以下、図面を参照し、本発明の実施形態及び比較例について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。本発明の実施形態の説明に先立ち、従来技術の問題点を述べるために、比較例についてまず説明する。
[比較例]
図1Aに示すように、比較例に係る動力伝達手段は、モータMTと被回転駆動体RAとをつなぐ1本のフレキシブルシャフトFSよりなる。被回転駆動体RAは、フレキシブルシャフトFSから回転を受け、受けた回転の動力によって作動する。モータMTの回転軸の回転角度と、フレキシブルシャフトFSから被回転駆動体RAに伝達される回転角度は、一致することが望まれる。
この構成において、モータMTと被回転駆動体RAとの相対的な回転であるねじり変位τが発生した場合、フレキシブルシャフトFSと被回転駆動体RAとが相対的に回転する場合がある。つまり、被回転駆動体RAがフレキシブルシャフトFSに対して回転したり、モータMT及びフレキシブルシャフトFSが、被回転駆動体RAに対して回転したりする。
この場合、モータMTの動力に基づかない回転が、被回転駆動体RAに伝達されてしまう。つまり、モータMTの回転軸の回転角度と、フレキシブルシャフトFSから被回転駆動体RAに伝達される回転角度とが一致しなくなり、たとえモータMTがフレキシブルシャフトFSを回転させなくても、被回転駆動体RAに回転が伝達されてしまう。以下、この問題を解決する本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
図1Bに示すように、本実施形態に係る動力伝達装置100は、動力源としてのモータMTと被回転駆動体RAとの間に介在して、モータMTから被回転駆動体RAへの回転の伝達を担う。被回転駆動体RAは、動力伝達装置100から回転を受け、受けた回転の動力によって作動する。これらの点では、本実施形態は比較例と共通する。
一方、動力伝達装置100は、モータMTの動力に基づく回転は被回転駆動体RAへ伝達しつつ、モータMTと被回転駆動体RAとのねじり変位τに起因した意図しない回転、即ちモータMTの動力に基づかない回転が、被回転駆動体RAに伝達されることは抑制する。以下、動力伝達装置100の構成を説明する。
図2に示すように、動力伝達装置100は、モータMTにつながれた入力軸S−INと、被回転駆動体RAにつながれた出力軸S−OUTとを備え、入力軸S−INの回転を出力軸S−OUTに伝達する。
入力軸S−INは、入力軸側ハウジングH−INに進入しており、出力軸S−OUTは、出力軸側ハウジングH−OUTから進出している。入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTは、可撓性を有する中間軸構造体110で連結されている。
中間軸構造体110は、第1中間軸としての第1フレキシブルシャフト111と、第2中間軸としての第2フレキシブルシャフト112と、第1フレキシブルシャフト111を覆う被覆部材113aと、第2フレキシブルシャフト112を覆う被覆部材113bとから構成される。
第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112は、入力軸S−INの回転を出力軸S−OUTに並列に伝達するためのものである。第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112の双方に撓みのない自然状態においては、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112は、互いに平行に並んでいる。
第1フレキシブルシャフト111は、被覆部材113aに対して自在に回転し、第2フレキシブルシャフト112は、被覆部材113bに対して自在に回転する。被覆部材113a及び113bも、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112と同様に可撓性を有する。なお、被覆部材113a及び113bは、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112が、外部の部材に接触するのを防ぐためのものであり、必須ではない。
中間軸構造体110が可撓性を有するため、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTとは、相対的に変位が可能である。第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112は、撓んだ状態で回転を伝達可能である。即ち、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の各々は、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTの相対的な変位を許容しつつ、入力軸側ハウジングH−INから出力軸側ハウジングH−OUTに回転を伝達する。
入力軸側ハウジングH−INには、入力軸S−INのトルクを、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112とに伝達する動力分配機構120が収められている。動力分配機構120は、互いにかみ合った第1平歯車121及び第2平歯車122を有する。
第1平歯車121は、入力軸S−INによって回転され、かつ自己の回転を第1フレキシブルシャフト111に伝達する。具体的には、入力軸S−IN、第1平歯車121、及び第1フレキシブルシャフト111は、この順に直列に並んでおり、これら3者は同じ向きに回転する。第1平歯車121は、入力軸S−INと第1フレキシブルシャフト111とで支持されている。
なお、入力軸S−INと第1フレキシブルシャフト111とが、一体のフレキシブルシャフトで構成され、そのフレキシブルシャフトによって第1平歯車121が貫かれていてもよい。そのフレキシブルシャフトと第1平歯車121とを、両者の相対的な回転が阻止されるように、例えばスプライン嵌め合いさせることで、そのフレキシブルシャフトと第1平歯車121との相対的な回転を阻止できる。
第2平歯車122は、第2フレキシブルシャフト112につながれている。具体的には、第2平歯車122は、第2フレキシブルシャフト112に貫かれており、第2フレキシブルシャフト112と第2平歯車122は、両者の相対的な回転が阻止されるように、嵌り合っている。第2平歯車122は、第2フレキシブルシャフト112に支持されている。
第2平歯車122は、自己の回転を第2フレキシブルシャフト112に伝達する。第2平歯車122は、第1平歯車121と逆向きに回転するので、第2フレキシブルシャフト112は、第1フレキシブルシャフト111とは逆向きに回転する。なお、第1平歯車121と第2平歯車122の歯車比は1:1である。
また、入力軸側ハウジングH−INは、入力軸S−INに貫かれる部分において入力軸S−INを支持する軸受けBE1と、第1フレキシブルシャフト111に貫かれる部分において第1フレキシブルシャフト111を支持する軸受けBE2と、第2フレキシブルシャフト112に貫かれる部分において第2フレキシブルシャフト112を支持する軸受けBE3と、第2平歯車122を挟んで軸受けBE3とは反対側において第2フレキシブルシャフト112を支持する軸受けBE4とを有する。
出力軸側ハウジングH−OUTには、動力合成機構130が収められている。動力合成機構130は、動力分配機構120によって互いに逆向きに回転される第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の各々からトルクを受けると共に、その受けたトルクの向きを揃えて、出力軸S−OUTに伝達する。
動力合成機構130は、第1フレキシブルシャフト111に連結される動力合成用反転軸としての反転軸131と、反転軸131を第1フレキシブルシャフト111に連結させ、第1フレキシブルシャフト111の回転を反転させて反転軸131に伝達する動力合成用反転機構としての第3平歯車132及び第4平歯車133と、反転軸131及び第2フレキシブルシャフト112につながれる動力合成用差動歯車としての差動歯車134とを有する。
第3平歯車132は、第1フレキシブルシャフト111につながれている。具体的には、第3平歯車132は、第1フレキシブルシャフト111に貫かれており、第1フレキシブルシャフト111と第3平歯車132は、両者の相対的な回転が阻止されるように、嵌り合っている。第3平歯車132は、第1フレキシブルシャフト111に支持されており、かつ第1フレキシブルシャフト111によって回転される。
第4平歯車133は、反転軸131につながれている。具体的には、第4平歯車133は、反転軸131に貫かれており、反転軸131と第4平歯車133は、両者の相対的な回転が阻止されるように、嵌り合っている。第4平歯車133は、反転軸131に支持されている。
第4平歯車133は、第3平歯車132とかみ合っている。第4平歯車133は、第3平歯車132によって回転され、かつ自己の回転を反転軸131に伝達する。第4平歯車133は、第3平歯車132と逆向きに回転するので、反転軸131は、第1フレキシブルシャフト111とは逆向きに回転する。なお、第3平歯車132と第4平歯車133の歯車比は1:1である。
出力軸側ハウジングH−OUTは、第1フレキシブルシャフト111に貫かれる部分において第1フレキシブルシャフト111を支持する軸受けBE5と、第3平歯車132の両側方において第1フレキシブルシャフト111を支持する軸受けBE6及びBE7と、第4平歯車133の両側方において反転軸131を支持する軸受けBE8及びBE9とを有する。
差動歯車134は、平歯車よりなる親歯車135と、親歯車135と一体に回転する枠体136と、枠体136に収められた第1サイド歯車137及び第2サイド歯車138と、同じく枠体136に収められ、各々第1サイド歯車137と第2サイド歯車138との回数数差に応じた回転数で回転する第1中間歯車139及び第2中間歯車140とを有する。第1サイド歯車137、第2サイド歯車138、第1中間歯車139、及び第2中間歯車140は、かさ歯車よりなる。
第1サイド歯車137は、反転軸131によって回転される。反転軸131は、枠体136を貫いて、第1サイド歯車137につながれている。反転軸131は、枠体136に対しては、回転自在である。
第2サイド歯車138は、第2フレキシブルシャフト112によって回転される。第2フレキシブルシャフト112は、親歯車135を貫いて、第2サイド歯車138につながれている。第2フレキシブルシャフト112は、親歯車135に対しては、回転自在である。第2フレキシブルシャフト112は、反転軸131の延長線上に配置され、第2サイド歯車138は、第1サイド歯車137と対向する位置に配置されている。
第1中間歯車139と第2中間歯車140の各々は、第1サイド歯車137と第2サイド歯車138の双方にかみ合った状態で、枠体136に取り付けられている。第1中間歯車139と第2中間歯車140の各々は、枠体136に対して回転自在である。
差動歯車134は、第2フレキシブルシャフト112と反転軸131とで支持されている。出力軸側ハウジングH−OUTは、第2フレキシブルシャフト112に貫かれる部分において第2フレキシブルシャフト112を支持する軸受けBE10を有する。この軸受けBE10と上述した軸受けBE9とが、第2フレキシブルシャフト112と反転軸131とを通じて、差動歯車134を支持している。
また、動力合成機構130は、親歯車135とかみ合う第5平歯車141を有する。第5平歯車141は、出力軸S−OUTにつながれている。具体的には、第5平歯車141は、出力軸S−OUTに貫かれており、出力軸S−OUTと第5平歯車141は、両者の相対的な回転が阻止されるように、嵌り合っている。第5平歯車141は、出力軸S−OUTに支持されている。
出力軸側ハウジングH−OUTは、第5平歯車141の両側方において出力軸S−OUTを支持する軸受けBE11及びBE12と、出力軸S−OUTに貫かれる部分において出力軸S−OUTを支持する軸受けBE13とを有する。
第5平歯車141は、親歯車135によって回転され、かつ自己の回転を出力軸S−OUTに伝達する。第5平歯車141は、親歯車135と逆向きに回転するので、出力軸S−OUTは、親歯車135と逆向きに回転する。
以下、上述した動力伝達装置100の作用について説明する。
まず、モータMTと被回転駆動体RAとの相対的な回転であるねじり変位がない場合について説明する。
モータMTが入力軸S−INを回転させると、動力分配機構120が、入力軸S−INのトルクを、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112に分配する。第1フレキシブルシャフト111は入力軸S−INと同じ向きに回転し、第2フレキシブルシャフト112は入力軸S−INと逆向きに回転する。第1平歯車121と第2平歯車122の歯車比が1:1であるため、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の回転角度は等しい。
第1フレキシブルシャフト111の回転は、第3平歯車132及び第4平歯車133によって反転されて反転軸131に伝達され、さらに反転軸131から第1サイド歯車137に伝達される。一方、第2フレキシブルシャフト112の回転は、第2サイド歯車138に伝達される。
反転軸131が第2フレキシブルシャフト112と同じ向きに回転するので、第1サイド歯車137と第2サイド歯1車38が、同じ向きに回転する。また、第3平歯車132と第4平歯車133の歯車比が1:1であるため、第1サイド歯車137と第2サイド歯車138の回転角度は等しい。このため、第1中間歯車139と第2中間歯車140は、回転しない。
第1サイド歯車137及び第2サイド歯車138は、回転しない第1中間歯車139及び第2中間歯車140を通じて、各々の回転を枠体136に伝達する。この結果、枠体136と一体をなす親歯車135も回転する。親歯車135の回転は、第5平歯車141を通じて出力軸S−OUTに伝達される。
第5平歯車141は、親歯車135と逆向きに回転するので、出力軸S−OUTは、入力軸S−INと同じ向きに同じ回転角度だけ回転する。被回転駆動体RAは、出力軸S−OUTから回転を受け、受けた回転の動力によって作動する。
次に、理解を容易にするために、モータMTが停止しており、かつ入力軸S−INが入力軸側ハウジングH−INに対して回転しない状態で、モータMT、入力軸側ハウジングH−IN、及び中間軸構造体110に対して、出力軸側ハウジングH−OUT及び被回転駆動体RAがねじり変位した場合について説明する。
この場合、動力合成機構130にとっては、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の各々が、同じ向きに回転したことになる。つまり、動力合成機構130は、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112とから同じ向きのトルクを受ける。従って、第3平歯車132と第2サイド歯車138とが同じ向きに回転する。
第3平歯車132の回転は、反転されて第1サイド歯車137に伝達されるので、第1サイド歯車137と第2サイド歯車138がちょうど逆向きに回転する。ここでは理解を容易にするために、第1サイド歯車137と第2サイド歯車138の回転角度の絶対値が同じとする。
すると、第1サイド歯車137及び第2サイド歯車138の回転は、第1中間歯車139及び第2中間歯車140の回転によって吸収されるため、枠体136には伝達されない。つまり、親歯車135は回転しない。このため、出力軸S−OUTも回転しない。このため、被回転駆動体RAには回転が伝達されない。
以上のようにして、モータMと被回転駆動体RAとの間に図1Bに示すねじり変位τが発生した場合でも、そのねじり変位τに伴うねじり応力が、第1中間歯車139及び第2中間歯車140の回転によって逃がされる。このため、そのねじり応力に起因した被回転駆動体RAと出力軸S−OUTとの相対的な回転が回避される。
以上、モータMTが停止した事例を挙げて、動力伝達装置100の作用を説明した。次に、モータMTが入力軸S−INを回転させる場合も含む、動力伝達装置100の一般的な作用について説明する。
モータMTと被回転駆動体RAとの相対的な回転であるねじり変位τによって、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112と、動力合成機構130とが相対的に回転すると、動力合成機構130に対して、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の回転角度に差が発生する。つまり、動力合成機構130が第1フレキシブルシャフト111から受ける回転の回転角度と、第2フレキシブルシャフト112から受ける回転の回転角度とに差が発生する。
なお、ここでいう回転角度とは、回転の向きを表す正負の符号も含む概念である。本明細書において、第1フレキシブルシャフト111の回転角度は、入力軸側ハウジングH−INから出力軸側ハウジングH−OUTに向かう方向にみて時計回りを正とし、第2フレキシブルシャフト112の回転角度は、同じく入力軸側ハウジングH−INから出力軸側ハウジングH−OUTに向かう方向にみて反時計回りを正とする。但し、回転角度の差は、絶対値で表される概念とする。
例えば、第1フレキシブルシャフト111の回転角度がθ[rad]で、第2フレキシブルシャフト112の回転角度もθ[rad]であるように、両者が動力分配機構120によってちょうど逆向きに回転されている状態で、両者と動力合成機構130とが相対的に回転したとする。すると、動力合成機構130が、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112のうち一方から受ける回転の回転角度はθ+εa[rad]に変化し、他方から受ける回転の回転角度はθ−εb[rad]に変化する(但し、εa>0、εb>0とする)。この結果、動力合成機構130に対して、回転角度の差εa+εb[rad]が発生する。
また、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の回転角度がいずれもゼロ、即ちθがゼロである状態で、両者と動力合成機構130とが相対的に回転した場合、動力合成機構130にとっては、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112とが同じ向きに回転したことになる。このため、動力合成機構130は、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112のうち一方から回転角度εc[rad]の回転を受け、他方から回転角度−εd[rad]の回転を受ける(但し、εc>0、εd>0とする)。この場合、動力合成機構130に対して、回転角度の差εc+εd[rad]が発生したことになる。
本実施形態では、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112とが並列に延在しているので、以上のように、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112と、動力合成機構130との相対的な回転が、動力合成機構130に対する第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112との回転角度の差として現れる。
そして、その回転角度の差は、差動歯車134において第1中間歯車139及び第2中間歯車140の回転によって吸収される。これにより、図1Bに示したねじり変位τに伴うねじり応力が逃がされる。
なお、親歯車135は、第1サイド歯車137の回転角度と、第2サイド歯車138の回転角度の平均値に等しい回転角度だけ回転する。但し、親歯車135、第1サイド歯車137、及び第2サイド歯車138の回転角度の正の向きは、第2フレキシブルシャフト112の回転角度の正の向きと同じであるとする。第1フレキシブルシャフト111と第1サイド歯車137の回転角度は正負の符号も含めて等しく、第2フレキシブルシャフト112と第2サイド歯車138の回転角度は正負の符号も含めて等しい。このため、親歯車135の回転角度は、動力合成機構130が第1フレキシブルシャフト111から受ける回転の回転角度と、第2フレキシブルシャフト112から受ける回転の回転角度との平均値に等しい。
例えば、動力合成機構130が、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112のうち一方から受ける回転の回転角度がθ+εa[rad]、他方から受ける回転の回転角度がθ−εb[rad]である場合、親歯車135の回転角度は、θ+(εa−εb)/2[rad]であり、θからの誤差は(εa−εb)/2[rad]に抑えられる。
εa≠εbならば、ねじり変位τに伴うねじり応力は完全には逃がされず、出力軸S−OUTの回転角度には、上記ねじり変位τが発生する前の第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の各々の回転角度θ[rad]から(εa−εb)/2[rad]だけ誤差が生じる。この誤差は、モータMTの動力に基づかない回転として、被回転駆動体RAに伝達され得る。
しかし、εa=εbならば、ねじり変位τに伴うねじり応力が完全に逃がされ、親歯車135の回転角度は、上記ねじり変位τが発生する前の第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の各々の回転角度θ[rad]と同じ値に維持される。第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112とに、ほぼ等しいねじり剛性をもたせることで、εa≒εbとすることができる。
また、動力合成機構130が、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112のうち一方から受ける回転の回転角度がεc[rad]、他方から受ける回転の回転角度が−εc[rad]である場合、親歯車135の回転角度は(εc−εc)/2=0[rad]に抑えられる。即ち、上述したεa=εbの場合と同様、ねじり応力が完全に逃がされ、モータMTの動力に基づかない回転が被回転駆動体RAに伝達されることはない。
以上説明したように、本実施形態に係る動力伝達装置100によれば、モータMTと被回転駆動体RAとの相対的な回転であるねじり変位τが発生した場合でも、そのねじり変位τに伴うねじり応力が差動歯車134で逃がされる。このため、そのねじり応力に起因した被回転駆動体RAと出力軸S−OUTとの相対的な回転が抑制される。従って、モータMTの動力に基づかない回転が被回転駆動体RAに伝達されにくい。
[実施形態2]
上記実施形態では、第1サイド歯車137及び第2サイド歯車138から親歯車135に回転を伝達する態様で差動歯車134を用いたが、親歯車135から第1サイド歯車137及び第2サイド歯車138に回転が伝達される態様で差動歯車134を用いてもよい。以下、その具体例について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る動力伝達装置200は、図2に示した構成において、入力軸S−INと出力軸S−OUTの役割を入れ替えたものである。図2に示した動力合成機構130の構成が、本実施形態では動力分配機構120’として機能し、図2に示した動力分配機構120の構成が、本実施形態では動力合成機構130’として機能する。
動力分配機構120’において、差動歯車134は、第2フレキシブルシャフト112と、動力分配用反転軸としての反転軸131との回転角度との差を吸収しつつ、入力軸S−INのトルクを、それら第2フレキシブルシャフト112と反転軸131とに分配する動力分配用差動歯車として機能する。第3平歯車132及び第4平歯車133は、反転軸131の回転を反転させて第1フレキシブルシャフト111に伝達する動力分配用反転機構として機能する。
動力合成機構130’を構成する第1平歯車121及び第2平歯車122は、動力分配機構120’によって互いに逆向きに回転される第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112の各々から回転を受けると共に、その受けた回転の向きを揃えて、出力軸S−OUTに伝達する。
本実施形態においても、モータMTと被回転駆動体RAとの相対的な回転であるねじり変位τに起因して、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112と、動力分配機構120’とが相対的に回転すると、動力分配機構120’にとって、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の回転角度に差が発生する。そして、その回転角度の差は、第1中間歯車139及び第2中間歯車140の回転によって吸収される。これにより、ねじり変位τに伴うねじり応力が逃がされる。このため、そのねじり応力に起因した被回転駆動体RAと出力軸S−OUTとの相対的な回転が抑制される。従って、モータMTの動力に基づかない回転が被回転駆動体RAに伝達されにくい。
[実施形態3]
上記実施形態1では、動力分配機構120と動力合成機構130のうち、動力合成機構130のみが差動歯車134を有したが、動力分配機構120と動力合成機構130の双方が差動歯車134を有してもよい。同様に、上記実施形態2では、動力分配機構120’と動力合成機構130’のうち、動力分配機構120’のみが差動歯車134を有したが、動力分配機構120’と動力合成機構130’の双方が差動歯車134を備えてもよい。以下、その具体例について説明する。
図4に示すように、本実施形態に係る動力伝達装置300では、動力分配機構120’’と動力合成機構130’’の双方が、差動歯車134を備える。動力分配機構120’’の機能は、図3に示した動力分配装置120’の機能と同様であり、動力合成装置130’’の機能は、図2に示した動力合成装置130’の機能と同様である。
本実施形態によれば、ねじり変位τに起因して、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112と、動力分配機構120’’及び動力合成機構130’’の各々とが相対的に回転すると、動力分配機構120’’に対して、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の回転角度に差が発生し、かつ動力合成機構130’’に対しても、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の回転角度に差が発生する。
この場合、動力分配機構120’’及び動力合成機構130’’の各々が、自己に対する回転角度の差を吸収する。これにより、ねじり変位τに伴うねじり応力が逃がされる。このため、そのねじり応力に起因した被回転駆動体RAと出力軸S−OUTとの相対的な回転が抑制される。従って、モータMTの動力に基づかない回転が被回転駆動体RAに伝達されにくい。
[実施形態4]
上記実施形態では、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112とが、互いの外周面が対向するように並んで配置されていたが、第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の一方が中空管状をなし、他方が一方に挿通された同軸構造を有してもよい。以下、その具体例について説明する。
図5に示すように、本実施形態に係る動力伝達装置400は、同軸構造を有する中間軸構造体150を備える。中間軸構造体150が、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTとを連結している。中間軸構造体150は、インナーフレキシブルシャフト151と、中空管状をなすアウターフレキシブルシャフト152とから構成されている。インナーフレキシブルシャフト151及びアウターフレキシブルシャフト152は、いずれも撓んだ状態で回転を伝達可能である。
インナーフレキシブルシャフト151は、アウターフレキシブルシャフト152に同軸に挿通されている。インナーフレキシブルシャフト151は、アウターフレキシブルシャフト152に対して回転自在である。
図6に示すように、入力軸側ハウジングH−INに収められた動力分配機構160は、入力軸S−INによって回転される第1かさ歯車161と、第1かさ歯車161に対面して配置された第2かさ歯車162と、各々第1かさ歯車161及び第2かさ歯車162とかみ合い、互いに対面して配置された第3かさ歯車163及び第4かさ歯車164とを有する。第3かさ歯車163及び第4かさ歯車164は、第1かさ歯車161の回転を、第2かさ歯車162に伝達する。第2かさ歯車162は、第1かさ歯車161とは逆向きに回転する。
入力軸S−INによって回転される第1かさ歯車161は、自己の回転をインナーフレキシブルシャフト151に伝達する。具体的には、入力軸S−IN、第1かさ歯車161、及びインナーフレキシブルシャフト151は、この順に直列に並んでおり、これら3者は同じ向きに回転する。第1かさ歯車161は、入力軸S−INとインナーフレキシブルシャフト151とで支持されている。
なお、入力軸S−INとインナーフレキシブルシャフト151とが一体のフレキシブルシャフトで構成され、そのフレキシブルシャフトと第1かさ歯車161とが、両者の相対的な回転が阻止されるように嵌り合っていてもよい。
インナーフレキシブルシャフト151は、第2かさ歯車162を貫いて、図5に示した出力軸側ハウジングH−OUTに向かって延びている。インナーフレキシブルシャフト151は、第2かさ歯車162に対しては自在に回転する。
第2かさ歯車162は、自己の回転をアウターフレキシブルシャフト152に伝達する。第2かさ歯車162は、アウターフレキシブルシャフト152によって支持されている。アウターフレキシブルシャフト152は、第2かさ歯車162から、図5に示した出力軸側ハウジングH−OUTに向かって延びている。
入力軸側ハウジングH−INは、入力軸S−INに貫かれる部分において入力軸S−INを支持する軸受けBE14と、アウターフレキシブルシャフト152に貫かれる部分においてアウターフレキシブルシャフト152を支持する軸受けBE15と、第3かさ歯車163の回転軸163aを支持する軸受けBE16と、第4かさ歯車164の回転軸164aを支持する軸受けBE17とを有する。
図7に示すように、出力軸側ハウジングH−OUTに収められた動力合成機構170は、インナーフレキシブルシャフト151によって回転される第5かさ歯車171と、第5かさ歯車171に対面して配置された第6かさ歯車172と、各々第5かさ歯車171及び第6かさ歯車172とかみ合い、互いに対面して配置された第7かさ歯車173及び第8かさ歯車174とを有する。第7かさ歯車173及び第8かさ歯車174は、第5かさ歯車171の回転を、第6かさ歯車172に伝達する。第6かさ歯車172は、第5かさ歯車171とは逆向きに回転する。
第5かさ歯車171は、インナーフレキシブルシャフト151に貫かれており、インナーフレキシブルシャフト151と第5平歯車171は、両者の相対的な回転が阻止されるように、嵌り合っている。
出力軸側ハウジングH−OUTは、第5かさ歯車171を貫いたインナーフレキシブルシャフト151を支持する軸受けBE18と、第7かさ歯車173の回転軸173aを支持する軸受けBE19と、第8かさ歯車174の回転軸174aを支持する軸受けBE20とを有する。
また、動力合成機構170は、第6かさ歯車172によって回転される動力合成用反転軸としてのチューブシャフト175と、図2にも示した差動歯車134とを有する。
差動歯車134の第1サイド歯車137は、チューブシャフト175によって回転される。チューブシャフト175は、差動歯車134の枠体136を貫いて、第1サイド歯車137につながれている。チューブシャフト175は、枠体136に対しては、自在に回転する。
一方、差動歯車134の第2サイド歯車138は、アウターフレキシブルシャフト152によって回転される。アウターフレキシブルシャフト152は、差動歯車134の親歯車135を貫いて、第2サイド歯車138につながれている。アウターフレキシブルシャフト152は、親歯車135に対しては、自在に回転する。
出力軸側ハウジングH−OUTは、チューブシャフト175を支持する軸受けBE21と、アウターフレキシブルシャフト152によって貫かれる部分において、アウターフレキシブルシャフト152を支持する軸受けBE22とを有する。軸受けBE21及びBE22が、チューブシャフト175及びアウターフレキシブルシャフト152を通じて、差動歯車134を支持している。
なお、差動歯車134は、インナーフレキシブルシャフト151によって回転される第5かさ歯車171よりも、図5及び図6に示した入力軸側ハウジングH−INに近い位置に配置されている。インナーフレキシブルシャフト151は、第2サイド歯車138及び第1サイド歯車137を貫いて、チューブシャフト175内に挿通され、さらに第6かさ歯車172を貫いて、第5かさ歯車171につながれている。
インナーフレキシブルシャフト151は、第2サイド歯車138、第1サイド歯車137、チューブシャフト175、及び第6かさ歯車172に対しては、自在に回転する。
以下、本実施形態に係る動力伝達装置400の作用について説明する。
まず、モータMTと被回転駆動体RAとの相対的な回転であるねじり変位がない場合について説明する。
図5に示すモータMTが入力軸S−INを回転させると、図6に示す動力分配機構160が、入力軸S−INのトルクを、インナーフレキシブルシャフト151とアウターフレキシブルシャフト152に分配する。動力分配機構160は、インナーフレキシブルシャフト151を入力軸S−INと同じ向きに回転させ、アウターフレキシブルシャフト152を入力軸S−INと逆向きに回転させる。
インナーフレキシブルシャフト151の回転は、インナーフレキシブルシャフト151をチューブシャフト175に連結させる反転機構としての、第5かさ歯車171、第6かさ歯車172、第7かさ歯車173、及び第8かさ歯車174の4つのかさ歯車によって、反転されてチューブシャフト175に伝達され、さらにチューブシャフト175から第1サイド歯車137に伝達される。一方、アウターフレキシブルシャフト152の回転は、第2サイド歯車138に伝達される。
チューブシャフト175がアウターフレキシブルシャフト152と同じ向きに回転するので、第1サイド歯車137と第2サイド歯車138が、同じ向きに回転する。この結果、第1サイド歯車137及び第2サイド歯車138は、回転しない第1中間歯車139及び第2中間歯車140を通じて、各々の回転を枠体136に伝達する。このため、枠体136と一体をなす親歯車135も回転する。親歯車135の回転は、第5平歯車141を通じて出力軸S−OUTに伝達される。
第5平歯車141は、親歯車135と逆向きに回転するので、出力軸S−OUTは、入力軸S−INと同じ向きに回転する。図5に示した被回転駆動体RAは、出力軸S−OUTから回転を受け、受けた回転の動力によって作動する。
次に、モータMTと被回転駆動体RAとの相対的な回転であるねじり変位τによって、インナーフレキシブルシャフト151及びアウターフレキシブルシャフト152と、動力合成機構170とが相対的に回転すると、その回転が、動力合成機構170に対するインナーフレキシブルシャフト151とアウターフレキシブルシャフト152との回転角度の差として現れる。
なお、本明細書において、インナーフレキシブルシャフト151の回転角度は、入力軸側ハウジングH−INから出力軸側ハウジングH−OUTに向かう方向にみて時計回りを正とし、アウターフレキシブルシャフト152の回転角度は、同じく入力軸側ハウジングH−INから出力軸側ハウジングH−OUTに向かう方向にみて反時計回りを正とする。
つまり、動力合成機構170がインナーフレキシブルシャフト151から受ける回転の回転角度と、アウターフレキシブルシャフト152から受ける回転の回転角度とに差が発生する。そして、その回転角度の差は、差動歯車134において第1中間歯車139及び第2中間歯車140の回転によって吸収される。
これにより、ねじり変位τに伴うねじり応力が逃がされるため、そのねじり応力に起因した被回転駆動体RAと出力軸S−OUTとの相対的な回転が抑制される。従って、意図しない回転、即ちモータMTの動力に基づかない回転が被回転駆動体RAに伝達されにくい。
[実施形態5]
上記各実施形態に係る動力伝達装置100、200、300、及び400は、被回転駆動体RAへの意図しない回転の伝達を抑制する効果をもつため、被回転駆動体RAの動作に精密さが要求される用途に特に適する。以下、その具体例として、被回転駆動体RAが口腔内の精密加工を行う場合について説明する。
図8に示すように、本実施形態に係る口腔内加工装置900は、歯牙及び骨を加工可能な加工ヘッドWHと、加工ヘッドWHを保持した状態で、患者の顎に固定される変位機構500と、患者の口腔の外部に設置される動力源群600と、変位機構500と動力源群600とをつなぐ動力伝達装置群700と、患者の口腔の外部に配置され、動力源群600を制御する制御装置800とを備える。
動力源群600は、各々回転運動を生成するr方向用モータ600r、z方向用モータ600z、及びθ方向用モータ600θによって構成される。
変位機構500は、r方向用モータ600rを動力源とする被回転駆動体としてのr方向運動変換部500rと、z方向用モータ600zを動力源とする被回転駆動体としてのz方向運動変換部500zと、θ方向用モータ600θを動力源とする被回転駆動体としてのθ方向運動変換部500θとを有する。
また、変位機構500は、加工ヘッドWHを保持するアーム501も有する。加工ヘッドWHは、歯牙より硬い素材で形成された工具CTを備え、工具CTを回転軸AX1の周りに回転させることにより、工具CTの先端部分において歯牙を切削加工する。ここで切削とは、切れ刃で削ることのみならず、砥粒で削る研削の意味も含む概念とする。
動力伝達装置群700は、r方向用モータ600rの回転をr方向運動変換部500rに伝達するr方向用動力伝達装置700rと、z方向用モータ600zの回転をz方向運動変換部500zに伝達するz方向用動力伝達装置700zと、θ方向用モータ600θの回転をθ方向運動変換部500θに伝達するθ方向用動力伝達装置700θとによって構成される。これらr方向用動力伝達装置700r、θ方向用動力伝達装置700θ、及びz方向用動力伝達装置700zの各々は、既述の動力伝達装置100、200、300、又は400よりなる。
変位機構500は、円柱座標系における半径方向(以下、r方向とする)、周方向(以下、θ方向とする)、及び高さ方向(以下、z方向とする)の各方向に、加工ヘッドWHを変位させることができる。z方向は、工具CTの回転軸AX1に平行な方向である。θ方向は、回転軸AX1から離間して回転軸AX1と平行に延びる旋回軸AX2のまわりに、回転軸AX1を旋回させる方向である。r方向は、回転軸AX1と旋回軸AX2とが対向する方向である。
回転軸AX1は、加工ヘッドWHに対して固定されている。旋回軸AX2は、変位機構500に対して固定されている。回転軸AX1が、旋回軸AX2に対して、θ方向及びr方向に変位可能である。
r方向運動変換部500rは、アーム501を介して加工ヘッドWHを保持している。r方向運動変換部500rは、r方向用モータ600rからr方向用動力伝達装置700rを通じて伝達される回転運動を、自己に対するアーム501の進退運動、即ち加工ヘッドWHのr方向の直線運動に変換する。
z方向運動変換部500zは、z方向用モータ600zからz方向用動力伝達装置700zを通じて伝達される回転運動を、r方向運動変換部500rの、旋回軸AX2に平行な方向の直線運動、即ち加工ヘッドWHのz方向の直線運動に変換する。
θ方向運動変換部500θは、θ方向用モータ600θからθ方向用動力伝達装置700θを通じて伝達される回転運動を、r方向運動変換部500r及びz方向運動変換部500zの、旋回軸AX2周りの回転運動、即ち加工ヘッドWHのθ方向の旋回運動に変換する。
制御装置800は、口腔内の予め指定された道筋に沿って工具CTの先端が変位するように、r方向用モータ600r、θ方向用モータ600θ、及びz方向用モータ600zの各々の回転数を制御する。
本実施形態に係る口腔内加工装置900によれば、治療中に患者の顎が動力源群600に対して動いたことに伴い、r方向運動変換部500rがr方向用モータ600rに対して移動したとしても、その移動に起因するねじり応力をr方向用動力伝達装置700rが吸収することで、そのねじり応力に起因してr方向用動力伝達装置700rの出力軸と、r方向運動変換部500rとが相対的に回転することが抑制される。このため、治療中に患者の顎が動力源群600に対して動いても、口腔内の治療箇所においてr方向の加工誤差が生じにくい。
また、z方向運動変換部500zがz方向用モータ600zに対して移動したとしても、その移動に起因するねじり応力をz方向用動力伝達装置700zが吸収することで、そのねじり応力に起因してz方向用動力伝達装置700zの出力軸と、z方向運動変換部500zとが相対的に回転することが抑制される。このため、治療中に患者の顎が動力源群600に対して動いても、口腔内の治療箇所においてz方向の加工誤差が生じにくい。
また、θ方向運動変換部500θがθ方向用モータ600θに対して移動したとしても、その移動に起因するねじり応力をθ方向用動力伝達装置700θが吸収することで、そのねじり応力に起因してθ方向用動力伝達装置700θの出力軸と、θ方向運動変換部500θとが相対的に回転することが抑制される。このため、治療中に患者の顎が動力源群600に対して動いても、口腔内の治療箇所においてθ方向の加工誤差が生じにくい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限られない。例えば、以下の変形も可能である。
図1B及び図2〜図5において、入力軸S−INは、モータMTに対して着脱可能であってもよい。また、出力軸S−OUTは、被回転駆動体RAに対して着脱可能であってもよい。また、図2〜図4において、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112は、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTの少なくとも一方に対して着脱可能であってもよい。同様に、図5において、インナーフレキシブルシャフト151及びアウターフレキシブルシャフト152は、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTの少なくとも一方に対して着脱可能であってもよい。
図2〜図4に示す動力伝達装置100〜300は、動力分配機構120,120’と動力合成機構130,130’の少なくも一方と、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112との、第1フレキシブルシャフト111及び第2フレキシブルシャフト112の長さ方向の相対変位を吸収可能な変位吸収機構を備えてもよい。その変位吸収機構は、例えば、第1フレキシブルシャフト111又は第2フレキシブルシャフト112と、それがつながれる歯車とをスプライン嵌め合いさせた構成によって実現できる。同様に、図5に示す動力伝達装置400も、動力分配機構160と動力合成機構170の少なくも一方と、インナーフレキシブルシャフト151及びアウターフレキシブルシャフト152との、インナーフレキシブルシャフト151及びアウターフレキシブルシャフト152の長さ方向の相対変位を吸収可能な変位吸収機構を備えてもよい。
図2には、モータMTが、入力軸側ハウジングH−INに対して自在に回転しうる構成を示したが、モータMTは入力軸側ハウジングH−INに対して固定されていてもよい。また、被回転駆動体RAが、出力軸側ハウジングH−OUTに対して自在に回転しうる構成を示したが、被回転駆動体RAは出力軸側ハウジングH−OUTに対して固定されていてもよい。図3〜図5に示した構成においても同様である。
図5〜図7には、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTとの間においてアウターフレキシブルシャフト152が露出した構成を示したが、アウターフレキシブルシャフト152を覆う被覆部材を備えてもよい。その被覆部材は、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTの少なくとも一方に固着されていてもよい。
図6及び図7において、第2かさ歯車162とインナーフレキシブルシャフト151の間、アウターフレキシブルシャフト152とインナーフレキシブルシャフト151の間、親歯車135とアウターフレキシブルシャフト152の間、枠体136とチューブシャフト175の間、枠体136とインナーフレキシブルシャフト151の間、第1サイド歯車137とインナーフレキシブルシャフト151の間、第2サイド歯車138とインナーフレキシブルシャフト151の間等の摺動部に軸受けを配置してもよい。
上記各実施形態1〜3では、入力軸S−INの回転を出力軸S−OUTに並列に伝達するための第1中間軸及び第2中間軸の各々にフレキシブルシャフトを用いたが、第1中間軸及び第2中間軸はフレキシブルシャフトに限定されない。以下、第1中間軸及び第2中間軸の変形例について述べる。
図9に示すように、変形例に係るユニバーサル軸180は、各々棒状の剛体である複数の軸体181と、軸体181同士をつなぐユニバーサルジョイント182とを含んで構成される。このユニバーサル軸180を、上記第1フレキシブルシャフト111と第2フレキシブルシャフト112の少なくとも一方の代替として用いることができる。ユニバーサル軸180も、フレキシブルシャフトと同様、入力軸S−INと出力軸S−OUTとの相対変位を許容しつつ、入力軸S−INから出力軸S−OUTに自己の回転運動を伝達することができる。
図2には、被覆部材113a及び113bが入力軸側ハウジングH−IN及び出力軸側ハウジングH−OUTから離間した構成を示したが、被覆部材113a及び113bは、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTの少なくとも一方に固着されていてもよい。
被覆部材113a及び113bが、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTの双方に固着されている場合は、被覆部材113a及び113bが、入力軸側ハウジングH−INと出力軸側ハウジングH−OUTとの間の相対的な回転のずれを防止する回転ずれ防止部としての役割を果たすことができる。図3及び図4に示した構成においても同様である。
以下、回転ずれ防止部を備えた実施形態6〜12について説明する。
[実施形態6]
本実施形態に係る動力伝達装置1Aは、図10に示すように、駆動部としてのモータ2と、被駆動部3と、伝達部4と、回転ずれ防止部5と、を備える。動力伝達装置1Aは、モータ2(モータ筐体2A)と被駆動部3(被駆動部筐体3A)との間の相対的な回転ずれに起因して被駆動部3の回転軸(被駆動回転軸3B)が回転するのを防止することを特徴としている。
モータ2は、第1の筐体としてのモータ筐体2Aと、モータ筐体2Aに対して回転する第1の回転軸としてのモータ回転軸2Bとを備える。モータ2は、モータ筐体2A内に設けられた固定子に電流を流すなどして、その回転子を回転するトルクを発生させ、回転子とともに第1の回転軸2Bを回転させる動力源である。
被駆動部3は、第2の筐体としての被駆動部筐体3Aと、被駆動部筐体3Aに対して回転可能な第2の回転軸としての被駆動回転軸3Bとを備える。図10では、図示されていないが、被駆動部筐体3Aは、不図示の部材に固定されている。
伝達部4は、モータ回転軸2Bの回転力を被駆動回転軸3Bに伝達する。伝達部4は、一端がモータ回転軸2Bに接続され、他端が被駆動回転軸3Bに接続されたフレキシブルシャフトで構成される。即ち、伝達部4は、モータ回転軸2Bと被駆動回転軸3Bとの相対変位を許容しつつ、モータ回転軸2Bの回転力を被駆動回転軸3Bに伝達する伝達軸で構成される。伝達部4は、可撓軸又はたわみ軸と呼ばれる可撓自在な回転軸である。この可撓性により、モータ2と被駆動部3とは、相対変位を調整可能である。
しかしながら、モータ2と被駆動部3との間の伝達部4の伝達方向に沿った軸まわりの回転ずれが生じ、伝達部4にねじりが発生すると、そのねじりの反力で被駆動回転軸3Bが回転するおそれがある。このため、回転ずれ防止部5は、モータ筐体2Aと被駆動部筐体3Aとの間の相対的な回転ずれを防止する。
回転ずれ防止部5は、図11に示すように、保持部としての台座5Aと、軸受5Bと、同期部5Cと、を備える。台座5Aの側壁には、円形の開口が設けられており、この開口に軸受5Bが挿入されている。モータ筐体2Aには円筒部材2Cが固定されており、円筒部材2Cが、軸受5Bに挿入されている。これにより、モータ筐体2Aは、軸受5Bを介して台座5Aによりモータ回転軸2Bまわりに回転可能に保持される。
同期部5Cは、モータ筐体2Aのモータ回転軸2Bまわりの回転と、被駆動部筐体3Aの被駆動回転軸3Bまわりの回転とを同期させる。本実施形態では、同期部5Cとして、一端がモータ筐体2Aに接続され、他端が被駆動部筐体3Aに接続されたフレキシブルスリーブ5Cで構成される。同期部5Cは、フレキシブルシャフト4のカバーであり、可撓性を有し、フレキシブルシャフト4と同心の筒状体で構成される。同期部5Cは、モータ筐体2Aと被駆動部筐体3Aとの相対変位を許容しつつ、モータ筐体2Aのモータ回転軸2Bまわりの回転と、被駆動部筐体3Aの被駆動回転軸3Bまわりの回転とを同期させる。即ち、同期部5Cは、被駆動部筐体3Aが被駆動回転軸3Bまわりに回転しようとすると、その回転力をモータ筐体2Aに伝達し、モータ筐体2Aを同じ方向、同じ角度回転させる。図10では、フレキシブルシャフト4が見えるように、フレキシブルスリーブ5Cを一部破砕して示している。
次に、本実施形態に係る動力伝達装置1Aの動作について説明する。
モータ2がモータ回転軸2Bを回転すると、その回転力が伝達部4を介して被駆動部3の被駆動回転軸3Bへ伝達される。例えば、図12に示すように、モータ回転軸2Bがα1度回転すると、被駆動回転軸3Bもα1度回転する。これに対して、被駆動部筐体3Aが被駆動回転軸3B又は被駆動回転軸3Bに平行な軸まわりにβ1度回転したとしても、その回転力がフレキシブルシャフト5Cを介してモータ筐体2Aに伝達され、モータ筐体2Aもβ1度だけ回転する。これにより、モータ筐体2Aと被駆動部筐体3Aとの回転ずれの発生が防止され、フレキシブルシャフト4のねじれを生じさせないようにすることができる。
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、モータ2のモータ回転軸2Bの回転力を、伝達部4を介して被駆動部3の被駆動回転軸3Bに伝達する機構を備える動力伝達装置1Aが、モータ2のモータ筐体2Aと被駆動部3の被駆動部筐体3Aとの相対的な回転ずれを防止する回転ずれ防止部5を備えている。この回転ずれ防止部5により、モータ筐体2Aと被駆動部筐体3Aとの相対的な回転ずれが発生しなくなるので、その相対的な回転ずれによる伝達部4のねじりの発生が防止される。この結果、意図しない被駆動回転軸3Bの回転を防止することができる。
本実施形態では、フレキシブルシャフト4の本数を増やすことなく、意図しない被駆動回転軸3Bの回転を防止することができる。
本実施形態に係る動力伝達装置1Aは、1系統であったが、複数系統備えることも可能である。
[実施形態7]
実施形態2について図13、図14、図15を参照して説明する。上記実施形態に係る動力伝達装置1Aは1系統であったが、本実施形態に係る動力伝達装置1Bは、2系統である。
本実施形態では、モータ2が2つ設けられている。モータ2は、そのモータ回転軸2Bが互いに平行となるように上下に配列されている。なお、モータ2の配列方向は上下に限定されない。例えば、モータ2の配列方向は左右であっても構わない。また、モータ2それぞれの取り付け面は同一でなくても良い。例えば、取り付け面が上下又は左右に段違いになっていてもよい。
また、被駆動部3では、被駆動回転軸3Bが、モータ2の数だけ、即ち2本設けられている。被駆動部3において、被駆動回転軸3Bは、互いに平行となるように上下に配列されている。なお、被駆動回転軸3Bの配列方向は上下に限定されない。例えば、被駆動回転軸3Bの配列方向は左右であっても構わない。また、被駆動回転軸3Bそれぞれの取り付け面は同一でなくてもよい。例えば、その取り付け面が上下又は左右に段違いになっていてもよい。
さらに、伝達部4、14は、モータ2の数、即ち1本ずつ、計2本設けられている。伝達部4は、下側のモータ2のモータ回転軸2Bの回転力を、下側の被駆動回転軸3Bに伝達する。伝達部14は、上側のモータ2のモータ回転軸2Bの回転力を、上側の被駆動回転軸3Bに伝達する。
伝達部4は、フレキシブルシャフトで構成される。下側のモータ2、下側の被駆動回転軸3B及び伝達部4で、動力伝達の第1系統が構成される。回転ずれ防止部15は、第1系統に対応して、保持部としての台座15Aと、軸受15Bと、同期部15C,15Dと、を備える。台座15Aの側壁には、円形の開口が設けられており、この開口に軸受15Bが挿入されている。下側のモータ2のモータ筐体2Aには円筒部材2Cが固定されており、円筒部材2Cが、軸受15Bに挿入されている。これにより、下側のモータ2のモータ筐体2Aは、軸受15Bを介して台座15Aによりモータ回転軸2Bまわりに回転可能に保持される。
同期部15Cは、下側のモータ2のモータ筐体2Aのモータ回転軸2Bまわりの回転と、被駆動部筐体3Aの下側の被駆動回転軸3Bまわりの回転とを同期させる。本実施形態では、同期部15Cは、一端が被駆動部筐体3Aに接続された、他端が2つのモータ筐体2Aのうち、下側のモータ筐体2Aに接続され、フレキシブルスリーブで構成される。同期部15Cは、フレキシブルシャフト4のカバーであり、可撓性を有し、フレキシブルシャフト4と同心の筒状体である。同期部15Cは、被駆動部筐体3Aとモータ筐体2Aとの相対変位を許容しつつ、接続した下側のモータ筐体2Aのモータ回転軸2Bまわりの回転と、被駆動部筐体3Aの被駆動回転軸3Bまわりの回転とを同期させる伝達軸である。即ち、同期部15Cは、被駆動部筐体3Aが被駆動回転軸3Bまわりに回転しようとすると、その回転力を下側のモータ2のモータ筐体2Aに伝達し、下側のモータ2のモータ筐体2Aを同じ方向、同じ角度回転させる。図13では、フレキシブルシャフト4が見えるように、フレキシブルスリーブ15Cを一部破砕して示している。
このように、本実施形態に係る動力伝達装置1Bの第1系統の構成は、上記第1の実施形態に係る動力伝達装置1Aの構成とほぼ同等である。
上側のモータ2、上側の被駆動回転軸3B及び伝達部14で、第2系統が構成される。伝達部14は、第1の伝達機構としての伝達機構14Aと、第2の伝達機構としての伝達機構14Bと、を備える。伝達機構14Aは、他の伝達部、即ち伝達部4に近づく方向に、モータ回転軸2Bの回転力の回転に伴って回転する歯車機構である。図14に示すように、伝達機構14Aは、平歯車14A1,14A2,14A3が噛み合って構成される。平歯車14A1は、モータ回転軸2Bの回転に伴って回転し、平歯車14A2,14A3は、軸受14Cを介して台座15Aに回転可能に保持されている。平歯車14A1,14A3の回転比は1:1である。なお、伝達機構14Aを、回転比が1:1である歯車2枚を噛み合わせる構成とすることにより、伝達機構14Bを伝達部4に近づけるようにしてもよい。ただし、この場合には、上側のモータ2のモータ回転軸2Bを、逆方向に回転させる必要があるうえ、本実施形態のように、歯車を3枚使用する場合よりも、伝達機構14Bと伝達部4の距離は遠くなる。
伝達機構14Bは、一端が平歯車14A3に接続され、他端が上側の被駆動回転軸3Bに接続されたフレキシブルシャフトである。伝達機構14Bは、伝達機構14Aと上側の被駆動回転軸3Bとの相対変位を許容しつつ、伝達機構14Aにより伝達された回転力を、上側の被駆動回転軸3Bに伝達する。この伝達部14を伝達機構14A,14Bで構成すれば、伝達部14を伝達部(フレキシブルシャフト)4に近づけることができるので、伝達部4,14の長手方向に関して伝達部4,14が占める断面積を小さくすることができる。
回転ずれ防止部15は、第2系統に対応して、図13に示すように、台座15Aと、軸受15Bと、上述の同期部15Cと、同期部15Dと、を備える。台座15Aの側壁には、円形の開口が設けられており、この開口に軸受15Bが挿入されている。上側のモータ2のモータ筐体2Aには円筒部材2Cが固定されており、円筒部材2Cが、軸受15Bに挿入されている。これにより、上側のモータ2のモータ筐体2Aは、軸受15Bを介して台座15Aによりモータ回転軸2Bまわりに回転可能に保持される。このように、台座15Aは、上下の2つのモータ2を回転可能に保持している。
同期部15C,15Dは、被駆動部筐体3Aの被駆動回転軸3Bまわりの回転と、全てのモータ2におけるモータ筐体2Aのモータ回転軸2Bまわりの回転とを同期させる。より具体的には、同期部15Cは、前述のようにフレキシブルスリーブであり、同期部15Dは、歯車機構である。同期部15Dは、平歯車15D1,15D2,15D3及び軸受15Eを備える。平歯車15D1,15D3は、モータ回転軸2Bを中心に回転するようにそれぞれモータ筐体2Aに固定される。平歯車15D1,15D3の回転比は1:1である。平歯車15D2は、2つの平歯車15D1,15D3の間に挿入され、軸受15Eを介して台座15Aに回転可能に支持されている。下側のモータ筐体2Aに固定された平歯車15D1が回転すると、上側のモータ筐体2Aに固定された平歯車15D3も同じ角度で回転する。このように、同期部15Dは、同期部15Cに接続された下側のモータ筐体2Aと、残りの上側のモータ筐体2Aとの間で回転力を等回転比で伝達する。
下側のモータ筐体2Aに固定された平歯車15D1は、同期部15Cの回転に従って回転する。この回転に合わせて上側のモータ筐体2Aに固定された平歯車15D3も回転する。このような構成により、同期部15Dは、フレキシブルシャフト4に接続された下側のモータ筐体2Aと、上側のモータ筐体2Aとの間で回転力を伝達する。
次に、本実施形態に係る動力伝達装置1Bの動作について説明する。
下側のモータ2がモータ回転軸2Bを回転すると、その回転力が伝達部4を介して被駆動部3の下側の被駆動回転軸3Bへ伝達される。また、上側のモータ2について、モータ回転軸2Bが回転すると、その回転力が伝達部14を介して被駆動部3の上側の被駆動回転軸3Bへ伝達される。具体的には、図14に示すように、上側のモータ2のモータ回転軸2Bがα2度回転すると、その回転力は平歯車14A1→平歯車14A2→平歯車14A3というように伝達され平歯車14A3もα2度回転する。そして平歯車14A3の回転運動が、伝達機構14Bに伝達され、最終的に上側の被駆動回転軸3Bがα2度回転する。
さらに、図15に示すように、被駆動部筐体3Aが被駆動回転軸3B又は被駆動回転軸3Bに平行な軸まわりにβ2度回転したとしても、その回転力が同期部15Cを介して下側のモータ2のモータ筐体2Aに伝達され、モータ筐体2Aがβ2度だけ回転する。そして、下側のモータ2のモータ筐体2Aの回転により、そのモータ筐体2Aに取り付けられた平歯車15D1が回転し、その回転が平歯車15D2、上側のモータ筐体2Aに取り付けられた平歯車15D3に伝達され、上側のモータ筐体2Aもβ2度回転する。これにより、モータ筐体2Aと被駆動部筐体3Aとの回転ずれの発生が防止される。
なお、本実施形態では、歯車機構により、伝達部14や同期部15C,15Dを構成したが、歯付プーリ及び歯付ベルトで構成されるプーリ機構のようにスリップしない回転運動の伝達機構を用いて伝達部14や同期部15C,15Dを構成するようにしてもよい。また、モータ2の数は2つには限られず、3つ以上であってもよい。なお、全ての実施形態において、伝達部、同期部としては、歯車機構又は歯付プーリ及び歯付ベルトで構成されるプーリ機構のようにスリップしない回転運動の伝達機構が用いられる。
[実施形態8]
実施形態8について図16、図17を参照して説明する。本実施形態に係る動力伝達装置1Cは、1系統である。
本実施形態に係る動力伝達装置1Cでは、モータ2のモータ回転軸2Bと被駆動部3の被駆動回転軸3Bとの間は、フレキシブルシャフト4Aと、フレキシブルスリーブ4Bで構成される伝達部4が接続している。伝達部4の駆動により、被駆動部3の被駆動回転軸3Bが回転駆動される。
動力伝達装置1Cは、回転ずれ防止部18を備える。回転ずれ防止部18は、回転板18Aと、回転軸18Bと、保持部18Cと、同期部18Dと、を備える。回転板18Aには、モータ2のモータ筐体2Aが固定されている。第3の回転軸としての回転軸18Bは、モータ回転軸2Bに平行に延びており、回転板18Aを回転させる。保持部18Cは、回転軸18Bを回転可能に保持する。同期部18Dは、モータ筐体2Aの回転軸2Bまわりの回転と、回転板18Aの回転軸18Bまわりの回転とを同期させる。
回転板18Aには、回転軸18Bの回転方向に沿って回転する部分の重量分布が均一となるようにカウンターウエイト18Eが設けられている。また、回転板18Aの一部にバネを設け、回転板18Aの回転位置の原点(基準点)を定めるようにしてもよい。また、回転板18Aの重量分布をあえて不均一とすることで、例えば無負荷状態では回転板18Aにおいて一番重い部分が下にくるようにして、回転板18Aの回転位置の原点(基準点)を定めるようにしてもよい。
モータ2がモータ回転軸2Bを回転すると、その回転力が伝達部4を介して被駆動部3の被駆動回転軸3Bへ伝達される。さらに、被駆動部3が被駆動回転軸3B又は被駆動回転軸3Bに平行な軸まわりにθ度回転したとしても、その回転力が同期部18Dを介して回転軸18Bに伝達され、回転軸18Bがθ度だけ回転する。これにより、回転板18Aもθ度回転する。図17に示すように、回転板18Aがθ度回転すると、実質的にモータ筐体2Aもθ度回転する。これにより、被駆動部筐体3Aとモータ筐体2Aとの回転ずれは生じず、伝達部(フレキシブルシャフト)4のねじれが防止される。
回転板18Aには、複数のモータ2が取り付けられていてもよい。この場合、被駆動部3では、被駆動回転軸3Bが、モータ2の数だけ設けられ、伝達部4(4A,4B)が、モータ2の数だけ設けられる。この場合、モータ2は、回転軸18Bの回転方向に沿って回転する部分の重量分布が均一となるように回転板18Aに取り付けられるようにするのが望ましい。ただし、回転板18A上でモータ2を不均一に配置することで、回転板18Aの回転位置の原点(基準点)を定めるようにしてもよい。また、回転板18Aの一部に複数のモータ2を集中して配置し、カウンターウエイトで回転板18Aの回転方向の重量分布を調整するようにしてもよい。
なお、同期部18Dがあればフレキシブルスリーブ4Bはなくてもよい。被駆動部3の被駆動部筐体3B又は被駆動部筐体3Bに平行な軸まわりの回転を同期部18Dに伝えることができるためである。逆に、フレキシブルスリーブ4Bがねじりに対して強いものであれば、同期部18Dがなくてもよい。被駆動部3の被駆動部筐体3B又は被駆動部筐体3Bに平行な軸まわりの回転を回転板18Aに伝えることができるためである。本実施形態のように、フレキシブルスリーブ4Bと同期部18Dの両方を備えている場合であっても、被駆動部3の被駆動部筐体3B又は被駆動部筐体3Bに平行な軸まわりの回転を回転板18Aに伝えることができる。
また、本実施形態においても、上記実施形態7と同様に、歯車機構やプーリ機構を用いてモータ筐体2A側の伝達部4を同期部18Dに近づけるような構成を採用するようにしてもよい。
[実施形態9]
実施形態9について図18、図19A、図19Bを参照して説明する。本実施形態に係る動力伝達装置1Dは、2系統である。
本実施形態では、動力伝達装置1Dは、モータ2と、被駆動部3と、伝達部16とを備える。モータ2は、そのモータ回転軸2Bが互いに平行となるように上下に配列されている。また、被駆動部3では、被駆動回転軸3Bが、モータ2の数だけ、即ち2本設けられている。被駆動部3において、被駆動回転軸3Bは、互いに平行となるように上下に配列されている。さらに、伝達部16は、モータ2の数、即ち2組設けられている。伝達部16は、各モータ2のモータ回転軸2Bの回転力を、対応する被駆動回転軸3Bに伝達する。
より詳細には、伝達部16は、第1の伝達機構としての伝達機構16Aと、第2の伝達機構としての伝達機構16Bと、を備える。伝達機構16Aは、図18に示すように、他の伝達部16に近づく方向に、モータ回転軸2Bの回転力を伝達する。伝達機構16Aは、プーリ16C,16Dとベルト16Eと軸受16Fとで構成される。プーリ16Cは、モータ回転軸2Bに取り付けられ、プーリ16Dは、軸受16Fを介して台座17Aに対して回転可能に保持されている。ベルト16Eは、プーリ16C,16Dに巻回されている。プーリ16C,16Dの回転比は1:1である。このため、モータ回転軸2Bの回転角度と、被駆動回転軸3Bとの回転角度は同じになる(例えば図19Aの回転角度α3)。
伝達機構16Bは、伝達機構16Aにより伝達された回転力を、被駆動回転軸3Bの方向に伝達するフレキシブルシャフトである。伝達部16を伝達機構16A,16Bで構成すれば、伝達部16を他の伝達部16に近づけることができるので、伝達部16の長手方向に関して2本の伝達部16が占める断面積を小さくすることができる。
回転ずれ防止部17は、図18に示すように、台座17Aと、軸受17Bと、同期部17C,17Dと、を備える。台座17Aの側壁には、円形の開口が設けられており、この開口に軸受17Bが挿入されている。モータ筐体2Aには円筒部材2Cが固定されており、円筒部材2Cが、軸受17Bに挿入されている。これにより、モータ筐体2Aは、軸受17Bを介して台座17Aによりモータ回転軸2Bまわりに回転可能に保持される。
同期部17C(伝達軸),17D(プーリ機構)は、被駆動部筐体3Aの被駆動回転軸3Bまわりの回転と、全てのモータ2におけるモータ筐体2Aのモータ回転軸2Bまわりの回転とを同期させる。同期部17Cは、一端が第1のプーリとしてのプーリ17D1に接続され他端が被駆動部3の被駆動部筐体3Aに接続され、プーリ17D1と被駆動部筐体3Aとの相対変位を許容しつつ、プーリ17D1の回転と、被駆動部筐体3Aの被駆動回転軸3Bまわりの回転又は被駆動回転軸3Bに平行な軸まわりの回転とを同期させるフレキシブルシャフトである。同期部17Dは、プーリ機構である。プーリ機構は、プーリ17D1(第1のプーリ),17D2(第2のプーリ),17D3(第2のプーリ)と、ベルト17D4と、アイドラー17D5,アイドラー17D6とを備える。プーリ17D1,アイドラー17D5,17D6は、軸受17Bを介して台座17Aに回転可能に取り付けられている。プーリ17D2,17D3は、モータ回転軸2Bを中心に回転するようにそれぞれモータ筐体2Aに固定される。プーリ17D1は、2つのプーリ17D2,17D3の間に挿入され、ベルト17D4は、プーリ17D1,17D2,17D3に巻回されている。アイドラー17D5,17D6は、ベルト17D4に当接してテンションを与え、プーリ17D1,17D2,17D3がベルト17D4に対して滑らないようにする。プーリ17D1が回転すると、ベルト17D4の駆動により、モータ2に固定されたプーリ17D2,17D3も同じ角度で回転する。プーリ17D1,17D2,17D3の回転比は図19Bに示すように、1:1:1である。このため、被駆動部筐体3Aの回転角度と、モータ筐体2Aの回転角度を同じにすることができる(例えば図19Bの回転角度β3)。このように、同期部17Dは、プーリ17D1と、全てのモータ筐体2Aに取り付けられたプーリ17D2,17D3との間で、等回転比で回転力を伝達する。
以上述べたように、プーリ17D1は、同期部17Cの回転に伴って回転する。この回転に合わせて上下のモータ筐体2Aに固定されたプーリ17D2、17D3も回転する。このような構成により、被駆動部筐体3Aの回転にモータ筐体2Aの回転を同期させることができる。
なお、本実施形態では、プーリ機構(第1のプーリ機構、第2のプーリ機構)により、伝達部16や同期部17C,17Dを構成したが、歯車機構(第1の歯車機構、第2の歯車機構)を用いて伝達部16や同期部17C,17Dを構成するようにしてもよい。この場合、プーリ17D1に代わる歯車が第1の歯車となり、モータ筐体2Aとともに回転するプーリ17D2,17D3に代わり第1の歯車から回転運動を伝達される歯車が第2の歯車となる。また、モータ2の数は2つには限られず、3つ以上であってもよい。また、アイドラーの数も2つには限られず、1つや3つ以上であってもよい。また、アイドラーはなくてもよい。
[実施形態10]
実施形態10について図20を参照して説明する。本実施形態に係る動力伝達装置1Eは、1系統である。
図20に示すように、動力伝達装置1Eは、駆動部2’と被駆動部3’とを備える。駆動部2’は、第1の筐体としての筐体2A’と、第1の回転軸としての入力軸2B’と、を備える。被駆動部3’は、筐体3A’と、第2の回転軸としての出力軸3B’と、を備える。入力軸2B’は、不図示のモータに接続された駆動軸である。動力伝達装置1Eは、入力軸2B’の回転運動を出力軸3B’に伝達する。
入力軸2B’と出力軸3B’とは、伝達部4’で連結されている。伝達部4’は、第1の中間軸としての第1のフレキシブルシャフト4A’と、第2の中間軸としての第2のフレキシブルシャフト4B’とを備える。第1のフレキシブルシャフト4A’及び第2のフレキシブルシャフト4B’は、駆動部2’と被駆動部3’との間をつなぐ部分のみ可撓性を有し、他の部分では剛体軸となっている。第1のフレキシブルシャフト4A’及び第2のフレキシブルシャフト4B’は、自在に回転し、入力軸2B’の回転運動を出力軸3B’に並列に伝達する。このため、第1のフレキシブルシャフト4A’と第2のフレキシブルシャフト4B’の各々は、筐体2A’と筐体3A’の相対的な変位を許容しつつ、筐体2A’から筐体3A’に回転力を伝達可能である。
駆動部2’は、入力軸2B’の回転力を、第1のフレキシブルシャフト4A’と第2のフレキシブルシャフト4B’とに伝達する。駆動部2’は、互いにかみ合った平歯車21及び平歯車22を有する。平歯車21は入力軸2B’によって回転され、その回転運動を第1のフレキシブルシャフト4A’に伝達する。入力軸2B’、平歯車21及び第1のフレキシブルシャフト4A’は、同じ向きに回転する。
平歯車22は、第2のフレキシブルシャフト4B’に接続されている。平歯車22は、回転運動を第2のフレキシブルシャフト4B’に伝達する。平歯車22は、平歯車21と逆向きに回転するので、第2のフレキシブルシャフト4B’は、第1のフレキシブルシャフト4A’とは逆向きに回転する。平歯車21と平歯車22の回転比は1:1である。
被駆動部3’は、駆動部2’によって互いに逆向きに回転される第1のフレキシブルシャフト4A’及び第2のフレキシブルシャフト4B’の各々から受けた回転力を、向きを揃えて合成して出力軸3B’に伝達する。被駆動部3’は、反転軸31と、反転軸31を第1のフレキシブルシャフト4A’に連結させ、第1のフレキシブルシャフト4A’の回転を反転させて反転軸31に伝達する平歯車32及び平歯車33と、反転軸31及び第2のフレキシブルシャフト4B’につながれる差動歯車34とを有する。
平歯車32は、第1のフレキシブルシャフト4A’に連結されている。即ち、平歯車32は、第1のフレキシブルシャフト4A’の回転に伴って回転する。平歯車33は、反転軸31に連結されている。平歯車33は、平歯車32とかみ合っている。平歯車33は、平歯車32によって回転され、回転運動を反転軸31に伝達する。平歯車33は、平歯車32と逆向きに回転するので、反転軸31は第1のフレキシブルシャフト4A’とは逆向きに回転する。平歯車32と平歯車33の回転比は1:1である。
差動歯車34は、平歯車である親歯車35と、サイド歯車37及びサイド歯車38と、各々サイド歯車37とサイド歯車38との回転数差に応じた回転数で回転する中間歯車39及び中間歯車40とを有する。サイド歯車37、サイド歯車38、中間歯車39及び中間歯車40は、かさ歯車である。
サイド歯車37は、反転軸31の回転に伴って回転する。サイド歯車38は、第2のフレキシブルシャフト4B’によって回転される。第2のフレキシブルシャフト4B’は、親歯車35を貫いて、サイド歯車38に連結されている。第2のフレキシブルシャフト4B’は、親歯車35に対して回転自在である。第2のフレキシブルシャフト4B’は、反転軸31の延長線上に配置され、サイド歯車38は、サイド歯車37と対向する位置に配置されている。中間歯車39と中間歯車40の各々は、サイド歯車37とサイド歯車38の双方にかみ合っている。
また、被駆動部3’は、親歯車35とかみ合う平歯車41を有する。平歯車41は、出力軸3B’に連結されている。平歯車41は、親歯車35によって回転され、その回転運動を出力軸3B’に伝達する。平歯車41は、親歯車35と逆向きに回転するので、出力軸3B’は、親歯車35と逆向きに回転する。
また、動力伝達装置1Eにも筐体2A’と筐体3A’との回転ずれを防止する回転ずれ防止部5’を備えている。回転ずれ防止部5’は、軸受5B’を介して筐体2A’を回転可能に保持する保持部5A’と、筐体2A’と筐体3A’とを接続する同期部5C’とで構成される。
モータが入力軸2B’を回転させると、駆動部2’が、入力軸2B’の回転力を、第1のフレキシブルシャフト4A’と第2のフレキシブルシャフト4B’に分配する。第1のフレキシブルシャフト4A’は入力軸2B’と同じ向きに回転し、第2のフレキシブルシャフト4B’は入力軸2B’と逆向きに回転する。平歯車21と平歯車22の回転比が1:1であるため、第1のフレキシブルシャフト4A’と第2のフレキシブルシャフト4B’の回転角度は等しくなっている。
第1のフレキシブルシャフト4A’の回転は、平歯車32及び平歯車33によって反転されて反転軸31に伝達され、さらに反転軸31からサイド歯車37に伝達される。一方、第2のフレキシブルシャフト4B’の回転は、サイド歯車38に伝達される。反転軸31が第2のフレキシブルシャフト4B’と同じ向きに回転するので、サイド歯車37とサイド歯車38が、同じ向きに回転する。また、平歯車32と平歯車33の回転比が1:1であるため、サイド歯車37とサイド歯車38の回転角度は等しくなる。このため、中間歯車39と中間歯車40は、回転しない。
サイド歯車37及びサイド歯車38は、回転しない中間歯車39及び中間歯車40を介して、各々の回転に伴って親歯車35も回転する。親歯車35の回転は、平歯車41を通じて出力軸3B’に伝達される。平歯車41は、親歯車35と逆向きに回転するので、出力軸3B’は、入力軸2B’と同じ向きに同じ回転角度だけ回転する。
駆動部2’と被駆動部3’との相対的な回転ずれは、回転ずれ防止部5’によって防止されている。即ち、同期部5C’によって被駆動部3’の筐体3A’の回転に伴って、駆動部2’の筐体2A’も回転する。これにより、駆動部2’と被駆動部3’との相対的な回転ずれが防止される。
さらに、万が一、回転ずれ防止部5’の許容範囲を超え、駆動部2’と被駆動部3’との相対的な回転ずれが発生した場合、被駆動部3’にとっては、第1のフレキシブルシャフト4A’と第2のフレキシブルシャフト4B’の各々が、同じ向きに回転したことになる。この場合、被駆動部3は、第1のフレキシブルシャフト4A’と第2のフレキシブルシャフト4B’とから同じ向きの回転力を受ける。従って、平歯車32とサイド歯車38とが同じ向きに回転する。平歯車32の回転は、反転されてサイド歯車37に伝達されるので、サイド歯車37とサイド歯車38がちょうど逆向きに回転する。サイド歯車37とサイド歯車38の回転角度の絶対値は同じである。すると、サイド歯車37及びサイド歯車38の回転は、中間歯車39及び中間歯車40の回転によって吸収されるため、親歯車35は回転しない。このため、出力軸3B’も回転しなくなる。
以上のようにして、駆動部2’と被駆動部3’との間に相対的な回転ずれが発生した場合でも、出力軸3B’の回転が防止され、最悪でも抑制される。
[実施形態11]
実施形態11について、図21を参照して説明する。本実施形態に係る動力伝達装置1Fは、1系統である。
図21に示すように、本実施形態に係る動力伝達装置1Fは、駆動部2”と、被駆動部3”と、伝達部4”と、を備える。伝達部4”は、インナーフレキシブルシャフト4A”と、中空管状をなすアウターフレキシブルシャフト4B”とを備える。インナーフレキシブルシャフト4A”及びアウターフレキシブルシャフト4B”は、可撓性を有し、撓んだ状態で回転を伝達可能である。インナーフレキシブルシャフト4A”は、アウターフレキシブルシャフト4B”に同軸に挿通されている。インナーフレキシブルシャフト4A”は、アウターフレキシブルシャフト4B”に対して回転自在である。
駆動部2”は、筐体2A”と入力軸2B”とを備える。筐体2A”内には、入力軸2B”の回転に従って回転するかさ歯車61と、かさ歯車61に対面して配置されたかさ歯車62と、各々かさ歯車61及びかさ歯車62とかみ合い、互いに対面して配置されたかさ歯車63及びかさ歯車64とを有する。かさ歯車63及びかさ歯車64は、かさ歯車61の回転を、かさ歯車62に伝達する。かさ歯車62は、かさ歯車61とは逆向きに回転する。
かさ歯車61は、回転運動をインナーフレキシブルシャフト4A”に伝達する。入力軸2B”、かさ歯車61及びインナーフレキシブルシャフト4A”は、同じ向きに回転する。インナーフレキシブルシャフト4A”は、かさ歯車62を貫通しており、かさ歯車62に対して自在に回転する。
かさ歯車62は、回転運動をアウターフレキシブルシャフト4B”に伝達する。かさ歯車62は、アウターフレキシブルシャフト4B”の一端に接続されている。アウターフレキシブルシャフト4B”の他端は、被駆動部3”の筐体3A”に向かって延びている。
被駆動部3”は、インナーフレキシブルシャフト4A”の他端に接続されて回転されるかさ歯車71と、かさ歯車71に対面して配置されたかさ歯車72と、各々かさ歯車71及びかさ歯車72とかみ合い、互いに対面して配置されたかさ歯車73及びかさ歯車74とを備える。かさ歯車73及びかさ歯車74は、かさ歯車71の回転を、かさ歯車72に伝達する。かさ歯車72は、かさ歯車71とは逆向きに回転する。
また、被駆動部3”は、かさ歯車72によって回転されるチューブシャフト75と、差動歯車34とを有する。差動歯車34のサイド歯車37は、チューブシャフト75によって回転される。チューブシャフト75は、差動歯車34を貫いて、サイド歯車37につながれている。チューブシャフト75は、親歯車35に対して自在に回転する。
差動歯車34のサイド歯車38は、アウターフレキシブルシャフト4B”によって回転される。アウターフレキシブルシャフト4B”はサイド歯車38につながれている。アウターフレキシブルシャフト4B”は、親歯車35に対して自在に回転する。
なお、差動歯車34は、インナーフレキシブルシャフト4A”によって回転されるかさ歯車71よりも、筐体2A”に近い位置に配置されている。インナーフレキシブルシャフト4A”は、サイド歯車38及びサイド歯車37を貫いて、チューブシャフト75内に挿通され、さらにかさ歯車72を貫いて、かさ歯車71につながれている。インナーフレキシブルシャフト4A”は、サイド歯車38、サイド歯車37、チューブシャフト75及びかさ歯車72に対しては、自在に回転する。
また、動力伝達装置1Fにも筐体2A”と筐体3A”との回転ずれを防止する回転ずれ防止部5”を備えている。回転ずれ防止部5”は、軸受5B”を介して筐体2A”を回転可能の保持する保持部5A”と、筐体2A”と筐体3A”とを接続する同期部5C”とで構成される。
モータが入力軸2B”を回転させると、入力軸2B”の回転力は、インナーフレキシブルシャフト4A”とアウターフレキシブルシャフト4B”とに分配される。インナーフレキシブルシャフト4A”は、入力軸2A”と同じ向きに回転し、アウターフレキシブルシャフト4B”は、入力軸2A”と逆向きに回転する。
インナーフレキシブルシャフト4A”の回転は、インナーフレキシブルシャフト4A”をチューブシャフト75に連結させる反転機構としての、かさ歯車71、かさ歯車72、かさ歯車73及びかさ歯車74の4つのかさ歯車によって、反転されてチューブシャフト75に伝達され、さらにチューブシャフト75からサイド歯車37に伝達される。一方、アウターフレキシブルシャフト4B”の回転は、サイド歯車38に伝達される。
この場合、チューブシャフト75がアウターフレキシブルシャフト4B”と同じ向きに回転するので、サイド歯車37とサイド歯車38が、同じ向きに回転する。これにより、サイド歯車37及びサイド歯車38のそれぞれの回転運動は、回転しない中間歯車39及び中間歯車40を介して親歯車35に伝達される。親歯車35の回転は、平歯車41を介して出力軸3B”に伝達される。平歯車41は、親歯車35と逆向きに回転するので、出力軸3B”は入力軸2B”と同じ向きに回転する。
駆動部2”と被駆動部3”との相対的な回転ずれは、回転ずれ防止部5”によって防止されている。即ち、同期部5C”によって被駆動部3”の筐体3A”の回転に伴って、駆動部2”の筐体2A”も回転する。これにより、駆動部2”と被駆動部3”との相対的な回転ずれが防止される。
さらに、万が一、回転ずれ防止部5”の許容範囲を超え、駆動部2”と被駆動部3”との相対的な回転ずれが発生した場合、被駆動部3”にとっては、インナーフレキシブルシャフト4A”とアウターフレキシブルシャフト4B”の各々が、同じ向きに回転したことになる。この回転は、差動歯車34における中間歯車39及び中間歯車40の回転によって吸収される。これにより、ねじり変位に伴うねじり応力が逃がされるため、そのねじり応力に起因した筐体3A”と出力軸3B”との相対的な回転が抑制される。
なお、実施形態10,11では、図10に示す回転ずれ防止部5の構成を採用したが、上記実施形態2〜4で開示した回転ずれ防止部の構成を採用してもよい。
[実施形態12]
実施形態12について、図22を参照して説明する。本実施形態では、口腔内加工装置1Gについて説明する。
本実施形態に係る口腔内加工装置1Gは、3つのモータ2と、被駆動部3とを備える。3つのモータ2は、保持部5Aに取り付けられており、口腔の外部に設置されている。また、被駆動部3は、歯牙及び骨を加工可能な加工ヘッド90を保持した状態で顎に固定される。口腔内加工装置1Gは、モータ2から被駆動部3に伝達された回転力に基づいて、加工ヘッド90の位置制御を行う。
本実施形態では、r軸(半径方向)、z軸(高さ方向)、θ軸(周方向)から成る円柱座標系で加工ヘッド90の位置制御が行われる。3つのモータ2は、それぞれr方向、z方向、θ方向に加工ヘッド90を駆動する。被駆動部3は、r方向運動変換部81と、z方向運動変換部82と、θ方向運動変換部83と、を備える。r方向運動変換部81と、z方向運動変換部82と、θ方向運動変換部83とは、それぞれ被駆動回転軸3Bを有しており、モータ2のモータ回転軸2Bと被駆動回転軸3Bとの間で伝達部4が接続されている。この伝達部4を介してモータ2の回転運動が被駆動回転軸3Bを有するr方向運動変換部81、z方向運動変換部82及びθ方向運動変換部83に伝達される。r方向運動変換部81、z方向運動変換部82及びθ方向運動変換部83は、伝達された回転運動にしたがって、アーム91を駆動して、加工ヘッド90の位置決めを行う。
また、本実施形態では、モータ2それぞれについて回転ずれ防止部5が設けられている。回転ずれ防止部5は、各モータ2を軸受5Bを介して回転可能に保持する台座5Aと、各モータ2と、被駆動部筐体3Aとを接続する同期部5Cとを備える。
本実施形態に係る口腔内加工装置1Gによれば、治療中に患者の顎がモータ2に対して動いたことに伴い、被駆動部3と各モータ2との回転ずれは生じない。このため、治療中に患者の顎が動いても、口腔内の治療箇所においてr、z、θ方向の加工誤差を低減することができる。
従来の歯科治療では、歯医者がハンドピースを用いて治療を行っていた。しかしながら、それでは歯医者の技量に大きく左右されるため、歯の切削加工の自動化が求められていた。本実施形態に係る口腔内加工装置1Gによれば、切削モデルをCAD/CAMデータとして作成し、そのデータに沿って歯を精度良く加工することができる。また、口腔内の歯を切削する工具の位置決め精度を向上することができる。この結果、歯の正確な加工を実現することができる。
また、上記各実施形態では、フレキシブルシャフトのような素材自体が撓むものに代えて、例えば、複数の剛体軸がユニバーサルジョイントを介して連結されて構成された伝達軸を用いてもよい。このような伝達軸を用いても、一端が接続された回転軸と他端が接続された回転軸との相対変位を許容しつつ、一端に接続された回転軸から伝達された回転力(回転運動)を他端に接続された回転軸に伝達することができるためである。また、上記各実施形態では、フレキシブルスリーブのような素材自体が撓むものに代えて、例えば、複数の剛体筒がユニバーサルジョイントを介して連結されて構成された筒状体を用いてもよい。このような筒状体を用いても、一端が接続された筐体と他端が接続された筐体との相対変位を許容しつつ、一端に接続された筐体から伝達された回転運動を他端に接続された筐体に伝達することができるためである。
もっとも、本発明は、口腔内の加工だけでなく、あらゆる目的の動力伝達装置に適用可能である。フレキシブルシャフトだけでなく、可撓性のない回転軸で動力を伝達する装置にも適用可能である。
また、上記実施形態8では、回転板18Aに重量分布の不均一さを与えたり、バネを取り付けるなどして、回転位置の原点(基準点)を定めることができるものとしたが、他の実施形態でも、例えば、モータ筐体2A又は筐体2A’,2A”等にカウンターウエイトを取り付け、モータ回転軸2Bまわりの回転方向に重要分布の不均一さを与えたり、バネを取り付けるなどして回転位置の原点(基準点)を定めるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、モータ2等と被駆動部3等をつなぐ部材(フレキシブルシャフトやフレキシブルスリーブ等)は、両端又は片端を着脱可能なものをそれぞれ採用することができる。
本発明は、その広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされる。上記実施形態は、本発明を説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、実施形態でなく、請求の範囲によって示される。請求の範囲内及びそれと同等の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本出願は、2017年3月27日に出願された日本国特許出願2017−060700号と、2017年7月7日に出願された日本国特許出願2017−134001号とに基づく。本明細書中に日本国特許出願2017−060700号と日本国特許出願2017−134001号との明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。