JPWO2018062141A1 - 化学強化ガラスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、高温で長時間の化学強化処理をしてもガラスの強度を弱めることなく、深い圧縮応力層(DOC)を示し、且つ面強度の高い化学強化ガラスを製造する方法を提供する。本発明は、10質量%水溶液としたときの水素イオン指数(pH)が7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩にガラスを接触させてイオン交換する化学強化工程と、前記化学強化工程後のガラスを、水素イオン指数(pH)が7.0未満である酸性の溶液に接触させて酸処理する酸処理工程とを含む化学強化ガラスの製造方法に関する。

Description

本発明は化学強化ガラスの製造方法に関する。
デジタルカメラ、携帯電話または携帯情報端末PDA(Personal Digital Assistants)等のフラットパネルディスプレイ装置において、ディスプレイの保護および美観を高めるために、画像表示部分よりも広い領域となるように薄い板状のカバーガラスをディスプレイの前面に配置することが行われている。ガラスは理論強度が高いものの、傷がつくことで強度が大幅に低下するため、強度が求められるカバーガラスには、イオン交換等によりガラス表面に圧縮応力層を形成した化学強化ガラスが用いられている。
フラットパネルディスプレイ装置に対する軽量化および薄型化の要求に伴い、カバーガラス自身も薄くすることが要求されている。したがってカバーガラスには、その目的を満たすために表面にさらなる強度が求められる。
ガラスの強度を向上させる手法の一つとして、特許文献1には、特定の塩を含む無機塩により化学強化の後に酸処理およびアルカリ処理を行う方法が開示されている。
国際公開第2015/008763号
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、高い強度を得るために圧縮応力層の深さ(圧縮応力値がゼロとなる深さと定義、以下、DOC;Depth of Compressionとも略す)を高くすることを目的として高温で長時間化学強化すると、副作用としてガラスの強度が低下するとともに、化学強化の温度条件や時間が制限されるという問題がある。
また、従来、化学強化処理後に研磨処理することにより、面強度の向上を図っているが、研磨によってガラス表面が傷つき、面強度がかえって低下してしまうおそれがある。さらに、研磨によってガラスの反りが増大するおそれがある。
したがって、本発明は、化学強化の温度条件や時間が制限されることなく、高温で長時間の化学強化処理をしてもガラスの強度を弱めることなく、深いDOCを示すとともに面強度が高い化学強化ガラスを製造する方法を提供する。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、化学強化に用いる塩のpHを所定の範囲とする化学強化工程と、前記化学強化工程後のガラスを酸処理する酸処理工程とを行うことにより、化学強化の温度条件や時間が制限されることなく、高温で長時間の化学強化処理をしても深いDOCを示すとともに面強度が高い化学強化ガラスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.10質量%水溶液としたときの水素イオン指数(pH)が7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩にガラスを接触させてイオン交換する化学強化工程と、
前記化学強化工程後のガラスを、水素イオン指数(pH)が7.0未満である酸性の溶液に接触させて酸処理する酸処理工程と、を含む化学強化ガラスの製造方法。
2.前記酸処理工程後のガラスを、水素イオン指数(pH)が7.0超であるアルカリ性の溶液に接触させてアルカリ処理するアルカリ処理工程をさらに含む前記1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
3.前記化学強化工程は、400℃以上の前記無機塩に前記ガラスを2時間以上接触させてイオン交換する工程である前記1または2に記載の化学強化ガラスの製造方法。
4.前記化学強化工程後のガラスは、深さ35μm以上の圧縮応力層を有する前記1〜3のいずれか1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
5.前記化学強化工程後のガラスは、ボールオンリング試験により下記条件で測定した面強度F(N)が、ガラス板の板厚t(mm)に対して、F≧1000×tである前記1〜4のいずれか1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
ボールオンリング試験条件:
板厚t(mm)のガラス板を、直径30mm、接触部が曲率半径2.5mmの丸みを持つステンレスからなるリング上に配置し、該ガラス板に直径10mmの鋼からなる球体を接触させた状態で、該球体を下降速度1mm/minで下降させ該リングの中心に荷重し、ガラス板が破壊された際の破壊荷重(単位N)をBOR強度とし、該BOR強度の20回の測定平均値を面強度F(N)とする。ただし、ガラス板の破壊起点が、該球体の荷重点から2mm以上離れている場合は、平均値算出のためのデータより除外する。
本発明の化学強化ガラスの製造方法においては、pHが所定の範囲である無機塩を用いてガラスを化学強化することにより、無機塩中のOHによってガラスのSi−O−Si結合が適度に切断され、ガラス表面に圧縮応力層の表層が改質した低密度層が形成される。その後、酸処理することにより該低密度層を均一に除去することができ、研磨処理しなくても、効率的にガラスの面強度を著しく高めることができる。
したがって、本発明の化学強化ガラスの製造方法によれば、化学強化の温度条件や時間が制限されることなく、高温で長時間の化学強化処理をしても深いDOCを示すとともに面強度が高い化学強化ガラスを簡易に得ることができる。
図1(a)〜(d)は、本発明に係る化学強化ガラスの製造工程を表す模式図である。 図2は、ボールオンリング試験の方法を説明するための概略図である。 図3Aは表面研磨傷を有するガラス表面のAFM画像であり、図3Bは表面研磨傷を有さないガラス表面のAFM画像である。 図4Aはガラス面内に白曇りが発生していない状態を表す図であり、図4Bはガラス面内に白曇りが発生している状態を表す図である。 図5Aは実施例1および3並びに比較例1で得られた化学強化ガラスの応力プロファイル、図5Bは実施例7および8並びに比較例6で得られた化学強化ガラスの応力プロファイル、図5Cは実施例10および11並びに比較例11で得られた化学強化ガラスの応力プロファイルを示す。 図6Aおよび図6Bは、実施例1および5並びに比較例1、4および5で得られた化学強化ガラスの面強度を評価した結果を示す。 図7Aおよび図7Bは、実施例7および8並びに比較例6で得られた化学強化ガラスの面強度を評価した結果を示す。 図8Aおよび図8Bは、実施例10および11並びに比較例11で得られた化学強化ガラスの面強度を評価した結果を示す。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
ここで、本明細書において“質量%”と“重量%”、“質量ppm”と“重量ppm”とは、それぞれ同義である。また、単に“ppm”と記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
又、本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
<化学強化ガラスの製造方法>
本発明に係る化学強化ガラスを製造する方法(以下、本発明の方法ともいう。)の一態様を以下に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、特に言及しない限り、ガラスの組成は酸化物基準のモル百分率で表記する。
(化学強化工程)
本発明の方法における化学強化工程は、10質量%水溶液としたときの水素イオン指数(pH)が7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩にガラスを接触させて、前記ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換してガラス表面に圧縮応力層を形成し、さらに該圧縮応力層の表層が改質して低密度化された低密度層を形成する工程である。
無機塩は、10質量%水溶液としたときの水素イオン指数(pH)が7.5以上であり、好ましくは8.0以上であり、より好ましくは8.5以上である。また、10質量%水溶液としたときの水素イオン指数(pH)が10.5以下であり、好ましくは10.0以下であり、より好ましくは9.5以下である。
無機塩のpHを前記範囲とすることで、無機塩中のOHによってガラスのSi−O−Si結合を適度に切断し、ガラス表面に圧縮応力層の表層が改質した低密度層を形成することができる。無機塩のpHは、25℃にて、堀場製作所製ハンディータイプpHメーターD−71S等のpHメーターを用いて測定することができる。
無機塩は、KNO、NaNO、KCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KOHまたはNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩を含有することが好ましく、上記塩の含有量により、無機塩のpHを適宜調整することがきる。
無機塩は硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む。無機塩に硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含有することで、ガラスの歪点以下で溶融状態となり、かつ化学強化処理を施すときの一般的な温度領域においてハンドリングが容易となる。無機塩に硝酸ナトリウムを含むことで、CTlimit値以下で、DOCが大きな化学強化ガラスを得られる。なお、CTlimit値は、経験的に−38.7×ln(t)+48.2[MPa]であることが知られている。ここで、tはガラスの板厚を表し、単位はmmである。
無機塩における硝酸ナトリウムの含有量は1質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上である。ここで、無機塩における硝酸ナトリウムの含有量は、無機塩が液体状態の液相塩のナトリウム濃度をいう。なお、無機塩における硝酸ナトリウムの含有量の上限としては特に制限はない。
無機塩における硝酸ナトリウムの含有量が1質量%以上であることで、ガラスの歪点以下で溶融状態となり、且つ化学強化処理を施すときの一般的な温度領域においてハンドリングが容易となる。無機塩における硝酸ナトリウムの含有量は、所望の表面圧縮応力値(CS、単位はMPa)が得られるよう適宜調整して決められる。
無機塩は、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムの他に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の化学種を含んでいてもよく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム等のアルカリ塩化塩並びにアルカリホウ酸塩などが挙げられる。これらは単独で添加しても、複数種を組み合わせて添加してもよい。
上記無機塩にKNOを含有する場合は、無機塩におけるKNOの含有量は、0.2質量%以上が好ましく、より好ましくは0.4質量%以上であり、さらに好ましくは0.6質量%以上である。また、10.0質量%以下が好ましく、より好ましくは8.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。KNOの含有量を前記範囲とすることにより、10質量%水溶液としたときの無機塩のpHを7.5以上10.5以下にできる。
無機塩にガラスを接触させる方法としては、ペースト状の無機塩を塗布する方法、無機塩の水溶液をガラスに噴射する方法、融点以上に加熱した溶融塩の塩浴にガラスを浸漬させる方法などが可能であるが、これらの中では、溶融塩に浸漬させる方法が好ましい。
本発明の方法で使用されるガラスは、ナトリウムを含んでいればよく、成形、化学強化処理による強化が可能な組成を有するものである限り、種々の組成のものを使用することができる。具体的には、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラスおよびアルミノボロシリケートガラス等が挙げられる。
ガラスの製造方法は特に限定されず、所望のガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を好ましくは1500〜1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することにより製造できる。
なお、ガラスの成形には種々の方法を採用できる。例えば、ダウンドロー法(例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウン法およびリドロー法等)、フロート法、ロールアウト法およびプレス法等の様々な成形方法を採用できる。
ガラスの厚みは、特に制限されないが、化学強化処理を効果的に行うために、3mm以下が好ましく、より好ましくは2mm以下であり、さらに好ましくは1mm以下である。
また、本発明の方法で使用されるガラスの形状は特に限定されない。例えば、均一な板厚を有する平板形状、表面と裏面のうち少なくとも一方に曲面を有する形状および屈曲部等を有する立体的な形状等の様々な形状のガラスを採用できる。
本発明の方法で使用されるガラスの組成の具体例としては、例えば、以下のガラスの組成が挙げられる。
(i)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを56〜72%、Alを5〜18%、Bを0〜15%、Pを0.1〜10%含有し、NaOおよびKOの含有量の合計が3〜30%であるガラス。
(ii)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55.5〜80%、Alを12〜20%、NaOを8〜25%、Pを2.5%以上、アルカリ土類金属RO(ROはMgO+CaO+SrO+BaOである)を1%以上含有するガラス。
(iii)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを57〜76.5%、Alを12〜18%、NaOを8〜25%、Pを2.5〜10%、アルカリ土類金属ROを1%以上含有するガラス。
(iv)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを56〜72%、Alを8〜20%、Bを3〜20%、NaOを8〜25%、KOを0〜5%、MgOを0〜15%、CaOを0〜15%、SrOを0〜15%、BaOを0〜15%およびZrOを0〜8%を含有するガラス。
(v)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを50〜80%、Alを2〜25%、LiOを0〜10%、NaOを0〜18%、KOを0〜10%、MgOを0〜15%、CaOを0〜5%およびZrOを0〜5%を含有するガラス。
(vi)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを50〜74%、Alを1〜10%、NaOを6〜14%、KOを3〜11%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%およびZrOを0〜5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が75%以下、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス。
(vii)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを68〜80%、Alを4〜10%、NaOを5〜15%、KOを0〜1%、MgOを4〜15%およびZrOを0〜1%含有するガラス。
(viii)酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを67〜75%、Alを0〜4%、NaOを7〜15%、KOを1〜9%、MgOを6〜14%およびZrOを0〜1.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が71〜75%、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス。
(ix)酸化物基準の質量%表示で、SiOを65〜75%、Alを0.1〜5%、MgOを1〜6%、CaOを1〜15%含有し、NaO+KOが10〜18%であるガラス。
(x)酸化物基準の質量%表示で、SiOを60〜72%、Alを1〜10%、MgOを5〜12%、CaOを0.1〜5%、NaOを13〜19%、KOを0〜5%含有し、RO/(RO+RO)が0.20以上、0.42以下(式中、ROとはアルカリ土類金属酸化物、ROはアルカリ金属酸化物を示す)であるガラス。
化学強化処理は、溶融塩浴内でガラスを無機塩の溶融塩に浸漬し、ガラス中の金属イオン(Naイオン)を、溶融塩中のイオン半径の大きな金属イオン(Kイオン)と置換することで行われる。このイオン交換によってガラス表面の組成を変化させ、ガラス表面が高密度化した圧縮応力層20を形成できる[図1(a)〜(b)]。このガラス表面の高密度化によって圧縮応力が発生することから、ガラスを強化ができる。
本発明の方法における化学強化工程では、化学強化するとき、10質量%水溶液としたときの水素イオン指数(pH)が7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩を用いて化学強化処理することにより、無機塩中のOHによってガラスのSi−O−Si結合が適度に切断され、圧縮応力層の表層が改質して低密度化された低密度層10を形成する[図1(b)〜(c)]。
なお実際には、化学強化ガラスの密度は、ガラスの中心に存在する中間層30(バルク)の外縁から圧縮応力層表面に向かって徐々に高密度化してくるため、中間層30と圧縮応力層20との間には、密度が急激に変化する明確な境界はない。ここで中間層とは、ガラス中心部に存在し、圧縮応力層に挟まれる層を表す。この中間層は圧縮応力層とは異なり、イオン交換がされていない層である。
化学強化工程は、具体的には、次のように行うことができる。化学強化工程では、ガラスを予熱し、溶融塩を化学強化の処理温度に調整する。次いで予熱したガラスを溶融塩中に所定の時間浸漬した後、ガラスを溶融塩中から引き上げて、放冷する。なお、ガラスには、化学強化処理の前に用途に応じた形状加工、例えば、切断、端面加工および穴あけ加工などの機械的加工を行うことが好ましい。
ガラスの予熱温度は、溶融塩を浸漬する温度に依存するが、一般に100℃以上が好ましい。
化学強化を行う温度は、深いDOCを備えた化学強化ガラスを得る観点から、400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上であり、さらに好ましくは470℃以上である。化学強化を行う温度の上限は特に制限されないが典型的には、被強化ガラスの歪点(通常500〜600℃)以下が好ましい。
ガラスの溶融塩への浸漬時間は、化学強化温度によるが、深いDOCを備えた化学強化ガラスを得る観点から、2時間以上が好ましく、より好ましくは4時間以上であり、さらに好ましくは8時間以上である。上限は特に制限されないが、通常48時間以下であり、24時間以下であると生産性の観点より好ましい。
化学強化工程後のガラスの表層に形成される圧縮応力層の深さ(DOC)は、ガラスに十分な強度を付与する観点から、35μm以上が好ましく、より好ましくは45μm以上であり、さらに好ましくは55μm以上である。
本発明の方法により製造される化学強化ガラスの圧縮応力値は、100MPa以上が好ましく、より好ましくは200MPa以上であり、さらに好ましくは300MPa以上である。また上限は特に制限されないが、典型的には1200MPa以下である。
圧縮応力層の深さは、EPMA(electron probe micro analyzer)または表面応力計(例えば、折原製作所製FSM−6000)等を用いて測定できる。
低密度層は、後述する酸処理工程により除去されるため、低密度層が厚いほどガラス表面が除去されやすい。したがって低密度層の厚みはガラス表面除去量の観点から10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。低密度層の厚みは化学強化工程における溶融塩中のナトリウム濃度、温度または時間等により制御できる。
酸処理工程で低密度層を除去した後、アルカリ処理を行うことによって、更に低密度層を除去できる。
低密度層の密度はガラス表面除去性の観点から、イオン交換された圧縮応力層よりも深い領域(バルク)の密度に比べて低いことが好ましい。
低密度層の厚みはX線反射率法(X−ray−Reflectometry:XRR)によって測定した周期(Δθ)から求められる。低密度層の密度はXRRによって測定した臨界角(θc)により求められる。なお、簡易的には走査型電子顕微鏡(SEM)でガラスの断面を観察することによって、低密度層の形成と層の厚みを確認することも可能である。
化学強化工程においては、10質量%水溶液としたときの水素イオン指数(pH)が7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩による上記した化学強化処理と組み合わせて、上記した化学強化処理と、無機塩の組成、水素イオン指数、化学強化する温度および化学強化する時間の条件のうち少なくとも一つの条件を変更した化学強化処理工程を上記した化学強化処理工程の前後に複数回行ってもよい。
化学強化工程後は工水、イオン交換水等を用いてガラスの洗浄を行う。中でもイオン交換水が好ましい。洗浄の条件は用いる洗浄液によっても異なるが、イオン交換水を用いる場合には0〜100℃で洗浄すると付着した塩を完全に除去させる点から好ましい。
(酸処理工程)
酸処理工程では、化学強化工程後に洗浄したガラスに対して、さらに酸処理を行う。ガラスの酸処理は、水素イオン指数(pH)が7.0未満である酸性の溶液中にガラスを接触させることによって行う。
酸処理に用いる溶液は酸性であれば特に制限されずpH7.0未満であればよく、用いられる酸が弱酸であっても強酸であってもよい。具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸またはクエン酸等の酸が好ましい。これらの酸は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
酸処理を行う温度は、用いる酸の種類や濃度、時間によっても異なるが、100℃以下が好ましい。また、低密度層を除去しやすくする観点から、20℃以上が好ましい。酸処理を行う時間は、用いる酸の種類や濃度、温度によっても異なるものの、10秒〜5時間が生産性の点から好ましく、1分〜2時間がより好ましい。
酸処理を行う溶液の濃度は、用いる酸の種類や時間、温度によって異なるものの、容器腐食の懸念が少ない濃度が好ましく、具体的には0.1質量%〜20質量%が好ましい。
酸処理の条件としては、具体的には、例えば、化学強化工程後のガラスを好ましくは、35〜75℃の0.1質量%〜10質量%硝酸水溶液に、1〜15分間接触させる条件が挙げられる。
上記酸処理により、ガラス表面の低密度化が加速され、低密度層の一部又は全部が除去された表層が露出する[図1(c)および(d)]。これにより面強度が顕著に向上した化学強化ガラスが得られる。さらに、低密度層が除去されることでガラス表面に存在していた傷も同時に除去されるので、この点も強度向上に寄与すると考えられる。
(アルカリ処理工程)
本発明の方法では、酸処理後に続いてアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理を行うことにより、酸処理のみの場合と比較して、低密度層の除去量を増加させて面強度をさらに高められる。
アルカリ処理に用いる溶液は塩基性であれば特に制限されずpH7.0超であればよく、弱塩基を用いても強塩基を用いてもよい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム等の塩基が好ましい。これらの塩基は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ処理を行う温度は、用いる塩基の種類や濃度、時間によっても異なるが、0〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましく、20〜60℃が特に好ましい。かかる温度範囲であればガラスが腐食するおそれがなく好ましい。
アルカリ処理を行う時間は、用いる塩基の種類や濃度、温度によっても異なるものの、10秒間〜5時間が生産性の点から好ましく、1分間〜2時間がより好ましい。アルカリ処理を行う溶液の濃度は、用いる塩基の種類や時間、温度によって異なるものの、ガラス表面除去性の観点から0.1質量%〜20質量%が好ましい。
アルカリ処理の条件としては、具体的には、例えば、酸処理工程後のガラスを好ましくは、35〜75℃の0.1質量%〜10%質量%水酸化ナトリウム水溶液に、1〜15分間接触させる条件が挙げられる。
上記アルカリ処理により、酸処理工程後のガラスと比較して、低密度層がさらに除去された表層が露出する。これにより面強度がさらに向上した化学強化ガラスが得られる。また、ガラス表面に存在していた傷もさらに除去されるので、この点もさらなる面強度向上に寄与すると考えられる。
なお、上記酸処理工程およびアルカリ処理工程の間や、アルカリ処理工程の終了後に、化学強化工程後の洗浄工程と同様の洗浄工程を有することが好ましい。
なお、除去される低密度層の量は、酸処理工程、並びに酸処理工程およびアルカリ処理工程の少なくとも一方の条件による。図1(d)には、低密度層10が全て除去された態様を示すが、低密度層10の一部が除去され一部が残存していてもよい。強度向上の観点からは、低密度層の全部が取り除かれずとも効果が得られる。
<化学強化ガラス>
本発明の方法により製造される化学強化ガラスの面強度は、下記に示すボールオンリング試験により評価できる。
(ボールオンリング試験)
ガラス板を直径30mm、接触部が曲率半径2.5mmの丸みを持つステンレスからなるリング上に配置し、該ガラス板に直径10mmの鋼からなる球体を接触させた状態で、該球体を静的荷重条件下で該リングの中心に荷重するボールオンリング[Ball on Ring(BOR)]試験により測定したBOR強度F(N)で評価する。
本発明により製造された化学強化ガラスは、F≧1000×tを満たすことが好ましく、F≧1200×tがより好ましい[式中、Fはボールオンリング試験により測定したBOR強度(N)であり、tはガラス板の板厚(mm)である。]。BOR強度F(N)がかかる範囲であることにより、薄板化した場合にも優れた強度を示す。
図2に、ボールオンリング試験を説明するための概略図を示す。ボールオンリング[Ball on Ring(BOR)]試験では、ガラス板1を水平に載置した状態で、SUS304製の加圧治具2(焼入れ鋼、直径10mm、鏡面仕上げ)を用いてガラス板1を加圧し、ガラス板1の強度を測定する。
図2において、SUS304製の受け治具3(直径30mm、接触部の曲率R2.5mm、接触部は焼入れ鋼、鏡面仕上げ)の上に、サンプルとなるガラス板1が水平に設置されている。ガラス板1の上方には、ガラス板1を加圧するための、加圧治具2が設置されている。本実施の形態においては、ガラス板1の上方から、ガラス板1の中央領域を加圧する。
なお、試験条件は下記の通りである。
加圧治具2の下降速度:1.0(mm/min)
この時、ガラス板が破壊された際の、破壊荷重(単位N)をBOR強度とし、該BOR強度の20回の測定の平均値を面強度F(N)とする。ただし、ガラス板の破壊起点が該球体の荷重点から2mm以上離れている場合は、平均値算出のためのデータより除外する。
本発明の方法により製造される化学強化ガラスの圧縮応力層の深さ(DOC)は、35μm以上が好ましく、より好ましくは45μm以上であり、さらに好ましくは55μm以上である。
酸処理工程やアルカリ処理工程によって、除去される低密度層の厚さは上記のとおり、10nm程度から大きくても実施例のとおり1000nm程度であるため、圧縮応力層の深さ(DOC)は、化学強化工程において形成された深さ(DOC)と、酸処理工程やアルカリ処理工程の後の深さ(DOC)は、略同一である。
本発明の方法により製造される化学強化ガラスの表面圧縮応力値(CS)は、100MPa以上が好ましく、より好ましくは200MPa以上であり、さらに好ましくは300MPa以上である。また上限は特に制限されないが、典型的には1200MPa以下である。
圧縮応力値は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)または表面応力計(例えば、折原製作所製FSM−6000)等を用いて測定できる。圧縮応力値は、日本国特開2016−142600号公報に開示される応力プロファイル算出方法を用いて算出できる。
本発明の方法により製造される化学強化ガラスは、内部引張応力(CT)が、72MPa以下が好ましく、より好ましくは62MPa以下であり、さらに好ましくは52MPa以下である。また下限は特に制限されないが、典型的には20MPa以上である。応力分布を測定し、その応力分布を厚みで積分し、CT値を求めた。
また、CTlimit値は、経験的に−38.7×ln(t)+48.2[MPa]であることが知られている。ここで、tはガラスの板厚を表し、単位はmmである。
本発明の方法により製造される化学強化ガラスは、化学強化工程の前にガラス表面を研磨する研磨工程が行われて製造されてもよい。ここで、本発明における研磨とは、砥粒を用いてガラス表面を削ることにより平滑化することをいう。
また、研磨工程により発生し得る研磨傷の有無はAFM(Atomic Force Microscope;原子間力顕微鏡)による表面観察によって判別でき、10μm×5μm領域内に長さ5μm以上、幅0.1μm以上のスクラッチが2本以上存在しないという場合に、表面に研磨傷がない状態ということができる。図3Aに表面研磨傷を有する状態を、図3Bに表面研磨傷を有さない状態をそれぞれ示す。
本発明の製造方法により製造された化学強化ガラスは、AFM表面観察によって測定される測定範囲10μm×5μmにおける表面粗さRaが、好ましくは0.2nm以上であり、より好ましくは0.25nm以上である。また、好ましくは1.5nm以下であり、より好ましくは1.2nm以下である。なお、従来の研磨していない化学強化ガラス板の表面粗さは通常0.15nm以上、0.2nm未満である。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[化学強化ガラスの作製]
下記に示す条件により、化学強化工程を行った後、酸処理工程、アルカリ処理工程および研磨工程の順に行い、化学強化ガラスを作製した。なお、各実施例および比較例について、各工程の有無を表1および2に示す。
(化学強化工程)
表1および2に示す組成およびpHとなるようにSUS製のカップに無機塩の材料を加え、マントルヒーターで表1および2に示す温度となるまで加熱して溶融塩を調製した。平面視で50mm×50mmであり、表1および2に示す板厚のアルミノシリケートガラスA〜Cを用意し、200〜400℃に予熱した後、表1および2に示す条件でイオン交換処理した後、室温付近まで冷却することにより化学強化工程を行った。得られた化学強化ガラスは水洗いし、次の工程に供した。なお、無機塩の組成について、表1および2に示す組成の他はKNOとして合計100質量%とした。また、無機塩のpHは、10質量%水溶液としたときのpHを25℃にて堀場製作所製ハンディータイプpHメーターD−71Sにより測定した値である。
(酸処理工程)
6質量%の硝酸水溶液をビーカーに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整を行った。前記化学強化工程で得られたガラスを、調整した硝酸水溶液中に120秒間浸漬させ、酸処理を行い、その後純水で数回洗浄した後、エアブローにより乾燥した。こうして得られたガラスを次の工程に供した。
(アルカリ処理工程)
4.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液をビーカーに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整を行った。酸処理工程で得られたガラスを、調整した水酸化ナトリウム水溶液中に120秒間浸漬させ、アルカリ処理を行い、その後純水で数回洗浄した後、エアブローにより乾燥した。
(研磨工程)
研磨スラリーとして、平均粒子直径(d50)が1μmの酸化セリウムを水に分散させてスラリーを作製し、得られたスラリーを用いて、硬度(ショアA硬度)が74の不織布研磨パッドにより圧力0.1kPaの条件で、平板ガラスの両面を合計約6μm研磨した。
<評価方法>
本実施例における各種評価は以下に示す分析方法により行った。
(表面除去量)
ガラスの除去量の厚みは、薬液処理(酸処理およびアルカリ処理)前後の重量を分析用電子天秤(HR−202i;AND製)により測定し、次の式を用いて厚み換算することにより求めた。
(片面あたりの除去量の厚み)=[(処理前重量)−(処理後重量)]/(ガラス比重)/処理面積/2
このとき、硝材(ガラスA、ガラスBおよびガラスC)のガラス比重は次のとおりであり、これら値を用いて計算した。
ガラスA:2.42(g/cm
ガラスB:2.48(g/cm
ガラスC:2.39(g/cm
(面強度)
ガラス面強度はボールオンリング試験により測定した。図2に、本発明で用いたボールオンリング試験を説明するための概略図を示す。ガラス板1(以下の実施例ではアルミノシリケートガラスA)を水平に載置した状態で、SUS304製の加圧治具2(焼入れ鋼、直径10mm、鏡面仕上げ)を用いてガラス板1を加圧し、ガラス板1の強度を測定した。
図2において、SUS304製の受け治具3(直径30mm、接触部の曲率R2.5mm、接触部は焼入れ鋼、鏡面仕上げ)の上に、サンプルとなるガラス板1が水平に設置されている。ガラス板1の上方には、ガラス板1を加圧するための、加圧治具2が設置されている。
実施例及び比較例により得られたガラス板1の上方から、ガラス板1の中央領域を加圧した。なお、試験条件は下記の通りである。
加圧治具2の下降速度:1.0(mm/min)
この時、ガラスが破壊された際の、破壊荷重(単位N)をBOR強度とし、該BOR強度の20回の測定の平均値を面強度F(N)とした。ただし、ガラス板の破壊起点が該球体(加圧冶具)の荷重点から2mm以上離れていた場合は、平均値算出のためのデータより除外した。
面強度F(N)は、ガラス板の板厚t(mm)に依存する、そのためここでは、ガラス板の板厚t(mm)により規格化(正規化)することにより比較をする。ガラス板の板厚t(mm)により規格化(正規化)した値をa(単位N/mm)とした。a値は、式:a=F/tにて算出される。
(表面圧縮応力・圧縮応力層の深さ)
表面圧縮応力値(CS)および圧縮応力層の深さ(DOC、単位はμm)は、折原製作所社製表面応力計(FSM−6000)を用いて測定した。圧縮応力値(CS)および圧縮応力層の深さ(DOC)は、日本国特開2016−142600号公報に開示される応力プロファイル算出方法を用いて算出した。
(引張応力)
引張応力値(CT、単位MPa)は、日本国特開2016−142600号公報に開示される応力プロファイル算出方法を用いて、応力分布を測定し、その応力分布を厚みで積分し、算出した。
(研磨傷)
研磨傷の有無はAFMによる表面観察によって判別した。10μm×5μm領域内に長さ5μm以上、幅0.1μm以上のスクラッチが2本以上存在しないという場合に、表面に研磨傷がない状態とした。
(外観品質)
高輝度光源下で照度100000Luxとなる条件で外観を観察し、下記評価基準により外観品質を評価した。図4Aはガラス面内に白曇りが発生していない状態を表す図であり、図4Bはガラス面内に白曇りが発生している状態を表す図である。
○:ガラス面内に白曇りが発生していない。
×:ガラス面内に白曇りが発生している。
得られた結果を表1および2、並びに図5〜8に示す。
Figure 2018062141
Figure 2018062141
表1に示すように、pHが7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩にガラスを接触させてイオン交換する化学強化工程と、前記化学強化工程後のガラスを、pHが7未満である酸性の溶液に接触させて酸処理する酸処理工程を含む本発明の製造方法により得られた実施例1〜12の化学強化ガラスを得た。実施例1〜12の化学強化ガラスは、比較例1〜11で得られた化学強化ガラスに比べ、高温で長時間の化学強化処理をしても面強度が高く、圧縮応力層の深さ(DOC)が深く、および、高い表面圧縮応力値(CS)を示すとともに、ガラス面内に白曇りの発生が無く外観品質においても優れている。
pHが7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩にガラスを接触させてイオン交換する化学強化工程後に酸処理を行わなかった比較例1、2、4、6、7、10および11の化学強化ガラスは、実施例で得られた化学強化ガラスと比較して面強度が低かった。また、比較例1、2、4、8および9の化学強化ガラスは、ガラス面内に白曇りが発生していた。
また、pHが7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩にガラスを接触させてイオン交換する化学強化工程後に酸処理を行わずに研磨処理を行った比較例5の化学強化ガラスは、面強度が他の比較例と比較してやや高くなった。しかし、研磨傷がガラス表面に観察され、実施例で得られた化学強化ガラスと比較して面強度が低かった。
また、pHが7.5未満である無機塩を用いて化学強化工程後を行った後に酸処理およびアルカリ処理を行った比較例3の化学強化ガラス、pHが10.5超である無機塩を用いて化学強化工程を行った後に酸処理を行った比較例8およびpHが10.5超である無機塩を用いて化学強化工程を行った後に酸処理およびアルカリ処理を行った比較例9の化学強化ガラスは、実施例で得られた化学強化ガラスと比較して面強度が低く、ガラス面内に白曇りが発生していた。
図5Aは実施例1および3並びに比較例1で得られた化学強化ガラスの応力プロファイル、図5Bは実施例7および8並びに比較例6で得られた化学強化ガラスの応力プロファイル、図5Cは実施例10および11並びに比較例11で得られた化学強化ガラスの応力プロファイルを示す。
図5Aに示すように、実施例1および比較例1で得られた化学強化ガラスの応力プロファイルは概ね一致していた。また、図5Bに示すように、実施例7および8並びに比較例6で得られた化学強化ガラスの応力プロファイルは概ね一致していた。さらに、図5Cに示すように、実施例10および11並びに比較例11で得られた化学強化ガラスの応力プロファイルは概ね一致していた。
図6Aおよび図6Bは、実施例1および5並びに比較例1、4および5で得られた化学強化ガラスの面強度を評価した結果を示す。図6Aおよび図6Bに示すように、実施例1および5で得られた化学強化ガラスは、化学強化工程後に酸処理を行わなかった比較例1および4並びに化学強化工程後に酸処理を行わずに研磨処理を行った比較例5と比較して、面強度が顕著に向上していた。
図7Aおよび図7Bは、実施例7および8並びに比較例6で得られた化学強化ガラスの面強度を評価した結果を示す。図7Aおよび図7Bに示すように、実施例7および8で得られた化学強化ガラスは、化学強化工程後に酸処理を行わなかった比較例6と比較して、面強度が顕著に向上していた。
図8Aおよび図8Bは、実施例10および11並びに比較例11で得られた化学強化ガラスの面強度を評価した結果を示す。図8Aおよび図8Bに示すように、実施例10および11で得られた化学強化ガラスは、化学強化工程後に酸処理を行わなかった比較例11と比較して、面強度が顕著に向上していた。
これらの結果から、pHが7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩を用いた化学強化工程後に酸処理を行うことにより、高温で長時間の化学強化処理をしてもガラスの強度を弱めることがなく、深いDOCを示すとともに面強度が高い化学強化ガラスが得られる。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年9月30日付けで出願された日本特許出願(特願2016−193972号)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
10 低密度層
20 圧縮応力層
30 中間層
1 ガラス板
2 加圧治具
3 受け治具

Claims (5)

  1. 10質量%水溶液としたときの水素イオン指数(pH)が7.5以上10.5以下であり、且つ硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む無機塩にガラスを接触させてイオン交換する化学強化工程と、
    前記化学強化工程後のガラスを、水素イオン指数(pH)が7.0未満である酸性の溶液に接触させて酸処理する酸処理工程と、を含む化学強化ガラスの製造方法。
  2. 前記酸処理工程後のガラスを、水素イオン指数(pH)が7.0超であるアルカリ性の溶液に接触させてアルカリ処理するアルカリ処理工程をさらに含む請求項1に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  3. 前記化学強化工程は、400℃以上の前記無機塩に前記ガラスを2時間以上接触させてイオン交換する工程である請求項1または2に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  4. 前記化学強化工程後のガラスは、深さ35μm以上の圧縮応力層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
  5. 前記化学強化工程後のガラスは、ボールオンリング試験により下記条件で測定した面強度F(N)が、ガラス板の板厚t(mm)に対して、F≧1000×tである請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学強化ガラスの製造方法。
    ボールオンリング試験条件:
    板厚t(mm)のガラス板を、直径30mm、接触部が曲率半径2.5mmの丸みを持つステンレスからなるリング上に配置し、該ガラス板に直径10mmの鋼からなる球体を接触させた状態で、該球体を下降速度1mm/minで下降させ該リングの中心に荷重し、ガラス板が破壊された際の破壊荷重(単位N)をBOR強度とし、該BOR強度の20回の測定平均値を面強度F(N)とする。ただし、ガラス板の破壊起点が、該球体の荷重点から2mm以上離れている場合は、平均値算出のためのデータより除外する。
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