JPWO2019093461A1 - 全固体電池及び負極 - Google Patents

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Abstract

有機硫黄系正極、塩素及び/又は臭素を含んだ硫化物系固体電解質、及び、リチウム層を有する負極を備えることを特徴とする、全固体電池。

Description

本発明は、全固体電池及び負極に関する。
近年の携帯電子機器、ハイブリッド車等の高性能化により、それに用いられる電池(特にリチウムイオン二次電池等の二次電池)には、益々の高容量化が求められている。しかし、現行のリチウム二次電池では負極に比べて正極の高容量化が遅れており、最近盛んに研究開発されている高容量型のLi(Ni,Mn,Co)O2系材料でも250〜300 mAh/g程度である。さらにEV開発が本格化する中、不足する資源も相まって価格が倍以上に高騰している。
硫黄は理論容量が約1670mAh/gと高く、また、資源量が豊富で安価であるため、高容量電極材料の有望な候補の一つである。しかしながら、単体硫黄は導電性が低く、また、有機電解液を用いた電池系(リチウム二次電池等)においては、充放電過程で生成する多硫化リチウムが電解液に溶出して負極等に析出し、容量低下を引き起こすという問題がある。
これを解決するため、単体硫黄を樹脂、ピッチ等の様々な有機材料と複合化し、導電性を付与するとともに多硫化リチウムの電解液中への溶出及び拡散を抑制する試みが種々行われている(例えば、特許文献1〜3及び非特許文献1〜4等)。これら硫黄−炭素複合体は、比較的高い容量を示すとともに、比較的良好なサイクル特性を示すことが報告されている。
従来、これら硫黄−炭素複合体は、多孔性カーボン等の炭素材料や、ポリアクリロニトリル(PAN)、ピッチ等の固体有機物を炭素源の原料として用いており、単体硫黄又は硫黄を含む原料と加熱することにより作製されてきた。特に、PANを原料に用いて作製した有機硫黄材料は、サイクル劣化の少ない電極材料として有望な候補材料に挙げられている。
また、電池の安全性向上のために、可燃性の有機電解液ではなく、リチウムイオン導電性のある硫化物固体電解質を用いた全固体電池が提案されている。例えば、PANを用いた有機硫黄材料による、全固体電池が紹介されている(非特許文献1)。ここで、全固体電池であれば、硫黄成分溶出の問題も解消されると期待されている。
これらの硫黄系正極材料を電池として用いる場合、これまでの酸化物正極と違い、正極にリチウムが含有されていないことが、電池を組むうえで問題となる。そこで、硫黄系正極にリチウムを付与したり、負極をリチウム自体で構成したり、或いは、シリコン負極にリチウムを保持させたりすることが検討されている(非特許文献2)。
硫黄系正極材料を用いる場合、容量の大きな負極が必要となる。負極はこれまでグラファイトが用いられてきたが、高容量正極に対して負極に用いた場合は、これまでより大きな目付(めつけ:単位面積当たりの活物質充填量、mg/cm)が必要となり、嵩張ることから電池に求められるエネルギー密度が低下するため、望ましくない。
リチウムを持たない高容量の硫黄系正極材料を電池として用いる場合、同じく大容量の負極であるリチウム箔やシリコンが望まれている。シリコンもリチウムをもたないためシリコンにリチウムをまえもってドープした電極、シリコン負極とリチウム箔を電池容器に同梱して電解液の注入によりシリコンおよび正極にリチウムをドープする方法により利用されている。しかし、有機電解液を用いたシリコンへ電気化学的にリチウムをドープしたのちに、電解液を除去し、全固体電池に組み込む方法がなされてきたが、時間とプロセスコストがかかる点に課題がある。
全固体電池の電極は、活物質と固体電解質および導電助剤を混合し、ゴム系バインダー等と混合してヘプタンなどの溶媒で混合したスラリーをグローブボックス中でアルミ箔または銅箔などの基材に塗工する方法が行われている。これらの作業は固体電解質が水分により劣化してしまうため高価なグローブボックス環境で行われており、設備や操作に制約を受ける。一方、通常の塗工した電極は、容量の大きな活物質を扱う場合ポリイミド等をバインダーとして作製され、固体電解質を含んでいないので、全固体電池に組み込んだ場合リチウムイオンを拡散させることに困難があると考えられてきた。グローブボックス外での通常の方法により電極が作製できれば製造上大きな利点となる。
電解質が固体である全固体電池においては、電極と固体電解質の接触が重要である。固体電解質にリチウムを蒸着する方法や、粉末リチウムなどでは動作する場合もあったが、固体電解質とリチウム箔では電池として動作が困難であるといわれていた。
こうした固体電解質を用いた全固体電池において、正極にリチウムを含有させる、リチウム箔を負極として用いる、シリコン負極にリチウムを簡便な方法で含有させる、或いは、通常の方法で作製した電極を全固体電池に組み込む、等といった態様が可能になれば、容量が大きく、安全性が高く、また、低コストの全固体リチウムイオン二次電池を構築することができる。
そこで、アルコールを原料として硫黄と加熱還流することにより高容量の硫黄系正極材料を作製することが報告されている(非特許文献4)。
さらに、シリコン負極の全固体電池への利用も提案されている(非特許文献5)。
しかしながら、より放電容量の大きな全固体電池や、そのための負極が求められているというのが実情であった。
日本国特許第5164286号公報 日本国特許第5142162号公報 国際公開第2010/044437号 日本国特許第6206900号公報
J. E. Trevey et al., J. Electrochem. Soc., 159, A1019 (2012). 境哲男監修「レアメタルフリー二次電池の最新技術動向」シーエムシー出版(2013) X. Ji et al., Nat. Mater., 8, 500 (2009). T. Takeuchi et al., J. Electrochem. Soc., 164, A6288 (2017). N. Machida et al., Solid State Ionics, 176, 473-479 (2005).
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、放電容量の大きな全固体電池、及び全固体電池用の負極を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、正極、固体電解質、及び負極を所定の材料で構成することで放電容量の大きな電池を得ることができることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の全固体電池及び負極を提供する。
項1.
有機硫黄系正極、塩素及び/又は臭素を含んだ硫化物系固体電解質、及び、リチウム層を有する負極を備えることを特徴とする、全固体電池。
項2.
前記正極は、ポリイミド系樹脂バインダーを含有する、項1に記載の全固体電池。
項3.
前記リチウム層を有する負極は、前記リチウム層並びに、
銅、チタン及びステンレスからなる群より選択される1種以上を含む遷移金属層との積層体であり、
前記リチウム層は、前記硫化物系固体電解質と前記遷移金属層との間に設けられている、項1又は2に記載の全固体電池。
項4.
基材の片面に設けられたシリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層に、溶融リチウムを塗布して得られることを特徴とする、負極。
項5.
ポリイミド系樹脂バインダーを含有する有機硫黄系正極、塩素及び/又は臭素を含有する硫化物系固体電解質、及び項4に記載の負極を有する、全固体電池。
項6.
前記硫化物系固体電解質は、ゴム系バインダーを含有する、項5に記載の全固体電池。
本発明に係る全固体電池及び負極によれば、放電容量の大きな全固体電池を得ることができる。
実施例1の全固体電池の断面概略図。 実施例1の全固体電池の充放電曲線。 比較例1の電池の充放電曲線。 実施例2の全固体電池の断面概略図。 実施例2の全固体電池の充放電曲線。 実施例3の全固体電池の充放電曲線。 比較例2の全固体電池の充放電曲線。 実施例4の全固体電池の断面概略図。 実施例4の全固体電池の充放電曲線。 実施例5の全固体電池の断面概略図。 実施例5の全固体電池の充放電曲線。 実施例6の全固体電池の断面概略図。 実施例6の全固体電池の充放電曲線。 実施例7の全固体電池の断面概略図。 実施例7の全固体電池の充放電曲線。 実施例8の全固体電池の断面外略図。 実施例8の全固体電池の充放電曲線。 実施例9の全固体電池の断面外略図。 実施例9の全固体電池の充放電曲線。
(全固体電池)
本発明の全固体電池は、有機硫黄系正極、塩素及び/又は臭素を含んだ硫化物系固体電解質、及び、リチウム層を有する負極を備えることを特徴とする。なお、本明細書において、「A〜B」との態様で数値範囲を示す場合、その両端の数値A及びBを含むものと定義する。また、本発明の全固体電池には、使用する材料に応じて、全固体リチウム二次電池、及び全固体リチウム−硫黄二次電池などが包含され、勿論これらに限定されない。
有機硫黄系正極
有機硫黄系正極としては、ポリアクリロニトリル、ピッチ、ゴム、アントラセン、アミン類、ポリエチレングリコール、カルボン酸、直鎖アルコール等を原料とした材料を使用して得ることが可能である。これらは単独で、或いは2種以上を併せて使用することができる。とりわけ、直鎖アルコールを硫黄と還流熱処理することにより得られたコンポジット(硫化1−ノナノール)を材料として有機硫黄系正極を構成することが好ましい。
上記の有機硫黄系正極の製造に使用する材料(以下、有機硫黄系正極材料ともいう。)は、原料を硫黄と接触させ290〜310℃で加熱することにより得られるものが好ましく、アモルファス状であることが好ましい。ポリマーとしての性質があり、元素組成は知られているものの、構造等は不明である。
有機硫黄系正極材料は、密度1.6〜2.0g/cm(より好ましくは、密度1.7〜1.9g/cm)の比較的密度の低い黒色固体であることが好ましい。酸化物系正極材料と異なり、酸素を実質的に含有しないため、充電状態で200℃以上となっても酸素を放出して有機電解液を燃焼させて火災を引き起こすことはない。また、300℃の高温でも分解しづらく、安定性が高い。
また、有機硫黄系正極材料を使用した正極を用いて全固体電池を構成することにより、充分な放電容量を有する全固体電池を得ることができる。正極を製造する際にLiCoO2、LiNi0.333Co0.333Mn0.333O2,およびLiNi0.8Co0.15Al0.05O2等の酸化物系正極材料を使用した場合、得られる全固体電池の充分な放電容量を確保することができない。
一方で、有機硫黄系正極材料は、導電性が10−8〜10−10S/cmと低いため、アセチレンブラック等をさらに導電助剤として使用し、正極を構成することも好ましい。
これらの材料は、容量が大きいためリチウムの吸蔵放出量が比較的大きく、このため膨張収縮量が大きい。強固なポリイミドバインダーにおいては、従来のPVDF等のバインダーに比べて正極の破壊が起きづらく、高容量特性が長期の使用が可能である。現状全固体電池においては、硫化物系固体電解質と反応しにくい低極性溶媒(固体電解質に強く結合する酸素や水酸基を有しない)によりゴム系バインダーと固体電解質をスラリーとして大面積電極が塗工により作製されている。このような電極の作製方法では、膨張収縮の激しい硫黄系正極材料の利用は困難であることから、ポリイミド系樹脂バインダーを用いて製造された正極が利用できれば、全固体電池の工業化に寄与することとなる。
有機硫黄系正極材料およびシリコンを通常の有機溶媒系電解液で使用する場合、その容量が大きいことから酸化物系正極と比べると単位重量当たり5倍前後のリチウムが出入りし、材料粒子の膨張・収縮が充放電に伴って起きる。この体積変化のため電極内で粒子をつなぎとめていたバインダーの破壊が起き、電極粒子と導電助剤との接触が妨げられることから電極特性が損なわれる。そこで、電極の破壊が起きないような強固な結合をもつポリイミド系樹脂をバインダーとして用いることが、好ましい。
ポリイミド系樹脂バインダーとしては、全固体電池を含む二次電池の製造に使用される公知のポリイミド系樹脂バインダーを、広く使用することができる。
具体的には、下記一般式(I)で表わされるような、デュポン社のカプトンH(登録商標)や、また、市販IST社のスカイボンド(登録商標)、ドリームボンド(登録商標)を挙げることができ、勿論これらに限定されない。後述するポリイミドの構成要素であるジアミンと酸無水物のうち、ポリイミド化したのち固体電解質と反応する-OHや-NH等の極性基を有しないような分子を組み合わせることでポリイミド前駆体であるポリアミック酸を構成することができ、かかるポリイミド系樹脂バインダーも好適に使用することが可能である。これらは単独で、或いは2種以上を併せて使用することができる。
Figure 2019093461
尚、上記カプトンH(登録商標)の製造に際しては、公知の方法を広く採用することが可能であり、例えば、次のようにして製造することができる。下記一般式(II)で表わされる4,4'-Diaminodiphenyl Etherと、下記一般式(III)で表わされる1,2,4,5-Benzenetetracarboxylic Dianhydrideを1対1のモル比で秤量し、それぞれ1-Methyl-2-pyrrolidoneのような有機溶媒中に溶かしてから混合し、アミノ基と2つあるカルボキシル基の1つとが結合をつくった(−CO-NH-)ポリアミック酸を作製する。この状態では粘り気のある溶液であって、電極塗工に好ましい粘度をあたえる。電極材料75〜85質量パーセントにポリアミック酸(原料質量で)10〜20質量パーセント、導電助剤としてアセチレンブラックを1〜10質量パーセントで混合し、正極ならアルミ箔、負極なら銅箔に塗工し、乾燥後、アルミ箔なら不活性ガス雰囲気、銅箔なら水素雰囲気で250〜300℃で30分〜2時間焼成すると、ポリアミック酸から水が脱離して近接するカルボキシル基2つがアミノ基と結合しイミド結合(−CO-N-CO-)となることでポリイミドに変化し、ポリイミド塗工電極を作製することができる。
Figure 2019093461
Figure 2019093461
ポリイミド系樹脂バインダーの含有量は、例えば、正極100質量部あたり、10〜20質量部とすることが好ましい。かかる構成を有することにより、充放電特性の良い全固体電池を得ることができる。
正極の厚みは、目付量を増加させるために、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。一方、固体電解質との良好な接触を確保するため、正極の厚みは、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
硫化物固体電解質
硫化物固体電解質としては、塩素及び/又は臭素を含有する硫化物固体電解質であれば特に限定はなく、Li6PS5ClやLi6PS5Brなどを使用することが可能である。これらは単独で、或いは2種以上を併せて使用することができる。塩素も臭素も含有しない硫化物固体電解質を使用して全固体電池を作製した場合、後述する負極の材質によっては、電極での充放電を阻害する界面を形成する場合がある。中でも、導電性が高くリチウム金属への耐性が高いという理由から、塩素及び/又は臭素を含有するArgyrodite型構造を有する硫化物固体電解質を使用することが、好ましい。
また、上記の例示した塩素及び/又は臭素を含有する硫化物固体電解質(以下、単に固体電解質ともいう。)の中でも、導電率が比較的良く、希少元素の使用量が比較的少なく、そして合成が容易であることから、Li6PS5ClおよびLi6PS5Brの何れか又は双方を使用することが特に好ましい。またLi6PS5ClおよびLi6PS5Brは、後述する負極においてリチウム箔を使用した際にリチウム箔に安定した動作を示すため、特に持続性の高い充放電を行うことが可能になる。
固体電解質は、280〜320MPaの圧力で粒界消失し、高い導電性を発現することができる。実験室での電解質は、10mmΦの金属管もしくは、ポリエチレンテレフタレート管中において90〜110mgを130〜150MPaの圧力でダイスにより押し固め、その片面に正極を、もう片面に負極を290〜310MPa(10mmΦに2t)の圧力で圧着させることにより電池を構築することが可能となる。
固体電解質は塗工によりシート化、もしくは、電極上に固体電解質を塗工することで薄くすることが好ましい。塗工を行うことにより、電池の重量と、電極活物質量とのバランスを良好に保つことができる。Li6PS5Cl及びLi6PS5Brの何れか又は双方を100mgヘプタンと乳鉢で混合しゴム系バインダー(MP-10)3mgをヘプタンに溶解させた液を加え、スラリーを作製することが好ましい。このスラリーを、後述する有機硫黄系正極材料とポリイミドをバインダーとして作製した電極に塗工することで、電極-電解質薄層体を作製することができる。
固体電解質は、固体でありながら電位の低い負極と、電位の高い正極の間にあってリチウムイオンのみを伝導させることができる。硫化物系固体電解質は、一般的に用いられる酸化物系正極とは良好な界面を形成しないため、LiNbO3等の種々のコーティングを正極材料粒子に施すことが好ましいが、有機硫黄系正極材料には特段のコーティングを施さなくとも円滑な充放電を行うことができる。
また、固体電解質により実質的に構成される固体電解質部は、固体電解質以外に、バインダーを含んでいてもよい。ここで使用されるバインダーとしては、全固体電池の固体電解質の製造に使用されるバインダーとして公知のものを広く使用することができる。具体的には、ゴム系バインダー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライドなどを挙げることができる。これらは単独で、或いは2種以上を併せて使用することができる。但し、使用時の耐久性の観点から、ゴム系バインダーを使用することが好ましい。かかるゴム系バインダーとしては、公知のゴム系バインダーを広く採用することができる。
この際、バインダーの配合量は、イオン電導を妨げないようにするために、固体電解質部100質量部あたり、バインダーの固形分換算で、1〜3質量部とすることが好ましい。
固体電解質により実質的に構成される固体電解質部の厚みは、電池の電気抵抗を低減させるために、0.04〜0.3mmとすることが好ましく、0.05〜0.1mmとすることがより好ましい。
負極1(リチウム箔型又は遷移金属層へのリチウム塗布型)
本発明の全固体電池は、リチウム層を有する負極1を備える。リチウム層を構成するリチウムの純度は、99質量%以上の純度であることが好ましい。不純物としては、Na、K、Al、Ca、Fe、Si、N等を挙げることができ、勿論これらに限定されない。リチウム純度の上限としては特に制限はなく、例えば100質量%であってもよい。
リチウム層の厚みは、作製上の取り扱いやすさという理由から、0.005mm以上であることが好ましく、0.01mm以上であることがより好ましい。一方、圧縮時に貫入による短絡を防ぐという理由から、リチウム層の厚みは、0.1mm以下であることが好ましく、0.05mm以下であることがより好ましい。
リチウム層の形成方法は、公知の方法により形成することができ、特に限定はない。具体的には、リチウム箔を使用し、該リチウム箔自体をリチウム層として構成してもよいし、溶融リチウムを後述する遷移金属層に塗布する等の方法でリチウム層を形成してもよい。
また、本発明の全固体電池における負極1は、上述のリチウム層と、より導電率を有する遷移金属層との積層体であることが好ましい。ここで、リチウム箔は、硫化物系固体電解質と遷移金属層との間に設けられることが好ましい。遷移金属層に含まれる金属としては、リチウムと合金を形成しづらい金属であれば特に限定はなく、例えば、銅、チタン、及びステンレスからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、もちろんこれらに限定されない。
遷移金属層に含まれる銅、チタン及びステンレスからなる群より選択される1種以上の金属は、例えば、遷移金属層中に99質量%以上含まれることが好ましい。尚、本明細書において、遷移金属層中にステンレスが99質量%以上含まれるとは、遷移金属層中にステンレス鋼を構成する成分が99質量%以上含まれる(換言すれば、後述する不純物が遷移金属層中に1質量%未満である。)ことであると定義される。不純物としては、例えば、Ag、Sn等を挙げることができ、勿論これらに限定されない。銅の純度の上限としては特に制限はなく、例えば100質量%であってもよい。
遷移金属層の厚みは、充放電に伴う変形応力に耐えるようにするために、0.005mm以上であることが好ましく、0.01mm以上であることがより好ましい。一方、重量当たりのエネルギーを考慮し、0.03mm以下であることが好ましく、0.02mm以下であることがより好ましい。
遷移金属層の形成方法としては、公知の方法を広く採用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、遷移金属箔を積層する方法を挙げることができる。
ここで、遷移金属層に含まれる遷移金属としては、上記したもの以外に、ニッケル及び/又はインジウムを採用しても、一定の放電容量を有する全固体電池を得ることは可能である。
また、上記遷移金属層に替えてカーボン層を使用しても、一定の放電容量を有する全固体電池を得ることができると考えられる。しかし、放電容量の大きな有機硫黄系正極材料であっても、リチウム層の支持体に上記遷移金属層を採用すれば、負極を嵩低く構成できるという利点があるため、設計上からも、上記遷移金属層を採用することが好ましい。
(負極2及び該負極を使用した全固体電池)
負極2(樹脂バインダー層へのリチウム塗布型)
また、本発明の負極2は、基材の片面に設けられたシリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層に、溶融リチウムを塗布して得られることを特徴とする。
基材としては、二次電池の負極に使用される公知の基材を広く使用することができる。具体的には、銅、ステンレス、チタン、ニッケル等を使用することができる。中でも、取り扱いやすさやコスト面を考慮し、銅を使用することが好ましい。基材の材料としては、上記した中から1種単独の金属を使用してもよいが、2種以上の金属からなる合金として使用してもよい。
基材の厚さは、重量低減と充放電に伴う変形応力に耐えるようにするために、0.005〜0.02mmとすることが好ましい。
シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層は、ポリイミド系樹脂をバインダーとして、シリコン粒子を略均一に分散させたものを基材の片面に付着させることにより、得ることができる。ここで、シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層に含まれるシリコン粒子とポリイミド系樹脂バインダーの含有比率は、質量比にして(シリコン粒子):(固形成分換算でのポリイミド系樹脂バインダー)=7:1〜4:1が好ましい。かかる比率で配合されていることにより、膨張する活物質による電極の破壊を防ぐことができる。
ポリイミド系樹脂バインダーとしては、上述したものと同様のものを使用することができる。
シリコン粒子の粒径は、0.03〜5マイクロメートルが好ましく、0.05〜1マイクロメートルがより好ましい。かかる数値範囲とすることにより、膨張による電極の破壊を防ぐことができる。尚、シリコン粒子の粒径は、XRDのピークの半値幅を解析することにより求めることができる。
シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層は、さらに、アセチレンブラックなどの導電助剤を含有してもよい。導電助剤としては、アセチレンブラックの他に、気相成長カーボンファイバー(具体的な製品として、昭和電工社の気相法炭素繊維VGCF(登録商標);Vapor Grown Carbon Fiberがある。)、多壁カーボンナノチューブ、ナノサイズカーボン(具体的な製品として、Timcal社のカーボン系導電助剤SuperP(登録商標)がある。)、カーボンナノファイバー、グラフェン等を挙げることができる。これらは単独で、或いは2種以上を併せて使用することができる。
シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層中における導電助剤の含有量は、導電性の確保とイオン導電性を考慮し、シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層100質量%中に、2〜8質量%とすることが好ましい。
尚、基材上に上記シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層を設けるための方法としては、上述したポリイミド系樹脂バインダーにシリコン粒子、そして必要に応じて適宜アセチレンブラックを分散させた組成物を、基材に塗工することによって得ることができる。
シリコンは、前述の硫黄系正極材料よりも容量が大きいためリチウムの吸蔵放出量が比較的大きく、このため膨張収縮量が大きい。従来のPVDF等のバインダーでは正極そのものの破壊が起きることから、強固なポリイミド系樹脂バインダーにおいて高容量特性が長期の使用を可能にしてきたという経緯があった。現状全固体電池においては、硫化物系固体電解質と反応しにくい低極性溶媒(固体電解質に強く結合する酸素や水酸基を有しない)によりゴム系バインダーと固体電解質をスラリーとして大面積電極が塗工により作製されている。このような電極の作製方法では、膨張収縮の激しい硫黄系正極材料正極やシリコン負極の利用は困難であることから、ポリイミド系樹脂バインダーを用いた従来方法で製作された電極が利用できれば、全固体電池の工業化に寄与することとなる。
シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層の厚みは、電池の高容量化を考慮し、0.005mm以上とすることが好ましく、0.01mm以上とすることがより好ましい。また、固体電解質との接触について考慮し、シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層の厚みは0.03mm以下とすることが好ましく、0.02mm以下とすることがより好ましい。
本発明の負極2は、上記のシリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層に、溶融リチウムを塗布して得られる。溶融させる温度は、リチウムの融点が180.5℃であることから185〜220度とすることが好ましい。
シリコンには、受け取ったリチウムを有効に利用できない欠点が存在している。初回放電時受け取ったリチウムの7割しか充電により取り出せず、以降その7割分のリチウムを正極とやり取りするため、使えなくなった3割分のリチウムを不可逆容量と呼ぶ。このシリコンの不可逆容量をあらかじめ解消する方法には、電解液中で電気化学的にリチウムと反応させ、不可逆反応分のリチウムと硫黄とのやり取りに使うリチウムをあらかじめ持たせておく、リチウムプリドープという方法が行われている。時間と手間と設備が必要となるため電池工業的に量産化が困難である。本発明の負極2は、シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層に、溶融リチウムを塗布するという構成を採用することにより、リチウムプリドープを達成している。
シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層に、溶融リチウムを接触させることにより、シリコンポリイミド電極のシリコン粒子をシリコン-リチウム合金粒子に変化させることができる。粉末の合材電極と異なり、単位面積当たり質量が小さく、大面積化が可能で、これを全固体電池において有機硫黄系正極材料とともに全固体電池を構築することができる。
溶融リチウムの塗布量は、電池の目付量を増加させること、また、不可逆容量除去と正極容量とのバランスについても考慮し、0.2mg/cm2〜1.2mg/cm2とすることが好ましい。
溶融リチウムは塗布後、全てシリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層中のシリコン粒子と合金を形成し、シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層上にさらにリチウム層が形成されないような態様であってもよい。一方、充分量の溶融リチウムを塗布した場合には、シリコン粒子と合金を形成しない余剰のリチウムが、シリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層上にリチウム層を形成することになる。該リチウム層の量は、正極の不可逆容量を解消するためにこのリチウムを用いることを考慮して、0.03mg/cm2〜0.5mg/cm2であることが好ましく、0.06mg/cm2〜0.36mg/cm2であることがより好ましい。
ポリイミドをバインダーに用いて作製した電極は、合材電極のように比較的量比の多い固体電解質と粒子が緊密に接触しているわけではない。しかしながら、ポリイミドのポリマー鎖に含まれる酸素や窒素を伝ってイオンの移動がなされているためか、それとも硫化物系固体電解質のやわらかさにより、電解質粒子が電極の隙間に押し込められることなどにより、イオン電導が可能となる。
正極及び全固体電池
また本発明の負極(上記した負極1又は2)に、上述した正極を組み合わせた全固体電池とすることも、好ましい。
ここで使用する固体電解質としては、上述した塩素及び/又は臭素を含んだ硫化物系固体電解質を使用することができる。その中でも、ゴム系バインダーを含むものが特に好ましい。ゴム系バインダーを使用することにより、固体電解質の表面劣化を防ぐことができる。
使用するゴム系バインダーは、二次電池の固体電解質に使用される公知のゴム系バインダーを使用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、MP-10、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム等を使用することが可能である。これらは単独で、或いは2種以上を併せて使用することができる。
この際、バインダーの配合量は、電解質層のシートとしての構造を保ちつつ添加による抵抗増加を抑制するという理由から、固体電解質部100質量部あたり、バインダーの固形分換算で、1〜5質量部とすることが好ましい。
固体電解質により実質的に構成される固体電解質部の厚みは、取り扱いやすさと抵抗低減という理由から、0.04〜0.15mmとすることが好ましく、0.05〜0.1mmとすることがより好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
(実施例1)硫化1−ノナノール/Li 6 PS 5 Cl/InLi合金負極全固体リチウム二次電池
硫黄(細井化学99.9%)42.35g、アセチレンブラック(デンカブラック)0.65g、1-ノナノール(1-Nonanol、シグマアルドリッチ98%)1.30gを石英タンマン管(内径80mm、長さ300mm)にいれた。その後、熱電対とガスの出口・入り口をとりつけたシリコーンゴム栓にて密閉にたもち、シリコーンチューブにより窒素ガスを供給し、内部を窒素雰囲気にした。電気炉400℃に設定し試料温度を300℃に保ち、1時間おきに2mlの1-ノナノールを加え、合計10mlを追加し、4時間熱処理を行った。粗生成物を粉砕し、窒素気流下で300℃にして未反応の硫黄を4時間除去し、黒色粉末の硫化1-ノナノール4.75gを得た。
固体電解質は吸湿性が高いため、これらを扱う作業は以下断らない限りすべてアルゴン雰囲気下で行った。固体電解質Li6PS5Clは、LiCl(Wako、99%)0.638g、硫化リチウム(Li2S、三津和化学99.9%)1.714g、五硫化二りん(P2S5,シグマアルドリッチ、99%)1.658gを、ジルコニアポットにジルコニア製円盤をいれ、伊藤製作所製実験用振動式カップミル(MC-4A)にて30分混合した。混合粉を15mmΦのカーボン製ダイスにより1tの力でプレス成型し、ペレットを作製した。ペレットを金るつぼにいれ、石英試験管中真空下で550℃に加熱し、2時間焼成した。得られた生成物を乳鉢で粉砕し標準の固体電解質として用いた。この固体電解質をXRD(RINT TTR-III; 理学製)測定により、8重量パーセントの硫化リチウムが残留する92重量パーセントのLi6PS5Clであることを確認した。10.1mmΦのダイスで約100mgの固体電解質粉を圧縮した(29MPa)ペレットについて、導電率測定を行い、これまで一般的に用いられてきた75Li2S-25P2S5の10倍近い2.2×10-3S/cmの導電率を持つ材料であることを確認した。
硫化1−ノナノール39mg、固体電解質57mg、アセチレンブラック6mgを混合し、正極合材を作製した。固体電解質77mgを10.1mmΦのペット管にいれ、ステンレスダイスで1tの力をかけて圧縮し、固体電解質円盤をPET管内に作りこんだ。固体電解質円盤の1面に正極合材を10mgいれ、2.5tの力でプレスした。固体電解質円盤のもう一方の面に、インジウム箔(ニラコ製99.99%、0.05mmt、10mmΦ)、リチウム箔(本庄金属製0.2mmt、9mmΦ)、インジウム箔(ニラコ製99.99%、0.2mmt、8mmΦ)、をこの順につけ1tの力をかけて圧縮し、硫化1−ノナノール/固体電解質/LiIn電池を作製した。実施例1の電池の断面概略図は、図1の通りである。この電池を、2.4-0.4Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図2に示すように、初回放電では硫化1−ノナノールの硫黄が還元され、リチウムイオンが吸蔵され容量970mAh/gを示した。充電により硫黄の酸化がおきて、硫化1−ノナノールからリチウムイオンが取り出され、再度放電により硫黄の還元がおき、容量691mAh/gを示した。硫黄系正極材料は一般に、この2回目の放電容量が可逆容量に近く、初回放電では可逆容量を超える不可逆容量(約280mAh/g)を含んでいる。インジウムリチウム合金負極が十全に動作することが一般に知られているので、硫化1−ノナノール正極は高容量691mAh/gを示す材料であることが分かった。
(比較例1)硫化1−ノナノール/1MLiPF 6 +EC/DMC(3:7)/Liリチウム二次電池
全固体電池との比較のため、硫化1-ノナノールを一般的な有機電解液を用いた電池に組み込み比較を行った。
硫化1−ノナノール6.1mgをアセチレンブラック5.0mgと混合し、PTFE0.5mgを加えて正極合材とした。キシダ化学製混合電解液1MLiPF6+EC/DMC(3:7)を2滴、正極合材に落とし、電解液に浸したポリプロピレン製セパレータ21mmΦを2枚、ワットマン製グラスフィルター15mmΦ、リチウム箔(本庄金属製0.2mmt)15mmΦを乗せて電池を構成した。3-1Vの範囲で0.1mAの電流で放電から初めて10サイクルさせた。図3に示すように、2回目放電容量は、467mAh/gだった。このことから、全固体電池において、通常の液電池を上回る放電容量が得られていたことが分かった。
(実施例2)硫化1−ノナノール/Li 6 PS 5 Cl/Li負極全固体リチウム二次電池
硫化1−ノナノール39mg、固体電解質57mg、アセチレンブラック6mgを混合し、正極合材を作製した。固体電解質89.5mgを、10.1mmΦのペット管にいれ、ステンレスダイスで1tの力をかけて圧縮し、固体電解質円盤をPET管内に作りこんだ。固体電解質円盤の1面に正極合材を8.2mgいれ、2.5tの力でプレスした。固体電解質円盤のもう一方の面に、リチウム箔(本庄金属製0.2mmt、9mmΦ)をつけ1tの力をかけて圧縮し、硫化1-ノナノール/固体電解質/Li電池を作製した。実施例2の電池の断面概略図は、図4の通りである。この電池を、3-1Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図5に示すように、初回放電では硫化1-ノナノールの硫黄が還元され、リチウムイオンが吸蔵され容量977mAh/gを示した。2サイクル目の放電容量646mAh/gを示し、10サイクル後も413mAh/gを保った。金属リチウムを負極に用いた場合、全固体電池では、針状に成長したリチウムデンドライトが正極に接触して短絡を引き起こすことがしられている。その場合充電時の曲線に乱れや伸びが見られる場合があるが、この電池ではそれらが観察されず充放電を行うことができたことから、リチウム箔を負極として利用できる電池系であることが示された。
(実施例3)硫化1−ノナノール/Li 6 PS 5 Br/Li負極全固体リチウム二次電池
Li6PS5Brは、LiBr(キシダ化学、95%)0.555g、硫化リチウム(Li2S、三津和化学99.9%)0.734g、五硫化二りん(P2S5,シグマアルドリッチ、99%)0.710gを、ジルコニアポットにジルコニア製円盤をいれ、伊藤製作所製実験用振動式カップミル(MC-4A)にて30分混合した。混合粉を15mmΦのカーボン製ダイスにより1tの力でプレス成型し、ペレットを作製した。ペレットを金るつぼにいれ、石英試験管中真空下で550℃に加熱し、2時間焼成した。得られた生成物を乳鉢で粉砕し固体電解質Li6PS5Brとして用いた。このLi6PS5BrをXRD(RINT TTR-III; 理学製)測定により、8重量パーセントの硫化リチウムが残留する92重量パーセントのLi6PS5Brであることを確認した。10.1mmΦのダイスで約100mgの固体電解質粉を圧縮した(29MPa)ペレットについて、導電率測定を行い、2.1×10-3 S/cmの導電率を持つ材料であることを確認した。
硫化1−ノナノール39mg、固体電解質57mg、アセチレンブラック6mgを混合し、正極合材を作製した。Li6PS5Br91.6mgを、10.1mmΦのペット管にいれ、ステンレスダイスで1tの力をかけて圧縮し、固体電解質円盤をPET管内に作りこんだ。固体電解質円盤の1面に正極合材を11.2mgいれ、2.5tの力でプレスした。固体電解質円盤のもう一方の面に、リチウム箔(本庄金属製0.2mmt、8mmΦ)をつけ1tの力をかけて圧縮し、硫化1-ノナノール/固体電解質/Li電池を作製した。この電池を、3-1Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図6に示すように、初回放電では硫化1-ノナノールの硫黄が還元され、リチウムイオンが吸蔵され容量880mAh/gを示した。2サイクル目の放電容量516mAh/gを示した。この電池でも充電時の短絡を示すような現象は観察されなかった。
(比較例2)硫化1−ノナノール/Li 6 PS 5 I/リチウム負極全固体リチウム二次電池
LiI(キシダ化学、97%)0.744g、硫化リチウム(Li2S、三津和化学99.9%)0.638g、五硫化二りん(P2S5,シグマアルドリッチ、99%)0.618gを、ジルコニアポットにジルコニア製円盤をいれ、伊藤製作所製実験用振動式カップミル(MC-4A)にて30分混合した。混合粉を15mmΦのカーボン製ダイスにより1tの力でプレス成型し、ペレットを作製した。ペレットを金るつぼにいれ、石英試験管中真空下で550℃に加熱し、2時間焼成した。得られた生成物を振動式カップミル(MC-4A)にて30分粉砕を4回繰り返し、得られた粉体を固体電解質Li6PS5Iとして用いた。このLi6PS5IをXRD(RINT TTR-III; 理学製)測定により、硫化リチウムが少量残留するLi6PS5Iであることを確認した。10.1mmΦのダイスで約100mgの固体電解質粉を圧縮した(29MPa)ペレットについて、導電率測定を行い、0.5×10-3 S/cmの導電率を持つ材料であることを確認した。
硫化1−ノナノール38mg、Li6PS5Iを64mg、アセチレンブラック5mgを混合し、正極合材を作製した。
Li6PS5I107mgを、10.1mmΦのペット管にいれ、ステンレスダイスで1tの力をかけて圧縮し、固体電解質円盤をPET管内に作りこんだ。固体電解質円盤の1面に正極合材を10mgいれ、2.5tの力でプレスした。固体電解質円盤のもう一方の面に、リチウム箔(本庄金属製0.2mmt、10mmΦ)をつけ1tの力をかけて圧縮し、硫化1-ノナノール/ Li6PS5I/リチウム電池を作製した。この電池を、3-1Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図7に示すように、初回放電では硫化1-ノナノールの硫黄が還元され、リチウムイオンが吸蔵され容量1041mAh/gを示した。2サイクル目の充電時微短絡を示す充電曲線の断裂や振動がみられ、3サイクル以降では充電容量が極端に大きくなる様子が見られた。2サイクル目の放電容量が715mAh/gと高いものの、短絡により効率は低下するためLi6PS5I固体電解質はなんらかの工夫をしなければリチウム箔を負極として利用できないことが分かった。
(実施例4)ポリイミド塗工硫化1−ノナノール正極/Li 6 PS 5 Cl/Li箔負極全固体リチウム二次電池
有機硫黄系正極材料は、従来の有機電解液を用いた電池ではリチウム吸蔵にともなう膨張にも電極が破壊されないポリイミドをバインダーとして使用することでよい特性の電極が得られている(非特許文献1)。このようなよく知られた手法で作製された電極を全固体電池に持ち込むことができれば、電池の工業生産上大きな利点となる。硫化1−ノナノールのポリイミド電極を作製し、全固体電池に適用した。
ポリイミドとして、カプトンHを用いた。カプトンHを構成するモノマー2種を溶液として混合し前駆体を作製した。4,4'-Diaminodiphenyl Ether(Wako) 2.0024g(10mmol)をN-メチル-2-ピロリドーン(キシダ化学、99.5%)18.0761gに溶かした。一方、1,2,4,5-Benzenetetracarboxylic Dianhydride(Wako)2.1849g(10mmol)をN-メチル-2-ピロリドーン 18.013gに溶かした。ぞれぞれ透明な一方の液をもう一方の液に加えたところ茶色に変色し、攪拌によりレモンイエローの溶液となってわずかに発熱した。この際、アミノ基とカルボキシル基が結合してポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液となった。この液の固形分は10重量パーセントである。
硫化1−ノナノール0.2003gを乳鉢ですりつぶし、アセチレンブラック0.0126gと乾式で乳鉢混合後、 N-メチル-2-ピロリドーンを約1ml、上記ポリアミック酸溶液0.345ml(0.375g)を加えて混合した。粘性のあるスラリーとなった。ドクターブレードで塗工厚みを150ミクロンに設定してスラリーをアルミ箔に塗工した。70℃で1晩乾燥してから、窒素気流下300℃で1時間焼成した。作製した電極は以下硫化1−ノナノールポリイミド電極と記述する。
この硫化1−ノナノールポリイミド電極をグローブボックス中で直径10mmにうちぬき、基材のアルミ箔の質量を差し引くと1.1mgの活物質が塗布されており、このうち硫化1−ノナノールは0.88mgであった。ダイスにPET管を乗せ、PET管内に硫化1−ノナノールポリイミド電極をいれ、電極面に固体電解質Li6PS5Cl 81.6mgを乗せ2tでプレスした。固体電解質のもう一方の面にリチウム箔(0.2mmt、8mmΦ)を乗せて1tの力をかけてプレスし電池を作製した。実施例4の電池の断面概略図は、図8の通りである。この電池を、3-1Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図9に示すように、初回放電では容量915mAh/gを示した。2サイクル目の放電容量は442mAh/gを示し、実施例2の合材電極に比べ容量は低いものの、リチウムイオン二次電池正極としては比較的大きな容量を示し、従来のグローブボックス外での電極作製法により得られた硫化1−ノナノールポリイミド電極が動作可能であることが分かった。
全固体電池の電極は、固体電解質と活物質およびアセチレンブラックをゴム系のバインダー等で混合したスラリーをアルゴン雰囲気中で塗工して作製されている。硫化1−ノナノールポリイミド電極は簡便な従来法で作製されている点が優れている。硫化1−ノナノールは、ポリイミドとアセチレンブラックにくるまれており、イオン電導に寄与する固体電解質は接触していても含まれていないため、イオン電導の一部はポリイミド鎖に含まれる酸素や窒素の非共有電子対等を伝っているのではないかと考えられる。
(実施例5)硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極/Li 6 PS 5 Cl/ リチウム塗布銅箔負極全固体リチウム二次電池
やわらかいリチウム箔は全固体電池作製に不可欠な高い圧力の圧縮により、固体電解質のひびなどの小さな隙間を通って正極につきぬけ、短絡を引き起こすことがあり、工業的にリチウム箔そのものを用いることは困難である。そこで、リチウムを薄く銅箔に塗工し、用いることを検討した。
銅箔に金属リチウム箔4mgをのせ、はんだごてで加熱して溶融させ、銅箔に薄く広げることができた。銅箔上のリチウムの目付は1.65mg/cm2であり、負極の容量に換算して6.4mAh/cm2となった。
このリチウム塗工銅箔を直径10.1mmのペット管にいれ、そのうえから固体電解質Li6PS5Clを77.8mgいれ、ステンレスダイスで1tの力をかけて圧縮した。その上から前述の硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極(10mmφ、5.2mg、基材Al箔4.1mg、活物質0.9mg)をいれ、2.5tの力でプレスし電池を作製した。実施例5の電池の断面概略図は、図10の通りである。この電池を、3-1Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図11に示すように、初回放電では容量746mAh/gを示した。2サイクル目の放電容量312mAh/gを示した。リチウムを塗布した銅箔を負極として利用できる電池系であることが示された。
(実施例6)硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極/Li 6 PS 5 Cl/ リチウム塗布チタン箔負極全固体リチウム二次電池
チタン箔(ニラコ製99.5%、0.02mmt)に金属リチウム箔4mgをのせ、はんだごてで加熱して溶融させ、薄く広げてリチウム層を形成した。チタン箔上のリチウムの目付は1.8mg/cm2であり、負極の容量に換算して7.0mAh/cm2であった。
このリチウム塗工チタン箔を10.1mmΦのペット管にいれ、そのうえから固体電解質Li6PS5Clを78.9mgいれ、ステンレスダイスで1tの力をかけて圧縮した。その上から前述の硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極(10mmφ、5.1mg、基材Al箔4.1mg、活物質0.8mg)をいれ、2.5tの力でプレスし電池を作製した。実施例6の電池の断面概略図は、図12の通りである。この電池を、3-1Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図13に示すように、初回放電では容量573mAh/gを示した。2サイクル目の放電容量583mAh/gを示した。放電容量や10サイクル時の容量は銅箔基材を用いた場合を上回る値を示した。リチウムを塗布したチタン箔を負極として利用できる電池系であることが示された。
(実施例7)硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極/Li 6 PS 5 Cl/ リチウム塗布ステンレス箔負極全固体リチウム二次電池
ステンレス箔(ニラコ製SUS316、0.01mmt)に金属リチウム箔4mgをのせ、はんだごてで加熱して溶融させ、薄く広げてリチウム層を形成した。ステンレス箔上のリチウムの目付は1.0mg/cm2であり、負極の容量に換算して3.9mAh/cm2となった。
このリチウム塗工ステンレス箔を10.1mmΦのペット管にいれ、そのうえから固体電解質Li6PS5Clを75.0mgいれ、ステンレスダイスで1tの力をかけて圧縮した。その上から前述の硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極(10mmφ、5.4mg、基材Al箔4.1mg、活物質1.0mg)をいれ、2.5tの力でプレスし電池を作製した。実施例7の電池の断面概略図は、図14の通りである。この電池を、3-1Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図15に示すように、初回放電では容量908mAh/gを示した。2サイクル目の放電容量433mAh/gを示した。放電容量や10サイクル時の容量は銅箔基材を用いた場合を上回る値を示した。リチウムを塗布したステンレス箔を負極として利用できる電池系であることが示された。
(実施例8)硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極/Li 6 PS 5 Cl/ リチウム塗布シリコンポリイミド塗工負極からなる全固体リチウム二次電池
短時間にシリコンにリチウムを担持させる方法として、硫黄系正極が持っていないリチウムを負極に担わせることで、電池系を完成してしまうという発想のもとにリチウム塗工シリコンポリイミド負極を検討した。
シリコンポリイミド負極の作製方法は以下の通り。ナノシリコン(粒径:30〜50nm、Nanostructured & Amorphous Materials)をアセチレンブラックとポリイミドの前駆体であるポリアミック酸(スカイボンド、IST製)とを重量比80: 5: 15で、N-メチル-2-ピロリドーン (NMP)を溶媒として混合しスラリーを作製し、このスラリーを、銅箔上に塗工後、80℃で乾燥し、真空中300℃で10時間処理してポリイミド化を行って、シリコン量が1.5mg/cm2のシリコンポリイミド電極シートを作製した。このシリコンポリイミド電極に金属リチウム箔4mgをのせ、はんだごてで加熱して溶融させ、電極上に薄く広げることができた。
このリチウム塗布シリコンポリイミド負極7.6mg(10mmφ、リチウム1.1mg、シリコンポリイミド1.0mg、基材銅箔5.5mg)を10.1mmΦのペット管にいれ、そのうえから固体電解質Li6PS5Clを74.0mgいれ、ステンレスダイスで1tの力をかけて圧縮した。その上から前述の硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極5.3mg(10mmφ、基材Al箔4.0mg、活物質1.0mg)をいれ、2.5tの力でプレスし電池を作製した。実施例8の電池の断面概略図は、図16の通りである。この電池を、2.7-0.7Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図17に示すように、初回放電では容量1081mAh/gを示した。2サイクル目の放電容量517mAh/gを示した。これにより、正極も負極もポリイミドをバインダーに用いた従来の方法により作製したものが硫化物固体電解質を用いた全固体電池においてフルセルとして使用可能であることが示された。
(実施例9)硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極/ Li 6 PS 5 Cl+ゴムバインダー塗工電解質/ リチウム塗布シリコンポリイミド塗工負極からなる全固体リチウム二次電池
実施例8の硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極/ 圧粉Li6PS5Cl/ リチウム塗布シリコンポリイミド塗工負極からなる全固体リチウム二次電池は、電解質である圧粉Li6PS5Clが74mgと、電池全体の質量の85%を占める。この電解質を低減することが電池のエネルギー密度に寄与する。そこで、ゴム系バインダーにより電解質スラリーを作製し、正極への塗工により電池の軽量化、薄層化を検討した。
実施例8で用いたものと同様なポリイミドをバインダーとした負極、リチウム塗布シリコンポリイミド負極8.9mg(10mmφ、リチウム2.4mg、シリコンポリイミド1.0mg、基材銅箔5.5mg)を用いた。また、固体電解質(Li6PS5Cl)107.1mgにヘプタン(キシダ化学、99%)0.7ml、ゴム系バインダー(MP-10)1.4mgを含むヘプタン溶液(3滴)を加えスラリーを作製し、硫化1−ノナノール+アセチレンブラックのポリイミド塗工正極(10mmφの質量5.7mg、基材Al箔4.1mg、活物質1.3mg、固体電解質+ゴムバインダーの質量14.9mg)に塗工した。この塗工電極の10mmφの質量は20.6mgであった。
このリチウム塗布シリコンポリイミド負極を重ねて10.1mmΦのペット管にいれ、ステンレスダイスで2tの力をかけて圧縮し電池を作製した。実施例9の電池の断面概略図は、図18の通りである。この電池を、3.0-0.6Vの範囲で、放電から開始し、電流0.05mAに固定して、充放電を行った。図19に示すように、初回放電では容量582mAh/gを示した。2サイクル目の放電容量173mAh/gを示した。圧粉した固体電解質よりも容量は低下しているものの塗工固体電解質のゴムバインダーを用いることで、電池全体の質量は29.5mgと圧粉電池の86.9mgの3分の一となり、厚みも0.70mmから0.24mmに薄くつくることができた。実用に要求される体積で動作する電池を作製することができた。

Claims (6)

  1. 有機硫黄系正極、塩素及び/又は臭素を含んだ硫化物系固体電解質、及び、リチウム層を有する負極を備えることを特徴とする、全固体電池。
  2. 前記正極は、ポリイミド系樹脂バインダーを含有する、請求項1に記載の全固体電池。
  3. 前記リチウム層を有する負極は、前記リチウム層並びに、
    銅、チタン及びステンレスからなる群より選択される1種以上を含む遷移金属層の積層体であり、
    前記リチウム層は、前記硫化物系固体電解質と前記遷移金属層との間に設けられている、請求項1又は2に記載の全固体電池。
  4. 基材の片面に設けられたシリコン粒子含有ポリイミド系樹脂バインダー層に、溶融リチウムを塗布して得られることを特徴とする、負極。
  5. ポリイミド系樹脂バインダーを含有する有機硫黄系正極、塩素及び/又は臭素を含有する硫化物系固体電解質、及び請求項4に記載の負極を有する、全固体電池。
  6. 前記硫化物系固体電解質は、ゴム系バインダーを含有する、請求項5に記載の全固体電池。

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