添付の図面を参照して、この発明を実施するための形態について説明する。各図では、同一又は相当する部分に同一の符号が付される。重複する説明は、適宜簡略化あるいは省略する。
実施の形態1.
エレベータシステムは、例えば、1つ又は複数のかごが設けられた建物に対して適用される。
図1は、実施の形態1におけるエレベータシステムの概要を示す模式図である。図1は、建物に複数のかごが設けられた場合を例示している。
エレベータシステムは、無線通信装置1、通信端末2、群管理装置3、制御装置4および表示装置5を備える。無線通信装置1は、例えば、建物内の部屋、通路およびエレベータの乗場などに設置されている。無線通信装置1は、例えば、複数の階に設置されてもよい。制御装置4は、例えば、各かごに対応して設けられている。表示装置5は、例えば、エレベータの乗場などに設置されている。群管理装置3は、制御装置4および表示装置5と電気的に接続されている。
図1において、複数の無線通信装置1は、符号に英字が付されることで区別される。図1には、無線通信装置1として、同じ階に設置された無線通信装置1Aおよび無線通信装置1Bが例示されている。無線通信装置1Aは、例えば、建物内の通路に設置されている。無線通信装置1Bは、エレベータの乗場に設置されている。無線通信装置1Aは、エレベータの乗場から離れた位置に設置されている。無線通信装置1Aは、少なくとも、無線通信装置1Bと通信範囲が重複しない位置に設置されている。
通信端末2は、持ち運び可能な筐体を有する。通信端末2は、例えば、利用者によって携帯される。通信端末2は、例えば、無線通信装置1および群管理装置3との無線通信を行う機能を有する。
通信端末2は、「呼び生成部」を有する。「呼び生成部」は、無線通信装置1との通信を契機として、仮呼び又は本呼びを生成する。通信端末2は、生成した呼びを群管理装置3に送信する。仮呼びは、割当かごが乗場に到着するまでにキャンセルができる呼びである。本呼びは、割当かごが乗場に到着するまでにキャンセルができない呼びである。
群管理装置3は、例えば、かごの配車計画を決定する。制御装置4は、例えば、配車計画に従って、対応するかごの移動を制御する。表示装置5には、例えば、呼びに対応する割当かごを示す情報が表示される。
図2は、実施の形態1におけるエレベータシステムの機能ブロック図である。
図2に示すように、通信端末2は、検出部21、状態取得部22、記録部23、乗車確率演算部24、仮呼び生成部25、本呼び生成部26、学習部27、通知部28および通信部29を有する。仮呼び生成部25及び本呼び生成部26は、「呼び生成部」に含まれる。
図3は、通信端末のハードウェア構成図である。
通信端末2は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末又はPDA(Personal Data Assistant)などである。図3に示すように、通信端末2は、例えば、プロセッサ2a、メモリ2b、通信装置2c、センサ2d、ディスプレイ2eおよびスピーカー2fを有する。
無線通信装置1は、例えば、Wi−Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)などの通信方式で無線通信を行う。無線通信装置1は、通信範囲内に存在する通信端末2に対して、定期的に無線通信で情報を送信する。当該情報には、例えば、無線通信装置1の設置階および設置位置などが含まれる。
無線通信装置1の設置階および設置位置などは、当該無線通信装置1の内部メモリに予め記録されている。無線通信装置1の設置階は、例えば、「最下階からの階床数+1」で決定されるIDによって表現される。無線通信装置1の設置位置は、例えば、乗場又は乗場から離れた位置のいずれであるかを特定できるIDによって表現される。例えば、設置位置が乗場であることは、「1」というIDで表現される。例えば、設置位置が乗場から離れた位置であることは、「2」というIDで表現される。
検出部21は、例えば、通信装置2cによって実現される。検出部21は、無線通信装置1からの通信を待機する。検出部21は、無線通信装置1から設置階および設置位置を含む情報をはじめて受信した場合、通信端末2が当該無線通信装置1の通信範囲内へ進入したことを検出する。
検出部21は、無線通信装置1から設置階および設置位置を含む情報を受信しなくなってから一定時間が経過した場合に、通信端末2が当該無線通信装置1の通信範囲外へ退出したことを検出する。
検出部21は、無線通信装置1の通信範囲外への退出を一旦検出した後、再び当該無線通信装置1から設置階および設置位置を含む情報を受信した場合は、通信端末2が当該無線通信装置1の通信範囲内へ進入したことを検出する。
以下、通信端末2が無線通信装置1の通信範囲内へ進入したことを検出することを、単に「無線通信装置1を検出する」とも表現する。
検出部21は、無線通信装置1を検出すると、検出日時、当該無線通信装置1の設置階および当該無線通信装置1の設置位置の組を検出記録テーブル101に記録する。つまり、検出部21は、無線通信装置1を検出するたびに、検出日時、設置階および設置位置を関連付けて記録する。
状態取得部22は、例えば、センサ2dによって計測された値を用いて、通信端末2の状態を取得する。センサ2dは、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、磁気センサ、方位センサ、GPS(Global Positioning System)又は気圧センサなどである。また、状態取得部22は、例えば、通信装置2cによって取得された無線通信の電波強度などの値を用いて、通信端末2の状態を取得してもよい。
通信端末2の状態とは、例えば、当該通信端末2の筐体の移動状態である。つまり、状態取得部22は、通信端末2を携帯する利用者の移動状態を取得する。
状態取得部22は、乗場から離れた位置に設置された無線通信装置1Aを検出したことを契機として、通信端末2の状態の取得を開始する。状態取得部22は、例えば、乗場に設置された無線通信装置1Bを検出したことを契機として、通信端末2の状態の取得を終了する。また、状態取得部22は、例えば、通信端末2の状態の取得を開始してから最大移動時間TMAXが経過したことを契機として、通信端末2の状態の取得を終了する。状態取得部22は、例えば、乗場に設けられた無線通信装置1Bを検出するまで、又は、通信端末2の状態の取得を開始してから最大移動時間TMAXが経過するまで、定期的に通信端末2の状態を取得し続ける。
最大移動時間TMAXは、例えば、利用者が無線通信装置1Aの通信範囲内から無線通信装置1Bの通信範囲内まで移動するのに必要な時間の最大値である。最大移動時間TMAXは、例えば、学習部27によって決定される。
以下、状態取得部22により通信端末2の状態の取得が開始されてからt番目に取得された状態をxtと呼ぶ。状態xtは、例えば、通信端末2の方位dtおよび速度vtの組として、xt=(dt,vt)で表される。方位dtは、例えば、ある方角を基準とした角度で表される。例えば、北を基準とする場合、時計周りに90度は東、180度は南、270度は西を表す。速度vtの単位は、例えば、メートル毎秒である。なお、状態xtは、方位dtおよび速度vt以外に、状態取得部22によって状態の取得が開始されてから通信端末2が移動した相対距離などを含んでもよい。
状態取得部22は、状態の取得が終了するたびに、無線通信装置1Aの検出日時および当該無線通信装置1Aの設置階とともに状態xtを状態記録テーブル102に記録する。つまり、状態取得部22は、通信端末2の状態の取得が終了するたびに、検出日時、設置階および状態xtを関連付けて記録する。
記録部23は、例えば、メモリ2bによって実現される。記録部23は、仮呼びおよび本呼びの生成に必要な情報を保持する。記録部23は、例えば、行先階テーブル100、検出記録テーブル101、状態記録テーブル102および乗車確率閾値テーブル103を保持する。
図4は、実施の形態1における行先階テーブルの一例である。
図4に示すように、行先階テーブル100は、通信端末2を携帯する利用者の出発階と行先階の組を含む。行先階テーブル100の内容は、例えば、予め通信端末2に記録されている。行先階テーブル100の内容は、例えば、通信端末2ごとに異なり得る。
図5は、実施の形態1における検出記録テーブルの一例である。
図5に示すように、検出記録テーブル101は、検出日時、検出された無線通信装置1の設置階および当該無線通信装置1の設置位置の組を含む。例えば、無線通信装置1Aの検出記録では、設置位置が「1」というIDで表されている。例えば、無線通信装置1Bの検出記録では、設置位置が「2」というIDで表されている。
図6は、実施の形態1における状態記録テーブルの一例である。
図6に示すように、状態記録テーブル102は、状態の取得を開始する契機となった無線通信装置1Aの検出日時、当該無線通信装置1Aの設置階および状態取得部22によって取得された状態の系列{xt}の組を含む。状態の系列{xt}は、例えば、通信端末2を携帯する利用者がどのように移動したかを示す。
例えば、図6に示す状態記録テーブル102の上から1番目の行には、4個の状態が含まれた系列が記録されている。この系列で1番目に取得された状態は、x1=(180,0.5)である。この系列で2番目に取得された状態は、x2=(180,0.5)である。この系列で3番目に取得された状態は、x3=(90,0.5)である。この系列で4番目に取得された状態は、x4=(90,0)である。
図7は、実施の形態1における乗車確率閾値テーブルの一例である。
図7に示すように、乗車確率閾値テーブル103は、時間帯、階床および乗車確率の閾値PMINの組を含む。乗車確率閾値テーブル103における階床の項目は、出発階を示す。閾値PMINは、仮呼びを生成するために用いられる。閾値PMINの単位は、例えば、パーセントである。乗車確率閾値テーブル103の内容は、例えば、予め通信端末2に記録されている。乗車確率閾値テーブル103の内容は、例えば、通信端末2に関係なく共通である。
乗車確率演算部24は、例えば、プロセッサ2aがメモリ2bに記録されたプログラムを実行することで実現される。乗車確率演算部24は、例えば、状態取得部22が新しい状態を取得するたびに乗車確率を算出する。
以下、乗車確率の算出方法について説明する。
乗車確率演算部24は、まず、状態取得部22によって取得された最新の状態の系列と状態記録テーブル102に記録されている過去の状態の系列との相違度を算出する。当該最新の状態の系列は、この時点では、まだ状態記録テーブル102に記録されていない。相違度は、下記の式(1)で定義される。
最新の状態の系列は、{xt}(1≦t≦TLAST)で表される。xtは、xt=(dt,vt)で表される。TLASTは、最新の状態の系列に含まれている状態の個数を示す。例えば、最新の状態の系列が{(175,0.5),(185,0.5),(180,0.5),(95,0.5),(85,0)}である場合には、TLAST=5となる。つまり、xt(t=TLAST)は、状態取得部22によって取得された状態のうち、最新の状態である。
過去の状態の系列は、{x’t}(1≦t≦T’MAX)で表される。x’tは、x’t=(d’t,v’t)で表される。T’MAXは、状態記録テーブル102に記録されている個々の系列に含まれる状態の個数を示す。例えば、図6に示す状態記録テーブル102の上から1番目の行に記録されている系列の場合、T’MAX=4となる。つまり、x’t(t=T’MAX)は、ある検出日時での系列に含まれる過去の状態のうち、最後に取得された状態である。
式(1)の最も外側の括弧内の部分は、状態取得部22によって取得された直近の状態と状態記録テーブル102に記録されている状態との差の平均二乗平方根である。式(1)は、条件を変えて算出された当該括弧内の値のうち最小値を意味する。相違度は、Lとkとのすべての組み合わせで算出された当該括弧内の値のうち最小値である。
式(1)におけるLは、最新の状態の系列と過去の状態の系列との間で比較される状態の個数を示す。Lは、2≦L≦min(TLAST,T’MAX)を満たす整数である。
式(1)におけるkは、過去の状態の系列に含まれる複数の状態のうち、どのL個の状態を比較対象とするかを示す数である。具体的には、ある系列に含まれる複数の状態のうち、(k−2)+1番目からk番目までの状態が用いられる。kは、L≦k≦T’MAXを満たす整数である。
以下、式(1)による相違度の算出について、具体例を示す。この具体例では、図6に示す状態記録テーブル102の上から1番目の行に記録された状態の系列との相違度を算出する場合を説明する。
例えば、最新の状態の系列を{(175,0.5),(185,0.5),(180,0.5),(95,0.5),(85,0)}とする。この場合、TLAST=5である。これに対し、T’MAX=4である。
まず、状態数の異なる2つの状態の系列から相違度を算出するために、Lを決定する。2≦L≦min(TLAST,T’MAX)より、Lは、2,3又は4のいずれかとなる。以下、L=2の場合について述べる。
最新の状態の系列からは、新しい順にL個の状態が算出に用いられる。L=2の場合は、{(dTLAST−1,vTLAST−1),(dTLAST,vTLAST)}={(95,0.5),(85,0)}が相違度の算出に用いられる。
次に、状態記録テーブル102の上から1番目の行の状態の系列に含まれる状態のうち、どの2個の状態を用いるかを決定する。L≦k≦T’MAXより、kは、2,3又は4のいずれかとなる。
例えば、k=2の場合、状態記録テーブル102の上から1番目の行の状態の系列に含まれる状態のうち、1番目および2番目の状態が用いられる。つまり、{(d’1,v’1),(d’2,v’2)}={(180,0.5),(180,0.5)}が相違度の算出に用いられる。
例えば、k=3の場合、状態記録テーブル102の上から1番目の行の状態の系列に含まれる状態のうち、2番目および3番目の状態が用いられる。つまり、{(d’2,v’2),(d’3,v’3)}={(180,0.5),(90,0.5)}が相違度の算出に用いられる。
例えば、k=4の場合、状態記録テーブル102の上から1番目の行の状態の系列に含まれる状態のうち、3番目および4番目の状態が用いられる。つまり、{(d’3,v’3),(d’4,v’4)}={(90,0.5),(90,0)}が相違度の算出に用いられる。
以上の具体例のようにして、Lおよびkを変化させて算出された上記の平均二乗平方根の値のうち最小値が相違度として決定される。
乗車確率演算部24は、状態記録テーブル102から、設置階が今回検出した無線通信装置1Aの設置階と同じであり、且つ、相違度が閾値DMAX以下である検出日時を抽出する。抽出された検出日時の数をNAで表す。DMAXは、例えば、学習部27によって決定される。なお、検出日時を抽出する際は、時間帯又は曜日を限定してもよい。例えば、出勤時および退勤時はエレベータを利用する可能性が高く、閑散時はエレベータを利用する可能性が低いといったように、時間帯によって利用者の行動が変わる場合、抽出対象を同一時間帯又は同一曜日の検出日時に限定することで、さらに正確に乗車確率を算出することができる。
乗車確率演算部24は、検出記録テーブル101に記録されている検出記録のうち、設置階が今回検出した無線通信装置1Aの設置階と同じであり、設置位置が乗場であり、且つ、抽出された検出日時から最大移動時間TMAXが経過するまでの間に記録された検出記録を抽出する。抽出された検出記録の数をNBで表す。乗車確率演算部24は、NB/NA×100の値を乗車確率として算出する。乗車確率の単位は、例えば、パーセントである。
仮呼び生成部25は、例えば、プロセッサ2aがメモリ2bに記録されたプログラムを実行することで実現される。仮呼び生成部25は、乗車確率演算部24が乗車確率を演算するたびに、以下の動作を実行する。仮呼び生成部25は、乗車確率閾値テーブル103から、現在日時に対応する乗車確率の閾値PMINを取得する。そして、仮呼び生成部25は、乗車確率を算出する契機となった無線通信装置1Aの検出がされてから仮呼びを生成しておらず、且つ、乗車確率演算部24によって算出された乗車確率が当該閾値PMIN以上である場合に、仮呼びを生成する。仮呼び生成部25は、生成した仮呼びを通信部29に供給する。仮呼びは、例えば、通信端末2を識別可能な端末ID、出発階、行先階および乗場に到着するまでの時間などの情報を含む。出発階は、無線通信装置1Aの設置階である。行先階は、行先階テーブル100において出発階と関連付けられている階である。仮呼びに含まれる乗場に到着するまでの時間は、無線通信装置1Aの検出日時に対して時間TAを加算して得られた和から現在日時を減算した値とする。時間TAは、検出部21が無線通信装置1Aを検出してから利用者が乗場に到着するまでの時間である。
以下、時間TAの算出方法について説明する。
仮呼び生成部25は、検出記録テーブル101から、無線通信装置間の移動時間テーブル104を生成する。移動時間テーブル104は、無線通信装置1間の移動時間を示す。図8に示すように、移動時間テーブル104は、無線通信装置1Aの検出日時、無線通信装置1Bの検出日時および時間差の組を含む。移動時間テーブル104は、出発階に設置された無線通信装置1Aを検出部21が検出してから、最大移動時間TMAX以内に当該出発階に設置された無線通信装置1Bを検出部21が検出した場合について、それぞれの検出日時を記録している。移動時間テーブル104における時間差は、無線通信装置1Aの検出日時と無線通信装置1Bの検出日時との差である。時間差の単位は、例えば、秒である。
時間TAは、移動時間テーブル104に記録された時間差の平均値と予め設定された時間TBの和として算出される。時間TBは、検出部21が無線通信装置1Bを検出してから利用者が乗場に到着するまでの時間である。時間TBは、例えば、無線通信装置1Bの設置位置からエレベータの乗場ドアまでの距離に基づいて一意に決定される値とする。時間TBは、例えば、無線通信装置1Bの設置位置から乗場ドアまでの距離を一般的な人の移動速度で除算した値とする。複数の乗場ドアが存在する場合、時間TBは、例えば、無線通信装置1Bの設置位置からそれぞれの乗場ドアまでの経路の長さの平均値に基づいて決定される。なお、移動時間テーブル104が空の場合は、時間TAとして最大移動時間TMAXを用いる。
本呼び生成部26は、例えば、プロセッサ2aがメモリ2bに記録されたプログラムを実行することで実現される。本呼び生成部26は、乗場に設置された無線通信装置1Bを検出部21が検出したことを契機として、本呼びを生成する。本呼び生成部26は、生成した本呼びを通信部29に供給する。本呼びは、例えば、通信端末2のID、出発階、行先階および乗場に到着するまでの時間などの情報を含む。出発階は、無線通信装置1Bの設置階である。行先階は、行先階テーブル100において出発階と関連付けられている階である。本呼びに含まれる乗場に到着するまでの時間は、時間TBとする。なお、行先階でエレベータのかごから利用者が降車する際に当該行先階の無線通信装置1Bを検出部21が検出することで本呼びが生成されることを防ぐために、本呼び生成部26は、本呼びを生成してから一定期間は本呼びを生成しない。
学習部27は、例えば、プロセッサ2aがメモリ2bに記録されたプログラムを実行することで実現される。学習部27は、本呼びが生成されるたびに、最大移動時間TMAXおよび相違度の閾値DMAXを決定する。つまり、学習部27は、学習結果に基づいて最大移動時間TMAXおよび閾値DMAXを更新する。ただし、はじめて本呼びが生成されるまでの間は、最大移動時間TMAXおよび相違度の閾値DMAXとしては、予めメモリ2bに記録されている初期値が用いられる。初期値は、適切な大きさの正数である。
学習部27は、無線通信装置1Aが検出されてから時間K×TMAXが経過するまでに同じ設置階の無線通信装置1Bが検出されていた場合、それらの検出日時の差tDIFFが現在のTMAXよりも大きければ、TMAX=tDIFFとする。Kは、適切な大きさの自然数である。なお、tDIFFが現在のTMAX以下であれば、学習部27は、TMAXを更新しない。
学習部27は、無線通信装置1Bが検出されるまで通信端末2の状態の取得が継続されていた場合、式(1)で算出された相違度dが現在のDMAXよりも大きければ、DMAX=dとする。なお、相違度dが現在のDMAX以下であれば、学習部27は、DMAXを更新しない。
通知部28は、例えば、通信端末2のディスプレイ2eおよびスピーカー2fの少なくとも一方によって実現される。また、通知部28は、通信端末2と無線通信などで接続されたウェアラブルデバイスであってもよい。通知部28は、後述するように、通信部29から供給された割当かごを示す情報を利用者に通知する。
通信部29は、例えば、通信装置2cによって実現される。通信装置2cは、例えば、Wi−Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)などの通信方式で無線通信を行う。通信部29は、仮呼び生成部25から供給された仮呼び又は本呼び生成部26から供給された本呼びを群管理装置3へ送信する。また、通信部29は、後述するように、群管理装置3から受信した割当かごを示す情報を通知部28に供給する。なお、通信部29が群管理装置3との通信で用いる規格は、無線通信装置1との通信で用いる規格とは異なってもよい。
図2に示すように、群管理装置3は、通信部31、呼び登録部32および配車計画管理部33を有する。
図9は、群管理装置のハードウェア構成図である。
図9に示すように、群管理装置3は、例えば、プロセッサ3a、メモリ3b、無線装置3cおよびインターフェース3dを有する。インターフェース3dは、制御装置4および表示装置5と電気的に接続されている。
通信部31は、例えば、無線装置3cによって実現される。通信部31は、例えば、Wi−Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)などの通信方式で無線通信を行う。通信部31は、通信端末2から仮呼び又は本呼びを受信する。
呼び登録部32は、例えば、プロセッサ3aがメモリ3bに記録されたプログラムを実行することで実現される。呼び登録部32は、仮呼び又は本呼びに含まれる乗場に到着するまでの時間を現在日時に加算することで、当該仮呼び又は当該本呼びに対応する乗場への到着時刻を算出する。呼び登録部32は、出発階、行先階、乗場への到着時刻および後述する配車計画110に基づいて、新たな呼びに対する割当かごを決定する。呼び登録部32は、既に割当かごが決定されている仮呼びおよび本呼びの待ち時間が最も小さくなるかごを新たな呼びに対する割当かごとして決定する。呼びの待ち時間とは、通信端末2が出発階の乗場へ到着してから、当該呼びに対応する割当かごが当該出発階に到着するまでの時間である。呼び登録部32は、配車計画管理部33に対し、呼びの種別、端末ID、出発階、行先階、乗場への到着時刻および割当かごの組を供給する。呼びの種別とは、仮呼び又は本呼びのいずれかを表す情報である。
配車計画管理部33は、例えば、プロセッサ3aがメモリ3bに記録されたプログラムを実行することで実現される。配車計画管理部33は、各かごについて、割り当てられている仮呼びおよび本呼びに関する情報を配車計画110としてメモリ3bに保持する。つまり、配車計画110は、かごごとに生成される。
図10は、実施の形態1における配車計画の一例である。
図10は、あるかごの配車計画110を例示している。図10に示すように、配車計画110は、呼びの種別、通信端末2の端末ID、出発階、行先階および呼び登録部32によって算出された乗場への到着時刻を含む。
配車計画管理部33は、呼び登録部32から呼びの種別、端末ID、出発階、行先階、乗場への到着時刻および割当かごの組が供給されると、当該組に含まれる情報を当該割当かごの配車計画110に追加する。ただし、既に同じ端末IDの本呼びがいずれかのかごの配車計画110に登録されている場合、配車計画管理部33は、当該組に含まれる情報を当該割当かごの配車計画110に追加しない。また、既に同じ端末IDの仮呼びがいずれかのかごの配車計画110に登録されている場合、配車計画管理部33は、当該仮呼びを削除した上で、当該組に含まれる情報を当該割当かごの配車計画110に追加する。
配車計画管理部33は、後述するように、制御装置4からかごの現在階および移動方向が供給されると、当該かごの配車計画110から、当該かごの停止階が出発階又は行先階であり、なおかつ現時点で既に乗場への到着時刻を過ぎている本呼びを削除する。さらに、配車計画管理部33は、すべてのかごの配車計画110から、現時点で既に乗場への到着時刻を過ぎている仮呼びを削除する。配車計画管理部33は、以上のようにして更新した配車計画110を制御装置4に供給する。
制御装置4は、群管理装置3から供給された対応するかごの配車計画110を参照する。制御装置4は、対応するかごの配車計画110に基づいて、当該かごが割り当てられている仮呼びおよび本呼びの出発階に、乗場への到着時刻まで当該かごを停止させる。制御装置4は、出発階が同一である複数の呼びにかごが割り当てられている場合、乗場への到着時刻のうち最も遅い時刻まで当該かごを停止させる。制御装置4は、本呼びの行先階に到着してから定められた時間、かごを停止させる。制御装置4は、かごがある階に到着した場合、又は、かごがある階から出発した場合に、当該かごの現在階および移動方向を群管理装置3に供給する。
表示装置5は、群管理装置3が決定した本呼びの割当かごを画面に表示することで利用者に知らせる。
図11は、実施の形態1におけるエレベータシステムの動作例を示すシーケンス図である。以下、図11を参照して、通信端末2を携帯した利用者が通路を通ってエレベータの乗場に到着する場合のシステム全体の動作フローを説明する。なお、無線通信装置1Aは通路に設置されているものとする。
通路に設置された無線通信装置1Aの通信範囲内に利用者が進入すると、通信端末2の検出部21は、無線通信装置1Aを検出する(ステップS1)。通信端末2は、状態取得部22により通信端末2の状態を取得するたびに、乗車確率演算部24により乗車確率を算出する。通信端末2は、乗車確率が閾値PMIN以上であれば、仮呼び生成部25により仮呼びを生成する(ステップS2)。通信端末2は、通信部29により、群管理装置3に対して仮呼びを送信する(ステップS3)。
群管理装置3は、通信部31により通信端末2から仮呼びを受信すると、呼び登録部32を用いて割当かごを決定する(ステップS4)。群管理装置3は、配車計画管理部33により配車計画110を更新する。
乗場に設置された無線通信装置1Bの通信範囲内に利用者が進入すると、通信端末2の検出部21は、無線通信装置1Bを検出する(ステップS5)。通信端末2は、本呼び生成部26により本呼びを生成する(ステップS6)。通信端末2は、通信部29により、群管理装置3に対して本呼びを送信する(ステップS7)。通信端末2は、学習部27により、最大移動時間TMAXおよび相違度の閾値DMAXを決定する(ステップS8)。
群管理装置3は、通信部31により通信端末2から本呼びを受信すると、呼び登録部32を用いて割当かごを決定する(ステップS9)。群管理装置3は、配車計画管理部33により配車計画110を更新する。群管理装置3は、当該割当かごを表示装置5に表示させる(ステップS10)。群管理装置3は、当該割当かごを示す情報を通信端末2に対して送信する(ステップS11)。通信端末2は、通知部28により当該割当かごを利用者に通知する(ステップS12)。
図12は、実施の形態1における仮呼び登録を示すフローチャートである。以下、図12を参照して、無線通信装置1Aが検出されてから仮呼びが生成されるまでの通信端末2の動作を詳細に説明する。
通信端末2は、検出部21により無線通信装置1Aが検出されると、検出日時、検出した無線通信装置1Aの設置階および設置位置の組を検出記録テーブル101に記録する(ステップS21)。通信端末2は、状態取得部22により定期的に状態を取得する(ステップS22)。通信端末2は、取得した状態を用いて乗車確率を算出する(ステップS23)。通信端末2は、乗車確率を算出する契機となった無線通信装置1Aの検出がされてから仮呼びを生成しておらず、且つ、乗車確率が閾値PMIN以上であるか否かを判定する(ステップS24)。
ステップS24の条件が満たされる場合、通信端末2は、仮呼びを生成する(ステップS25)。ステップS25の次は、ステップS26の処理が行われる。ステップS24の条件が満たされない場合、ステップS25の処理が行われることなくステップS26の処理が行われる。
ステップS26では、状態が取得されてから最大移動時間TMAXが経過したか否かが判定される。ステップS26で、状態が取得されてから最大移動時間TMAXが経過していないと判定された場合、ステップS27の処理が行われる。ステップS27では、検出部21により無線通信装置1Bが検出されたか否かが判定される。ステップS27で、無線通信装置1Bが検出されたと判定された場合、通信端末2は、状態の取得を終了し、それまでに取得した状態の系列を状態記録テーブル102に記録する(ステップS28)。
ステップS26で、状態が取得されてから最大移動時間TMAXが経過したと判定された場合、ステップS28の処理が行われる。ステップS27で、無線通信装置1Bが検出されていないと判定された場合、ステップS22の処理が行われる。
以上で説明した実施の形態1によれば、通信端末2は、持ち運び可能な筐体を有し、筐体の移動状態を取得し、筐体の移動状態からエレベータへの乗車確率を算出する。つまり、利用者の移動状態を考慮することで、乗車確率を高い精度で算出できる。通信端末2は、算出された乗車確率に基づいて呼びを生成するか否かを決定し、生成した呼びを無線通信で群管理装置3に送信する。群管理装置3は、持ち運び可能な筐体を有する通信端末2が筐体の状態から算出したエレベータへの乗車確率に基づいて生成した呼びを、通信端末2より受信し、当該呼びに対する割当かごを決定し、かごの配車計画を更新する。このため、乗場から離れた場所での呼び登録を可能としつつ、無駄な呼びの発生を抑制することができる。その結果、エレベータの運行効率を向上させることができる。
また、実施の形態1によれば、筐体の移動状態には、加速度、速度、方角および移動状態の取得が開始されてからの移動距離のうち少なくとも1つが含まれる。このため、乗車確率をより高い精度で算出できる。
また、実施の形態1によれば、通信端末2は、算出された乗車確率が予め設定された閾値PMIN以上である場合およびエレベータの乗場に設けられた無線通信装置1Bを検出した場合に呼びを生成する。このため、無駄な呼びの発生を抑制することができる。
また、実施の形態1によれば、通信端末2は、建物内においてエレベータの乗場でない場所に設けられた無線通信装置1Aを検出した場合に、筐体の移動状態の取得を開始する。その後、通信端末2は、エレベータの乗場に設けられた無線通信装置1Bを検出するまで、又は、筐体の移動状態の取得を開始してから無線通信装置1間の最大移動時間TMAXが経過するまで、定期的に筐体の移動状態を取得し続ける。このため、必要な期間にのみ状態の取得が行われるので、通信端末2の処理負荷が増大することを防止できる。
また、実施の形態1によれば、通信端末2は、学習結果に基づいて最大移動時間TMAXを更新する。このため、筐体の移動状態の取得が継続される期間をより適切に設定できる。
また、実施の形態1によれば、通信端末2は、過去に取得した筐体の移動状態を記録している。通信端末2は、筐体の過去の移動状態のうち直近の移動状態との相違度が閾値以下である移動状態を取得する契機となった乗場でない場所に設けられた無線通信装置1Aの検出回数と、乗場に設けられた無線通信装置1Bの過去の検出回数と、に基づいて乗車確率を算出する。このため、乗車確率を高い精度で算出できる。
また、実施の形態1によれば、通信端末2は、学習結果に基づいて相違度の閾値DMAXを更新する。このため、乗車確率をより高い精度で算出できる。
また、実施の形態1によれば、通信端末2は、筐体の移動状態を取得するたびに乗車確率を算出する。このため、無駄な呼びの発生を抑制することができる。
また、実施の形態1によれば、通信端末2は、現在日時、無線通信装置1の検出日時および予め記録されている無線通信装置1から乗場までの移動時間に基づいて乗場への移動時間を算出し、乗場への移動時間を示す情報を含む呼びを生成する。群管理装置3は、現在日時および通信端末2から受信した呼びに含まれる乗場への移動時間を示す情報に基づいて筐体の乗場への到着時刻を算出し、配車計画110に乗場への到着時刻を含める。このため、エレベータの運行効率を向上させることができる。
また、実施の形態1によれば、群管理装置3は、現時点で既に乗場への到着時刻を過ぎた呼びを配車計画110から削除する。このため、エレベータの運行効率を向上させることができる。
また、実施の形態1によれば、通信端末2は、乗場でない場所に設けられた無線通信装置1Aの検出日時と乗場に設けられた無線通信装置1Bの検出日時との時間差に基づいて、乗場でない場所に設けられた無線通信装置1Aから乗場までの移動時間を算出する。このため、エレベータの運行効率を向上させることができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、無線通信装置1と乗場との間の距離に基づいて時間TAおよび最大移動時間TMAXが算出される構成を示す。
実施の形態2におけるエレベータシステムの機能ブロック図は、図2と同様である。
実施の形態2において、無線通信装置1から通信端末2に対して定期的に送信される情報には、例えば、当該無線通信装置1の設置階、当該無線通信装置1の設置位置および当該無線通信装置1から乗場までの距離が含まれる。なお、無線通信装置1自身が乗場までの距離を送信するかわりに、建物内のすべての無線通信装置1のそれぞれから乗場までの距離を一括して通信端末2に送信する他の機器が設置されてもよい。
検出部21は、無線通信装置1を検出すると、検出日時、当該無線通信装置1の設置階および当該無線通信装置1の設置位置の組を検出記録テーブル101に記録する。さらに、検出部21は、無線通信装置1を検出すると、当該無線通信装置1の設置階、当該無線通信装置1の設置位置および当該無線通信装置1から乗場までの距離の組を後述する距離テーブル105に記録する。
無線通信装置1から乗場までの距離とは、例えば、当該無線通信装置1の設置位置からエレベータの乗場ドアまでの経路の長さである。無線通信装置1Aから乗場までの距離は、例えば、当該無線通信装置1Aの設置位置から乗場ドアまでの経路の長さである。無線通信装置1Bから乗場までの距離は、例えば、当該無線通信装置1Bの設置位置から乗場ドアまでの経路の長さである。複数の乗場ドアが存在する場合、無線通信装置1から乗場までの距離としては、例えば、当該無線通信装置1の設置位置からそれぞれの乗場ドアまでの経路の長さの平均値が設定される。
記録部23は、例えば、行先階テーブル100、検出記録テーブル101、状態記録テーブル102、乗車確率閾値テーブル103および距離テーブル105を保持する。
図13は、実施の形態2における距離テーブルの一例である。
図13に示すように、距離テーブル105は、無線通信装置1の設置階、無線通信装置1の設置位置および無線通信装置1から乗場までの距離の組を含む。例えば、無線通信装置1Aの設置位置は、「1」というIDで表されている。例えば、無線通信装置1Bの設置位置は、「2」というIDで表されている。乗場までの距離の単位は、例えば、メートルである。
実施の形態2における時間TAの算出方法について説明する。仮呼び生成部25は、無線通信装置1Aが送信した情報に含まれる設置階で取得された状態の系列を状態記録テーブル102から抽出する。仮呼び生成部25は、抽出された系列の中の状態に含まれる速度の平均を算出する。仮呼び生成部25は、無線通信装置1Aから乗場までの距離を速度の平均で除算した値を時間TAとして算出する。ただし、当該設置階で取得された状態の系列が存在しない場合、無線通信装置1Aを検出してから乗場に到着するまでの時間TAは最大移動時間TMAXと同じ値とする。
実施の形態2における最大移動時間TMAXの算出方法について説明する。学習部27は、距離テーブル105に基づいて、検出部21によって検出された無線通信装置1Bの設置階における無線通信装置1Aから乗場までの距離と当該無線通信装置1Bから乗場までの距離との差を算出する。学習部27は、無線通信装置1Bの設置階で取得された状態の系列を抽出する。学習部27は、抽出された系列の中の状態に含まれる速度の最低値を抽出する。ただし、速度の最低値は、0よりも大きい値とする。学習部27は、距離の差を速度の最低値で除算した値を最大移動時間TMAXとして算出する。
以上で説明した実施の形態2によれば、通信端末2は、無線通信装置1から乗場までの距離に基づいて最大移動時間TMAXを算出する。このため、建物内に設置されている無線通信装置1の設置位置が階によって異なる場合であっても、最大移動時間TMAXを高い精度で算出できる。
また、実施の形態2によれば、通信端末2は、無線通信装置1から乗場までの距離に基づいて、乗場でない場所に設けられた無線通信装置1Aから乗場までの移動時間を算出する。このため、建物内に設置されている無線通信装置1の設置位置が階によって異なる場合であっても、時間TAを高い精度で算出できる。
実施の形態3.
実施の形態3では、各階における乗車確率の閾値PMINが、群管理装置3により算出され、無線通信装置1を介して通信端末2に送信される構成を示す。
図14は、実施の形態3におけるエレベータシステムの機能ブロック図である。
図14に示すように、実施の形態3において、群管理装置3は、通信部31、呼び登録部32、配車計画管理部33、呼び記録部34および閾値演算部35を有する。群管理装置3は、有線通信又は無線通信により無線通信装置1と接続されている。
呼び記録部34は、例えば、メモリ3bによって実現される。呼び記録部34は、例えば、呼び実績テーブル111を保持する。
図15は、実施の形態3における呼び実績テーブルの一例である。
図15に示すように、呼び実績テーブル111は、端末ID、出発階、行先階、仮呼び受信時刻および本呼び受信時刻の組を含む。
端末IDが0001の実績のように、仮呼び受信時刻および本呼び受信時刻の両方が存在する場合は、群管理装置3が当該端末から仮呼びと本呼びの両方を受信したことを表す。
端末IDが0002の実績のように、仮呼びの受信時刻は存在し、本呼び受信時刻が空欄の場合は、群管理装置3が当該端末から仮呼びを受信し、本呼びをまだ受信していないことを表す。なお、現時点では、当該仮呼びに対応する乗場への到着時刻を過ぎていない。
端末IDが0003の実績のように、仮呼びの受信時刻が「×」であり、本呼び受信時刻が存在する場合は、群管理装置3が当該端末から仮呼びを受信することなく本呼びのみを受信したことを表す。
端末IDが0004の実績のように、仮呼びの受信時刻が存在し、本呼び受信時刻が「×」である場合は、群管理装置3が当該端末から仮呼びを受信したが、乗場への到着時刻を過ぎても本呼びを受信しなかったことを表す。つまり、この場合は、配車計画110から仮呼びが削除されたことを表す。
配車計画管理部33は、配車計画110を更新するたびに、呼び記録部34の呼び実績テーブル111を更新する。
配車計画管理部33は、配車計画110に仮呼びを追加した場合、端末ID、出発階、行先階、仮呼び受信時刻および本呼び受信時刻の組を呼び実績テーブル111に新たに追加する。このとき、仮呼び受信時刻は現在日時となり、本呼び受信時刻は空欄となる。
配車計画管理部33は、配車計画110に本呼びを追加した場合、端末ID、出発階および行先階が同じで、本呼び受信時刻が空欄となっている組が呼び実績テーブル111に存在するかどうかを確認する。当該組が存在する場合、配車計画管理部33は、空欄となっていた本呼び受信時刻に現在日時を記録する。当該組が存在しない場合、配車計画管理部33は、端末ID、出発階、行先階、仮呼び受信時刻および本呼び受信時刻の組を呼び実績テーブル111に新たに追加する。このとき、仮呼び受信時刻は「×」となり、本呼び受信時刻は現在日時となる。
配車計画管理部33は、現時点で既に乗場への到着時刻を過ぎている仮呼びを配車計画110から削除した場合、端末ID、出発階および行先階が同じで、本呼び受信時刻が空欄となっている組を呼び実績テーブル111から選択する。配車計画管理部33は、当該組の本呼び受信時刻に「×」を記録する。
閾値演算部35は、例えば、プロセッサ3aがメモリ3bに記録されたプログラムを実行することで実現される。閾値演算部35は、予めメモリ3bに乗車確率の閾値PMINの候補Pを記録している。候補Pは、例えば、10%から100%までの10%刻みの値である。閾値演算部35は、候補Pごとに平均待ち時間を評価する。閾値演算部35は、平均待ち時間が最小となる候補Pを乗車確率の閾値PMINとして、無線通信装置1に供給する。
図16は、実施の形態3における閾値演算部の機能ブロック図である。
図16に示すように、閾値演算部35は、仮想呼び生成部351、シミュレーション部352および閾値決定部353を有する。
仮想呼び生成部351は、呼び実績テーブル111に基づいて、待ち時間評価に必要な仮想の呼び情報を生成する。仮想の呼び情報は、呼びの種別、出発階、行先階および呼び発生時刻の組を含む。以下、仮想呼び生成部351について詳細に説明する。
仮想呼び生成部351は、まず、呼び実績テーブル111から、仮呼び受信時刻が現在時刻と同じ時刻から一定時間が経過するまでの間であり、なおかつ本呼び受信時刻が存在する、又は本呼び受信時刻が「×」であるような仮呼びの1日あたりの発生数を算出する。仮想呼び生成部351は、同様に、呼び実績テーブル111から、本呼び受信時刻が現在時刻と同じ時刻から一定時間が経過するまでの間であり、なおかつ仮呼び受信時刻が存在する、又は仮呼び受信時刻が「×」であるような本呼びの1日あたりの発生数を算出する。このような仮呼び又は本呼びの発生数は、出発階と行先階の組ごとに算出される。
図17は、実施の形態3における呼び実績テーブルの他の例である。図17を参照して、呼び実績テーブル111から算出される呼びの発生数の具体例を説明する。この具体例では、現在の日時を2016/12/09の08:21:00とする。また、上記の一定時間を10分間とする。この場合、仮呼び受信時刻が08:21:00から10分間が経過するまでの間であり、なおかつ本呼び受信時刻が存在する、又は本呼び受信時刻が「×」であるような仮呼びの数は3個となる。また、本呼び受信時刻が08:21:00から10分間が経過するまでの間であり、なおかつ仮呼び受信時刻が存在する、又は仮呼び受信時刻が「×」であるような本呼びの数は3個となる。
そして、仮想呼び生成部351は、出発階と行先階の組ごとに、前述の発生数を満たすように仮想の仮呼びおよび仮想の本呼びの系列を生成する。このとき、呼び発生時刻としては、現在時刻と同じ時刻から一定時間が経過するまでの間のランダムな時刻が設定される。
シミュレーション部352は、ある候補Pを閾値PMINとして仮定した条件のもとで、仮想呼び生成部351が生成した仮想の仮呼びおよび仮想の本呼びの系列に対する割当かごを決定する。このとき、候補Pの確率でランダムに仮想の仮呼びが削除される。削除された仮想の仮呼びに対しては、割当かごが決定されない。シミュレーション部352は、割当かごが動作した場合の本呼びの平均待ち時間を算出する。
閾値決定部353は、シミュレーション部352によって算出された平均待ち時間が最小となる候補Pを乗車確率の閾値PMINとして決定する。
無線通信装置1は、通信範囲内に存在する通信端末2に対して、当該無線通信装置1の設置階、当該無線通信装置1の設置位置および乗車確率の閾値PMINを含む情報を定期的に送信する。
検出部21は、無線通信装置1を検出すると、検出日時、当該無線通信装置1の設置階および当該無線通信装置1の設置位置の組を検出記録テーブル101に記録する。さらに、検出部21は、当該無線通信装置1から受信した乗車確率の閾値PMINを仮呼び生成部25に供給する。
仮呼び生成部25は、乗車確率を算出する契機となった無線通信装置1Aの検出がされてから仮呼びを生成しておらず、且つ、乗車確率演算部24によって算出された乗車確率が検出部21から供給された乗車確率の閾値PMIN以上である場合に、仮呼びを生成する。仮呼び生成部25は、生成した仮呼びを通信部29に供給する。
以上で説明した実施の形態3によれば、通信端末2は、算出された乗車確率が無線通信装置1から送信された乗車確率の閾値PMIN以上である場合に呼びを生成する。群管理装置3は、過去に登録された呼びを記録し、過去の呼びに基づいて乗車確率の閾値PMINを算出する。つまり、乗車確率の閾値PMINは、動的に変更される。このため、建物内の利用者の発生傾向に応じて、適切な乗車確率の閾値PMINを用いることができる。
実施の形態4.
実施の形態4では、検出部21が無線通信装置1Bを検出してから利用者が乗場に到着するまでの時間TBが学習によって決定される構成を示す。実施の形態4における時間TBは、無線通信装置1Bの設置位置からエレベータの乗場ドアまでの距離に基づいて決定される値ではない。
図18は、実施の形態4におけるエレベータシステムの機能ブロック図である。
図18に示すように、実施の形態4において、通信端末2は、検出部21、状態取得部22、記録部23、乗車確率演算部24、仮呼び生成部25、本呼び生成部26、学習部27、通知部28、通信部29および乗場到着検知部30を有する。
記録部23は、例えば、行先階テーブル100、検出記録テーブル101、状態記録テーブル102、乗車確率閾値テーブル103および乗場への移動時間テーブル106を保持する。
図19は、実施の形態4における乗場への移動時間テーブルの一例である。
図19に示すように、乗場への移動時間テーブル106は、通信端末2が乗場へ到着する直前に検出した無線通信装置1Bの設置階、検出日時、乗場への到着日時および検出日時と到着日時との時間差の組を含む。時間差の単位は、例えば、秒である。
学習部27は、実施の形態1と同様に、本呼びが生成されるたびに、最大移動時間TMAXおよび相違度の閾値DMAXを決定する。また、学習部27は、後述する乗場到着検知部30によって利用者の乗場への到着が検知されるたびに、時間TBを決定する。
以下、時間TBの決定方法について説明する。
乗場到着検知部30によって利用者の乗場への到着が検知されると、乗場へ到着する直前に検出された無線通信装置1Bの設置階、検出日時、乗場への到着日時および検出日時と到着日時との時間差の組が乗場への移動時間テーブル106に記録される。乗場への到着日時は、乗場到着検知部30によって乗場への到着が検知された日時である。学習部27は、乗場への移動時間テーブル106に記録されているすべての時間差の平均値を時間TBとして決定する。ただし、乗場への移動時間テーブル106に記録が無い場合、時間TBとしては、予めメモリ3bに記録されている初期値が用いられる。初期値は、適切な大きさの正数である。
なお、時間TBは階床別に保持されてもよい。その場合、学習部27は、乗場への移動時間テーブル106に記録されているすべての時間差の平均を算出するのではなく、同一の設置階ごとに時間差の平均を算出することで、各階床に対応する時間TBを決定する。
実施の形態4において、状態取得部22は、無線通信装置1Bを検出した後も、通信端末2の状態の取得を継続する。乗場到着検知部30は、無線通信装置1Bが検出された後に状態取得部22が取得した状態に基づいて、利用者の乗場への到着を検知する。
乗場到着検知部30は、例えば、加速度センサの値を用いて状態取得部22が取得した状態に基づいて、通信端末2が移動しているか停止しているかを定期的に判定する。乗場到着検知部30は、例えば、無線通信装置1Bが検出されてから初めて通信端末2が停止した際に、利用者が乗場へ到着したと判定する。つまり、乗場到着検知部30は、例えば、利用者が乗場ドアの前で停止したことを検知する。
乗場到着検知部30は、例えば、状態取得部22が気圧センサの値に基づいて通信端末2の上昇又は下降を検知した際に、利用者が乗場へ到着したと判定してもよい。この検知方法によれば、利用者が乗場ドアの前で停止することなくかごに乗車した場合であっても、利用者の乗場への到着を検知可能である。また、乗場到着検知部30は、例えば、無線通信、光、音又は画像などを用いて推定された通信端末2の位置に基づいて、利用者の乗場への到着を検知してもよい。
以上で説明した実施の形態4によれば、通信端末2は、筐体が乗場に到着したことを検知するたびに、学習結果に基づいて、乗場に設けられた無線通信装置1Bから乗場までの移動時間を算出する。このため、無線通信装置1Bの設置位置が階によって異なる場合であっても、時間TBを高い精度で算出できる。
この発明は、上記の課題を解決するためになされた。その目的は、乗場から離れた場所での呼び登録を可能としつつ、無駄な呼びの発生を抑制することができるエレベータシステムを提供することである。
この発明に係るエレベータシステムは、持ち運び可能な筐体を有し、筐体の状態を取得し、筐体の状態からエレベータへの乗車確率を算出し、算出された乗車確率に基づいて生成した呼びを無線通信で送信する通信端末と、通信端末から受信した呼びに対する割当かごを決定し、かごの配車計画を更新する群管理装置と、を備え、前記通信端末は、エレベータの乗場でない場所に設けられた無線通信装置を検出した場合に前記筐体の状態の取得を開始し、エレベータの乗場に設けられた無線通信装置を検出するまで、又は、前記筐体の状態の取得を開始してから無線通信装置間の最大移動時間が経過するまで、定期的に前記筐体の状態を取得し続け、学習結果に基づいて前記最大移動時間を更新する。