JPH074364A - スクロール型圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 旋回スクロール基板の重量を軽減して、圧縮
機全体の軽量化を図るとともに、旋回スクロール体の公
転運動を円滑に行うスクロール型圧縮機を提供する。 【構成】 基板９ａ及び渦巻部９ｂを有する旋回スクロ
ール体９の基板９ａの背面に対し複数の溝９ｅを径方向
に放射状に形成する。そして、各溝９ｅの間に基板の径
方向に延びる厚肉部９ｆを設け、基板９ａに作用する曲
げ力の種類に応じて基板９ａの肉厚を適正化して、基板
９ａの重量を軽減する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は例えば車両空調装置に
使用されるスクロール型圧縮機に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、スクロール型圧縮機はハウジン
グ内に設けた基板及び渦巻部を有する固定スクロール体
と、同じく基板及び渦巻部を有する旋回スクロール体と
を嵌合してなるスクロール圧縮要素を備えている。両ス
クロール体の基板はそれぞれ円板状に形成され、それら
の基板には渦巻部がそれぞれ一体に形成されている。そ
して、前記ハウジング内に吸入された冷媒ガスを前記ス
クロール圧縮要素により圧縮して固定スクロール基板の
中心部に形成した吐出孔から吐出室へ吐出するようにな
っている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記スクロール型圧縮
機において圧縮行程が進行すると、圧縮室は両渦巻部の
中心部に行くに従いその容積が減少して圧力が上昇す
る。このため前記両基板の中心部は外周部に比べて高い
圧縮反力を受け、凸面状の撓みが生じる。又、固定スク
ロール基板の背面側には吐出室が形成されているので、
該基板には圧縮室の高圧力と吐出室の圧力の差圧が作用
し、該基板の撓みは少ない。しかし、旋回スクロール体
の外周側には冷媒ガスの吸入室が設けられ、旋回スクロ
ール基板の背面側は吸入圧力雰囲気となっている。この
ため旋回スクロール基板の圧縮反力による前述した撓み
が生じ易い。

【０００４】圧縮機の軽量化を図るため、旋回スクロー
ル体は例えばアルミニウム合金等の軽量材によりそれぞ
れ一体に成形されている。従って、前述した撓みが一層
生じ易く、この撓みが大きくなった場合には両渦巻部相
互の圧縮室を区画形成する接触部の押付力が大きくな
り、旋回スクロール基板に対する渦巻部の付け根部の応
力集中が生じて、渦巻部が破損するという問題が生じ
る。このため旋回スクロール基板の肉厚を大きくする必
要がある。

【０００５】旋回スクロール基板には渦巻部が該基板の
半径方向とほぼ直交する方向に一体形成されている。こ
のため旋回スクロール基板を半径方向と直交し、かつ基
板と垂直な面内で撓ませる外力に対しては渦巻部があた
かもＴ型鋼の垂直プレートのように有効に作用するの
で、必要な剛性を確保できる。しかし、基板の半径方向
と同方向で、かつ基板と垂直な面内で撓ませる外力に対
しては渦巻部が有効に作用せず、基板の撓みが大きくな
る。従来の旋回スクロール基板は後者の基板を撓ませる
外力に対して必要な剛性を有する均一厚さに形成されて
いるので、前者の基板を撓ませる外力に対して必要以上
の剛性を付与することになり、旋回スクロール基板が大
重量となり、圧縮機の軽量化を図ることができないとい
う問題があった。又、旋回スクロール基板の重量が大き
いと、旋回スクロール体の公転運動時に重量バランスを
図るためのバランスウエイトも大重量化し、従って、圧
縮機全体がさらに大重量化するばかりでなく、旋回スク
ロール体の旋回動作を安定して行うことができないとい
う問題があった。

【０００６】この発明の第１の目的は上記従来の技術に
存する問題点を解消して、旋回スクロール基板の重量を
軽減して、圧縮機全体の軽量化を図ることができるとと
もに、旋回スクロール体の公転運動を円滑に行うことが
できるスクロール型圧縮機を提供することにある。

【０００７】又、この発明の第２の目的は、上記第１の
目的に加えて、旋回スクロール基板の断面二次モーメン
トを大きくして、基板の剛性を向上することができるス
クロール型圧縮機を提供することにある。

【０００８】さらに、この発明の第３の目的は、上記第
１の目的に加えて、旋回スクロール基板の背面に形成し
たボス部内の潤滑性を向上し、かつ摺動部の冷却を促進
して耐久性を高めることができるスクロール型圧縮機を
提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の発明は上
記第１の目的を達成するため、基板及び渦巻部を有する
固定スクロール体と、該固定スクロール体に対向して自
転防止機構により自転不能に、かつ公転可能に設けられ
た基板及び渦巻部を有する旋回スクロール体との間に該
旋回スクロール体の公転に基づいて外周側から中心部に
向かって容積減少する密閉状の圧縮室を形成し、固定ス
クロール体の基板に形成した吐出孔から圧縮された冷媒
ガスを吐出室へ吐出するようにしたスクロール型圧縮機
において、前記旋回スクロール基板に対し溝又は穴を径
方向に形成し、溝又は穴の間に径方向に延びる厚肉部を
形成するという手段をとっている。

【００１０】又、請求項２記載の発明は、上記第２の目
的を達成するため、請求項１において、旋回スクロール
基板に形成された穴を、旋回渦巻部寄りに形成するとい
う手段をとっている。

【００１１】さらに、請求項３記載の発明は、上記第３
の目的を達成するため、請求項１において、旋回スクロ
ール基板にベアリングを介して駆動連結されるボス部を
形成し、前記溝又は穴をボス部の内部に連通するという
手段をとっている。

【００１２】

【作用】請求項１記載の発明は旋回スクロール体の公転
運動により両渦巻部により形成される密閉状の圧縮室内
に吸入室の冷媒ガスが取り込まれ、圧縮室は中心部に行
くに従い容積を減少しつつガスを圧縮する。このガスは
固定スクロール基板に形成した吐出孔から吐出室に吐出
される。

【００１３】この冷媒ガスの圧縮行程では圧縮反力によ
り旋回スクロール基板の中心部が外側に押圧され、該基
板は外周側において自転防止機構により圧縮反力を受け
るので、凸面状に撓む方向への外力を受ける。この発明
では旋回スクロール基板に半径方向の溝又は穴を形成し
たので、従来の技術の欄で述べたように旋回スクロール
基板を半径方向と同方向の垂直面内及び半径方向と直交
する垂直面内で撓ませる二つの外力に対してそれぞれ適
正な剛性の肉厚にすることができる。すなわち前記旋回
スクロール基板に半径方向の溝又は穴を形成しても半径
方向と直交する垂直面内での外力に対する剛性は渦巻部
が確保するので、旋回基板の撓みが抑制される。又、旋
回基板に作用する半径方向と同方向の垂直面内での外力
に対する剛性は半径方向の溝又は穴の相互間に形成され
た厚肉部が分担する。このため旋回スクロール基板の重
量を軽減して、圧縮機の軽量化が実現できる。

【００１４】又、旋回スクロール基板の重量が軽減され
ると、旋回スクロール体の公転運動時に重量バランスを
図るためのバランスウエイトも軽量化でき、従って、旋
回スクロール体の旋回動作を安定して行うことができ
る。

【００１５】又、旋回スクロール基板の曲げ変形の中立
軸は、旋回渦巻部が基板に一体形成されているため、該
旋回渦巻部側に位置する。請求項２記載の発明では旋回
スクロール基板に形成する穴を旋回渦巻部寄りに設けた
ので、基板の中心に穴を設けるのと比較して該基板の断
面二次モーメントが大きくなり、旋回スクロール基板の
剛性を向上することができる。

【００１６】さらに、請求項３記載の発明では、旋回ス
クロール基板の外周側から冷媒ガスが溝又は穴を通して
ボス部の内部に供給されるので、ボス部内のベアリング
の潤滑性が向上し、かつその冷却が促進されて耐久性が
高められる。

【００１７】

【実施例】以下、この発明を具体化した第１実施例を図
１〜図４に基づいて説明する。図３に示すように固定ス
クロール体１は基板１ａと、該基板１ａに一体形成され
た固定渦巻部１ｂと、さらに前記基板１ａの外周に一体
形成されたセンタハウジング１ｃとにより構成されてい
る。前記センタハウジング１ｃのフロント側端面には吸
入口（図示略）を有するフロントハウジング２が接合固
定されている。又、センタハウジング１ｃのリヤ側端面
には吐出口（図示略）を有するリヤハウジング３が接合
固定され、フロントハウジング２の中心部には回転軸４
がラジアルベアリング５により回転可能に支持されてい
る。この回転軸４の内端部には偏心軸６が連結され、該
軸６にはバランスウェイト７及びブッシュ８が嵌合され
ている。このブッシュ８の外周面には旋回スクロール体
９の基板９ａの中心部に形成したボス部９ｃが相対回動
可能にラジアルベアリング１０により支持されている。
旋回スクロール体９の基板９ａには旋回渦巻部９ｂが形
成され、両渦巻部１ｂ，９ｂは図４に示すように複数箇
所で接触されている。

【００１８】又、前記フロントハウジング２の内壁面と
旋回スクロール体９の基板９ａとの間には旋回スクロー
ル体９の自転を防止し、かつ公転動作を許容するための
自転防止機構１１が介装されている。この機構はフロン
トハウジング２の内壁面に複数箇所に形成した円形凹所
２ａと基板９ａの背面に形成した円形凹所９ｄとの間に
それぞれ円柱状のコロ１１ａを介在して構成されてい
る。そして、回転軸４が回転して偏心軸６が公転する
と、コロ１１ａが円形凹所２ａ，９ｄ内で旋回すること
により、旋回スクロール体９の公転を許容し、自転を防
止する。又、コロ１１ａは圧縮動作時の圧縮反力をフロ
ントハウジング２に支持させる。

【００１９】前記渦巻部１ｂ，９ｂの外側には吸入室１
２が形成され、前記基板１ａには前記吐出孔１ｄを開閉
する吐出弁１３及びその開閉位置を規制するリテーナ１
４が取り付けられている。そして、旋回スクロール体９
の公転運動により両渦巻部１ｂ，９ｂにより形成された
容積減少する圧縮室Ｐにより前記吸入室１２から冷媒ガ
スを取り込んで渦巻部１ｂ，９ｂの中心側に容積減少し
つつ移動される。さらに、圧縮された冷媒ガスは前記吐
出孔１ｄからリヤハウジング３内に形成した吐出室１５
へ吐出される。

【００２０】図１に示すように前記旋回スクロール基板
９ａの背面には、旋回スクロール基板９ａの外力に対す
る曲げ剛性を低下することなく、基板９ａを軽量化する
ための溝９ｅが図１に示すように基板９ａの半径方向に
放射状に形成されている。

【００２１】次に、前記のように構成したスクロール型
圧縮機についてその作用を説明する。エンジン等の動力
により図３において回転軸４が回転されると、偏心軸６
及びブッシュ８により旋回スクロール体９が自転防止機
構１１により自転を阻止された状態で所定の半径にて公
転運動を行う。この時吸入室１２から圧縮室Ｐに取り込
まれた冷媒ガスは中心部に行くに従い容積減少されて基
板１ａに設けた吐出孔１ｄから吐出弁１３を押し退けて
吐出室１５に吐出される。この吐出室１５の冷媒ガスは
リヤハウジング３に設けた吐出口（図示略）から外部冷
媒回路に吐出される。

【００２２】この冷媒ガスの圧縮行程では図２において
圧縮室Ｐ内の高圧ガスによる圧縮反力（矢印Ｆ参照）が
作用し、かつ基板９ａの外周側はコロ１１ａによりフロ
ントハウジング２に支持されている。又、圧縮室Ｐの圧
力は中心部ほど大きくなる。このため旋回スクロール基
板９ａの中心部が外側に押圧され、該基板９ａは凸面状
に撓む方向への外力を受ける。

【００２３】この第１実施例では旋回スクロール基板９
ａに半径方向の溝９ｅを形成したので、旋回スクロール
基板９ａを半径方向と同方向の垂直面内及び半径方向と
直交する垂直面内で撓ませる二つの外力に対してそれぞ
れ適正な剛性の肉厚にすることができる。すなわち、前
記旋回スクロール基板９ａに半径方向の溝９ｅを形成し
ても半径方向と直交する垂直面内での外力に対する剛性
は渦巻部９ｂが確保する。又、基板９ａに作用する半径
方向と同方向の垂直面内での外力に対する剛性は半径方
向の溝９ｅ相互間に形成された厚肉部９ｆが分担する。
このため旋回スクロール基板９ａの重量を軽減して、圧
縮機の軽量化が実現できる。

【００２４】又、旋回スクロール基板９ａの重量が軽減
されると、旋回スクロール体９の公転運動時に重量バラ
ンスを図るためのバランスウエイト７も軽量化でき、従
って、旋回スクロール体９の旋回動作を安定して行うこ
とができる。

【００２５】さらに、第１実施例では旋回スクロール基
板９ａに溝９ｅ及び厚肉部９ｆが形成されるので、基板
の表面積が多くなり、圧縮熱の放熱効果が向上し、スク
ロール体１の熱変形も抑制される。

【００２６】次に、この発明の第２実施例を図５，６に
より説明する。この実施例は基板９ａの内部に複数の穴
９ｇを放射状に形成したものである。この実施例におい
ても前述した第１実施例と同様に基板９ａの重量を軽減
することができる。又、この実施例では穴９ｇがボス部
９ｃの内部に連通しているので、圧縮動作時に基板９ａ
の外方から冷媒ガスがボス部９ｃ内部に導かれ、ラジア
ルベアリング１０の潤滑が良好となる。さらに、旋回ス
クロール基板９ａの曲げ変形の中立軸は、渦巻部９ｂ側
に位置するので、基板９ａに形成する穴９ｇは、中立軸
に近い渦巻部９ｂ側に設けられている。このため、基板
９ａの断面二次モーメントが基板９ａの中心に穴を形成
するのと比較して大きくなり、旋回スクロール基板９ａ
の剛性を高くできる。その他の構成及び効果は前記第１
実施例と同様である。

【００２７】なお、この発明は前記実施例に限定される
ものではなく、次のように具体化することができる。 （１）図示しないが、溝９ｅに代えてドリル等により基
板に穴を形成し、この穴を半径方向に連続的に形成した
り、溝９ｅと穴９ｆを交互に設けたりすること。

【００２８】（２）溝９ｅ又は穴９ｆの幅を基板９ａの
外周側ほど大きく形成すること。

【００２９】

【発明の効果】以上詳述したように、この発明は、特許
請求の範囲のように構成したので、次のような効果があ
る。

【００３０】請求項１記載の発明は、旋回スクロール基
板の重量を軽減して、圧縮機全体の軽量化を図ることが
できるとともに、旋回スクロール体の公転運動を円滑に
行うことができる効果がある。

【００３１】又、請求項２記載の発明では、請求項１記
載の発明の効果に加えて、旋回スクロール基板の断面二
次モーメントを大きくして、基板の剛性を向上すること
ができる効果がある。

【００３２】さらに、請求項３記載の発明では、請求項
１記載の発明の効果に加えて、旋回スクロール基板の背
面に形成したボス部内の潤滑性を向上し、かつ摺動部の
冷却を促進して耐久性を高めることができる効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の第１実施例のスクロール型圧縮機の
要部の斜視図である。

【図２】旋回スクロール体及び固定スクロール体の断面
図である。

【図３】スクロール型圧縮機の縦断面図である。

【図４】渦巻部の横断面図である。

【図５】この発明の第２実施例を示す要部の部分断面図
である。

【図６】図５のＡ−Ａ線断面図である。

【符号の説明】

１…固定スクロール体、１ａ…基板、１ｂ…固定渦巻
部、１ｄ…吐出孔、２…フロントハウジング、３…リヤ
ハウジング、９…旋回スクロール体、９ａ…基板、９ｂ
…旋回渦巻部、９ｃ…ボス部、９ｅ…溝、９ｆ…厚肉
部、９ｇ…穴、１１…自転防止機構、１３…吐出室、Ｐ
…圧縮室。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鴻村 哲志 愛知県刈谷市豊田町２丁目１番地 株式会 社豊田自動織機製作所内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基板及び渦巻部を有する固定スクロール
   体と、該固定スクロール体に対向して自転防止機構によ
   り自転不能に、かつ公転可能に設けられた基板及び渦巻
   部を有する旋回スクロール体との間に該旋回スクロール
   体の公転に基づいて外周側から中心部に向かって容積減
   少する密閉状の圧縮室を形成し、固定スクロール体の基
   板に形成した吐出孔から圧縮された冷媒ガスを吐出室へ
   吐出するようにしたスクロール型圧縮機において、 前記旋回スクロール基板に対し溝又は穴を径方向に形成
   し、溝又は穴の間に径方向に延びる厚肉部を形成したス
   クロール型圧縮機。
2. 【請求項２】 請求項１において、旋回スクロール基板
   に形成された穴を、旋回渦巻部寄りに形成したスクロー
   ル型圧縮機。
3. 【請求項３】 請求項１において、旋回スクロール基板
   にベアリングを介して駆動連結されるボス部を形成し、
   前記溝又は穴をボス部の内部に連通したスクロール型圧
   縮機。