JPWO2019093441A1 - 非晶質遷移金属酸化物及びその利用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、A群(Ca、Sr、Ba及び希土類元素(RE))元素、コバルト及びB群(Co以外の3d遷移元素)元素を含む非晶質遷移金属酸化物。高分解能透過電子顕微鏡観察において粒径が0.1〜10nmの範囲のクラスター構造が見られる。クラスター構造部はγ -CoOOH型の元素配列構造又はこれに類似する元素配列構造を有する。クラスター構造部におけるA群元素、コバルト及びB群元素のモル比は、0〜1.99:0.01〜1.0: 1.0の範囲、マトリクス部におけるA群元素、コバルト及びB群元素のモル比は、1.0以上、2.0未満:1以上: 1.0の範囲である。この非晶質遷移金属酸化物を含む空気極用触媒及び水電解陽極用触媒。この触媒を含む金属空気二次電池用空気極、及び上記触媒を含む空気極と、負極活物質を含有する負極と、前記空気極と前記負極との間に介在する電解質と、を有する金属空気二次電池を開示する。

Description

本発明は、非晶質遷移金属酸化物及びその利用に関する。さらに本発明は、非晶質遷移金属酸化物を用いる空気極用触媒及び水電解陽極用触媒に関する。加えて本発明は、前記空気極用触媒を用いる金属空気二次電池に関する。
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月10日出願の日本特願2017−217778号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
近年、太陽エネルギーを利用した水分解による水素製造や金属空気二次電池の開発が盛んに行われている。中でも金属空気二次電池は、現在主流であるリチウムイオン二次電池に代わる新たな高容量蓄電池として期待されており、2030年頃の普及を目指して研究開発が進められている。しかしながら現状では実用化に向けて解決すべき課題が種々挙げられており、その1つとして高活性酸素発生反応(OER)触媒の開発が挙げられる。
一般にOERには大きな過電圧が生じることが知られており、このために十分な充放電効率が得られていないのが現状である。そのため、充電時の電圧を大きく左右する高活性OER触媒の開発が急務となっている。一般的にOERに対して高活性な触媒として、PtやIrO2、RuO2(2.5〜3.0 mA/cm2@1.6 V vs RHE、0.1 mol dm-3 NaOH水溶液中)[非特許文献1]などの貴金属触媒が知られている。しかしながら、これら貴金属はコストが高く埋蔵量も少ないため、広く普及させるためには貴金属を含まないOER触媒の開発が必要である。
最近では貴金属を含まない非貴金属OER触媒として、ペロブスカイト型遷移金属酸化物ABO3が報告されている。ペロブスカイト型酸化物はBサイトに遷移金属を有し、酸素6つと結合した八面体構造から成る。最近ではこのBサイト遷移金属のeg電子数がそのOER活性と関連していることが報告されており、eg電子数が1付近のLa0.5Ca0.5CoO3-δなどが高活性(1.5 mA/cm2@1.6 V vs RHE、0.1 mol dm-3 NaOH水溶液中)[非特許文献2]であることが報告されている。
さらに、これまで酸素発生触媒として注目されてこなかったブラウンミラーライト型遷移金属酸化物A2B2O5を用いることによりOER反応に対してPt触媒に匹敵する活性を示し、中でも2種類の遷移金属を含むものを用いることにより、貴金属触媒を凌ぐ活性を示すことが報告されている(特許文献1)。
また、新たな構造を有するOER触媒の例として、CoOOHナノシート構造を有する材料が報告されている(非特許文献3)。この材料は、α-Co(OH)2シートをClアニオン及び水の存在下で超音波処理することで、層の剥離を行い次いで、NaClOを用いて酸化処理することで調製され、Fig.1bのTEM像及び1cのAFMM像によれば、200〜300nmの粒子サイズを有する。さらに、Fig.1dのXRDの結果によれば、結晶性を有する。
特許文献1:WO2015/115592
非特許文献1:Y. Lee, et al., J. Phys. Chem. Lett. 2012, 3,399.
非特許文献2:SuntivichScience 2011, 334, 1383.
非特許文献3:J.Huang, et al., Angewandte_Chemie_International_Edition 2015, 54, 8722-8727
特許文献1及び非特許文献1〜3の全記載は、ここに特に開示として援用される。
特許文献1に記載されている2種類の遷移金属を含むブラウンミラーライト型遷移金属酸化物A2B2O5は、貴金属触媒を凌ぐOER活性を示すものである。しかし、OER活性がより高い触媒の開発が必要とされている。また、非特許文献3に記載の材料は製造方法が複雑であり、OER活性も高くないことからさらに改善の余地がある。
そこで本発明の目的は、OER活性がより高い新たな遷移金属酸化物触媒を開発し、さらにこの触媒を用いた空気極用触媒や水電解陽極用触媒、空気極及び空気二次電池を提供することにある。
上記のように非貴金属OER触媒は今後の新規エネルギー材料として期待されているが、特許文献1で報告されているブラウンミラーライト型遷移金属酸化物においても未だそのOER活性は十分とは言えない。本発明では、ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物A2B2O5よりも、さらに高いOER活性を示す酸化物触媒を見出し、本発明を完成した。
本発明は以下の通りである。
[1]
下記A群から選ばれる1種又は2種以上の元素、B群から選ばれる1種又は2種以上の元素及びコバルトを含む非晶質の酸素非欠損型又は酸素欠損型の遷移金属酸化物であり、
但し、A群は、Ca、Sr、Ba及び希土類元素(RE)からなり、
B群は、Co以外の3d遷移元素からなり、
かつ高分解能透過電子顕微鏡観察において粒径が0.1〜10nmの範囲のクラスター構造が見られる酸化物であって、前記クラスター構造部はγ-CoOOH型の元素配列構造又はこれに類似する元素配列構造を有する遷移金属酸化物。
[2]
γ-CoOOH型の元素配列構造又はこれに類似する元素配列構造は、CoO6八面体が陵共有により二次元的に連結して形成する[CoOx]平面単分子層に、電荷補償のためのプロトンが配位した[CoOxHy]平面単分子層がn層積層してできる[CoOxHy]n分子層であって、[CoOxHy]平面単分子層の一辺が10nm以下であり、xは1.5〜2.0の範囲であり、yは0.01〜1の範囲であり、nは平面単分子層の分子層平面に垂直な方向(c軸方向)への積層数であり、1〜25の範囲であり、[CoOxHy]平面単分子層中のCoの一部がFeで置換されていてもよく、またCoO6八面体の酸素の一部が欠損していてもよい、[1]に記載の遷移金属酸化物。
[3]
前記クラスター構造部が前記マトリクス部に分散している[1]又は[2]に記載の酸化物。
[4]
制限視野電子線回折像において回折パターンは見られず、ハローパターンを示す、[1]〜[3]のいずれかに記載の酸化物。
[5]
前記元素のモル比は、電子エネルギー損失分光法により求める[1]〜[4]のいずれかに記載の酸化物。
[6]
下記一般式(1)で示されるブラウンミラーライト型遷移金属酸化物を非晶質化することを含む、
γ-CoOOH型の元素配列構造又 はこれに類似する元素配列構造を有し、高分解能透過電子顕微鏡観察において粒径が0.1〜10nmの範囲のクラスター構造を有する、非晶質の酸素非欠損型又は酸素欠損型の遷移金属酸化物の製造方法。
AxB1 2-yB2 yO5 (1)
式中、Aは、Ca、Sr、Ba又は希土類元素(RE)を表し、
B1は、Coを表し、
B2は、Co以外の3d遷移元素を表し、
xは、1.5〜2.0の範囲の数値であり、
yは、0〜1.0の範囲の数値である。
[7]
非晶質化は、ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物を、アルカリ水溶液に浸漬すること、又はアルカリ水溶液中で分極処理することを含む、[6]に記載の製造方法。
[8]
[1]〜[5]のいずれかに記載の非晶質遷移金属酸化物又は[6]若しくは[7]に記載の方法で製造された非晶質遷移金属酸化物を含む空気極用触媒。
[9]
[1]〜[5]のいずれかに記載の非晶質遷移金属酸化物又は[6]若しくは[7]に記載の方法で製造された非晶質遷移金属酸化物を含む水電解陽極用触媒。
[10]
表面積が0.1〜100m2/gの範囲である[8]又は[9]に記載の触媒。
[11]
[8]又は[10]に記載の触媒を含む金属空気二次電池用空気極。
[12]
前記非晶質金属酸化物は酸素発生用触媒として含有され、酸素還元用触媒をさらに含む[11]に記載の空気極。
[13]
[11]又は[12]に記載の空気極と、負極活物質を含有する負極と、前記空気極と前記負極との間に介在する電解質とを有する金属空気二次電池。
[14]
酸素還元用触媒を含む酸素還元用空気極をさらに含む[13]に記載の金属空気二次電池。
本発明によれば、非晶質遷移金属酸化物であって、マトリクス構造中に粒径が0.1〜10nmの範囲のクラスター構造が見られる新規な酸化物が提供され、この酸化物は、ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物A2B2O5より高いORR活性を示すことから、優れた空気極用触媒や水電解陽極用触媒を提供することができる。さらに本発明によれば上記空気極用触媒を用いた金属空気二次電池用空気極、及びこの空気極を用いた金属空気二次電池も提供できる。
図1はCa2FeCoO5カーボンシート電極試料を,1.7V vs RHEで20 h定電位分極し酸素発生反応(OER)させたときの電流−時間曲線である。 (a)は,図1の20 h定電位OER前後の試料について,1.2 V vs RHEから1.7 V vs RHEまで電位走査しOERさせたときの電流−電圧曲線を示す。(b)は,図1の20 h 定電位OER前後の試料について,1.0 V vs RHEから0.6 V vs RHEまで電位走査し酸素還元反応(ORR)させたときの電流−電圧曲線を示す。 図1の1.7 V vs RHEで20 h分極前後のCa2FeCoO5電極試料のXRDパターンを示す。 (a)1.7 V vs RHEで1 h OER分極前の高分解能透過電子顕微鏡(TEM)像と制限視野電子線回折像を示す。(b)1.7 V vs RHEで1 h OER分極後の高分解能透過電子顕微鏡(TEM)像と制限視野電子線回折像を示す。アモルファス中に濃色のナノクラスターが分散していることがわかる。いくつかの例を黄点線で囲って示してある。 Ca2FeCoO5をKOHで80℃24h化学処理したときの(a)OER分極曲線および(b)ORR分極曲線を示す。 Ca2FeCoO5をKOHで80℃24h化学処理したときのXRDパターンを示す。 分極前(As prepared)および20 mA cm-2定電流条件で1時間アノード分極したCa2FeCoO5試料の(a) Co K吸収端および(b) Fe K吸収端近傍X線吸収スペクトル(XANES)。広域X線吸収微細構造(EXAFS)より決定したCo原子((c))およびFe原子((d))周囲の動径分布。(c)および(d)はAs preparedおよび1時間アノード分極したCa2FeCoO5試料の比較、また(c)および(d)にはγ-CoOOH構造モデル(図8)を用いたFitting結果(点線)を併せて示した。 γ-CoOOH(六方晶)の結晶構造モデルを示す。赤球(小)、青球(大)および白球(小、層の間に孤立)は、それぞれ酸素原子、コバルト原子および水素原子を示している。 カーボンシート上に担持したCa2FeCoO5を、40 mA cm-2定電流で2hアノード分極し、その後15分開回路電位で保持するOER分極サイクルを一か月繰り返した時の電流−時間曲線である。 本発明の金属空気二次電池の一構成例を示す。
<非晶質遷移金属酸化物>
本発明は、下記A群から選ばれる1種又は2種以上の元素、B群から選ばれる1種又は2種以上の元素及びコバルトを含む非晶質の酸素非欠損型又は酸素欠損型の遷移金属酸化物であり、かつ高分解能透過電子顕微鏡観察において粒径が0.1〜10nmの範囲のクラスター構造が見られる酸化物であって、
前記クラスター構造部はγ-CoOOH型の元素配列構造又はこれに類似する元素配列構造を有する遷移金属酸化物である。
本発明の非晶質遷移金属酸化物は、クラスター構造部がクラスター構造部以外の部分であるマトリクス部に分散した構造を有する。この構造は、高分解能透過電子顕微鏡観察により観察確認することができる。さらに、クラスター構造部は粒径が0.1〜10nmの範囲であり、実施例で示したクラスター構造は、粒径が約0.5〜5nmの範囲であった。本発明の非晶質遷移金属酸化物は、制限視野電子線回折像において回折パターンは見られず、かつハローパターンを示すことから、非晶質の酸化物である。また、本発明の非晶質遷移金属酸化物は、XRDによっても、結晶による回折ピークが観察されず、この点でも、非晶質の酸化物である。但し、マトリクス部は非晶質であるが、クラスター構造部が非晶質であるか否かは問わない。本発明の酸化物における非晶質とは、制限視野電子線回折像において回折パターンは見られず、かつハローパターンを示すことを意味する。本発明の非晶質遷移金属酸化物は、少なくともこれら粒径及びXRDによって結晶による回折ピークが観察されないことから、非特許文献3に記載の材料とは明らかに異なる材料である。
本発明の遷移金属酸化物のクラスター構造部は、γ-CoOOH型の原子配列構造と同一又は類似する原子配列構造を有する。γ-CoOOH型の原子配列構造とは、γ-CoOOH(六方晶)の結晶構造モデルが有する原子配列構造であり、図8にγ-CoOOH(六方晶)の結晶構造モデルを示す。図中の赤球(小)、青球(大)および白球(小、層の間に孤立)は、それぞれ酸素原子、コバルト原子および水素原子を示している。γ-CoOOHは、CoO6八面体の陵共有によって形成する[CoO2]平面分子層が、プロトンを介した水素結合によってc軸上積層した層状構造をもつ。本発明の遷移金属酸化物は、図8に示すγ-CoOOH(六方晶)の結晶構造モデルと同一又は類似する原子配列構造を有する。このような原子構造は、製造方法において後述するが、OER分極により原子の再配列が起り、酸化物マトリクス中にCoリッチな酸化物部分が形成され、それがγ-CoOOHによく似た配列構造を形成したものと推察される。図4bに高分解能TEMにより観測された本発明の酸化物におけるクラスター構造部を示すが、このクラスター構造部は、γ-CoOOH型の原子配列構造と同一又は類似する原子配列構造もつクラスター構造部である。尚、本発明のクラスター構造部は酸素欠損を有することがあることから、酸素欠損がある部分はγ-CoOOH型の原子配列構造と同一ではなく、γ-CoOOH型の原子配列構造と類似する原子配列構造を有する、と定義する。
本発明の遷移金属酸化物は、より具体的には、CoO6八面体が陵共有により二次元的に連結して形成する[CoOx]平面単分子層に、電荷補償のためのプロトンが配位した[CoOxHy]平面単分子層がn層積層してできる[CoOxHy]n分子層シート状物質のクラスター構造部を含有する遷移金属酸化物であって、[CoOxHy]平面単分子層の一辺が10nm以下であり、xは1.5〜2.0の範囲であり、yは0.01〜1の範囲であり、nは平面単分子層の分子層平面に垂直な方向(c軸方向)への積層数であり、1〜25の範囲であり、[CoOxHy]平面単分子層中のCoの一部がFeで置換されていてもよく、またCoO6八面体の酸素の一部が欠損していてもよい、酸化物である。
本発明の遷移金属酸化物のクラスター構造部は、[CoOx]平面単分子層に電荷補償のためのプロトンが配位した[CoOxHy]n分子層シート状物質のクラスター構造部である。実施例に示すEXAFSフィッティング結果より、Co周りの酸素配位数は1時間分極の場合5.1であた(表2)。一方酸素欠損が全くない [CoO2]平面分子層シートにおけるCo配位数は6となる。従って、実験例で示した本発明の遷移金属酸化物のクラスター構造部は、酸素欠損を有する[CoOX]n分子層シートを基本骨格にもつ材料であると考えられる。一方、図3 に示すXRDの結果より本発明の遷移金属酸化物にはγ-CoOOH のXRDピークが現れないことから、このクラスター構造部はc軸方向への積層は、存在はするが発達はしていないと考えられる。従って本発明の遷移金属酸化物のクラスター構造部は平面垂直方向の積層が存在はするが発達はしていない、[CoOX]n分子層と電荷補償のためのプロトンが配位した[CoOXHy]n分子層シート状物質であると同定された。このような[CoOXHy]n分子層シート状物質の原子配列構造は、γ-CoOOH型の原子配列構造と同一ではなく、γ-CoOOH型の原子配列構造と類似する原子配列構造を有する、と言える。
[CoOXHy]n分子層シートにおけるxは1.5〜2.0の範囲、好ましくは1.6〜1.9の範囲であり、yは0.01〜1の範囲、好ましくは0.05〜0.5の範囲であり、nは1〜25の範囲である。本発明の酸化物のクラスター構造部は、TEM像において観察されるクラスター構造部の最大外径は0.3〜10nmの範囲であり、好ましくは0.6〜7nmの範囲、より好ましくは0.9〜5nmである。CoO6八面体の直径は約0.29 nm(ほぼ0.3nm)であり、また[CoOXHy]単分子層の層間距離は0.4 nm程度である。最大直径10nmのクラスター構造部を想定するとこの粒子径のクラスター構造部を構成するためには、[CoOXHy]単分子層内のCoOXHy八面体分子の数は、10/0.29 x 10/0.29 (約1200)であり、最大直径7nmの範囲の場合は7/0.29 x 7/0.29(約580)であり、最大直径5nmの範囲の場合は5/0.29 x 5/0.29(約300)である。
上記のように本発明の酸化物のクラスター構造部は平面垂直方向の積層が存在はするが発達はしていない[CoOXHy]n分子層シート状物質であり、nは平面単分子層の分子層平面に垂直な方向(c軸方向)への積層数である。最大直径0.3〜10nmのクラスターを想定するとnは1〜10/0.4(約25)である。従って、上記nは1〜25の範囲である。さらに、直径0.6〜7nmの範囲の場合、nは2〜7/0.4(約18)であり、直径0.9〜5nmの範囲の場合、nは2または3〜5/0.4(約12)である。
本発明の酸化物において、
A群は、Ca、Sr、Ba及び希土類元素(RE)からなり、
B群は、Co以外の3d遷移元素からなる。
A群元素は、Ca、Sr、Ba及び希土類元素(RE)からなる。希土類元素(RE)は、Sc、Yの2元素とランタノイドの15元素であり、ランタノイドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luである。希土類元素(RE)は、好ましくは、比較的イオン半径の大きなLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gdなどを例示できる。
B群元素は、Co以外の3d遷移元素。Bで表される3d遷移元素は、例えば、Fe、Mn、Cr、Ni、Ti、Cu、Znから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。B群元素は、OER活性がより高い新たな遷移金属酸化物触媒を提供するという観点から好ましくは、鉄である。
OER活性がより高い新たな遷移金属酸化物触媒を提供するという観点から、前記クラスター構造部におけるA群元素、B群元素及びコバルトのモル比は、0〜1.99:0.01〜1.0: 1.0の範囲であり、好ましくは0.01〜1.0:0.1〜1.0: 1.0の範囲である。同様に、OER活性がより高い新たな遷移金属酸化物触媒を提供するという観点から好ましくは、前記クラスター構造部以外の部分であるマトリクス部におけるA群元素、B群元素及びコバルトのモル比は、0.01以上、2.0未満:0.5以上: 1.0の範囲であり、好ましくは0.01以上、2.0未満:1以上: 1.0の範囲であり、より好ましくは0.5〜1.9:0.5〜2.0: 1.0の範囲である。
前記元素のモル比は、電子エネルギー損失分光法により求めることができる。
本発明の非晶質の遷移金属酸化物は酸素非欠損型又は酸素欠損型である。酸素非欠損型の酸化物は、酸素とその他の元素との比が化学量論比であるのに対して、酸素欠損型の酸化物では、酸素は、その他の元素の量に比べて、化学量論比より少ない。酸素欠損型である場合、酸素欠損の程度(化学量論比より少ない程度)には特に制限はないが、例えば、酸素以外の元素の価数の総量の0を超え25%以下であることができる。但し、これより多い酸素欠損が有ってもよい。
<製造方法>
本発明の遷移金属酸化物はブラウンミラーライト型遷移金属酸化物を非晶質化することで製造することができる。
さらに本発明は、下記一般式(1)で示されるブラウンミラーライト型遷移金属酸化物を非晶質化することを含む、γ-CoOOH型の元素配列構造又はこれに類似する元素配列構造の平面分子層シート状物質であり、高分解能透過電子顕微鏡観察において粒径が0.1〜10nmの範囲のクラスター構造を有する、非晶質の酸素非欠損型又は酸素欠損型の遷移金属酸化物の製造方法を包含する。
AxB1 2-yB2 yO5 (1)
式中、Aは、Ca、Sr、Ba又は希土類元素(RE)を表し、
B1は、Coを表し、
B2は、Co 以外の3d遷移元素を表し、
B1及びB2は異なる元素からなり、
xは、1.5〜2.0の範囲の数値であり、
yは、0〜1.0の範囲の数値である。
非晶質化は、ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物を、例えば、アルカリ水溶液に浸漬すること、又はアルカリ水溶液中で分極処理することで実施できる。
アルカリ水溶液浸漬は、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液に、例えば、0〜80℃の温度範囲で浸漬することで実施できる。アルカリ水溶液の濃度は特に限定はないが、ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物の種類、浸漬温度、非晶質化に要する時間等を考慮して、例えば、0.1M〜10Mの範囲とすることができる。浸漬時間は、ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物の種類、浸漬温度、アルカリ水溶液濃度等を考慮して、適宜決定できる。
アルカリ水溶液中での分極処理は、アルカリ水溶液浸漬で示したと同様のアルカリ水溶液を電解液として用い、RHE基準で例えば、1.0〜2.0Vの電位を印加することで実施できる。電解液の温度や電解時間は、ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物の種類と非晶質化の進捗を考慮して適宜決定できる。アルカリ水溶液浸漬に比べて、アルカリ水溶液中での分極処理の方が、アルカリ水溶液の濃度が同一であれば、短時間での処理が可能な場合がある。
非晶質化に供されるブラウンミラーライト型遷移金属酸化物は、例えば、下記一般式(1)で示される結晶質の遷移金属酸化物であることができる。
AxB1 2-yB2 yO5 (1)
式中、Aは、Ca、Sr、Ba又は希土類元素(RE)を表し、
B1は、Coを表し、
B2は、Co 以外の3d遷移元素を表し、
B1及びB2は異なる元素からなり、
xは、1.5〜2.0の範囲の数値であり、
yは、0〜1.0の範囲の数値である。
一般式(1)で示される遷移金属酸化物の例としては、例えば、組成式としては、Ca2FeCoO5を挙げることができる。ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物は、特許文献1に記載されている方法や下記文献に記載の方法を参照して、それぞれの金属酸化物を原料として固相反応法により合成することができる。例えば、Ca2FeCoO5についての合成方法は、下記非特許文献4〜7を参照できる。
[非特許文献4] P.Berastegui et al., Mater. Res. Bull. 1999, 34, 303.
[非特許文献5] F.Ramezanipour et al., Chem. Mater. 2010, 22, 6008.
[非特許文献6]F. Ramezanipour et al., J. Solid State Chem. 2009, 182,153.
[非特許文献7]F. Ramezanipour et al., J. Am. Chem. Soc. 2012, 134,3215.
ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物は、固相反応法に加えて、液相反応法を用いても合成することができる。液相反応法には、それぞれの金属酸化物の原料としてそれぞれの金属の塩、例えば、硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩等を用いる。例えば、Ca2FeCoO5を合成する場合、Ca塩(例えば、Ca(NO3)2)、Fe塩(例えば、Fe(NO3)3)・9H2O)、Co塩(例えば、Co(NO3)2)・6H2O)を用い、かつゲル化剤としてクエン酸を添加した混合物を溶媒として、例えば、水(蒸留水またはイオン交換水)等を用いて混合する。各金属塩の比率は、目的とする金属酸化物の組成を考慮して適宜決定する。ゲル化剤として用いるクエン酸の量は、金属塩100質量部に対して、例えば、10〜1000質量部の範囲とすることができる。ゲル化剤としてはクエン酸以外に、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)やグリシン等を用いることもできる。上記混合物を、例えば、50〜90℃に加熱して溶媒を除去することで混合物をゲル化させる。このゲル化物を、例えば、空気中、300〜500℃(例えば、450℃)で10分〜6時間(例えば、1時間)仮焼成して前駆体を合成する。次にこの前駆体を、例えば、大気中、600〜800℃で1〜24時間焼成することで、ブラウンミラーライト型のCa2FeCoO5を合成することができる。焼成条件は、例えば、600℃で所定時間(1〜12時間)焼成した後、温度を上げて、例えば、800℃で所定時間(6〜12時間)焼成することもできる。
実施例において詳細を示すが、本発明の非晶質遷移金属酸化物を触媒として用いると同一又は類似する組成を有するブラウンミラーライト型遷移金属酸化物とOER活性は同等であり、より高いORR活性を示す。例えば、ブラウンミラーライト型Ca2FeCoO5を原料に、これを非晶質化したCa、Fe及びCoを含有する非晶質酸化物は、原料としたブラウンミラーライト型Ca2FeCoO5に比べて高いORR活性を示す。OER活性は同等である。
<電極用触媒>
本発明は、本発明の非晶質遷移金属酸化物を含む空気極用触媒を包含する。
さらに本発明は、本発明の非晶質遷移金属酸化物を含む水電解陽極用触媒を包含する。本発明の空気極用触媒及び水電解陽極用触媒は、本発明の非晶質遷移金属酸化物に加えて、上記一般式(1)で示されるブラウンミラーライト型遷移金属酸化物を含有することもできる。
本発明の非晶質遷移金属酸化物を含む空気極用触媒及び水電解陽極用触媒は、表面積が例えば、1〜100m2/gの範囲であることができ、好ましくは、10〜100m2/gの範囲である。但し、この範囲に限定される意図ではない。
本発明の非晶質遷移金属酸化物は、空気極用として極めて有用であり、光水分解による水素製造や、次世代型高容量二次電池として期待されている金属空気二次電池の空気極として極めて有望である。
水電解の陽極における反応は、下記の反応式で表される。
O→O+4H+4e(中性から酸性)
4OH→O+2HO+4e(塩基性)
いずれの反応も、酸素発生反応(OER)である。本発明の非晶質遷移金属酸化物は優れたOER活性を有する物であり、水電解陽極用触媒として、極めて有用である。
<空気極>
空気極は、通常、多孔質構造を有し、酸素反応触媒の他、導電性材料を含む。また、空気極は、必要に応じて、酸素還元(ORR)触媒、バインダー等を含んでいてもよい。二次電池における空気極には、充電時の機能としてOER触媒活性と、放電時の機能としてORR触媒活性を有することを要する。本発明の触媒はOER触媒であるので、空気極には、この触媒に加えて、ORR触媒を含有させることもできる。空気極における充電及び放電時の化学式を以下に示す。
空気極における本発明の触媒(OER触媒)の含有量は、特に限定されないが、空気極の酸素反応性能を高める観点から、例えば、1〜90質量%であることが好ましく、特に10〜60質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。
ORR触媒の例としては、特に制限はないが、例えば、PtまたはPt系材料(例えば、PtCo、PtCoCr、Pt-W2C、Pt-RuOxなど)、Pd系材料(例えば、PdTi、PdCr、PdCo、PdCoAuなど)、金属酸化物(例えば、ZrO2-x、TiOx、TaNxOy、IrMOxなど)、錯体系(Co-ポルフィリン錯体)、その他(PtMoRuSeOx、RuSeなど)を挙げることができる。さらに、Suntivichらが高活性と報告しているLaNiO3(Nat. Chem. 3, 546 (2011))、Liらが報告しているCoO/N-doped CNT(Nat. Commun. 4, 1805 (2013)) なども例示できる。但し、これらに限定される意図ではない。また、各触媒の性能や性質を考慮して複数の触媒を組み合わせて用いることもできる。さらに上記触媒には、助触媒(例えば、TiOx、RuO2、SnO2など)を組み合わせて用いる事もできる。ORR触媒を併用する場合の含有量は、ORR触媒の種類や触媒活性等を考慮して適宜決定することができ、例えば、1〜90質量%であることができる。但し、この数値範囲に限定される意図ではない。
導電性材料としては、特に限定されず、導電助剤として一般的に使用可能なものであればよいが、好適なものとして導電性カーボンが挙げられる。具体的には、メソポーラスカーボン、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が挙げられる。空気極において多くの反応場を提供することから、比表面積が大きい導電性カーボンが好ましい。具体的には、比表面積が1〜3000m/g、特に500〜1500m/gである導電性カーボンが好ましい。空気極の触媒は、導電性材料に担持させてもよい。
空気極における導電性材料の含有量は、特に限定されないが、放電容量を高める観点から、例えば、10〜99質量%であることが好ましく、特に20〜80質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。
空気極にバインダーを含有させることで、触媒や導電性材料を固定化し、電池のサイクル特性を向上させることができる。バインダーとしては特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びその共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びその共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。空気極におけるバインダーの含有量は、特に限定されないが、カーボン(導電性材料)と触媒との結着力の観点から、例えば、1〜40質量%であることが好ましく、特に5〜35質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。
空気極は、例えば、上記した空気極構成材料を適当な溶媒に分散させて調製したスラリーを基材上に塗布、乾燥することで形成することができる。溶媒としては、特に限定されず、例えば、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。空気極構成材料と溶媒との混合は、通常、3時間以上、好ましくは4時間行うことが好ましい。混合方法は特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。
スラリーを塗布する基材は、特に限定されず、ガラス板、テフロン(登録商標)板等が挙げられる。これら基材は、スラリーの乾燥後、得られた空気極から剥離される。或いは、空気極の集電体や、固体電解質層を、上記基材として扱うこともできる。この場合、基材は剥離せずに、金属空気二次電池の構成部材としてそのまま利用する。
スラリーの塗布方法、乾燥方法は、特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。例えば、スプレー法、ドクターブレード法、グラビア印刷法等の塗布方法、加熱乾燥、減圧乾燥等の乾燥方法を採用することができる。
空気極の厚さは、特に限定されず、金属空気二次電池の用途等に応じて適宜設定すればよいが、通常、5〜100μm、10〜60μm、特に20〜50μmであることが好ましい。
空気極には、通常、空気極の集電を行う空気極集電体が接続される。空気極集電体の材料、形状は特に限定されない。空気極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタン、炭素(カーボン)等が挙げられる。また、空気極集電体の形状としては、箔状、板状、メッシュ(グリッド状)、繊維状等が挙げられ、中でもメッシュ状等の多孔質形状であることが好ましい。多孔質形状の集電体は、空気極への酸素供給効率に優れているからである。
<金属空気二次電池>
本発明の金属空気二次電池は、上記非晶質遷移金属酸化物を含む触媒を含有する空気極と、負極活物質を含有する負極と、空気極と負極との間に介在する電解質と、を有する。本発明の金属空気二次電池の空気極には、非晶質遷移金属酸化物遷移金属酸化物を含む触媒が含有され、この触媒は優れたOER触媒特性を示す。従って、この触媒を用いた空気極を用いることで、本発明の金属空気二次電池は、充電速度及び充電電圧に優れたものとなる。
また、空気極は前記のようにORR触媒活性を有する触媒を共存させることもできる。あるいは、非晶質遷移金属酸化物を含む触媒を含有する酸素発生(OER)用の空気極とは別に、ORR触媒活性を有する触媒を含む酸素還元(ORR)用の空気極を設けることもできる。この場合、金属空気二次電池は、酸素還元用の空気極と酸素発生用の空気極とを有することになる(3電極方式)。放電時には酸素還元用の空気極が用いられ、充電時には酸素発生用の空気極が用いられる。ORR触媒活性を有する触媒は前述の通りであり、この触媒と上記空気極の説明で記載した導電性材料及びバインダー等を用いて酸素発生用の空気極を得ることができる。
以下、本発明の金属空気二次電池の一構成例について説明する。尚、本発明の金属空気二次電池は、以下の構成に限定されるものではない。図10は、本発明の金属空気二次電池の一形態例を示す断面図である。金属空気二次電池1は、酸素を活物質とする空気極2、負極活物質を含有する負極3、空気極2及び負極3の間でイオン伝導を担う電解質4、空気極2の集電を行う空気極集電体5、及び負極3の集電を行う負極集電体6からなり、これらが図示しない電池ケースに収容されている。空気極2には、該空気極2の集電を行う空気極集電体5が電気的に接続され、空気極集電体5は、空気極2への酸素供給が可能な多孔質構造を有している。負極3には、該負極3の集電を行う負極集電体6が電気的に接続され、空気極集電体5及び負極集電体6の端部のうち一方は、電池ケースから突出している。それぞれ、正極端子(図示せず)、負極端子(図示せず)として機能する。
(負極)
負極は、負極活物質を含有する。負極活物質としては、一般的な空気電池の負極活物質を用いることができ、特に限定されるものではない。負極活物質は、通常、金属イオンを吸蔵・放出することができるものである。具体的な負極活物質としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Al、及びFe等の金属、これら金属の合金、酸化物及び窒化物、並びに炭素材料等が挙げられる。
中でも、亜鉛−空気二次電池は安全面において優れており、次世代の二次電池として期待されている。尚、高電圧高出力という観点からはリチウム−空気二次電池及びマグネシウム空気二次電池が有望である。
亜鉛−空気二次電池の例を以下に説明すると、反応式は以下の通りである。
本発明の亜鉛−空気二次電池において、負極としては、亜鉛イオンを吸蔵・放出可能な材料を用いる。このような負極としては、金属亜鉛のほかに、亜鉛合金を用いることもできる。亜鉛合金としては、例えば、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、スズ、チタン、銅、から選択される一種または二種以上の元素を含有する亜鉛合金を挙げることができる。
リチウム−空気二次電池の負極活物質としては、例えば金属リチウム;リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等のリチウム合金;スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等の金属酸化物;スズ硫化物、チタン硫化物等の金属硫化物;リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等の金属窒化物;並びにグラファイト等の炭素材料等を挙げることができ、中でも金属リチウムが好ましい。
さらに、マグネシウム−空気二次電池の負極活物質としては、マグネシウムイオンを吸蔵・放出可能な材料を用いる。このような負極としては、金属マグネシウムのほかに、マグネシウムアルミニウム、マグネシウムシリコン、マグネシウムガリウムなどのマグネシウム合金などを用いることができる。
箔状や板状の金属や合金等を負極活物質として用いる場合には、該箔状や板状の負極活物質を負極そのものとして使用することができる。
負極は、少なくとも負極活物質を含有してればよいが、必要に応じて、負極活物質を固定化する結着材を含有していてもよい。結着材の種類、使用量等については、上述した空気極と同様であるため、ここでの説明は省略する。
負極には、通常、負極の集電を行う負極集電体が接続される。負極集電体の材料、形状は特に限定されない。負極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、銅、ニッケル等が挙げられる。また、負極集電体の形状としては、箔状、板状、メッシュ(グリッド状)等が挙げられる。
(電解質)
電解質は、空気極と負極との間に配置される。電解質を介して、負極と空気極との間の金属イオン伝導が行われる。電解質の形態は、特に限定されるものではなく、液体電解質、ゲル電解質、固体電解質等を挙げることができる。
電解液は、負極が亜鉛又はその合金の場合を例に挙げれば、酸化亜鉛を含む水酸化カリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いてもよいし、塩化亜鉛や過塩素酸亜鉛を含む水溶液を用いてもよいし、過塩素酸亜鉛を含む非水系溶媒や亜鉛ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドを含む非水系溶媒を用いてもよい。また、負極がマグネシウム又はその合金の場合を例に挙げれば、過塩素酸マグネシウムやマグネシウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドを含む非水系溶媒を用いてもよい。ここで、非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)など従来の二次電池やキャパシタに使われる有機溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。あるいは、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(am)などのイオン性液体を用いることもできる。
本発明の二次電池において、電解液は、デンドライト生成防止剤を含むことが好ましい。デンドライト生成防止剤は、充電時に負極表面に吸着して結晶面間のエネルギー差を小さくし、優先配向を防ぐことによりデンドライトの発生を抑制すると考えられる。デンドライト生成防止剤については特に限定はないが、例えば、ポリアルキレンイミン類、ポリアリルアミン類及び非対称ジアルキルスルフォン類からなる群より選ばれた少なくとも1種のものであることができる(例えば、特開2009-93983号公報参照)。また、デンドライト生成防止剤の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば常温常圧で電解液に飽和する量だけ用いてもよいし、溶媒として用いてもよい。
リチウムイオン伝導性を有する液体電解質は、通常、リチウム塩及び非水溶媒を含有する非水電解液である。上記リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO及びLiAsF等の無機リチウム塩;並びにLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等の有機リチウム塩等を挙げることができる。
上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及びこれらの混合物等を挙げることができる。非水溶媒としては、イオン液体を用いることもできる。
非水電解液におけるリチウム塩の濃度は、特に限定されないが、例えば0.1mol/L〜3mol/Lの範囲内であることが好ましく、好ましくは1mol/Lである。尚、本発明においては、非水電解液として、例えばイオン性液体等の低揮発性液体を用いてもよい。
リチウムイオン伝導性を有するゲル電解質は、例えば、上記非水電解液にポリマーを添加してゲル化することで得ることができる。具体的には、上記非水電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF、Arkema社製商品名Kynarなど)ポリアクリロニトリル(PAN)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加することにより、ゲル化を行うことができる。
リチウムイオン伝導性を有する固体電解質としては、特に限定されず、リチウム金属空気二次電池で使用可能な一般的な固体電解質を用いることができる。例えば、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO等の酸化物固体電解質;LiS−P化合物、LiS−SiS化合物、LiS−GeS化合物等硫化物固体電解質;を挙げることができる。
電解質の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば10μm〜5000μmの範囲内であることが好ましい。
(付属構成)
本発明の金属空気二次電池において、空気極と負極との間には、これら電極間の電気的絶縁を確実に行うために、セパレータが配置されることが好ましい。セパレータは、空気極と負極との間の電気的絶縁が確保可能であると共に、空気極と負極との間に電解質が介在することが可能な構造を有していれば特に限定されない。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ガラスセラミックス等の多孔膜;及び樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。中でも、ガラスセラミックス製のセパレータが好ましい。
また、金属空気二次電池を収納する電池ケースとしては、一般的な金属空気二次電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースの形状としては、上述した空気極、負極、及び電解質を保持することができれば特に限定されるものではないが、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。
本発明の金属空気二次電池は、空気極に活物質である酸素が供給されることにより、放電が可能となる。酸素供給源としては、空気の他、酸素ガス等が挙げられ、好ましくは酸素ガスである。供給する空気又は酸素ガスの圧力は特に限定されず、適宜設定すればよい。
本発明の非晶質遷移金属酸化物を含む空気極用触媒は、金属空気二次電池に有用であることに加えて、それ以外のOER電極触媒が用いられる分野においても有用である。OER電極触媒は古くからさまざまな電気化学反応の対極反応として研究あるいは利用されており、アルカリ金属メッキや電解脱脂、電気防食技術への転用が可能である。また、最近では太陽電池や光触媒と組み合わせることで、高効率でクリーンな水素製造技術への応用も期待される。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
(1)試料調製1:ブラウンミラーライト型Ca2Fe2-xCoxO5触媒(x=1.0)の調製
硝酸カルシウム2水和物(Ca(NO3)2・2H2O),硝酸鉄(II)6水和物(Fe(NO3)2・6H2Oおよび硝酸コバルト(II)6水和物(Co(NO3)2・6H2O)をそれぞれ適量純粋に溶かした。さらにそれにクエン酸を金属イオン総量とクエン酸分子のモル量が1:1になるよう加え、溶解させた。60℃に保ちながら数時間水を飛ばし、ゲルを調製した。得られたゲルを大気中500℃で8hか焼し、前駆体粉末を得た。最後に前駆体粉末を大気中600℃以上で6時間焼成し、Ca2Fe2-xCoxO5粉末を得た。
(2)試料調製2:化学処理によるアモルファスCalFemConOk触媒の調製
(1)で調製したブラウンミラーライト型Ca2Fe2-xCoxO5触媒(x=0, 0.25, 0.5 and 1.0)を,4MのKOH水溶液に加え、室温から80℃で12時間以上静置した。得られたアモルファスCalFemConOk触媒の表面積は10〜30 m2 g-1であった。
尚、化学処理は1 M以上の塩濃度を持つ水溶液(例えば、1-8M KOH,1M Na2SO4溶液および1M KClなど)で行うことができる。
(3)触媒インクの調製
Ca2Fe2-xCoxO5触媒およびアモルファスCalFemConOk触媒、炭素粉末およびナフィオンバインダーを、それぞれ重量比で5:1:1となるようにエタノール5mlに添加し、超音波混合機でよく分散させた。以上より触媒濃度5 mg cm-3の触媒インクを調製した。
(4)分極処理による非晶質化実験
触媒インクをピペットで採取し、グラッシーカーボンディスクまたはカーボンシート上に、1 mg cm-2となるように塗布し、電極試料を作製した。4 M KOH溶液を電解液とし、作用極に上述の電極試料を用いた。さらに参照電極にKOH飽和Hg/HgO電極、また対極にPt電極を用い、0.6-1.8 V vs RHEの範囲で電位を操作することにより行った。RHEは相対標準電極電位である。
結果
図1はCa2FeCoO5カーボンシート電極試料を、1.7V vs RHEで20 h定電位分極し酸素発生反応(OER)させたときの電流−時間曲線である。時間の経過とともに電流値が減少し、初期電流に比べ20 h後の電流は約40%ほど減少した。これは1.7 Vでは集電の役割を担うカーボンが酸化消耗するためである。
図2(a)は、図1の20 h 定電位OER前後の試料について、1.2 V vs RHEから1.7 V vs RHEまで電位走査しOERさせたときの電流−電圧曲線を示す。定電位分極前後を比較すると、OER電流が上昇し始める電位は、1.48 V vs RHE付近でほぼ等しいことから、OER触媒活性は変化していないことがわかる。
図2(b)は、図1の20 h 定電位OER前後の試料について、1.0 V vs RHEから0.6 V vs RHEまで電位走査し酸素還元反応(ORR)させたときの電流−電圧曲線を示している。定電位分極前の試料では、負のORR電流の開始電位は0.78 V vs RHEであるが、定電位分極後の試料は0.82 V vs RHEより電流が立ち上がり、よって20 h OER後の試料のほうが、高電位よりORR反応が起こる、つまりORR高活性であることが示された。
図3は、図1の1.7 V vs RHEで20 h分極前後のCa2FeCoO5電極試料のXRDパターンを示している.ブラウンミラーライト型構造が崩れ、アモルファス相が形成していることがわかる。
図4は1.7 V vs RHEで1 h OER分極前後の高分解能TEM写真を示している。分極前はブラウンミラーライト型結晶構造に由来するきれいな格子縞が観察される。さらに制限視野電子回折パターンも、ブラウンミラーライト構造を示す回折パターンを示した。一方1 h分極すると格子縞は消失し、アモルファス相とが形成し、電子線回折パターンもハローパターンのみを示した。さらにアモルファスマトリクス中には、0.5-1 nm程度の大きさ濃色のクラスターが観察され、不均一構造を有していることがわかった。
この濃色のクラスターとそれ以外の淡色の部分をEELSにより金属組成分析した結果を表1に示した。この結果濃色部分は母材の組成に比べ、相対的にCo濃度が高く、代わりにCaおよびFeが低いことが分かる。一方淡色部分は、母材の組成に比べCaはわずかに低いがFe/Coの比は、ほぼ1/1のままであった。
以上からブラウンミラーライト型Ca2FeCoO5はOER分極によって0.5 nm−数 nmのCoリッチクラスターをもつ不均一構造を有したアモルファス相に転移し、これがOERおよびORR両反応に対する高活性相であることが示唆された。
(5)KOH水溶液浸漬による非晶質化実験
図5(a)は、KOH水溶液浸漬(80℃ 24h)による非晶質化試料について、1.2 V vs RHEから1.7 V vs RHEまで電位走査しOERさせたときの電流−電圧曲線を示す。KOH水溶液浸漬の有無を比較すると、OER電流が上昇し始める電位は、1.48 V vs RHE付近でほぼ等しいことから、OER触媒活性は変化していないことがわかる。
図5(b)は、KOH水溶液浸漬(80℃ 24h)による非晶質化試料について、1.0 V vs RHEから0.6 V vs RHEまで電位走査し酸素還元反応(ORR)させたときの電流−電圧曲線を示している。KOH水溶液浸漬前の試料では、負のORR電流の開始電位は0.78 V vs RHEであるが、KOH水溶液浸漬後の試料は0.82 V vs RHEより電流が立ち上がり、よってKOH水溶液浸漬試料のほうが、高電位よりORR反応が起こる、つまりORR高活性であることが示された。
図6は、KOH水溶液浸漬(80℃ 24h)による非晶質化試料のXRDパターンを示している。ブラウンミラーライト型構造が崩れ、アモルファス相が形成していることがわかる。
(4)の分極処理(1.7 V vs RHE、1h)を行うことで非晶質化により調製したアモルファス相を有する試料について、様々なCo酸化物、水酸化物およびオキシ水酸化物の結晶データを基に、EXAFSへのフィッティングを行ったところ、分極後試料のEXAFS振動は、γ-CoOOHの結晶モデルでよくフィットできることがわかった。フィッティング結果を図7(d)および表2に示した。γ-CoOOHは、CoO6八面体の陵共有によって形成する[CoO2]n平面分子層シートが、プロトンを介した水素結合によってc軸上積層した層状構造をもつ(図8)。従って、本発明の酸化物はOERにより原子の再配列を起こし、酸化物マトリクス中にCoリッチな酸化物部分が形成され、それがγ-CoOOHによく似た配列構造を形成していることが示された。つまり図4の高分解能TEMにより観測されたナノクラスターは、このγ-CoOOH型配列構造またそれに類似する配列構造をもつナノクラスターであると決定された。
さらにEXAFSフィッティング結果より、Co周りの酸素配位数は1時間分極の場合5.1である(表2)。一方酸素欠損が全くない [CoO2]平面単分子層におけるCo配位数は6となる。従って本発明の酸化物中に形成されるナノクラスターは、酸素欠損を有する[CoO1.8]平面単分子層シートを基本骨格にもつ材料であると考えられる。一方、図3の結果よりγ-CoOOH のXRDピークが現れないことから、このナノクラスターはc軸方向への積層は、TEM像で観察される粒子径から推察してある程度あるが、発達はしていないと考えられ、従って、本発明の酸化物中のクラスター構造部は平面垂直方向に多少の積層はあるが、この積層はそれほど発達していない、[CoO1.8]平面単分子層と電荷補償のためのプロトンが配位した[CoO1.8Hy]n分子層シート状物質であると同定された。
γ-CoOOH 型構造に基づくと、Co原子の第二配位圏には、およそ2.8Åの位置に6個のCo原子が存在する。一方EXAFSフィッティング結果より(表2)、Coの第二配位圏の配位数はおよそ4であり、従ってCoの一部が異種元素置換または欠損しているγ-CoOOH 型平面分子層同士が水素結合を介して積層して形成されるナノクラスターを生成する。以上の結果と合わせると、この[CoO1.8Hy]n分子層シートのCoが一部Feで置換されていることが示唆された。
(6)耐久性試験
(4)で用いたと同様のCa2FeCoO5カーボンシート電極試料について、Hg/HgO/4 mol dm-3 KOH を参照電極,白金板を対極とする三電極系にて,4 mol dm-3 KOH水溶液中,アルゴン不活性雰囲気下で、40 mA cm-2の一定酸化電流条件で2時間のOER分極及び続いての0電流条件で15分の静置を繰り返すことで一か月間定電流耐久性試験を行った。結果を図した際の、電圧-時間曲線を示す。電流開始後20時間まで電位が1.6 から1.8 V vs RHEまで徐々に上昇するが、その後は一カ月間一定となった。この初期の電位上昇は、AB粒子が酸化消耗したため、CFCへの導通が悪くなったための過電圧上昇であることが確認された。従ってCFCは一か月連続してOER反応を行っても、活性は劣化しないことが確認された。
本発明は、二次電池、次世代型高容量二次電池として期待されている金属空気二次電池や、水電解、光水分解による水素製造の分野において有用である。

Claims (14)

  1. 下記A群から選ばれる1種又は2種以上の元素、B群から選ばれる1種又は2種以上の元素及びコバルトを含む非晶質の酸素非欠損型又は酸素欠損型の遷移金属酸化物であり、
    但し、A群は、Ca、Sr、Ba及び希土類元素(RE)からなり、
    B群は、Co以外の3d遷移元素からなり、
    かつ高分解能透過電子顕微鏡観察において粒径が0.1〜10nmの範囲のクラスター構造が見られる酸化物であって、前記クラスター構造部はγ-CoOOH型の元素配列構造又はこれに類似する元素配列構造を有する、前記酸化物。
  2. γ-CoOOH型の元素配列構造又はこれに類似する元素配列構造は、CoO6八面体が陵共有により二次元的に連結して形成する[CoOx]平面単分子層に、電荷補償のためのプロトンが配位した[CoOxHy]平面単分子層がn層積層してできる[CoOxHy]n分子層であって、[CoOxHy]平面単分子層の一辺が10nm以下であり、xは1.5〜2.0の範囲であり、yは0.01〜1の範囲であり、nは平面単分子層の分子層平面に垂直な方向(c軸方向)への積層数であり、1〜25の範囲であり、[CoOxHy]平面単分子層中のCoの一部がFeで置換されていてもよく、またCoO6八面体の酸素の一部が欠損していてもよい、請求項1に記載の金属酸化物。
  3. 前記クラスター構造部が前記マトリクス部に分散している請求項1又は2に記載の酸化物。
  4. 制限視野電子線回折像において回折パターンは見られず、ハローパターンを示す、請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物。
  5. 前記元素のモル比は、電子エネルギー損失分光法により求める請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物。
  6. 下記一般式(1)で示されるブラウンミラーライト型遷移金属酸化物を非晶質化することを含む、
    γ-CoOOH型の元素配列構造又はこれに類似する元素配列構造を有し、高分解能透過電子顕微鏡観察において粒径が0.1〜10nmの範囲のクラスター構造を有する、非晶質の酸素非欠損型又は酸素欠損型の遷移金属酸化物の製造方法。
    AxB1 2-yB2 yO5 (1)
    式中、Aは、Ca、Sr、Ba又は希土類元素(RE)を表し、
    B1は、Coを表し、
    B2は、Co以外の3d遷移元素を表し、
    xは、1.5〜2.0の範囲の数値であり、
    yは、0〜1.0の範囲の数値である。
  7. 非晶質化は、ブラウンミラーライト型遷移金属酸化物を、アルカリ水溶液に浸漬すること、又はアルカリ水溶液中で分極処理することを含む、請求項6に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の非晶質遷移金属酸化物又は請求項6若しくは7に記載の方法で製造された非晶質遷移金属酸化物を含む空気極用触媒。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の非晶質遷移金属酸化物又は請求項6若しくは7に記載の方法で製造された非晶質遷移金属酸化物を含む水電解陽極用触媒。
  10. 表面積が0.1〜100m2/gの範囲である請求項8又は9に記載の触媒。
  11. 請求項8又は10に記載の触媒を含む金属空気二次電池用空気極。
  12. 前記非晶質金属酸化物は酸素発生用触媒として含有され、酸素還元用触媒をさらに含む請求項11に記載の空気極。
  13. 請求項11又は12に記載の空気極と、負極活物質を含有する負極と、前記空気極と前記負極との間に介在する電解質とを有する金属空気二次電池。
  14. 酸素還元用触媒を含む酸素還元用空気極をさらに含む請求項13に記載の金属空気二次電池。
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