JPWO2020054559A1 - 含フッ素樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

本開示の含フッ素樹脂組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含むことを特徴とする。(A)成分:式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む重合体。(B)成分:硬化剤。(C)成分:硬化触媒。(D)成分:溶剤。【化55】(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基を示す。Xは炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基である。Yは単結合、または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の環状の2価の有機基である。)

Description

本開示は、有機半導体素子およびバイオチップに用いる膜形成用組成物、およびその膜に関する。
近年、センサーや電子ペーパーなど、軽量でフレキシブルな形状を特徴とした、有機半導体を搭載したデバイスが注目を集めている。有機半導体とは、半導体の性質を示す有機物であり、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロールおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリフランおよびその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニリンおよびその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体、有機電荷移動錯体等が知られている。
これら有機半導体や、該有機半導体の上層もしくは下層に存在する膜であるゲート絶縁膜や保護膜については、様々な有機材料が報告されている。例えば、ポリテトラフルオロエチレンやサイトップ(登録商標)などのフッ素系ポリマー(特許文献1)、エポキシ基含有ポリシロキサン硬化物等(特許文献2)、含フッ素(メタ)アクリレート系樹脂組成物(特許文献3)が、欠陥の少ない膜を形成し得る材料として報告されている。
特許文献1には、ポリテトラフルオロエチレンやサイトップ(登録商標)などのフッ素系ポリマーを絶縁膜に用い、かつ該絶縁膜の上面にさらにフッ素系界面活性剤を塗布することで、高移動度と高安定性を有するデバイス作製が可能となることが開示されている。本技術においては、一旦フッ素系ポリマーを基材上に塗布した後、あらためてフッ素系界面活性剤を塗布する工程が必要になる。
なお、ポリテトラフルオロエチレンやサイトップ(登録商標)などのフッ素系ポリマーは、PGMEAなどの有機溶媒にとけにくく、これらを塗布製膜する場合は、専用のフッ素系溶剤を用いる必要があることも、知られている(非特許文献1)。
特許文献2には、サイトップ(登録商標)を基材上に塗布した場合、均一な膜が得られにくいこと、基材密着性に乏しいことが開示されている。そこで特許文献2では、エポキシ基含有化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物、フェノール基含有化合物からなる群より選ばれる重合性化合物と、ポリシロキサン系化合物とを含有する硬化性組成物を作製している。そして該硬化性組成物を硬化した薄膜表面の水接触角は95°以上と高く、この高い撥水性に起因して、該硬化膜が有機TFTゲート絶縁膜として好ましく使用できることが開示されている。なお、該特許文献2には、アルミのゲート電極上に該硬化性組成物をスピンコート製膜してその後熱硬化することで該硬化膜を得た後、該硬化膜上に有機半導体であるペンタセンを蒸着製膜、さらにソース、ドレイン電極である金を蒸着製膜することが実施例で開示されている(該硬化膜上に有機溶液をコーティング可能かどうかは開示されていない)。
他方、ポリシロキサン系化合物のシロキサン骨格は、条件によっては、酸化反応を受けて切断されることが知られており、過酷な条件下では、使用が制限されることがある。
そこで、特許文献3には、有機半導体膜上に形成される保護膜用の材料として、含フッ素(メタ)アクリレート系樹脂組成物が開示されており、特にそのポリマーを主成分とする組成物は、含フッ素有機溶剤によく溶け、該含フッ素有機溶剤に溶かした溶液は、基板への成膜性も良好であることが開示されている。当該含フッ素系(メタ)アクリレート系樹脂は、フッ素原子の存在に起因して、化学的な耐久性が高いという大きな利点がある。
それに加えて、該特許文献3記載の樹脂は、有機半導体膜を侵さないフッ素系有機溶剤(ノベックTM、バートレルスープリオンTMなど)によく溶けるため、該樹脂組成物をこれらの溶媒に溶解させて、有機半導体膜上に、該有機半導体を侵食することなく塗布製膜できることも特徴である。
なお、特許文献3に記載されている含フッ素系(メタ)アクリレート系ポリマーを塗布製膜した後は、汎用の有機溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエチルアセテート(以下PGMEAと呼ぶ)や酢酸エチルを接触させると、該膜がこれらの溶媒によく溶けて、効率的に溶解除去できることが開示されている。
また、特許文献4では、マイクロウェルアレイチップ(バイオチップ)において、ターゲット分子、リンパ球の検出などの効率化のため、含フッ素表面を有する構造を検討している。本開示において、バイオチップとは、DNAやタンパク質、糖鎖といったバイオ分子を基板上に多数固定したものである。
特許文献4のバイオチップにおける撥液性膜およびウェルの形成は、シリコン基板上にフォトリソグラフィおよびエッチングにて行っており、その形成に手間がかかる、本明細書において、ウェルとは、生体試料が格納される領域である。生体試料とは例えば免疫細胞、抗体、蛋白質、生理活性物質をあげることができる。
特開2014−171966号公報 特開2012−209528号公報 特開2015−038976号公報 国際公開WO2005/069001のパンフレット
旭硝子株式会社研究報告66、第2〜7ページ(2016年)
上述の通り、特許文献3に開示される含フッ素系(メタ)アクリレート系ポリマーは含フッ素有機溶剤によく溶け、成膜性も良好である。さらに該含フッ素系(メタ)アクリレート系ポリマーを成膜化して得た塗膜の水接触角が非常に大きい(好ましい態様においては90°を超える)、という優れた利点がある(後述の比較例2を参照)。
しかし、上述した通り、該含フッ素系(メタ)アクリレート系ポリマーは、塗布製膜した後、汎用の有機溶剤であるPGMEAや酢酸エチルに接触させると、該膜がこれらの溶媒にごく溶けやすいという性質がある(これも比較例2を参照)。このため、当該膜を積極的に除去したい場合でなければ、有機溶媒蒸気が存在する条件下での耐久性が十分には確保しがたいという問題があった。また、当該ポリマーを塗布成膜した後、さらにその上層に、他の有機溶媒を用いた塗布液を塗って、多層構造の膜を形成しようとする場合にも、該膜が有機溶媒によって侵されやすいため、平滑な多層構造の膜を形成しにくいという制限があった。
そこで、成膜性が良好で、含フッ素有機溶剤にも良く溶け、塗膜の水接触角が大きい(撥水性が高い)、という優れた性質を残しつつ、成膜化した後の塗膜はPGMEAや酢酸エチル、アセトンなどの有機溶媒に対する耐性も備えた、新規材料が求められていた。
これらの事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分、を含むことを特徴とする含フッ素樹脂組成物を見出すに至った。
(A)成分:式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む重合体。
(B)成分:硬化剤。
(C)成分:硬化触媒。
(D)成分:溶剤。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基を示す。Xは炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基である。Yは単結合、または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の環状の2価の有機基である。)
(A)成分の重合体のうち、式(1)の繰り返し単位は、前述の特許文献3の含フッ素系(メタ)アクリレート系ポリマーの繰り返し単位と同じものである。しかし、この繰り返し単位に対し、式(2)の繰り返し単位(OH基を有する繰り返し単位)が共重合して、1つの重合体を形成したものは、該文献には開示されていない。
そして本発明者は、当該(A)成分の重合体が、含フッ素溶剤や、PGMEA、酢酸エチルなどの有機溶媒(上述の(D)成分)に非常に良く溶けることを見出した。そして、これらに加え、さらに上記(C)成分と(D)成分を含む含フッ素樹脂組成物は、基材に塗布して欠陥の少ない、平滑な硬化膜を形成するのに適しており、かつ、得られた硬化膜は、高い撥水機能を有しつつ(好ましい態様において、水の接触角が95°以上)、アセトンやPGMEAなどの汎用の有機溶剤に対する耐性が高いことを見出した(後述の実施例を参照)。
このように、フッ素含有化合物に由来する、耐熱性や耐溶剤性などの耐久性、撥水性の高さ、含フッ素有機溶剤への高い溶解性という基本的特徴を維持しながら、成膜性が良好で、硬化性も良好で、かつ硬化膜がPGMEAや酢酸エチル、アセトンなどの有機溶媒に対する耐性も備えた、新規材料が実現した。
なお、(C)成分の硬化触媒として好ましいのは、後述の通り、各種酸性物質であるが、この酸性物質としては、光酸発生剤(PAG)に光を照射して発生する酸も含まれる。したがって、本開示の含フッ素樹脂組成物における(C)成分の代わりに、(C’)成分として「光酸発生剤(PAG)」を含有した組成物(これを「前駆組成物」と呼ぶ)を準備することもできる。この前駆組成物に光を照射すれば、(C’)成分が分解して、(C)成分に該当する酸性物質を生じ、本開示の含フッ素樹脂組成物が得られる。このように、(C’)成分として「光酸発生剤(PAG)」を添加した組成物を準備し、これに光を照射することで、(C)成分である酸性物質に転化させ本開示の含フッ素樹脂組成物を得、それを後に加熱硬化させる手法によって、ネガ型パターニング形成された良好な硬化膜が得られることも、本発明者らは見出した。
さらに、本発明者らが鋭意検討した結果、前記含フッ素樹脂組成物は、バイオチップにおいて容易にマイクロサイズのウェルを有した撥液性膜を作製することができ、バイオチップにおけるマイクロウェルの隔壁に使用できることがわかった。
本開示は、以下の態様1〜21を含む。
[態様1]
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分、を含むことを特徴とする含フッ素樹脂組成物。
(A)成分:式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む重合体。
(B)成分:硬化剤。
(C)成分:硬化触媒。
(D)成分:溶剤。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基を示す。Xは炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基である。Yは単結合、または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の環状の2価の有機基である。)
[態様2]
(A)成分の式(1)中のXが、式(1x)で表される基であることを特徴とする、態様1の含フッ素樹脂組成物。
Figure 2020054559
(Xxは水素原子またはフッ素原子である。nは1〜4の整数であり、mは1〜8の整数である。点線は結合手を表す。)
[態様3]
前記式(1)のR1が水素原子またはメチル基であり、Xが2−(パーフルオロヘキシル)エチル基または2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基である、態様1の含フッ素樹脂組成物。
[態様4]
(A)成分の式(1)中のXが、式(1xy)で表される基であることを特徴とする、態様1の含フッ素樹脂組成物。
Figure 2020054559
(Xxyは水素またはトリフルオロメチル基であり、n1、n2はそれぞれ独立に0〜2の整数である。点線は結合手を表す。)
[態様5]
前記式(1)のR1が水素原子またはメチル基であり、Xが1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基である、態様1の含フッ素樹脂組成物。
[態様6]
前記式(2)で表される繰り返し単位が、次の式(3)で表される繰り返し単位である、態様1の含フッ素樹脂組成物。
Figure 2020054559
(式(3)中、R2aは水素原子またはメチル基であり、Zは炭素数2〜6の2価の有機基である。)
[態様7]
前記式(2)のYがp−フェニレン基もしくはm−フェニレン基である、態様1の含フッ素樹脂組成物。
[態様8]
前記式(2)で表される繰り返し単位が、次の式(4)で表される繰り返し単位である、態様1の含フッ素樹脂組成物。
Figure 2020054559
(式(4)において、R2bは、態様4に定義したR2aと同じ意味である。またnnは2〜6の整数である)。
[態様9]
(A)成分がさらに式(5)で表される繰り返し単位を含む態様1の含フッ素樹脂組成物。
Figure 2020054559
(式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、またはフェニル基を示す。)
[態様10]
(B)成分が、式(6)で表される構造を含有した硬化剤である、態様1の含フッ素樹脂組成物。
Figure 2020054559
(式中の点線は結合手を表す。)
[態様11]
(C)成分が、SO3H構造を含有した硬化触媒である、態様1の含フッ素樹脂組成物。
[態様12]
(D)成分が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ガンマブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸n−ブチル、含フッ素アルコール、含フッ素エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グルコールエーテルエステルからなる群から選ばれる1種以上の溶剤である、態様1の含フッ素樹脂組成物。
[態様13]
(D)成分が、式(7)で表される含フッ素アルコールである、態様1の含フッ素樹脂組成物。
Figure 2020054559
(式中、R4は、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状または炭素数3〜15の環状の炭化水素基であり、炭化水素基中の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている)
[態様14]
(D)成分が、式(8)で表される含フッ素エーテルである、態様1の含フッ素樹脂組成物。
Figure 2020054559
(式中、R5とR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状または炭素数3〜15の環状の炭化水素基であり、R5とR6の少なくとも一方の炭化水素基中の、水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている)
[態様15]
次の(A)、(B)、(C’)及び(D)からなる「前駆体組成物」。
(A)成分:式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む重合体。
(B)成分:硬化剤。
(C’)成分:光酸発生剤。
(D)成分:溶剤。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基を示す。Xは炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基である。Yは単結合、または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の環状の2価の有機基である。)
[態様16]
次の第1〜第4工程を含む、パターン硬化膜の製造方法。
第1工程:態様15の前駆組成物を基板上に塗布および乾燥して、感光性樹脂膜を形成する工程。
第2工程:前記感光性樹脂膜に光照射して、前記(C’)成分を硬化触媒に転化させ、それによって、前記感光性樹脂膜を含フッ素樹脂組成物の膜に転化させる工程。
第3工程:前記含フッ素樹脂組成物の膜を加熱処理して、次いで有機溶媒によって現像して、パターン樹脂膜を形成する工程。
第4工程:前記パターン樹脂膜を加熱し、それによって前記パターン樹脂膜を硬化させてパターン硬化膜に転化させる工程。
[態様17]
現像に用いる有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチル、含フッ素アルコール、含フッ素エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グルコールエーテルエステルからなる群から選ばれる1種以上の溶剤である、態様16のパターン硬化膜の作製方法。
[態様18]
露光に用いる光源波長が100〜600nmの範囲である、態様16のパターン硬化膜の作製方法。
[態様19]
有機半導体の上層、もしくは下層に含フッ素樹脂膜を形成するための、態様1〜14の何れかの含フッ素樹脂組成物、又は態様15の前駆体組成物。
[態様20]
含フッ素樹脂膜が有機半導体の保護膜であることを特徴とする、態様19の含フッ素樹脂組成物又は前駆体組成物。
[態様21]
含フッ素樹脂膜がゲート絶縁膜であることを特徴とする、態様19の含フッ素樹脂組成物又は前駆体組成物。
[態様22]
含フッ素樹脂膜がバイオチップにおけるマイクロウェルの隔壁であることを特徴とする、態様19の含フッ素樹脂組成物又は前駆体組成物。
以下、本開示の含フッ素樹脂組成物、該組成物を用いた硬化膜の作製方法、該硬化膜が組み込まれた有機半導体素子の製造方法について順に説明する。なお、本開示において、化学式の中の点線は結合手を表す。
[含フッ素樹脂組成物]
含フッ素樹脂組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分、を含むことを特徴とする。
(A)成分:式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む重合体。
(B)成分:硬化剤。
(C)成分:硬化触媒。
(D)成分:溶剤。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
[(A)成分]
[式(1)で表される繰り返し単位]
Figure 2020054559
(式中、R1は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基を示す。Xは炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基である。)
式(1)で表される繰り返し単位が、フッ素原子を含むことで、重合体としたときに、フッ素含有化合物に由来する、耐熱性や耐溶剤性などの耐久性、撥水性の高さを発現する。また、該重合体は、極性基であるエステル結合を有しているために、該重合体から得られる塗布膜は柔軟性に富み、平坦でひび割れのない塗布膜を得ることができる。さらに、側鎖(式(1)中のX基)にフッ素化された炭化水素基を有するために、該重合体はフッ素系溶剤への溶解性に優れる。
尚、単量体の合成のしやすさから、Xは炭素数2〜14の直鎖状、炭素数3〜6の分岐鎖状の炭化水素基で、炭化水素基中の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されているものが好ましい。
Xは、具体的には、直鎖状の基であれば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基または炭素数10〜14の直鎖状アルキル基を例示することができる。Xにおいて、酸素に直接結合している炭素原子以外の炭素原子に結合している水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Xは直鎖状の基であれば、下記一般式で表わされる基が好ましい。
Figure 2020054559
(Xxは水素原子またはフッ素原子である。nは1〜4の整数であり、mは1〜14の整数である)
単量体の合成の容易さから、nは好ましくは1〜2の整数である。
中でも、Xとしては、後述の表1AのNo.15、16、17、18である、以下に示す、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、または表1BのNo.65、66、67、68である、式2−(パーフルオロヘキシル)エチル基が好ましい。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
(A)成分の式(1)中のXは分岐鎖であってもよく、式(1xy)で表される基であることは、好ましい例である。
Figure 2020054559
(Xxyは水素またはトリフルオロメチル基であり、n1、n2はそれぞれ独立に0〜2の整数である)。
より具体的には、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、1−(トリフルオロメチル)−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1−ビス(トリフルオロメチル)−2,2,2−トリフルオロエチル基または1,1−ビス(トリフルオロメチル)エチル基を例示することができる。
Figure 2020054559
中でも、ヘキサフルオロイソプロピル基は、大量規模の入手の容易なヘキサフルオロイソプロピルアルコールから効率よく合成でき、しかも得られた樹脂の物性も優れていることから、特に好ましい。
[R1、Xx、nおよびmの好ましい組み合わせ]
前記式(1)のR1が水素原子またはメチル基であり、Xが1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基であることは好ましい実施形態である。
前記式(1)のR1が水素原子またはメチル基であり、Xが2−(パーフルオロヘキシル)エチル基または2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基であることも好ましい実施形態である。
1、Xx、nおよびmは下表1〜5に示す組み合わせが好ましく採用され、特に下表1で示されるNo.2〜9、11、12、15、16、17、18、19、下表2で示されるNo.40、43,44、47〜50、下表3で示されるNo.51〜55、57、58、65、66、67、68、および下表4で示されるNo.85、88、91、92、94〜100、および下表5で示される101〜103、105は好ましい。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
Figure 2020054559
Figure 2020054559
Figure 2020054559
[式(2)で表される繰り返し単位]
Figure 2020054559
(式中、R2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基を示す。Yは単結合、または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の環状の2価の有機基である。)
式(2)で表される繰り返し単位に含まれるヒドロキシル基が、(B)成分である硬化剤と反応することで、アセトンやPGMEAなどの汎用溶剤に耐性のある硬化膜が得られる。
前記式(2)で表される繰り返し単位が、次の式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
Figure 2020054559
(式(3)中、R2aは水素原子またはメチル基であり、Zは炭素数2〜6の2価の有機基である。)。
また、前記式(2)のYがp−フェニレン基もしくはm−フェニレン基であることが好ましい。
また、前記式(2)で表される繰り返し単位が、次の式(4)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
Figure 2020054559
(式(4)において、R2bは、式(3)のR2aと同じ意味である。またnnは2〜6の整数である)。
具体的には、式(2)中の―Y―OH基中のYに、―O―、−(C=O)−結合が含まれることが好ましく、―Y―OH基としては、2−ヒドロキシエチルエステル、2−ヒドロキシプロピルエステル、3−ヒドロキシプロピルエステル、4−ヒドロキシシクロヘキシルエステル、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルエステル、2−ヒドロキシエチルエーテル、4−ヒドロキシブチルエーテル、2−ヒドロキシエチルアミド、ヒドロキシフェニル基を例示することが出来る。
中でも、具体的には、―Y―OH基として以下に示す構造が好適に用いられる。
Figure 2020054559
(A)成分として、本開示の効果を損なわない範囲において、前記の式(1)および式(2)で表される繰り返し以外の繰り返し単位を含んでも良い。すなわち、後述する式(1m)および式(2m)以外の単量体と共重合しても良い。
(A)成分がさらに式(5)で表される繰り返し単位を含むことは、後述する重合溶媒、および(D)成分である溶剤への溶解性を調整する効果、硬化膜の耐熱性を高める効果をもたらすことがあるため、好ましい例である。
Figure 2020054559
(式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、またはフェニル基を示す。)
3としては、中でも、メチル基、n−プロピル基、フェニル基が特に好ましい。
[重合方法、精製方法]
(A)成分である、式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む重合体は、以下の式(1m)の単量体を1種以上、式(2m)の単量体を1種以上混合して、その後重合させることで得られる。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
当該重合としては、例えば一般的に知られるラジカル重合を用いることができ、具体的には、アゾ化合物、過酸化物、過硫酸化合物またはレドックス系化合物等のラジカル開始剤をラジカル反応の開始剤として用い重合させることができる。重合反応において、該単量体と開始剤以外に溶媒を用いてもよい。重合溶媒として種々の有機物を用いることができ、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルもしくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル、アセトン、2−ブタノンもしくはシクロヘキサノン等のケトン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルもしくはテトラヒドロフラン等のエーテル、ベンゼンもしくはトルエン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタンもしくはシクロヘキサン等の炭化水素、またはそれら有機溶媒の水素原子の少なくとも1個がハロゲン原子により置換されたものを例示することができる。
また、本開示の含フッ素樹脂組成物の構成成分の(D)成分である溶剤も重合溶媒として用いることができる。反応系の全質量に対する、重合時の該単量体濃度は、好ましくは1質量%以上、95質量%以下で、より好ましくは10質量%以上、80質量%以下である。この範囲より単量体の濃度が低いと重合反応の反応率が低下し、この範囲より濃度が高いと重合溶液の粘度が高くなり製造が困難になる。
反応後には精製を行い未反応の該単量体を低減することが望ましい。精製方法としては、減圧操作もしくは加熱による残存単量体の留去、貧溶媒を用いた再沈殿操作、重合物溶液に対する液−液洗浄操作または重合物固体を溶剤中で攪拌して洗浄する方法等を用いることができる。これらの方法を組み合わせて使用してもよい。
本開示の効果を損なわない範囲において、主に前記重合溶媒、および(D)成分である溶剤への溶解性を調整する目的において、式(1m)、式(2m)以外の単量体と共重合しても良い。
具体的には、メタクリル酸、アクリル酸、α―トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル類、α―トリフルオロメチルアクリル酸メチル、α―トリフルオロメチルアクリル酸エチルなどのα―トリフルオロメチルアクリル酸エステル類、トリフルオロエチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、スチレン、α―メチルスチレンなどのスチレン類、ノルボルネン類、アクリニトリル、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類、無水マレイン酸、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド類、オクタフルオロシクロペンテン、1,3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロー3,3,3−トリフルオロプロペンなどの含フッ素オレフィン類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン類が挙げられる。
(A)成分である重合体を100モル%としたときの、式(1)で表される繰り返し単位は通常、10〜90モル%、好ましくは40〜80モル%、式(2)で表される繰り返し単位は通常、5〜60モル%、好ましくは20〜50モル%である。
前記した、式(1m)、式(2m)以外の単量体と共重合する場合は、該単量体から得られる繰り返し単位を含む重合体の割合は、通常、1〜40モル%、好ましくは5〜30モル%である。
(A)成分である重合体の分子量は、重量平均分子量で通常、4000から100000、好ましくは、8000〜60000の範囲である。当該分子量は、基本的に開始剤の量を調整することで、制御可能である。
本開示の含フッ素樹脂組成物中の、(A)成分である重合体の組成比は、通常、0.1質量%以上、40質量%以下で、好ましくは、5質量%以上、30質量%以下である。0.1質量%以下では膜厚が薄くなりすぎて、一方で40質量%以上では膜厚が厚くなりすぎて、それぞれ均一に塗布製膜することが困難になることがある。
[(B)成分:硬化剤]
(B)成分である硬化剤としては、メラミン硬化剤、尿素樹脂硬化剤、多塩基酸硬化剤、イソシアネート硬化剤またはエポキシ硬化剤を例示することができる。該硬化剤は主に、(2)の繰り返し単位の「−OH」と反応し、架橋構造を形成すると考えられる。
具体的には、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートもしくはジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート類、およびそのイソシアヌレート、ブロックイソシアネートもしくはビュレト体等、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、イミノメラミン等のメラミン樹脂もしくは尿素樹脂等のアミノ化合物、またはビスフェノールA等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応で得られる2個以上のエポキシ基を有するエポキシ硬化剤を例示することができる。具体的には、式(6)で表される構造を有する硬化剤がより好ましく、具体的には式(6a)〜(6d)で示されるメラミン誘導体や尿素誘導体(商品名、三和ケミカル(株)製)が挙げられる(なお式(6)中、点線は結合手を意味する)。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
Figure 2020054559
本開示の含フッ素樹脂組成物中の、(B)成分である硬化剤の組成比は、通常、0.1質量%以上、20質量%以下で、好ましくは、0.5質量%以上、10質量%以下である。0.1質量%未満では硬化反応が不十分で硬化膜の有機溶剤に対する耐性が得られないこと、一方で20質量%超では該組成物の貯蔵安定性が低下することがあるから好ましくない。
[(C)成分:硬化触媒]
(C)成分である硬化触媒としては、各種公知の酸触媒を特に制限なく使用できる。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類や有機酸類が挙げられる。該有機酸類としては、例えば、シュウ酸、酢酸、ギ酸が挙げられる。中でもSO3H構造を含有した硬化触媒が、好ましい。具体的にはメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸系触媒が挙げられ、中でも、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などのスルホン酸系触媒が好ましい。
本開示の含フッ素樹脂組成物中の、(C)成分である硬化触媒の組成比は、必ずしも制限はないが、例えば、0.001質量%以上、0.5質量%以下が好ましく、0.005質量%以上、0.1質量%以下がさらに好ましい態様である。0.001質量%未満では硬化反応が不十分で硬化膜の有機溶剤に対する耐性が得られないこと、一方で0.5質量%超では該組成物の貯蔵安定性が低下することがあるから好ましくない。
なお、(C)成分の硬化触媒として好ましいのは、前記の通り、各種酸性物質であるが、この酸性物質としては、光酸発生剤(PAG)に光を照射して発生する酸も含まれる。したがって、本開示の含フッ素樹脂組成物における(C)成分の代わりに、(C’)成分として「光酸発生剤(PAG)」を含有した組成物(これを「前駆体組成物」と呼ぶ)を準備することもできる。この前駆組成物に光を照射すれば、(C’)成分が分解して、(C)成分に該当する酸性物質を生じ、本開示の含フッ素樹脂組成物が得られる。
(C’)成分である光酸発生剤は、光照射により酸を発生する化合物であれば、特に限定されるものではない。具体的には、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミドまたはオキシム−O−スルホネートを例示することができる。これらの光酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併せて用いてもよい。市販品の具体例としては、商品名:Irgacure PAG121、Irgacure PAG103、Irgacure CGI1380、Irgacure CGI725(以上、米国BASF社製)、商品名:PAI−101,PAI−106、NAI−105、NAI−106、TAZ−110、TAZ−204(以上、みどり化学株式会社製)、商品名:CPI−200K、CPI−210S、CPI−101A、CPI−110A、CPI−100P、CPI−110P、CPI−100TF、CPI−110TF、HS−1、HS−1A、HS−1P、HS−1N、HS−1TF、HS−1NF、HS−1MS、HS−1CS、LW−S1、LW−S1NF(以上、サンアプロ株式会社製)、商品名:TFE−トリアジン、TME−トリアジンまたはMP−トリアジン(以上、株式会社三和ケミカル製)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本開示の含フッ素樹脂組成物中の、(C)成分として、(C’)成分である光酸発生剤から発生する酸性物質を用いた場合の該光酸発生剤の組成比は、必ずしも制限はないが、例えば、0.01質量%以上、5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上、1質量%以下がさらに好ましい態様である。0.01質量%未満では硬化反応が不十分で硬化膜の有機溶剤に対する耐性が得られないこと、一方で5質量%超では該組成物の貯蔵安定性が低下することから好ましくない。
(C)成分にスルホン酸などの各種公知の酸触媒を用いるか、(C’)成分である光酸発生剤から発生する酸性物質を用いるか、両者を混合して用いるかは、用途に応じて、当業者が任意に選択すればよい。
[(D)成分:溶剤]
(D)成分である溶剤としては、(A)成分の重合体、(B)成分の硬化剤、(C)成分の硬化触媒を溶解させることができれば、特に限定されるものではない。具体的には、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、γーブチロラクトン、酢酸ブチル、含フッ素アルコール、含フッ素エーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、グリコール、グリコールエーテル、グルコールエーテルエステル等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
当該グリコール、グリコールエーテル、グルコールエーテルエステルの具体例としては、株式会社ダイセル製のセルトールR、東邦化学工業株式会社製のハイソルブR、などが挙げられる。具体的には、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングルコール−n−プロピルエーテル、プロピレングルコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
中でも、含フッ素アルコールや含フッ素エーテルは、有機半導体を侵さないことから、本開示の含フッ素樹脂組成物を有機半導体上の保護膜として用いるのに有用である。
前記含フッ素アルコールは、式(7)で表されるものが好ましい。
Figure 2020054559
(式中、R4は、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状または炭素数3〜15の環状の炭化水素基であり、炭化水素基中の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている。)
化学的な安定性が優れることから、前記式(7)のうち、水酸基に隣接する炭素にフッ素原子が置換されていないものが好ましい。
前記式(7)で表される含フッ素アルコールのうち、R4が炭素数1〜8の直鎖状、炭素数3〜10の分岐鎖状または炭素数3〜10の環状の炭化水素基であり、炭化水素基中に含まれるフッ素原子の個数が水素原子数の個数以上であるものが、塗布しやすいので特に好ましい。
4は、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、1−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基またはシクロヘキシルメチル基を例示することができる。これら炭化水素基中の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されている。
含フッ素アルコールは、沸点が膜形成用組成物を塗布する際の基板温度よりも高いものを用いることができ、好ましくは沸点が塗布温度より20℃以上、さらに好ましくは50℃以上のものである。含フッ素アルコールの沸点が、膜形成用組成物を塗布する際の基板温度より低いと、塗布作業中に含フッ素脂肪族アルコールが急速に揮発し、形成されるフッ素樹脂膜に十分な平坦性が得られない。また、用いられる含フッ素アルコールは、沸点が250℃以下であることが好ましく、230℃以下であればさらに好ましい。含フッ素アルコールの沸点が250℃より高いと、含フッ素樹脂組成物を塗布形成した塗布膜から、加熱により溶剤を蒸発除去することが難しい場合がある。
前記のような沸点範囲にある含フッ素アルコールには、例えば、1,1,1、3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタノール、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンタノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプタノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタノール、(1,2,2,3,3,4,4,5−オクタフルオロシクロペンチル)メタノール、(1,2,2,3,3,4,4,5−オクタフルオロシクロペンチル)エタノールまたは2−(1,2,2,3,3,4,4,5−オクタフルオロシクロペンチル)プロパン−2−オールを例示することができ、これらの溶剤を2種以上混合して使用してもよい。
これらの溶剤の中でも有機半導体などの有機材料を浸さず、本開示の含フッ素樹脂組成物組が含む(A)成分である含フッ素重合体を十分に溶解するものとして、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタノールまたは2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノールが、特に好ましい含フッ素アルコールである。
前記含フッ素エーテルは、式(8)で表されるものが好ましい。
Figure 2020054559
(式中、R5とR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状または炭素数3〜15の環状の炭化水素基であり、R5とR6の少なくとも一方の炭化水素基中の、水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている)。
式(8)においてR5は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基またはメチルビニル基が好ましい。これら炭化水素基中の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されていてもよい。
式(8)においてR6は、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、1−オクチル基、2−−オクチル基、3−オクチル基、1−ノニル基、2−ノニル基、1−デシル基、2−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基またはシクロヘキシルメチル基を例示することができる。これら炭化水素基中の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されている。また、これら炭化水素基は不飽和結合を有していてもよい。
含フッ素エーテルの沸点は、膜形成用組成物を塗布する際の基板温度よりも高い必要があり、好ましくは塗布温度より20℃以上、さらに好ましくは50℃以上高い。含フッ素エーテルの沸点が、膜形成用組成物を塗布する際の基板温度より低いと、塗布作業中に含フッ素脂肪族エーテルが急速に揮発し、形成されるフッ素樹脂膜に十分な平坦性を得難い。また、用いられる含フッ素エーテルは、沸点が250℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは230℃以下である。含フッ素エーテルの沸点が250℃を超えると、含フッ素樹脂組成物を塗布形成した塗布膜から、加熱により溶剤を蒸発除去することが難しい。
好ましい含フッ素エーテルの例として、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ)プロパン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)プロパンまたは2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)プロパンを例示することができる。これら含フッ素エーテルの製造方法は、特開2002−201152号公報に記載されている。
これらは、住友スリーエム株式会社より、商品名、ノベック7000、ノベック7100、ノベック7200、ノベック7300、ノベック7500、ノベック7600として市販されている。尚、ノベックは商標である。さらに三井デュポンフロロケミカル株式会社製、商品名バートレルスープリオンまたはバートレルシネラを例示することができ、入手可能である。
本開示の含フッ素樹脂組成物中の、(D)成分である溶剤の組成比は、50質量%以上、98質量%以下で、好ましくは、65質量%以上、95質量%以下である。50質量%未満では該組成物の貯蔵安定性が低下すること、該組成物が高粘性となり均一に塗布製膜することが困難になることから好ましくない。98質量%超では、膜厚が薄すぎて、均一に塗布製膜することが困難になることから好ましくない。
[添加剤]
本開示の含フッ素樹脂組成物には、本開示の効果である、汎用のコーティング溶媒や含フッ素有機溶媒への溶解性、良好な製膜性、硬化膜としたときの有機溶媒への耐性を著しく損なわない範囲において、下記の成分を添加剤として含有することが出来る。
例えば、塗布性、レベリング性、成膜性、保存安定性または消泡性等を向上させる目的で、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。具体的には、市販されている界面活性剤である、DIC株式会社製の商品名メガファック、品番F142D、F172、F173もしくはF183、住友スリーエム株式会社製の商品名フロラード、品番、FC−135、FC−170C、FC−430もしくはFC−431、AGCセイミケミカル株式会社製の商品名サーフロン、品番S−112、S−113、S−131、S−141もしくはS−145、または東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製、商品名、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032もしくはSF−8428が挙げられる。これらの界面活性剤は、本開示の含フッ素樹脂組成物の必須成分ではないが、仮に添加する場合、その配合量は、含フッ素樹脂組成物中の(A)成分である重合体100質量部に対して、通常、0.001質量部以上、5質量部以下である。尚、メガファックはDIC株式会社のフッ素系添加剤(界面活性剤・表面改質剤)の商品名、フロラードは住友スリーエム株式会社製のフッ素系界面活性剤の商品名およびサーフロンはAGCセイミケミカル株式会社のフッ素系界面活性剤の商品名であり、各々商標登録されている。
[含フッ素樹脂組成物を用いた硬化膜の作製方法]
前記の含フッ素樹脂組成物を塗布する基材として、シリコンウェハ、金属、ガラスを用いることができる。また、ソース・ドレインやゲートなどの薄膜トランジスタの電極上に、アントラセンやポリアセチレンなどの有機半導体上に、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛などの透明電極を形成したガラス基板上に、反射防止膜や多層レジスト上にも塗布できる。
塗布方法としては、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、バーコート、アプリケーター、インクジェットまたはロールコーター等、公知の塗布方法を特に制限無く用いることが出来る。
その後、該組成物を塗布した基材を、通常80〜120℃で30秒以上、5分以下で加温し、樹脂膜を得ることができる。該樹脂膜を更に加熱処理することで、硬化膜を得ることができる。該加熱処理温度は通常、250℃以下である。250℃以上加熱する必要はなく、より好ましい温度は、溶剤の沸点にもよるが、50℃以上、230℃以下である。前記温度範囲での加熱処理により、(B)成分である硬化剤が、(C)成分の硬化触媒の存在下、(A)成分の式(2)中の水酸基と反応することで硬化膜が得られる。50℃よりも低いと乾燥に長時間を要し、230℃よりも高いと形成される硬化膜の表面の均一性が損なわれることがある。また加熱時間は30秒以上、15分以下である。30秒より短いと、硬化膜中に溶剤が残存する場合があり、一方、15分を超えて加熱する必要はない。
[前駆体組成物を用いた硬化膜の作製方法]
なお、(C)成分として、(C’)成分である光酸発生剤から発生する酸性物質を用いる場合は、露光工程が追加で必要となることから、硬化膜の作製方法は前記と異なる。以下に説明する。
当該硬化膜の作製方法は、次の第1〜第4工程を含む、パターン硬化膜の製造方法である。
第1工程:前記の前駆組成物を基板上に塗布および乾燥して、感光性樹脂膜を形成する工程。
第2工程:前記感光性樹脂膜に光照射して、前記(C’)成分を、(C)成分である硬化触媒に転化させ、それによって、前記感光性樹脂膜を、前記の含フッ素樹脂組成物を含む樹脂膜に転化させる工程。
第3工程:前記樹脂膜を加熱処理して、次いで有機溶媒によって現像して、パターン樹脂膜を形成する工程。
第4工程:前記パターン樹脂膜を加熱し、それによって前記パターン樹脂膜を硬化させてパターン硬化膜に転化させる工程。
(C)成分として、(C’)成分である光酸発生剤から発生する酸性物質を用いる場合は、前記の前駆体組成物を塗布した基材の加熱温度は通常50℃以上、150℃以下である。150℃よりも高いと光酸発生剤が一部分解することがあり好ましくない。より好ましい温度は、溶剤の沸点にもよるが、50℃以上、130℃以下である。
前記温度範囲で得られた感光性樹脂膜(なお、(C)成分として、(C’)成分である光酸発生剤から発生する酸性物質を用いる場合は、前記温度範囲では(B)成分の硬化剤が通常反応しないので、硬化膜とはならない。このため「感光性樹脂膜」と呼ぶことにする。)に対して、次に露光工程にて露光処理を施す。
露光処理には、公知の方法を用いることができる。光源としては、光源波長が100〜600nmの範囲のものを用いることができる。具体的に例示すると、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、KrFエキシマレーザー(波長248nm)またはArFエキシマレーザー(波長193nm)などを用いることができる。露光量は、使用する光酸発生剤の量や製造工程などに合わせて調節することができ、特に限定されるものではないが、1〜10000mJ/cm2程度、好ましくは10〜5000mJ/cm2程度であることが好ましい。
露光後、必要に応じて現像工程の前に露光後加熱を行うこともできる。露光後加熱の温度は60〜180℃、露光後加熱の時間は1分間〜30分間が好ましい。該露光後加熱の役割としては、(C’)成分である光酸発生剤から露光により発生した酸を膜中に十分拡散させることである。
このように、露光により発生した酸、および露光後加熱により膜中を十分拡散した酸が(C)成分である硬化触媒となり、(B)成分である硬化剤と(A)成分の式(2)中の水酸基が反応することで硬化膜が得られる。
なお、該前駆体組成物から得られる該感光性樹脂膜に対して、所望のパターン形状を加工したフォトマスク越しに露光した後に、有機溶媒で現像すれば、未露光部が前記有機溶媒にて溶解除去され、ネガ型パターン形成されたパターン樹脂膜が得られる。
現像に用いる有機溶媒としては、未露光部の該前駆体組成物から得られる該感光性樹脂膜を溶解除去出来る有機溶媒であることが必須で、具体的には、(D)成分に記載の溶剤を用いることが出来る。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチル、含フッ素アルコール、含フッ素エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グルコールエーテルエステルが好ましく、酢酸n−ブチル、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノールが一層好適である。
現像法としては、浸漬法、パドル法、スプレー法等の公知の方法を用いることができ、現像時間は、通常0.1分間以上3分間以下で行い、0.5分間以上2分間以下で行うことが好ましい。その後、必要に応じて洗浄、リンス、乾燥などを行い、前記基材上に所望のネガ型パターン状の該パターン樹脂膜を形成させることができる。その後、前記露光後加熱処理と同様の加熱処理を施すことで、ネガ型パターン形成されたパターン硬化膜が得られる。
前記の通り、(C)成分にスルホン酸などの各種公知の酸触媒を用いるか、(C’)成分である光酸発生剤から発生する酸性物質を用いるか、両者を混合して用いるかは、硬化膜の使用環境、用途に応じて、当業者が任意に選択すればよい。
[硬化膜を用いた有機半導体素子の製造方法]
本開示の含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物からの硬化膜を用いた有機半導体素子の製造方法について、具体的には、該硬化膜を有機半導体素子の保護膜、およびゲート絶縁膜として用いた場合の有機半導体素子の製造方法について説明する。
ここで言う、有機半導体素子とは、有機半導体、保護膜、ゲート絶縁膜、およびソース、ドレイン、ゲート電極で構成される有機薄膜トランジスタのことである。トランジスタの構造としては、ゲート電極が有機半導体の下に配置されるボトムゲート型、上に配置されるトップゲート型、ソース、ドレイン電極が有機半導体の上に配置されるトップコンタクト型、下に配置されるボトムコンタクト型など、適用される有機半導体デバイスに応じて、様々な組み合わせ、配置が可能であり、特にトランジスタの構造は限定されない。
用いる有機半導体膜についてまず説明する。有機半導体膜の材料としては、公知のものを用いることができる。有機半導体としては、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロールおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリフランおよびその誘導体等の複素環系導電性高分子、またはポリアニリンおよびその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体、有機電荷移動錯体を例示することができる。
該有機半導体膜の形成方法に関しては、蒸着、印刷塗布、スピンコートなど、公知の手法を限定なく使用できる。また、上層にフォトレジスト膜を形成しパターン加工後、下層の有機半導体膜をドライ、ウェット加工し、所望のサイズ、形状に加工した有機半導体膜も使用可能である。
次に、ソース、ドレイン、ゲート電極材料について説明する。該電極材料は、特に限定せずに公知の電極材料を使用出来る。具体的には、簡便に入手できるものとして、Au、Al、Pt、Mo、Ti、Cr、Ni、Cu、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸塩)(PEDOT/PSS)等の導電性高分子、導電ペースト、メタルインクなどが好適に用いられる。抵抗が低く、高い導電性を得られることよりAl、Mo、Ti、Cr、Ni、Cuなどが好ましく、また透明性が必要な箇所に適用できる観点からは、ITO、酸化亜鉛、PEDOT/PSSが好ましく、電極表面が酸化されにくく安定性に優れるという観点からは、Au、Ptが好ましく、印刷プロセスにより形成できることよりPEDOT/PSS等の導電性高分子、導電ペースト、メタルインクが好ましく用いられる。
前記の硬化膜を保護膜として用いる場合は、有機半導体膜に上層、もしくは下層に接触する膜として形成される。上層、下層のどちらに形成するかは、前記の各種トランジスタの構造により決定される。具体的には、本開示の含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物を用いた、前記の硬化膜作製方法を適用できる。有機半導体膜の上層に用いる場合は、下層である有機半導体膜を侵さない溶剤(すなわち、(D)成分)の選択、該溶剤の沸点以上で有機半導体膜の熱分解温度以下(すなわち、前記の硬化膜作製温度である50〜250℃から選択)で、保護膜を形成できる。一方、有機半導体膜の下層に用いる場合は、前記電極材料を侵さない溶剤(すなわち、(D)成分)の選択、該溶剤の沸点以上で電極材料の熱分解温度以下(すなわち、前記の硬化膜作製温度である50〜250℃から選択)で、保護膜を形成できる。
前記の硬化膜をゲート絶縁膜として用いる場合は、有機半導体膜に上層、もしくは下層に接触する膜として形成される。上層、下層のどちらに形成するかは、前記の各種トランジスタの構造により決定される。該ゲート絶縁膜は、有機半導体膜とゲート電極の間に形成される。本開示の含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物からの該ゲート絶縁膜の具体的な形成方法は、前記の保護膜の形成方法と同様である。
[硬化膜を用いたバイオチップの製造方法]
本開示の含フッ素樹脂組成物、および前駆体からの硬化膜を用いたバイオチップの製造方法について、具体的には、該硬化膜をバイオチップの溝(マイクロウェル)が形成された撥液性膜として用いた場合のバイオチップの製造方法について説明する。
バイオチップとは、例えば、親水性基材と、親水性基材の表面に設けられ、厚さ方向に貫通した複数の穴または溝(マイクロウェル)が形成された撥液性膜で構成される。バイオチップは、DNA、蛋白質、糖鎖などのバイオ分子や標的化合物等、及びがん細胞、免疫細胞などの細胞等を大量かつ同時並行的に分析できるデバイスである。これらの高感度な検出方法として、抗体や蛍光分析を利用した方法が多く用いられている。
バイオチップは、例えば、親水性基板上に、硬化膜を、上述の硬化膜作製方法において穴または溝に対応したパターンを有したマスクを利用することにより隔壁を作製することで製造することができる。
親水性基板としては、各種ガラス板、各種プラスチック基板を挙げることができる。
例えば、撥液性膜の形成には、本開示の含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物を用いた、前記の硬化膜の作製方法を適用することができる。硬化膜は、基板材料を侵さない溶剤(すなわち、(D)成分)を選択し、基板材料の耐熱温度以下で作製することができる。
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって限定されるものではない
本実施例で得られた含フッ素樹脂の分析、該含フッ素樹脂組成物から得られる硬化膜の評価は以下の方法で行った。
[ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)]
東ソー株式会社製GPC装置、機器名、HLC−8320GPCを用いて、ポリスチレン換算により、含フッ素樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定を行った。
[接触角]
協和界面科学株式会社製の接触角測定装置、機器名、DMs−601を用いて、硬化膜表面の水に対する接触角の測定を行った。
[露光装置]
ズース・マイクロテック株式会社製の露光装置、機器名、MA6を用いて、含フッ素樹脂組成物から得られる膜を露光処理した。
[体積抵抗率測定装置]
ダイアンインスツルメンツ製 高抵抗率計 ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて測定した。
[合成例1]
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート80.9g、ヒドロキシエチルメタクリレート19.1g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.26gを200gのメチルエチルケトンに溶解し、80℃にて6時間反応させた。その反応液を濃縮、ヘプタンによる再沈殿により、下式で表されるポリマー1を80.4g得た。得られたポリマー1のMwは16,600、Mw/Mnは1.74であった。共重合比(a/b)は70/30であった。
Figure 2020054559
[合成例2]
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート7.41g、ヒドロキシエチルメタクリレート1.65g、酢酸ビニル0.95g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.25gを5gの酢酸ブチルに溶解し、70℃にて6時間反応させた。その反応液を濃縮、ヘプタンによる再沈殿により、下式で表されるポリマー2を8.57g得た。得られたポリマー2のMwは55,500、Mw/Mnは2.11であった。共重合比(a/b/c)は66/27/8であった。
Figure 2020054559
[合成例3]
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート18.4g、ヒドロキシエチルアクリレート1.60g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.42gを40gのメチルエチルケトンに溶解し、80℃にて6時間反応させた。その反応液を濃縮、ヘプタンによる再沈殿により、下式で表されるポリマー3を13.42g得た。得られたポリマー3のMwは12,900、Mw/Mnは1.53であった。共重合比(a/b)は70/30であった。
Figure 2020054559
[合成例4]
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート18.76g、ヒドロキシエチルビニルエーテル1.24g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.43gを40gのメチルエチルケトンに溶解し、80℃にて6時間反応させた。その反応液を濃縮、ヘプタンによる再沈殿により、下式で表されポリマー4を13.82g得た。得られたポリマー4のMwは13,800、Mw/Mnは1.69であった。共重合比(a/b)は70/30であった。
Figure 2020054559
[合成例5]
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート7.29g、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート9.27g、ヒドロキシエチルメタクリレート3.44g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.41gを20gの酢酸ブチルに溶解し、80℃にて6時間反応させた。その反応液を濃縮、ヘプタンによる再沈殿により、下式で表されるポリマー5を18.8g得た。得られたポリマー5のMwは36,300、Mw/Mnは2.07であった。共重合比(a/b/c)は34/36/30であった。
Figure 2020054559
[比較合成例1]
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート75g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.20gを75gの酢酸ブチルに溶解し、80℃にて6時間反応させた。その反応液を濃縮、ヘプタンによる再沈殿により、下式で表される比較ポリマー1を57.4g得た。得られた比較ポリマー1のMwは11,800、Mw/Mnは1.51であった。
Figure 2020054559
[比較合成例2:(MMA/HEA共重合体)]
メチルメタクリレート6.72g、ヒドロキシエチルアクリレート3.28g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.11gを20gのメチルエチルケトンに溶解し、80℃にて6時間反応させた。その反応液を濃縮、ヘプタンによる再沈殿により、下式で表される比較ポリマー2を9.1g得た。得られた比較ポリマー2のMwは12,200、Mw/Mnは1.98であった。共重合比(a/b)は70/30であった。
Figure 2020054559
[含フッ素樹脂の溶解性試験]
実施例1〜10、比較例1〜2では、表6に示す通り、ポリマーと溶剤を混合し、室温で3時間攪拌して、目視にてポリマーの溶剤溶解性を確認した。
Figure 2020054559
溶剤溶解性:
〇:均一に溶解。目視にて不溶物無し。
×:不溶。目視にて不溶物有り。
サイトップ:AGC株式会社製、型番:CTL−809A。
構造:
Figure 2020054559
溶剤:PGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの略。
本開示の範疇である実施例1〜10に記載のポリマー1〜5は何れも、コーティング溶剤として一般的に用いられるPGMEAと酢酸ブチルの両方に溶解したのに対して、比較例1、2のサイトップはPGMEAと酢酸ブチルの両方に不溶であった。
[含フッ素樹脂組成物の調製]
実施例11〜21、比較例3〜4では、表7に示す通り、(A)成分:含フッ素樹脂、(B)成分:硬化剤、(C)成分:硬化触媒、(D)成分:溶剤を混合し、室温で3時間攪拌して均一な溶液とすることにより、含フッ素樹脂組成物を調製した。
実施例22〜29、比較例5では、表8に示す通り、(A)成分:含フッ素樹脂、(B)成分:硬化剤、(C’)成分:硬化触媒、(D)成分:溶剤を混合し、室温で3時間攪拌して均一な溶液とすることにより、前駆体組成物を調製した。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
メラミン系硬化剤:2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン(ニカラックMW−30HM、三和ケミカル株式会社製)
グリコールウリル硬化剤:1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
OFP:2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール
光酸発生剤1:2−[2−(4−メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)チオフェン−3(2H)−イリデン−2−(2−メチルフェニル)アセトニトリル(Irgacure PAG121、米国BASF社製)
光酸発生剤2:ジフェニル(フェニルチオフェニル)スルホニウム トリフルオロスルホネート(CPI−110TF、サンアプロ株式会社製)。
[含フッ素樹脂組成物の硬化膜、および前駆体組成物の感光性樹脂膜の塗布性評価]
実施例11〜21、比較例3〜4で得られた含フッ素樹脂組成物をシリコンウェハ上に、スピンコート塗布(2000rpmで1分間)し樹脂膜を得た後、150℃で2分間加熱処理し、1〜2μmの膜厚を有する硬化膜を得た。
実施例22〜29、比較例5で得られた含フッ素樹脂組成物については、当該組成物をシリコンウェハ上に、スピンコート塗布(2000rpmで1分間)後、100℃で1分間加熱処理し、1〜2μmの膜厚を有する感光性樹脂膜を得た。
目視にて、欠陥なく塗布できているか観察することで、塗布性を評価した。得られた結果を表9、10に示す。
[含フッ素樹脂組成物の硬化膜の溶剤耐性評価]
前記の実施例11〜29、比較例3〜4で得られた、1〜2μmの膜厚を有する硬化膜をPGMEA中に10秒間浸漬したのちPGMEAをかけ流した。PGMEAの代わりにアセトンを用いた試験も同様に実施した。
前記の実施例22〜29、比較例5で得られた、1〜2μmの膜厚を有する感光性樹脂膜を露光装置にて、105mJ/cm2の条件で露光処理した後に、再度、100℃で1分間加熱処理して、1〜2μmの膜厚を有する全面露光硬化膜を得た。この全面露光硬化膜をPGMEA中に10秒間浸漬したのちPGMEAをかけ流した。PGMEAの代わりにアセトンを用いた試験も同様に実施した。
その時の膜の様子を観察し、PGMEA耐性とアセトン耐性を評価した。得られた結果を表9、10に示す。
[含フッ素樹脂組成物の硬化膜の水接触角評価]
前記の実施例11〜29、比較例3〜4で得られた、1〜2μmの膜厚を有する硬化膜の水の接触角を接触角計(協和界面科学(株)製DMs−601)を用いて測定した。得られた結果を表9、10に示す。
前記の実施例22〜29、比較例5で得られた、1〜2μmの膜厚を有する全面露光硬化膜の水の接触角を接触角計(協和界面科学(株)製DMs−601)を用いて測定した。得られた結果を表9、10に示す。
Figure 2020054559
Figure 2020054559
塗布性:
◎:スジ、ハジキ、ムラが全く観察されない。
〇:スジ、ハジキ、ムラの少なくとも1つが僅かに観察されるが、全体の5%未満。
PGMEA耐性:
◎:剥がれ、膨潤、スジ、ムラが全く観察されない。
〇:剥がれ、膨潤、スジ、ムラの少なくとも1つが僅かに観測されるが、全体の5%未満。
×:膜が溶解。
アセトン耐性:
◎:剥がれ、膨潤、スジ、ムラが全く観察されない。
〇:剥がれ、膨潤、スジ、ムラの少なくとも1つが僅かに観測されるが、全体の5%未満。
×:膜が溶解。
表9、10に示すように、本開示の範疇である実施例11〜21に記載の含フッ素樹脂組成物から得られる樹脂膜、および実施例22〜29に記載の前駆体組成物から得られる感光性樹脂膜は、塗布性が「◎」もしくは「○」で、該樹脂膜から得られる硬化膜、および該感光性樹脂膜から得られる全面露光硬化膜は、PGMEA耐性が「◎」、アセトン耐性が「◎」、水接触角は99度以上となった。一方で、比較例3はPGMEA耐性が「×」、アセトン耐性が「×」となった。比較例4、5は、PGMEA耐性が「◎」、アセトン耐性が「◎」だが、水接触角が67度となった。
[前駆体組成物からのパターン硬化膜形成評価]
実施例22、23で得られた前駆体組成物をシリコンウェハ上に、スピンコート塗布(2000rpmで1分間)後、100℃で1分間加熱処理し、感光性樹脂膜を得た。次に、該感光性樹脂膜を露光装置にて、フォトマスク上から105mJ/cm2の条件で露光処理した後に、再度、100℃で1分間加熱処理して、PGMEA中に1分間浸漬後、150℃で5分間加熱することで、ネガ型パターンが形成されたパターン硬化膜を得た。5μmのラインアンドスペースのパターン解像度で、膜厚は1〜2μmであった。
[有機半導体膜上での含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物からの硬化膜の形成評価]
濃度0.10質量%のアントラセンのトルエン溶液を調製し、直径10cmのシリコン基板上にキャストして室温で乾燥させることで有機半導体膜を形成した。次いで、実施例20、28に記載の本開示の含フッ素樹脂組成物、実施例11、12、15、21、前駆体組成物、実施例22、23、25、29の(D)成分をOFP4重量部に変更した本開示の含フッ素樹脂組成物を用いて、該有機半導体膜上に前記の条件にて硬化膜を形成した。ついで基板、断面を光学顕微鏡で観察したところ、有機半導体膜と硬化膜が層をなしていることが確認できた。すなわち、本開示の含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物は有機半導体を侵すことなく、有機半導体膜上に塗布可能であることが判った。
[含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物からの硬化膜の絶縁性評価]
実施例11、13、20、21で得られた含フッ素樹脂組成物から膜厚15〜25μmの硬化膜、実施例22、24、28、29で得られた前駆体から膜厚15〜25μmの全面露光硬化膜を、直径10cmのアルミ基板上に、それぞれ作製した。その後、蒸着によりAu電極を作製した。測定電圧1000V、温度25℃、湿度60%にて体積抵抗率を測定した。前記全ての硬化膜において、体積抵抗率は1015Ω・cm以上となり、絶縁性が十分に高いことが判った。
[前駆体組成物からのバイオチップマイクロウェル形成評価]
実施例22、23で得られた前駆体組成物をガラス基板中心に滴下したのち、スピンコーターを用い、2000rpmで1分間、展開塗布した後、100℃で1分間加熱し、感光性樹脂膜を形成した。次いで、該感光性樹脂膜を露光装置にて、フォトマスク上から210mJ/cm2の条件で露光した後に、再度、100℃で1分間加熱理して、PGMEA中に1分間浸漬後、150℃で5分間加熱することで、ネガ型パターンが形成されたパターン硬化膜を得た。解像度を測定したところ、20μmホール、500μmピッチであり、膜厚は1〜2μmであった。
上記パターン膜をバイオチップのマイクロウェルに見立て、生体試料液に見立てた水をピペットで展開した。さらにその上に、前述のノベック7300を展開し、ホール部と親和していない水を除去した。マイクロウェルを光学顕微鏡にて観察したところ、ホール部と親和している部分にのみ水滴が補足されている様子が観察された。
本開示の含フッ素樹脂組成物および光酸発生剤を含有した前駆体組成物は、PGMEAや酢酸ブチルなどの汎用の有機溶剤に可溶であり、かつ、当該組成物から得られた硬化膜はPGMEAおよびアセトンに耐性があり、水に対する接触角が99度以上であることが判った。また、当該組成物から、ネガ型パターン形成された硬化膜が得られることも判った。また、当該組成物はOFPなどの含フッ素溶媒にも可溶であることから、有機半導体を侵すことなく、有機半導体上に硬化膜が形成可能であった。また、当該組成物から得られた硬化膜は絶縁性が高いことも判った。硬化膜の水に対する接触角が大きいということは、該硬化膜が高い撥水性を持つことを意味し、半導体材料などを水から有効に保護でき、また硬化膜によって形成された隔壁間に液滴を保持できることを意味する。すなわち、本開示の含フッ素樹脂組成物、および該組成物から得られた硬化膜は、有機半導体のゲート絶縁膜、保護膜として有用であり、バイオチップの撥液性隔壁として有用であることが判った。
前記の硬化膜/パターン硬化膜の作製方法に従えば、シリコンウェハ、金属、ガラスなどの各種基材上に、またソース・ドレインやゲートなどの薄膜トランジスタの電極上に、アントラセンやポリアセチレンなどの有機半導体上に、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛などの透明電極を形成したガラス基板上に、反射防止膜や多層レジスト上に、本開示の含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物から得られる硬化膜、およびパターン硬化膜を形成できる。
すなわち、本開示の含フッ素樹脂組成物、および前駆体組成物は、PGMEA、PGMEなどの汎用のコーティング溶剤や、OFPやノベックなどの含フッ素溶剤に可溶で、塗布性に優れ、得られる硬化膜は有機溶剤耐性に優れ、高い撥水性を示す。
薄膜トランジスタの電極上に作製した硬化膜は有機化合物や高分子化合物で形成された有機デバイスのゲート絶縁膜として、アントラセンやポリアセチレンなどの有機半導体上に作製した硬化膜は保護膜として、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛などの透明電極を形成したガラス基板上に作製した硬化膜は、有機ELディスプレイや有機EL照明などの有機ELデバイス用の保護膜やRGBなど各画素の塗り分けに必要な隔壁材として、ガラス基板などの上に作製した硬化膜はバイオチップのマイクロウェルの隔壁に有用である。

Claims (22)

  1. 下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分、を含むことを特徴とする含フッ素樹脂組成物。
    (A)成分:式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む重合体。
    (B)成分:硬化剤。
    (C)成分:硬化触媒。
    (D)成分:溶剤。
    Figure 2020054559
    Figure 2020054559
    (式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基を示す。Xは炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基である。Yは単結合、または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の環状の2価の有機基である。)
  2. (A)成分の式(1)中のXが、式(1x)で表される基であることを特徴とする、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
    Figure 2020054559
    (Xxは水素原子またはフッ素原子である。nは1〜4の整数であり、mは1〜8の整数である。点線は結合手を表す。)
  3. 前記式(1)のR1が水素原子またはメチル基であり、Xが2−(パーフルオロヘキシル)エチル基または2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
  4. (A)成分の式(1)中のXが、式(1xy)で表される基であることを特徴とする、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
    Figure 2020054559
    (Xxyは水素またはトリフルオロメチル基であり、n1、n2はそれぞれ独立に0〜2の整数である。点線は結合手を表す。)
  5. 前記式(1)のR1が水素原子またはメチル基であり、Xが1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
  6. 前記式(2)で表される繰り返し単位が、次の式(3)で表される繰り返し単位である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
    Figure 2020054559
    (式(3)中、R2aは水素原子またはメチル基であり、Zは炭素数2〜6の2価の有機基である。)
  7. 前記式(2)のYがp−フェニレン基もしくはm−フェニレン基である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
  8. 前記式(2)で表される繰り返し単位が、次の式(4)で表される繰り返し単位である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
    Figure 2020054559
    (式(4)において、R2bは、請求項4に定義したR2aと同じ意味である。またnnは2〜6の整数である)。
  9. (A)成分がさらに式(5)で表される繰り返し単位を含む請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
    Figure 2020054559
    (式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、またはフェニル基を示す。)
  10. (B)成分が、式(6)で表される構造を含有した硬化剤である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
    Figure 2020054559
    (式中、点線は結合手を表す。)
  11. (C)成分が、SO3H構造を含有した硬化触媒である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
  12. (D)成分が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ガンマブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸n−ブチル、含フッ素アルコール、含フッ素エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グルコールエーテルエステルからなる群から選ばれる1種以上の溶剤である、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
  13. (D)成分が、式(7)で表される含フッ素アルコールである、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
    Figure 2020054559
    (式中、R4は、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状または炭素数3〜15の環状の炭化水素基であり、炭化水素基中の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている)
  14. (D)成分が、式(8)で表される含フッ素エーテルである、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物。
    Figure 2020054559
    (式中、R5とR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状または炭素数3〜15の環状の炭化水素基であり、R5とR6の少なくとも一方の炭化水素基中の、水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されている)
  15. 次の(A)、(B)、(C’)及び(D)からなる「前駆体組成物」。
    (A)成分:式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む重合体。
    (B)成分:硬化剤。
    (C’)成分:光酸発生剤。
    (D)成分:溶剤。
    Figure 2020054559
    Figure 2020054559
    (式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはメチル基を示す。Xは炭素数1〜20の含フッ素炭化水素基である。Yは単結合、または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の環状の2価の有機基である。)
  16. 次の第1〜第4工程を含む、パターン硬化膜の製造方法。
    第1工程:請求項15に記載の前駆組成物を基板上に塗布および乾燥して、感光性樹脂膜を形成する工程。
    第2工程:前記感光性樹脂膜に光照射して、前記(C’)成分を硬化触媒に転化させ、それによって、前記感光性樹脂膜を含フッ素樹脂組成物の膜に転化させる工程。
    第3工程:前記含フッ素樹脂組成物の膜を加熱処理して、次いで有機溶媒によって現像して、パターン樹脂膜を形成する工程。
    第4工程:前記パターン樹脂膜を加熱し、それによって前記パターン樹脂膜を硬化させてパターン硬化膜に転化させる工程。
  17. 現像に用いる有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチル、含フッ素アルコール、含フッ素エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グルコールエーテルエステルからなる群から選ばれる1種以上の溶剤である、請求項16に記載のパターン硬化膜の作製方法。
  18. 露光に用いる光源波長が100〜600nmの範囲である、請求項16に記載のパターン硬化膜の作製方法。
  19. 有機半導体の上層、もしくは下層に含フッ素樹脂膜を形成するための、請求項1〜14の何れかに記載の含フッ素樹脂組成物、又は請求項15に記載の前駆体組成物。
  20. 含フッ素樹脂膜が有機半導体の保護膜であることを特徴とする、請求項19に記載の含フッ素樹脂組成物又は前駆体組成物。
  21. 含フッ素樹脂膜がゲート絶縁膜であることを特徴とする、請求項19に記載の含フッ素樹脂組成物又は前駆体組成物。
  22. 含フッ素樹脂膜がバイオチップにおけるマイクロウェルの隔壁であることを特徴とする、請求項19に記載の含フッ素樹脂組成物又は前駆体組成物。
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