JPWO2020013268A1 - 屈曲性を有する高熱伝導性材料 - Google Patents

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Abstract

アルミナ連続繊維からなるアルミナファイバーシート及び樹脂を含む、屈曲性を有する高熱伝導性材料であって、前記アルミナファイバーシートが、高熱伝導性材料中30〜80質量%含まれる高熱伝導性材料を提供する。

Description

本発明は、屈曲性を有する高熱伝導性材料に関する。
近年、自動車や電機産業において電子機器の小型化や軽量化が進んでいる。一方で、発熱量の増加による熱暴走、熱疲労等が問題となっている。アルミニウム等に代表される金属は、高熱伝導性を有するが、重量、電気絶縁性の観点から問題がある。高熱伝導性樹脂材料は、高熱伝導性金属材料に比べて、軽量化、電気絶縁性の観点で優れ、置き換えが期待される。そこで、高熱伝導性であって電気絶縁性なフィラーを樹脂に複合することによる樹脂の熱伝導性の改善が広く検討されている。
また、搭載する電子機器の小型化、高集積化が進んでおり、その形状も複雑化している。発熱部品は、高温になると反りといった形状の変形が生じる場合が多い。高熱伝導性材料を放熱材料として用いる場合は、発熱部品の温度による変形に追従し、密着を維持できることが重要である。したがって、高熱伝導性材料には屈曲性も要求される。無機フィラーを高濃度に含有することで、高熱伝導性を達成することが可能である。しかし、無機物は脆いため、高濃度に含有すると複合体の屈曲性はなくなるという、高熱伝導性と屈曲性とは矛盾する問題があった。
樹脂の軽量性や加工性といった利点を維持するためには、熱伝導性フィラーを少量添加し、熱伝導経路を効率的に形成することが重要である。そのような観点から、熱伝導性フィラーの形状として粒子状、板状又は繊維状のものが検討されている。例えば、特許文献1には、異なる粒径を有する3つの高熱伝導性アルミナ粒子を複合した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、高熱伝導性無機繊維及び高熱伝導性無機粉末を複合した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。更に、特許文献3には、織物状のアルミナ繊維をシリコーンゴムで被覆した熱伝導材料について高熱伝導性と屈曲性が記載されている。しかし、具体的な実施例は開示されていない。
本発明者らは、繊維状の熱伝導性フィラーとしてアルミナファイバーの利用を報告している(非特許文献1)。ポリビニルアルコール水溶液にベーマイト粒子を分散させた紡糸液を静電紡糸し、焼成によりポリビニルアルコールを除去することでアルミナファイバーが得られる。そして、アルミナファイバーをポリウレタンシートと複合したシートを高伝導性材料として利用する。しかしながら、その屈曲性は報告していなかった。
特開平5−132576号公報 特開平8−283456号公報 特許第4343355号公報
Koji Nakane et al., 「Thermal Conductivity of Polyurethane Sheets containing Alumina Nanofibers」, SENI GAKKAISHI Vol. 71, No.1, 67 (2015)
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アルミナファイバーシート及び樹脂を含み、屈曲性を有する高熱伝導性材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、アルミナ連続繊維からなる高熱伝導性アルミナファイバーシートを適度な量で樹脂と複合させた複合体が十分な熱伝導性を有し、熱伝導性に優れ、屈曲後の熱伝導性の維持も優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記高熱伝導性材料を提供する。
1.アルミナ連続繊維からなるアルミナファイバーシート及び樹脂を含む、屈曲性を有する高熱伝導性材料であって、前記アルミナファイバーシートが、高熱伝導性材料中30〜80質量%含まれる高熱伝導性材料。
2.前記アルミナファイバーシートが、前記高熱伝導性材料中40〜70質量%含まれる1の高熱伝導性材料。
3.前記アルミナ連続繊維のアスペクト比が、100以上である1又は2の高熱伝導性材料。
4.前記アスペクト比が、1,000以上である3の高熱伝導性材料。
5.前記アルミナファイバーシートが、不織布状のアルミナ連続繊維及び一定方向に配向したアルミナ連続繊維から選ばれる少なくとも1種以上からなる1〜4のいずれかの高熱伝導性材料。
6.前記アルミナファイバーシートが、αアルミナを含む1〜5のいずれかの高熱伝導性材料。
7.前記αアルミナが、前記アルミナファイバーシート中50質量%以上含まれる6の高熱伝導性材料。
8.前記アルミナ連続繊維の平均繊維径が、50〜2,000nmである1〜7のいずれかの高熱伝導性材料。
9.前記アルミナ連続繊維の平均繊維径が、100〜1,000nmである8の高熱伝導性材料。
10.前記高熱伝導性材料がシート状である1〜9のいずれかの高熱伝導性材料。
11.前記高熱伝導性材料がシート状であり、厚さが20〜2,000μmである10の高熱伝導性材料。
12.前記高熱伝導性材料がシート状であり、厚さが40〜1,500μmである11の高熱伝導性材料。
13.前記樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリスチレン及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である1〜12のいずれかの高熱伝導性材料。
14.熱伝導率が、5W/mK以上である1〜13のいずれかの高熱伝導性材料。
15.直径5mmの曲率で10回曲げた後の熱伝導率が80%以上を維持する1〜14のいずれかの高熱伝導性材料。
16.前記高熱伝導性材料が、電気絶縁性である1〜15のいずれかの高熱伝導性材料。
17.前記高熱伝導性材料の表面抵抗値が、1×1011Ω/□以上である1〜16のいずれかの高熱伝導性材料。
本発明の高熱伝導性材料は、適度な量のアルミナ連続繊維を含むため熱伝導性に優れ、屈曲後の熱伝導性の維持も良好である。
本発明における静電紡糸法を示す概略説明図である。 製造例1で得られたアルミナファイバーシートAの走査型電子顕微鏡写真である。 製造例1で得られたアルミナファイバーシートAのX線回折図である。 実施例1−1で得られた複合体Aの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1−2で得られた複合体B1の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1−2で得られた複合体D2の走査型電子顕微鏡写真である。
[高熱伝導性材料]
本発明の高熱伝導性材料は、アルミナ連続繊維(以下、アルミナファイバーともいう。)からなるアルミナファイバーシート及び樹脂を含む。
前記アルミナファイバーは、αアルミナを含むことが好ましい。αアルミナを含むことによって、より高い熱伝導性を得ることができる。前記αアルミナは、アルミナファイバー中、50質量%以上含まれることが好ましく、90質量%以上含まれることがより好ましく、99質量%以上含まれることがより一層好ましい。また、αアルミナは100質量%含まれていてもよいが、通常99.9質量%以下である。
前記アルミナファイバーは、αアルミナ以外の成分を含んでもよい。αアルミナ以外の成分としては、γアルミナ、δアルミナ、θアルミナ、非晶質アルミナ等が挙げられる。αアルミナ以外の成分を含む場合、その含有量は、アルミナファイバー中、50質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、1質量%以下がより一層好ましい。
前記アルミナファイバーは連続繊維であり、繊維長÷繊維径で表されるアスペクト比が、100以上のものが好ましく、1,000以上のものがより好ましい。更には繊維長が長いため両末端が識別できなくなり、アスペクト比が求められない連続繊維であることがより好ましい。
前記アルミナファイバーは、その平均繊維径が、50〜2,000nmであることが好ましく、100〜1,000nmであることがより好ましい。平均繊維径が前記範囲であれば、樹脂との複合が容易に達成される。なお、本発明において平均繊維径は、アルミナファイバーの走査型顕微鏡写真から、画像解析ソフトを用いて求めた値である。また、前記アルミナファイバーは、非多孔質であることが好ましい。
前記アルミナファイバーシートは、アルミナファイバーが不織布状又は一定方向に配向した状態でシート化していることが好ましい。織物状に織る工程が必要ないため簡便に製造できる。
本発明の高熱伝導性材料に含まれる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンサクシネート/アジペート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリグルコール酸、変性でんぷん、酢酸セルロース、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、キチン、キトサン、リグニン等が挙げられる。これらのうち、PVA、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等が好ましい。前記樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の高熱伝導性材料におけるアルミナファイバーシートの含有量の下限は、30質量%であるが、40質量%がより好ましく、50質量%が更に好ましい。また、その上限は、80質量%であるが、75質量%がより好ましく、70質量%が更に好ましい。前記範囲でアルミナファイバーシートを含むことで、高い熱伝導性と屈曲性が得られる。
本発明の高熱伝導性材料は、高い熱伝導性を有する。具体的には、熱伝導率が、5W/mK以上とすることができ、好ましくは10W/mK以上、より好ましくは15W/mK以上とすることができる。
本発明の高熱伝導性材料は、高い屈曲性を有する。具体的には直径5mm以上の曲率で10回曲げた後に、熱伝導率が70%以上を維持していることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
本発明の高熱伝導性材料は、電気絶縁性の高熱伝導性粒子を含むことができる。高熱伝導性粒子としては、例えばアルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、及びダイヤモンドが挙げられる。前記高熱伝導性粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の高熱伝導性材料はアルミナ以外の無機繊維を含むことができる。無機繊維としては、例えばガラス繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、岩石繊維が挙げられる。前記無機繊維は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、本発明の高熱伝導性材料は、電気絶縁性であることが好ましい。具体的には、表面抵抗値が、1×1011Ω/□以上とすることができ、好ましくは1×1012Ω/□以上、より好ましくは1×1013Ω/□以上とすることができる。
[高熱伝導性材料の製造方法]
本発明の高熱伝導性材料は、
(1)アルミナ源及び水溶性高分子を含む分散液を紡糸材料として、静電紡糸法によってアルミナファイバーシートを作製する工程、
(2)作製したアルミナファイバーシートを焼成する工程、及び
(3)焼成したアルミナファイバーシートに樹脂溶液を含浸させる工程
を含む方法によって製造することができる。
[工程(1)]
工程(1)は、アルミナ源及び水溶性高分子を含む分散液を紡糸材料として、静電紡糸法によってアルミナ源を含むファイバーシートを作製する工程である。
前記アルミナ源としては、アルミナ水和物、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナ等が好ましく、特にアルミナ一水和物が好ましい。前記アルミナ源としては、ベーマイト粒子、アルミナゾル粒子等が好適に使用できる。前記ベーマイト粒子としては、特に限定されないが、例えば、サソール社製「DISPERAL」及び「DISPAL」、河合石灰(株)製「セラシュール」(登録商標)、大明化学工業(株)製「ベーマイト粉体」等が挙げられる。また、アルミナゾル粒子としては、特に限定されないが、例えば、日産化学(株)製アルミナゾル「AS-200」、「AS-550」、「AS-520」、川研ファインケミカル(株)製アルミナゾル「10A」、「10C」、「10D」、「A2」、「CSA-110A」、「F-1000」、「F-3000」、多木化学(株)製バイラール(登録商標)「Al-L7」、「Al-ML15」、「Al-C20」、「AS-l10」等が挙げられる。前記アルミナ源としてベーマイト粒子又はアルミナゾル粒子を使用する場合、その一次粒子径は、紡糸液中での分散安定性及び焼成時の焼結性の観点から、2〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましい。なお、本発明において一次粒子径は、レーザー回折法による測定値である。前記アルミナ源は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記アルミナ源の含有量は、分散液中1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、3〜20質量%がより一層好ましい。
前記水溶性高分子としては、例えば、PVA、セルロース、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記水溶性高分子の含有量は、分散液中5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がより一層好ましい。
前記分散液に使用し得る溶媒としては、前記水溶性高分子を溶解し、アルミナ源を分散できる水がよい。更に、水に溶解する溶媒を2種以上混合してもよい。水に混合可能な溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチルメチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトン(MIBK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノン、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。その他の溶媒を含む場合、その含有量は、前記水溶性高分子が溶解し得る限り特に限定されない。
図1は、本発明における静電紡糸法を示す概略説明図である。静電紡糸法は、電圧供給装置1により電圧を印加された金属ノズル2からアースされたコレクタ3に紡糸液を射出する。紡糸液が飛散中に溶媒は揮発し、固形分がファイバー状にコレクタ3に集積する方法である。静電紡糸法は、電界紡糸法あるいはエレクトロスピニング法とも呼ばれる。
静電紡糸法は、市販の装置で行うことができる。紡糸条件は適宜選択され、例えば、紡糸距離4(金属ノズル−ファイバー捕集コレクタ間距離)が5〜30cm、金属ノズルとファイバー捕集コレクタ間の印加電圧が5〜50kV、紡糸液射出量が0.1〜5.0mL/時間とすることができる。ファイバー捕集コレクタは、ドラム状や平板状のものを用いることができる。ドラム状ファイバー捕集コレクタを用いると、ドラムを高速回転させることにより金属ノズルから射出されたファイバーがドラムに巻き取られ、ファイバーが一定方向に配向したシートを得ることができる。ドラム状ファイバー捕集コレクタの回転数は、例えば50〜5,000回転/分で使用される。平板状ファイバー捕集コレクタを用いると、無配向なファイバーからなる不織布状のシートが得られる。
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)で作製したアルミナ源と水溶性高分子とを含むファイバーシートを焼成し、アルミナファイバーシートを作製する工程である。前記焼成温度は1,200℃以上が好ましい。1,200℃以上で焼成を行うと、得られるアルミナファイバーシート中のアルミナがα晶へ変化し、より高い熱伝導性を得ることができる。焼成温度の上限は、特に限定されないが、アルミナが溶融しない温度以下であることが好ましく、2,000℃以下がより好ましい。
アルミナ源と水溶性高分子とを含むファイバーシートを焼成前に加熱プレスすることによって、ファイバー同士の接触部分を増やしてもよい。加熱温度は、25〜160℃が好ましく、40〜120℃より好ましい。プレス圧力は、1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましい。プレス圧力の上限は、特に限定されないが、好ましくは50MPa、より好ましくは40MPaである。
焼成は、電気炉、ガス炉等の焼成炉を用いて行うことができる。また、焼成は、大気雰囲気下、酸素雰囲気下で行うことができるが、PVA由来の炭素成分が消失する条件が好ましい。
焼成時間は、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、5時間以上がより一層好ましい。焼成時間の上限は、特に限定されないが、好ましくは10時間、より好ましくは8時間である。焼成時間が前記範囲であれば、PVA由来の炭素成分の消失と、アルミナのα晶結晶化が進む。このとき、アルミナのα晶結晶化率は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより一層好ましい。α晶結晶化率は、最大で100質量%であるが、通常99.9質量%以下である。
なお、焼成温度に達するまでは、20℃/分以下の昇温速度で昇温させることが好ましい。昇温速度としては、15℃/分以下がより好ましく、10℃/分以下がより好ましい。昇温速度が前記範囲であれば、PVA由来の炭素成分の消失と、アルミナのα晶結晶化が進む。
焼成により得られたアルミナファイバーは、その平均繊維径が、50〜2,000nmであることが好ましく、100〜1,000nmであることがより好ましい。平均繊維径が前記範囲であれば、樹脂との複合が容易に達成される。
また、アルミナファイバーシートの厚みは、10〜2,000μmが好ましく、20〜1,500μmがより好ましく、40〜1,000μmがより一層好ましい。
[工程(3)]
工程(3)は、工程(2)で作製したアルミナファイバーシートに、樹脂溶液を含浸させる工程である。この工程によって、アルミナファイバーと樹脂との複合体を形成させ、高熱伝導性材料とすることができる。なお、アルミナファイバーシートは、前記複合体中1枚のみが含まれていてもよく、複数枚が含まれていてもよい。
得られる複合体が高熱伝導性を示すためには、適度にアルミナファイバーを含む必要がある。前記樹脂溶液中の樹脂濃度は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がより一層好ましく、5質量%以下が更に好ましい。樹脂濃度が15質量%を超えると、樹脂溶液中の樹脂の割合が多いため、複合体中の樹脂の含有量が多く、アルミナファイバーは低含有量となり、高熱伝導性を示さないことがある。なお、前述した樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記樹脂溶液に用いる溶媒としては、前記樹脂を溶解し得るものであれば特に限定されない。例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、MEK、MIBK、PGME、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ、THF、1,4−ジオキサン、DMF、DMAc、NMP、シクロヘキサノン、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。前記溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
焼成したアルミナファイバーシートに樹脂溶液を含浸させる方法としては、樹脂を溶解させた溶液を滴下する方法、モノマーを溶解させた溶液を滴下し、後の加熱工程でモノマーを反応させる方法等が挙げられる。
焼成したアルミナファイバーシートに樹脂溶液を含浸させた後は、減圧を行い加熱により溶媒の除去と樹脂の硬化を行うことで複合体を得ることができる。このとき、減圧は、樹脂が隙間なく含浸できる限り必要はないが、減圧をする場合は1,000Pa以下にすることが好ましく、100Pa以下にすることがより好ましい。加熱は、溶媒を除去し樹脂の硬化を行うことができ、かつ樹脂が熱分解しない限り特に限定されないが、通常100〜150℃で行うことが好ましく、100〜140℃で行うことがより好ましく、110〜130℃で行うことがより一層好ましい。また、加熱時間は、通常30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
以上の方法によって、アルミナファイバーシートを30〜80質量%含むアルミナファイバーシートと樹脂との複合体を製造することができる。前記複合体の厚みは、20〜2,000μmが好ましく、40〜1,500μmがより好ましい。
本発明の高熱伝導性材料は、放熱材料として利用でき、例えば、放熱シート、放熱テープ、放熱回路基板、放熱筐体、放熱封止剤、ヒートシンク、ヒートパイプ等の放熱部材用の柔軟性放熱材料として好適に利用できる。また、これらの放熱部材は、例えば、LED、パワー半導体、CPU、リチウムイオン電池等のデバイスに好適に利用できる。更に、これらの放熱デバイスは、例えば、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、テレビ、ハードディスクレコーダー、タブレットパソコン、ノートパソコン、デスクトップパソコン等のデジタル家電製品、ハイブリット自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の次世代自動車、家庭用照明、産業用照明、車載用照明等の次世代照明装置、太陽電池、燃料電池、地熱発電等の次世代発電装置、水電解による水素製造等次世代エネルギーキャリア製造装置等に好適に利用できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、使用した装置及び測定条件は以下のとおりである。なお、アルミナファイバーの平均繊維径は、アルミナファイバーの走査型顕微鏡写真から画像解析ソフト「Adobe Photoshop CS3」又は「ExtractMosaic」を用いて、繊維径を10箇所測定したものの平均値である。アルミナファイバーの平均繊維長は、アルミナファイバーの走査型顕微鏡写真から画像解析ソフト「Adobe Photoshop CS3」又は「ExtractMosaic」を用いて、繊維長を10箇所測定したものの平均値である。アルミナファイバーのアスペクト比は、アスペクト比=繊維長÷繊維径により計算から求めた。また、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下のとおりである。
(1)静電紡糸法:インフュージョンポンプ(シリンジポンプ):(有)メルクエスト製FP-1000、高圧電源:松定プレシジョン(株)製HR-40R0.75、又は株式会社メック製静電防止装置NANON-03
(2)走査型電子顕微鏡:(株)キーエンス製VE-9800、(株)日立ハイテクノロジーズ製Miniscope TM3000
(3)X線回折装置:(株)リガク製MiniFlex 2
(4)熱重量分析装置:BRUKER社製TG-DTA 2000SA
(5)熱拡散率測定装置:(株)ベテル製サーモウェーブアナライザーTA-35
[1]アルミナファイバーシートの製造
[製造例1]
10質量%PVA(富士フィルム和光純薬(株)製、平均重合度:1,500、ケン化度:99%)水溶液10.0質量部に、アルミナ源としてベーマイト粉末(サソール社製DISPERAL P2、アルミナ成分72%、一次粒子径20nm)0.598質量部を添加し、攪拌して分散させた。
得られた水分散液2mLを紡糸液とし、先端に金属ノズルが取り付けられたシリンジ内に充填した。ファイバー捕集のコレクタは、直径15cmの回転ドラムを使用した。金属ノズルとドラムコレクタとを電圧供給装置に電気的に接続した。電圧供給装置により、ドラムコレクタ側をアースとして金属ノズル側に20kVの電圧を印加した。金属ノズルとドラムコレクタとの距離を15cmに調整した。ドラムコレクタを毎分4,000回転で回転させた。シリンジから押出速度1.0mL/hにて紡糸液を回転するドラムコレクタに向けて射出することにより、PVAとベーマイトとからなるファイバーを回転するドラムコレクタ上に形成させ、アルミナ源を含むファイバーシートを得た。
前記アルミナ源を含むファイバーシートを電気炉内に入れ、昇温速度10℃/分にて、焼成温度1,200℃まで昇温した。1,200℃で5時間焼成した後、放冷し、室温まで冷却することにより、アルミナファイバーシートAを得た。アルミナファイバーシートAの走査型電子顕微鏡写真を、図2に示す。アルミナファイバーシートA中のアルミナファイバーの平均繊維径は、約230nmであった。また、アルミナファイバーの繊維長が長いため両末端が識別できず、アスペクト比は算出できなかった。
アルミナファイバーシートAのX線回折図(Niフィルター、CuKα線、30kV、15mA)を、図3に示す。図3の結果から、アルミナファイバーシートAは、αアルミナを含み、α晶結晶化率は52.73%であった。
[製造例2]
10質量%PVA(富士フィルム和光純薬(株)製、平均重合度:1,500、ケン化度:99%)水溶液10.0質量部に、アルミナ源としてベーマイト粉末(サソール社製DISPERAL P2、アルミナ成分72%、一次粒子径20nm)0.598質量部を添加し、攪拌して分散させた。
得られた水分散液2mLを紡糸液とし、先端に金属ノズルが取り付けられたシリンジ内に充填した。ファイバー捕集のコレクタは、平板状コレクタを使用した。金属ノズルと平板状コレクタとを電圧供給装置に電気的に接続した。電圧供給装置により、平板状コレクタ側をアースとして金属ノズル側に20kVの電圧を印加した。金属ノズルと平板状コレクタとの距離を15cmに調整した。シリンジから押出速度1.0mL/hにて紡糸液を平板状コレクタに向けて射出することにより、PVAとベーマイトとからなるファイバーを平板状コレクタ上に形成させ、アルミナ源を含むファイバーシートを得た。
前記アルミナ源を含むファイバーシートを電気炉内に入れ、昇温速度10℃/分にて、焼成温度1,200℃まで昇温した。1,200℃で5時間焼成した後、放冷し、室温まで冷却することにより、アルミナファイバーシートBを得た。アルミナファイバーシートB中のアルミナファイバーの平均繊維径は、約143nmであった。また、アルミナファイバーの繊維長が長いため両末端が識別できず、アスペクト比は算出できなかった。
[製造例3]
蒸留水78.0質量部に、硝酸(純正化学(株)製)5.0質量部及びアルミナ源としてベーマイト粉末(サソールケミカルズジャパン(株)製DISPERAL P2、アルミナ成分72%、一次粒子径20nm)22.0質量部を添加し、超音波処理をして分散させた。更に、PVA(日本合成化学(株)製ゴーセノールGM14L)5.0質量部を添加し、オイルバス(70℃)で加熱攪拌することで紡糸液を得た。
得られた紡糸液2mLを、先端に金属ノズルが取り付けられたシリンジ内に充填した。静電紡糸装置NANON-03((株)メック製)を用いてファイバーの紡糸を行った。ファイバー捕集のコレクタは、直径20cmの回転ドラムを使用した。ドラムコレクタ側をアースとして金属ノズル側に25kVの電圧を印加した。金属ノズルとドラムコレクタとの距離を12.5cmに調整した。ドラムコレクタを毎分2,000回転で回転させた。シリンジから押出速度1.0mL/hにて紡糸液を回転するドラムコレクタに向けて射出することにより、PVAとベーマイトとからなるファイバーを回転するドラムコレクタ上に形成させ、アルミナ源を含むファイバーシートを得た。
前記アルミナ源を含むファイバーシート(大きさ5cm×5cm)をテフロン(登録商標)シートで挟み、卓上型テストプレス装置(テスター産業(株)製SA-302)によって、温度120℃、圧力20MPaにて30分間、加熱プレスを行った。冷却後、テフロン(登録商標)シートから剥がし、電気炉内に入れ昇温速度10℃/分にて、焼成温度1,300℃まで昇温した。1,300℃で5時間焼成した後、放冷し、室温まで冷却することにより、アルミナファイバーシートCを得た。アルミナファイバーシートC中のアルミナファイバーの平均繊維径は、約262nmであった。また、アルミナファイバーの繊維長が長いため両末端が識別できず、アスペクト比は算出できなかった。
[2]高熱伝導性材料の製造
[実施例1−1]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を6分の1に希釈した水溶液(固形分5質量%)を調製した。アルミナファイバーシートA22質量部に、当該希釈水溶液159質量部を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートAとポリウレタンとの複合体Aを得た。複合体Aはシート状で得られ、厚さは48μmであった。
複合体Aについて、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体A中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体A中のアルミナファイバーシートAの含有量は73.4質量%(46.0体積%)であった。
複合体Aの走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。複合体Aにおいて、アルミナファイバーは、長繊維が配向した状態で複合されていた。
[実施例1−2]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を3分の1に希釈した水溶液(固形分10質量%)を調製した。アルミナファイバーシートB25質量部に、当該希釈水溶液318質量部を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートBとポリウレタンとの複合体B1を得た。複合体B1はシート状で得られ、厚さは40μmであった。
複合体B1について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体B1中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体B1中のアルミナファイバーシートBの含有量は44.0質量%(19.5体積%)であった。
複合体B1の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。複合体B1において、アルミナファイバーは、長繊維が無配向な状態で(すなわち、不織布状で)複合されていた。
[実施例1−3]
PVA(富士フィルム和光純薬(株)製、平均重合度:1,500、ケン化度:99%)の水溶液(固形分10質量%)を調製した。アルミナファイバーシートB20質量部に、当該水溶液114質量部を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とPVAの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートBとPVAとの複合体B2を得た。複合体B2はシート状で得られ、厚さは33μmであった。
複合体B2について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体B2中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体B2中のアルミナファイバーシートBの含有量は63.6質量%(36.0体積%)であった。
[実施例1−4]
シリコーン樹脂溶液(信越化学工業(株)製KR-112、固形分30質量%)をトルエン(純正化学(株)製)で3分の1に希釈した溶液(固形分10質量%)を調製した。アルミナファイバーシートC20.0質量部に、当該トルエン希釈溶液300.0質量部を含浸させた。120℃でトルエンの除去とシリコーン樹脂の加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートCとシリコーン樹脂との複合体C1を50.0質量部得た。
複合体C1はシート状で得られ、厚さは87μmであった。また、複合体C1中のアルミナファイバーシート含有量は、40.0質量%(15.4体積%)と計算された。
[実施例1−5]
PVDF(シグマアルドリッチ社製)12.0質量部をDMF(純正化学(株)製)88.0質量部に加え、オイルバス(80℃)で攪拌し、均一な溶液(固形分12質量%)を調製した。アルミナファイバーシートC26.0質量部に、当該DMF溶液325.0質量部を含浸させた。160℃でDMFの除去を行い、アルミナファイバーシートCとPVDFとの複合体C2を65.0質量部得た。
複合体C2はシート状で得られ、厚さは83μmであった。また、複合体C2中のアルミナファイバーシート含有量は、40.0質量%(23.4体積%)と計算された。
[実施例1−6]
PVA(日本合成化学(株)製ゴーセノールGM14L)10.0質量部を精製水90.0質量部に加え、オイルバス(80℃)で攪拌し、均一な溶液(固形分10質量%)を調製した。アルミナファイバーシートC25.0質量部に、当該水溶液375.0質量部を含浸させた。100℃で水の除去を行い、アルミナファイバーシートCとPVAとの複合体C3を63.0質量部得た。
複合体C3はシート状で得られ、厚さは62μmであった。また、複合体C3中のアルミナファイバーシート含有量は、40.0質量%(17.6体積%)と計算された。
[実施例1−7]
ガラス容器に、ピロメリット酸無水物(東京化成工業(株)製)6.7質量部、パラフェニレンジアミン(東京化成工業(株)製)2.7質量部、4,4''−ジアミノ−p−ターフェニル1.6質量部及びNMP(純正化学(株)製)89質量部を加え、50℃で12時間攪拌し、固形分11質量%のポリアミック酸のNMP溶液を作製した。アルミナファイバーシートC26質量部に、当該NMP溶液360質量部を含浸させた。100℃で1時間加熱し、その後窒素下400℃で2時間加熱することポリアミック酸の硬化を行い、アルミナファイバーシートとポリイミド樹脂との複合体C4を63.0質量部得た。
複合体C4はシート状で得られ、厚さは49μmであった。また、複合体C4のマグネシアファイバーシート含有量は、40.0質量%(19.6体積%)と計算された。
[実施例1−8]
ポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)12.0質量部をDMF(純正化学(株)製)88.0質量部に加え、オイルバス(80℃)で攪拌し、均一な溶液(固形分12質量%)を調製した。アルミナファイバーシートCの28.0質量部に、当該DMF溶液350.0質量部を含浸させた。160℃でDMFの除去を行い、アルミナファイバーシートCとポリスチレンとの複合体C5を70.0質量部得た。
複合体C5はシート状で得られ、厚さは63μmであった。また、複合体C5中のアルミナファイバーシート含有量は、40.0質量%(15.3体積%)と計算された。
[実施例1−9]
ガラス容器に、トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学(株)製TEPIC(登録商標))5.0質量部、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライト(登録商標)TD2131)5.2質量部及びNMP(純正化学(株)製)92.0質量部を加え、60℃で加熱攪拌した。該NMP溶液を室温に冷却し、2−エチル−4−メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部を添加し、攪拌することで、固形分10質量%のNMP溶液を作製した。アルミナファイバーシートC22.0質量部に、当該NMP溶液330質量部を含浸させた。100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱することで、アルミナファイバーシートとエポキシ樹脂の複合体C6を55.0質量部得た。
複合体C6はシート状で得られ、厚さは81μmであった。また、複合体C6中のアルミナファイバーシート含有量は、40.0質量%(19.4体積%)と計算された。
[比較例1−1]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を3分の2に希釈した水溶液(固形分20質量%)を調製した。アルミナファイバーシートAに、当該希釈水溶液を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートAとポリウレタンとの複合体D1を得た。複合体D1はシート状で得られ、厚さは82μmであった。
複合体D1について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体C中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体D1中のアルミナファイバーシートの含有量は24.4質量%(9.1体積%)であった。
[比較例1−2]
アルミナファイバーシートA及びポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)がそれぞれ固形分9質量%と固形分11質量%になるよう水で希釈し、3分間超音波処理することによりアルミナファイバーシートを粉砕、分散させ、アルミナファイバー及びポリウレタンの分散液を得た。得られた分散液をシリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥させた後、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーとポリウレタンとの複合体D2を得た。複合体D2はシート状で得られ、厚さは90μmであった。
複合体D2について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体D2中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体中のアルミナファイバーシートの含有量は44.3質量%(19.7体積%)であった。
複合体D2の走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。複合体D2において、アルミナファイバーは、短繊維化した状態で複合されていた。超音波で水に分散させた時に、短繊維化したと考えられる。アスペクト比は、繊維径及び繊維長から37と計算された。
[比較例1−3]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を2分の1に希釈した水溶液(固形分15質量%)を調製した。アルミナファイバーシートC21.0質量部に、当該水溶液115.0質量部を加え、1分間超音波処理することにより、アルミナファイバーシートを粉砕、分散させ、アルミナファイバー及びポリウレタンの分散液を得た。得られた分散液をシリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥させた後、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーとポリウレタンとの複合体D3を38.0質量部得た。
複合体D3はシート状で得られ、厚さは131μmであった。また、複合体D3中のアルミナファイバーシート含有量は、55.0質量%(27.4体積%)と計算された。複合体D3中のアルミナファイバーアスペクト比は、繊維径及び繊維長から109と計算された。
[比較例1−4]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を2分の1に希釈した水溶液(固形分15質量%)を調製した。アルミナファイバーシートC23.0質量部に、当該希釈水溶液125.0質量部を加え、30秒間超音波処理することにより、アルミナファイバーシートを粉砕、分散させ、アルミナファイバー及びポリウレタンの分散液を得た。得られた分散液をシリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥させた後、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーとポリウレタンとの複合体D4を42.0質量部得た。
複合体D4はシート状で得られ、厚さは163μmであった。また、複合体D4中のアルミナファイバーシート含有量は、55.0質量%(27.4体積%)と計算された。複合体D4中のアルミナファイバーアスペクト比は、繊維径及び繊維長から208と計算された。
[比較例1−5]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を2分の1に希釈した水溶液(固形分15質量%)を調製した。アルミナファイバーシートC15.0質量部に、当該希釈水溶液83.0質量部を加え、10秒間超音波処理することにより、アルミナファイバーシートを粉砕、分散させ、アルミナファイバー及びポリウレタンの分散液を得た。得られた分散液をシリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥させた後、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーとポリウレタンとの複合体D5を42.0質量部得た。
複合体D5はシート状で得られ、厚さは272μmであった。また、複合体D5中のアルミナファイバーシート含有量は、55.0質量%(27.4体積%)と計算された。複合体D5中のアルミナファイバーアスペクト比は、繊維径及び繊維長から657と計算された。
[比較例1−6]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を20分の1に希釈した水溶液(固形分1.5質量%)を調製し、アルミナファイバーシートBに、当該希釈水溶液を含浸させた。真空下、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートAとポリウレタンとの複合体D6を得た。複合体D6はシート状で得られ、厚さは82μmであった。
複合体D6について、熱重量分析計を用いて10℃/分で500℃まで昇温することにより、複合体D6中のアルミナファイバーシート含有量を計測した。複合体D6中のアルミナファイバーシートBの含有量は、84.7質量%(63.1体積%)であった。
[比較例1−7]
ポリウレタンエマルション(第一工業製薬(株)製スーパーフレックス300、固形分30質量%)を3分の2に希釈した水溶液(固形分20質量%)を調製し、シリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥後、120℃で水の除去とポリウレタンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートを含まないポリウレタンシートを得た。シートの厚さは、110μmであった。
[比較例1−8]
シリコーン樹脂溶液(信越化学工業(株)製KR−112、固形分30質量%)をトルエン(純正化学(株)製)で3分の1に希釈した溶液(固形分10質量%)を調製し、シリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥後、120℃でトルエンの除去とシリコーンの加熱硬化とを行い、アルミナファイバーシートを含まないシリコーンシートを得た。シートの厚さは、160μmであった。
[比較例1−9]
PVDF(シグマアルドリッチ製)12.0質量部をDMF(純正化学(株)製)88.0質量部に加え、オイルバス(80℃)で攪拌し均一な溶液(固形分12質量%)を調製し、シリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥後、150℃でDMFの除去を行い、アルミナファイバーシートを含まないPVDFシートを得た。シートの厚さは、102μmであった。
[比較例1−10]
PVA(日本合成化学(株)製ゴーセノールGM14L)10.0質量部を精製水90.0質量部に加え、オイルバス(80℃)で攪拌し均一な溶液(固形分10質量%)を調製し、シリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥後、100℃で水の除去を行い、アルミナファイバーシートを含まないPVAシートを得た。シートの厚さは、97μmであった。
[比較例1−11]
ガラス容器に、ピロメリット酸無水物(東京化成工業(株)製)6.7質量部、パラフェニレンジアミン(東京化成工業(株)製)2.7質量部、4,4''−ジアミノ−p−ターフェニル1.6質量部、及びNMP(純正化学(株)製)89質量部を加え、50℃で12時間攪拌し、固形分11質量%のポリアミック酸のNMP溶液を作製した。該NMP溶液をシリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥後、100℃で1時間加熱した。シリコーンシートから剥離し、窒素下400℃で2時間加熱することポリアミック酸の硬化を行い、アルミナファイバーシートを含まないポリイミドシートを得た。シートの厚さは、40μmであった。
[比較例1−12]
ポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)12.0質量部をDMF(純正化学(株)製)88.0質量部に加え、オイルバス(80℃)で攪拌し、均一な溶液(固形分12質量%)を調製し、シリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥後、150℃でDMFの除去を行い、アルミナファイバーシートを含まないポリスチレンシートを得た。シートの厚さは、140μmであった。
[比較例1−13]
ガラス容器に、トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学(株)製TEPIC(登録商標))5.0質量部、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製フェノライト(登録商標)TD2131)5.2質量部、及びNMP(純正化学(株)製)92.0質量部を加え、60℃で加熱攪拌した。該NMP溶液を室温に冷却し、2−エチル−4−メチルイミダゾール(関東化学(株)製)0.050質量部を添加し攪拌する事で固形分10質量%のNMP溶液を作製した。該NMP溶液をシリコーンシート上に滴下した。室温で一晩乾燥後、100℃で5分間、その後180℃で1時間加熱する事で、アルミナファイバーシートを含まないエポキシ樹脂シートを得た。シートの厚さは、231μmであった。
[3]高熱伝導性材料の評価
熱拡散率測定装置を用いて、熱拡散率を測定した。熱拡散率から熱伝導率への計算は、アルミナの比重3,890kg/m3、アルミナの比熱750J/kg℃、ポリウレタン樹脂の比重1,200kg/m3、ポリウレタン樹脂の比熱1,900J/kg℃、シリコーン樹脂の比重1,060kg/m3、シリコーン樹脂の比熱1,200J/kg℃、PVDF樹脂の比重1,780kg/m3、PVDF樹脂の比熱1,200J/kg℃、PVA樹脂の比重1,250kg/m3、PVA樹脂の比熱1,680J/kg℃、ポリイミド樹脂の比重1,420kg/m3、ポリイミド樹脂の比熱1,100J/kg℃、ポリスチレンの比重1,055kg/m3、ポリスチレンの比熱1,340J/kg℃、エポキシ樹脂の比重1,400kg/m3、エポキシ樹脂の比熱1,400J/kg℃を用い、それぞれの含有量から複合体の比重と比熱を計算することで行った。
[実施例2−1]
複合体Aについて、熱拡散率測定装置を用いて熱拡散率を測定した。熱拡散率に複合体の比重及び比熱をかけることで、熱伝導度を計算した。
また、熱拡散性を測定した複合体Aについて屈曲性試験を行った。直径5mm、長さ5.5cmの金属棒に、ファイバー配向方向が曲がる様に複合体シートを巻き付け、その後平坦な状態に戻した。これを10回繰り返した。その後、前述の方法で熱拡散性の測定及び熱伝導率への計算を行った。熱伝導率の維持率は、屈曲性試験前の熱伝導率に対する屈曲試験後の熱伝導率の百分率で表した。
[実施例2−2]
複合体B1について、熱拡散率測定装置を用いて熱拡散率を測定した。熱拡散率に複合体の比重及び比熱をかけることで、熱伝導度を計算した。
また、熱拡散性を測定した複合体B2について屈曲性試験を行った。直径5mm、長さ5.5cmの金属棒に、複合体シートを巻き付け、その後平坦な状態に戻した。これを10回繰り返した。その後、前述の方法で熱拡散性の測定及び熱伝導率への計算を行った。熱伝導率の維持率は、屈曲性試験前の熱伝導率に対する屈曲試験後の熱伝導率の百分率で表した。
[実施例2−3]
複合体B2について、熱拡散率の測定、熱伝導率の計算及び屈曲性試験を実施例2−2と同様に行った。
[実施例2−4〜2−9]
複合体C1〜C6について、熱拡散率の測定、熱伝導率の計算及び屈曲性試験を実施例2−1と同様に行った。
[比較例2−1〜2−2]
複合体D1及びD2について、熱拡散率の測定、熱伝導率の計算及び屈曲性試験を実施例2−1と同様に行った。
[比較例2−3〜2−5]
複合体D3〜D5について、熱拡散率の測定及び熱伝導率の計算を実施例2−1と同様に行った。
[比較例2−6]
複合体D6について、熱拡散率の測定及び熱伝導率の計算を実施例2−1と同様に行った。また、屈曲性試験を実施例2−1と同様に行ったが、1回目の屈曲で試料が破壊した。アルミナ含有量が多いため、試料が脆くなるためと考えられた。
[比較例2−7〜2−13]
比較例1−7〜1−13で作製したアルミナファイバーシートを含まないシートについて、熱拡散率測定装置を用いて、熱拡散率の測定を行った。熱拡散率から熱伝導率への計算及び屈曲性試験は実施例2−1と同様に行った。
表1〜4に、配向したファイバーに平行方向の熱伝導率(4箇所の平均値)、配列配向したファイバーに直角方向の熱伝導率(4箇所の平均値)、無配向なファイバーが複合されたシートの平面方向の熱伝導率(4箇所の平均)、シート厚さ方向の熱伝導率(6箇所の平均値)を示す。
Figure 2020013268
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Figure 2020013268
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表1〜2に示した結果より、本発明の高熱導電性材料は、5W/mK以上の高熱伝導率を示し、屈曲性試験後も80%以上で維持された。一方、表3に示した結果より、比較例2−1の材料は、アルミナファイバー含有率が低く、熱伝導率が低かった。比較例2−2〜2−5の材料はアルミナファイバーが短繊維化しているため、熱伝導率が低かった。比較例2−6の材料はアルミナファイバー含有量が多く、屈曲性を有しなかった。表4に示した結果より、比較例2−7〜2−13の材料は、アルミナファイバーを含まないため、熱伝導率が低かった。
1 電圧供給装置
2 金属ノズル
3 ドラム型コレクタ
4 紡糸距離

Claims (17)

  1. アルミナ連続繊維からなるアルミナファイバーシート及び樹脂を含む、屈曲性を有する高熱伝導性材料であって、前記アルミナファイバーシートが、高熱伝導性材料中30〜80質量%含まれる高熱伝導性材料。
  2. 前記アルミナファイバーシートが、前記高熱伝導性材料中40〜70質量%含まれる請求項1記載の高熱伝導性材料。
  3. 前記アルミナ連続繊維のアスペクト比が、100以上である請求項1又は2記載の高熱伝導性材料。
  4. 前記アスペクト比が、1,000以上である請求項3記載の高熱伝導性材料。
  5. 前記アルミナファイバーシートが、不織布状のアルミナ連続繊維及び一定方向に配向したアルミナ連続繊維から選ばれる少なくとも1種以上からなる請求項1〜4のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
  6. 前記アルミナファイバーシートが、αアルミナを含む請求項1〜5のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
  7. 前記αアルミナが、前記アルミナファイバーシート中50質量%以上含まれる請求項6記載の高熱伝導性材料。
  8. 前記アルミナ連続繊維の平均繊維径が、50〜2,000nmである請求項1〜7のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
  9. 前記アルミナ連続繊維の平均繊維径が、100〜1,000nmである請求項8記載の高熱伝導性材料。
  10. 前記高熱伝導性材料がシート状である請求項1〜9のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
  11. 前記高熱伝導性材料がシート状であり、厚さが20〜2,000μmである請求項10記載の高熱伝導性材料。
  12. 前記高熱伝導性材料がシート状であり、厚さが40〜1,500μmである請求項11記載の高熱伝導性材料。
  13. 前記樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリスチレン及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である請求項1〜12のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
  14. 熱伝導率が、5W/mK以上である請求項1〜13のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
  15. 直径5mmの曲率で10回曲げた後の熱伝導率が80%以上を維持する請求項1〜14のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
  16. 前記高熱伝導性材料が、電気絶縁性である請求項1〜15のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
  17. 前記高熱伝導性材料の表面抵抗値が、1×1011Ω/□以上である請求項1〜16のいずれか1項記載の高熱伝導性材料。
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