[第1の実施形態]
本開示の第1の実施形態に係る表面処理加工方法を図1(A)〜図9(B)を用いて説明する。図2には、本実施形態に係る表面処理加工方法に用いられる表面処理加工装置10の斜視図が示されている。まず、この表面処理加工装置10について説明する。なお、本実施形態の表面処理加工装置10で加工される処理対象物Wとしては、例えば、金属製品等を適用することができる。本実施形態では一例として自動車のトランスミッション用の歯車が適用される。また、塑性加工及び機械加工によって製品形状にされた処理対象物(製品)が一例として熱処理加工され、熱処理加工された処理対象物が、表面処理加工装置10でショットピーニング加工(表面処理加工)される前の処理対象物Wとして、用いられる。そして、この処理対象物Wには、一例として表面処理加工装置10に搬入される段階で表面側に圧縮残留応力が存在している処理対象物が適用されている。
(表面処理加工装置10の全体構成)
図2に示されるように、表面処理加工装置10は、搬入側コンベア12と、処理前検査ゾーン14と、二つの検査台16A,16Bと、6軸ロボット18と、磁性評価装置20と、応力測定装置22と、を備えている。搬入側コンベア12は、搬入側コンベア12上に載せられる処理対象物Wを所定の搬送方向(矢印X1参照)に搬送する。搬入側コンベア12の搬送方向中央には、処理前検査ゾーン14が設けられている。この処理前検査ゾーン14には、二つの検査台16A、16Bが搬入側コンベア12を跨ぐように設けられている。処理前検査ゾーン14における搬入側コンベア12の側方には、6軸ロボット18が配置されている。
6軸ロボット18は、処理対象物Wを吊り上げて移動させることが可能なロボットである。6軸ロボット18は、処理対象物Wを移動させて検査台16A、16Bの上(つまり検査位置)に配置することが可能である。すなわち、6軸ロボット18は、搬入側コンベア12の上に配置されている処理対象物Wを移動させて検査台16Aの上に配置すること、及び検査台16Aの上に配置されている処理対象物Wを移動させて検査台16Bの上に配置することが可能である。また、6軸ロボット18は、検査台16Bの上に配置されている処理対象物Wを移動させて搬入側コンベア12の上(下流側)に配置すること、及び検査台16Bの上に配置されている処理対象物Wを表面処理工程のライン外に持ち出すことが可能である。
また、一方の検査台16Aには検査装置として磁性評価装置20が設けられている。他方の検査台16Bには検査装置として応力測定装置22が隣接配置されている。磁性評価装置20及び応力測定装置22は、処理前検査部14Eを構成している。なお、本実施形態では、磁性評価装置20が応力測定装置22よりも搬送方向(矢印X1参照)の上流に配置されているが、応力測定装置22が磁性評価装置20よりも搬送方向(矢印X1参照)の上流に配置されてもよい。
磁性評価装置20は、検査台16Aの上に配置された処理対象物Wにおける加工対象部の全体の表面層の状態を検査する。磁性評価装置20は、例えば、処理対象物Wにおけるムラの有無及び金属組織の状態について渦電流による評価を行う。磁性評価装置20は、磁性評価装置20で行われた検査の結果として、電圧値を示す信号を出力してもよい。本実施形態の磁性評価装置20は、磁性評価装置20で行われた検査の結果が、予め定められた第二の正常範囲内であるか否かを評価(判定)する。磁性評価装置20は、その評価結果を示す信号を後述の制御ユニット26(図3(A)参照)に出力する。応力測定装置22は、検査台16Bの上に配置された処理対象物Wの残留応力を、X線回折法を用いて測定する。本実施形態の応力測定装置22は、処理対象物Wの全体の応力状態は測定せず、指定された測定点のみの残留応力を測定する。応力測定装置22は、その測定結果(検査結果)として応力値を示す信号を後述の制御ユニット26(図3(A)参照)に出力する。
以上のように、処理対象物Wがショットピーニング加工に適しているか否かを判断するために、磁性評価装置20で処理対象物Wの加工対象面全体の均質性が評価されると共に、応力測定装置22で加工対象範囲の一部について具体的な残留応力が測定される。なお、磁性評価装置20及び応力測定装置22の詳細については、後述する。
図3(A)には、図2の表面処理加工装置10の制御系の一部をブロック化した構成が模式図で示されている。図3(A)に示されるように、表面処理加工装置10は、制御ユニット26を更に備えている。磁性評価装置20、応力測定装置22及び6軸ロボット18は、制御ユニット26(制御部)に接続されている。制御ユニット26は、例えば、記憶装置、及び演算処理装置等を有している。詳細図示を省略するが、前記演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、記憶部、及び通信インタフェース(I/F)部を備え、これらがバスを介して互いに接続されている。前記記憶部には演算処理用のプログラムが記憶されている。また、記憶装置と演算処理装置とは、互いの通信インタフェース(I/F)部によって通信可能である。
制御ユニット26は、磁性評価装置20の評価結果を磁性評価装置20から受信し、応力測定装置22の検査結果を応力測定装置22から受信する。磁性評価装置20の評価結果は、磁性評価装置20の検査結果が予め定められた第二の磁性正常範囲(磁性についての第二の正常範囲)内であるか否かを示す情報である。磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性正常範囲内であるか否かの評価は、後述の判断手段96により行われる。制御ユニット26は、応力測定装置22による検査結果が予め定められた第二の応力許容範囲内(応力についての第二の許容範囲)であるか否か、及び、応力測定装置22による検査結果が予め定められた第二の応力正常範囲内(応力についての第二の正常範囲)であるか否かを判定(評価)する。なお、本明細書では「許容範囲」は、「正常範囲」よりも広く、「正常範囲」を含むように予め定められている。制御ユニット26は、磁性評価装置20及び応力測定装置22の検査結果がどちらも第二の正常範囲内であれば「合格」つまり標準のショット処理条件(ショットピーニング加工の条件)で加工可の評価(判定)をする。また、制御ユニット26は、磁性評価装置20による評価が正常(表面が均質な状態)であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が規格値(第二の応力正常範囲)を若干下回る又は若干上回るものの標準のショット処理条件を変更することにより正常になり得る処理対象物Wに対して、「条件付き合格」の評価(判定)をする。「条件付き合格」とは、ショット処理条件を変更して加工可という意味である。さらに、制御ユニット26は、「合格」にも「条件付き合格」にも該当しない場合(処理前検査部14Eの検査結果が予め定められた第二の許容範囲から外れている場合、すなわち、本実施形態では、応力測定装置22の検査結果が第二の応力許容範囲から外れている場合)は「不合格」(本実施形態では廃棄対象)の評価(判定)をする。
すなわち、制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が予め定められた第二の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が予め定められた第二の応力正常範囲内である場合、「合格」と評価する。制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が、予め定められた第二の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が予め定められた第二の応力正常範囲から外れているものの、予め定められた第二の応力許容範囲内である場合、「条件付き合格」と評価する。制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が、予め定められた第二の磁性正常範囲外である場合、又は応力測定装置22の検査結果が予め定められた第二の応力許容範囲外である場合、「不合格」と評価する。
制御ユニット26は、「不合格」の場合には処理対象物Wを表面処理工程のライン外に持ち出すように、6軸ロボット18を制御する。制御ユニット26は、「不合格」以外の場合、すなわち、「合格」及び「条件付き合格」の場合には、処理対象物Wを搬入側コンベア12(図2参照)に戻すように、6軸ロボット18を制御する。
図2に示されるように、表面処理加工装置10は、搬入出ローダ28と、ショットピーニング加工装置30(ショット処理装置)と、を更に備えている。搬入側コンベア12の下流側における一方の側方(図中では手前側)には、後述する搬出側コンベア66の上流側が配置されている。搬入側コンベア12の下流側における他方の側方(図中では奥側)には、投射ユニットとしてのショットピーニング加工装置30(ショット処理装置)のキャビネット32が配置されている。搬出側コンベア66の搬送方向(矢印X2参照)は、搬入側コンベア12の搬送方向(矢印X1参照)と同じ方向に設定されている。キャビネット32は、箱状に形成されている。キャビネット32の搬入側コンベア12の側の側壁には、搬入出用の開口部32Aが形成されている。また、搬入側コンベア12の下流側における上方には、搬入出ローダ28(搬入出装置)が設けられている。搬入出ローダ28は、搬入側コンベア12の上の処理対象物Wをキャビネット32の開口部32Aからキャビネット32の中に搬入すると共に、キャビネット32の中の処理対象物Wをキャビネット32の開口部32Aから搬出側コンベア66の上に搬出する。
搬入出ローダ28は、一対のレール28Aと、台車28Bとを備えている。一対のレール28Aは、搬入側コンベア12及び搬出側コンベア66の各搬送方向に対して直交する方向に延在している。台車28Bは、一対のレール28Aに沿って走行可能である。台車28Bは、図3(A)に示される制御ユニット26に接続されている。台車28Bを駆動させる機構の図示は省略されている。台車28Bの駆動は、制御ユニット26によって制御されている。また、詳細説明を省略するが、図2に示される台車28Bの下面には、処理対象物Wを吊り下げるための吊下げ機構(図示省略)が設けられている。前記吊下げ機構において処理対象物Wを受け取り及び受け渡しする下部は、昇降可能である。
図3(B)には、ショットピーニング加工装置30の要部が簡略化された模式図で示されている。なお、ショットピーニング加工装置30の基本構成は、特開2012−101304号公報に開示された構成と概ね同様である。図3(B)に示されるように、ショットピーニング加工装置30は、ショット処理室34と、製品載置部36と、噴射装置40と、を備えている。キャビネット32の内部には、ショット処理室34が形成されている。ショット処理室34では、処理対象物Wに投射材(鋼球等のショット)を衝突させることにより、処理対象物Wのショットピーニング加工(広義には、表面加工)が行われる。ショット処理室34内の下部には、処理対象物Wが載置される製品載置部36が設けられている。
また、キャビネット32内の側部には、噴射装置(エアノズル式ショットピーニング加工機)40のノズル64が設けられている。噴射装置40は、投射材を含む圧縮空気をノズル64から噴射してショット処理室34の処理対象物Wに対して投射材を衝突させる。以下、噴射装置40について簡単に説明する。
図3(B)に示されるように、噴射装置40は、投射材タンク42と、定量供給装置44と、加圧タンク46と、を備える。投射材タンク42は、定量供給装置44を介して加圧タンク46に接続されている。定量供給装置44は、加圧タンク46との間に設けられたポペット弁44Iを有している。ポペット弁44Iは、制御ユニット26(図3(A)参照)に接続されている。また、加圧タンク46には、加圧タンク46内の投射材の量を検知する図示しないレベル計が取り付けられている。前記レベル計は、制御ユニット26(図3(A)参照)に接続されている。制御ユニット26(図3(A)参照)は、加圧タンク46内の投射材の量が所定値未満であると前記レベル計が検知した場合には、定量供給装置44のポペット弁44Iを開くように制御する。ポペット弁44Iは、駆動用シリンダ(図示省略)によって駆動される。ポペット弁44Iの開閉は、前記レベル計の検知状態に応じて、制御ユニット26(図3(A)参照)によって制御される。ポペット弁44Iが開かれた状態では、投射材タンク42から定量供給装置44を経て適量の投射材が加圧タンク46へ送られる。
加圧タンク46の上部には、エア流入口46Aが形成されている。このエア流入口46Aには、接続配管48の一端部が接続されている。接続配管48の他端部は、接続配管50の流路中間部に接続されている。接続配管50の流路上流側(図中右側)の一端部は、圧縮空気の供給用のコンプレッサ52(圧縮空気供給装置)に接続されている。すなわち、加圧タンク46は、接続配管48、50を介してコンプレッサ52に接続されている。コンプレッサ52は、制御ユニット26(図3(A)参照)に接続されている。また、接続配管48の流路中間部にはエア流量制御弁54(電空比例弁)が設けられている。このエア流量制御弁54が開かれることで、コンプレッサ52からの圧縮空気が加圧タンク46内に供給される。これにより、加圧タンク46内を加圧することが可能である。
また、加圧タンク46の下部には、カットゲート56が設けられたショット流出口46Bが形成されている。このショット流出口46Bには、接続配管58の一端部が接続されている。接続配管58の他端部は、接続配管50の流路中間部に接続されている。接続配管58の流路中間部には、ショット流量制御弁60が設けられている。ショット流量制御弁60としては、例えば、マグナバルブ及びミキシングバルブ等が適用される。接続配管50における接続配管58との合流部は、ミキシング部50Aを構成している。接続配管50において、ミキシング部50Aよりも流路上流側(図中右側)で接続配管48との接続部よりも流路下流側(図中左側)には、エア流量制御弁62(電空比例弁)が設けられている。
すなわち、加圧タンク46内が加圧された状態でカットゲート56及びショット流量制御弁60が開かれ、かつ、エア流量制御弁62が開かれた場合、加圧タンク46から供給された投射材と、コンプレッサ52から供給された圧縮空気とが、ミキシング部50Aにて混合され、接続配管50の流路下流側(図中左側)に流れる。
接続配管50の流路下流側の端部には、噴射用(ショットピーニング用)のノズル64が接続されている。これにより、ミキシング部50Aに流れた投射材は、圧縮空気と混合された状態でノズル64の先端部より噴射される。エア流量制御弁54、62、カットゲート56及びショット流量制御弁60は、図3(A)に示される制御ユニット26に接続されている。
図3(A)に示される制御ユニット26には、処理対象物Wを噴射装置40でショットピーニング処理(ショット処理)するためのプログラムが予め記憶されている。表面処理加工装置10は、制御ユニット26に接続された操作ユニット24を更に備えている。操作ユニット24は、処理対象物W(図2参照)をショットピーニング処理する際のショット処理条件の基準値(標準設定基準値)を入力可能である。操作ユニット24は、入力操作に応じた信号を制御ユニット26に出力する。そして、制御ユニット26は、操作ユニット24から出力された信号、並びに磁性評価装置20及び応力測定装置22から出力された検査結果の信号に基づいて、図3(B)に示されるコンプレッサ52、エア流量制御弁54、62、カットゲート56及びショット流量制御弁60等を制御する。すなわち、図3(A)に示される制御ユニット26は、噴射装置40によるショット処理条件、より具体的には投射材の単位時間当たり吐出量(流量)、投射材を噴射する場合の噴射圧、噴射のタイミング、又は加工時間等を制御する。
本実施形態では、制御ユニット26は、前述した「不合格」でない評価(判定)をした場合にはその検査対象の処理対象物Wに対して投射材を投射する際のショット処理条件を処理前検査部14Eの検査結果に応じて設定する。具体的には、制御ユニット26は、「合格」の判定がされた検査対象の処理対象物Wに対してはショット処理条件として標準のショット処理条件(基準値)を設定する。制御ユニット26は、「条件付き合格」の判定がされた検査対象の処理対象物Wに対しては標準のショット処理条件(基準値)を修正したショット処理条件を設定する。
すなわち、制御ユニット26は、「合格」の判定がされた検査対象の処理対象物Wに対しては標準のショット処理条件で投射材を噴射(投射)するように噴射装置40を制御する。制御ユニット26は、「条件付き合格」の判定がされた検査対象の処理対象物Wに対しては標準のショット処理条件を修正したショット処理条件で投射材を噴射(投射)するように噴射装置40を制御する。補足説明すると、「条件付き合格」の判定がされた検査対象の処理対象物Wのうち応力測定装置22の検査結果が規格値(第二の応力正常範囲)を若干下回る処理対象物Wに対しては、圧縮残留応力を補うため、例えば、噴射圧(投射圧)が高くなるように標準のショット処理条件を修正したショット処理条件で投射材が噴射される。これに対して、「条件付き合格」の判定がされた検査対象の処理対象物Wのうち応力測定装置22の検査結果が規格値(第二の応力正常範囲)を若干上回る処理対象物Wに対しては、圧縮残留応力の過大な蓄積を避けるため、例えば、噴射圧(投射圧)が低くなるように標準のショット処理条件を修正したショット処理条件で投射材が噴射される。なお、投射材を噴射する場合の噴射圧は、図3(B)に示される電空比例弁であるエア流量制御弁54、62の入力値(エア流量制御弁54、62の開度)を制御することにより増減させることが可能である。
詳細説明を省略するが、製品載置部36は、本実施形態では一例として所謂マルチテーブルの構造を有している。すなわち、製品載置部36には、公転テーブル36Aが配置されると共に、公転テーブル36A上には公転テーブル36Aの同心円上の位置に複数の自転テーブル36Bが配置されている。公転テーブル36Aは、装置上下方向の回転軸35Xを備えている。公転テーブル36Aは、回転軸35X回りに回転(公転)可能である。公転テーブル36Aは、噴射装置40により投射材が噴射される噴射範囲と、噴射範囲以外の非噴射範囲とを含む位置に配置されている。また、自転テーブル36Bの直径は、公転テーブル36Aの直径よりも短い。自転テーブル36Bは、公転テーブル36Aの回転軸35Xと平行な回転軸35Zを備えている。自転テーブル36Bは、回転軸35Z回りに回転(自転)可能である。
自転テーブル36Bには、処理対象物Wが配置される。また、公転テーブル36Aにおける前記噴射範囲の上方には図示しない押さえ機構が設けられている。前記押さえ機構の押さえ部は、自転テーブル36B上の処理対象物Wを上方から押さえて処理対象物Wと共に回転可能である。また、公転テーブル36Aを回転(公転)させる公転駆動機構(図示省略)及び自転テーブル36Bを回転(自転)させる自転駆動機構(図示省略)は、それぞれ制御ユニット26(図3(A)参照)に接続されている。公転駆動機構及び自転駆動機構の作動は、それぞれ制御ユニット26(図3(A)参照)によって制御されている。これらが制御されることで、ショット処理条件の一つである処理対象物Wに対する相対的な投射位置が制御される。
図2に示されるように、表面処理加工装置10は、搬出側コンベア66と、処理後検査ゾーン68と、二つの検査台70A、70Bと、6軸ロボット72と、磁性評価装置74と、応力測定装置76と、を備えている。搬出側コンベア66は、搬出側コンベア66上に載せられる処理対象物Wを所定の搬送方向(矢印X2参照)に搬送する。搬出側コンベア66の搬送方向は、搬入側コンベア12の搬送方向(矢印X1参照)と同じ方向に設定されている。搬出側コンベア66の搬送方向中央には、処理後検査ゾーン68が設けられている。この処理後検査ゾーン68には、二つの検査台70A、70Bが搬出側コンベア66を跨ぐように設けられている。処理後検査ゾーン68における搬出側コンベア66の側方には、6軸ロボット72が配置されている。
6軸ロボット72は、処理対象物Wを吊り上げて移動させることが可能なロボットである。6軸ロボット72は、処理対象物Wを移動させて検査台70A、70Bの上(つまり検査位置)に配置することが可能である。すなわち、6軸ロボット72は、搬出側コンベア66の上に配置されている処理対象物Wを移動させて検査台70Aの上に配置すること、及び検査台70Aの上に配置されている処理対象物Wを移動させて検査台70Bの上に配置することが可能である。また、6軸ロボット72は、検査台70Bの上に配置されている処理対象物Wを移動させて搬出側コンベア66の上(下流側)に配置すること、及び検査台70Bの上に配置されている処理対象物Wを表面処理工程のライン外に持ち出すことができる。
また、一方の検査台70Aには検査装置として磁性評価装置74が設けられている。他方の検査台70Bには検査装置として応力測定装置76が隣接配置されている。磁性評価装置74及び応力測定装置76は、処理後検査部68E(第一検査部)を構成している。なお、本実施形態では、磁性評価装置74が応力測定装置76よりも搬送方向(矢印X2参照)の上流に配置されているが、応力測定装置76が磁性評価装置74よりも搬送方向(矢印X2参照)の上流に配置されてもよい。
磁性評価装置74は、検査台70Aの上に配置された処理対象物Wにおける加工対象部の全体の表面層の状態を検査する。磁性評価装置74は、例えば、処理対象物Wにおけるムラの有無及び金属組織の状態について渦電流による評価を行う。磁性評価装置74は、磁性評価装置74で行われた検査の結果として、電圧値を示す信号を出力してもよい。本実施形態の磁性評価装置74は、磁性評価装置74で行われた検査の結果が、予め定められた第一の磁性正常範囲(磁性についての第一の正常範囲)内であるか否かを評価(判定)する。磁性評価装置74は、その評価結果を示す信号を制御ユニット26(図3(A)参照)に出力する。なお、第一の磁性正常範囲は、第二の磁性正常範囲と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
応力測定装置76は、検査台70Bの上に配置された処理対象物Wの残留応力を、X線回折法を用いて測定する。本実施形態の応力測定装置76は、処理対象物Wの全体の応力状態は測定せず、指定された測定点のみの残留応力を測定する。応力測定装置76は、その測定結果(検査結果)として応力値を示す信号を制御ユニット26(図3(A)参照)に出力する。本実施形態では、処理後検査ゾーン68の磁性評価装置74は、処理前検査ゾーン14の磁性評価装置20と同様の構成を有している。処理後検査ゾーン68の応力測定装置76は、処理前検査ゾーン14の応力測定装置22と同様の構成を有している。
図3(A)に示されるように、磁性評価装置74、応力測定装置76及び6軸ロボット72は、制御ユニット26に接続されている。制御ユニット26は、磁性評価装置74の評価結果を磁性評価装置74から受信し、応力測定装置76の検査結果を応力測定装置76から受信する。磁性評価装置74の評価結果は、磁性評価装置74の検査結果が予め定められた第一の磁性正常範囲(磁性についての第一の正常範囲)内であるか否かを示す情報である。磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲内であるか否かの評価は、後述の判断手段96により行われる。制御ユニット26は、応力測定装置76による検査結果が予め定められた第一の応力許容範囲内(応力についての第一の許容範囲)であるか否か、及び、応力測定装置76による検査結果が予め定められた第一の応力正常範囲内(応力についての第一の正常範囲)であるか否かを判定(評価)する。なお、第一の応力許容範囲は、第二の応力許容範囲と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第一の応力正常範囲は、第二の応力正常範囲と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第一の応力正常範囲は、応力規格範囲とも称される。
制御ユニット26は、磁性評価装置74及び応力測定装置76の検査結果がどちらも第一の正常範囲内(処理後検査部68Eの検査結果が予め定められた第一の正常範囲内)であれば「合格」と評価(判定)する。制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲を外れるものの第一の応力許容範囲内であれば「追加工対象」と評価(判定)する。制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲外、又は応力測定装置76の検査結果が第一の応力許容範囲外であれば「不合格」(本実施形態では廃棄対象)と評価(判定)する。
すなわち、制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が、予め定められた第一の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置76の検査結果が予め定められた第一の応力正常範囲内である場合、「合格」と評価する。制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が予め定められた第一の磁性正常範囲外である場合、又は応力測定装置76の検査結果が予め定められた第一の応力許容範囲外である場合、「不合格」と評価する。制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲内であり、応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲外であり、かつ、第一の応力許容範囲内であれば、「追加工対象」と評価する。
制御ユニット26は、「合格」の場合には、処理対象物Wを搬出側コンベア66(図2参照)に戻すように6軸ロボット72を制御する。制御ユニット26は、「不合格」の場合には、処理対象物Wを表面処理工程のライン外に持ち出すように、6軸ロボット72を制御する。搬出側コンベア66(図2参照)に戻された処理対象物Wは、次工程に流される。制御ユニット26は、「追加工対象」の場合には、当該処理対象物Wを対象として、処理後検査部68Eの検査結果に応じて標準のショット処理条件(基準値)を修正したショット処理条件を設定する。制御ユニット26は、「追加工対象」の判定がされた処理対象物Wを戻し用コンベア(図示省略)上に載せるように、6軸ロボット72を制御する。戻し用コンベアは、搬入側コンベア12(図2参照)及び搬出側コンベア66(図2参照)と平行に設置され、戻し用コンベア上に載せられた処理対象物Wをショットピーニング加工装置30(図2参照)の正面まで搬送する。戻し用コンベアにより搬送された処理対象物Wは、搬入側コンベア12により搬送された未処理の処理対象物Wと同様に、搬入出ローダ28(図2参照)によってキャビネット32(図2参照)の中に搬入される。制御ユニット26は、「追加工対象」の判定がされた処理対象物Wに対しては、標準のショット処理条件を修正したショット処理条件で投射材を噴射(投射)するように噴射装置40を制御する。これにより、「追加工対象」と評価された処理対象物Wに対して、噴射装置40が再び投射材を投射するショット処理が行われる。
また、制御ユニット26は、磁性評価装置74及び応力測定装置76の検査結果を記憶装置において記憶する。制御ユニット26は、記憶装置に記憶された直近の例えば数十日分(あるいは数日分)又は数週間分(本実施形態では一例として20日分)の処理後検査部68E(図2参照、後述する処理後検査工程)の応力測定装置76による検査結果(データ)について、一日毎(広義には「所定期間毎」)の平均値を演算処理装置において演算する。以下、当該平均値を単に「応力平均値」とも言う。応力平均値の演算の際、処理後検査部68Eの応力測定装置76による検査結果のうち、後述する再ショット処理が行われた(追加工工程を経た)処理対象物Wの検査結果が除かれる。なお、再ショット処理が行われた処理対象物Wの検査結果が除かれなくてもよい。
制御ユニット26は、さらに応力平均値と応力規格中央値(第一の応力正常範囲の中央値)との差を乖離量として演算処理装置において演算する。制御ユニット26は、演算処理装置において、前記乖離量の増減傾向(経日変化の傾向)を示す一次式の傾きと切片とを、日(横軸)と日毎乖離量(縦軸)とから最小二乗法によって算出する。制御ユニット26は、中長期の傾向として応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲(応力についての第一の正常範囲)から外れる傾向にあるか否かを判断する。制御ユニット26は、応力平均値が予め設定された第一の応力正常範囲(応力についての第一の正常範囲)から外れると予測される日(広義には「時期」)を予測日として算出する。そして、制御ユニット26は、後述する所定のタイミングで、処理後検査部68E(応力測定装置76)による検査結果の経時変化の傾向に基づいて、処理後検査部68E(応力測定装置76)の検査結果が第一の応力正常範囲外となる割合を抑えるようにショット処理条件の基準値(標準設定基準値)を再設定する。なお、第一の応力正常範囲は、第二の応力正常範囲と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(磁性評価装置20、74について)
次に、磁性評価装置20、74について図4(A)及び図4(B)を参照しながら説明する。図4(A)には、磁性評価装置20(表面特性検査装置)の回路構成が示されている。図4(B)には、磁性評価装置20の検査検出器86の構成が透視状態の斜視図で示されている。なお、図2に示される磁性評価装置20及び磁性評価装置74は、同様の装置構成であるため、図4(A)の磁性評価装置には代表して符号20を付している。
図4(A)に示されるように、磁性評価装置20は、交流電源78、交流ブリッジ回路80及び評価装置90を備えている。交流電源78は、交流ブリッジ回路80に可変の周波数を有する交流電力を供給可能である。
交流ブリッジ回路80は、可変抵抗器82と、被検体(検査対象)となる処理対象物W(以下、適宜「被検体W」と略す)に渦電流を励起するようにコイルが配置される検査検出器86と、検査検出器86からの出力と比較する際の基準となる基準状態を検出する基準検出器84と、を備えている。可変抵抗器82は、抵抗RAを抵抗R1と抵抗R2とに分配比γで分配することができる。分配比γは、可変である。抵抗R1及び抵抗R2は、基準検出器84及び検査検出器86と共にブリッジ回路を構成している。本実施形態では、点A及び点Bが磁性評価装置20の交流電源78に接続され、点C及び点Dが増幅器91に接続されている。点Aは、抵抗R1と抵抗R2とを分配する点である。点Bは、基準検出器84と検査検出器86との間に位置している。点Cは、抵抗R1と基準検出器84との間に位置している。点Dは、抵抗R2と検査検出器86との間に位置している。また、ノイズの低減のため、基準検出器84及び検査検出器86側が接地されている。なお、可変抵抗器82及び基準検出器84は一例として回路基板88上に配置されている。
評価装置90は、増幅器91と、絶対値回路92と、ローパスフィルタ(LPF)93と、位相比較器94と、周波数調整器95と、判断手段96と、表示手段97と、温度測定手段98と、を備えている。増幅器91は、交流ブリッジ回路80から出力される電圧信号を増幅する。絶対値回路92は、全波整流を行う。LPF93は、直流変換を行う。位相比較器94は、交流電源78から供給される交流電圧と増幅器91から出力される電圧との位相を比較する。周波数調整器95は、交流電源78から供給される交流電圧の周波数を調整する。判断手段96は、抵抗R1と抵抗R2との分配を最適化する非平衡調整を行う。さらに判断手段96は、LPF93からの出力を磁性評価装置20,74の検査結果として受信する。判断手段96は、当該検査結果に基づいて処理対象物Wの表面状態の良否を判断する。具体的には、判断手段96は、当該検査結果が予め定められた第二の磁性正常範囲内又は第一の磁性正常範囲内であるか否かを評価(判定)する。処理対象物Wの表面状態が均質な状態であれば、磁性評価装置20,74の検査結果は第二の磁性正常範囲内又は第一の磁性正常範囲内となる。表示手段97は、判断手段96による評価結果を表示及び警告する。温度測定手段98は、評価位置の温度を検出する。
増幅器91は、点C及び点Dに接続されている。増幅器91には、点Cと点Dとの間の電位差が入力される。増幅器91の出力は絶対値回路92に接続されている。絶対値回路92の出力はLPF93に接続されている。LPF93の出力は判断手段96に接続されている。位相比較器94は、交流電源78、増幅器91及び判断手段96に接続されている。周波数調整器95は、交流電源78及び増幅器91に接続されている。また、判断手段96は、制御信号を出力することにより、交流ブリッジ回路80の点Aの位置、即ち、抵抗R1と抵抗R2の分配比γを変更することができる。
温度測定手段98は、非接触式の赤外センサ又は熱電対等からなり、被検体Wの表面の温度信号を判断手段96に出力する。判断手段96は、温度測定手段98で検出された被検体Wの温度が所定範囲内である場合に、被検体Wの表面処理状態の良否を判断する。判断手段96は、温度測定手段98で検出された温度が所定範囲外である場合、被検体(処理対象物)Wの表面処理状態の良否の判断を行わない。
検査検出器86及び基準検出器84は同様の構成を有している。これら検査検出器86及び基準検出器84としては、被検体Wの評価部を挿通可能なコアの外周にコイルが巻回されて形成された検出器が用いられる。この検出器は、コイルを被検体Wの表面と対向させて近接させることにより、被検体Wに渦電流を励起可能である。すなわち、このコイルは、被検体Wの表面特性検査領域を囲むように巻回され、被検体Wの表面特性検査領域と対向している。ここで、被検体Wの表面特性検査領域を囲むとは、少なくとも表面特性検査領域の一部を包囲する(包むよう囲む)ことで、表面特性検査領域に渦電流を励起することを含むことを意味している。
図4(B)に示されるように、検査検出器86は、コア86Aと、コイル86Bと、を備えている。コア86Aは、円筒状であり、被検体W(図中では模式化して円柱体として図示)を覆うように配置されている。コイル86Bは、コア86Aの外周面に巻回されたエナメル銅線からなっている。なお、本実施形態では、コイル86Bが巻回されたコア86Aを囲むように、円筒状の磁気シールド86Cが設けられている。コア86Aは非磁性材料、例えば、樹脂により形成されている。なお、コア86Aの形状は、被検体Wを内側に配置できる形状であれば円筒形状でなくてもよい。また、検査検出器86は、コイル86Bが形状を維持できればコア86Aを備えていなくてもよい。
コイル86Bが被検体Wの検査対象面(表面特性検査領域)を囲むと共に、コイル86Bが被検体Wの検査対象面と対向するように、検査検出器86が配置される。この状態で、交流電源78(図4(A)参照)によりコイル86Bに所定の周波数の交流電力を供給すると交流磁界が発生する。この結果、被検体Wの表面に交流磁界に交差する方向に流れる渦電流が励起される。渦電流は残留応力層の電磁気特性に応じて変化する。このため、残留応力層の特性(表面処理状態)に応じて増幅器91(図4(A)参照)から出力される出力波形(電圧波形)の位相及び振幅(インピーダンス)が変化する。この出力波形の変化により表面処理層の電磁気特性を検出し、検査を行うことができる。
すなわち、図4(A)に示される評価装置90は、交流ブリッジ回路80からの出力信号に基づいて、被検体Wの表面特性を評価する。このとき、交流ブリッジ回路80は、交流ブリッジ回路80に交流電力が供給されることにより、検査検出器86が被検体Wの電磁気特性を検出し、かつ、基準検出器84が基準状態を検出している状態にある。評価装置90の判断手段96は、制御ユニット26に接続されている。判断手段96は、評価結果に応じた信号を制御ユニット26に出力する。なお、判断手段96は、温度測定手段98で検出された温度が所定範囲外であって判断を回避した場合については、「検査不可」であった旨の信号を制御ユニット26に出力する。これにより、判断手段96は、検査による判定結果を出せなかったことを制御ユニット26に通知する。
判断手段96は、「検査不可」であった旨の信号を表示手段97に出力する。表示手段97は、この信号を受信し、判断手段96による評価結果として「検査不可」であった旨を表示及び警告する。これにより、例えば、作業員が磁性評価装置20、74を点検し、必要に応じて動作環境を改善した後、磁性評価装置20、74を再び動作させてもよい。また例えば、作業員が評価装置90による検査結果を無効化して、磁性評価装置20、74を再び動作させてもよい。これにより、被検体Wの表面特性を再び評価することができる。
<磁性評価装置20を用いた検査方法>
次に、磁性評価装置20を用いた検査方法について概説する。まず、交流電源78から交流ブリッジ回路80に交流電力が供給された状態で、被検体Wに渦電流が励起されるように、被検体Wに対して検査検出器86を配置、又は検査検出器86に対して被検体Wを配置する(配置工程)。すなわち、先に配置された被検体Wを包囲するように検査検出器86を配置するか、先に配置された検査検出器86の中に被検体Wを挿入して配置する。次に、交流ブリッジ回路80から出力された出力信号に基づいて、評価装置90が被検体Wの表面特性を評価する(評価工程)。そして、評価された結果が評価装置90から制御ユニット26へ出力される。
なお、渦電流による磁性評価については、例えば、特表2013−529286号公報、特表2015−525336号公報、又は国際公開第2015/107725号パンフレット等に開示された装置を適用して磁性評価することが可能である。
(応力測定装置22、76について)
次に、応力測定装置22、76について、図5〜図9(B)を参照しながら説明する。なお、図2に示される応力測定装置22及び応力測定装置76は、同様の装置構成であるため、図5の応力測定装置には代表して符号22を付している。
図5には、応力測定装置22の一部が模式的な斜視図で示されている。図6には、応力測定装置22の一部が側面視で簡略化して示されている。図5に示されるように、応力測定装置22は、装置本体100及び制御装置150を備えている。
装置本体100は、箱状の筐体である。本実施形態では、装置本体100の内部にX線発生源102が収容されている。X線発生源102は、X線管球を備え、所定波長のX線を発生させる装置である。本実施形態では、X線発生源102は、装置本体100に固定されている。応力測定装置22では、検査対象の処理対象物W(以下、適宜、「検査対象物W」と略す。)に合わせて適宜の波長のX線が用いられる。装置本体100の前面100Fには、X線照射用の窓(図示省略)が形成されている。X線発生源102で発生したX線は、前記窓を介して検査対象物Wへ照射される。なお、図5及び図6では、X線発生源102から検査対象物WへのX線の経路及び照射方向(入射方向)は、矢印付きの線Xaで示される。
装置本体100は、第一検出素子106及び第二検出素子108を備えている。第一検出素子106及び第二検出素子108は、ここでは装置本体100の前面100F側に配置されている。第一検出素子106及び第二検出素子108は、検査対象物Wの回折X線の強度をそれぞれ検出する。第一検出素子106は、0次元のX線強度測定素子である。0次元とは、素子の配置位置でX線の強度を測定するとの意味である。つまり、第一検出素子106は、複数の素子が直線に沿って配置された1次元のラインセンサ及び複数の素子が平面に配置された2次元のイメージングプレートとは異なる。第二検出素子108も、0次元のX線強度測定素子である。第一検出素子106及び第二検出素子108として、例えば、シンチレーションカウンタが用いられる。
装置本体100は、第一検出素子106及び第二検出素子108をX線の入射方向と直交する方向に沿って(矢印X3方向参照)それぞれ移動させる移動機構120を備えている。図6に示されるように、移動機構120は、変位駆動用の電動モータ122と、ボールネジ機構124と、を有している。
電動モータ122は、装置本体100に固定されている。ボールネジ機構124は、X線の入射方向と直交する方向(矢印X3方向参照)に沿って延びる直線状のネジ126と、このネジ126に螺合された第一ナット128及び第二ナット130と、を有している。ネジ126は、その軸線周りに回転可能に支持されている。ネジ126は、電動モータ122が駆動されると、駆動力伝達機構(図示省略)を介して駆動力が伝達されることで、自身の軸線周りに回転する。なお、ネジ126は、X線発生源102からの入射X線に対して横方向に(図6の紙面に垂直な方向に)オフセットされた位置に配置されている。第一ナット128には第一スライダ132が固定されている。第二ナット130には第二スライダ134が固定されている。第一スライダ132及び第二スライダ134は、一対のレール136(図5参照)によって一対のレール136の延在方向にスライド可能に支持されている。一対のレール136は、装置本体100の前面100Fに設けられ、ネジ126と平行な方向(X線の入射方向と直交する方向)に延在している。なお、図5では一対のレール136を模式化して示すが、一対のレール136には公知の一対のガイドレールを適用できる。
図6に示されるように、第一スライダ132には第一検出素子106が固定されている。第二スライダ134には第二検出素子108が固定されている。電動モータ122が駆動されると、第一ナット128及び第一スライダ132並びに第二ナット130及び第二スライダ134がネジ126に対してその軸線方向に相対移動する。これにより、第一検出素子106及び第二検出素子108が、同期してX線の入射方向と直交する方向に(矢印X3方向参照)それぞれ移動される。すなわち、移動機構120によって、第一検出素子106及び第二検出素子108は、X線強度の検出位置を直線上で変更することができる。
第一検出素子106は、検査対象物Wの回折X線の強度を第一検出位置で検出する。第二検出素子108は、検査対象物Wの回折X線の強度を第一検出位置とは異なる第二検出位置で検出する。第一検出位置及び第二検出位置は、例えば、検査対象物Wの材料及び焦点距離に応じて変化させることができる。本実施形態では、第一検出素子106及び第二検出素子108は、予め設定された同一の距離を同期して移動する。予め設定された距離は、必要な回折強度分布を得ることができる範囲の距離である。
移動機構120は、図5に示される制御装置150に接続されている。制御装置150は、例えば、CPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びHDD(Hard Disk Drive)等を備えた汎用的なコンピュータで構成されている。制御装置150は、処理装置152、入力装置154(例えば、キーボード及びマウス)及び出力装置156(例えば、ディスプレイ)を備えている。図6に示されるように、処理装置152は、入出力部160、移動制御部162、応力算出部164及び記憶部166を備えている。
入出力部160は、ネットワークカード等の通信機器及びグラフィックカード等の入出力装置である。例えば、入出力部160は、電動モータ122と通信可能に接続されている。入出力部160は、例えば、図5に示される入力装置154及び出力装置156と通信可能に接続されている。また、図6に示される入出力部160は、X線発生源102、第一検出素子106及び第二検出素子108に接続されている。後述する移動制御部162及び応力算出部164は、入出力部160を介して各構成要素と情報のやり取りを行う。
移動制御部162は、移動機構120を駆動させて(移動機構120の駆動を制御することで)第一検出素子106及び第二検出素子108のそれぞれの検出位置を制御する。移動制御部162は、検査対象物Wを構成する材料に基づいて定まるピーク出現角度を予め取得し、ピーク出現角度を含むように、第一検出素子106及び第二検出素子108のそれぞれの検出位置を制御する。検査対象物Wを構成する材料に基づいて定まるピーク出現位置は、記憶部166に記憶されている。また、応力算出部164は、移動機構120により第一検出素子106及び第二検出素子108がそれぞれ移動することによってそれぞれ検出された回折X線の強度ピークに基づいて、検査対象物Wの残留応力を算出する。以下、残留応力の算出について詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係る応力測定装置22の検出位置を説明するための概要図である。図7では、検査対象物Wに対して入射X線XINが照射され、回折角2θで回折X線が出力される場合を示している。この場合、所定平面PLにおいて回折X線によって回折環Rが描かれる。ここで、本実施形態では、回折X線の回折環の0°に対応する検出位置、及び回折X線の回折環の180°に対応する検出位置のそれぞれで強度ピークが出現し、この部分(つまり対称となる点)の回折強度を取得する場合を例とする。
図8は、回折環を説明するための概要図である。図7及び図8に示されるように、回折環Rの0°に対応する第一検出位置P1では、回折X線XR1が検出される。回折環Rの180°に対応する第二検出位置P2では、回折X線XR2が検出される。この場合、移動制御部162(図6参照)は、回折環Rの0°に対応する第一検出位置P1を含む範囲を第一検出素子106(図6参照)が移動するように設定する。同様に、移動制御部162(図6参照)は、回折環Rの180°に対応する第二検出位置P2を含む範囲を第二検出素子108(図6参照)が移動するように設定する。これにより、一度のX線の照射で2角度の回折X線を得て、二つのX線回折強度分布を得ることができる。
応力算出部164(図6参照)は、第一検出位置P1及び第二検出位置P2のそれぞれで検出されたX線回折強度分布(角度及び強度の関係)に基づいて、回折ピークを取得する。ここでは、回折環Rの0°に対応する強度ピーク、及び回折環Rの180°に対応する強度ピークの二つの強度ピークを得ることができる。図8に示される二点鎖線の回折環RRは、検査対象物Wに残留応力が存在しない場合の回折環である。残留応力が存在する場合の回折環Rでは、残留応力が存在しない場合の回折環RRに比べて、残留応力に応じて中心位置がずれる。
応力算出部164(図6参照)は、この差を利用して残留応力値を算出する。例えば、応力算出部164(図6参照)は、cosα法を用いて残留応力値を算出する。cosα法では、ε−cosα線図の傾きから残留応力が得られる。ε−cosα線図は、cosα(α:回折中心角)と回折環上の四箇所(α,π+α,−α,π−α)の歪み(εα,επ+α,ε−α,επ−α)を用いて表される歪みεとの関係を示す。
応力算出部164(図6参照)は、α=0°,180°の二点を用いてε−cosα線図の傾き(一次関数の傾き)を算出する。そして、応力算出部164(図6参照)は、一次関数の傾きに、X線応力測定乗数を乗じて残留応力を得る。X線応力測定乗数は、ヤング率、ポアソン比、ブラッグ角の余角及びX線入射角によって定まる定数であり、図6に示される記憶部166に予め記憶されている。応力算出部164は、算出した残留応力値を、入出力部160を介して制御ユニット26へ出力する。なお、応力算出部164で算出された残留応力値は、制御ユニット26へ出力されると共に、記憶部166に記憶されてもよいし、出力装置156(図5参照)へ出力されてもよい。
<応力測定装置22を用いた残留応力測定方法>
次に、応力測定装置22を用いた残留応力測定方法を説明する。図9(A)及び図9(B)は、本実施形態に係る残留応力測定方法を示すフローチャートである。
最初に、残留応力測定前の調整処理が実行される。図9(A)は、残留応力測定前の調整処理を示すフローチャートである。図9(A)に示されるように、まず、角度調整処理(ステップS240)が実行される。この処理では、検査対象物Wに対する入射X線の角度が調整される。例えば、図6に示されるように、装置本体100を傾けて煽り角θ1を調整することで、入射X線の角度が調整される。なお、装置本体100を傾ける処理は、一例として、別途の装置(制御部及びアクチュエータ)が行う。図9(A)に示される角度調整処理(ステップS240)により、測定中の入射角度が所定角度(単一角度)に固定される。
次に、焦点調整処理(ステップS242)が実行される。この処理では、検査対象物Wに対する入射X線の焦点が調整される。例えば、装置本体100(図6参照)の位置が変更されることにより、入射X線の焦点が調整される。なお、高さ及び位置を変更する処理は、一例として、別途の装置(制御部及びアクチュエータ)が行う。
図9(A)に示されるフローチャートが終了すると、応力測定装置22は、検査対象物Wの表面側の残留応力を測定可能な状況となる。図9(B)は検査対象物Wの表面側の残留応力の測定方法を示すフローチャートである。
図9(B)に示されるように、最初にX線照射処理(ステップS250:X線照射工程)が実行される。このX線照射処理(ステップS250)では、X線発生源102から検査対象物WにX線を照射する。次に、このX線照射処理(ステップS250)の実行中において測定処理(ステップS252:移動制御工程)が実行される。この測定処理(ステップS252)では、移動制御部162による制御で移動機構120を駆動させて第一検出素子106及び第二検出素子108を移動させ(移動制御工程)、移動中の第一検出素子106及び第二検出素子108の検出結果に基づいて、二つのX線回折強度分布を得る。この工程では第一検出素子106の移動と第二検出素子108の移動とを同期させている。測定処理(ステップS252)が終了した場合、X線の照射を終了してもよい。
次に、残留応力算出処理(ステップS254:応力算出工程)が実行される。この残留応力算出処理(ステップS254)では、測定処理(ステップS252:移動制御工程)の実行中に第一検出素子106及び第二検出素子108がそれぞれ検出した検査対象物Wの回折X線の強度ピークに基づいて、検査対象物Wの残留応力が算出される。すなわち、残留応力算出処理(ステップS254)では、応力算出部164により、移動中に得られた二つのX線回折強度分布に基づいて、二つの強度ピークが取得される。そして、応力算出部164によって、ε−cosα線図の傾きが算出され、X線応力測定乗数が乗じられて残留応力が算出される。最後に、応力算出部164により算出された残留応力が制御ユニット26(図3(A)参照)へ出力される(ステップS256)。
以上で図9(B)に示されるフローチャートが終了する。図9(B)に示す制御処理を実行することにより、第一検出素子106及び第二検出素子108を移動させて得られたデータを用いて残留応力を算出し、算出した残留応力を制御ユニット26(図3(A)参照)へ出力することができる。
以上のように、図6に示される応力測定装置22では、回折X線の強度を第一検出位置P1(図7参照)で検出する第一検出素子106、及び回折X線の強度を第一検出位置P1(図7参照)とは異なる第二検出位置P2(図7参照)で検出する第二検出素子108を備えるので、一度のX線の照射(単一角度の照射)で二角度の回折X線を得ることができる。さらに、第一検出素子106及び第二検出素子108のそれぞれは、X線の入射方向と直交する方向に沿って移動することで、X線強度分布(回折ピーク)を素子毎に取得することができる。また、少なくとも二つの回折ピークを取得することにより、検査対象物Wの残留応力を算出することができる。このため、イメージングプレートを回転させて回折環の全てのデータを取得する必要がない。したがって、従来の残留応力測定装置と比べて、残留応力の測定時間の短縮を図ることができる。
また、本実施形態に係る応力測定装置22は、イメージングプレートを回転させる機構及び読み出し機構を備える必要がない。このため、応力測定装置22は、そのような機構を備える残留応力測定装置と比べて、簡略化され軽量化されるので、設置しやすく、他の機械に組み込みやすい構造とすることができる。さらに、応力測定装置22では、装置構成が簡略化されることによって、従来の残留応力測定装置と比べて、装置の製造コストを低減することができる。
さらに、移動制御部162が、第一検出素子106の移動と第二検出素子108の移動とを同期させることで、第一検出素子106と第二検出素子108とを個々に制御する場合に比べて残留応力の測定時間の短縮を図ることができる。
(表面処理加工装置10を用いた表面処理加工方法について)
次に、図2に示される表面処理加工装置10を用いた表面処理加工方法について、図1(A)及び図1(B)に示されるフローチャート並びに図2等を参照しながら説明する。表面処理加工装置10は、図4(A)等に示される磁性評価装置20、図5等に示される応力測定装置22、及び図3(B)等に示されるショットピーニング加工装置30等を含んでいる。なお、図2に示される表面処理加工装置10に搬入される前の処理対象物Wとして、塑性加工及び機械加工によって製品形状にされた処理対象物(製品)が一例として熱処理加工されている。
図2に示される表面処理加工装置10に搬入された処理対象物Wは、搬入側コンベア12上に載せられて搬送される。処理対象物Wは、処理前検査ゾーン14に達すると、6軸ロボット18によって検査台16Aの上に配置されて磁性評価装置20で検査される。その後、処理対象物Wは、6軸ロボット18によって検査台16Bの上に配置されて応力測定装置22で検査される。
すなわち、検査台16A、16Bの上において、図1(A)のステップS200に示すショット処理前の検査、つまり処理前検査工程(第二検査工程)が実行される。この処理前検査工程では、処理対象物Wに対して投射材を投射するショット処理がなされる前の当該処理対象物Wの表面側の状態が非破壊検査される。その検査結果が予め定められた第二の許容範囲から外れている場合に「不合格」と評価される。
まず、図2に示される検査台16Aの上では、磁性評価装置20が処理対象物Wの表面側を渦電流によって磁性評価する検査をする。具体的な検査方法は前述の通りである。磁性評価装置20では検査結果に基づいて判断手段96が表面状態の良否を判断する。磁性評価装置20は検査結果(すなわち、判断手段96の評価結果)を制御ユニット26(図3(A)参照)に出力する。次に、検査台16Bの上では、応力測定装置22が処理対象物Wの表面側の残留応力を、X線回折法を用いて測定する。具体的な測定方法は前述の通りである。応力測定装置22は測定結果を制御ユニット26(図3(A)参照)に出力する。制御ユニット26は、磁性評価装置20及び応力測定装置22の検査結果に基づいて、前述したように「合格」、「条件付き合格」、及び「不合格」のいずれかの評価をする。
図1(A)に示すステップS202において、制御ユニット26は、処理対象物Wが「不合格」か否かを判定する。制御ユニット26の処理は、ステップS202の判定が肯定された場合は、ステップS206へ移行し、ステップS202の判定が否定された場合はステップS204へ移行する。ステップS206において、制御ユニット26は、処理対象物Wを表面処理工程のライン外に持ち出すように、図2に示される6軸ロボット18を制御する。ライン外に持ち出された処理対象物Wは廃棄処理される。つまり、処理前検査工程で「不合格」と評価された処理対象物Wは予めショット処理の対象から外される。これにより、無駄なショットピーニング加工(不良製品の加工)が未然に抑えられる。
図1(A)に示すステップS204において、制御ユニット26は、処理対象物Wが「合格」か否かを判定する。制御ユニット26の処理は、ステップS204の判定が否定された場合はステップS210へ移行し、ステップS204の判定が肯定された場合はステップS208へ移行する。ステップS208及びステップS210においては、条件設定工程が実行される。処理前検査工程の後に実行される条件設定工程では、処理前検査工程で「不合格でない」評価をされた処理対象物Wを対象として処理前検査工程での検査結果に応じて制御ユニット26がショット処理条件を設定する。
ステップS210においては、制御ユニット26は、「条件付き合格」と判定された処理対象物Wのショット処理条件として、標準のショット処理条件を修正した条件(調整された条件)を設定する(フィードフォワード)(条件設定工程)。つまり、個別のショットピーニング加工前の処理対象物W(製品)の性状に合わせて個別に(一品毎に)ショット処理条件が調整される。これにより、標準のショット処理条件のままで加工した場合に不良品となり得る処理対象物Wを良品とすることが可能となる。これにより、廃棄処分される処理対象物Wを減らすことができる。よって、生産性を向上させることができる。
「条件付き合格」と判定された処理対象物Wのショット処理条件の修正(調整)についてより具体的に説明する。本実施形態では、ショット処理条件のうち一例として投射材を噴射する場合の噴射圧について修正した条件が設定される。このショット処理条件の修正条件(修正値)は、以下のように演算される。まず、制御ユニット26の演算処理装置において、その記憶部に予め記憶されている演算式を含むプログラムが読み出されてメモリに展開される。次に、メモリに展開された当該プログラムがCPUによって実行される。これにより、修正条件が演算される。演算式は、ショット処理条件の基準値を含んだ式である。なお、変形例として、条件判別を含むプログラムを制御ユニット26の演算処理装置に予め記憶させ、このプログラムを実行することによりショット処理条件の修正条件を決定してもよい。
一方、ステップS208においては、制御ユニット26は、「合格」と判定された処理対象物Wのショット処理条件として、標準のショット処理条件をそのまま設定する。ステップS210及びステップS208により処理対象物Wに応じたショット加工をすることができる。
「合格」又は「条件付き合格」と判定された処理対象物Wは、図2に示される6軸ロボット18によって、検査台16Bの上から搬入側コンベア12の上に移動させられる。その後、処理対象物Wは、搬入側コンベア12の下流側で搬入出ローダ28によってショットピーニング加工装置30のキャビネット32の中に搬入される。
ショットピーニング加工装置30のキャビネット32の中では、図1(A)に示すステップS212、すなわちショット処理工程が実行される。条件設定工程の後に実行されるショット処理工程では、処理対象物Wに対して図3(B)に示されるショットピーニング加工装置30の噴射装置40が投射材を投射するショット処理が行われる。ショット処理工程におけるショット処理条件は、処理前検査工程で制御ユニット26によって「不合格でない」と評価された処理対象物Wを対象として、条件設定工程で制御ユニット26によって設定される。
ここで、ショット処理について概説する。ショット処理としては、例えばショットピーニング(加工)及びショットブラスト(加工)がある。これらのショット処理では、例えば数十μmから数mm程度の概球形の投射材(ショット(砥粒を含む))が処理対象物Wに向けて高速で打ち付けられる。これにより、処理対象物Wの部品表面層の改善効果が得られる。ショットピーニング加工は、繰り返し荷重を受ける部品の疲れ強さ(耐久性)改善等を目的に使用されている。繰返し荷重を受ける部品として、例えば、自動車、航空機、船舶、建設機械、加工機械、及び鋼構造物等が挙げられる。ショットピーニング加工は、正しく実施されていないと、目標とした表面硬さ、硬さ分布、及び圧縮残留応力等が部品に付与されず、部品が早期に破壊してしまうこともある。したがって、適切な加工を維持するために、十分な管理をしたうえでショットピーニング加工を実施する必要がある。また、ショットブラスト加工は、同様な加工品について、例えば錆及びスケール等の表面の付着物の除去、表面粗さ等の表面形状の調整、塗装及びコーティング被膜等の密着性向上、又は鋼構造物の摩擦結合部における適切な摩耗係数の確保のために使用されている。したがって、ショットピーニング加工と同様に十分な管理をしたうえでショットブラスト加工を実施する必要がある。なお、本実施形態におけるショット処理の加工は、ショットピーニング加工である。
ショット処理された処理対象物Wは、図2に示される搬入出ローダ28によってショットピーニング加工装置30のキャビネット32の中から搬出側コンベア66の上流側に搬出される。処理対象物Wは、搬出側コンベア66によって搬送される。処理対象物Wは、処理後検査ゾーン68に達すると、6軸ロボット72によって検査台70Aの上に配置されて磁性評価装置74で検査される。その後、処理対象物Wは、6軸ロボット72によって検査台70Bの上に配置されて応力測定装置76で検査される。
すなわち、検査台70A、70Bの上において、図1(A)のステップS214に示すショット処理後の検査、つまり処理後検査工程(第一検査工程)が実行される。ショット処理工程の後の処理後検査工程では、処理対象物Wの表面側の状態が非破壊検査される。その検査結果が、予め定められた第一の正常範囲内であれば「合格」と評価され、予め定められた第一の許容範囲から外れれば「不合格」と評価され、前記第一の正常範囲から外れるものの、前記第一の許容範囲内であれば「追加工対象」と評価される。
図2に示される検査台70Aの上では、磁性評価装置74が処理対象物Wの表面側を渦電流によって磁性評価する検査をする。具体的な検査方法は前述の通りである。磁性評価装置74では検査結果に基づいて判断手段96が表面状態の良否を判断する。磁性評価装置74は検査結果(すなわち、判断手段96の評価結果)を制御ユニット26(図3(A)参照)に出力する。次に、検査台70Bの上では、応力測定装置76が処理対象物Wの表面側の残留応力を、X線回折法を用いて測定する。具体的な測定方法は前述の通りである。応力測定装置76は測定結果を制御ユニット26(図3(A)参照)に出力する。制御ユニット26は、磁性評価装置74及び応力測定装置76の検査結果に基づいて、前述したように「合格」、「不合格」及び「追加工対象」のいずれかの評価をする。
また、図1(A)に示すステップS214の次のステップS216において、制御ユニット26は、応力測定装置76の検査結果(測定値)を記憶装置において記憶する。ステップS216の次のステップS218においては、制御ユニット26は、処理対象物Wが「不合格」か否か(すなわち、処理後検査工程の検査結果が第一の許容範囲内であるか否か)を判定する。制御ユニット26の処理は、ステップS218の判定が肯定された場合はステップS222へ移行し、ステップS218の判定が否定された場合は、ステップS219へ移行する。
ステップS219においては、制御ユニット26は、処理対象物Wが「合格」か否か(すなわち、処理後検査工程の検査結果が第一の正常範囲内であるか否か)を判定する。ステップS219の判定が肯定された場合は、制御ユニット26の処理は、ステップS220へ移行する。ステップS219の判定が否定された場合は、制御ユニット26は、処理対象物Wを「追加工対象」と判定する。そして、制御ユニット26の処理はステップS208へ移行する。ステップS208においては、条件設定工程が実行される。処理後検査工程の後に実行される条件設定工程では、処理後検査工程で「追加工対象」と評価をされた処理対象物Wを対象として、制御ユニット26が、ショット処理条件として、標準のショット処理条件を設定する。
「追加工対象」と判定された処理対象物Wは、6軸ロボット72、戻し用コンベア及び搬入出ローダ28によって、検査台70Bの上からショットピーニング加工装置30に搬送される。ショットピーニング加工装置30では、ステップS212、すなわちショット処理工程が実行される。ここでは、ステップS208の条件設定工程で設定されたショット処理条件でショット処理がなされる。これにより、「追加工対象」と判定された処理対象物Wに対して、追加工工程が実行される。なお、「追加工対象」と判定された処理対象物Wのショット処理条件として、標準のショット処理条件を修正した条件が設定されてもよい(フィードフォワード)。つまり、ステップS219の判定が否定された場合は、制御ユニット26の処理がステップS210へ移行してもよい。この場合、個別の再ショットピーニング加工前の処理対象物Wの性状に合わせて個別にショット処理条件の調整がなされる。このため、標準のショット処理条件のままで再ショット加工した場合に不良品となり得る処理対象物Wを良品とすることが可能となる。これにより、廃棄処分される処理対象物Wを減らすことができるので、生産性を向上させることができる。「追加工対象」と判定された処理対象物Wのショット処理条件の修正(調整)の詳細は、「条件付き合格」と判定された処理対象物Wの場合と同様であるため、説明を省略する。
ステップS222において、制御ユニット26は、処理対象物Wを表面処理工程のライン外に持ち出すように、図2に示される6軸ロボット72を制御する。ライン外に持ち出された処理対象物Wは廃棄処理される。また、「合格」と判定された処理対象物Wは、6軸ロボット72によって、検査台70Bの上から搬出側コンベア66の上に移動させられる。その後、処理対象物Wは、搬出側コンベア66によって搬送されることで、後工程へ送られる。すなわち、図1(A)に示すステップS220が実行される。
このように、本実施形態によれば、ショット処理工程の後に実行される処理後検査工程において試験片ではなく実際の処理対象物Wの検査が実施される。これにより、処理対象物Wにショットピーニング効果(ショット処理の効果)が付与されているか否かを直接判断することができる。そして、不完全な処理対象物Wが、表面処理加工装置10において実行される工程よりも後の工程へ流れるのを防止することができる。また、本実施形態では、ショット処理工程の前に処理前検査工程が設けられている。このため、ショットピーニング加工に適さない(すなわち、ショットピーニング加工を行ってもショットピーニング効果を適切に付与できない)処理対象物Wを、ショット処理工程の前に判別して除去することができる。これにより、ショット処理工程において不良品が発生するのを未然に防止又は効果的に抑制することができる。
次に、ショット処理条件の基準値(標準設定基準値)の再設定処理、すなわち基準値再設定工程について、図1(B)を参照しながら説明する。この処理は一例として、日々の加工開始前において制御ユニット26が起動した際に実行される。
まず、図1(B)に示すステップS230において、制御ユニット26は、ショット処理条件の基準値の再設定が必要か否を判定する。本実施形態では一例として、はじめに、制御ユニット26は、上述の応力平均値の経日変化(広義には「経時変化」)の傾向に基づいて、応力平均値が予め設定された第一の応力正常範囲(応力についての第一の正常範囲)から外れる日(広義には「時期」)を予測日として予測する。次に、制御ユニット26は、ステップS230の実行時が、予測日に対して予め設定された日数分だけ前(例えば3日前)の日以降であるか否かを判定する。なお、予測日を算出する方法は、既述したため、説明を省略する。制御ユニット26の処理は、図1(B)に示すステップS230の判定が否定された場合には終了し、ステップS230の判定が肯定された場合はステップS232へ移行する。
図1(B)に示すステップS232の基準値再設定工程では、処理後検査工程での応力測定装置76による検査結果の経時変化の傾向に基づいて、処理後検査工程で「合格」と評価されない割合(処理後検査部68Eの検査結果が第一の正常範囲外となる割合)を抑えるようにショット処理条件の基準値を制御ユニット26が再設定する。つまり、基準値再設定工程では、処理後検査工程での検査結果がショット処理条件の基準値にフィードバックされる。この基準値再設定工程は、応力平均値の経日変化の傾向に基づいて、予測日よりも前に実行されることになる。これにより、処理後検査工程で「合格」と評価される処理対象物Wの数を効果的に増やすことができる。予測日の算出方法については、前述したため説明を省略する。本実施形態の基準値再設定工程では、ショット処理条件のうち一例として投射材を噴射する場合の噴射圧の基準値が制御ユニット26によって再設定される。
以上により、図3(B)等に示される噴射装置40を含むショットピーニング加工装置30における中長期的な変動、すなわち投射材の粒径の変化、投射材を加速させるための機構(ノズル等)の形状変化、コンプレッサから供給される圧縮空気の性状変化等の変動の傾向に応じた補正をすることができる。これにより、次回以降の処理後検査工程での「不合格」の割合を効果的に抑えることができる。したがって、無駄なショットピーニング加工を抑えることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る表面処理加工方法及び表面処理加工装置10(図2参照)によれば、無駄なショット加工を抑えながらショット加工されたすべての処理対象物Wの加工の程度を管理することができる。
ここで、上記実施形態の作用及び効果についてさらに補足説明する。ショットピーニング加工における品質管理の手法としては、装置稼働管理と、製品管理と、が知られている。装置稼働管理では、加工装置の稼働状態が監視される。装置稼働管理では、投射材の速度に関連するパラメータ(具体的にはエアノズル式ショットピーニング加工では噴射圧、遠心式投射装置では投射用の羽根車の回転数)、投射材の流量、加工時間、並びに回転テーブル上の処理対象物W(製品)の回転数及び回転状態等が監視される。装置稼働管理では、これらが一定の規定値内にある状態で、加工装置が稼働できていることでショットピーニング加工の工程を保証している。これに対して、製品管理では、実際に加工された製品に対して、ショットピーニング効果の指標である、圧縮残留応力、硬さ、及び表面粗さ等の測定が行われる。なお、装置稼働管理と製品管理との中間的な役割として、ショットピーニング装置による加工程度を、アルメン法によって測定する方法がある。アルメン法による方法は、試験片を用いた反り量を計測する方法であり、装置の加工程度の再現性を計ることができる。しかしながら、アルメン法による方法では、現物の製品への加工程度を管理できない。
ところで、装置稼働管理においては、装置の稼働状況のみを監視するにとどまる。このため、加工された製品にショットピーニング効果が付与されているか否かを判断することができない。また、ショットピーニング工程に持ち込まれる処理対象物W(製品)の多くは熱処理等がなされ、ショットピーニング加工により十分な効果を得ることができる状態になっている必要がある。しかしながら、熱処理状態のトラブルにより、金属組織の状態が適切でなく、必要な表面硬さ又は硬さ分布が満足されない不適切な処理対象物W(製品)が投入されてくる可能性もある。装置稼働管理で良好な加工がなされた製品であっても、合格品として適さない場合もあり得る。一方、製品管理においては、ショットピーニング効果は表面及び表面から数十μm〜数百μmの範囲で付与される。このため、製品管理は、製品の内部を削り出し測定する破壊検査を伴うことが多い。また測定に時間もかかるため、一般的には加工ロットのうち一部が検査されるにとどまっている。
これに対して、本実施形態に係る表面処理加工方法では、処理対象物Wが全数検査される。これにより、ショット加工されたすべての処理対象物Wの加工の程度を管理することができる。上述のように、ショット処理による加工不足が原因で、処理対象物Wに所望の効果が付与されない場合がある。このような場合、再ショット処理により処理対象物Wに所望の効果が付与される可能性がある。しかしながら、ショット処理による加工不足以外の原因で所望の効果が付与されない処理対象物Wに対してまで一律に再ショット処理がなされると、生産性が低下する。本実施形態によれば、ショット処理がなされた処理対象物Wの表面側の状態が非破壊検査され、再ショット処理により所望の効果が付与される可能性がある処理対象物Wが「追加工対象」とされる。これにより、無駄なショット処理を抑えながら、所望の効果が付与される処理対象物Wの数を増やすことができる。よって、生産性を向上させることができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る表面処理加工方法について、図2を援用しながら説明する。本実施形態に適用される処理対象物Wは、板ばね、及び皿ばね等の薄物製品である。また、本実施形態に適用される表面処理加工装置の構成は、図2に示される第1の実施形態における表面処理加工装置10とほぼ同様であるが、磁性評価装置20、74に代えて、図示しない非接触式のレーザ変位計が配置されると共に、処理前検査部14Eの応力測定装置22が配置されていない点で、第1の実施形態における表面処理加工装置10の構成と異なる。他の点は、第1の実施形態と実質的に同様である。
前記レーザ変位計は、処理対象物Wの外形寸法を非破壊検査する。薄物製品はショットピーニング加工によって変形しやすい。このため、前記レーザ変位計が配置されている。処理前検査ゾーン14の前記レーザ変位計は処理前検査部を構成している。処理後検査ゾーン68の前記レーザ変位計及び応力測定装置76は処理後検査部を構成している。
処理前検査工程では、レーザ変位計は、ショット処理がなされる前の処理対象物Wの外形寸法を非破壊検査(初期歪みを測定)する。ショット処理では、処理対象物Wに対して投射材が投射される。制御ユニット26は、レーザ変位計の検査結果を受け取り、その検査結果が予め定められた第二の許容範囲(第二の変位許容範囲)から外れている場合に「不合格」と評価する。処理前検査工程の後の条件設定工程では、処理前検査工程で「不合格」でない評価をされた処理対象物Wを対象として、制御ユニット26は、処理前検査工程での検査結果に応じてショット処理条件を設定する。具体的には、制御ユニット26は、目標とする形状と初期歪み量との差に基づいて、ショット処理条件のうち加工時間を増減することによって変形量を制御する。制御ユニット26は、ショットピーニング加工後の処理対象物Wの形状が目標とする形状に近づくように、ショット処理条件を設定する。処理前検査工程の後のショット処理工程では、第1の実施形態と同様に、処理前検査工程で「不合格」でない評価をされた処理対象物Wを対象として条件設定工程で設定されたショット処理条件で処理対象物Wに対して投射材を投射するショット処理が行われる。
ショット処理工程の後の処理後検査工程では、レーザ変位計及び応力測定装置76は、処理対象物Wの表面側の状態及び外形寸法を非破壊検査する。制御ユニット26は、その検査結果を受信し、予め定められた第一の正常範囲(変位については第一の変位正常範囲、応力については第一の応力正常範囲)内であれば「合格」と評価する。すなわち、処理後検査工程では、ショットピーニング加工後の形状が適正であるか否かを判別するために、前記レーザ変位計により加工後の歪みが測定される。これと共に、応力測定装置76が処理対象物Wの表面側の残留応力を、X線回折法を用いて測定する。制御ユニット26(図3(A)参照)は、前記レーザ変位計及び応力測定装置76の検査結果に基づいて、「合格」、「不合格」及び「追加工対象」のいずれかの評価をする。補足説明すると、制御ユニット26(図3(A)参照)は、前記レーザ変位計及び応力測定装置76の検査結果がどちらも予め定められた第一の正常範囲内であれば「合格」と評価(判定)する。制御ユニット26は、前記レーザ変位計の検査結果及び応力測定装置76の検査結果の少なくとも1つが予め定められた第一の許容範囲(変位については第一の変位許容範囲、応力については第一の応力許容範囲)外であれば「不合格」(廃棄)と評価(判定)する。制御ユニット26は、それ以外であれば「追加工対象」と評価(判定)する。
なお、基準値再設定工程では、第1の実施形態と同様に、処理後検査工程での検査結果の経時変化の傾向に基づいて、処理後検査工程で「合格」と評価されない割合(処理後検査工程での検査結果が、第一の正常範囲外となる割合)を抑えるようにショット処理条件の基準値が再設定される。よって、処理後検査工程で「合格」と評価される処理対象物Wの数を増やすことができる。本実施形態において、基準値再設定工程で再設定されるショット処理条件の基準値(標準設定基準値)は、加工時間についての基準値である。
本実施形態によっても、前述した第1の実施形態と概ね同様の作用及び効果が得られる。
なお、処理対象物Wの外径寸法の測定では、処理対象物W毎の管理寸法が測定できればよく、マイクロメータ等の接触式の距離計等が適用されてもよい。また、本実施形態の変形例として、処理前検査工程において処理対象物Wの表面側の状態及び外形寸法が非破壊検査され、その検査結果が予め定められた第二の許容範囲から外れている場合に、制御ユニット26が「不合格」と評価してもよい。つまり、処理前検査工程において、レーザ変位計に加えて、例えば、磁性評価装置20又は応力測定装置22による非破壊検査が行われてもよい。また、本実施形態の他の変形例として、処理後検査工程において処理対象物Wの外形寸法のみが非破壊検査され、その検査結果が予め定められた第一の正常範囲内であれば、制御ユニット26は「合格」と評価してもよい。
また、本実施形態では、図2に示される処理前検査部14Eの応力測定装置22が配置されずに、処理後検査部68Eの応力測定装置76が配置されている。図2に示される処理後検査部68Eの応力測定装置76が配置されずに、処理前検査部14Eの応力測定装置22が配置されてもよい。
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、投射ユニットとして、噴射装置40(エアノズル式ショットピーニング加工機)を備えたショットピーニング加工装置30が用いられている。投射ユニットとして、例えば、投射材を羽根車の回転によって遠心力で加速して投射する遠心式投射装置を含むショットブラスト装置等のような他の投射ユニットが用いられてもよい。遠心式投射装置は、周知技術であるため詳細説明を省略する。一例として、遠心式投射装置は、コントロールゲージと、複数のブレードを備える羽根車と、前記羽根車を回転駆動させるための駆動モータと、を備える。コントロールゲージは、円筒状に形成されており、その内部に投射材が供給される。コントロールゲージの外周壁には、投射材の排出部として開口窓が貫通形成されている。複数のブレードは、コントロールゲージの外周側に配置されてコントロールゲージの周方向に回転する。なお、そのような遠心式投射装置の場合、例えば駆動モータの単位時間当たりの回転数を制御することで羽根車の単位時間当たりの回転数が制御される。
また、上記実施形態の変形例として、処理前検査工程及び処理後検査工程の少なくとも一方においては、検査対象となる処理対象物Wの表面側の色調を測定する検査、及び検査対象となる処理対象物Wの表面粗さを測定する検査の少なくとも一つが含まれていてもよい。
処理前検査工程及び処理後検査工程の少なくとも一方において、処理対象物Wの表面粗さを測定する検査がなされる場合においては、触針式の表面粗さ計の他、光学系を用いた非接触レーザ変位計等が適用されてもよい。
また、処理前検査工程及び処理後検査工程の少なくとも一方において、処理対象物Wの表面側の色調を測定する検査がなされる場合においては、例えば、処理対象物W(製品)の色味を判別できればよい。JIS Z8722に示される方法を用いた色の計測方法が適用されてもよい。その他、処理対象物W(対象製品)は、金属製であることが多いため光沢の程度をJIS Z8741に示される方法を用いた計測方法等が適用されてもよい。この場合、光沢の程度の測定に、画像センサ又は光沢計等が用いられてもよい。
なお、処理前検査工程及び処理後検査工程で用いられる検査装置は、測定した結果を記録又は演算するために、測定した結果を外部の演算装置及び制御機器へ出力してもよい。
また、上記第1の実施形態における処理前検査工程及び処理後検査工程では、同じ検査項目が検査されているが、上記第2の実施形態における処理前検査工程及び処理後検査工程のように、異なる検査項目が検査されてもよい。処理対象物W(対象製品)、前工程、及び得ようとするショット処理効果(ショットピーニング効果)に応じた検査項目が検査されればよい。なお、処理前検査工程及び処理後検査工程では、それぞれ複数の検査項目が検査されてもよいし、一つの検査項目が検査されてもよい。検査項目の組み合わせには、種々のパターンが適用され得る。言い換えれば、処理前検査部及び処理後検査部にはそれぞれ、単数の検査装置が設けられてもよいし、複数の検査装置が設けられてもよい。検査装置の組み合わせには、種々のパターンが適用され得る。
また、制御ユニット26としては、PC、シーケンサ、又はマイコン等の計算機等を含む制御ユニットが適用され得る。また、前記計算機等は、投射ユニット(ショットピーニング加工装置30)に設けられても処理前検査部14Eに設けられてもよい。
また、第1の実施形態では、磁性評価装置20,74の判断手段96が、磁性評価装置20,74の検査結果が予め定められた第二の磁性正常範囲又は第一の磁性正常範囲内であるか否かを評価(判定)し、その評価結果を制御ユニット26に出力している。これに限られず、磁性評価装置20,74が、磁性評価装置20,74の検査結果(電圧値)を制御ユニット26に出力し、その検査結果が予め定められた第二の磁性正常範囲又は第一の磁性正常範囲内であるか否かを制御ユニット26が評価(判定)してもよい。
また、応力測定装置22,76が判断手段を有してもよい。この場合、応力測定装置22,76の判断手段が、応力測定装置22,76の検査結果について評価(判定)し、その評価結果を制御ユニット26に出力してもよい。
また、制御ユニット26は、応力測定装置76の検査結果に基づいて「追加工対象」の評価(判定)をするが、同様に、制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果に基づいて、「追加工対象」の評価(判定)をしてもよい。この場合、制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲内であれば、「合格」と評価する。また、制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲を外れるものの第一の磁性許容範囲内であり、かつ、応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲内であれば「追加工対象」と評価(判定)する。制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性許容範囲外、又は応力測定装置76の検査結果が第一の磁性正常範囲外であれば「不合格」と評価(判定)する。
また、制御ユニット26は、磁性評価装置74及び応力測定装置76の検査結果の両方に基づいて、「追加工対象」の評価(判定)をしてもよい。この場合、制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲内である場合、「合格」と評価する。制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が、第一の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲から外れているものの、第一の応力許容範囲内である場合、「追加工対象」と評価する。また、制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲から外れているものの、第一の磁性許容範囲内であり、かつ、応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲内である場合にも、「追加工対象」と評価する。さらに、制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が第一の磁性正常範囲から外れているものの、第一の磁性許容範囲内であり、かつ、応力測定装置76の検査結果が第一の応力正常範囲から外れているものの、第一の応力許容範囲内である場合にも、「追加工対象」と評価する。制御ユニット26は、磁性評価装置74の検査結果が、第一の磁性許容範囲外である場合、又は応力測定装置76の検査結果が第一の応力許容範囲外である場合、「不合格」と評価する。
また、制御ユニット26は、応力測定装置22の検査結果に基づいて「条件付き合格」つまりショット処理条件を変更して加工可の評価(判定)をするが、同様に、制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果に基づいて、「条件付き合格」の評価(判定)をしてもよい。この場合、制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が第二の応力正常範囲内である場合、「合格」と評価する。また、制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性正常範囲を外れるものの第二の磁性許容範囲内であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が第二の応力正常範囲内であれば「条件付き合格」と評価(判定)する。制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性許容範囲外、又は応力測定装置22の検査結果が第二の磁性正常範囲外であれば「不合格」と評価(判定)する。
また、制御ユニット26は、磁性評価装置20及び応力測定装置22の検査結果の両方に基づいて、「条件付き合格」の評価(判定)をしてもよい。この場合、制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が第二の応力正常範囲内である場合、「合格」と評価する。制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が、第二の磁性正常範囲内であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が第二の応力正常範囲から外れているものの、第二の応力許容範囲内である場合、「条件付き合格」と評価する。また、制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性正常範囲から外れているものの、第二の磁性許容範囲内であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が第二の応力正常範囲内である場合にも、「条件付き合格」と評価する。さらに、制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性正常範囲から外れているものの、第二の磁性許容範囲内であり、かつ、応力測定装置22の検査結果が第二の応力正常範囲から外れているものの、第二の応力許容範囲内である場合にも、「条件付き合格」と評価する。制御ユニット26は、磁性評価装置20の検査結果が、第二の磁性許容範囲外である場合、又は応力測定装置22の検査結果が第二の応力許容範囲外である場合、「不合格」と評価する。
制御ユニット26は、「条件付き合格」と判定された処理対象物Wのショット処理条件として、標準のショット処理条件を修正した条件(調整された条件)を設定する(フィードフォワード)。これにより、廃棄処分される処理対象物Wを減らすことができる。補足説明すると、「条件付き合格」の判定がされた検査対象の処理対象物Wのうち磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性正常範囲を若干下回る処理対象物Wに対しては、例えば、噴射圧(投射圧)が高くなるように標準のショット処理条件を修正したショット処理条件で投射材が噴射される。これに対して、「条件付き合格」の判定がされた検査対象の処理対象物Wのうち磁性評価装置20の検査結果が第二の磁性正常範囲を若干上回る処理対象物Wに対しては、例えば、噴射圧(投射圧)が低くなるように標準のショット処理条件を修正したショット処理条件で投射材が噴射される。
また、処理前検査工程で「条件付き合格」と判定された処理対象物Wについては、ショット処理条件のうち、例えば、投射材を噴射する場合の噴射圧及び加工時間の他、単位時間当たりの投射材の吐出量、投射材の投射速度、並びに処理対象物Wに対する相対的な投射位置の少なくとも一つが修正されて設定されてもよい。投射材を羽根車の回転によって遠心力で加速して投射する遠心式投射装置の場合には、羽根車の単位時間当たりの回転数が修正されて設定されてもよい。なお、投射材の投射速度を直接的に変更できない場合は、投射速度と関係性の深いパラメータの変化によって代替させることが可能である。そのようなパラメータとして、エアノズル式ショットピーニング加工機であれば噴射圧、及び遠心式投射装置であれば羽根車の単位時間当たりの回転数が挙げられる。また、処理対象物Wに対する相対的な投射位置は、エアノズルの移動範囲、処理対象物W(加工製品)の移動量、又は処理対象物Wが配置される回転テーブル(公転テーブル、自転テーブル)の回転量等により変化させることが可能である。
また、上記実施形態の変形例として、処理前検査工程での検査結果に基づいて「合格」及び「不合格」の二段階で評価して不合格の処理対象物W(製品)を廃棄等してもよい。つまり、制御ユニット26は、「条件付き合格」及び「合格」を区別しない。制御ユニット26は、処理前検査工程での検査結果が、第二の許容範囲内であれば「合格」、第二の許容範囲外であれば「不合格」と判定する。この場合には、制御ユニット26は、条件設定工程において、「合格」の処理対象物Wについては一律にショット処理条件の基準値を設定するのではなく処理前検査工程での検査結果に応じてショット処理条件を設定してもよい。
また、上記実施形態では、処理前検査工程において「不合格」と評価された処理対象物Wは廃棄されているが、処理前検査工程において「不合格」と評価された処理対象物Wは、ショット処理工程に流されなければ、廃棄処分されなくてもよく、再利用されてもよい。また、再利用の場合、「不合格」と評価された処理対象物Wは、別の用途の処理対象物として再利用されてもよいし、別工程にて修正加工された後、改めて同じ表面処理加工装置10に搬入されて加工されてもよい。
また、上記実施形態では、処理前検査工程において「不合格」と評価された処理対象物Wは「不合格」との判定直後に廃棄されると共に「合格」又は「条件付き合格」と評価された処理対象物Wのみが後工程に流されている。例えば、生産ライン構成の都合等から、「合格」と評価された処理対象物Wと「不合格」と評価された処理対象物Wとを混在させた状態で、処理対象物Wは搬送されてもよい。この場合、「不合格」と評価された処理対象物Wを分別除去することにより、「合格」と評価された処理対象物Wのみが抽出され、ショット処理が行われてもよい。
また、基準値再設定工程で再設定可能なショット処理条件の基準値として、投射材の単位時間当たり吐出量、投射材の投射速度、投射材を噴射する場合の噴射圧、投射材を羽根車の回転によって遠心力で加速して投射する場合の羽根車の単位時間当たりの回転数、加工時間、及び処理対象物Wに対する相対的な投射位置に関する各基準値のいずれか一つ又は複数が含まれてもよい。なお、基準値再設定工程では、基準値がより高い値に再設定される場合の他、基準値がより低い値に再設定される場合もあり得る。
また、上記実施形態の変形例として、図3(A)に示される制御ユニット26は、応力平均値として、一日毎の平均値ではなく、半日毎の平均値を演算してもよい。その場合に、制御ユニットは、半日毎の平均値である応力平均値の経時変化の傾向に基づいて、応力平均値が応力規格範囲(応力についての第一の正常範囲、すなわち、第一の応力正常範囲)から外れると予測される時期を算出する。そして、基準値再設定工程では、制御ユニット26は、予測される時期よりも前にショット処理条件の基準値を再設定する。すなわち、「所定期間毎の平均値」は、上記実施形態のように「一日毎の平均値」であってもよいし、上記実施形態の変形例のように「半日毎の平均値」であってもよいし、他の所定期間毎の平均値(例えば、一週間毎の平均値等)であってもよい。
また、上記実施形態の変形例として、制御ユニット26は、処理後検査工程での応力測定装置76による検査結果の経時変化の傾向ではなく、処理後検査工程での磁性評価装置74による検査結果の経時変化の傾向に基づいて、処理後検査工程で「合格」と評価されない割合(処理後検査部68Eの検査結果が第一の正常範囲外となる割合)を抑えるようにショット処理条件の基準値を再設定してもよい。つまり、磁性評価装置74の検査結果が、ショット処理条件の基準値に対してフィードバックされてもよい。また、磁性評価装置74及び応力測定装置76の検査結果の両方が、ショット処理条件の基準値に対してフィードバックされてもよい。
また、上記実施形態では、応力測定装置22、76が図6等に示される第一検出素子106及び第二検出素子108を備えているが、応力測定装置22、76が三つ以上の検出素子を備えていてもよい。
また、上記実施形態に係る応力測定装置22、76(図2参照)では、図6に示される移動機構120が、第一検出素子106及び第二検出素子108をそれぞれ移動させるために、単一の電動モータ122と、単一の電動モータ122によって作動される単一のボールネジ機構124と、を有するが、第一検出素子106及び第二検出素子108のそれぞれに対応する電動モータ及びボールネジ機構を有してもよい。この場合、制御装置150は、第一検出素子106及び第二検出素子108のそれぞれに対応する電動モータを制御することにより、第一検出素子106及び第二検出素子108の移動を制御することができる。制御装置150は、二つの電動モータを制御して、第一検出素子106及び第二検出素子108の移動を同期させることもできるし、同期させないこともできる。
さらに、上記実施形態では、処理前検査工程で検査される処理対象物Wが熱処理されているが、処理前検査工程で検査される処理対象物Wは、例えば、窒化処理された処理対象物等のようなショット処理でも熱処理でもない処理がされた処理対象物Wであってもよい。また、上記実施形態の変形例として、処理前検査工程の段階では引張残留応力を有する処理対象物Wの表面側に、ショット処理工程においてショットピーニング加工することによって圧縮残留応力を付与してもよい。
また、上記実施形態の変形例として、図10に示されるように、表面処理加工装置10が保存ユニット170を更に備えてもよい。保存ユニット170は、表面処理加工装置10で取得されたデータとして、処理前検査部14Eによる検査結果、処理後検査部68Eによる検査結果、及びショット処理条件の少なくとも一つを保存する。なお、保存ユニット170は、処理前検査部14Eによる検査結果及び処理後検査部68Eによる検査結果の少なくとも一方を保存してもよい。ここでは、保存ユニット170は、例えば、処理前検査部14Eによる検査結果、処理後検査部68Eによる検査結果、及びショット処理条件の全てを保存する。
保存ユニット170は、内部保存ユニット172及び外部保存ユニット174を有している。内部保存ユニット172は、表面処理加工装置10専用の保存ユニットであり、他の表面処理加工装置10と共有されない。内部保存ユニット172は、例えば制御ユニット26に直接接続されたSDカード等のフラッシュメモリ又はHDDである。外部保存ユニット174は、他の表面処理加工装置10と共有される保存ユニットである。なお、外部保存ユニット174は、他の表面処理加工装置10と共有可能な構成を有していればよく、実際に他の表面処理加工装置10と共有されていなくてもよい。外部保存ユニット174は、例えばイントラネット又はインターネット回線を介して制御ユニット26に接続された構内(工場等の施設内)又は外部(工場等の施設外)のサーバである。外部保存ユニット174は、他の表面処理加工装置10と共有可能な構成を有していれば、表面処理加工装置10内のサーバであってもよい。サーバは、クラウドサーバであってもよい。外部保存ユニット174は、例えば、複数の表面処理加工装置10で取得されたデータを保存することができる。
図10に示される表面処理加工装置10を用いた表面処理加工方法では、保存ユニット170は、表面処理加工装置10で取得されたデータとして、処理前検査工程での検査結果、処理後検査工程での検査結果、及びショット処理条件の少なくとも一つを保存する(保存工程)。なお、保存工程では、保存ユニット170は、処理前検査工程での検査結果及び処理後検査工程での検査結果の少なくとも一方を保存してもよい。このような保存ユニット170及び保存工程により、これらのデータの利用性が高まる。例えば、表面処理加工装置10、又は複数の表面処理加工装置10の稼働状況の傾向等を事後的にデータ解析することができる。
表面処理加工装置10で取得されたデータは、例えば、一旦、内部保存ユニット172に保存される。その後、内部保存ユニット172に保存されたデータは、一定期間毎(ショット加工毎又は一日毎)に外部保存ユニット174に送られ、外部保存ユニット174において保存される。このため、例えば、これらのデータを内部保存ユニット172に一旦保存した後、任意のタイミングで外部保存ユニット174に保存することができる。表面処理加工装置10で取得されたデータが、例えば、上述のようにショット加工毎に保存される場合、保存工程は、例えば、図1(A)のステップS216の工程の代わりにステップS217として行われてもよい。なお、処理前検査部14Eによる検査結果は、ステップS200の処理前検査工程において内部保存ユニット172に保存されてもよく、処理後検査部68Eによる検査結果は、ステップS214の処理後検査工程において内部保存ユニット172に保存されてもよく、ショット処理条件は、ステップS208又はステップS210の条件設定工程において内部保存ユニット172に保存されてもよい。また、これらのデータをサーバに保存する場合は、データをサーバに送信する送信工程を経て、データがサーバに保存されてもよい。すなわち、表面処理加工方法は、処理前検査部14Eによる検査結果をサーバに送信する第一送信工程を含んでもよいし、処理後検査部68Eによる検査結果をサーバに送信する第二送信工程を含んでもよいし、ショット処理条件をサーバに送信するショット処理条件送信工程を含んでもよい。
条件設定工程では、制御ユニット26が、サーバから受信した情報に応じてショット処理条件を設定してもよい。また、基準値設定工程では、制御ユニット26が、サーバから受信した情報に応じて基準値を設定してもよい。具体的には、制御ユニット26の演算処理装置における記憶部から読み出されたプログラムが実行されることにより、ショット処理条件の修正条件、又はショット処理条件の基準値が演算される。制御ユニット26は、通信インタフェース部によって、サーバとの間で情報を送受信(出入力)することができる。また、サーバによって送信される情報は、例えば、データ解析により得られた表面処理加工装置10、又は複数の表面処理加工装置10の稼働状況の傾向等であってもよい。このような情報によれば、ショット処理条件を最適化することができる。
なお、上記実施形態の構成に加えて、処理前検査工程の前、又は処理前検査工程の後でショット処理工程の前に、処理対象物Wに対して、レーザマーカーで製品識別用の識別情報をマーキング(打刻)してもよい。この場合、制御ユニット26は、そのマーキングに対応する識別情報と、処理前検査工程での検査結果の情報と、処理後検査工程での検査結果の情報と、を外部記憶装置(記憶部)に記憶させてもよい。これにより、マーク読取用のリーダを用いて完成品の履歴情報を確認できるトレーサビリティーシステムを設けることができる。図10に示される上述の変形例に係る表面処理加工装置10では、保存ユニット170がこれらの情報を保存してもよい(保存工程)。
なお、処理対象物Wに対して追番(背番号)等の識別情報を付与する方法は、特に限定されず、当該識別情報により処理対象物Wが特定できればよい。付与方法として、例えば、上述のマーキング以外にも、文字の直接的な書き込み、バーコード及び二次元コード等のコードの情報を持った形状の書き込み、塗料等による色調識別が可能となる書き込み、並びに情報を持ったICチップ等の貼付け及び埋め込み等が挙げられる。また、外部記憶装置又は保存ユニット170に保存するデータとしては、上述の処理対象物Wの識別情報、及び検査結果を含むワーク情報データの他、表面処理加工装置10の稼働データが挙げられる。ワーク情報データは、例えば、検査時刻、表面処理加工装置10の名称(識別情報)、及び加工開始時刻を更に含んでもよい。表面処理加工装置10の稼働データは、例えば、噴射圧(エア圧力)、加工開始時刻、単位時間当たりの投射材の吐出量(ショット噴射量)、エア流量、及びワーク自転回転数を含む。表面処理加工装置10が複数のエアノズルを有する場合、表面処理加工装置10の稼働データは、エアノズル毎の稼働データを含む。保存ユニット170は、例えば、測定のタイミングによってこれらのデータを別々のデータベースに保存してもよい。
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
以上、本開示の一例について説明した。本発明は、上記に限定されない。上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。