JPWO2020032232A1 - バクテリオファージ剤 - Google Patents

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Abstract

受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージが、スタフィロコッカス・ハイカス及びスタフィロコッカス・クロモジナス等に対する溶菌活性を有することを見出し、これらブドウ球菌を溶菌するための組成物、これらブドウ球菌に起因する疾患を治療又は予防するための組成物等を提供することを可能にした。

Description

本発明は、ブドウ球菌(スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス等)を溶菌させる性質を有するバクテリオファージを有効成分とする、当該ブドウ球菌を溶菌するための組成物に関する。さらに、本発明は、当該組成物の前記ブドウ球菌に起因する疾患の予防又は治療用途に関する。また、本発明は、前記バクテリオファージを含む、前記ブドウ球菌を検出するための組成物に関する。
ブドウ球菌の一種、スタフィロコッカス・ハイカス(S.hyicus)、スタフィロコッカス・クロモジナス(S.chromogenes)等は、ヒトや動物に対し、様々な疾病を引き起こす。S.hyicus、S.chromogenes等が起因菌となる皮膚疾病の一つとして、滲出性表皮炎が知られている(非特許文献1〜3、特許文献1)。滲出性表皮炎は「スス病」といわれ、子豚においては全身にススを被ったような状態になり、一腹単位で発症することも多く、ひどい状態になると死亡する例が20〜30%にもなる。その治療には、これらに有効性を示す抗菌剤、消毒剤やステロイド剤等が使用されている(非特許文献4)。しかし、近年、薬剤耐性菌が増え、抗菌剤の効果が発揮できなくなること、消毒剤により皮膚が傷み、症状の悪化もあることなど問題が多く、効果的な治療法がない。
バクテリオファージは、細菌に感染するウイルスの総称であり、宿主である細菌に感染すると細菌内で増殖する。増殖した娘ファージは、細菌の細胞壁から菌体外に放出され、細菌は溶菌により死滅する。また、バクテリオファージは、宿主となる病原菌以外の細菌叢に影響を与えないこと、増殖が簡単であり大量のバクテリオファージを安価に調製できる等の利点がある。
そこで、バクテリオファージを細菌の殺菌剤等に利用するという取り組みもなされており、バクテリオファージを利用したスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の殺菌に関する研究結果もいくつか報告されている。例えば、特許文献2において、S.aureusを溶菌させる性質を有するバクテリオファージとして、受託番号NITE BP−693及び受託番号NITE BP−694にて各々特定されるバクテリオファージが、本発明者らによって見出され、報告されている。
しかしながら、S.hyicus又はS.chromogenesに対して溶菌活性を有するバクテリオファージについての報告は未だない。また、バクテリオファージは、同じ種(species)の細菌であっても株(strain)が異なれば感染しないほど、宿主特異性が高いという問題がある。そのため、これらブドウ球菌に起因する疾患等を予防又は治療する上で、有効なバクテリオファージが求められている。
米国特許第8084040号明細書 特許第5720045号公報
H.C.Wegener,et al.,Can.J.Ver.Res.,1993,57,119−125 L.O.Andresen,et al.,Vet.Microbiol.,2005,105,291−300 Aiden P.Foster Vet.Dermatol.,2012,23,342−351 C.L’Ecuyer and D.C.Alexander,Can.Ver.J.1969,10(9),227−234
本発明は、S.hyicus、S.chromogenes等を溶菌させる性質を有するバクテリオファージを見出し、当該バクテリオファージを有効成分とする、前記ブドウ球菌を溶菌するための組成物、又は前記ブドウ球菌に起因する疾患を予防若しくは治療するための組成物を提供することを、課題とする。
本発明者らは、従前、S.aureusを溶菌させる性質を有するバクテリオファージとして、受託番号NITE BP−693及び受託番号NITE BP−694にて各々特定されるバクテリオファージを見出している(特許文献2)。
今回、これらバクテリオファージに関し、滲出性表皮炎罹患ブタより単離された、複数のS.hyicus株及び複数のS.chromogenes株に対する、溶菌活性を評価した。その結果、通常バクテリオファージは極めて高い宿主特異性を有しているにも関わらず、驚くべきことに、両バクテリオファージとも、複数のS.hyicus株及び複数のS.chromogenes株に対して高い溶菌活性を有していることを見出した。
さらに、両バクテリオファージとも、他のブドウ球菌(スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス、スタフィロコッカス・アルゲンテウス)に対して高い溶菌活性を有していることも見出し、本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は以下の構成よりなる。
(1)受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを有効成分とする、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス及びスタフィロコッカス・アルゲンテウスからなる群から選択される少なくとも1のブドウ球菌を溶菌するための組成物。
(2)受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを有効成分とする、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス及びスタフィロコッカス・アルゲンテウスからなる群から選択される少なくとも1のブドウ球菌に起因する疾患を予防又は治療するための組成物。
(3)注射用組成物、経口用組成物又は外用組成物である(2)に記載の組成物。
(4)外用組成物であり、散布、浸漬、展着又は滴下によって対象に投与される、(2)に記載の組成物。
(5) 受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージ又はその一部を含む、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス及びスタフィロコッカス・アルゲンテウスからなる群から選択される少なくとも1のブドウ球菌を検出するための組成物。
本発明によれば、S.hyicus、S.chromogenes等を溶菌するための組成物、これらブドウ球菌に起因する疾患を予防又は治療するための組成物を提供することが可能となる。
特に、本発明において、これら組成物の有効成分となる、バクテリオファージは、これらブドウ球菌の複数の株に対して、感染性と高い溶菌活性を示す。そのため、これらブドウ球菌を効率よく殺菌等することができる。
さらに、本発明によれば、前記バクテリオファージの宿主特異的な吸着性を利用することにより、これらブドウ球菌を検出するための組成物を提供することも可能となる。
また、バクテリオファージは、対応する宿主が存在すれば、その宿主に感染し、爆発的に増殖する。しかし、バクテリオファージは宿主が存在しなければ、単独では増殖できない。そのため、その特定の宿主がバクテリオファージによってすべて溶菌されて死滅してしまえば、そのバクテリオファージも増殖することはできない。また、他の細菌等に感染等し、影響を及ぼすこともない。したがって、例えば、豚の飼育施設等に、本発明の組成物を散布して前記ブドウ球菌の除菌処理を行った後、更にバクテリオファージを除く何らかの処理を行う必要はない。以上の点で、本発明は、環境及び他の細菌等に悪影響を及ぼすことがなく、安全で、使用し易いという利点を有する。
(溶菌用組成物)
後述の実施例において示すとおり、スタフィロコッカス・アウレウスに対して溶菌活性を有するバクテリオファージ(受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージ)は、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス等に対しても、溶菌活性を示すことが、明らかとなった。
したがって、本発明は、受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを有効成分とする、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス等からなる群から選択される少なくとも1のブドウ球菌を溶菌するための組成物(以下、「溶菌用組成物」とも称する)を、提供する。
本発明の組成物の対象となる、スタフィロコッカス・ハイカス(Staphylococcus hyicus、S.hyicus)、スタフィロコッカス・クロモジナス(Staphylococcus chromogenes、S.chromogenes)、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudointermedius、S.pseudointermedius)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis、S.epidermidis)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus、S.haemolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus、S.saprophyticus)、スタフィロコッカス・シウリ(Staphylococcus sciuri、S.sciuri)、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri、S.warneri)、スタフィロコッカス・アウリクラーリス(Staphylococcus auricularis、S.auricularis)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis、S.capitis)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii、S.cohnii)、スタフィロコッカス・コンディメンティ(Staphylococcus condimenti、S.condimenti)、スタフィロコッカス・フェリス(Staphylococcus felis、S.felis)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis、S.hominis)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius、S.intermedius)、スタフィロコッカス・シュライフェリ(Staphylococcus schleiferi、S.schleiferi)、スタフィロコッカス・シミュランス(Staphylococcus simulans、S.simulans)、スタフィロコッカス・キシローサス(Staphylococcus xylosus、S.xylosus)及びスタフィロコッカス・アルゲンテウス(Staphylococcus argenteus、S.argenteus)は、ブドウ球菌属(スタフィロコッカス属)に属するグラム陽性球菌である真正細菌の1種である(以下、これらブドウ球菌を「本発明に係るブドウ球菌」とも総称する)。
また、「溶菌」とは、バクテリオファージが感染することにより、細菌の細胞膜及び細胞壁が破壊され、細胞質が細胞外に放出(溶出)され、当該細菌が死滅することを意味する。
本発明の組成物の有効成分となるバクテリオファージの一つは、2008年12月25日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター(郵便番号 292−0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、受託番号 NITE BP−693として寄託してあるバクテリオファージである。なお、本発明者等は、このバクテリオファージを「φSA012」と命名した。
本発明に係るバクテリオファージのもう一つは、2008年12月25日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター(郵便番号 292−0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、受託番号 NITE BP−694として寄託してあるバクテリオファージである。本発明者等は、このバクテリオファージを「φSA039」と命名した。
透過型電子顕微鏡を用いた観察で、φSA012とφSA039は、ともにT4ファージと同程度の大きさで、かつ若干長いことが知られた。また、φSA012及びφSA039は、収縮性のシース(sheath)を持つことから、ミオビリデ科(Myoviridae family)に属するものと推察される。本発明に係るバクテリオファージのその他の構造及び性質については、特許文献2の記載を参照のほど。
本発明に係るバクテリオファージは、これらが寄託されている上記寄託機関に分譲請求を行なうことにより、入手することができる。また、一般家庭の下水流水や下水処理施設から採取した排水等、あるいはS.aureusに感染した動物由来の血液,鼻腔,咽頭,皮膚,腸管等の生体試料から、例えば、特許文献2に記載されているプラークアッセイ・分離方法等の常法により分離・精製することにより、入手することもできる。また、本発明に係るバクテリオファージは、例えば、特許文献2に記載されているプレートライセート法等の一般的なバクテリオファージの増殖法で増殖させることができる。
本発明の組成物は、上述のバクテリオファージを含有するものであればよい。例えば、上述した増殖法によって得られるバクテリオファージ溶液、バクテリオファージ溶液を遠心分離等によって培養残渣と分離したもの等が挙げられる。
本発明の組成物に含有されるバクテリオファージの詳細は、上記したとおりである。また、本発明の組成物に含有されるバクテリオファージは、それぞれ一種類(株、strain)でも、φSA012とφSA039とのバクテリオファージ混合液(ファージカクテル)であってもよい。また、更に他のバクテリオファージを含んでいてもよい。他のバクテリオファージとしては、特に制限はなく、本発明に係るブドウ球菌とは異なる細菌(例えば、S.aureus)に対するバクテリオファージが挙げられ、溶菌性のみならず、溶原性バクテリオファージであってもよい。
本発明の溶菌用組成物中のバクテリオファージの濃度は、特に制限はなく、当業者であればその使用形態により適宜調整することができるが、例えば、後述の液状の剤形(液状の抗菌剤等)にて使用する場合は、1×10〜1×1013PFU/ml(PFU:plaque forming unit プラーク形成単位)とするのが好ましく、1×10〜1×1011PFU/mlとするのがより好ましく、1×10〜1×1010PFU/mlとするのが更に好ましい。
本発明の溶菌用組成物は、上述のバクテリオファージによって、本発明に係るブドウ球菌を溶菌することができるため、医薬組成物の態様をとり得る。医薬組成物としては、前記ブドウ球菌に起因する疾患を予防又は治療するための医薬組成物(治療薬、予防薬、症状改善薬等の医薬品)、前記ブドウ球菌を殺す又は死滅させるための医薬組成物(殺菌剤等、例えば、消毒薬等の医薬品、薬用石鹸等の医薬部外品)が挙げられる。
本発明の溶菌用組成物は、医薬組成物に限らず、食品の態様にて、前記ブドウ球菌に起因する疾患の予防又は改善に用いることも可能である。このような飲食用組成物としては、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品等の保健機能食品の他、動物飼料、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調製食品、病者用食品、あるいは食品添加物であり得る。
また、本発明の溶菌用組成物は、前記ブドウ球菌の数を減少させるための組成物(除菌剤等)、前記ブドウ球菌の増殖を抑制するための組成物(抗菌剤等)の態様をとり得る。さらに、本発明の溶菌用組成物は、研究目的(例えば、インビトロやインビボの実験)で前記ブドウ球菌を溶菌するための組成物(試薬等)の態様もとり得る。
本発明の溶菌用組成物の形態は、その対象(投与対象等)に応じて適宜変更可能であり、例えば、固形状、半固形状、液状が採用される。
例えば、本発明の溶菌用組成物を、医薬組成物、除菌剤、抗菌剤等として使用する場合、その対象に適した形態(製剤形態、剤形)に調製される。剤形としては、例えば、経口用組成物(内用組成物)、外用組成物、注射用組成物が挙げられ、より具体的に、経口用組成物としては、錠剤、チュアブル錠、発泡錠、トローチ剤、ドロップ剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、大丸薬、顆粒剤、散剤、丸剤、粒剤、粉剤、ドライシロップ剤、浸剤・煎剤、リポソーム製剤等の固形剤、舐剤、ゼリー剤、チューインガム剤等の半固形剤、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、油剤、乳剤、酒精剤等の液剤が挙げられる。また、外用組成物としては、坐剤、パップ剤、プラスター剤等の固形剤、軟膏剤、クリーム剤、ムース剤、シート製剤、樹脂製剤、ゲル剤(ナザールジェル剤等)、インへラー剤等の半固形剤、点鼻剤、点眼剤、リニメント剤、ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、スポットオン製剤、ポアオン製剤、経皮パッチ、噴霧剤、懸濁剤、油剤、乳剤等の液剤が挙げられる。また、液剤は、浸漬等の方法で含有させた織布、編布、不織布等のような形態もとり得る。また、除菌剤、抗菌剤等としては、さらに、水和剤、フロアブル剤、加熱蒸散剤、煙霧剤、燻煙剤、ULV剤、ペレット剤等の形態もとり得る。
これら剤形は、薬理学上許容される補助成分(媒体や担体(固体担体、液体担体、ガス状担体等)等)を用い、当業者であれば適宜調製することができる。補助成分としては、例えば、緩衝液(リン酸緩衝液等)、生理食塩水、蒸留水等の水性媒体、ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,オレイン酸エチル等の非水性媒体、界面活性剤、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、マトリックス形成剤、賦形剤、ベヒクル、増粘剤、粘着剤、展着剤、結合剤、希釈剤、滑沢剤、保護剤、粘性促進剤、ウィッキング剤、安定化剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、崩壊剤、pH調整剤、溶解補助剤、湿潤剤、着色料、染料、顔料、香味剤、芳香剤、矯味剤、甘味料、矯味矯臭剤、防腐剤、粘稠剤、保存剤、抗酸化剤等の一般的に利用されるものが挙げられる。なお、これら補助成分は、有効成分であるバクテリオファージと適合するものでなければならない。また、本発明の組成物には、溶菌性をより向上させるために、エンドライシン(バクテリオファージが有する、溶菌の際、宿主の細胞壁を消化するための酵素)を適宜混合してもよい。
本発明の溶菌用組成物は、他の薬剤を更に含んでいてもよく、また併用してもよい。併用する場合、同時に投与してもよく、前後して投与してもよい。また、本発明のバクテリオファージに薬剤を付加することもできる。
「他の薬剤」としては、本発明に係るバクテリオファージの本発明に係るブドウ球菌に対する感染性及び溶菌活性を失わせないようなものであれば特に限定されるものではないが、抗菌剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、感染症の予防剤、感染症の治療剤、殺虫剤、駆虫剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤等、それぞれの用途に慣用の薬剤を、それぞれ使用する態様に応じて適宜選択して用いることができる。
「抗菌剤」としては、例えば、β―ラクタム系、アミノグリコシド系、リンコマイシン系、ホスホマイシン系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリペプチド系、グリコペプチド系、ストレプトグラミン系、キノロン系、オキサゾリジノンが挙げられるが、これらに限定されない。
「抗炎症剤」としては、例えば、ステロイド剤、非ステロイド剤が挙げられる。「ステロイド剤」としては、例えば、コルチコステロイドが挙げられ、より具体的に、プレドニゾロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ヒドロコーチゾン、プレドニカルバ―ト、モメタゾン及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。「非ステロイド剤」としては、例えば、サリチル酸系、プロピオン酸系、酢酸系、オキシム系、ピリン系、非ピリン系の化合物、COX−2阻害薬が挙げられるが、これらに限定されない。
「免疫抑制剤」としては、例えば、代謝拮抗剤、アルキル化剤、微小管合成阻害剤、リンパ球シグナル伝達阻害薬、サイトカイン阻害薬、抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
(溶菌方法)
本発明において、本発明に係るブドウ球菌の溶菌(殺菌、除菌、増殖の抑制等)は、特に制限はなく、溶菌処理を施す対象に、本発明に係るバクテリオファージ又は本発明の溶菌用組成物を接触等させることによって行なうことができる。
すなわち、本発明は、本発明に係るバクテリオファージ又は本発明の溶菌用組成物を、対象と接触させることにより、当該対象における、本発明に係るブドウ球菌のうちの少なくとも1のブドウ球菌を溶菌する方法をも提供する。
「対象」としては特に制限はなく、後述の(治療方法等)にて例示される動物の他、前記ブドウ球菌が存在し得る物、環境(例えば、食品、食品の加工・調理・保存に使用する器具や機器、食品加工工場、食品が晒される環境、動物(豚等)の飼育施設等)が挙げられる。
「接触」方法については特に制限はなく、例えば、後述の散布、浸漬、展着、滴下等により、本発明に係るバクテリオファージを対象に接触させることができる。また、対象との接触時間としては、特に制限はなく、本発明に係るバクテリオファージが、該対象における本発明に係るブドウ球菌を溶菌し、該ブドウ球菌の増殖等を防止することができるだけの十分な時間であればよい。
(治療方法等)
本発明に係るバクテリオファージは、上述したように本発明に係るブドウ球菌の複数の株に対して感染性と高い溶菌活性を示し、これらブドウ球菌を死滅させることができる。そのため、本発明に係るバクテリオファージを用いれば、これらブドウ球菌に起因する疾患の予防、治療又は改善が可能となる。
したがって、本発明は、本発明に係るバクテリオファージ又は本発明の医薬組成物を、対象に投与することにより、当該対象の本発明に係るブドウ球菌のうちの少なくとも1のブドウ球菌に起因する疾患を予防又は治療する方法をも提供する。
治療等の「対象」としては、本発明に係るブドウ球菌が感染し得るものであれば特に制限はなく、ヒトであってもよく、非ヒト動物であってもよい。非ヒト動物としては、家畜、ペット、実験用動物が挙げられ、より具体的には、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、ウサギ、ネコ、イヌ、ミンク、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳類、ニワトリ等の鳥類が挙げられる。
「ブドウ球菌に起因する疾患」としては、本発明に係るブドウ球菌のうちの少なくとも1のブドウ球菌に起因するものであれば、特に制限はないが、例えば、皮膚感染(皮膚炎、滲出性表皮炎、毛嚢炎、フットパッド皮膚炎、趾蹠皮膚炎、鶏ブドウ球菌症、膿皮症、膿疱性皮膚炎、化膿性皮膚炎、皮膚膿症、皮膚感染等)、尿路感染症(膀胱炎、下部尿路感染症、尿路感染等)、菌血症(カテーテル関連菌血症、菌血症、人工関節感染、、敗血症、敗血症性多発性関節炎等)、骨・関節感染(骨髄炎、関節炎、骨・関節炎、骨・関節感染等)、生殖器感染(膣炎、子宮炎、子宮蓄膿症(子宮膿腫)等)、乳房感染(乳房炎、乳腺炎等)、軟部組織感染(軟部組織感染等)、耳鼻感染(耳炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎等)、創傷感染(創傷感染、手術創感染等)、呼吸器感染症(気道感染、肺炎等)、眼感染(眼内炎、結膜炎、眼瞼及び結膜を含む眼感染症、眼感染、眼科手術後の眼内炎等)、中枢神経感染症(髄膜炎、髄膜脳炎等)、食中毒が挙げられる。
また、ブドウ球菌に起因する各動物における疾患例は以下のとおりである。
Figure 2020032232
Figure 2020032232
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Figure 2020032232
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また、各ブドウ球菌に起因する疾患例は以下のとおりである。
Figure 2020032232
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Figure 2020032232
Figure 2020032232
Figure 2020032232
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なお、表6〜14に記載の「文献」には、各ブドウ球菌と、それが各動物に感染することにより生じる疾患との関係が開示されている。
本発明に係るバクテリオファージ等の「投与」方法としては、特に制限はなく、例えば、経皮投与、皮内投与、皮下投与、血管内注射(静脈内投与、動脈内投与)、局所投与(局所注射等)、経口投与、経粘膜(経鼻等)投与、腹腔内投与、気道内投与、直腸投与及び筋肉内投与、輸液による投与が挙げられる。かかる投与は、上述の剤形を適宜採用することによって行なうことができる。また投与量は、対象(動物)の種類、年齢(週齢)、体重、症状、健康状態等に応じて、適宜調整される。
例えば、本発明の医薬組成物を外用組成物として使用する場合には、前述のとおり、対象の種類等によって異なるが、外用組成物中に1×10〜1×1012PFU/ml程度の本発明に係るバクテリオファージを含有させ、投与することができる。
外用組成物の投与方法としては、例えば、散布、浸漬、展着、滴下が挙げられる。浸漬としては、より具体的に、外用組成物又はそれを含有する水等への対象の入浴が挙げられる。散布としては、例えば、外用組成物を対象に、スプレー、噴霧、霧吹き、シャワー、散粉(ダスティング)することが挙げられる。展着としては、外用組成物を対象に、塗布、拭き取りすること、または外用組成物を、細片、プレート、バンド、カラー、耳標(ear mark)、リム(limb)・バンド、標識装置等の成形製品に含有させ、当該成型製品を装着した対象(動物)どうしが接触することにより、該動物に外用組成物を付着、分散させることも挙げられる。滴下としては、例えば、外用組成物を対象に、ポア・オン、スポット・オンすることが挙げられる。
より具体的に、外用組成物を対象に塗布又は噴霧する場合には、上述のとおり、対象の種類、状態等によって異なるが、例えば、患部5cmあたりに、1×10〜1×1012PFU程度、好ましくは1×10〜1×1012PFU程度の本発明に係るバクテリオファージを、塗布又は噴霧すればよいが、これに限定されない。
本発明の医薬組成物を注射用組成物として使用する場合には、上述のとおり、対象の種類等によって異なるが、例えば、注射用組成物中に1×10〜1×1012PFU/ml程度の本発明に係るバクテリオファージを含有させ、投与することができる。
また、注射用組成物を患部に直接投与する場合には、上述のとおり、対象の種類、状態等によって異なるが、例えば、1×10〜1×1012PFU程度、好ましくは、1×10〜1×1012PFU程度の本発明に係るバクテリオファージを患部に注射すればよいが、これに限定されない。
さらにまた、注射用組成物を血液中に投与する場合には、上述のとおり、対象の種類、状態等によって異なるが、例えば、1×10〜1×1012PFU/Kg程度を血管内に注射すればよいが、これに限定されない。
なお、バクテリオファージは宿主特異性が高く、宿主の細菌にしか感染しないウイルスであるため、動物に投与した場合の毒性は殆どない。したがって、対象の動物の種類、患部の状態等によっては、多量のバクテリオファージを投与することが可能である。例えば投与する動物が大型動物の場合には、より多量のバクテリオファージを投与することもできる。
<ブドウ球菌検出用組成物>
バクテリオファージは、宿主を特異的に認識し、吸着することにより、当該宿主を溶菌することが知られている。そして、この特異的吸着性によるバクテリオファージと宿主との複合体形成を指標とすることにより、当該宿主を検出することが可能となる(特開2004−283003 参照)。
したがって、本発明は、受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージ又はその一部を含む、本発明に係るブドウ球菌から選択される少なくとも1のブドウ球菌を検出するための組成物をも提供し得る。
本発明の検出用組成物に含まれるバクテリオファージについては上述のとおりであるが、本発明に係るブドウ球菌のうちの少なくとも1のブドウ球菌への吸着特異性を有している限り、バクテリオファージの一部であってもよい。また、バクテリオファージ又はその一部は、標識物質が結合したものであってもよい。当該標識物質を検出することにより、ブドウ球菌に結合したバクテリオファージを直接検出することが可能となる。
「標識物質」としては、バクテリオファージに結合することができ、化学的又は光学的方法に検出できるものであれば特に制限されることはなく、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、アロフィコシアニン(APC)、フィコエリスリン(R−PE)等の蛍光蛋白質、アルカリホスファターゼ(ALP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、βガラクトシダーゼ(β−gal)等の酵素、125I等の放射性同位元素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やローダミンイソチオシアネート(RITC)等の蛍光色素、コロイド状金属、着色ラテックス等の呈色標識物質、アビジン、ビオチンが挙げられる。なお、標識物質として酵素を用いる場合には、基質として、発色基質、蛍光基質、あるいは化学発光基質等を添加することにより、基質に応じて種々の検出を行うことができる。また、標識物質の結合は、バクテリオファージに直接結合していてもよく、他の物質を介して間接的に結合していてもよい。「他の物質」としては、所謂二次抗体が挙げられる。ここで「二次抗体」とは、本発明に係るバクテリオファージに特異的な結合性を示す抗体であり、標識物質を結合させた当該抗体を用いることにより、標識物質を間接的にバクテリオファージに結合させることが可能となる。
本発明の検出用組成物は、本発明に係るバクテリオファージの他、組成物として許容される他の成分を含むことができる。このような他の成分としては、例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩、標識化合物、二次抗体が挙げられる。
また、前述の本発明の検出用組成物の他、標識物質の検出に必要な基質、陽性対照や陰性対照、あるいは試料の希釈や洗浄に用いる緩衝液等を組み合わせることができ、本発明に係るブドウ球菌のうちの少なくとも1のブドウ球菌を検出するためのキットとすることもできる。また、標識されていないバクテリオファージを標品とした場合には、当該バクテリオファージに結合する物質(例えば、抗体)を標識化したものを組み合わせることができる。さらに、検出用キットには、当該キットの使用説明書を含めることができる。
また、本発明の検出用組成物は、本発明に係るブドウ球菌のうちの少なくとも1のブドウ球菌を検出することができるため、当該ブドウ球菌に起因する疾患を診断するための組成物、又は該組成物を含む診断用キットとしても用いることができる。
<ブドウ球菌の検出方法>
上述のとおり、バクテリオファージと宿主との複合体形成を指標とすることにより、当該宿主を検出することが可能となる。
したがって、本発明は、
本発明に係るバクテリオファージ又はその一部と試料とを接触させる工程、及び前記バクテリオファージ又はその一部と、本発明に係るブドウ球菌からなる群から選択される少なくとも1のブドウ球菌との複合体とを検出する工程、を含む、前記ブドウ球菌を検出するための方法も提供し得る。
「試料」としては特に制限はなく、前記ブドウ球菌が存在し得るものであればよく、上述の動物由来の組織、細胞、若しくはそれらの洗浄液、又は、食品、食品の加工・調理・保存に使用する器具や機器、食品加工工場、食品が晒される環境、動物(豚等)の飼育施設等、若しくはそれらの洗浄液が挙げられる。
バクテリオファージ又はその一部と試料との「接触」及び前記複合体の「検出」には、公知の免疫学的方法を適宜利用することができる。免疫学的方法としては、例えば、IMS、免疫蛍光法、ELISA法、イムノクロマト法が挙げられる。なお、当業者であれば、これら免疫学的方法において、抗体の代わりに、本発明に係るバクテリオファージを用い、前記ブドウ球菌を検出することは理解し得る。
また、本発明の検出方法は、本発明に係るブドウ球菌のうちの少なくとも1のブドウ球菌を検出することができるため、当該ブドウ球菌に起因する疾患の診断方法としても用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者らは、従前、S.aureusを溶菌させる性質を有するバクテリオファージとして、受託番号NITE BP−693及び受託番号NITE BP−694にて各々特定されるバクテリオファージ(φSA012及びφSA039)を単離することに成功している。
本実施例においては、これらバクテリオファージに関し、以下に示す試験にて、滲出性表皮炎罹患ブタより単離されたS.hyicus及びS.chromogenesに対する、溶菌活性を評価した。
(実施例1)
(滲出性表皮炎由来S.hyicus及びS.chromogenesに対する、バクテリオファージφSA012及びφSA039の溶菌活性試験)
溶菌活性を調べる菌株として、Meiji Seikaファルマ株式会社生物産業研究所で保管する、複数の異なる所で飼育された滲出性表皮炎の豚から、マンニット寒天培地を用いた常法により分離・選択した、複数のS.hyicus株及びS.chromogenes株を用いた。
溶菌活性を調べる菌体 S.hyicus株とS.chromogenes株をそれぞれ釣菌し、LB培地に懸濁後、インキュベーター(37℃)に入れ9時間培養し、増菌させた。なお、LB培地の組成は以下のとおりである。すなわち、LB液体培地の場合、NaCl 0.5w/v%、酵母エキス(Yeast extract) 0.5w/w%、ポリペプトン 1w/v%を含有する。LB寒天培地の場合、上記組成に更に1.5% 寒天(agar)を含有する。
バクテリオファージφSA012及びφSA039を、SM buffer溶液(0.1mM NaCl,8mM MgSO・7HO,50mM Tris−HCl,0.1% ゼラチン)に加えて攪拌し、バクテリオファージの懸濁液を得た。
LBトップアガー(agarの濃度:0.5%)を、ヒートブロックを用いて45℃に保温し、増菌後の各菌株をそれぞれ添加した。LBトップアガーと各菌株をよく撹拌した後、LB寒天培地上に均一に注ぎ、約30分間室温放置することで完全に固化させた。
固化したLBトップアガー(軟寒天培地)上にφSA012 5μl、φSA039 5μl又はSM buffer 5μl(Control)をそれぞれ滴下(スポット)し、インキュベーターにおいて一晩培養(37℃ 10時間)した。その後、軟寒天培地上の各スポットに生じたプラーク(plaques)の検出を行った。
バクテリオファージの溶菌活性は、形成されたプラークの透明具合によって判別した。すなわち、もしそのスポットのバクテリオファージが、使用したS.hyicus株又はS.chromogenes株に対して溶菌活性を持っている場合は、一晩培養してもS.hyicus又はS.chromogenesが増殖することが出来ず、軟寒天培地上に透明なスポットが形成されるはずである。プラークが一部濁っていたり、非常に濁っていたりしている場合には、そのバクテリオファージによる宿主(S.hyicus又はS.chromogenes)の溶菌活性が低いことを示す。
このようにして評価した各バクテリオファージの各ブドウ球菌株に対する溶菌活性を、表15に示す。表15〜20において、各スポットに生じたプラークが完全に透明(Clear)な場合を「C」で示し、濁った半透明(Turbid)な場合を「T」で示し、プラークが発生しなかった場合(No Spot)を「N」で示す。また表中、「検体番号」は本実施例において各菌株に付した番号を示す。「菌株入手先」は本実施例において用いた各菌株の入手先を示す。入手先である「MSP生物研」、「酪農学園大学」及び「JCM」は各々、Meiji Seikaファルマ株式会社生物産業研究所、酪農学園大学食品衛生学 臼井教授及びJapan Collection of Microorganism(国立研究開発法人理化学研究所 バイオリソース研究センター 微生物材料開発室)である。さらに「登録番号」は、本実施例において用いた各菌株の各入手先における登録番号(カタログ番号等)を示す。
Figure 2020032232
表15に示した結果から明らかなように、φSA012及びφSA039は共に、S.hyicus及びS.chromogenesの複数の株に対して溶菌活性を示した。
(実施例2)
さらに、受託番号NITE BP−693及び受託番号NITE BP−694にて各々特定されるバクテリオファージ(φSA012及びφSA039)に関し、上記同様の試験にて、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス、スタフィロコッカス・アルゲンテウスについても、溶菌活性を評価した。得られた結果を表16〜20に示す、
Figure 2020032232
Figure 2020032232
Figure 2020032232
Figure 2020032232
Figure 2020032232
表16〜20に示した結果から明らかなように、φSA012及びφSA039は、概して上記ブドウ球菌に対しても溶菌活性を示し、また各ブドウ球菌の複数の株に対しても概して溶菌活性を示した。
以上説明したように、本発明によれば、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス及びスタフィロコッカス・アルゲンテウスを溶菌することが可能となる。特に、本発明に係るバクテリオファージは、これらブドウ球菌の複数の株に対して高い溶菌活性を有するため、前記ブドウ球菌を効率よく殺菌等することができる。さらに、前記バクテリオファージの宿主特異的な吸着性を利用することにより、前記ブドウ球菌を検出することも可能となる。
したがって、本発明は、前記ブドウ球菌の除菌、前記ブドウ球菌に起因する疾患の予防又は治療、及び前記ブドウ球菌の検査等において有用である。
(1)識別の表示:003+φSA012
(2)受託番号:NITE BP−693
(3)受託日:2008年12月25日
(4)寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構
(1)識別の表示:0031+φSA039
(2)受託番号:NITE BP−694
(3)受託日:2008年12月25日
(4)寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構

Claims (5)

  1. 受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを有効成分とする、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス及びスタフィロコッカス・アルゲンテウスからなる群から選択される少なくとも1のブドウ球菌を溶菌するための組成物。
  2. 受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを有効成分とする、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス及びスタフィロコッカス・アルゲンテウスからなる群から選択される少なくとも1のブドウ球菌に起因する疾患を予防又は治療するための組成物。
  3. 注射用組成物、経口用組成物又は外用組成物である、請求項2に記載の組成物。
  4. 外用組成物であり、散布、浸漬、展着又は滴下によって対象に投与される、請求項2に記載の組成物。
  5. 受託番号NITE BP−693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP−694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージ又はその一部を含む、スタフィロコッカス・ハイカス、スタフィロコッカス・クロモジナス、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、スタフィロコッカス・シウリ、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・アウリクラーリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニイ、スタフィロコッカス・コンディメンティ、スタフィロコッカス・フェリス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・インターメディウス、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミュランス、スタフィロコッカス・キシローサス及びスタフィロコッカス・アルゲンテウスからなる群から選択される少なくとも1のブドウ球菌を検出するための組成物。
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