JPWO2018159476A1 - 多価ワクチン - Google Patents

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Abstract

ウエルシュ菌を含む2種以上の微生物に対する免疫を誘導し得る多価ワクチンを提供し、感染症を効率的に予防及び/又は治療し得る医薬組成物を提供することを課題とする。ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片(C−CPE)と、ウエルシュ菌以外の微生物由来の少なくとも1つの抗原とを有効成分とし、ウエルシュ菌を含む2種以上の微生物に対する免疫を誘導し得ることを特徴とする、多価ワクチンによる。本発明の多価ワクチンは、C−CPEと前記少なくとも1つの抗原とが融合体を構成していることにより、ウエルシュ菌を含む2種以上の微生物に対する免疫誘導能を発揮し得るものである。

Description

本発明は、感染症の予防及び/又は治療に用いられる多価ワクチンに関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2017−37056号優先権を請求する。
感染症対策として、ワクチン接種が世界的に行われている。感染症には、病原性の強い病原体によるものだけでなく、正常な宿主に対しては病原性を発揮しないが、抵抗力の弱っている宿主で病原性を発揮して引き起こされるものもあり、大きな問題となっている。感染症に対するワクチンとしては、抗原を1種だけ含むものがあるが、種々の型に応じた抗原を含むように作られたワクチンや、複数の病原体に対する抗原の同時接種等が行われている。複数の抗原を同時に接種することにより、確実かつ早急に必要な免疫を得ることが可能となり、ワクチン供給の利便性も高まり、医療費コストの削減等にもつながることから、結果としてワクチン接種率を上昇させることができると考えられている。
感染症には様々な感染経路があるが、食品が原因で発症する感染症に、食中毒がある。食中毒は、細菌やウイルスなどを、食品を介して口から摂取したことにより、下痢・嘔吐・発熱などの症状を引き起こすことを指す。衛生管理手法が発達するにつれて、食中毒は減少するものと予測されていたが、依然として多くの食中毒事件が発生している。近年は1件あたりの患者数が増加し、事件が大型化する傾向にある。病原性大腸菌O−157による集団感染事件などでは、幼少児や老人、学校関連施設などで大規模な感染が起こる危険性がある。また集団感染事件では、患者が多量の細菌やウイルスを排出し、二次的に感染症を引き起こす事例にも注意が必要である。
ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)は食中毒の原因菌の一つである。ウエルシュ菌は、ヒト、動物の腸管内、土壌、下水などに広く分布し、食品汚染の機会が多い。またヒトの糞便中にも常在していて、耐熱性芽胞形成ウエルシュ菌の保菌率は年齢や生活環境によって異なるが、およそ6〜40%であるといわれている。ウエルシュ菌は熱に強い芽胞を作るため、加熱調理して、他の細菌が死滅してもウエルシュ菌の耐熱性の芽胞は生き残る。また、食品の中心部は酸素の無い状態になり、嫌気性菌のウエルシュ菌にとって好ましい状態になり、加熱した食品の温度が発育に適した温度まで下がると発芽して急速に増殖を始める。加熱調理後、すぐに喫食すれば、問題は起こりにくいが、特に、給食のように大量に調理した食品の場合、調理してから食事するまでの時間が長いため、増殖する危険性が高い。食品の中で大量に増殖したウエルシュ菌(10個以上)を食品とともに摂取すると、胃を通過し、小腸内で増殖して、菌が芽胞型に移行する際にエンテロトキシン(毒素)が産生され、その毒素の作用で下痢などの症状が起きる。
ウエルシュ菌のエンテロトキシン(以下「CPE」)は、分子量約35kDaのタンパク質であり、ウエルシュ菌による感染性食中毒の原因物質である。CPEは、細胞のタイトジャンクション構成タンパク質であるクローディン(Claudin)ファミリーのクローディン3、4、6、7、8および14と結合することが知られている(Fujita, K. et al., (2000) FEBS Letters 476, 258−261.)。クローディン4は、パイエル板上に高発現していることが報告されている(Tamagawa, H. et al., (2003) Laboratory Investigation 83, 1045−1053.)。CPEが各種クローディンと結合することに着目し、CPEのC末端断片(以下「C−CPE」)と他の抗原との融合体を粘膜ワクチンとして使用することが提案されている(特許文献1)。またCPEの第304位〜第319位の16アミノ酸が、CPEとクローディン4との結合に関連していることが開示されている(特許文献2、非特許文献1)。
ウエルシュ菌の感染メカニズムについて研究が進められており、エンテロトキシンの応用についての報告があるものの、ウエルシュ菌に対するワクチンについての報告はほとんどない。エンテロトキシンのC末断片には毒性がなく、抗原性が低いことが報告されており(非特許文献2)、ウエルシュ菌に対して優れたワクチン効果を発揮し得る抗原は見出されていなかった。
国際公開第WO2010/089940号公報 特開2011−162466号公報
Takahashi A.,et al. (2005) J. Controlled Release, 108,56−62 Kokai−Kun, J. F et al. (1997) Clin. Infect. Dis. 25, Suppl.2,165−167
本発明は、ウエルシュ菌を含む2種以上の微生物に対する免疫を制御し得る多価ワクチンを提供し、感染症を効率的に予防及び/又は治療し得る医薬組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、C−CPEと他の抗原との融合抗原が、ウエルシュ菌と他の微生物に対する免疫を誘導し得ることに着目し、当該融合抗原が多価ワクチンの有効成分となり得ることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、すなわち以下よりなる。
1.ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片と、ウエルシュ菌以外の微生物由来の少なくとも1つの抗原とを有効成分とし、ウエルシュ菌を含む2種以上の微生物に対する免疫を誘導し得ることを特徴とする、多価ワクチン。
2.有効成分が、ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片と前記少なくとも1つの抗原とが融合した融合体である、前項1に記載の多価ワクチン。
3.ウエルシュ菌エンテロトキシンに対する特異的抗体を誘導し得る、前項1又は2に記載の多価ワクチン。
4.ウエルシュ菌以外の微生物由来の抗原に対する反応性を有する抗体を誘導し得る、前項1〜3のいずれかに記載の多価ワクチン。
5.ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片が、単独では、ウエルシュ菌エンテロトキシンに対する特異的抗体を誘導できない、前項1〜4のいずれかに記載の多価ワクチン。
6.ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片が、以下から選択されるタンパク質である、前項1〜5のいずれかに記載の多価ワクチン:
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有しており、少なくとも第304位〜第319位のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)(1)のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入されたアミノ酸配列を有しており、免疫原性を有するタンパク質。
7.抗原が、コレラ菌、病原性大腸菌、及びカンピロバクターからなる群から選択される病原体に由来する、前項1〜6のいずれかに記載の多価ワクチン。
8.細菌に起因する疾患又は症状を予防及び/又は治療するための、前項1〜7のいずれかに記載の多価ワクチン。
9.前項1〜7のいずれかに記載の多価ワクチンを含有する、感染症を予防及び/又は治療するための医薬組成物。
本発明の多価ワクチンにより、生体内でウエルシュ菌を含む2種以上の微生物に対する免疫を誘導できる。本発明の多価ワクチンは、微生物に起因する疾患又は症状を予防及び/又は治療するためのものであり、感染症の予防及び/又は治療に用いることが可能である。
C−CPE単独、C−CPE+Alum、PspA−C−CPEの投与スケジュール(図1A)、及び血清抗C−CPE IgG抗体の産生能を確認した結果(図1B)を示す図である。(実験例1) CTB−C−CPEの模式図(図2A)、CTB、C−CPE、CTB−C−CPEのタンパク質の有無をCBB染色にて確認した写真(図2B)、CTB、C−CPE、CTB−C−CPEのGM1結合性を確認した結果(図2C)、及びCTB、C−CPE、CTB−C−CPEのクローディン4結合性を確認した結果(図2D)を示す図である。(実施例2、実験例2−1) PBS、CTB単独、C−CPE単独、CTB−C−CPE、CT+C−CPE(混合液)の投与スケジュールを示す図である。(実験例2−2〜7) PBS、CTB単独、C−CPE単独、CTB−C−CPEを投与した場合の、コレラ毒素特異的な血清中IgG抗体と糞便中IgA抗体の産生能を確認した結果(図4A)、CT−GM1結合中和活性を確認した結果(図4B)、コレラ毒素投与により下痢誘導の抑制効果を確認した結果(図4C)を示す図である。(実験例2−2〜4) PBS、CTB単独、C−CPE単独、CTB−C−CPE、CT+C−CPE(混合液)を投与した場合の、C−CPE特異的な血清中IgG抗体の産生能を確認した結果(図5A)、ウエルシュ菌毒素による細胞死に対する中和活性を確認した結果(図5B)を示す図である。(実験例2−5〜6) PBS、C−CPE単独、CTB−C−CPE、CT+C−CPE(混合液)を投与した場合の、ウエルシュ菌毒素の腸管投与による下痢の抑制効果を確認した結果(図6A)、及び絨毛崩壊の抑制効果を確認した結果(図6B)を示す図である。(実験例2−7) C−CPE変異体を含むCTB−C−CPE Y306A/L315Aの模式図(図7A)、CTB−C−CPE Y306A/L315A、C−CPE変異体を含まないCTB−C−CPEのクローディン4結合性を確認した結果(図7B)、及びCTB−C−CPE特異的IgG抗体の産生能を確認した結果(図7C)を示す図である。(実施例3、実験例3−1〜2)。 VT2B−C−CPE、FlaA−C−CPEの模式図(図8A)、C−CPE、VT2B、FlaA、VT2B−C−CPE、FlaA−C−CPEのタンパク質の有無をCBB染色にて確認した写真(図8B)、クローディン4結合性を確認した結果(図8C)を示す図である。(実施例4、実験例4−1) PBS、C−CPE+Alum、VT2B−C−CPE、FlaA−C−CPEの投与スケジュールを示す図である。(実験例4−2〜4) PBS、C−CPE+Alum、VT2B−C−CPE、FlaA−C−CPEを投与した場合の、血清中C−CPE特異的IgG抗体の産生能を確認した結果(図10A)、及び、血清によるウエルシュ菌毒素に対する中和活性を確認した結果(図10B)、PBS、VT2B−C−CPEを投与した場合の血清中VT2B特異的IgG抗体産生能を確認した結果(図10C)、及びPBS、FlaA−C−CPEを投与した場合の血清中FlaA特異的IgG抗体産生能を確認した結果(図10D)を示す図である。(実験例4−2〜4) CTB−VT2B−C−CPEの模式図(図11A)、PBS、VT2B、CTB−VT2B−C−CPEを投与した場合の血清中VT2特異的IgG抗体の産生能を確認した結果(図11B)、及びVT2投与後のマウス生存率への影響を確認した結果(図11C)を示す図である。(実施例5、実験例5−1) ワクチン抗原(VT2B−C−CPE)と当該VT2B−C−CPEによるウエルシュ菌毒素特異的血清中IgG産生能を示す図である。図12Aはワクチン抗原の構造を示す図である。図12Bは、実験プロトコールを示し、図12Cは、その結果を示す図である。(実施例6)(実験例6−1) ウエルシュ菌毒素による細胞死に対するVT2B−C−CPEの中和活性を示す図である。図13Aは、実験プロトコールを示し、図13Bはその結果を示す図である。(実験例6−2 ウエルシュ菌毒素の血中投与に対するVT2B−C−CPEの生体防御誘導作用を、血中カリウム濃度により確認した結果を示す図である。図14Aは、実験プロトコールを示し、図14Bは、その結果を示す図である。(実験例6−3) ウエルシュ菌毒素の血中投与に対するVT2B−C−CPEの生体防御誘導作用を示す図である。図15Aは、実験プロトコールを示し、図15Bは、マウスの動態による結果を示す図である。(実験例6−3) VT2B−C−CPEによるVT2B特異的血清中IgG産生能を示す図である。図16Aは、実験プロトコールを示し、図16Bは、その結果を示す図である。(参考例1) VT2B−C−CPEによるVT2腹腔内投与後のマウスへの影響を示す図である。図17Aは、実験プロトコールを示し、図17Bは、腎障害マーカーの血中BUN量の測定結果を示し、図17Cはマウスの生存率に及ぼす結果を示す図である。(参考例2)
本発明の多価ワクチンは、2種以上の複数種の抗原を有効成分として含み、これらの複数種の抗原に対する免疫を誘導し得るものである。本発明の多価ワクチンには、抗原として、まずC−CPEが含まれ、加えてC−CPE以外の抗原が1種以上含まれる。C−CPE以外の抗原は、ウエルシュ菌以外の微生物由来の抗原であれば、いかなるものであってもよい。ウエルシュ菌以外の微生物由来の抗原は、少なくとも1種含まれていればよく、2種以上、3種以上含まれていてもよい。
本明細書における多価ワクチンは、ウエルシュ菌を含む2種以上の微生物に対する免疫を誘導し得るものである。ウエルシュ菌に対する免疫を誘導し得るとは、ウエルシュ菌毒素に対する特異的抗体(例えば、血清中CPE特異的IgG抗体)を誘導し得ることを含み、好ましくはウエルシュ菌毒素に対する中和活性を有する抗体を誘導し得ることを含む。またウエルシュ菌毒素による細胞死に対する中和活性を誘導し得ることを含み、下痢や絨毛崩壊の抑制、高カリウム血症等のウエルシュ菌毒素により引き起こされる症状や病態に対する生体防御反応を誘導し得ることを含む。ウエルシュ菌以外の微生物に対する免疫とは、微生物由来の抗原や毒素に対する特異的抗体(例えば、当該毒素特異的血清中IgG抗体)、好ましくは中和抗体を誘導し得ることを含み、当該抗原や毒素による細胞死に対する中和活性や、当該抗原や毒素により引き起こされる症状や病態に対する生体防御反応を誘導し得ることを含む。これらの免疫誘導能は、後述する実施例及び実験例の記載に基づき、確認できる。本明細書における多価ワクチンは、これらの免疫誘導能を発揮することから、特に細菌に起因する疾患又は症状を予防及び/又は治療するために用いることができる。
本明細書におけるウエルシュ菌毒素は、ウエルシュ菌より産生され、生体に対して毒性を示す物質であり、CPEとも呼ばれる。CPEは、配列番号1で表わされる319アミノ酸からなるタンパク質であり、これをコードする遺伝子は配列番号2で表わされる塩基配列を有する。CPEをコードする遺伝子(配列番号2)は、アクセッション番号:M98037として公知のデータベース(GenBankなど)に登録されている。CPEのアミノ酸配列及びこれをコードする遺伝子の塩基配列を以下に具体的に示す。
CPEのアミノ酸配列(配列番号1):
MLSNNLNPMVFENAKEVFLISEDLKTPINITNSNSNLSDGLYVIDKGDGWILGEPSVVSSQILNPNETGTFSQSLTKSKEVSINVNFSVGFTSEFIQASVEYGFGITIGEQNTIERSVSTTAGPNEYVYYKVYATYRKYQAIRISHGNISDDGSIYKLTGIWLSKTSADSLGNIDQGSLIETGERCVLTVPSTDIEKEILDLAAATERLNLTDALNSNPAGNLYDWRSSNSYPWTQKLNLHLTITATGQKYRILASKIVDFNIYSNNFNNLVKLEQSLGDGVKDHYVDISLDAGQYVLVMKANSSYSGNYPYSILFQKF
CPEをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号2):
gtttataata tataatatta tgtttagtga aattatgtta atatactact tatttcttct tttatattaa ttaacatttc aacttgatct ctttaacgta tatctctttt attacccaag ctttaattcc ttcagcatta atatcataaa atgtccatgt agaaatatat tcaagattat taaagatata tattttattt aatattttgt taatacttta aggatatgta tccaaaataa aaacttttaa ataatatatt atataaaaaa aattagaaat aaggagatgt taattataat atgcttagta acaatttaaa tccaatggtg ttcgaaaatg ctaaagaagt atttcttatt tctgaggatt taaaaacacc aattaatatt acaaactcta actcaaattt aagtgatgga ttatatgtaa tagataaagg agatggttgg atattagggg aaccctcagt agtttcaagt caaattctta atcctaatga aacaggtacc tttagccaat cattaactaa atctaaagaa gtatctataa atgtaaattt ttcagttgga tttacttctg aatttataca agcatctgta gaatatggat ttggaataac tataggagaa caaaatacaa tagaaagatc tgtatctaca actgctggtc caaatgaata tgtatattat aaggtttatg caacttatag aaagtatcaa gctattagaa tttctcatgg taatatctct gatgatggat caatttataa attaacagga atatggctta gtaaaacatc tgcagatagc ttaggaaata ttgatcaagg ttcattaatt gaaactggtg aaagatgtgt tttaacagtt ccatctacag atatagaaaa agaaatcctt gatttagctg ctgctacaga aagattaaat ttaactgatg cattaaactc aaatccagct ggtaatttat atgattggcg ttcttctaac tcataccctt ggactcaaaa gcttaattta cacttaacaa ttacagctac tggacaaaaa tatagaatct tagctagcaa aattgttgat tttaatattt attcaaataa ttttaataat ctagtgaaat tagaacagtc cttaggtgat ggagtaaaag atcattatgt tgatataagc ttagatgctg gacaatatgt tcttgtaatg aaagctaatt catcatatag tggaaattac ccttattcaa tattatttca aaaattttaa tattttaaaa taatataatc aaattaattt acaaaagaca gtatgtaata ttaaattatt acatactgtc taattttttt attataattt aatttttcat
CPEは、CPEを産生するウエルシュ菌から回収、精製することにより取得できる。また、公知の遺伝子組換え技術によりCPE発現ベクターを構築し、これを適当な宿主に導入して発現させ、組み換えタンパク質を回収、精製して取得することもできる。
C−CPEは、CPEのC末端のアミノ酸を含みN末端のアミノ酸を含まないCPEの部分タンパク質である。本発明のC−CPEは、他の抗原との融合体を構成することにより単独の場合と比較して免疫誘導能(例えばCPEに対する特異的抗体の誘導能)が増強され、ワクチン効果を発揮できるものである。C−CPEは単独では免疫の誘導が出来ないものであっても、融合体とすることにより免疫誘導能を発揮するようになる。免疫が誘導出来ないとは、例えば、CPEに対する特異的抗体の誘導ができないことを意味するが、全く誘導できないことを意味するのではなく、実質的に誘導できないことを意味する。実質的に誘導できないとは、融合体の場合に比べて、免疫誘導能が低い場合も含む。C−CPEは免疫原性を有しているものであればよく、クローディン4との結合能を有していても、有していなくてもよい。免疫原性とは、生体内でエピトープとして機能し得、免疫応答(特に特異的抗体産生)を誘導し得る性質である。免疫原性を有する抗原が、生体内で実際に免疫誘導能を発揮し、ワクチン効果を発揮するまでには、粘膜を介した生体内への侵入効率や、免疫細胞における抗原提示の効率等の種々の生体内での過程が関連すると考えられる。本発明は、C−CPEを、他の抗原と融合させることにより、生体内においてウエルシュ菌に対する免疫誘導能を増強し得ることを特徴とするものである。
C−CPEをコードする遺伝子はCPE遺伝子を鋳型として適当な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いたpolymerase chain reaction(PCR)法によって取得できる。得られたC−CPE遺伝子を用いて、公知の遺伝子組換え技術によりC−CPE発現ベクターを構築し、これを適当な宿主に導入して発現させた組み換えタンパク質を回収、精製してC−CPEを取得することができる。
C−CPEは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列の部分配列であり、少なくとも第304位〜第319位のアミノ酸配列を含む。C−CPEの大きさ(アミノ酸残基数)は特に問わないが、最大では第53位〜第319位のアミノ酸からなるタンパク質、第194位〜第319位のアミノ酸配列からなるタンパク質、第205位〜第319位のアミノ酸配列からなるタンパク質、最小では第304位〜第319位のアミノ酸配列からなるタンパク質が例示され、好ましくは第194位〜第319位のアミノ酸配列からなるタンパク質である。C−CPEは他の抗原との融合タンパク質を構成した場合に免疫誘導能を発揮し得るものであればよく、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入されたものであってもよい。アミノ酸の置換、欠失、付加または挿入は、第304位〜第319位に領域に含まれるものであってもよい。
またC−CPEは、毒性を発現しないことが好ましい。毒性を発現しないとは、CPEが有する細胞毒性が消滅していることを意味する。CPEの毒性は、CPEのN末端側のアミノ酸領域に支配されていることが知られており、CPEのN末端から第52位までのアミノ酸が欠失したC−CPE(第53位〜第319位)は毒性を発現しないことが報告されている(非特許文献2)。したがって、少なくともCPEの第1位〜第52位までのアミノ酸が欠失したC−CPEとすることで、毒性を発現しないC−CPEを取得することができる。また、CPEの第52位より前の領域を有するC−CPEであっても、毒性を有すると考えられる第45位〜第52位の領域に置換、欠失、挿入、修飾等の変異を誘導することにより、毒性を発現しないC−CPEを取得することも可能である。
ここで「1または数個のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により置換、欠失、付加または挿入できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入されることを意味する。このような変異タンパク質(改変体)は、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するタンパク質に限定されるものではなく、天然に存在するタンパク質を単離精製したものであってもよい。
タンパク質のアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このタンパク質の構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけでなく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸の置換、欠失、付加または挿入を有する。好ましくは、サイレント置換、欠失、付加または挿入であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るポリペプチド活性を変化させないと考えられる。代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
本発明のワクチンに含まれる抗原は特に限定されないが、微生物由来の抗原であることが好ましい。微生物には、常在微生物や感染性病原体などが含まれる。感染性病原体には、感染性疾患の原因となる細菌、ウイルス、寄生生物、または菌類などが含まれる。具体的には、病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌)、コレラ菌、カンピロバクター、肺炎球菌、赤痢菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、百日咳菌、髄膜炎菌、クリプトコッカス、アスペルギルス、インフルエンザウイルス、エイズウイルス(HIV)、ノロウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、風疹ウイルス、狂犬病ウイルス、日本脳炎ウイルス、熱帯熱マラリア原虫、マイコプラズマ、ジフテリア菌、破傷風菌、b型インフルエンザ菌、B型肝炎ウイルス、RSウイルス、腸炎ビブリオ菌などが挙げられる。
微生物由来の抗原としては、微生物に対する免疫を誘導し得るものであればよく、微生物特異的抗体を誘導し得るものであればよい。例えば、微生物由来の抗原としては、微生物由来の毒素を用いることができる。また微生物由来の抗原は、自体公知のワクチンに含まれる有効成分又は今後開発される抗原のいずれであってもよく、特に限定されない。抗原は、粘膜を介して生体内に侵入するものであり、生体内で免疫を誘導し得るような免疫原性を持つものであることが好ましい。例えば、コレラ菌についてはコレラ毒素(以下「CT」)、より具体的にはCTのサブユニットB(以下「CTB」)、病原性大腸菌についてはベロ毒素2型(以下「VT2」)、より具体的にはVT2Bサブユニット(以下「VT2B」)を、抗原として利用することができる。カンピロバクターについてFlaA遺伝子によりコードされる鞭毛タンパク質(以下「FlaA」)を利用することができる。
本発明に用いるCTB、VT2B、FlaAは、具体的にはそれぞれ配列番号3,4,5で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、あるいは、配列番号3,4,5で表されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質が例示される。配列番号3,4,5のアミノ酸配列は以下に記載の通りである。
CTB(配列番号3、アクセッション番号:U25679):
TPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMAN
VT2B(配列番号4、アクセッション番号:NP_050540.1):
MKKMFMAVLFALASVNAMAADCAKGKIEFSKYNEDDTFTVKVDGKEYWTSRWNLQPLLQSAQLTGMTVTIKSSTCESGSGFAEVQFNND
FlaA(配列番号5、アクセッション番号:WP_011812789.1):
MGFRINTNVAALNAKANSDLNAKSLDASLSRLSSGLRINSAADDASGMAIADSLRSQANTLGQAISNGNDALGILQTADKAMDEQLKILDTIKTKATQAAQDGQSLKTRTMLQADINKLMEELDNIANTTSFNGKQLLSGNFTNQEFQIGASSNQTVKATIGATQSSKIGVTRFETGAQSFTSGVVGLTIKNYNGIEDFKFDNVVISTSVGTGLGALAEEINKSADKTGVRATYDVKTTGVYAIKEGTTSQEFAINGVTIGKIEYKDGDGNGSLISAINAVKDTTGVQASKDENGKLVLTSADGRGIKITGDIGVGSGILANQKENYGRLSLVKNDGRDINISGTNLSAIGMGTTDMISQSSVSLRESKGQISATNADAMGFNSYKGGGKFVFTQNVSSISAFMSAQGSGFSRGSGFSVGSGKNLSVGLSQGIQIISSAASMSNTYVVSAGSGFSSGSGNSQFAALKTTAANTTDETAGVTTLKGAMAVMDIAETAITNLDQIRADIGSIQNQVTSTINNITVTQVNVKAAESQIRDVDFASESANYSKANILAQSGSYAMAQANSSQQNVLRLLQ
CTB、VT2B、FlaAは、CTB、VT2B、FlaAを産生するコレラ菌、病原性大腸菌、カンピロバクターから回収、精製することにより取得できる。また、公知の遺伝子組換え技術によりCTB発現ベクター、VT2B発現ベクター、FlaA発現ベクターを構築し、これを適当な宿主に導入して発現させ、組み換えタンパク質を回収、精製して取得することもできる。
C−CPEと他の抗原は融合体であることが好ましい。融合体とは、C−CPEと他の抗原とを含んで一体化されているものであればよく、その形態は限定されない。また、融合体にはC−CPEと他の抗原以外のものが含まれていてもよい。融合体としては、例えば、C−CPEと他の抗原との融合タンパク質(融合抗原とも言う)、抗原を封入したリポソームとC−CPEの結合体、抗原を担持したナノマテリアルとC−CPEの結合体などが挙げられるが、C−CPEと他の抗原との融合タンパク質が好ましい。
C−CPEと他の抗原の融合体において、C−CPEと他の抗原以外のものとして、例えばC−CPEと他の抗原を結合させるリンカーを含むことができる(図2、図12参照)。リンカーは他の抗原と抗原を結合させるためにも使用することができる。リンカーとして、例えば以下の配列番号29〜34に示すアミノ酸配列からなるリンカーを使用することができる。特に配列番号34に示すアミノ酸配列からなるリンカーが好適である。
リンカー例1(配列番号29)(GGGGS)n n=1〜5
リンカー例2(配列番号30)(GGGGS)nGG n=1〜5
リンカー例3(配列番号31)(G)n n=5〜10
リンカー例4(配列番号32)(EAAAK)n n=1〜4
リンカー例5(配列番号33)(PA)n n=2〜34
リンカー例6(配列番号34) GGGGSGGGGSGG
C−CPEと他の抗原との融合タンパク質は、公知の遺伝子組換え技術により製造することができる。例えば、C−CPEをコードする遺伝子と他の抗原とするタンパク質をコードする遺伝子とを人工的に連結した融合遺伝子(ハイブリッド遺伝子)を作製し、当該融合遺伝子を、発現ベクターのプロモーターの下流に挿入し、適当な宿主細胞に導入して発現させることにより取得することができる。融合タンパク質において、C−CPEと他の抗原との結合順序は限定されず、N末端が他の抗原でC末端側がC−CPEとしてもよく、逆にN末端がC−CPEでC末端側が他の抗原としてもよい。なお、他の抗原とするタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列情報は、公知のデータベース(GenBank等)から取得することができる。また、公知の方法を用いて目的遺伝子をクローニングし、塩基配列解析を行うことで塩基配列情報を取得することができる。このようにして得られた塩基配列情報に基づいて、目的の抗原を有する生物から核酸を抽出し、PCR等の公知の手段を用いて遺伝子を取得することができる。
融合タンパク質としては、C−CPEと、コレラ菌、病原性大腸菌、又はカンピロバクターの少なくとも1種の病原体由来の抗原とが融合した融合体が例示される。本発明の多価ワクチンは、少なくとも二価以上のワクチンであり、三価ワクチン、四価ワクチンのような多価ワクチンであってもよい。
本発明のワクチンは、経口投与または非経口投与より投与することができる。非経口投与としては、例えば腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与、鼻腔内投与、経皮投与、経粘膜投与などが挙げられる。経粘膜投与される場合の投与部位は、特に制限されないが、具体的には、鼻粘膜、消化器粘膜(胃腸粘膜、腸管粘膜)、呼吸器粘膜(肺粘膜、気管粘膜)、口腔粘膜、膣粘膜、眼粘膜等が挙げられる。中でも、利便性の理由で、鼻粘膜、消化器粘膜、口腔粘膜が好ましい。
本発明の多価ワクチンの投与対象としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、ウシ、イヌ、ウマ、ヤギ等の哺乳動物やニワトリ等の鳥類などが挙げられる。
本発明の多価ワクチンの有効成分である上記融合体の配合量については、生体内に投与されて免疫応答を誘導する効果を奏するのに有効な量であればよく、抗原の種類、投与対象の年齢や体重、投与形態、製剤の形状や剤型により異なるが、例えば、対象がヒトの場合、1日1回〜数回、好ましくは1日1回、多価ワクチンが投与され(初回免疫)、通常2〜3週間後に同様にして再投与される(追加免疫)。
本発明は、多価ワクチンを含む医薬組成物として製剤化されたものであってもよい。多価ワクチンを含む医薬組成物は、有効成分としての上記融合体の他に、医薬組成物に通常使用される担体または添加剤を適宜配合してもよい。担体または添加剤の配合割合については、医薬品分野において通常採用されている範囲に基づいて、適宜設定すればよい。配合できる担体または添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他水性溶媒、水性または油性基剤等の各種担体;賦形剤、結合剤、pH調整剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等の各種添加剤が挙げられる。
このような添加剤として、具体的には、乳糖、白糖、マンニトール、塩化ナトリウム、ブドウ糖、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸塩等の賦形剤;水、エタノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セラック、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デキストリン、プルラン等の結合剤;クエン酸、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のpH調整剤;カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、ポリソルベート80等の崩壊剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の他の吸収促進剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール、コロイド状ケイ酸、ショ糖脂肪酸類等の滑沢剤;黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、βカロテン、酸化チタン、食用色素(例えば、食用青色1号等)、銅クロロフィル、リボフラビン等の着色剤;並びにアスコルビン酸、アスパルテーム、アマチャ、塩化ナトリウム、果糖、サッカリン、粉糖等の矯味剤等が例示できる。
さらに、上記成分の他、本発明の多価ワクチンを含む医薬組成物には、基剤として生分解性合成高分子を用いてもよい。このような生分解性合成高分子としては、例えばポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸−グリコール酸)共重合体、およびこれらの混合物等が代表的なものとして挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
本発明の多価ワクチンを含む医薬組成物は、形状については特に制限されず、固形状、液体状、半固形状、懸濁状、粉末状、微粒子状のいずれの形状であってもよい。
本発明の医薬組成物は、感染症を予防及び/又は治療するためのものである。感染症は、本発明の多価ワクチンに含まれる抗原により誘導される免疫により、予防及び/又は治療されるものであれば、特に限定されない。本発明の医薬組成物は、感染症の発症の予防、感染症に伴う症状・病態の予防、症状の軽減化等を目的として用いることができる。
本発明の理解を助けるために、以下に実施例及び実験例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例及び実験例に限定されない。なお、以下の実施例および実験例において、C−CPEと他の抗原の融合体は、すべて配列番号34に示すアミノ酸配列からなるリンカーで連結されている。複数の抗原を連結させる場合にも上記リンカーで結合されている。
(実施例1)融合タンパク質PspA−C−CPEの作製
PspA cDNA(入手元:国立大学法人東京大学)を鋳型とし、PCR(forward primer:5’−agggtaccgaagaatctcccgtagcc−3’(配列番号6)(下線部はKpnI切断部位である);reverse primer:5’−gcttaattaattctggggctggagtttc−3’(配列番号7)(下線部はPacI切断部位である)により増幅した。PCR産物およびpET16b−OVA−C−CPE(入手元:国立大学法人大阪大学)(Kakutani H., et al.Biomaterials.(2010)31,5463−5471)をKpnI(New England Biolabs:R0142)、PacI(New England Biolabs:R0547)で37℃、2時間酵素処理した。その後、T4 DNA ligase(Takara:2011A)を用い、ライゲーションを行った。ライゲーション産物とDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)を加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque:02739−74)含有LBプレート(nacalai tesque:20067−85)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque:20066−95)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN:27104)を用い、手順はキットプロトコールに従いプラスミドを抽出した。プラスミドをシークエンス解析し、目的の遺伝子が導入されているプラスミドを得た。得られたプラスミドをpET16b−PspA−C−CPE184と称する。pET16b−PspA−C−CPE184は、C−CPEとして配列番号1の第184位〜第319位のアミノ酸配列をコードする遺伝子をクローニングしたものである。
pET16b−PspA−C−CPE184とBL21(Novagen:69450)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)を加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有Terrific broth培地(Invitrogen:22711022)に培養液を1/10量加え、37℃、3時間振盪培養した。IPTG(0.25mM,nacalai tesque:19742−36)を加え、さらに37℃、3時間振盪培養した。その後、9100×g,2分間遠心し、大腸菌ペレットを回収した。ペレットにbuffer A(10mM Tris−HCl[pH8.0],400mM NaCl,5mM MgCl,0.1mM phenylmethylsulfonyl fluoride,1mM 2−mercaptoethanol,及び10% glycerol)を培養液量の1/100量加え、氷上で40秒間×3回超音波破砕を行った。17800×g,15分間遠心し、上清を0.45μmフィルターに通し、ろ液を回収した。あらかじめ、0.05mM EDTA 12ml,MilliQ 15ml,0.1M NiSO 3ml,MilliQ 5ml,buffer A 10mlを流したHiTrap Chelating HP Columns(GE Healthcare:17040801)にろ液を充填した。カラムに100mM イミダゾール含有buffer Aを10ml流し、非特異的なタンパク質を洗浄後、500mM イミダゾール 10mlを流すことで目的タンパク質(PspA−C−CPE)を抽出した。あらかじめPBS 25mlを流し、平衡化したPD−10カラム(GE Healthcare:17085101)に抽出タンパク質を充填し、PBSを流し込むことでタンパク質のバッファーをPBSに置換した。
PspA−C−CPEのビオチン化はEZ−Link Sulfo−NHS−Biotinylation Kit(ThermoFisher:21425)を用い、手順はキットのプロトコールに準じて行った。
(比較例1)C−CPEタンパク質の作製
pET16b−C−CPE194(入手元:国立大学法人大阪大学)(Uchida H., et al. Biochem Pharmacol.(2010)79,1437−1444)とBL21(Novagen:69450)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)100μlを加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有Terrific broth培地(Invitrogen:22711022)に培養液を1/10量加え、37℃、3時間振盪培養した。IPTG(0.25mM)(nacalai tesque:19742−36)を加え、さらに37℃、3時間振盪培養した。その後、9100×g,2分間遠心し、大腸菌ペレットを回収した。ペレットにbuffer A(10mM Tris−HCl[pH8.0],400mM NaCl,5mM MgCl,0.1mM phenylmethylsulfonyl fluoride,1mM 2−mercaptoethanol,及び10% glycerol)を培養液量の1/100量加え、氷上で40秒間×3回超音波破砕を行った。17800×g,15分間遠心し、上清を0.45μmフィルターに通し、ろ液を回収した。あらかじめ、0.05mM EDTA 12ml,MilliQ 15ml,0.1M NiSO 3ml,MilliQ 5ml,buffer A 10mlを流したHiTrap Chelating HP Columns(GE Healthcare:17040801)にろ液を充填した。カラムに100mM イミダゾール含有buffer Aを10ml流し、非特異的なタンパク質を洗浄後、500mM イミダゾール 10mlを流すことで目的タンパク質(C−CPEタンパク質(配列番号1の第194位〜第319位のアミノ酸配列を有するタンパク質))を抽出した。あらかじめPBS 25mlを流し、平衡化したPD−10カラム(GE Healthcare:17085101)に抽出タンパク質を充填し、PBSを流し込むことでタンパク質のバッファーをPBSに置換した。
(実験例1)血清抗C−CPE IgG抗体の産生能の確認
図1Aに示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)に週1回、計2回で、実施例1及び比較例1にて作製した各種タンパク質を、C−CPE量として10μgとなるように調整し、腹腔内に投与した。C−CPE+Alumに関してはC−CPEにImject Alum Adjuvant(Thermo:77161)100μlを混合したものを室温で30分間混和したものを用いた。最終免疫の1週間後に眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間遠心し、上清(血清)を回収した。
C−CPEタンパク質(10μg/ml in PBS)(比較例1で作製)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、1% BSA−PBS 170μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、血清を加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgG−HRP(Sourthern Biotech:1031−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard&Perry Laboratories:50−76−11) 100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(C−CPE alone:n=4,C−CPE+Alum:n=4,PspA−C−CPE:n=5)
結果を図1Bに示す。C−CPE単独、C−CPE+Alumを投与した場合に比べて、PspA−C−CPEを投与した場合は、血清抗C−CPE IgG抗体の産生能が著しく高いことが確認された。C−CPEは単独では免疫誘導能が低いが、他の抗原と融合体にすることにより、免疫誘導能が高まることが確認された。
(実施例2)融合タンパク質CTB−C−CPEの作製1
pNU212−CTB inaba569B(入手元:国立大学法人東京大学)を鋳型とし、PCR(forward primer:5’−caggtaccacacctcaaaatattact−3’(配列番号8)(下線部はKpnI切断部位である);reverse primer:5’−agaattcttaatttgccatactaattgc−3’(配列番号9)(下線部はEcoRI切断部位である))により増幅した。PCR産物およびpColdII DNA(Takara:3362)をKpnI(New England Biolabs:R0142)、EcoRI−HF(New England Biolabs:R3101)で37℃、2時間酵素処理した。その後、T4 DNA ligase(Takara:2011A)を用い、ライゲーションを行った。ライゲーション産物とDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)を加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque:02739−74)含有LBプレート(nacalai tesque:20067−85)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque:20066−95)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN:27104)を用い、手順はキットプロトコールに従いプラスミドを抽出した。プラスミドをシークエンス解析し、目的の遺伝子が導入されているプラスミドを得た。得られたプラスミドをpColdII−CTBと称する。
次に、pColdII−CTB−C−CPE184を作製する。pNU212−CTB inaba569B(入手元:国立大学法人東京大学)を鋳型とし、PCR(forward primer:5’−caggtaccacacctcaaaatattact−3’(配列番号8)(下線部はKpnI切断部位である);reverse primer:5’−acttaattaaatttgccatactaattgcg−3’(配列番号10)(下線部はPacI切断部位である))により増幅した。PCR産物およびpET16b−PspA−C−CPE184をKpnI(New England Biolabs:R0142)、PacI(New England Biolabs:R0547)で37℃、2時間酵素処理した。その後、T4 DNA ligase(Takara:2011A)を用い、ライゲーションを行った。ライゲーション産物とDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)を加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque:02739−74)含有LBプレート(nacalai tesque:20067−85)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque:20066−95)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN:27104)を用い、手順はキットプロトコールに従いプラスミドを抽出した。プラスミドをシークエンス解析し、目的の遺伝子が導入されているプラスミドを得た。得られたプラスミドをpET16b−CTB−C−CPE184と称する。
pET16b−CTB−C−CPE184を鋳型とし、PCR(forward primer:5’−aaggtaccacacctcaaaatattact−3’(配列番号11)(下線部はKpnI切断部位である);reverse primer:5’−cggaattcttaaaatttttgaaat−3’(配列番号12)(下線部はEcoRI切断部位である))により増幅した。PCR産物およびpColdII DNA(Takara:3362)をKpnI(New England Biolabs:R0142)、EcoRI−HF(New England Biolabs:R3101)で37℃、2時間酵素処理した。その後、T4 DNA ligase(Takara:2011A)を用い、ライゲーションを行った。ライゲーション産物とDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)を加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque:02739−74)含有LBプレート(nacalai tesque:20067−85)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque:20066−95)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN:27104)を用い、手順はキットプロトコールに従いプラスミドを抽出した。プラスミドをシークエンス解析し、目的の遺伝子が導入されているプラスミドを得た。得られたプラスミドをpColdII−CTB−C−CPE184と称する。
pColdII−CTB−C−CPE184を鋳型とし、mutagenesis kit(TOYOBO)を用いて組み換えを行った。pColdII−CTB−C−CPE184、10×Buffer for iPCR、2mM dNTPs、10pmol/μl forward primer(ATAGAAAAAGAAATCCTTGATTTAGCTGCT(配列番号13))、10pmol/μl reverse primer(CTCGAATCCTCCAGATCCTCC(配列番号14))、KOD−Plus−、MilliQを混合し、PCRを行った。得られたPCR産物にDpnIを加え、37℃で1時間酵素処理を行った。その後、PCR産物、Ligation high、T4 Polynucleotide Kinase、MilliQの混合液を16℃、1時間反応させることでライゲーションした。得られたライゲーション産物にフェノールを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を回収し、99.5% エタノール、3M 酢酸ナトリウム、グリコーゲンを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を捨て、70% エタノールを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を回収し、ペレットをMilliQに懸濁した。得られたプラスミドとDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)900μlを加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque)含有LBプレート(nacalai tesque)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をminiprep(QIAGEN)を用いてプラスミドを抽出した。得られたプラスミドをシークエンス解析した。得られたプラスミドはpColdII−CTB−C−CPE194と称され、C−CPEとして配列番号1の第194位〜第319位のアミノ酸配列をコードする遺伝子をクローニングしたものである。
pColdII−CTBまたはpColdII−CTB−C−CPE194とChaperone Competent Cells pG−Tf2/BL21(Takara:9124)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。その後、100μ/ml アンピシリンナトリウム含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム、20μg/mlクロラムフェニコール(nacalai tesque)含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム、20μg/ml クロラムフェニコール、5ng/ml テトラサイクリン塩酸塩(nacalai tesque)含有LB培地(nacalai tesque)にコロニーを植菌し、37℃でOD600=0.4〜0.6まで振盪培養した。15℃、30分間静置した後、IPTG(0.25mM)(nacalai tesque:19742−36)を加え、15℃で24時間振盪培養した。9100×g,2分間遠心し、大腸菌ペレットを回収した。ペレットにbuffer A(10mM Tris−HCl[pH8.0],400mM NaCl,5mM MgCl,0.1mM phenylmethylsulfonyl fluoride,1mM 2−mercaptoethanol,及び10% glycerol)を培養液量の1/100量加え、氷上で40秒間×3回超音波破砕を行った。17800×g,15分間遠心し、上清を0.45μmフィルターに通し、ろ液を回収した。あらかじめ、0.05mM EDTA 12ml,MilliQ 15ml,0.1M NiSO 3ml,MilliQ 5ml,buffer A 10mlを流したHiTrap Chelating HP Columns(GE Healthcare:17040801)にろ液を充填した。カラムに100mMイミダゾール含有buffer Aを10ml流し、非特異的なタンパク質を洗浄後、500mM イミダゾール 10mlを流すことで目的タンパク質(CTB、CTB−C−CPE)を抽出した。あらかじめPBS 25mlを流し、平衡化したPD−10カラム(GE Healthcare:17085101)に抽出タンパク質を充填し、PBSを流し込むことでタンパク質のバッファーをPBSに置換した。
各種タンパク質(0.5μg)にSample Reducing Agent(ThermoFisher:NP0009)、LDS Sample buffer(ThermoFisher:NP0007)を加え、70℃、10分間加温した。NuPAGEゲルシステム(ThermoFisher)を用いて電気泳動を行った。ゲルをCBB Stain One(nacalai tesque:04543−51)で染色した。
本実施例2にて得た融合タンパク質CTB−C−CPEの模式図を図2Aに示す。また、CBB染色してタンパク質を確認した結果を図2Bに示す。CBB染色の結果から各種タンパク質の分子量が確認でき、確かに融合タンパク質CTB−C−CPEが産生されていることが確認された。
(実験例2−1)各種受容体への結合性の確認
(1)GM1結合性の確認
GM1(Sigma:G7641)(5μg/ml in PBS)を96well plateに100μl/wellで播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、0.05% Tween 20−PBSで5回洗浄後、1% BSA−PBS 200μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、実施例2及び比較例1にて作製した各種タンパク質をCTB量として10μg/mlとなるように調整したものを100μl/well播種し、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Purified anti−His Tag Antibody(BioLegend:652501)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで5000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgG−HRP(Sourthern Biotech:1031−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories:50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した(n=3)。
(2)クローディン4結合性の確認
L細胞もしくはmouse claudin−4発現L細胞(入手元:国立大学法人京都大学)を3.0×10cells/wellとなるように96well plateに播種した。実施例2及び比較例1にて作製した各種タンパク質をC−CPE量として10μg/mlとなるように2% NCS−PBSで希釈したものを100μl/well播種し、氷上で1時間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、Purified anti−His Tag Antibody(BioLegend:652501)を2% NCS−PBSで200倍希釈したものを100μl/well播種し、氷上で1時間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、FITC anti−mouse IgG1 Antibody(BioLegend:406605)を2% NCS−PBSで200倍希釈したものを100μl/well播種し、氷上で30分間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、7−AAD Viability Staining Solution(BioLegend:420403)を2% NCS−PBSで100倍希釈したものを50μl/well播種し、氷上で10分間反応させた。2% NCS−PBSで1回洗浄後のサンプルをFACS解析した。
GM1結合性に関する結果を図2Cに、クローディン4結合性に関する結果を図2Dに示す。融合タンパク質CTB−C−CPEも、CTB単独と同様に受容体GM1に対して結合性を有すること、C−CPE単独と同様に受容体クローディン4に対して結合性を有することが確認された。すなわち、融合タンパク質CTB−C−CPEがCTB及びC−CPEのどちらの受容体に対しても同程度の結合性を保持していることが確認された。
(実験例2−2) コレラ毒素特異的血清中IgG、糞便中IgA産生能の確認
(1)コレラ毒素特異的血清中IgGの産生能の確認
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。最終免疫の1週間後、眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間遠心し、上清(血清)を回収した。
コレラ毒素(List Biological Laboratories:100B)(5μg/ml in PBS)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、1% BSA−PBS 170μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、血清を加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgG−HRP(Sourthern Biotech:1031−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories:50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(PBS:n=9,CTB:n=8,C−CPE:n=8,CTB−C−CPE:n=8)
(2)コレラ毒素特異的糞便中IgA産生能の確認
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。最終免疫の1週間後、糞便を回収し、PBSを100mg/mlとなるように加え、4℃、10分間懸濁した。その後、3000×g,10分間遠心し、上清(糞便抽出液)を回収した。
コレラ毒素(List Biological Laboratories:100B)(5μg/ml in PBS)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、1% BSA−PBS 170μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、糞便抽出液を加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgA−HRP(Sourthern Biotech:1040−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories:50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(PBS:n=9,CTB:n=8,C−CPE:n=8,CTB−C−CPE:n=8)
結果を図4Aに示す。 融合タンパク質CTB−C−CPE投与により、CTB単独投与と同等に、コレラ毒素特異的血清中IgG及びコレラ毒素特異的糞便中IgAの両方を誘導し得ることが確認された。
(実験例2−3)CT−GM1結合中和活性の確認
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。最終免疫の1週間後、眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間遠心し、上清(血清)を回収した。
GM1(Sigma:G7641)(5μg/ml in PBS)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、0.05% Tween 20−PBSで5回洗浄後、1% BSA −PBS 200μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、あらかじめコレラ毒素(List Biological Laboratories:100B)(1.25ng)+血清(4μl)を37℃で1時間反応させたものを播種し、2時間反応させた。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Anti−beta subunit Cholera Toxin antibody(abcam:ab34992)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで2000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Donkey anti−rabbit IgG−HRP(BioLegend:406401)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories:50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(PBS:n=9,CTB:n=8,C−CPE:n=8,CTB−C−CPE:n=8)
結果を図4Bに示す。融合タンパク質CTB−C−CPE投与により、CTB単独投与と同等に、CT−GM1結合中和活性を示すことが確認された。すなわち、融合タンパク質CTB−C−CPE投与により、CTB単独投与と同等に、コレラ毒素に対するワクチン効果を示すことが確認された。
(実験例2−4)コレラ毒素投与による下痢誘導に対する防御作用の確認
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。最終免疫の11日後に24時間以上絶食したマウスにメイロン200μlを経口投与した。その15分後にコレラ毒素(List Biological Laboratories:100B)25μgを経口投与し、解剖まで絶食・絶飲した。13〜14時間後にマウスの幽門〜直腸までを摘出し、内容物を回収し、その液体量を測定した。(PBS:n=9,CTB:n=8,C−CPE:n=8,CTB−C−CPE:n=8)
結果を図4Cに示す。融合タンパク質CTB−C−CPE投与により、CTB単独投与と同等に、コレラ毒素投与による下痢誘導を抑制し得ることが確認された。すなわち、融合タンパク質CTB−C−CPE投与により、CTB単独投与と同等に、コレラ毒素に対するワクチン効果を示すことが確認された。
(実験例2−5)ウエルシュ菌毒素特異的血清中IgG産生能
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。最終免疫の1週間後、眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間遠心し、上清(血清)を回収した。
C−CPEタンパク質(10μg/ml in PBS)(比較例1で作製)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、1% BSA −PBS 170μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、血清を加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgG−HRP(Sourthern Biotech:1031−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories: 50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(PBS:n=9,CTB:n=8,C−CPE:n=8,CTB−C−CPE:n=8)
結果を図5Aに示す。融合タンパク質CTB−C−CPE投与により、C−CPE単独投与と比較して、顕著なウエルシュ菌毒素特異的血清中IgG産生を誘導し得ることが確認された。
(実験例2−6)ウエルシュ菌毒素による細胞死に対する中和活性の確認
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。最終免疫の1週間後、眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間遠心し、上清(血清)を回収した。
Vero細胞(JCRB細胞バンク:JCRB0111)を5.0×10cells/wellで播種し、一晩接着させた。翌日、ウエルシュ菌毒素(Bio academia:01−509)(0.1μg)+血清(40μl)をあらかじめ37℃で1時間反応させたものを細胞に播種し、30分間インキュベートした。PBSで2回洗浄後、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque:07553−15)(10μl/well)播種し、37℃で1時間反応させ、OD450nmを測定した。(PBS:n=9,CTB:n=8,C−CPE:n=8,CTB−C−CPE:n=8)
結果を 図5Bに示す。融合タンパク質CTB−C−CPE投与により、C−CPE単独投与と比べて、顕著なウエルシュ菌毒素による細胞死の中和活性を示すことが確認された。実験例2−5の結果と併せて、融合タンパク質CTB−C−CPEにより、CPEとCTの両方に対する免疫応答が誘導可能であることが確認された。
(実験例2−7)ウエルシュ菌毒素の腸管投与に対する生体防御誘導作用の確認
(1)下痢症状に対する防御作用の確認
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。
最終免疫の1週間後、あらかじめ24時間以上絶飲・絶食させたマウスを麻酔下で腹部を開腹し、幽門から6〜18cmの部分に5cm程度のループを作製した。ループにウエルシュ菌毒素(Bio academia:01−509)(15μg)を注入し、腹部を縫合した。90分後、ループを摘出し、長さ・重量を測定した。(PBS:n=8,CTB:n=8,C−CPE:n=6,CTB−C−CPE:n=13,CT+C−CPE:n=6)
(2)絨毛の崩壊に対する防御作用の確認
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。
最終免疫の1週間後、あらかじめ24時間以上絶飲・絶食させたマウスを麻酔下で腹部を開腹し、幽門から6〜18cmの部分に5cm程度のループを作製した。ループにウエルシュ菌毒素(Bio academia:01−509)(15μg)を注入し、腹部を縫合した。90分後、ループを摘出し、PBSで腸内を洗浄後、4% PFAで一晩固定した。翌日、10% スクロースに置換し、12時間浸した。その後、20% スクロースに置換し、12時間浸した。その後、Optimal Cutting Temperature compound(sakura−finetek:4583)に包埋し、液体窒素で凍結させた。凍結ブロックをクリオスタットを用いて、6μmの切片を作製した。切片を10分間流水で洗浄後、ヘマトキシリンで10分間染色した。流水で30分間洗浄後、エオシンで3分間染色した。その後、70%,80%,90% エタノールに10秒ずつ浸し、99.5% エタノールに1分間×2回浸した。その後、キシレンに1分間×3回浸した。Permount Fisher(Fisher Scientific:SP15−100)を1滴滴下し、封入した。
結果を図6A及びBに示す。C−CPE単独、CT+C−CPE(CTとC−CPEの混合)を投与した場合と比べて、融合タンパク質CTB−C−CPE投与した場合は、ウエルシュ菌毒素の腸管投与による下痢及び絨毛の崩壊が抑制されることが確認された。
(実験例2−8)ウエルシュ菌毒素の血中投与に対する生体防御誘導作用の確認
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例2及び比較例1にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。
最終免疫の1週間後にウエルシュ菌毒素(Bio academia:01−509)(100μg/kg)を尾静脈注射した。その30分後にマウスの動態を観察した。
その結果、C−CPE単独、CT+C−CPE(CTとC−CPEの混合)を投与した場合は、毒素の血中投与による高カリウム血症が引き起こされ、マウスはほとんど動かず、四肢のしびれ、筋力の低下が見られた。一方、融合タンパク質CTB−C−CPE投与した場合は、マウスは手足を動かして運動し、四肢のしびれ、筋力の低下が抑えられたことから、高カリウム血症の発症が抑制された。
(実施例3) 融合タンパク質CTB−C−CPEの作製2
pColdII−CTB−C−CPE184を鋳型とし、mutagenesis kit(TOYOBO)を用いて組み換えを行った。pColdII−CTB−C−CPE184、10×Buffer for iPCR、2mM dNTPs、10pmol/μl forward primer(GCTAGTGGAAATTACCCTTATTCAA(配列番号15))、10pmol/μl reverse primer(TGATGAATTAGCTTTCATTACAAGAACA(配列番号16))、KOD−Plus−、MilliQを混合し、PCRを行った。得られたPCR産物にDpnIを加え、37℃で1時間酵素処理を行った。その後、PCR産物、Ligation high、T4 Polynucleotide Kinase、MilliQの混合液を16℃、1時間反応させることでライゲーションした。得られたライゲーション産物にフェノールを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を回収し、99.5% エタノール、3M 酢酸ナトリウム、グリコーゲンを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を捨て、70% エタノールを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を回収し、ペレットをMilliQに懸濁した。得られたプラスミドとDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)900μlを加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque)含有LBプレート(nacalai tesque)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をminiprep(QIAGEN)を用いてプラスミドを抽出した。得られたプラスミドをシークエンス解析した。得られたプラスミドをpColdII−CTB−C−CPE Y306Aとした。
pColdII−CTB−C−CPE Y306Aを鋳型とし、mutagenesis kit(TOYOBO)を用いて組み換えを行った。pColdII−CTB−C−CPE Y306A、10×Buffer for iPCR、2mM dNTPs、10pmol/μl forward primer(GCATTTCAAAAATTTTAAGAATT(配列番号17))、10pmol/μl reverse primer(TATTGAATAAGGGTAATTTCCACT(配列番号18))、KOD−Plus−、MilliQを混合し、PCRを行った。得られたPCR産物にDpnIを加え、37℃で1時間酵素処理を行った。その後、PCR産物、Ligation high、T4 Polynucleotide Kinase、MilliQの混合液を16℃、1時間反応させることでライゲーションした。得られたライゲーション産物にフェノールを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を回収し、99.5% エタノール、3M 酢酸ナトリウム、グリコーゲンを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を捨て、70% エタノールを加え混和し、17800×g、5分間遠心した。上清を回収し、ペレットをMilliQに懸濁した。得られたプラスミドとDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)900μlを加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque)含有LBプレート(nacalai tesque)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をminiprep(QIAGEN)を用いてプラスミドを抽出した。得られたプラスミドをシークエンス解析した。得られたプラスミドをpColdII−CTB−C−CPE Y306A/L315Aとした。pColdII−CTB−C−CPE184は、C−CPEとして配列番号1の第184位〜第319位のアミノ酸配列をコードする遺伝子をクローニングしたものであり、pColdII−CTB−C−CPE Y306A/L315Aは、C−CPEとして配列番号1の第184位〜第319位においてY306A/L315Aの2アミノ酸置換を有するアミノ酸配列をコードをする遺伝子をクローニングしたものである。
pColdII−CTB−C−CPE184またはpColdII−CTB−C−CPE Y306A/L315AとChaperone Competent Cells pG−Tf2/BL21(Takara:9124)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム、20μg/ml クロラムフェニコール(nacalai tesque)含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム、20mg/ml クロラムフェニコール、5ng/ml テトラサイクリン塩酸塩(nacalai tesque)含有LB培地(nacalai tesque)にコロニーを植菌し、37℃でOD600=0.4〜0.6まで振盪培養した。15℃、30分間静置した後、IPTG(0.25mM)(nacalai tesque:19742−36)を加え、15℃で24時間振盪培養した。9100×g,2分間遠心し、大腸菌ペレットを回収した。ペレットにbuffer A(10mM Tris−HCl[pH8.0],400mM NaCl,5mM MgCl,0.1mM phenylmethylsulfonyl fluoride,1mM 2−mercaptoethanol,及び10% glycerol)を培養液量の1/100量加え、氷上で40秒間×3回超音波破砕を行った。17800×g,15分間遠心し、上清を0.45μmフィルターに通し、ろ液を回収した。あらかじめ、0.05mM EDTA 12ml,MilliQ 15ml,0.1M NiSO 3ml,MilliQ 5ml,buffer A 10mlを流したHiTrap Chelating HP Columns(GE Healthcare:17040801)にろ液を充填した。カラムに100mM イミダゾール含有buffer Aを10ml流し、非特異的なタンパク質を洗浄後、500mM イミダゾール 10mlを流すことで目的タンパク質(CTB−C−CPE、CTB−C−CPE Y306A/L315A)を抽出した。あらかじめPBS 25mlを流し、平衡化したPD−10カラム(GE Healthcare:17085101)に抽出タンパク質を充填し、PBSを流し込むことでタンパク質のバッファーをPBSに置換した。
本実施例3にて得た、C−CPE変異体を含む融合タンパク質CTB−C−CPE Y306A/L315Aの模式図を図7Aに示す。
(実験例3−1)クローディン4への結合性の確認
L細胞もしくはmouse claudin−4発現L細胞(入手元:国立大学法人京都大学)を3.0×10cells/wellとなるように96well plateに播種した。実施例3にて作製した各種タンパク質をC−CPE量として10μg/mlとなるように2% NCS−PBSで希釈したものを100μl/well播種し、氷上で1時間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、Purified anti−His Tag Antibody(BioLegend:652501)を2% NCS−PBSで200倍希釈したものを100μl/well播種し、氷上で1時間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、FITC anti−mouse IgG1 Antibody(BioLegend:406605)を2% NCS−PBSで200倍希釈したものを100μl/well播種し、氷上で30分間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、7−AAD Viability Staining Solution(BioLegend:420403)を2% NCS−PBSで100倍希釈したものを50μl/well播種し、氷上で10分間反応させた。2% NCS−PBSで1回洗浄後のサンプルをFACS解析した。
結果を図7Bに示す。C−CPEの変異体との融合タンパク質CTB−C−CPE Y306A/L315Aは、クローディン4への結合性の低下を引き起こすことが確認された。
(実験例3−2)CTB−C−CPE特異的IgG抗体の産生能
図3に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)にCTB量として20μg,C−CPE量として24μgをPBS 200μlに懸濁した各種タンパク質(実施例3にて作製)をマウス皮下に注射した。その1週間後からは、週1回、計3回、皮下注射と同様に調整した各種タンパク質を経口投与した。12時間以上絶食したマウスにメイロン(大塚製薬)200μlを経口投与し、その15分後に各種タンパク質を経口投与した。最終免疫の1週間後、眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間遠心し、上清(血清)を回収した。
CTB−C−CPEタンパク質(10μg/ml in PBS)(実施例3で作製)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、1% BSA−PBS 170μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、血清を加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgG−HRP(Sourthern Biotech:1031−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard&Perry Laboratories:50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(CTB−C−CPE:n=5,CTB−C−CPE Y306A/L315A:n=5)
結果を図7Cに示す。C−CPE変異体との融合タンパク質CTB−C−CPE Y306A/L315Aは、変異を導入していないC−CPEとの融合タンパク質CTB−C−CPEと同程度に、CTB−C−CPE特異的IgG抗体を産生することが確認された。
(実施例4)ワクチン抗原の作製(VT2B,FlaA,VT2B−C−CPE,FlaA−C−CPE)
(1)発現用ベクターの作製
腸管出血性大腸菌(Escherichia coli,O−157,Sakai株)およびカンピロバクター(Campylobacter jejuni,81−176株)のゲノムDNA(入手元:公立大学法人大阪府立大学)を使用した。腸管出血性大腸菌のゲノムDNAを鋳型とし、ベロ毒素2Bサブユニット遺伝子(VT2B)をPCR(forward primer:5’−ggGGTACCatgaagaagatgtttatggcgg−3’(配列番号19)(下線部はKpnI切断部位である);reverse primer:5’−gggggGAATTCgtcattattaaactgcacttcag−3’(配列番号20)(下線部はEcoRI切断部位である))により増幅した。腸管出血性大腸菌のゲノムDNAを鋳型とし、ベロ毒素2Bサブユニット遺伝子(VT2B)をPCR(forward primer:5’−ggGGTACCatgaagaagatgtttatggcgg−3’(配列番号21)(下線部はKpnI切断部位である);reverse primer:5’−ggTTAATTAAgtcattattaaactgcacttcag−3’(配列番号22)(下線部はPacI切断部位である))により増幅した。カンピロバクターのゲノムDNAを鋳型とし、鞭毛抗原FlaA遺伝子(FlaA)をPCR(forward primer:5’−ggGGTACCatgggatttcgtattaacacaaat−3’(配列番号23)(下線部はKpnI切断部位である);reverse primer:5’−gggGTCGACctattgtaataatcttaaaacattttg−3’(配列番号24)(下線部はSalI切断部位である))により増幅した。カンピロバクターのゲノムDNAを鋳型とし、鞭毛抗原FlaA遺伝子(FlaA)をPCR(forward primer:5’−ggGGTACCatgggatttcgtattaacacaaat−3’(配列番号25)(下線部はKpnI切断部位である);reverse primer:5’−ggTTAATTAAttgtaataatcttaaaacattttgct−3’(配列番号26)(下線部はPacI切断部位である))により増幅した。
各PCR産物およびpColdII−CTB−C−CPE194をKpnI(New England Biolabs:R0142)、PacI(New England Biolabs:R0547)、EcoRI(New England Biolabs:R0101)、SalI(New England Biolabs:R0138)、で37℃、2時間酵素処理した。その後、T4 DNA ligase(Takara:2011A)を用い、ライゲーションを行った。ライゲーション産物とDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)を加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque:02739−74)含有LBプレート(nacalai tesque:20067−85)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque:20066−95)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN:27104)を用い、手順はキットプロトコールに従いプラスミドを抽出した。プラスミドをシークエンス解析し、目的の遺伝子が導入されているプラスミド(pColdII−VT2B,pColdII−VT2B−C−CPE194,pColdII−FlaA,pColdII−FlaA−C−CPE194)を得た。次にプラスミドのpColdIIからpColdIに変えるために、各プラスミドとpColdI(Takara,3361)をKpnI(New England Biolabs:R0142)とSalI(New England Biolabs:R0138)で37℃、2時間酵素処理した。その後、T4 DNA ligase(Takara:2011A)を用い、ライゲーションを行った。ライゲーション産物とDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)を加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque:02739−74)含有LBプレート(nacalai tesque:20067−85)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque:20066−95)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN:27104)を用い、手順はキットプロトコールに従いプラスミドを抽出した。プラスミドをシークエンス解析し、目的の遺伝子が導入されているプラスミド(pColdI−VT2B,pColdI−VT2B−C−CPE194,pColdI−FlaA,pColdI−FlaA−C−CPE194)を得た。pColdI−VT2B−C−CPE194及びpColdI−FlaA−C−CPE194は、C−CPEとして配列番号1の第194位〜第319位のアミノ酸配列をコードする遺伝子をクローニングしたものである。
(2)各リンコンビナントタンパク質の発現と精製
pColdI−VT2BもしくはpColdI−VT2B−C−CPE194、pColdI−FlaA、pColdI−FlaA−C−CPE194とChaperone Competent Cells pG−Tf2/BL21(Takara:9124)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム、20μg/mlクロラムフェニコール(nacalai tesque)含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム、20mg/ml クロラムフェニコール、5ng/ml テトラサイクリン塩酸塩(nacalai tesque)含有LB培地(nacalai tesque)にコロニーを植菌し、37℃でOD600=0.4〜0.6まで振盪培養した。15℃、30分間静置した後、IPTG(0.25mM)(nacalai tesque:19742−36)を加え、15℃で24時間振盪培養した。9100×g,2分間遠心し、大腸菌ペレットを回収した。ペレットにbuffer A(10mM Tris−HCl[pH8.0],400mM NaCl,5mM MgCl,0.1mM phenylmethylsulfonyl fluoride,1mM 2−mercaptoethanol,及び10% glycerol)を培養液量の1/100量加え、氷上で40秒間×3回超音波破砕を行った。17800×g,15分間遠心し、上清を0.45μmフィルターに通し、ろ液を回収した。あらかじめ、0.05mM EDTA 12ml,MilliQ 15ml,0.1M NiSO 3ml,MilliQ 5ml,buffer A 10mlを流したHiTrap Chelating HP Columns(GE Healthcare:17040801)にろ液を充填した。カラムに100mM イミダゾール含有buffer Aを10ml流し、非特異的なタンパク質を洗浄後、500mM イミダゾール 10mlを流すことで目的タンパク質(VT2B、VT2B−C−CPE、FlaA、FlaA−C−CPE)を抽出した。あらかじめPBS 25mlを流し、平衡化したPD−10カラム(GE Healthcare:17085101)に抽出タンパク質を充填し、PBSを流し込むことでタンパク質のバッファーをPBSに置換した。
各種タンパク質にSample Reducing Agent(ThermoFisher:NP0009)、LDS Sample buffer(ThermoFisher:NP0007)を加え、70℃、10分間加温した。NuPAGEゲルシステム(ThermoFisher)を用いて電気泳動を行った。ゲルをCBB Stain One(nacalai tesque:04543−51)で染色した。
本実施例4にて得た融合タンパク質VT2B−C−CPE,FlaA−C−CPEの模式図を図8Aに示す。また、CBB染色してタンパク質を確認した結果を図8Bに示す。CBB染色の結果から各種タンパク質の分子量が確認でき、確かに融合タンパク質VT2B−C−CPE,FlaA−C−CPEが産生されていることが確認された。
(実験例4−1)クローディン4への結合性の確認
L細胞もしくはmouse claudin−4発現L細胞(入手元:国立大学法人京都大学)を3.0×10cells/wellとなるように96well plateに播種した。実施例4及び比較例1にて作製した各種タンパク質をC−CPE量として10μg/mlとなるように2% NCS−PBSで希釈したものを100μl/well播種し、氷上で1時間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、Purified anti−His Tag Antibody(BioLegend:652501)を2% NCS−PBSで200倍希釈したものを100μl/well播種し、氷上で1時間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、FITC anti−mouse IgG1 Antibody(BioLegend:406605)を2% NCS−PBSで200倍希釈したものを100μl/well播種し、氷上で30分間反応させた。2% NCS−PBSで2回洗浄後、7−AAD Viability Staining Solution(BioLegend:420403)を2% NCS−PBSで100倍希釈したものを50μl/well播種し、氷上で10分間反応させた。2% NCS−PBSで1回洗浄後のサンプルをFACS解析した。
結果を図8C示す。融合タンパク質VT2B−C−CPE,FlaA−C−CPEは、C−CPEと同程度にクローディン4への結合性を有することが確認された。
(実験例4−2)C−CPE特異的抗体の産生能の確認
(1)免疫方法と血清の回収
図9に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)に週1回、計2回、実施例4及び比較例1にて作製した各種タンパク質(C−CPE+Alum、VT2B−C−CPE、FlaA−C−CPE)各50μgをマウスの腹腔内に投与した。対照群としてPBSのみを投与したマウスを用意した。C−CPE+Alumに関してはPBS 250μlに溶解したC−CPEと等量のImject Alum Adjuvant(Thermo:77161)を室温で30分間混和したものを用いた。VT2B−C−CPEとFlaA−C−CPEはPBS 500μlに溶解したものを用いた。最終免疫の1週間後に眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間,4℃で遠心分離し、上清(血清)を回収した。
(2)抗原(C−CPE)特異的ELISA
C−CPEタンパク質(5μg/ml in PBS)(比較例1で作製)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、1% BSA−PBS 170μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで希釈した血清を加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgG−HRP(Sourthern Biotech:1031−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard&Perry Laboratories:50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(各群:n=3)
結果を図10A示す。融合タンパク質VT2B−C−CPE,FlaA−C−CPEは、C−CPE+Alumと比べて、顕著なウエルシュ菌毒素に対する特異的抗体産生能を発揮することが確認された。
(実験例4−3)ウエルシュ菌毒素による細胞死に対する中和活性の確認
(1)免疫方法と血清の回収
図9に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)に週1回、計2回、実施例4にて作製した各種タンパク質(VT2B−C−CPE、FlaA−C−CPE)各50μgをPBS 500μlに溶解し、マウスの腹腔内に投与した。対照群としてPBSのみを投与したマウスを用意した。最終免疫の1週間後に眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間,4℃で遠心分離し、上清(血清)を回収した。
(2)ウエルシュ菌毒素による細胞死の中和活性の確認
Vero細胞(JCRB細胞バンク:JCRB0111)を5.0×10cells/wellで播種し、一晩接着させた。翌日、ウエルシュ菌毒素(Bio academia:01−509)(0.1μg)+血清(40μl)をあらかじめ37℃で1時間反応させたものを細胞に播種し、30分間インキュベートした。PBSで2回洗浄後、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque:07553−15)(10μl/well)播種し、37℃で1時間反応させ、OD450nmを測定した。(各群:n=3)
結果を図10Bに示す。融合タンパク質VT2B−C−CPE,FlaA−C−CPEは、C−CPE単独と比べて、顕著なウエルシュ菌毒素による細胞死に対する中和活性を誘導することが確認された。
(実験例4−4)VT2B特異的抗体及びFlaA特異的抗体の産生能の確認
(1)免疫方法と血清の回収
図9に示す通り、8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)に週1回、計2回、実施例4にて作製した各種タンパク質(VT2B−C−CPE、FlaA−C−CPE)各50μgをPBS 500μlに溶解し、マウスの腹腔内に投与した。対照群としてPBSのみを投与したマウスを用意した。最終免疫の1週間後に眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間,4℃で遠心分離し、上清(血清)を回収した。
(2)抗原(VT2B,FlaA)特異的ELISA
VT2BもしくはFlaAタンパク質(5μg/ml in PBS)(実施例4で作製)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、1% BSA−PBS 170μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで希釈した血清を加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgG−HRP(Sourthern Biotech:1031−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard&Perry Laboratories:50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(各群:n=3)
結果を図10C及び図10Dに示す。融合タンパク質VT2B−C−CPEが血清中VT2特異的IgG産生を誘導し得ること,融合タンパク質FlaA−C−CPEが血清中FlaA特異的IgG産生を誘導し得ることが確認された。
(実施例5)ワクチン抗原(CTB−VT2B−C−CPE)の作製
(1)CTB−VT2B−C−CPE発現用ベクターの作製
pColdII−CTB−C−CPE194を鋳型とし、コレラ毒素のBサブユニット遺伝子(CTB)をPCR(forward primer:5’−gggGAGCTCacacctcaaaatattactgatttgt−3’(配列番号27)(下線部はSacI切断部位である);reverse primer:5’−ggGGTACCTCCTCCAGATCCTCCTCCTCCAGATCCTCCTCCTCC atttgccatactaattgcggcaat−3’(配列番号28)(下線部はKpnI切断部位である)により増幅した。PCR産物およびpColdI−VT2B−C−CPE194をKpnI(New England Biolabs:R0142)とSalI(New England Biolabs:R0138)で37℃、2時間酵素処理した。その後、T4 DNA ligase(Takara:2011A)を用い、ライゲーションを行った。ライゲーション産物とDH5α(TOYOBO:DNA−903)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。氷上で3分間静置後、SOC(Novagen:69319)を加え、37℃で45分間培養した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム(nacalai tesque:02739−74)含有LBプレート(nacalai tesque:20067−85)に全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LB培地(nacalai tesque:20066−95)にコロニーを1つ植菌し、37℃で一晩培養した。得られた大腸菌をQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN:27104)を用い、手順はキットプロトコールに従いプラスミドを抽出した。プラスミドをシークエンス解析し、目的の遺伝子が導入されているプラスミド(pColdI−CTB−VT2B−C−CPE194)を得た。pColdI−CTB−VT2B−C−CPE194は、C−CPEとして配列番号1の第194位〜第319位のアミノ酸配列をコードする遺伝子をクローニングしたものである。
(2)各リンコンビナントタンパク質の発現と精製
pColdI−CTB−VT2B−C−CPE194とChaperone Competent Cells pG−Tf2/BL21(Takara:9124)の混合液を氷上で30分間静置し、42℃、42秒間加熱した。その後、100μg/ml アンピシリンナトリウム含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム、20μg/mlクロラムフェニコール(nacalai tesque)含有LBプレートに全量播種し、37℃で一晩培養した。翌日、100μg/ml アンピシリンナトリウム、20mg/mlクロラムフェニコール、5ng/ml テトラサイクリン塩酸塩(nacalai tesque)含有LB培地(nacalai tesque)にコロニーを植菌し、37℃でOD600=0.4〜0.6まで振盪培養した。15℃、30分間静置した後、IPTG(0.25mM)(nacalai tesque:19742−36)を加え、15℃で24時間振盪培養した。9100×g,2分間遠心し、大腸菌ペレットを回収した。ペレットにbuffer A(10mM Tris−HCl[pH8.0],400mM NaCl,5mM MgCl,0.1mM phenylmethylsulfonyl fluoride,1mM 2−mercaptoethanol,10% glycerol)を培養液量の1/100量加え、氷上で40秒間×3回超音波破砕を行った。17800×g,15分間遠心し、上清を0.45μmフィルターに通し、ろ液を回収した。あらかじめ、0.05mM EDTA 12ml,MilliQ 15ml,0.1M NiSO 3ml,MilliQ 5ml,buffer A 10mlを流したHiTrap Chelating HP Columns(GE Healthcare:17040801)にろ液を充填した。カラムに100mM イミダゾール含有buffer Aを10ml流し、非特異的なタンパク質を洗浄後、500mM イミダゾール10mlを流すことで目的タンパク質(CTB−VT2B−C−CPE)を抽出した。あらかじめPBS 25mlを流し、平衡化したPD−10カラム(GE Healthcare:17085101)に抽出タンパク質を充填し、PBSを流し込むことでタンパク質のバッファーをPBSに置換した。
本実施例5にて得た融合タンパク質CTB−VT2B−C−CPEの模式図を図11Aに示す。
(実験例5−1)VT2B特異的抗体の産生能の確認
(1)免疫方法と血清の回収
8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)に週1回、計2回、実施例4及び実施例5にて作製した(VT2B,CTB−VT2B−C−CPE)を、VT2B量として18μg、PBS 200μlに溶解し、マウスの皮下に投与した。対照群としてPBSのみを投与したマウスを用意した。最終免疫の1週間後に眼底採血により血液を回収した。回収した血液は30分以上氷上で静置後、3000×g,10分間、4℃で遠心分離し、上清(血清)を回収した。
(2)抗原(VT2B)特異的ELISA
VT2Bタンパク質(5μg/ml in PBS)(実施例4で作製)を96well plateに100μl/well播種し、4℃で一晩固相化した。翌日、1% BSA−PBS 170μlを加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで希釈した血清を加え、室温で2時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、Goat anti−mouse IgG−HRP(Sourthern Biotech:1031−05)を1% BSA−0.05% Tween 20−PBSで4000倍希釈したものを100μl/well播種し、室温で1時間静置した。0.05% Tween 20−PBSで3回洗浄後、TMB(Kirkegaard & Perry Laboratories:50−76−11)100μl/wellを加え、室温で2分間発色させた。0.5N HCl 50μl/wellを加え、反応停止後、OD450nmを測定した。(各群:n=3)
結果を図11Bに示す。融合タンパク質CTB−VT2B−C−CPEが、VT2Bと同程度に、血清中VT2特異的IgG産生を誘導し得ることが確認された。
(実験例5−2)VT2腹腔内投与後のマウスの生存率への影響の確認
(1)免疫方法とVT2の投与
8週齢、♀、BALB/cマウス(日本クレア)に週1回、計2回、実施例4及び実施例5にて作製した各種タンパク質(VT2B,CTB−VT2B−C−CPE)をVT2B量として18μgをPBS 200μlに溶解し、マウスの皮下に投与した。対照群としてPBSのみを投与したマウスを用意した。最終免疫10日後にVT2(Toxin Technology Inc.,STX−2)1ngをPBS 500μlに溶解し、マウスの腹腔内に投与した。VT2投与から1週間、1日に2回(朝と夜)、マウスを観察した。(各群:n=3)
結果を図11Cに示す。融合タンパク質CTB−VT2B−C−CPEが、VT2Bと同程度に、VT2投与後のマウスの生存率を上昇させることが確認された。
(実施例6)ワクチン抗原の作製(VT2B−C−CPE)
本実施例では、ワクチン抗原タンパク質としてC−CPEとVT2Bを含む融合体(VT2B−C−CPE)を作製した(図12A参照)。本実施例のワクチン抗原は、実施例4と同手法により作製した。
(実験例6−1)ウエルシュ菌毒素特異的血清中IgG産生能
本実験例では、実施例6に示すVT2B−C−CPEを実験例2−5と同手法によりマウスに投与したときのIgG産生能を確認した。抗原タンパク質は、図12Bに示すプロトコールに従い0日目及び7日目のマウス皮下に注射し、14日目でのウエルシュ菌毒素特異的血清中IgG産生を確認した。
結果を図12Cに示す。実施例6のVT2B−C−CPE投与により、C−CPE単独投与や、Alumアジュバントを含む抗原タンパク質と比較して、顕著なウエルシュ菌毒素特異的血清中IgG産生を誘導し得ることが確認された。
(実験例6−2)ウエルシュ菌毒素による細胞死に対する中和活性の確認
本実験例では、実験例4−3と同手法により、図13Aに示すプロトコールに従い、各抗原タンパク質をマウスに免疫投与して血清を回収し、得られた血清についてウエルシュ菌毒素による細胞死に対する中和活性を確認した。
結果を図13Bに示す。実施例6のVT2B−C−CPE投与により、C−CPE単独と比べて、顕著なウエルシュ菌毒素によるVero細胞死に対する中和活性を誘導することが確認された。
(実験例6−3)ウエルシュ菌毒素の血中投与に対する生体防御誘導作用の確認
本実験例では、実験例2−6と同手法により、図14Aに示すプロトコールに従い、各抗原タンパク質をマウス皮下投与による免疫を行い、17日目にウエルシュ菌毒素、Bio academia:01−509)(100μg/kg)を尾静脈注射し、血中のカリウム量を測定した。
結果を図14Bに示す。実施例6のVT2B−C−CPE投与により、C−CPE単独に比べて、高カリウム血症の発症が抑制された。
さらに実験例2−8と同手法により各抗原タンパク質をマウスに経口投与し、最終免疫の1週間後にウエルシュ菌毒素(Bio academia:01−509)(100μg/kg)を尾静脈注射した。その30分後にマウスの動態を観察した。
結果を図15に示す。抗原タンパク質がC−CPE単独の場合は、毒素の血中投与による高カリウム血症が引き起こされ、マウスはほとんど動かず、四肢のしびれ、筋力の低下が見られた。一方、実施例6のVT2B−C−CPEを投与した場合は、マウスは手足を動かして運動し、四肢のしびれ、筋力の低下が抑えられたことから、高カリウム血症の発症が抑制された。
(参考例1)VT2B特異的血清中IgG産生能
本参考例では、実施例6にVT2B−C−CPEを実験例2−5と同手法によりマウスに投与したときのIgG産生能を確認した。VT2B−C−CPEは、図16Aに示すプロトコールに従い0日目及び7日目のマウス皮下に注射し、14日目でのVT2B特異的血清中IgG産生を確認した。
結果を図16Bに示す。実施例6のVT2B−C−CPE投与により、VT2B単独投与と同様に顕著なVT2B特異的血清中IgG産生を誘導し得ることが確認された。
(参考例2)VT2皮下内投与後のマウスへの影響の確認
本参考例では、図17Aのプロトコールに従い各抗原タンパク質をマウス皮下に注射し、最終免疫10日後にVT2(Toxin Technology Inc.,STX−2)1ngをPBS 500μlに溶解し、マウスの皮下内に投与したときのマウスへの影響を確認した。VT2投与から1週間、1日に2回(朝と夜)、マウスを観察した。
結果を図17Bおよび17Cに示す。実施例6にVT2B−C−CPEが、VT2Bと同程度に、血清中のBUN(腎障害マーカー)の値を抑制し、VT2投与後のマウスの生存率を上昇させることが確認された。
以上詳述したように、本発明の多価ワクチンを投与することにより、C−CPE単独に比べて顕著にウエルシュ菌に対する免疫を誘導することができ、また同時にウエルシュ菌以外の少なくとも1種以上の病原体に対する免疫を誘導することができる。本発明の多価ワクチンは、効率的に細菌に起因する疾患又は症状を予防及び/又は治療することのできるものであり、感染症の予防及び/又は治療に用いることが期待される。

Claims (9)

  1. ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片と、ウエルシュ菌以外の微生物由来の少なくとも1つの抗原とを有効成分とし、ウエルシュ菌を含む2種以上の微生物に対する免疫を誘導し得ることを特徴とする、多価ワクチン。
  2. 有効成分が、ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片と前記少なくとも1つの抗原とが融合した融合体である、請求項1に記載の多価ワクチン。
  3. ウエルシュ菌エンテロトキシンに対する特異的抗体を誘導し得る、請求項1又は2に記載の多価ワクチン。
  4. ウエルシュ菌以外の微生物由来の抗原に対する反応性を有する抗体を誘導し得る、請求項1〜3のいずれかに記載の多価ワクチン。
  5. ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片が、単独では、ウエルシュ菌エンテロトキシンに対する特異的抗体を誘導できない、請求項1〜4のいずれかに記載の多価ワクチン。
  6. ウエルシュ菌エンテロトキシンのC末端断片が、以下から選択されるタンパク質である、請求項1〜5のいずれかに記載の多価ワクチン:
    (1)配列番号1で表されるアミノ酸配列の部分配列を有しており、少なくとも第304位〜第319位のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (2)(1)のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入されたアミノ酸配列を有しており、免疫原性を有するタンパク質。
  7. 抗原が、コレラ菌、病原性大腸菌、及びカンピロバクターからなる群から選択される病原体に由来する、請求項1〜6のいずれかに記載の多価ワクチン。
  8. 細菌に起因する疾患又は症状を予防及び/又は治療するための、請求項1〜7のいずれかに記載の多価ワクチン。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の多価ワクチンを含有する、感染症を予防及び/又は治療するための医薬組成物。
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