JPWO2018078901A1 - 高次酢酸塩化合物、及びこれを用いた固形状透析用剤 - Google Patents

高次酢酸塩化合物、及びこれを用いた固形状透析用剤 Download PDF

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Abstract

本発明の目的は、酢酸臭を低減でき、更にブドウ糖と共存させてもブドウ糖の分解を抑制できる酢酸塩化合物を提供することである。酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物であって、粉末X線回折測定において、2θ=8.8°±0.2°に回折ピークA、及び2θ=22.3°±0.2°に回折ピークBが認められ、当該回折ピークAの積分強度Iaと当該回折ピークBの積分強度Ibの比率Ia/Ibが1.447未満である化合物は、酢酸の揮発を効果的に抑制でき、酢酸臭の低減が可能であり、しかもブドウ糖と共存させてもブドウ糖の分解を抑制できる。

Description

本発明は、酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物に関する。より具体的には、本発明は、酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含み、酢酸臭を低減でき、更にブドウ糖と共存させてもブドウ糖の分解を抑制できる高次酢酸塩化合物に関する。更に、本発明は、当該高次酢酸塩化合物を用いた固形状透析用剤に関する。
血液透析液では、酸塩基平衡の是正のために炭酸水素ナトリウムを用いた重炭酸透析液が主流になっており、透析液を中性にするために酸を配合することも必須となっている。また、重炭酸透析液に含まれる電解質成分を同一の容器に共存して流通させると、容器内で炭酸ガスを発生して非常に不安定になるため、透析液の調製に使用される透析用剤として、重炭酸ナトリウム以外の電解質成分を主として含むA剤と重炭酸ナトリウムを主として含むB剤の2剤に分けて製造し、使用時に混合することが一般的となっている。従来、透析用A剤は、電解質成分を濃縮液形態で含む液状A剤、電解質成分を固形状で含む固形状A剤があったが、液状A剤は、輸送コスト、病院等での保管スペース、病院内での作業性、使用後の容器の廃棄等の点で問題視されており、最近では、固体状の透析用A剤が国内では主流となっている。また、近年、透析処置中に、患者の病態に応じて、重炭酸イオン濃度やナトリウムイオン濃度を変化させることを可能とする、電解質成分(重炭酸ナトリウム及び塩化ナトリウム以外)を主として含むA剤、塩化ナトリウムを主として含むS剤、及び重炭酸ナトリウムを主として含むB剤からなる3剤型の透析用剤も提案されている(特許文献1参照)。酢酸は、短時間で代謝されるために生体への蓄積が少ないため、このような透析用剤では、透析液を中性にするための酸やアルカリ剤として、酢酸及び酢酸ナトリウムの配合が広く行われている。
また、酢酸及び酢酸ナトリウムは、透析用剤に限らず、様々な医薬品でも広く利用されており、更に、化粧料、食品等の分野でも汎用されている。
一方、酢酸は、揮発し易く、酢酸臭を生じさせるという欠点がある。そのため、酢酸や酢酸ナトリウムを含む製品では、酢酸臭の発生によって、製造現場や使用現場における環境を悪化させるという問題点がある。例えば、透析医療の分野では、透析液調製は一般に臨床工学技士が臨床現場にて行っているが、酢酸を含む透析液の調製時には、酢酸臭による刺激臭に伴う不快感が生じ、作業性が低下したり、臨床現場の環境が悪化したりするという問題点がある。
そこで、従来、酢酸の揮発に起因する酢酸臭を低減させる手法について種々提案されている。例えば、特許文献2には、透析用A剤において、酢酸及び酢酸塩を含む、酢酸及び酢酸塩の少なくとも一部が二酢酸アルカリ金属塩であり、且つ酢酸:酢酸塩のモル比を1:0.5〜2に設定することにより、透析用A剤において酢酸臭を低減できることが開示されている。また、特許文献3には、透析用剤Aにおいて、含有する酢酸を実質的にナトリウムジアセテートにすることによって、酢酸の揮発を抑制できることが開示されている。更に、特許文献4には、300〜3000μmのメジアン径を有し、回折角2θ=4.0〜40.0°の範囲内に特定の回折ピークの組み合わせを有する二酢酸ナトリウム結晶が、酢酸の揮発を抑制できることが報告されている。
特許文献2の技術は、製剤学的観点から酢酸臭を低減する方法であり、酢酸臭が低減された酢酸塩化合物を開示するものではない。また、特許文献3及び4の技術は、特定の構造を有する酢酸塩化合物を使用することによって酢酸臭の低減を図っているが、製剤の長期保存性の観点から改善の余地が残されている。
一方、一般的な透析液には、透析処置中の低血糖を抑制するためにブドウ糖が含まれている。酢酸はブドウ糖の分解要因にもなるため、酢酸を使用し且つブドウ糖を含む固形状透析用剤では、ブドウ糖の安定性に十分に配慮することが求められる。前述した特許文献2の技術では、製剤学的な手法によって透析用A剤中のブドウ糖の安定性も図ることができている。しかしながら、製剤学的な手法によらず、ブドウ糖の分解を抑制できる酢酸塩化合物自体は、従来報告されていない。また、酢酸を含む固形状透析用剤では、保存によって、固化、着色、水に溶解した際のpHの変動等が生じ、製剤安定性に乏しいという欠点もある。従来、このような製剤安定性を向上させる作用がある酢酸塩化合物については報告されていない。
特許第5099464号公報 特許第5517321号公報 特開平7−59846号公報 国際公開第2015/72494号
本発明の目的は、酢酸臭を低減でき、更にブドウ糖と共存させてもブドウ糖の分解を抑制できる高次酢酸塩化合物を提供することである。更に、本発明の他の目的は、当該高次酢酸塩化合物を用いた固形状透析用剤を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物であって、粉末X線回折測定において、2θ=8.8°±0.2°に回折ピークA、及び2θ=22.3°±0.2°に回折ピークBが認められ、当該回折ピークAの積分強度Iaと当該回折ピークBの積分強度Ibの比率Ia/Ibが1.447未満である化合物は、酢酸の揮発を効果的に抑制でき、酢酸臭の低減が可能であり、しかもブドウ糖と共存させてもブドウ糖の分解を抑制できることを見出した。更に、前記高次酢酸塩化合物を含む固形状透析用剤では、酢酸臭の低減、及びブドウ糖の分解抑制に加えて、保存による固化、着色、水に溶解した際のpHの変動等が抑制され、優れた製剤安定性を備えることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 粉末X線回折測定において、2θ=8.8°±0.2°に回折ピークA、及び2θ=22.3°±0.2°に回折ピークBが認められ、
前記回折ピークAの積分強度Iaと前記回折ピークBの積分強度Ibの比率Ia/Ibが1.447未満である、
酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物。
項2. 前記比率Ia/Ibが0.001〜1.140である、項1に記載の高次酢酸塩化合物。
項3. 項1又は2に記載の高次酢酸塩化合物を含む固形状透析用剤。
項4. 項1〜2のいずれかに記載の高次酢酸塩化合物、及び塩化ナトリウムを含む固形状透析用A剤。
項5. 更にブドウ糖を含む、項4に記載の固形状透析用A剤。
項6. 項4又は5に記載の固形状透析用A剤と、炭酸水素ナトリウムを含む透析用B剤とを含む、2剤型重炭酸透析用剤。
項7. 項1〜2のいずれかに記載の高次酢酸塩化合物を含み、塩化ナトリウムを実質的に含まない固形状透析用A剤。
項8. 更にブドウ糖を含む、項7に記載の固形状透析用A剤。
項9. 項7又は8に記載の固形状透析用A剤と、塩化ナトリウムを含む透析用S剤と、炭酸水素ナトリウムを含む透析用B剤とを含む、3剤型重炭酸透析用剤。
項10. 酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物を製造する方法であって、
酢酸、酢酸ナトリウム、及び水性溶媒を混合して、混合液を得る工程1、及び
前記ピークA及びBが認められ、且つ比率Ia/Ibが前記範囲を充足する高次酢酸塩化合物が生成するまで、前記工程1で得られた混合液を減圧乾燥する工程2
を含む、前記高次酢酸塩化合物の製造方法。
項11. 前記工程2における減圧乾燥が、−30〜−100kPaの圧力条件で行われる、項10に記載の製造方法。
本発明の高次酢酸塩化合物は、酢酸の揮発を効果的に抑制でき、酢酸臭の低減が可能であるので、医薬、食品、化粧料等の様々な分野において、製品や製造現場で酢酸の揮発による不快臭が生じるのを抑制することができる。また、本発明の高次酢酸塩化合物は、ブドウ糖と共存しても、ブドウ糖の分解を抑制できるので、ブドウ糖を含む製品への添加剤として好適に使用することができる。
また、本発明の高次酢酸塩化合物を含む固形状透析用剤は、酢酸臭の低減、及びブドウ糖の分解抑制に加えて、保存による固化、着色、水に溶解した際のpHの変動等を抑制できるので、優れた製剤安定性を備えることができる。
実施例1で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例2で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例3で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例4で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例5で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例6で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例7で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例8で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例9で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例10で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 比較例1で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 比較例2で得られた高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンを示す図である。 実施例2で得られた高次酢酸塩化合物の結晶形状を走査型電子顕微鏡にて観察した写真である。 無水酢酸ナトリウムの粉末X線回折パターンを示す図である。
1.高次酢酸塩化合物
本発明の高次酢酸塩化合物は、酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物であって、粉末X線回折測定において、2θ=8.8°±0.2°に回折ピーク(回折ピークA)、及び2θ=22.3°±0.2°に回折ピーク(回折ピークB)が認められ、当該回折ピークAの積分強度Iaと当該回折ピークBの積分強度Ibの比率Ia/Ibが1.447未満であることを特徴とする。以下、本発明の高次酢酸塩化合物について、詳述する。
[組成]
本発明の高次酢酸塩化合物は、酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物である。本発明において、「酢酸−酢酸ナトリウム混晶体」とは、酢酸と酢酸ナトリウムが互いに混合して形成された結晶を指す。また、本発明において、「高次酢酸塩化合物」とは、酢酸(一次化合物)と酢酸ナトリウム(一次化合物)が互いに結合して生成された化合物を指す。即ち、本発明において、「酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物」とは、酢酸と酢酸ナトリウムが互いに結合して生成された化合物であって、これら物質が混じり合って形成された結晶を含むものを意味する。本発明における「酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物」には、水、酢酸、酢酸ナトリウムの他の成分が本発明の効果に悪影響を及ぼさない程度含まれていてもよい。
本発明の高次酢酸塩化合物を構成する酢酸と酢酸ナトリウムのモル比については、後述する粉末X線回折パターンを有することを限度として特に制限されないが、具体的には、酢酸:酢酸ナトリウムのモル比として、通常1:0.5〜10、好ましくは1:0.5〜3.0、更に好ましくは1:0.7〜2.0が挙げられる。本発明の高次酢酸塩化合物には、構成成分の内、酢酸が占めるモル比が前記のように高いにも拘わらず、酢酸臭、ブドウ糖の分解、固形状透析用剤の製剤不安定化(固化、着色、水に溶解した際のpHの変動)等、酢酸が有する欠点を克服することが可能になっている。
[粉末X線回折パターンの特徴]
本発明の高次酢酸塩化合物は、粉末X線回折測定において、2θ=8.8°±0.2°に回折ピークA、及び2θ=22.3°±0.2°に回折ピークBが認められる。本発明の高次酢酸塩化合物では、前記回折ピークAの積分強度Iaと前記回折ピークBの積分強度Ibの比率Ia/Ibが1.447未満を充足する。なお、本発明の高次酢酸塩化合物は、前記回折ピークAが認められるので、前記比率Ia/Ibは0超の値になる。このような比率を充足することによって、酢酸の揮発を効果的に抑制して酢酸臭を低減でき、且つブドウ糖と共存させてもブドウ糖の分解を抑制する作用を備えることが可能になる。酢酸の揮発抑制作用及びブドウ糖の分解抑制作用をより一層向上させるという観点から、本発明の高次酢酸塩化合物における当該比率Ia/Ibとして、好ましくは0.001〜1.440、更に好ましくは0.006〜1.440、特に好ましくは0.060〜0.760が挙げられる。
また、本発明の高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンの好適な特徴の一つとして、前記ピークA及びB以外に、粉末X線回折測定において、2θ=5〜50°の走査範囲内に、17.0°±0.2°のピーク(回折ピークC)が認められることが挙げられる。更に、酢酸の揮発抑制作用及びブドウ糖の分解抑制作用をより一層向上させるという観点から、本発明の高次酢酸塩化合物の好適な一態様として、前記積分強度Iaと前記回折ピークCの積分強度Icの比率Ia/Icが、1.000〜45.000を満たすもの又は1.000〜350.000を満たすものが挙げられる。
また、本発明の高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンの他の特徴として、粉末X線回折測定において、2θ=5〜50°の走査範囲内に、11.1°±0.2°、13.6°±0.2°、15.8°±0.2°、17.0°±0.2°、19.2°±0.2°、20.9°±0.2°、23.8°±0.2°、25.1°±0.2°、30.8°±0.2°、34.8°±0.2°、36.6°±0.2°、38.4°±0.2°、40.9°±0.2°、42.5°±0.2°、45.6°±0.2°、46.4°±0.2°及び47.1°±0.2のピークの組み合わせを有することが挙げられる。これらのピークは無水酢酸ナトリウムでは認められないピークである。なお、無水酢酸ナトリウムの粉末X線回折パターンは、図14に示すとおりである。
更に、本発明の高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンの一態様として、前記ピークA及びB以外に、粉末X線回折測定において、2θ=5〜50°の走査範囲内に、11.1°±0.2°、13.6°±0.2°、15.8°±0.2°、17.0°±0.2°、19.2°±0.2°、20.9°±0.2°、23.8°±0.2°、25.1°±0.2°、26.3°±0.2°、30.8°±0.2°、33.8°±0.2°、34.8°±0.2°、35.7°±0.2°、36.6°±0.2°、38.4°±0.2°、40.9°±0.2°、41.7°±0.2°、42.5°±0.2°、45.6°±0.2°、46.4°±0.2°、47.1°±0.2°及び49.2°±0.2°のピークの組み合わせを有することが挙げられる。
なお、前記粉末X線回折パターンは、以下の条件の粉末X線回折法によって求めることができる。
ターゲット:Cu
X線管電流:30mA
X線管電圧:40kV
走査範囲:2θ=5〜90°
測定サンプルの前処理:メノウ乳鉢ですり潰す
[粒子径]
本発明の高次酢酸塩化合物の粒子径については、製造条件等に応じて異なり得るが、中位径(D50)として、通常50〜1500μm、好ましくは100〜1000μm、更に好ましくは150〜800μmが挙げられる。本発明において、高次酢酸塩化合物の中位径は、75mmJIS標準ふるいを使用し、第十七改正日本薬局方記載の「一般試験法 3.04 粒度測定法 2.第2法 ふるい分け法」に従って測定された結果から算出される重量累積50%の粒径である。
なお、中位径(D50)は、ふるい分け法によって測定された粒度分布の結果から以下の式に従って算出される。
Figure 2018078901
y(50):中位径
y1、y2:重量累積分布が50%となる前後のふるいの目開き(μm)
x1、x2:重量累積分布が50%となる前後のふるい上の累積分布(%)
[用途]
本発明の高次酢酸塩化合物は、pH調整剤、酢酸の供給源、ナトリウムの供給源等として、医薬、食品、化粧料等の分野で使用できる。特に、本発明の高次酢酸塩化合物は、ブドウ糖との共存下でブドウ糖の分解を抑制できるので、ブドウ糖を含む固形状各種組成物に対して好適に使用できる。
固形状透析用剤は、臨床現場で水に溶解して透析液を調製するため、酢酸臭の低減が強く求められる製剤である。また、固形状透析用剤には、ブドウ糖が配合されていることが多く、ブドウ糖の安定性維持も要求される製剤である。本発明の高次酢酸塩化合物は、このような固形状透析用剤の要求特性を満足させることができるので、固形状透析用剤に配合される添加剤として特に好適に使用できる。また、本発明の高次酢酸塩化合物を含む固形状透析用剤は、保存による固化、着色、水に溶解後のpHの変動を抑制でき、製剤安定性を向上させることもできる。なお、本発明の高次酢酸塩化合物を含む固形状透析用剤の具体的態様については、後述する。
[製造方法]
本発明の高次酢酸塩化合物の製造方法については、前述する粉末X線回折パターンを有し、酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物が得られることを限度として特に制限されないが、好適な例として、下記工程1及び2を含む製造方法が挙げられる。
工程1:酢酸、酢酸ナトリウム、及び水性溶媒を混合して、混合液を得る工程
工程2:前記ピークA及びBが認められ、且つ比率Ia/Ibが前記範囲を充足する高次酢酸塩化合物が生成するまで、前記工程1で得られた混合液を減圧乾燥する工程
以下、前記工程1及び2について説明する。
(工程1)
工程1では、原料として酢酸、酢酸ナトリウム、及び水性溶媒を使用し、混合液を得る。
工程1で使用される酢酸は、医薬品、食品、化粧料等の分野で一般的に使用されている酢酸であればよいが、好ましくは氷酢酸が挙げられる。
また、工程1で使用される酢酸ナトリウムについても、医薬品、食品、化粧料等の分野で一般的に使用されているものであればよく、含水状態又は無水物のいずれであってもよいが、好ましくは無水酢酸ナトリウムが挙げられる。
工程1で使用される水性溶媒とは、水、又は水に相溶性を示す有機溶媒と水との混合溶媒である。
水性溶媒が混合溶媒である場合、当該混合溶媒に使用される有機溶媒の種類については、水との相溶性(水に対する溶解性)があって、酢酸及び酢酸ナトリウムを溶解でき、且つ後述する工程2における減圧乾燥によって留去可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール等が挙げられる。前記混合溶媒において、有機溶媒は、1種単独で含まれていてもよく、また2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
工程1で使用される水性溶媒として、好ましくは水が挙げられる。
また、工程1において、原料として混合する酢酸と酢酸ナトリウムの比率については、前記[組成]の欄に示した比率と同様である。
また、工程1において、酢酸と酢酸ナトリウムの総量に対して、使用する水性溶媒の比率については、特に制限されないが、例えば、酢酸と酢酸ナトリウムの総量100重量部に対して、水性溶媒が5〜300重量部程度が挙げられる。本発明の高次酢酸塩化合物を効率的に製造するという観点から、酢酸と酢酸ナトリウムの総量100重量部に対する水性溶媒の比率として、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは10〜50重量部が挙げられる。
工程1では、酢酸、酢酸ナトリウム、及び水性溶媒を混合することによって、混合液が得られるが、本発明の高次酢酸塩化合物を効率的に製造するという観点から、当該混合液は、酢酸及び酢酸ナトリウムが水性溶媒に溶解している状態であることが好ましい。
酢酸及び酢酸ナトリウムが水性溶媒に溶解している状態の混合液を得るには、酢酸、酢酸ナトリウム、及び水性溶媒の混合物に対して加熱処理を行えばよい。当該加熱処理の温度条件については特に制限されないが、例えば20〜200℃、好ましくは30〜150℃、更に好ましくは40〜125℃が挙げられる。また、当該加熱処理の加熱時間については、採用する製造スケール、温度条件等に応じて、酢酸及び酢酸ナトリウムが水性溶媒に溶解できる条件を適宜設定すればよいが、例えば、前記温度に到達した状態での加熱時間として、1〜60分間程度、好ましくは10〜50分間程度、更に好ましくは20〜30分間程度が挙げられる。
また、前記加熱処理の際に、水性溶媒の一部を揮発させて、混合液における酢酸及び酢酸ナトリウムを濃縮した状態にしてもよい。更に、前記加熱処理の際には、撹拌を行ってもよく、また空気を供給することによりバブリングを行ってもよい。
斯くして得られた混合液は、後述する工程2に供される。なお、混合液の調製時に加熱を行った場合には、必要に応じて、10〜70℃程度まで冷却し、後述する工程2に供すればよい。
(工程2)
工程2では、前記ピークA及びBが認められ、且つ比率Ia/Ibが前記範囲を充足する高次酢酸塩化合物が生成するまで、前記工程1で得られた混合液を減圧乾燥する。このように、前記工程1で得られた混合液を減圧乾燥することにより、酢酸−酢酸ナトリウムの混晶体が析出し、本発明の高次酢酸塩化合物を生成させることができる。
工程2では、前記工程1で得られた混合液をそのまま減圧乾燥に供してもよいが、必要に応じて、前記工程1で得られた混合液に本発明の高次酢酸塩化合物からなる種結晶を添加した後に減圧乾燥に供してもよい。
工程2における減圧乾燥の圧力条件については、温度条件、混合液の量等に応じて適宜設定すればよいが、通常−30〜−100kPaが挙げられる。本発明の高次酢酸塩化合物を効率的に製造するという観点から、減圧乾燥の圧力条件として、好ましくは−40〜−100kPa、更に好ましくは−50〜−100kPaが挙げられる。
工程2における減圧乾燥の温度条件については、採用する製造スケール、圧力条件、混合液の量等に応じて適宜設定すればよいが、通常30〜190℃又は30〜150℃が挙げられる。
より具体的には、工程2における減圧乾燥の温度条件の好適な例として、本発明の高次酢酸塩化合物を効率的に製造するという観点から、より好ましくは35〜120℃、更に好ましくは40〜110℃が挙げられる。特に、工程2における減圧乾燥の温度条件のより好適な例として、より好ましくは40〜100℃、特に好ましくは50〜95℃であって、減圧乾燥の進行と共に起こる沸点上昇幅と同じ速度で、段階的に加熱温度を上昇させるように温度条件を操作する態様が挙げられる。
また、工程2における減圧乾燥の温度条件の好適な他の例として、本発明の高次酢酸塩化合物を効率的に製造するという観点から、より好ましくは50〜190℃、更に好ましくは50〜150℃が挙げられる。特に、工程2における減圧乾燥の温度条件のより好適な他の例として、より好ましくは55℃〜145℃、特に好ましくは60℃〜135℃であって、減圧乾燥の進行と共に起こる沸点上昇幅と同じ速度で、段階的に加熱温度を上昇させるように温度条件を操作する態様が挙げられる。
また、工程2における減圧乾燥において、必要に応じて、前述した圧力条件を満たす範囲内で、外気、清浄空気、又は乾燥空気を通気させてもよい。通気方法については、特に制限されないが、例えば、減圧乾燥時の混合液内にバブリングする方法、混合液の液面に触れるよう通気する方法等が挙げられる。
減圧乾燥時に通気する場合、空気の吐出部位については特に制限はないが、例えば缶体底部、撹拌翼、缶体壁等が挙げられる。通気により乾燥が促進され,より短時間での製造が可能になる。減圧乾燥時にバブリングを行う場合、通気口への内容物侵入を防ぐため、原料の投入前から通気を開始し、工程1、工程2、必要に応じて工程2以降の工程で同一装置を使用する場合は通気を停止しないことが望ましい。通気する気体量は、採用する製造スケール、圧力条件、混合液の量等に応じて適宜設定すればよいが、通常、原料100kgあたり、1気圧、25℃の大気量で5〜300L/分、好ましくは10〜150L/分、更に好ましくは15〜100L/分が挙げられる。
前記工程1で得られた混合液を減圧乾燥することによって、酢酸−酢酸ナトリウムの混晶体を含む高次酢酸塩化合物が析出するが、減圧乾燥の時間が短い場合には析出した高次酢酸塩化合物にはピークAが認められず、本発明の高次酢酸塩化合物を得ることができない。一方、減圧乾燥によってピークAが認められない高次酢酸塩化合物の結晶が析出した後に、引き続き減圧乾燥を継続して行うと、析出した高次酢酸塩化合物に前記ピークA及びBが認められるようになり、比率Ia/Ibが前記範囲を充足する高次酢酸塩化合物の結晶が生成する。そのため、工程2における減圧乾燥の時間については、前記ピークA及びBが認められ、且つ比率Ia/Ibが前記範囲を充足する高次酢酸塩化合物の結晶が析出する条件に設定する。具体的には、工程2における減圧乾燥の時間は、圧力条件、温度条件、混合液の液量等に応じて、本発明の高次酢酸塩化合物の結晶が析出するように適宜設定されるが、前述する条件を満たした状態で、例えば、品温(析出した高次酢酸塩化合物の温度)が45℃〜95℃、好ましくは60℃〜90℃になった時点で減圧乾燥を終了させればよい。また、このような品温に到達するまでの減圧乾燥の時間としては、例えば、0.5〜24時間、好ましくは1〜15時間、更に好ましくは2〜9時間又は1〜3時間が挙げられる。
工程2によって析出した本発明の高次酢酸塩化合物は、必要に応じて室温程度まで冷却した後に回収すればよい。また、工程2によって析出した高次酢酸塩化合物は、必要に応じて、更に棚段乾燥機や流動層乾燥機等の乾燥処理に供してもよい。
また、回収された本発明の高次酢酸塩化合物は、必要に応じて、篩等を用いて粒度を調整してもよい。
また、工程1及び2は、それぞれ異なる装置で行ってもよいが、混合手段、加熱手段、及び減圧乾燥手段を備える装置を用いてワンポットで行ってもよい。
2.固形状透析用剤
「固形状透析用剤」とは、透析液の調製に使用される固形状の原料である。本発明の固形状透析用剤は、前記高次酢酸塩化合物を含むものである。前記高次酢酸塩化合物は、酢酸臭が低減されているので、臨床現場における透析液の調製の際の作業環境の悪化を抑制することができる。また、前記高次酢酸塩化合物は、ブドウ糖の分解を抑制することもできるので、本発明の固形状透析用剤にブドウ糖が含まれている場合には、ブドウ糖の安定化を図ることもできる。更に、本発明の固形状透析用剤は、前記高次酢酸塩化合物を含むことによって、保存により生じる、固化、着色、水への溶解後のpHの変動を抑制できるので、優れた製剤安定性を備えることもできる。
[固形状透析用剤の種類]
本発明の固形状透析用剤は、血液透析液又は腹膜透析液のいずれの調製に使用されてもよいが、好ましくは血液透析液の調製に使用される。特に、本発明の固形状透析用剤は、重炭酸イオンを含む重炭酸透析液の調製に使用される透析用剤、即ち重炭酸透析用剤として好適である。
[重炭酸透析用剤とする場合の具体的態様]
(重炭酸透析用剤の組成)
本発明の固形状透析用剤を重炭酸透析用剤とする場合、酢酸イオンの供給源として前記高次酢酸塩化合物、及び重炭酸イオンの供給源として重炭酸ナトリウムを含み、更に、透析液に使用される生理的に利用可能な他の電解質が含まれる。このような電解質としては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グルコン酸イオン、コハク酸イオン、リンゴ酸イオン等の供給源となり得るものが挙げられる。これらの中でも、少なくともナトリウムイオン、塩化物イオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの供給源になるものが含まれていることが好ましく、これらに加えてカリウムイオンの供給源になるものが更に含まれていることがより好ましい。
マグネシウムイオンの供給源となる成分としては、マグネシウム塩が挙げられる。本発明の透析用剤に使用されるマグネシウム塩については、透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、塩化マグネシウム、乳酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム等が挙げられる。これらのマグネシウム塩の中でも、塩化マグネシウムは、水に対する溶解度が高いため、マグネシウムの供給源として好適に使用される。これらのマグネシウム塩は、水和物の形態であってもよい。また、これらのマグネシウム塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カルシウムイオンの供給源となる成分としては、カルシウム塩が挙げられる。本発明の透析用剤に使用されるカルシウム塩としては、透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム等が挙げられる。これらのカルシウム塩の中でも、塩化カルシウムは、水に対する溶解度が高いため、カルシウムの供給源として好適に使用される。これらのカルシウム塩は、水和物の形態であってもよい。また、これらのカルシウム塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ナトリウムイオンの供給源となる成分としては、ナトリウム塩が挙げられる。前記高次酢酸塩化合物もナトリウムイオンの供給源となるが、前記高次酢酸塩化合物以外のナトリウム塩も使用することによって、ナトリウムイオンを補充し、透析液に所望のナトリウムイオン濃度を備えさせることができる。ナトリウム塩は、透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等が挙げられる。これらのナトリウム塩の中でも、塩化ナトリウムは、最も生理的な物質であるため、ナトリウムの供給源として好適に使用される。これらのナトリウム塩は、水和物の形態であってもよい。また、これらのナトリウム塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カリウムイオンの供給源となる成分としては、カリウム塩が挙げられる。本発明の透析用剤に配合されるカリウム塩についても、透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、塩化カリウム、乳酸カリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム等が挙げられる。これらのカリウム塩の中でも、塩化カリウムは、塩化物イオンが最も生理的な物質であるため、カリウムの供給源として好適に使用される。これらのカリウム塩は、水和物の形態であってもよい。また、これらのカリウム塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
塩化物イオンの供給源となる成分としては、塩化物塩が挙げられる。本発明の透析用剤に配合される塩化物塩についても、透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの塩化物塩は、水に対する溶解度が高く、しかもナトリウム、カリウム、マグネシウム、又はカリウムの供給源としての役割も果たし得るので、好適に使用される。これらの塩化物塩は、水和物の形態であってもよい。また、これらの塩化物塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、pH調節剤としての役割も果たす塩酸を塩化物イオンの供給源として用いることもできる。
本発明の固形状透析用剤を重炭酸透析用剤とする場合、前記高次酢酸塩化合物及び重炭酸ナトリウム以外に配合される電解質の種類と組み合わせについては、最終的に調製される透析液に含有させる各イオンの組成に応じて適宜設定されるが、固形状透析用剤に含まれる電解質(前記高次酢酸塩化合物及び重炭酸ナトリウム以外)の好適な例として、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及び塩化カリウムの組み合わせが挙げられる。また、電解質として、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及び塩化カリウムを組み合わせて使用する場合、更に有機酸塩(酢酸塩以外)を含んでいてもよい。このような有機酸塩としては、例えば、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等が挙げられる。これらの有機酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、本発明の固形状透析用剤を重炭酸透析用剤とする場合、透析処置中の低血糖を抑制するためにブドウ糖が含まれていてもよい。前記高次酢酸塩化合物はブドウ糖と共存しても、ブドウ糖の分解を抑制することができるので、ブドウ糖を含有させる場合には、前記高次酢酸塩化合物と同一製剤に配合することができる。
酢酸イオンを含む重炭酸透析液は、通常、以下の表1に示す組成及び濃度となるように処方されている。従って、本発明の固形状透析用剤を重炭酸透析用剤とする場合には、最終的に調製される重炭酸透析液の組成及び濃度が以下の範囲を充足するように、前記高次酢酸塩化合物、重炭酸ナトリウム、及び他の成分(他の電解質成分やブドウ糖)を配合すればよい。
Figure 2018078901
例えば、本発明の固形状透析用剤において、前記高次酢酸塩化合物及び重炭酸ナトリウム以外に、電解質として、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及び塩化カリウムを用いる場合、透析液に含まれる各イオン濃度を前記表1に示す範囲を充足させるには、透析用剤中の塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及び塩化カリウムの比率を、塩化マグネシウム0.5モルに対して、前記高次酢酸塩化合物を構成する酢酸及び酢酸ナトリウムの総モル数で2〜12モル、好ましくは3〜10モル、塩化カルシウムを0.75〜2.25モル、好ましくは1.0〜1.75モル、塩化カリウムを0〜3モル、好ましくは1.5〜2.5モル、重炭酸ナトリウムを20〜40モル、好ましくは25〜35モルに設定すればよい。
本発明の固形状透析用剤は、前記高次酢酸塩化合物によって重炭酸透析液のpHを適度な範囲を備えるように調整できるが、更に必要に応じて、別途、pH調節剤を含んでいてもよい。本発明の透析用剤に使用可能なpH調節剤としては、透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、塩酸、乳酸、グルコン酸等の液状の酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、グルコノデルタラクトン等の固形状の酸、及びこれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム塩等が挙げられる。これらのpH調節剤の中でも、有機酸が好適に使用される。pH調節剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(重炭酸透析用剤のタイプ)
重炭酸透析用剤には、重炭酸透析液に含まれる全成分が1つの製剤に混合されている1剤型;重炭酸ナトリウム以外の電解質成分、及び必要に応じてブドウ糖を含む透析用A剤と、重炭酸ナトリウムを含む透析用B剤とからなる2剤型;重炭酸ナトリウム以外の電解質成分を含む透析用A−1剤と、ブドウ糖を含む透析用A−2剤と、重炭酸ナトリウムを含む透析用B剤とからなる3剤型;塩化ナトリウムを含む透析用S剤と、重炭酸ナトリウムを含む透析用B剤と、塩化ナトリウム及び重炭酸ナトリウム以外の電解質成分、並びに必要に応じてブドウ糖を含む透析用A剤とからなる3剤型が知られている。本発明の固形状透析用剤を重炭酸透析用剤とする場合には、これらのいずれのタイプの重炭酸透析用剤であってもよい。
本発明の固形状透析用剤が1剤型重炭酸透析用剤である場合には、当該重炭酸透析用剤は、前記高次酢酸塩化合物、重炭酸ナトリウム、他の電解質、及び必要に応じてブドウ糖を用いて製剤化すればよい。
本発明の固形状透析用剤が透析用A剤及び透析用B剤からなる2剤型重炭酸透析用剤である場合には、透析用A剤は、前記高次酢酸塩化合物、他の電解質(前記高次酢酸塩化合物及び重炭酸ナトリウム以外)、及び必要に応じてブドウ糖を用いて製剤化すればよい。また、当該2剤型重炭酸透析用剤の透析用B剤は、重炭酸ナトリウムを用いて製剤化すればよいが、重炭酸ナトリウム以外の電解質成分が含まれていないことが望ましく、含有成分が実質的に重炭酸ナトリウムのみからなるものが好適である。
本発明の固形状透析用剤が透析用A−1剤、透析用A−2剤、及び透析用B剤からなる3剤型重炭酸透析用剤である場合には、透析用A−1剤は、前記高次酢酸塩化合物、及び他の電解質(前記高次酢酸塩化合物及び重炭酸ナトリウム以外)を用いて製剤化すればよい。当該3剤型重炭酸透析用剤の透析用A−2剤は、ブドウ糖を用いて製剤化すればよく、ブドウ糖以外の成分が含まれていないことが望ましく、含有成分が実質的にブドウ糖のみからなるものが好適である。また、当該3剤型重炭酸透析用剤の透析用B剤は、重炭酸ナトリウムを用いて製剤化すればよいが、重炭酸ナトリウム以外の電解質成分が含まれていないことが望ましく、含有成分が実質的に重炭酸ナトリウムのみからなるものが好適である。
本発明の固形状透析用剤が透析用A剤、透析用S剤、及び透析用B剤からなる3剤型重炭酸透析用剤である場合には、固形状A剤は、前記高次酢酸塩化合物、他の電解質(前記高次酢酸塩化合物及び重炭酸ナトリウム以外)、及び必要に応じてブドウ糖を用いて製剤化すればよい。当該3剤型重炭酸透析用剤の固形状S剤は、塩化ナトリウムを用いて製剤化すればよいが、塩化ナトリウム以外の電解質成分が含まれていないことが望ましく、含有成分が実質的に塩化ナトリウムのみからなるものが好適である。また、当該3剤型重炭酸透析用剤の固形状B剤は、重炭酸ナトリウムを用いて製剤化すればよいが、重炭酸ナトリウム以外の電解質成分が含まれていないことが望ましく、含有成分が実質的に重炭酸ナトリウムのみからなるものが好適である。
前記重炭酸透析用剤のタイプの中でも、臨床現場における重炭酸透析液の調製容易性、製剤安定性等の観点から、好ましくは、透析用A剤及び透析用B剤からなる2剤型重炭酸透析用剤、並びに透析用A剤、透析用S剤、及び透析用B剤からなる3剤型重炭酸透析用剤が挙げられる。また、これらの2剤型重炭酸透析用剤及び3剤型重炭酸透析用剤の好適な態様として、透析用A剤にブドウ糖が含まれている態様が挙げられる。前述するように、前記高次酢酸塩化合物は、ブドウ糖の分解を抑制してブドウ糖の安定化を図ることができるので、透析用A剤にブドウ糖が含まれていても、製剤安定化が図られる。
また、透析用A剤、透析用S剤、及び透析用B剤からなる3剤型炭酸透析用剤の場合には、特許第5099464号公報に記載されているように、透析処置中に、患者の病態に応じて、重炭酸透析液のナトリウムイオン濃度及び/又は重炭酸イオン濃度を変化させることができるという利点もある。
前記各タイプの重炭酸透析用剤を構成する各剤の内、前記高次酢酸塩化合物が含まれている剤(即ち、前記1剤型重炭酸透析用剤、前記透析用A剤、前記透析用A−1剤)は固形状であればよい。前記高次酢酸塩化合物が含まれている剤の形状として、具体的には、粉末状、顆粒状等が挙げられる。
前記各タイプの重炭酸透析用剤を構成する各剤(1剤型重炭酸透析用剤、透析用A剤、透析用A−1剤、透析用A−2剤、透析用S剤、透析用B剤等)は、当該剤の種類に応じて、配合すべき成分を選択し、最終的に調製される重炭酸透析液の組成及び濃度が前述する範囲を充足するように各成分の配合量を定めて、従来の透析用剤の製剤化手法に従って製剤化することにより調製できる。特に、長期保存安定性を有する固形状透析用A剤の好適な製造方法としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び水を造粒し、電解質造粒物を得る工程、並びに前記工程で得られた電解質造粒物、塩化カリウム、前記高次酢酸塩化合物及びブドウ糖を混合する工程を経て固形状透析用A剤を得る方法が挙げられる。
(重炭酸透析液の調製)
重炭酸透析液は、重炭酸透析用剤を構成する各剤を、所定量の水(好ましくは精製水)に混合し希釈させることによって調製される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
製造例:高次酢酸塩化合物の製造
実施例1
氷酢酸20.0kg、無水酢酸ナトリウム24.6kg、及び精製水18.3kgをろ過乾燥機(製造元:タナベウィルテック株式会社、型番:TR25F)に入れ、品温が105℃になるまで加熱しながら撹拌し、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムが溶解した混合液を得た。温度を維持したまま撹拌を継続することにより混合液約9kgを蒸発させて濃縮した後、加熱を停止した。その後、撹拌を継続しつつ品温が42℃になるまで冷却を行い、撹拌下で−96〜−98kPaで品温が60℃を超えるまで減圧乾燥を行った。減圧乾燥の時間は合計150分間であり、減圧乾燥開始から60分間はジャケット熱媒の温度を50〜55℃に保ち、その後90分間はジャケット熱媒の温度を60℃から80℃になるように段階的に制御した。減圧乾燥の時間経過とともに高次酢酸塩化合物の結晶の析出量が増していった。その後、目開きが1.7mmの篩で篩過し、流動性の良好な高次酢酸塩化合物37.2kgを得た。
実施例2
氷酢酸20.0kg、無水酢酸ナトリウム24.6kg、及び精製水18.3kgをろ過乾燥機(製造元:タナベウィルテック株式会社、型番:TR25F)に入れ、品温が105℃になるまで加熱しながら撹拌し、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムが溶解した混合液を得た。温度を維持したまま撹拌を継続することにより混合液約9kgを蒸発させて濃縮した後、加熱を停止した。その後、撹拌を継続しつつ品温が43℃になるまで冷却を行い、次いで、撹拌下で−92〜−94kPaで品温が65℃を超えるまで減圧乾燥を行った。減圧乾燥の時間は合計160分間であり、ジャケット熱媒の温度を90℃に保った。減圧乾燥の時間経過とともに高次酢酸塩化合物の結晶の析出量が増していった。その後、目開きが1.7mmの篩で篩過し、流動性の良好な高次酢酸塩化合物27.0kgを得た。
実施例3
氷酢酸20.0kg、無水酢酸ナトリウム24.6kg、及び精製水18.3kgをろ過乾燥機(製造元:タナベウィルテック株式会社、型番:TR25F)に入れ、品温が82℃になるまで加熱しながら撹拌し、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムが溶解した混合液を得た。その後、缶体上部の空気抜きバルブを開放し、缶体内部に室内空気を通気させつつ、ジャケット熱媒の温度を80〜85℃に制御し、圧力を−50〜−52kPaを維持したまま減圧乾燥を行った。減圧乾燥の時間経過とともに高次酢酸塩化合物の結晶の析出量が増していった。減圧乾燥によって品温が77℃になった時点で、圧力を大気圧に戻し、ジャケットに水道水を流して品温が42℃になったところで目開きが1.7mmの篩で篩過し、流動性の良好な高次酢酸塩化合物35.8kgを得た。なお、減圧乾燥の時間は合計330分間であった。
実施例4
氷酢酸20.0kg、無水酢酸ナトリウム24.6kg、及び精製水18.3kgをろ過乾燥機(製造元:タナベウィルテック株式会社、型番:TR25F)に入れ、品温が90℃になるまで加熱しながら撹拌し、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムが溶解した混合液を得た。その後、実施例2で得られた高次酢酸塩化合物1.5kgを添加した。次いで、缶体上部の空気抜きバルブを開放し、缶体内部に室内空気を通気させつつ、ジャケット熱媒の温度を80〜90℃に制御し、圧力を−40から−55kPaに段階的に制御しつつ減圧乾燥を行った。減圧乾燥の時間経過とともに高次酢酸塩化合物の結晶の析出量が増していった。減圧乾燥によって品温が74℃を超えた時点で、圧力を大気圧に戻し、ジャケットに水道水を流して品温が50℃になったところで目開きが1.7mmの篩で篩過し、流動性の良好な高次酢酸塩化合物30.8kgを得た。なお、減圧乾燥の時間は合計195分間であった。
実施例5
氷酢酸20.0kg、無水酢酸ナトリウム24.6kg、及び精製水18.3kgをろ過乾燥機(製造元:タナベウィルテック株式会社、型番:TR25F)に入れ、品温が78℃になるまで加熱しながら撹拌し、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムが溶解した混合液を得た。その後、缶体上部の空気抜きバルブを開放し、缶体内部に室内空気を通気させつつ、ジャケット熱媒の温度を80〜90℃に制御し、圧力を−30から−90kPaに段階的に制御しつつ減圧乾燥を行った。減圧乾燥の時間経過とともに高次酢酸塩化合物の結晶の析出量が増していった。減圧乾燥によって品温が75℃を超えた時点で、圧力を大気圧に戻し、ジャケットに水道水を流して品温が45℃になったところで目開きが1.7mmの篩で篩過し、流動性の良好な高次酢酸塩化合物41.9kgを得た。なお、減圧乾燥の時間は合計460分間であった。
実施例6
氷酢酸20.0kg、無水酢酸ナトリウム24.6kg、及び精製水18.3kgをろ過乾燥機(製造元:タナベウィルテック株式会社、型番:TR25F)に入れ、品温が81℃になるまで加熱しながら撹拌し、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムが溶解した混合液を得た。その後、缶体上部の空気抜きバルブを開放し、缶体内部に室内空気を通気させつつ、ジャケット熱媒の温度を80〜90℃に制御し、圧力を−30から−90kPaに段階的に制御しつつ減圧乾燥を行った。減圧乾燥の時間経過とともに高次酢酸塩化合物の結晶の析出量が増していった。減圧乾燥によって品温が75℃を超えた時点で、圧力を大気圧に戻し、ジャケットに水道水を流して品温が49℃になったところで目開きが1.7mmの篩で篩過し、流動性の良好な高次酢酸塩化合物中間品42.1kgを得た。減圧乾燥の時間は合計640分間であった。この高次酢酸塩化合物中間品を約100g採取し、金属製のパッドにのせ80℃に設定された送風乾燥機に入れて450分間加熱し、高次酢酸塩化合物を得た。
実施例7
実施例6の製造工程で得られた高次酢酸塩化合物中間品を約100g採取し、金属製のパッドにのせ80℃に設定された送風乾燥機に入れて12時間加熱し、高次酢酸塩化合物を得た。
実施例8
実施例6の製造工程高次酢酸塩化合物中間品を約100g採取し、金属製のパッドにのせ80℃に設定された送風乾燥機に入れて14時間加熱し、高次酢酸塩化合物を得た。
実施例9
実施例6の製造工程高次酢酸塩化合物中間品を約100g採取し、金属製のパッドにのせ80℃に設定された送風乾燥機に入れて18時間加熱し、高次酢酸塩化合物を得た。
実施例10
氷酢酸30.0kg、無水酢酸ナトリウム37.4kg、及び精製水33.6kgをろ過乾燥機(製造元:タナベウィルテック株式会社、型番:TR25F)に25L/minで圧縮空気をバブリングさせながら入れ、品温が73℃になるまで加熱しながら撹拌し、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムが溶解した混合液を得た。その後、缶体上部のバルブを閉じたまま、ジャケット熱媒の温度を115℃付近で保ち、圧力を−75から−86kPaに段階的に制御しつつ97分間減圧乾燥した。次いで、品温が72℃を超えた時点で、ジャケット熱媒の温度を85℃として18分間減圧乾燥を行った。減圧乾燥の時間経過とともに高次酢酸塩化合物の結晶の析出量が増していった。その後、圧力を大気圧に戻し、ジャケットに水道水を流して品温が45℃以下になったところで目開きが1.7mmの篩で篩過し、流動性の良好な高次酢酸塩化合物53.0kgを得た。なお、減圧乾燥の時間は合計115分間であった。
比較例1
氷酢酸20.0kg、無水酢酸ナトリウム24.6kg、及び精製水18.3kgをろ過乾燥機(製造元:タナベウィルテック株式会社、型番:TR25F)に入れ、品温が100〜105℃になるまで加熱しながら撹拌して、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムが溶解した混合液を得た。次いで、温度を維持したまま撹拌を113分間継続することにより精製水の一部を揮発させて濃縮した後、加熱を停止した。その後、撹拌下で−95〜−97kPaで80分間減圧乾燥を行った。減圧乾燥開始から、ジャケット熱媒の温度を57〜60℃に制御した。その間、品温は42〜46℃と徐々に上昇し、時間経過とともに高次酢酸塩化合物の結晶の析出量が増していった。その後、目開きが1.7mmの篩で篩過し、流動性の良好な高次酢酸塩化合物を得た。
比較例2
氷酢酸42.3g、無水酢酸ナトリウム57.8gをポリ袋に入れ十分に混合し、高次酢酸塩化合物を得た。
試験例1:高次酢酸塩化合物の物性評価
(1)粉末X線回折
X線回折装置「SmartLab」(製造元:株式会社リガク)によって2θ=5〜90°の範囲で測定を行った(測定条件は、ターゲット:Cu、管電圧:40kV、管電流:30mA、走査範囲:5〜90°、スキャンスピード:10.000°/分、スキャンステップ:0.02°、走査モード:連続)。測定結果を、Rigaku Data Analysis Software PDXL version2.0.3.0を用いて解析し、各ピークの積分強度を得た。
実施例1〜10及び比較例1〜2の高次酢酸塩化合物の粉末X線回折パターンをそれぞれ図1〜12に示す。また、各高次酢酸塩化合物の2θ=8.8°±0.2°の回折ピーク積分強度(Ia)、2θ=22.3°±0.2°の回折ピークの積分強度(Ib)、2θ=17.0°±0.2°の回折ピークの積分強度(Ic)、比率Ia/Ib及び比率Ia/Icを求めた結果を表2に示す。また、各高次酢酸塩化合物の粉末X線回折によって認められたピークと各ピークの積分強度を表3に示す。この結果、氷酢酸、無水酢酸ナトリウム、及び水の混合液に対して、十分な減圧乾燥を行った実施例1〜10の高次酢酸塩化合物では、2θ=8.8°±0.2°の回折ピークが認められ、比率Ia/Ibが1.138以下になっていた。一方、氷酢酸、無水酢酸ナトリウム、及び水の混合液に対して、短時間で減圧乾燥を行った比較例1の高次酢酸塩化合物では、2θ=8.8°±0.2°の回折ピークは認められなかった。更に、氷酢酸と無水酢酸ナトリウムを混合することにより得られた比較例2の高次酢酸塩化合物は、実施例1〜10及び比較例1の場合に比して、2θ=22.3°±0.2°の回折ピークの積分強度が小さく、比率Ia/Ibが1.447と高い値になっていた。
Figure 2018078901
Figure 2018078901
(2)中位径
実施例1〜10及び比較例1〜2の高次酢酸塩化合物の中位径を、目開き850μm、710μm、500μm、355μm、250μm、180μm、150μm、106μmの篩を使用し、ロボットシフター(製造元:株式会社セイシン企業、型番:RPS-105)を用いて、音波強度20、音波周波数51Hz、分級時間5分、スイープ時間0.3分、パルス間隔1秒の条件で測定した。測定結果から得られた中位径の結果を表4に示す。
Figure 2018078901
(3)走査型電子顕微鏡による結晶形状の観察
得られた各高次酢酸塩化合物の結晶形状を走査型電子顕微鏡(製造元:日本電子株式会社、型番:JSM−5500LV)にて観察した。
実施例2の高次酢酸塩化合物を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を図13に示す。この結果、実施例2の高次酢酸塩化合物は主に略立方状の結晶であることが確認された。
試験例2:高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤の安定性評価
(1)電解質造粒物の製造
先ず、塩化ナトリウム40.2kg、塩化カルシウム水和物1.339kg、及び塩化マグネシウム水和物0.911kgを加熱混合し、更に精製水を加えて混合(製造元:ホソカワミクロン株式会社、型番:NX−2J)後、流動層乾燥機(製造元:株式会社長門電機製作所、型番:10F)にて150℃、10分間乾燥した。その乾燥物を目開き1.7mmの篩で篩過することにより電解質造粒物を得た。
(2)透析用A剤の調製
低温低湿度環境下(15℃、15%RH)で、前記電解質造粒物115.7g、塩化カリウム3.00g、ブドウ糖26.25g、並びに実施例1〜10及び比較例1〜2の各高次酢酸塩化合物5.27gを、ポリ袋内で各成分が均一に混ざるように混合し、その混合物を内層から外層に向けてポリエチレンテレフタレート製フィルムとアルミニウム箔とポリエチレン製フィルムが積層されている積層体で形成されたラミネート袋(透湿度は実質的に0g/m2・24h)に収容してヒートシールにて密封して透析用A剤を得た。
(3)透析用A剤の安定性の評価方法
各高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤を各々50℃で15日の間保存試験を実施した。50℃保存試験に加え、実施例1で得られた高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤については、40℃で2ヶ月間の保存試験を、実施例10で得られた高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤については、55℃で15日の間保存試験も実施した。50℃の保存試験では保存前、保存5日後、保存10日後、及び保存15日後の各透析用A剤について、40℃の保存試験では、2ヶ月後の透析用A剤について、55℃の保存試験では保存5日後、保存15日後の透析用A剤について、以下の方法で揮発酢酸濃度、pH、5−HMF、固化度合、着色を測定した。
<揮発酢酸濃度>
各高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤を収容しているラミネート袋を開封し、検知管式気体測定器(製造元:GASTEC株式会社、型番:GV−100S)に酢酸検知管をセットし、一定量の試料気体を通気させて揮発酢酸濃度を測定した。
<5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)>
各高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤を収容しているラミネート袋を開封し、内容物全量を精製水に溶解させて全量を500mLとし、孔径0.2μmフィルターでろ過することにより、透析液の35倍濃縮A剤溶液を得た。得られた35倍濃縮A剤溶液について、分光光度計を用いて波長284nmにおける吸光度を測定することによって35倍濃縮A剤溶液中の5−ヒドロキシメチルフルフラール(以下、5−HMFと記載)量を測定した。なお、5−HMFはブドウ糖の分解によって生じる化合物であり、上記吸光度が低値である程、ブドウ糖が安定に維持されていることを示す。
<pH>
前記5−HMF量の測定に用いた35倍濃縮A剤溶液について、pHメーター(製造元:株式会社堀場製作所、型番:F−73)を用いて液温25℃で測定した。
<固化と着色の有無>
揮発酢酸濃度を測定した後、袋内の製剤の固化の有無を袋外部から手で触って確認した。さらに、袋内の製剤を目視にて観察し、着色の有無を確認した。ブドウ糖が劣化していない正常な透析用A剤は白色であり、劣化が進行すると黄色、又は茶色に着色する。
(4)評価結果
得られた結果を表5〜10に示す。この結果、実施例1〜10の高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤では、50℃保存15日後でも、揮発酢酸濃度が小さく、ブドウ糖の分解を十分に抑制できており、更に、pH変化、固化、及び着色も認められず、優れた製剤安定性を有していた。また、40℃保存2ヶ月後でも、ブドウ糖の分解、pH変化、固化、着色は認められず、優れた長期保存安定性を有していた。一方、比較例1の高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤では、実施例1〜5とほぼ同等の酢酸と酢酸ナトリウムのモル比を有しているにもかかわらず、50℃保存15日後には、揮発酢酸濃度が著しく高くなっており、ブドウ糖の顕著な分解も認められ、更に製剤が固化した状態になっていた。また、比較例2の高次酢酸塩化合物を含む透析用A剤では、実施例1〜5とほぼ同等の酢酸と酢酸ナトリウムのモル比を有しているにも関わらず、保存開始時から揮発酢酸濃度が高く、50℃保存5日後以降は、著しいブドウ糖の分解も認められ、更に製剤の固化や着色が生じていた。
以上の結果から、酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物において、2θ=8.8°±0.2°にピークA、及び2θ=22.3°±0.2°にピークBが認められ、ピークAの積分強度Iaと当該ピークBの積分強度Ibの比率Ia/Ibが1.447未満である場合には、酢酸臭を低減でき、更にブドウ糖と共存させてもブドウ糖の分解を抑制できることが明らかとなった。更に、当該特性を備える高次酢酸塩化合物は、透析用A剤に含有させると、製剤安定性を向上させ得ることも明らかとなった。
Figure 2018078901
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Claims (11)

  1. 粉末X線回折測定において、2θ=8.8°±0.2°に回折ピークA、及び2θ=22.3°±0.2°に回折ピークBが認められ、
    前記回折ピークAの積分強度Iaと前記回折ピークBの積分強度Ibの比率Ia/Ibが1.447未満である、
    酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物。
  2. 前記比率Ia/Ibが0.001〜1.140である、請求項1に記載の高次酢酸塩化合物。
  3. 請求項1又は2に記載の高次酢酸塩化合物を含む固形状透析用剤。
  4. 請求項1〜2のいずれかに記載の高次酢酸塩化合物、及び塩化ナトリウムを含む固形状透析用A剤。
  5. 更にブドウ糖を含む、請求項4に記載の固形状透析用A剤。
  6. 請求項4又は5に記載の固形状透析用A剤と、炭酸水素ナトリウムを含む透析用B剤とを含む、2剤型重炭酸透析用剤。
  7. 請求項1〜2のいずれかに記載の高次酢酸塩化合物を含み、塩化ナトリウムを実質的に含まない固形状透析用A剤。
  8. 更にブドウ糖を含む、請求項7に記載の固形状透析用A剤。
  9. 請求項7又は8に記載の固形状透析用A剤と、塩化ナトリウムを含む透析用S剤と、炭酸水素ナトリウムを含む透析用B剤とを含む、3剤型重炭酸透析用剤。
  10. 酢酸−酢酸ナトリウム混晶体を含む高次酢酸塩化合物を製造する方法であって、
    酢酸、酢酸ナトリウム、及び水性溶媒を混合して、混合液を得る工程1、及び
    前記ピークA及びBが認められ、且つ比率Ia/Ibが前記範囲を充足する高次酢酸塩化合物が生成するまで、前記工程1で得られた混合液を減圧乾燥する工程2
    を含む、前記高次酢酸塩化合物の製造方法。
  11. 前記工程2における減圧乾燥が、−30〜−100kPaの圧力条件で行われる、請求項10に記載の製造方法。
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