JPWO2020054319A1 - 樹脂製デリバリパイプとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1は、外フランジを採用し、デリバリパイプとキャップ(プラグ)との溶着面積を広くし、さらに溶着部が溶着部本体と2重の外形保持部から構成されている。これらの溶着部の間に間隙部を設け、溶着時に発生するバリを間隙部に収容することができる。
このことは、特に、直噴エンジンのような一般的なエンジンよりも高い圧力が加わるエンジンに対して樹脂製デリバリパイプを採用することは、非常に困難であり、実質的に不可能であると考えられてきた。
また、パルセーションダンパーを不要とし、しかも、高圧エンジンでも十分に使用に耐えうる接合技術を、既存の超音波溶着装置で実現することを技術的課題する。
一端が閉塞し他端が開口した筒状の本体部12と前記本体部12の他端を閉塞するプラグ14とで構成される。そして、前記本体部12の胴部には、複数のインジェクターの接続口16が設けられ、前記本体部12と前記プラグ14とは、第1の接合部と第2の接合部で超音波溶着されていることを特徴とする。
前記プラグ14は、前記本体部12の内部に突出する溶着部材を備え、
前記溶着部材は、第1の溶着部と第2の溶着部とを備え、
前記第2の溶着部は前記第1の溶着部より前記本体部12側に位置し、
前記本体部12は、前記第1の接合部において前記第1の溶着部と接合する第3の溶着部と、前記第2の接合部において前記第2の溶着部と接合する第4の溶着部とを備えることを特徴とする。
前記第3の溶着部はエッジ部を有し、前記第1の溶着部の平坦面と接合され、
前記第2の溶着部はエッジ部を有し、前記第4の溶着部の平坦面と接合される
ことを特徴とする。
前記本体部12は、前記第3の溶着部に対向し、前記第4の溶着部に連結する保護壁を備え、
前記保護壁は、前記第2の溶着部より内側に位置することを特徴とする。
燃料タンクとの間にパルセーションダンパーが設けられていないことを特徴とする。
上記構成において、デリバリパイプ10は、高い接合強度でプラグが溶着されているため、上記のような高い圧力(500[kPa]以上)の燃料を使用する高圧エンジンへの接続も可能となる。
図1は、本実施形態の樹脂製デリバリパイプ10の斜視図である。樹脂製デリバリパイプ10は、一端が閉塞し他端が開口した筒状の本体部12とプラグ14とで構成され、本体部12の胴部(両端部の間)に一列に複数のインジェクターの接続口16が設けられている。本体部12は固定具18にネジ等を挿通し、螺着することでエンジン等に固定される。本体部の内部には燃料タンクより燃料を送り出すためのパイプ20が設けられている。本実施形態のデリバリパイプ10は、脈動を抑えるために十分な容積を本体部の内部空間に設けることにより、パルセーションダンパーを不要としている。そのため、パイプ20の先端部20Aは、燃料タンク(不図示)と直接つながっている。そして、燃料ポンプ(不図示)からの吐出圧によってインジェクター16に燃料が圧送される。
特に66ナイロンは、耐熱性、耐燃料油性、耐振強度、耐衝撃性、成形精度、コストの点で好適に使用することができる。又、溶着の観点からは、好適にはプラグ14と本体部12とは同材を使用する。
図5(B)は、プラグ14及び本体部12が溶着により接合された様子を示す図であり、図5(C)は、図5(B)の点線の円Aで囲む領域の拡大図である。
図5(A)に示すように、円形のプラグ14には、円板状のプラグ本体部145(閉鎖部)に突出部140(溶着部材)が設けられ、さらに突出部140には第1の溶着部141及び第2の溶着部142が設けられている。
また、本体部12の開放端部側には、第3の溶着部121及び第4の溶着部122が設けられ、さらに保護壁123が設けられている。保護壁123により形成される溝に、第4の溶着部122が設けられている。
第1の溶着部141は第3の溶着部121と溶着され、第2の溶着部142は第4の溶着部122と溶着される。
それぞれの溶着箇所において、平らな面とエッジとが接触し溶着されることになる。ただし、第1の溶着部141と第3の溶着部121とが溶着される箇所(第1の接合部と称す)においては、平らな面がプラグ14側にありエッジが本体12側にあるが、第2の溶着部142と第4の溶着部122とが溶着される箇所(第2の接合部と称す)においては、平らな面が本体側12にありエッジがプラグ14側にある。従って、平らな面とエッジのと関係は互いに反対の構成である。
プラグ側の第1の溶着部141のフラットな面と第3の溶着部121のエッジ部とが、所定のテーパー角度をなして接触し、超音波により第1の溶着部141のフラットな面が振動し、第1の接合部でプラグ14と本体部12とが溶着する。
一方、プラグ側の第2の溶着部142のエッジと第4の溶着部122のフラットな面とが実質的に垂直に接触し、超音波により第2の溶着部142のエッジ面が振動し溶着する。エッジ部に振動を集中することで発熱を促進することができる。
プラグ14を本体部12に当接することでまず第1の溶着部141と第3の溶着部121のみが接触し(第2の溶着部142と第4の溶着部122とは接触せず)、超音波を印加しながら第1の接合部の樹脂を溶かし、その後、次第にプラグ14が押し込まれる(沈み込む)ことで第2の溶着部142と第4の溶着部122とが接触し、第2の接合部の樹脂を溶かすことで、同時に第1の接合部及び第2の接合部の樹脂を溶かすよりも少ないエネルギーでスムーズに溶着ができる。
このように、各部品の幾何学的パラメータにより超音波溶着の制御が可能であり、既存の超音波溶着装置をそのまま利用することができる。
図5(C)に示すように、超音波溶着により、樹脂(溶着カス)40が第1、第2の接合部31、32周囲に拡散(流出)するものの、保護壁123によってせき止められ、プラグ14の内壁面に流出することはない。また、逆に、第2の接合部32は、保護壁123によって保護され、デリバリパイプ(本体12)中の流体(燃料)の圧力変動等の影響を直接的に受けない構成としている。
図7(A)に示すように第2の接合部32を有しない溶着構造とすると、第1の空隙33を介して第2の空隙34入り込んだ燃料により、圧力(脈動圧力)に晒されることとなり、第2の接合部32でのプラグ14と本体部12とを剥離する方向に働く。
また、保護壁123がない場合には、これらのデリバリパイプの燃料の圧力が、直接端面36や第2の空隙34印加されることになり、さらにその圧力の影響が(特に、端面36において)大きくなる。
なお、理解のため、図7(C)において点線は圧力P1が加わらない状態での突起部140近傍の形状を示す。
そのため、特に図7(C)の円Eで囲まれた領域の樹脂には、てこの原理により、引き裂こうとする強い負荷が集中することになる。しかし、第2の接合部32によって突起部140が固定されると、矢印D方向の変形を抑制し、円Eで囲まれた領域の樹脂への負荷の集中を大幅に抑制できる。応力解析の結果、第2の接合部32を設けることで破壊荷重を2.5倍以上向上できることが判明している。
図8(A)に示すように、プラグ14は、円管状に、第1の接合部31及び第2の接合部32によって本体部12に接合されており、第2の接合部32は第1の接合部31より内側に設置されている。
一方、図8(B)に示すように、第2の接合部32がない場合、プラグ14は、円管状に、第1の接合部31のみによって本体部12に接合されている。
第2の接合部32(及び第1の接合部31)によってプラグ14が本体部12と接合されている場合、デリバリパイプ中の流体(燃料)の圧力Pにより、
F=(π/4)PD22 式(1)
の力がプラグ14に加わることになる。
一方、第2の接合部32を有せず第1の接合部31のみによってプラグ14が本体部12と接合されている場合、デリバリパイプ中の流体(燃料)の圧力Pにより、
F’=(π/4)PD12 式(2)
の力がプラグ14に加わることになる。
D2はD1より小さいため、FはF’より小さくなる。従って、第2の接合部32を有する構成とすることで、プラグ14に加わる圧力を低減することができる。
その結果、第2の接合部32によってプラグ14の接合の耐久性を向上させることができる。
また、第2の接合部32は接合強度を増大させるだけでなく、第1の接合部31の接合強度を低下させる要因を排除することができる。さらに、溶着部の直径を小さくすることで、プラグ14への負荷が低減される。
また、上記のように溶着箇所が2重になり、万が一 第2の接合部32に亀裂が発生し、内部の燃料が漏れても、第1の接合部31で流出を防止できる。逆に第1の接合部31に、エンジンオイル、バッテリー液、凍結材などが付着し、材料が劣化し、万が一亀裂が入った場合でも、第2の接合部32にはエンジンオイル、バッテリー液、凍結材などが付着しないため、材料劣化がなくシールが確保でき(漏れが発生せず)、さらに樹脂の経時的劣化を防止し、耐久性も向上する。
そのため、たとえ燃料としてアルコール燃料を用い、アルコール燃料により樹脂が劣化したとしても、プラグと本体部との接合部での燃料漏れのリスクを低減することができ、本発明にかかるデリバリパイプ10はアルコール燃料を用いたエンジンにも接続可能である。
これらの効果により、接合強度が増大するとともに、耐久性、信頼性が向上する。
サンプル4は、本発明にかかる実施例であり、サンプル1、2、3は比較対象の例である。
図10(A)に示すように、沈み込み量が増大するに伴い、溶着強度が増大する。しかし、図10(B)に示すように、溶着強度の平均値に対する変動幅の比率(変動率=(最大値−最小値)/(2*平均値)により定義する。)が大きくなる傾向があることが理解できる。特に、最も溶着強度の高いサンプル2の溶着強度の変動率が大きい。
即ち、サンプル4については、第1の接合部に加え第2の接合部を備えた複雑な溶着方法を採用しているにも関わらず、溶着強度の変動幅の増加が抑制されており、再現性よく均一な溶着を実現していることが理解できる。
従って図10は、サンプル4の溶着強度の増大が単純な溶着面積の増大の効果ではないことを示す。
サンプル4の優れた特性は、上記のように2つの異なる溶着部に対して、超音波を印加するホーンとの距離と溶着部分の構成との組み合わせによって実現されたものである。
12 本体部
14 プラグ
16 インジェクターの接続口
18 固定具
20 パイプ
20A パイプ20の先端部
31 第1の接合部
32 第2の接合部
33 第1の空隙
34 第2の空隙
36 端面
40 樹脂(溶着カス)
121 第3の溶着部
122 第4の溶着部
123 保護壁
140 突出部
141 第1の溶着部
142 第2の溶着部
145 プラグ本体部(閉鎖部)
Claims (6)
- 一端が閉塞し他端が開口した筒状の本体部(12)と前記本体部の他端を閉塞する円形のプラグ(14)とで構成された樹脂製のデリバリパイプ(10)であって、
前記本体部(12)の胴部に複数のインジェクターの接続口(16)が設けられ、
前記本体部(12)と前記プラグ(14)とは、第1の接合部と第2の接合部で超音波溶着されていることを特徴とするデリバリパイプ。 - 前記プラグ(14)は、前記本体部(12)の内部に突出する溶着部材を備え、
前記溶着部材は、第1の溶着部と第2の溶着部とを備え、
前記第2の溶着部は前記第1の溶着部より前記本体部(12)側に位置し、
前記本体部(12)は、前記第1の接合部において前記第1の溶着部と接合する第3の溶着部と、前記第2の接合部において前記第2の溶着部と接合する第4の溶着部とを備えることを特徴とする請求項1記載のデリバリパイプ。 - 前記第3の溶着部はエッジ部を有し、前記第1の溶着部の平坦面と接合され、
前記第2の溶着部はエッジ部を有し、前記第4の溶着部の平坦面と接合される
ことを特徴とする請求項2記載のデリバリパイプ。 - 前記本体部12は、前記第3の溶着部に対向し、前記第4の溶着部に連結する保護壁を備え、
前記保護壁は、前記第2の溶着部より内側に位置する
ことを特徴とする請求項2又は3記載のデリバリパイプ。 - 燃料タンクとの間にパルセーションダンパーが設けられていないことを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか1項記載のデリバリパイプ。 - 高圧エンジンに接続されることを特徴とする
請求項1乃至5のいずれか1項記載のデリバリパイプ。
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