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32DRの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32DRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに作用させる。
比例弁31DLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31DLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32DLの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31DLは、シャトル弁32DLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
比例弁31DRは、コントローラ30が出力する制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31DRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32DRの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31DRは、シャトル弁32DRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
つまり、比例弁31DL,31DRは、左操作レバー26Lの操作状態に依らず、制御弁173を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
減圧用比例弁33DLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33DLは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、左操作レバー26Lの左旋回操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33DLは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、左操作レバー26Lの左旋回操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32DLの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33DLは、左操作レバー26Lで左旋回操作が行われている場合であっても、必要に応じて、左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33DLは、左操作レバー26Lで左旋回操作がされている場合であっても、シャトル弁32DLの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31DLからシャトル弁32DLの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31DL及び減圧用比例弁33DLを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁173の左旋回側のパイロットポートに作用させることができる。
減圧用比例弁33DRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33DRは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、左操作レバー26Lの右旋回操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33DRは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、左操作レバー26Lの右旋回操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32DRの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33DRは、左操作レバー26Lで右旋回操作が行われている場合であっても、必要に応じて、右旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33DRは、左操作レバー26Lで右旋回操作がされている場合であっても、シャトル弁32DRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31DRからシャトル弁32DRの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31DR及び減圧用比例弁33DRを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁173の右旋回側のパイロットポートに作用させることができる。
このように、減圧用比例弁33DL,33DRは、左操作レバー26Lの左右方向への操作状態に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33DL,33DRは、シャトル弁32DL,32DRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31DL,31DRのパイロット圧がシャトル弁32DL,32DRを通じて確実に制御弁173のパイロットポートに作用するように補助することができる。
尚、コントローラ30は、減圧用比例弁33DLを制御する代わりに、比例弁31DRを制御することによって、左操作レバー26Lの左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、左操作レバー26Lで左旋回操作が行われる場合に、比例弁31DRを制御し、比例弁31DRからシャトル弁32DRを介して制御弁173の右旋回側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、左操作レバー26Lからシャトル弁32DLを介して制御弁173の左旋回側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁173の右旋回側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁173を強制的に中立位置に近づけて、左操作レバー26Lの左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、減圧用比例弁33DRを制御する代わりに、比例弁31DLを制御することによって、左操作レバー26Lの右旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
操作圧センサ29LBは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する操作状態を圧力として検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lに対する左右方向への操作内容を把握できる。
コントローラ30は、オペレータによる左操作レバー26Lに対する左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31DL及びシャトル弁32DLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによる左操作レバー26Lに対する右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31DR及びシャトル弁32DRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、上部旋回体3の左右方向への旋回動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
尚、下部走行体1についても、ブーム4、アーム5、バケット6、及び上部旋回体3と同様に、コントローラ30による自動制御が可能な構成が採用されてもよい。この場合、例えば、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRのそれぞれと、制御弁171,172との間の二次側のパイロットラインには、シャトル弁32が設置されると共に、当該シャトル弁32に接続され、コントローラ30による制御が可能な比例弁31が設置されるとよい。これにより、コントローラ30は、当該比例弁31に制御電流を出力することで、下部走行体1の走行動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
続いて、本実施形態に係るショベル100の制御システムは、コントローラ30と、空間認識装置70と、向き検出装置71と、入力装置72と、測位装置73と、表示装置D1と、音声出力装置D2と、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、旋回状態センサS5とを含む。
コントローラ30は、上述の如く、ショベル100に関する制御を行う。
例えば、コントローラ30は、オペレータ等の入力装置72に対する所定操作により予め設定される作業モード等に基づき、目標回転数を設定し、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
また、例えば、コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
また、例えば、コントローラ30は、操作装置26が電気式である場合、上述の如く、比例弁31を制御し、操作装置26の操作内容に応じた油圧アクチュエータの動作を実現してよい。
また、例えば、コントローラ30は、比例弁31を用いて、ショベル100の遠隔操作を実現してよい。具体的には、コントローラ30は、外部装置から受信される遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容に対応する制御指令を比例弁31に出力してよい。そして、比例弁31は、パイロットポンプ15から供給される作動油を用いて、コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させてよい。これにより、遠隔操作の内容がコントロールバルブ17の動作に反映され、油圧アクチュエータによって、遠隔操作の内容に沿った各種動作要素(被駆動要素)の動作が実現される。
また、例えば、コントローラ30は、周辺監視機能に関する制御を行う。周辺監視機能では、空間認識装置70で取得される情報に基づき、ショベル100の周囲の所定範囲(以下、「監視範囲」)内への監視対象の物体の進入が監視される。監視範囲内への監視対象の物体の進入の判断処理は、空間認識装置70によって行われてもよいし、空間認識装置70の外部(例えば、コントローラ30)によって行われてもよい。監視対象の物体には、例えば、人、トラック、他の建設機械、電柱、吊り荷、パイロン、建屋等が含まれてよい。
また、例えば、コントローラ30は、物体検出報知機能に関する制御を行う。物体検出報知機能では、周辺監視機能によって、監視範囲内に監視対象の物体が存在すると判断される場合に、キャビン10内のオペレータやショベル100の周囲に対する監視対象の物体の存在が報知される。コントローラ30は、例えば、表示装置D1や音声出力装置D2を用いて、物体検出報知機能を実現してよい。
また、例えば、コントローラ30は、動作制限機能に関する制御を行う。動作制限機能では、例えば、周辺監視機能によって、監視対象内に監視対象の物体が存在すると判断される場合に、ショベル100の動作を制限する。以下、監視対象の物体が人の場合を中心に説明する。
コントローラ30は、例えば、アクチュエータが動作する前において、空間認識装置70の取得情報に基づきショベル100から所定範囲内(監視範囲内)に人等の監視対象の物体が存在すると判断される場合、オペレータが操作装置26を操作しても、アクチュエータを動作不能、或いは、微速状態での動作に制限してよい。具体的には、コントローラ30は、監視範囲内に人が存在すると判断される場合、ゲートロック弁をロック状態にすることでアクチュエータを動作不能にすることができる。電気式の操作装置26の場合には、コントローラ30から操作用比例弁(比例弁31)への信号を無効にすることで、アクチュエータを動作不能にすることができる。他の方式の操作装置26でも、コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させる操作用比例弁(比例弁31)が用いられる場合には、同様である。アクチュエータの動作を微速にしたい場合には、コントローラ30から操作用比例弁(比例弁31)への制御信号を相対的に小さいパイロット圧に対応する内容に制限することで、アクチュエータの動作を微速状態にすることができる。このように、検出される監視対象の物体が監視範囲内に存在すると判断されると、操作装置26が操作されてもアクチュエータは駆動されない、或いは、操作装置26への操作入力に対応する動作速度よりも小さい動作速度(微速)で駆動される。更に、オペレータが操作装置26を操作している最中において、監視範囲内に人等の監視対象の物体が存在すると判断される場合には、オペレータの操作に関わらずアクチュエータの動作を停止、或いは、減速させてもよい。具体的には、監視範囲内に人が存在すると判断される場合、ゲートロック弁をロック状態にすることでアクチュエータを停止させてよい。コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させる操作用比例弁(比例弁31)が用いられる場合には、コントローラ30から操作用比例弁(比例弁31)への信号を無効にする、或いは、操作用比例弁(比例弁31)に減速指令を出力することで、アクチュエータを動作不能、或いは、微速状態の動作に制限することができる。また、検出された監視対象の物体がトラックの場合、アクチュエータの停止或いは減速に関する制御は実施されなくてもよい。例えば、検出されたトラックを回避するようにアクチュエータは制御されてよい。このように、検出された物体の種類が認識され、その認識に基づきアクチュエータは制御されてよい。
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識し、空間認識装置70或いはショベル100から認識された物体までの距離等の位置関係を測定(演算)するように構成される。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、LIDAR(Light Detecting and Ranging)、距離画像センサ、赤外線センサ等を含みうる。本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方認識センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方認識センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方認識センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方認識センサ70Rを含む。また、上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を認識する上方認識センサがショベル100に取り付けられていてもよい。
向き検出装置71は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報(例えば、下部走行体1に対する上部旋回体3の旋回角度)を検出する。
向き検出装置71は、例えば、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサの組み合わせを含んでよい。また、向き検出装置71は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機の組み合わせを含んでもよい。また、向き検出装置71は、上部旋回体3の下部走行体1に対する相対的な旋回角度を検出可能なロータリエンコーダ、ロータリポジションセンサ等、つまり、上述の旋回状態センサS5を含んでもよく、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに取り付けられていてもよい。また、向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられたカメラを含んでもよい。この場合、向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられているカメラが撮像した画像(入力画像)に既知の画像処理を施すことにより、入力画像に含まれる下部走行体1の画像を検出する。そして、向き検出装置71は、既知の画像認識技術を用いて、下部走行体1の画像を検出することで、下部走行体1の長手方向を特定し、上部旋回体3の前後軸の方向と下部走行体1の長手方向との間に形成される角度を導出してよい。このとき、上部旋回体3の前後軸の方向は、カメラの取り付け位置から導出されうる。特に、クローラ1Cは上部旋回体3から突出しているため、向き検出装置71は、クローラ1Cの画像を検出することにより、下部走行体1の長手方向を特定することができる。
尚、上部旋回体3が旋回油圧モータ2Aに代えて、電動機で旋回駆動される構成の場合、向き検出装置71は、レゾルバであってよい。
入力装置72は、キャビン10内の着座したオペレータから手が届く範囲に設けられ、オペレータによる各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。例えば、入力装置72は、各種情報画像を表示する表示装置のディスプレイに実装されるタッチパネルを含みうる。また、例えば、入力装置72は、表示装置D1の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル等を含みうる。また、入力装置72は、操作装置26に設けられるノブスイッチ(例えば、左操作レバー26Lに設けられるスイッチNS等)を含みうる。入力装置72に対する操作内容に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
スイッチNSは、例えば、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。オペレータは、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。また、スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
測位装置73は、上部旋回体3の位置及び向きを測定する。測位装置73は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、上部旋回体3の位置及び向きに対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。また、測位装置73の機能のうちの上部旋回体3の向きを検出する機能は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサにより代替されてもよい。
表示装置D1は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置D1は、CAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
音声出力装置D2は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30と接続され、コントローラ30による制御下で、音声を出力する。音声出力装置D2は、例えば、スピーカやブザー等である。音声出力装置D2は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種情報を音声出力する。
ブーム角度センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する俯仰角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、ジャイロセンサ(角速度センサ)、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよく、以下、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4についても同様である。ブーム角度センサS1によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
アーム角度センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム角度センサS2によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
バケット角度センサS3は、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度を検出する。バケット角度センサS3によるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
機体傾斜センサS4は、水平面に対する機体(例えば、上部旋回体3)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ(角速度センサ)、6軸センサ、IMU等を含んでよい。機体傾斜センサS4による傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
旋回状態センサS5は、上部旋回体3に取り付けられ、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を出力する。旋回状態センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度や旋回角度を検出する。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含む。
尚、機体傾斜センサS4に3軸回りの角速度を検出可能なジャイロセンサ、6軸センサ、IMU等が含まれる場合、機体傾斜センサS4の検出信号に基づき上部旋回体3の旋回状態(例えば、旋回角速度)が検出されてもよい。この場合、旋回状態センサS5は、省略されうる。
[ショベルのマシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能の概要]
次に、図5を参照して、ショベルのマシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能の概要について説明する。
図5は、ショベル100のマシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する構成の一例を示すブロック図である。
コントローラ30は、例えば、オペレータによるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能に関するショベル100の制御を実行する。
コントローラ30は、例えば、目標施工面(設計面の一例)とアタッチメントATの先端部、具体的には、エンドアタッチメントの作業部位との距離等の作業情報を、表示装置D1や音声出力装置D2等を通じて、オペレータに伝える。具体的には、コントローラ30は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、空間認識装置70、測位装置V1、入力装置72等から情報を取得する。そして、コントローラ30は、例えば、取得した情報に基づき、バケット6と目標施工面との間の距離を算出し、表示装置D1に表示される画像や音声出力装置D2から出力される音声により、算出した距離をオペレータに通知してよい。目標施工面に関するデータは、例えば、オペレータによる入力装置72を通じた設定入力に基づき、或いは、外部(例えば、所定の管理サーバ)からのダウンロードされることにより、内部メモリやコントローラ30に接続される外部記憶装置等に記憶されている。目標施工面に関するデータは、例えば、基準座標系で表現されている。基準座標系は、例えば、世界測地系である。世界測地系は、地球の重心に原点をおき、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点の方向に、Y軸を東経90度の方向に、そして、Z軸を北極の方向にとる三次元直交XYZ座標系である。例えば、オペレータは、施工現場の任意の点を基準点と定め、入力装置72を通じて、基準点との相対的な位置関係により目標施工面を設定してよい。バケット6の作業部位は、例えば、バケット6の爪先、バケット6の背面等である。また、エンドアタッチメントとして、バケット6の代わりに、例えば、ブレーカが採用される場合、ブレーカの先端部が作業部位に相当する。これにより、コントローラ30は、表示装置D1、音声出力装置D2等を通じて、作業情報をオペレータに通知し、オペレータによる操作装置26を通じたショベル100の操作をガイドすることができる。
また、コントローラ30は、例えば、オペレータによるショベル100の手動操作を支援したり、ショベル100を自動的或いは自律的に動作させたりするマシンコントロール機能に関するショベル100の制御を実行する。具体的には、コントローラ30は、アタッチメントの所定部位(例えば、エンドアタッチメントの作業部位)が辿る軌道である目標軌道を取得するように構成されている。例えば、コントローラ30は、内部或いは外部の通信可能な不揮発性記憶装置に記憶されている目標施工面に関するデータに基づき、目標軌道を導き出す。コントローラ30は、空間認識装置70が認識したショベル100の周囲の地形に関する情報に基づき、目標軌道を導き出してもよい。また、コントローラ30は、内部の揮発性記憶装置に一時的に記憶されている姿勢検出装置(例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3等)の過去の出力からバケット6の爪先等の作業部位の過去の軌跡に関する情報を導き出し、その情報に基づいて目標軌道を導き出してもよい。また、コントローラ30は、アタッチメントの所定部位の現在位置と目標施工面に関するデータとに基づき、目標軌道を導き出してもよい。
コントローラ30は、例えば、オペレータが手動で地面の掘削操作や均し操作等を行っている場合に、目標施工面とバケット6の先端位置、具体的には、バケット6の爪先や背面等の作業部位とが一致するように、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の少なくとも一つを自動的に動作させる。具体的には、オペレータがスイッチNSを操作(押し)ながら、左操作レバー26Lを通じて、アーム5の操作を行うと、コントローラ30は、オペレータによるアーム5の操作に応じて、目標施工面とバケット6の作業部位とが一致するように、ブーム4、アーム5、及び、バケット6を自動的に動作させる。具体的には、コントローラ30は、上述の如く、比例弁31を制御し、ブーム4、アーム5、及び、バケット6を自動的に動作させる。これにより、オペレータは、左操作レバー26Lを前後方向に操作するだけで、目標施工面に沿った掘削作業や均し作業等をショベル100に実行させることができる。以下、スイッチNSが押し操作された状態で、左操作レバー26Lのアーム5の操作(つまり、左操作レバー26Lの前後方向へ傾倒操作)が行われた場合に、マシンコントロール機能が有効になる前提で、説明を進める。
[ショベルのマシンコントロール機能の詳細]
次に、図6(図6A〜図6C)を参照して、マシンコントロール機能の詳細について説明する。
図6A、図6Bは、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能に関する詳細な構成の一例を示す機能ブロック図である。具体的には、図6A、図6Bは、ショベル100の半自動運転機能に関する詳細な構成を示す機能ブロック図である。図6Cは、ショベル100の自律運転機能に関する詳細な構成を示す機能ブロック図である。図6Bに記載される構成部分は、半自動運転機能及び自律運転機能の双方の場合に共通であるため、ショベル100の自律運転機能に対応する当該構成部分の図示を省略し、図6Bを適宜援用してショベル100の自律運転機能について説明する。
図6A、図6Bに示すように、ショベル100の半自動運転機能を実現するコントローラ30は、マシンコントロール機能に関する機能部として、操作内容取得部3001と、目標施工面取得部3002と、目標軌道設定部3003と、現在位置算出部3004と、目標位置算出部3005と、動作指令生成部3006と、制限部3007と、パイロット指令生成部3008と、姿勢角算出部3009とを含む。これらの機能部3001〜3009は、例えば、スイッチNSが押し操作されている場合、所定の制御周期ごとに、後述する動作を繰り返し実行する。
また、図6B、図6Cに示すように、ショベル100の自律運転機能を実現するコントローラ30は、マシンコントロール機能に関する機能部として、作業内容取得部3001Aと、目標施工面取得部3002と、目標軌道設定部3003と、現在位置算出部3004と、目標位置算出部3005と、動作指令生成部3006と、制限部3007と、パイロット指令生成部3008と、姿勢角算出部3009とを含む。これらの機能部3001A,3002〜3009は、例えば、自動運転機能が有効な場合、所定の制御周期ごとに、後述する動作を繰り返し実行する。
即ち、コントローラ30は、ショベル100の自律運転機能を実現する場合、操作内容取得部3001に代えて、作業内容取得部3001Aを含む点で、ショベル100の半自動運転機能を実現する場合(図6A)と異なる。
操作内容取得部3001は、操作圧センサ29LAから取り込まれる検出信号に基づき、左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作(つまり、前後方向の傾倒操作)に関する操作内容を取得する。例えば、操作内容取得部3001は、操作内容として、操作方向(アーム開き操作であるか、アーム閉じ操作であるかの別)と、操作量を取得(算出)する。また、ショベル100が遠隔操作される場合、外部装置から受信される遠隔操作信号の内容に基づき、ショベル100の半自動運転機能が実現されてもよい。この場合、操作内容取得部3001は、外部装置から受信される遠隔操作信号に基づき、遠隔操作に関する操作内容を取得する。
一方、作業内容取得部3001Aは、ショベル100に搭載される通信装置T1を通じて、所定の外部装置(例えば、後述の支援装置200や管理装置300等)からショベル100が実行すべき作業内容に関する情報(以下、「作業内容情報」)を取得する。作業内容情報には、例えば、ショベル100が行う所定の作業の内容、所定の作業を構成する動作の内容、所定の作業に関する動作条件、作業開始のトリガ条件等が含まれる。所定の作業には、例えば、掘削作業、積込作業、整地作業等が含まれてよい。所定の作業を構成する動作には、例えば、所定の作業が掘削作業である場合、掘削動作、ブーム上げ旋回動作、排土動作、及びブーム下げ旋回動作等が含まれる。動作条件には、例えば、所定の作業が掘削作業である場合、掘削深さ、掘削長さ等に関する条件が含まれる。作業内容取得部3001Aは、取得した作業内容情報に基づき、ショベル100の動作要素(アクチュエータに関する操作指令を出力する。
目標施工面取得部3002は、例えば、内部メモリや所定の外部記憶装置等から目標施工面に関するデータを取得する。
目標軌道設定部3003は、目標施工面に関するデータに基づき、アタッチメントATの先端部(例えば、バケット6の爪先)を目標施工面に沿って移動させるためのアタッチメントATの先端部、具体的には、エンドアタッチメントの作業部位(例えば、バケット6の爪先や背面等)の目標軌道に関する情報を設定する。例えば、目標軌道設定部3003は、目標軌道に関する情報として、ショベル100の機体(上部旋回体3)を基準とする、目標施工面の前後方向への傾斜角度を設定してよい。また、目標軌道には、許容可能な誤差の範囲(以下、「許容誤差範囲」)が設定されていてもよい。この場合、目標軌道に関する情報には、許容誤差範囲に関する情報が含まれてもよい。
現在位置算出部3004は、アタッチメントATの先端部(バケット6の爪先)の位置(現在位置)を算出する。具体的には、後述する姿勢角算出部3009により算出されるブーム角度β1、アーム角度β2、及びバケット角度β3に基づき、アタッチメントATの先端部の位置を算出してよい。
目標位置算出部3005は、ショベル100の半自動運転機能において、アーム5に関するオペレータの操作入力や遠隔操作に関する操作内容(操作方向及び操作量)と、設定された目標軌道に関する情報と、アタッチメントATの先端部の現在位置とに基づき、アタッチメントATの先端部の目標位置を算出する。当該目標位置は、アーム5がオペレータの操作入力や遠隔操作における操作方向及び操作量に応じて動作すると仮定したときに、今回の制御周期中で到達目標とすべき目標施工面(換言すれば、目標軌道)上の位置である。目標位置算出部3005は、例えば、不揮発性の内部メモリ等に予め格納されるマップや演算式等を用いて、アタッチメントATの先端部の目標位置を算出してよい。
また、目標位置算出部3005は、ショベル100の自律運転機能において、作業内容取得部3001Aから入力される操作指令と、設定された目標軌道に関する情報と、アタッチメントATにおける制御基準(作業部位)の現在位置とに基づき、アタッチメントATの先端部(制御基準)の目標位置を算出する。これにより、コントローラ30は、オペレータの操作に依らず、ショベル100を自律制御することができる。
動作指令生成部3006は、アタッチメントATの先端部の目標位置に基づき、ブーム4の動作に関する指令値(以下、「ブーム指令値」)β1r、アーム5の動作に関する指令値(以下、「アーム指令値」)β2r、及びバケット6の動作に関する指令値(「バケット指令値」)β3rを生成する。例えば、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rは、それぞれ、アタッチメントATの先端部が目標位置を実現できたときのブーム角度、アーム角度、及びバケット角度である。動作指令生成部3006は、マスタ指令値生成部3006Aと、スレーブ指令値生成部3006Bとを含む。
尚、ブーム指令値、アーム指令値、及びバケット指令値は、アタッチメントATの先端部が目標位置を実現するために必要なブーム4、アーム5、及びバケット6の角速度や角加速度であってもよい。
マスタ指令値生成部3006Aは、アタッチメントATを構成する動作要素(これらの動作要素を駆動するアクチュエータ)のうち、オペレータの操作入力或いは自律運転機能に対応する操作指令に対応して動作する動作要素(アクチュエータ)(以下、「マスタ要素」)の動作に関する指令値(以下、「マスタ指令値」)を生成する。以下、オペレータの操作入力あるいは自律運転機能に関する操作指令に合わせて動作する動作要素、及びその動作要素を駆動するアクチュエータを包括的に或いはそれぞれを個別にマスタ要素と称する場合があり、後述のスレーブ要素についても同様である。本実施形態では、マスタ要素は、アーム5(アームシリンダ8)であり、マスタ指令値生成部3006Aは、アーム指令値β2r(第1のアクチュエータの指令値)を生成し、後述するアームパイロット指令生成部3008Bに向けて出力する。具体的には、マスタ指令値生成部3006Aは、オペレータの操作或いは操作指令の内容(操作方向及び操作量)に対応するアーム指令値β2rを生成する。例えば、マスタ指令値生成部3006Aは、オペレータの操作或いは操作指令の内容と、アーム指令値β2rとの関係を規定する所定のマップや変換式等に基づき、アーム指令値β2rを生成し、出力してよい。
スレーブ指令値生成部3006Bは、アタッチメントATを構成する動作要素(これらの動作要素を駆動するアクチュエータ)のうち、マスタ要素(アーム5)の動作に合わせて(同期して)動作するスレーブ要素の動作に関する指令値(以下、「スレーブ指令値」)を生成する。具体的には、スレーブ要素は、マスタ要素(アーム5、アームシリンダ8)の動作に合わせて(同期して)、バケット6の爪先等のアタッチメントATの先端部(作業部位)が目標施工面に沿って移動するように動作する。本実施形態では、スレーブ要素は、ブーム4(ブームシリンダ7)及びバケット6(バケットシリンダ9)であり、スレーブ指令値生成部3006Bは、ブーム指令値β1r(第2のアクチュエータの指令値)及びバケット指令値β3r(他の第2のアクチュエータの指令値)を生成し、それぞれ、後述するブームパイロット指令生成部3008A及びバケットパイロット指令生成部3008Cに向けて出力する。具体的には、スレーブ指令値生成部3006Bは、アーム指令値β2rに対応するアーム5の動作に合わせて(同期して)ブーム4及びバケット6が動作し、アタッチメントATの先端部(作業部位)が目標位置を実現できるように(つまり、目標施工面に沿って移動するように)、ブーム指令値β1r及びバケット指令値β3rを生成する。これにより、コントローラ30は、オペレータのアーム5に関する操作入力或いは操作指令に対応するアーム5の動作に合わせて(つまり、同期させて)、アタッチメントATのブーム4及びバケット6を動作させることで、アタッチメントATの先端部(作業部位)を目標施工面に沿って移動させることができる。つまり、アーム5(アームシリンダ8)は、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応して動作し、ブーム4(ブームシリンダ7)、バケット6(バケットシリンダ9)は、バケット6の爪先等のアタッチメントATの先端部(作業部位)が目標施工面に沿って移動するように、アーム5(アームシリンダ8)の動作に合わせて、その動作が制御される。
制限部3007は、オペレータの操作或いは操作指令の内容に対応するアーム5の動作にブーム4が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合に、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応して出力される、アーム5の動作を制限(遅く)する。具体的には、制限部3007は、アーム5の動作にブーム4の動作が同期できなくなった、或いは、できなくなる可能性があると判定可能な所定の条件(以下、「同期不可条件」)の成否を判定する。同期不可条件は、例えば、後述する図7のステップS104,S110の条件等である。そして、制限部3007は、同期不可条件が成立した場合、減圧用比例弁33AL,33AR或いは切替弁にパイロットラインを非連通状態にする制御指令を出力すると共に、アーム5の動作を制限するための制限指令値Δβ2rを生成し、後述するアームパイロット指令生成部3008Bに出力する。アーム5の動作は、オペレータの操作入力や自律運転機能に対応する操作指令の内容で決まる。そのため、上述の如く、アーム5の動作に合わせて、ブーム指令値β1rが生成される場合、ブーム4の動作の限界(例えば、動作に関する速度や加速度の限界)を超えるようなブーム指令値β1rが生成される場合がありうる。これに対して、コントローラ30は、ブーム4の動作がアーム5の動作に同期できる程度までアーム5の動作を制限(遅く)することにより、アーム5の動作にブーム4の動作が同期できなくなるような事態を抑制できる。制限部3007の動作、具体的には、アーム5の動作に関する速度等を制限する制御処理(以下、「アーム速度制限処理」)の詳細は、後述する(図7参照)。
尚、制限部3007は、アーム5の動作に対するブーム4の動作の同期の可否に依らず、制限指令値Δβ2rを生成し、アームパイロット指令生成部3008Bに出力してもよい。具体的には、制限部3007は、オペレータの操作或いは操作指令の内容に相当するアーム5の動作にブーム4の動作が同期できている場合、ゼロに設定された制限指令値Δβ2r(=0)をアームパイロット指令生成部3008Bに出力してもよい。
パイロット指令生成部3008は、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rに対応するブーム角度、アーム角度、及びバケット角度を実現するための制御弁174〜176に作用させるパイロット圧の指令値(以下、「パイロット圧指令値」)を生成する。パイロット指令生成部3008は、ブームパイロット指令生成部3008Aと、アームパイロット指令生成部3008Bと、バケットパイロット指令生成部3008Cとを含む。
ブームパイロット指令生成部3008Aは、ブーム指令値β1rと、後述するブーム角度算出部3009Aによる現在のブーム角度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、ブーム4を駆動するブームシリンダ7に対応する制御弁175L,175Rに作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、ブームパイロット指令生成部3008Aは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31BL,31BRに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31BL,31BRから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32BL,32BRを介して、制御弁175L,175Rの対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁175L,175Rの作用により、ブームシリンダ7が動作し、ブーム指令値β1rに対応するブーム角度を実現するように、ブーム4が動作する。
アームパイロット指令生成部3008Bは、アーム5の動作にブーム4の動作が同期できている場合(例えば、制限部3007から制限指令値Δβ2rが出力されていない場合)、アーム指令値β2rと、後述するアーム角度算出部3009Bによる現在のアーム角度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、アーム5を駆動するアームシリンダ8に対応する制御弁176L,176Rに作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、アームパイロット指令生成部3008Bは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31AL,31ARに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31AL,31ARから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを介して、制御弁176L,176Rの対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁176L,176Rの作用により、アームシリンダ8が動作し、アーム指令値β2rに対応するアーム角度を実現するように、アーム5が動作する。
一方、アームパイロット指令生成部3008Bは、アーム5の動作にブーム4の動作が同期できなくなっている、或いは、同期できなくなる可能性がある場合(例えば、制限部3007から制限指令値Δβ2rが出力されている場合)、アーム指令値β2rから制限指令値Δβ2rを減じることにより補正された指令値(以下、「アーム補正指令値」)と、現在のアーム角度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、制御弁176L,176Rに作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、アームパイロット指令生成部3008Bは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31AL,31ARに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31AL,31ARから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを介して、制御弁176L,176Rの対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁176L,176Rの作用により、アームシリンダ8が動作し、アーム補正指令値に対応するアーム角度を実現するように、アーム5が動作する。
尚、ショベル100の半自動運転機能(図6A)について、キャビン10のオペレータによって左操作レバー26Lが操作される場合、同期不可条件が成立していない状況下において、アームパイロット指令生成部3008Bは、パイロット圧指令値の生成、及び、パイロット圧指令値に対応する制御電流の比例弁31AL,31ARへの出力を省略してもよい。減圧用比例弁33AL,33AR或いは切替弁は、通常、左操作レバー26Lにおける操作内容に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力し、シャトル弁32AL,32ARを介して、制御弁176L,176Rに作用させることができるからである。また、ショベル100の半自動運転機能(図6A)について、キャビン10のオペレータによって左操作レバー26Lが操作される場合、同様の理由により、同期不可条件が成立していない状況下において、動作指令生成部3006は、アーム指令値β2rの生成を省略してもよい。また、ショベル100の半自動運転機能(図6A)について、キャビン10のオペレータによって左操作レバー26Lが操作される場合、動作指令生成部3006のアーム指令値β2rを生成する機能自体が省略されてもよい。この場合、制限部3007は、同期不可条件が成立した場合、例えば、操作圧センサ29ALの検出信号に基づき、左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作内容に対応する指令値(つまり、アーム指令値β2rに相当する指令値)を算出すると共に、算出した指令値から上述の制限指令値Δβ2rを減じた値に相当する制限指令値を生成し、アームパイロット指令生成部3008Bに出力してよい。つまり、制限部3007は、同期不可条件が成立した場合に、左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作内容に相当する指令値よりも小さい制限指令値を生成し、アームパイロット指令生成部3008Bに出力してよい。
バケットパイロット指令生成部3008Cは、バケット指令値β3rと、後述するバケット角度算出部3009Cによる現在のバケット角度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、バケット6を駆動するバケットシリンダ9に対応する制御弁174に作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、バケットパイロット指令生成部3008Cは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31CL,31CRに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31CL,31CRから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32CL,32CRを介して、制御弁174の対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁174の作用により、バケットシリンダ9が動作し、バケット指令値β3rに対応するバケット角度を実現するように、バケット6が動作する。
姿勢角算出部3009は、ブーム角度センサS1,アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3の検出信号に基づき、(現在の)ブーム角度、アーム角度、バケット角度を算出(測定)する。姿勢角算出部3009は、ブーム角度算出部3009Aと、アーム角度算出部3009Bと、バケット角度算出部3009Cとを含む。
ブーム角度算出部3009Aは、ブーム角度センサS1から取り込まれる検出信号に基づき、ブーム角度を算出(測定)する。これにより、ブームパイロット指令生成部3008Aは、ブーム角度算出部3009Aの測定結果に基づき、ブームシリンダ7の動作に関するフィードバック制御を行うことができる。
アーム角度算出部3009Bは、アーム角度センサS2から取り込まれる検出信号に基づき、アーム角度を算出(測定)する。これにより、アームパイロット指令生成部3008Bは、アーム角度算出部3009Bの測定結果に基づき、アームシリンダ8の動作に関するフィードバック制御を行うことができる。
バケット角度算出部3009Cは、バケット角度センサS3から取り込まれる検出信号に基づき、バケット角度を算出(測定)する。これにより、バケットパイロット指令生成部3008Cは、バケット角度算出部3009Cの測定結果に基づき、バケットシリンダ9の動作に関するフィードバック制御を行うことができる。
[アーム速度制限処理の詳細]
次に、図7を参照して、コントローラ30によるアーム速度制限処理の処理フローについて説明する。
図7は、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30(具体的には、制限部3007)によるアーム速度制限処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
ステップS102にて、制限部3007は、(第2のアクチュエータとしてのブームシリンダ7に駆動される)ブーム4の角速度に対応する指令値(以下、「ブーム角速度指令値」)を取得する。例えば、制限部3007は、今回の制御周期で生成されたブーム指令値β1rと、ブーム角度算出部3009Aにより算出された現在(今回)のブーム角度β1との差分に基づき、ブーム角速度指令値を算出してよい。また、上述の如く、動作指令生成部3006によって、アタッチメントATの先端部が目標位置を実現するために必要なブーム4、アーム5、及びバケット6の角速度に対応するブーム指令値、アーム指令値、及びバケット指令値が生成される場合、制限部3007は、動作指令生成部3006により生成されたブーム指令値をそのままブーム角速度指令値として取得してよい。
ステップS104にて、制限部3007は、一の同期不可条件の成否を判定する。具体的には、制限部3007は、取得したブーム角速度指令値が、ブーム4の角速度に関する上限値(以下、「ブーム角速度上限値」)を超えたか否かを判定する。
ブーム角速度上限値は、アタッチメントの機構上、ブーム4が出力可能な角速度の限界値(或いは、当該限界値に対してある程度の余裕分を取った値)として予め規定され、ブーム4の姿勢、つまり、ブーム角度や、ブーム4の動作方向(上げ方向であるか、下げ方向であるか)、エンジン11の出力(エンジン11の設定回転数)等の各種パラメータに応じて異なりうる。よって、制限部3007は、上述の各種パラメータの現在値に基づき、予め規定されるショベル100のアタッチメントの力学モデル等を用いて、ブーム角速度上限値を算出してよい。また、制限部3007は、上述の各種パラメータの現在値に基づき、予め規定される、ブーム角速度上限値と上述の各種パラメータとの関係を示すマップ等を用いて、ブーム角速度上限値を算出してもよい。
制限部3007は、ブーム角速度指令値がブーム角速度上限値を超えていない場合、アーム5の動作に対して、ブーム4の動作が同期できる状態であると判断し、ステップS106に進む。一方、制限部3007は、ブーム角速度指令値がブーム角速度上限値を超えている場合、アーム5の動作に対して、ブーム4の動作が同期できなくなっていると判断し、ステップS112に進む。
尚、制限部3007は、ステップS102にて、ブーム4の角速度に対応する測定値(以下、「ブーム角速度測定値」)を取得し、ステップS104にて、ブーム角速度測定値が上述のブーム角速度上限値を超えたか否かを判定してもよい。この場合、制限部3007は、例えば、ブーム角度算出部3009Aによって、現在の制御周期で算出されたブーム角度β1と、前回の制御周期で算出されたブーム角度β1との差分に基づき、ブーム角速度測定値を取得(算出)してよい。また、制限部3007は、ブーム角度センサS1の検出信号にブーム4の角速度に対応する検出信号が含まれる場合、当該検出信号に基づき、ブーム角速度測定値を算出してもよい。また、制限部3007は、ステップS102にて、ブーム4の角加速度に対応する指令値(以下、「ブーム角加速度指令値」)を取得し、ステップS104にて、ブーム角加速度指令値が所定の上限値(以下、「ブーム角加速度上限値」)を超えたか否かを判定してもよい。この場合、制限部3007は、例えば、今回の制御周期で生成されたブーム指令値β1rと、ブーム角度算出部3009Aにより各制御周期で算出されるブーム角度β1の今回及び前回を含む過去数回分の履歴に基づき、ブーム角加速度指令値を算出してよい。また、ブーム角加速度上限値は、ブーム角速度上限値の場合と同様、ブーム角度や、ブーム4の動作方向、エンジン11の出力等の各種パラメータに応じて異なりうる、ブーム4が出力可能な角加速度の限界値(或いは、当該限界値に対してある程度の余裕分を取った値)として予め規定されてよい。また、制限部3007は、ステップS102にて、ブーム4の角加速度に対応する測定値(以下、「ブーム角加速度測定値」)を取得し、ステップS104にて、ブーム角加速度測定値がブーム角加速度上限値を超えたか否かを判定してもよい。
ステップS106にて、制限部3007は、(第2のアクチュエータとしてのブームシリンダ7の動作に対応する)ブーム角速度測定値を取得する。
ステップS108にて、制限部3007は、(第2のアクチュエータとしてのブームシリンダ7の指令値と測定値との間の偏差に対応する)ブーム角速度指令値とブーム角速度測定値との間の偏差(以下、「ブーム角速度偏差」)を算出する。
ステップS110にて、制限部3007は、(第2のアクチュエータとしてのブームシリンダ7の指令値と測定値との間の偏差に対応する)ブーム角速度偏差が所定の閾値を超えているか否かを判定する。
当該閾値は、例えば、アタッチメントの機構等による制約下で、制御周期内において、変化させることが可能なブーム4の角速度の変化幅の限界値(或いは、当該限界値に対してある程度余裕分を取った値)として予め規定されうる。そして、当該閾値は、上述のブーム角速度上限値の場合と同様、ブーム4の姿勢、つまり、ブーム角度や、ブーム4の動作方向(上げ方向であるか、下げ方向であるか)等に応じて異なりうる。よって、制限部3007は、現在のブーム角度やブーム4の動作方向等に基づき、予め規定されるショベル100のアタッチメントの力学モデル等を用いて、当該閾値を算出してよい。また、制限部3007は、現在のブーム角度やブーム4の動作方向等に基づき、予め規定される、当該閾値とブーム角度及びブーム4の動作方向等のパラメータとの関係を示すマップ等を用いて、当該閾値を算出してもよい。
制限部3007は、ブーム角速度偏差が当該閾値を超えていない場合、アーム5(アームシリンダ8)の動作に対して、ブーム4(ブームシリンダ7)の動作が同期できる状態にあると判断し、今回の処理を終了する。一方、制限部3007は、ブーム角速度偏差が当該閾値を超えている場合、アーム5(アームシリンダ8)の動作に対して、ブーム4(ブームシリンダ7)の動作が同期できなくなる可能性があると判断し、ステップS112に進む。
尚、制限部3007は、ステップS108にて、ブーム4の角加速度に関する測定値(以下、「ブーム角加速度測定値」)との間の偏差を算出し、ステップS110にて、ブーム4の角加速度指令値と、ブーム角加速度測定値との偏差が所定の閾値を超えたか否かを判定してもよい。このとき、当該閾値は、ブーム角速度偏差に対応する閾値の場合と同様、ブーム角度や、ブーム4の動作方向等に応じて異なりうる、制御周期内において、変化させることが可能なブーム4の角加速度の変化幅の限界値(或いは、当該限界値に対してある程度余裕分を取った値)として予め規定されてよい。
ステップS112にて、制限部3007は、アーム5(第1のアクチュエータとしてのアームシリンダ)の動作を制限し、動作を遅くする。具体的には、制限部3007は、上述の如く、減圧用比例弁33AL,33AR或いは切替弁に制御指令を出力すると共に、制限指令値Δβ2rをアームパイロット指令生成部3008Bに向けて出力し、今回の制御周期における処理を終了する。これにより、コントローラ30は、上述の如く、オペレータの操作内容や操作指令に相当するアーム5の動作よりも実際のアーム5の動作を遅くすることができる。
尚、上述したステップS102,S104の一連の処理と、ステップS106〜S110の一連の処理とは、並列的に処理されてもよい。
[作用]
次に、図8(図8A、図8B)、図9を参照して、本実施形態に係るショベル100の作用について説明する。
図8A、図8B、図9は、本実施形態に係るショベル100の作用を説明する図である。具体的には、図8Aは、比較例に係るショベルのマシンコントロール機能によるアタッチメントATの動作の一例を示す図であり、図8Bは、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能によるアタッチメントATの動作の一例を示す図である。図9は、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能によるアタッチメントATの動作の他の例を示す図である。
尚、図中では、便宜上、ショベル100におけるアタッチメントATの部分のみが表されており、ショベル100のアタッチメントATは、実線の状態から点線の状態に向けて動作している。また、比較例に係るショベルは、本実施形態に係るショベル100から、少なくとも上述の制限部3007が省略されている。
例えば、オペレータによるアーム5の操作態様(例えば、操作速度等)や操作指令の内容によっては、アーム5の動作に合わせて、バケット6の爪先等を目標施工面に沿って移動させるために必要なブーム4の動作が、ブーム4の動作に関する限界(例えば、角速度や角加速度の上限値)を超えてしまう場合がありうる。
このような状況において、比較例の場合、図8Aに示すように、アーム5の動作に対して、ブーム4は、その動作を合わせられず(同期させられず)、結果として、バケット6の爪先等の軌跡は、目標施工面SFを超えてしまう(図中の点線の軌跡)。スレーブ要素であるブーム4は、マスタ要素であるアーム5等よりも相対的に質量(慣性)が大きく、相対的に、動作が遅くなるため、スレーブ要素であるアーム5がマスタ要素であるブーム4の動作に合わせる必要があるからである。
これに対して、本実施形態では、コントローラ30は、オペレータによる操作や自律運転機能に関する操作指令の内容に応じて動作するアーム5の動作に対して、ブーム4の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合、ブーム4の動作に対応させるように、アーム5の動作を制御(遅く)する。換言すれば、コントローラ30は、アームシリンダ8(第1のアクチュエータの一例)の動作にブームシリンダ7(第2のアクチュエータの一例)の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合に、アームシリンダ8の実際の動作を、オペレータの操作や操作指令の内容(操作量)から想定される動作よりも遅くなるように制御する。具体的には、コントローラ30は、アームシリンダ8の動作にブームシリンダ7の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性があると判断可能な条件、つまり、同期不可条件が成立した場合に、同期不可条件が成立していない場合よりも、オペレータによるアーム5に関する操作や操作指令に対応するアームシリンダ8の動作を遅くする。これにより、アーム5の動作に関する速度(角速度)や加速度(角加速度)が、オペレータによるアーム5に関する操作や操作指令の内容(操作量)に対応する速度(角速度)や加速度(角加速度)よりも低減される。そのため、図8Bに示すように、ブーム4は、オペレータによるアーム5に関する操作や操作指令の内容(操作量)に対応する動作よりも遅くなるように補正されたアーム5の動作に合わせて、バケット6の爪先が目標施工面に沿って移動するように、動作することができる。従って、本実施形態に係るショベル100は、オペレータによる操作や自律運転機能に関する操作指令に応じて、より適切にアタッチメントATの先端部(例えば、バケット6の爪先等の作業部位)を目標施工面に沿って移動させることができる。
また、例えば、図9に示すように、目標施工面SFの傾斜が相対的に大きくなると、バケット6の爪先等を目標施工面SFに沿って移動させるために、バケット6の鉛直方向の移動量を大きくする必要がある。つまり、バケット6を水平方向に移動させるためのアーム5の動作よりも、バケット6を鉛直方向に移動させるためのブーム4の動作の方に高い応答性が求められる。そのため、目標施工面SFの傾斜が相対的に大きい状況では、オペレータによるアーム5の操作や自律運転機能に関する操作指令の内容(操作量)に対応するアーム5の動作に合わせて、バケット6の爪先等を目標施工面に沿って移動させるために必要なブーム4の動作が、ブーム4の動作に関する限界を超え易くなる。その結果、アタッチメントの動作がぎくしゃくし、ショベル100(コントローラ30)は、目標施工面SFに沿ってバケット6をスムーズに移動させることができなくなる可能性がある。
これに対して、本実施形態では、コントローラ30は、上述の如く、オペレータによるアーム5に関する操作や自律運転機能に対応する操作指令の内容に応じて動作するアーム5の動作に対して、ブーム4の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合に、アーム5の動作を遅くする。そのため、ブーム4(ブームシリンダ7)は、アーム5(アームシリンダ8)に関する操作や操作指令の内容(操作量)に対応する動作よりも遅くなるように補正されたアーム5(アームシリンダ8)の動作に合わせて、バケット6の爪先が目標施工面SFに沿って移動するように、動作することができる。従って、本実施形態に係るショベル100は、目標施工面SFの傾斜が相対的に大きい場合であっても、オペレータによる操作や自律運転機能に関する操作指令に応じて、より適切にアタッチメントATの先端部(例えば、バケット6の爪先等の作業部位)を目標施工面に沿って移動させることができる。
尚、コントローラ30は、バケット6(バケットシリンダ9)の動作について、ブーム4(ブームシリンダ7)の動作の場合と同様、オペレータによるアーム5に関する操作や自律運転機能に関する操作指令の内容に対応するアーム5の動作に対する同期不可条件の成否を判定してもよい。そして、コントローラ30は、バケット6の動作がアーム5の動作に同期でなくなった、或いは、同期できなくなる可能性があると判断可能な同期不可条件が成立した場合、アーム5の動作を遅くしてもよい。つまり、コントローラ30は、アームシリンダ8(第1のアクチュエータの一例)の動作にバケットシリンダ9(第2のアクチュエータの一例)の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合、アーム5に関する操作或いは自律運転機能に関する操作指令に対応するアームシリンダ8の動作を遅くしてもよい。
[ショベル管理システム]
次に、図10を参照して、ショベル管理システムSYSについて説明する。
図10は、ショベル管理システムSYSの一例を示す概略図である。
図10に示すように、ショベル管理システムSYSは、ショベル100と、支援装置200と、管理装置300とを含む。ショベル管理システムSYSは、1台又は複数台のショベル100を管理するシステムである。
ショベル100が取得する情報は、ショベル管理システムSYSを通じ、管理者及び他のショベルのオペレータ等と共有されてもよい。ショベル管理システムSYSを構成するショベル100、支援装置200、及び管理装置300のそれぞれは、1台であってもよく、複数台であってもよい。本例では、ショベル管理システムSYSは、1台のショベル100と、1台の支援装置200と、1台の管理装置300とを含む。
支援装置200は、典型的には携帯端末装置であり、例えば、施工現場にいる作業者等が携帯するラップトップ型のコンピュータ端末、タブレット端末、或いはスマートフォン等である。支援装置200は、ショベル100のオペレータが携帯する携帯端末であってもよい。支援装置200は、固定端末装置であってもよい。
管理装置300は、典型的には固定端末装置であり、例えば、施工現場外の管理センタ等に設置されるサーバコンピュータ(いわゆるクラウドサーバ)である。また、管理装置300は、例えば、施工現場に設定されるエッジサーバであってもよい。また、管理装置300は、可搬性の端末装置(例えば、ラップトップ型のコンピュータ端末、タブレット端末、或いはスマートフォン等の携帯端末)であってもよい。
支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方は、モニタと遠隔操作用の操作装置とを備えていてもよい。この場合、支援装置200や管理装置300を利用するオペレータは、遠隔操作用の操作装置を用いつつ、ショベル100を操作してもよい。遠隔操作用の操作装置は、例えば、近距離無線通信網、携帯電話通信網、又は衛星通信網等の無線通信網を通じ、ショベル100に搭載されているコントローラ30に通信可能に接続される。
また、キャビン10内に設置された表示装置D1に表示される各種情報画像(例えば、ショベル100の周囲の様子を表す画像情報や各種の設定画面等)が、支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に接続された表示装置で表示されてもよい。ショベル100の周囲の様子を表す画像情報は、空間認識装置70の撮像画像に基づき生成されてよい。これにより、支援装置200を利用する作業者、或いは、管理装置300を利用する管理者等は、ショベル100の周囲の様子を確認しながら、ショベル100の遠隔操作を行ったり、ショベル100に関する各種の設定を行ったりすることができる。
例えば、ショベル管理システムSYSにおいて、ショベル100のコントローラ30は、実行中のマシンコントロール機能に関する情報を支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。その際、コントローラ30は、空間認識装置70の出力、及び、単眼カメラが撮像した画像等の少なくとも1つを支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。画像は、マシンコントロール機能の実行中に撮像された複数の画像であってもよい。更に、コントローラ30は、マシンコントロール機能の実行中におけるショベル100の動作内容に関するデータ、ショベル100の姿勢に関するデータ、及び掘削アタッチメントの姿勢に関するデータ等の少なくとも1つに関する情報を支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。支援装置200を利用する作業者、又は、管理装置300を利用する管理者が、マシンコントロール機能を実行中のショベル100に関する情報を入手できるようにするためである。
このように、ショベル管理システムSYSは、マシンコントロール機能の実行中に取得されるショベル100に関する情報を管理者及び他のショベルのオペレータ等と共有できるようにする。
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、マスタ要素がアーム5で、スレーブ要素がブーム4及びバケット6であるが、マスタ要素がブーム4で、スレーブ要素がアーム5及びバケット6であってもよい。この場合、コントローラ30は、マスタ要素がアーム5の場合と同様、アーム5及びバケット6の少なくとも一方の動作がブーム4の動作に同期でなくなった、或いは、同期できなくなる可能性があると判断可能な同期不可条件が成立した場合、ブーム4の動作を遅くしてもよい。つまり、コントローラ30は、ブームシリンダ7(第1のアクチュエータの一例)の動作にアームシリンダ8及びバケットシリンダ9(共に、第2のアクチュエータの一例)の少なくとも一方の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合、オペレータによるブーム4に関する操作に対応するブームシリンダ7の動作を遅くしてもよい。
また、上述した実施形態及び変形例では、アタッチメントの動作に関するマシンコントロール機能を詳述したが、アタッチメントに加えて、上部旋回体3や下部走行体1を含むショベル100の動作に対してマシンコントロール機能が適用されてもよい。例えば、ショベル100のブーム上げ旋回動作時に、上部旋回体3(旋回油圧モータ)及びアタッチメントの複合動作に対してマスタコントロール機能が適用されてよい。この場合、コントローラ30は、オペレータの操作入力或いは自律運転機能に関する操作指令に応じて、比例弁31DL,31DR及び減圧用比例弁33DL,33DRを制御することで、マスタ要素としての上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)の動作を制御してよい。また、コントローラ30は、比例弁31BL,31BR及び減圧用比例弁33BL,33BRを制御することで、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)の動作に合わせて、スレーブ要素としてのブーム4(ブームシリンダ7)等の動作を制御してよい。一方、コントローラ30は、同期不可条件が成立した場合、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)の動作を制限し、ブーム4(ブームシリンダ7)の動作に対応させるように、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)の動作を制御してよい。同期不可条件は、例えば、"バケット6の地面からの高さが所定基準を下回っていること"であってよく、当該所定基準は、上部旋回体3の旋回開始からの旋回角度が大きくなるのに応じて大きくなる態様で可変されてもよい。これにより、コントローラ30は、上部旋回体3の旋回動作に対して、ブーム上げ動作の速度が相対的に遅い場合に、バケット6の地面からの高さが十分に確保されないまま、バケット6がダンプトラックの荷台に当接してしまうような事態を抑制することができる。
また、上述した実施形態及び変形例では、同期不可条件として、ブーム4、アーム5、バケット6等の角速度に関する条件が規定されるが、当該態様には、限定されない。例えば、同期不可条件として、上述のようなブーム4、アーム5、バケット6等の角速度に関する条件に代えて、或いは、加えて、エンドアタッチメントの作業部位(例えば、バケット6の爪先や背面等)の状態に関する条件が規定されてもよい。具体的には、エンドアタッチメントの作業部位の目標施工面に対する鉛直方向の速度に関する同期不可条件が規定されてよい。
また、上述した実施形態及び変形例では、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の各種動作要素を全て油圧駆動する構成であったが、その一部が電気駆動される構成であってもよい。例えば、上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aにより油圧駆動される代わりに、旋回用電動機(旋回アクチュエータの一例)により電気駆動されてもよい。つまり、上述した実施形態で開示される構成等は、ハイブリッドショベルや電動ショベル等に適用されてもよい。
最後に、本願は、2018年11月14日に出願した日本国特許出願2018−214165号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。