移動体通信システムの規格化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)において、無線区間についてはロングタームエボリューション(Long Term Evolution:LTE)と称し、コアネットワークおよび無線アクセスネットワーク(以下、まとめて、ネットワークとも称する)を含めたシステム全体構成については、システムアーキテクチャエボリューション(System Architecture Evolution:SAE)と称される通信方式が検討されている(例えば、非特許文献1〜4)。この通信方式は3.9G(3.9 Generation)システムとも呼ばれる。
LTEのアクセス方式としては、下り方向はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、上り方向はSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)が用いられる。また、LTEは、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)とは異なり、回線交換を含まず、パケット通信方式のみになる。
非特許文献1(5章)に記載される、3GPPでの、LTEシステムにおけるフレーム構成に関する決定事項について、図1を用いて説明する。図1は、LTE方式の通信システムで使用される無線フレームの構成を示す説明図である。図1において、1つの無線フレーム(Radio frame)は10msである。無線フレームは10個の等しい大きさのサブフレーム(Subframe)に分割される。サブフレームは、2個の等しい大きさのスロット(slot)に分割される。無線フレーム毎に1番目および6番目のサブフレームに下り同期信号(Downlink Synchronization Signal)が含まれる。同期信号には、第一同期信号(Primary Synchronization Signal:P−SS)と、第二同期信号(Secondary Synchronization Signal:S−SS)とがある。
3GPPでの、LTEシステムにおけるチャネル構成に関する決定事項が、非特許文献1(5章)に記載されている。CSG(Closed Subscriber Group)セルにおいてもnon−CSGセルと同じチャネル構成が用いられると想定されている。
物理報知チャネル(Physical Broadcast Channel:PBCH)は、基地局装置(以下、単に「基地局」という場合がある)から移動端末装置(以下、単に「移動端末」という場合がある)などの通信端末装置(以下、単に「通信端末」という場合がある)への下り送信用のチャネルである。BCHトランスポートブロック(transport block)は、40ms間隔中の4個のサブフレームにマッピングされる。40msタイミングの明白なシグナリングはない。
物理制御フォーマットインジケータチャネル(Physical Control Format Indicator Channel:PCFICH)は、基地局から通信端末への下り送信用のチャネルである。PCFICHは、PDCCHsのために用いるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルの数を、基地局から通信端末へ通知する。PCFICHは、サブフレーム毎に送信される。
物理下り制御チャネル(Physical Downlink Control Channel:PDCCH)は、基地局から通信端末への下り送信用のチャネルである。PDCCHは、後述のトランスポートチャネルの1つである下り共有チャネル(Downlink Shared Channel:DL−SCH)のリソース割り当て(allocation)情報、後述のトランスポートチャネルの1つであるページングチャネル(Paging Channel:PCH)のリソース割り当て(allocation)情報、DL−SCHに関するHARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)情報を通知する。PDCCHは、上りスケジューリンググラント(Uplink Scheduling Grant)を運ぶ。PDCCHは、上り送信に対する応答信号であるAck(Acknowledgement)/Nack(Negative Acknowledgement)を運ぶ。PDCCHは、L1/L2制御信号とも呼ばれる。
物理下り共有チャネル(Physical Downlink Shared Channel:PDSCH)は、基地局から通信端末への下り送信用のチャネルである。PDSCHには、トランスポートチャネルである下り共有チャネル(DL−SCH)、およびトランスポートチャネルであるPCHがマッピングされている。
物理マルチキャストチャネル(Physical Multicast Channel:PMCH)は、基地局から通信端末への下り送信用のチャネルである。PMCHには、トランスポートチャネルであるマルチキャストチャネル(Multicast Channel:MCH)がマッピングされている。
物理上り制御チャネル(Physical Uplink Control Channel:PUCCH)は、通信端末から基地局への上り送信用のチャネルである。PUCCHは、下り送信に対する応答信号(response signal)であるAck/Nackを運ぶ。PUCCHは、CQI(Channel Quality Indicator)レポートを運ぶ。CQIとは、受信したデータの品質、もしくは通信路品質を示す品質情報である。またPUCCHは、スケジューリングリクエスト(Scheduling Request:SR)を運ぶ。
物理上り共有チャネル(Physical Uplink Shared Channel:PUSCH)は、通信端末から基地局への上り送信用のチャネルである。PUSCHには、トランスポートチャネルの1つである上り共有チャネル(Uplink Shared Channel:UL−SCH)がマッピングされている。
物理HARQインジケータチャネル(Physical Hybrid ARQ Indicator Channel:PHICH)は、基地局から通信端末への下り送信用のチャネルである。PHICHは、上り送信に対する応答信号であるAck/Nackを運ぶ。物理ランダムアクセスチャネル(Physical Random Access Channel:PRACH)は、通信端末から基地局への上り送信用のチャネルである。PRACHは、ランダムアクセスプリアンブル(random access preamble)を運ぶ。
下り参照信号(リファレンスシグナル(Reference Signal):RS)は、LTE方式の通信システムとして既知のシンボルである。以下の5種類の下りリファレンスシグナルが定義されている。セル固有参照信号(Cell-specific Reference Signal:CRS)、MBSFN参照信号(MBSFN Reference Signal)、移動端末固有参照信号(UE-specific Reference Signal)であるデータ復調用参照信号(Demodulation Reference Signal:DM−RS)、位置決定参照信号(Positioning Reference Signal:PRS)、チャネル状態情報参照信号(Channel State Information Reference Signal:CSI−RS)。通信端末の物理レイヤの測定として、リファレンスシグナルの受信電力(Reference Signal Received Power:RSRP)測定がある。
非特許文献1(5章)に記載されるトランスポートチャネル(Transport channel)について、説明する。下りトランスポートチャネルのうち、報知チャネル(Broadcast Channel:BCH)は、その基地局(セル)のカバレッジ全体に報知される。BCHは、物理報知チャネル(PBCH)にマッピングされる。
下り共有チャネル(Downlink Shared Channel:DL−SCH)には、HARQ(Hybrid ARQ)による再送制御が適用される。DL−SCHは、基地局(セル)のカバレッジ全体への報知が可能である。DL−SCHは、ダイナミックあるいは準静的(Semi-static)なリソース割り当てをサポートする。準静的なリソース割り当ては、パーシステントスケジューリング(Persistent Scheduling)ともいわれる。DL−SCHは、通信端末の低消費電力化のために通信端末の間欠受信(Discontinuous reception:DRX)をサポートする。DL−SCHは、物理下り共有チャネル(PDSCH)へマッピングされる。
ページングチャネル(Paging Channel:PCH)は、通信端末の低消費電力を可能とするために通信端末のDRXをサポートする。PCHは、基地局(セル)のカバレッジ全体への報知が要求される。PCHは、動的にトラフィックに利用できる物理下り共有チャネル(PDSCH)のような物理リソースへマッピングされる。
マルチキャストチャネル(Multicast Channel:MCH)は、基地局(セル)のカバレッジ全体への報知に使用される。MCHは、マルチセル送信におけるMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)サービス(MTCHとMCCH)のSFN合成をサポートする。MCHは、準静的なリソース割り当てをサポートする。MCHは、PMCHへマッピングされる。
上りトランスポートチャネルのうち、上り共有チャネル(Uplink Shared Channel:UL−SCH)には、HARQ(Hybrid ARQ)による再送制御が適用される。UL−SCHは、ダイナミックあるいは準静的(Semi-static)なリソース割り当てをサポートする。UL−SCHは、物理上り共有チャネル(PUSCH)へマッピングされる。
ランダムアクセスチャネル(Random Access Channel:RACH)は、制御情報に限られている。RACHは、衝突のリスクがある。RACHは、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)へマッピングされる。
HARQについて説明する。HARQとは、自動再送要求(Automatic Repeat reQuest:ARQ)と誤り訂正(Forward Error Correction)との組合せによって、伝送路の通信品質を向上させる技術である。HARQには、通信品質が変化する伝送路に対しても、再送によって誤り訂正が有効に機能するという利点がある。特に、再送にあたって初送の受信結果と再送の受信結果との合成をすることで、更なる品質向上を得ることも可能である。
再送の方法の一例を説明する。受信側にて、受信データが正しくデコードできなかった場合、換言すればCRC(Cyclic Redundancy Check)エラーが発生した場合(CRC=NG)、受信側から送信側へ「Nack」を送信する。「Nack」を受信した送信側は、データを再送する。受信側にて、受信データが正しくデコードできた場合、換言すればCRCエラーが発生しない場合(CRC=OK)、受信側から送信側へ「Ack」を送信する。「Ack」を受信した送信側は次のデータを送信する。
非特許文献1(6章)に記載される論理チャネル(ロジカルチャネル:Logical channel)について、説明する。報知制御チャネル(Broadcast Control Channel:BCCH)は、報知システム制御情報のための下りチャネルである。論理チャネルであるBCCHは、トランスポートチャネルである報知チャネル(BCH)、あるいは下り共有チャネル(DL−SCH)へマッピングされる。
ページング制御チャネル(Paging Control Channel:PCCH)は、ページング情報(Paging Information)およびシステム情報(System Information)の変更を送信するための下りチャネルである。PCCHは、通信端末のセルロケーションをネットワークが知らない場合に用いられる。論理チャネルであるPCCHは、トランスポートチャネルであるページングチャネル(PCH)へマッピングされる。
共有制御チャネル(Common Control Channel:CCCH)は、通信端末と基地局との間の送信制御情報のためのチャネルである。CCCHは、通信端末がネットワークとの間でRRC接続(connection)を有していない場合に用いられる。下り方向では、CCCHは、トランスポートチャネルである下り共有チャネル(DL−SCH)へマッピングされる。上り方向では、CCCHは、トランスポートチャネルである上り共有チャネル(UL−SCH)へマッピングされる。
マルチキャスト制御チャネル(Multicast Control Channel:MCCH)は、1対多の送信のための下りチャネルである。MCCHは、ネットワークから通信端末への1つあるいはいくつかのMTCH用のMBMS制御情報の送信のために用いられる。MCCHは、MBMS受信中の通信端末のみに用いられる。MCCHは、トランスポートチャネルであるマルチキャストチャネル(MCH)へマッピングされる。
個別制御チャネル(Dedicated Control Channel:DCCH)は、1対1にて、通信端末とネットワークとの間の個別制御情報を送信するチャネルである。DCCHは、通信端末がRRC接続(connection)である場合に用いられる。DCCHは、上りでは上り共有チャネル(UL−SCH)へマッピングされ、下りでは下り共有チャネル(DL−SCH)にマッピングされる。
個別トラフィックチャネル(Dedicated Traffic Channel:DTCH)は、ユーザ情報の送信のための個別通信端末への1対1通信のチャネルである。DTCHは、上りおよび下りともに存在する。DTCHは、上りでは上り共有チャネル(UL−SCH)へマッピングされ、下りでは下り共有チャネル(DL−SCH)へマッピングされる。
マルチキャストトラフィックチャネル(Multicast Traffic channel:MTCH)は、ネットワークから通信端末へのトラフィックデータ送信のための下りチャネルである。MTCHは、MBMS受信中の通信端末のみに用いられるチャネルである。MTCHは、マルチキャストチャネル(MCH)へマッピングされる。
CGIとは、セルグローバル識別子(Cell Global Identifier)のことである。ECGIとは、E−UTRANセルグローバル識別子(E-UTRAN Cell Global Identifier)のことである。LTE、後述のLTE−A(Long Term Evolution Advanced)およびUMTS(Universal Mobile Telecommunication System)において、CSG(Closed Subscriber Group)セルが導入される。
CSG(Closed Subscriber Group)セルとは、利用可能な加入者をオペレータが特定しているセル(以下「特定加入者用セル」という場合がある)である。特定された加入者は、PLMN(Public Land Mobile Network)の1つ以上のセルにアクセスすることが許可される。特定された加入者がアクセスを許可されている1つ以上のセルを「CSGセル(CSG cell(s))」と呼ぶ。ただし、PLMNにはアクセス制限がある。
CSGセルは、固有のCSGアイデンティティ(CSG identity;CSG ID)を報知し、CSGインジケーション(CSG Indication)にて「TRUE」を報知するPLMNの一部である。予め利用登録し、許可された加入者グループのメンバーは、アクセス許可情報であるところのCSG IDを用いてCSGセルにアクセスする。
CSG IDは、CSGセルまたはセルによって報知される。LTE方式の通信システムにCSG IDは複数存在する。そして、CSG IDは、CSG関連のメンバーのアクセスを容易にするために、移動端末(UE)によって使用される。
通信端末の位置追跡は、1つ以上のセルからなる区域を単位に行われる。位置追跡は、待受け状態であっても通信端末の位置を追跡し、通信端末を呼び出す、換言すれば通信端末が着呼することを可能にするために行われる。この通信端末の位置追跡のための区域をトラッキングエリアと呼ぶ。
3GPPにおいて、Home−NodeB(Home−NB;HNB)、Home−eNodeB(Home−eNB;HeNB)と称される基地局が検討されている。UTRANにおけるHNB、およびE−UTRANにおけるHeNBは、例えば家庭、法人、商業用のアクセスサービス向けの基地局である。非特許文献2には、HeNBおよびHNBへのアクセスの3つの異なるモードが開示されている。具体的には、オープンアクセスモード(Open access mode)と、クローズドアクセスモード(Closed access mode)と、ハイブリッドアクセスモード(Hybrid access mode)とが開示されている。
また3GPPでは、リリース10として、ロングタームエボリューションアドヴァンスド(Long Term Evolution Advanced:LTE−A)の規格策定が進められている(非特許文献3、非特許文献4参照)。LTE−Aは、LTEの無線区間通信方式を基本とし、それにいくつかの新技術を加えて構成される。
LTE−Aシステムでは、100MHzまでのより広い周波数帯域幅(transmission bandwidths)をサポートするために、二つ以上のコンポーネントキャリア(Component Carrier:CC)を集約する(「アグリゲーション(aggregation)する」とも称する)、キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation:CA)が検討されている。CAについては、非特許文献1に記載されている。
CAが構成される場合、移動端末はネットワーク(Network:NW)と唯一つのRRC接続(RRC connection)を有する。RRC接続において、一つのサービングセルがNASモビリティ情報とセキュリティ入力を与える。このセルをプライマリセル(Primary Cell:PCell)と呼ぶ。下りリンクで、PCellに対応するキャリアは、下りプライマリコンポーネントキャリア(Downlink Primary Component Carrier:DL PCC)である。上りリンクで、PCellに対応するキャリアは、上りプライマリコンポーネントキャリア(Uplink Primary Component Carrier:UL PCC)である。
移動端末の能力(ケーパビリティ(capability))に応じて、セカンダリセル(Secondary Cell:SCell)が、PCellとともに、サービングセルの組を形成するために構成される。下りリンクで、SCellに対応するキャリアは、下りセカンダリコンポーネントキャリア(Downlink Secondary Component Carrier:DL SCC)である。上りリンクで、SCellに対応するキャリアは、上りセカンダリコンポーネントキャリア(Uplink Secondary Component Carrier:UL SCC)である。
一つのPCellと一つ以上のSCellとからなるサービングセルの組が、一つの移動端末に対して構成される。
また、LTE−Aでの新技術としては、より広い帯域をサポートする技術(Wider bandwidth extension)、および多地点協調送受信(Coordinated Multiple Point transmission and reception:CoMP)技術などがある。3GPPでLTE−Aのために検討されているCoMPについては、非特許文献1に記載されている。
モバイルネットワークのトラフィック量は、増加傾向にあり、通信速度も高速化が進んでいる。LTEおよびLTE−Aが本格的に運用を開始されると、更に通信速度が高速化されることが見込まれる。
また、3GPPにおいて、将来の膨大なトラフィックに対応するために、スモールセルを構成するスモールeNB(以下「小規模基地局装置」という場合がある)を用いることが検討されている。例えば、多数のスモールeNBを設置して、多数のスモールセルを構成することによって、周波数利用効率を高めて、通信容量の増大を図る技術などが検討されている。具体的には、移動端末が2つのeNBと接続して通信を行うデュアルコネクティビティ(Dual Connectivity;略称:DC)などがある。DCについては、非特許文献1に記載されている。
デュアルコネクティビティ(DC)を行うeNBのうち、一方を「マスターeNB(略称:MeNB)」といい、他方を「セカンダリeNB(略称:SeNB)」という場合がある。
さらに、高度化する移動体通信に対して、2020年以降にサービスを開始することを目標とした第5世代(以下「5G」という場合がある)無線アクセスシステムが検討されている。例えば、欧州では、METISという団体で5Gの要求事項がまとめられている(非特許文献5参照)。
5G無線アクセスシステムでは、LTEシステムに対して、システム容量は1000倍、データの伝送速度は100倍、データの処理遅延は10分の1(1/10)、通信端末の同時接続数は100倍として、更なる低消費電力化、および装置の低コスト化を実現することが要件として挙げられている。
このような要求を満たすために、周波数を広帯域で使用してデータの伝送容量を増やすこと、および、周波数利用効率を上げてデータの伝送速度を上げることが検討されている。これらを実現するために、空間多重を可能とする、多素子アンテナを用いたMIMO(Multiple Input Multiple Output)およびビームフォーミングなどの技術が検討されている。
また、LTE−AにおいてもMIMOの検討は引き続き行われており、MIMOの拡張としてRelease13より、2次元のアンテナアレイを用いるFD(Full Dimension)−MIMOが検討されている。FD−MIMOについては非特許文献6に記載されている。
5G無線アクセスシステムは、2020年から予定されているサービス開始当初は、LTEシステムと混在して配置されることが検討されている。LTE基地局と5G基地局とをDC構成で接続し、LTE基地局をMeNBとし、5G基地局をSeNBとすることで、セル範囲の大きいLTE基地局でC−planeデータを処理し、LTE基地局と5G基地局とでU−plane処理をする構成が考えられている。
実施の形態1.
図2は、3GPPにおいて議論されているLTE方式の通信システム200の全体的な構成を示すブロック図である。図2について説明する。無線アクセスネットワークは、E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)201と称される。通信端末装置である移動端末装置(以下「移動端末(User Equipment:UE)」という)202は、基地局装置(以下「基地局(E-UTRAN NodeB:eNB)」という)203と無線通信可能であり、無線通信で信号の送受信を行う。
ここで、「通信端末装置」とは、移動可能な携帯電話端末装置などの移動端末装置だけでなく、センサなどの移動しないデバイスも含んでいる。以下の説明では、「通信端末装置」を、単に「通信端末」という場合がある。
移動端末202に対する制御プロトコル、例えばRRC(Radio Resource Control)と、ユーザプレイン、例えばPDCP(Packet Data Convergence Protocol)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Medium Access Control)、PHY(Physical layer)とが基地局203で終端するならば、E−UTRANは1つあるいは複数の基地局203によって構成される。
移動端末202と基地局203との間の制御プロトコルRRC(Radio Resource Control)は、報知(Broadcast)、ページング(paging)、RRC接続マネージメント(RRC connection management)などを行う。RRCにおける基地局203と移動端末202との状態として、RRC_IDLEと、RRC_CONNECTEDとがある。
RRC_IDLEでは、PLMN(Public Land Mobile Network)選択、システム情報(System Information:SI)の報知、ページング(paging)、セル再選択(cell re-selection)、モビリティなどが行われる。RRC_CONNECTEDでは、移動端末はRRC接続(connection)を有し、ネットワークとのデータの送受信を行うことができる。またRRC_CONNECTEDでは、ハンドオーバ(Handover:HO)、隣接セル(Neighbour cell)の測定(メジャメント(measurement))などが行われる。
基地局203は、eNB207と、Home−eNB206とに分類される。通信システム200は、複数のeNB207を含むeNB群203−1と、複数のHome−eNB206を含むHome−eNB群203−2とを備える。またコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)と、無線アクセスネットワークであるE−UTRAN201とで構成されるシステムは、EPS(Evolved Packet System)と称される。コアネットワークであるEPCと、無線アクセスネットワークであるE−UTRAN201とを合わせて、「ネットワーク」という場合がある。
eNB207は、移動管理エンティティ(Mobility Management Entity:MME)、あるいはS−GW(Serving Gateway)、あるいはMMEおよびS−GWを含むMME/S−GW部(以下「MME部」という場合がある)204とS1インタフェースにより接続され、eNB207とMME部204との間で制御情報が通信される。一つのeNB207に対して、複数のMME部204が接続されてもよい。eNB207間は、X2インタフェースにより接続され、eNB207間で制御情報が通信される。
Home−eNB206は、MME部204とS1インタフェースにより接続され、Home−eNB206とMME部204との間で制御情報が通信される。一つのMME部204に対して、複数のHome−eNB206が接続される。あるいは、Home−eNB206は、HeNBGW(Home-eNB GateWay)205を介してMME部204と接続される。Home−eNB206とHeNBGW205とは、S1インタフェースにより接続され、HeNBGW205とMME部204とはS1インタフェースを介して接続される。
一つまたは複数のHome−eNB206が一つのHeNBGW205と接続され、S1インタフェースを通して情報が通信される。HeNBGW205は、一つまたは複数のMME部204と接続され、S1インタフェースを通して情報が通信される。
MME部204およびHeNBGW205は、上位装置、具体的には上位ノードであり、基地局であるeNB207およびHome−eNB206と、移動端末(UE)202との接続を制御する。MME部204は、コアネットワークであるEPCを構成する。基地局203およびHeNBGW205は、E−UTRAN201を構成する。
さらに3GPPでは、以下のような構成が検討されている。Home−eNB206間のX2インタフェースはサポートされる。すなわち、Home−eNB206間は、X2インタフェースにより接続され、Home−eNB206間で制御情報が通信される。MME部204からは、HeNBGW205はHome−eNB206として見える。Home−eNB206からは、HeNBGW205はMME部204として見える。
Home−eNB206が、HeNBGW205を介してMME部204に接続される場合および直接MME部204に接続される場合のいずれの場合も、Home−eNB206とMME部204との間のインタフェースは、S1インタフェースで同じである。
基地局203は、1つのセルを構成してもよいし、複数のセルを構成してもよい。各セルは、移動端末202と通信可能な範囲であるカバレッジとして予め定める範囲を有し、カバレッジ内で移動端末202と無線通信を行う。1つの基地局203が複数のセルを構成する場合、1つ1つのセルが、移動端末202と通信可能に構成される。
図3は、本発明に係る通信端末である図2に示す移動端末202の構成を示すブロック図である。図3に示す移動端末202の送信処理を説明する。まず、プロトコル処理部301からの制御データ、およびアプリケーション部302からのユーザデータが、送信データバッファ部303へ保存される。送信データバッファ部303に保存されたデータは、エンコーダー部304へ渡され、誤り訂正などのエンコード処理が施される。エンコード処理を施さずに、送信データバッファ部303から変調部305へ直接出力されるデータが存在してもよい。エンコーダー部304でエンコード処理されたデータは、変調部305にて変調処理が行われる。変調されたデータは、ベースバンド信号に変換された後、周波数変換部306へ出力され、無線送信周波数に変換される。その後、アンテナ307から基地局203に送信信号が送信される。
また、移動端末202の受信処理は、以下のように実行される。基地局203からの無線信号がアンテナ307により受信される。受信信号は、周波数変換部306にて無線受信周波数からベースバンド信号に変換され、復調部308において復調処理が行われる。復調後のデータは、デコーダー部309へ渡され、誤り訂正などのデコード処理が行われる。デコードされたデータのうち、制御データはプロトコル処理部301へ渡され、ユーザデータはアプリケーション部302へ渡される。移動端末202の一連の処理は、制御部310によって制御される。よって制御部310は、図3では省略しているが、各部301〜309と接続している。
図4は、本発明に係る基地局である図2に示す基地局203の構成を示すブロック図である。図4に示す基地局203の送信処理を説明する。EPC通信部401は、基地局203とEPC(MME部204など)、HeNBGW205などとの間のデータの送受信を行う。他基地局通信部402は、他の基地局との間のデータの送受信を行う。EPC通信部401および他基地局通信部402は、それぞれプロトコル処理部403と情報の受け渡しを行う。プロトコル処理部403からの制御データ、ならびにEPC通信部401および他基地局通信部402からのユーザデータおよび制御データは、送信データバッファ部404へ保存される。
送信データバッファ部404に保存されたデータは、エンコーダー部405へ渡され、誤り訂正などのエンコード処理が施される。エンコード処理を施さずに、送信データバッファ部404から変調部406へ直接出力されるデータが存在してもよい。エンコードされたデータは、変調部406にて変調処理が行われる。変調されたデータは、ベースバンド信号に変換された後、周波数変換部407へ出力され、無線送信周波数に変換される。その後、アンテナ408より一つもしくは複数の移動端末202に対して送信信号が送信される。
また、基地局203の受信処理は以下のように実行される。一つもしくは複数の移動端末202からの無線信号が、アンテナ408により受信される。受信信号は、周波数変換部407にて無線受信周波数からベースバンド信号に変換され、復調部409で復調処理が行われる。復調されたデータは、デコーダー部410へ渡され、誤り訂正などのデコード処理が行われる。デコードされたデータのうち、制御データはプロトコル処理部403あるいはEPC通信部401、他基地局通信部402へ渡され、ユーザデータはEPC通信部401および他基地局通信部402へ渡される。基地局203の一連の処理は、制御部411によって制御される。よって制御部411は、図4では省略しているが、各部401〜410と接続している。
図5は、本発明に係るMMEの構成を示すブロック図である。図5では、前述の図2に示すMME部204に含まれるMME204aの構成を示す。PDN GW通信部501は、MME204aとPDN GWとの間のデータの送受信を行う。基地局通信部502は、MME204aと基地局203との間のS1インタフェースによるデータの送受信を行う。PDN GWから受信したデータがユーザデータであった場合、ユーザデータは、PDN GW通信部501から、ユーザプレイン通信部503経由で基地局通信部502に渡され、1つあるいは複数の基地局203へ送信される。基地局203から受信したデータがユーザデータであった場合、ユーザデータは、基地局通信部502から、ユーザプレイン通信部503経由でPDN GW通信部501に渡され、PDN GWへ送信される。
PDN GWから受信したデータが制御データであった場合、制御データは、PDN GW通信部501から制御プレイン制御部505へ渡される。基地局203から受信したデータが制御データであった場合、制御データは、基地局通信部502から制御プレイン制御部505へ渡される。
HeNBGW通信部504は、HeNBGW205が存在する場合に設けられ、情報種別によって、MME204aとHeNBGW205との間のインタフェース(IF)によるデータの送受信を行う。HeNBGW通信部504から受信した制御データは、HeNBGW通信部504から制御プレイン制御部505へ渡される。制御プレイン制御部505での処理の結果は、PDN GW通信部501経由でPDN GWへ送信される。また、制御プレイン制御部505で処理された結果は、基地局通信部502経由でS1インタフェースにより1つあるいは複数の基地局203へ送信され、またHeNBGW通信部504経由で1つあるいは複数のHeNBGW205へ送信される。
制御プレイン制御部505には、NASセキュリティ部505−1、SAEベアラコントロール部505−2、アイドルステート(Idle State)モビリティ管理部505−3などが含まれ、制御プレインに対する処理全般を行う。NASセキュリティ部505−1は、NAS(Non-Access Stratum)メッセージのセキュリティなどを行う。SAEベアラコントロール部505−2は、SAE(System Architecture Evolution)のベアラの管理などを行う。アイドルステートモビリティ管理部505−3は、待受け状態(アイドルステート(Idle State);LTE−IDLE状態、または、単にアイドルとも称される)のモビリティ管理、待受け状態時のページング信号の生成および制御、傘下の1つあるいは複数の移動端末202のトラッキングエリアの追加、削除、更新、検索、トラッキングエリアリスト管理などを行う。
MME204aは、1つまたは複数の基地局203に対して、ページング信号の分配を行う。また、MME204aは、待受け状態(Idle State)のモビリティ制御(Mobility control)を行う。MME204aは、移動端末が待ち受け状態のとき、および、アクティブ状態(Active State)のときに、トラッキングエリア(Tracking Area)リストの管理を行う。MME204aは、UEが登録されている(registered)追跡領域(トラッキングエリア:Tracking Area)に属するセルへ、ページングメッセージを送信することで、ページングプロトコルに着手する。MME204aに接続されるHome−eNB206のCSGの管理、CSG IDの管理、およびホワイトリストの管理は、アイドルステートモビリティ管理部505−3で行われてもよい。
次に通信システムにおけるセルサーチ方法の一例を示す。図6は、LTE方式の通信システムにおいて通信端末(UE)が行うセルサーチから待ち受け動作までの概略を示すフローチャートである。通信端末は、セルサーチを開始すると、ステップST601で、周辺の基地局から送信される第一同期信号(P−SS)、および第二同期信号(S−SS)を用いて、スロットタイミング、フレームタイミングの同期をとる。
P−SSとS−SSとを合わせて、同期信号(Synchronization Signal:SS)という。同期信号(SS)には、セル毎に割り当てられたPCIに1対1に対応するシンクロナイゼーションコードが割り当てられている。PCIの数は504通りが検討されている。この504通りのPCIを用いて同期をとるとともに、同期がとれたセルのPCIを検出(特定)する。
次に同期がとれたセルに対して、ステップST602で、基地局からセル毎に送信される参照信号(リファレンスシグナル:RS)であるセル固有参照信号(Cell-specific Reference Signal:CRS)を検出し、RSの受信電力(Reference Signal Received Power:RSRP)の測定を行う。参照信号(RS)には、PCIと1対1に対応したコードが用いられている。そのコードで相関をとることによって他セルと分離できる。ステップST601で特定したPCIから、該セルのRS用のコードを導出することによって、RSを検出し、RSの受信電力を測定することが可能となる。
次にステップST603で、ステップST602までで検出された一つ以上のセルの中から、RSの受信品質が最もよいセル、例えば、RSの受信電力が最も高いセル、つまりベストセルを選択する。
次にステップST604で、ベストセルのPBCHを受信して、報知情報であるBCCHを得る。PBCH上のBCCHには、セル構成情報が含まれるMIB(Master Information Block)がマッピングされる。したがって、PBCHを受信してBCCHを得ることで、MIBが得られる。MIBの情報としては、例えば、DL(ダウンリンク)システム帯域幅(送信帯域幅設定(transmission bandwidth configuration:dl-bandwidth)とも呼ばれる)、送信アンテナ数、SFN(System Frame Number)などがある。
次にステップST605で、MIBのセル構成情報をもとに該セルのDL−SCHを受信して、報知情報BCCHの中のSIB(System Information Block)1を得る。SIB1には、該セルへのアクセスに関する情報、セルセレクションに関する情報、他のSIB(SIBk;k≧2の整数)のスケジューリング情報が含まれる。また、SIB1には、トラッキングエリアコード(Tracking Area Code:TAC)が含まれる。
次にステップST606で、通信端末は、ステップST605で受信したSIB1のTACと、通信端末が既に保有しているトラッキングエリアリスト内のトラッキングエリア識別子(Tracking Area Identity:TAI)のTAC部分とを比較する。トラッキングエリアリストは、TAIリスト(TAI list)とも称される。TAIはトラッキングエリアを識別するための識別情報であり、MCC(Mobile Country Code)と、MNC(Mobile Network Code)と、TAC(Tracking Area Code)とによって構成される。MCCは国コードである。MNCはネットワークコードである。TACはトラッキングエリアのコード番号である。
通信端末は、ステップST606で比較した結果、ステップST605で受信したTACがトラッキングエリアリスト内に含まれるTACと同じならば、該セルで待ち受け動作に入る。比較して、ステップST605で受信したTACがトラッキングエリアリスト内に含まれなければ、通信端末は、該セルを通して、MMEなどが含まれるコアネットワーク(Core Network,EPC)へ、TAU(Tracking Area Update)を行うためにトラッキングエリアの変更を要求する。
コアネットワークを構成する装置(以下「コアネットワーク側装置」という場合がある)は、TAU要求信号とともに通信端末から送られてくる該通信端末の識別番号(UE−IDなど)をもとに、トラッキングエリアリストの更新を行う。コアネットワーク側装置は、通信端末に更新後のトラッキングエリアリストを送信する。通信端末は、受信したトラッキングエリアリストに基づいて、通信端末が保有するTACリストを書き換える(更新する)。その後、通信端末は、該セルで待ち受け動作に入る。
以下は、例えば、通信状況の変化に応じて基本ビームを変更することによって通信を維持する技術に関する。
5Gシステムでは大容量通信が必要条件とされるため、高い搬送波周波数で広帯域を使用する必要がある。しかし、搬送波周波数が高いことによる伝搬ロス対策を要する。この伝搬ロスを補うために、基地局だけではなく、移動端末においても、超多素子アンテナによりビーム形成を行うことが検討されている。多素子アンテナでは、以下の2通りの方式が検討されている。
1つ方式は、アンテナ素子毎にAD(Analog-to-Digital Converter)およびDA(Digital-to-Analog Converter)を設けてビーム形成をする方法である。アンテナゲインが低いため演算精度の確保が難しい。また、SN比(Signal-to-Noise Ratio)向上のための演算およびビームのnullを形成するための演算が、素子数の3乗オーダで増加することが知られており、処理量削減のための様々な検討が必要となる。なお、以下ではSN比をSNと呼ぶ場合もある。
例えば、2段階でビームを形成する方法が知られている。指向性可変アンテナによれば、同一信号を、各アンテナの素子から同じ位相で放射すると、放射面に対して垂直(真正面)の方向に指向性が絞られた信号を送出できる。各素子から放出する同一信号の位相を、各素子間の距離×sinθになるように調整すると、送信方向(すなわち指向性)をθずらしたビームを形成できる。このようにして、初段で、指向性を絞った複数の基本ビームを形成し、アンテナゲインを得ることで、SNを向上でき、演算精度を高くすることができる。それと同時に、{アンテナ素子数}>{初段ビーム数}なので、2段目では、初段のビームを使ってnullを形成するための演算量を低減できる。図7を参照。
もう1つの方式は、初段はアナログで複数アンテナ素子を構成し、所望のビーム形成を行う。このときには、初段のアナログビームは、例えばホーンアンテナまたはセクタアンテナを用いることで、あるいは、アナログ的に位相を可変にすることで、指向性を絞ったビームで形成する。2段目は、上記の1つの目方式と同様に初段のビームをデジタルで形成するハイブリッド方式である。図8を参照。
上記のいずれの方式でも、基地局と移動端末の両方において2段階でビームを形成する場合、移動端末は、移動端末の初段ビーム(n個のビームとする)を用いて、基地局の初段ビーム(m個のビームとする)で送信された既知系列データを受信することで、n×mの伝送路を推定する。この推定した伝送路を用いて例えばダイバーシチおよび等化処理を行って、スループットを向上させる。特に、ビーム間の干渉を除去するには、上記n×mの伝送路の逆特性を移動端末の送信データにプリコーディングウェイトとして乗算することで2段目のビームを形成すると有効である。このウェイト算出は、例えばn×mの伝送路の行列の逆行列を算出することで実行できる。逆行列を送信データに乗算することで行列の対角成分のみが残りビーム間のクロスファクタがなくなることから、ビーム間の干渉を除去できる。
しかしながら、移動端末では、移動等によって通信状況が変化するので、初段ビームが刻一刻と変化する。このため、伝送路推定を誤り、基地局において正しいプリコーディングができないという問題が発生する。
本実施の形態1は、上記の課題を解決する。以下は、例えば、ビーム消失時の再捕捉に関する。
移動端末の初段ビームは、全エリアを複数の初段ビームでカバーするのが理想的である。しかし、通信していない方向に指向性を向けることで、所望の方向に指向性を絞ることができずアンテナゲインを得ることができない。そのため、対向する基地局の方向に指向性を向けることが有効である。あるいは、基地局からの信号が、直接到来してきた方向、または、反射や回析をしながら到来してきた方向に、指向性を向けることが有効である。また、現に通信している基地局以外にも、PSS(Primary Synchronization Signal)またはSSS(Secondary Synchronization Signal)を送信しているすべての基地局およびリピータに対して、初段ビームを向けるのが有効である。
そのため、移動端末は、基地局が伝送路の変動をモニタできるようにするために間欠的にsoundingと呼ばれる信号に相当する既知系列信号を送信する。この信号は、初段ビームの指向性で送信する。また、移動端末は、通信していない時間にビームの指向性を変化させ、移動等により伝送路が変化していないかについて周辺の空間を順次モニタしてもよい。
例えば移動端末が移動するあるいは移動端末を傾けることで、初段ビームから推定できる伝送路が大きく変化した場合、対向する基地局からの既知系列データの受信信号が消失するあるいは微弱になることから、移動端末は伝送路の変化を検出する。SNが或る閾値より小さくなって伝送路の変化を検出したときには、通信中であれば、データ通信/sounding通信を停止し、データ通信する予定の時間帯も使って全空間のモニタを行う。基地局が送信している既知系列データを見つけた場合、当該基地局に向けて初段ビームを形成しsounding信号を送信するとよい。
同一方向に複数の基地局アンテナが存在し、移動端末の複数アンテナとの相関が低い伝送路(リンク)が複数存在する場合、移動端末の複数アンテナを当該方向に向けるとその分だけ複数のアンテナから同時に異なるデータを送受信でき、有効である。
図9に、処理フローの詳細な例を示す。
移動端末および基地局は、初期の同期確立時にビーム検出手順St901を実施する。基地局は、報知情報により、ランダムアクセス用のビームがどのような周波数、タイミングおよび符号(拡散コードのシード等)で形成されるかを通知する。移動端末は、報知情報を受信し、受信した報知情報に基づき周辺セル/ビームサーチを行うことで基地局の各々のビームが移動端末の各々のビーム間とどのような伝送路になっているかモニタし、品質が良い伝送路から順序付けを行う。
次に、移動端末および基地局は、通信確立手順St902を実施する。移動端末は、St901で見つけた基地局ビームのうちで受付可能な基地局に対して、ランダムアクセスチャネル等でチャネル設定要求を送信する。その際、移動端末は、移動端末の初段ビームを合成して指向性を高めた2段目のビームの指向性で、上記の受付可能な基地局に対してチャネル設定要求を送信する。また、移動端末は、基地局ビームのリソース(周波数、タイミングおよび符号(拡散コードのシード等))に合わせて、チャネル設定要求を送信する。移動端末の周辺モニタ周期の速度に合わせてランダムアクセスの指向性(半値幅)を調整すると、伝搬環境の変化に対応でき、通信確立できる可能性が向上する。具体的には、ランダムアクセスではないときの通常時の半値幅がA(°)、移動端末の周辺モニタ周期がC(ms)、移動端末の移動などによる伝搬環境の変化の速度を移動端末で平均化することで3dB変動する平均時間がD(ms)であるとすると、A×C/D(°)とするのも有効である。
手順St903以降のフローは、例えば移動端末の向きが変わることにより、対向する基地局からの既知系列データ(DMRS、あるいは、CSI−RS)の受信信号が消失したあるいは微弱になった場合のフローである。
手順St903では、移動端末は、通常通信と、各ビームのSNの測定とを並行して行う。移動端末は、基地局から既知系列が初段ビームの指向性で送信されている場合には初段ビームの既知系列をモニタし、該既知系列が2段目のビームの指向性で送信されている場合には2段目のビームの既知系列をモニタする。既知系列のモニタにより、SNを測定する。一般に通信チャネルは2段目のビームで形成するので、2段目のビームの指向性で送信されるDMRS/CSI−RSをモニタする。
手順St904では、移動端末は、通信に使用している2段目のビームの全てのSNが、通信品質を維持できる或る閾値以下になったか否かを判別する。
全ての2段目のビームのSNが閾値以下であるという条件を満足しない場合、すなわち通信に使用している2段目のビームの少なくとも1つのSNが閾値よりも大きい場合、移動端末は、手順St903を継続する。
これに対し、全ての2段目のビームのSNが閾値以下である場合、移動端末は、通信中であれば、データ通信/sounding通信を停止し、ビーム消失通知を送信する(手順St905)。ビーム消失通知は、通信の状態遷移の簡素化から、個別/共有チャネル(PUSCH/PUCCH)を用いて送信することが望ましい。あるいは、通信が切断しないことが重要なので、ビーム消失通知にランダムアクセスを用いてもよい。あるいは、通信が切断しないことが重要なので、ビームの指向性(半値幅)の観点からは、半値幅を最大にして、あるいは、ビームをオムニビームにして、ビーム消失通知を送信することも有効である。
移動端末は、ビーム消失通知の応答を待ちながら、ビーム再検出手順St906を開始する。また、St906の最中、半値幅を最大にして、あるいは、ビームをオムニビームにして、基地局とのデータ通信を継続するのも有効である。基地局の方向を見失っても、オムニビームであれば、伝送レートを遅くすることで通信の継続が期待できる。
以上により、移動端末からビーム消失通知を送信することで、早期にビーム間の伝送路品質を復旧することが可能となる。
図10に、移動端末に加えて、基地局でもビーム検出を行う例を示す。図10のフローは図9のフローに基地局における手順が追加されたものであり、既述の手順については同じ参照符号を用いることで、重複の説明を省略する。
移動端末側では、ビームを識別できない場合に闇雲にビームを送信することはできない。移動端末がビームを短時間検出できなくても、基地局側では、伝送路がすぐに復旧することを考慮して、しばらく待つことも有効である。例えば、移動端末と基地局との間にトラックが走り抜けたときのようなケースがこれに該当する。そのため、基地局は、移動端末における手順St903と同様に、St903bにおいて通常通信を行いつつ各ビームのSNを測定し、移動端末における手順St904と同様に、St904bにおいて当該移動端末向けの全ての2段目ビームのSNが、通信品質を維持できる或る閾値以下になったか否かを判別する。
全ての2段目ビームのSNが閾値以下である場合、基地局は手順St907においてビーム再検出手順開始待ちのタイマを起動する。閾値以上のビームが規定回数得られないとタイムアウトになり(手順St908,St903b,St904b,St907のループを参照)、基地局はビーム再検出手順St906を実行する。
なお、手順St904bにおいて、全ての2段目ビームのSNが閾値以下であるという条件を満足しない場合、すなわち2段目のビームの少なくとも1つのSNが閾値よりも大きい場合、基地局は、手順St909において上記タイマをクリアし、手順St903bに戻る。
以上により、移動端末からビーム消失通知St905を受信できないときでも、基地局が自律的にビーム再検出手順を開始できる。
上記では簡便のため、St904bで{全ての2段目ビームのSN}<{閾値}という条件を満足する回数を以って、タイムアウトとなる例を説明した。これに替えて、基地局において、タイマを起動し、予め定めた時間の経過を以ってタイムアウトする方法も有効である。タイムアウトするまでの時間は、OAM(Operation Administration and Maintenance)等の上位装置から規定してもよいし、あるいは、基地局の起動パラメータとして不揮発性メモリに格納しておいてもよい。
図11に、さらに別の処理フローの例を示す。図11のフローは図9のフローにMeNBにおける手順が追加されたものであり、既述の手順については同じ参照符号を用いることで、重複の説明を省略する。
図11は、基地局がdual−connectivityを行っており、MeNBでのみ共通チャネルを扱っている場合に関する。図11によれば、手順St904において移動端末が{全ての2段目ビームのSN}<{閾値}となったことを判別すると、手順St1001において移動端末はビーム消失通知を、通信中のSeNBではなく、MeNBに送信する。この際、移動端末はオムニビームによって、ビーム消失通知をMeNBに送信する。MeNBは、ビーム消失通知を受信すると、手順St1002においてビーム再検出指示をSeNBに通知する。これにより、ビーム再検出手順St906が開始される。
以上のように、MeNBに通知するビーム消失通知、および、SeNBに指示するビーム再検出指示メッセージを設けることにより、移動端末がビームを検出できなくなっても早期にビーム間の伝送路品質を復旧することが可能となる。
ここで、図9〜図11の例において、オムニビームあるいは最大の半値幅のビームで、基地局から移動端末にビーム消失通知の応答を返せば、移動端末がビーム消失通知を繰り返し送信することを停止させることが可能となる。それにより、トータルでの無線リソースの効率化を実現できる。
次に、ビーム消失通知を送信する送信電力について説明する。
一般に、多素子アンテナを使用する場合、指向性を絞ることでアンテナ利得を得て、高い搬送波周波数でも通信できるようにする。dense−urbanモデルのような街中のケースでは、指向性を絞ることで移動端末からの送信信号が、通信中以外の基地局に対して干渉しないようにすることが、システムトータルでの通信容量を向上させる点においても、重要となる。
このようなケースでは、図9の例においてビーム消失通知をオムニの指向性で送信する場合、送信電力を以下のようにすると干渉を低減できる。
移動端末は、通信を実施および維持するために、初段ビームおよび2段目ビームの指向性でsounding相当の既知系列を送信するとともに、オムニの指向性でsounding相当の既知系列を送信する。送信は、時間的、周波数的および符号的に間欠で行えばよい。基地局は、初段ビームおよび2段目ビームだけでなく、オムニビームについても、品質測定、例えばSN測定を行う。オムニビームのSNが低い場合でも、オムニビームは、通信している2段目ビームと完全に同期しているので、オムニビームのSNを正確に把握できる。基地局は、定期的に移動端末がオムニビームで送信した信号のSN測定結果を、移動端末に通知するのが望ましい(RRC/PUSCHあるいはPUCCH)。移動端末は、いざビーム消失通知を送信するときには、いちばん最近受信した、オムニビームのSNを使用して、ビーム消失通知を送信するためのオムニビームの送信電力を決定する。
上記では基地局が測定したオムニビームのSNを通知する例を示したが、SN以外の情報を通知してもよい。例えば、基地局の受信性能が基地局によって変わることを考慮して、移動端末がビーム消失通知をオムニビームで送信するための電力の情報を通知してもよい。
例えば、オムニビームの送信電力をあと何dB増加すれば(あるいは、あと何dB減少しても)基地局が受信可能なSNで以てビーム消失通知が基地局に到達可能であるかについて、通知するのも有効である。
あるいは、例えば、指向性ビームに比べてオムニビームが何dB低く見えるか(あるいは高く見えるか)を通知するのも有効である。移動端末は、通信中の変調多値数、符号化率等と、ビーム消失通知に使用する変調多値数、符号化率等とを考慮して、送信電力を決定することができる。
以上のように、移動端末が、通信中の基地局のSNをモニタし、基地局信号が消失したことを検出し、基地局信号が消失した場合には基地局信号を消失したことを、指向性を広くした信号で基地局に伝えることにより、基地局と移動端末とのリンクの再確立を早く行うことが可能となり、通信の維持が可能となる。
実施の形態1によれば、例えば次のような構成が提供される。
移動端末と、移動端末と無線通信可能に接続される基地局と、を備える通信システムが提供される。より具体的には、移動端末は、ビームによる無線通信を行う。移動端末は、基地局との通信品質を維持できない状態であるビーム消失状態を検出すると、ビーム消失状態であることの通知を、ビーム消失状態の検出前よりも半値幅が広いビームによって送信する。
また、移動端末と、移動端末と無線通信可能に接続される基地局と、を備える通信システムが提供される。より具体的には、移動端末は、ビームによる無線通信を行う。移動端末は、第1の基地局との間で通信品質を維持できない状態であるビーム消失状態を検出すると、ビーム消失状態であることの通知を、第1の基地局とデュアルコネクティビティを構成している第2の基地局に送信する。第2の基地局は、ビーム消失状態であることの通知を受信すると、第1の基地局に対して、移動端末との間でビーム再検出処理を行うように指示する。
かかる構成によれば、上記の課題を解決し、上記の効果を得ることができる。
実施の形態2.
実施の形態2は、例えば、通信状況の変化に応じて基本ビームを変更することによって通信を維持する技術に関し、さらには移動端末のビームの指定に関する。
実施の形態1と同様に基地局と移動端末の両方において2段階でビーム形成する場合、基地局が移動端末のビームを特定できないと、スループットに影響する。具体的には、基地局は、移動端末から既知系列のデータを受信し、この受信データから伝送路推定値を取得し、伝送路推定値に基づいて、形成するビームを決める。しかし、移動端末のビームを特定できない場合、基地局はどのようなビームを形成すればスループットを改善できるかを決めることができない、という課題がある。
例えば、2つのビームの相関が高く分離しにくい場合、ビーム毎に異なるデータを送信するのではなく、同一データを送信することが有効である。それによれば、SNが向上してスループットが改善するからである。一方、2つのビームの相関が低い場合、ビーム毎に異なるデータを送信することで最大スループットを上げ、それにより実質スループットを向上できる。
そこで、異なる指向性および半値幅のビームを同定できるようにすることで、ビーム毎の伝送路推定を行い、スループットを上げられる技術を以下に示す。
(1)まず、初段ビームに対して、向きおよび半値幅が異なるビームを同定できるIDを付与する。
プリコーディングのようにサイドローブを使用して所望の方向にnullを形成してビーム間干渉を除去する場合、サイドローブの向きおよびピーク電力が異なるビームを同定できるIDを付与してもよい。
初段ビームとして9つのビームが形成される例を図12〜図14に示し、図12〜図14に対応したID割り付けの例を以下に示す。
このID割り付け例によれば、ビームID=4,5では、方向は同じであるが半値幅が異なり、このため異なるIDを付与していることが分かる。
また、ビームID=2,3のビームは同じエリアを照射しているが、ビームIDが異なることが分かる。これは、ビームID=2に対応したアンテナと、ビームID=3に対応したアンテナとの間の距離が十分離れており、相関が低いときに有効である。したがって、図8のようにアナログで初段ビームを形成する構成の下で、例えば、当該エリアにユーザ数が多い場合、または、高速伝送を利用するユーザが存在する場合に有効である。
図12〜図14では、平面アンテナの指向性と半値幅との関係の例を、−90°から+90°までの範囲の指向性について、示した。これに対し、ダイポールアンテナ、ヘリカルアンテナ等を基本素子として用い、複数の基本素子を図15の例のように円状(換言すれば円筒状)に配列し、デジタル的に初段ビームを形成する構成によれば、−180°から+180°までの範囲に指向性および半値幅を設定することも可能となる。
ここで、移動端末は、基地局とは異なり、時間の経過により大きく向きを変えたり、移動端末の周辺が変化したりする。そのため、伝送路が変化し元の状態に戻らないことが頻繁に発生する。かかる点に鑑み、移動端末は、基地局からの既知系列信号のSNをモニタすることにより伝送路の大きな変化の有無を検出し、伝送路が大きく変わったと判断した場合には異なるビームIDを割り付けることが有効である。これによれば、伝送路が変化する前の同じビームIDから検出した伝送路情報を、誤って使用することを回避できる。
このように、次々に新しいビームIDを割り付けるので、初段ビームに設定可能なビームIDの数をp個とすると、これらp個のビームIDをサイクリックに使用すれば(1、2、・・・・、p、1、2、・・・)、p個以上のビームIDを確保できる。これにより、ID数が多くなっても情報ビット数を制限することが可能となり、伝送効率を上げることができる。例えば、0オリジンでビームIDを割り当て、p=256とすると、ビームID=0〜255となり、ビームIDを8bitで伝送できる。制御情報は、オーバーヘッドであり、ユーザが使用するデータ(U−planeデータ)に付随して何度も送信するので、1bitでもbit数を減らせると伝送効率を向上できる。
ID数の上限pは、報知情報、あるいは、チャネル設定時のRRC(3GPPでの、RRC Connection Reconfiguration相当)を用いて基地局から通知する。
あるいは、初段ビームに設定可能なID数の2倍の数だけIDを用意しておき(換言すれば、IDを2セット用意しておき)、ビームID変更時に、もう1セットのIDを使用する(換言すれば、2セットのIDをトグルさせて使用する)のも有効である。ビームID変更時に使用するIDは、報知情報、あるいは、チャネル設定時のRRC(3GPPでの、RRC Connection Reconfiguration相当)を用いて基地局から通知する。
(2)次に、ビームIDについての認識を移動端末と基地局とで合わせる手段について説明する。
第一の方法は、ビームIDの番号をデータとして送信し、その際、送信対象のビームIDに対応する指向性および半値幅を有したビームによって、ビームIDデータを送信する方法である。ビームIDデータは、制御チャネルとして、ユーザデータに付随させるとよい(3GPPでの、PUCCH相当)。基地局は、制御チャネルを復調して、CRCがOKであれば所定のビット配置から当該ビームのビームIDを抽出できる。
第二の方法は、データとしてビームIDを送信するのではなく、ビームIDと、ビームID送信条件(送信するタイミング、送信周波数、等)との関係付けをRRC(3GPPでの、RRC Connection Reconfiguration相当)で事前に設定しておき、基地局はビーム送信条件に基づいて(すなわち、検出するタイミング、受信周波数、等に基づいて)ビームIDを識別する方法である。
例えば、基地局の基準タイミングに対する、移動端末が送信するsounding信号の送信周期のオフセットを、RRCで事前に設定する。オフセットを指定するオフセット番号は、例えばフレーム先頭からのシンボル数である。あるいは、sounding信号を挿入する位置がスロット毎に固定されている場合、スロット番号をオフセット信号として利用してもよい。下表に例を示す。なお、周期の一例も示している。
次に、OFDMのように、周波数毎に異なる伝送ができる場合の例を示す。1つのサブキャリアだけを送信し他のサブキャリアを送信しないことにより、当該送信するサブキャリアの送信電力を高くしてSNを改善することができる。そのような例について下表に示す。周波数番号は一例である。送信するキャリアが少ない場合には搬送波の近くを使えばDCオフセット誤差を小さくできることに鑑み、下表では1200サブキャリアの場合に周波数番号600および601を使用する例を示している。
デジタルで初段ビームを形成する場合、同一時刻に異なる指向性のデータを送信可能であり、短時間でsounding信号を送信できる。そのような例について下表に示す。周波数番号を12ずつに区切っているのは、一例に過ぎない。リソースブロックが12サブキャリアで形成される場合、リソースブロック単位で指向性を変える例を示す。
ビームの半値幅に応じて送信周期を変えるのも有効である。例えば、半値幅を2倍にしても、周期を1/2にすれば、トータルのエネルギーは同一になる。ビームID=1に対して半値幅2倍を割り当てた例を下表に示す。実時間の代わりに、フレーム数、スロット数またはシンボル数で、周期または半値幅を指定してもよい。
また、周期は、周辺の伝送路が変化する速度に応じて、早い周期に設定すると効果的である。そのため、伝送路の変化速度をモニタし、モニタ結果に応じて設定値を変更してもよい。伝送路の変化をモニタするための指標として、基地局において移動端末毎に測定するドップラー周波数を用いるとよい。あるいは、基地局または移動端末において対向装置からのSNに関する情報(SNの変化速度、SNのばらつき(分散)、等)を求め、そのような情報を伝送路の変化をモニタするための指標として用いてもよい。変更が必要と判断したときは、RRC(3GPPでの、RRC Connection Reconfiguration相当)で再設定を行う。
第三の方法は、送信するデータとして、ビームIDをseedにしたゴールド符号、アダマール符号などの直交符号/疑似直交符号を使用する方法である。複数のビームのsounding信号を同時に送信できるため、U−planeデータに対するオーバーヘッドであるビームIDを送信するための情報量を低減できる。また、ビーム方向が異なる場合、同時送信しているsounding信号についてSDM(Space Division Multiplex)の効果を勘案でき、単に符号拡散するよりもSNを改善できる。直交符号/疑似直交符号のseedと、ビームIDとの関係付けをRRC(3GPPでの、RRC Connection Reconfiguration相当)で事前に設定し、基地局は、検出できるseedでビームIDを識別する。
上記の第一から第三の方法において、基地局と移動端末との間の伝送路の大きな変化に対応付けてビームIDの割り付けを変えるには、変更時にRRC(3GPPでの、RRC Connection Reconfiguration相当)を再設定する方法、または、再検出のためのビームIDを事前に送信する方法が有効である。
あるいは、再検出するためのIDを事前に送信する場合には、初段ビームに設定可能なID数の倍数分だけIDを用意したメッセージを送信する。移動端末は、ビームID変更時には、異なるセットのIDを使用する。基地局は、複数のビームIDの中からビームのIDをブラインドで検出し、ビームIDが切り替わっていることを検出した場合には、過去のビームIDから検出した伝送路情報を積分する処理を中止および破棄し、新たな伝送路情報を算出する。初段ビームに設定可能なID数=6且つビームIDセット数=2の例を下表に示す。
上記のビームIDの識別方式は、組合せて使用すると、より有効である。
例えば、移動端末毎に送信タイミング、送信周波数などに関する関係付けをRRCで事前に設定し、ビームIDをseedにしたゴールド符号、アダマール符号などの直交符号/疑似直交符号を使用するとよい。これによれば、伝搬環境が安定している場合でもビームID信号のタイミング、周波数などといったリソースを常時占有する必要がなくなる。そのため、伝搬環境の変動に伴って伝搬関数の更新が必要なビームIDの送信頻度が選択可能となる。
上記の方法により、ビームIDの認識を基地局と移動端末とで合わせることができる。
また、上記の方法により、基地局は移動端末が送信しているビームのIDが変化したことを検出可能となる。このため、実施の形態1で説明したビーム消失通知(St905およびSt1001を参照)を送信せずに、基地局でビームIDの変化を検出したときにビーム消失と判断するのも有効である。
(3)次に、ビームIDの2段検出手段について説明する。
データとしてビームIDを送信する場合、全ての移動端末に共通で且つ全てのビームIDに共通の既知系列も同時に送信するとよい。あるいは、同時送信に代えて、ビームIDデータと上記共通の既知系列とを、伝送路が変化しない程度にタイミングが近いリソース(無線フォーマットにおいて、ビームIDを送信する直前のタイミング等)を用いて、送信してもよい。基地局は、SN等を用いて信号品質を判断することでビームの有無を検出し、ビーム有りと判断したときのみ、基地局が送信許可している移動端末を対象にしてビームID識別を実施する。これにより、基地局の検出処理を低減できる。
全ての移動端末に共通で且つ全てのビームIDに共通の既知系列は、報知情報、あるいは、3GPPでのRRC Connection Reconfiguration相当によって、基地局から通知する。
あるいは、データとしてビームIDを送信する場合、移動端末毎に異なるが、移動端末で使用する全てのビームIDに共通の既知系列を送信するとよい。基地局は、そのような既知系列を検出したときのみ、移動端末のビームID識別を実施する。これにより、さらに基地局の検出処理を低減できる。
移動端末で使用する全てのビームIDに共通な既知系列は、報知情報、あるいは、3GPPでのRRC Connection Reconfiguration相当によって、基地局から通知する。
さらには、移動端末をいくつかのグループに分け、グループ内でタイミング、周波数などのリソースを共用し、グループ毎のグループIDを利用するのも有効である。この際、移動端末内のビームIDが同一にならないように、ビームIDとリソース(送信するタイミング、周波数など)との関係付けを、RRCで事前に設定する。移動端末によっては落下や方向変換により急激に多くのビームIDの再検索が必要になる場合もあるが、自動販売機に設置した移動端末のように移動することを想定していない移動端末もあることに鑑みると、グループ化すると統計多重効果により無線リソースを低減できる。
グループID用の既知系列は、報知情報、あるいは、3GPPでのRRC Connection Reconfiguration相当によって、基地局から通知する。
全ての移動端末に共通で且つ全てのビームIDに共通の既知系列と、移動端末で使用する全てのビームIDに共通の既知系列と、グループID用の既知系列とのうちの2つ以上を組合せて使用すれば、基地局の検出処理をさらに低減できる。
実施の形態2によれば、例えば次のような構成が提供される。
移動端末と、移動端末と無線通信可能に接続される基地局と、を備える通信システムが提供される。より具体的には、移動端末は、多素子アンテナを用いて2段階ビーム形成方式によって無線通信を行う。移動端末は、初段の各ビームの属性を識別するための情報を基地局に送信する。
かかる構成によれば、上記の課題を解決し、上記の効果を得ることができる。
実施の形態3.
実施の形態3は、例えば、他基地局に対する干渉対策に関する。
実施の形態1,2では主に上り(移動端末→基地局)のビーム形成について説明した。実施の形態3では、下り(基地局→移動端末)のスループットを改善するために、移動端末の側でのビーム形成について説明する。
基地局が、受信した上り信号から、可逆性を利用して下り伝送路情報を取得し、得られた下り伝送路情報を基にプリコーディングウェイトを算出し、算出したプリコーディングウェイトを下り送信データに乗算する方法が、スループットの向上に有効である、ということが知られている。しかしながら、このようにして送信したデータでは他の基地局からの干渉成分を考慮できていないため、期待したスループットを得られないという問題が発生する。
この課題に対する解決方法を以下に示す。
第一の方法は、通信中の基地局以外の他の基地局からの干渉情報を移動端末で測定し、その情報を、通信中の基地局にフィードバックする方法である。
通信中の基地局でプリコーディングウェイトを乗算して送信した送信データを、移動端末が、ポストコーディング等で移動端末のアンテナの自由度を用いて、他の基地局からの干渉を極力低減して受信する。しかしながら、ポストコーディング等を行っても、例えば、アンテナの自由度が不足している場合、または、通信中の基地局の信号(反射波を含む)と通信中でない他の基地局からの信号とが同じような方向から到来している場合、通信中でない他の基地局からの干渉が残存する。
そこで、所要のSNに対する不足値、あるいは、通信中でない他の基地局からの干渉量を、通信中の基地局にフィードバックする。通信中の基地局が、フィードバックされた情報に基づいて送信電力を増大することにより、スループットを向上できる。このようにフィードバック情報に基づいて送信電力を移動端末毎に調整することにより、通信中の基地局で送信電力を一律に増加させた場合に比べて、通信中の基地局が送信するトータルの送信電力を低減できる。
フィードバック方法について説明する。
フィードバックする情報は、3GPPでのRRCのmeasurement report相当によって、移動端末から基地局に通知する。周辺の基地局の受信電力のreportではない点、具体的には、通信中の基地局が、適切な指向性のビームで送信し、移動端末で形成した適切な指向性のビームで受信したデータに対して、通信中でない他の基地局からの干渉量を測定する点が、ハンドオーバ等のために3GPPの周辺セルモニタで使用するmeasurement reportと異なる。移動端末は、通信中でない他の基地局のPSSおよびSSSを検出した場合、検出したタイミング、周波数などをセルID毎に記憶しておき、その信号を、通信中の基地局との間で移動端末が形成した適切な指向性のビームで受信したならば干渉がどのくらいになるかを測定する。
フィードバックする情報は、3GPPでのRRCのmeasurement reportに付随したメッセージ要素としてもよい。
プリコーディング処理を伝送路行列の逆行列演算で求める場合、処理量が大きいので、フェージングに間に合わせるためには高性能なDSPや大規模LSIが必要になる。かかる点に鑑みると、RRCでは反映周期が長くなるが、通信中でない他の基地局からの干渉成分の平均値を補償でき、有効である。
上記では、measurement report相当を用いて、通信中ではない他の基地局からの平均干渉量を補償する方法を示した。これに対し、3GPPでのPUCCHやL1制御信号を用いて、所要SNに対する不足値、あるいは、通信中でない他の基地局からの干渉量を、通信中の基地局にフィードバックすると、短時間でフィードバックができる。このため、フェージングの変動を補償でき、より安定した通信が可能となる。また、送信電力増加/低減要求コマンド(例えば、1:1dB増加、0:1dB低減、あるいは、+1:増加要、0:変更不要、−1:低減可能)を採用し、当該コマンドをフィードバックすれば、フィードバックする情報量を削減するのに有効である。
第二の方法は、通信中の基地局との間で移動端末が形成した適切な指向性のビームで受信したならば干渉がどのくらいになるかについての情報(3GPPでのRRCのmeasurement report相当の情報)を用いて、複数の基地局からのデータ送信が同時に実行されないように調整する方法である。
通信中の基地局は、移動端末から通知されたセルIDの周辺基地局に対して、使用して欲しくない、あるいは、なるべく使用を控えて欲しいリソース(タイミング、周波数、拡散符号、リソースブロック等)の情報を、基地局間メッセージによって通知する。基地局間メッセージは基地局の上位装置を経由して送信されてもよい。通信中の基地局は、基地局間メッセージで通知したリソースを使って、移動端末にデータを送信する。
あるいは、通信中の基地局は、移動端末から通知されたセルIDの周辺基地局に対して、何らかの送信をする場合に使用して欲しいリソース(タイミング、周波数、拡散符号、リソースブロック等)の情報を、基地局間メッセージによって通知する。基地局間メッセージは基地局の上位装置を経由して送信されてもよい。通信中の基地局は、基地局間メッセージで通知したリソースを極力避けて、移動端末にデータを送信する。
第三の方法は、以下のように移動端末が初段ビームを形成することで上記問題を解決する方法である。
具体的には、移動端末は、送信方向および半値幅を単純に設定した初段ビームでsounding信号をそのまま送信するのではなく、以下のステップで構成した信号を送信する。
(A1)通信中の基地局に対してメインビームを向けるように、且つ、通信中の基地局以外の他の基地局に対してはnullを向けるように、初段ビーム(既知系列データを受信するビーム)の1つを形成する。
通信中の基地局以外の他の基地局として、通信に影響する大きさ以上の受信電力を用いる基地局のみを選択するとよい。例えば、受信する変調方式、符号化率等に応じた所要のSNを閾値とする。
(A2)移動端末が、可能であれば、上記(A1)のビームの形成に加えて、通信中の基地局以外の他の基地局に対してnullを向けるように上記(A1)とは異なる指向性の初段ビームをもう1つ形成する。
(A3)移動端末が、可能であれば、上記(A1)および(A2)のビームの形成に加えて、通信中の基地局以外の他の基地局に対してnullを向けるように上記(A1)および(A2)とは異なる指向性の初段ビームをもう1つ形成する。
(A4)上記(A2)および(A3)と同様にして、通信中の基地局以外の他の基地局に対してnullを向ける異なる指向性を持った初段ビームを追加する。
あるいは、以下のステップで構成した信号を送信してもよい。
(B1)移動端末は、通信中の基地局の受信信号から、マルチパスの方向に設定するビームの数を仮決めする。
(B2)上記(B1)のマルチパスに対してメインビームを向けるように、且つ、通信中の基地局以外の他の基地局に対してnullを向けるように、ビームを形成する。逆行列を算出できれば、ビーム形成は完了する。
(B3)メインビームの方向と、通信中の基地局以外の他の基地局の方向とを分離できないために逆行列を算出できない場合、対応するマルチパスを減らして逆行列を再計算する。この際、通信中の基地局以外の他の基地局に近い方向からのマルチパスを優先的に減らす。
(B4)上記(B3)を繰り返す。
上記で形成したアンテナのイメージを図16に示す。
基地局は通常通りプリコーディングを行う。
図16の例によれば、移動端末は、既知系列を送信する初段ビームとして、基地局aに向けたビームを1つ設ける(破線で示したビームを参照)。そのビームは基地局bに対してはnullを向けている。もう1つのビーム(実線で示したビームを参照)は、基地局aと基地局bの両方に対してnullを向けている。これらの2つのビームで基地局aの信号に対してプリコーディングを行うと、基地局aのマルチパスも含めてビームの指向性が良好になる。加えて、基地局bにはnullが向くので、当該移動端末において基地局bから干渉を受けないようにすることができる。これらの結果、期待したスループットを得ることができる。
以上のようにすることで、通信中の基地局以外の他の基地局からの干渉を抑制でき、正常に通信を行うことが可能になる。
実施の形態3によれば、例えば次のような構成が提供される。
移動端末と、移動端末と無線通信可能に接続される基地局と、を備える通信システムが提供される。より具体的には、移動端末が第1の基地局と通信する一方で第2の基地局とは通信しない場合、移動端末は、第1の基地局からの送信信号に対して第2の基地局が及ぼす干渉度合いを測定し、測定結果を第1の基地局に送信する。第1の基地局は、受信した測定結果に基づいて、移動端末に送信する信号の送信電力を変更する。
また、移動端末と、移動端末と無線通信可能に接続される基地局と、を備える通信システムが提供される。より具体的には、移動端末が第1の基地局と通信する一方で第2の基地局とは通信しない場合、第1の基地局は、第1の基地局から移動端末へのデータ送信と第2基地局によるデータ送信との干渉を抑制するための通信条件を調整し、調整した通信条件によるデータ送信を第2の基地局に要請する。
また、移動端末と、移動端末と無線通信可能に接続される基地局と、を備える通信システムが提供される。より具体的には、移動端末は、多素子アンテナを用いて2段階ビーム形成方式によって無線通信を行う。移動端末が第1の基地局と通信する一方で第2の基地局とは通信しない場合、移動端末は、第1の基地局に対してメインビームが向き第2の基地局に対してnullが向く第1のビームと、第2の基地局に対してnullが向き、第1のビームとは指向性が異なる少なくとも1つの第2のビームと、を初段ビームとして形成する。
また、移動端末と、移動端末と無線通信可能に接続される基地局と、を備える通信システムが提供される。より具体的には、移動端末は、多素子アンテナを用いて2段階ビーム形成方式によって無線通信を行う。移動端末が第1の基地局と通信する一方で第2の基地局とは通信しない場合、移動端末は、第1の基地局のマルチパスの方向に対してメインビームが向き第2の基地局に対してnullが向くビームを、マルチパスの設定数を調整することによって少なくとも1つ設計し、設計したビームを初段ビームとして形成する。
かかる構成によれば、上記の課題を解決し、上記の効果を得ることができる。
実施の形態4.
実施の形態4は、例えば、可逆性対応可否への対応に関する。
多素子アンテナでビーム形成をする場合、ビーム毎に移動端末で測定した伝送路情報を基地局に通知し、同様にビーム毎に基地局で測定した伝送路情報を移動端末に通知する必要がある。このため、情報量が多いという問題がある。
また、まとまった周波数帯を確保するためには周波数が高いことが望まれるが、周波数が高くなるとフェージング周波数が比例して高くなる。これに鑑みると、伝送路の変化に追随するためには、移動端末と基地局とが互いに通知する伝送路情報について、伝送周期を短くする必要がある。
これらを解決するために、TDD(Time Division Duplex:同一周波数での送受信)を背景にして、送信と受信の伝送路の可逆性を使った伝送路推定が議論されている。一方、可逆性に対応した装置は、送信と受信のビームパターンを同じにする必要があり実装が難しいという問題がある。
そこで、本実施の形態4では、周波数帯毎に、可逆性対応の可否を設定可能とする通信技術を提供し、全帯域で可逆性対応が可能でなくても、可逆性対応が可能な周波数帯で高速通信が可能となることを示す。
図17に、周波数帯毎の可逆性対応の可否の設定を、チャネル設定時に行う例を説明するシーケンス図を示す。図17によれば、移動端末は、位置登録時(ステップSt1601〜St1603)に、周波数帯域毎の可逆性対応可否情報を、UE−capabilityとして、基地局に送信する。その際、可逆性対応可否情報は、3GPPでのRRC Connection Setup Complete相当(チャネル設定要求または変更要求に対する応答に相当)で送信する。
データ通信等のために発呼した時(ステップSt1604)、基地局は、セルID毎且つ周波数帯域毎に、可逆性対応可否、および、対応する伝送効率を決定し、基地局での準備を開始する。また、基地局は、周波数帯毎のプリコーディング対応の設定情報を、移動端末に、RRC Connection Setup相当によって通知する(ステップSt1606)。
例えば、2GHz帯は制御信号にのみ使用して、U−planeの広帯域伝送には2GHzとは異なる広い帯域幅(15GHz、28GHz、60GHz等)を多素子アンテナで実施する場合、2GHzには可逆性は不要であり、簡易な送受信機を使用する。可逆性の確保のためには、送信と受信のビームパターンを合わせるためのキャリブレーションが必要であったり、送受信の周波数特性を合わせる必要あるので、2GHz帯だけでも可逆性を不要とすれば、低コストな移動端末を実現できる。
基地局は、移動端末から送信された周波数帯域毎のUE−capabilityと、基地局自身のID毎のcapabilityとに基づいて、可逆性への対応を判定する。基地局と移動端末の両方が可逆性対応可能な周波数帯域のみ、可逆性を使用した伝送路推定を使用する。プリコーディングもこの伝送路推定値を使用して実施する。
基地局と移動端末のどちらか一方が可逆性に対応できない周波数については、次の(i)〜(iii)の選択肢がある。
(i)可逆性は使用しない。移動端末が測定した伝送路推定値を基地局に送信するように基地局が指示し、基地局はプリコーディング等の干渉除去を実施する。
(ii)可逆性は使用しない。移動端末が、基地局のビーム毎の位相および振幅をどのように設定すれば干渉が低減されるかを、移動端末が測定した伝送路推定値に基づいて算出する。移動端末がその結果を基地局に伝送するように基地局が指示し、基地局は、取得した情報に基づいてプリコーディングを実施する。
(iii)基地局はプリコーディング等のビーム干渉低減のための処理を行わない。
以下では、プリコーディング対応の設定情報について説明する。可逆性を使ってプリコーディングする場合、基地局は、移動端末がsoundingを送信できるための情報(周波数、時間(周期)、リソースブロックの位置等)を、RRC Connection Setup相当によって指定する。
具体的には、上記(i)の場合、基地局は、移動端末が測定した下り伝送路推定の値を報告するための無線フォーマット、測定周期等を、RRC Connection Setup相当で指定する。移動端末は、soundingを送信する代わりに、基地局の指示に従った測定情報を通知する。
上記(ii)の場合、基地局は、基地局のビーム毎の位相および振幅の情報、あるいは、ビーム毎の位相と振幅との組合せを示すインデックス情報を、どのような無線フォーマットおよび周期で移動端末から報告させるかを、RRC Connection Setup相当で指定する。移動端末は、soundingを送信する代わりに、基地局の指示に従った情報、すなわち、ビーム毎の位相および振幅の情報、あるいは、ビーム毎の位相と振幅との組合せのインデックス情報を通知する。
上記(iii)の場合、上記のような指定は行わない。あるいは、基地局は、プリコーディング対応の設定が不要であることを、RRC Connection Setup相当で指示する。ステップSt1609の送信を行わない。ステップSt1609の算出も行わない。したがって、ステップSt1611、すなわちプリコーディングありのU−planeデータ送信は行わない。
ここで、可逆性を使ってプリコーディングする場合、可逆性は情報の伝送効率に応じて、必要となる性能が異なる。情報の伝送効率は、MCS(Modulation and Coding Scheme)、対応するlayer数(同時に同じ周波数で送信する信号のストリーム数)、等に応じて決まる。例えば、基地局が64QAMまで且つ符号化率3/4までの方式に対応可能である場合、移動端末が256QAMまで且つ符号化率5/6までの方式に対応可能であっても、移動端末の実際的な方式は64QAMまで且つ符号化率3/4までになる。
基地局は、ステップSt1609のsounding信号を用いて、プリコーディングウェイトを算出し(ステップSt1610)、それ以降、基地局は下りデータを、プリコーディングを実施してから、送信する。
なお、基地局は、ステップSt1610以前にデータを送信する場合、プリコーディングなしでデータを送信する。
以上のように移動端末のUE−capabilityとして可逆性対応可否情報を、移動端末から基地局に伝送することにより、移動端末および基地局の可逆性対応可否が混在していても、対応可能な伝送効率でプリコーディングを実施できるようになる。特に、周波数帯域毎に可逆性対応可否情報を設けることにより、1台の移動端末において周波数帯域毎に可逆性対応可否が混在していても、対応可能な伝送効率でプリコーディングを実施できるようにできる。
図18〜図19に、周波数帯毎の可逆性対応の可否の設定を、ハンドオーバ時に行う例を説明するシーケンス図を示す。図18と図19とは境界線BLの位置で繋がっている。移動先(ハンドオーバ先)で使用可能な周波数帯に対応したcapabilityのやり取りを行い、伝送効率がより低い方の値までの可逆性を使用するか、あるいは、可逆性を使用しないで伝送路推定するかを、基地局で決定する。決定内容の通知後、U−planeデータの通信を開始する。
移動端末がMeasurement reportを送信し(ステップSt1701)、移動元基地局がMeasurement reportに基づいて、通信品質が或る閾値よりも悪くなったと判断した場合、移動元基地局はHandover Required(ステップSt1702)をSGW(サービングゲートウェイ)に通知する。SGWではHandover Requiredの内容に応じて、移動先基地局にハンドオーバ要求を通知する(ステップSt1703)。SGWは、移動先基地局からハンドオーバ可能であることの通知を受け取ると(ステップSt1704)、その旨を移動元基地局に通知する(ステップSt1705)。
ここで、移動元基地局は、当該移動端末の情報として、移動端末の可逆性の対応可否に関する情報、対応可能なMCSおよびレイヤ数に関する情報を、SGWに通知する(ステップSt1706)。特に、通知する上記情報は、周波数帯毎の情報であることが有効である。SGWは、通知された情報を、移動先基地局に転送する(ステップST1707)。したがって、移動元基地局が移動先基地局にStatus transferを直接送信すると、設定時間が短くできて有効である。移動先基地局は、可逆性の対応可否、対応可能なMCSおよびレイヤ数等を決定し(ステップSt1708)、その結果として使用する周波数帯毎のプリコーディングの対応可否の設定情報を、移動元基地局に通知する(ステップSt1709)。
それ以降のステップSt1710〜St1715は、図17の例(周波数帯毎の可逆性対応の可否の設定を、チャネル設定時に行う例)と同じである。
実施の形態4によれば、例えば次のような構成が提供される。
移動端末と、移動端末と無線通信可能に接続される基地局と、を備える通信システムが提供される。より具体的には、移動端末は、伝送路の可逆性を利用した伝送路推定である可逆性利用伝送路推定を、周波数帯域毎に行うことか可能に構成されている。移動端末は、可逆性利用伝送路推定を行うことが可能か否かを周波数帯域毎に示す可逆性対応可否情報を、基地局に送信する。基地局は、移動端末の可逆性対応可否情報に基づいて、移動端末と基地局との両方が可逆性利用伝送路推定を行うことが可能な周波数帯域では、可逆性利用伝送路推定を利用して移動端末と通信を行う。
かかる構成によれば、上記の課題を解決し、上記の効果を得ることができる。
上記の各実施の形態およびその変形例は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において、各実施の形態およびその変形例を自由に組合せることができる。また各実施の形態およびその変形例の任意の構成要素を適宜変更または省略することができる。
本発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。