本開示に係る圧縮機は、第一部材および当該第一部材に固定される第二部材を備え、前記第一部材および前記第二部材は鉄または鉄合金である鉄系材料で構成されているとともに、前記第一部材を構成する鉄系材料は、前記第二部材を構成する鉄系材料よりも炭素含有量が多いものであり、前記第二部材は、その固定面において、レーザ加工により形成され、前記第一部材の被固定面に対して突出する凸部を有し、前記第一部材は、前記被固定面において、前記凸部に密着して嵌合する凹部を有する構成である。
前記構成によれば、第二部材の固定面にレーザ加工による凸部が形成されるとともに、第一部材の被固定面に凹部が形成され、凸部は凹部に密着した状態で嵌合している。このような凸部および凹部は、レーザ加工により実質的に1工程で容易に形成することができるとともに、凸部および凹部が密着して嵌合した状態は十分に安定しているため、第一部材に対して第二部材を良好に固定することができる。このような固定構造によれば、焼き嵌め等によらずに圧縮機が備える第一部材および第二部材を良好に固定することができるとともに、焼き嵌め等に比べて固定領域の増大を小さくすることもできる。それゆえ、圧縮機において、良好な品質保持性を実現できるとともに小型化を妨げる恐れも有効に回避することが可能になる。
前記構成の圧縮機においては、前記第二部材における前記凸部の突出方向とは反対側に位置する面を凸部対向面としたときに、前記第二部材における前記凸部対向面には、前記固定面における前記凸部の位置から見て当該第二部材本体を介して対向する位置に、レーザ照射痕が形成されている構成であってもよい。
前記構成によれば、第二部材における凸部とレーザ照射痕とは、位置的に対向する関係にある。それゆえ、第二部材の外面からレーザを照射することにより、第二部材の内面(固定面)に対して容易に凸部を形成することができるとともに、第一部材の被固定面に対しても凹部を容易に形成することができる。
また、前記構成の圧縮機においては、固定子および回転子から少なくとも構成される電動要素、および、当該電動要素により駆動される圧縮要素を備え、前記圧縮要素は、軸部であるクランクシャフトを備え、前記第一部材が前記クランクシャフトであり、前記第二部材が当該クランクシャフトに固定されるバランスウェイト、または、当該クランクシャフトに固定される前記回転子の支持部である構成であってもよい。
前記構成によれば、圧縮機が備えるクランクシャフトは鋳鉄製のものが多く、クランクシャフトに固定されるバランスウェイトまたは回転子の支持部(例えば、アウターロータ型の回転子ではフレームに設けられる回転子軸孔部が挙げられ、インナーロータ型の回転子では、当該回転子の下部でクランクシャフトの外周面に接する部位が挙げられる)は鋼鉄製のものが多い。鋳鉄は鋼鉄よりも炭素含有量が多い。それゆえ、バランスウェイトまたは回転子の支持部の外面からレーザを照射することで、これらの内面に凸部を容易に形成することができるとともに、クランクシャフトに凹部を容易に形成することができる。
また、前記構成の圧縮機においては、前記クランクシャフトの回転数は60rps以上である構成であってもよい。
前記構成によれば、クランクシャフトの回転数が60rps以上であれば、回転子に大きな遠心力が作用することになり、また、この高速運転の状態からクランクシャフトが急停止すれば、回転子に大きなトルクが生じやすくなる。これに対して、前記構成の圧縮機では、高速運転により回転子に大きな遠心力が作用する場合、または、回転子が急停止することにより大きなトルクが生じる場合であっても、クランクシャフトに回転子が強固に固定(保持)されるので、回転子がクランクシャフトの固定位置からずれるような事態を防止することができる。それゆえ、圧縮機の耐久性の低下を有効に抑制することが可能となり良好な信頼性を実現することができる。
本開示に係る冷凍・冷蔵装置は、前記構成の圧縮機と、放熱器と、減圧装置と、吸熱器とを含み、これらを配管によって環状に連結した冷媒回路を備える構成であればよい。
前記構成によれば、圧縮機は、小型化を損なうことなく良好な品質保持性を実現するものである。それゆえ、冷凍・冷蔵装置の信頼性を向上できるとともに、圧縮機の小型化を可能とするため貯蔵空間を広く確保することができる。
また、本開示に係る圧縮機の製造方法は、圧縮機が備える第一部材および第二部材を固定する際に、前記第一部材は、鉄または鉄合金である鉄系材料で構成されるとともに、前記第二部材は、当該第一部材を構成する鉄系材料よりも炭素含有量が少ない鉄系材料で構成され、前記第一部材の被固定面に対して前記第二部材の固定面を当接し、前記第二部材の固定面の法線方向もしくは当該法線方向から傾斜した方向に位置する、当該第二部材の外面から当該固定面に向かってレーザを照射することにより、当該第二部材の前記固定面に、前記第一部材の前記被固定面に向かって突出する凸部を形成するとともに、前記第一部材の前記被固定面には、前記凸部の形成に伴って凹部を形成する構成であればよい。
前記構成によれば、第二部材において固定面の反対側に位置する外面からレーザを照射するにより、当該第二部材の内面である固定面から第一部材の外面である被固定面に対して凸部が打ち込まれるように形成される。これに伴って第一部材の被固定面には凸部に対応する形状の凹部が形成される。これにより、第一部材の被固定面は第二部材の固定面から圧迫されるので、第二部材を第一部材に対して良好に固定することができる。
また、前記構成によれば、レーザ照射により部分的に凸部を形成するだけで強固な固定状態(接合状態)を実現することができる。それゆえ、焼き嵌め等に比べて固定領域の増大を小さくすることができる。そのため、圧縮機の大型化を回避して小型化を促進することが可能になる。また、焼き嵌め等に比べて、大型で特別な製造設備(昇温炉および乾燥炉等)が不要になるため、製造設備の大型化または複雑化を回避することもできる。
さらに、前記構成によれば、固定(接合)したい箇所に対して局所的にレーザを照射するだけでよいので、第一部材および第二部材に与えられる熱量を抑制することが可能になる。これにより、第一部材または第二部材において熱による影響が生じることを有効に抑制することができる。それゆえ、第一部材と第二部材とが固定される部位(固定部)の品質をより一層良好なものとすることができる。
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
[圧縮機の構成]
まず、本開示の実施の形態1に係る密閉型冷媒圧縮機の代表的な構成例について、図1を参照して具体的に説明する。図1は、本開示の実施の形態1に係る密閉型冷媒圧縮機100A(以下、圧縮機100Aと略す場合がある)の構成の一例を示す模式的断面図である。
図1に示すように、圧縮機100Aは、密閉容器102内に冷媒ガス181として、例えばR600aを充填するとともに、底部には、潤滑油180として鉱油を貯留している。また、密閉容器102内には、圧縮機本体108が収容されており、この圧縮機本体108はサスペンションスプリング190により弾性的に支持されている。また、圧縮機本体108は電動要素104および圧縮要素106を備えている。
電動要素104は、固定子150および回転子152から少なくとも構成される。圧縮要素106は、電動要素104によって駆動される往復式の構成であり、クランクシャフト120、シリンダブロック130、ピストン140、連結手段142等を備えている。クランクシャフト120は、回転子152を圧入固定した主軸124と、この主軸124に対して偏心して形成された偏心軸122と、主軸124および偏心軸122とをつなぐフランジ128とから少なくとも構成される。
なお、図1に示すように、クランクシャフト120のうち偏心軸122は圧縮機100Aの上側に位置し、主軸124は圧縮機100Aの下側に位置する。それゆえ、クランクシャフト120の位置を説明する場合にも、この上下の位置関係(方向)を利用する。例えば、偏心軸122の上端は密閉容器102の内側上面に向かっており、偏心軸122の下端は主軸124につながっている。主軸124の上端は偏心軸122につながっており、主軸124の下端は密閉容器102の内側下面に向かっており、主軸124の下端部は、潤滑油180に浸漬している。
クランクシャフト120の最上端すなわち偏心軸122の上端には、バランスウェイト171が固定されている。バランスウェイト171は、クランクシャフト120における荷重のアンバランスを緩和するために設けられる。また、クランクシャフト120の下方すなわち主軸124の下方には、給油機構125が設けられており、給油機構125は、潤滑油180に浸漬する主軸124の下端から偏心軸122の上端まで潤滑油180を供給する。
クランクシャフト120の主軸124の外周面には、摺動面126および非摺動面127が含まれる。本開示においては、「摺動面」とは、摺動部を構成する複数の摺動部材の外周面または内周面であって、他方の内周面または外周面と摺動可能に接する面のことを意味する。「非摺動面」とは、摺動面とは異なり、他方の内周面または外周面に接することのない面である。本実施の形態1では、非摺動面127は、主軸124の外径を摺動面126よりも小さくした(外径を細くした、摺動面126から凹んだ、あるいは、中抜きで形成した)構成である。
シリンダブロック130は、本実施の形態1では、例えば、鋳鉄で構成され、略円筒形の圧縮室133を形成するとともに、クランクシャフト120の主軸124を軸支する軸受134を備えている。軸受134の内周面135は、主軸124の外周面すなわち摺動面に摺動可能に接している。したがって、軸受内周面135も摺動面となっている。
主軸124が軸受134で軸支されている状態では、当該主軸124の非摺動面127は、軸受134の上端および下端の間に位置している。それゆえ、非摺動面127は、軸受134の上端および下端から露出しておらず、軸受134の上端および下端はいずれも摺動面126に接している。なお、主軸124の摺動面126は、このように外周面の一部を構成してもよいし、当該主軸124の外周面全面を構成してもよい。
圧縮室133は、シリンダブロック130の円筒状のボアにピストン140が往復可能に挿入されることで形成される。連結手段142は、例えばアルミ鋳造品で構成され、偏心軸122を軸支するとともに、ピストン140に連結されている。したがって、偏心軸122とピストン140とは連結手段142により連結されている。
電動要素104は、本実施の形態1ではアウターロータ型であり、回転子152は、固定子150と同軸で、当該固定子150の周りを囲むように回転可能に配置される。固定子150は、コア160と、当該コア160に巻き回されたコイル162と、コア160の上端および下端に設けられる絶縁部材164とを備えている。
コア160の中心にはクランク挿入孔151が設けられており、クランクシャフト120を軸支する軸受134の外周に配置される。コア160は軸受134に対してボルト191により固定されてもよいし、クランク挿入孔151が軸受134の外周面に固定されてもよい。
回転子152は、円盤状のフレーム153と、このフレーム153の内周端部155に配置される永久磁石154とを備える。フレーム153の中心部には、円筒状の回転子軸孔部156が設けられており、この回転子軸孔部156にクランクシャフト120の主軸124が挿入されて固定される。したがって、回転子軸孔部156は、クランクシャフト120に回転子152を固定するための支持部ということができる。
なお、本実施の形態1では、密閉容器102内において、電動要素104が下側に位置し圧縮要素106が上側に位置するが、本開示に係る圧縮機100Aの構成はこれに限定されない。すなわち、本開示には、密閉容器内において、電動要素が上側に位置し圧縮要素が下側に位置する構成の圧縮機も含まれる(この点は、後述する実施の形態2または3等においても同様である)。
このような構成の圧縮機100Aにおいては、まず、図示しない商用電源から供給される電力が電動要素104に供給されるので、電動要素104の回転子152を回転させる。回転子152はクランクシャフト120を回転させ、偏心軸122の偏心運動が連結手段142を介してピストン140に伝達することにより、当該ピストン140を往復運動させるように駆動する。ピストン140の往復運動により密閉容器102内に導かれた冷媒ガス181を圧縮室133内に吸入して圧縮する。
なお、圧縮機100Aの具体的な駆動方法は特に限定されない。例えば、圧縮機100Aは単純なオンオフ制御で駆動されてもよいが、複数の運転周波数でインバータ駆動されてもよい。つまり、本実施の形態1に係る圧縮機100Aは、複数の回転数で電動要素104を回転駆動可能とするようにインバータ回路を備えてもよい。
[クランクシャフトと回転子との固定]
本実施の形態1においては、前記の通り、クランクシャフト120の主軸124に回転子152のフレーム153(より具体的には、フレーム153に設けられる回転子軸孔部156)が固定されている。図2に示すように、主軸124と回転子軸孔部156とが固定されている部位を固定部200Aとすれば、この固定部200Aには、回転子軸孔部156の内周面に凸部211が形成されているとともに、主軸124の外周面(摺動面126)には、この凸部211に密着して嵌合する凹部221が形成されている。さらに、回転子軸孔部156の外周面には、凸部211に対向する位置(回転子軸孔部156の本体を介して凸部211の反対側となる位置)にレーザ照射痕212が形成されている。
このような固定部200Aの形成方法について説明すると、まず、クランクシャフト120の主軸124に対して、回転子軸孔部156を挿入する。この挿入に際しては、軸受134の下端から軸方向下方側に隙間を有する(後述する隙間230(図4に図示)参照)ように、主軸124を回転子軸孔部156に軽圧入する。ここでいう「軽圧入」とは、主軸124の外径(直径)が回転子軸孔部156の軸孔内径よりも大きいことから、主軸124の挿入により回転子軸孔部156が若干変形した状態を意味する。
主軸124が軽圧入された状態で回転子軸孔部156の外周側から主軸124に向かってレーザを照射する。このときのレーザ照射方向は、図2では、"LASER DIRECTION"の矢印で示す方向であり、主軸124の軸方向(一点鎖線)に対して垂直となる方向である。なお、レーザ照射方向は軸方向に垂直でなくてもよく、略垂直または軸方向に交差する方向であってもよい。
これにより回転子軸孔部156の外周面にはレーザ照射痕212が形成されるが、このレーザ照射痕212から見て、レーザ照射方向に位置する回転子軸孔部156の内周面には、主軸124に向かって突出する凸部211が形成される。また、主軸124の外周面(摺動面126)には、凸部211に密着して嵌合するように、凸部211の形状に応じた凹部221が形成される。この凸部211および凹部221の嵌合状態すなわち固定部200Aの形成により、主軸124の外周面が回転子軸孔部156により圧迫されるために、主軸124と回転子軸孔部156とが実質的に接合される。これにより、回転子152はクランクシャフト120に対して安定的に固定される。
ここで、本実施の形態1では、クランクシャフト120は、炭素含有量が0.3%以上の鉄合金である鋳鉄で構成されており、回転子152が備えるフレーム153は炭素含有量が0.3%未満の鉄合金である鋼鉄で構成されている。したがって、フレーム153の一部である回転子軸孔部156の鋼鉄で構成されている。
なお、本実施の形態1では、回転子152はアウターロータ型であるが、この回転子152のフレーム153は、一般的には、鋼板をプレス加工する等により成型される。回転子軸孔部156は、前記の通り、フレーム153の中心部に設けられるが、フレーム153をプレス加工する際に、フレーム本体とともに回転子軸孔部156も一体的に成型されてもよいし、別に成型された回転子軸孔部156を成型済のフレーム153に後から取り付けてもよい。
クランクシャフト120およびフレーム153は、いずれも圧縮機100Aが備える部材であるが、固定される側の部材(被固定部材)であるクランクシャフト120を便宜上「第一部材210」と称し、固定する側の部材(固定部材または固定対象部材)である回転子軸孔部156を便宜上「第二部材220」と称する。これら第一部材210および第二部材220は、いずれも鉄または鉄合金である鉄系材料で構成されているが、第一部材210を構成する鉄系材料は、第二部材220を構成する鉄系材料よりも炭素含有量が多くなっている。
また、第一部材210に対して第二部材220が固定部200Aにより固定されることになるが、第一部材210において第二部材220が固定される面を「被固定面」と称し、第二部材220において第一部材210に対して固定される面を「固定面」と称することができる。本実施の形態1では、回転子軸孔部156の内周面が「固定面」であり、主軸124の外周面が「被固定面」である。さらに、第二部材220においてレーザが照射される面は「レーザ照射面」と称することができる。回転子軸孔部156では外周面がレーザ照射面である。
第一部材210に第二部材220を固定(接合)する際には、前記のように第二部材220のレーザ照射面(回転子軸孔部156の外周面)にレーザが照射される。これにより、レーザ照射面の反対面すなわち第二部材220の固定面(回転子軸孔部156の内周面)には、レーザ加工により形成され、第一部材210の被固定面(主軸124の外周面)に対して突出する凸部211が形成される。また、この凸部211の形成に伴って、第一部材210の被固定面には、凸部211に密着して嵌合する凹部221が形成される。この凸部211および凹部221は密接した状態で嵌合しているが、この嵌合状態は、前記の通り実質的に第一部材210および第二部材220を接合するように強固に固定することになる。
本開示に係る固定方法では、凸部211および凹部221を備える固定部200Aを形成するためには、第二部材220において凸部211の突出方向とは反対側となる方向からレーザを照射することになる。それゆえ、第二部材220には、図3に示すようにレーザ照射痕212aが形成される。例えば、本実施の形態1では、図3上図に示すように、回転子軸孔部156の外周面には、当該回転子軸孔部156の周面に沿って直線状のレーザ照射痕212aが形成されている。なお、図3上図は、図2に示す固定部200Aを回転子軸孔部156の外側から見た側面図である。
また、図3下図に示すように、回転子軸孔部156の周面には、3つのレーザ照射痕212a,212b,212cがそれぞれ略等間隔となるように形成されている。なお、図3下図は、図3上図において、固定部200Aにおいて直線状のレーザ照射痕212aが形成されている部位の横断面図(軸方向(縦方向)に直交する(横)方向の断面図)である。レーザ照射痕212a,212b,212cは、それぞれ同じ長さであり、例えば、図3下図に示すように、回転子軸孔部156の円周を120°毎に3つの領域に分けたときに、これらレーザ照射痕212a,212b,212cは、それぞれの領域内に収まるように形成されている。
図3に示す例では、第二部材220(回転子軸孔部156)におけるレーザ照射痕212a,212b,212cが形成される面(レーザ照射面、回転子軸孔部156の外周面)の反対面(固定面、回転子軸孔部156の内周面)には、前述したように、それぞれ直線状の凸部211が生じており、第一部材210(主軸124)の外周面(被固定面)には、直線状の凸部211に嵌合する直線状の凹部221が生じている。
なお、固定部200Aの構造すなわち凸部211が第一部材210の被固定面に突出している状態を基準とすれば、第二部材220におけるレーザ照射面は、凸部211の突出方向とは反対側に位置する面、すなわち「凸部対向面」と称することができる。本実施の形態1では、第二部材220が円筒状の回転子軸孔部156であるので、凸部211が形成される固定面(内周面)と凸部対向面(レーザ照射面)とは互いに平行な状態で対向している。しかしながら、固定面と凸部対向面(レーザ照射面)とは互いに平行でなくてもよく、少なくとも対向関係にあればよい。つまり、固定面に対して凸部対向面が傾斜した状態で対向してもよい(例えば、後述する実施の形態3参照)。
[固定部の構成]
本開示においては、レーザ照射痕212の具体的な形状、言い換えれば、固定部200Aを構成する凸部211および凹部221の具体的な形状は特に限定されない。例えば、図3に示す例では、レーザ照射痕212a〜212cは、円筒状の回転子軸孔部156の外周面に沿っており円筒の軸方向に直交する直線状である。したがって、凸部211も、円筒状の回転子軸孔部156の内周面に沿っており円筒の軸方向に直交する直線状であり、凹部221も、円柱状である主軸124の外周面に沿っており主軸124の軸方向に直交する直線状である。
これに対して、レーザ照射痕212(凸部211および凹部221)は、折れ線状(ジグザグ形状)、曲線状、スポット状(点状)であってもよい。また、レーザ照射痕212(凸部211および凹部221)は、直線状であっても、軸方向に直交するのではなく、直行しないように交差する方向に形成されてもよいし、軸方向に平行(上下方向)に形成されてもよい。
また、図3に示す例では、3つのレーザ照射痕212a,212b,212cが形成されているので、固定部200A(凸部211および凹部221)も3つ形成されている。しかしながら、レーザ照射痕212または固定部200A(凸部211および凹部221)の数はこれに限定されない。例えば、回転子軸孔部156(第二部材220)の外周面の全周に亘って1つの直線状のレーザ照射痕212(固定部200A)が形成されてもよいし、2つまたは4つ以上のレーザ照射痕212(固定部200A)が形成されてもよいし、スポット状のレーザ照射痕212(固定部200A)が全周に亘って複数形成されてもよい。
また、図3に示す例では、レーザ照射痕212a〜212cの形成位置は、回転子軸孔部156(第二部材220)の外周面において上下方向(軸方向)の中央部に沿った位置である。それゆえ凸部211の形成位置は内周面において上下方向の中央部に沿った位置になるが、レーザ照射痕212の形成位置(凸部211または固定部200Aの形成位置)はこれに限定されない。例えば、上下方向の上側に偏在してもよいし、下側に偏在してもよいし、中央部の位置または偏在した位置が混在してもよい。
このようにレーザ照射痕212すなわち固定部200Aの具体的な構成は特に限定されないものの、好ましい構成の一例としては、図3に示すように、3つ以上の同形状のレーザ照射痕212(固定部200A)を等間隔で形成することが挙げられる。このような構成では、複数のレーザ照射痕212が等間隔に形成されるため、クランクシャフト120を回転子152に固定するために良好な強度(あるいは良好な保持力)を実現することができる。また、レーザ照射により第二部材220である回転子軸孔部156に付与される熱量を分散することができるため、第二部材220が熱により変形する恐れを有効に抑制または回避することができる。そのため、良好な品質保持性を実現することができる。
また、圧縮機100Aを高速運転することにより回転子152に大きな遠心力が作用する場合、もしくは、回転子152が急停止することにより大きなトルクが生じた場合であっても、レーザ照射痕212すなわち固定部200Aが形成されること、好ましくはレーザ照射痕212が等間隔で形成されることにより、クランクシャフト120に回転子152が強固に固定(保持)される。それゆえ、回転子152がクランクシャフト120の固定位置からずれるような事態を防止することができる。それゆえ、圧縮機100Aの耐久性の低下を有効に抑制することが可能となり良好な信頼性を実現することができる。
ここで、圧縮機100Aの高速運転の条件は特に限定されないが、例えば、クランクシャフト120の回転数が60rps以上であることを、高速運転の基準とすることができる。クランクシャフト120の回転数が60rps以上であれば、前記の通り、回転子152に大きな遠心力が作用することになり、また、この高速運転の状態からクランクシャフト120が急停止すれば、回転子152に大きなトルクが生じやすくなる。
あるいは、レーザ照射痕212(固定部200A)の他の好ましい構成の一例としては、全周に亘って1本の直線状のレーザ照射痕212を形成する構成を挙げることができる。この構成では、第二部材220の形状に応じて直線的にレーザを照射するだけでよいので、レーザ照射のために特別なプログラムまたは治具等を用いなくても、第一部材210に第二部材220を固定することができる。それゆえ、生産性の向上を図ることができる。
あるいは、レーザ照射痕212(固定部200A)のさらに他の好ましい構成の一例としては、軸方向に平行(上下方向)なレーザ照射痕212を複数形成する構成を挙げることができる。この構成であれば、第二部材220のレーザ照射面に高い密度でレーザを照射できる(固定部200Aを構成する凸部211および凹部221の形成密度を高くすることができる)ため、第一部材210に対する第二部材220の固定強度を向上することが可能となる。
なお、図2においては、レーザ照射痕212は、第二部材220(回転子軸孔部156)の外周面から凹んだ(窪んだ)ものとして図示しているが、本開示においては、レーザ照射痕212は必ずしも凹んだものとして形成されるわけではない。レーザ照射痕212は、第二部材220の表面において、レーザ照射された位置で当該第二部材220を構成する鉄系材料が溶融した痕跡であればよい。
本開示に係る固定部200Aの代表的な例として、固定部200Aのレーザ顕微鏡写真を図4に示す。図4に示す固定部200Aは、クランクシャフト120の主軸124(第一部材210)に対して、回転子152の回転子軸孔部156(第二部材220)をレーザ照射することにより形成されたものである。この固定部200Aの周方向の形状は、約10mmの直線状であり、図3と同様に、120°の角度範囲内において等間隔で固定部200Aが3箇所形成されている。
図4に示す固定部200Aにおいては、第一部材210である主軸124は炭素含有量が0.3%以上の鋳鉄で構成され、第二部材220である回転子軸孔部156の炭素含有量が0.3%未満の鋼鉄で構成されている。第二部材220である回転子軸孔部156の厚さは0.95mmである。用いたレーザはファイバレーザであり、その出力は3000Wである。
この固定部200Aを軸方向(上下方向、縦方向)に沿って切断し、その切断面をレーザ顕微鏡により観察したところ、図4に示すように、第二部材220である回転子軸孔部156の内周面には、0.1mm程度の凸部211が形成されており、第一部材210である主軸124の外周面には、この凸部211に対応する凹部221が形成されている。なお、図4では、固定部200Aを構成する凸部211および凹部221は密着して嵌合しており、固定部200Aの上側では、第一部材210の外周面と第二部材220の内周面とは密着している。これに対して、固定部200Aの下側には隙間230が生じている。
前述したように、回転子軸孔部156の軸孔内径が主軸124の外径よりも小さく、回転子軸孔部156に対して主軸124を「軽圧入」した場合には、理論上では、主軸124の外周面と回転子軸孔部156の内周面との間には隙間230が生じない。ただし、主軸124と回転子軸孔部156の製造公差によっては、図4における固定部200Aの下側に示すように、数ミクロン程度の隙間230が生じる場合がある。このように第一部材210および第二部材220の間に隙間230が生じても、レーザ照射により固定部200Aが形成されていれば、これら部材を良好に固定することができる。
後述するように、本開示においては、第二部材220の外側の表面からレーザを照射することにより、第二部材220と第一部材210との接触面、すなわち、第二部材220の内側の表面に、前記のような固定部200Aが形成される。それゆえ、固定部200Aを構成する凸部211および凹部221のうち、少なくともレーザ照射対象である第二部材220の内側に形成される凸部211は、レーザ照射により直接的に生じる「レーザ照射変形部」と見なすことができる。また、レーザ照射の直接的な対象ではない第一部材210に形成される凹部221は、レーザ照射変形部である凸部211の形成に伴って間接的に形成される「間接的変形部」と見なすことができる。
したがって、レーザ照射変形部である凸部211の寸法(サイズ)を規定することで、間接的変形部である凹部221の寸法も規定することができる。凸部211の具体的な寸法は特に限定されず、レーザ照射対象である第二部材220の具体的構成、あるいは、照射されるレーザの種類、もしくは第二部材220に接する第一部材210の具体的な構成等の諸条件に応じて、その寸法は異なってくる。
例えば、第二部材220において、凸部211を形成する面すなわち第一部材210への固定面と、レーザ照射の対象となる面すなわちレーザ照射面とは、互いに対向する位置関係になるが、第二部材220における固定面とレーザ照射面との間隔は特に限定されない。本実施の形態1で説明するように、第二部材220が回転子軸孔部156であれば、その外周面がレーザ照射面であり、その内周面が固定面である。それゆえ、固定面とレーザ照射面との間隔は、回転子軸孔部156の厚さに一致する。
前記の通り、回転子軸孔部156の厚さは0.95mmであるが、固定面とレーザ照射面との間隔はこれに限定されず、諸条件にもよるが、例えば、0.5mm以上3mm以下の範囲内を挙げることができる。固定面とレーザ照射面との間隔がこのような好適な範囲内であれば、レーザ照射時の出力が少量でも凸部211を形成することが可能になる。これにより固定部200Aおよびその周辺の部位においてレーザ照射による熱の影響で変形等が生じる可能性を有効に抑制することができる。
これに対して、固定面とレーザ照射面との間隔(厚さ)が小さすぎると、凸部211が形成される前に、第一部材210と第二部材220とがレーザの熱により溶融してしまう恐れがある。固定面とレーザ照射面との間隔(厚さ)が大きすぎると、レーザ照射面にレーザを照射しても固定面に良好な凸部211が形成されない恐れがある。
第一部材210において第二部材220の固定対象となる面、すなわち、第二部材220の固定面と接する面を被固定面としたときに、第二部材220の固定面から第一部材210の被固定面に対する凸部211の突出量も特に限定されない。前記の通り、第一部材210が主軸124であり、主軸124の外周面が被固定面となり、第二部材220が回転子軸孔部156であるときには、凸部211が約0.1mm程度であれば十分な強度を実現することができる。突出量は、レーザ照射の諸条件により適宜設定することが可能であり、0.1mm程度に限定されない。
本開示においては、凸部211の寸法を評価する上では、凸部211の突出量よりも、凸部211の幅に対する突出量(高さ)の比を好適に用いることができる。凸部211の幅に対する突出量の比を「突出比」とすると、代表的な突出比としては、例えば、0.20〜0.55の範囲内を挙げることができ、好ましい範囲としては、例えば、0.23〜0.50の範囲内を挙げることができる。
突出比が0.20未満であれば、諸条件にもよるが、凸部211の幅に対する突出量(高さ)が小さすぎて、第一部材210および第二部材220を良好に固定できなくなる可能性がある。一方、突出比が0.55を超えると、諸条件にもよるがレーザの照射エネルギーを非常に強くする必要が生じ、凸部211の形成効率(すなわち第一部材210および第二部材220の固定作業の効率)が低下する可能性がある。また、諸条件にもよるが、各部材の形状または材質、第二部材220の厚さ(固定面とレーザ照射面との間隔)、レーザ照射条件等によっては、0.55を超える突出比の凸部211を形成できない場合がある。
[圧縮機の製造方法]
次に、前記固定部200Aを形成する工程を含む圧縮機100Aの製造方法について、代表的な一例を説明する。本開示に係る圧縮機の製造方法(以下、適宜、製造方法と略す)においては、圧縮機100Aが備える第一部材210および第二部材220を固定する際に、前記の通りレーザを用いて第二部材220に凸部211を形成する。また、第一部材210および第二部材220はいずれも、鉄または鉄合金である鉄系材料で構成されているが、第二部材220を構成する鉄系材料は、第一部材210を構成する鉄系材料よりも炭素含有量が少ないものである。
前記の通り、第二部材220において、第一部材210に対して固定対象となる面を固定面とし、第一部材210において第二部材220が固定される面を被固定面とする。本開示に係る製造方法では、まず、第一部材210の被固定面に対して第二部材220の固定面を当接する。そして、この状態で第二部材220の固定面に対向する外面(対向面)から当該固定面に向かってレーザを照射する。これにより、第二部材220の固定面に、第一部材210の被固定面に向かって突出する凸部211を形成するとともに、第一部材210の被固定面には、凸部211に密着して嵌合する凹部221を形成する。
このように、レーザ照射により第二部材220の固定面に凸部211を形成するということは、当該凸部211が第一部材210の被固定面に打ち込まれることになる。これに伴い、第一部材210の被固定面には凸部211の形状に応じた凹部221が形成される。それゆえ、第一部材210の被固定面は、第二部材220の固定面の凸部211により圧迫されることで接合される。その結果、第二部材220を第一部材210に良好に固定することができる。
本開示に係る製造方法で用いられるレーザ照射装置は特に限定されず、ガスレーザ、半導体レーザ、固体レーザ等の公知の種々のレーザ照射装置を用いることができる。代表的には、前述したようにファイバレーザを好適に用いることができる。ファイバレーザは固体レーザの一種であり、媒質に光ファイバを用いているため、エネルギー変換効率が高く、高出力化しやすく、集光点を小さくしやすく、ビーム品質が優れている等の利点を有する。
第二部材220に対してレーザを照射する際のレーザ照射条件は特に限定されない。例えば、レーザ出力は、5000W以下であればよく、3000W以下であると好ましい。また、レーザ照射角度は、図2に示す例では、第二部材220(回転子軸孔部156)のレーザ照射面(外周面)に対して垂直または略垂直であるが、照射角度はこれに限定されない。例えば、外周面の法線方向に対して所定の角度を設定し、傾斜した状態でレーザを照射してもよい。第二部材220のレーザ照射面に空間的な余裕がなくても、レーザ照射角度を適宜設定することで、固定面に凸部211が形成するようにレーザを照射することができる。
本開示に係る製造方法では、第一部材210および第二部材220の具体的構成は特に限定されない。本実施の形態1では、第一部材210がクランクシャフト120であり、第二部材220がクランクシャフト120に固定される回転子152の支持部すなわち回転子軸孔部156であるが、これに限定されず、後述する実施の形態2に例示するように、第二部材220は、クランクシャフト120に固定されるバランスウェイト171等であってもよい。
あるいは、圧縮機100Aが備えるチャンバー部が第一部材210であり、このチャンバー部の開口を閉止する蓋部材が第二部材220であってもよい。チャンバー部は、圧縮機100Aの動作時に圧縮された冷媒ガス181が脈動することを低減するための緩衝空間を形成する。このチャンバー部の開口は蓋部材により閉止されるが、このときボルトなどの締結部材を用いる。この締結部材に代えて蓋部材の外面(レーザ照射面)からレーザを照射することにより、蓋部材の当接面(固定面)に凸部211を形成することができ、これに伴いチャンバー部の開口の縁部(被固定面)に凹部221を形成することができる。
本実施の形態1のように第一部材210がクランクシャフト120の主軸124であり第二部材220が回転子152の回転子軸孔部156であれば、本開示に係る製造方法により、簡素な手法で回転子152をクランクシャフト120に対して強固に固定することができる。
回転子152の回転子軸孔部156を主軸124に固定する手法としては、一般的には、溶接、焼き嵌め、圧入等が用いられる。しかしながら、例えば、溶接による固定では、炭素を多く含む鋳鉄に対して溶接を行うと、当該鋳鉄が溶接時の熱により溶融状態となるため、その後に急冷すると白銑化しやすくなる。溶接部に白銑が生じると、当該溶接部と母材部との収縮に差が生じるため、大きな残留応力が発生する。さらに白銑は硬くもろいために割れが発生しやすくなる。それゆえ、主軸124が鋳鉄で構成されていれば、溶接により回転子軸孔部156を固定することは実質的に困難である。
また、焼き嵌めまたは圧入を用いるためには、回転子軸孔部156の軸方向の長さを大きくしたり厚さを大きくしたりする必要がある。回転子152のようなアウターロータ型であれば、インナーロータ型の回転子よりも慣性モーメントが大きくなる。そのため、主軸124に対する回転子152の保持力は相対的に強固にする必要がある。焼き嵌めまたは圧入により強固な保持力を確保するためには、前記の通り、回転子軸孔部156の軸方向の長さを大きくする(焼き嵌め領域または圧入領域を大きくする)か、あるいは、回転子軸孔部156そのものの強度をさらに向上するために、その厚さを大きくすることになる。その結果、回転子152の固定部位が嵩張るため、圧縮機100Aの小型化が阻害される恐れがある。
これに対して、本開示に係る製造方法では、回転子軸孔部156の外周面(レーザ照射面)からレーザを照射するにより、当該回転子軸孔部156の内周面(固定面)から主軸124の外周面(被固定面)に対して凸部211が打ち込まれるように形成される。これに伴って主軸124の外周面には凸部211に対応する形状の凹部221が形成されるので、固定部200Aにおいては、主軸124の外周面は回転子軸孔部156の内周面から圧迫される。これにより、回転子152をクランクシャフト120に対して良好に保持することができる。
また、本開示に係る製造方法では、レーザ照射により部分的に凸部211を形成するだけで強固な固定状態(接合状態)を実現することができる。それゆえ、焼き嵌めもしくは圧入に比べて、回転子軸孔部156の軸方向の長さを大きくしたり厚さを大きくしたりする必要がなくなる。そのため、圧縮機100Aの大型化を回避して小型化を促進することが可能になる。また、焼き嵌めに比較して、大型で特別な製造設備(昇温炉および乾燥炉等)が不要になるため、製造設備の大型化または複雑化を回避することもできる。
さらに、本開示に係る製造方法では、固定(接合)したい箇所に対して局所的にレーザを照射するだけでよいので、第一部材210および第二部材220に与えられる熱量を抑制することが可能になる。これにより、第一部材210または第二部材220において熱による影響が生じることを有効に抑制することができる。例えば、回転子152に設けられる絶縁部材164、フレーム153、あるいは回転子軸孔部156そのものが熱変形したり、主軸124の被固定面の周辺が熱変形したりする恐れを抑制または回避することができる。それゆえ、回転子152がクランクシャフト120に固定される部位の品質をより一層良好なものとすることができる。
また、本実施の形態1では、前記の通り、圧縮機100Aがインバータ駆動され、電動要素104が複数の回転数で駆動可能であってもよい構成である。それゆえ、圧縮機100Aにおいて、低回転数域から高回転数域まで信頼性の高い運転が可能になる。
例えば、低回転数運転においては、冷媒の圧縮時に発生するトルク変動により、クランクシャフト120と回転子152との間において回転方向に大きな力が作用する。本開示によれば、回転子軸孔部156と主軸124との間に前述した固定部200Aが形成されるので、回転子152がクランクシャフト120に強固に固定される。それゆえ、トルク変動が大きい低回転数運転においても、回転子152がクランクシャフト120に固定された位置からずれる恐れを有効に防止することができる。
また、高回転数運転においては、回転子152に大きな遠心力が作用する。本開示によれば、回転子軸孔部156と主軸124との間に前述した固定部200Aが形成されるので、回転子152がクランクシャフト120に強固に固定される。それゆえ、回転子152に大きな遠心力が作用しても、回転子152がクランクシャフト120に固定された位置からずれる恐れを有効に防止することができる。
その結果、本開示に係る圧縮機100Aにおいては、回転子152がクランクシャフト120に固定される部位の耐久性が飛躍的に向上するので、圧縮機100Aの信頼性をより一層高めることができる。
(実施の形態2)
前記実施の形態1に係る圧縮機100Aにおいては、第一部材210がクランクシャフト120の主軸124であり、第二部材220がアウターロータ型の回転子152の回転子軸孔部156(回転子152の固定支持部)であったが、本開示はこれに限定されない。本実施の形態2では、図5に示すように、第一部材210がクランクシャフト120のフランジ128であり、第二部材220がバランスウェイト172である例について説明する。
図5に示すように、本実施の形態2に係る圧縮機100Bは、バランスウェイト172以外は前記実施の形態1に係る圧縮機100A(図1参照)と実質的に同様の構成を有している。それゆえ、圧縮機100Bの具体的な構成および動作の説明は省略する。
圧縮機100Aでは、図1に示すように、バランスウェイト171はクランクシャフト120のうち偏心軸122の上端に固定されていた。これに対して、圧縮機100Bでは、バランスウェイト172は、クランクシャフト120のうちフランジ128の上面に固定されている。このように、クランクシャフト120における荷重のアンバランスを緩和するためには、バランスウェイト171,172の固定位置は特に限定されない(例えば、電動要素104に取り付けられてもよい)。
このフランジ128は、クランクシャフト120の主軸124と同様に炭素含有量が0.3%以上の鉄系材料で構成され、バランスウェイト172は、炭素含有量が0.3%未満の鉄系材料で構成される。それゆえ、前記実施の形態1で説明した圧縮機の製造方法を適用することができる。
具体的には、図6に示すように、フランジ128が第一部材210であり、バランスウェイト172が第二部材220である。図6に示す例では、バランスウェイト172はフランジ128の上面に固定される。それゆえ、フランジ128の上面が第一部材210の被固定面であり、バランスウェイト172の下面(第二面、裏面)が固定面であり、バランスウェイト172の上面(第一面、表面)がレーザ照射面(または凸部対向面)である。
そこで、図6に示すように、バランスウェイト172の上面(レーザ照射面)から図中矢印"LASER DIRECTION"の方向にレーザを照射する。図6では、レーザ照射方向は、クランクシャフト120の軸方向(図中一点鎖線)に平行な方向であり、バランスウェイト172の上面から見て法線方向(垂直方向)に相当する。なお、前記実施の形態1で説明したように、レーザ照射方向は特に限定されない。
これにより、バランスウェイト172の上面(レーザ照射面)にはレーザ照射痕214が形成されるとともに、バランスウェイト172の下面(固定面)には、フランジ128の上面(被固定面)に向かって突出する凸部213が形成される。つまり、第二部材220であるバランスウェイト172から第一部材210であるフランジ128に対して凸部213が打ち込まれるように形成される。これに伴って、フランジ128の上面には、凸部213に対応する形状の凹部223が形成される。その結果、凸部213およびこれに密着して嵌合する凹部223により構成される固定部200Bが形成される。
この固定部200Bでは、前記実施の形態1における固定部200Aと同様に、フランジ128がバランスウェイト172の凸部213により圧迫されることで固定(接合)される。それゆえ、バランスウェイト172はフランジ128に対して強固に固定されることになる。
なお、凸部213の形成位置すなわちレーザ照射痕214の形成位置は特に限定されない。図6に示す例では、バランスウェイト172の上面の中央部付近にレーザを照射しているが、周辺部であってもよいし、全体的に照射されてもよい。
また、バランスウェイト172の厚さは、本実施の形態2では1.6mmであるため、本実施の形態2において、第二部材220における固定面とレーザ照射面との間隔は1.6mmとなるが、もちろんこれに限定されない。諸条件にもよるが、固定面とレーザ照射面との間隔は、前述した0.5mm以上3mm以下の範囲内を好適な一例として挙げることができるので、バランスウェイト172の厚さもこの範囲内であればよい。
なお、これら以外の固定部200Bまたはレーザ照射痕214の具体的な構成は、前記実施の形態1で説明した固定部200Aまたはレーザ照射痕212の構成例と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
また、本実施の形態2に係る圧縮機100Bは、前記実施の形態1で説明した本開示に係る圧縮機の製造方法により製造することができる。それゆえ、本実施の形態2では、圧縮機の製造方法については、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態2のように第一部材210がクランクシャフト120のフランジ128であり第二部材220がバランスウェイト172であれば、本開示に係る製造方法により、簡素な手法でバランスウェイト172をフランジ128に対して強固に固定することができる。
クランクシャフト120における荷重のアンバランスを緩和する目的では、一般的には、前記実施の形態1に係る圧縮機100Aのように、バランスウェイト171は偏心軸122の先端(上端)に固定される(図1参照)。ただし、この構成では、圧縮要素106の高さ(上下方向の大きさ)はバランスウェイト171に影響を受ける。すなわち、バランスウェイト171の厚さが大きい場合には、クランクシャフト120を含む圧縮要素106の高さが大きくなる恐れがあり、圧縮機100Aにおける小型化または低背化に影響を及ぼす。
そこで、フランジ128の上面にバランスウェイト172を固定する場合、従来では、一般的には、リベットピン等の締結部材を用いたかしめ、あるいは、溶接が用いられる。
ただし、かしめによる固定では、リベットピン等の締結部材が別途必要になるので部品点数が増加する。また、フランジ128およびバランスウェイト172に対して、締結部材を挿入するための貫通孔を形成する必要がある。それゆえ、フランジ128およびバランスウェイト172の形状によっては、貫通孔の位置が制限されるため、固定位置の自由度が制限される。
また、溶接による固定では、前記実施の形態1で説明したように、炭素を多く含む鋳鉄を溶接すると白銑化が生じる。それゆえ、主軸124が鋳鉄で構成される場合と同様に、フランジ128も鋳鉄で構成されていれば、溶接によりバランスウェイト172を固定することは実質的に困難である。
これに対して、本開示に係る製造方法では、バランスウェイト172の上面(レーザ照射面)からレーザを照射するにより、当該バランスウェイト172の下面(固定面)からフランジ128の上面(被固定面)に対して凸部213が打ち込まれるように形成される。これに伴ってフランジ128の外周面には凸部213に対応する形状の凹部223が形成されるので、固定部200Bにおいては、フランジ128の上面はバランスウェイト172の下面から圧迫される。これにより、バランスウェイト172をクランクシャフト120に対して良好に固定することができる。
また、本開示に係る製造方法では、レーザ照射により部分的に凸部213を形成するだけで強固な固定状態(接合状態)を実現することができる。それゆえ、リベットピン等によるかしめに比べて、高い自由度でバランスウェイト172をフランジ128に固定することができる。そのため、図6に示すように、フランジ128の上面だけでなく、フランジ128の側面または下面等に固定することができる。これにより、圧縮要素106の高背化を抑制しつつ荷重のアンバランスを緩和することができる。それゆえ、圧縮機100Bの小型化を促進することが可能となる。
(実施の形態3)
前記実施の形態1に係る圧縮機100A、または、前記実施の形態2に係る圧縮機100Bは、いずれも電動要素104がアウターロータ型であったが、本開示はこれに限定されない。本実施の形態3では、図7に示すように、圧縮機100Cがインナーロータ型の電動要素105を備える構成である。
図7に示すように、本実施の形態3に係る圧縮機100Cは、電動要素105がインナーロータ型であること以外は前記実施の形態1に係る圧縮機100A(図1参照)と実質的に同様の構成を有している。それゆえ、圧縮機100Cの具体的な構成および動作の説明は省略する。
電動要素105は、図7に示すように、少なくとも固定子157および回転子158で構成されている。固定子157は、圧縮要素106が備えるシリンダブロック130の下方に、図示しないボルト等の締結具によって固定され、回転子158は、固定子157の内側で、当該固定子157と同軸上に配置されている。回転子158は、前記実施の形態1におけるアウターロータ型の回転子152と同様に、圧縮要素106が備えるクランクシャフト120の主軸124に固定されている。
具体的には、図8に示すように、主軸124と回転子158とが固定されている部位を固定部200Cとすれば、この固定部200Cには、回転子158の下側の内周面に凸部215が形成されているとともに、主軸124の外周面(摺動面126)には、この凸部215に密着して嵌合する凹部225が形成されている。さらに、回転子158の下面において主軸124に近接する位置にはレーザ照射痕216が形成されている。
それゆえ、本実施の形態3では、主軸124が第一部材210であり、回転子158の主軸124に当接する箇所が第二部材220である。また、主軸124の外周面が第一部材210の被固定面であり、回転子158の下側の内周面が固定面であり、回転子158の下面がレーザ照射面(または凸部対向面)である。さらには、回転子158の下部のうち主軸124の外周面に接する部位は、クランクシャフト120に固定される回転子158の支持部であるということができる。
そして、図8に示すように、回転子158の下面(レーザ照射面)において、主軸124に近接する位置からから図中矢印"LASER DIRECTION"に示すように、主軸124に向かって斜め方向にレーザを照射する。これにより、回転子158の下面にはレーザ照射痕216が形成され、回転子158の内周面には凸部215が形成され、主軸124の外周面には凹部225が形成される。
つまり、第二部材220である回転子158から第一部材210である主軸124に対して凸部215が打ち込まれるように形成される。これに伴って、主軸124の外周面には、凸部215に対応する形状の凹部225が形成される。その結果、凸部215およびこれに密着して嵌合する凹部225により構成される固定部200Cが形成される。この固定部200Cでは、前記実施の形態1における固定部200A、または、前記実施の形態2における固定部200Bと同様に、主軸124が回転子158の凸部215により圧迫されることで固定(接合)される。それゆえ、回転子158は主軸124に対して強固に固定されることになる。
前記実施の形態1では、第二部材220が円筒状の回転子軸孔部156であり、前記実施の形態2では、第二部材220が平板状のバランスウェイト172である。それゆえ、第二部材220におけるレーザ照射面すなわち凸部対向面は、凸部211が形成される固定面とは互いに平行な位置関係にある。
これに対して、本実施の形態3では、固定面である回転子158の内周面と、レーザ照射面すなわち凸部対向面である回転子158の下面とは、互いに垂直の位置関係にある。言い換えれば、凸部対向面(下面)は、固定面(内周面)に対して直角をなすように傾斜しているということができる。それゆえ、本開示においては、前記実施の形態1でも説明したように、固定面と凸部対向面(レーザ照射面)とは互いに平行でなく、一方の面が傾斜した状態で対向してもよい。言い換えれば、第二部材220の凸部対向面(レーザ照射面)は、当該第二部材220の固定面の法線方向もしくは当該法線方向から傾斜した方向に位置する外面であればよい。
なお、第二部材220において、固定面に凸部215が形成される位置と、レーザ照射面(凸部対向面)にレーザ照射痕216が形成される位置は、レーザ照射方向を基準として互いに対向する位置関係にある。言い換えれば、固定面における凸部215の位置を基準とすれば、レーザ照射面(凸部対向面)におけるレーザ照射痕216の位置は、凸部215の突出方向の反対側(レーザ照射方向の反対側)に投影した位置に相当する。
前記実施の形態1または前記実施の形態2では、前記の通り、固定面とレーザ照射面(凸部対向面)とが平行の位置関係にある。それゆえ、前記実施の形態1における凸部211に対するレーザ照射痕212の位置も、前記実施の形態2における凸部213に対するレーザ照射痕214の位置も、いずれも第二部材220の本体(母材)を挟んで対向する関係であることは図2または図6から明らかである。
一方、本実施の形態3では、固定面に対してレーザ照射面(凸部対向面)が「傾斜」する位置関係(言い換えれば、固定面を含む第一面とレーザ照射面を含む第二面とが交差する位置関係)にある。レーザ照射方向を基準とすれば対向の位置関係にあることは明確であるが、レーザ照射方向を基準とせずに構造上の位置関係を規定するには、他の基準が必要となる。そこで、本実施の形態3では、凸部対向面(下面)におけるレーザ照射痕216の位置は、固定面(内周面)における凸部215の位置を、当該凸部215の突出方向の反対側に投影した位置である、と規定する。
前記実施の形態1における凸部対向面のレーザ照射痕212の位置も、本実施の形態3と同様に、固定面における凸部211の位置を、当該凸部211の突出方向の反対側に投影した位置として規定することができる。また、前記実施の形態2における凸部対向面のレーザ照射痕214の位置も、固定面における凸部213の位置を、当該凸部213の突出方向の反対側に投影した位置として規定することができる。
なお、本実施の形態3における固定部200Cの作用効果、当該固定部200Cの形成方法(圧縮機の製造方法)の詳細並びにその作用効果等については、前記実施の形態1または2と同様であるため、その説明は省略する。
(実施の形態4)
本実施の形態4では、前記実施の形態1で説明した圧縮機100A、前記実施の形態2で説明した圧縮機100B、あるいは、前記実施の形態3で説明した圧縮機100Cを備える冷凍・冷蔵装置の一例について、図9を参照して具体的に説明する。
本開示に係る圧縮機100A〜100Cは、いずれも冷凍サイクルまたはこれと実質同等な構成を有する各種機器(冷凍・冷蔵装置)に広く好適に用いることができる。具体的には、例えば、冷蔵庫(家庭用冷蔵庫、業務用冷蔵庫)、製氷機、ショーケース、除湿器、ヒートポンプ式給湯機、ヒートポンプ式洗濯乾燥機、自動販売機、エアーコンディショナー、空気圧縮機等を挙げることができるが、特に限定されない。本実施の形態4では、本開示に係る圧縮機100A〜100Cの適用例として、図9に示す物品貯蔵装置を挙げて、冷凍・冷蔵装置の基本的な構成を説明する。
図9に示すように、本実施の形態4に係る冷凍・冷蔵装置は、本体301、区画壁304、および冷媒回路305等を備えている。本体301は、断熱性の箱体および扉体等により構成されており、箱体はその一面が開口した構成であり、扉体は箱体の開口を開閉する構成である。本体301の内部は、区画壁304により物品の貯蔵空間302と機械室303とに区画される。貯蔵空間302内には、図示しない送風機が設けられている。なお、本体301の内部は、貯蔵空間302および機械室303以外の空間等に区画されてもよい。
冷媒回路305は、貯蔵空間302内を冷却する構成であり、例えば、前記実施の形態1で説明した圧縮機100A、前記実施の形態2で説明した圧縮機100B、または、前記実施の形態3で説明した圧縮機100Cと、放熱器307と、減圧装置308と、吸熱器309とを備え、これらが環状に配管で接続された構成となっている。つまり、冷媒回路305は、本開示に係る圧縮機100A,100B,または100Cを用いた冷凍サイクルの一例である。
吸熱器309は、貯蔵空間302内に配置されている。吸熱器309の冷却熱は、図3の破線の矢印で示すように、図示しない送風機によって貯蔵空間302内を循環するように撹拌される。これにより貯蔵空間302内は冷却される。
このように、本実施の形態4に係る冷凍・冷蔵装置は、前記実施の形態1に係る圧縮機100A、前記実施の形態2に係る圧縮機100B、または、前記実施の形態3に係る圧縮機100Cを搭載している。これら圧縮機100A〜100Cにおいては、凸部211および凹部221から構成される固定部200A、凸部213および凹部223から構成される固定部200B、または、凸部215および凹部225から構成される固定部200Cにより、第一部材210に第二部材220が固定されている。
凸部211,213,215は、いずれも第二部材220における固定面において、レーザ加工により形成され、第一部材210の被固定面に対して突出するものであり、また、凹部221,223,225は、いずれも第一部材210の被固定面において、凸部211に密着して嵌合するものである。凸部211,213,215および凹部221,223,225は、レーザ加工により実質的に1工程で容易に形成することができるとともに、凸部211,213,215および凹部221,223,225が密着して嵌合した固定部200A〜200C状態は十分に安定しているため、第一部材210に対して第二部材220を良好に固定することができる。
このような固定構造によれば、焼き嵌め等によらずに圧縮機100A〜100Cが備える第一部材210および第二部材220を良好に固定することができるとともに、焼き嵌めに比べて固定領域の増大を小さくすることもできる。それゆえ、圧縮機100A〜100Cにおいて、良好な品質保持性を実現できるとともに小型化を妨げる恐れも有効に回避することが可能になる。
(実施の形態5)
前述した実施の形態1〜4では、いずれも圧縮機が備える第一部材に第二部材を固定する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。すなわち、本開示には、圧縮機分野に限定されずに、鉄系材料である第一部材に対して第二部材を接合する方法、すなわち、鉄系部材の接合方法も含まれる。
本開示に係る鉄系部材の接合方法は、鉄または鉄合金である鉄系材料で構成される第一部材に対して、当該第一部材を構成する鉄系材料よりも炭素含有量が少ない鉄系材料で構成される第二部材を接合する際に用いられる方法であればよい。鉄系材料の種類、第一部材および第二部材の種類、第一部材および第二部材の用途等は特に限定されない。
本開示に係る鉄系部材の接合方法では、第二部材の接合面(前記実施の形態1〜3では固定面)の反対側となる外面(前記実施の形態1〜3では、レーザ照射面または凸部対向面)から、第一部材の被接合面(前記実施の形態1〜3では被固定面)に向かってレーザを照射する。これにより、第二部材の接合面に、第一部材の被接合面に向かって突出する凸部が形成されるとともに、第一部材の被接合面には、凸部の形成に伴って凹部が形成される。それゆえ、凹部と凸部とは互いに密着した状態で嵌合する。
なお、第二部材の接合面の反対側となる外面(レーザ照射面または凸部対向面)は、前記実施の形態1または実施の形態3で説明した通り、第二部材の接合面(固定面)から見て反対側となる面(対向面)であればよく、接合面と外面との位置関係は必ずしも平行でなくてもよい。言い換えれば、第二部材において接合面に前述した凸部を形成可能とする位置にある外面を「レーザ照射面」として適宜選択することができる。それゆえ、第二部材の「レーザ照射面」は、接合面から見て法線方向にある外面(実施の形態1または2)であってもよいし、法線方向から傾斜した方向にある外面(実施の形態3)であってもよい。
したがって、第二部材においてレーザ照射面となる外面は、接合面の法線方向もしくは当該法線方向から傾斜した方向(傾斜方向)に位置していればよい。ここで、傾斜方向と法線方向とが成す角度(傾斜角度)θについては特に限定されず、例えば、法線方向を基準の0°としたときに、理論上0°超180°未満の範囲内であればよい(0°<θ<180°)。
好ましい傾斜角度θの一例としては、0°超90°以下の範囲内(0°<θ≦90°)を挙げることができる。傾斜角度θがこの範囲内であれば、接合面(固定面)と外面(レーザ照射面)との成す角度が直角または鋭角になるため、接合面と外面との間隔(固定面とレーザ照射面との間に位置する第二部材(母材)の厚さ)を相対的に小さくすることができる。
また、本開示に係る鉄系部材の接合方法においては、凸部および凹部の構成すなわち固定部の構成は特に限定されず、第一部材および第二部材の具体的構成も特に限定されず、レーザ照射条件等の諸条件も特に限定されない。これら構成または条件は、前述した実施の形態1〜3で説明した構成または条件を好適に用いることができる。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。