JPWO2020004210A1 - 半導体チップの製造方法及び半導体装置の製造方法 - Google Patents

半導体チップの製造方法及び半導体装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

本実施形態の半導体チップの製造方法においては、半導体ウエハの裏面側から半導体ウエハにレーザー光を照射することで、半導体ウエハの内部のうち、半導体ウエハの回路形成面から215μmの深さまでの第1領域中に、第1改質層を形成し、前記裏面側から半導体ウエハにレーザー光を照射することで、半導体ウエハの内部のうち、前記裏面から215μmの深さまでの第2領域中で、かつ、第1改質層よりも前記裏面側の箇所に、第2改質層を形成し、半導体ウエハの前記裏面を研削するとともに、この研削に伴って半導体ウエハに加えられる力によって、第1改質層及び第2改質層の部位において、半導体ウエハを分割し、半導体チップを得る。

Description

本発明は、半導体チップの製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
本願は、2018年6月29日に、日本に出願された特願2018−124158号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
半導体ウエハを分割して半導体チップを製造するときには、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハを切断する、所謂ブレードダイシングが汎用されている。
一方、ブレードダイシング以外の、半導体ウエハの分割方法としては、例えば、レーザー光の照射を利用する以下の方法が知られている(特許文献1〜2参照)。
この方法では、まず、半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するようにレーザー光を照射して、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。この改質層は、外部から力を加えられることにより、半導体ウエハの内部において、半導体ウエハの両面方向に亀裂を発生させるため、半導体ウエハの分割(切断)の起点となる。次いで、半導体ウエハに力を加えて、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割し、半導体チップを得る。半導体ウエハは、通常、その回路形成面とは反対側の面(裏面)を研削して薄くするが、このときの研削に伴って半導体ウエハに加えられる力を利用して、半導体ウエハを分割することがある。このような改質層の形成を伴う半導体ウエハの分割方法は、ステルスダイシング(登録商標)と呼ばれており、半導体ウエハにレーザー光を照射することにより、照射部位の半導体ウエハを削り取りながら、半導体ウエハをその表面から切断していくレーザーダイシングとは、本質的に全く異なる。
このような、改質層の形成を伴う半導体チップの製造方法は、上述のブレードダイシングやレーザーダイシングを利用する方法とは異なり、半導体ウエハの削り取りを伴わないため、より多くの半導体チップを得られる点で有利である。
日本国特許第4402708号公報 日本国特開2016−76522号公報
しかし、特許文献1〜2に記載の方法をはじめ、改質層の形成を伴う従来の半導体チップの製造方法は、サイズが小さい半導体チップの製造には適さないという問題点があった。このような製造方法では、通常、半導体ウエハを効率的に分割するために、半導体ウエハの内部のうち、裏面側ではなく回路形成面側の領域に、回路形成面に沿って、ライン状に改質層を形成する。
図1は、このような改質層を形成した半導体ウエハを模式的に示す斜視図である。ここに示す半導体ウエハ9は、その内部のうち、回路形成面9a側の領域に、ライン状の改質層91が形成されている。改質層91は、半導体ウエハ9の回路形成面9aに対して、平行であるか、又はほぼ平行であり、回路形成面9aに沿って形成されている。なお、ここでは、便宜上、改質層91を模式的に1本の線状で示しているが、実際には、半導体ウエハ9の厚さ方向において、広がりを有する。また、ここでは、同方向に伸びる改質層91を6本示すにとどまっているが、通常、改質層の本数はこれよりも多く、さらに、図示する方向に直交する方向にも多数形成される。換言すると、図1は、目的とする本数の改質層の形成が完了せずに、途中の段階にある状態を示している。一方、半導体ウエハ9の内部のうち、裏面9b側の領域には、改質層が形成されない。
改質層91中には、実際には、改質層91以外の部位とは異なり、微細な亀裂が存在する。そのため、改質層91は、この亀裂の分だけ、改質層91以外の部位よりも膨らんで体積が僅かながら増大しており、密度は低下している。したがって、改質層91の形成後、半導体ウエハ9の内部のうち、改質層91が存在する回路形成面9a側の領域は、改質層91が存在しない裏面9b側の領域よりも体積が増大しており、この体積増大の影響は、改質層のラインの本数が多いほど大きくなる。この場合、半導体ウエハ9の厚さ方向において、半導体ウエハ9の体積に、無視できない程度の差が生じてしまう。サイズが小さい半導体チップを得るためには、半導体ウエハに形成する改質層のラインの本数が増大するため、まさにこのような状態となってしまう。すると、半導体ウエハは、回路形成面9aを凸面として(換言すると、裏面9bを凹面として)反ってしまう。このような反りは、一辺の長さが2mm以下である半導体チップを製造しようとする場合に、特に発生し易い。
図2は、このような、改質層の形成により、反りが生じた状態の半導体ウエハを模式的に示す拡大断面図である。
このように半導体ウエハが反ってしまうと、工程上の不具合が発生してしまう。例えば、反りが生じた半導体ウエハは、搬送が困難になってしまう。また、上述のとおり、改質層を形成後の半導体ウエハの裏面を研削するときには、この半導体ウエハを専用のテーブルに密着させ、このテーブルに吸着させて固定するが、反りが生じた半導体ウエハは、テーブルと密着させることができず、テーブルに固定できないため、その裏面を研削できない。
本発明は、半導体ウエハの内部における改質層の形成を経由して、サイズが小さい半導体チップを製造するときであっても、半導体ウエハの反りの発生を抑制できる半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、半導体ウエハの裏面側から前記半導体ウエハにレーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部のうち、前記半導体ウエハの回路形成面から215μmの深さまでの第1領域中に、第1改質層を形成する第1改質工程と、前記裏面側から前記半導体ウエハにレーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部のうち、前記裏面から215μmの深さまでの第2領域中で、かつ、前記第1改質層よりも前記裏面側の箇所に、第2改質層を形成する第2改質工程と、前記第1改質工程及び第2改質工程を行った後に、前記半導体ウエハの前記裏面を研削するとともに、この研削に伴って前記半導体ウエハに加えられる力によって、前記第1改質層及び第2改質層の部位において、前記半導体ウエハを分割することにより、半導体チップを得る分割工程と、を有する、半導体チップの製造方法を提供する。
本発明の半導体チップの製造方法においては、前記第1改質工程及び第2改質工程を行うときの前記半導体ウエハの厚さに対して、前記半導体チップの最も短い一辺の長さを同等以上としてもよい。
また、本発明は、前記半導体チップの製造方法により、複数個の半導体チップが整列している状態の半導体チップ群を得た後、支持シートと、前記支持シート上に形成されたフィルム状接着剤と、を備えたダイボンディングシートを用い、前記ダイボンディングシート中の前記フィルム状接着剤を、前記半導体チップ群における半導体チップの研削後の前記裏面に貼付することにより、前記半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製する積層工程と、前記積層物に対して、その支持シート側から力を加えることにより、前記積層物中の前記フィルム状接着剤を、前記半導体チップに沿って切断し、切断後の前記フィルム状接着剤を裏面に備えた前記半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する、半導体装置の製造方法を提供する。
本発明の半導体チップの製造方法を適用することで、半導体ウエハの内部における改質層の形成を経由して、サイズが小さい半導体チップを製造するときであっても、半導体ウエハの反りの発生を抑制できる。
改質層を形成した従来の半導体ウエハを模式的に示す斜視図である。 改質層の形成により反りが生じた状態の、従来の半導体ウエハを模式的に示す拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係る半導体チップの製造方法における、第1改質工程及び第2改質工程を、模式的に説明するための拡大断面図である。 本発明の第1実施形態に係る半導体チップの製造方法における分割工程を模式的に説明するための拡大断面図である。 図3に対応する斜視図である。 図4に対応する斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る半導体チップの製造方法における、第1改質工程及び第2改質工程を、模式的に説明するための拡大断面図である。 本発明の第2実施形態に係る半導体チップの製造方法における分割工程を模式的に説明するための拡大断面図である。 本発明の第3実施形態に係る半導体チップの製造方法における、第1改質工程及び第2改質工程を、模式的に説明するための拡大断面図である。 本発明の第3実施形態に係る半導体チップの製造方法における分割工程を模式的に説明するための拡大断面図である。 本発明の第4実施形態に係る半導体チップの製造方法における、第1改質工程及び第2改質工程を、模式的に説明するための拡大断面図である。 本発明の第4実施形態に係る半導体チップの製造方法における分割工程を模式的に説明するための拡大断面図である。 本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法における、積層工程及びピックアップ工程を模式的に説明するための拡大断面図である。
<<半導体チップの製造方法>>
本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法は、半導体ウエハの裏面側から前記半導体ウエハにレーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部のうち、前記半導体ウエハの回路形成面から215μmの深さまでの第1領域中に、第1改質層を形成する第1改質工程と、前記裏面側から前記半導体ウエハにレーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部のうち、前記裏面から215μmの深さまでの第2領域中で、かつ、前記第1改質層よりも前記裏面側の箇所に、第2改質層を形成する第2改質工程と、前記第1改質工程及び第2改質工程を行った後に、前記半導体ウエハの前記裏面を研削するとともに、この研削に伴って前記半導体ウエハに加えられる力によって、前記第1改質層及び第2改質層の部位において、前記半導体ウエハを分割することにより、半導体チップを得る分割工程と、を有する。
本実施形態の半導体チップの製造方法によれば、半導体ウエハの内部における改質層の形成を経由して、サイズが小さい半導体チップを製造する(換言すると、ステルスダイシング(登録商標)を適用する)ときであっても、半導体ウエハの内部に前記第1改質層及び第2改質層を形成することで、半導体ウエハの反りの発生を抑制できる。したがって、半導体チップへ分割する前の、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハは、容易に搬送可能であり、また、その裏面を研削するときには、専用のテーブルに密着させ、確実に固定できるので、その裏面の研削も可能である。
なお、本実施形態の製造方法は、サイズが小さい半導体チップだけでなく、サイズが中程度又は大きい半導体チップの製造にも適用できる。
第1改質層及び第2改質層等の改質層の形成を伴う半導体チップの製造方法は、上述のブレードダイシングやレーザーダイシングを利用する方法とは異なり、半導体ウエハの削り取りを伴わないため、より多くの半導体チップを得られる点で有利である。
また、ブレードダイシングでは、半導体ウエハとダイシングブレードとの接触箇所に水(「切削水」と称することがある)を流しながらダイシングを行うため、特にサイズが小さい半導体チップの製造時には、半導体チップの水との接触時間が長くなり、半導体チップの特性に悪影響を与えることがある。これに対して、上述の改質層の形成を伴う半導体チップの製造方法は、このような不具合を抑制できる点で有利である。
本実施形態の製造方法において、目的とする半導体チップの一辺の長さは、2mm以下であることが好ましく、例えば、1.5mm以下、及び0.9mm以下のいずれかであってもよい。一辺の長さが前記上限値以下である、サイズが小さい半導体チップを、半導体ウエハの内部における改質層の形成を経由して製造するときには、半導体ウエハの反りを抑制する効果がより高くなる。
本実施形態の製造方法において、目的とする半導体チップの一辺の長さの下限値は、特に限定されない。半導体チップの製造がより容易であるという点においては、前記長さは、0.5mm以上であることが好ましい。
ただし、本実施形態においては、後述する第1改質工程及び第2改質工程を行うときの半導体ウエハの厚さに対して、半導体チップの最も短い一辺の長さを、同等以上とする([半導体チップの最も短い一辺の長さ]≧[第1改質工程及び第2改質工程を行うときの半導体ウエハの厚さ]とする)ことが好ましい。このようにすることで、半導体ウエハの内部における改質層の形成を経由して、サイズが小さい半導体チップを製造するときであっても、半導体ウエハの反りを抑制する効果がより高くなる。
本明細書において、「半導体チップの最も短い一辺」とは、半導体チップの外周を構成している複数の辺のうち、長さが最短のものを意味する。例えば、平面形状が正方形である半導体チップのように、半導体チップの外周を構成している、長さが最短の辺が、複数存在する場合には、「半導体チップの最も短い一辺」とは、これら最短の辺を意味する。
以下、図面を参照しながら、本実施形態の半導体チップの製造方法について、工程ごとに詳しく説明する。なお、本明細書中の説明で用いる図は、すべて、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
<第1実施形態>
図3は、本発明の第1実施形態に係る半導体チップの製造方法における、前記第1改質工程及び第2改質工程を模式的に説明するための拡大断面図であり、図5は対応する斜視図である。
なお、図4以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
[第1実施形態における第1改質工程]
第1実施形態における前記第1改質工程では、図3(a)及び図5(a)に示すように、半導体ウエハ8の裏面(すなわち、回路形成面8aとは反対側の面)8b側から半導体ウエハ8にレーザー光Rを照射することにより、半導体ウエハ8の内部のうち、半導体ウエハ8の回路形成面8aから215μmの深さまでの第1領域80a中に、第1改質層81を形成する。
図3中、符号Dは、第1領域80aの深さを示しており、本実施形態においては、215μm(D=215μm)である。第1領域80aは、半導体ウエハ8の内部のうち、回路形成面8aと、半導体ウエハ8の厚さT方向において、回路形成面8aからDの距離だけ離れた箇所と、の間にある領域である。
第1改質工程を行うときの半導体ウエハ8の厚さTは、特に限定されないが、725〜775μmであることが好ましい。このような厚さTの半導体ウエハ8は、取り扱い性と剛直性に、より優れる。
第1改質工程に供する半導体ウエハ8は、その厚さを調節するための研削を行ったもの、及び行っていないもの、のいずれであってもよい。なかでも、研削を行っていない半導体ウエハ8は、その破損の原因となり得る研削痕を有していないため、より取り扱い性に優れており、好ましい。
さらに、第1実施形態においては、第1改質工程と、後述する第2改質工程と、を行うときの半導体ウエハ8の厚さTは、目的とする半導体チップの最も短い一辺の長さに対して、同等以下であることが好ましい。このよう条件を満たすことで、半導体ウエハの内部における改質層の形成を経由して、サイズが小さい半導体チップを製造するときであっても、半導体ウエハの反りを抑制する効果がより高くなる。
第1実施形態において、半導体ウエハ8は、その回路形成面8aに保護膜7が設けられていることが好ましい。保護膜7は、回路形成面8aを被覆して、これを保護するとともに、後述する分割工程後においては、複数個の半導体チップが整列している状態の半導体チップ群を保持するための膜である。保護膜7は公知のものでよく、その例としては、バックグラインドテープとして知られているものが挙げられる。
第1改質工程において、第1改質層81は、後述する分割工程において、目的とするサイズの半導体チップが得られるように、第1領域80a中、回路形成面8aに沿ってライン状に形成する。ライン状の第1改質層81は、回路形成面8aに対して、平行又はほぼ平行となる。図5においては、第1改質層81を模式的に1本の線状で示している。
ライン状の第1改質層81を形成するときには、まず、第1領域80a中の起点となる箇所、より具体的には、半導体ウエハ8の周縁部近傍の箇所、に設定された焦点に集束するように、半導体ウエハ8の裏面8b側からレーザー光Rを照射する。これにより、まず局所的に第1改質層81が形成される。さらに、図5中の矢印Mの方向に、レーザー光Rの照射位置をずらしながら、この操作を繰り返し行うことで、最終的にライン状の第1改質層81が形成される。
半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層81の広がり幅(換言すると、第1改質層81の高さ)は、特に限定されないが、10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。前記広がり幅は、例えば、レーザー光Rの照射条件により調節できる。
第1実施形態においては、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層81の形成位置は、特に断りのない限り、同方向における、第1改質層81の中央の位置で表すものとする。
第1実施形態においては、半導体ウエハ8の内部の第1領域80a中に、1本のライン状の第1改質層81の少なくとも一部が存在するように、第1改質層81を形成すればよいが、1本のライン状の第1改質層81のすべてが存在するように、第1改質層81を形成することが好ましい。
第1実施形態においては、上述のとおり、半導体ウエハ8の内部のうち、半導体ウエハ8の回路形成面8aから215μmの深さまでの位置に、第1改質層81を形成する。第1改質層81の形成位置が、このような条件を満たし、かつ、後述する第2改質層82の形成位置も後述する条件を満たすことにより、上述の半導体ウエハの反りの抑制効果が得られるとともに、後述する分割工程において、半導体ウエハを良好に分割できる。このような効果がより顕著に得られる点では、半導体ウエハ8の内部のうち、半導体ウエハ8の回路形成面8aから、好ましくは195μm、より好ましくは175μm、さらに好ましくは155μm、の深さまでの位置に、第1改質層81を形成してもよい。
一方、第1実施形態においては、半導体ウエハ8の内部のうち、第1改質層81を形成する位置の、回路形成面8aからの深さの最小値は、特に限定されず、例えば、目的とする半導体チップの厚さ等を考慮して、適宜選択すればよい。
汎用される半導体チップの厚さ等を考慮すると、半導体ウエハ8の内部のうち、半導体ウエハ8の回路形成面8aから、好ましくは65μm、より好ましくは70μm、の深さよりも深い位置に、第1改質層81を形成してもよい。
第1実施形態においては、第1改質層81の形成位置は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、第1改質層81の形成位置は、半導体ウエハ8の回路形成面8aから、好ましくは65〜215μm、より好ましくは65〜195μm、さらに好ましくは65〜175μm、特に好ましくは65〜155μm、の深さの領域中のいずれかの位置であってよい。ただし、これらは、第1改質層81の形成位置の一例である。
ライン状の第1改質層81は、直線状及び非直線状のいずれであってもよく、目的とする半導体チップの形状を考慮して適宜選択すればよいが、通常は直線状であることが好ましい。
ライン状の第1改質層81は、見かけ上、連続した実線状とすることが可能であるが、レーザー光Rの照射条件によっては、非連続の(換言すると間欠的な)点線状となることがある。第1実施形態において、ライン状の第1改質層81は、全体形状がライン状でさえあれば、これら実線状及び点線状のいずれであってもよい。
レーザー光Rの波長は、1050nm以上であれば、特に限定されず、実用性を考慮すると、1050〜1500nmであることが好ましく、例えば、1342nmであってもよい。レーザー光Rは、その波長が1050nm以上であれば、半導体ウエハの材料であるシリコンに吸収されず、第1改質層81の形成に適している。
[第1実施形態における第2改質工程]
ライン状の第1改質層81を形成した後、第1実施形態における前記第2改質工程では、図3(b)及び図5(b)に示すように、前記裏面8b側から半導体ウエハ8にレーザー光Rを照射することにより、半導体ウエハ8の内部のうち、裏面8bから215μmの深さまでの第2領域80b中で、かつ、第1改質層81りも前記裏面8b側の箇所に、第2改質層82を形成する。
図3中、符号Dは、第2領域80bの深さを示しており、第1実施形態においては、215μm(D=215μm)である。第2領域80bは、半導体ウエハ8の内部のうち、裏面8bと、半導体ウエハ8の厚さT方向において、裏面8bからDの距離だけ離れた箇所と、の間にある領域である。
第2改質層82は、半導体ウエハ8中での形成箇所が異なる点以外は、第1改質層81の場合と同じ方法で形成できる。
より具体的には、第2改質工程において、第2改質層82は、後述する分割工程において、目的とするサイズの半導体チップが得られるように、第2領域80b中、裏面8bに沿ってライン状に形成する。ライン状の第2改質層82は、裏面8bに対して、平行又はほぼ平行となる。図5においては、第2改質層82を模式的に1本の線状で示している。
ライン状の第2改質層82を形成するときにも、まず、第2領域80b中の起点となる箇所、より具体的には、半導体ウエハ8の周縁部近傍の箇所、に設定された焦点に集束するように、半導体ウエハ8の裏面8b側からレーザー光Rを照射する。これにより、まず局所的に第2改質層82が形成される。さらに、図5中の矢印Mの方向に、レーザー光Rの照射位置をずらしながら、この操作を繰り返し行うことで、最終的にライン状の第2改質層82が形成される。
半導体ウエハ8の厚さT方向における、第2改質層82の広がり幅(換言すると、第2改質層82の高さ)は、特に限定されず、上述の第1改質層81の広がり幅と同様の数値範囲であってよい。第2改質層82の前記広がり幅は、第1改質層81の前記広がり幅の場合と同様の方法で調節できる。
第1実施形態においては、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第2改質層82の形成位置は、特に断りのない限り、同方向における、第2改質層82の中央の位置で表すものとする。
第1実施形態においては、半導体ウエハ8の内部の第2領域80b中に、1本のライン状の第2改質層82の少なくとも一部が存在するように、第2改質層82を形成すればよいが、1本のライン状の第2改質層82のすべてが存在するように、第2改質層82を形成することが好ましい。
第1実施形態においては、上述のとおり、半導体ウエハ8の内部のうち、半導体ウエハ8の裏面8bから215μmの深さまでの位置に、第2改質層82を形成する。第2改質層82の形成位置が、このような条件を満たし、かつ、第1改質層81の形成位置も上述の条件を満たすことにより、上述の半導体ウエハの反りの抑制効果が得られるとともに、後述する分割工程において、半導体ウエハを良好に分割できる。このような効果がより顕著に得られる点では、半導体ウエハ8の内部のうち、半導体ウエハ8の裏面8bから、好ましくは195μm、より好ましくは175μm、さらに好ましくは155μm、の深さまでの位置に、第2改質層82を形成してもよい。
一方、第1実施形態においては、半導体ウエハ8の内部のうち、第2改質層82を形成する位置の、裏面8bからの深さの最小値は、特に限定されず、例えば、目的とする半導体チップの厚さ等を考慮して、適宜選択すればよい。
汎用される半導体チップの厚さ等を考慮すると、半導体ウエハ8の内部のうち、半導体ウエハ8の裏面8bから、好ましくは65μm、より好ましくは70μm、の深さよりも深い位置に、第2改質層82を形成してもよい。
第1実施形態においては、第2改質層82の形成位置は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、第2改質層82の形成位置は、半導体ウエハ8の裏面8bから、好ましくは65〜215μm、より好ましくは65〜195μm、さらに好ましくは65〜175μm、特に好ましくは65〜155μm、の深さの領域中のいずれかの位置であってよい。ただし、これらは、第2改質層82の形成位置の一例である。
ライン状の第2改質層82の形状は、上述のライン状の第1改質層81の形状と同様であってよい。
レーザー光Rの波長は、レーザー光Rの場合と同様の理由で、レーザー光Rの波長と同様である。そして、レーザー光Rの波長は、レーザー光Rの波長と一致させることが好ましい。
第1改質層81と第2改質層82との間の距離Δ12は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されないが、275〜615μmであることが好ましく、405〜605μmであることがより好ましい。前記Δ12がこのような範囲であることで、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなる。
前記Δ12は、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層81の上端と、第2改質層82の下端と、の間の距離を意味する。
ライン状の第2改質層82は、ライン状の第1改質層81に対して、平行であることが好ましい。換言すると、図5中の矢印Mの方向は、矢印Mの方向と平行であることが好ましい。これにより、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
なお、上記の様に、2つの方向が平行である場合、本実施形態においては、ライン状の第2改質層82を形成する方向は、ライン状の第1改質層81を形成する方向(すなわち、矢印Mの方向)と同じであってもよいし、逆であってもよい。ただし、後述するように、レーザー光Rの光源が、レーザー光Rの光源を兼ねる場合には、図2に示すように、前記方向は逆(すなわち、矢印Mの方向)であることが好ましい。この場合、ライン状の第1改質層81を形成後、光源を元の位置に戻すことなく、直ちに第2改質工程を行うことができ、第1改質工程及び第2改質工程に要する時間を短縮できる。
第2改質工程では、半導体ウエハ8の厚さT方向において、第1改質層81の直上に、第2改質層82を形成することが好ましい。このようにすることで、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
本明細書において、「半導体ウエハの厚さ方向において、第1改質層の直上に、第2改質層を形成する」とは、「半導体ウエハの厚さ方向においては、第2改質層の位置が第1改質層の位置よりも半導体ウエハの裏面側であり、かつ、半導体ウエハの表面に対して平行な方向(換言すると、半導体ウエハの厚さ方向に対して直交する方向)においては、第2改質層の位置と第1改質層の位置とが同じとなるように、第2改質層を形成する」ことを意味する。
ライン状の第2改質層82の長手方向の長さは、ライン状の第1改質層81の長手方向の長さの90〜110%であることが好ましく、100%である(換言すると、ライン状の第1改質層81の長手方向の長さと同じである)ことがより好ましい。これにより、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
半導体ウエハ8の回路形成面8a又は裏面8bに対して平行な方向において、ライン状の第2改質層82の一方の端部の位置は、ライン状の第1改質層81の一方の端部の位置と、一致していてもよいし、一致していなくてもよいが、一致していることが好ましい。これらの位置が一致していることにより、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。ライン状の第2改質層82の他方の端部の位置と、ライン状の第1改質層81の他方の端部の位置と、の関係も、上述の一方の端部の場合と同様である。
第1実施形態においては、上述のように、レーザー光Rの光源から遠い第1改質層81を形成してから、レーザー光Rの光源に近い第2改質層82を形成することで、工程異常を伴うことなく、第1改質層81及び第2改質層82を形成できる。第2改質層82を形成した後では、この第2改質層82がレーザー光Rの透過を妨げるため、第1改質層81を形成することは困難である。
レーザー光Rの光源としては、レーザー光Rの光源を用いてもよい(レーザー光Rの光源は、レーザー光Rの光源を兼ねてもよい)。
第1実施形態においては、このように、前記断面中、半導体ウエハ8の回路形成面8a及び裏面8bを結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層及び第2改質層の数は、ともに1である。本明細書において、「半導体ウエハ8の回路形成面8a及び裏面8bを結ぶ方向」は、半導体ウエハ8の厚さT方向と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。そして、半導体ウエハ8の厚さT方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層及び第2改質層の数が、ともに1であることが好ましい。
第1実施形態においては、このように、ライン状の第1改質層81及び第2改質層82の形成を、半導体ウエハ8の回路形成面8a又は裏面8bに対して平行な一方向において、位置をずらしながら、半導体ウエハ8の全域に渡って繰り返し行う(すなわち、第1改質工程及び第2改質工程を繰り返し行う)ことにより、図3(c)及び図5(c)に示すように、ライン状の第1改質層81及び第2改質層82を、それぞれ複数本形成する。
このように繰り返し形成するライン状の第1改質層81及び第2改質層82は、いずれも、これまでに説明したライン状の第1改質層81及び第2改質層82の場合と同じ方法で形成すればよい。
なお、図5(c)では、便宜上、ライン状の第1改質層81及び第2改質層82を、それぞれ6本ずつ示すにとどまっているが、これら改質層は、作製する半導体チップのサイズを考慮して、これらよりも多い本数を形成する。
このとき、すべてのライン状の第1改質層81は、互いに平行となるように形成することが好ましい。同様に、すべてのライン状の第2改質層82は、互いに平行となるように形成することが好ましい。
第1実施形態においては、このように、半導体ウエハ8の回路形成面8aに沿って、第1領域80a中に多数のライン状の第1改質層81を形成し、半導体ウエハ8の裏面8bに沿って、第2領域80b中に多数のライン状の第2改質層82を形成する。その結果、第1領域80a中に、多数(複数本)のライン状の第1改質層81が配置された層を1層有し、第2領域80b中に、多数(複数本)のライン状の第2改質層82が配置された層を1層有する半導体ウエハ8が得られる。
第1実施形態においては、さらに、図3(d)及び図5(d)に示すように、上述の第1改質層81と交差するライン状の第1改質層83を別途、上述の第1改質層81の場合と同様の方法で、第1領域80a中に多数形成し、上述の第2改質層82と交差するライン状の第2改質層84を別途、上述の第2改質層82の場合と同様の方法で、第2領域80b中に多数形成する。このとき、第1改質層81及び第2改質層82を形成する場合と同様に、第1改質層83を形成してから、第2改質層84を形成する。
なお、図5(d)では、便宜上、ライン状の第1改質層83及び第2改質層84を、それぞれ6本ずつ示すにとどまっているが、これら改質層は、作製する半導体チップのサイズを考慮して、これらよりも多い本数を形成する。
また、図3(d)では、半導体ウエハ8の断面に、第1改質層83及び第2改質層84が共に重なっている場合を示しているが、半導体ウエハ8の断面の位置によっては、この断面に、第1改質層83及び第2改質層84が重ならないこともある。
ライン状の第1改質層83と、ライン状の第1改質層81と、の交差角度は、目的とする半導体チップの形状に応じて適宜調節すればよい。ライン状の第1改質層83と、ライン状の第1改質層81と、がいずれも直線状である場合、これらの交差角度は、通常は、90°である(すなわち、ライン状の第1改質層83と、ライン状の第1改質層81と、は直交している)ことが好ましい。
ライン状の第2改質層84と、ライン状の第2改質層82と、の交差角度も、上記と同様に設定できる。
なお、2本の直線状のラインが交差するときの、これらラインの「交差角度」には、0°より大きく、かつ180°未満の2つの角度が存在するが、これらの角度が互いに異なる場合、本明細書において「交差角度」とは、これらのうち小さい方の角度を意味する。
半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層83の広がり幅(換言すると、第1改質層83の高さ)は、特に限定されず、上述の第1改質層81の広がり幅と同様の数値範囲であってよく、第1改質層81の広がり幅と同程度の値であることが好ましい。本明細書において、比較対象の2つの値が「同程度の値である」とは、「同じ値であるか、又は、同じ値ではなく、小さな誤差があるものの、それによる影響が無視し得る程度に軽微である」ことを意味する。
第1改質層83の前記広がり幅は、第1改質層81の前記広がり幅の場合と同様の方法で調節できる。
第2改質層84の場合も同様である。
すなわち、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第2改質層84の広がり幅(換言すると、第2改質層84の高さ)は、特に限定されず、上述の第2改質層82の広がり幅と同様の数値範囲であってよく、第2改質層82の広がり幅と同程度の値であることが好ましい。
第2改質層82の前記広がり幅は、第1改質層81の前記広がり幅の場合と同様の方法で調節できる。
ライン状の第1改質層81同士の間隔と、ライン状の第1改質層83同士の間隔と、ライン状の第2改質層82同士の間隔と、ライン状の第2改質層84同士の間隔とは、いずれも、目的とする半導体チップのサイズに応じて適宜調節すればよい。なお、本明細書において、「ライン状の第1改質層81同士の間隔」とは、「隣り合うライン状の第1改質層81の、それぞれの端部間の最短距離」を意味し、これは、例えば、「ライン状の第1改質層83同士の間隔」など、同種の改質層同士の間隔の場合も、同様である。
ただし、第1実施形態においては、先に説明したとおり、第1改質工程及び第2改質工程を行うときの半導体ウエハ8の厚さTに対して、半導体チップの最も短い一辺の長さが同等以上となるように、これら改質層同士の間隔を設定することが好ましい。
以上により、第1領域80a中に、複数本のライン状の第1改質層81と、複数本のライン状の第1改質層83とにより、網目が形成され、同様に、第2領域80b中に、複数本のライン状の第2改質層82と、複数本のライン状の第2改質層84とにより、網目が形成されている半導体ウエハ8が得られる。
[第1実施形態における分割工程]
図4は、本発明の第1実施形態に係る半導体チップの製造方法における分割工程を模式的に説明するための拡大断面図であり、図6は対応する斜視図である。
前記分割工程においては、図4(a)及び図6(a)に示すように、前記第1改質工程及び第2改質工程を行った後に、半導体ウエハ8の裏面8bを研削する。
図4(a)中及び図6(a)中の半導体ウエハ8の裏面8bは、研削手段6による研削時の面である。また、図4(a)中の矢印Gは、研削時の研削手段6の動きを示す。ここでは、半導体ウエハ8の裏面8b上で、研削手段6が前記裏面8bに沿って円を描くように動くことによって、前記裏面8bが研削される様子を示している。なお、研削手段6は断面表示していない。
そして、この研削時に同時に、この研削に伴って半導体ウエハ8に加えられる力によって、第1改質層81、第1改質層83、第2改質層82及び第2改質層84の部位において、半導体ウエハ8を分割する。このとき、半導体ウエハ8に加えられる力は、半導体ウエハ8の裏面8bから回路形成面8aへと向かう方向の力である。図4中、符号89は、このように力を加えられることによって、半導体ウエハ8中で、その裏面8bと回路形成面8aとを結ぶ方向において形成された亀裂を示す。これら亀裂89は、後述する半導体チップ(半導体チップ8’)を形作る。ここでは、より具体的には、亀裂89は、第1改質層81及び第2改質層82を貫いて形成され、第1改質層83及び第2改質層84を貫いて形成(図示略)されている。なお、図6(a)においては、図を見易くするため、これら亀裂の図示を省略している。
このように、半導体ウエハ8の厚さT方向における、半導体ウエハ8の研削面、すなわち研削時の裏面8bの位置が、研削前の半導体ウエハ8中の第1改質層81及び第1改質層83の位置よりも、半導体ウエハ8の回路形成面8a側に到達するまで研削を続けることにより、最終的には、図4(b)及び図6(b)に示すように、第1改質層81、第1改質層83、第2改質層82及び第2改質層84をすべて研削によって消失させて、複数個の半導体チップ8’を得る。
なお、図6(b)では、便宜上、半導体チップ8’を1個のみ明示しているが、本工程で得られる半導体チップ8’は複数(多数)個である。
図4(b)及び図6(b)中、符号S’は、半導体チップ8’の一辺の長さを示す。
ここでは、半導体チップ8’として、その平面形状が正方形であり、その4つの辺の長さ(S’)がすべて同じであり、S’が半導体チップ8’の最も短い一辺の長さでもある場合について示している。なお、本実施形態において、半導体チップの辺の長さは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
分割工程において、半導体ウエハ8の裏面8bを研削する方法は、研削手段6として、グラインダを用いる公知の方法でよい。
本実施形態においては、分割工程前の半導体ウエハ8の回路形成面8aに保護膜7を設けておくことにより、分割工程によって、複数個の半導体チップ8’がすべて、保護膜7上で整列している状態の半導体チップ群8A’が得られる。これらすべての半導体チップ8’は、その回路形成面8a’が保護膜7によって保護されているとともに、保護膜7によって安定して保持されている。図4(b)及び図6(b)中、符号8b’は、半導体チップ8’の裏面(すなわち、回路形成面8a’とは反対側の面)を示す。
図4(a)においては、半導体ウエハ8の厚さT方向において、半導体ウエハ8の研削面(研削時の裏面)8bの位置が、研削によって、第2改質層82及び第2改質層84の位置に到達していない段階(換言すると、第2改質層82及び第2改質層84が研削によって消失していない段階)で、亀裂89が形成されている状態を示している。ただし、このような亀裂89の状態は一例である。第1実施形態での分割工程において、亀裂89が形成される時期は、例えば、半導体ウエハ8の研削面(裏面)8bの前記位置が、研削によって、第2改質層82及び第2改質層84の位置に重なっている段階(換言すると、第2改質層82及び第2改質層84が研削によって消失中の段階)であってもよいし、研削によって、第2改質層82及び第2改質層84の位置を通過し、第1改質層81及び第1改質層83の位置に到達していない段階(換言すると、第2改質層82及び第2改質層84が研削によって消失済みで、かつ、第1改質層81及び第1改質層83が研削によって消失していない段階)であってもよい。
また、図4(a)においては、この断面におけるすべての亀裂89が一様に形成されている状態を示している。ただし、このような亀裂89の状態は一例であり、分割工程のいずれかの段階において、複数の亀裂89の状態は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、複数の亀裂89の長さは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、半導体ウエハ8の厚さT方向における、亀裂89の一端の位置は、複数の亀裂89の間で互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよく、同様に、亀裂89の他端の位置は、複数の亀裂89の間で互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
また、図4(b)及び図6(b)においては、第1改質層81、第1改質層83、第2改質層82及び第2改質層84をすべて研削によって消失させるまで、半導体ウエハ8の裏面8bを研削した状態を示している。この場合、得られた半導体チップ8’の内部に、第1改質層81、第1改質層83、第2改質層82及び第2改質層84は、すべて存在しない。ただし、このような研削面(研削時の裏面)8bの最終的な位置は、一例である。例えば、分割工程においては、第2改質層82及び第2改質層84を研削によって消失させ、かつ、第1改質層81及び第1改質層83を研削によって消失させずに、半導体ウエハ8の裏面8bを研削してもよい。この場合、得られた半導体チップ8’(例えば、半導体チップ8’の周縁部)には、第1改質層81又は第1改質層83の少なくとも一部が存在する。ただし、このように第1改質層81又は第1改質層83が存在する半導体チップ8’は、機械的強度が低い可能性があるため、分割工程においては、図4(b)及び図6(b)に示すように、第1改質層81及び第1改質層83を研削によって消失させるまで、半導体ウエハ8の裏面8bを研削することが好ましい。
第1実施形態の分割工程では、第1改質層81、第1改質層83、第2改質層82及び第2改質層84のいずれかの一部において、半導体ウエハ8が分割されていなくても(亀裂89が形成されていなくても)よい。その理由は、これら改質層の一部で半導体ウエハ8が分割されていなくても、後述するピックアップ工程において、該当部位が確実に分割(切断)されるためである。ただし、目的とする半導体チップをより確実に製造するためには、分割工程で、第1改質層81、第1改質層83、第2改質層82及び第2改質層84のすべての部位において、半導体ウエハ8を分割することが好ましい。このように、これら改質層のすべての部位において半導体ウエハ8を分割するか否かは、例えば、前記裏面8bの研削時に半導体ウエハ8に加える力の大きさによって、調節できる。
第1実施形態の分割工程では、前記裏面8bの研削終了時において、半導体チップ8’が形成されていない領域が存在していてもよい(換言すると、半導体ウエハ8の分割が完結していなくてもよい)。その理由は、このように半導体ウエハ8の分割が完結していなくても、後述するピックアップ工程において、該当部位が確実に分割(切断)されるためである。ただし、目的とする半導体チップをより確実に製造するためには、分割工程で、半導体ウエハ8の分割を完結させることが好ましい。このように、半導体ウエハ8の分割を完結させるか否かは、例えば、前記裏面8bの研削時において、半導体ウエハ8に加える力の大きさによって、調節できる。これらの点は、後述する他の実施形態の分割工程でも同じである。
ここでは、第1実施形態として、前記断面中、半導体ウエハの回路形成面及び裏面を結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層及び第2改質層の数が、ともに1である場合の、半導体チップの製造方法について説明したが、本実施形態の半導体チップの製造方法は、このようなものに限定されない。以下、このような他の半導体チップの製造方法について、説明する。
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る半導体チップの製造方法における、前記第1改質工程及び第2改質工程を模式的に説明するための拡大断面図である。
本実施形態は、前記断面(より具体的には、半導体ウエハの回路形成面又は裏面に対して直交する方向における、半導体ウエハの断面)中、半導体ウエハの回路形成面及び裏面を結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層及び第2改質層の数が、ともに2である場合の、半導体チップの製造方法である。
[第2実施形態における第1改質工程]
第2実施形態における前記第1改質工程では、図7(a)に示すように、半導体ウエハ8の裏面8b側から半導体ウエハ8にレーザー光Rを照射することにより、半導体ウエハ8の内部のうち、半導体ウエハ8の回路形成面8aから215μmの深さまでの第1領域80a中に、第1改質層811と、この第1改質層811よりも前記裏面8b側に、さらに第1改質層812と、を形成する。このように、第1領域80a中に複数の第1改質層を形成することにより、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
第2実施形態における第1改質工程は、第1領域80a中に、1本のライン状の第1改質層(すなわち、第1改質層81)を形成するのに代えて、半導体ウエハ8の厚さT方向において互いに離れた位置に、2本のライン状の第1改質層(すなわち、第1改質層811及び第1改質層812)を形成する点以外は、第1実施形態における第1改質工程と同じである。
第2実施形態における第1改質工程では、第1改質層811及び第1改質層812はいずれも、後述する分割工程において、目的とするサイズの半導体チップが得られるように、第1領域80a中、回路形成面8aに沿ってライン状に形成する。ライン状の第1改質層811及び第1改質層812はいずれも、回路形成面8aに対して、平行又はほぼ平行となる。
第2実施形態における第1改質工程では、第1改質層811及び第1改質層812はいずれも、第1領域80a中での形成位置が異なり得る点以外は、第1実施形態における第1改質工程での第1改質層81の場合と同じ方法で形成できる。
第2実施形態において、第1改質層811及び第1改質層812の、第1領域80a中での形成位置は、いずれも、第1実施形態における、第1改質層81の形成位置と同様である。ただし、第1改質層811及び第1改質層812の形成位置を、互いに変える。
例えば、第1実施形態においては、第1領域80a中での第1改質層81の好ましい形成位置について説明したが、第2実施形態においては、第1改質層811及び第1改質層812の少なくとも一方が、このような好ましい形成位置の条件を満たすことが好ましく、第1改質層811及び第1改質層812の両方が、このような好ましい形成位置の条件を満たすことがより好ましい。
一例を挙げると、第2実施形態においては、第1改質層811及び第1改質層812の形成位置は、いずれも、半導体ウエハ8の回路形成面8aから、好ましくは65〜215μm、より好ましくは65〜195μm、さらに好ましくは65〜175μm、特に好ましくは65〜155μm、の深さの領域中のいずれかの位置であってよい。
第1改質層811及び第1改質層812はいずれも、第1実施形態における第1改質層81と、同様の形状を有する。そして、ライン状の第1改質層811及び第1改質層812は、互いに同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層811の広がり幅(換言すると、第1改質層811の高さ)は、第1改質層812の広がり幅(換言すると、第1改質層812の高さ)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1改質層811と第1改質層812との間の距離Δ11は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されないが、0〜60μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。前記Δ11がこのような範囲であることで、第1改質層811及び第1改質層812をともに形成したことによる効果がより高くなる。
前記Δ11は、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層811の上端と、第1改質層812の下端と、の間の距離を意味する。Δ11が0μmであるのは、第1改質層811の上端と、第1改質層812の下端とが、接している場合である。
ライン状の第1改質層811及び第1改質層812は、互いに平行であることが好ましい。これにより、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
第2実施形態における第1改質工程では、半導体ウエハ8の厚さT方向において、第1改質層811の直上に第1改質層812を形成することが好ましい。このようにすることで、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
本明細書において、「半導体ウエハの厚さ方向において、第1改質層の直上に第1改質層を形成する」とは、「半導体ウエハの厚さ方向においては、これら第1改質層の位置が同じではなく、かつ、半導体ウエハの表面に対して平行な方向(換言すると、半導体ウエハの厚さ方向に対して直交する方向)においては、これら第1改質層の位置が同じとなるように、一方の第1改質層の位置を考慮して、他方の第1改質層を形成する」ことを意味する。これは、後述する第2改質層の場合も同様である。
第2実施形態における第1改質工程では、第1実施形態での第1改質層81及び第2改質層82の場合と同様に、レーザー光Rの光源から遠い第1改質層811を形成してから、レーザー光Rの光源に近い第1改質層812を形成する。このようにすることで、工程異常を伴うことなく、第1改質層811及び第1改質層812を形成できる。第1改質層812を形成した後では、この第1改質層812がレーザー光Rの透過を妨げるため、第1改質層811を形成することは困難である。
第1改質層812の形成時に用いるレーザー光Rの光源は、第1改質層811の形成時に用いたレーザー光Rの光源と、同じであってもよい(第1改質層811の形成時の前記光源は、第1改質層812の形成時の前記光源を兼ねてもよい)。
ライン状の第1改質層812の長手方向の長さは、ライン状の第1改質層811の長手方向の長さの90〜110%であることが好ましく、100%である(換言すると、ライン状の第1改質層811の長手方向の長さと同じである)ことがより好ましい。これにより、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
半導体ウエハ8の回路形成面8a又は裏面8bに対して平行な方向において、ライン状の第1改質層812の一方の端部の位置は、ライン状の第1改質層811の一方の端部の位置と、一致していてもよいし、一致していなくてもよいが、一致していることが好ましい。これらの位置が一致していることにより、後述する分割工程において、より高精度に半導体ウエハを分割できる。ライン状の第1改質層812の他方の端部の位置と、ライン状の第1改質層811の他方の端部の位置と、の関係も、上述の一方の端部の場合と同様である。
[第2実施形態における第2改質工程]
第2実施形態における前記第2改質工程では、図7(b)に示すように、半導体ウエハ8の裏面8b側から半導体ウエハ8にレーザー光Rを照射することにより、半導体ウエハ8の内部のうち、裏面8bから215μmの深さまでの第2領域80b中で、かつ、第1改質層812よりも前記裏面8b側の箇所に、第2改質層821と、この第2改質層821よりも前記裏面8b側に、さらに第2改質層822と、を形成する。このように、第2領域80b中に複数の第2改質層を形成することにより、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
第2実施形態において、第2改質層821及び第2改質層822は、いずれも、半導体ウエハ8の厚さT方向において、最も前記裏面8b側に形成されている第1改質層(すなわち、第1改質層812)よりも、さらに前記裏面8b側に形成する。
第2実施形態における第2改質工程は、第2領域80b中に、1本のライン状の第2改質層(すなわち、第2改質層82)を形成するのに代えて、半導体ウエハ8の厚さT方向において互いに離れた位置に、2本のライン状の第2改質層(すなわち、第2改質層821及び第2改質層822)を形成する点以外は、第1実施形態における第2改質工程と同じである。
第2改質層821及び第2改質層822は、半導体ウエハ8中での形成箇所が異なる点以外は、第1改質層811の場合と同じ方法で形成できる。
より具体的には、第2実施形態における第2改質工程では、第2改質層821及び第2改質層822はいずれも、後述する分割工程において、目的とするサイズの半導体チップが得られるように、第2領域80b中、裏面8bに沿ってライン状に形成する。ライン状の第2改質層821及び第2改質層822はいずれも、裏面8bに対して、平行又はほぼ平行となる。
第2実施形態における第2改質工程では、第2改質層821及び第2改質層822はいずれも、第2領域80b中での形成位置が異なり得る点以外は、第1実施形態における第2改質工程での第2改質層82の場合と同じ方法で形成できる。
第2実施形態において、第2改質層821及び第2改質層822の、第2領域80b中での形成位置は、いずれも、第1実施形態における、第2改質層82の形成位置と同様である。ただし、第2改質層821及び第2改質層822の形成位置を、互いに変える。
例えば、第1実施形態においては、第2領域80b中での第2改質層82の好ましい形成位置について説明したが、第2実施形態においては、第2改質層821及び第2改質層822の少なくとも一方が、このような好ましい形成位置の条件を満たすことが好ましく、第2改質層821及び第2改質層822の両方が、このような好ましい形成位置の条件を満たすことがより好ましい。
一例を挙げると、第2実施形態においては、第2改質層821及び第2改質層822の形成位置は、いずれも、半導体ウエハ8の裏面8bから、好ましくは65〜215μm、より好ましくは65〜195μm、さらに好ましくは65〜175μm、特に好ましくは65〜155μm、の深さの領域中のいずれかの位置であってよい。
第2改質層821及び第2改質層822はいずれも、第1実施形態における第2改質層82と、同様の形状を有する。そして、ライン状の第2改質層821及び第2改質層822は、互いに同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第2改質層821の広がり幅(換言すると、第2改質層821の高さ)は、第2改質層822の広がり幅(換言すると、第2改質層822の高さ)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第2改質層821と第2改質層822との間の距離Δ22は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されないが、前記Δ11と同様の数値範囲であることが好ましく、Δ22の値は、Δ11の値と同一であってもよいし、異なっていてもよい。前記Δ22がこのような数値範囲であることで、第2改質層821及び第2改質層822をともに形成したことによる効果がより高くなる。
前記Δ22は、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第2改質層821の上端と、第2改質層822の下端と、の間の距離を意味する。
ライン状の第2改質層821と第2改質層822は、互いに平行であることが好ましい。これにより、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
第2実施形態における第2改質工程では、半導体ウエハ8の厚さT方向において、第1改質層812の直上に第2改質層821を形成することが好ましい。このようにすることで、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
同様に、第2実施形態における第2改質工程では、半導体ウエハ8の厚さT方向において、第2改質層821の直上に第2改質層822を形成することが好ましい。このようにすることで、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
第2実施形態における第2改質工程では、第2実施形態における第1改質工程での第1改質層811及び第1改質層812の場合と同様に、レーザー光Rの光源から遠い第2改質層821を形成してから、レーザー光Rの光源に近い第2改質層822を形成する。このようにすることで、工程異常を伴うことなく、第2改質層821と第2改質層822を形成できる。第2改質層822を形成した後では、この第2改質層822がレーザー光Rの透過を妨げるため、第2改質層821を形成することは困難である。
第2改質層822の形成時に用いるレーザー光Rの光源は、第2改質層821の形成時に用いたレーザー光Rの光源と、同じであってもよい(第2改質層821の形成時の前記光源は、第2改質層822の形成時の前記光源を兼ねてもよい)。
また、第2改質層821又は第2改質層822の形成時に用いるレーザー光Rの光源は、第1改質層811又は第1改質層812の形成時に用いたレーザー光Rの光源と、同じであってもよい(レーザー光Rの光源は、レーザー光Rの光源を兼ねてもよい)。
ライン状の第2改質層822の長手方向の長さは、ライン状の第2改質層821の長手方向の長さの90〜110%であることが好ましく、100%である(換言すると、ライン状の第2改質層821の長手方向の長さと同じである)ことがより好ましい。これにより、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
半導体ウエハ8の回路形成面8a又は裏面8bに対して平行な方向において、ライン状の第2改質層822の一方の端部の位置は、ライン状の第2改質層821の一方の端部の位置と、一致していてもよいし、一致していなくてもよいが、一致していることが好ましい。これらの位置が一致していることにより、後述する分割工程において、より高精度に半導体ウエハを分割できる。ライン状の第2改質層822の他方の端部の位置と、ライン状の第2改質層821の他方の端部の位置と、の関係も、上述の一方の端部の場合と同様である。
第2実施形態における、第1改質層812と第2改質層821との間の距離Δ12は、第1実施形態における、第1改質層81と第2改質層82との間の距離Δ12と、同じであり、その場合の奏する効果も、第1実施形態の場合と同じである。
第2実施形態における、前記Δ12は、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層812の上端と、第2改質層821の下端と、の間の距離を意味する。
このように、本明細書においては、半導体ウエハの厚さ方向において、一列に形成されている第1改質層及び第2改質層の、いずれか一方又は両方が、複数存在する場合には、「第1改質層と第2改質層との間の距離Δ12」とは、「半導体ウエハの厚さ方向において、最も近くに存在する第1改質層と第2改質層との間の距離」を意味する。
ライン状の第2改質層821及び第2改質層822は、ライン状の第1改質層811及び第1改質層812に対して、平行であることが好ましい。これにより、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
第2実施形態における第2改質工程では、半導体ウエハ8の厚さT方向において、第1改質層811及び第1改質層812の直上に、第2改質層821及び第2改質層822を形成することが好ましい。このようにすることで、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
ライン状の第2改質層821及び第2改質層822の長手方向の長さはいずれも、ライン状の第1改質層811及び第1改質層812の長手方向の長さの90〜110%であることが好ましく、100%である(換言すると、ライン状の第1改質層811及び第1改質層812の長手方向の長さと同じである)ことがより好ましい。これにより、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
半導体ウエハ8の回路形成面8a又は裏面8bに対して平行な方向において、ライン状の第2改質層821及び第2改質層822の一方の端部の位置は、ライン状の第1改質層811及び第1改質層812の一方の端部の位置と、一致していてもよいし、一致していなくてもよいが、一致していることが好ましい。これらの位置が一致していることにより、半導体ウエハの反りの抑制効果がより高くなり、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。ライン状の第2改質層821及び第2改質層822の他方の端部の位置と、ライン状の第1改質層811及び第1改質層812の他方の端部の位置と、の関係も、上述の一方の端部の場合と同様である。
第2実施形態においては、このように、前記断面中、半導体ウエハ8の回路形成面8a及び裏面8bを結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層及び第2改質層の数は、ともに2である。そして、半導体ウエハ8の厚さT方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層及び第2改質層の数が、ともに2であることが好ましい。
第2実施形態においては、このように、ライン状の第1改質層811及び第1改質層812の形成と、ライン状の第2改質層821及び第2改質層822の形成とを、半導体ウエハ8の回路形成面8a又は裏面8bに対して平行な一方向において、位置をずらしながら半導体ウエハ8の全域に渡って繰り返し行う(すなわち、第1改質工程及び第2改質工程を繰り返し行う)ことにより、図7(c)に示すように、ライン状の第1改質層811、第1改質層812、第2改質層821及び第2改質層822を、それぞれ複数本形成する。
このように繰り返し形成するライン状の第1改質層811、第1改質層812、第2改質層821及び第2改質層822は、いずれも、これまでに説明したライン状の第1改質層811、第1改質層812、第2改質層821及び第2改質層822の場合と同じ方法で形成すればよい。
なお、図7(c)では、便宜上、ライン状の第1改質層811、第1改質層812、第2改質層821及び第2改質層822を、それぞれ6本ずつ示すにとどまっているが、これら改質層は、作製する半導体チップのサイズを考慮して、これらよりも多い本数を形成する。
このとき、すべてのライン状の第1改質層811は、互いに平行となるように形成することが好ましい。
同様に、すべてのライン状の第1改質層812は、互いに平行となるように形成することが好ましい。
同様に、すべてのライン状の第2改質層821は、互いに平行となるように形成することが好ましい。
同様に、すべてのライン状の第2改質層822は、互いに平行となるように形成することが好ましい。
第2実施形態においては、このように、半導体ウエハ8の回路形成面8aに沿って、第1領域80a中に多数のライン状の第1改質層811及び第1改質層812を形成し、半導体ウエハ8の裏面8bに沿って、第2領域80b中に多数のライン状の第2改質層821及び第2改質層822を形成する。その結果、第1領域80a中に、多数(複数本)のライン状の第1改質層811及び第1改質層812が配置された層を1層有し、第2領域80b中に、多数(複数本)のライン状の第2改質層821及び第2改質層822が配置された層を1層有する半導体ウエハ8が得られる。
第2実施形態においては、さらに、図7(d)に示すように、上述の第1改質層811と交差するライン状の第1改質層831を別途、上述の第1改質層811の場合と同様の方法で、第1領域80a中に多数形成し、上述の第1改質層812と交差するライン状の第1改質層832を別途、上述の第1改質層812の場合と同様の方法で、第1領域80a中に多数形成する。さらに、上述の第2改質層821と交差するライン状の第2改質層841を別途、上述の第2改質層821の場合と同様の方法で、第2領域80b中に多数形成し、上述の第2改質層822と交差するライン状の第2改質層842を別途、上述の第2改質層822の場合と同様の方法で、第2領域80b中に多数形成する。このとき、第1改質層811及び第1改質層812を形成する場合と同様に、第1改質層831を形成してから第1改質層832を形成する。そして、第2改質層821及び第2改質層822を形成する場合と同様に、第2改質層841を形成してから第2改質層842を形成する。
なお、図7(d)では、半導体ウエハ8の断面に、第1改質層831、第1改質層832、第2改質層841及び第2改質層842が、すべて重なっている場合を示しているが、半導体ウエハ8の断面の位置によっては、この断面に、これら改質層が重ならないこともある。
ライン状の第1改質層831とライン状の第1改質層811との交差角度、ライン状の第1改質層832とライン状の第1改質層812との交差角度、ライン状の第2改質層841とライン状の第2改質層821との交差角度、並びにライン状の第2改質層842とライン状の第2改質層822との交差角度は、いずれも、第1実施形態での、ライン状の第1改質層83とライン状の第1改質層81との交差角度、と同様に設定できる。
半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層831の広がり幅(換言すると、第1改質層831の高さ)は、特に限定されず、上述の第1改質層811の広がり幅と同様の数値範囲であってよく、第1改質層811の広がり幅と同程度の値であることが好ましい。
半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層812の広がり幅と、第1改質層832の広がり幅と、の関係も同様である。
半導体ウエハ8の厚さT方向における、第2改質層841の広がり幅(換言すると、第2改質層841の高さ)は、特に限定されず、上述の第2改質層821の広がり幅と同様の数値範囲であってよく、第2改質層821の広がり幅と同程度の値であることが好ましい。
半導体ウエハ8の厚さT方向における、第2改質層842の広がり幅と、第2改質層822の広がり幅と、の関係も同様である。
ライン状の第1改質層811同士の間隔と、ライン状の第1改質層812同士の間隔と、ライン状の第1改質層831同士の間隔と、ライン状の第1改質層832同士の間隔と、ライン状の第2改質層821同士の間隔と、ライン状の第2改質層822同士の間隔と、ライン状の第2改質層841同士の間隔と、ライン状の第2改質層842同士の間隔と、はいずれも、目的とする半導体チップのサイズに応じて適宜調節すればよい。
ただし、第2実施形態においては、先に説明したとおり、第1改質工程及び第2改質工程を行うときの半導体ウエハ8の厚さTに対して、半導体チップの最も短い一辺の長さが同等以上となるように、これら改質層同士の間隔を設定することが好ましい。
以上により、第1領域80a中においては、複数本のライン状の第1改質層811と、複数本のライン状の第1改質層831とにより、網目が形成され、かつ、複数本のライン状の第1改質層812と、複数本のライン状の第1改質層832とにより、網目が形成されており、同様に、第2領域80b中においては、複数本のライン状の第2改質層821と、複数本のライン状の第2改質層841とにより、網目が形成され、かつ、複数本のライン状の第2改質層822と、複数本のライン状の第2改質層842とにより、網目が形成されている、半導体ウエハ8が得られる。
[第2実施形態における分割工程]
図8は、本発明の第2実施形態に係る半導体チップの製造方法における分割工程を模式的に説明するための拡大断面図である。
第2実施形態における前記分割工程では、図8(a)に示すように、前記第1改質工程及び第2改質工程を行った後に、半導体ウエハ8の裏面8bを研削する。
第2実施形態における前記分割工程は、半導体ウエハ8として、第1改質層81及び第1改質層83に代えて、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812及び第1改質層832を有し、かつ、第2改質層82及び第2改質層84に代えて、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842を有しているもの、を用いる点以外は、第1実施形態における分割工程と同じである。
図8(a)中の半導体ウエハ8の裏面8bは、研削手段6による研削時の面である。
第2実施形態においては、この研削時に同時に、この研削に伴って半導体ウエハ8に加えられる力によって、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812、第1改質層832、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842の部位において、半導体ウエハ8を分割する。ここでは、亀裂89は、第1改質層811、第1改質層812、第2改質層821及び第2改質層822を貫いて形成され、第1改質層831、第1改質層832、第2改質層841及び第2改質層842を貫いて形成(図示略)されている。
このように、半導体ウエハ8の厚さT方向における、半導体ウエハ8の研削面、すなわち研削時の裏面8bの位置が、研削前の半導体ウエハ8中の第1改質層811及び第1改質層831の位置よりも、半導体ウエハ8の回路形成面8a側に到達するまで研削を続けることにより、最終的には、図8(b)に示すように、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812、第1改質層832、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842をすべて研削によって消失させて、複数個の半導体チップ8’を得る。
このような第2実施形態で得られる半導体チップ8’及び半導体チップ群8A’は、上述の第1実施形態で得られる、図4(b)に示す半導体チップ8’及び半導体チップ群8A’と同じである。
図8(a)においては、半導体ウエハ8の厚さT方向において、半導体ウエハ8の研削面(研削時の裏面)8bの位置が、研削によって、第2改質層822及び第2改質層842の位置に到達していない段階(換言すると、第2改質層822及び第2改質層842が研削によって消失していない段階)で、亀裂89が形成されている状態を示している。
ただし、このような亀裂89の状態は一例である。
第2実施形態での分割工程において、亀裂89が形成される時期は、例えば、半導体ウエハ8の研削面(裏面)8bの前記位置が、研削によって、第2改質層821及び第2改質層841の位置、又は、第2改質層822及び第2改質層842の位置に重なっている段階(換言すると、第2改質層821及び第2改質層841が研削によって消失中の段階、又は、第2改質層822及び第2改質層842が研削によって消失中の段階)であってもよいし、
研削によって、第2改質層822及び第2改質層842の位置を通過し、第2改質層821及び第2改質層841の位置に到達していない段階(換言すると、第2改質層822及び第2改質層842が研削によって消失済みで、かつ、第2改質層821及び第2改質層841が研削によって消失していない段階)であってもよいし、
研削によって、第2改質層821及び第2改質層841の位置を通過し、第1改質層812及び第1改質層832の位置に到達していない段階(換言すると、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842が研削によって消失済みで、かつ、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812及び第1改質層832が研削によって消失していない段階)であってもよいし、
研削によって、第1改質層812及び第1改質層832の位置に重なっている段階(換言すると、第1改質層812及び第1改質層832が研削によって消失中の段階)であってもよいし、
研削によって、第1改質層812及び第1改質層832の位置を通過し、第1改質層811及び第1改質層831の位置に到達していない段階(換言すると、第1改質層812及び第1改質層832が研削によって消失済みで、かつ、第1改質層811及び第1改質層831が研削によって消失していない段階)であってもよい。
第2実施形態での亀裂89の状態は、上述の第1実施形態での亀裂89の状態と同様である。
また、図8(b)においては、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812、第1改質層832、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842をすべて研削によって消失させるまで、半導体ウエハ8の裏面8bを研削した状態を示している。この場合、得られた半導体チップ8’の内部に、これら改質層はすべて存在しない。ただし、このような研削面(研削時の裏面)8bの最終的な位置は、一例である。
例えば、第2実施形態における分割工程では、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842を研削によって消失させ、かつ、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812及び第1改質層832を研削によって消失させずに、半導体ウエハ8の裏面8bを研削してもよい。この場合、得られた半導体チップ8’(例えば、半導体チップ8’の周縁部)には、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812又は第1改質層832の少なくとも一部が存在する。
また、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822、第2改質層842、第1改質層812及び第1改質層832を研削によって消失させ、かつ、第1改質層811及び第1改質層831を研削によって消失させずに、半導体ウエハ8の裏面8bを研削してもよい。この場合、得られた半導体チップ8’(例えば、半導体チップ8’の周縁部)には、第1改質層811又は第1改質層831の少なくとも一部が存在する。
ただし、このようにいずれかの改質層が存在する半導体チップ8’は、機械的強度が低い可能性があるため、分割工程においては、図8(b)に示すように、第1改質層811及び第1改質層831を研削によって消失させるまで、半導体ウエハ8の裏面8bを研削することが好ましい。
ここでは、第2実施形態として、前記断面中、半導体ウエハの回路形成面及び裏面を結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層及び第2改質層の数が、ともに2である場合の、半導体チップの製造方法について説明したが、これら改質層の数は、さらに異なっていてもよい。
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る半導体チップの製造方法における、前記第1改質工程及び第2改質工程を模式的に説明するための拡大断面図である。
本実施形態は、前記断面(より具体的には、半導体ウエハの回路形成面又は裏面に対して直交する方向における、半導体ウエハの断面)中、半導体ウエハの回路形成面及び裏面を結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数が2であり、かつ、ライン状の第2改質層の数が1である場合の、半導体チップの製造方法である。
[第3実施形態における第1改質工程]
第3実施形態における前記第1改質工程は、図9(a)に示すように、第2実施形態における第1改質工程と同じである。
このように、第1領域80a中に複数の第1改質層を形成することにより、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
[第3実施形態における第2改質工程]
第3実施形態における前記第2改質工程は、図9(b)に示すように、第2改質層821及び第2改質層822に代えて、第2改質層82を形成する点以外は、第2実施形態における第2改質工程と同じである。
第3実施形態における第2改質工程は、例えば、第2改質層821及び第2改質層822のいずれか一方を形成せず、形成した改質層を第2改質層82とする点以外は、第2実施形態における第2改質工程と同じ方法で行うことができる。換言すると、第3実施形態における第2改質工程は、第2改質層の形成対象である半導体ウエハ8として、第1改質層81を有しているものに代えて、第1改質層811及び第1改質層812を有しているものを用いる点以外は、第1実施形態における第2改質工程と同じ方法で行うことができる。
第3実施形態における、第1改質層812と第2改質層82との間の距離Δ12は、第1実施形態における、第1改質層81と第2改質層82との間の距離Δ12と、同じであり、その場合の奏する効果も、第1実施形態の場合と同じである。
第3実施形態における、前記Δ12は、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層812の上端と、第2改質層82の下端と、の間の距離を意味する。
第3実施形態においては、このように、前記断面中、半導体ウエハ8の回路形成面8a及び裏面8bを結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数は2であり、ライン状の第2改質層の数は1である。そして、半導体ウエハ8の厚さT方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数は2であり、ライン状の第2改質層の数は1であることが好ましい。
第3実施形態においては、このように、ライン状の第1改質層811及び第1改質層812の形成と、ライン状の第2改質層82の形成とを、半導体ウエハ8の回路形成面8a又は裏面8bに対して平行な一方向において、位置をずらしながら半導体ウエハ8の全域に渡って繰り返し行う(すなわち、第1改質工程及び第2改質工程を繰り返し行う)ことにより、図9(c)に示すように、ライン状の第1改質層811、第1改質層812及び第2改質層822を、それぞれ複数本形成する。
第3実施形態においては、このように、半導体ウエハ8の回路形成面8aに沿って、第1領域80a中に多数のライン状の第1改質層811及び第1改質層812を形成し、半導体ウエハ8の裏面8bに沿って、第2領域80b中に多数のライン状の第2改質層82を形成する。その結果、第1領域80a中に、多数(複数本)のライン状の第1改質層811及び第1改質層812が配置された層を1層有し、第2領域80b中に、多数(複数本)のライン状の第2改質層82が配置された層を1層有する半導体ウエハ8が得られる。
第3実施形態においては、さらに、図9(d)に示すように、上述の第1改質層811と交差するライン状の第1改質層831を別途、上述の第1改質層811の場合と同様の方法で、第1領域80a中に多数形成し、上述の第1改質層812と交差するライン状の第1改質層832を別途、上述の第1改質層812の場合と同様の方法で、第1領域80a中に多数形成する。さらに、上述の第2改質層82と交差するライン状の第2改質層84を別途、上述の第2改質層82の場合と同様の方法で、第2領域80b中に多数形成する。このときは、第1改質層831を形成してから、第1改質層832を形成する。
ライン状の第1改質層811同士の間隔と、ライン状の第1改質層812同士の間隔と、ライン状の第1改質層831同士の間隔と、ライン状の第1改質層832同士の間隔と、ライン状の第2改質層82同士の間隔と、ライン状の第2改質層84同士の間隔と、はいずれも、目的とする半導体チップのサイズに応じて適宜調節すればよい。
ただし、第3実施形態においては、先に説明したとおり、第1改質工程及び第2改質工程を行うときの半導体ウエハ8の厚さTに対して、半導体チップの最も短い一辺の長さが同等以上となるように、これら改質層同士の間隔を設定することが好ましい。
以上により、第1領域80a中においては、複数本のライン状の第1改質層811と、複数本のライン状の第1改質層831とにより、網目が形成され、かつ、複数本のライン状の第1改質層812と、複数本のライン状の第1改質層832とにより、網目が形成されており、同様に、第2領域80b中においては、複数本のライン状の第2改質層82と、複数本のライン状の第2改質層84とにより、網目が形成されている、半導体ウエハ8が得られる。
[第3実施形態における分割工程]
図10は、本発明の第3実施形態に係る半導体チップの製造方法における分割工程を模式的に説明するための拡大断面図である。
第3実施形態における分割工程は、図10(a)に示すように、例えば、半導体ウエハ8として、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842に代えて、第2改質層82及び第2改質層84を有しているもの、を用いる点以外は、第2実施形態における分割工程と同じ方法で行うことができる。換言すると、第3実施形態における分割工程は、半導体ウエハ8として、第1改質層81及び第1改質層83に代えて、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812及び第1改質層832を有しているもの、を用いる点以外は、第1実施形態における分割工程と同じ方法で行うことができる。
第3実施形態においては、この研削時に同時に、この研削に伴って半導体ウエハ8に加えられる力によって、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812、第1改質層832、第2改質層82及び第2改質層84の部位において、半導体ウエハ8を分割する。ここでは、亀裂89は、第1改質層811、第1改質層812及び第2改質層82を貫いて形成され、第1改質層831、第1改質層832及び第2改質層84を貫いて形成(図示略)されている。
このように、半導体ウエハ8の厚さT方向における、半導体ウエハ8の研削面、すなわち研削時の裏面8bの位置が、研削前の半導体ウエハ8中の第1改質層811及び第1改質層831の位置よりも、半導体ウエハ8の回路形成面8a側に到達するまで研削を続けることにより、最終的には、図10(b)に示すように、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812、第1改質層832、第2改質層82及び第2改質層84をすべて研削によって消失させて、複数個の半導体チップ8’を得る。
このような第3実施形態で得られる半導体チップ8’及び半導体チップ群8A’は、上述の第1実施形態で得られる、図4(b)に示す半導体チップ8’及び半導体チップ群8A’と同じである。
先に説明した第1実施形態及び第2実施形態の場合と同様に、第3実施形態においても、亀裂89が形成される時期、研削面(研削時の裏面)8bの最終的な位置等は、目的に応じて適宜調節できる。
ここでは、第3実施形態として、前記断面中、半導体ウエハの回路形成面及び裏面を結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数が2であり、かつ、ライン状の第2改質層の数が1である場合の、半導体チップの製造方法について説明したが、これら改質層の数は、さらに異なっていてもよい。
<第4実施形態>
図11は、本発明の第4実施形態に係る半導体チップの製造方法における、前記第1改質工程及び第2改質工程を模式的に説明するための拡大断面図である。
本実施形態は、前記断面(より具体的には、半導体ウエハの回路形成面又は裏面に対して直交する方向における、半導体ウエハの断面)中、半導体ウエハの回路形成面及び裏面を結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数が1であり、かつ、ライン状の第2改質層の数が2である場合の、半導体チップの製造方法である。
[第4実施形態における第1改質工程]
第4実施形態における前記第1改質工程は、図11(a)に示すように、第1実施形態における第1改質工程と同じである。換言すると、第4実施形態における第1改質工程は、第1領域80a中に、2本のライン状の第1改質層(すなわち、第1改質層811及び第1改質層812)を形成するのに代えて、1本のライン状の第1改質層(すなわち、第1改質層81)を形成する点以外は、第2実施形態における第1改質工程と同じである。例えば、第4実施形態における第1改質工程は、第1改質層811及び第1改質層812のいずれか一方を形成せず、形成した改質層を第1改質層81とする点以外は、第2実施形態における第1改質工程と同じ方法で行うことができる。
[第4実施形態における第2改質工程]
第4実施形態における前記第2改質工程では、図11(b)に示すように、第2改質層の形成対象である半導体ウエハ8として、第1改質層811及び第1改質層812を有しているものに代えて、第1改質層81を有しているものを用いる点以外は、第2実施形態における第2改質工程と同じ方法で行うことができる。
第2改質層821及び第2改質層822はいずれも、第2実施形態の場合と同じ方法で形成できる。
このように、第2領域80b中に複数の第2改質層を形成することにより、後述する分割工程においては、より高精度に半導体ウエハを分割できる。
第4実施形態における、第1改質層81と第2改質層821との間の距離Δ12は、第1実施形態における、第1改質層81と第2改質層82との間の距離Δ12と、同じであり、その場合の奏する効果も、第1実施形態の場合と同じである。
第4実施形態における、前記Δ12は、半導体ウエハ8の厚さT方向における、第1改質層81の上端と、第2改質層821の下端と、の間の距離を意味する。
第4実施形態においては、このように、前記断面中、半導体ウエハ8の回路形成面8a及び裏面8bを結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数は1であり、ライン状の第2改質層の数は2である。そして、半導体ウエハ8の厚さT方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数は1であり、ライン状の第2改質層の数は2であることが好ましい。
第4実施形態においては、このように、ライン状の第1改質層81の形成と、ライン状の第2改質層821及び第2改質層822の形成とを、半導体ウエハ8の回路形成面8a又は裏面8bに対して平行な一方向において、位置をずらしながら半導体ウエハ8の全域に渡って繰り返し行う(すなわち、第1改質工程及び第2改質工程を繰り返し行う)ことにより、図11(c)に示すように、ライン状の第1改質層81、第2改質層821及び第2改質層822を、それぞれ複数本形成する。
第4実施形態においては、このように、半導体ウエハ8の回路形成面8aに沿って、第1領域80a中に多数のライン状の第1改質層81を形成し、半導体ウエハ8の裏面8bに沿って、第2領域80b中に多数のライン状の第2改質層821及び第2改質層822を形成する。その結果、第1領域80a中に、多数(複数本)のライン状の第1改質層81が配置された層を1層有し、第2領域80b中に、多数(複数本)のライン状の第2改質層821及び第2改質層822が配置された層を1層有する半導体ウエハ8が得られる。
第4実施形態においては、さらに、図11(d)に示すように、上述の第1改質層81と交差するライン状の第1改質層83を別途、上述の第1改質層81の場合と同様の方法で、第1領域80a中に多数形成する。さらに、上述の第2改質層821と交差するライン状の第2改質層841を別途、上述の第2改質層821の場合と同様の方法で、第2領域80b中に多数形成し、上述の第2改質層822と交差するライン状の第2改質層842を別途、上述の第2改質層822の場合と同様の方法で、第2領域80b中に多数形成する。このときは、第2改質層841を形成してから、第2改質層842を形成する。
ライン状の第1改質層81同士の間隔と、ライン状の第1改質層83同士の間隔と、ライン状の第2改質層821同士の間隔と、ライン状の第2改質層822同士の間隔と、ライン状の第2改質層841同士の間隔と、ライン状の第2改質層842同士の間隔と、はいずれも、目的とする半導体チップのサイズに応じて適宜調節すればよい。
ただし、第4実施形態においては、先に説明したとおり、第1改質工程及び第2改質工程を行うときの半導体ウエハ8の厚さTに対して、半導体チップの最も短い一辺の長さが同等以上となるように、これら改質層同士の間隔を設定することが好ましい。
以上により、第1領域80a中においては、複数本のライン状の第1改質層81と、複数本のライン状の第1改質層83とにより、網目が形成されており、同様に、第2領域80b中においては、複数本のライン状の第2改質層821と、複数本のライン状の第2改質層841とにより、網目が形成され、かつ、複数本のライン状の第2改質層822と、複数本のライン状の第2改質層842とにより、網目が形成されている、半導体ウエハ8が得られる。
[第4実施形態における分割工程]
図12は、本発明の第4実施形態に係る半導体チップの製造方法における分割工程を模式的に説明するための拡大断面図である。
第4実施形態における分割工程は、図12(a)に示すように、例えば、半導体ウエハ8として、第1改質層811、第1改質層831、第1改質層812及び第1改質層832を有しているものに代えて、第1改質層81及び第1改質層83を有しているもの、を用いる点以外は、第2実施形態における分割工程と同じ方法で行うことができる。換言すると、第4実施形態における分割工程は、第2改質層82及び第2改質層84を有しているものに代えて、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842を有しているもの、を用いる点以外は、第1実施形態における分割工程と同じ方法で行うことができる。
第4実施形態においては、この研削時に同時に、この研削に伴って半導体ウエハ8に加えられる力によって、第1改質層81、第1改質層83、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842の部位において、半導体ウエハ8を分割する。ここでは、亀裂89は、第1改質層81、第2改質層821及び第2改質層822を貫いて形成され、第1改質層83、第2改質層841及び第2改質層842を貫いて形成(図示略)されている。
このように、半導体ウエハ8の厚さT方向における、半導体ウエハ8の研削面、すなわち研削時の裏面8bの位置が、研削前の半導体ウエハ8中の第1改質層81及び第1改質層83の位置よりも、半導体ウエハ8の回路形成面8a側に到達するまで研削を続けることにより、最終的には、図12(b)に示すように、第1改質層81、第1改質層83、第2改質層821、第2改質層841、第2改質層822及び第2改質層842をすべて研削によって消失させて、複数個の半導体チップ8’を得る。
このような第4実施形態で得られる半導体チップ8’及び半導体チップ群8A’は、上述の第1実施形態で得られる、図4(b)に示す半導体チップ8’及び半導体チップ群8A’と同じである。
先に説明した第1実施形態及び第2実施形態の場合と同様に、第4実施形態においても、亀裂89が形成される時期、研削面(研削時の裏面)8bの最終的な位置等は、目的に応じて適宜調節できる。
ここでは、第4実施形態として、前記断面中、半導体ウエハの回路形成面及び裏面を結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数が1であり、かつ、ライン状の第2改質層の数が2である場合の、半導体チップの製造方法について説明したが、これら改質層の数は、さらに異なっていてもよい。
本実施形態の半導体チップの製造方法は、上述の第1〜第4実施形態に限定されない。例えば、本実施形態の半導体チップの製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲内において、第1〜第4実施形態における一部の構成が変更又は削除されたものや、第1〜第4実施形態に、さらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、第1〜第4実施形態においては、半導体ウエハとして、その内部の第1領域と、第2領域と、が互いに離間しているものを用いているが、前記製造方法においては、第1領域の一部と、第2領域の一部と、が重複している半導体ウエハを用いてもよい。第1改質工程及び第2改質工程を行うときの半導体ウエハの厚さによっては、このように、半導体ウエハの内部に、第1領域であり、かつ第2領域でもある領域が存在し得るが、前記製造方法においては、このような場合であっても、半導体ウエハ中の第1改質層よりも裏面側の箇所に、第2改質層を形成すればよい。
また、第1〜第4実施形態においては、前記断面中、半導体ウエハの回路形成面及び裏面を結ぶ方向において、一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数が1又は2であり、かつ、ライン状の第2改質層の数が1又は2である場合の、半導体チップの製造方法について説明したが、このように一列に形成されている、ライン状の第1改質層の数及びライン状の第2改質層の数は、いずれも3以上であってもよい。ただし、前記半導体チップの製造方法がより簡略化され、かつ、十分に本発明の効果が得られる点では、これら改質層の数は、いずれも1又は2であることが好ましい。
本実施形態においては、ここまでに説明した第1改質工程、第2改質工程及び分割工程を行うことにより、先の説明のとおり、複数個の前記半導体チップが整列している状態の半導体チップ群が得られる。本実施形態においては、前記半導体チップ群から目的とする半導体チップが得られる。
<<半導体装置の製造方法>>
上述の半導体チップの製造方法により、半導体チップ群を得た後、この半導体チップ群を用いて、半導体装置を製造できる。
すなわち、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、前記半導体チップの製造方法により、複数個の半導体チップが整列している状態の半導体チップ群を得た後、支持シートと、前記支持シート上に形成されたフィルム状接着剤と、を備えたダイボンディングシートを用い、前記ダイボンディングシート中の前記フィルム状接着剤を、前記半導体チップ群における半導体チップの研削後の前記裏面に貼付することにより、前記半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製する積層工程と、前記積層物に対して、その支持シート側から力を加えることにより、前記積層物中の前記フィルム状接着剤を、前記半導体チップに沿って切断し、切断後の前記フィルム状接着剤を裏面に備えた前記半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する。
図13は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法における、前記積層工程及びピックアップ工程を模式的に説明するための拡大断面図である。
[積層工程]
本実施形態における前記積層工程では、図13(a)に示すように、支持シート10と、支持シート10上に形成されたフィルム状接着剤13と、を備えたダイボンディングシート101を用いる。支持シート10は、基材11と、基材11上に形成された粘着剤層12と、を備えて構成されており、粘着剤層12の、基材11側とは反対側の面12a上に、フィルム状接着剤13が設けられている。すなわち、ダイボンディングシート101は、基材11、粘着剤層12及びフィルム状接着剤13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
ダイボンディングシート101は、公知のものでよい。
フィルム状接着剤13は、後述するように、半導体チップ8’を、基板の回路面又は別の半導体チップ上に接着固定して、ダイボンディングするために用いる。上記の製造方法により切断され、かつ熱硬化性を有するフィルム状接着剤13(すなわち、熱硬化性を有するフィルム状接着剤13’)は、これを備えた半導体チップ8’を用いて製造された半導体装置中において、硬化物となっている。
粘着剤層12は、支持シート10と、フィルム状接着剤13と、の間の接着力を調節する。
前記積層工程では、先に説明した半導体チップの製造方法により、複数個の半導体チップ8’が整列している状態の半導体チップ群8A’を得た後、ダイボンディングシート101を用い、ダイボンディングシート101中のフィルム状接着剤13を、半導体チップ群8A’における半導体チップ8’の研削後の裏面8b’に貼付することにより、半導体チップ群8A’と、ダイボンディングシート101と、の積層物801を作製する。
このとき通常は、1枚のダイボンディングシート101を、半導体チップ群8A’全体に貼付する。
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、単なる「積層物」との記載は、ここに示すような「半導体チップ群とダイボンディングシートとの積層物」を意味する。
ここでは、ダイボンディングシートとして、基材11、粘着剤層12及びフィルム状接着剤13を備えたものを示しており、このようなダイボンディングシートは、ダイシングダイボンディングシートとして用いることができる。そして、本実施形態においては、他の公知のダイボンディングシート用いてもよい。
他のダイボンディングシートとしては、例えば、ダイボンディングシート101において、粘着剤層12が省略されたもの;基材11、粘着剤層12及びフィルム状接着剤13以外に、これらのいずれか2層の間に、さらに中間層を備えたもの等が挙げられる。
先に説明した半導体チップの製造方法において、前記分割工程まで保護膜7を用いている場合、本実施形態においては、図13(b)に示すように、半導体チップ8’から保護膜7を取り除く。
なお、本明細書においては、保護膜の有無によらず、複数個の半導体チップが整列している状態にあるものを「半導体チップ群」と称する。
[ピックアップ工程]
本実施形態における前記ピックアップ工程では、図13(c)に示すように、前記積層物801に対して、その支持シート10側から力を加えることにより、積層物801中のフィルム状接着剤13を、半導体チップ8’の外周80’に沿って切断し、切断後のフィルム状接着剤13’を裏面8b’に備えた半導体チップ8’を、支持シート10から引き離してピックアップする。
ここでは、フィルム状接着剤のうち、半導体チップ8’とともにピックアップされた部位にのみ、符号13’を付し、残りの部位の符号は13のままとしている。
なお、本明細書においては、このように切断後のフィルム状接着剤を裏面に備えた半導体チップを「フィルム状接着剤付き半導体チップ」と略記することがある。
ピックアップ工程は、公知の方法で行うことができる。
ピックアップ工程では、例えば、半導体チップのピックアップ手段として、ピックアップ対象物に対して力を加えるための突き上げ部と、半導体チップを支持シートから引き離すための引き上げ部と、を備えたものを用いる。
ここに示すピックアップ手段は、前記突き上げ部として、1個の突起(ピン)51を備え、前記引き上げ部として、真空コレット52を備えている。
そして、ここでは、前記ピックアップ手段において、突起51を突出させ、突起51の先端部がダイボンディングシート101を、その基材11側から突き上げることで、積層物801に対して、突起51の突出方向Pに力を加え、さらに、真空コレット52を引き上げることで、吸着した半導体チップ8’をフィルム状接着剤13’とともに、真空コレット52の引き上げ方向Pに支持シート10から引き離す例を示している。このとき、突起51の突出量(突き上げ量)、突出速度(突き上げ速度)、突出状態の保持時間(突き上げ保持時間)等の突き上げ条件、及び、真空コレット52の引き上げ速度等の引き上げ条件は、いずれも適宜調節できる。
なお、図13においては、積層物801のみ、断面表示している。
ピックアップ工程においては、フィルム状接着剤13の切断が完了してから、この切断後のフィルム状接着剤13’を備えた半導体チップ8’が支持シート10から引き離されてもよいし、フィルム状接着剤13の切断が完了する前に、この切断中のフィルム状接着剤13を備えた半導体チップ8’が支持シート10から引き離され、この引き離し後にフィルム状接着剤13の切断が完了してもよく、フィルム状接着剤13の切断の完了のタイミングと、半導体チップ8’の引き離しのタイミングと、の順序は、特に限定されない。これらタイミングの順序は、上述の突き上げ条件及び引き上げ条件等のピックアップ条件、又は、フィルム状接着剤13の特性、を調節することにより、適宜調節できる。
ここでは、積層物801に力を加えるものとして、図示されている突起51は1個であるが、本実施形態において、突起51の数は特に限定されず、2個以上であってもよく、適宜選択すればよい。
ここでは、積層物801に対して力を加える方法として、突起からなる突き上げ部を突出させることにより、力を加える方法について説明したが、他の方法で力を加えてもよい。このような他の方法としては、例えば、傾斜面を有するスライダーからなる突き上げ部を用い、その前記傾斜面を支持シート10中の基材11の表面に接触させながら、基材11の表面に沿って移動させることにより、力を加える方法等、他の公知の方法が挙げられる。
ここでは、前記ピックアップ工程において、積層物801を作製後、そのままの状態の積層物801に対して、支持シート10側から力を加えることにより、積層物801中のフィルム状接着剤13を切断し、この切断後のフィルム状接着剤13’を備えた半導体チップ8’をピックアップする場合について説明した。この方法(以下、「ピックアップ方法(1)」と称することがある)は、工程数が少なく、常温下で行うことができるため、工程が簡略化されている点で有利である。また、この方法(ピックアップ方法(1))は、サイズが小さい半導体チップの製造に適しており、同様にサイズが小さい半導体チップの製造に適している、上述の第1改質工程から分割工程までの各工程に引き続いて行うのに、特に適している。
一方で、前記ピックアップ工程においては、上記のピックアップ方法(1)以外の方法を採用してもよい。例えば、積層物801を作製後、そのままの状態の積層物801に対して、支持シート10側から力を加えるのではなく、まず、冷却した積層物801を、その中のダイボンディングシート101の表面に対して平行な方向においてエキスパンドする(引き伸ばす)。これにより、半導体チップ8’間の距離を広げるとともに、積層物801中のフィルム状接着剤13を、半導体チップ8’の外周80’に沿って切断し、切断後のフィルム状接着剤13’を裏面8b’に備えた半導体チップ8’を作製する。次いで、このエキスパンドし、フィルム状接着剤13を切断した状態の積層物801のうち、半導体チップ8’が配置されていないダイボンディングシート101の周縁部近傍を加熱処理する。次いで、この加熱処理後の積層物801に対して、上記のピックアップ方法(1)の場合と同じ方法で、その支持シート10側から力を加えることにより、切断後のフィルム状接着剤13’を裏面8b’に備えた半導体チップ8’(既に作製済みのフィルム状接着剤付き半導体チップ)を、支持シート10から引き離してピックアップする。この方法(以下、「ピックアップ方法(2)」と称することがある)では、幅広い種類のダイボンディングシート101を用いることができる。その反面、この方法(ピックアップ方法(2))は、フィルム状接着剤の切断を主目的とした工程が別途必要であり、工程数が多く、積層物の冷却も必要であり、煩雑であって、サイズが小さい半導体チップの製造に最適であるとはいえない。
したがって、本実施形態においては、ピックアップ工程において、ピックアップ方法(2)ではなく、ピックアップ方法(1)を採用することが好ましい。
本実施形態の半導体装置の製造方法においては、前記ピックアップ工程により得られたフィルム状接着剤付き半導体チップを用いて、これ以降は公知の方法により、半導体装置を製造できる。
例えば、前記フィルム状接着剤付き半導体チップを、そのフィルム状接着剤によって基板の回路面にダイボンディングし、必要に応じて、この半導体チップにさらに半導体チップを1個以上積層して、ワイヤボンディングを行った後、得られたもの全体を樹脂により封止することで、半導体パッケージを製造できる。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置を製造できる。
◎ダイボンディングシート
次に、前記積層工程及びピックアップ工程において用いるのに好適な、ダイボンディングシート101等のダイボンディングシートについて、より詳細に説明する。
○基材
前記ダイボンディングシート中の支持シートを構成する前記基材(例えば、ダイボンディングシート101中の支持シート10を構成する基材11)は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
基材の厚さは、特に限定されないが、50〜300μmであることが好ましく、60〜140μmであることがより好ましい。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、フィルム状接着剤等)との接着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
○粘着剤層
前記ダイボンディングシート中の支持シートを構成する前記粘着剤層(例えば、ダイボンディングシート101中の支持シート10を構成する粘着剤層12)は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1〜100μmであることが好ましく、1〜60μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。すなわち、粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、その硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層すればよい。また、基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、ダイボンディングシートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I−1a)(以下、「粘着性樹脂(I−1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I−1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I−1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I−2a)(以下、「粘着性樹脂(I−2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I−2);前記粘着性樹脂(I−2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I−3)等が挙げられる。
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I−1a)を含有する粘着剤組成物(I−4)等が挙げられる。
[粘着性樹脂(I−1a)]
前記粘着剤組成物(I−1)、粘着剤組成物(I−2)、粘着剤組成物(I−3)及び粘着剤組成物(I−4)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)」と略記する)における前記粘着性樹脂(I−1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1〜20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)において、前記アクリル系重合体等の前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1〜35質量%であることが好ましい。
粘着剤組成物(I−1)又は粘着剤組成物(I−4)が含有する粘着性樹脂(I−1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I−1)又は粘着剤組成物(I−4)において、粘着剤組成物(I−1)又は粘着剤組成物(I−4)の総質量に対する、粘着性樹脂(I−1a)の含有量の割合は、5〜99質量%であることが好ましい。
[粘着性樹脂(I−2a)]
前記粘着剤組成物(I−2)及び(I−3)における前記粘着性樹脂(I−2a)は、例えば、粘着性樹脂(I−1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I−1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I−1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I−1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
粘着剤組成物(I−2)又は(I−3)が含有する粘着性樹脂(I−2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I−2)又は(I−3)において、粘着剤組成物(I−2)又は(I−3)の総質量に対する、粘着性樹脂(I−2a)の含有量の割合は、5〜99質量%であることが好ましい。
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I−1)及び(I−3)における前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
粘着剤組成物(I−1)又は(I−3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記粘着剤組成物(I−1)において、粘着剤組成物(I−1)の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1〜95質量%であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I−3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I−2a)の含有量100質量部に対して、0.01〜300質量部であることが好ましい。
[架橋剤]
粘着性樹脂(I−1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I−1)又は(I−4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着性樹脂(I−2a)として、例えば、粘着性樹脂(I−1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I−2)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
前記粘着性樹脂(I−1a)及び(I−2a)における前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I−1a)同士又は粘着性樹脂(I−2a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1−(2−メチル)−アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤組成物(I−1)、(I−2)又は(I−4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記粘着剤組成物(I−1)又は(I−4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I−1a)の含有量100質量部に対して、0.01〜50質量部であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I−2)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I−2a)の含有量100質量部に対して、0.01〜50質量部であることが好ましい。
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I−1)、(I−2)及び(I−3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I−1)〜(I−3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I−1)〜(I−3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4−ジエチルチオキサントン;1,2−ジフェニルメタン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン;1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
粘着剤組成物(I−1)〜(I−3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I−1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I−2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I−2a)の含有量100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I−3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I−2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(−C(=O)−)を2個以上有するものが挙げられる。
粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
○粘着剤組成物の製造方法
粘着剤組成物(I−1)〜(I−4)等の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15〜30℃であることが好ましい。
○フィルム状接着剤
前記ダイボンディングシートを構成する前記フィルム状接着剤(例えば、ダイボンディングシート101を構成するフィルム状接着剤13)は、熱硬化性を有するものが好ましく、感圧接着性を有するものが好ましい。熱硬化性及び感圧接着性をともに有するフィルム状接着剤は、未硬化状態では各種被着体に軽く押圧することで貼付できる。また、フィルム状接着剤は、加熱して軟化させることで各種被着体に貼付できるものであってもよい。フィルム状接着剤は、硬化によって最終的には耐衝撃性が高い硬化物となり、この硬化物は、厳しい高温・高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。
フィルム状接着剤は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
フィルム状接着剤の厚さは、特に限定されないが、1〜100μmであることが好ましく、1〜60μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。
ここで、「フィルム状接着剤の厚さ」とは、フィルム状接着剤全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるフィルム状接着剤の厚さとは、フィルム状接着剤を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
フィルム状接着剤は、その構成成分を含有する接着剤組成物を用いて形成できる。例えば、フィルム状接着剤の形成対象面に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にフィルム状接着剤を形成できる。接着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、フィルム状接着剤における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
接着剤組成物は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で塗工できる。
支持シート上にフィルム状接着剤を設ける場合には、例えば、支持シート上に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、支持シート上にフィルム状接着剤を積層すればよい。また、支持シート上にフィルム状接着剤を設ける場合には、例えば、剥離フィルム上に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上にフィルム状接着剤を形成しておき、このフィルム状接着剤の露出面を、支持シートの目的とする表面と貼り合わせることで、支持シート上にフィルム状接着剤を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、ダイボンディングシートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
好ましい接着剤組成物としては、熱硬化性の接着剤組成物が挙げられる。
熱硬化性の接着剤組成物としては、例えば、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)を含有するものが挙げられる。以下、各成分について説明する。
[重合体成分(a)]
重合体成分(a)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分であり、フィルム状接着剤に造膜性や可撓性等を付与すると共に、半導体チップ等の接着対象への接着性(貼付性)を向上させるための高分子成分である。また、重合体成分(a)は、後述するエポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)に該当しない成分でもある。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する重合体成分(a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
重合体成分(a)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
重合体成分(a)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1〜18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸イミド;グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN−メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
アクリル系樹脂は、上述の水酸基以外に、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の水酸基をはじめとするこれら官能基は、後述する架橋剤(f)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(f)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
本実施形態においては、重合体成分(a)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(a)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、重合体成分(a)の含有量の割合)は、重合体成分(a)の種類によらず、20〜75質量%であることが好ましい。
[エポキシ系熱硬化性樹脂(b)]
エポキシ系熱硬化性樹脂(b)は、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)からなる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ系熱硬化性樹脂(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
(エポキシ樹脂(b1))
エポキシ樹脂(b1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ樹脂(b1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
(熱硬化剤(b2))
熱硬化剤(b2)は、エポキシ樹脂(b1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(b2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
熱硬化剤(b2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(b2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)等が挙げられる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する熱硬化剤(b2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、熱硬化剤(b2)の含有量は、エポキシ樹脂(b1)の含有量100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましい。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の含有量(エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量)は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましい。
前記フィルム状接着剤は、その各種物性を改良するために、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)以外に、さらに必要に応じて、これらに該当しない他の成分を含有していてもよい。
前記フィルム状接着剤が含有する他の成分としては、例えば、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、エネルギー線硬化性樹脂(g)、光重合開始剤(h)、汎用添加剤(i)等が挙げられる。これらの中でも、好ましい前記他の成分としては、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、汎用添加剤(i)が挙げられる。
[硬化促進剤(c)]
硬化促進剤(c)は、接着剤組成物の硬化速度を調節するための成分である。
好ましい硬化促進剤(c)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩;前記イミダゾール類をゲスト化合物とする包接化合物等が挙げられる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する硬化促進剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
硬化促進剤(c)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、硬化促進剤(c)の含有量は、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の含有量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましい。
[充填材(d)]
フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、その熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数をフィルム状接着剤の貼付対象物に対して最適化することで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、フィルム状接着剤が充填材(d)を含有することにより、硬化後のフィルム状接着剤の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する充填材(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
充填材(d)を用いる場合、接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(d)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、充填材(d)の含有量の割合)は、5〜80質量%であることが好ましい。
[カップリング剤(e)]
フィルム状接着剤は、カップリング剤(e)を含有することにより、被着体に対する接着性及び密着性が向上する。また、フィルム状接着剤がカップリング剤(e)を含有することにより、その硬化物は耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。カップリング剤(e)は、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有する。
カップリング剤(e)は、重合体成分(a)、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するカップリング剤(e)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
カップリング剤(e)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、カップリング剤(e)の含有量は、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)の総含有量100質量部に対して、0.03〜20質量部であることが好ましい。
[架橋剤(f)]
重合体成分(a)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための架橋剤(f)を含有していてもよい。架橋剤(f)を用いて架橋することにより、フィルム状接着剤の初期接着力及び凝集力を調節できる。
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(a)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、重合体成分(a)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)と重合体成分(a)との反応によって、フィルム状接着剤に架橋構造を簡便に導入できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する架橋剤(f)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
架橋剤(f)を用いる場合、接着剤組成物において、架橋剤(f)の含有量は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。
[エネルギー線硬化性樹脂(g)]
フィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
エネルギー線硬化性樹脂(g)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
接着剤組成物が含有するエネルギー線硬化性樹脂(g)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
エネルギー線硬化性樹脂(g)を用いる場合、接着剤組成物において、接着剤組成物の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量の割合は、1〜95質量%であることが好ましい。
[光重合開始剤(h)]
接着剤組成物は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(g)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(h)を含有していてもよい。
接着剤組成物における光重合開始剤(h)としては、例えば、先に説明した粘着剤組成物(I−1)〜(I−3)の含有成分である光重合開始剤と同じものが挙げられる。
接着剤組成物が含有する光重合開始剤(h)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
光重合開始剤(h)を用いる場合、接着剤組成物において、光重合開始剤(h)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
[汎用添加剤(i)]
汎用添加剤(I)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。好ましい汎用添加剤(I)としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等が挙げられる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する汎用添加剤(i)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤の汎用添加剤(i)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
接着剤組成物は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する接着剤組成物は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール(2−メチルプロパン−1−オール)、1−ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
接着剤組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物が含有する溶媒は、接着剤組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
○接着剤組成物の製造方法
接着剤組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
接着剤組成物は、配合成分が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
<ピックアップ方法(1)用として好適なダイボンディングシート(1)−1>
前記ピックアップ工程において、先に説明したピックアップ方法(1)を適用する場合に用いるのに好適な一実施形態のダイボンディングシートとしては、支持シートと、フィルム状接着剤と、の界面における剥離力が、0.02〜0.2N/25mmであり、かつ、硬化前のフィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層して得られた試験片の破断伸度が、450%以下となるもの(以下、「ダイボンディングシート(1)−1」と称することがある)、が挙げられる。このような破断伸度の条件を満たすダイボンディングシート(1)−1を用いることにより、ピックアップ工程でピックアップ方法(1)を適用したとき、作製後の前記積層物(すなわち、半導体チップ群とダイボンディングシート(1)−1との積層物)に対して力を加えることにより、積層物中のフィルム状接着剤をより容易に切断できる。また、このような剥離力の条件を満たすダイボンディングシート(1)−1を用いることにより、ピックアップ工程でピックアップ方法(1)を適用したとき、切断後のフィルム状接着剤を備えた半導体チップを、工程異常を伴うことなく、支持シートからより容易に引き離すことができ、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップが、より容易となる。
このような剥離力及び破断伸度の条件を満たすダイボンディングシート(1)−1としては、「国際公開第2016/140248号」で開示されているフィルム状接着剤複合シートが挙げられる。
[硬化前のフィルム状接着剤の試験片の破断伸度]
硬化前の前記試験片の破断伸度(引張破断伸度)は、450%以下であり、上述の効果がより顕著に得られる点では、例えば、445%以下であってもよい。
一方、硬化前の前記試験片の破断伸度の下限値は、特に限定されない。ただし、ダイボンディングシート(1)−1をより安定して取り扱うことができる点では、前記破断伸度は50%以上であることが好ましく、例えば、100%以上であってもよい。
硬化前の前記試験片の破断伸度は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記破断伸度は、50〜450%であることが好ましく、100〜445%であってもよい。
本明細書において、「破断伸度がX%である(式中、Xは正の数である)」とは、後述する測定方法において、前記試験片を引っ張り、試験片がその引張方向において元の長さ(換言すると、引っ張っていないときの長さ)のX%の長さだけ伸びたとき、すなわち、試験片の引張方向における全体の長さが、引っ張る前の長さの[1+X/100]倍となったときに、試験片が破断することを意味する。
本明細書において、フィルム状接着剤又はこれを積層して得られた積層体全般の破断伸度は、上述の試験片の破断伸度を含めて、JIS K7161−1994(ISO 527−1)又はJIS K7127:1999(ISO 527−3)に準拠して求めたものである。測定対象物(試験片)が降伏点を有しない場合には引張破壊ひずみを測定し、降伏点を有する場合には引張破壊時呼びひずみを測定して、これら測定値を用いて、破断伸度を求める。
前記試験片の破断伸度、換言すると、前記フィルム状接着剤の破断伸度は、フィルム状接着剤の含有成分の種類及び量を調節することで、適宜調節できる。例えば、フィルム状接着剤の含有成分である前記重合体成分(a)の分子量又は含有量;エポキシ系熱硬化性樹脂(b)を構成する成分の構造、軟化点又は含有量;充填材(d)の含有量等を調節することで、試験片の破断伸度を調節できる。ただし、これらは、試験片の破断伸度の調節方法の一例に過ぎない。
前記試験片は、フィルム状接着剤から作製された、厚さが200μmのものであればよく、例えば、試験片を作製するために積層する複数枚のフィルム状接着剤の厚さは、特に限定されない。ただし、前記ピックアップ工程で使用するダイボンディングシート(1)−1中に含まれるフィルム状接着剤と同じ厚さのフィルム状接着剤を用いて、前記試験片を作製することが好ましい。
前記フィルム状接着剤は、その厚さが厚いほど破断伸度が大きくなるので、厚さが200μm未満のフィルム状接着剤の試験片の破断伸度が450%以下であれば、同じ組成で厚さが200μmのフィルム状接着剤の試験片の破断伸度も、当然に450%以下となる。
前記破断伸度は、例えば、試験片として、幅が15mmであり、長さが100mmであり、厚さが200μmであるものを、固定箇所間の距離が75mmとなるように二ヵ所で固定し、引張速度を200mm/minとして、この固定箇所間において前記試験片を引っ張り、試験片が破断したときの試験片の伸びを測定することで、求められる。
[支持シートとフィルム状接着剤との界面における剥離力]
前記支持シートと前記フィルム状接着剤との界面における剥離力は、0.02〜0.2N/25mmであり、0.02〜0.15N/25mmであることが好ましく、0.02〜0.1N/25mmであることがより好ましい。前記剥離力が前記下限値以上であることで、前記ピックアップ工程において、半導体チップをフィルム状接着剤(より具体的には、切断後のフィルム状接着剤)と共に支持シートから引き離すときに、フィルム状接着剤は、引き離す対象の目的とする半導体チップが備えているものだけでなく、この半導体チップに隣り合うものなど、目的外の半導体チップが備えているものも、同時に支持シートから剥離する現象が抑制される。また、前記剥離力が前記上限値以下であることで、半導体チップをフィルム状接着剤と共に支持シートから引き離すときに、目的とする半導体チップが備えているフィルム状接着剤が、支持シートから確実に剥離する。このように確実に剥離するため、例えば、前記積層物(例えば、積層物801等)に対して力を加えるときに、その条件を厳しくする(例えば、力を加える前記突き上げ部の突き上げ速度を速くする)など、ピックアップ時の条件の変更が不要であり、このような変更を行った場合に見られる、半導体チップの割れ等の発生が抑制される。
前記剥離力は、例えば、前記フィルム状接着剤の含有成分の種類及び量;前記支持シートのフィルム状接着剤を設ける面を構成する材料;前記支持シートのフィルム状接着剤を設ける面の状態(表面状態)等を調節することで、適宜調節できる。ただし、これらは、前記剥離力の調節方法の一例に過ぎない。
なお、フィルム状接着剤は、前記破断伸度が大きい場合に、前記剥離力も大きくなり、前記破断伸度が小さい場合に、前記剥離力も小さくなる傾向にある。
支持シートの前記表面状態は、例えば、基材の他の層との密着性を向上させるものとして先に挙げた表面処理、すなわち、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;プライマー処理等を施すことで、調節できる。
前記剥離力は、以下の方法で求められる。
すなわち、幅が25mmで長さが任意のダイボンディングシート(1)−1を、そのフィルム状接着剤により被着体へ貼付した状態とし、被着体へ貼付されているフィルム状接着剤から支持シートを剥離速度300mm/minで剥離させるときに、フィルム状接着剤及び支持シートの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、支持シートをその長さ方向(ダイボンディングシート(1)−1の長さ方向)へ剥離させた(180°剥離を行った)ときに加えていた力(剥離力)を測定する。そして、この測定値を前記剥離力とする。測定に供するダイボンディングシート(1)−1の長さは、測定する力を安定して検出できる範囲であれば、特に限定されないが、200〜300mmであることが好ましい。前記剥離力は、温度25℃、相対湿度50%の条件下で測定できる。また、測定に際しては、ダイボンディングシート(1)−1を被着体へ貼付した状態とし、これを温度25℃、相対湿度50%の条件下で30分静置して、ダイボンディングシート(1)−1の貼付状態を安定化させておくことが好ましい。
フィルム状接着剤の厚さは、先に説明したとおりであるが、ダイボンディングシート(1)−1においては、例えば、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜25μm、さらに好ましくは5〜15μmであってもよい。フィルム状接着剤の厚さが前記下限値以上であることにより、被着体(半導体チップ)に対するフィルム状接着剤の接着力が、より高くなる。フィルム状接着剤の厚さが前記上限値以下であることにより、前記ピックアップ工程において、より容易にフィルム状接着剤を切断できる。
<ピックアップ方法(1)用として好適なダイボンディングシート(1)−2>
前記ピックアップ工程において、先に説明したピックアップ方法(1)を適用する場合に用いるのに好適な一実施形態のダイボンディングシートとしては、基材を有する支持シート上に、厚さ1〜50μmの硬化性のフィルム状接着剤が設けられており、硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を接着力K(N/24mm)とし、硬化前の前記フィルム状接着剤を、合計の厚さが200μmとなるように積層した試験片の破断伸度を破断伸度L(%)とし、前記試験片の破断強度を破断強度Q(MPa)としたとき、式(E1):
K/(L×Q)≧0.0005 (E1)
の関係を満たすもの(以下、「ダイボンディングシート(1)−2」と称することがある)、も挙げられる。このような式(E1)の関係を満たすダイボンディングシート(1)−2を用いることにより、ピックアップ工程でピックアップ方法(1)を適用したとき、作製後の前記積層物(すなわち、半導体チップ群とダイボンディングシート(1)−2との積層物)に対して力を加えることにより、積層物中のフィルム状接着剤をより容易に切断できる。さらに、ピックアップ工程でピックアップ方法(1)を適用したとき、切断後のフィルム状接着剤を備えた半導体チップを、工程異常を伴うことなく、支持シートからより容易に引き離すことができ、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップが、より容易となる。
このような剥離力及び破断伸度の条件を満たすダイボンディングシート(1)−2としては、「国際公開第2017/145979号」で開示されているフィルム状接着剤複合シートが挙げられる。
[硬化前のフィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力K]
硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力K(N/24mm)は、以下の方法で求められる。
すなわち、幅が24mmで長さが任意の、フィルム状接着剤及び粘着テープの積層シートを作製する。この積層シートは、粘着テープの粘着面にフィルム状接着剤が積層されたものとし、粘着テープとしては、例えば、ニチバン社製「セロテープ(登録商標)No.405」の、幅が24mmであるものを用いることができる。次いで、60℃に加熱したフィルム状接着剤によって、この積層シートを半導体ウエハへ貼付して、粘着テープ、フィルム状接着剤及び半導体ウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層され、構成された積層体を作製する。この積層体を、作製後直ちに、JIS Z0237 2009で規定されている標準環境下で30分間放置した後、半導体ウエハからフィルム状接着剤及び粘着テープの積層シートを、フィルム状接着剤及び半導体ウエハの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度150mm/minで引き剥がす、いわゆる180°剥離を行う。このときの剥離力を測定して、この測定値を接着力K(N/24mm)とする。測定に供する前記積層シートの長さは、剥離力を安定して測定できる範囲であれば、特に限定されない。
接着力Kは、前記式(E1)の関係を満たす限り特に限定されないが、0.3N/24mm以上であることが好ましく、0.4N/24mm以上であることがより好ましい。また、接着力Kは、例えば、15N/24mm以下、11N/24mm以下、及び7N/24mm以下のいずれかであってもよい。
接着力Kは、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
例えば、一実施形態において、接着力Kは、0.3〜15N/24mmであることが好ましく、0.3〜11N/24mmであることがより好ましく、0.4〜7N/24mmであることがさらに好ましい。
また、一実施形態において、接着力Kは、0.45N/24mm以上、10N/24mm未満であってもよく、0.45N/24mm以上、5.8N/24mm以下であってもよい。
フィルム状接着剤の前記接着力Kは、フィルム状接着剤の含有成分の種類及び量、フィルム状接着剤の厚さ、前記支持シートのフィルム状接着剤を設ける面を構成する材料、この面の状態(表面状態)等を調節することで、適宜調節できる。
例えば、フィルム状接着剤の含有成分である前記カップリング剤(e)の種類又は量を調節することで、接着力Kを調節できる。
また、例えば、支持シートの前記表面状態は、先に説明したダイボンディングシート(1)−1の場合と同じ方法で調節できる。
ただし、これらは、接着力Kの調節方法の一例に過ぎない。
[硬化前のフィルム状接着剤の試験片の破断伸度L]
ダイボンディングシート(1)−2における前記破断伸度Lは、上述のダイボンディングシート(1)−1における試験片の破断伸度と同じである。
破断伸度L(%)は、前記式(E1)の関係を満たす限り特に限定されない。
例えば、一実施形態において、破断伸度Lは、1200%以下であることが好ましく、30〜1200%であることがより好ましく、40〜1100%であることがさらに好ましく、45〜1050%であることが特に好ましい。破断伸度Lが前記上限値以下であることで、前記ピックアップ工程において、フィルム状接着剤をより容易に切断できる。
また、一実施形態において、破断伸度Lは、900%以下であることが好ましく、700%以下であることがより好ましく、500%以下であることが特に好ましく、例えば、30〜500%、40〜500%、45〜500%、及び50〜440%等のいずれかであってもよい。破断伸度Lが前記上限値以下であることで、前記ピックアップ工程において、フィルム状接着剤を種々の方式でより容易に切断できる。すなわち、前記積層物に対して力を加える方法として先に説明した、最も一般的な、突起からなる突き上げ部を突出させる方法だけでなく、スライダーからなる突き上げ部を移動させる方法を採用しても、フィルム状接着剤をより容易に切断できる。
[硬化前のフィルム状接着剤の試験片の破断強度Q]
破断強度Q(MPa)は、破断伸度L(%)の測定時において、試験片が破断した(破壊された)ときの引張応力、すなわち引張破壊応力であり、破断伸度Lと同時に測定できる。
破断強度Q(MPa)は、前記式(E1)の関係を満たす限り特に限定されない。
例えば、一実施形態において、破断強度Qは、0.4〜17MPaであることが好ましく、0.5〜15MPaであることがより好ましく、0.6〜13MPaであることが特に好ましい。
また、一実施形態において、破断強度Qは、0.8〜11MPaであってもよく、2.5〜11MPaであってもよい。
[K/(L×Q)]
K/(L×Q)の値は、0.0005以上であり、0.0006以上であることが好ましく、0.0007以上であることがより好ましい。
一方、K/(L×Q)の上限値は特に限定されない。K/(L×Q)の値は、例えば、0.0170以下、0.0140以下及び0.0115以下のいずれかであってもよいが、これらは、K/(L×Q)の値一例である。
K/(L×Q)の値は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
例えば、一実施形態において、K/(L×Q)の値は、0.0005〜0.0170、0.0006〜0.0140、及び0.0007〜0.0115のいずれかであってもよい。
また、一実施形態において、K/(L×Q)の値は、0.0008以上0.0125未満、及び0.0008〜0.0105のいずれかであってもよい。
前記試験片の破断伸度L及び破断強度Q、換言すると、前記フィルム状接着剤の破断伸度及び破断強度は、フィルム状接着剤の含有成分の種類及び量を調節することで、適宜調節できる。例えば、フィルム状接着剤の含有成分である前記重合体成分(a)の分子量又は含有量;エポキシ系熱硬化性樹脂(b)を構成する成分の構造、軟化点又は含有量;充填材(d)の含有量等を調節することで、前記破断伸度L及び破断強度Qを調節できる。
ただし、これらは、破断伸度L及び破断強度Qの調節方法の一例に過ぎない。
フィルム状接着剤の厚さは、先に説明したとおりであるが、ダイボンディングシート(1)−2においては、1〜50μmであり、例えば、好ましくは3〜25μm、より好ましくは5〜15μmであってもよい。フィルム状接着剤の厚さが前記下限値以上であることにより、被着体(半導体チップ)に対するフィルム状接着剤の接着力が、より高くなる。フィルム状接着剤の厚さが前記上限値以下であることにより、前記ピックアップ工程において、より容易にフィルム状接着剤を切断できる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
<<半導体チップの製造、半導体ウエハの評価>>
[実施例1]
図3〜図6を参照して説明した方法(第1実施形態)により、半導体チップを製造し、ピックアップした。具体的には、以下のとおりである。
[第1改質工程、第2改質工程]
8インチ半導体ウエハ(厚さ725μm)の回路形成面に、バックグラインドテープ(リンテック社製「Adwill E−3100TN」)を貼付した。
次いで、ステルスダイシング(登録商標)レーザソー(ディスコ社製「DFL7361」)を用い、前記半導体ウエハの内部の第1領域中で、かつ、半導体ウエハの周縁部近傍でもある箇所に、この半導体ウエハの裏面側から、1Wの出力でレーザー光を照射することにより、半導体ウエハの回路形成面から85μmの深さの位置に、第1改質層を形成した。そして、半導体ウエハの回路形成面に対して平行な一方向において、レーザー光の照射位置をずらしながら、この局所的な第1改質層の形成を繰り返し行うことで、1本のライン状の第1改質層を形成した(第1改質工程)。半導体ウエハの厚さ方向における、第1改質層の広がり幅(換言すると、第1改質層の高さ)は、約30μmであった。
さらに続けて、光源を変えることなく、半導体ウエハの裏面側から、この半導体ウエハの内部の第2領域中に、1Wの出力でレーザー光を照射することにより、半導体ウエハの裏面から85μmの深さで、かつ第1改質層の直上の位置に、第2改質層を形成した。このとき、半導体ウエハ中、第1改質層よりも裏面側に、第2改質層を形成した。そして、第1改質層の形成時と同様に、半導体ウエハの回路形成面に対して平行な一方向において、レーザー光の照射位置をずらしながら、この局所的な第2改質層の形成を繰り返し行うことで、1本のライン状の第2改質層を形成した(第2改質工程)。半導体ウエハの厚さ方向における、第2改質層の広がり幅(換言すると、第2改質層の高さ)は、約30μmであった。
本実施例において、Δ12の平均値は555μmであった。
このように、互いに平行なライン状の第1改質層及び第2改質層を1本ずつ形成した後、さらに、このようなライン状の第1改質層及び第2改質層の形成を多数回繰り返し行った。このとき、新たに形成するライン状の第1改質層及び第2改質層は、すでに形成済みのライン状の第1改質層及び第2改質層に対して平行となるように調節した。さらに、ここまでと同じ方法により、このような多数のライン状の第1改質層に対して90°の交差角度で交差する、多数のライン状の第1改質層と、多数のライン状の第2改質層に対して90°の交差角度で交差する、多数のライン状の第2改質層と、を新たに形成した(以上、第1改質工程及び第2改質工程の繰返し)。このように、半導体ウエハの全域に渡って、第1改質層及び第2改質層の形成を繰り返し行うことにより、半導体ウエハの回路形成面から85μmの深さの位置に、網目状に第1改質層を形成し、半導体ウエハの裏面から85μmの深さの位置に、網目状に第2改質層を形成した。
以上により、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。
このような第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、1枚ごとに、反りの大きさを測定した。より具体的には、以下のとおりである。
半導体ウエハの回路形成面を平面に接触させて、この半導体ウエハを前記平面上に載置した。
次いで、この状態の半導体ウエハを横から目視観察し、半導体ウエハの外周と、その直下の前記平面と、の距離を測定し、その最大値を半導体ウエハの反りの大きさとした。
この方法で、上記で得られた5枚の半導体ウエハすべてについて、反りの大きさを求め、その中の最大値を、最終的に半導体ウエハの反りの大きさとして採用した。その結果、本実施例での半導体ウエハの反りの大きさは、表1に示すように、0.5mm未満であった。すなわち、本実施例での、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、顕著に抑制されていた。
なお、これら5枚の半導体ウエハについて、上記の場合とは逆に、裏面を平面に接触させて、この半導体ウエハを前記平面上に載置し、それ以外は上記と同じ方法で、この状態の半導体ウエハを横から目視観察した。その結果、半導体ウエハの外周と、その直下の前記平面と、の間に隙間は認められなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
グラインダ(ディスコ社製「DFG8760」)を用いて、上記で得られた5枚の半導体ウエハを1枚ずつ、搬送アームで吸着することにより搬送することを試みた。そして、下記評価基準に従って、半導体ウエハの搬送性を評価した。その結果、本実施例において、評価結果は「A」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。表1中の本項目の評価結果の欄における「5/5」との記載は、5枚の半導体ウエハを評価して、5枚の半導体ウエハをすべて、吸着異常を伴うことなく搬送できたことを意味する。このような本欄の記載内容は、以降の実施例及び比較例についても同様である。
(評価基準)
A:5枚の半導体ウエハをすべて、吸着異常を伴うことなく搬送できた。
B:1〜4枚の半導体ウエハを、吸着異常を伴うことなく搬送できたが、残りの半導体ウエハを、吸着異常により搬送できなかった。
C:5枚の半導体ウエハをすべて、吸着異常により搬送できなかった。
[分割工程]
上記の反りの抑制効果と、搬送性と、を評価済みの5枚の半導体ウエハのうち、1枚を用いて、以下に示す分割工程を行った。
すなわち、グラインダ(ディスコ社製「DFG8760」)を用い、この第1改質工程及び第2改質工程完了後の半導体ウエハの裏面を研削した。このとき、粒度360の研磨材を用いてZ1軸研削を行い、粒度6000の研磨材を用いてZ2軸研削を行い、ドライポリッシュでZ3軸研削を行うことにより、前記裏面を研削した。そして、半導体ウエハの厚さが40μmとなるまで前記裏面を研削して、第1改質層及び第2改質層をすべて消失させるとともに、この研削に伴って半導体ウエハに加えられる力によって、第1改質及び第2改質層の部位において、半導体ウエハを分割した。
以上により、内部に改質層を有さず、サイズが2mm×2mmであり、厚さが40μmである多数の半導体チップが、バックグラインドテープ上で整列している状態の半導体チップ群を得た。
[積層工程]
次いで、マルチウェハマウンター(リンテック社製「RAD−2510 F/12」)を用い、上記で得られた半導体チップ群中のすべての半導体チップの研削後の裏面(研削面)に、1枚のダイボンディングシート(リンテック社製「Adwill LD01D−7 P8AK」)を貼付した。このダイボンディングシートは、基材(ポリオレフィン製、厚さ80μm)と、この基材上に形成されたフィルム状接着剤(厚さ7μm)と、を備えており、支持シートが基材のみからなるダイボンディングシートに相当する。ここでは、このダイボンディングシート中の前記フィルム状接着剤を、半導体チップの裏面に貼付した。これにより、前記半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製した。
[ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
次いで、半導体チップの前記回路形成面からバックグラインドテープを取り除いた。
次いで、ピックアップ・ダイボンディング装置(キャノンマシナリー社製「BESTEM02」)を用い、常温下で、前記積層物を固定した後、前記積層物と、これを固定しているリングフレームと、の間に、4mmの高低差を新たに発生させた。そして、この状態で、前記積層物に対して、その基材側から力を加えて突き上げることにより、前記積層物中の前記フィルム状接着剤を、前記半導体チップの外周に沿って切断し、この切断後のフィルム状接着剤を裏面に備えた半導体チップを、前記基材から引き離してピックアップすることを試みた。このとき、突き上げ部として1個の突起(ピン)を用い、その突き上げ高さを0.35mmとし、突き上げ速度を20mm/sとし、突き上げ保持時間を1秒として、前記積層物を突き上げた。
本工程を、上記の1枚の半導体ウエハにおいて、27回連続して行った。そして、サイズが2mm×2mmの目的とする半導体チップが、フィルム状接着剤付き半導体チップとしてピックアップできなかった回数(すなわち、ピックアップ不良の回数)を確認した。この回数に基づいて、下記評価基準で半導体チップのピックアップ適性を評価した。その結果、表1に示すように、本実施例において、評価結果は「A」であった。
(評価基準)
A:ピックアップ不良の回数が0回であった。
B:ピックアップ不良の回数が1〜3回であった。
C:ピックアップ不良の回数が4回以上であった。
[実施例2]
図7〜図8を参照して説明した方法(第2実施形態)により、半導体チップを製造し、ピックアップした。具体的には、以下のとおりである。
[第1改質工程、第2改質工程]
半導体ウエハの回路形成面から85μmの深さの位置に、第1改質層を形成するのに代えて、半導体ウエハの回路形成面から75μmの深さの位置と、135μmの深さの位置と、に第1改質層を形成した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、2本のライン状の第1改質層を形成した(第1改質工程)。
本実施例において、Δ11の平均値は30μmであった。
さらに、半導体ウエハの裏面から85μmの深さで、かつ第1改質層の直上の位置に、第2改質層を形成するのに代えて、半導体ウエハの裏面から75μmの深さで、かつ第1改質層の直上の位置と、半導体ウエハの裏面から135μmの深さで、かつ第1改質層の直上の位置と、に第2改質層を形成した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、2本のライン状の第2改質層を形成した(第2改質工程)。このとき、半導体ウエハ中、第1改質層よりも裏面側に、第2改質層を形成した。
本実施例において、Δ22の平均値は30μmであり、Δ12の平均値は455μmであった。
このように、互いに平行なライン状の第1改質層及び第2改質層を2本ずつ形成した後、さらに、このようなライン状の第1改質層及び第2改質層の形成を多数回繰り返し行った。このとき、新たに形成するライン状の第1改質層及び第2改質層は、すでに形成済みのライン状の第1改質層及び第2改質層に対して平行となるように調節した。さらに、ここまでと同じ方法により、このような多数のライン状の第1改質層に対して90°の交差角度で交差する、多数のライン状の第1改質層と、多数のライン状の第2改質層に対して90°の交差角度で交差する、多数のライン状の第2改質層と、を新たに形成した(以上、第1改質工程及び第2改質工程の繰返し)。このように、半導体ウエハの全域に渡って、第1改質層及び第2改質層の形成を繰り返し行うことにより、半導体ウエハの回路形成面から75μmの深さの位置と、135μmの深さの位置とに、それぞれ網目状に第1改質層を形成し、半導体ウエハの裏面から75μmの深さの位置と、135μmの深さの位置とに、それぞれ網目状に第2改質層を形成した。
以上により、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。
このような第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハを用い、実施例1の場合と同じ方法で、半導体ウエハの反りの大きさを確認したところ、表1に示すように、0.5mm未満であった。すなわち、本実施例での、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、顕著に抑制されていた。
なお、本実施例においても、半導体ウエハの裏面を平面に接触させて、この半導体ウエハを前記平面上に載置した結果、半導体ウエハの外周と、その直下の前記平面と、の間に隙間は認められなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、実施例1の場合と同じ方法で、搬送性を評価した。その結果、本実施例において、評価結果は「A」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。
[分割工程、積層工程]
上記の反りの抑制効果と、搬送性と、を評価済みの5枚の半導体ウエハのうち、1枚を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、内部に改質層を有さず、サイズが2mm×2mmであり、厚さが40μmである多数の半導体チップが、バックグラインドテープ上で整列している状態の半導体チップ群を作製し(分割工程)、この半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製した(積層工程)。
[ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
上記で得られた積層物を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、サイズが2mm×2mmの目的とする半導体チップを、フィルム状接着剤とともにピックアップすることを試み(ピックアップ工程)、半導体チップのピックアップ適性を評価した。
その結果、表1に示すように、本実施例において、評価結果は「A」であった。
[実施例3]
図9〜図10を参照して説明した方法(第3実施形態)により、半導体チップを製造し、ピックアップした。具体的には、以下のとおりである。
[第1改質工程、第2改質工程]
半導体ウエハの回路形成面から85μmの深さの位置に、第1改質層を形成するのに代えて、半導体ウエハの回路形成面から75μmの深さの位置と、135μmの深さの位置と、に第1改質層を形成した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、2本のライン状の第1改質層を形成した(第1改質工程)。
本実施例において、Δ11の平均値は30μmであった。
さらに、半導体ウエハの裏面から85μmの深さで、かつ第1改質層の直上の位置に、第2改質層を形成するのに代えて、半導体ウエハの裏面から75μmの深さで、かつ第1改質層の直上の位置に、第2改質層を形成した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、1本のライン状の第2改質層を形成した(第2改質工程)。このとき、半導体ウエハ中、第1改質層よりも裏面側に、第2改質層を形成した。
本実施例において、Δ12の平均値は515μmであった。
このように、互いに平行なライン状の第1改質層を2本形成し、第2改質層を1本形成した後、さらに、このようなライン状の第1改質層及び第2改質層の形成を多数回繰り返し行った。このとき、新たに形成するライン状の第1改質層及び第2改質層は、すでに形成済みのライン状の第1改質層及び第2改質層に対して平行となるように調節した。さらに、ここまでと同じ方法により、このような多数のライン状の第1改質層に対して90°の交差角度で交差する、多数のライン状の第1改質層と、多数のライン状の第2改質層に対して90°の交差角度で交差する、多数のライン状の第2改質層と、を新たに形成した(以上、第1改質工程及び第2改質工程の繰返し)。ただし、ここまでで、半導体ウエハの回路形成面に対して平行な方向において、隣り合うライン状の第1改質層間の距離と、隣り合うライン状の第2改質層間の距離とを、いずれもすべて、実施例1の場合の1/2とした。このように、半導体ウエハの全域に渡って、第1改質層及び第2改質層の形成を繰り返し行うことにより、半導体ウエハの回路形成面から75μmの深さの位置と、135μmの深さの位置とに、それぞれ網目状に第1改質層を形成し、半導体ウエハの裏面から75μmの深さの位置に、網目状に第2改質層を形成した。
以上により、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。
このような第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハを用い、実施例1の場合と同じ方法で、半導体ウエハの反りの大きさを確認したところ、表1に示すように、0.5mm未満であった。すなわち、本実施例での、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、顕著に抑制されていた。
なお、本実施例においても、半導体ウエハの裏面を平面に接触させて、この半導体ウエハを前記平面上に載置した結果、半導体ウエハの外周と、その直下の前記平面と、の間に隙間は認められなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、実施例1の場合と同じ方法で、搬送性を評価した。その結果、本実施例において、評価結果は「A」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。
[分割工程、積層工程]
上記の反りの抑制効果と、搬送性と、を評価済みの5枚の半導体ウエハのうち、1枚を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、内部に改質層を有さず、サイズが1mm×1mmであり、厚さが40μmである多数の半導体チップが、バックグラインドテープ上で整列している状態の半導体チップ群を作製し(分割工程)、この半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製した(積層工程)。
[ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
上記で得られた積層物を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、サイズが1mm×1mmの目的とする半導体チップを、フィルム状接着剤とともにピックアップすることを試み(ピックアップ工程)、半導体チップのピックアップ適性を評価した。
その結果、表1に示すように、本実施例において、評価結果は「A」であった。
[実施例4]
図7〜図8を参照して説明した方法(第2実施形態)により、半導体チップを製造し、ピックアップした。具体的には、以下のとおりである。
[第1改質工程、第2改質工程]
半導体ウエハの回路形成面に対して平行な方向において、隣り合うライン状の第1改質層間の距離と、隣り合うライン状の第2改質層間の距離とを、いずれもすべて1/2とした点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。
本実施例において、Δ11及びΔ22の平均値は約30μmであり、Δ12の平均値は455μmであった。
このような第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハを用い、実施例1の場合と同じ方法で、半導体ウエハの反りの大きさを確認したところ、表1に示すように、0.5mm未満であった。すなわち、本実施例での、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、顕著に抑制されていた。
なお、本実施例においても、半導体ウエハの裏面を平面に接触させて、この半導体ウエハを前記平面上に載置した結果、半導体ウエハの外周と、その直下の前記平面と、の間に隙間は認められなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、実施例1の場合と同じ方法で、搬送性を評価した。その結果、本実施例において、評価結果は「A」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。
[分割工程、積層工程]
上記の反りの抑制効果と、搬送性と、を評価済みの5枚の半導体ウエハのうち、1枚を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、内部に改質層を有さず、サイズが1mm×1mmであり、厚さが40μmである多数の半導体チップが、バックグラインドテープ上で整列している状態の半導体チップ群を作製し(分割工程)、この半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製した(積層工程)。
[ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
上記で得られた積層物を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、サイズが1mm×1mmの目的とする半導体チップを、フィルム状接着剤とともにピックアップすることを試み(ピックアップ工程)、半導体チップのピックアップ適性を評価した。
その結果、表1に示すように、本実施例において、評価結果は「A」であった。
[実施例5]
図7〜図8を参照して説明した方法(第2実施形態)により、半導体チップを製造した。具体的には、以下のとおりである。
[第1改質工程、第2改質工程]
半導体ウエハの回路形成面に対して平行な方向において、隣り合うライン状の第1改質層間の距離と、隣り合うライン状の第2改質層間の距離とを、いずれもすべて1/4とした点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。
本実施例において、Δ11及びΔ22の平均値は30μmであり、Δ12の平均値は455μmであった。
このような第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハを用い、実施例1の場合と同じ方法で、半導体ウエハの反りの大きさを確認したところ、表1に示すように、1mmであった。すなわち、本実施例での、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、十分に抑制されていた。
なお、本実施例においても、半導体ウエハの裏面を平面に接触させて、この半導体ウエハを前記平面上に載置した結果、半導体ウエハの外周と、その直下の前記平面と、の間に隙間は認められなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、実施例1の場合と同じ方法で、搬送性を評価した。その結果、本実施例において、評価結果は「B」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。表1中の本項目の評価結果の欄における「2/5」との記載は、5枚の半導体ウエハを評価して、2枚の半導体ウエハを、吸着異常を伴うことなく搬送でき、3枚の半導体ウエハを吸着異常により搬送できなかったことを意味する。
[分割工程、積層工程]
上記の反りの抑制効果と、搬送性と、を評価済みの5枚の半導体ウエハのうち、搬送が可能であった1枚を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、内部に改質層を有さず、サイズが0.5mm×0.5mmであり、厚さが40μmである多数の半導体チップが、バックグラインドテープ上で整列している状態の半導体チップ群を作製し(分割工程)、この半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製した(積層工程)。
[ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
上記で得られた積層物を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、サイズが0.5mm×0.5mmの目的とする半導体チップを、フィルム状接着剤とともにピックアップすることを試み(ピックアップ工程)、半導体チップのピックアップ適性を評価した。
その結果、表1に示すように、本実施例において、評価結果は「A」であった。
[実施例6]
図7〜図8を参照して説明した方法(第2実施形態)により、半導体チップを製造した。具体的には、以下のとおりである。
[第1改質工程、第2改質工程]
半導体ウエハの回路形成面に対して平行な方向において、隣り合うライン状の第1改質層間の距離と、隣り合うライン状の第2改質層間の距離とを、いずれもすべて3/8とした点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。
本実施例において、Δ11及びΔ22の平均値は30μmであり、Δ12の平均値は455μmであった。
このような第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハを用い、実施例1の場合と同じ方法で、半導体ウエハの反りの大きさを確認したところ、表1に示すように、0.5mm未満であった。すなわち、本実施例での、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、顕著に抑制されていた。
なお、本実施例においても、半導体ウエハの裏面を平面に接触させて、この半導体ウエハを前記平面上に載置した結果、半導体ウエハの外周と、その直下の前記平面と、の間に隙間は認められなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、実施例1の場合と同じ方法で、搬送性を評価した。その結果、本実施例において、評価結果は「A」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。
[分割工程、積層工程]
上記の反りの抑制効果と、搬送性と、を評価済みの5枚の半導体ウエハのうち、1枚を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、内部に改質層を有さず、サイズが0.75mm×0.75mmであり、厚さが40μmである多数の半導体チップが、バックグラインドテープ上で整列している状態の半導体チップ群を作製し(分割工程)、この半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製した(積層工程)。
[ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
上記で得られた積層物を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、サイズが0.75mm×0.75mmの目的とする半導体チップを、フィルム状接着剤とともにピックアップすることを試み(ピックアップ工程)、半導体チップのピックアップ適性を評価した。
その結果、表1に示すように、本実施例において、評価結果は「A」であった。
[比較例1]
[第1改質工程]
半導体ウエハの回路形成面に対して平行な方向において、隣り合うライン状の第1改質層間の距離を1/2とした点、及び、第2改質層を形成しなかった(換言すると、第2改質工程を行わなかった)点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、第1改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。すなわち、本比較例においては、半導体ウエハの回路形成面から85μmの深さの位置に、網目状に第1改質層を形成したが、その他には一切、改質層を形成しなかった。
このような第1改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハを用い、実施例1の場合と同じ方法で、半導体ウエハの反りの大きさを確認したところ、表1に示すように、1.5mmであった。すなわち、本比較例での、第1改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、抑制されていなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、実施例1の場合と同じ方法で、搬送性を評価した。その結果、本比較例において、評価結果は「C」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。
[分割工程、積層工程、ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
本比較例においては、サイズが1mm×1mmの半導体チップの製造を試みたが、表1に示すとおり、5枚の半導体ウエハをすべて、吸着異常により搬送できなかった。したがって、本比較例においては、以降の分割工程、積層工程及びピックアップ工程を行うことができず、半導体チップを製造できず、半導体チップのピックアップ適性を評価できなかった。
[比較例2]
[第1改質工程]
第2改質層を形成しなかった(換言すると、第2改質工程を行わなかった)点、以外は、実施例3の場合と同じ方法で、第1改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。すなわち、本比較例においては、半導体ウエハの回路形成面から75μmの深さの位置と、135μmの深さの位置とに、それぞれ網目状に第1改質層を形成したが、その他には一切、改質層を形成しなかった。
このような第1改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハを用い、実施例1の場合と同じ方法で、半導体ウエハの反りの大きさを確認したところ、表1に示すように、1.5mmであった。すなわち、本比較例での、第1改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、抑制されていなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、実施例1の場合と同じ方法で、搬送性を評価した。その結果、本比較例において、評価結果は「C」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。
[分割工程、積層工程、ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
本比較例においては、サイズが1mm×1mmの半導体チップの製造を試みたが、表1に示すとおり、5枚の半導体ウエハをすべて、吸着異常により搬送できなかった。したがって、本比較例においては、以降の分割工程、積層工程及びピックアップ工程を行うことができず、半導体チップを製造できず、半導体チップのピックアップ適性を評価できなかった。
[比較例3]
[第1改質工程]
半導体ウエハの回路形成面に対して平行な方向において、隣り合うライン状の第1改質層間の距離を3/8とした点、及び、第2改質層を形成しなかった(換言すると、第2改質工程を行わなかった)点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、第1改質層を形成済みの半導体ウエハを得た。すなわち、本比較例においては、半導体ウエハの回路形成面から85μmの深さの位置に、網目状に第1改質層を形成したが、その他には一切、改質層を形成しなかった。
このような第1改質層を形成済みの半導体ウエハを、合計で5枚作製した。
[半導体ウエハの反りの抑制効果の確認]
上記で得られた5枚の半導体ウエハを用い、実施例1の場合と同じ方法で、半導体ウエハの反りの大きさを確認したところ、表1に示すように、3mmであった。すなわち、本比較例での、第1改質層を形成済みの半導体ウエハの反りは、抑制されていなかった。
[半導体ウエハの搬送性の評価]
上記で得られた5枚の半導体ウエハについて、実施例1の場合と同じ方法で、搬送性を評価した。その結果、本比較例において、評価結果は「C」であった。この評価結果を、搬送できた半導体ウエハの枚数とともに、表1に示す。
[分割工程、積層工程、ピックアップ工程、半導体チップのピックアップ適性の評価]
本比較例においては、サイズが0.75mm×0.75mmの半導体チップの製造を試みたが、表1に示すとおり、5枚の半導体ウエハをすべて、吸着異常により搬送できなかった。したがって、本比較例においては、以降の分割工程、積層工程及びピックアップ工程を行うことができず、半導体チップを製造できず、半導体チップのピックアップ適性を評価できなかった。
Figure 2020004210
上記結果から明らかなように、実施例1〜6においては、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの反りの大きさが1mm以下であり、前記半導体ウエハの反りが抑制されていた。その結果、これら実施例においては、前記半導体ウエハの搬送性が良好であった。特に、実施例1〜4及び6では、前記半導体ウエハの反りの大きさが、0.5mm未満であり、反りの抑制効果が顕著に高く、半導体ウエハの搬送性に特に優れていた。これは、実施例1〜4及び6においては、半導体チップの最も短い一辺の長さが0.75mm以上(0.75〜2mm)であるのに対し、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの厚さが0.725mmとなっており、半導体チップの最も短い一辺の長さが前記厚さよりも大きい値であるためであった。実施例5においては、半導体チップの最も短い一辺の長さが、0.5mmであるのに対し、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハの厚さが0.725mmとなっており、半導体チップの最も短い一辺の長さが前記厚さよりも小さい値となっており、この相違点により、その他の実施例の場合とは、効果の程度に差があった。
この反りの抑制効果を反映して、実施例1〜6においては、搬送が可能であった、第1改質層及び第2改質層を形成済みの半導体ウエハを、専用のテーブルに密着させ、確実に固定できたので、その裏面の研削が可能であり、分割工程を良好に行うことできた。
さらに、これら実施例においては、以降の積層工程及びピックアップ工程も良好に行うことができ、半導体チップのピックアップ適性に優れていた。
このように、実施例1〜6においては、半導体ウエハの内部における改質層の形成を経由して、サイズが小さい半導体チップを製造するときであっても、半導体ウエハの反りの発生を抑制できた。その結果、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップまでの工程を、問題なく行うことができた。
これに対して、比較例1〜3においては、第2改質層を形成しない従来の方法であったため、改質層(換言すると、第1改質層のみ)を形成済みの半導体ウエハの反りの大きさが、1.5mm以上であり、前記半導体ウエハの反りが抑制されていなかった。その結果、これら比較例においては、前記半導体ウエハを搬送できず、以降の分割工程、積層工程及びピックアップ工程を行うことができなかった。
このように、比較例1〜3においては、半導体ウエハの内部における改質層の形成を経由して、サイズが小さい半導体チップを製造するときに、半導体ウエハの反りの発生を抑制できなかった。その結果、フィルム状接着剤付き半導体チップを製造できなかった。
本発明は、半導体チップ及び半導体装置の製造に利用可能である。
8・・・半導体ウエハ、8a・・・半導体ウエハの回路形成面、80a・・・半導体ウエハの内部の第1領域、8b・・・半導体ウエハの裏面、80b・・・半導体ウエハの内部の第2領域、81,811,812,83,831,832・・・第1改質層、82,821,822,84,841,842・・・第2改質層、8’・・・半導体チップ、80’・・・半導体チップの外周、8A’・・・半導体チップ群、801・・・半導体チップ群とダイボンディングシートとの積層物
10・・・支持シート、11・・・基材、12・・・粘着剤層、13・・・フィルム状接着剤、13’・・・切断後のフィルム状接着剤、101・・・ダイボンディングシート
・・・レーザー光、R・・・レーザー光
・・・第1改質工程及び第2改質工程を行うときの半導体ウエハの厚さ
’・・・半導体チップの一辺の長さ(半導体チップの最も短い一辺の長さ)

Claims (3)

  1. 半導体ウエハの裏面側から前記半導体ウエハにレーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部のうち、前記半導体ウエハの回路形成面から215μmの深さまでの第1領域中に、第1改質層を形成する第1改質工程と、
    前記裏面側から前記半導体ウエハにレーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部のうち、前記裏面から215μmの深さまでの第2領域中で、かつ、前記第1改質層よりも前記裏面側の箇所に、第2改質層を形成する第2改質工程と、
    前記第1改質工程及び第2改質工程を行った後に、前記半導体ウエハの前記裏面を研削するとともに、この研削に伴って前記半導体ウエハに加えられる力によって、前記第1改質層及び第2改質層の部位において、前記半導体ウエハを分割することにより、半導体チップを得る分割工程と、
    を有する、半導体チップの製造方法。
  2. 前記第1改質工程及び第2改質工程を行うときの前記半導体ウエハの厚さに対して、前記半導体チップの最も短い一辺の長さを同等以上とする、請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の半導体チップの製造方法により、複数個の半導体チップが整列している状態の半導体チップ群を得た後、
    支持シートと、前記支持シート上に形成されたフィルム状接着剤と、を備えたダイボンディングシートを用い、前記ダイボンディングシート中の前記フィルム状接着剤を、前記半導体チップ群における半導体チップの研削後の前記裏面に貼付することにより、前記半導体チップ群と、前記ダイボンディングシートと、の積層物を作製する積層工程と、
    前記積層物に対して、その支持シート側から力を加えることにより、前記積層物中の前記フィルム状接着剤を、前記半導体チップに沿って切断し、切断後の前記フィルム状接着剤を裏面に備えた前記半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、
    を有する、半導体装置の製造方法。
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