以下、図面を参照して、本発明の一側面の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に示される天井搬送車1は、クリーンルームの天井などの床面より高い位置に設けられる走行レール(軌道)2に沿って走行する。天井搬送車1は、例えば保管設備と所定のロードポートとの間でFOUP(Front-Opening Unified Pod)(容器)90を搬送する。FOUP90は、開口部を有する箱状の筐体91と、開口部を覆う蓋93と、を有している。蓋93は、筐体91に対し取り外し可能に設けられている。FOUP90には、例えば、複数枚の半導体ウェハ又はレチクル等が収容される。FOUP90は、天井搬送車1に保持されるフランジ95を有している。
以下の説明では、説明の便宜のため、図1における左右方向(X軸方向)を天井搬送車1の前後方向(走行方向)とする。図1における上下方向を天井搬送車1の鉛直方向(Z軸方向)とする。図1における奥行方向を天井搬送車1の幅方向(Y軸方向)とする。X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する。
図1に示されるように、天井搬送車1は、走行駆動部3と、水平駆動部5と、回転駆動部6と、昇降駆動部7と、昇降装置10と、保持装置(把持部)11と、第一蓋落下防止部材20と、第二蓋落下防止部材40と、揺れ防止部材70と、第一蓋落下防止部材20の回動機構50(図3参照)と、第二蓋落下防止部材40及び揺れ防止部材70の移動機構60(図8参照)と、を備えている。天井搬送車1には、水平駆動部5、回転駆動部6、昇降駆動部7、昇降装置10及び保持装置11を覆うように前後方向に一対のフレーム8,8が設けられている。一対のフレーム8,8は、昇降装置10が上昇端まで上昇した状態において保持装置11の下方に、FOUP90が収容される空間を形成している。
走行駆動部3は、天井搬送車1を走行レール2に沿って移動させる。走行駆動部3は、走行レール2内に配置されている。走行駆動部3は、走行レール2を走行するローラ(図示しない)を駆動させる。走行駆動部3の下部には、軸3Aを介して水平駆動部5が接続されている。水平駆動部5は、回転駆動部6、昇降駆動部7及び昇降装置10を水平面内で走行レール2の延在方向に直交する方向(幅方向)に移動させる。回転駆動部6は、水平面内で昇降駆動部7及び昇降装置10を回転させる。昇降駆動部7は、四本のベルト9の巻き上げ及び繰り出しにより昇降装置10を昇降させる。なお、昇降駆動部7におけるベルト9は、ワイヤ及びロープなど、適宜の吊持部材を用いてもよい。
本実施形態における昇降装置10は、昇降駆動部7によって昇降可能に設けられており、天井搬送車1における昇降台として機能している。保持装置11は、FOUP90を保持する。保持装置11は、L字状である一対のアーム12,12と、各アーム12,12に固定されたハンド13,13と、一対のアーム12,12を開閉させる開閉機構15と、を備えている。
一対のアーム12,12は、開閉機構15に接続されている。開閉機構15は、一対のアーム12,12を、互いに近接する方向及び互いに離間する方向に移動させる。開閉機構15の動作により、一対のアーム12,12は、前後方向に進退する。これにより、アーム12,12に固定された一対のハンド13,13が開閉する。本実施形態では、一対のハンド13,13が開状態のときに、ハンド13の保持面がフランジ95の下面の高さより下方となるように、保持装置11(昇降装置10)の高さ位置が調整される。そして、この状態で一対のハンド13,13が閉状態となることで、ハンド13,13の保持面がフランジ95の下面の下方へ進出し、この状態で昇降装置10を上昇させることにより、一対のハンド13,13によってフランジ95が保持(把持)され、FOUP90の支持が行われる。
図2〜図5に示されるように、第一蓋落下防止部材20は、蓋93の正面に配置されることで、保持装置11(図1参照)に保持されたFOUP90から蓋93が落下するのを防止する。特に、図10(B)に示されるように、筐体91の開口部に対し斜めに倒れた場合にその機能を発揮する。図2〜図5に示されるように、第一蓋落下防止部材20は、鉛直方向を回動軸とし、蓋93の正面に配置される進出位置P1と、蓋93の正面から退避した位置に配置される退避位置P2との間で、FOUP90の正面90a及び側面90bに沿って回動可能に設けられている。
第一蓋落下防止部材20は、回動軸20aを基点に先端部20bまで延在する板状部材である。第一蓋落下防止部材20は、ステンレススチール等の材料により形成されている。第一蓋落下防止部材20は、第一直線部21と、第一屈曲部22と、第二直線部23と、第二屈曲部(屈曲部)24と、第三直線部(直線部)25と、を有している。第一蓋落下防止部材20には、第二直線部23、第二屈曲部24、及び第三直線部25にわたって孔部20cが形成されている。これにより、鉛直方向における距離を確保しつつ、第一蓋落下防止部材20の重量を軽量化することができる。なお、本実施形態では、第一蓋落下防止部材20は、回動軸20aを基点にアーム部材58を介して先端部20bまで延在しているが、第一蓋落下防止部材20は、回動軸20aを基点に先端部20bまで延在する一つ部材であってもよい。
第一直線部21は、後段にて詳述する回動機構50のアーム部材58に固定される部分である。第一屈曲部22は、第一直線部21と第二直線部23との接続部分であり、プレス加工によって折り曲げられている。第二直線部23は、後段にて詳述するガイド部材30に支持される部分である。第二屈曲部24は、第二直線部23と第三直線部25との接続部分であり、プレス加工によって折り曲げられている。第三直線部25は、第一蓋落下防止部材20の先端部20bを有する部材である。
第三直線部25は、第一蓋落下防止部材20が進出位置P1に位置するとき、蓋93と平行になるように形成されている。また、第一蓋落下防止部材20が進出位置P1に位置するときの、走行方向におけるFOUP90の端部90cと第一蓋落下防止部材20との距離を第一距離D1とし、FOUP90の端部90cよりも中央寄りの中央部90dと第一蓋落下防止部材20との距離を第二距離D2としたとき、第一距離D1は、第二距離D2と同じか、第二距離D2よりも長くなるように設定される。本実施形態では、第一距離D1と第二距離D2との距離が同じとなるように設定されている。
一対のフレーム8,8のそれぞれには、ガイド部材30が設けられている。図6に示されるように、ガイド部材30は、鉛直方向に延在する円柱状の第一支持部31と、鉛直方向に延在する円柱状の第二支持部33と、を有している。第二支持部33は、第一支持部31の外周面31aと一定の隙間Gを維持した状態で第一支持部31の外周面31aに沿って回動可能に設けられている。第一蓋落下防止部材20は、隙間Gを通過可能に配置されており、隙間G内を移動可能に設けられている。ガイド部材30は、ブラケット35によってフレーム8に固定されている。
図2〜図5に示されるように、第一蓋落下防止部材20の回動機構50は、一対のフレーム8,8にそれぞれ収容されている。幅方向において蓋93の位置を基準位置BLとしたとき、第一蓋落下防止部材20の回動軸20aの位置は、蓋93を正面から見て基準位置BLの後方に距離D3オフセットされている。
回動機構50は、駆動部51と、駆動軸52と、第一歯車部材53と、第二歯車部材54と、第一リンク部材55と、第二リンク部材56と、第三歯車部材57と、アーム部材58と、を有している。回動機構50は、駆動部51による回動運動を第一蓋落下防止部材20の直線運動(進出位置と退避位置との往復運動)に変換する。以下、回動機構50の動作について、図7(A)、図7(B)及び図7(C)を用いて説明する。
図7(A)、図7(B)及び図7(C)に示されるように、駆動部51によって回動する駆動軸52には、歯車が形成されている。第一歯車部材53は、駆動軸52の歯車に係合するように設けられており、駆動軸52が矢印方向a1に回転すると第一歯車部材53も矢印方向a2に回転する。第二歯車部材54は、第一歯車部材53に固定されており、第一歯車部材53が矢印方向a2に回転すると、第二歯車部材54も矢印方向a3に回転する。第一リンク部材55は、第二歯車部材54の回動軸とずれた位置に接続されており、第二歯車部材54の矢印方向a3の回転運動により、第一リンク部材55は矢印方向a4に直線運動する。
第一リンク部材55と第二リンク部材56とは互いに回動可能に接続されており、第二リンク部材56は、第三歯車部材57に固定されている。第一リンク部材55が矢印方向a4に移動した際の第二リンク部材56の移動により、第三歯車部材57は矢印方向a5に回転する。第三歯車部材57及びアーム部材58には互いに歯車が形成されており、互いに係合している。第三歯車部材57が矢印方向a5に回転すると、アーム部材58が矢印方向a6に回転する。アーム部材58が矢印方向a6に回転すると、第一蓋落下防止部材20が固定されているアーム部材58の端部が、矢印方向a7に回転する。これにより、第一蓋落下防止部材20が、FOUP90の側面(フレーム8の内部)からFOUP90の正面(矢印方向a8)に送り出される。すなわち、第一蓋落下防止部材20が退避位置P2から進出位置P1に進出する。なお、第一蓋落下防止部材20における進出位置P1から退避位置P2への移動は、上述の一連の動作とは逆の方向への動作により行われる。
図2に示されるように、第二蓋落下防止部材40は、FOUP90の下面に配置されることで、保持装置11(図1参照)に保持されたFOUP90自体、及びこのFOUP90から蓋93が落下するのを防止する。特に、図10(C)に示されるように、筐体91の開口部に対し平行に外れた場合にその機能を発揮する。第二蓋落下防止部材40は、幅方向に延在する板状部材であり、アルミニウム等の材料により形成されている。図2及び図9に示されるように、第二蓋落下防止部材40は、蓋93の下方に配置される進出位置P3と、図8に示されるように、蓋93の下方から退避した位置、すなわち、鉛直上方から見た場合に、フレーム8の領域に格納される位置に配置される退避位置P4との間で移動可能に設けられている。
図3及び図5に示されるように、第二蓋落下防止部材40における進出位置P3及び退避位置P4への移動は、第一蓋落下防止部材20における進出位置P1及び退避位置P2への移動と連動する。すなわち、第一蓋落下防止部材20が進出位置P1に進出すれば、第二蓋落下防止部材40も進出位置P3に進出し、第一蓋落下防止部材20が退避位置P2に退避すれば、第二蓋落下防止部材40も退避位置P4に退避する。
図1に示される揺れ防止部材70は、FOUP90の側面90bに接触支持して、走行時における保持装置11に保持されたFOUP90の天井搬送車1における前後方向(走行方向)及び左右方向の揺れを抑制する。図3及び図5に示されるように、揺れ防止部材70は、FOUP90(図1参照)に接触支持する二つのローラ70A,70Aを含んで構成される。揺れ防止部材70は、図3及び図9に示されるように、FOUP90の側面90bに接触配置される進出位置P5と、図5及び図8に示されるように、FOUP90の側面90bから離反した位置に配置される退避位置P6との間で移動可能に設けられている。
図3及び図5に示されるように、揺れ防止部材70における進出位置P5及び退避位置P6への移動は、第一蓋落下防止部材20における進出位置P1及び退避位置P2への移動と連動する。すなわち、第一蓋落下防止部材20が進出位置P1に進出すれば、揺れ防止部材70も進出位置P5に進出し、第一蓋落下防止部材20が退避位置P2に退避すれば、揺れ防止部材70も退避位置P6に退避する。以下、第二蓋落下防止部材40及び揺れ防止部材70における第一蓋落下防止部材20との連動動作について説明する。
図8及び図9に示されるように、第二蓋落下防止部材40及び揺れ防止部材70の移動機構60は、一対のフレーム8,8(図2及び図4参照)にそれぞれ収容されており、カム部材61と、第三リンク部材62と、弾性部材65と、第四リンク部材66と、第五リンク部材68と、を有している。
カム部材61は、第一蓋落下防止部材20(図2及び図4参照)における一連の進出動作において回動する第三歯車部材57と一体的に回動するように第三歯車部材57に接続されている。第三歯車部材57が回転すると、カム部材61は、この回転に連動して矢印方向a11に回転する。カム部材61は、第三リンク部材62に固定されると共に、弾性部材65を介して第五リンク部材68に接続されている。第五リンク部材68は、第四リンク部材66と回動可能に接続されている。カム部材61が回転すると、第三リンク部材62が、カム部材61との回動点を基点に矢印方向a12に回転する。これと同時に、第五リンク部材68が、第四リンク部材66との回動点を基点に矢印方向a21に回転する。また、これと同時に、第四リンク部材66が、第五リンク部材68との回動点を基点に矢印方向a22に回転する。
以上に説明した一連の動作により、第三リンク部材62及び第四リンク部材66に回動可能に接続されている第二蓋落下防止部材40が退避位置P4から進出位置P3に進出し、第五リンク部材68に回動可能に接続されている揺れ防止部材70が退避位置P6から進出位置P5に進出する。なお、第二蓋落下防止部材40及び揺れ防止部材70における進出位置P5から退避位置P6への移動は、上述の一連の動作とは逆の方向への動作により行われる。
上記実施形態の天井搬送車1の作用効果について説明する。本実施形態の天井搬送車1では、図2に示されるように、蓋93の正面に配置される進出位置P1に進出可能な第一蓋落下防止部材20が設けられているので、蓋93がFOUP90から外れた場合であっても、当該蓋93をその位置で支持することができる。これにより、FOUP90から蓋93が落下することを防止できる。
上記実施形態の天井搬送車1では、図2及び図4に示されるように、回動軸20aの位置が蓋93を正面から見て基準位置BLの後方にオフセット(距離D3)されているので、第一蓋落下防止部材20の回動機構50をフレーム8の幅方向における中央部に寄せることができる。これにより、FOUP90から蓋93が落下することを防止する第一蓋落下防止部材20の回動機構50を走行方向前後のフレーム8,8にそれぞれ設ける場合であっても、フレーム8の幅方向サイズの増大を抑制することができる。
上記実施形態の天井搬送車1では、図2に示されるように、第一蓋落下防止部材20の第二屈曲部24と先端部20bとの間には第三直線部25が形成されており、第一蓋落下防止部材20が進出位置P1に位置するときに、第一蓋落下防止部材20を蓋93と平行にすることができる。したがって、第一蓋落下防止部材20とFOUP90との距離(D1,D2)を調整しやすくなる。また、上述したとおり、第一蓋落下防止部材20とFOUP90との距離(D1,D2)を調整しやすくなるので、特に、第一蓋落下防止部材20がFOUP90に衝突し易いFOUP90の端部90c位置において、第一蓋落下防止部材20との距離D1が確保される。この結果、第一蓋落下防止部材20とFOUP90との衝突の可能性を低減することができる。
上記実施形態の天井搬送車1では、第一蓋落下防止部材20の第三直線部25は、図2に示されるように、第一蓋落下防止部材20が進出位置P1に位置するとき、蓋93と平行になるように設けられている。すなわち、第一蓋落下防止部材20が進出位置P1に位置するときの、走行方向におけるFOUP90の端部90cと第一蓋落下防止部材20との距離(第一距離)D1と、FOUP90の端部90cよりも中央寄りの中央部90dと第一蓋落下防止部材20との距離(第二距離)D2とが等しい。この構成の天井搬送車1では、第一蓋落下防止部材20とFOUP90との距離D1,D2を調整し易くなる。
上記実施形態の天井搬送車1では、図6に示されるように、フレーム8,8のそれぞれに第一蓋落下防止部材20を支持するガイド部材30が設けられているので第一蓋落下防止部材20をスムーズに進出位置P1(図2参照)及び退避位置P2(図4参照)に移動させることができる。また、天井搬送車1の走行時の振動に対して第一蓋落下防止部材20を安定的にフレーム8,8のそれぞれに固定することができる。
上記実施形態の天井搬送車1では、図3及び図5に示されるように、第二蓋落下防止部材40における進出位置P3及び退避位置P4への移動は、第一蓋落下防止部材20における進出位置P1及び退避位置P2への移動に連動している。また、揺れ防止部材70における進出位置P5及び退避位置P6への移動は、第一蓋落下防止部材20における進出位置P1及び退避位置P2への移動に連動している。上記実施形態では、それぞれ機能の異なる部材を同時に移動させることができるので、効果的に蓋93の落下を防止することができる。
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態の天井搬送車1では、回動軸20aを基点に先端部20bまで一方向に延在する板状部材の第一蓋落下防止部材20を例に挙げて説明したが、例えば、図11に示されるように、先端部20bに鉛直方向に延在する第四直線部28を形成してもよい。この構成では、FOUP90から蓋93が外れた場合、蓋93を前後方向に支持できるだけでなく、鉛直方向も支持することが可能になる。この結果、第一蓋落下防止部材20は、より安定的に蓋93を支持することができる。また、この構成により、従来、保持装置11のハンド13,13等に設けられていた蓋93の上面を支持する構成を省略することができる。
上記実施形態又は変形例では、第一蓋落下防止部材20と第二蓋落下防止部材40と揺れ防止部材70とが互いに連動する例を挙げて説明したが、それぞれ個々に動作してもよいし、任意の二要素が互いに連動してもよい。