JPWO2019078244A1 - α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸の製造方法、及びα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸の製造方法、及びα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

高い収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造できるα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を提供する。モリブデン原料として、粒子径分布測定により得られる頻度分布曲線において、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%であるモリブデン酸化物を使用するα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。

Description

本発明は、α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法、α,β−不飽和カルボン酸の製造方法、及びα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法に関する。
α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒としては、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸塩等のヘテロポリ酸又はその塩を主成分とする触媒が知られている。該触媒の製造方法については数多くの検討がなされており、その多くは、まず触媒を構成する各元素を含む水性スラリー又は水溶液を調製し、その後これを乾燥し、焼成することで触媒を製造している。
このような触媒の基本的な性能は、主に元素組成、結晶構造、粒子径などに依存するが、その制御には、水性スラリー又は水溶液の調製過程の条件を制御することが求められる。一般に、水性スラリー又は水溶液の調製に用いられる原料としては、水溶性の原料及び水に不溶性の原料ともに使用可能である。しかしながら、特に水に不溶性の原料を用いる場合、原料の物性が触媒性能に大きな影響を与えることが知られている。例えば特許文献1には、圧縮度が60以下のモリブデン酸化物を原料に用いることで、高い触媒活性及び選択性を有するモリブデン含有固体触媒を製造できることが記載されている。また、特許文献2には、X線としてCuKα線を用いたX線回折図における回折ピーク位置と回折強度が規定されたモリブデン酸化物を原料として使用する触媒の製造方法が開示されている。
特開2007−229561号公報 特開2004−8834号公報
しかしながら、特許文献1、2に開示されているモリブデン酸化物を用いて製造した触媒では、α,β−不飽和カルボン酸の収率が未だ不十分であり、更なる触媒の改良が望まれる。
本発明は、高い収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造できる触媒を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]から[13]である。
[1]モリブデン原料として、粒子径分布測定により得られる頻度分布曲線において、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%であるモリブデン酸化物を使用するα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[2](i)少なくとも前記モリブデン原料及びリン原料を含む触媒原料と水を混合して得られた水性スラリー(I)を、90〜150℃に加熱してヘテロポリ酸を含む水性スラリー又は水溶液(II)を得る工程と、
(ii)前記水性スラリー又は水溶液(II)に金属カチオン含有化合物を添加して、ヘテロポリ酸塩が析出した水性スラリー(III)を得る工程と、
(iii)前記水性スラリー(III)を乾燥し、触媒前駆体乾燥物を得る工程と、
(iv)前記触媒前駆体乾燥物を熱処理し、触媒を得る工程と、
を有し、前記工程(i)において、前記水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間が5〜40分である、[1]に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[3]前記工程(i)において、前記水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間が7〜30分である、[2]に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[4]前記モリブデン原料が、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜35体積%であるモリブデン酸化物である、[1]から[3]のいずれかに記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[5]前記モリブデン原料が、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜15体積%であるモリブデン酸化物である、[4]に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[6]前記α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒が、下記式(1)で表される組成を有する、[1]から[5]のいずれかに記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
aMobcCudefgh (1)
(式(1)中、P、Mo、V、Cu及びOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅及び酸素を示す元素記号である。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、Eは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、バリウム、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、Gはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a〜hは、各元素の原子比率を表し、b=12のとき、a=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。)。
[7]前記モリブデン原料として三酸化モリブデンを50質量%以上使用する、[1]から[6]のいずれかに記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[8]前記モリブデン原料として三酸化モリブデンを70質量%以上使用する、[7]に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[9]前記α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒は、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒であって、前記α,β−不飽和アルデヒドが(メタ)アクロレインであり、かつ前記α,β−不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸である、[1]から[8]のいずれかに記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
[10][1]から[9]のいずれかに記載の方法によりα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を製造し、該触媒を用いてα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
[11][1]から[9]のいずれかに記載の方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を用いて、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
[12][10]又は[11]に記載の方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸をエステル化するα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
[13][10]又は[11]に記載の方法によりα,β−不飽和カルボン酸を製造し、該α,β−不飽和カルボン酸をエステル化するα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
本発明によれば、高い収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造できる触媒を提供することができる。
実施例1〜4及び比較例1〜3における三酸化モリブデンの粒子径分布を示す図である。
[α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒]
本発明に係る方法により製造されるα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒は、少なくともモリブデンを含むが、リン及びモリブデンを含むことが好ましく、下記式(1)で表される組成を有することがより好ましい。これにより、α,β−不飽和カルボン酸の製造において高収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造できる。なお、触媒の元素組成は、触媒をアンモニア水に溶解した溶液をICP発光分析法で分析することによって求めた値とする。
aMobcCudefgh (1)
式(1)中、P、Mo、V、Cu及びOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅及び酸素を示す元素記号である。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、Eは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、バリウム、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、Gはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a〜hは、各元素の原子比率を表し、b=12のとき、a=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。
また、触媒は、式(1)に記載のない元素を少量含んでいても良い。
本発明に係る方法により製造されるα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒は、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられることが好ましい。また、α,β−不飽和アルデヒドが(メタ)アクロレインであり、かつα,β−不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
[α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法]
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法では、モリブデン原料として、粒子径分布測定により得られる頻度分布曲線において、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%であるモリブデン酸化物を使用する。なお、モリブデン酸化物の粒子径分布測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000(製品名、島津製作所社製)を用い、純水500gに対してモリブデン酸化物0.02〜0.1gを分散させ、30秒間撹拌させた後に行われる。また、本発明では、粒子径が1000μm以下の粒子の積算体積を全粒子体積として頻度分布曲線を求める。
本発明では、上述の粒子径分布測定により得られる頻度分布曲線において、粒子径1000μm以下の粒子における粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%であるモリブデン酸化物をモリブデン原料に用いてα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を製造する。これにより、得られた触媒に好適な活性点が形成され、触媒活性が向上し、α,β−不飽和カルボン酸の収率を向上させることができると考えられる。
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法は、前記モリブデン酸化物をモリブデン原料として使用する以外は特に限定されず、例えば前記モリブデン酸化物を含む原料と水を混合して水性スラリー又は水溶液を得る工程を有することができる。しかしながら、α,β−不飽和カルボン酸の収率がより向上する観点から、前記方法は以下の工程(i)から(iv)を有することが好ましい。
(i)少なくともモリブデン原料及びリン原料を含む触媒原料と水を混合して得られた水性スラリー(I)を、90〜150℃に加熱してヘテロポリ酸を含む水性スラリー又は水溶液(II)を得る工程。
(ii)前記水性スラリー又は水溶液(II)に金属カチオン含有化合物を添加して、ヘテロポリ酸塩が析出した水性スラリー(III)を得る工程。
(iii)前記水性スラリー(III)を乾燥し、触媒前駆体乾燥物を得る工程。
(iv)前記触媒前駆体乾燥物を熱処理し、触媒を得る工程。
また、本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法は、後述する成形工程をさらに有しても良い。
(工程(i))
工程(i)では、少なくともモリブデン原料及びリン原料を含む触媒原料と水を混合して得られた水性スラリー(I)を、90〜150℃に加熱してヘテロポリ酸を含む水性スラリー又は水溶液(II)を得る。なお、水性スラリー(I)を加熱した後、水性スラリーになる場合も水溶液になる場合もある。そのため、これらを「水性スラリー又は水溶液(II)」と総称する。また、触媒が前記式(1)で表される組成を有する場合、前記式(1)で表される組成に含まれるG以外の元素を、前記触媒原料として水と混合し、水性スラリー(I)を得ることが好ましい。
水性スラリー(I)を加熱するとモリブデン原料が水に溶解するが、このときの溶解速度は、モリブデン原料の粒子径分布により変化する。この溶解速度が、得られる触媒の活性点に影響を与えていると推測される。
モリブデン原料としては、粒子径分布測定により得られる頻度分布曲線において、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%であるモリブデン酸化物を使用する。これにより、α,β−不飽和アルデヒドの分子状酸素による気相接触酸化に好適な活性点が形成される。該割合の下限は5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましい。また、上限は35体積%以下が好ましく、30体積%以下がより好ましく、25体積%以下がさらに好ましく、20体積%以下が特に好ましく、15体積%以下が最も好ましい。
また、前記モリブデン酸化物は、粒子径が30〜200μmの粒子の割合が35〜90体積%であることが好ましい。該割合の下限は40体積%以上がより好ましく、50体積%以上がさらに好ましく、60体積%以上が特に好ましく、70体積%以上が最も好ましい。また、上限は85体積%以下がより好ましく、80体積%以下がさらに好ましい。これにより、α,β−不飽和アルデヒドの分子状酸素による気相接触酸化に、より好適な活性点が形成される。
モリブデン酸化物中のモリブデンと酸素の原子比率は特に限定されず、例えば、モリブデン:酸素の原子比率が1:2の二酸化モリブデン、1:3の三酸化モリブデン等が挙げられる。ただし、α,β−不飽和カルボン酸の収率がより向上する観点から、モリブデン原料として、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%である三酸化モリブデンを50質量%以上使用することが好ましい。三酸化モリブデンの割合の下限は70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。モリブデン酸化物には、例えば、ナトリウム、カリウム、鉄、鉛、硫酸根、硝酸根、及びアンモニウム根などの不純物が微量含まれていても良いが、これらの不純物の含有量は少ないほど好ましく、これらの不純物を含まないことが特に好ましい。
本発明に係るモリブデン酸化物の製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。モリブデンを含む鉱石を焙焼して得られた粗三酸化モリブデンを純水に分散させた後、アンモニア水に溶解する。この溶液を濾過後、塩酸を添加してpH調整を行って得られた沈殿物を、純水、硝酸アンモニウムや塩化アンモニウム等を少量含む水溶液で分散・洗浄する。その後、遠心濾過等により含水量を低減して前駆体沈殿物を得て、これを乾燥後焼成し、モリブデン酸化物を得ることができる。また、前記前駆体沈殿物にアンモニア水を添加して溶解・晶析して得られたパラモリブデン酸アンモニウムを焼成する方法も挙げられる。後者の方法の方が、前者の方法よりも得られるモリブデン酸化物の粒子径を小さくすることができる。さらに、前記焼成温度によってもモリブデン酸化物の粒子径を調整することができる。焼成温度を低くすることで得られるモリブデン酸化物の粒子径が小さくなり、焼成温度を高くすることで得られるモリブデン酸化物の粒子径が大きくなる傾向がある。また、上記方法で製造したモリブデン酸化物に対して、必要に応じて、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%、好ましくは2〜35体積%、より好ましくは2〜15体積%となるように粉砕操作や分級操作をしても良い。粉砕操作としては、ボールミル、ロッドミル、SAGミル、自生粉砕ミル、小石ミル、高圧粉砕ロール、縦軸インパクタミル、ジェットミル等の装置を用いる方法が挙げられる。分級操作としては、ふるいによる方法、重力や遠心力を用いる方法(半自由渦式分級機、強制渦式分級機)等が挙げられる。また、本発明に係るモリブデン酸化物として、前述の方法により製造された、異なる粒度分布を有する複数のモリブデン酸化物を混合したものを用いても良い。
リン原料としては、例えば正リン酸、五酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸セシウム等が挙げられる。これらは一種を用いても良く、二種以上を併用しても良い。
モリブデン原料及びリン原料以外の触媒原料の種類は特に限定されず、各元素の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、水酸化物、塩化物、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩等が挙げられる。銅原料としては、例えば硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、酸化銅、塩化銅等が挙げられる。バナジウム原料としては、例えばバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、塩化バナジウム等が挙げられる。これらは一種を用いても良く、二種以上を併用しても良い。
ヘテロポリ酸を含む水性スラリー又は水溶液(II)の調製は、水に前記触媒原料の一部又は全てを加えて得られる水性スラリー(I)を、加熱しながら攪拌する方法により行うことが簡便であり好ましい。水性スラリー(I)は、水に前記触媒原料の水溶液、水性スラリー又は水性ゾルを添加して得ることもできる。水性スラリー(I)を、90〜150℃に加熱することで水性スラリー又は水溶液(II)を得ることが好ましい。加熱温度の下限は95℃以上、上限は130℃以下がより好ましい。該加熱温度を90℃以上とすることで、前記触媒原料から効率的にヘテロポリ酸が生成される。また、該加熱温度を150℃以下とすることで、水性スラリー又は水溶液中の水の蒸発を抑制することができる。
前述の通り、モリブデン原料として、粒子径分布測定により得られる頻度分布曲線において、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%であるモリブデン酸化物を使用した場合、前記水性スラリー(I)を加熱し、前記モリブデン原料が水に溶解するときの溶解速度が、得られる触媒の活性点に影響を与えていると推測される。このとき、前記水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの間に前記モリブデン原料が水に溶解する。そのため、この時間を調整することで、α,β−不飽和アルデヒドの分子状酸素による気相接触酸化に、より好適な活性点を形成させることができる。前記水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間は、好ましくは5〜40分、より好ましくは7〜30分である。
前記水性スラリー(I)において、温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間は、昇温速度の調整等により制御することができる。また、前記水性スラリー(I)の温度は単調増加させても良く、昇温速度を適宜変化させながら制御しても良い。
調製される水性スラリー又は水溶液(II)のpHは、α,β−不飽和カルボン酸の収率向上の観点から4以下が好ましく、2以下がより好ましい。水性スラリー又は水溶液(II)のpHが高い場合には、硝酸根等を多く含むように各原料を選択することが好ましい。
工程(i)において水性スラリー又は水溶液(II)中にヘテロポリ酸が形成されているか否かは、NICOLET6700FT−IR(製品名、Thermo electron社製)等を用いた赤外吸収分析及びX線回折装置X’Pert PRO MPD(製品名、PANaltical社製)等を用いたX線回折分析により確認することができる。
(工程(ii))
工程(ii)では、工程(i)で得られた水性スラリー又は水溶液(II)に金属カチオン含有化合物を添加して、ヘテロポリ酸塩が析出した水性スラリー(III)を得る。金属カチオン含有化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素(前記式(1)のGに相当)を含む化合物を用いることが好ましい。また、工程(ii)では、金属カチオン含有化合物に加えて、アンモニウム化合物を添加することが好ましい。アンモニウム化合物を添加することにより、α,β−不飽和アルデヒドの分子状酸素による気相接触酸化に好適な結晶構造が形成される。アンモニウム化合物としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、アンモニア水等が挙げられる。これらのアンモニウム化合物は、一種を用いても良く、二種以上を併用しても良い。
金属カチオン含有化合物及びアンモニウム化合物は、溶媒に溶解又は懸濁させて添加することが好ましい。溶媒としては、水、エチルアルコール、アセトン等が挙げられる。ただし、前記工程(i)で得られる水性スラリー又は水溶液(II)と同じ水を溶媒として用いることが好ましい。金属カチオン含有化合物及び必要に応じて添加されるアンモニウム化合物を添加した後の水性スラリー又は水溶液の攪拌時間は、1〜300分が好ましく、下限は10分以上、上限は30分以下がより好ましい。また、攪拌時の水性スラリー又は水溶液の温度は、50〜100℃が好ましく、下限は80℃以上がより好ましい。攪拌時間を1分以上、温度を50℃以上とすることで、ヘテロポリ酸の金属塩及びアンモニウム塩を十分に形成させることができる。一方、攪拌時間を300分以下、温度を100℃以下とすることで、目的とするヘテロポリ酸の金属塩及びアンモニウム塩以外の化合物の形成を抑制することができる。
析出させるヘテロポリ酸塩(ヘテロポリ酸の金属塩及びアンモニウム塩)は、ケギン型構造を有していても、ドーソン型構造等のケギン型以外の構造を有していても構わないが、α,β−不飽和カルボン酸の収率向上の観点から、ケギン型構造を有することが好ましい。ケギン型構造を有するヘテロポリ酸塩を析出させる方法としては、工程(ii)において得られる水性スラリー(III)のpHを3以下に調整する方法が挙げられる。なお、析出したヘテロポリ酸塩の構造は、NICOLET6700FT−IR(製品名、Thermo electron社製)を用いた赤外吸収分析及びX線回折装置X’Pert PRO MPD(製品名、PANaltical社製)を用いたX線回折分析により確認することができる。
(工程(iii))
工程(iii)では、工程(ii)で得られた水性スラリー(III)を乾燥し、触媒前駆体乾燥物を得る。乾燥方法としては、例えば、ドラム乾燥法、気流乾燥法、蒸発乾固法、噴霧乾燥法等が挙げられる。乾燥温度は120〜500℃が好ましく、下限は140℃以上、上限は350℃以下がより好ましい。乾燥は、水性スラリー(III)が乾固するまで行うことができる。触媒前駆体乾燥物の水分含有率は、0.1〜4.5質量%が好ましい。なお、これらの条件は、所望する触媒前駆体乾燥物の形状や大きさにより適宣選択することができる。
(成形工程)
成形工程では、工程(iii)で得られた触媒前駆体乾燥物を成形することができる。成形に用いられる装置としては、打錠成形機、押出成形機、加圧成形機、転動造粒機等の粉体用成形機が挙げられる。成形品の形状としては特に制限はなく、球形粒状、リング状、円柱形ペレット状、星型状、成形後に粉砕分級した顆粒状等の任意の形状が挙げられる。成形する際には、担体に担持しても良く、また、必要に応じて例えばグラファイト、タルク等の公知の添加剤や有機物、無機物由来の公知のバインダーを添加しても良い。本発明では、工程(iii)で得られた触媒前駆体乾燥物、及び該触媒前駆体乾燥物を成形したものをまとめて触媒前駆体乾燥物と示す。
(工程(iv))
工程(iv)では、工程(iii)又は成形工程で得られた触媒前駆体乾燥物を熱処理し、触媒を得る。熱処理条件としては特に限定はないが、例えば空気等の酸素含有ガス及び不活性ガスの少なくとも一方の流通下で行うことができる。熱処理温度は200〜500℃であることが好ましく、下限は300℃以上、上限は450℃以下であることがより好ましい。熱処理時間は0.5〜40時間が好ましく、下限は1時間以上であることがより好ましい。なお、工程(iii)の後に前記成形工程を行わない場合、工程(iv)で得られた熱処理後の触媒に対し、前記成形工程を実施しても良い。
[α,β−不飽和カルボン酸の製造方法]
本発明では、本発明に係る方法によりα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を製造し、該触媒を用いてα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する。また、本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸の製造方法は、本発明に係る方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を用いて、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する方法である。
本発明に係る方法において、前記α,β−不飽和アルデヒドとしては、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド(β−メチルアクロレイン)、シンナムアルデヒド(β−フェニルアクロレイン)等が挙げられる。中でも、目的生成物の収率の観点から、(メタ)アクロレインであることが好ましく、メタクロレインであることがより好ましい。製造されるα,β−不飽和カルボン酸は、α,β−不飽和アルデヒドのアルデヒド基がカルボキシル基に変換されたα,β−不飽和カルボン酸である。具体的には、α,β−不飽和アルデヒドが(メタ)アクロレインの場合、(メタ)アクリル酸が得られる。なお、「(メタ)アクロレイン」はアクロレイン及びメタクロレインを示し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリル酸を示す。
以下、代表例として、本発明に係る方法により製造されたメタクリル酸製造用触媒の存在下、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法について説明する。
この方法では、メタクロレイン及び分子状酸素を含む原料ガスと、本発明に係る触媒とを接触させることでメタクリル酸を製造する。この反応では、固定床型反応器を使用することができる。具体的には、反応管内に触媒を充填し、該反応器へ原料ガスを供給することにより反応を行うことができる。触媒層は1層でも良く、活性の異なる複数の触媒をそれぞれ複数の層に分けて充填しても良い。また、活性を制御するために、メタクリル酸製造用触媒を不活性担体により希釈し充填しても良い。
原料ガス中のメタクロレインの濃度は特に限定されないが、1〜20容量%が好ましく、下限は3容量%以上、上限は10容量%以下がより好ましい。原料であるメタクロレインは、低級飽和アルデヒド等の本反応に実質的な影響を与えない不純物を少量含んでいても良い。
原料ガス中の分子状酸素の濃度は、メタクロレイン1モルに対して0.4〜4モルが好ましく、下限は0.5モル以上、上限は3モル以下がより好ましい。なお、分子状酸素源としては、経済性の観点から空気が好ましい。必要であれば、空気に純酸素を加えて分子状酸素を富化した気体を用いても良い。
原料ガスは、メタクロレイン及び分子状酸素を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであっても良い。さらに、原料ガスに水蒸気を加えても良い。水蒸気の存在下で反応を行うことにより、メタクリル酸をより高い収率で得ることができる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1〜50容量%が好ましく、下限は1容量%以上、上限は40容量%以下がより好ましい。
原料ガスとメタクリル酸製造用触媒との接触時間は、1.5〜15秒が好ましい。反応圧力は、0.1〜1MPa(G)が好ましい。ただし、(G)はゲージ圧であることを意味する。反応温度は200〜450℃が好ましく、下限は250℃以上、上限は400℃以下がより好ましい。
[α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法]
本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、本発明に係る方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸をエステル化する方法である。また、本発明に係るα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、本発明に係る方法によりα,β−不飽和カルボン酸を製造し、該α,β−不飽和カルボン酸をエステル化する方法である。これらの方法によれば、α,β−不飽和アルデヒドの気相接触酸化により得られるα,β−不飽和カルボン酸を用いて、α,β−不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。α,β−不飽和カルボン酸と反応させるアルコールとしては特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。得られるα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。反応は、スルホン酸型カチオン交換樹脂等の酸性触媒の存在下で行うことができる。反応温度は50〜200℃が好ましい。
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例中の「部」は質量部を意味する。原料ガス及び生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。ガスクロマトグラフィーの結果から、メタクリル酸収率を下記式にて求めた。
メタクリル酸収率(%)=(B/A)×100
式中、Aは反応器へ供給したメタクロレインのモル数、Bは生成したメタクリル酸のモル数である。
三酸化モリブデンの粒子径分布測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000(製品名、島津製作所社製)を用い、純水500gに対して三酸化モリブデン0.02〜0.1gを分散させ、30秒間撹拌させた後に行った。
(実施例1)
純水400部に、図1において実施例1として示す粒子径分布を有する三酸化モリブデン(粒子径が6μm以下の粒子の割合:2.9体積%)100部、メタバナジン酸アンモニウム3.4部、85質量%リン酸水溶液9.4部を純水6.0部で希釈した希釈物、及び硝酸銅(II)三水和物2.1部を純水4.5部に溶解した溶解物を添加して、水性スラリー(I)を得た。該水性スラリー(I)を攪拌しながら25℃から95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ2時間攪拌し、ヘテロポリ酸を含む水性スラリー(II)を得た。このとき、前記水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間は15分であった。さらに液温を95℃に保ち撹拌しながら、重炭酸セシウム13.5部を純水24部に溶解した溶解物と炭酸アンモニウム9.2部を純水26部に溶解した溶解物を滴下して攪拌し、ヘテロポリ酸のセシウム塩及びアンモニウム塩を析出させた。析出したヘテロポリ酸のセシウム塩及びアンモニウム塩は、ケギン型構造を有していた。その後、液温を95℃に保ちつつ15分間撹拌した。得られた水性スラリー(III)をスプレードライヤーで乾燥し、触媒前駆体乾燥物を得た。得られた触媒前駆体乾燥物を押出成形することで直径5.5mm、高さ5.5mmの円柱状に成形し、空気流通下、380℃で10時間熱処理することで触媒を製造した。該触媒の酸素以外の組成は、P1.4Mo120.5Cu0.15Cs1.2であった。
前記触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、及び窒素55容量%の原料ガスを、反応温度310℃、前記原料ガスと前記触媒との接触時間7.1秒で通じた。反応器から得られる生成物を捕集し、ガスクロマトグラフィーで分析してメタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例2〜4、比較例1〜3)
実施例1において用いた三酸化モリブデン100部の代わりに、図1において各実施例、比較例として示す粒子径分布を有する三酸化モリブデン(粒子径が6μm以下の粒子の割合は表1に記載)100部を用いた以外は、実施例1と同様に触媒を製造し、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。なお、実施例2〜4及び比較例1〜3においても、実施例1と同様に、析出したヘテロポリ酸のセシウム塩及びアンモニウム塩はケギン型構造を有していた。
(実施例5〜8)
実施例1において、水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間を、それぞれ表1に示すとおりに調整した以外は、実施例1と同様に触媒を製造し、メタクリル酸収率を算出した。結果を表1に示す。なお実施例5〜8においても、実施例1と同様に、析出したヘテロポリ酸のセシウム塩及びアンモニウム塩はケギン型構造を有していた。
Figure 2019078244
表1に示すように、モリブデン原料として、粒子径分布における粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%であるモリブデン酸化物を使用した実施例1〜8では、高い収率でメタクリル酸が得られた。また実施例1〜8の中でも、水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間が5〜40分の範囲内である実施例1〜6は、よりメタクリル酸収率が高く、7〜30分の範囲内である実施例1〜4は、特にメタクリル酸収率が高かった。一方、モリブデン原料として、粒子径分布における粒子径が6μm以下の粒子の割合が前記範囲外であるモリブデン酸化物を使用した比較例1〜3では、いずれも実施例と比較してメタクリル酸収率が低いものとなった。
この出願は、2017年10月20日に出願された日本出願特願2017−203592を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
本発明によれば、α,β−不飽和アルデヒドから高い収率でα,β−不飽和カルボン酸を製造することができるα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を提供することができ、工業的に有用である。

Claims (13)

  1. モリブデン原料として、粒子径分布測定により得られる頻度分布曲線において、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜55体積%であるモリブデン酸化物を使用するα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  2. (i)少なくとも前記モリブデン原料及びリン原料を含む触媒原料と水を混合して得られた水性スラリー(I)を、90〜150℃に加熱してヘテロポリ酸を含む水性スラリー又は水溶液(II)を得る工程と、
    (ii)前記水性スラリー又は水溶液(II)に金属カチオン含有化合物を添加して、ヘテロポリ酸塩が析出した水性スラリー(III)を得る工程と、
    (iii)前記水性スラリー(III)を乾燥し、触媒前駆体乾燥物を得る工程と、
    (iv)前記触媒前駆体乾燥物を熱処理し、触媒を得る工程と、
    を有し、前記工程(i)において、前記水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間が5〜40分である、請求項1に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  3. 前記工程(i)において、前記水性スラリー(I)の温度が60℃に到達してから90℃に到達するまでの時間が7〜30分である、請求項2に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  4. 前記モリブデン原料が、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜35体積%であるモリブデン酸化物である、請求項1から3のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  5. 前記モリブデン原料が、粒子径が6μm以下の粒子の割合が2〜15体積%であるモリブデン酸化物である、請求項4に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  6. 前記α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒が、下記式(1)で表される組成を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
    aMobcCudefgh (1)
    (式(1)中、P、Mo、V、Cu及びOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅及び酸素を示す元素記号である。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、Eは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、バリウム、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、Gはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a〜hは、各元素の原子比率を表し、b=12のとき、a=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。)
  7. 前記モリブデン原料として三酸化モリブデンを50質量%以上使用する、請求項1から6のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  8. 前記モリブデン原料として三酸化モリブデンを70質量%以上使用する、請求項7に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  9. 前記α,β−不飽和カルボン酸製造用触媒は、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒であって、前記α,β−不飽和アルデヒドが(メタ)アクロレインであり、かつ前記α,β−不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸である、請求項1から8のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の方法によりα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を製造し、該触媒を用いてα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
  11. 請求項1から9のいずれか1項に記載の方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸製造用触媒を用いて、α,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
  12. 請求項10又は11に記載の方法により製造されたα,β−不飽和カルボン酸をエステル化するα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
  13. 請求項10又は11に記載の方法によりα,β−不飽和カルボン酸を製造し、該α,β−不飽和カルボン酸をエステル化するα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
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