JPWO2019142805A1 - 含界面活性剤製品用包装材 - Google Patents
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Abstract
Description
近年において、上記のような滑り性や非付着性を付与するための手段として、基材の表面に、基材上を流れる流動性物質に対して滑り性或いは非付着性を示す液体の層(潤滑液層)を設けるという手法が種々提案されているが、かかる手法では、潤滑液が流れ落ちることなく、如何にして安定に保持させるかが課題となっている。
しかしながら、かかる手段では、基材表面を形成する樹脂中にシリカ等の微粒子を配合し、この微粒子の分散を表面に反映させるため、粗面の程度をコントロールすることが非常に難しいという問題がある。また、ブラスト処理などの表面処理によって粗面を形成する手段もあるが、容器の分野では適用し難いばかりか、依然として粗面の程度を安定にコントロールすることが困難である。
さらに、特許文献4には、基材表面を多孔質高分子膜により形成し、該高分子膜の内部に潤滑液を吸収させることにより、基材表面に潤滑液層を安定に保持させることが提案されている。
しかしながら、これらの手段では、基材表面に潤滑液が浸透或いは吸収されるため、潤滑液層が経時的に減少していくという問題がある。このため、初期状態では、良好な滑り性や付着防止性を示すものの、これら特性が徐々に低下していくという不都合を生じてしまう。
かかる方法では、潤滑液がベース膜に浸透もしくは吸収(膨潤)することによりベース膜上に保持されるというものではないため、潤滑液の層が経時的に消耗するという不都合を有効に抑制し、長期にわたって、滑り性や付着防止性を発現させることができる。
しかしながら、この方法では、π電子を有する官能基によるπ相互作用により潤滑液を保持させるため、表面に保持される潤滑液がπ電子と相互作用を示すものに制限され、潤滑液の種類が制限される。このため、本発明者等の研究によると、化粧品、例えばシャンプーなどの界面活性剤を含む物質に対して優れた良好な滑り性や付着防止性を示すシリコーンオイルを潤滑液として使用することができないという欠点がある。例えば、特許文献5では、潤滑液としてデシルトリメトキシシランが使用されているが、かかる潤滑液は、シャンプーなどの界面活性剤を含む流動体に対して、滑り性や付着防止性を発揮することができない。おそらく、このような潤滑液は、界面活性剤との親和性が高く、界面活性剤を含む物質が接触した時、かかる物質と一体化し、表面から掻き取られてしまうためであると考えられる。
さらに、上記のベース膜は、π電子含有官能基を有することにより表面張力が大きくなるため、包装される製品の付着を促進する恐れがある。また、π電子含有官能基を有する化合物(例えばフェニルエトキシシラン)を含む塗布液を塗布し、基材表面とのカップリング反応などにより基材表面に形成するため、ベース膜処理が極めて煩雑となり、例えば未反応の化合物を取り除くため、ベース膜形成後、有機溶媒を用いての洗浄工程が必要となってしまい、コストや製造設備等の観点から工業的な実施に難があるという問題もある。
本発明の他の目的は、格別の反応を必要とせず、通常の塗布・乾燥により容易に上記の滑り性や付着防止性を示す表面が形成されている含界面活性剤製品用包装材を提供することにある。
(1)非芳香族シリコーン系重合体が、下記式(1):
R2SiO2/2 (1)
式中、Rは、非芳香族基、特にアルキル基である、
で表されるD単位を含有していること、
(2)記固体層の表面自由エネルギーが、35mJ/m2以下であること、
(3)記固体層の二乗平均平方根粗さSqが、0.3μm以下であること、
(4)前記固体層の波長400〜800nmでの光の平均透過率が、80%以上であること、
(5)前記固体層が、プラスチック基材、ガラス基材、金属基材または紙基材表面に形成されていること、
(6)容器の形態を有していること、
(7)前記含界面活性剤製品が、流動体であること、
(8)前記含界面活性剤製品が、化粧品であること、
が好適である。
本発明の包装材においては、包装される製品と接触する面にシリコーンオイルの層1が設けられているため、含界面活性剤製品に対して、優れた付着防止性や滑り性が発揮される。
このようなシリコーンオイルは、例えば25℃での動粘度が2〜1000mm2/sの範囲にある流動体であり、包装される製品中に存在している界面活性剤により掻き取られることなく、安定に表面固体層3上に存在するものであり、しかも、含界面活性剤に対して優れた付着防止性や滑り性を示す。例えば、このシリコーンオイルの粘度が、上記範囲よりも小さいと、シリコーンオイル層1が表面固体層3上から脱落し易くなり、付着防止性や滑り性が不安定となる傾向がある。また、シリコーンオイルの粘度が上記範囲よりも大きいと、シリコーンオイルの流動性が低く、固体に近い状態となり、含界面活性剤製品に対する滑り性が低下する。
(RO)3Si−(R2SiO)n−Si(OR)3
式中、Rは、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、
ブチル基等の炭素数4以下の低級アルキル基であり、
nは、前述した粘度となるようなSiO連鎖の数を示す。
本発明においては、特にジメチルシリコーンオイル(上記式中のRがメチル基)が、最も安価に且つ容易に入手できるという点で好適に使用される。
また、上記のシリコーンオイルは界面活性剤製品に含まれる成分と同一の成分であってもよく、シリコーンオイル層は含界面活性剤製品に含まれる成分から形成されたものであってもよい。
本発明において、表面固体層3は、非芳香族シリコーン系重合体含有してなる。即ち、このシリコーン重合体は、SiO結合を有するものであるが、少なくとも芳香族基を含有するものであってはならない。芳香族基を有するシリコーン重合体は、前述したシリコーンオイルとの親和性が乏しく、シリコーンオイルとの間に十分な分子間力が作用しないため、シリコーンオイル層1を安定に保持することができず、また芳香族基を有することにより表面張力が大きくなるため、包装される製品が付着しやすくなり、例えば、初期状態では優れた滑り性や付着防止能を示すとしても、これらの性能が短期間で消失してしまう。
上記のM単位は、1官能単位であり、式:R3SiO1/2で表され、シリコーン分子鎖の末端に存在する単位である。
上記のD単位は、2官能単位であり、式:R2SiO2で表される。
上記のT単位は、3官能単位は、式:RSiO3/2で表される。
上記のQ単位は、4官能単位であり、式:SiO4/2で表される。
尚、上記式中のRは、通常、有機基であるが、本発明で用いるシリコーン系重合体は、芳香族基を有していないので、上記のRは、芳香族環を有していない有機基であり、芳香族環を有していない基であれば、(メタ)アクリル基、エポキシ基、イソシアネート基などの反応性を有する基であってもよいが、多くは、メチル基に代表されるアルキル基、特に炭素数が4以下のアルキル基である。また、シリコーン重合体の特性が大きく損なわれない限り、Rの一部が水素原子であってもよい。
例えば、前述したシリコーンオイルも上記のシリコーン重合体に属するポリマーであり、D単位の連鎖の末端にT単位が結合した線状構造を有しているが、このポリマーは、オイル(液体)であり、重合度が低く、表面固体層3を形成するものではない。
尚、このような表面固体層3は、上述した非芳香族系シリコーン重合体の優れた特性を損なわない限りにおいて、他の樹脂、例えば、芳香族系シリコーン樹脂やその他の熱可塑性樹脂を少量含んでいてもよい。
尚、塗布液のコーティングは、スプレー噴霧、刷毛塗、ディッピング、ロール塗等、基材5の形態に応じて適宜の手段を採用することができる。
また、表面固体層3は、Tダイ法、カレンダー法又はインフレーション法などの方法により成形することもできる。
さらに、表面固体層3と基材5を有する多層構造は、溶融共押し出し、ドライラミネーションなどの方法により成形することができる。
上述した表面固体層3が表面に形成される基材5は、この包装材の形態に応じて、プラスチック基材、ガラス基材、金属基材、紙基材であってよく、包装材の形態に適した任意の材料から形成されていてよい。
例えば、包装材の形態としては、所謂容器、ラッピングフィルム、蓋材などが挙げられるが、本発明の包装材は、含界面活性剤製品に適用されることから、特に容器の形態を有していることが最適である。
このような含界面活性剤製品としては、界面活性剤が含まれている限り、特に制限されないが、特に、シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料、整髪料、髭剃り剤、化粧水、美容液、コンディショナー等の流動性を有する化粧品、特に高粘性の化粧品に適用される。
特に、本発明の包装材は、シャンプーやコンディショナーが収容された詰替用のパウチとして最も好適に適用される。
以下の実施例において、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル(25℃での動粘度:20mm2/s,信越化学工業社製KF−96−20cs)を用いた。
また、以下の実施例等で行った各種の特性は、以下の方法で評価した。
後述の方法で作製した包装材(フィルム)において、ジメチルシリコーンオイルを塗布する前の固体層表面に対する純水(H2O)及びジヨードメタン(CH2I2)の接触角を、自動接触角計(協和界面科学社製 DropMaster700)によって実測した。
こうして測定された接触角のデータから、接触角計付属のソフトウェア(解析ソフトウェア:FAMAS 解析理論名:Owens−Wendt)によって、固体層の表面自由エネルギーを算出した。
また、固体層を形成していないものについては、基材の表面自由エネルギーを同様に測定した。
後述の方法で作製した包装材において、ジメチルシリコーンオイルを塗布する前の固体層の表面形状を、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−X260)を用いて測定した。測定には、50倍の対物レンズを使用した。
得られた3次元形状データから、レーザー顕微鏡付属のソフトウェア (キーエンス社製、マルチファイル解析アプリケーションVK−H1XM)を用いて、100μm×100μmの範囲の二乗平均平方根粗さSqを求めた。
尚、Sqは、ISO 25178に準拠して算出した。
また、固体層を形成していないものについては、基材の表面について、同様にSqを測定した。
後述の方法で作製した包装材において、ジメチルシリコーンオイルを塗布する前の基材上の固体層について、波長400〜800nmでの光の平均透過率(%)を、分光光度計(島津製作所社製、UV−3100PC)を用いて測定した。
包装材のフィルムを60度に傾斜させた試料台に固定し、シリコーンオイル層表面から約1cm離れた位置からシャンプー(P&G社製、パンテーン エクストラ ダメージケアシャンプー)を同一箇所に繰り返し0.1g滴下した。滴下位置にシャンプーが残存し始めるまでの回数を測定し、この回数により、付着防止性及び滑り性を評価した。
包装材のフィルムを水平な試料台に固定し、シリコーンオイル層表面から約1cm離れた位置から上記でも使用しているシャンプーを0.1g滴下した。1分後に試料台を徐々に傾斜させ、滑落したときの角度で滑落性の評価を行った。
基材として、無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製RXC−22、厚さ50μm、以下「CPP」と略記する)を用意した。
この基材上に、バーコーターにより、非芳香族系のシリコーン重合体(信越化学工業社製アクリルシリコーン KP−543、溶剤として酢酸ブチル含有)を塗布し、真空乾燥機で80℃、10分間乾燥させ、厚さ2.0μmの固体層を形成した。
次いで、前記アクリルシリコーン上に、バーコーターにより、ジメチルシリコーンオイルを塗布し、塗布量10g/m2のシリコーンオイル層を形成し、包装材とした。
この包装材について、各種の測定結果は、以下のとおりであった。
二乗平均平方根粗さSq:0.006μm
可視光透過率:90.2%
付着防止性:
シャンプー;100回<
滑落性:
シャンプー;10度
非芳香族系のシリコーン重合体として、信越化学工業社製シリコーン変性ポリノルボルネン NBN−30−IDを用いた以外は、実施例1と同様にして、包装材を作成し、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
固体層表面自由エネルギー:27.8mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.005μm
可視光透過率:92.0%
付着防止性:
シャンプー;34回
滑落性:
シャンプー;11度
非芳香族系のシリコーン重合体として、信越化学工業社製シリコーン変性プルラン TSPL−30−IDを用いた以外は、実施例1と同様にして、包装材を作成し、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
固体層表面自由エネルギー:23.8mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.008μm
可視光透過率:92.0%
付着防止性:
シャンプー;18回
滑落性:
シャンプー;13度
非芳香族系のシリコーン重合体として、信越化学工業社製メチルシリコーンレジン KR−251を用い、この重合体を用いてガラス板(松浪硝子社製S−2215、厚さ1000μm)上に表面固体層を形成した以外は、実施例1と同様にして、包装材を作成し、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
固体層表面自由エネルギー:24.6mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.008μm
可視光透過率:92.7%
付着防止性:
シャンプー;29回
滑落性:
シャンプー;12度
シリコーン重合体として、信越化学工業社製メチルフェニルシリコーンレジン KR−255(芳香族系シリコーン重合体)を用いた以外は、実施例5と同様にして、包装材を作成し、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
固体層表面自由エネルギー:35.2mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.006μm
可視光透過率:95.6%
付着防止性:
シャンプー;8回
滑落性:
シャンプー;測定不可(尾を引いて垂れ、90度にしても付着し続
けた)
表面固体層を形成せずに、基材であるCPP上にジメチルシリコーンオイルを塗布して各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
表面自由エネルギー:33.7mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.173μm
可視光透過率:60.1%
付着防止性:
シャンプー;3回
滑落性:
シャンプー;測定不可(尾を引いて垂れ、90度にしても付着し続
けた)
基材として低密度ポリエチレンフィルム(宇部丸善ポリエチレン社製F120N、厚み40μm)を用いた以外は、比較例3と同様、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
表面自由エネルギー:35.7mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.049μm
可視光透過率:83.9%
付着防止性:
シャンプー;6回
滑落性:
シャンプー;測定不可(尾を引いて垂れ、90度にしても付着し続
けた)
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製P−60、厚み12μm)を用いた以外は、比較例3と同様、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
表面自由エネルギー:50.9mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.050μm
可視光透過率:86.5%
付着防止性:
シャンプー;5回
滑落性:
シャンプー;測定不可(尾を引いて垂れ、90度にしても付着し続
けた)
基材としてエチレンビニルアルコールフィルム(クラレ社製EF−F、厚み12μm)を用いた以外は、比較例3と同様、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
表面自由エネルギー:44.2mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.086μm
可視光透過率:89.5%
付着防止性:
シャンプー;3回
滑落性:
シャンプー;測定不可(尾を引いて垂れ、90度にしても付着し続
けた)
基材としてガラス板(松浪硝子社製S−2215、厚さ1000μm)を用いた以外は、比較例3と同様、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
表面自由エネルギー:72.0mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.018μm
可視光透過率:91.3%
付着防止性:
シャンプー;3回
滑落性:
シャンプー;測定不可(尾を引いて垂れ、90度にしても付着し続
けた)
3:表面固体層
5:基材
シリコーン重合体として、信越化学工業社製メチルフェニルシリコーンレジン KR−255(芳香族系シリコーン重合体)を用いた以外は、実施例1と同様にして、包装材を作成し、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
固体層表面自由エネルギー:35.2mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.006μm
可視光透過率:95.6%
付着防止性:
シャンプー;8回
滑落性:
シャンプー;測定不可(尾を引いて垂れ、90度にしても付着し続けた)
基材として低密度ポリエチレンフィルム(宇部丸善ポリエチレン社製F120N、厚み40μm)を用いた以外は、比較例1と同様、各種の測定を行った。その結果は、以下のとおりであった。
表面自由エネルギー:35.7mJ/m2
二乗平均平方根粗さSq:0.049μm
可視光透過率:83.9%
付着防止性:
シャンプー;6回
滑落性:
シャンプー;測定不可(尾を引いて垂れ、90度にしても付着し続けた)
Claims (9)
- 非芳香族シリコーン系重合体を含有する表面固体層と、該表面固体層上に保持されているシリコーンオイル層とを含む含界面活性剤製品用包装材であって、
前記非芳香族シリコーン系重合体が、シリコーン樹脂、シリコーン変性オレフィン系樹脂、シリコーン変性多糖類及びシリコーン変性アクリル樹脂から成る群より選択された少なくとも1種であることを特徴とする含界面活性剤製品用包装材。 - 前記非芳香族シリコーン系重合体が、下記式(1):
R2SiO2/2 (1)
式中、Rは、非芳香族基、特にアルキル基である、
で表されるD単位を含有している請求項1に記載の含界面活性剤製品用包装材。 - 前記固体層の表面自由エネルギーが、35mJ/m2以下である請求項1に記載の含界面活性剤製品用包装材。
- 前記固体層の二乗平均平方根粗さSqが、0.3μm以下である請求項1に記載の含界面活性剤製品用包装材。
- 前記固体層の波長400〜800nmでの光の平均透過率が、80%以上である請求項1に記載の含界面活性剤製品用包装材。
- 前記固体層が、プラスチック基材、ガラス基材、金属基材または紙基材表面に形成されている請求項1に記載の含界面活性剤製品用包装材。
- 容器の形態を有している請求項1に記載の含界面活性剤製品用包装材。
- 前記含界面活性剤製品が、流動体である請求項1に記載の含界面活性剤製品用包装材。
- 前記含界面活性剤製品が、化粧品である請求項8に記載の含界面活性剤製品用包装材。
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