JP7014899B2 - 固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート、全固体二次電池、電子機器及び電気自動車、並びに、これらの製造方法 - Google Patents
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Description
このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質及び正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。更に、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した積層構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、各種電子機器、電気自動車又は大型蓄電池等への応用が期待されている。
例えば特許文献1には、無機固体電解質が充填されている、貫通孔を複数有する支持体を備えた固体電解質含有シートが記載されている。上記固体電解質含有シートを全固体電池に組み込むことで、電池のエネルギー密度及び出力特性を向上させることができ、上記固体電解質含有シートを用いることで、全固体電池を連続プロセスにより大量に生産することも可能にできるとされる。
特許文献2には、複数の開口を開口率40~90%で有する支持体の上記開口に、硫化物系無機固体電解質を特定の方法で充填させた支持体を有する固体電解質含有シートが記載されている。このシートは、自立したシートとすることができ、支持体を有することによるイオン伝導性の低下が少ないとされる。
特許文献3には、ガラス又は樹脂からなるハニカム構造の支持体を含み、無機固体電解質が上記ハニカム構造の開口において厚さ方向に連続貫通構造を有する固体電解質含有シートが記載されている。このシートもまた自立したシートとすることができ、支持体を有することによるイオン伝導性の低下が少ないとされる。
特許文献4には、平均粒径が5~100μmの結晶性酸化物系無機固体電解質粒子が、基材上に一層に担持されてなるセパレータ(固体電解質含有シート)が記載されている。このセパレータは薄膜で高いイオン伝導性を実現でき、またセパレータの柔軟性により電池としての加工性が高まり、電池作製時、作動時に短絡を防ぐことができるとされる。
<1>
複数の貫通孔を有する支持体を有する固体電解質含有シートであって、
上記各貫通孔において、表面の孔径d1及び裏面の孔径d2が、最大孔径Dよりも小さく、上記各貫通孔に無機固体電解質が充填された、固体電解質含有シート。
<2>
上記d1及びd2が、上記Dの0.5倍以上0.9倍以下である、<1>に記載の固体電解質含有シート。
<3>
上記支持体の孔径間距離Lと上記Dとの差が0.01μm以上10μm以下である、<1>又は<2>に記載の固体電解質含有シート。
<4>
上記支持体が絶縁性である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シート。
<5>
上記貫通孔にバインダーを含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シート。
<6>
上記無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シート。
<1>~<6>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シートと、電極活物質層とを有する全固体二次電池用電極シート。
<8>
<7>に記載の全固体二次電池用電極シートを有する全固体二次電池。
<9>
<8>に記載の全固体二次電池を有する電子機器。
<10>
<8>に記載の全固体二次電池を有する電気自動車。
支持体の構成材料を溶解してなる溶液を用いて形成したキャスト膜に、結露により水滴を生じさせ、次いでこの水滴を成長させてキャスト膜中に水滴を配した状態とし、次いで水滴を蒸発させて貫通孔を形成して支持体を得る工程と、
この支持体の貫通孔内に無機固体電解質を充填する工程とを含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の固体電解質含有シートの製造方法。
<12>
<11>に記載の固体電解質含有シートの製造方法により固体電解質含有シートを得て、この固体電解質含有シートを用いて全固体二次電池用電極シートを製造することを含む、全固体二次電池用電極シートの製造方法。
<13>
<12>に記載の全固体二次電池用電極シートの製造方法により全固体二次電池用電極シートを得て、この全固体二次電池用電極シートを用いて全固体二次電池を製造することを含む、全固体二次電池の製造方法。
<14>
<13>に記載の全固体二次電池の製造方法により全固体二次電池を得て、この全固体二次電池を電子機器に組み込むことを含む、電子機器の製造方法。
<15>
<13>に記載の全固体二次電池の製造方法により全固体二次電池を得て、この全固体二次電池を電気自動車に組み込むことを含む、電気自動車の製造方法。
本発明の固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート、全固体二次電池、電子機器及び電気自動車それぞれの製造方法によれば、上述した本発明の固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート、全固体二次電池、電子機器及び電気自動車を得ることができる。
本発明において、固体電解質層は、通常、活物質を含有しないが、本発明の効果を損なわない範囲及び活物質層として機能しない範囲であれば、活物質を含有してもよい。
本発明の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の固体電解質含有シートは、自立膜とすることができ、全固体二次電池の固体電解質層として用いることができる。
本発明の固体電解質含有シートは、複数の貫通孔(独立孔)を有する支持体(シート状の支持体)を有し、この支持体の任意の一方の面(表面とも称す)における上記貫通孔の孔径d1(表面の孔径d1)及び他方の面(裏面とも称す)における上記貫通孔の孔径d2(裏面の孔径d2)がいずれも、この貫通孔の最大孔径Dよりも小さく、上記各貫通孔に無機固体電解質が充填されている。本発明において上記貫通孔のd1、d2、及びDは、無機固体電解質が充填された固体電解質含有シートの状態における各孔径を意味するが、これらは通常は、無機固体電解質を充填する前の支持体における各孔径と同じ大きさとなる。充填された無機固体電解質間には空隙があってもよいが、空隙が少ないことが好ましい。
d1、d2及びDは、固体電解質含有シートを構成する支持体において、無作為に、10個の貫通孔(無作為に抽出した10個の貫通孔)を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で測定して得られた値の算術平均である。なお、貫通孔の数が10個未満の場合、全ての貫通孔を測定して得られた値の算術平均である。
d1及びd2は同じでも異なってもよい。d1及びd2は、固体電解質含有シートの性能試験の内容及び製造する全固体二次電池の大きさに合わせて適宜に決められる。例えば、0.05~18μmであり、0.1~13μmが好ましく、0.8~8μmがより好ましい。
最大孔径Dは、表面に平行な仮想面のうち最大の面積を有する仮想面上にある開口の等面積円相当径を意味する。すなわち、支持体の表面に平行な断面のうち、貫通孔により形成される開口部の面積が最大となる断面において、この断面における開口部の等面積円相当径を意味する。
上記「等面積円相当径」とは、上記断面の面積と同じ面積を持つ円の直径を意味する。
Dは、固体電解質含有シートの性能試験の内容及び製造する全固体二次電池の大きさに合わせて適宜に決められる。例えば、0.1~20μmとすることができ、0.5~15μmが好ましく、1~12μmがより好ましい。
ここで「孔径間距離L」とは、貫通孔の表面及び裏面の開口面の重心同士を結んだ線Aと、最近接の貫通孔の表面及び裏面の開口面重心同士を結んだ線Bとの距離のことを示す。上記「距離」とは、支持体の表面に平行な、線Aと線Bとを結ぶ線分Cの長さを意味する。線Aと線Bとが平行でない場合、支持体の厚さ範囲内における線分Cの最大の値が上記「距離」である。また、上記表面及び裏面の「開口面の重心」とは、開口面は実際には空洞なのであるが、この開口面空洞部分に開口面と同じ形状の平面が存在する(開口面を塞ぐ平面が存在する)と想定した場合の、この平面が仮に一定の厚みを有する重量を持つ平面体であると想定したときの、その平面体の仮想重心を意味する。
Lは、無作為に抽出した10個のLをSEMで測定して得られた値の算術平均である。なお、Lが10未満の場合、全てのLの平均である。
Lは、固体電解質含有シートの性能試験の内容及び製造する全固体二次電池の大きさに合わせて適宜に決められる。例えば、0.2~100μmであり、1~50μmが好ましく、2~40μmがより好ましい。
特に、d1及びd2がDの0.5倍以上0.9倍以下であって、孔径間距離LとDとの差(LからDを差し引いた値)が0.1μm以上5μm以下であると、固体電解質含有シート表面に対する貫通孔の開口率が高くなり、全固体二次電池の固体電解質層としたときに、高い電池性能を維持できる。
本発明の固体電解質含有シートが全固体二次電池の固体電解質層に用いられることから、上記支持体は絶縁性であることが好ましく、体積固有抵抗率が1×1012(Ω・cm)以上であることが好ましく、1×1014(Ω・cm)以上であることがより好ましい。上限は、1×1019(Ω・cm)以下であることが実際的である。
上記支持体を構成する材料は、一定の剛性と柔軟性等を兼ね備えている観点から有機材料であることが好ましい。例えば、ポリイミド化合物、ポリスチレン化合物、ポリ―ε―カプロラクトン化合物、ポリアクリルアミド化合物、及びポリエチレン化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記支持体の厚さ、すなわち、本発明の固体電解質含有シートの厚さ(図1~3におけるt)は特に制限されないが、例えば、5~250μmであり、10~100μmが好ましく、15~40μmがより好ましい。
なお、図1~3において、1a~1cは支持体を示し、3a~3cは無機固体電解質を示す。
本発明の全固体二次電池用電極シートは、本発明の固体電解質含有シート(固体電解質層)と電極活物質層とを有する。
本発明の全固体二次電池用電極シートとして、例えば、集電体上に電極活物質層を有し、この電極活物質層上に固体電解質層を有するシート、及び、集電体上に導電体層を有し、この導電体層上に電極活物質層を有し、この電極活物質層上に固体電解質層を有するシートが挙げられる。
この導電体層としては、例えば、特開2013-23654号公報及び特開2013-229187号公報に記載の導電体層(カーボンコート箔)が挙げられる。
また、上記電極活物質層及び集電体は、通常の全固体二次電池に使用される電極活物質層及び集電体を用いることができる。例えば、特開2015-088486号公報に記載の電極活物質層及び集電体を用いることができる。
なお、本発明の説明において、電極活物質層(正極活物質層(以下、正極層とも称す。)と負極活物質層(以下、負極層とも称す。))を活物質層と称することがある。
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に対向する負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間に配置された固体電解質層とを有する。正極活物質層は、必要により正極集電体上に形成され、正極を構成する。負極活物質層は、必要により負極集電体上に形成され、負極を構成する。
本発明の全固体二次電池は、上記本発明の全固体二次電池用電極シートを有する。
負極活物質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に制限されない。各層の厚さは、一般的な全固体二次電池の寸法を考慮すると、それぞれ、10~1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。なお、固体電解質層の厚さは、上記tと同義であり、好ましい範囲も同じである。
正極活物質層及び負極活物質層は、それぞれ、固体電解質層とは反対側に集電体を備えていてもよい。
本発明の全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることが好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金又は、ステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
全固体二次電池100は電気抵抗が小さく、優れた電池性能を示す。正極活物質層7、固体電解質層6及び負極活物質層5が含有する無機固体電解質は、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質層又は電極活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に制限されないが、1~500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
以下、本発明の固体電解質含有シートが有する貫通孔に充填される成分及び充填されうる成分について説明する。
本発明の固体電解質含有シートの貫通孔には、無機固体電解質が充填されている。
本発明において、無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンが解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導性を有することが好ましい。
上記無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。本発明において、より電池電圧を高めるため、硫化物系無機固体電解質が好ましく用いられる。
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
La1Mb1Pc1Sd1Ae1 (1)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1~e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1~12:0~5:1:2~12:0~10を満たす。a1は1~9が好ましく、1.5~7.5がより好ましい。b1は0~3が好ましく、0~1がより好ましい。d1は2.5~10が好ましく、3.0~8.5がより好ましい。e1は0~5が好ましく、0~3がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(Li2S)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS2、SnS、GeS2)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10-6S/cm以上であることが好ましく、5×10-6S/cm以上であることがより好ましく、1×10-5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、1×10-1S/cm以下であることが実際的である。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li3PO4); リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON; LiPOD1(D1は、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuから選ばれる1種以上の元素である。)等が挙げられる。
更に、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C及びGaから選ばれる1種以上の元素である。)等も好ましく用いることができる。
固体電解質層の単位面積(cm2)当たりの無機固体電解質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができ、例えば、1~100mg/cm2とすることができる。
本発明の固体電解質含有シートが有する貫通孔は、バインダーを含有することが好ましい。バインダーを構成する重合体は、どのような形態でもよく、例えば、固体電解質含有シート又は全固体二次電池中において、粒子状であっても不定形状であってもよい。バインダーを構成する重合体は、粒子状が好ましい。
本発明で使用するバインダーを構成する重合体が樹脂粒子である場合、この樹脂粒子を形成する樹脂は、有機樹脂であれば特に限定されない。
このバインダーを構成する重合体は、特に制限はなく、例えば、下記の樹脂からなる粒子の形態が好ましい。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。
アクリル樹脂としては、各種の(メタ)アクリルモノマー類、(メタ)アクリルアミドモノマー類、及びこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体(好ましくは、アクリル酸とアクリル酸メチルとの共重合体)が挙げられる。
また、そのほかのビニル系モノマーとの共重合体(コポリマー)も好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとアクリロニトリルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチルとアクリロニトリルとスチレンとの共重合体が挙げられる。本発明において、コポリマーは、統計コポリマー及び周期コポリマーのいずれでもよく、ブロックコポリマーが好ましい。
その他の樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース誘導体樹脂等が挙げられる。
バインダーは、1種を単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
本発明の固体電解質含有シートは、貫通孔に無機固体電解質と活物質が充填された電極活物質層とすることもできる。この活物質は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な物質である。このような活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられる。正極活物質としては、金属酸化物(好ましくは遷移金属酸化物)が好ましく、負極活物質としては、炭素質材料、金属酸化物若しくはSn、Si、Al及びIn等のリチウムと合金形成可能な金属が好ましい。
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、又は、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0~30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3~2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8及びLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4及びLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類並びにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩及びLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4及びLi2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体及びリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、Si、Al及びIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li2B4O7、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、B2O3等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
本発明の固体電解質含有シートが有する貫通孔には、リチウム塩(支持電解質)が充填されてもよい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、特開2015-088486の段落0082~0085記載のリチウム塩が好ましい。
固体電解質含有シートが有する貫通孔にリチウム塩が充填される場合、リチウム塩の含有量は、無機固体電解質100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
本発明の固体電解質含有シートが有する貫通孔には、イオン伝導度をより向上させるため、イオン液体が充填されてもよい。イオン液体としては、特に限定されないが、イオン伝導度を効果的に向上させる観点から、上述したリチウム塩を溶解するものが好ましい。例えば、下記のカチオンと、アニオンとの組み合わせよりなる化合物が挙げられる。
カチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ホスホニウムカチオン及び第4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。ただし、これらのカチオンは以下の置換基を有する。
カチオンとしては、これらのカチオンを1種単独で用いてもよく、2以上組み合わせて用いることもできる。
好ましくは、四級アンモニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン又はピロリジニウムカチオンである。
上記カチオンが有する置換基としては、アルキル基(炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。)、ヒドロキシアルキル基(炭素数1~3のヒドロキシアルキル基が好ましい。)、アルキルオキシアルキル基(炭素数2~8のアルキルオキシアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルキルオキシアルキル基がより好ましい。)、エーテル基、アリル基、アミノアルキル基(炭素数1~8のアミノアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアミノアルキル基が好ましい。)、アリール基(炭素数6~12のアリール基が好ましく、炭素数6~8のアリール基がより好ましい。)が挙げられる。上記置換基はカチオン部位を含有する形で環状構造を形成していてもよい。なお、上記エーテル基は、他の置換基と組み合わされて用いられる。このような置換基として、アルキルオキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、四フッ化ホウ素イオン、硝酸イオン、ジシアナミドイオン、酢酸イオン、四塩化鉄イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブチルメタンスルホニル)イミドイオン、アリルスルホネートイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホネートイオン等が挙げられる。
アニオンとしては、これらのアニオンを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いることもできる。
好ましくは、四フッ化ホウ素イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン又はヘキサフルオロリン酸イオン、ジシアナミドイオン及びアリルスルホネートイオンであり、さらに好ましくはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン又はビス(フルオロスルホニル)イミドイオン及びアリルスルホネートイオンである。
固体電解質層中のイオン液体の含有量は、無機固体電解質100質量部に対して0質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が最も好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
リチウム塩とイオン液体の質量比は、リチウム塩:イオン液体=1:20~20:1が好ましく、1:10~10:1がより好ましく、1:7~2:1が最も好ましい。
本発明の固体電解質含有シートを製造する方法は、得られる固体電解質含有シートにおいて、支持体のd1、d2及びDを上述の関係にすることができれば、特に制限されない。支持体の製造方法としては、例えば、貫通孔の表面孔径、最大孔径ならびに貫通孔の密度の制御が可能でかつ大面積が作れる点で、特開2007-291367号公報、特に段落[0016]~段落[0018]に記載された事項を参照して製造することができる。すなわち、支持体の構成材料を溶解してなる溶液をキャスト法により基材上に塗布してキャスト膜を形成し、次いでこのキャスト膜に結露により水滴を生じさせ、さらにこの水滴を成長させてキャスト膜中に水滴を配した状態とし、最後に水滴を蒸発させることにより所望の孔を有する支持体を得ることができる。キャスト膜中の溶媒については、水滴の蒸発工程の段階では蒸発させておくことが好ましいが、多少残留していても所望の孔を形成できれば問題はない。通常は、水滴成長の間、及びその後の段階の少なくともいずれかにおいて溶媒を蒸発させる。
本発明において、貫通孔を形成する条件は、上記公報に記載の条件のうち、複数の貫通孔が独立孔として形成される条件に設定する。
以下、本発明の固体電解質含有シートに用いる支持体の形成方法の一例は実施例に後述する。
貫通孔を有する支持体を形成した後に、貫通孔に無機固体電解質を充填する。具体的には、例えば、(1)粉状の無機固体電解質を貫通孔に内蔵させたシートをプレスする、又は、(2)無機固体電解質を分散媒中に分散させたスラリーを支持体に塗布し、乾燥させることにより無機固体電解質を貫通孔に充填することができる。乾燥後プレスしてもよい。プレス圧は後記を参照することができる。
上記(1)及び(2)は、貫通孔中の無機固体電解質の充填率を高めるために充填処理を繰り返し行うこともできる。繰り返す回数としては、2~4回が好ましく、2~3回がより好ましく、2回がさらに好ましい。回数に応じて、無機固体電解質の体積平均粒子径を小さくし、より無機固体電解質の充填率を高めることもできる。例えば、2回目に充填する無機固体電解質の体積平均粒子径を、1回目に充填する無機固体電解質の体積平均粒子径の3/4程度にすることができる。
本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法は、本発明の固体電解質含有シートの製造方法により得られた固体電解質含有シートを、電極活物質層上に積層する工程を含む。本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法は、上記固体電解質含有シートの製造方法を含む以外は、常法によって行うことができる。
なお、本発明の全固体二次電池用電極シートの電極活物質層は、通常の全固体二次電池を構成する電極活物質層を用いることができる。このような電極活物質層を形成するための電極用組成物として、例えば、特開2015-088486号公報に記載の電極用組成物を用いることができる。
本発明の全固体二次電池の製造方法は、本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法を含む。本発明の全固体二次電池の製造方法は、上記全固体二次電池用電極シートの製造方法を含む以外は、常法によって行うことができる。
電極用組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布及びバーコート塗布が挙げられる。
このとき、電極用組成物は、塗布した後に乾燥処理を施してもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
また、塗布した電極用組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30~300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
硫化物系無機固体電解質は、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231-235及びA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872-873の非特許文献を参考にして合成した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP-7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li-P-S系ガラス、「LPS」とも称する。)6.20gを得た。
<バインダAを構成するポリマーの合成例>
還流冷却管、ガス導入コックを付した2L三口フラスコに、マクロモノマーM-1の40質量%ヘプタン溶液を7.2g、アクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)を12.4g、アクリル酸(富士フイルム和光純薬社製)を6.7g、ヘプタン(富士フイルム和光純薬社製)を207g、アゾイソブチロニトリルを1.4g添加し、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に、100℃に昇温した。別容器にて調製した液(マクロモノマーM-1の40質量%ヘプタン溶液を93.1g、アクリル酸メチルを222.8g、アクリル酸を120.0g、ヘプタン300.0g、アゾイソブチロニトリル2.1gを混合した液)を4時間かけて滴下した。滴下完了後、アゾイソブチロニトリル0.5gを添加した。その後100℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却し、ろ過することでバインダAの分散液を得た。固形成分濃度は39.2質量%であった。
12-ヒドロキシステアリン酸(富士フイルム和光純薬社製)の自己縮合体(GPCポリスチレンスタンダード数平均分子量:2,000)にグリシジルメタクリレート(東京化成工業社製)を反応させマクロモノマーとしてそれをメタクリル酸メチルとグリシジルメタクリレート(東京化成工業社製)と1:0.99:0.01(モル比)の割合で重合したポリマーにアクリル酸(富士フイルム和光純薬社製)を反応させたマクロモノマーM-1を得た。このマクロモノマーM-1のSP値は9.3、数平均分子量は11000であった。
下記に、バインダAを構成するポリマー及びマクロモノマーM-1の推定構造式を示す。
還流冷却管、ガス導入コックを付した1Lの3つ口フラスコにヘプタンを200質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に室温から80℃に昇温した。攪拌しているヘプタン中に、別容器にて調製した液(アクリル酸ブチル(富士フイルム和光純薬社製)90質量部、メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)20質量部、アクリル酸(富士フイルム和光純薬社製)10質量部、B-27(後記合成品)を20質量部、マクロモノマーMM-1を60質量部(固形分量)、重合開始剤V-601(商品名、富士フイルム和光純薬社製)を2.0質量部混合した液)を2時間かけて滴下し、その後80℃で2時間攪拌した。その後、得られた混合物にV-601をさらに1.0質量部添加し、90℃で2時間攪拌した。得られた溶液をヘプタンで希釈することで、バインダBの分散液を得た。
1Lの3つ口フラスコにコレステロール(東京化成工業社製)80g、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)(アルドリッチ社製)を50g、4-ジメチルアミノピリジン(東京化成工業社製)を5g、ジクロロメタンを500g加えた後、20℃で5分攪拌した。攪拌している溶液中に1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業社製)52gを30分かけて添加し、20℃で5時間攪拌した。その後0.1M塩酸で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧留去を行った。得られたサンプルをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでB-27を得た。
還流冷却管、ガス導入コックを付した1Lの3つ口フラスコにトルエンを190質量部加え、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に室温から80℃に昇温した。攪拌しているトルエン中に、別容器にて調製した液(下記処方α)を2時間かけて滴下し、80℃で2時間攪拌した。その後、V-601(富士フイルム和光純薬社製)を0.2質量部添加し、さらに95℃で2時間攪拌した。攪拌後95℃に保った溶液に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(東京化成工業社製)を0.025質量部、メタクリル酸グリシジル(富士フイルム和光純薬社製)を13質量部、テトラブチルアンモニウムブロミド(東京化成工業社製)を2.5質量部加えて120℃で3時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却したのちメタノールに加えて沈殿させ、沈殿物をろ取し、メタノールで2回洗浄後、ヘプタン300質量部を加えて溶解させた。得られた溶液を減圧下で濃縮することでマクロモノマーMM-1の溶液を得た。固形分濃度は43.4質量%、SP値は9.1、質量平均分子量は16,000であった。得られたマクロモノマーMM-1を以下に示す。
メタクリル酸ドデシル(富士フイルム和光純薬社製) 150質量部
メタクリル酸メチル (富士フイルム和光純薬社製) 59質量部
3-メルカプトイソ酪酸 (東京化成工業社製) 2質量部
V-601 (富士フイルム和光純薬社製) 1.9質量部
(実施例1)
以下のようにして、図1に示す、実施例1の固体電解質含有シートを作製した。
まず、図6に記載の装置を用いて貫通孔を有する支持体を作製し、次いで貫通孔に無機固体電解質を充填した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを130個投入し、LPS 3.0g、分散媒としてトルエン9.0gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP-7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで30分混合し、粒径2.0μmのLPSを含有する、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物(固体電解質充填用組成物)を調製した。
作製した固体電解質組成物をシャーレに投入し、支持体を30分間浸漬させた。そのあと、支持体を取り出し、液切りを30秒間行った後、150℃ホットプレートにて30分間乾燥させ分散媒を揮発させた。乾燥した支持体の上下をアルミ箔で挟み、150℃5分間で20MPaで加圧し、縦50mm、横50mm、厚さ20μmの実施例1の固体電解質含有シートを作製した。
実施例1の支持体製作条件を調整してd1及びLを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6の固体電解質含有シートを作製した。
上記固体電解質組成物の調製において、LPS 3.0gに代えてLPS 2.94gと、下記表1に記載のバインダー 0.06gとを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例7及び8の固体電解質含有シートを作製した。
支持体の高分子化合物を、PCLに代えてポリイミド(河村産業社製 KPI-MX300F(商品名))にし、溶媒を、ジクロロメタンに代えてメチルエチルケトンにした以外は、実施例3と同様にして実施例9の固体電解質含有シートを作製した。
実施例3と同様にして、実施例10~12の固体電解質含有シートを作製した。
作製した固体電解質組成物をシャーレに投入し、支持体を30分間浸漬させた。そのあと、支持体を取り出し、液切りを30秒間行った後、150℃ホットプレートにて30分間乾燥させ分散媒を揮発させた。乾燥した支持体の上下をアルミ箔で挟み、150℃5分間で20MPaで加圧した。このようにして無機子固体電解質を充填した支持体を、上記浸漬から加圧までの同じ過程に付し、縦50mm、横50mm、厚さ20μmの実施例13の固体電解質含有シートを作製した。
上記固体電解質組成物の調製において、LPSに代えてLLZ(Li7La3Zr2O12(ランタンジルコン酸リチウム 平均粒子径5.06μm 豊島製作所)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして実施例14の固体電解質含有シートを作製した。
ガラス基板上にポリイミドシート(ポリイミドフィルムカプトン(登録商標)、東レ・デュポン社製)を固定し、その表面にクロム蒸着、続いてフォトレジスト(OFPR-800LB(商品名)、東京応化工業社製)を塗布した。その後、一辺10μm角の孔を有する開口率70%のパターンが描写されたマスクを用いフォトリソグラフィを行った。ウェットエッチングによりクロムを除去し、さらにドライエッチングでポリイミド部の除去を行った。その後、再びウェットエッチングにより不要なクロムを除去することで、50mm角、開口率は70%の貫通孔を有するポリイミド支持体を得た。この支持体を用いた以外は実施例1と同様にして、縦50mm、横50mm、厚さ20μmの比較例1の固体電解質含有シートを作製した。
上記固体電解質組成物の調製において、LPS 3.0gに代えてLPS 2.94gと、下記表1に記載のバインダー 0.06gとを用いたこと以外は上記と同様にして固体電解質組成物を調製した。この固体電解質組成物を用いて貫通孔を充填したこと以外は、比較例1と同様にして固体電解質含有シートを作製した。
ネガ型感光性ポリイミド樹脂を用い、以下のようにして支持体を作製した。
ポリイミド前駆体100質量部に対して、光増感剤と光重合開始剤を0.5~10質量部加え、塗布可能な粘度になるまで有機溶剤を適宜加えて樹脂組成物を得た。尚、前記ポリイミド前駆体は、以下のように合成を行った。まず、撹拌器及び温度計を備えたフラスコ内を窒素ガスで置換した。その後、上記フラスコ内に、3,3’-ジアミノベンジジン12.86gとN-メチル-2-ピロリドン200gとを加えた。このフラスコ内の混合物の温度を10℃以下に保持しながら、さらにイソシアナトエチルメタクリレート18.60gを添加して、3時間常温で撹拌した。さらに、フラスコ内に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル6.00gと、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン2.49gとを添加した後、さらに3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.22gをフラスコ内の反応液の温度が40℃を越えないように冷却しながら添加した。添加終了後、室温でフラスコ内の混合物を10時間撹拌して、ポリイミド前駆体を得た。
次に、上記樹脂組成物を離型処理を施した平滑なガラス基板上に乾膜の厚さが20μmになるようにキャスト法により塗布し、100~180℃の温度で30分~2時間乾燥させた。その後、5μmピッチで、半径10μmの円形状を配置したパターンを有するネガマスクを樹脂表面に密着させ、高圧水銀ランプを用いて100~3000mJ/cm2の紫外線を照射した。
紫外線照射後、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いて、現像を行い、50~80℃の温風で15~30分間、支持体を十分乾燥させた。その後、上記支持体を200~400℃の温度で1~3時間加熱することにより、イミド化反応を促進させ、パターン化されたポリイミド樹脂の縦50mm、横50mm厚さ20μm、開口率70%の支持体を得た。この支持体を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の固体電解質含有シートを作製した。
比較例2で調製した固体電解質組成物を用いて貫通孔にLPSとバインダーを充填したこと以外は、比較例3と同様にして比較例4の固体電解質含有シートを作製した。
LPSに代えてLLZを用いた以外は、比較例1と同様にして比較例5の固体電解質含有シートを作製した。
上記各実施例及び比較例において、支持体の貫通孔におけるd1とd2は同じ値であった。
(実施例1~9、11、13、14及び比較例1~5で使用する正極シートの作製)
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi-P-S系ガラス2.8g、バインダAの分散液を固形分換算で0.2g、分散媒としてトルエン12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP-7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合した。その後、活物質としてNMC(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2(アルドリッチ社製))7.0g、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ社製)を0.2g容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP-7に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで10分間混合を続け、正極用組成物を調製した。
上記で調製した正極用組成物に、実施例1と同様にして作製した厚さ80μmの支持体を30分間浸漬させた。支持体を取り出し、液切りを30秒間行った後、110℃ホットプレートにて1時間乾燥させ溶媒を揮発させた。乾燥した正極シートの上下をアルミ箔で挟み、120℃で1分間、20MPaで加圧し、正極集電体上に正極活物質層を有する正極シートを作製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi-P-S系ガラス2.8g、バインダBの分散液を固形分換算で0.2g、分散媒としてヘプタン12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP-7に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合した。その後、活物質としてCGB20(商品名、日本黒鉛社製)7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP-7に容器をセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間混合を続け負極用組成物を調製した。
上記で調製した負極用組成物に、実施例1と同様にして作製した厚さ60μmの支持体を30分間浸漬させた。そのあと、支持体を取り出し、液切りを30秒間行った後、110℃ホットプレートにて1時間乾燥させ溶媒を揮発させた。乾燥した負極シートの上下をアルミ箔で挟み、120℃で1分間、20MPaで加圧し、負極集電体上に正極活物質層を有する正極シートを作製した。
図5に示す層構成を有する全固体二次電池を形成した。
上記で得られた固体電解質含有シート(固体電解質層)と負極シートの負極活物質層が接するように重ね、50MPaで10秒加圧した。負極集電体4/負極活物質層5/固体電解質層6からなる部材を作製し、直径15mmΦに切り出した。その後、2032型コインケース内で直径14mmΦに切り出した正極シートの正極活物質層7と固体電解質層6が接するように重ねて全固体二次電池用積層体とし、600MPaで加圧後、コインケースをかしめ、全固体二次電池を作製した。
固体電解質含有シートから、10mm×30mmの試験片を切り出し、短辺側の端部を固定し、他方の短辺側の端部を掴んで試験片を水平にした後離した。水平にした際の試験片に対する垂線と、離した後の試験片とのなす角度を測定した。この角度が下記評価基準のいずれに含まれるかで評価した。AA、A、B及びCが本試験の合格である。
-評価基準-
AA:70~90度
A:50~69度
B:40~49度
C:30~39度
D:15~29度
E:0~14度
角度が大きい程、試験片が水平にした際の状態に近く、自立膜性が優れる。
JIS K5600-5-1(1999)に準拠し、マンドレル試験機を用いた耐屈曲性試験により、固体電解質含有シートの可撓性を評価した。
幅50mm、長さ100mmの短冊状の固体電解質含有シートを用い、直径違いのマンドレルを用いて、屈曲させた後、貫通孔から無機固体電解質塊が脱落して貫通孔内に空洞が生じたか否かを目視で観察した。空洞が生じていない場合、マンドレルの径(単位mm)を25、20、16、12、10、8、6、5、4、3、2と徐々に小さくしていき、空洞が生じたマンドレルの径を記録した。上記空洞が発生したマンドレルの径のうち最大ものが下記評価基準のいずれに含まれるかで評価した。AA、A、B及びCが本試験の合格である。
AA:5mm未満
A:5mm以上10mm未満
B:10mm以上16mm未満
C:16mm以上20mm未満
D:20mm以上40mm未満
E:40mm以上
全固体二次電池を、東洋システム社製の充放電評価装置「TOSCAT-3000」(商品名)により測定した。全固体二次電池を電池電圧が4.2Vになるまで電流値0.2mAで充電した後、電池電圧が3.0Vになるまで電流値2.0mAで放電した。放電開始10秒後の電池電圧を以下の基準で読み取り、抵抗を評価した。
-評価基準1-
A:4.05V以上4.1V未満
B:4.0V以上4.05V未満
C:3.95V以上4.0V未満
D:3.9V以上3.95V未満
-評価基準2-
A:3.75V以上3.8V未満
B:3.7V以上3.75V未満
C:3.65V以上3.7V未満
D:3.6V以上3.65V未満
実1~14:実施例1~14
比1~5:比較例1~5
d1=d2
PVdF:ポリビニレンジフルオリド
LLZ:Li7La3Zr2O12(ランタンジルコン酸リチウム 平均粒子径5.0μm 豊島製作所
バインダーを用いた実施例及び比較例においては、無機固体電解質を98質量%、バインダー2質量%を用いた。
2a、2b、2c 貫通孔
3a、3b、3c 無機固体電解質
4 負極集電体
5 負極活物質層
6 固体電解質層
7 正極活物質層
8 正極集電体
9 作動部位
100 全固体二次電池
Claims (14)
- 複数の貫通孔を有する電子絶縁性支持体を有する固体電解質含有シートであって、
前記各貫通孔において、表面の孔径d1及び裏面の孔径d2が、最大孔径Dの0.3倍以上0.92倍以下であり、前記各貫通孔に無機固体電解質が充填された、固体電解質含有シート。 - 前記d1及びd2が、前記Dの0.5倍以上0.9倍以下である、請求項1に記載の固体電解質含有シート。
- 前記支持体の孔径間距離Lと前記Dとの差が0.01μm以上10μm以下である、請求項1又は2に記載の固体電解質含有シート。
- 前記貫通孔にバインダーを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電解質含有シート。
- 前記無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体電解質含有シート。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の固体電解質含有シートと、電極活物質層とを有する全固体二次電池用電極シート。
- 請求項6に記載の全固体二次電池用電極シートを有する全固体二次電池。
- 請求項7に記載の全固体二次電池を有する電子機器。
- 請求項7に記載の全固体二次電池を有する電気自動車。
- 支持体の構成材料を溶解してなる溶液を用いて形成したキャスト膜に、結露により水滴を生じさせ、次いでこの水滴を成長させてキャスト膜中に水滴を配した状態とし、次いで水滴を蒸発させて貫通孔を形成して支持体を得る工程と、
前記支持体の貫通孔内に無機固体電解質を充填する工程とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体電解質含有シートの製造方法。 - 請求項10に記載の固体電解質含有シートの製造方法により固体電解質含有シートを得て、当該固体電解質含有シートを用いて全固体二次電池用電極シートを製造することを含む、全固体二次電池用電極シートの製造方法。
- 請求項11に記載の全固体二次電池用電極シートの製造方法により全固体二次電池用電極シートを得て、当該全固体二次電池用電極シートを用いて全固体二次電池を製造することを含む、全固体二次電池の製造方法。
- 請求項12に記載の全固体二次電池の製造方法により全固体二次電池を得て、当該全固体二次電池を電子機器に組み込むことを含む、電子機器の製造方法。
- 請求項12に記載の全固体二次電池の製造方法により全固体二次電池を得て、当該全固体二次電池を電気自動車に組み込むことを含む、電気自動車の製造方法。
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