以下、図面を参照しながら、発光デバイス、発光方法、露光装置、露光方法及びデバイス製造方法の実施形態について説明する。以下では、電子ビームEBをウェハWに照射して当該ウェハWを露光する露光装置(つまり、電子ビーム露光装置)EXを用いて、発光デバイス、発光方法、露光装置、露光方法及びデバイス製造方法の実施形態を説明する。露光装置EXは、例えば、コンプリメンタリ・リソグラフィに用いられる。
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、露光装置EXを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。尚、Z軸方向は、露光装置EXが備える後述の複数の電子ビーム光学系8のそれぞれの光軸AXに平行な方向でもある。更に、Y軸方向は、Z軸に垂直な平面内で後述する露光時にウェハWが移動する走査方向である。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。
(1)露光装置EXの構造
(1−1)露光装置EXの全体構造
初めに、図1及び図2を参照しながら、本実施形態の露光装置EXの全体構造について説明する。図1は、本実施形態の露光装置EXの全体構造を示す断面図である。図2は、本実施形態の露光装置EXにおける制御系のブロック構造を示すブロック図である。
図1及び図2に示すように、露光装置EXは、ステージチャンバ1(但し、図2では不図示)と、ステージシステム2と、光学システム3と、制御装置4(但し、図1では不図示)とを備える。
ステージチャンバ1は、その内部に形成される露光室14を真空引き可能な真空チャンバである。尚、図1では、図面の簡略化のために、ステージチャンバ1のX軸方向の両端部の図示が省略されている。ステージチャンバ1は、図1に示すように、底壁11と、側壁12と、フレーム13とを備える。底壁11と側壁12とフレーム13とによって囲まれた空間が、露光室14となる。
底壁11は、床面F上に配置されている。底壁11は、例えば、XY平面に平行な壁状(或いは、板状)の部材である。底壁11は、ステージチャンバ1の底部を構成する部材である。
側壁12は、底壁11上に形成されている。側壁12は、例えば、底壁11の外縁に沿って底壁11を取り囲むように形成されている。側壁12は、例えば、XY平面に交差する筒状(例えば、円筒状又は角筒状)の部材である。
フレーム13は、側壁12上に形成されている。この場合、側壁12は、フレーム13を下方から支持している。フレーム13は、例えば、XY平面に平行な板状の部材である。フレーム13は、ステージチャンバ1の天井壁(つまり、上壁)を構成する部材である。フレーム13には、円形の(或いは、その他の形状の)開口131が形成されている。開口131内には、光学システム3(特に、光学システム3が備える筐体6)が配置されている。具体的には、筐体6は、筐体6の上端部に、他の部分よりも外側に突き出たフランジ部611を備えている。フランジ部611の下面は、光学システム3が上方から開口131に挿入された状態において、フレーム13の上面に接触する。その結果、フランジ部611は、フレーム13によって下方から支持される。つまり、光学システム3は、フランジ部611を介して、フレーム13によって支持される。尚、開口131の内周面と筐体6の外周面との間は、シール部材によってシールされていてもよい。
ステージシステム2は、ステージチャンバ1の内部の露光室14に配置される。ステージシステム2は、ステージチャンバ1の底壁11上に配置される。ステージシステム2は、図1及び図2に示すように、定盤21(但し、図2では不図示)と、ウェハステージ22(但し、図2では不図示)と、ステージ駆動系23(但し、図1では不図示)と、位置計測装置24(但し、図1では不図示)とを備える。
定盤21は、底壁11上に配置される。定盤21は、複数の防振装置25を介して底壁11によって下方から支持されている。
ウェハステージ22は、ウェハWを保持可能である。ウェハステージ22は、保持したウェハWをリリース可能である。ウェハWを保持するために、ウェハステージ22は、ウェハWを吸着可能な静電チャックを備えていてもよい。
ウェハステージ22は、定盤21上に配置される。ウェハステージ22は、重量キャンセル装置26を介して定盤21によって下方から支持されている。重量キャンセル装置26は、例えば、金属製のベローズ型空気バネ261と、板状のベーススライダ262とを備える。空気ばね261の上端は、ウェハステージ22の下面に接続されている。空気ばね261の下端は、ベーススライダ262に接続されている。ベーススライダ262には、空気ばね261内部の空気を定盤22上に噴出する不図示の軸受部が形成されている。加圧空気を噴出する軸受部と定盤22の上面との間における静圧(つまり、隙間内圧力)により、重量キャンセル装置26、ウェハステージ22及びウェハWの自重が支持されている。尚、ベーススライダ262は、例えば差動排気型の空気静圧軸受を介して定盤22上に非接触で支持される。
ウェハWは、例えば、半導体デバイスを製造するための半導体基板である。一例として、ウェハWは、電子線レジストが塗布された直径300mmの円形の半導体基板である。もちろん、ウェハWは、半導体基板に限らず、電子ビームEBの照射対象となり得る限りは、どのような基板であってもよい。
ステージ駆動系23は、制御装置4の制御下でウェハステージ22を移動させるための駆動系である。ステージ駆動系23は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿ってウェハステージ22を移動させる。例えば、ステージ駆動系23は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿って、所定のストローク(例えば、50mmのストローク)でウェハステージ22を移動させてもよい。ステージ駆動系23は、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に加えて又は代えて、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿ってウェハステージ22を移動させてもよい。この場合、ステージ駆動系23は、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方においてウェハステージ22が移動するストロークよりも短いストロークで、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿ってウェハステージ22を移動させてもよい。ステージ駆動系23は、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿ってウェハステージ22を微動させてもよい。ウェハステージ22を移動させるために、ステージ駆動系23は、モータ(例えば、ムービングマグネット型のモータ又は超音波モータ)を備えていてもよい。尚、ステージ駆動系23がモータを備える場合、モータからの磁束漏れに起因する磁場変動(特に、ウェハWの上方の空間における磁場変動)が電子ビームEBの位置決めに与える影響は、無視できるレベルである。
位置計測装置24は、ウェハステージ22の位置を計測するための計測装置である。具体的には、位置計測装置24は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれにおけるウェハステージ22の位置を計測可能である。位置計測装置24は、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方におけるウェハステージ22の位置に加えて又は代えて、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つにおけるウェハステージ22の位置を計測可能であってもよい。ウェハステージ22の位置を計測するために、位置計測装置24は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。位置計測装置24の計測結果は、制御装置4に出力される。
光学システム3は、ステージシステム2の上方(特に、ウェハステージ22の上方)に配置されている。光学システム3は、ステージシステム2がウェハWを保持している状態でウェハWに対向可能な位置に配置されている。光学システム3は、図1に示すように、複数の(例えば、45個の)電子ビーム装置5と、筐体6とを備える。
各電子ビーム装置5は、電子ビームEBを射出可能である。以下の説明では、各電子ビーム装置5は、複数の電子ビームEBを射出可能である例を用いて説明を進める。つまり、以下の説明では、各電子ビーム装置5が、複数の電子ビームEBを用いてウェハWを露光するマルチビーム型の電子ビーム装置である例を用いて説明を進める。電子ビーム装置5は、射出した複数の電子ビームEBをウェハWに照射可能である。
複数の電子ビームEBをウェハWに照射するために、電子ビーム装置5は、図1及び図2に示すように、電子ビーム生成装置7と、電子ビーム光学系8とを備える。電子ビーム生成装置7は、制御装置4の制御下で、複数の電子ビームEBを生成可能である。電子ビーム光学系8は、制御装置4の制御下で、電子ビーム生成装置7が生成した複数の電子ビームEBがウェハWに照射されるように、複数の電子ビームEBをウェハWに向けて射出する。尚、電子ビーム生成装置7及び電子ビーム光学系8のそれぞれの構造については、図3から図8を参照しながら後に詳述するため、ここでの説明を省略する。
筐体6は、ベースプレート61と、周壁部62と、クーリングプレート63とを備える。ベースプレート61は、例えば、XY平面に平行な板状の部材である。ベースプレート61は、筐体6の天井壁(つまり、上壁)を構成する部材である。尚、ベースプレート61は、その外縁に、上述したフランジ部611を備えている。周壁部62は、ベースプレート61の外縁に沿ってベースプレート61を取り囲むように形成されている。周壁部62の上端は、ベースプレート61の下面に接続されている。周壁部62は、例えば、XY平面に交差する円筒状(或いは、角筒状)の部材である。周壁部62は、筐体6の側壁を構成する部材である。クーリングプレート63は、周壁部62の下端に接続されている。クーリングプレート63は、筐体6の底壁を構成する部材である。ベースプレート61と周壁部62とクーリングプレート63とによって囲まれた空間は、複数の電子ビーム装置5(特に、複数の電子ビーム光学系8)が配置される真空室64となる。尚、クーリングプレート63は、冷却機能を有していてもよいし、有していなくてもよい。クーリングプレート63は、ウェハWに塗布された電子線レジストの表面からの反射電子がクーリングプレート63等の下面で反射することで周辺にドーズを加える現象であるフォギングを抑制する機能を有していてもよいし、有していなくてもよい。
ベースプレート61には、Z軸方向に沿ってベースプレート61を貫通する複数の貫通孔612が形成されている。複数の貫通孔612の数は、複数の電子ビーム装置5の数と同一である。複数の貫通孔612は、ベースプレート61の表面において、例えばマトリクス状に分布していてもよい。例えば、上述したように光学システム3が45個の電子ビーム装置5を備えている場合には、45個の貫通孔612が、ベースプレート61の表面において、7行×7列のマトリクスの4隅を除いた配列で分布していてもよい。複数の貫通孔612には、それぞれ、複数の電子ビーム装置5がそれぞれ備える複数の電子ビーム生成装置7が配置されている。この場合、貫通孔612と電子ビーム生成装置7との間が、シール部材によってシールされていてもよい。更に、ベースプレート61の下面には、複数の貫通孔612を取り囲むように、複数の電子ビーム装置5がそれぞれ備える複数の電子ビーム光学系8が配置されている。
クーリングプレート63には、Z軸方向に沿ってベースプレート61を貫通する複数の貫通孔631が形成されている。複数の貫通孔631の数は、複数の電子ビーム装置5の数と同一である。複数の貫通孔631は、クーリングプレート63の表面において、例えばマトリクス状に分布していてもよい。例えば、上述したように光学システム3が45個の電子ビーム装置5を備えている場合には、45個の貫通孔631が、クーリングプレート63の表面において、7行×7列のマトリクスの4隅を除いた配列で分布していてもよい。各電子ビーム装置5が射出した複数の電子ビームEBは、各電子ビーム装置5に対応する貫通孔612を通過する。つまり、各電子ビーム装置5は、各電子ビーム装置5に対応する貫通孔612を介して、複数の電子ビームEBをウェハWに照射する。このため、各貫通孔612は、各貫通孔612に対応する電子ビーム装置5が射出する複数の電子ビームEBが通過できる程度のサイズ(特に、径)を有している。
制御装置4は、露光装置EX全体の動作を制御する。例えば、制御装置4は、ウェハWが適切に露光されるように、位置計測装置24の計測結果に基づいてステージ駆動系23を制御してもよい。例えば、制御装置4は、ウェハWが適切に露光されるように、複数の電子ビーム装置5を制御してもよい。尚、図2に示す例では、露光装置EXは、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置4を備えているが、露光装置EXは、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置4に加えて、複数の電子ビーム装置5をそれぞれ制御する複数のサブ制御装置を備えていてもよい。この場合、複数のサブ制御装置は、制御装置4の制御下で、複数の電子ビーム装置5をそれぞれ制御してもよい。また、制御装置4が露光装置EXの外部に設けられていてもよい。この場合、制御装置4は、露光装置EXとネットワークを介して接続されていてもよい。
(1−2)電子ビーム生成装置7の構造
続いて、図3(a)及び図3(b)を参照しながら、電子ビーム生成装置7の構造について更に説明する。図3(a)は、電子ビーム生成装置7の第1の構造を示す断面図である。図3(b)は、電子ビーム生成装置7の第2の構造を示す断面図である。
図3(a)に示すように、電子ビーム生成装置7は、複数の発光デバイス71と、複数の投影レンズ72と、光電変換素子73とを備える。
複数の発光デバイス71は、不図示の1枚の基板(例えば、半導体基板)上に形成される。但し、複数の発光デバイス71の一部が形成される基板と、複数の発光デバイス71の他の一部が形成される基板とが別体であってもよい。複数の発光デバイス71は、基板上において、所定の配列パターンで配列されている。例えば、複数の発光デバイス71は、基板上において、2次元アレイ状に(或いは、1次元アレイ状に)配列されていてもよい。この場合、複数の発光デバイス71は、発光デバイスアレイと称してもよい。尚、発光デバイス71の数は任意であるが、一例として、電子ビーム生成装置7は、72000個の発光デバイス71を備えていてもよい。この場合、72000個の発光デバイス71は、基板上において、6000行×12列の2次元アレイ状に配列されていてもよい。
このような複数の発光デバイス71は、例えば、以下のように製造可能である。まず、エピタキシャル成長技術等を用いて、基板上に、発光デバイス71を構成する構造物(例えば、後述する量子井戸層711等の構造層)が形成される。その後、エッチング技術等を用いて、基板上に形成した構造物が複数の発光デバイス71の配列パターンに応じて選択的に除去される。この場合の構造物の除去は、各発光デバイス71を構成する構造体をメサ構造として残したり、構造物として一体化されている複数の発光デバイス71を分離したりするために行われる。
各発光デバイス71は、光ELを射出可能である。各発光デバイス71は、例えば、自発光型の発光デバイスである。この場合、各発光デバイス71は、自発光によって生じた光ELを、各発光デバイス71の外部に向けて(例えば、各発光デバイス71に対応する投影レンズ72に向けて)射出する。
複数の発光デバイス71の発光態様は、制御装置4の制御下で個別に制御可能である。例えば、制御装置4は、複数の発光デバイス71の状態を、光ELを射出している発光状態と光ELを射出していない非発光状態との間で個別に制御可能である。例えば、制御装置4は、複数の発光デバイス71がそれぞれ射出する複数の光ELの強度を個別に制御可能である。
LED(Light Emitting Diode)は、自発光型の発光デバイスの一例である。従って、各発光デバイス71は、LED(一例として、マイクロLED)を含んでいてもよい。但し、各発光デバイス71は、マイクロLEDに限らず、他の種類のLEDを含んでいてもよい。他の種類のLEDの一例として、有機LED及び高分子LEDがあげられる。
複数の発光デバイス71の発光態様は、制御装置4の制御下で個別に制御可能である。例えば、制御装置4は、複数の発光デバイス71の状態を、光ELを射出している発光状態と光ELを射出していない非発光状態との間で個別に制御可能である。例えば、制御装置4は、複数の発光デバイス71がそれぞれ射出する複数の光ELの強度を個別に制御可能である。
本実施形態では、各発光デバイス71は、射出する光ELの特性を制御可能であるという点で、既存のLEDとは異なる。以下、射出する光ELの特性を制御可能であるという点で既存のLEDとは異なる本実施形態の発光デバイス71の構造について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態の発光デバイス71の構造を示す断面図である。
図4に示すように、発光デバイス71は、量子井戸層(活性層)711と、クラッド層712と、クラッド層713と、反射層714と、反射層715と、回折層716とを備える。発光デバイス71は、発光デバイス71が光ELを外部に向けて射出する光射出面719から見て、回折層716、反射層715、クラッド層713、量子井戸層711、クラッド層712及び反射層714がこの順に積層された積層構造を有している。つまり、量子井戸層711、クラッド層712及び713、反射層714及び715、並びに、回折層716は、一体化されている。発光デバイス71は、量子井戸層711、クラッド層712及び713、反射層714及び715、並びに、回折層716が一体化されている構造体である。尚、発光デバイス71は、量子井戸層711、クラッド層712及び713、反射層714及び715、並びに、回折層716とは異なる層を更に備えていてもよい。
量子井戸層711は、クラッド層712及び713と比較して、バンドギャップが小さい半導体層(例えば、AlGaAs及びGaAsの少なくとも一方を含む半導体層)である。クラッド層712及び713のそれぞれは、量子井戸層711と比較して、バンドギャップが大きい半導体層(例えば、AlGaAs、AlGaInP又はInGaNを含む半導体層)である。クラッド層712及び713のうちの一方は、p型半導体層である。クラッド層712及び713のうちの他方は、n型半導体層である。
量子井戸層711は、電子の移動方向が束縛されたポテンシャルの井戸(つまり、量子井戸(QW:Ouantum Well))を形成可能な層である。つまり、発光デバイス71は、量子井戸を利用したダブルへテロ構造を有する発光デバイスである。量子井戸層711は、この量子井戸を形成するための層が複数積層された多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)を有する。但し、量子井戸層711は、量子井戸を形成するための層をただ一つ備える単一量子井戸構造を有していてもよい。
不図示の電極を介してクラッド層712とクラッド層713との間に電圧が印加されると、量子井戸層711層において電子と正孔とが再結合する。その結果、再結合に起因したエネルギーが光として放出される。つまり、量子井戸層711において光EL0が発生する。
反射層714及び715は、量子井戸層711を間に挟みこむように配置される。図4に示す例では、反射層714は、量子井戸層711から見て光射出面719とは反対側に配置されており、反射層715は、量子井戸層711から見て光射出面719側に配置されている。
反射層714には、量子井戸層711において発生した光EL0が、クラッド層712を介して入射する。反射層714は、反射層714に入射してきた光EL0の少なくとも一部を反射する。反射層715には、量子井戸層711において発生した光EL0が、クラッド層713を介して入射する。反射層715は、反射層715に入射してきた光ELの少なくとも一部を反射する。反射層714が反射した光EL0は、クラッド層712、量子井戸層711及びクラッド層713を介して、反射層715に入射する。このため、反射層714が反射した光EL0の少なくとも一部は、反射層715によって再度反射される。反射層715が反射した光EL0は、クラッド層713、量子井戸層711及びクラッド層712を介して、反射層714に入射する。このため、反射層715が反射した光EL0の少なくとも一部は、反射層714によって再度反射される。
このように、量子井戸層711において発生した光EL0は、反射層714及び715において繰り返し反射される。その結果、反射層714及び715において繰り返し反射された光EL0は、定在波を形成することになる。従って、反射層714及び715において繰り返し反射された光EL0は、反射層714及び715において繰り返し反射されていない光EL0(つまり、量子井戸層711において発生したばかりの光EL0)と比較して、共振した状態にあると言う点で異なる。つまり、反射層714及び715の間に位置する量子井戸層711並びにクラッド層712及び713の内部を進行する光EL0は、共振する。反射層714及び715は、反射層714と回折層716との間において(或いは、反射層714と光射出面719との間において)、光EL0を共振させる。
光EL0が共振した結果、反射層714及び715において繰り返し反射された光EL0は、反射層714及び715において繰り返し反射されていない光EL0と比較して、特定の波長範囲(以降、“共振波長範囲”と称する)の光成分が相対的に増幅された状態にあると言う点で異なる。反射層714及び715において繰り返し反射された光EL0は、反射層714及び715において繰り返し反射されていない光EL0と比較して、共振波長範囲以外の波長範囲の光成分の強度(例えば、平均値)に対する共振波長範囲の光成分の強度(例えば、ピーク値)の比率が高くなっていると言う点で異なる。つまり、反射層714及び715は、光EL0を共振させる共振器として機能することが可能である。反射層714及び715は、光EL0を共振させる共振器を構成する。
このような反射層714及び715の一例として、分布反射型の反射層(いわゆる、DBR(Distributed Brag Reflector)層)があげられる。DBR層は、屈折率の異なる複数の半導体層が積層された積層構造を有する。半導体層の特性(例えば、材料、厚み、屈折率及び積層数等)は、共振波長範囲に応じて適宜設定される。反射層714及び715の配置位置(特に、量子井戸層711に対する相対位置であり、典型的には距離)もまた、共振波長範囲に応じて適宜設定される。もちろん、反射層714及び715として、DBR層とは異なるタイプの反射層が用いられてもよい。
尚、共振波長範囲は、発光デバイス71が射出するべき光ELの波長(つまり、発光デバイス71が設計上射出するべきであると設定されている光ELの波長)に応じて設定されてもよい。例えば、共振波長範囲は、発光デバイス71が射出するべき光ELの波長を中心とする波長範囲として設定されてもよい。また、本実施形態における「波長範囲」は、一の波長から他の波長までの範囲を意味するものであるが、一の波長と他の波長とが異なっていてもよいし、一の波長と他の波長とが同一であってもよい。一の波長と他の波長とが同一である場合には、波長範囲は、実質的には、ある特定の波長を示すことになる。
共振した光EL0は、反射層715を介して回折層716に入射する。このため、反射層715の反射率は、100%未満(例えば、50%乃至60%)である。ここで、反射層715の反射率は、発光デバイス71が射出するべき光ELの波長に対する反射率であってもよい。尚、反射層715は、いわゆるハーフミラーを構成していてもよい。共振した光EL0が回折層716に入射した結果、回折層716に入射する光EL0の波長分布は、量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とは異なるものとなっている。このため、回折層716に入射する光EL0は、量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布を制御することで得られる光と等価である。従って、発光デバイス71は、実質的には、少なくとも反射層714及び715を用いて、量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布を制御しているとも言える。発光デバイス71は、実質的には、量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布を制御するための光学素子として、少なくとも反射層714及び715を含む光学素子を備えているとも言える。以降、回折層716に入射する光EL0を、“光EL1”と称し、回折層716に入射する前の光EL0(例えば、量子井戸層711において発生した光EL0)と区別する。
ここで、図5(a)及び図5(b)を参照しながら、回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布との違いについて説明する。図5(a)は、光EL1の波長に関するスペクトル分布を示すグラフである。図5(b)は、光EL0の波長に関するスペクトル分布を示すグラフである。
図5(a)及び図5(b)に示すように、光EL1は、光EL0と比較して、狭帯域化された光となっていてもよい。具体的には、光EL1は、光EL0と比較して、波長分布が狭帯域化された光となっていてもよい。この場合、反射層714及び715は、光EL0よりも狭帯域化された光ELを発光デバイス71が射出するように、光EL0を反射してもよい。反射層714及び715の特性(例えば、上述した半導体層の特性や、反射層714及び715の配置位置)は、光EL0よりも狭帯域化された光ELを発光デバイス71が射出する状態を実現可能な所望特性に設定されていてもよい。その結果、狭帯域化された(つまり、狭帯域化されるように波長分布が制御された)光EL1が回折層716に入射する。尚、ここで言う「狭帯域化」は、強度が所定値以上となる波長範囲が狭くなることを意味していてもよい。「狭帯域化」は、ピーク値と比較して強度が特定の割合の値(例えば、1/2や1/10の値等)となる波長範囲(いわゆる、スペクトル線幅)が狭くなることを意味していてもよい。また、「狭帯域化」は、95%エネルギー純度幅E95%が狭くなることを意味していてもよい。ここで、95%エネルギー純度幅E95%は、その幅内の強度分布の積分値がそのスペクトルの強度分布の全積分値に対して95%になるときの幅であるとすることができる。
図5(a)及び図5(b)に示すように、光EL1は、光EL0と比較して、スペクトル分布の半値幅が小さくなっていてもよい。この場合、反射層714及び715は、光EL0よりもスペクトル分布の半値幅が小さい光ELを発光デバイス71が射出するように、光EL0を反射してもよい。反射層714及び715の特性は、光EL0よりもスペクトル分布の半値幅が小さい光ELを発光デバイス71が射出する状態を実現可能な所望特性に設定されていてもよい。その結果、スペクトル分布の半値幅が小さくなった(つまり、スペクトル分布の半値幅が小さくなるように波長分布が制御された)光EL1が回折層716に入射する。尚、半値幅は、半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)であってもよいし、半値半幅(HWHM:Half Width at Half Maximum)であってもよい。尚、上述した「狭帯域化」は、半値幅が小さくなることを意味していてもよい。
図5(a)及び図5(b)に示すように、光EL1は、光EL0と比較して、強度のピーク値Ipが大きくなっていてもよい。つまり、光EL1の強度のピーク値Ip1は、光EL0の強度のピーク値Ip0よりも大きくなっていてもよい。この場合、反射層714及び715は、光EL0よりも強度のピーク値Ipが大きい光ELを発光デバイス71が射出するように、光EL0を反射してもよい。反射層714及び715の特性は、光EL0よりも強度のピーク値Ipが大きい光ELを発光デバイス71が射出する状態を実現可能な所望特性に設定されていてもよい。その結果、強度のピーク値Ipが大きくなった(つまり、強度のピーク値Ipが大きくなるように波長分布が制御された)光EL1が回折層716に入射する。尚、上述した「狭帯域化」は、強度のピーク値が大きくなることを意味していてもよい。また、強度がピーク値Ipとなる波長は、共振波長範囲に含まれる可能性が高い。特に、強度がピーク値Ipとなる波長は、共振波長範囲の中心波長λc又はその近傍の波長と一致する可能性が高い。このため、上述した「狭帯域化」は、強度がピーク値Ipとなる中心波長λcを中心とする波長範囲であって且つ強度が所定値以上となる若しくはピーク値と比較して強度が特定の割合の値となる波長範囲が狭くなることを意味していてもよい。
再び図4において、回折層716は、発光デバイス71から射出された光ELが伝搬する空間と発光デバイス71との界面に配置される。このため、発光デバイス71は、回折層716から発光デバイス71の外部の空間に向けて、光ELを射出する。このため、回折層716の表面(特に、投影レンズ72側を向いた下面)の少なくとも一部は、光ELが射出される光射出面719を構成する。回折層716の表面(特に、投影レンズ72側を向いた下面)は、光射出面719を含む。尚、図4に示す例では、光射出面719は、XY平面に平行な面を含んでいる。
回折層716は、回折層716に入射してきた光を回折させる。回折層716は、回折層716に入射してきた光を回折させることで、回折層716を通過する光を偏向する。このとき、回折層716を通過する光の偏向角度は、光の波長によって異なる。例えば、回折層716は、第1の波長の光に第1の偏向角度を付与し、第1の波長とは異なる第2の波長の光に第1の偏向角度とは異なる第2の偏向角度を付与してもよい。この場合、第1の波長の光と第2の波長の光とは異なる方向に進む。つまり、回折層716は、実質的には、異なる波長の光を分離可能である。なお、偏向角度は、入射光の進行方向に沿った軸に対する偏向された後の光の進行方向に沿った軸のなす角度とすることができる。
上述したように、回折層716には、反射層715を介して光EL1が入射してくる。このため、回折層716は、反射層715を介して回折層716に入射してくる光EL1を回折させる。従って、発光デバイス71からは、回折層716が回折させた光EL1が光ELとして射出される。尚、発光デバイス71がLEDである場合には、光射出面719の第1位置から光ELの一部として射出される第1光の位相と、光射出面719の第1位置とは異なる第2位置から光ELの他の一部として射出される第2光の位相とが互いに異なっていてもよい。別の言い方をすると、光射出面719の第1位置からの第1光と、光射出面719の第2位置からの第2光とが互いにインコヒーレントであってもよい。
本実施形態では特に、回折層716は、光EL1を回折させて、発光デバイス71からの光ELの配光特性(具体的には、配光分布)を制御する。つまり、回折層716は、光EL1の回折を利用して光ELの配光特性を制御するための光学素子として機能することが可能である。以下、図6(a)及び図6(b)を参照しながら、回折層716による光ELの配光特性の制御について説明する。図6(a)は、本実施形態の発光デバイス71が射出する光EL(つまり、回折層716によって配光特性が制御された光EL)を示す断面図である。図6(b)は、回折層716を備えていないという点で本実施形態の発光デバイス71とは異なる比較例の発光デバイスC71が射出する光EL(つまり、回折層716によって配光特性が制御されていない光EL)を示す断面図である。
図6(a)及び図6(b)に示すように、発光デバイス71が射出する光ELの広がり角θ1は、発光デバイスC71が射出する光ELの広がり角θ2よりも小さくてもよい。つまり、回折層716は、光EL1を回折させない場合と比較して光ELの広がり角θが小さくなるように、光EL1を回折させてもよい。回折層716は、光EL1を回折させない場合と比較して光ELの広がり角θが小さくなるように、光EL1を偏向してもよい。回折層716の特性は、光EL1を回折させない場合と比較して光ELの広がり角θが小さくなるように光EL1を回折させる(その結果、偏向する)ことができる所望特性に設定されていてもよい。尚、ここで言う「広がり角θ」は、発光デバイス71が射出する光ELの発散角を意味していてもよい。また、「広がり角θ」は、発光デバイス71が射出する光ELのうち、最大放射強度の光線が進行する軸と、放射強度が所定値となる光線が進行する軸とのなす角度の2倍の値とすることができる。尚、放射強度の所定値は、最大放射強度の1/2としてもよい。
特に、回折層716は、光ELの広がり角θを小さくして光ELの広がり角θが所望の角度となるように、光EL1を回折させてもよい。回折層716は、光ELの広がり角θを小さくして光ELの広がり角θが所望の角度となるように、光EL1を偏向してもよい。回折層716の特性は、光ELの広がり角θを小さくして光ELの広がり角θが所望の角度となるように光EL1を回折させる(その結果、偏向する)ことができる所望特性に設定されていてもよい。
上述したように、回折層716が光EL1を回折させて偏向する際には、回折層716を通過する光の偏向角度は、光の波長によって異なる。このため、回折層716は、ある特定の波長範囲(以降、“回折波長範囲”と称する)の光成分を回折させることで回折波長範囲の光成分の広がり角θを相対的に小さくしやすい一方で、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分を回折させても回折波長範囲以外の波長範囲の光成分の広がり角θを相対的に小さくしにくいという特性を有している場合がある。回折層716は、回折波長範囲の光成分を回折させることで回折波長範囲の光成分の広がり角θを所望の角度に設定しやすい一方で、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分を回折させても回折波長範囲以外の波長範囲の光成分の広がり角θを所望の角度に設定しにくい(例えば、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分を回折させても、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分の広がり角θが所望の角度とは異なる角度に設定されてしまう)という特性を有している場合がある。このため、回折層716に入射してくる光EL1の波長範囲と回折波長範囲との重複率が高くなればなるほど、回折層716による光ELの配光特性の制御効率が向上するはずである。つまり、回折層716に入射してくる光EL1の波長範囲と回折波長範囲との重複率が高くなればなるほど、回折層716は、光EL1を回折させて光ELの広がり角θを所望の角度に設定しやすくなるはずである。
ここで、回折層716に入射してくる光EL1は、反射層714及び715によって共振させられた光EL0(つまり、共振波長範囲の光成分が相対的に増幅された状態にある光EL0)である。この場合、回折層716による光ELの配光特性の制御効率を向上させる観点から、共振波長範囲は、回折波長範囲と少なくとも部分的に重複していてもよい。逆に、共振波長範囲と回折波長範囲とが少なくとも部分的に重複するように反射層714及び715並びに回折層716の特性が設定されれば、共振波長範囲と回折波長範囲とが重複していない場合と比較して、回折層716による光ELの配光特性の制御効率の向上が期待できる。この場合、反射層714及び715は、光ELの配光特性の制御効率が向上するように、光EL0を共振させているとも言える。
反射層714及び715が存在しなければ回折層716には量子井戸層711において発生した光EL0が入射することになるが、この場合、回折層EL0に入射する光EL0の波長範囲が回折波長範囲と少なくとも部分的に重複するとは限らない。このため、回折波長範囲の光成分の強度がそれほど高くない(例えば、回折波長範囲とは異なる波長範囲の光成分の強度が相対的に高い)光EL0が回折層716に入射する可能性がある。その結果、反射層714及び715が存在しなければ、回折層716による光ELの配光特性の制御効率が悪化する可能性がある。一方で、本実施形態では、共振波長範囲の光成分が相対的に増幅された状態にある光EL0(例えば、共振波長範囲以外の波長範囲の光成分の強度(例えば、平均値)に対する共振波長範囲の光成分の強度(例えば、ピーク値)の比率が高くない状態にある光EL0)が、回折層716に入射する。このため、共振波長範囲と回折波長範囲とが少なくとも部分的に重複していれば、回折波長範囲の光成分の強度がそれほど高くない(例えば、回折波長範囲とは異なる波長範囲の光成分の強度が相対的に高い)光EL0が回折層716に入射する可能性は低くなる。つまり、回折波長範囲の光成分の強度が相対的に高い(例えば、回折波長範囲とは異なる波長範囲の光成分の強度が相対的に低い)光EL0が回折層716に入射する可能性が高い。その結果、反射層714及び715が存在するがゆえに、回折層716による光ELの配光特性の制御効率が向上する。
尚、回折波長範囲は、共振波長範囲と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。回折波長範囲の中心波長は、共振波長範囲の中心波長と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。但し、回折波長範囲が共振波長範囲と一致している場合は、回折波長範囲が共振波長範囲と一致していない場合と比較して、回折層716による光ELの配光特性の制御効率がより一層向上する可能性が高い。回折波長範囲の中心波長が共振波長範囲の中心波長と一致している場合は、回折波長範囲の中心波長が共振波長範囲の中心波長と一致していない場合と比較して、回折層716による光ELの配光特性の制御効率がより一層向上する可能性が高い。
光ELの広がり角θが小さくなるほど、光ELの指向性は高くなる。このため、発光デバイス71が射出する光ELの指向性は、発光デバイスC71が射出する光ELの指向性よりも高くなるとも言える。従って、回折層716は、光EL1を回折させない場合と比較して光ELの指向性が高くなるように、光EL1を回折させてもよい。
本実施形態では、回折層716は、フォトニック結晶構造を利用して光EL1を回折させてもよい。つまり、回折層716は、フォトニック結晶構造を有する層であってもよい。フォトニック結晶構造は、内部に周期的な誘電率分布を有する(その結果、内部に周期的な屈折率分布もまた有する)微小構造体を含む構造である。以下、図7(a)及び図7(b)を参照しながら、回折層716の構造の一例について説明する。図7(a)は、回折層716の表面(特に、投影レンズ72側を向いた下面)を示す平面図である。図7(b)は、図7(a)に示す回折層716のVII−VII’断面を示す断面図である。
図7(a)及び図7(b)に示すように、回折層716は、基板7161を備える。基板7161は、XY平面に沿って広がる板状の部材である。基板7161は、例えば半導体基板である。基板7161には、複数の孔7162が形成されている。複数の孔7162は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれ(或いは、互いに直交する共にXY平面に含まれる2つの方向のそれぞれ)に沿って周期的に分布する。
複数の孔7162には、基板7161を構成する材料が含まれていない。このため、複数の孔7162を構成する領域(ここでは、空間)の誘電率は、基板7161の誘電率とは異なる。ここで、複数の孔7162を構成する領域(空間)の誘電率は、当該領域(空間)に媒質が存在する場合にはその媒質の誘電率とすることができ、当該領域(空間)が真空である場合には真空の誘電率とすることができる。このため、フォトニック結晶構造素子716では、第1の誘電率を有する領域部分(つまり、複数の孔7162)が、第1の誘電率とは異なる誘電率を有する領域部分(つまり、基板7161)内において周期的に分布していると言える。特に、複数の孔7162がX軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿って周期的に形成されている。このため、図7(a)に示す回折層716は、誘電率が2次元平面に沿って周期的に変化する2次元フォトニック結晶構造を有する層である。
複数の孔7162の誘電率と基板7161の誘電率が異なる場合には、複数の孔7162の屈折率(具体的には、光に対する屈折率)は、基板7161の屈折率とは異なる。このため、フォトニック結晶構造素子716では、第1の屈折率を有する領域部分(つまり、複数の孔7162)が、第1の屈折率とは異なる屈折率を有する領域部分(つまり、基板7161)内において周期的に分布しているとも言える。図7(a)に示す回折層716は、屈折率が2次元平面に沿って周期的に変化する2次元フォトニック結晶構造を有する層であるとも言える。
複数の孔7162には、基板7161とは異なる誘電率を有する材料(例えば、半導体材料)が埋め込まれていてもよい。この場合であっても、フォトニック結晶構造素子716では、第1の誘電率を有する領域部分(つまり、複数の孔7162にそれぞれ埋め込まれた複数の材料)が、第1の誘電率とは異なる誘電率を有する領域部分(つまり、基板7161)内において周期的に分布していると言える。
このようなフォトニック結晶構造を回折層716が有する場合には、回折層716の特性は、主としてフォトニック結晶構造の特性に依存する。このため、フォトニック結晶構造の特性は、回折層716が上述した特性(つまり、光ELの配光特性を制御するという観点から定まる特性)を有するように適切に設定されていてもよい。
フォトニック結晶構造の特性の一例として、複数の孔7162の配列ピッチP(つまり、複数の孔7162の周期)があげられる。配列ピッチPは、例えば、発光デバイス71が射出するべき光ELの波長に基づいて設定されていてもよい。例えば、配列ピッチPは、光ELの波長と同じであってもよい。例えば、配列ピッチPは、光ELの波長よりも大きくてもよい。例えば、配列ピッチPは、光ELの波長よりも所定長さだけ大きくてもよい。例えば、配列ピッチPは、光ELの波長よりも所定割合だけ大きくてもよい。例えば、配列ピッチPは、光ELの波長よりも小さくてもよい。例えば、配列ピッチPは、光ELの波長よりも所定長さだけ小さくてもよい。例えば、配列ピッチPは、光ELの波長よりも所定割合だけ小さくてもよい。いずれの場合においても、配列ピッチPは、回折層716による光ELの配光特性の制御効率を向上させることが可能な値に設定されてもよい。配列ピッチPは、回折波長範囲と共振波長範囲とを少なくとも部分的に重複させることが可能な値に設定されてもよい。
尚、図7に示すように複数の孔7162が第1方向(例えば、X方向)に沿って第1の配列ピッチで配列され、第1方向と交差する第2方向(例えば、Y方向)に沿って第2の配列ピッチで配列される場合、第1の配列ピッチと第2の配列ピッチとは同じピッチであってもよいし、異なるピッチであってもよい。一例として、第1の配列ピッチが第2の配列ピッチよりも大きなピッチであってもよい。
フォトニック結晶構造の特性の一例として、複数の孔7162の深さDがあげられる。深さDは、回折層716による光ELの配光特性の制御効率を向上させることが可能な値に設定されてもよい。尚、深さDが大きくなるほど、回折層716による光ELの配光特性の制御効率がより向上する可能性が高い。但し、深さDが過度に大きくなると、Z軸方向に沿って孔7162が回折層716(例えば、基板7161)を貫通してしまう可能性がある。その結果、回折層716に隣接する他の層(図4に示す例では、反射層715)が影響を受ける可能性がある。このため、深さDは、Z軸方向に沿って孔7162が回折層716を貫通しない程度の値に設定されていてもよい。もちろん、回折層716に隣接する他の層に対する影響が小さければ、Z軸方向に沿って孔7162が回折層716を貫通していてもよい。
尚、複数の孔7162の深さDは、発光デバイス71の発光面上の異なる位置で異なる深さであってもよく、発光デバイス71の発光面上の異なる位置で同じ深さであってもよい。
フォトニック結晶構造の特性の一例として、複数の孔7162の形状があげられる。複数の孔7162の形状は、回折層716による光ELの配光特性の制御効率を向上させることが可能な所望形状に設定されてもよい。図7(a)及び図7(b)に示す例では、複数の孔7162は、円柱形状の孔となっている。つまり、複数の孔7162は、XY平面に沿った断面の形状が円形となり且つZ軸を含む断面の形状が矩形の形状となる孔となっている。しかしながら、複数の孔7162は、図7(a)及び図7(b)に示す形状とは異なる形状を有していてもよい。例えば、複数の孔7162は、角柱形状の孔(つまり、XY平面に沿った断面の形状及びZ軸を含む断面の形状の双方が矩形の形状となる孔)であってもよい。例えば、複数の孔7162は、テーパ柱形状の孔であってもよい。複数の孔7162の形状は互いに同一であってもよい。
フォトニック結晶構造の特性の一例として、複数の孔7162の配列パターンがあげられる。複数の孔7162の配列パターンは、回折層716による光ELの配光特性の制御効率を向上させることが可能な所望パターンに設定されてもよい。図7(a)及び図7(b)に示す例では、複数の孔7162は、基板7161の表面上において(つまり、XY平面上において)、平面格子状の配列パターンで配列している。特に、図7(a)及び図7(b)に示す例では、複数の孔7162は、三角格子状(つまり、六角格子状)の配列パターンで配列している。しかしながら、複数の孔7162は、図7(a)及び図7(b)に示す配列パターンとは異なる配列パターンで配列していてもよい。例えば、複数の孔7162は、斜方格子状(つまり、二等辺三角格子状)の配列パターン、矩形格子状の配列パターン又は平行体格子状の配列パターンで配列していてもよい。
再び図3(a)において、複数の投影レンズ72は、複数の発光デバイス71にそれぞれ対応するように配置される光学レンズである。このため、複数の投影レンズ72の数は、複数の発光デバイス71の数と同じである。つまり、電子ビーム生成装置7が72000個の発光デバイス71を備えている場合には、電子ビーム生成装置7は、72000個の投影レンズ72を備えていてもよい。
但し、図3(b)に示すように、電子ビーム生成装置7は、2つ以上の発光デバイス71に対応する投影レンズ720を一つ又は複数備えていてもよい。図3(b)に示す例では、電子ビーム生成装置7が、電子ビーム生成装置7が備える複数の発光デバイス71にまとめて対応する一つの投影レンズ720を備えている。もちろん、電子ビーム生成装置7は、電子ビーム生成装置7が備える複数の発光デバイス71のうちの2つ以上の発光デバイス71から構成される第1群の発光デバイス群に対応する一つの投影レンズ720と、第2群の発光デバイス群に対応する一つの投影レンズ720と、・・・、第K群の発光デバイス群に対応する一つの投影レンズ720とを備えていてもよい。この場合、投影レンズ720の数は、複数の発光デバイス71の数よりも少なくてもよい。
図3(a)において、各投影レンズ72には、各投影レンズ72に対応する発光デバイス71が射出した光ELが入射する。各投影レンズ72は、例えばマイクロレンズであるが、その他の光学素子であってもよい。各投影レンズ72は、各投影レンズ72に対応する発光デバイス71が射出した光ELを、光電変換素子73(特に、光電変換素子73のうち各投影レンズ72に対応する特定領域)に照射する。各投影レンズ72は、各投影レンズ72に対応する発光デバイス71の発光面(例えば、光射出面719)の像を、光電変換素子73(特に、光電変換素子73のうち各投影レンズ72に対応する特定領域)に形成する。
図3(b)においては、投影レンズ720には、複数の発光デバイス71が射出した複数の光ELが入射する。投影レンズ720は、複数の発光デバイス71が射出した複数の光ELを、光電変換素子73(特に、光電変換素子73のうち各発光デバイス71に対応する特定領域)に照射する。投影レンズ720は、複数の発光デバイス71の発光面(例えば、光射出面719)の像を、光電変換素子73(特に、光電変換素子73のうち各発光デバイスに対応する特定領域)に形成する。
各投影レンズ72及び投影レンズ720のそれぞれは、縮小倍率を有する縮小光学系である。この場合、各投影レンズ72は、各投影レンズ72に対応する発光デバイス71の発光面の縮小像を、光電変換素子73に形成する。また、投影レンズ720は、複数の発光デバイス71の発光面の縮小像を光電変換素子73に形成する。各投影レンズ72および投影レンズ720のそれぞれは、等倍(つまり、±1倍)の倍率を有する等倍光学系であってもよい。各投影レンズ72及び投影レンズ720のそれぞれは、拡大倍率を有する拡大光学系であってもよい。
各投影レンズ72の発光デバイス71側の開口数は、各投影レンズ72の光電変換素子73側の開口数よりも小さい。但し、各投影レンズ72の発光デバイス71側の開口数は、各投影レンズ72の光電変換素子73側の開口数よりも大きくてもよい。各投影レンズ72の発光デバイス71側の開口数は、各投影レンズ72の光電変換素子73側の開口数と同じであってもよい。
同様に、投影レンズ720の発光デバイス71側の開口数は、投影レンズ720の光電変換素子73側の開口数よりも小さい。但し、投影レンズ720の発光デバイス71側の開口数は、投影レンズ720の光電変換素子73側の開口数よりも大きくてもよい。投影レンズ720の発光デバイス71側の開口数は、投影レンズ720の光電変換素子73側の開口数と同じであってもよい。
光電変換素子73は、複数の投影レンズ72又は投影レンズ720からの複数の光ELを、複数の電子ビームEBに変換可能である。光電変換素子73は、複数の投影レンズ72又は投影レンズ720からの複数の光ELから、複数の電子ビームEBを生成可能である。複数の光ELを複数の電子ビームEBに変換するために、光電変換素子73は、板部材731と、遮光膜732と、アルカリ光電層733とを備える。光電変換素子73は、板部材731と遮光膜732とアルカリ光電層733とが一体化された構造体である。
板部材731は、複数の光ELが通過可能な板状の部材である。板部材731は、例えば石英ガラスから構成される部材であるが、その他の材料から構成される部材であってもよい。
遮光膜732は、板部材731の下面に形成されている。遮光膜732は、複数の光ELを遮光可能である。遮光膜732は、例えば、クロム等の膜である。図3(a)の例では、遮光膜732には、複数の投影レンズ72にそれぞれ対応する複数のアパーチャ7321が形成されている。このため、複数のアパーチャ7321の数は、複数の投影レンズ72の数と同一である。つまり、電子ビーム生成装置7が72000個の投影レンズ72を備えている場合には、遮光膜732には、72000個のアパーチャ7321が形成されていてもよい。また、図3(b)の例では、遮光膜732には、複数の発光デバイス71にそれぞれ対応する複数のアパーチャ7321が形成されている。このため、複数のアパーチャ7321の数は、複数の発光デバイス71の数と同一である。つまり、電子ビーム生成装置7が72000個の発光デバイス71を備えている場合には、遮光膜732には、72000個のアパーチャ7321が形成されていてもよい。
図3(a)に戻って、各アパーチャ7321は、各アパーチャ7321に対応する投影レンズ72からの光ELが入射する位置に形成される。その結果、各投影レンズ72からの光ELは、板部材731を介して各投影レンズ72に対応するアパーチャ7321に入射する。つまり、各投影レンズ72は、各投影レンズ72からの光ELが各投影レンズ72に対応するアパーチャ7321に入射するように、光ELを光電変換素子73に投影する。この際、各投影レンズ72は、パーチャ7321よりも一回り大きい断面を有する光ELがアパーチャ7321に入射するように、光ELを光電変換素子73に投影する。
但し、図3(b)に示したように1つの投影レンズ720が2つ以上の発光デバイス71に対応している場合には、1つの投影レンズ720からの2つ以上の光ELが、2つ以上のアパーチャ7321にそれぞれ入射してもよい。或いは、1つの投影レンズ72又は720が1つの発光デバイス71に対応している場合であっても、1つの投影レンズ72又は720からの1つの光ELが、2つ以上のアパーチャ7321のそれぞれに入射してもよい。この場合、各投影レンズ72又は投影レンズ720は、各投影レンズ72又は投影レンズ720からの光ELが、2つ以上のアパーチャ7321にまたがるビームスポットを形成するように、光ELを光電変換素子73に投影してもよい。これらの場合、複数のアパーチャ7321の数は、複数の投影レンズ72又は投影レンズ720の数よりも多くてもよい。
アルカリ光電層733は、板部材731の下面のうちアパーチャ7321が形成されている部分(つまり、遮光膜732が形成されていない部分)及び遮光膜732の下面に形成されている。アルカリ光電層733は、2種類以上のアルカリ金属を用いたマルチアルカリフォトカソードである。マルチアルカリフォトカソードは、耐久性が高く、波長が500nm帯の緑色光で電子を発生可能であり、光電効果の量子効率QEが高い(例えば、10%程度)フォトカソードである。本実施形態では、アルカリ光電層733は、光ELによる光電効果によって電子ビームEBを生成する電子銃として用いられるため、変換効率が10[mA/W]程度になる高効率のものが用いられてもよい。アルカリ光電層733の電子放出面は、アルカリ光電層733の下面(つまり、板部材731に対向する側の面とは逆側の面)である。
各投影レンズ72又は投影レンズ720からの光ELは、板部材731及び各投影レンズ72に対応するアパーチャ7321を介して、アルカリ光電層733に入射する。このとき、各投影レンズ72は、各投影レンズ72に対応する発光デバイス71の発光面(例えば、光射出面719)の像を、板部材731及び各投影レンズ72に対応するアパーチャ7321を介して、アルカリ光電層733に形成する。その結果、光電効果(つまり、光電変換)により、アパーチャ7321の形状に対応する断面を有する電子ビームEBが、アルカリ光電層733から下方に向けて放出される。このとき、アルカリ光電層733が複数のアパーチャ7321を備え且つ複数のアパーチャ7321のそれぞれに光ELが照射されるため、アルカリ光電層733は、複数の電子ビームEBを放出可能である。つまり、アルカリ光電層733の電子放出面(実質的には、光電変換面)7330には、複数のアパーチャ7321にそれぞれ対応する位置において、複数の電子ビームEBをそれぞれ放出可能な複数の電子放出領域7331が設定される。電子放出面7330には、それぞれが電子ビーム源として機能可能な複数の電子放出領域7331が設定される。例えば、72000個のアパーチャ7321が形成されている場合には、72000個の電子放出領域7331が電子放出面7330に設定されていてもよい。この場合、第1のアパーチャ7321に対応する電子放出面7330上の第1の位置に第1の電子放出領域7331が設定され、第2のアパーチャ7321に対応する電子放出面7330上の第2の位置(つまり、第1の位置とは異なる(つまり、離れた)位置)に第2の電子放出領域7331が設定され、第3のアパーチャ7321に対応する電子放出面7330上の第2の位置(つまり、第1から第2の位置とは異なる(つまり、離れた)位置)に第3の電子放出領域7331が設定され、・・・、第K(但し、Kは、アパーチャ7321の数を示す)のアパーチャ7321に対応する電子放出面7330上の第Kの位置(つまり、第1から第K−1の位置とは異なる(つまり、離れた)位置)に第Kの電子放出領域7331が設定される。
各電子放出領域7331は、各電子放出領域7331に対応する発光デバイス71が光ELを射出している場合には、電子ビームEBを放出する。一方で、各電子放出領域7331は、各電子放出領域7331に対応する発光デバイス71が光ELを射出していない場合には、電子ビームEBを放出しない。従って、制御装置4が複数の発光デバイス71の発光状態を個別に制御すれば、複数の電子ビームEBのオン・オフ状態が個別に制御可能となる。
(1−3)電子ビーム光学系8の構造
続いて、図8を参照しながら、電子ビーム光学系8の構造について説明する。図8は、電子ビーム光学系8の構造を示す断面図である。
図8に示すように、電子ビーム光学系8は、筐体81と、加速器82と、集束レンズ83と、アパーチャ板84と、対物レンズ85と、反射電子検出装置86とを備える。
筐体81は、電磁場を遮蔽可能な円筒状の筐体(言い換えれば、カラムセル)である。筐体81の上端は、ベースプレート61の下面に接続されている。筐体81の内部空間811には、加速器82と、集束レンズ83と、アパーチャ板84と、対物レンズ85とが収容されている。但し、加速器82、集束レンズ83、アパーチャ板84及び対物レンズ85の少なくとも一部が筐体81の外部に配置されていてもよい。
筐体81の内部空間811には、上述した電子ビーム生成装置7の少なくとも一部(特に、アルカリ光電層733)が配置されている。更に、内部空間811は、電子ビーム生成装置7が放出する複数の電子ビームEBが伝搬する空間となる。このため、筐体81の内部空間811は、アルカリ光電層73及び電子ビームEBが大気圧環境下に暴露されないように、真空空間となっている。内部空間811の真空度は、筐体81の外部の真空室64の真空度よりも高くてもよい。内部空間811の真空引きと、真空室64の真空引きとが別々に行われてもよい。尚、ベースプレート61の貫通孔612に配置される電子ビーム生成装置7が、内部空間811と筐体81の外部空間(特に、ステージチャンバ1の外部空間であって、非真空空間)との真空隔壁としても用いられてもよい。
加速器82は、電子ビーム生成装置7が放出する複数の電子ビームEBを加速するための引き出し電極である。但し、複数の電子ビームEBを加速させなくてもよい場合には、電子ビーム光学系8は、加速器82を備えていなくてもよい。
集束レンズ83は、複数の電子ビームEBを収束させるための電子レンズである。集束レンズ83は、複数の電子ビームEBに電場を作用させる電場レンズであってもよいし、複数の電子ビームEBに磁場を作用させる磁場レンズであってもよい。
アパーチャ板84は、集束レンズ83によって収束した複数の電子ビームEBが通過可能な開口841が形成された絞り機構である。
対物レンズ85は、複数の電子ビームEBを所定の縮小倍率でウェハWの表面に結像可能な電子レンズである。その結果、複数の電子ビームEBは、筐体81の下方端に形成される射出口811を介して電子ビーム光学系8からウェハWに向けて射出される。電子ビーム光学系8が射出した複数の電子ビームEBは、クーリングプレート63の貫通孔631を介してウェハWに照射される。尚、対物レンズ85は、複数の電子ビームEBに電場を作用させる電場レンズであってもよいし、複数の電子ビームEBに磁場を作用させる磁場レンズであってもよい。対物レンズ85を含む電子ビーム光学系8の縮小倍率は任意であるが、例えば、1/200、1/120又は1/80であってもよい。
反射電子検出装置86は、筐体81の射出口811の下方において、複数の電子ビームEBの経路とは重複しない位置に配置される。図8に示す例では、反射電子検出装置86は、クーリングプレート63の貫通孔631の内部に配置されている。反射電子検出装置86は、pn接合やpin接合の半導体を使用した半導体形反射電子検出装置である。反射電子検出装置86は、例えば、ウェハWのアライメントを行うために、ウェハW上に形成されたアライメントマーク等から発生する反射電子を検出する。反射電子検出装置86の検出結果は、制御装置4に出力される。
尚、電子ビーム光学系8は、電子ビームEBが所定の光学面(例えば、電子ビームEBの光路に交差する光学面)上に形成する像の回転量(つまり、θZ方向の位置)、当該像の倍率、及び、結像位置に対応する焦点位置のいずれか一つを調整可能な調整器(例えば、電磁レンズ)を含んでいてもよい。電子ビーム光学系8は、例えば、電子ビームEBを偏向可能な偏向器を備えていてもよい。
本実施形態では、光学システム3は複数の電子ビーム装置5を備えている(つまり、複数の電子ビーム光学系8)を備えているため、電子ビームEBの照射が、複数の電子ビーム装置5によって並列して行われる。ここで、複数の電子ビーム装置5は、ウェハW上の複数のショット領域に1対1で対応している。但し、電子ビーム装置5の数は、ショット領域Sの数よりも多くてもよいし、少なくてもよい。各電子ビーム装置5は、複数の電子ビームEBを、矩形の(或いは、その他の形状の)照射領域内に照射可能である。このため、複数の電子ビーム装置5は、ウェハW上の複数のショット領域上にそれぞれ設定される複数の照射領域に対して、複数の電子ビームEBを同時に照射可能である。このような照射領域に対してウェハWを相対的に移動させながら、複数の電子ビーム装置5のそれぞれが電子ビームEBを照射すれば、ウェハW上の複数のショット領域が並列に露光される。その結果、露光装置EXは、相対的に高いスループットでウェハWを露光することができる。
一例として、上述したように、露光装置EXが、45個の電子ビーム装置5を備えており、且つ、直径が300mmのウェハWを露光対象としている場合には、電子ビーム装置5の光軸(つまり、電子ビーム光学系8の光軸AX)の配置間隔は、43mmであってもよい。この場合、1つの電子ビーム装置5が露光するショット領域は、最大で43mm×43mmの矩形領域となる。このため、上述したように、ウェハステージ22の移動ストロークが50mmもあれば、全てのショット領域を適切に露光可能となる。但し、電子ビーム装置5の数は、45個に限られず、ウェハWの直径及びウェハステージ22のストローク等に基づいて設定されてもよい。
(2)露光装置EXによる露光動作
続いて、露光装置EXによる露光動作(つまり、露光方法)について説明する。上述したように、露光装置EXは、コンプリメンタリ・リソグラフィに用いられる。このため、露光装置EXによるウェハWの露光に先立って、光を用いてウェハWを露光する露光装置(例えば、ArF光源、KrF光源若しくはその他の光源からの光を用いてウェハWを露光する液浸露光装置又はドライ露光装置)等によって、ウェハWにラインアンドスペースパターン(以降、“L/Sパターン”と称する)が形成される。その後、コータ等によって、L/Sパターンが形成されたウェハWに、電子線レジストが塗布される。露光装置EXは、このL/Sパターンが形成され且つ電子線レジストが塗布されたウェハWを露光対象としている。
ウェハWを露光するにあたって、まず、ステージチャンバ1内において、ウェハステージ22がウェハWをロードされる。ウェハステージ22は、ロードしたウェハWを保持(例えば、吸着)する。
その後、ウェハW上の複数のショット領域のそれぞれに対応してスクライブライン(つまり、ストリートライン)に形成された少なくとも1つのアライメントマークに対して、各ショット領域に対応する電子ビーム装置5が電子ビームEBを照射する。その後、反射電子検出装置86は、少なくとも1つのアライメントマークからの反射電子を検出する。その後、制御装置4は、反射電子検出装置86の検出結果(つまり、アライメントマークの検出結果)に基づいて、ウェハWの全点アライメント計測を行う。露光装置EXは、この全点アライメント計測の結果に基づいて、ウェハW上の複数のショット領域に対する複数の電子ビーム装置5による露光を開始する。つまり、露光装置EXは、ウェハW上に形成されたL/Sパターンにカットパターンを形成してL/Sパターンを切断するための露光を開始する。例えば、ウェハW上に形成されたX軸方向を周期方向とするL/Sパターンに対するカットパターンを形成する際に、露光装置EXは、制御装置4の制御下で、ウェハWをY軸方向に走査しつつ、複数の電子ビームEBの照射タイミングを制御する。尚、露光装置EXは、全点アライメント計測を行わずに、ウェハWの一部のショット領域に対応して形成されたアライメントマークの検出を行い、その結果に基づいて複数のショット領域の露光を開始してもよい。また、ステージチャンバ1の外部でアライメントマークの検出が行われてもよい。この場合、露光装置EXは、ステージチャンバ1の内部でアライメントマークの検出を行わなくてもよい。
ここで、電子ビーム生成装置7(特に、複数の発光デバイス71)を用いた露光シーケンスについて説明する。ここでは、ウェハW上のある領域内に互いに隣接してX軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿って並ぶように2次元配置された多数の画素領域(例えば、各アパーチャ7321を介した光ELに起因した電子ビームEBの照射領域と一致する領域であって、例えば10nm角の領域)の画素領域を仮想的に設定し、その全ての画素領域を露光対象とする露光シーケンスについて説明する。また、ここでは、電子ビーム生成装置7が72000個の発光デバイス71を備えており、且つ、X軸方向に所定ピッチで並ぶ6000個の発光デバイス71を含む発光デバイスアレイがY軸方向に所定ピッチで12個並ぶように72000個の発光デバイス71が配列されている例を用いて説明を進める。尚、以下では、12個の発光デバイスアレイを、それぞれ、発光デバイスアレイA、発光デバイスアレイB、・・・、及び、発光デバイスアレイLと称する。
発光デバイスアレイAに着目して説明すると、ウェハW上にX軸方向に並ぶある行(第k行とする)の連続した6000個の画素領域に対して発光デバイスアレイAを用いた露光が開始される。この露光開始の時点では、発光デバイスアレイAからの光ELに対応する電子ビームEBは、ホームポジションにあるものとする。そして、露光装置EXは、露光開始からウェハステージ22の+Y方向(或いは、−Y方向、以下同じ)の移動(つまり、スキャン)に追従させて、電子ビームEBをホームポジションから+Y方向に偏向しながら同一の6000個の画素領域に対する露光を続行する。その結果、例えばTa秒で6000個の画素領域の露光が完了したとすると、その間にウェハステージ22は、秒速Vナノメートルで、例えばTa×Vナノメートルだけ進んでいる。ここで、説明の簡略化のため、Ta×V=96ナノメートルであるものとする。
続いて、ウェハステージ22が秒速Vナノメートルで+Y方向に24ナノメートルだけ移動している間に、露光装置EXは、電子ビームEBをホームポジションに戻す。このとき、実際にウェハWに塗布された電子線レジストが感光しないように、電子ビーム装置5は、電子ビームEBを実際には照射しない。
このとき、露光開始時点からウェハステージ22は+Y方向に120ナノメートル進んでいるので、この時点で、第(k+12)行の連続した6000個の画素領域が、露光開始時点における第k行の6000個の画素領域と同じ位置にある。そこで、露光装置EXは、第k行の6000個の画素領域を露光する場合と同様に、第(k+12)行の連続した6000個の画素領域を露光する。
発光デバイスアレイAによる第k行の6000個の画素領域の露光と並行して、第(k+1)行から第(k+11)行のそれぞれの6000個の画素領域は、発光デバイスアレイBから発光デバイスアレイLによってそれぞれ露光される。デバイスアレイAによる第(k+12)行の6000個の画素領域の露光と並行して、第(k+13)行から第(k+23)行のそれぞれの6000個の画素領域は、発光デバイスアレイBから発光デバイスアレイLによってそれぞれ露光される。
このようにして、露光装置EXは、ウェハW上のX軸方向の長さ60マイクロメートルの幅の領域(つまり、6000個の画素領域が分布する領域)については、ウェハステージ22をY軸方向にスキャンさせながらの露光することができる。その後、露光装置EXは、ウェハステージ22を60マイクロメートルだけX軸方向にステップ移動させた後に同様のスキャン露光を行えば、露光済みの長さ60マイクロメートルの幅の領域に対してX軸方向に隣接する新たな長さ60マイクロメートルの幅の領域を露光することができる。従って、露光装置EXは、ウェハステージ22をY軸方向に移動させながら電子ビームEBを偏向することでウェハWを露光するスキャン露光と、ウェハステージ22をX軸方向に移動させるステッピングとを交互に繰り返すことで、ウェハW上の1つのショット領域の露光を、1つの電子ビーム装置5を用いて行うことができる。また、実際には、複数の電子ビーム装置5が並行してウェハW上の互いに異なるショット領域を露光しているため、露光装置EXは、ウェハW全面を露光することができる。
更にスキャン露光中には、露光装置EXは、複数の発光デバイス71のそれぞれの発光状態(つまり、オン・オフ)を適宜切り替えることで、L/Sパターンに対してカットパターンを形成するべき箇所に電子ビームEBを照射する一方で、L/Sパターンに対してカットパターンを形成しなくてもよい箇所に電子ビームEBを照射しない。つまり、複数の電子放出領域7331のうちカットパターンを形成するべき箇所に対応する電子放出領域7331が電子ビームEBを放出する一方で、複数の電子放出領域7331のうちカットパターンを形成しなくてもよい箇所に対応する電子放出領域7331が電子ビームEBを放出しない。その結果、露光装置EXは、ウェハW上に形成されたL/Sパターンに対してカットパターンを適切に形成することができる。つまり、露光装置EXは、ウェハW上に形成されたL/Sパターンを適切に切断することができる。
(3)露光装置EXの技術的効果
本実施形態では、露光装置EXは、複数の発光デバイス71のオン・オフを切り替えることで、複数の電子ビームEBのオン・オフを切り替えることができる。このため、露光装置EXは、ウェハW上に形成されたL/Sパターンに対してカットパターンを適切に形成することができる。例えば、露光装置EXは、ウェハW上に設定された複数のショット領域のそれぞれに形成されたL/Sパターンのうちの所望のライン上の所望の位置にカットパターンを適切に形成することができる。
更に、本実施形態では、露光装置EXは、ブランキング・アパーチャを用いて複数の電子ビームEBを偏向させることで複数の電子ビームEBのオン・オフを切り替えなくてもよい。このため、ブランキング・アパーチャにおける不要な電子(例えば、ウェハWの露光に寄与しない電子)の生成が抑制される。更に、チャージアップや磁化による複雑なディストーションの発生源となり得るブランキング・アパーチャが根本的になくなる。このため、露光装置EXから、ブランキング・アパーチャが存在することで生ずる長期的な不安定要素が排除される。
更に、本実施形態では、露光装置EXが備える発光デバイス71は、回折層716を用いて、射出する光ELの配光特性(特に、広がり角θ)を制御することができる。より具体的には、発光デバイス71は、広がり角θを制御しない場合と比較して広がり角θを小さくすることで、適切な広がり角θで光ELを射出することができる。このため、電子ビーム生成装置7は、光ELの配光特性が制御されない場合(具体的には、発光デバイス71が回折層716を備えていない場合)と比較して、複数の電子ビームEBを適切に(例えば、効率的に)生成することができる。以下、その理由について説明する。
まず、発光デバイス71が適切な広がり角θよりも大きい広がり角θで光ELを射出する場合には、発光デバイス71が適切な広がり角θで光ELを射出する場合と比較して、光電変換素子73の所望の領域(例えば、アパーチャ7321に対応する領域)に照射されなくなる光ELの割合が多くなる可能性が高い。なぜならば、発光デバイス71が適切な広がり角θよりも大きい広がり角θで光ELを射出する場合には、発光デバイス71が適切な広がり角θで光ELを射出する場合と比較して、投影レンズ72又は720が光ELを取りこむことができない方向に向けて射出される光ELの割合が多くなる可能性が高いからである。また、発光デバイス71と光電変換素子73との間に投影レンズ72又は720(或いは、投影光学系等の集光光学系)が介在しない場合には、発光デバイス71が適切な広がり角θよりも大きい広がり角θで光ELを射出すると、発光デバイス71が適切な広がり角θで光ELを射出する場合と比較して、光電変換素子73の所望の領域が存在しない方向に向けて射出される光ELの割合が多くなる可能性が高くなる。従って、発光デバイス71が適切な広がり角θよりも大きい広がり角θで光ELを射出する場合には、アルカリ光電層733に照射されなくなる光ELの割合が多くなる可能性が高くなる。つまり、発光デバイス71が適切な広がり角θよりも大きい広がり角θで光ELを射出する場合には、電子ビームEBの生成に寄与しない光ELの割合が多くなる可能性が高くなる。逆に言えば、発光デバイス71が適切な広がり角θで光ELを射出すれば、電子ビームEBの生成に寄与する光ELの割合が多くなるはずである。電子ビームEBの生成に寄与する光ELの割合が多くなればなるほど、電子ビームEBの生成効率が高くなる。このため、露光装置EXは、複数の電子ビームEBを適切に(例えば、効率的に)生成することができる。
加えて、上述したように、電子ビーム生成装置7では、発光デバイス71が射出した光ELは、投影レンズ72を介して光電変換素子73に入射する。このため、発光デバイス71から発散するように射出される光ELは、投影レンズ72を介して、光電変換素子73に向かって収束するように光電変換素子73に入射する。この場合、発光デバイス71は、光電変換素子73の位置において光ELのビームプロファイルが所望の特性を有するように、光ELを射出することが望まれる。例えば、発光デバイス71は、光電変換素子73の位置において光ELのビームレット形状が所望の形状(例えば、アパーチャ7321に対応する位置において強度がほぼ等しくなるトップハット型の形状)となるように、光ELを射出することが望まれる。このためには、投影レンズ72から光電変換素子73に向かう光ELの収束角(実質的には、投影レンズ72の光電変換素子73側の開口数)の制約を満たす必要がある。投影レンズ72の光電変換素子73側の開口数は、投影レンズ72の倍率及び投影レンズ72の発光デバイス71側の開口数に依存する。従って、投影レンズ72の光電変換素子73側の開口数及び投影レンズ72の倍率が決定された時点で、投影レンズ72の発光デバイス71側の開口数も一義的に決まる。この場合、発光デバイス71は、投影レンズ72の発光デバイス71側の開口数に応じた広がり角θで光ELを射出しなければ、上述したように電子ビームEBの生成に寄与しない光ELの割合が多くなる可能性が高くなる。このような状況において、本実施形態では、発光デバイス71から射出される光ELの広がり角θを制御可能である。このため、発光デバイス71は、投影レンズ72の発光デバイス71側の開口数に応じた広がり角θで光ELを射出することができる。つまり、発光デバイス71は、光電変換素子73の位置において光ELのビームプロファイルが所望の特性を有するように、光ELを射出することができる。その結果、露光装置EXは、複数の電子ビームEBを適切に(例えば、効率的に)生成することができる。
更に、本実施形態では、露光装置EXが備える発光デバイス71では、反射層714及び715を介して回折層716に入射する光EL1の波長分布が、量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とは異なる。具体的には、光EL1は、光EL0よりも狭帯域化された光となっている。その結果、発光デバイス71は、回折層716を介して、狭帯域化された光ELを射出することができる。このため、投影レンズ72及び光電変換素子73における色収差の影響が低減される。
加えて、光ELのエネルギーが波長に反比例することを考慮すれば、狭帯域化されていない光ELのエネルギーのばらつきと比較して、狭帯域化された光ELのエネルギーのばらつきが小さくなる。このため、このようなエネルギーのばらつきの小さい光ELから生成される電子ビームEBのエネルギーのばらつきもまた小さくなる。従って、露光装置EXは、エネルギーのばらつきの小さい(つまり、安定した)電子ビームEBを生成することができる。つまり、露光装置EXは、安定した電子ビームEBをウェハWに照射することで、ウェハWを適切に露光することができる。
加えて、上述したように、回折層716は、回折波長範囲の光成分を回折させることで回折波長範囲の光成分の広がり角θを所望の角度に設定しやすい一方で、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分を回折させても回折波長範囲以外の波長範囲の光成分の広がり角θを所望の角度に設定しにくい(例えば、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分を回折させても、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分の広がり角θが所望の角度とは異なる角度に設定されてしまう)という特性を有している場合がある。このため、仮に反射層714及び715を介することなく量子井戸層711において発生した光EL0が回折層716に入射すると、回折層716による光ELの配光特性の制御効率が悪化する可能性がある。一方で、本実施形態では、回折層716には、反射層714及び715を介して光EL1(つまり、共振波長範囲の光成分が相対的に増幅された状態にある光EL1)が入射してくる。このため、共振波長範囲と回折波長範囲とが少なくとも部分的に重複していれば、回折層716は、反射層715から入射してくる光EL1を適切に回折させて、発光デバイス71から射出される光ELの広がり角θを所望の角度に適切に設定することができる。つまり、反射層714及び715は、光ELの共振(つまり、狭帯域化)に寄与しつつも、回折層716による光ELの配光特性の制御効率の向上にも寄与している。従って、反射層714及び715と回折層716との双方を備える発光デバイス71を備える露光装置EXでは、回折層716を備える一方で反射層714及び715を備えない比較例の露光装置と比較して、回折層716による光ELの配光特性の制御効率がより一層向上する。このため、露光装置EXは、比較例の露光装置と比較して、回折層716に起因した上述した技術的効果をより適切に享受することができる。つまり、露光装置EXは、比較例の露光装置と比較して、複数の電子ビームEBをより一層適切に(例えば、より一層効率的に)生成することができる。
(4)変形例
続いて、発光デバイス71の変形例について説明する。
(4−1)第1変形例
はじめに、図9から図11を参照しながら、第1変形例の発光デバイス71aについて説明する。図9は、第1変形例の発光デバイス71aの構造を示す断面図である。図10は、図10及び図11のそれぞれは、第1変形例の発光デバイス71aの構造の他の例を示す断面図である。
第1変形例の発光デバイス71aは、上述した発光デバイス71と比較して、光EL1の回折を利用して光ELの配光特性を制御することに代えて、光EL1の屈折を利用して光ELの配光特性を制御するという点で異なっている。
光EL1の屈折を利用して光ELの配光特性を制御するために、発光デバイス71aは、図9に示すように、回折層716に代えてマイクロレンズ716aを備えているという点で異なっている。発光デバイス71aのその他の特徴は、発光デバイス71のその他の特徴と同一であってもよい。
マイクロレンズ716aは、発光デバイス71aから射出された光ELが伝搬する空間と発光デバイス71aとの界面に配置される。このため、発光デバイス71aは、マイクロレンズ716aから発光デバイス71aの外部の空間に向けて、光ELを射出する。このため、マイクロレンズ716aの表面(特に、投影レンズ72側を向いた下面)の少なくとも一部は、光ELが射出される光射出面719を構成する。マイクロレンズ716aの表面(特に、投影レンズ72側を向いた下面)は、光射出面719を含む。
マイクロレンズ716aは、隣接する反射層715からの光EL0が、空間(例えば、真空空間及び気体空間の少なくとも一方)を介さずにマイクロレンズ716aに入射するように配置される。尚、第1変形例では、マイクロレンズ716aに入射する光EL0を、“光EL1”と称し、マイクロレンズ716aに入射する前の光EL0(例えば、量子井戸層711において発生した光EL0)と区別する。この場合、例えば、マイクロレンズ716aは、隣接する反射層715との間に空間(例えば、真空空間及び気体空間の少なくとも一方)が介在しないように配置される。但し、図10に示すように、マイクロレンズ716aは、隣接する反射層715からの光EL1が、空間(例えば、真空空間及び気体空間の少なくとも一方)を介してマイクロレンズ716aに入射するように配置されていてもよい。この場合、例えば、マイクロレンズ716aは、隣接する反射層715との間に空間(例えば、真空空間及び気体空間の少なくとも一方)が介在するように配置されてもよい。
マイクロレンズ716aは、光EL1を屈折させて、発光デバイス71aからの光ELの配光特性を制御する。つまり、マイクロレンズ716aは、光EL1の屈折を利用して光ELの配光特性を制御するための光学素子として機能することが可能である。尚、第1変形例におけるマイクロレンズ716aによる配光特性の制御態様は、上述した回折層716による配光特性の制御態様と同様である。つまり、マイクロレンズ716aは、光EL1を屈折させない場合と比較して光ELの広がり角θが小さくなるように、光EL1を屈折させてもよい。マイクロレンズ716aは、光EL1を屈折させない場合と比較して光ELの広がり角θが小さくなることで所望の角度になるように、光EL1を屈折させてもよい。このため、マイクロレンズ716aによる配光特性の制御態様の詳細な説明は省略する。
発光デバイス71は、単一のマイクロレンズ716aを備えている。但し、図11に示すように、発光デバイス71aは、複数のマイクロレンズ716aを備えていてもよい。この場合、複数のマイクロレンズ716aが協働して、光ELの配光特性を制御する。尚、図11は、発光デバイス71aが2個のマイクロレンズ716aを備える例を示している。
このような第1変形例の発光デバイス71aを発光デバイス71に代えて備える露光装置EXもまた、上述した発光デバイス71を備える露光装置EXが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。また、第1変型例においては、光EL1が光EL0と比較して波長分布が狭帯域化された光となっているため、マイクロレンズ716aの色収差に起因する配光特性の制御の困難さが低減されるという効果も享受可能である。
尚、発光デバイス71aは、マイクロレンズ716aに加えて回折層716を備えていてもよい。この場合、発光デバイス71aは、光ELの配光特性をより適切に制御できる可能性がある。
(4−2)第2変形例
続いて、図12を参照しながら、第2変形例の発光デバイス71bについて説明する。図12は、第2変形例の発光デバイス71bの構造を示す断面図である。
第2変形例の発光デバイス71bは、上述した発光デバイス71と比較して、光EL1の回折を利用して光ELの配光特性を制御することに代えて、光EL1の反射を利用して光ELの配光特性を制御するという点で異なっている。
光EL1の反射を利用して光ELの配光特性を制御するために、発光デバイス71bは、図12に示すように、回折層716に代えて反射層716bを備えているという点で異なっている。発光デバイス71bのその他の特徴は、発光デバイス71のその他の特徴と同一であってもよい。但し、発光デバイス71bが回折層716を備えていないため、発光デバイス71bの光射出面719は、反射層715の表面(特に、投影レンズ72側を向いた下面)の少なくとも一部によって構成される。反射層715の表面(特に、投影レンズ72側を向いた下面)は、光射出面719を含む。或いは、光射出面719は、反射層715の表面に形成される不図示の他の層の少なくとも一部によって構成されてもよい。反射層715の表面に形成される不図示の他の層が、光射出面719を含んでいてもよい。
反射層716bは、量子井戸層711において発生した光EL0及び/又は反射層715が反射した光EL0を反射して、発光デバイス71bからの光ELの配光特性を制御する。つまり、反射層716bは、光EL0の反射を利用して光ELの配光特性を制御するための光学素子として機能することが可能である。尚、第2変形例における反射層716bによる配光特性の制御態様は、上述した回折層716による配光特性の制御態様と同様である。つまり、反射層716bは、光EL0を反射しない場合と比較して光ELの広がり角θが小さくなるように、光EL0を反射してもよい。反射層716bは、光EL0を反射しない場合と比較して光ELの広がり角θが小さくなることで所望の角度となるように、光EL0を反射してもよい。このため、反射層716bによる配光特性の制御態様の詳細な説明は省略する。
反射層716bは、光ELの広がり角θが小さくなる(更には、所望の角度となる)ように光EL0を反射可能な位置に配置されていてもよい。図12に示す例では、反射層716bは、量子井戸層711から見て光射出面719とは反対側に配置されている。もちろん、反射層716bは、図12に示す位置とは異なる位置に配置されていてもよい。
図12に示す例では、反射層716bが量子井戸層711から見て光射出面719とは反対側に配置されているため、反射層716bを、光EL0を反射して共振させるための上述した反射層714としても用いてもよい。つまり、反射層716bを、光EL0を反射して共振させるための光学素子(つまり、光ELを狭帯域化するための光学素子)と、光ELの配光特性を制御するための光学素子として兼用してもよい。このため、図12に示す例では、発光デバイス71bは、上述した反射層714を備えていない。もちろん、発光デバイス71bは、反射層716bとは別に反射層714を備えていてもよい。
反射層716bは、光EL0を反射可能である限りは、どのような材料から構成されていてもよい。例えば、反射層716bは、金属材料から構成されていてもよい。例えば、反射層716bは、反射層715(更には、上述した反射層714)と同様に、半導体材料から構成されていてもよい。
反射層716bは、光ELの広がり角θが小さくなる(更には、所望の角度となる)ように光EL0を反射可能な形状を有していてもよい。例えば、反射層716bの反射面は、平面を含んでいてもよい。例えば、反射層716bの反射面は、電子ビーム装置5の光軸(典型的には、電子ビーム光学系8の光軸AX)に直交する平面を含んでいてもよい。例えば、反射層716bの反射面は、電子ビーム装置5の光軸に対して傾斜した平面を含んでいてもよい。例えば、反射層716bの反射面は、電子ビーム装置5の光軸に平行な平面を含んでいてもよい。例えば、反射層716bの反射面は、曲面を含んでいてもよい。
このような第2変形例の発光デバイス71bを発光デバイス71に代えて備える露光装置EXもまた、上述した発光デバイス71を備える露光装置EXが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
尚、発光デバイス71bは、反射層716bに加えて、回折層716及びマイクロレンズ716aの少なくとも一方を備えていてもよい。この場合、発光デバイス71bは、光ELの配光特性をより適切に制御できる可能性がある。
(4−3)第3変形例
続いて、図13を参照しながら、第3変形例の発光デバイス71cについて説明する。図13は、第3変形例の発光デバイス71cの構造を示す断面図である。
図13に示すように、第3変形例の発光デバイス71cは、上述した発光デバイス71と比較して、反射層715を備えていなくてもよいという点で異なっている。発光デバイス71cのその他の特徴は、発光デバイス71のその他の特徴と同一であってもよい。
発光デバイス71cが反射層715を備えていない場合であっても、量子井戸層711において発生した光EL0が反射層714において反射されることに変わりはない。このため、反射層714は、反射層715と組み合わせられていない場合であっても、共振器として機能することが可能である。つまり、反射層714は、反射層715と組み合わせられていない場合であっても、光ELを狭帯域化することが可能である。このため、このような第3変形例の発光デバイス71cを発光デバイス71に代えて備える露光装置EXもまた、上述した発光デバイス71を備える露光装置EXが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
尚、第3変形例においても、第1又は第2変形例と同様に、発光デバイス71cは、回折層716に加えて又は代えて、マイクロレンズ716a及び反射層716bの少なくとも一方を備えていてもよい。
(4−4)第4変形例
続いて、図14を参照しながら、第4変形例の発光デバイス71dについて説明する。図14は、第4変形例の発光デバイス71dの構造を示す断面図である。
図14に示すように、第4変形例の発光デバイス71dは、上述した発光デバイス71と同様に、量子井戸層711と、クラッド層712と、反射層714とを備える。発光デバイス71dは特に、上述した発光デバイス71と比較して、クラッド層713に代えて、クラッド層713dを備えているという点で異なっている。更に、発光デバイス71dは、上述した発光デバイス71と比較して、反射層715及び回折層716を備えていなくてもよいという点で異なっている。発光デバイス71dは、発光デバイス71dが光ELを射出する光射出面719から見て、クラッド層713d、量子井戸層711、クラッド層712及び反射層714がこの順に積層された積層構造を有している。発光デバイス71dのその他の特徴は、発光デバイス71のその他の特徴と同一であってもよい。但し、発光デバイス71dが反射層715及び回折層716を備えていないため、発光デバイス71dの光射出面719は、クラッド層713dの表面(特に、投影レンズ72側を向いた下面)の少なくとも一部によって構成される。クラッド層713dは、光射出面719を含む。
クラッド層713dは、クラッド層713と比較して、光射出面719を表面に含む射出部7131dを備えているという点で異なっている。射出部7131dは、クラッド層713dの一部である。射出部7131dは、クラッド層713dのうち発光デバイス71dから射出された光ELが伝搬する空間と発光デバイス71dとの界面に面する部分である。
射出部7131dは、上述した回折部716と同様の機能を有している。つまり、射出部7131dは、射出部7131dに入射してくる光EL0を回折させて、発光デバイス71dからの光ELの配光特性を制御可能である。尚、第4変形例における射出部7131dによる配光特性の制御態様は、上述した回折層716による配光特性の制御態様と同様である。つまり、射出部7131dは、光EL0を回折させない場合と比較して光ELの広がり角θが小さくなるように、光EL0を回折させてもよい。このため、射出部7131dによる配光特性の制御態様の詳細な説明は省略する。
射出部7131dは、光EL0を回折させるために、上述した回折部716と同様の構造を有していてもよい。つまり、射出部7131dは、フォトニック結晶構造を有していてもよい。
射出部7131dが回折層716と同様の機能を有していることを踏まえると、クラッド層713dは、クラッド層713と比較して、クラッド層713dと回折層716が実質的には一体化されているという点で異なっているとも言える。クラッド層713dは、クラッド層713と比較して、クラッド層713dが回折層716を備えているという点で異なっているとも言える。クラッド層713dは、クラッド層713と比較して、クラッド層713dの一部が回折層716として機能するという点で異なっているとも言える。
このような第4変形例の発光デバイス71dを発光デバイス71に代えて備える露光装置EXもまた、上述した発光デバイス71を備える露光装置EXが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
(4−5)第5変形例
続いて、図15を参照しながら、第5変形例の発光デバイス71eについて説明する。図15は、第5変形例の発光デバイス71eの構造を示す断面図である。
上述した発光デバイス71では、回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とを変えるために、反射層714及び715が用いられている。つまり、発光デバイス71は、光EL0の反射を利用して、光EL1の波長分布と光EL0の波長分布とを変えている。一方で、第5変形例の発光デバイス71eは、光EL0の回折を利用して、回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とを変えている。
光EL0の回折を利用して回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とを変えるために、発光デバイス71eは、図15に示すように、反射層714及び715に代えて回折層714eを備えているという点で異なっている。発光デバイス71eのその他の特徴は、発光デバイス71のその他の特徴と同一であってもよい。
回折層714eは、量子井戸層711において発生した光EL0を回折させることで、回折層716に入射する光EL1の波長分布を変えている。回折層714eは、光EL0を回折させない場合と比較して狭帯域化された光EL0が回折層716に入射するように、光EL0を回折させる。例えば、回折層714eは、共振波長範囲の光成分に一の偏向角度を付与して回折層716に入射させる一方で、共振波長範囲とは異なる波長範囲の光成分に他の偏向角度を付与して回折層716に入射させないように、光EL0を回折させてもよい。その結果、第5変形例においても、これまでの発光デバイス71と同様に、光EL0の回折を利用して回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とが異なるものとなる。
回折層714eは、フォトニック結晶構造を利用して光EL0を回折させてもよい。つまり、回折層714eは、フォトニック結晶構造を有する層であってもよい。尚、フォトニック結晶構造については、回折層716について説明する際に図7(a)及び図7(b)を参照して既に説明済みであるため、その詳細な説明を省略する。但し、回折層716が有するフォトニック結晶構造の特性は、光EL1を回折層716が回折させることで、光ELの配光特性を制御するという観点から設定される一方で、回折層714eが有するフォトニック結晶構造の特性は、光EL0を回折層714fが回折させることで、回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とが異なるものとなるという観点から設定される。このため、回折層714eが有するフォトニック結晶構造の特性は、回折層716が有するフォトニック結晶構造と異なっていてもよい。具体的には、回折層714eが有するフォトニック結晶構造の特性は、光EL0と比較して回折層716に入射する光EL1が狭帯域化された光となるように光EL0を回折させることが可能な所望特性に設定されてもよい。
回折層714bは、回折層716に入射する光EL1の波長分布を適切に制御することができるように光EL0を回折可能な位置に配置される。図15に示す例では、回折層714eは、量子井戸層711から見て光射出面719とは反対側に配置されている。もちろん、回折層714eは、図15に示す位置とは異なる位置に配置されていてもよい。
このような第5変形例の発光デバイス71eを発光デバイス71に代えて備える露光装置EXもまた、上述した発光デバイス71を備える露光装置EXが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
尚、発光デバイス71eは、回折層714eに加えて反射層714及び715の少なくとも一方を備えていてもよい。発光デバイス71eは、回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とを変えるために、光EL0の回折に加えて光ELの反射を利用してもよい。或いは、発光デバイス71eは、回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とを変えるために、光EL0の回折を利用することに加えて又は代えて、光EL0の屈折を利用してもよい。上述した第1変形例の発光デバイス71aから第4変形例の発光デバイス71dもまた、回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とを変えるために、光EL0の反射を利用することに加えて又は代えて、光EL0の回折及び屈折の少なくとも一方を利用してもよい。
また、上述した第1変形例の発光デバイス71aから第4変形例の発光デバイス71dもまた、反射層714及び/又は715の少なくとも一方に加えて又は代えて、回折層714eを備えていてもよい。
(4−6)第6変形例
続いて、第6変形例の発光デバイス71fについて説明する。第6変形例の発光デバイス71fは、レーザダイオード(LD:Laser Diode)を含むという点で、LEDを含む上述した発光デバイス71等とは異なる。つまり、発光デバイス71fは、レーザ発振した光ELを射出するという点で、レーザ発振した光ELを射出しない上述した発光デバイス71等とは異なる。以下、図16を参照しながら、このような第6変形例の発光デバイス71fの構造について説明する。図16は、第6変形例の発光デバイス71fの構造を示す断面図である。
図16に示すように、発光デバイス71fは、量子井戸層711fと、クラッド層712fと、クラッド層713fと、反射層714fと、反射層715fと、回折層716fとを備える。つまり、発光デバイス71fの積層構造そのものは、上述した発光デバイス71fの積層構造と同一であってもよい。この場合、発光デバイス71fは、基板に垂直な方向に光ELを射出可能なレーザダイオードを含んでいてもよい。基板に垂直な方向に光ELを射出可能なレーザダイオードの一例として、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)及び垂直外部共振器面発光レーザ(VECSEL:Vertical External Cavity Surface Emitting Laser)の少なくとも一方があげられる。
尚、特段の表記がない場合は、量子井戸層711f、クラッド層712f、クラッド層713f、反射層714f、反射層715f及び回折層716fの特徴は、上述した量子井戸層711、クラッド層712、クラッド層713、反射層714、反射層715及び回折層716の特徴と同一であってもよい。このため、以下では、特に発光デバイス71とは異なる特徴について重点的に説明する。
反射層714f及び715fは、主として、量子井戸層711fにおいて発生した光EL0を共振させる(特に、レーザ発振させる)ための共振器として機能する。従って、発光デバイス71fは、レーザ発振した光EL(つまり、レーザ光)を射出する。このため、発光デバイス71fは、量子井戸層711f、クラッド層712f、クラッド層713f、反射層714f及び反射層715fから構成されるレーザ発振素子を備えていると言える。尚、反射層714f及び715fによって光EL0がレーザ発振させられる(つまり、定在波が形成される)ことから、反射層714f及び715fは、反射層714及び715と同様に、光EL0を狭帯域化する光学素子としても機能してもよい。このため、第6変形例においても、反射層715fを介して回折層716fに入射する光EL0の波長分布は、量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とは異なる。以降、第6変形例では、回折層716fに入射する光EL0を、“光EL1”と称し、回折層716fに入射する前の光EL0(例えば、量子井戸層711において発生した光EL0)と区別する。
第6変形例においても、レーザ発振した光EL1は、回折層716fを介して、発光デバイス71fの外部の空間に向けて射出される。つまり、発光デバイス71fからは、回折層716fが回折させた(つまり、配光特性が制御された)光EL1が、光ELとして射出される。尚、発光デバイス71がレーザダイオードである場合には、光射出面719の第1位置から光ELの一部として射出される第1光の位相と、光射出面719の第1位置とは異なる第2位置から光ELの他の一部として射出される第2光の位相とは、互いに相関を有していてもよい。光射出面719の第1位置から光ELの一部として射出される第1光の位相と、光射出面719の第1位置とは異なる第2位置から光ELの他の一部として射出される第2光の位相とは、第1の光と第2の光とが互いにコヒーレントな光となるような相関を有していてもよい。
但し、第6変形例では、回折層716fは、反射層715fからの光EL1(つまり、レーザ発振した光EL1)を回折させない場合と比較して光ELの広がり角θが大きくなるように、光EL1を回折させる。つまり、第6変形例の発光デバイス71fが射出する光EL(つまり、回折層716fによって配光特性が制御された光EL)を示す断面図である図17(a)及び回折層716fを備えていないという点で第6変形例の発光デバイス71fとは異なる比較例の発光デバイスC71fが射出する光EL(つまり、回折層716fによって配光特性が制御されていない光EL)を示す断面図である図17(b)に示すように、発光デバイス71fが射出する光ELの広がり角θaは、発光デバイスC71fが射出する光ELの広がり角θbよりも大きくなる。特に、回折層716fは、光ELの広がり角θを大きくして光ELの広がり角θが所望の角度となるように、光EL1を回折させてもよい。回折層716fの特性は、光EL1を回折させない場合と比較して光ELの広がり角θが大きくなるように光EL1を回折させることができる所望特性に設定されていてもよい。回折層716fの特性は、光ELの広がり角θを大きくして光ELの広がり角θが所望の角度となるように光EL1を回折させることができる所望特性に設定されていてもよい。
回折層716fは、回折層716と同様に、回折波長範囲の光成分を回折させることで回折波長範囲の光成分の広がり角θを所望の角度に設定しやすい一方で、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分を回折させても回折波長範囲以外の波長範囲の光成分の広がり角θを所望の角度に設定しにくい(例えば、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分を回折させても、回折波長範囲以外の波長範囲の光成分の広がり角θが所望の角度とは異なる角度に設定されてしまう)という特性を有している場合がある。回折層716による光ELの配光特性の制御効率を向上させる観点から、共振波長範囲(つまり、レーザダイオードの発振波長を含む波長範囲)は、回折波長範囲と少なくとも部分的に重複していてもよい。逆に、共振波長範囲と回折波長範囲とが少なくとも部分的に重複するように反射層714f及び715f並びに回折層716fの特性が設定されれば、共振波長範囲と回折波長範囲とが重複していない場合と比較して、回折層716による光ELの配光特性の制御効率の向上が期待できる。
尚、上述した反射層714及び715によって繰り返し反射された光EL0と同様に、反射層714f及び715fによって繰り返し反射された光EL0もまた、共振した状態にある光に相当する。特に、第6変形例では、反射層714f及び715fによって繰り返し反射された光EL0は、レーザ発振した光となっているため、レーザ発振する波長(つまり、レーザダイオードの発振波長)を含む相対的に狭い共振波長範囲の光成分がレーザ発振した状態にある光に相当する。
回折層716fは、回折層716と同様に、フォトニック結晶構造を利用して光EL1を回折させる。回折層716fが備えるフォトニック結晶構造の特性は、回折層716fが上述した特性を有するように適切に設定されていてもよい。つまり、回折層716fが備えるフォトニック結晶構造の特性は、上述した回折層716が備えるフォトニック結晶構造の特性とは異なっていてもよい。
このような第6変形例の発光デバイス71fを発光デバイス71に代えて備える露光装置EXもまた、上述した発光デバイス71を備える露光装置EXが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第6変形例では、露光装置EXは、レーザダイオードを含む発光デバイス71fを用いて、電子ビームEBを生成することができる。このため、光ELの光源の種類の選択の自由度が高くなる。このため、露光装置EXの特性に応じて光ELの光源の種類が適切に選択されれば、露光装置EXは、光ELを用いて効率よく光電変換を行うことができ、相対的に高いエネルギーを有する電子ビームEBをウェハWに照射することができる。
加えて、図17(b)に示すように、レーザ発振している光EL1は、回折層716fによって回折しなければ、広がり角θが極めて小さい光となる。このため、このまままでは、光電変換素子73の位置において光ELのビームプロファイルが所望の特性を有さなくなったり、投影レンズ72の開口数の制約が満たされなくなったりするという技術的問題が生じかねない。第6変形例では、このような技術的問題が生じかねないことを踏まえて、回折層716fは、光ELの広がり角θが大きくなるように光EL1を回折させることができる。このため、レーザダイオードを含む発光デバイス71fが光ELの光源として用いられる場合であっても、LEDを含む発光デバイス71が光ELの光源として用いられる場合と同様に、露光装置EXは、複数の電子ビームEBを適切に(例えば、効率的に)生成することができる。
尚、上述した説明では、基板に垂直な方向に光ELを射出可能なレーザダイオードを含む発光デバイス71fについて説明されている。しかしながら、露光装置EXは、基板に平行な方向に光ELを射出するレーザダイオードを含むという点で発光デバイス71fとは異なる発光デバイス71f’を備えていてもよい。この場合においても、レーザ発振した光EL1が回折層716fによって回折する限りは、上述した効果と同様の効果を享受可能である。但し、基板に平行な方向に光ELを射出するレーザダイオードを含む発光デバイス71fが用いられる場合には、基板に平行な方向に射出する光ELが、適切な取り出し方法で面外に取り出されてもよい(つまり、基板に垂直な方向に光ELが伝搬するように面外に取り出されてもよい)。もちろん、基板に平行な方向に光ELを射出するレーザダイオードを含む発光デバイス71fが用いられる場合において、基板に平行な方向に射出する光ELが、基板に平行な方向に光ELが伝搬するように面外に取り出されてもよい。光ELの取り出し方法の一例として、例えば、図18(a)に示すように、量子井戸層711fの端面(つまり、共振器を構成するミラー端面)7111fから射出される光EL0を導く光導波路717fを湾曲させる方法があげられる。この場合も、光導波路717fからの光EL0が回折層716fによって回折する限りは、上述した効果と同様の効果を享受可能である。また、光ELの取り出し方法の他の一例として、例えば、図18(b)に示すように、光導波路の末端部に平面回折格子型結合器を形成する方法、及び、光導波路の末端部の先に斜めミラーを形成して光ELを基板の面に垂直な方向に反射させる方法があげられる。平面回折格子型結合器又は斜めミラーからの光EL0が回折層716fによって回折する限りは、上述した効果と同様の効果を享受可能である。
(4−7)第7変形例
続いて、第7変形例の露光装置EXgについて説明する。上述した説明では、露光装置EXは、電子ビームEBでウェハWを露光していた。しかしながら、露光装置EXgは、発光デバイス71からの光ELでウェハWやプレートP等のワークピースを露光してもよい。
以下、図19及び図20を用いて説明する。
図19は、第7変形例の露光装置EXgの全体の概略構成を示す斜視図である。図19に示す第7変形例では、角形の基板であるプレートPを露光する場合を例にとって説明する。以下の説明においては、図19中のXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がプレートPに対して平行となるよう設定され、Z軸がプレートPに対して直交する方向に設定されている。図中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。また、この実施の形態ではプレートPを移動させる方向(走査方向)をX軸方向に設定している。
第7変形例の露光装置EXgは、複数の投影光学装置50を備えている。第7変形例では、複数の投影光学装置50に対してプレートPを相対的に移動させつつ液晶表示素子のパターン等の転写パターンの像を感光性材料(レジスト)が塗布された感光性基板としてのプレートP上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置を例に挙げて説明する。
図20は、第7変形例の露光装置EXgに備えられている投影光学装置50の概略構成を示す図である。図20に示すように、各投影光学装置50は、円筒形状を有する鏡筒54を有し、鏡筒54の上部に転写パターンを形成する可変パターン生成装置56を備える。そして、鏡筒54内に可変パターン生成装置56により形成された転写パターンをプレートステージ(図示せず)上に保持されたプレートP上に投影する投影光学系PLを備えている。ここで、この投影光学系PLは縮小倍率を有する。尚、投影光学系PLの倍率は等倍であってもよく、拡大倍率であってもよい。ここで、投影光学系PLが縮小倍率である場合、投影光学系PLの発光デバイス71側(可変パターン生成装置56側)の開口数は、プレートP側の開口数よりも小さくなる。また、投影光学装置50は、図3(b)に示した投影レンズ720と同じ構成であってもよく、可変パターン生成装置56は、XY平面上に並べられた複数の発光デバイス71を有する自発光型画像表示素子であってもよい。
可変パターン生成装置56は、プレートP上に転写する転写パターンに基づいて発光パターンを形成する。
また、各投影光学装置50は、斜入射オートフォーカス系(図示せず)を備えていてもよい。
図21は、各投影光学装置50の配置状態を説明するための図である。投影光学装置50は、第1列目(図21における最も手前の列)にY方向に等間隔で7個配置されており、第2列目〜第6列目のそれぞれにY方向に等間隔で各6個配置されており、第7列目にY方向に等間隔で7個配置されている。ここで、各投影光学装置50は、露光エリア51がY方向に隣り合う他の何れかの投影光学ユニット2の露光エリア51と重なるように、即ちオーバラップ露光が行えるように配置されている。
各投影光学装置50の可変パターン生成装置56において生成された転写パターンは、各投影光学装置50の投影光学系PLによりプレートP上に投影され転写パターンの像が形成される。
また、この露光装置EXgには、プレートステージを走査方向であるX軸方向に沿って移動させるための長いストロークを有する走査駆動系(図示せず)、プレートステージを走査直交方向であるY軸方向に沿って微小量だけ移動させると共にZ軸廻りに微小量だけ回転させるための一対のアライメント駆動系(図示せず)が設けられている。そして、プレートステージの位置座標が移動鏡52を用いたレーザ干渉計等のステージ位置計測系(図示せず)によって計測され、かつ位置制御されるように構成されている。
そして、上述した可変パターン生成装置56、走査駆動系、アライメント駆動系、ステージ位置計測系は、制御装置(図示せず)によって制御される。この制御装置は、プレートステージの走査に同期して、各投影光学装置50の可変パターン生成装置56において生成するべき転写パターンを、当該可変パターン生成装置56に対して順次出力する。
第7変形例の露光装置EXgにおいては、各投影光学装置50に対してプレートPを相対的に移動させつつ、プレートPの走査に同期して各投影光学装置50の可変パターン生成装置56において液晶表示素子のパターン等の転写パターンを順次生成し、各投影光学装置50は、生成された転写パターンの像を感光性材料(レジスト)が塗布された感光性基板としてのプレートP上に順次転写する。
こうして、マスクパターン記憶装置(図示せず)に記憶されている転写パターンの全体がプレートP上の露光領域の全体に転写(走査露光)される。
この第7変形例の露光装置によれば、可変パターン生成装置56において転写パターンをプレートPの走査に同期して順次生成するため、大面積のマスクを用意する場合に比較してコストを大幅に削減することができる。
また、スキャン方向に電気的にパターンを変化させていくことで、マルチレンズ方式においてマスクの大きさが各投影光学装置50の露光領域分だけで充分になり、さらにこの露光領域を小さく設定することで、マスクのコストダウンはもとより、マスク面のたわみ、うねりといった問題を低減することができる。
そして、第7変形例の露光装置EXgでは、上述した発光デバイス71からの狭帯域化された光ELを用いるため投影光学系PLの色収差に起因するパターン像の劣化を低減することができる。また、上述した発光デバイス71からの広がり角が制限された光ELを用いるため投影光学系によって取りこむことができない光を少なくでき、光量損失を低減できる。
(4−8)その他の変形例
上述した説明では、光学システム3は、複数の電子ビーム装置5を備えるマルチカラム型の光学システムである。しかしながら、光学システム3は、単一の電子ビーム装置5を備えるシングルカラム型の光学システムであってもよい。
上述した説明では、光学システム3は、ステージチャンバ1の天井を構成するフレーム13を介して床面F上で支持されている。しかしながら、光学システム3は、クリーンルームの天井面又は真空チャンバの天井面に、防振機能を備えた吊り下げ支持機構によって吊り下げ支持されてもよい。
上述した説明では、光学システム3の筐体6は、ベースプレート61と周壁部62とクーリングプレート63とを備えている。しかしながら、筐体6は、ベースプレート61、周壁部62及びクーリングプレート63の少なくとも一つを備えていなくてもよい。この場合、ステージチャンバ1の少なくとも一部の部材が、ベースプレート61、周壁部62及びクーリングプレート63の少なくとも一つとして機能してもよい。更に、真空室64と露光室14とが連通していてもよい。或いは、光学システム3は、筐体6を備えていなくてもよい。この場合、ステージチャンバ1の露光室14に複数の電子ビーム装置5が配置されてもよい。露光室14の真空度を維持するために、ステージチャンバ1のフレーム13には、開口131が形成されていなくてもよい。
上述した説明では、露光装置EXは、複数の電子ビームEBをそれぞれ射出する電子ビーム生成装置7(つまり、複数の電子放出領域7331を有する面放出型電子ビーム源)を各電子ビーム装置5が備える露光装置である。しかしながら、露光装置EXは、複数の開口を有するブランキングアパーチャアレイを介して複数の電子ビームEBを生成し、描画パターンに応じて複数の電子ビームEBを個別にON/OFFしてパターンをウェハWに描画する露光装置であってもよい。
上述した説明では、電子ビーム装置5は、複数の電子ビームEBを用いてウェハWを露光するマルチビーム型の電子ビーム装置である。しかしながら、電子ビーム装置5は、単一の電子ビームEBを用いてウェハWを露光するシングルビーム型の電子ビーム装置である。この場合、電子ビーム生成装置7は、単一の発光デバイス71と、単一の投影レンズ72とを備えていてもよい。露光装置EXは、各電子ビーム装置5がウェハWに照射する電子ビームEBの断面をサイズ可変の矩形に成形する可変成形型の露光装置であってもよい。露光装置EXは、各電子ビーム装置5がスポット状の電子ビームEBをウェハWに照射するポイントビーム型の露光装置であってもよい。露光装置EXは、各電子ビーム装置5が所望形状のビーム通過孔が形成されたステンシルマスクを用いて電子ビームEBを所望形状に成形するステンシルマスク型の露光装置であってもよい。
上述した説明では、電子ビーム生成装置7は、ベースプレート61の貫通孔612に配置されている。しかしながら、電子ビーム生成装置7の少なくとも一部が貫通孔612に配置されていなくてもよい。例えば、電子ビーム生成装置7の発光デバイス71が貫通孔612に配置される一方で、電子ビーム生成装置7の光電変換素子73が貫通孔612の下方(つまり、筐体81の内部空間811)に配置されてもよい。この場合、発光デバイス71が、筐体81の内部空間811と筐体81の外部空間とを隔離する真空隔壁としても用いられてもよい。或いは、例えば、発光デバイス71が貫通孔612の上方に配置される一方で、光電変換素子73が貫通孔612又は貫通孔612の下方に配置されてもよい。光電変換素子73が貫通孔612に配置される場合には、光電変換素子73が、筐体81の内部空間811と筐体81の外部空間とを隔離する真空隔壁としても用いられてもよい。光電変換素子73が貫通孔612の下方に配置される場合には、筐体81の内部空間811と筐体81の外部空間とを隔離する真空隔壁(但し、光ELが通過可能な真空隔壁)が貫通孔612に配置されてもよい。或いは、例えば、ベースプレート61に貫通孔612を形成することなく、筐体81内に(例えば、ベースプレート61の下面に)電子ビーム生成装置7が配置されてもよい。
電子ビーム生成装置7は、複数の投影レンズ72を備えていなくてもよい。この場合、複数の発光デバイス71が射出した複数の光ELは、複数の投影レンズ72を介することなく、光電変換素子73に入射してもよい。電子ビーム生成装置7が複数の投影レンズ72を備えていない場合には、複数の発光デバイス71は、光電変換素子73と一体化されていてもよい。例えば、複数の発光デバイス71は、複数の発光デバイス71からの光ELが空間(例えば、真空空間及び気体空間の少なくとも一方)を介することなく光電変換素子73に入射するように、光電変換素子73と一体化されていてもよい。複数の発光デバイス71からの光ELが空間(例えば、真空空間及び気体空間の少なくとも一方)を介することなく光電変換素子73に入射する場合には、光ELの気体分子による吸収や散乱による影響がなくなる。このため、発光デバイス71として、気体分子による吸収の少ない波長(例えば、可視光領域から赤外光領域の一部に存在する波長であって、大気の窓と称される)の光を射出する発光デバイスのみならず、その他の波長の光を射出する発光デバイスを用いることができる。その結果、発光デバイス71が射出する光ELの波長の自由度が高くなる。このため、光ELの波長が適切に選択されれば、露光装置EXは、光ELを用いて効率よく光電変換を行うことができ、相対的に高いエネルギーを有する電子ビームEBをウェハWに照射することができる。
上述した説明では、発光デバイス71は、量子井戸構造を有する発光デバイスである。しかしながら、発光デバイス71は、量子井戸を利用しないダブルへテロ接合構造を有する発光デバイスであってもよい。或いは、発光デバイス71は、ホモ接合構造を有する発光デバイスであってもよい。
上述した説明では、発光デバイス71が備える回折層716は、誘電率がX軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿って周期的に変化する2次元フォトニック結晶構造を有する層である。しかしながら、回折層716は、誘電率がX軸方向及びY軸方向のいずれか一方(或いは、XY平面に含まれるある1つの方向)に沿って周期的に変化する1次元フォトニック結晶構造を有する層であってもよい。或いは、回折層716は、誘電率がX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれ(或いは、互いに直交する3つの方向のそれぞれ)に沿って周期的に変化する3次元フォトニック結晶構造を有する層であってもよい。
上述した説明では、回折層716は、フォトニック結晶構造を利用して光EL1を回折することで、光ELの配光特性を制御している。しかしながら、回折層716は、入射してくる光EL1を回折させて光ELの配光特性を制御可能である限りは、フォトニック結晶構造とは異なる構造を有する層であってもよい。つまり、回折層716は、フォトニック結晶構造を有していない層であってもよい。第5変形例の回折層714e(つまり、回折層716に入射する光EL1の波長分布と量子井戸層711において発生した光EL0の波長分布とを変えるために光EL0を回折させる回折層714e)についても同様に、光EL0を回折させて光EL0の波長分布と光EL1の波長分布とを変えることができる限りは、フォトニック結晶構造とは異なる構造を有する層であってもよい。
上述した説明では、光電変換素子73は、アルカリ光電層733を用いて、光ELを電子ビームEBに変換している。しかしながら、光電変換素子73は、アルカリ光電層733とは異なる種類の光電層を用いて、光ELを電子ビームEBに変換してもよい。このような光電層の一例として、金属光電層が挙げられる。
上述した説明では、発光デバイス71は、電子ビームEBを生成する用途で使用されている。発光デバイス71は、電子ビーム生成装置7が備えている。しかしながら、発光デバイス71は、電子ビームEBを生成する用途とは異なる用途で使用されてもよい。例えば、発光デバイス71は、通常のLED(或いは、任意の光源)と同じ用途で使用されてもよい。一例として、発光デバイス71は、照明装置、ディスプレイ、プロジェクタ等の用途で使用されてもよい。
上述した説明では、電子ビーム生成装置7は、アパーチャ7321を介して発光デバイス71からの光ELを、アルカリ光電層733に照射している。しかしながら、電子ビーム生成装置7は、アパーチャ7321を介することなく、発光デバイス71からの光ELを、アルカリ光電層733に照射してもよい。例えば、発光デバイス71が所望の断面形状(例えば、アパーチャ7321に対応する形状)の光ELを射出可能である場合には、電子ビーム生成装置7は、アパーチャ7321を介することなく、発光デバイス71からの光ELを、アルカリ光電層733に照射してもよい。この場合、光電変換素子73は、遮光膜732を備えていなくてもよい。
上述した説明では、光電変換素子73では、板部材731と遮光膜732とアルカリ光電層733とが一体化された光学素子である。つまり、光電変換素子73は、アパーチャ7321を形成するための部材(つまり、遮光膜732)と光電変換を行うための部材(つまり、アルカリ光電層733)とが一体化された光学素子である。しかしながら、アパーチャ7321を形成するための部材と光電変換を行うための部材とが別体であってもよい。この場合、アパーチャ7321を形成するための部材が、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動可能であってもよい。光電変換を行うための部材が、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動可能であってもよい。発光デバイス71が、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動可能であってもよい。
上述した説明では、電子ビーム光学系8は、筐体81と、加速器82と、集束レンズ83と、アパーチャ板84と、対物レンズ85と、反射電子検出装置86とを備えている。しかしながら、電子ビーム光学系8は、筐体81、加速器82、電子レンズ83、アパーチャ板84、対物レンズ85及び反射電子検出装置86の少なくとも一つを備えていなくてもよい。
上述した説明では、露光装置EXは、コンプリメンタリ・リソグラフィに用いられる。しかしながら、露光装置EXは、コンプリメンタリ・リソグラフィ以外の用途で用いられてもよい。例えば、露光装置EXは、電子ビームEBでウェハWにパターン(例えば、一つの半導体チップのパターン又は複数の半導体チップのパターン)を描画するようにウェハWを露光する用途で用いられてもよいし、微小マスクのパターンを電子ビームEBでウェハWに転写するようにウェハWを露光する用途で用いられてもよい。この場合、露光装置EXは、あるパターンをマスクからウェハWへ一括して転写する一括転写方式の露光装置であってもよい。或いは、露光装置EXは、一括転写方式よりも高いスループットで露光が可能な分割転写方式の露光装置であってもよい。分割転写方式の露光装置は、ウェハWに転写すべきパターンをマスク上で1つのショット領域に相当する大きさよりも小さい複数の小領域に分割し、これら複数の小領域のパターンをウェハWに転写する。尚、分割転写方式の露光装置としては、あるパターンを備えたマスクのある範囲に電子ビームEBを照射し、当該電子ビームのEBが照射された範囲のパターンの像を投影レンズで縮小転写する縮小転写型の露光装置もある。
露光装置EXは、スキャニング・ステッパであってもよい。露光装置EXは、ステッパなどの静止型露光装置であってもよい。露光装置EXは、一のショット領域の少なくとも一部と他のショット領域の少なくとも一部とを合成するステップ・アンド・スティッチ型の縮小投影露光装置であってもよい。
上述した説明では、露光装置EXでは、ウェハWが単独でウェハステージ22にロードされる。しかしながら、ウェハWが搬送部材(例えば、シャトル)によって保持された状態で当該搬送部材がウェハステージ22にロードされてもよい。
上述した説明では、露光装置EXの露光対象が、ウェハW(例えば、半導体デバイスを製造するための半導体基板)である。しかしながら、露光装置EXの露光対象は、任意の基板であってもよい。例えば、露光装置EXは、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン又はDNAチップを製造するための露光装置であってもよい。例えば、露光装置EXは、角型のガラスプレートやシリコンウェハにパターンを描画するための露光装置であってもよい。
上述した説明では、ウェハWを露光するために電子ビーム装置5が用いられている。しかしながら、電子ビーム装置5は、ウェハWを露光する目的とは異なる目的で用いられてもよい。具体的には、ターゲットに電子ビームEBを照射する任意の装置が電子ビーム装置5を備えていてもよい。例えば、ターゲットに電子ビームEBを照射してターゲットに対して所定の処理(例えば、加工処理)を行う任意の装置が電子ビーム装置5を備えていてもよい。例えば、電子顕微鏡や付加製造を行う3次元プリンタ等が電子ビーム装置5を備えていてもよい。
半導体デバイス等のデバイスは、図22に示す各ステップを経て製造されてもよい。デバイスを製造するためのステップは、デバイスの機能及び性能設計を行うステップS201、機能及び性能設計に基づく露光パターン(つまり、電子ビームEBによる露光パターン)を生成するステップS202、デバイスの基材であるウェハWを製造するステップS203、生成した露光パターンに応じた電子ビームEBを用いてウェハWを露光し且つ露光されたウェハWを現像するステップS204、デバイス組み立て処理(ダイシング処理、ボンディング処理、パッケージ処理等の加工処理)を含むステップS205及びデバイスの検査を行うステップS206を含んでいてもよい。
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う発光デバイス、発光方法、露光装置、露光方法及びデバイス製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。