JPWO2019208347A1 - 固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート、全固体二次電池、電子機器及び電気自動車、並びに、これらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質及び正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。更に、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した積層構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、各種電子機器、電気自動車又は大型蓄電池等への応用が期待されている。
<1>
平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmであるファイバーと、無機固体電解質とを含む、厚さがtμmの固体電解質含有層を有し、上記Lと上記tが下記関係を満たす固体電解質含有シート。
100×t≦L≦2500×t
<2>
上記ファイバーの含有率が、上記固体電解質含有層中、0.1〜40体積%である、<1>に記載の固体電解質含有シート。
<3>
上記ファイバーが電界紡糸ファイバーである、<1>又は<2>に記載の固体電解質含有シート。
<4>
バインダーを含有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シート。
<5>
自立膜である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シート。
<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シートと、電極活物質層とを有する全固体二次電池用電極シート。
<7>
<6>に記載の全固体二次電池用電極シートを有する全固体二次電池。
<8>
<7>に記載の全固体二次電池を有する電子機器。
<9>
<7>に記載の全固体二次電池を有する電気自動車。
平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーと、無機固体電解質と、分散媒とを含む固体電解質組成物をキャストする工程を含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シートの製造方法。
<11>
平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーの不織布に、無機固体電解質の乾燥粉末を塗布する工程、上記不織布に、無機固体電解質と分散媒とを含む固体電解質組成物を塗布する工程、又は、上記不織布を、無機固体電解質と分散媒とを含む固体電解質組成物に含浸させる工程を含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シートの製造方法。
<12>
平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーの不織布を、無機固体電解質を液相合成する際に、同じ系(上記液相中)に存在させる工程を含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シートの製造方法。
<13>
電界紡糸法によりファイバーを調製する工程を含む、<10>又は<11>に記載の固体電解質含有シートの製造方法。
<14>
<10>〜<13>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シートの製造方法により固体電解質含有シートを得て、この固体電解質含有シートを用いて全固体二次電池用電極シートを製造することを含む、全固体二次電池用電極シートの製造方法。
<15>
<14>に記載の全固体二次電池用電極シートの製造方法により全固体二次電池用電極シートを得て、この全固体二次電池用電極シートを用いて全固体二次電池を製造することを含む、全固体二次電池の製造方法。
<16>
<15>に記載の全固体二次電池の製造方法により全固体二次電池を得て、この全固体二次電池を電子機器に組み込むことを含む、電子機器の製造方法。
<17>
<15>に記載の全固体二次電池の製造方法により全固体二次電池を得て、この全固体二次電池を電気自動車に組み込むことを含む、電気自動車の製造方法。
本発明の固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート、全固体二次電池、電子機器及び電気自動車それぞれの製造方法によれば、上述した本発明の固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート、全固体二次電池、電子機器及び電気自動車を得ることができる。
本発明において、固体電解質層は、通常、活物質を含有しないが、本発明の効果を損なわない範囲及び活物質層として機能しない範囲であれば、活物質を含有してもよい。
本発明の説明において、「転写」とは、離型フィルム(支持体)上に形成された固体電解質層と、電極活物質層とが接するように、固体電解質含有シートと電極活物質層とを重ね合わせ、電極活物質層上に固体電解質層を移設することを意味する。本発明の固体電解質含有シートは、固体電解質層を転写するためのシート(固体電解質層転写用シート)とすることもできる。
本発明の説明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の固体電解質含有シートは、平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmであるファイバーと、無機固体電解質とを含む、厚さがt(単位:μm)の固体電解質含有層を有し、上記Lと上記tが下記式で表される関係を満たす。
本発明に用いられるファイバーは、平均直径d、平均長さLが上記範囲内にあることにより、無機固体電解質の高度な分散性を維持して、ファイバーをマトリックスとした三次元網状構造を形成すると考えられる。平均直径d、平均長さLが上記範囲内にあるファイバー、すなわち、特定のアスペクト比を有するファイバーをマトリックスとすることにより、三次元網状構造に取り込まれた無機固体電解質間の間隔を好適な範囲に収め、また、無機固体電解質間に、抵抗が抑制された良好な界面を形成することができると考えられる。また、少ないファイバーの含有量で三次元網状構造を形成し、無機固体電解質と接することができるため、電池の抵抗上昇を抑制することができる。さらには、この三次元網状構造が形成される固体電解質含有層の厚さtと上記Lが上記式を満足することにより、三次元網状構造が密になり過ぎずに自立膜とすることができる強度を有し、固体電解質含有層に適度な可撓性を付与できると考えられる。このような作用が相俟って、本発明の固体電解質含有シートは、バインダーを少量用いて又はバインダーを用いなくとも所望の物理的特性を備えた上で、電池性能を向上させることができると推定される。
本発明の固体電解質含有シートが有する固体電解質含有層は後述の分散媒を含んでいてもよい。この分散媒の含有量は、例えば、質量基準で1000ppm以下である。
tは、全固体二次電池のサイズに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜250μmであり、10〜100μmが好ましく、15〜40μmがより好ましい。
本発明の固体電解質含有シートは、上記固体電解質含有層からなるシート(自立膜)である。ただし、離型フィルム(支持体)を有する転写シートとして用いることもできる。以下、転写シートである、本発明の固体電解質含有シートを有する転写シートを、「本発明の転写シート」と称することもある。本発明の転写シートは、電極活物質層上に固体電解質含有層を転写するために好適である。
本発明の転写シートの好ましい形態として、図1に示す転写シートが挙げられる。
本発明の転写シートに用いられる離型フィルムは特に制限されないが、例えば、アルミニウムフィルム、ステンレス鋼(SUS)フィルム、銅フィルム等の金属フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。また、離型フィルムと固体電解質層との離型性を向上させるため、固体電解質層と離型フィルムとの間にシリコーン樹脂層、フッ素樹脂層、オレフィン樹脂層などの離型性調整層を有してもよい。離型性調整層付の離型フィルムの具体例として、東レフイルム加工(株)社製のセラピール、パナック(株)製のパナピール、ユニチカ(株)社製のユニピールを挙げることができる。
なお、本発明の固体電解質含有シートは、水分、異物の侵入防止、転写後の積層時の位置ずれなどに起因する正極負極の接触による短絡を防ぐために、固体電解質含有層の端面を保護する膜を有してもよい。
本発明の全固体二次電池用電極シートは、本発明の固体電解質含有シート(固体電解質層)と電極活物質層とを有する。
本発明の全固体二次電池用電極シートとして、例えば、集電体上に電極活物質層を有し、この電極活物質層上に固体電解質層を有するシート、及び、集電体上に導電体層を有し、この導電体層上に電極活物質層を有し、この電極活物質層上に固体電解質層を有するシートが挙げられる。
全固体二次電池用電極シートにおいて、固体電解質層は後述の分散媒を含んでいてもよい。この分散媒の含有量は、例えば、質量基準で1000ppm以下である。
この導電体層としては、例えば、特開2013−23654号公報及び特開2013−229187号公報に記載の導電体層(カーボンコート箔)が挙げられる。
また、上記電極活物質層及び集電体は、通常の全固体二次電池に使用される電極活物質層及び集電体を用いることができる。例えば、特開2015−088486号公報に記載の電極活物質層及び集電体を用いることができる。
なお、本発明の説明において、電極活物質層(正極活物質層(以下、正極層とも称す。)と負極活物質層(以下、負極層とも称す。))を活物質層と称することがある。
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に対向する負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間に配置された固体電解質層とを有する。正極活物質層は、必要により正極集電体上に形成され、正極を構成する。負極活物質層は、必要により負極集電体上に形成され、負極を構成する。
本発明の全固体二次電池は、上記本発明の全固体二次電池用電極シートを有する。
負極活物質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に制限されない。各層の厚さは、一般的な全固体二次電池の寸法を考慮すると、それぞれ、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。なお、固体電解質層の厚さは、上記「t(μm)」と同義であり、好ましい範囲も同じである。
本発明の全固体二次電池において、負極としてリチウム金属層(リチウム金属の層)を用いてもよく、具体的には、リチウム粉末を堆積又は成形してなる層、リチウム箔及びリチウム蒸着膜等を包含する。リチウム金属層の厚さは、特に限定されず、例えば、0.01〜100μmとしてもよく、0.1〜100μmとしてもよい。
正極活物質層及び負極活物質層は、それぞれ、固体電解質層とは反対側に集電体を備えていてもよい。
本発明の全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることが好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金又は、ステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
全固体二次電池100は電気抵抗が小さく、優れた電池性能を示す。正極活物質層6、固体電解質層5及び負極活物質層4が含有する無機固体電解質は、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に制限されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
以下、本発明の固体電解質含有シートが有する固体電解質含有層が含有する成分及び含有しうる成分について説明する。
本発明の固体電解質含有シートが有する固体電解質含有層は、無機固体電解質を含有する。
本発明において、無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンが解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導性を有することが好ましい。
上記無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。本発明において、よりイオン伝導性を高めるため、硫化物系無機固体電解質が好ましく用いられる。
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
La1Mb1Pc1Sd1Ae1 (1)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1は1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。d1は2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1は0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(Li2S)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS2、SnS、GeS2)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li3PO4); リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON; LiPOD1(D1は、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuから選ばれる1種以上の元素である。)等が挙げられる。
更に、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C及びGaから選ばれる1種以上の元素である。)等も好ましく用いることができる。
固体電解質含有層の単位面積(cm2)当たりの無機固体電解質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができ、例えば、1〜100mg/cm2とすることができる。
本明細書において、固形分(固形成分)とは、後述の固体電解質組成物を、1mmHgの気圧下、窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理したときに、揮発又は蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
本発明に用いられるファイバーは、平均直径dが0.1〜2μmであって、平均長さLが0.2〜50mmであり、上記Lと、このファイバーを含有する固体電解質含有層の厚さt(単位:μm)が下記式で表される関係を満たす。
平均長さLは0.3〜45mmであることが好ましく、0.4〜35mmであることがより好ましい。
アスペクト比L/dは150〜150,000であることが好ましく、400〜87,500であることがより好ましい。
d、Lのいずれにおいても上記範囲にあることにより、可撓性と電池性能とをより高い水準で両立できるからである。
Lとtは、200×t≦L≦2000×tで表される関係を満たすことが好ましく、500×t≦L≦1500×tで表される関係を満たすことがより好ましく、550×t≦L≦1500×tで表される関係を満たすことがさらに好ましい。
上記範囲にあることにより、可撓性と電池性能とをより高い水準で両立できるからである。
具体的な測定条件等については、実施例の項に記載のSEM解析を参照することができる。本発明においては、平均直径は数平均直径を意味し、平均長さは数平均長さを意味する。また、アスペクト比は数平均直径に対する数平均長さのアスペクト比を意味する。
なお、ファイバーの体積抵抗率は、実施例の項に記載の方法により測定することができる。
ここで、ファイバーの中心部は、それ自体単独でファイバーとなりうる部分である。ファイバーの表面とは、中心部の外側の表面部分を意味する。そのため、1種類の材料から形成される場合には、表面が被覆されておらず、中心部のみからなるファイバーを構成する。
表面を樹脂により被覆したファイバーを例に説明すると、ファイバーの中心部は、樹脂により被覆される前のファイバーであり、中心部の表面が樹脂により被覆されている。
中心部が、電気伝導度が1×10−6S/mを超える半導体または導体からなる場合には、表面は電気伝導度が1×10−6S/m以下の材料で被覆されていることが好ましい。なお、ファイバーの電気伝導度が1×10−6S/m以下であればよい。
電気伝導度が1×10−6S/m以下の材料としては、有機物が好ましく、有機物であれば低分子化合物、及び重合体(オリゴマー又はポリマー)のいずれでもよいが、ポリマーであることが好ましい。
上記重合体は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基等を有することにより、重合体と無機固体電解質との結着性をより向上させることができるため、可撓性及び電池電圧をより向上させることができる。
ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基等の官能基の含有量は、重合体繰返し単位当たり0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。上記重合体中のカルボキシ基の含有量は例えば、販売元のカタログ値を採用することができる。
上記重合体を有機溶媒に溶解させることによりポリマー溶液を得る。有機溶媒は、例えば、メチレンクロライド、n−メチル−2−ピロリドン、蟻酸、及びホルマリン挙げられる。
上記乾式紡糸法は、例えば、特開2008−069291号公報、及び特開2013−130404号公報を参照して行うことができる。
上記湿式紡糸法は、例えば、特開2006−248272号公報、及び特開2016−53241号公報を参照して行うことができる。
上記含有率は以下のようにして算出することができる。
〔{シート中のファイバー質量(g)÷ファイバー原料の比重(g/cm3)}÷シート全体体積(cm3)〕×100(%)。
上記好ましい範囲内にあることで、可撓性及び電池電圧を両立して高めることができる。
上記ファイバーは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、1種単独で用いることが好ましい。
本発明の固体電解質含有シートが有する固体電解質含有層は、バインダーを含有することが好ましい。バインダーを構成する重合体は、どのような形態でもよく、例えば、固体電解質含有シート又は全固体二次電池中において、粒子状であっても不定形状であってもよい。バインダーを構成する重合体は、粒子状が好ましい。
本発明で使用するバインダーを構成する重合体が樹脂粒子である場合、この樹脂粒子を形成する樹脂は、有機樹脂であれば特に限定されない。
このバインダーを構成する重合体は、特に制限はなく、例えば、下記の樹脂からなる粒子の形態が好ましい。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。
アクリル樹脂としては、各種の(メタ)アクリルモノマー類、(メタ)アクリルアミドモノマー類、及びこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体(好ましくは、アクリル酸とアクリル酸メチルとの共重合体)が挙げられる。
また、そのほかのビニル系モノマーとの共重合体(コポリマー)も好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとアクリロニトリルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチルとアクリロニトリルとスチレンとの共重合体が挙げられる。本発明において、コポリマーは、統計コポリマー及び周期コポリマーのいずれでもよく、ブロックコポリマーが好ましい。
その他の樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース誘導体樹脂等が挙げられる。
バインダーは、1種を単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
本発明の固体電解質含有シートが有する固体電解質含有層は、活物質を含有する電極活物質層とすることもできる。この活物質は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な物質である。このような活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられる。正極活物質としては、金属酸化物(好ましくは遷移金属酸化物)が好ましく、負極活物質としては、炭素質材料、金属酸化物若しくはSn、Si、Al及びIn等のリチウムと合金形成可能な金属が好ましい。
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、又は、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8及びLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4及びLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類並びにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩及びLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4及びLi2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体及びリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、Si、Al及びIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li2B4O7、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、B2O3等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
本発明の固体電解質含有シートが有する固体電解質含有層は、リチウム塩(支持電解質)を含有してもよい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、特開2015−088486の段落0082〜0085記載のリチウム塩が好ましい。
固体電解質含有層がリチウム塩を含む場合、リチウム塩の含有量は、無機固体電解質100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
本発明の固体電解質含有シートが有する固体電解質含有層は、イオン伝導度をより向上させるため、イオン液体を含有してもよい。イオン液体としては、特に限定されないが、イオン伝導度を効果的に向上させる観点から、上述したリチウム塩を溶解するものが好ましい。例えば、下記のカチオンと、アニオンとの組み合わせよりなる化合物が挙げられる。
カチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ホスホニウムカチオン及び第4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。ただし、これらのカチオンは以下の置換基を有する。
カチオンとしては、これらのカチオンを1種単独で用いてもよく、2以上組み合わせて用いることもできる。
好ましくは、四級アンモニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン又はピロリジニウムカチオンである。
上記カチオンが有する置換基としては、アルキル基(炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。)、ヒドロキシアルキル基(炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。)、アルキルオキシアルキル基(炭素数2〜8のアルキルオキシアルキル基が好ましく、炭素数2〜4のアルキルオキシアルキル基がより好ましい。)、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基(炭素数1〜8のアミノアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアミノアルキル基が好ましい。)、アリール基(炭素数6〜12のアリール基が好ましく、炭素数6〜8のアリール基がより好ましい。)が挙げられる。上記置換基はカチオン部位を含有する形で環状構造を形成していてもよい。なお、上記エーテル基は、他の置換基と組み合わされて用いられる。このような置換基として、アルキルオキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、四フッ化ホウ素イオン、硝酸イオン、ジシアナミドイオン、酢酸イオン、四塩化鉄イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブチルメタンスルホニル)イミドイオン、アリルスルホネートイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホネートイオン等が挙げられる。
アニオンとしては、これらのアニオンを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いることもできる。
好ましくは、四フッ化ホウ素イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン又はヘキサフルオロリン酸イオン、ジシアナミドイオン及びアリルスルホネートイオンであり、さらに好ましくはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン又はビス(フルオロスルホニル)イミドイオン及びアリルスルホネートイオンである。
固体電解質含有層中のイオン液体の含有量は、無機固体電解質100質量部に対して0質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が最も好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
リチウム塩とイオン液体の質量比は、リチウム塩:イオン液体=1:20〜20:1が好ましく、1:10〜10:1がより好ましく、1:7〜2:1が最も好ましい。
本発明の固体電解質含有シートの製造方法は、特に制限されないが、例えば、下記(1)及び(2)が挙げられる。
キャスト法は、無機固体電解質と、分散媒とを含む固体電解質組成物(スラリー)に平均直径dが0.1〜1μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーを浸漬させる工程を含む。例えば、固体電解質組成物に向けて、電界紡糸法により得られるファイバーを直接添加してスラリーに浸漬させることができる。ファイバーをスラリーに浸漬させる時間は、例えば、5〜60分が好ましい。浸漬させた後、ファイバーから分散媒を蒸発又は揮発させてもよい。分散媒の蒸発又は揮発は、例えば、50〜200℃で1〜60分加熱することにより行うことができる。また、分散媒を蒸発又は揮発させた後、プレスしてもよい。プレス圧は、例えば、5〜50MPaであり、プレスする際に加熱(例えば、50〜200℃)してもよい。プレスする時間は、例えば、1〜30分である。
キャスト法は、ファイバーを予め不織布形態にせずに、所望のシートを得ることができる。
スラリー塗布又は含浸法は、
平均直径dが0.1〜1μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーの不織布に、無機固体電解質の乾燥粉末を塗布する工程、
上記不織布に、無機固体電解質と分散媒とを含む固体電解質組成物(スラリー)を塗布する工程、又は、
上記不織布を、無機固体電解質と分散媒とを含む固体電解質組成物に浸漬させる工程を含む。
また、別の形態では、スラリー塗布又は含浸法は、
平均直径dが0.1〜1μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーの不織布を、無機固体電解質を液相合成する際に、同じ系(上記液相中)に存在させる工程を含む。
「不織布を、無機固体電解質を液相合成する際に、同じ系に存在させる工程」は、具体的には、例えば、無機固体電解質前駆体を含むスラリーを不織布に塗布する、又は、無機固体電解質前駆体を含むスラリーに不織布を浸漬させることにより行うことができる。
浸漬させた後、ファイバーから分散媒を蒸発又は揮発させてもよい。分散媒の蒸発又は揮発は、例えば、50〜200℃で1〜60分加熱することにより行うことができる。また、分散媒を蒸発又は揮発させた後、プレスしてもよい。プレス圧は、例えば、5〜50MPaであり、プレスする際に加熱(例えば、50〜200℃)してもよい。プレスする時間は、例えば、1〜30分である。
「無機固体電解質前駆体」とは、加熱することより無機固体電解質を得ることができる、上述の無機固体電解質の原料を意味する。
本発明の固体電解質含有シートの製造方法に用いられる固体電解質組成物は、常法により調製することができる。具体的には、無機固体電解質、ファイバー及び分散媒と、必要によりバインダー等の他の成分とを、混合又は添加することにより、調製できる。また、無機固体電解質及び分散媒と、必要によりバインダー等の他の成分とを、混合又は添加することにより、調製できる。例えば、各種の混合機を用いて上記成分を混合することにより、調製できる。混合条件としては、特に限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサ―、ブレードミキサ―、ロールミル、ニーダー、ディスクミル等が挙げられる。
上記分散媒の具体例としては以下のものが挙げられる。
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール及び1,4−ブタンジオールが挙げられる。
本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法は、本発明の固体電解質含有シートの製造方法により得られた固体電解質含有シートが有する固体電解質含有層(固体電解質層)を、電極活物質層上に積層する工程を含む。本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法は、上記固体電解質含有シートの製造方法を含む以外は、常法によって行うことができる。
なお、本発明の全固体二次電池用電極シートの電極活物質層は、通常の全固体二次電池を構成する電極活物質層を用いることができる。このような電極活物質層を形成するための電極用組成物として、例えば、特開2015−088486号公報に記載の電極用組成物を用いることができる。
本発明の全固体二次電池の製造方法は、本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法を含む。本発明の全固体二次電池の製造方法は、上記全固体二次電池用電極シートの製造方法を含む以外は、常法によって行うことができる。
電極用組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布及びバーコート塗布が挙げられる。
このとき、電極用組成物は、塗布した後に乾燥処理を施してもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
また、塗布した電極用組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
(1)電界紡糸法でのファイバーの調製
以下のようにして、電界紡糸法により、ファイバーを調製した。
ジクロロメタン:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)=8:2(質量比)の混合溶媒を用いて、セルローストリアセテート(ダイセル社製、商品名LT−35)溶液(濃度4質量%)を調製した。MECC社のNANON−3(商品名)を用いて、印加電圧30kV、流束1.0mL/hrの条件で電界紡糸を行い、ファイバーを得た。またこのファイバーを所望する厚みまで集積させることで形態を不織布にした。
平均直径d、平均長さLは、溶液の固形分濃度、印加電圧、溶液流束によって、SEM画像で確認しながら調整した。
セルローストリアセテートに変えて、シクロオレフィンポリマー(Arton(登録商標)、JSR株式会社製)、変性ポリフェニレンエーテル(旭化成社製 ザイロン(登録商標))、又はポリアクリロニトリル(旭化成社製 スタイラック(登録商標))を用いたこと以外は、上記と同様にして、シクロオレフィンポリマーの電界紡糸ファイバー、変性ポリフェニレンエーテルの電界紡糸ファイバー、及びポリアクリロニトリルの電界紡糸ファイバーを調製した(いずれも不織布)。
セルローストリアセテート及び混合溶媒に変えて、ポリイミド(KPI−MX300F(商品名)、河村産業社製)及びN,N−ジメチルホルムアミドを用いたこと以外は、上記と同様にして、ポリイミドの電界紡糸ファイバー(不織布)を調製した。
特許第5500842号公報を参照して、以下のように、マイクロフリュイダイサー法により、ファイバーを調製した。
スギ由来の木粉(JIS Z 8801−1(2006)標準ふるいにおける30mesh(500μm)〜60mesh(250μm)、アスペクト比1〜100の粒径)50gを、蒸留水1500ml、亜塩素酸ナトリウム15g、酢酸3mlの溶液中に入れ、80〜90℃の湯浴中で時折攪拌しながら1時間加温した。1時間後、冷却することなく亜塩素酸ナトリウム15g、酢酸3mlを加えさらに1時間加温した。これら一連の処理を8回反復して行った。その後、冷水約5Lで洗浄した。この操作で木粉中のリグニンを除去した精製木粉(ホロセルロースパルプ リグニン量0.1質量%)を製造した。次に、得られた精製木粉を以下の条件でブレンダー攪拌処理に供した。
<ブレンダー攪拌処理>
使用モーター機種名:Vita Mix(R) Corp. ABS−BU
使用ボトル名:WARING(R) CAC90B X−TREME用2Lステンレス容器
使用タンパー:Vita Mix(R) Corp. ABS−V用プラスチック製タンパー PN−D2
[※タンパーとは、ミキシング中に泡が発生するのを防ぎ適正回転を維持するために、ボトルのふたの中央から差し込む、プラスチック製の円筒型攪拌補助棒である。高速攪拌中に起きる溶媒の激しい対流が空気を取り込み、攪拌が連続しなくなることを防ぐ。]
攪拌回転数:37000rpm
攪拌容量:1L
温度:30〜80℃
とし、ブレンダー攪拌処理に供する精製木粉の最低水分含有量は、100質量%以上に保った。精製木粉を0.7質量%のパルプ水懸濁液を調製した。懸濁液1Lをブレンダー容器に投入し、タンパーを挿入し、上記の条件で攪拌処理を60分実施した。その後、懸濁液を、エタノールに溶媒置換した後、オーブン中105℃で乾燥させ、ファイバーを得た。このファイバーを所望する厚みに集積することにより、不織布にした。
特開平09−268424号公報を参照して、以下のように、湿式紡糸法により、ファイバーを調製した。
セルロースジアセテート(ダイセイル化学工業社製 商品名MBH 酢化度約55%粉体状)338gと約41質量%の水を含有するN−メチルモルフォリンN−オキシド2000g及び没食子酸プロピル(和光純薬製)15gを、小平製作所製真空脱泡装置付きミキサー(ACM−5型)に投入し、減圧加熱下で約2時間混合しながら648gの水を脱水し、セルロースアセテートの均一溶液を調製した。溶解操作中は釜温度を100℃に保った。得られたセルロースアセテート溶液は褐色を呈する粘調な液体であった。20質量%含有する均一溶液を調製し、次いで得られた溶液を100℃に保ったまま、1.5kg/cm2の窒素加圧下で押し出し、ギヤポンプを用いてノズル部へ定量供給を行った。セルロースアセテート溶液の吐出量はギヤポンプの回転数により規定した。またノズル部は90℃に保温した状態で以下の検討を行った。直径0.2mm、長さが3mmで円形の断面形状を有するキャピラリー36個よりなるノズルを用いて、上記公報の図1に示す装置で紡糸検討を行った。この際、凝固液として25℃の水を用いた。ノズル面と凝固液面間の距離により定義されるエアーギャップを50cmとした。15.4g/minの吐出量で溶液をノズルより吐出させ、ファイバーを得た。このファイバーを所望する厚みに集積させることにより、不織布にした。
ファイバーの数平均直径と数平均長さをSEM解析により求めた。
詳細には、固体電解質含有層中のファイバーをSEM観察し、10本のファイバーについて繊維の直径と長さの値を読み取った。
なお、「繊維の直径」とは、繊維の横断面(真っ直ぐにした繊維の長さ方向に垂直な断面)における直径のうち最大の直径を意味する。つまり、横断面の位置によって横断面の直径が異なる場合があり、この場合には最大の直径を与える横断面における直径を「繊維の直径」とした。また、繊維の横断面が円形でない場合には、この横断面の外周上に存在する2つの点を結ぶ直線の長さが最大となる場合におけるこの直線の長さを、この横断面の直径とした。
得られた繊維径と長さのデータから、数平均直径(数平均直径=10本の繊維の直径の合計/10)と数平均長さ(数平均長さ=10本の繊維の長さの合計/10)を算出した。
上記で調製した不織布にする前のファイバーを水へ分散物させポリフェニレンスルホンシートフイルム上にキャストした。乾燥と塗布を5回繰り返し、ポリフェニレンスルホンシートから剥がして線状構造体からなる膜を得た。この膜について、「JIS C 2139(2008)固体電気絶縁材料体積抵抗率及び表面抵抗率の測定方法」に従って体積抵抗率を得た。
体積抵抗率は,次の式によって求めた。なお、下記「10.1」とは、JIS C 2139(2008)の項目を示す。
硫化物系無機固体電解質は、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235及びA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして合成した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス、「LPS」とも称する。)6.20gを得た。
<バインダAを構成するポリマーの合成例>
還流冷却管、ガス導入コックを付した2L三口フラスコに、マクロモノマーM−1の40質量%ヘプタン溶液を7.2g、アクリル酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を12.4g、アクリル酸(和光純薬工業株式会社製)を6.7g、ヘプタン(和光純薬工業株式会社製)を207g、アゾイソブチロニトリル1.4gを添加し、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に、100℃に昇温した。別容器にて調製した液(マクロモノマーM−1の40質量%ヘプタン溶液を93.1g、アクリル酸メチルを222.8g、アクリル酸を120.0g、ヘプタン300.0g、アゾイソブチロニトリル2.1gを混合した液)を4時間かけて滴下した。滴下完了後、アゾイソブチロニトリル0.5gを添加した。その後100℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却し、ろ過することでバインダAの分散液を得た。固形成分濃度は39.2%であった。
12−ヒドロキシステアリン酸(和光純薬工業株式会社製)の自己縮合体(GPCポリスチレンスタンダード数平均分子量:2,000)にグリシジルメタクリレート(東京化成工業株式会社製)を反応させマクロモノマーとしてそれをメタクリル酸メチルとグリシジルメタクリレート(東京化成工業株式会社製)と1:0.99:0.01(モル比)の割合で重合したポリマーにアクリル酸(和光純薬株式会社製)を反応させたマクロモノマーM−1を得た。このマクロモノマーM−1のSP値は9.3、数平均分子量は11000であった。
下記に、バインダAを構成するポリマー及びマクロモノマーM−1の推定構造式を示す。
還流冷却管、ガス導入コックを付した1Lの3つ口フラスコにヘプタンを200質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に室温から80℃に昇温した。攪拌しているヘプタン中に、別容器にて調製した液(アクリル酸ブチル(和光純薬工業社製)90質量部、メタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)20質量部、アクリル酸(和光純薬工業社製)10質量部、B−27(後記合成品)を20質量部、マクロモノマーMM−1を60質量部(固形分量)、重合開始剤V−601(商品名、和光純薬工業社製)を2.0質量部混合した液)を2時間かけて滴下し、その後80℃で2時間攪拌した。その後、得られた混合物にV−601をさらに1.0質量部添加し、90℃で2時間攪拌した。得られた溶液をヘプタンで希釈することで、バインダBの分散液を得た。
1Lの3つ口フラスコにコレステロール(東京化成工業社製)80g、こはく酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)(アルドリッチ社製)を50g、4−ジメチルアミノピリジン(東京化成工業社製)を5g、ジクロロメタンを500g加えた後、20℃で5分攪拌した。攪拌している溶液中に1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業社製)52gを30分かけて添加し、20℃で5時間攪拌した。その後0.1M塩酸で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧留去を行った。得られたサンプルをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでB−27を得た。
還流冷却管、ガス導入コックを付した1Lの3つ口フラスコにトルエンを190質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に室温から80℃に昇温した。攪拌しているトルエン中に、別容器にて調製した液(下記処方α)を2時間かけて滴下し、80℃で2時間攪拌した。その後、V−601を0.2質量部添加し、さらに95℃で2時間攪拌した。攪拌後95℃に保った溶液に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(東京化成工業社製)を0.025質量部、メタクリル酸グリシジル(和光純薬工業社製)を13質量部、テトラブチルアンモニウムブロミド(東京化成工業社製)を2.5質量部加えて120℃で3時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却したのちメタノールに加えて沈殿させ、沈殿物をろ取し、メタノールで2回洗浄後、ヘプタン300質量部を加えて溶解させた。得られた溶液を減圧下で濃縮することでマクロモノマーMM−1の溶液を得た。固形分濃度は43.4%、SP値は9.1、質量平均分子量は16,000であった。得られたマクロモノマーMM−1を以下に示す。
メタクリル酸ドデシル(和光純薬工業社製) 150質量部
メタクリル酸メチル (和光純薬工業社製) 59質量部
3−メルカプトイソ酪酸 (東京化成工業社製) 2質量部
V−601 (和光純薬工業社製) 1.9質量部
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを130個投入し、LPS 3.0g、分散媒としてトルエン9.0gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで30分混合し、粒径2.0μmのLPSを含有する、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物(固体電解質用組成物)を調製した。
(実施例1)
作製した上述の固体電解質組成物をシャーレに投入し、不織布を30分間浸漬させた。不織布を取り出し、液切りを30秒間行った後、150℃ホットプレートにて30分間乾燥させ溶媒を揮発させた。乾燥した不織布の上下をアルミ箔で挟み、20MPaで150℃5分間加圧し、厚さ20μmの実施例1の固体電解質含有シートを作製した。
実施例1の固体電解質含有シートの作製において、下記表1の記載に従ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜22の固体電解質含有シートを作製した。
なお、実施例21及び22において、LPS 3.0gに代えてLPS 2.94gとバインダー0.06gを用いた。
上述の固体電解質組成物に向けて、NANON−3の吐出口から、電界紡糸ファイバーを直接添加したこと以外は実施例2と同様にして実施例23の固体電解質含有シートを作製した。
上述の固体電解質組成物をアプリケータ(商品名:SA−201ベーカー式アプリケータ、テスター産業社製)で固体電解質層単独の膜厚が10μmとなるように不織布の片面に塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧し(20MPa、1分間)した。その後、不織布のもう一方の面にも同様の操作を行うことで固体電解質含有シートを得た。
Li2S:0.3827g、P2S5:0.6170g(モル比Li2S5:P2S5=3:1 )を、3Aモレキュラーシーブで脱水したプロピオン酸エチル(EP):20mLに添加し、ドライAr雰囲気下で、24時間、1500rpm、振幅1cmで加振して硫化物系無機固体電解質の前駆体を含むスラリーを得た。
このスラリーを、不織布に含浸させ、室温にて減圧乾燥し、硫化物系無機固体電解質の前駆体を含有するシートを作製した。
上記シートを170℃で、一晩(7時間)、減圧下(−100kPa)で熱処理し、上記前駆体を反応させ、固体電解質含有シートを得た。
なお、得られた固体電解質含有シートのイオン伝導度は、1×10−4Scm−1であった。
実施例2の不織布の両面に、上記「硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス)の合成」で得た硫化物系無機固体電解質粉末を静電印刷し、加熱ロールプレス機(タクミ技研製SA―602―S(商品名))を用い、100℃、20kN、ロール回転速度0.4m/分の条件で加熱、加圧処理し、厚さ20μmの固体電解質含有シートを得た。
実施例1の固体電解質含有シートの作製において、下記表1の記載に従ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例27〜30の固体電解質含有シートを作製した。
実施例2の固体電解質含有シートの作製において、前記の20MPaで150℃5分間加圧後のシートを、再度浸漬から加圧までの過程に付し、実施例31の固体電解質含有シートを作製した。
実施例1の固体電解質含有シートの作製において、下記表1〜3の記載に従ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例32、33及び比較例1〜12の固体電解質含有シートを作製した。なお、実施例32では、厚さ60μmのウレタン不織布(「パンデックスT8175N」ディーアイシー コベストロ ポリマー社製商品名)を用いた。
(正極シートの作製)
以下のようにして、実施例1〜27、29、31〜33及び比較例1〜12において用いる正極シートを作製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス2.8g、バインダAの分散液を固形分換算で0.2g、分散媒としてトルエン12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合した。その後、活物質としてNMC(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2(アルドリッチ社製))7.0g、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ(株)製)を0.2g容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで10分間混(合を続け、正極用組成物を調製した。
上記で調製した正極用組成物に、厚さ80μmとなるセルロースアセテートの不織布を30分間浸漬させた。不織布を取り出し、液切りを30秒間行った後、110℃ホットプレートにて1時間乾燥させ溶媒を揮発させた。乾燥した不織布の上下をアルミ箔で挟み、120℃で1分間、20MPaで加圧し、片方のアルミ箔を剥し、正極集電体上に正極活物質層を有する正極シートを作製した。
以下のようにして、実施例1〜28、31、33、比較例1〜10及び12において用いる負極シートを作製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス2.8g、バインダBの分散液を固形分換算で0.2g、分散媒としてヘプタン12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合した。その後、活物質としてCGB20(商品名、日本黒鉛社製)7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間混合を続け負極用組成物を調製した。
上記で調製した負極用組成物に、厚さ60μmのセルロースアセテートの不織布を30分間浸漬させた。不織布を取り出し、液切りを30秒間行った後、110℃ホットプレートにて1時間乾燥させ溶媒を揮発させた。乾燥した負極シートの上下をSUS箔で挟み、120℃で1分間、20MPaで加圧し、片方のSUS箔を剥し、負極集電体上に負極活物質層を有する負極シートを作製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス4.7g、バインダBの分散液を固形分換算で0.1g、分散媒としてヘプタン12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合した。その後、活物質としてSilicon Powder1−5μm(Alfa Aesar社製)4.7g、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ(株)製)0.5gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間混合を続け負極用組成物を調製し、厚さ60μmのウレタン不織布(「パンデックスT8175N」ディーアイシー コベストロ ポリマー社製商品名)を用いて実施例29と同様にして負極シートを作製した。
図2に示す層構成を有する全固体二次電池を形成した。
上記で得られた固体電解質含有シート(固体電解質層)と負極シートの負極活物質層が接するように重ね、50MPaで10秒加圧した。負極集電体3/負極活物質層4/固体電解質層5からなる部材を作製し、直径15mmΦに切り出した。その後、2032型コインケース内で直径14mmΦに切り出した正極シートの正極活物質層6と固体電解質層5が接するように重ねて全固体二次電池用積層体とし、600MPaで加圧後、コインケースをかしめ、全固体二次電池を作製した。
固体電解質含有シートから、10mm×30mmの試験片を切り出し、短辺側の端部を固定し、他方の短辺側の端部を掴んで試験片を水平にした後離した。水平にした際の試験片に対する垂線と、離した後の試験片とのなす角度を測定した。この角度が下記評価基準のいずれに含まれるかで評価した。AA、A、B及びCが本試験の合格である。
−評価基準−
AA:70〜90度
A:50〜69度
B:40〜49度
C:30〜39度
D:15〜29度
E:0〜14度
角度が大きい程、試験片が水平にした際の状態に近く、自立膜性が優れる。
JIS K5600−5−1に準拠し、マンドレル試験機を用いた耐屈曲性試験により、固体電解質含有シートの可撓性を評価した。
幅50mm、長さ100mmの短冊状の固体電解質含有シートを用い、直径違いのマンドレルを用いて、屈曲させた後、ヒビ及び割れの有無を目視で観察した。ヒビ及び割れの少なくとも一方(ヒビ及び/又は割れ)が発生していない場合、マンドレルの径(単位mm)を25、20、16、12、10、8、6、5、4、3、2と徐々に小さくしていき、ヒビ及び/又は割れが最初に発生したマンドレルの径を記録した。ヒビ及び割れの少なくとも一方が発生したマンドレルの径のうち最大ものが下記評価基準のいずれに含まれるかで評価した。
AA:5mm未満
A:5mm以上10mm未満
B:10mm以上16mm未満
C:16mm以上20mm未満
D:20mm以上40mm未満
E:40mm以上
全固体二次電池を、東洋システム社製の充放電評価装置「TOSCAT−3000」(商品名)により測定した。全固体二次電池を電池電圧が4.2Vになるまで電流値0.2mAで充電した後、電池電圧が3.0Vになるまで電流値2.0mAで放電した。放電開始10秒後の電池電圧を以下の基準で読み取り、抵抗を評価した。
−評価基準1−
AA:4.1V以上
A:4.0V以上4.1V未満
B:3.9V以上4.0V未満
C:3.8V以上3.9V未満
D:3.7V以上3.8V未満
E:3.7V未満
−評価基準2−
AA:3.8V以上
A:3.7V以上3.8V未満
B:3.6V以上3.7未満
C:3.5V以上3.6V未満
D:3.4V以上3.5V未満
E:3.4V未満
1〜32:実施例1〜32
c1〜11:比較例1〜11
d:ファイバーの平均直径(μm)
L:ファイバーの平均長(mm)
t:固体電解質含有シート(固体電解質層)の厚さ(μm)
PVdF:ポリビニリデンジフルオリド
33:実施例33
c12:比較例12
LLZ:Li7La3Zr2O12(ランタンジルコン酸リチウム 平均粒子径5.0μm 豊島製作所)
2 離型フィルム
3 負極集電体
4 負極活物質層
5 固体電解質層
6 正極活物質層
7 正極集電体
8 作動部位
100 全固体二次電池
Claims (17)
- 平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmであるファイバーと、無機固体電解質とを含む、厚さがtμmの固体電解質含有層を有し、前記Lと前記tが下記関係を満たす固体電解質含有シート。
100×t≦L≦2500×t - 前記ファイバーの含有率が、前記固体電解質含有層中、0.1〜40体積%である、請求項1に記載の固体電解質含有シート。
- 前記ファイバーが電界紡糸ファイバーである、請求項1又は2に記載の固体電解質含有シート。
- バインダーを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質含有シート。
- 自立膜である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質含有シート。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質含有シートと、電極活物質層とを有する全固体二次電池用電極シート。
- 請求項6に記載の全固体二次電池用電極シートを有する全固体二次電池。
- 請求項7に記載の全固体二次電池を有する電子機器。
- 請求項7に記載の全固体二次電池を有する電気自動車。
- 平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーと、無機固体電解質と、分散媒とを含む固体電解質組成物をキャストする工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質含有シートの製造方法。
- 平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーの不織布に、無機固体電解質の乾燥粉末を塗布する工程、前記不織布に、無機固体電解質と分散媒とを含む固体電解質組成物を塗布する工程、又は、前記不織布を、無機固体電解質と分散媒とを含む固体電解質組成物に含浸させる工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質含有シートの製造方法。
- 平均直径dが0.1〜2μmであり、平均長さLが0.2〜50mmのファイバーの不織布を、無機固体電解質を液相合成する際に、同じ系に存在させる工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質含有シートの製造方法。
- 電界紡糸法によりファイバーを調製する工程を含む、請求項10又は11に記載の固体電解質含有シートの製造方法。
- 請求項10〜13のいずれか1項に記載の固体電解質含有シートの製造方法により固体電解質含有シートを得て、当該固体電解質含有シートを用いて全固体二次電池用電極シートを製造することを含む、全固体二次電池用電極シートの製造方法。
- 請求項14に記載の全固体二次電池用電極シートの製造方法により全固体二次電池用電極シートを得て、当該全固体二次電池用電極シートを用いて全固体二次電池を製造することを含む、全固体二次電池の製造方法。
- 請求項15に記載の全固体二次電池の製造方法により全固体二次電池を得て、当該全固体二次電池を電子機器に組み込むことを含む、電子機器の製造方法。
- 請求項15に記載の全固体二次電池の製造方法により全固体二次電池を得て、当該全固体二次電池を電気自動車に組み込むことを含む、電気自動車の製造方法。
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