JPWO2018151144A1 - クレーズフィルム、クレーズ形成用フィルム、及び、クレーズフィルムの製造方法 - Google Patents

クレーズフィルム、クレーズ形成用フィルム、及び、クレーズフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

一定の方向に延びるクレーズが縞状に形成された樹脂層を有し、樹脂層は、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸であり、クレーズフィルムの偏向光分率Rr30が15〜65%であるクレーズフィルム。

Description

[関連出願の相互参照]
本願は、2017年2月14日に出願された日本国特許出願第2017−025359号に基づく優先権の利益を主張するものである。当該日本国特許出願の開示は、援用によりその全体が本願に含まれるものとする。
[発明の技術分野]
本発明は、クレーズフィルム、クレーズ形成用フィルム、及び、クレーズフィルムの製造方法に関する。
従来、直線状のクレーズが縞状に形成されたクレーズフィルムが存在する。クレーズフィルムは、従来、一般的には、分子配向を持つ高分子樹脂フィルムを、ブレード等の処理刃を用いて分子配向方向と平行に折り曲げ、その状態で張力を掛けながら分子配向方向に対して垂直方向に引き取って分子配向方向と略平行に連続的に縞状のクレーズを形成することにより製造される。
しかしながら、最も一般的なフィルムの製造法であるTダイ法やインフレーション法においては、押し出された溶融樹脂の流れ方向に対して垂直に強く分子配向させることは難しく、クレーズが流れ方向と垂直になるように連続生産加工することはできない。
そこで、従来、フィルム流れ方向に対して垂直に一軸延伸された横一軸延伸フィルムを用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、横一軸延伸フィルムを工業的に生産するためには大型で複雑であり、一般的に高価な延伸装置(一般にフィルムテンター等と呼称される装置)の導入が必要である。その上、未延伸原反の端部をテンタークリップで保持して横延伸する際、保持部及びその近傍部は所望の厚みや品質が得られず、連続的に一定量のロスが生ずる。そのため生産性が悪く、さらにコストが高くなるといった問題があった。
これに対して、特許文献2には、結晶性の熱可塑性樹脂を含有するものの非結晶状態を有し、かつクレーズが形成されてなるクレーズ形成未延伸フィルムが開示されている(特に、請求項1参照)。また、効果として、延伸工程を経ていないため、延伸装置を必要とせず一般的なフィルム製造用押出機で容易かつ効果的にクレーズフィルムを得ることができる旨が記載されている(特に、段落[0014]参照)。
特開平08−085161号公報 特開2014−224181号公報
特許文献2には、クレーズフィルムの用途として、携帯電話等の液晶画面の覗き見防止や、マイクロバブル発生、浄水器のエア抜き用途が開示されている。また、覗き見防止フィルムはクレーズによる光の散乱と周期性クレーズによるブラインド効果を利用しており、マイクロバブル発生フィルムやエア抜きフィルムは、クレーズがフィルムの厚さ方向に貫通した微細な連続孔であることを利用していることが開示されている。
一方、特許文献2には、クレーズフィルムを用いて光を偏向させることに関する記載はなく、クレーズにより偏向される光量(以下、「偏向光量」ともいう)を多くすることについても記載はない。なお、偏向とは、入射光が、入射面とは反対側の面(出射面)から出射する際に、進行方向が変化することをいう。
また、特許文献2のクレーズ形成未延伸フィルムは、本来結晶化すべき分子を非結晶状態としており、非結晶部分を多く含んでいるため、弾性率が低く破断点伸度が高いと考えられる。そのため、偏向光量を多くするようなクレーズを形成することは困難である。
つまり、本発明者らの検討によれば、偏向光量を多くするためには、隣り合うクレーズ同士の間隔を特定の範囲内とすることが1つの条件であることを見出しているが、特許文献2のクレーズ形成未延伸フィルムは、弾性率が低く破断点伸度が高いため、クレーズ間隔を、偏向光量を多くできるような間隔にすることは困難である。特許文献2には、隣り合うクレーズ同士の間隔がどの程度であるかについて記載されていない。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、クレーズにより偏向される光量を多くすることが可能なクレーズフィルムを提供することにある。また、当該クレーズフィルムの製造に好適に使用できるクレーズ形成用フィルムを提供することでもある。また、当該クレーズフィルムの製造方法を提供することでもある。
本発明者らはクレーズフィルムについて鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有する樹脂層は、未延伸の状態で、偏向される光量を多くすることが可能なクレーズを形成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るクレーズフィルムは、
一定の方向に延びるクレーズが縞状に形成された樹脂層を有し、
前記樹脂層は、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸であり、
下記偏向光分率Rr30の測定方法により測定される偏向光分率Rr30が15〜65%であることを特徴とする。
<偏向光分率Rr30の測定方法>
(1)照射位置に対する光の入射角度を変更することが可能な光源と、前記照射位置を挟んで、前記光源とは反対側に位置し、前記照射位置に対する角度を変更することが可能な受光部とを備える測定装置を準備し、前記光源及び前記受光部の角度変更可能面に対してクレーズの方向が鉛直となるようにクレーズフィルムをセットする。
(2)前記光源から前記クレーズフィルムの一方の面に対して入射角度θ=30°で光を照射する。
(3)前記クレーズフィルムの鉛直方向を0°としたときに、前記受光部の角度αを+90°から−90°まで動かし、1°間隔で出光光量を測定する。このうち、−1°から−90°の90点の測定値の合計を、偏向光量Rd30とする。なお、前記角度αは、クレーズフィルム面に関して前記光源と面対象の位置を含む側をマイナスで表す。
(4)クレーズフィルムをセットせずに、同様の測定を行い、+90°から−90°までの181点の測定値の合計を、初期積算光量Ri30とする。
(5)偏向光分率Rr30(%)=(Rd30/Ri30)×100として算出する。
前記構成によれば、前記樹脂層は、未延伸であり、延伸工程を経ていないため、延伸工程を省略できる点で製造効率に優れる。また、延伸装置を必要としないため、装置導入負担が少ない。
また、前記クレーズフィルムは、偏向光分率Rr30が15〜65%である。前記偏向光分率Rr30が15〜65%であるため、入射角度θ=30°前後で入射する光について偏向される光量を多くすることが可能である。
前記構成においては、下記偏向光分率Rr50の測定方法により測定される偏向光分率Rr50が5〜55%であることが好ましい。
<偏向光分率Rr50の測定方法>
(6)照射位置に対する光の入射角度を変更することが可能な光源と、前記照射位置を挟んで、前記光源とは反対側に位置し、前記照射位置に対する角度を変更することが可能な受光部とを備える測定装置を準備し、前記光源及び前記受光部の角度変更可能面に対してクレーズの方向が鉛直となるようにクレーズフィルムをセットする。
(7)前記光源から前記クレーズフィルムの一方の面に対して入射角度θ=50°で光を照射する。
(8)前記クレーズフィルムの鉛直方向を0°としたときに、前記受光部の角度αを+90°から−90°まで動かし、1°間隔で出光光量を測定する。このうち、−1°から−90°の90点の測定値の合計を、偏向光量Rd50とする。なお、前記角度αは、クレーズフィルム面に関して前記光源と面対象の位置を含む側をマイナスで表す。
(9)クレーズフィルムをセットせずに、同様の測定を行い、+90°から−90°までの181点の測定値の合計を、初期積算光量Ri50とする。
(10)偏向光分率Rr50(%)=(Rd50/Ri50)×100として算出する。
前記偏向光分率Rr50が5〜55%であると、入射角度θ=50°前後で入射する光について偏向される光量を多くすることが可能である。
前記構成においては、隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’が、10〜40μmの範囲内であることが好ましい。隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’が上記範囲内であると、より偏向光量を多くすることができる。
また、本発明に係るクレーズ形成用フィルムは、
樹脂層を有し、
前記樹脂層は、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸であり、
前記樹脂層の流れ方向(MD)の引張弾性率が2.0GPa以上3.2GPa以下であり、前記樹脂層の流れ方向(MD)の破断点伸度が0.2%以上30%以下であることを特徴とする。
上述の通り、本発明者らは、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有する樹脂層は、未延伸の状態で、偏向される光量を多くすることが可能なクレーズを形成することが可能であることを見出した。その理由について、本発明者らは、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有する未延伸の樹脂層は、高弾性、かつ、低破断点伸度を有するためであると推察している。つまり、低弾性であると、クレーズが形成されにくいか、あるいは、形成されるクレーズの間隔が広くなるため、偏向光量が少なくなるが、高弾性であるため、偏向光量が多くなるような前述した適度の間隔、及び、深さでクレーズを形成することが可能になると考えている。また、破断点伸度が高いと、処理刃を当てた際に、クレーズが適切に入らず、樹脂層が伸びてしまうが、低破断点伸度が比較的小さいため、樹脂層が延びずに適切にクレーズが入るものと考えている。
前記構成によれば、前記樹脂層の流れ方向(MD)の引張弾性率が2.0GPa以上3.2GPa以下であり、前記樹脂層の流れ方向(MD)の破断点伸度が0.2%以上30%以下である。従って、当該クレーズ形成用フィルムを用いれば、偏向される光量を多くすることが可能なクレーズを形成することが可能である。
また、本発明に係るクレーズフィルムの製造方法は、
前記クレーズ形成用フィルムを準備する工程Aと、
前記クレーズ形成用フィルムを処理刃のエッジ部に押し当てて、前記クレーズ形成用フィルムに折り曲げ部を形成し、前記折り曲げ部を、前記クレーズ形成用フィルムに対して相対的に移動させることにより、前記樹脂層にクレーズを縞状に形成する工程Bと
を有することを特徴とする。
前記構成によれば、樹脂層の流れ方向(MD)の引張弾性率が2.0GPa以上3.2GPa以下であり、樹脂層の流れ方向(MD)の破断点伸度が0.2%以上30%以下であるクレーズ形成用フィルムを用いて、前記樹脂層にクレーズを形成する。従って、製造されるクレーズフィルムは、偏向される光量を多くすることが可能なクレーズが形成されることになる。
前記構成において、前記折り曲げ部における前記クレーズ形成用フィルムのなす角度θが15°〜160°であり、前記エッジ部の先端形状が、半径1mm以下の半球状であることが好ましい。
前記角度θを15°〜160°とし、前記エッジ部の先端形状を半径1mm以下の半球状にすると、偏向される光量を多くすることが可能なクレーズを形成しやすくすることができる。
本発明によれば、クレーズにより偏向される光量を多くすることが可能なクレーズフィルムを提供することができる。また、当該クレーズフィルムの製造に好適に使用できるクレーズ形成用フィルムを提供することができる。また、当該クレーズフィルムの製造方法を提供することができる。
一実施形態に係るクレーズフィルムを模式的に示す斜視図である。 他の実施形態に係るクレーズフィルムを模式的に示す斜視図である。 偏向光分率を測定するための測定装置の概略模式図である。 クレーズフィルムを採光フィルムとして使用した様子を説明するための模式図である。 クレーズフィルムを採光フィルムとして使用した様子を説明するための他の模式図である。 一実施形態に係るクレーズ形成用フィルムを模式的に示す斜視図である。 他の実施形態に係るクレーズ形成用フィルムを模式的に示す斜視図である。 一実施形態に係るクレーズフィルムの製造方法を説明するための斜視図である。 図8に示したクレーズ形成装置の側面図である。 (a)は、天井照度の評価に用いた測定装置の概略図であり、(b)は、窓Wの位置、及び、サイズを説明するための図であり、(c)は天井照度測定位置、及び、サイズを説明するための図である。 天井照度の評価におけるクレーズフィルム設置時の概略図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
(クレーズフィルム)
図1は、一実施形態に係るクレーズフィルムを模式的に示す斜視図である。図2は、他の実施形態に係るクレーズフィルムを模式的に示す斜視図である。
本実施形態に係るクレーズフィルムには、一定の方向に延びるクレーズが縞状に形成されている。図1に示すクレーズフィルム10では、クレーズフィルム10の短手方向(TD)に直線状又はほぼ直線状に延びるクレーズ14が複数形成されており、複数のクレーズ14は、互いに平行又は略平行に形成されている。また、図2に示すクレーズフィルム11では、クレーズフィルム11の短手方向(TD)に直線状又はほぼ直線状に延びるクレーズ(クレーズ14とクレーズ16とが合わさったもの)が複数形成されており、複数のクレーズは、互いに平行又は略平行に形成されている。つまり、縞状に形成とは、複数のクレーズが互いに平行又は略平行に形成されていることをいう。なお、クレーズフィルム10、クレーズフィルム11では、各クレーズが短手方向(TD)に延びるように形成されている場合について説明するが、本発明においてクレーズは、縞状に形成されていれば、形成方向は特に限定されない。
本実施形態に係るクレーズフィルムは、下記偏向光分率Rr30の測定方法により測定される偏向光分率Rr30が15〜65%である。前記偏向光分率Rr30は、15〜60%であることが好ましく、20〜55%であることがより好ましく、25〜50%であることがさらに好ましく、30〜45%であることが特に好ましい。
前記クレーズフィルムは、下記偏向光分率Rr50の測定方法により測定される偏向光分率Rr50が5〜55%であることが好ましい。前記偏向光分率Rr50は、10〜50%であることがより好ましく、20〜48%であることがさらに好ましく、30〜45%であることが特に好ましい。
なお、本発明において、「偏向光分率Rr30の測定方法により測定される偏向光分率Rr30が15〜65%である」とは、
(X)クレーズ処理の際に、処理刃のエッジ部を押し当てなかった面に光源からの光を照射して測定した値、
(Y)クレーズ処理の際に、処理刃のエッジ部を押し当てた面に光源からの光を照射して測定した値、
の少なくとも一方が、15〜65%であることをいう。
同様に、本発明において、「偏向光分率Rr50の測定方法により測定される偏向光分率Rr50が5〜55%である」とは、
(X)クレーズ処理の際に、処理刃のエッジ部を押し当てなかった面に光源からの光を照射して測定した値、
(Y)クレーズ処理の際に、処理刃のエッジ部を押し当てた面に光源からの光を照射して測定した値、
の少なくとも一方が、5〜55%であることをいう。
以下、クレーズフィルムの偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50の測定方法について説明する。なお、以下では、クレーズフィルム10を例にして、偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50の測定方法について説明するが、クレーズフィルムがどのような層構成であっても、同様にして測定する。例えば、クレーズフィルム11について偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50を測定する場合、クレーズフィルム10の代わりにクレーズフィルム11を所定位置にセットして測定する。
図3は、偏向光分率を測定するための測定装置の概略模式図である。図3に示すように、測定装置30は、照射位置32に対する光の入射角度を変更することが可能な光源34と、照射位置32を挟んで、光源34とは反対側に位置し、照射位置32に対する角度を変更することが可能な受光部36とを備える。
<偏向光分率Rr30の測定方法>
(1)測定装置30を準備し、光源34及び受光部36の角度変更可能面に対してクレーズ14の方向が鉛直となるようにクレーズフィルム10をセットする。
(2)光源34からクレーズフィルム10の一方の面10aに対して入射角度θ=30°で光を照射する。
(3)クレーズフィルム10の鉛直方向を0°としたときに、受光部36の角度αを+90°から−90°まで動かし、1°間隔で出光光量を測定する。このうち、−1°から−90°の90点の測定値の合計を、偏向光量Rd30とする。なお、前記角度αは、クレーズフィルム10面に関して光源34と面対象の位置を含む側(図3では、クレーズフィルム10の左上側)をマイナスで表す。
(4)クレーズフィルム10をセットせずに、同様の測定を行い、+90°から−90°までの181点の測定値の合計を、初期積算光量Ri30とする。
(5)偏向光分率Rr30(%)=(Rd30/Ri30)×100として算出する。
<偏向光分率Rr50の測定方法>
(6)測定装置30を準備し、光源34及び受光部36の角度変更可能面に対してクレーズ14の方向が鉛直となるようにクレーズフィルム10をセットする。
(7)光源34からクレーズフィルム10の一方の面10aに対して入射角度θ=50°で光を照射する。
(8)クレーズフィルム10の鉛直方向を0°としたときに、受光部36の角度αを+90°から−90°まで動かし、1°間隔で出光光量を測定する。このうち、−1°から−90°の90点の測定値の合計を、偏向光量Rd50とする。なお、前記角度αは、クレーズフィルム10面に関して光源34と面対象の位置を含む側(図3では、クレーズフィルム10の左上側)をマイナスで表す。
(9)クレーズフィルム10をセットせずに、同様の測定を行い、+90°から−90°までの181点の測定値の合計を、初期積算光量Ri50とする。
(10)偏向光分率Rr50(%)=(Rd50/Ri50)×100として算出する。
前記偏向光分率Rr30が15〜65%であるため、入射角度θ=30°前後で入射する光について偏向される光量を多くすることが可能である。
さらに、前記偏向光分率Rr50が5〜55%である場合、入射角度θ=50°前後で入射する光について偏向される光量を多くすることが可能である。つまり、前記偏向光分率Rr30が15〜65%であり、且つ、前記偏向光分率Rr50が5〜55%である場合、入射角度θ=30°前後で入射する光、及び、入射角度θ=50°前後で入射する光について偏向される光量を多くすることが可能である。
本実施形態に係るクレーズフィルムは、少なくとも樹脂層を有していれば、層構成は特に限定されない。本明細書において、「樹脂層」とは、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸の層をいい、クレーズ形成可能な層である。
本実施形態に係るクレーズフィルムは、樹脂層のみからなる構成であってもよく、樹脂層と他の樹脂層とからなる構成であってもよく、樹脂層とその他の層とからなる構成であってもよく、樹脂層と他の樹脂層とその他の層とからなる構成であってもよい。本明細書において、「他の樹脂層」とは、樹脂層(結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸の層)には該当しない層であって、クレーズ形成可能な層である。また、「その他の層」とは、クレーズ形成不可能な層である。
本実施形態に係るクレーズフィルムにおいて、樹脂層、他の樹脂層、その他の層の積層順は、特に限定されない。また、樹脂層、他の樹脂層、その他の層は、それぞれ単層であってもよく、2層以上であってもよい。樹脂層、他の樹脂層、その他の層の少なくとも1つを2層以上とする場合、第1の層と第2の層との間に別の層が介在していてもよく、第1の層と第2の層とが接していてもよい。具体的には、例えば、他の樹脂層を2層とする場合、第1の他の樹脂層、樹脂層、第2の他の樹脂層をこの順で積層することとしてもよく、樹脂層、第1の他の樹脂層、第2の他の樹脂層をこの順で積層することとしてもよい。
図1に示したクレーズフィルム10は、樹脂層12の1層からなる構成である。図2に示したクレーズフィルム11は、樹脂層12と、他の樹脂層15と、その他の層17とをこの順で備える構成である。
クレーズフィルムが樹脂層のみからなる場合(例えば、図1に示すクレーズフィルム10)、クレーズフィルムは、未延伸である。樹脂層は、未延伸であれば特に限定されないが、溶融押出により形成され、その後、延伸されていないものであることが好ましい。なお、樹脂層は、溶液流延法や、カレンダー法により形成され、その後、延伸されていないものであってもよい。樹脂層は、未延伸であり、延伸工程を経ていないため、延伸工程を省略できる点で製造効率に優れる。また、延伸装置を必要としないため、装置導入負担が少ない。
また、クレーズフィルムが樹脂層と、他の樹脂層及び/又はその他の層とを備える場合(例えば、図2に示すクレーズフィルム11)、クレーズフィルムは、例えば、樹脂層と他の樹脂層及び/又はその他の層との共押出により形成できる。また、上記方法にて樹脂層のみ単独で先に形成しておき、形成された樹脂層上への他の樹脂層及び/又はその他の層の押出や溶液流延により形成できる。また、他の樹脂層及び/又はその他の層を先に形成しておき、その層上へ樹脂層を押出や溶液流延して形成できる。また、別々に押出や溶液流延等で形成された樹脂層と、他の樹脂層及び/又はその他の層との熱や圧等による直接ラミネートや、あるいは接着剤を介したラミネート等で形成できる。
他の樹脂層、その他の層は、未延伸であってよく、樹脂層が延伸されない方法であれば、他の樹脂層、その他の層は、縦一軸延伸、横一軸延伸、斜め一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の延伸を施した層であって良い。
製造効率の観点からは、他の樹脂層、その他の層は、樹脂層との共押出された未延伸の層であることが好ましい。
クレーズフィルムの厚さは、目的や用途に応じて好適な厚みとなるように適宜設定することができるが、偏向光分率を高めやすい観点からは、5μm〜500μmであることが好ましく、10μm〜300μmであることがより好ましく、15μm〜150μmであることがさらに好ましく、20μm〜100μmであることが特に好ましく、35μm〜50μmであることが特段好ましい。
なお、クレーズフィルムの厚さを上記数値範囲とする方法としては、樹脂層の厚さを調整する方法が挙げられる。ただし、この場合、樹脂層の厚さは、後述するように、5μm〜200μmであることが好ましく、10μm〜150μmであることがより好ましく、15μm〜90μmであることがさらに好ましく、20μm〜60μmであることが特に好ましく、35μm〜50μmであることが特段好ましい。また、クレーズフィルムが、樹脂層以外に、他の樹脂層及び/又はその他の層を有する構成の場合には、樹脂層の厚さを調整せずに又は樹脂層の厚さの調整に加えて、他の樹脂層やその他の層を追加したり、他の樹脂層やその他の層の厚みを調整する方法が挙げられる。
本実施形態に係るクレーズフィルムに形成されている各クレーズの幅(処理刃と垂直な方向の幅)は、0.05μm〜2μmであることが好ましく、0.1μm〜1.5μmであることがより好ましく、0.15μm〜1μmであることがさらに好ましく、0.6μm〜1μmがさらに一層好ましく、0.65μm〜0.95μmが特に好ましい。前記幅が、0.05μm以上であると、光を偏向させ易くなる。一方、前記幅が2μm以下であると、フィルムの透明性が低下しにくく好ましい。前記クレーズの幅は、クレーズフィルムに形成されている全クレーズ個数のうち、50%以上のクレーズが当該数値範囲内にあることをいう。クレーズ幅の測定方法は、実施例記載の方法による。
各クレーズの長さ(処理刃と平行な方向の長さ)は、概ね処理刃の長さと同じ程度の長さとなるが、それはクレーズフィルムの幅方向の長さと同じであって良く、クレーズフィルムの幅方向の長さより短くても良い。クレーズの長さをクレーズフィルムの幅方向の長さより短くすると、クレーズ形成時のフィルムの破断を防止しやすい。クレーズの長さは500μm以上であることが好ましい。
本実施形態に係るクレーズフィルムにおいて、隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’は、樹脂層の厚さをTとすると、L’/Tの値は0.20〜0.80の範囲内であることが好ましく、0.25〜0.60の範囲内であることがより好ましく、0.30〜0.40の範囲内であることがさらに好ましい。
最も好ましい形態は、樹脂層の厚さTが20μm〜60μmの範囲内であり、隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’が、10〜40μmの範囲内であることが好ましく、13〜30μmの範囲内であることがより好ましく、15〜19μmの範囲内であることがさらに好ましい。
さらなる最も好ましい形態は、樹脂層の厚さTが35μm〜50μmの範囲内であり、隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’が、10〜40μmの範囲内であることが好ましく、13〜30μmの範囲内であることがより好ましく、15〜19μmの範囲内であることがさらに好ましい。
なお、前記間隔Lは、一方のクレーズの中心線と、他方のクレーズの中心線との間の距離をいう(図1、図2参照)。隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’は、実施例に記載の方法により測定された値である。
本実施形態に係るクレーズフィルムにおいて、長さ500μm当たりのクレーズ個数は、15〜45個の範囲内であることが好ましく、20〜40個の範囲内であることがより好ましく、26〜35個の範囲内であることがさらに好ましい。長さ500μm当たりのクレーズ個数が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。長さ500μm当たりのクレーズ個数は、実施例に記載の方法により測定された値である。
本実施形態に係るクレーズフィルムにおいて、細クレーズ間隔率は、0〜30%の範囲内であることが好ましく、5〜25%の範囲内であることがより好ましく、10〜18%の範囲内であることがさらに好ましい。細クレーズ間隔率が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。
前記細クレーズ間隔率は、長さ500μm当たりのクレーズ個数を測定した際に、値Lが10μm以下となった個数(異常値を除いた場合は、異常値を除いた後の該当個数)を、上記長さ500μm当たりのクレーズ個数で割った割合を百分率で表記したものであり、実施例に記載の方法により測定された値である。
本実施形態に係るクレーズフィルムに形成されている各クレーズの深さD(μm)は、樹脂層の厚さに対して80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。本実施形態に係るクレーズフィルムに形成されている各クレーズの深さは、樹脂層の厚さに対して100%であってもよい。各クレーズの深さが、上記各好ましい範囲である場合、光を偏向させ易くなる。クレーズ深さDの測定方法は、実施例記載の方法による。各クレーズの深さの一例として、各クレーズの深さD(μm)は、40μm以上が好ましく、42.5μm以上がより好ましく、45μm以上がさらに好ましい。
本実施形態に係るクレーズフィルムに形成されている各クレーズのアスペクト比(即ち、L’/D)は、0.05〜0.55が好ましく、0.10〜0.41がより好ましく、0.25〜0.40がさらに好ましく、0.30〜0.37が特に好ましい。各クレーズのアスペクト比が、上記各好ましい範囲である場合、光を偏向させ易くなる。
本実施形態に係るクレーズフィルムにおいて、クレーズのボイド(孔)内に存在する成分は、本発明の効果が奏される範囲内で特に限定されない。例えば、クレーズのボイド(孔)内に存在する成分としては、空気等の気体であってもよく、着色剤、染料、安定剤、導電性ポリマー等の添加剤が充填されていてもよいが、気体(特に空気)であることが好ましい。
本実施形態に係るクレーズフィルムは、流れ方向(MD)の引張弾性率が1.7GPa以上2.8GPa以下であることが好ましく、1.8GPa以上2.7GPa以下であることがより好ましい。前記引張弾性率が1.7GPa以上であると、クレーズ処理前のフィルムに偏向光量が多くなるような比較的狭い間隔、及び、深さでクレーズを形成することが可能となる。また、前記引張弾性率が2.8GPa以下であると、クレーズ処理前のフィルムにクレーズが形成されずにフィルムが破断してしまうことを防止することができる。なお、前記引張弾性率は、実施例に記載の条件にて測定した値である。
本実施形態に係るクレーズフィルムは、流れ方向(MD)の破断点伸度が1%以上15%以下であることが好ましく、1.5%以上10%以下であることがより好ましく、2%以上4%以下であることがさらに好ましい。前記破断点伸度が15%以下であると、クレーズ処理前のフィルムが延びずに適切にクレーズを形成することができる。また、前記破断点伸度が1%以上であると、クレーズが形成されずにクレーズ処理前のフィルムが破断してしまうことを防止することができる。なお、前記破断点伸度は、23℃にて、実施例に記載の条件にて測定した値である。
本実施形態に係るクレーズフィルムは、流れ方向(MD)の破断点応力が18MPa以上60MPa以下であることが好ましく、30MPa以上50MPa以下であることがより好ましい。前記破断点応力が18MPa以上であると、クレーズ処理前のフィルムにクレーズが形成されずに破断してしまうことを防止することができる。また、前記破断点応力が60MPa以下であると、フィルムに適切にクレーズを形成しやすく偏向光分率を高めやすい。なお、前記破断点応力は、23℃にて、実施例に記載の条件にて測定した値である。
本実施形態に係るクレーズフィルムは透光性を有し、具体的には、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は100%未満であって良く、好ましくは98%以下である。上記範囲とすることで、好ましい偏向光分率を得やすい。
以下、樹脂層、他の樹脂層、その他の層について、クレーズフィルム10、及び、クレーズフィルム11が備える樹脂層12、他の樹脂層15、その他の層17を例に説明する。ただし、樹脂層12、他の樹脂層15、その他の層17は、本実施形態に係るクレーズフィルムの樹脂層、他の樹脂層、その他の層の一例を説明するものであり、これに限定されない。
(樹脂層)
樹脂層12には、一定の方向に延びるクレーズ14が縞状に形成されている。本実施形態では、樹脂層12の短手方向(TD)に直線状又はほぼ直線状に延びるクレーズ14が複数形成されており、複数のクレーズ14は、互いに平行又は略平行に形成されている。なお、本実施形態では、各クレーズが樹脂層の短手方向(TD)に延びるように形成されている場合について説明する。本実施形態では、クレーズが縞状に形成されていれば、各クレーズの形成方向は特に限定されないが、各クレーズは樹脂層の短手方向(TD)に延びるように形成されていることが好ましい。各クレーズを、樹脂層の短手方向(TD)に延びるように形成する好適な手法としては、前述および後述されているように、クレーズ形成用フィルム20を処理刃52のエッジ部54に押し当てて、クレーズ形成用フィルム20に折り曲げ部24を形成し、折り曲げ部24を、クレーズ形成用フィルム20に対して相対的に移動させることが挙げられる。処理刃を用いた前記処理は、偏向光分率Rr30が15〜65%となるように、折り曲げ部の角度、引取応力、処理刃のエッジ部の形状、移動速度等を調整して行う。各クレーズを、樹脂層の長手方向(MD)に延びるように形成する手法としては、化学的手法(クレーズ形成用フィルム20を各種溶媒に浸漬させる手法)が挙げられる。化学的手法を用いた前記処理は、偏向光分率Rr30が15〜65%となるように、溶媒の種類や濃度、フィルムに含有する添加剤(溶媒と作用しクレーズを生じさせるための添加剤)の種類や量などを調整して行う。
樹脂層12は、偏向光分率Rr30が15〜65%であることが好ましい。前記偏向光分率Rr30は、15〜60%であることがより好ましく、20〜55%であることがさらに好ましく、25〜50%であることが特に好ましく、30〜45%であることが特段好ましい。
また、樹脂層12は、偏向光分率Rr50が5〜55%であることが好ましい。前記偏向光分率Rr50は、10〜50%であることがより好ましく、20〜48%であることがさらに好ましく、30〜45%であることが特に好ましい。
樹脂層12の偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50の測定方法は、クレーズフィルムの偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50の測定方法の項で説明した内容において、クレーズフィルムを樹脂層12に置き換えること以外は、クレーズフィルムでの測定方法と同様である。従って、ここでの説明は省略する。
前記偏向光分率Rr30が15〜65%である場合、入射角度θ=30°前後で入射する光について偏向される光量を多くすることが可能である。また、前記偏向光分率Rr50が5〜55%である場合、入射角度θ=50°前後で入射する光について偏向される光量を多くすることが可能である。
また、前記偏向光分率Rr30が15〜65%であり、且つ、前記偏向光分率Rr50が5〜55%である場合、入射角度θ=30°前後で入射する光、及び、入射角度θ=50°前後で入射する光について偏向される光量を多くすることが可能である。
樹脂層12において、各クレーズ14の幅(処理刃と垂直な方向の幅)は、0.05μm〜2μmであることが好ましく、0.1μm〜1.5μmであることがより好ましく、0.15μm〜1μmであることがさらに好ましく、0.6μm〜1μmがさらに一層好ましく、0.65μm〜0.95μmが特に好ましい。前記幅が、0.05μm以上であると、光を偏向させ易くなる。一方、前記幅が2μm以下であると、フィルムの透明性が低下しにくく好ましい。前記クレーズ14の幅は、樹脂層12に形成されている全クレーズ個数のうち、50%以上のクレーズが当該数値範囲内にあることをいう。
各クレーズの長さ(処理刃と平行な方向の長さ)は、概ね処理刃の長さと同じ程度の長さとなるが、それはクレーズフィルムの幅方向の長さと同じであって良く、クレーズフィルムの幅方向の長さより短くても良い。クレーズの長さをクレーズフィルムの幅方向の長さより短くすると、クレーズ形成時のフィルムの破断を防止しやすい。クレーズの長さは500μm以上であることが好ましい。
隣り合うクレーズ14同士の間隔Lの平均値L’は、樹脂層の厚さをTとすると、L’/Tの値は、0.20〜0.80の範囲内であることが好ましく、0.25〜0.60の範囲内であることがより好ましく、0.30〜0.40の範囲内であることがさらに好ましい。
最も好ましい形態は、樹脂層の厚さTが20μm〜60μmの範囲内であり、隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’が、10〜40μmの範囲内であることが好ましく、13〜30μmの範囲内であることがより好ましく、15〜19μmの範囲内であることがさらに好ましい。
さらなる最も好ましい形態は、樹脂層の厚さTが35μm〜50μmの範囲内であり、隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’が、10〜40μmの範囲内であることが好ましく、13〜30μmの範囲内であることがより好ましく、15〜19μmの範囲内であることがさらに好ましい。
隣り合うクレーズ14同士の間隔Lの平均値L’が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。
樹脂層12において、長さ500μm当たりのクレーズ個数は、15〜45個の範囲内であることが好ましく、20〜40個の範囲内であることがより好ましく、26〜35個の範囲内であることがさらに好ましい。長さ500μm当たりのクレーズ個数が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。長さ500μm当たりのクレーズ個数は、実施例に記載の方法により測定された値である。
樹脂層12において、細クレーズ間隔率は、0〜30%の範囲内であることが好ましく、5〜25%の範囲内であることがより好ましく、10〜18%の範囲内であることがさらに好ましい。細クレーズ間隔率が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。前記細クレーズ間隔率は、実施例に記載の方法により測定された値である。
層構成上、樹脂層が最表層とならず、フィルム表面からの測定で各クレーズの幅、隣り合うクレーズ同士の間隔の平均値、長さ500μm当たりのクレーズ個数、および細クレーズ間隔率が測定しにくい場合は、ウルトラミクロトーム等の観察用切片作製装置を用いて、クレーズ処理刃と垂直の方向のクレーズフィルム断面観察用切片を作成し、その顕微鏡観察像より測定する。顕微鏡観察する際に、クレーズと直交する直線を引く位置(後述する実施例での細クレーズ間隔率の測定の項を参照)は、樹脂層中で、クレーズ処理刃から遠い側の端部近傍とする。
樹脂層12において、クレーズの深さD(μm)は、樹脂層の厚さに対して80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。樹脂層12に形成されている各クレーズの深さは、樹脂層の厚さに対して100%であってもよい。各クレーズの深さが、上記各好ましい範囲である場合、光を偏向させ易くなる。クレーズ深さDの測定方法は、実施例記載の方法による。各クレーズの深さの一例として、各クレーズの深さD(μm)は、40μm以上が好ましく、42.5μm以上がより好ましく、45μm以上がさらに好ましい。
樹脂層12に形成されている各クレーズのアスペクト比(即ち、L’/D)は、0.05〜0.55が好ましく、0.10〜0.41がより好ましく、0.25〜0.40がさらに好ましく、0.30〜0.37が特に好ましい。各クレーズのアスペクト比が、上記各好ましい範囲である場合、光を偏向させ易くなる。
樹脂層12は、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有する。結晶性ポリスチレン系樹脂とは、DSCを用いて、窒素流下、−40℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持し、10℃/分で−40℃まで冷却し、−40℃で5分間保持した後、再び10℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線に、明確な溶融ピークが現れるポリスチレン系樹脂をいう。本発明において、樹脂層12に含まれる結晶性ポリスチレン系樹脂の含有量は、当該樹脂層12を構成する樹脂成分の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることがさらに一層好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、95質量%以上であることが特段好ましい。また、樹脂層12に含まれる結晶性ポリスチレン系樹脂の含有量は、当該樹脂層12を構成する樹脂成分全体に対して100質量%であってもよいし、樹脂層全体に対して100質量%であってもよい。
前記結晶性ポリスチレン系樹脂としては、主にシンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂を用いるのが好ましい。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものをいう。
前記結晶性ポリスチレン系樹脂のタクティシティー(立体規則性)は、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量することができる。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。本発明に用いる前記結晶性ポリスチレン系樹脂は通常、ラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、若しくはラセミトリアッドで60%以上、好ましくは75%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレン系ポリマーである。
前記結晶性ポリスチレン系樹脂の種類としては、ポリスチレン(スチレン単独重合体)、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体およびこれらの混合物、ならびにこれらを主成分とする共重合体が挙げられる。
前記ポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)等が挙げられる。前記ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。前記ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。前記ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
これらの構造単位を含む共重合体のコモノマー成分としては、上記スチレン系重合体のモノマーのほか、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等のオレフィンモノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエンモノマー、環状オレフィンモノマー、環状ジエンモノマー、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アクリロニトリル等の極性ビニルモノマーが挙げられる。好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレンおよびこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
前記結晶性ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系モノマーとして少なくともスチレンとp−メチルスチレンを共重合させて得られた樹脂が好ましく、スチレン系モノマー中のp−メチルスチレンの含有率は1〜30モル%であることが好ましく、3〜15モル%であることがより好ましい。上記範囲とすることで、厚み精度よくフィルム成形しやすく好ましい。厚み精度を良くすることで、偏向光分率のばらつき精度を向上させやすく好ましい。
前記結晶性ポリスチレン系樹脂の分子量は、特に制限されないが、好ましくは重量平均分子量が1万以上、より好ましくは5万以上である。重量平均分子量を1万以上とすることで、得られる樹脂層22の熱的性質や機械強度を向上させることができる。また、前記ポリスチレン系樹脂の分子量の上限は、成形品の厚み精度の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは150万以下である。
前記結晶性ポリスチレン系樹脂は、JIS−K7210に準拠し、300℃、11.77Nで測定したメルトフローレートが、好ましくは1〜40g/10分、より好ましくは10〜35g/10分である。メルトフローレートを上記範囲とすることで、厚み精度よくフィルム成形しやすく好ましい。
前記結晶性ポリスチレン系樹脂は、公知の方法、例えばスチレンをモノマーとし、メタロセン触媒を用いて重合する方法などにより製造したものを用いてよく、または市販されているものを用いてもよい。代表的市販品としては、例えば出光興産株式会社製XAREC(登録商標)142ZE、XAREC(登録商標)300ZC、XAREC(登録商標)130ZCおよびXAREC(登録商標)90ZCなどが挙げられる。これらの結晶性ポリスチレン系樹脂は、1種のみを単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
樹脂層12には、前記結晶性ポリスチレン系樹脂の他に樹脂成分として、前記結晶性ポリスチレン系樹脂とは異なる結晶性樹脂または非晶性樹脂(以下、「他の樹脂」とも称する)を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有させてもよい。他の樹脂は、例えば、低温耐衝撃性の調整、表面粗さの調整、剛度、強度等の各種物性の調整等を目的として適宜選択できる。
前記他の樹脂としては、特に限定されず、フィルム状の樹脂層12の形成に適した従来公知の樹脂が挙げられる。前記他の樹脂の具体例としては、フィルム用途に適したものとされる従来公知の樹脂を適宜用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のポリオレフィン系樹脂や、環状ポリオレフィン系樹脂、あるいはそれらの共重合体樹脂、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体等のオレフィン系重合体が例示できる。他の樹脂層やその他の層を備えるクレーズフィルムとする場合、オレフィン系重合体は、他の樹脂層やその他の層との接着性の観点から、酸変性やアルカリ変性等の変性オレフィン系重合体が好ましい。
他の具体例としては、非晶性のスチレン系樹脂が、結晶性ポリスチレン系樹脂との混和性に優れ、透明な樹脂層を形成しやすく好ましい。スチレン系樹脂としては、非晶性の無色透明の汎用ポリスチレン(一般にGPPS等と呼称される)、GPPSにゴムを加え耐衝撃性を持たせた耐衝撃性ポリスチレン(一般にHIPS等と呼称される)、スチレンとアクリロニトリルを共重合させ耐薬品性を持たせたスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂(一般にSAN等と呼称される)、ゴムによる耐衝撃性とアクリロニトリルによる耐薬品性の両方を合わせ持ったアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(一般にABS等と呼称される)、ハードセグメントとしてのポリスチレンとソフトセグメントとしてのポリイソプレンやポリブタジエン等のブロック共重合体であるスチレン系熱可塑性エラストマー(一般にTPS等と呼称される)や水添チレン系熱可塑性エラストマー等が、いずれも好ましく使用可能である。スチレン系樹脂は市販品を用いてよく、具体的には、クラレ株式会社製セプトン(登録商標)、三菱樹脂株式会社製ラバロン(登録商標)、DIC株式会社製ディックスチレン(登録商標)、DIC株式会社製リューレックス(登録商標)、DIC株式会社製ハイブランチ(登録商標)、ダイセルポリマー株式会社製セビアン(登録商標)等が好適に使用可能である。
また他の具体例としては、ポリビニルアルコールやポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、PETやPBT等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート等のポリウレタン系樹脂、ナイロン66等のポリアミド系樹脂やそれらの共重合樹脂が挙げられる。
なかでも、非晶性のスチレン系樹脂として例示された樹脂が、結晶性ポリスチレン系樹脂との混和性に優れ、樹脂層12の透明性を高めることで、偏向光分率を高めやすく好ましい。
前記他の樹脂の含有量は、樹脂層12を構成する樹脂成分全体に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。前記他の樹脂は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
樹脂層12は、必要に応じて、偏向光分率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、任意成分として、添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、有機滑剤、無機滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を含有してもよい。前記添加剤は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
前記熱安定剤および前記酸化防止剤の例としては、フェノール系、ヒンダードアミン系、ホスファイト系、ラクトン系、トコフェロール系の熱安定剤や酸化防止剤が例示される。さらに具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製「Irganox(登録商標)1010」)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシ)ベンゼン(BASFジャパン株式会社製「Irganox(登録商標)1330」)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製「Irgafos(登録商標)168」)などが挙げられる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤系から選ばれた少なくとも1種あるいはそれらの組み合わせ、あるいはフェノール系とホスファイト系との組み合わせ、およびフェノール系とラクトン系、フェノール系とホスファイト系とラクトン系の組み合わせが、フィルムの化学的な安定性を付与する観点から好ましい。
前記有機系滑剤としては、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等脂肪族アミド、ラウリル酸ジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、脂肪族モノグリセライド、脂肪族ジグリセライド、シリコーン架橋ポリマー、フッ素系ポリマー等が挙げられる。また前記無機系滑剤としては、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
前記塩素捕獲剤の例としては、ステアリン酸カルシウムや金属石鹸類、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
前記帯電防止剤としては、アルキルメチルジベタイン、アルキルアミンジエタノールおよび/またはアルキルアミンエタノールエステルおよび/またはアルキルアミンジエタノールジエステル等が挙げられる。これらのうち2種類以上の帯電防止剤を併用しても良く、さらに脂肪族アルコールを併用しても良い。
それらのなかでも、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステルとステアリルジエタノールアミンを併用すると、帯電防止性能に優れる。
前記帯電防止剤の代表的な市販品の例としては、花王株式会社製エレクトロストリッパー(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤等が例示できる。これらは市販品を使用してよく、例えば株式会社ADEKA社製アデカスタブ(登録商標)等を好適に用いることができる。
前記着色剤は、プラスチックフィルムに対して通常使用されるものである限り特に限定されない。前記着色剤としては、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、サチンホワイト、カドミウム・クロム含有無機化合物、アゾ、キナクリドン有機顔料等が挙げられる。また市販される染料や有色顔料を使用してよく、例えば東京インキ株式会社製カラーマスターバッチやドライカラー、大日精化工業株式会社製ハイコンクマスター(登録商標)やカラーコンパウンド等を好適に用いることができる。
樹脂層12は、未延伸である。樹脂層12は、未延伸であれば特に限定されないが、溶融押出により形成され、その後、延伸されていないものであることが好ましい。樹脂層12は、未延伸であり、延伸工程を経ていないため、延伸工程を省略できる点で製造効率に優れる。また、延伸装置を必要としないため、装置導入負担が少ない。樹脂層12の製造方法は、クレーズフィルムの項で説明したので、ここでの説明は省略する。
樹脂層12の厚さTは、5μm〜200μmであることが好ましく、10μm〜150μmであることがより好ましく、15μm〜90μmであることがさらに好ましく、20μm〜60μmであることが特に好ましく、35μm〜50μmであることが特段好ましい。樹脂層12の厚さが5μm以上であると、クレーズ処理時の破断や使用時の破れが起こりにくくなり、かつ偏向光分率を高めやすい。一方、樹脂層12の厚さが200μm以下であると、偏向光分率を高めやすい。特に入射角度が高い場合、例えば入射角度が50°の場合でも、上記厚みとすることで、偏向光分率を高めることができる。
樹脂層12は、流れ方向(MD)の引張弾性率が1.7GPa以上2.8GPa以下であることが好ましく、1.8GPa以上2.7GPa以下であることがより好ましい。前記引張弾性率が1.7GPa以上であると、クレーズ処理前の樹脂層12(すなわち、樹脂層22)に偏向光分率が高くなるような比較的狭い間隔、及び、深さでクレーズを形成することが可能となる。また、前記引張弾性率が2.8GPa以下であると、クレーズ処理前の樹脂層12にクレーズが形成されずに樹脂層が破断してしまうことを防止することができる。なお、前記引張弾性率は、実施例に記載の条件にて測定した値である。
樹脂層12は、流れ方向(MD)の破断点伸度が1%以上15%以下であることが好ましく、1.5%以上10%以下であることがより好ましく、2%以上4%以下であることがさらに好ましい。前記破断点伸度が15%以下であると、クレーズ処理前の樹脂層12が延びずに適切にクレーズを形成することができる。また、前記破断点伸度が1%以上であると、クレーズが形成されずに樹脂層が破断してしまうことを防止することができる。なお、前記破断点伸度は、23℃にて、実施例に記載の条件にて測定した値である。
樹脂層12は、流れ方向(MD)の破断点応力が18MPa以上60MPa以下であることが好ましく、30MPa以上50MPa以下であることがより好ましい。前記破断点応力が18MPa以上であると、クレーズ処理前の樹脂層12にクレーズが形成されずに樹脂層が破断してしまうことを防止することができる。また、前記破断点応力が60MPa以下であると、樹脂層12に適切にクレーズを形成しやすく偏向光分率を高めやすい。なお、前記破断点応力は、23℃にて、実施例に記載の条件にて測定した値である。
樹脂層12は透光性を有し、具体的には、樹脂層12のみで測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は100%未満であって良く、好ましくは98%以下である。上記範囲とすることで、好ましい偏向光分率を得やすい。
(他の樹脂層)
他の樹脂層15には、一定の方向に延びるクレーズ16が縞状に形成されている。クレーズ16の入り方は、樹脂層12の項で述べたのと同様とすることができる。なお、クレーズ16は、図2に示すように、樹脂層12のクレーズ14から連続的に深さ方向に形成されていてもよく、クレーズ14が形成されていない部分に、形成されていてもよい。クレーズ16が、樹脂層12のクレーズ14から連続的に深さ方向に形成されていると、偏向光分率を高めやすく好ましい。
他の樹脂層15は、偏向光分率Rr30が15〜65%であることが好ましく、15〜60%であることがより好ましい。また、他の樹脂層15は、偏向光分率Rr50が5〜55%であることが好ましい。他の樹脂層15の偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50の測定方法は、クレーズフィルムの偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50の測定方法の項で説明した内容において、クレーズフィルムを他の樹脂層15に置き換えること以外は、クレーズフィルムの測定方法と同様である。従って、ここでの説明は省略する。
他の樹脂層15において、各クレーズ16の幅(処理刃と垂直な方向の幅)は、樹脂層12のクレーズ14から連続的に深さ方向に形成されていると好ましいため、樹脂層12と同じであることが好ましい。具体的には0.05μm〜2μmであることが好ましく、0.1μm〜1.5μmであることがより好ましく、0.15μm〜1μmであることがさらに好ましく、0.6μm〜1μmがさらに一層好ましく、0.65μm〜0.95μmが特に好ましい。前記幅が、0.05μm以上であると、光を偏向させ易くなる。一方、前記幅が2μm以下であると、フィルムの透明性が低下しにくく好ましい。前記クレーズ16の幅は、他の樹脂層15に形成されている全クレーズ個数のうち、50%以上のクレーズが当該数値範囲内にあることをいう。
各クレーズの長さ(処理刃と平行な方向の長さ)は、樹脂層12のクレーズ14から連続的に深さ方向に形成されていると好ましいため、樹脂層12と同じであることが好ましい。
他の樹脂層15において、隣り合うクレーズ16同士の間隔の平均値は、樹脂層12のクレーズ14から連続的に深さ方向に形成されていると好ましいため、樹脂層12と同じであることが好ましい。具体的には10〜40μmの範囲内であることが好ましく、13〜30μmの範囲内であることがより好ましく、15〜19μmの範囲内であることがさらに好ましい。隣り合うクレーズ16同士の間隔の平均値が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。
他の樹脂層15において、長さ500μm当たりのクレーズ個数は、樹脂層12のクレーズ14から連続的に深さ方向に形成されていると好ましいため、樹脂層12と同じであることが好ましい。具体的には15〜45個の範囲内であることが好ましく、20〜40個の範囲内であることがより好ましく、26〜35個の範囲内であることがさらに好ましい。長さ500μm当たりのクレーズ個数が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。
他の樹脂層15において、細クレーズ間隔率は、0〜30%の範囲内であることが好ましく、5〜25%の範囲内であることがより好ましく、10〜18%の範囲内であることがさらに好ましい。細クレーズ間隔率が上記範囲内であると、より偏向光分率を高くすることができる。
層構成上、他の樹脂層が最表層とならず、フィルム表面からの測定で各クレーズの幅、隣り合うクレーズ同士の間隔の平均値、長さ500μm当たりのクレーズ個数、および細クレーズ間隔率が測定しにくい場合は、ウルトラミクロトーム等の観察用切片作製装置を用いて、クレーズ処理刃と垂直の方向のクレーズフィルム断面観察用切片を作成し、その顕微鏡観察像より測定する。顕微鏡観察する際に、クレーズと直交する直線を引く位置は、他の樹脂層中で、クレーズ処理刃から遠い側の端部近傍とする。
他の樹脂層15におけるクレーズの深さ(μm)は、光を偏向させ易くする観点からは他の樹脂層15の厚さに対して50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。他の樹脂層15に形成されている各クレーズの深さは、他の樹脂層15の厚さに対して100%であってもよい。他の樹脂層15におけるクレーズの深さは、破断を抑制する観点からは、他の樹脂層15の厚さに対して50%未満が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がより好ましい。クレーズ深さの測定方法は、実施例記載の方法による。
他の樹脂層15は、樹脂層(結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸の層)には該当しない層であって、クレーズ形成可能な層であれば、その構成材料は、特に限定されない。例えば、他の樹脂層15の主成分(他の樹脂層を構成する樹脂成分の50質量%以上)としては、樹脂層12の「他の樹脂」の項で説明したもののうち、ポリオレフィン系樹脂や、環状ポリオレフィン系樹脂、あるいはそれらの共重合体樹脂が挙げられる。なかでも、樹脂層12から連続したクレーズを形成しやすい観点から、環状ポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体樹脂が好ましい。具体的にはエチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体等のオレフィン系重合体が例示できる。これらは市販の樹脂を用いてよく、代表的市販品としては、例えばポリプラスチックス株式会社製TOPAS(登録商標)6015S−04、6017S−04等、三井化学株式会社製アペル(登録商標)APL6015T等が挙げられる。
他の樹脂層15は、必要に応じて、偏向光分率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、任意成分として樹脂層12の項で説明したものと同様の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、有機滑剤、無機滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤、着色剤等を含有してもよい。
他の樹脂層15は、クレーズ形成された層であればよく、未延伸であっても、延伸されたものであってもよい。他の樹脂層15の製造方法は、クレーズフィルムの項で説明したので、ここでの説明は省略する。
他の樹脂層15の厚さは、5μm〜150μmであることが好ましく10μm〜100μmであることがより好ましく、15μm〜60μmであることがさらに好ましく、20μm〜40μmであることが特に好ましい。他の樹脂層15の厚さが上記範囲内であると、樹脂層12のクレーズ14から連続的に深さ方向にクレーズを形成しやすく好ましい。
他の樹脂層15は、流れ方向(MD)の引張弾性率が1.4GPa以上2.8GPa以下であることが好ましく、1.5GPa以上2.7GPa以下であることがより好ましい。前記引張弾性率が1.4GPa以上であると、クレーズ処理前の他の樹脂層15に偏向光分率が高くなるような比較的狭い間隔、及び、深さでクレーズを形成することが可能となる。また、前記引張弾性率が2.8GPa以下であると、クレーズ処理前の他の樹脂層15にクレーズが形成されずに樹脂層が破断してしまうことを防止することができる。
他の樹脂層15は、流れ方向(MD)の破断点伸度が0.5%以上45%以下であることが好ましく、1%以上30%以下であることがより好ましく、2%以上20%以下であることがさらに好ましい。前記破断点伸度が45%以下であると、クレーズ処理前の他の樹脂層15が延びずに適切にクレーズを形成することができる。また、前記破断点伸度が0.5%以上であると、クレーズが形成されずに樹脂層が破断してしまうことを防止することができる。
他の樹脂層15は、流れ方向(MD)の破断点応力が18MPa以上60MPa以下であることが好ましく、30MPa以上55MPa以下であることがより好ましい。前記破断点応力が18MPa以上であると、クレーズ処理前の他の樹脂層15にクレーズが形成されずに樹脂層が破断してしまうことを防止することができる。また、前記破断点応力が60MPa以下であると、樹脂層12に適切にクレーズを形成しやすく偏向光分率を高めやすい。
他の樹脂層15は、透光性を有することが好ましく、具体的には、他の樹脂層15のみで測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は100%未満であって良く、好ましくは98%以下である。上記範囲とすることで、好ましい偏向光分率を得やすい。
(その他の層)
その他の層17には、クレーズが形成されていない。
その他の層17は、クレーズ形成されていない層であれば、その構成材料は、特に限定されない。例えば、その他の層17の主成分としては、樹脂層12の「他の樹脂」の項で説明したものが挙げられる。なかでも非晶性スチレン系樹脂は、樹脂層との接着性に優れ好ましい。
その他の層17は、偏向光分率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、必要に応じて、任意成分として樹脂層12の項で説明したものと同様の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、有機滑剤、無機滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を含有してもよい。
その他の層17は、クレーズ形成されていない層であればよく、未延伸であっても、延伸されたものであってもよい。その他の層17の製造方法は、クレーズフィルムの項で説明したので、ここでの説明は省略する。
その他の層17の厚さは、5μm〜200μmであることが好ましく、10μm〜150μmであることがより好ましく、20μm〜120μmであることがさらに好ましく、30μm〜100μmであることが特に好ましい。その他の層17の厚さが5μm以上であると、クレーズ処理時の破断や使用時の破れが起こりにくくなる。一方、その他の層17の厚さが200μm以下であると、偏向光分率を高めやすい。
その他の層17は、流れ方向(MD)の引張弾性率が0.2GPa以上2.4GPa以下であることが好ましく、0.3GPa以上1.8GPa以下であることがより好ましい。前記引張弾性率が0.2GPa以上であると、クレーズ処理時に傷等を生じにくく好ましい。また、前記引張弾性率が2.4GPa以下であると、クレーズ処理時にクレーズフィルムが破断してしまうことを防止することができる。
その他の層17は、流れ方向(MD)の破断点伸度が1%以上1100%以下であることが好ましく、10%以上900%以下であることがより好ましく、50%以上600%以下であることがさらに好ましい。前記破断点伸度が1100%以下であると、クレーズ処理時に傷等を生じにくく好ましい。また、前記破断点伸度が1%以上であると、クレーズ処理時にクレーズフィルムが破断してしまうことを防止することができる。
その他の層17は、流れ方向(MD)の破断点応力が18MPa以上であることが好ましく、28MPa以上であることがより好ましい。前記破断点応力が18MPa以上であると、クレーズ処理時にクレーズフィルムが破断してしまうことを防止することが可能となる。また、前記破断点応力の上限は得に無いが、概ね60MPa以下程度である。
その他の層17は、透光性を有することが好ましく、具体的には、その他の層17のみで測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は100%未満であって良く、好ましくは98%以下である。上記範囲とすることで、好ましい偏向光分率を得やすい。
クレーズフィルムの用途は、特に限定されないが、偏向光量が多いという機能を有することから、例えば、採光フィルム、表示板用フィルムとして好適に使用することができる。採光フィルムは、入射光としての外光(屋外から差し込む光、例えば、太陽光)を天井方向に偏向し、室内を明るくするためのフィルムである。表示板用フィルムは、低い位置の値札等の表示板等を高い位置からみた際に、天井照明の光を上方に反射し、視認性を向上させるためのフィルムである。例えば、反射板、表示板(例えば、透光性を有する基板に数字等が印刷されたもの)、クレーズフィルムをこの順で配置することにより、表示板の数字等の視認性を向上させることができる。
図4は、クレーズフィルムを採光フィルムとして使用した様子を説明するための模式図である。図4に示すように、建物の壁42には、窓ガラス44が設けられている。図4中、左側が屋外であり、右側が屋内である。クレーズフィルム10は、窓ガラス44の屋内側に設けられている。なお、クレーズフィルム10の窓ガラス44上への固定方法としては、例えば、クレーズフィルム10の外周部分を、図示しない固定部材を用いて窓ガラス44の外周部分又は壁42に固定する方法や、透光性を有する粘着剤や接着剤を用いてクレーズフィルム10の一部(例えば、外周部分)又は全部を、窓ガラス44又は壁42に貼り付ける方法が挙げられる。
クレーズフィルム10が設けられた窓ガラス44に太陽光46が入射すると、クレーズフィルム10は、太陽光46の少なくとも一部を屋内の天井方向に偏向させる。その結果、室内を明るくすることができる。ここで、クレーズフィルム10は、偏向光分率Rr30が15〜65%である。クレーズフィルム10の偏向光分率Rr30が15〜65%であるため、入射角30°前後の光を効率よく天井方向に偏向させることができる。
さらに、クレーズフィルム10の偏向光分率Rr50が5〜55%である場合には、入射角50°前後の光を効率よく天井方向に偏向させることができる。つまり、クレーズフィルム10の偏向光分率Rr30が15〜65%であり、且つ、偏向光分率Rr50が5〜55%である場合、太陽が高い位置にあるとき(例えば、夏や昼間)や、太陽が低い位置にあるとき(例えば、冬や夕方)に関わらず、つまり、季節や時間を問わず、太陽光を効率よく天井方向に偏向させることができる。
なお、図4では、クレーズ14により太陽光46が1回反射している様子を示したが、この例に限定されず、3回反射、5回反射等の奇数回反射であってもよい。図5は、クレーズフィルムを採光フィルムとして使用した様子を説明するための他の模式図である。図5では、クレーズ14により太陽光46が3回反射している様子を示している。
クレーズフィルム10の上記以外の用途としては、例えば、一定の方向からの光のみ透過し、他の方向からの光を反射する視野選択性フィルム等の各種光学用フィルムとして使用できる。
(クレーズ形成用フィルム)
本実施形態に係るクレーズ形成用フィルムは、上述したクレーズフィルムにおいてクレーズが形成される前のフィルムである。従って、以下では、クレーズフィルムとは異なる部分について中心に説明し、クレーズフィルムと共通する説明については、説明は簡潔にすることとする。
図6は、一実施形態に係るクレーズ形成用フィルムを模式的に示す斜視図である。図7は、他の実施形態に係るクレーズ形成用フィルムを模式的に示す斜視図である。クレーズ形成用フィルム20は、樹脂層22からなる。クレーズ形成用フィルム21は、樹脂層22と、他の樹脂層25と、その他の層27とをこの順で備える。
なお、本明細書では、クレーズ形成用フィルム20は、クレーズ処理が行われる前のクレーズフィルム10に対応し、クレーズ形成用フィルム21は、クレーズ処理が行われる前のクレーズフィルム11に対応する。また、樹脂層22は、クレーズ処理が行われる前の樹脂層12に対応し、他の樹脂層25は、クレーズ処理が行われる前の他の樹脂層15に対応し、その他の層27は、クレーズ処理が行われる前のその他の層17に対応する。
以下では、樹脂層22からなるクレーズ形成用フィルム20、及び、樹脂層22と他の樹脂層25とその他の層27とをこの順で備えるクレーズ形成用フィルム21について説明するが、本発明におけるクレーズ形成用フィルムは、樹脂層を有していればよく、層構成については、クレーズフィルムの項で説明したものと同様のものが挙げられる。
上述の通り、クレーズ形成用フィルムは、クレーズフィルムにおいてクレーズ処理する前のフィルムである。クレーズ形成用フィルムの製造方法は、クレーズフィルムの項で説明した内容において、クレーズ処理する前のものであるから、ここでの説明は省略する。
クレーズ形成用フィルムの厚さは、クレーズフィルムと同様とすることができる。
クレーズ形成用フィルムは、流れ方向(MD)の引張弾性率が2.0GPa以上3.2GPa以下であることが好ましく、2.05GPa以上3.1GPa以下であることがより好ましく、2.1GPa以上3.0GPa以下であることがさらに好ましい。前記引張弾性率が2.0GPa以上であると、偏向光量が多くなるような比較的狭い間隔、及び、深さでクレーズを形成することが可能となる。また、前記引張弾性率が3.2GPa以下であると、クレーズが形成されずにフィルムが破断してしまうことを防止することができる。なお、前記引張弾性率は、実施例に記載の条件にて測定した値である。
なお、クレーズ処理後のクレーズ形成用フィルム(すなわち、クレーズフィルム)の流れ方向(MD)の引張弾性率は、クレーズ処理前の引張弾性率より約10〜20%程度低くなる傾向があり、クレーズフィルムの項で説明したように、クレーズフィルムの引張弾性率は、1.7GPa以上2.8GPa以下であることが好ましく、1.8GPa以上2.7GPa以下であることがより好ましい。
クレーズ形成用フィルムは、流れ方向(MD)の破断点伸度が0.2%以上30%以下であることが好ましく、1%以上15%以下であることがより好ましく、1.2%以上5%以下であることがさらに好ましく、1.5%以上3%以下であることが特に好ましい。前記破断点伸度が30%以下であると、クレーズ形成用フィルムが延びずに適切にクレーズを形成することができる。また、前記破断点伸度が0.2%以上であると、クレーズが形成されずにフィルムが破断してしまうことを防止することができる。なお、前記破断点伸度は、23℃にて、実施例に記載の条件にて測定した値である。
なお、クレーズ処理後のクレーズ形成用フィルム(すなわち、クレーズフィルム)の破断点伸度は、クレーズ処理前の破断点伸度と同等から約50%程度高くなる傾向があり、クレーズフィルムの項で説明したように、クレーズフィルムの破断点伸度は、1%以上15%以下であることが好ましく、1.5%以上10%以下であることがより好ましく、2%以上4%以下であることがより好ましい。
クレーズ形成用フィルムは、流れ方向(MD)の破断点応力が20MPa以上60MPa以下であることが好ましく、30MPa以上55MPa以下であることがより好ましく、37MPa以上50MPa以下であることがさらに好ましい。前記破断点応力が20MPa以上であると、クレーズが形成されずにクレーズ形成用フィルムが破断してしまうことを防止することができる。また、前記破断点応力が60MPa以下であると、フィルムに適切にクレーズを形成しやすく偏向光分率を高めやすい。なお、前記破断点応力は、23℃にて、実施例に記載の条件にて測定した値である。
なお、クレーズ処理後のクレーズ形成用フィルム(すなわち、クレーズフィルム)の破断点応力は、クレーズ処理前の破断点伸度と同等から約10%程度低くなる傾向があり、クレーズフィルムの項で説明したように、クレーズフィルムの破断点応力は、18MPa以上60MPa以下が好ましく、30MPa以上50MPa以下であることがより好ましい。
(樹脂層)
樹脂層22は、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有する。前記結晶性ポリスチレン系樹脂としては、樹脂層12の項で説明したものと同様のものが挙げられる。
樹脂層22は、未延伸である。樹脂層22は、未延伸であれば特に限定されない。上述の通り、樹脂層22としては、クレーズフィルムの項において、「クレーズフィルムが樹脂層のみからなる場合」として説明した方法により形成されたものが挙げられる。
樹脂層22の厚さは、樹脂層12と同様とすることができる。
樹脂層22は、流れ方向(MD)の引張弾性率が2.0GPa以上3.2GPa以下であり、2.05GPa以上3.1GPa以下であることが好ましく、2.1GPa以上3.0GPa以下であることがより好ましい。前記引張弾性率が2.0GPa以上であるため、偏向光量が多くなるような比較的狭い間隔、及び、深さでクレーズを形成することが可能となる。また、前記引張弾性率が3.2GPa以下であるため、クレーズが形成されずに樹脂層22が破断してしまうことを防止することができる。なお、前記引張弾性率は、実施例に記載の条件にて測定した値である。
なお、クレーズ処理後の樹脂層22(すなわち、樹脂層12)の流れ方向(MD)の引張弾性率は、クレーズ処理前の引張弾性率より約10〜20%程度低くなる傾向があり、樹脂層12の項で説明したように、樹脂層12の引張弾性率は、1.7GPa以上2.8GPa以下であることが好ましく、1.8GPa以上2.7GPa以下であることがより好ましい。
樹脂層22は、流れ方向(MD)の破断点伸度が0.2%以上30%以下であり、1%以上15%以下であることが好ましく、1.2%以上5%以下であることがより好ましく、1.5%以上3%以下であることがさらに好ましい。前記破断点伸度が30%以下であるため、樹脂層22が延びずに適切にクレーズを形成することができる。また、前記破断点伸度が0.2%以上であるため、クレーズが形成されずに樹脂層22が破断してしまうことを防止することができる。なお、前記破断点伸度は、23℃にて、実施例に記載の条件にて測定した値である。
なお、クレーズ処理後の樹脂層22(すなわち、樹脂層12)の破断点伸度は、クレーズ処理前の破断点伸度と同等から約50%程度高くなる傾向があり、樹脂層12の項で説明したように、樹脂層12の破断点伸度は、1%以上15%以下であることが好ましく、1.5%以上10%以下であることがより好ましく、2%以上4%以下であることがより好ましい。
樹脂層22は、流れ方向(MD)の破断点応力が20MPa以上60MPa以下であることが好ましく、30MPa以上55MPa以下であることがより好ましく、37MPa以上50MPa以であることがさらに好ましい。前記破断点応力が20MPa以上であると、クレーズが形成されずに樹脂層22が破断してしまうことを防止することができる。また、前記破断点応力が60MPa以下であると、フィルムに適切にクレーズを形成しやすく偏向光分率を高めやすい。なお、前記破断点応力は、23℃にて、実施例に記載の条件にて測定した値である。
なお、クレーズ処理後の樹脂層22(すなわち、樹脂層12)の破断点応力は、クレーズ処理前の破断点伸度と同等から約10%程度低くなる傾向があり、樹脂層12の項で説明したように、樹脂層12の破断点応力は、18MPa以上60MPa以下が好ましく、30MPa以上50MPa以下であることがより好ましい。
(他の樹脂層)
他の樹脂層25の構成材料としては、他の樹脂層15の項で説明したものと同様のものが挙げられる。
他の樹脂層25の厚さは、他の樹脂層15と同様とすることができる。
他の樹脂層25は、流れ方向(MD)の引張弾性率が1.5GPa以上3.2GPa以下であることが好ましく、1.6GPa以上3.1GPa以下であることがより好ましく、1.7GPa以上3.0GPa以下であることがさらに好ましい。前記引張弾性率が1.5GPa以上であると、偏向光分率が高くなるような比較的狭い間隔、及び、深さでクレーズを形成することが可能となる。また、前記引張弾性率が3.2GPa以下であると、クレーズが形成されずに他の樹脂層25が破断してしまうことを防止することができる。
なお、クレーズ処理後の他の樹脂層25(すなわち、他の樹脂層15)の流れ方向(MD)の引張弾性率は、クレーズ処理前の引張弾性率より約10〜20%程度低くなる傾向があり、他の樹脂層15の項で説明したように、他の樹脂層15の引張弾性率は、1.4GPa以上2.8GPa以下であることが好ましく、1.5GPa以上2.7GPa以下であることがより好ましい。
他の樹脂層25は、流れ方向(MD)の破断点伸度が0.2%以上30%以下であることが好ましく、1%以上20%以下であることがより好ましく、1.2%以上15%以下であることがさらに好ましく、1.5%以上10%以下であることが特に好ましい。前記破断点伸度が30%以下であると、他の樹脂層25が延びずに適切にクレーズを形成することができる。また、前記破断点伸度が0.2%以上であると、クレーズが形成されずに他の樹脂層25が破断してしまうことを防止することができる。
なお、クレーズ処理後の他の樹脂層25(すなわち、他の樹脂層15)の破断点伸度は、クレーズ処理前の破断点伸度と同等から約50%程度高くなる傾向があり、他の樹脂層15の項で説明したように、他の樹脂層15の破断点伸度は、0.5%以上45%以下であることが好ましく、1%以上30%以下であることがより好ましく、2%以上20%以下であることがより好ましい。
他の樹脂層25は、流れ方向(MD)の破断点応力が20MPa以上60MPa以下であることが好ましく、30MPa以上55MPa以下であることがより好ましく、37MPa以上50MPa以であることがさらに好ましい。前記破断点応力が20MPa以上であると、クレーズが形成されずに他の樹脂層25が破断してしまうことを防止することができる。また、前記破断点応力が60MPa以下であると、樹脂層25に適切にクレーズを形成しやすく偏向光分率を高めやすい。
なお、クレーズ処理後の他の樹脂層25(すなわち、他の樹脂層15)の破断点応力は、クレーズ処理前の破断点伸度と同等から約10%程度低くなる傾向があり、他の樹脂層15の項で説明したように、他の樹脂層15の破断点応力は、18MPa以上60MPa以下が好ましく、30MPa以上55MPa以下であることがより好ましい。
(その他の層)
その他の層27の構成材料としては、その項で説明したものと同様のものが挙げられる。
その他の層27の厚さは、その他の層17と同様とすることができる。
その他の層27は、流れ方向(MD)の引張弾性率が0.2GPa以上2.5GPa以下であることが好ましく、0.4GPa以上2.0GPa以下であることがより好ましく、0.5GPa以上1.8GPa以下であることがさらに好ましい。前記引張弾性率が0.2GPa以上であると、クレーズ処理時に傷等を生じにくく好ましい。また、前記引張弾性率が2.5GPa以下であると、クレーズ処理時にクレーズフィルムが破断してしまうことを防止することができる。
なお、クレーズ形成用フィルムへクレーズ処理後した後のその他の層27(すなわち、その他の層17)の流れ方向(MD)の引張弾性率は、クレーズ処理前の引張弾性率より約10〜20%程度低くなる傾向があり、その他の層17の項で説明したように、その他の層17の引張弾性率は、0.2GPa以上2.4GPa以下であることが好ましく、0.3GPa以上1.8GPa以下であることがより好ましい。
その他の層27は、流れ方向(MD)の破断点伸度が1%以上1000%以下であることが好ましく、10%以上800%以下であることがより好ましく、50%以上500%以下であることがさらに好ましい。前記破断点伸度が1000%以下であると、クレーズ処理時に傷等を生じにくく好ましい。また、前記破断点伸度が1%以上であると、クレーズ処理時にクレーズフィルムが破断してしまうことを防止することができる。
なお、クレーズ形成用フィルムへクレーズ処理した後のその他の層27(すなわち、その他の層17)の破断点伸度は、クレーズ処理前の破断点伸度と同等から約50%程度高くなる傾向があり、その他の層17の項で説明したように、その他の層17の破断点伸度は、1%以上1100%以下であることが好ましく、10%以上900%以下であることがより好ましく、50%以上600%以下であることがより好ましい。
その他の層27は、流れ方向(MD)の破断点応力が20MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましい。前記破断点応力が20MPa以上であると、クレーズ処理時にクレーズフィルムが破断してしまうことを防止することが可能となる。また、前記破断点応力の上限は得に無いが、概ね60MPa以下程度である。
なお、クレーズ処理後のその他の層27(すなわち、その他の層17)の破断点応力は、クレーズ処理前の破断点伸度と同等から約10%程度低くなる傾向があり、その他の層17の項で説明したように、その他の層17の破断点応力は、18MPa以上が好ましく、28MPa以上60MPa以下であることがより好ましい。
なお、樹脂層22のみからなるクレーズ形成用フィルムは、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸であり、流れ方向(MD)の引張弾性率が2.0GPa以上3.2GPa以下であり、流れ方向(MD)の破断点伸度が0.2%以上30%以下である構成を備える市販品を使用することができる。このようなクレーズ形成用フィルムとしては、五洋紙工株式会社製の「SPSフィルム」が挙げられる。
(クレーズフィルムの製造方法)
図8は、一実施形態に係るクレーズフィルムの製造方法を説明するための斜視図であり、図9は、その側面図である。
一実施形態に係るクレーズフィルムの製造方法は、
クレーズ形成用フィルム20を準備する工程Aと、
クレーズ形成用フィルム20を処理刃52のエッジ部54に押し当てて、クレーズ形成用フィルム20に折り曲げ部24を形成し、折り曲げ部24を、クレーズ形成用フィルム20に対して相対的に移動させることにより、樹脂層22にクレーズ14を縞状に形成する工程Bとを有する。このクレーズフィルムの製造方法により、本実施形態のクレーズフィルムを好適に製造することができる。ただし、本実施形態のクレーズフィルムの製造方法は、上記及び下記製造方法に限定されない。
本実施形態では、図8、図9に示すクレーズ形成装置を用いてクレーズフィルムを製造する場合について説明する。
クレーズ形成装置50は、少なくとも、一端にエッジ部54を有する処理刃52と、ガイドローラ56と、張力付与機構(図示せず)とを備える。
本実施形態に係るクレーズフィルムの製造方法においては、まず、クレーズ形成用フィルム20を準備する(工程A)。
次に、ガイドローラ56及び張力付与機構により、クレーズ形成用フィルム20を緊張状態に保持するとともに、クレーズ形成用フィルム20を処理刃52のエッジ部54に押し当てて、クレーズ形成用フィルム20を局部的に折り曲げて折り曲げ部24を形成する。次に、ガイドローラ56等を介してクレーズ形成用フィルム20を搬送し、クレーズ形成用フィルム20に対して折り曲げ部24を徐々に移動させて、樹脂層22にクレーズ14を縞状に形成する(工程B)。
このとき、折り曲げ部24におけるクレーズ形成用フィルム20のなす角度θは、15°〜160°であることが好ましく、40°〜120°であることがより好ましく、50°〜100°であることがさらに好ましい。前記角度θが大きいほど、偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50は、小さくなる傾向にある。
また、エッジ部54の先端形状は、半径1.2mm以下(より好ましくは半径1mm以下)の半球状であることが、偏向光分率を高くすることが可能なクレーズを形成しやすいため好ましい。一方、偏向光分率等の品質が連続生産の間に変化しにくいという観点、及び、クレーズ処理時にフィルムに傷が生じにくいという観点から、半径0.1mm以上の半球状であることが好ましい。その理由として本発明者らは、半径0.1mm以上の半球状であると、連続的にクレーズ形成処理を行っても摩耗による形状変化が発生しにくいため、偏向光分率等の品質が連続生産の間に変化しにくいと推察している。エッジ部54の先端形状は、半径0.2mm以上0.8mm以下の半球状であることがより好ましく、半径0.3mm以上0.7mm以下の半球状であることが特に好ましい。エッジ部54の先端の半径が大きいほど、偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50は、小さくなる傾向にある。
折り曲げ部24におけるクレーズ形成用フィルム20のなす角度θが15°〜160°であり、エッジ部54の先端形状が、半径1mm以下の半球状であると、より好適にクレーズを形成することができる。
クレーズ形成装置50を用いて、クレーズ形成用フィルム20にクレーズ14を縞状に形成するための移動速度(搬送速度)は限定されないが、クレーズ処理時の傷の生じにくさの観点から150000mm/min以下であることが好ましく、生産効率の観点から1mm/min以上であることが好ましい。前記移動速度は100000mm/min〜5mm/minであることがより好ましく、20000mm/min〜10mm/minであることがさらに好ましく、10000mm/min〜10mm/minであることが特に好ましい。前記移動速度が大きいほど、偏向光分率Rr30、及び、偏向光分率Rr50は、大きくなる傾向にある。
クレーズ形成用フィルム20に形成されるクレーズ14の幅、クレーズ14同士の間隔等は、クレーズ14を形成させる時の温度、速度、クレーズ形成用フィルム20の引取応力、処理刃52のエッジ部54の先端形状、フィルムの折り曲げ角度θ等によって調節することができる。
ここで、クレーズ形成用フィルム20に付与する引取応力は、偏向光分率を高くすることが可能なクレーズを形成しやすいため、クレーズ処理刃と直交する方向のクレーズ形成用フィルムの破断点応力(例えば、クレーズ処理刃をフィルムの流れ方向と直交する方向に当てて処理する場合は、フィルムの流れ方向の破断点応力)の15%以上85%以下が好ましく、20%以上80%以下がより好ましく、25%以上75%以下がさらに好ましく、30%以上70%以下が特に好ましい。本実施形態のクレーズ形成用フィルムを用いると、破断点応力に近い程度の高応力をかけなくても好適なクレーズが形成されやすく、クレーズ処理時の破断といった問題を起こしにくい。前記引取応力が大きいほど、偏向光分率Rr30は、大きくなる傾向にある。
また、前記角度θと前記引取応力とは、以下(a)または(b)のようにすることが好ましい。
(a)角度θを大きくし、且つ、引取応力を大きくする。
(b)角度θを小さくし、且つ、引取応力を小さくする。
前記(a)の好ましい組み合わせとしては、角度θが75〜160°であり、且つ、引取応力が上記破断点応力の40〜85%の範囲内、より好ましくは、角度θが80〜120°であり、且つ、引取応力が上記破断点応力の45〜75%の範囲内である。
前記(b)の好ましい組み合わせとしては、角度θが20〜75°であり、且つ、引取応力が上記破断点応力の15〜70%の範囲内、より好ましくは、角度θが40〜70°であり、且つ、引取応力が上記破断点応力の25〜50%の範囲内である。
前記角度θと前記張力とを上記のようにすることにより、偏向光分率を高くできるクレーズを好適に形成することができる。なかでも、クレーズ処理時の破断を起こしにくい観点からは、前記(a)が好ましい。
なお、上述の実施形態では、処理刃52やガイドローラ56等の位置を固定しておき、クレーズ形成用フィルム20を搬送することで、樹脂層22にクレーズ14を縞状に形成する場合に説明したが、本発明においてはこの例に限定されない。例えば、クレーズ形成用フィルム20を固定しておき、処理刃52等を移動させることにより、樹脂層にクレーズを縞状に形成することとしてもよい。すなわち、本発明においては、折り曲げ部を、クレーズ形成用フィルムに対して相対的に移動させることにより、前記樹脂層にクレーズを縞状に形成すればよい。
クレーズ処理時の、クレーズ形成用フィルムと処理刃部の雰囲気温度は、形成されるクレーズの間隔、長さ、幅、深さ等に影響を与えるので、所定の温度に一定に保つのが好ましい。前記所定の温度は5℃から50℃が好ましく、15℃から40℃がより好ましい。処理刃は連続処理にて摩擦熱で徐々に昇温しやすいため、処理刃の温度を制御するための温度制御機構を備えるのが好ましい。
クレーズを形成した後(工程Bの後)、必要に応じてクレーズフィルムのクレーズ内に添加剤を存在させる工程を行ってもよい。クレーズフィルムのクレーズ内に対して添加剤を存在させる方法としては、添加剤を含む分散液または溶液(以下、単に含有液ともいう)中に浸漬する方法や、添加剤含有液を塗布する方法が例示できる。添加剤含有液の溶媒としては、水、有機溶媒等が使用可能である。添加剤含有液中への浸漬は例えば、クレーズ処理と同時、あるいはクレーズ処理後に行うことができる。また浸漬や塗布等の後に、余分な添加剤含有液を取り除く工程(例えば洗浄など)や、添加剤をフィルムに定着させるための処理(例えば、加熱や、紫外線や電子線等の照射処理など)を行う工程を有していてもよい。
上述した実施形態では、樹脂層22からなるクレーズ形成用フィルム20にクレーズ処理する場合について説明したが、クレーズ処理の対象となるクレーズ形成用フィルムの層構成は、これに限定されない。例えば、クレーズ形成用フィルム21にクレーズ処理してもよい。なお、クレーズ処理の各条件は、層構成に応じて、上記で説明した範囲内において、適宜設定することができる。
本実施形態に係るクレーズフィルムは、部材に重ねて配置させることにより、本実施形態の採光器具とすることができる。部材としては光透過性を有する部材であればよい。部材の形状としては、基板状であることが好ましい。部材を構成する成分としては、ガラス(石英ガラス、ソーダガラス等);ポリカーボネート、アクリル樹脂等の光透過性を有する樹脂;などが挙げられる。ガラスで構成される部材としては、フロートガラスのほか、強化ガラス、すりガラス等も含まれる。
本実施形態の採光器具において、クレーズフィルムと部材との間には、粘着層及び/又は接着層が設けられていてもよい。クレーズフィルムと部材との間に粘着層及び/又は接着層が設けられる場合、クレーズフィルムと部材とを貼り合わすことができる。粘着層及び/又は接着層を構成する成分としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。一方、粘着層及び/又は接着層を用いない場合、固定具で本実施形態に係るクレーズフィルムと部材とを固定することができる。固定位置は、例えば本実施形態に係るクレーズフィルムと部材の端部が挙げられる。
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<クレーズフィルムの作製>
図8、図9を用いて説明したクレーズ形成装置と同様の装置を用いて、以下の方法により、クレーズフィルムを作製した。
(実施例1)
まず、市販の結晶性ポリスチレンからなる未延伸フィルム(五洋紙工株式会社製、「SPSフィルム」(シンジオタクチックポリスチレン系樹脂フィルム)、厚み50μm、幅50mm、流れ方向(MD)の破断点伸度2.8%、流れ方向(MD)の引張弾性率2.3GPa、流れ方向(MD)の破断点応力40MPa)をクレーズ形成用フィルムとして準備した。前記破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力は、後述の測定方法にて測定した値である。なお、準備したクレーズ形成用フィルムは、結晶性ポリスチレンからなる1層の未延伸フィルムであり、他の層を備えていない。
次に、準備したクレーズ形成用フィルムをガイドローラ及び張力付与機構により、緊張状態に保持するとともに、クレーズ形成用フィルムを処理刃のエッジ部に押し当てて、クレーズ形成用フィルムを局部的に折り曲げて折り曲げ部を形成した。次に、ガイドローラ等を介してクレーズ形成用フィルムを搬送し、クレーズ形成用フィルムに対して折り曲げ部を徐々に移動させた。処理刃としては、エッジ部の先端形状が、半径0.5mmの半球状のものを用いた。このとき、折り曲げ部24におけるクレーズ形成用フィルムのなす角度θは、90°、引取応力は、21MPa、引取速度は、100mm/分とした。その結果、クレーズ形成用フィルムにクレーズが縞状に形成された。以上により、実施例1に係るクレーズフィルムを得た。
(実施例2)
折り曲げ部におけるクレーズ形成用フィルムのなす角度θを、150°、引取応力を、25MPaとした以外は実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。その結果、クレーズ形成用フィルムにクレーズが縞状に形成された。以上により、実施例2に係るクレーズフィルムを得た。
(実施例3)
折り曲げ部におけるクレーズ形成用フィルムのなす角度θを、60°、引取応力を、17MPaとした以外は実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。その結果、クレーズ形成用フィルムにクレーズが縞状に形成された。以上により、実施例3に係るクレーズフィルムを得た。
(実施例4)
折り曲げ部におけるクレーズ形成用フィルムのなす角度θを、40°、引取応力を、9MPaとした以外は実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。その結果、クレーズ形成用フィルムにクレーズが縞状に形成された。以上により、実施例4に係るクレーズフィルムを得た。
(実施例5)
引取応力を、21MPaに代えて29MPaとした以外は実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。その結果、クレーズ形成用フィルムにクレーズが縞状に形成された。以上により、実施例5に係るクレーズフィルムを得た。
(実施例6)
処理刃として、エッジ部の先端形状が、半径0.5mmの半球状のものに代えて半径1.0mmの半球状のものを用いた。また、引取応力を21MPaに代えて33MPaとした。上記以外は実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。その結果、クレーズ形成用フィルムにクレーズが縞状に形成された。以上により、実施例6に係るクレーズフィルムを得た。
(実施例7)
折り曲げ部におけるクレーズ形成用フィルムのなす角度θを90°に代えて120°とした。また、引取応力を、21MPaに代えて29MPaとした。また、引取速度を100mm/分に代えて200mm/分とした。上記以外は実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。その結果、クレーズ形成用フィルムにクレーズが縞状に形成された。以上により、実施例7に係るクレーズフィルムを得た。
(比較例1)
市販の未延伸ポリエチレンテレフタラートフィルム(結晶性樹脂であるが非晶状態を含む。進栄化成株式会社製、カネロンA−PET。厚さ100μm、幅50mm、流れ方向(MD)の破断点伸度44%、流れ方向(MD)の引張弾性率1.6GPa、流れ方向(MD)の破断点応力33MPa)をクレーズ形成用フィルムとして準備した。前記破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力は実施例1と同じ方法にて測定した値である。
次に、準備したクレーズ形成用フィルムを用い、実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。以上により比較例1に係るフィルムを得た。なお、クレーズ処理により処理刃と接触させた部分が順次白化し、透明フィルムが得られなかった。
(比較例2)
市販の非晶性ポリスチレンフィルム(大石産業株式会社製、スチロファン(登録商標)GK、厚さ30μm、幅50mm、流れ方向(MD)の破断点伸度3.4%、流れ方向(MD)の引張弾性率1.8GPa、流れ方向(MD)の破断点応力36MPa)をクレーズ形成用フィルムとして準備した。
次に、準備したクレーズ形成用フィルムを用い、実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。以上により比較例2に係るフィルムを得た。なお、クレーズ処理により処理刃と接触させた部分が順次白化し、透明フィルムが得られなかった。
(比較例3)
比較例2のクレーズ形成用フィルムを用い、実施例4と同様にしてクレーズ処理を行って比較例3に係るフィルムを得た。
(比較例4)
市販の高結晶性ポリプロピレン樹脂プライムポリプロ(登録商標)(株式会社プライムポリマー製、結晶化度95%)のペレットと市販のβ晶核剤エヌジェスター(登録商標)NU−100(新日本理化株式会社製)を質量比99.8:0.2で混合した。次に、単軸押出機にホッパー部より投入し、230℃にして溶融し、スクリーンを通したのち、押出口巾300mmのTダイより押し出した。押し出された樹脂層をエアナイフを用いて表面温度60℃の金属鏡面ロールに押し当てて、厚さ50μmのフィルムに成形した。横延伸は行わなかった。フィルム巾は押出口巾より狭く280mmであった。当該フィルムの中央部から厚みの均一な部分を取り出すため両耳部をスリットし、巾50mmとした。当該流れ方向(MD)の破断点伸度は610%、流れ方向(MD)の引張弾性率は0.9GPa、流れ方向(MD)の破断点応力は28MPaであった。前記破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力は実施例1と同じ方法にて測定した値である。該フィルムを巻出し、実施例1と同様にしてクレーズ処理を行ってフィルムを得た。
(比較例5)
引取応力を、21MPaに代えて36MPaとした以外は実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。その結果、クレーズ形成用フィルムが折り曲げ部で破断した。そのため、クレーズ処理を行ったフィルムが得られなかった。
(比較例6)
折り曲げ部におけるクレーズ形成用フィルムのなす角度θを90°に代えて120°とした。また、処理刃として、エッジ部の先端形状が、半径0.5mmの半球状のものに代えて半径1.5mmの半球状のものを用いた。また、引取応力を21MPaに代えて33MPaとした。上記以外は実施例1と同様にしてクレーズ処理を行った。その結果、クレーズ形成用フィルムにクレーズが縞状に形成された。以上により、比較例6に係るクレーズフィルムを得た。
<クレーズ処理する前のフィルムの破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力の測定>
実施例、比較例に係るクレーズ形成用フィルム(クレーズ処理する前のフィルム)の破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力は、JIS K−7127(1999)に準拠して測定した。具体的には、引張圧縮試験機(ミネベア株式会社製)を用いて、試験条件(測定温度23℃、試験片長90mm、試験長50mm、試験片幅15mm、引張速度100mm/分)で引張試験を行った。次いで、同試験機に内蔵されたデータ処理ソフトによる自動解析より、破断点伸度(%)、引張弾性率(GPa)及び破断点応力(MPa)を求めた。
<隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値、長さ500μm当たりのクレーズ個数、及び、細クレーズ間隔率の測定>
実施例、比較例のフィルムについて、隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値を求めた。具体的には以下のようにして求めた。結果を表1に示す。
光学顕微鏡を用い、フィルムの、クレーズ処理刃が当たらない面側を接眼レンズ側として観察した。クレーズ処理時の処理刃と直交する方向に500μmの長さが観察可能な倍率に設定し、ピントをフィルム表面に合わせて観察像を撮影した。撮影した画像をA3サイズの用紙に印刷した。このとき観察した500μmの長さは275mmに拡大されていた(倍率550倍)。観察部の中央付近で、クレーズと直交する直線を引き、該直線とクレーズの交差部に印を付けた。該直線に沿って、印と印の間隔を各々測定した。測定された間隔は上記観察時倍率の値により、拡大前の長さに各々換算し、隣り合うクレーズ同士の間隔Lとした。
上記方法により測定された値Lの平均値を算出した。平均値と、各々の測定値Lを比較し、平均値の10倍以上又は10分の1以下の値が測定値Lに含まれるか確認した。含まれている場合はその値を異常値として扱い、異常値を除いた値の平均値を、隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値とした。異常値が含まれていない場合は、平均値をそのまま隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値とした。
また、測定した値Lの個数(異常値を除いた場合は、異常値を除いた後の個数)を、長さ500μm当たりのクレーズの個数とした。
また、値Lが10μm以下となった個数(異常値を除いた場合は、異常値を除いた後の該当個数)を、上記長さ500μm当たりのクレーズ個数で割った割合を百分率で表記し、細クレーズ間隔率とした。
ただしフィルムが白化した場合は、測定不能とした。ここで白化とは、上記方法で光学顕微鏡観察した際、クレーズ処理時の処理刃と略平行の方向に、短いクレーズ様の構造が生成するものの、その長さ(クレーズ処理時の処理刃と平行の方向の長さ)が500μm以上のものが、ほぼ観察されない状態を言う。上記長さが500μm未満であると、入射光を殆ど偏向することはなく、所望の偏向光量が得られない。また、フィルムの透明性が低下して、処理前より白濁してしまう。また、フィルムにクレーズ様の構造がほぼ生成せず、長さが500μm以上のものが無い状態も、測定不能(クレーズ個数0)とした。
なお、比較例1、比較例2のフィルムでは、500μm以上のものは観察されず、ほぼ全て100μm以下であった。
<クレーズ幅の測定>
実施例、比較例のフィルムについて、クレーズの幅の平均値を求めた。具体的には以下のようにして求めた。フィルムの面であって、クレーズ処理刃が当たらない側の面を観察した。観察に際して、電子顕微鏡を用いた。倍率20000倍にて、得られたフィルムの搬送方向中央付近のクレーズ部3か所を観察した観察画像を取得した。各観察画像につき、クレーズ部の幅を3か所測定した。上記3つの観察画像のそれぞれ3つの測定値(合計9測定値)の平均値を、クレーズの幅とした。ただしフィルムが白化した場合や、クレーズが形成されなかった場合は、測定不能とした。
<クレーズの深さの測定>
実施例、比較例のフィルムについて、クレーズの深さの平均値を求めた。具体的には以下のようにして求めた。実施例および比較例のフィルム中央部の任意の箇所より、切片作製装置(ウルトラミクロトーム)を用いて、断面(処理刃と垂直の方向と、厚み方向による断面)観察用サンプルを作成した。光学顕微鏡を用い、視野中に10本以上のクレーズが含まれる倍率に設定して、断面観察用サンプルの任意の2箇所を観察した。観察された20本以上のクレーズの深さを測定し、その平均値を、クレーズの深さとした。各クレーズの深さの測定では、クレーズが、各層のフィルムの処理刃を当てなかった側の界面から処理刃を当てた側の界面まで達している場合は、その層厚み(単層の場合はフィルム厚み)とクレーズの深さが等しいとし、クレーズが途中で止まっている場合は、その点をクレーズの終点とし、フィルムの処理刃を当てなかった側の界面から終点までの直線距離をクレーズの深さとした。
<偏向光分率の測定>
図3を用いて説明した偏向光分率を測定するための測定装置を用いて、以下のように測定した。本実施例では、当該測定装置として、ゴニオメーター(型式:GENESIA(登録商標) Gonio/FFP、ジェネシア社製)を用いた。以下では便宜上、図3と同一の符号を用いて、説明する。ゴニオメーター30は、照射位置32に対する光の入射角度を変更することが可能な光源34と、照射位置32を挟んで、光源34とは反対側に位置し、照射位置32に対する角度を変更することが可能な受光部36とを備える装置である。
<偏向光分率Rr30の測定>
(1)測定装置30を準備し、光源34及び受光部36の角度変更可能面に対してクレーズの方向が鉛直となるように実施例、及び、比較例に係るクレーズフィルムをセットした。
(2)光源34からクレーズフィルムの一方の面(図3では、クレーズフィルム10の下側の面:これは、クレーズ処理の際に、処理刃のエッジ部を押し当てなかった面である)に対して入射角度θ=30°で光を照射した。
(3)クレーズフィルムの鉛直方向を0°としたときに、受光部36の角度αを+90°から−90°まで動かし、1°間隔で出光光量を測定した。このうち、−1°から−90°の90点の測定値の合計を、偏向光量Rd30とした。なお、前記角度αは、クレーズフィルム面に関して光源34と面対象の位置を含む側(図3では、クレーズフィルムの左上側)をマイナスで表す。
(4)クレーズフィルムをセットせずに、同様の測定を行い、+90°から−90°までの181点の測定値の合計を、初期積算光量Ri30とした。
(5)偏向光分率Rr30(%)=(Rd30/Ri30)×100として算出した。
結果を表1に示す。
<偏向光分率Rr50の測定>
(6)測定装置30を準備し、光源34及び受光部36の角度変更可能面に対してクレーズの方向が鉛直となるようにクレーズフィルムをセットした。
(7)光源34からクレーズフィルムの一方の面(図3では、クレーズフィルム10の下側の面:これは、クレーズ処理の際に、処理刃のエッジ部を押し当てなかった面である)に対して入射角度θ=50°で光を照射した。
(8)クレーズフィルムの鉛直方向を0°としたときに、受光部36の角度αを+90°から−90°まで動かし、1°間隔で出光光量を測定した。このうち、−1°から−90°の90点の測定値の合計を、偏向光量Rd50とした。なお、前記角度αは、クレーズフィルム面に関して光源34と面対象の位置を含む側(図3では、クレーズフィルムの左上側)をマイナスで表す。
(9)クレーズフィルムをセットせずに、同様の測定を行い、+90°から−90°までの181点の測定値の合計を、初期積算光量Ri50とした。
(10)偏向光分率Rr50(%)=(Rd50/Ri50)×100として算出した。
結果を表1に示す。
なお、本実施例では、クレーズフィルムの下側の面(クレーズ処理の際に、処理刃のエッジ部を押し当てなかった面)に対して光を照射して偏向光分率Rr30、偏向光分率Rr50の測定を行っているが、例えば、図4で示したような採光フィルムとして使用する際に、処理刃のエッジ部を押し当てなかった面を屋外側に配置する必要はなく、実際の使用時には、クレーズフィルムのいずれの面をどちらの方向に向けて配置してもよい。つまり、本実施例では、偏向光分率Rr30、偏向光分率Rr50がどのように測定して得られた値かをより具体的にするために、処理刃のエッジ部を押し当てなかった面に対して光を照射して測定することにしたにすぎず、実際の使用時にいずれの面から光が照射されるかを意図するものではない。
<天井照度の評価>
図10(a)は、天井照度の評価に用いた測定装置の概略図であり、図10(b)は、窓Wの位置、及び、サイズを説明するための図である。図10(c)は、天井照度測定位置、及び、サイズを説明するための図であり、測定装置内から、上(天井)を見上げた際の図である。まず、壁部Bに窓Wを有する測定装置を用意した。窓Wの位置、及び、サイズは、図10(b)に示す通りである。なお装置には窓W以外からの光の侵入は無く、装置内壁は艶消し白色である。実施例の各々のクレーズフィルムを、そのクレーズの方向(処理刃の方向)が装置設置面と平行になるように、窓W部の装置内部側に設置した。
図11は、天井照度の評価におけるクレーズフィルム設置時の概略図である。図11に示すように、フィルムまでの入射角が、高さ方向が45°であり、横方向は正面からであり、フィルムまでの距離が50cmである位置に光源Tとしてスポット型LEDライト(型番:NLSM05S−AC、製造元:日機株式会社、1m先照度1570lux、全光束280lm)を設置し、光源Tから白色光(多色光)をフィルムに向けて照射した。窓から室内側に225mm位置の真上(図10(c)参照)にあたる天井面の照度測定位置に、受光部Sとしてデジタル照度計(型番:IM−600、製造元:株式会社トプコンテクノハウス社)を設置し、照度を測定した。すなわち、受光部Sは反射角が、高さ方向に関して45°に位置する。なお、フィルムを設置せずに上記測定を行った場合の照度は124luxである。ここで、入射角である45°は、日本(東京)における春分及び秋分の日中時間帯9時〜16時の一般的な太陽高度に相当する。結果を表1に示す。
<フィルムの全光線透過率の測定>
実施例、比較例のフィルムの全光線透過率を、日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH−5000を用いて、JIS−K7361に準拠して測定した。なお、測定時は、偏向光分率Rr30およびRr50の測定での入光側と同じ側(処理刃のエッジ部を押し当てなかった面側)から入光して測定した。結果を表1に示す。
<クレーズ処理後のフィルムの破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力の測定>
実施例、比較例に係るフィルム(クレーズ処理後のフィルム)の流れ方向(MD)の破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力の測定を行った。クレーズ処理後のフィルムの破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力の具体的な測定方法は、クレーズ処理する前のフィルムの破断点伸度、引張弾性率及び破断点応力の測定と同じである。結果を表1に示す。
Figure 2018151144
本天井照度の評価において、天井照度は、好ましくは400lux以上、より好ましくは500lux以上、さらに好ましくは1000lux以上、特に好ましくは1300lux以上である。400lux以上とすることで、採光用途で使用した際、室内が明るく感じ易く好ましい。また、前記天井照度は、好ましくは3000lux以下、より好ましくは2500lux以下、さらに好ましくは2000lux以下、特に好ましくは1800lux以下である。3000lux以下とすることで、採光用途で使用した際、室内が眩しく感じにくく好ましい。
以上の結果より、実施例のフィルムは、天井照度の評価における天井照度が400lux以上3000lux以下であるため、採光用途として好適であることがわかる。特に、入射角45°で照射される1570luxの光源に対して反射角45°で受光される天井照度が400lux以上3000lux以下(より好ましくは500lux以上、さらに好ましくは1000lux以上、特に好ましくは1300lux以上;より好ましくは2500lux以下、さらに好ましくは2000lux以下、特に好ましくは1800lux以下)であるため、実施例のフィルムを包含する本実施形態のフィルムは世界各国で採光用途として好適に使用することができる。
10、11 クレーズフィルム
12 樹脂層
14 (樹脂層の)クレーズ
15 他の樹脂層
16 (他の樹脂層の)クレーズ
17 その他の層
20、21 クレーズ形成用フィルム
22 樹脂層
25 他の樹脂層
27 その他の層
30 測定装置
32 照射位置
34 光源
36 受光部
50 クレーズ形成装置
52 処理刃
54 エッジ部
56 ガイドローラ

Claims (6)

  1. 一定の方向に延びるクレーズが縞状に形成された樹脂層を有し、
    前記樹脂層は、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸であり、
    下記偏向光分率Rr30の測定方法により測定される偏向光分率Rr30が15〜65%であることを特徴とするクレーズフィルム。
    <偏向光分率Rr30の測定方法>
    (1)照射位置に対する光の入射角度を変更することが可能な光源と、前記照射位置を挟んで、前記光源とは反対側に位置し、前記照射位置に対する角度を変更することが可能な受光部とを備える測定装置を準備し、前記光源及び前記受光部の角度変更可能面に対してクレーズの方向が鉛直となるようにクレーズフィルムをセットする。
    (2)前記光源から前記クレーズフィルムの一方の面に対して入射角度θ=30°で光を照射する。
    (3)前記クレーズフィルムの鉛直方向を0°としたときに、前記受光部の角度αを+90°から−90°まで動かし、1°間隔で出光光量を測定する。このうち、−1°から−90°の90点の測定値の合計を、偏向光量Rd30とする。なお、前記角度αは、クレーズフィルム面に関して前記光源と面対象の位置を含む側をマイナスで表す。
    (4)クレーズフィルムをセットせずに、同様の測定を行い、+90°から−90°までの181点の測定値の合計を、初期積算光量Ri30とする。
    (5)偏向光分率Rr30(%)=(Rd30/Ri30)×100として算出する。
  2. 下記偏向光分率Rr50の測定方法により測定される偏向光分率Rr50が5〜55%であることを特徴とする請求項1に記載のクレーズフィルム。
    <偏向光分率Rr50の測定方法>
    (6)照射位置に対する光の入射角度を変更することが可能な光源と、前記照射位置を挟んで、前記光源とは反対側に位置し、前記照射位置に対する角度を変更することが可能な受光部とを備える測定装置を準備し、前記光源及び前記受光部の角度変更可能面に対してクレーズの方向が鉛直となるようにクレーズフィルムをセットする。
    (7)前記光源から前記クレーズフィルムの一方の面に対して入射角度θ=50°で光を照射する。
    (8)前記クレーズフィルムの鉛直方向を0°としたときに、前記受光部の角度αを+90°から−90°まで動かし、1°間隔で出光光量を測定する。このうち、−1°から−90°の90点の測定値の合計を、偏向光量Rd50とする。なお、前記角度αは、クレーズフィルム面に関して前記光源と面対象の位置を含む側をマイナスで表す。
    (9)クレーズフィルムをセットせずに、同様の測定を行い、+90°から−90°までの181点の測定値の合計を、初期積算光量Ri50とする。
    (10)偏向光分率Rr50(%)=(Rd50/Ri50)×100として算出する。
  3. 隣り合うクレーズ同士の間隔Lの平均値L’が、10〜40μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーズフィルム。
  4. 樹脂層を有し、
    前記樹脂層は、結晶性ポリスチレン系樹脂を含有し、かつ、未延伸であり、
    前記樹脂層の流れ方向(MD)の引張弾性率が2.0GPa以上3.2GPa以下であり、前記樹脂層の流れ方向(MD)の破断点伸度が0.2%以上30%以下であることを特徴とするクレーズ形成用フィルム。
  5. 請求項4に記載のクレーズ形成用フィルムを準備する工程Aと、
    前記クレーズ形成用フィルムを処理刃のエッジ部に押し当てて、前記クレーズ形成用フィルムに折り曲げ部を形成し、前記折り曲げ部を、前記クレーズ形成用フィルムに対して相対的に移動させることにより、前記樹脂層にクレーズを縞状に形成する工程Bと
    を有することを特徴とするクレーズフィルムの製造方法。
  6. 前記折り曲げ部における前記クレーズ形成用フィルムのなす角度θが15°〜160°であり、前記エッジ部の先端形状が、半径1mm以下の半球状であることを特徴とする請求項5に記載のクレーズフィルムの製造方法。
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