JPWO2018043406A1 - 積層電極体及び蓄電素子 - Google Patents

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Abstract

本発明は、製造が比較的容易でありながら、袋詰めされた正極板と負極板との相対位置が比較的正確な積層電極体及び蓄電素子を提供することを課題とする。本発明の一態様に係る積層電極体は、樹脂層と前記樹脂層上に形成された耐熱層とを有する2枚のセパレータ間に、平面視矩形状の活物質積層領域を有する正極板を配置し、前記2枚のセパレータを正極板の活物質積層領域の外側で溶着した袋詰正極板と、袋詰めされていない負極板とを備え、前記袋詰正極板と負極板とが積層され、平面視において前記袋詰正極板のセパレータの溶着領域が前記負極板の投影領域に内包される。

Description

本発明は、積層電極体及び蓄電素子に関する。
例えば携帯電話、電気自動車等の様々な機器に充放電可能な二次電池が使用されている。近年、これらの機器の高出力化や高性能化に伴い、より小型でエネルギー密度(体積当たりの電気容量)の大きな二次電池が求められている。
一般に二次電池は、表面に活物質層が形成された正極板と表面に活物質層が形成された負極板とを電気絶縁性を有するセパレータを介して交互に積層して形成される。このような二次電池でエネルギー密度を大きくするには、セパレータを薄くすることが有効である。このため、セパレータを樹脂フィルムによって形成した二次電池が実用化されている。
また、二次電池では、負極において電析によって生成される金属析出物(例えばリチウムデンドライト)がセパレータを貫通して正極板と負極板とを微小短絡させるおそれがある。このため、正極板又は負極板を挟み込む一対のセパレータの外縁を溶着して袋状にすることで、正極板近傍の電解質に析出物を生成し得る金属イオンを生じる金属種が混入することを抑制したり、金属イオンが負極に接触して電析することを抑制したりする構成が採用される場合がある。
樹脂フィルムから形成されるセパレータは、比較的熱に弱いため、二次電池のエネルギー密度を大きくすると、セパレータが熱により損傷し、電析によって生成される金属析出物がセパレータを貫通して正極板と負極板とを微小短絡させるおそれがある。このため、セパレータの電極板に当接する面に耐熱層(無機層)を形成し、セパレータの耐熱性を向上した二次電池が提案されている(特開2013−143337号公報参照)。
前記公報に記載の二次電池では、正極板を2枚のセパレータで挟み込んだ袋詰正極板と、正極板よりも大きく、かつセパレータよりも小さい袋詰めされていない負極板とを交互に積層した積層電極体を外装材の中に収容している。
特開2013−143337号公報
二次電池の積層電極体において、正極板は平面視で負極板の外縁よりも内側に、つまり負極板の投影領域内に配置されることが好ましい。これは、正極板が負極板からはみ出すと、負極板の端部に電流が集中し、電析が局所的に促進されることにより形成される析出物によって正極板と負極板との間が短絡しやすくなることを防止するためである。
しかしながら、前記公報に記載の二次電池では、製造時に、セパレータの中の正極板の位置を確認することができないため、正極板と負極との中心を合わせることが容易ではない。このため、前記公報に記載の二次電池では、正極板が負極板からはみ出すことを防止するために、負極板を十分に大きくしたり、積層時にセパレータ内の正極板の位置を逐一確認して袋詰正極板と負極板とを積層する必要がある。
かかる状況に鑑みて、本発明は、製造が比較的容易でありながら、袋詰めされた正極板と負極板との相対位置が比較的正確な積層電極体及び蓄電素子を提供することを課題とする。
本発明の一態様に係る積層電極体は、樹脂層と前記樹脂層上に形成された耐熱層とを有する2枚のセパレータ間に、平面視矩形状の活物質積層領域を有する正極板を配置し、前記2枚のセパレータを正極板の活物質積層領域の外側で溶着した袋詰正極板と、袋詰めされていない負極板とを備え、前記袋詰正極板と負極板とが積層され、平面視において前記袋詰正極板のセパレータの溶着領域が前記負極板の投影領域に内包される。
本発明の一態様に係る積層電極体は、製造が比較的容易でありながら、袋詰めされた正極板と負極板との相対位置が比較的正確である。
本発明の一実施形態の蓄電素子を示す模式的断面図である。 図1の蓄電素子の積層電極体の模式的平面図である。
本発明の一態様は、樹脂層と前記樹脂層上に形成された耐熱層とを有する2枚のセパレータ間に、平面視矩形状の活物質積層領域を有する正極板を配置し、前記2枚のセパレータを正極板の活物質積層領域の外側で溶着した袋詰正極板と、袋詰めされていない負極板とを備え、前記袋詰正極板と負極板とが積層され、平面視において前記袋詰正極板のセパレータの溶着領域が前記負極板の投影領域に内包される積層電極体である。
当該積層電極体は、前記袋詰正極板の2枚のセパレータが正極板の活物質積層領域の外側で溶着され、平面視において前記袋詰正極板のセパレータの溶着領域が前記負極板の投影領域に内包されるので、前記溶着領域の内側の正極板の活物質積層領域も前記負極板の投影領域に内包される。つまり、当該積層電極体では、正極板の活物質積層領域が平面視で負極板からはみ出すことなく、全面的に負極に対向する。さらに、セパレータの溶着領域は、溶着されていない領域のセパレータの積層体よりも剛性が増大しているため、溶着領域にガイド等を当接させることによって溶着領域ひいては正極板の活物質積層領域が負極板からはみ出さないように正確に積層することができる。このように当該積層電極体は、正極板の活物質積層領域を負極板に対して正確に位置決めできるため、負極板の面積に対する正極板の面積の比を比較的大きくすることができ、これによりエネルギー密度を比較的大きくすることができる。
前記2枚のセパレータが前記正極板の活物質積層領域の4辺に沿って線状に溶着されているとよい。このように、前記2枚のセパレータが前記正極板の活物質積層領域の4辺に沿って線状に溶着されていることによって、前記2枚のセパレータ間での正極板の位置をより正確に定めることができるので、セパレータと正極板との寸法差を小さくしてエネルギー密度をより向上することができる。また、溶着領域が正極板の活物質積層領域の4辺に沿って形成されることにより袋詰正極板全体の剛性が増大するため、袋詰正極板と負極板との位置決めがさらに容易となる。
前記溶着領域の平均幅が10μm以上1000μm以下であるとよい。このように、前記溶着領域の平均幅を前記範囲内とすることによって、前記2枚のセパレータによる正極板の保持がより確実となる。
前記溶着領域と前記正極板の外縁との平均間隔が0.1mm以上1.0mm以下であるとよい。このように、前記溶着領域と前記正極板の外縁との平均間隔を前記範囲内とすることによって、前記2枚のセパレータ内での正極板の移動を抑制しつつ、2枚のセパレータの溶着が比較的容易となる。
本発明の別の態様は、当該積層電極体と、この積層電極体を収容する外装材とを備える蓄電素子である。
当該蓄電素子は、製造が比較的容易でありながら、袋詰めされた正極板と負極板との相対位置が比較的正確な当該積層電極体を備えることによって、エネルギー密度を比較的大きくすることができる。
前記外装材が金属ケースであるとよい。このように、前記外装材が金属ケースであることによって、当該積層電極体を保護することができる。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る蓄電素子について詳説する。
[蓄電素子]
図1の蓄電素子は、それ自体が本発明の別の実施形態である積層電極体1と、この積層電極体を収容する外装材2とを備える。また、当該蓄電素子は、外装材2の内部に電解質(電解液)が充填されている。
〔積層電極体〕
積層電極体1は、複数の袋詰正極板3及び複数の負極板4を備える。これらの袋詰正極板3及び負極板4は、交互に積層されている。
<袋詰正極板>
袋詰正極板3は、2枚のセパレータ5と、この2枚のセパレータ5の間に配置される正極板6とをそれぞれ有する。なお、2枚のセパレータ5は、1枚のシートを2つ折りにしたものであってもよい。
袋詰正極板3の寸法は、負極板4の寸法以下に設定されている。具体的には、袋詰正極板3は略方形状の平面形状を有するセパレータ5の幅が略方形状の平面形状を有する負極板4の幅以下とされる。このため、当該積層電極体1では、平面視でセパレータ5の内側に保持される正極板6は、平面視で負極板4からはみ出すことなく、その全面を負極板4に対向させる。これにより、当該積層電極体1ひいては当該蓄電素子では、負極板4の外縁部で電流密度が大きくなって局所的に電析が助長されることがないため、電析による短絡が防止される。
上述のように、袋詰正極板3の寸法(幅)と負極板4の寸法(幅)との差の下限としては、0mmであるが、袋詰正極板3の寸法と負極板4の寸法との差の上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。袋詰正極板3の寸法と負極板4の寸法との差を上記下限以上とすることで、正極板6を負極板4からはみ出さないよう袋詰正極板3と負極板4とを容易に積層することができる。また、袋詰正極板3の寸法と負極板4の寸法との差を上記上限以下とすることで、正極板6と負極板4との面積の差が不必要に大きくなることがなく当該積層電極体1ひいては当該蓄電素子のエネルギー密度を十分に大きくできる。
また、当該積層電極体1では、袋詰正極板3のセパレータ5を負極板4に対して位置決めすることで、正極板6を負極板4に対して比較的容易に位置決めすることができる。このため、当該積層電極体1では、負極板4の面積に対する正極板6の面積の比を比較的大きくしても負極板4の外縁部で電析が助長されないので、エネルギー密度を比較的大きくすることができる。
また、当該積層電極体1は、セパレータ5が負極板4の幅方向内側に配置されるので、負極板4と外装材2とのクリアランスを小さくすることができる。このため、当該蓄電素子は、外装材2の中のデッドスペースを比較的小さくしてエネルギー密度を比較的大きくすることができる。
<セパレータ>
セパレータ5は、シート状の樹脂層7と、この樹脂層7に積層される耐熱層8とを有する。各袋詰正極板3において、2枚のセパレータ5は、耐熱層8同士が対向するよう配置される。
セパレータ5の平面形状としては、正極板6を覆い隠すことができればよいが、典型的には矩形状とされる。
(樹脂層)
樹脂層7は、多孔質樹脂フィルムから形成される。
この樹脂層7の主成分としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリオレフィン誘導体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステル等のポリエステルなどを採用することができる。中でも、樹脂層7の主成分としては、耐電解液性、耐久性及び溶着性に優れるポリエチレン及びポリプロピレンが好適に用いられる。なお、「主成分」とは、最も質量含有率が大きい成分を意味する。
樹脂層7の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、樹脂層7の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。樹脂層7の平均厚さを前記下限以上とすることで、樹脂層7が破断することなくセパレータ5を溶着することができる。また、樹脂層7の平均厚さを前記上限以下とすることで、セパレータ5の厚さが不必要に増大することなく蓄電素子の体積当たりの容量を十分な大きさにできる。
(耐熱層)
耐熱層8は、多数の無機粒子と、この無機粒子間を接続するバインダとを含む構成とされる。
無機粒子の主成分としては、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレイ、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。中でも、耐熱層8の無機粒子の主成分としては、アルミナ、シリカ及びチタニアが特に好ましい。
耐熱層8の無機粒子の平均粒子径の下限としては、1nmが好ましく、7nmがより好ましい。一方、無機粒子の平均粒子径の上限としては、5μmが好ましく、1μmがより好ましい。無機粒子の平均粒子径を前記下限以上とすることで、耐熱層8中のバインダの比率が大きくなることはなく、十分な耐熱性を有する耐熱層8を得ることができる。また、無機粒子の平均粒子径を前記上限以下とすることで、均質な耐熱層8を容易に形成することができる。なお、「平均粒子径」とは、透過電子顕微鏡(TEM)又は走査電子顕微鏡(SEM)を用いてJIS−R1670に準じて測定される値である。
耐熱層8のバインダの主成分としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等の合成ゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩等のセルロース誘導体、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド及びその前駆体(ポリアミック酸等)等のポリイミド、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のエチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステルなどが挙げられる。
耐熱層8の平均厚さの下限としては、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、耐熱層8の平均厚さの上限としては、10μmが好ましく、6μmがより好ましい。耐熱層8の平均厚さを前記下限以上とすることで、耐熱層8が破断することなくセパレータ5を溶着することができる。また、耐熱層8の平均厚さを前記上限以下とすることで、セパレータ5の厚さが不必要に増大することなく当該蓄電素子の体積当たりの容量を十分な大きさにできる。
袋詰正極板3において、図2に示すように、2枚のセパレータ5はその外縁(外縁近傍)の溶着領域Aで互いに溶着されている。より詳しくは、袋詰正極板3は、後述する正極板6の活物質積層領域の4辺に沿って2枚のセパレータ5が線状に溶着された複数の溶着領域Aを有する。
溶着領域Aが正極板6の周囲に形成されることによって、正極板6は2枚のセパレータ5の間の所定位置に正確に保持される。これにより、ガイド等を用いてセパレータ5の下端を負極板3の下端に位置合わせすることで、正極板6を負極板3の投影領域内により確実に保持することができる。また、セパレータ5の一方の側縁と負極板4の側縁とが重なるよう位置合わせしてもよい。
また、2枚のセパレータ5が溶着された溶着領域Aは、溶着されずに重ね合わされた2枚のセパレータ5(非溶着領域)よりも剛性が大きくなるので、この溶着領域Aをガイドに当接させることにより、袋詰正極板3を比較的容易かつ正確に位置決めすることができる。
溶着領域Aは、耐熱層8が破壊されて樹脂層7同士が溶着している。この溶着領域は、正極板6の外縁に沿って形成されるとよく、少なくとも正極板6の後述するリード部が延出する辺を除く外縁に沿って形成されることが好ましい。
この溶着領域Aには破壊された耐熱層8の砕片が存在してもよい。この耐熱層8の砕片は、溶着領域A内でも、ジグザグに延在、つまり溶着領域Aの長手方向と異なる方向に往復しつつ長手方向に延在する振動波状の線上において存在密度が小さくなっているとよい。つまり、溶着領域Aは、比較的小さい圧子により、耐熱層8を破壊しつつ形成される耐熱層8の砕片を幅方向に掻き分けながら2枚のセパレータ5の樹脂層7同士を溶着することにより形成するとよい。
溶着領域Aの平均幅の下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、溶着領域Aの平均幅の上限としては、1000μmが好ましく、750μmがより好ましい。溶着領域Aの平均幅を前記下限以上とすることで、2枚のセパレータ5の十分な接合強度が得られ、正極板6の保持を確実にすることができる。また、溶着領域Aの平均幅を前記上限以下とすることで、袋詰正極板3が不必要に大きくなることがないので正極板6が相対的に小さくならず、当該積層電極体1ひいては当該蓄電素子のエネルギー密度を十分に大きくできる。
溶着領域Aと正極板6の外縁との平均間隔の下限としては、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましい。一方、溶着領域Aと正極板6の外縁との平均間隔の上限としては、1.0mmが好ましく、0.8mmがより好ましい。溶着領域Aと正極板6の外縁との平均間隔を前記下限以上とすることで、2枚のセパレータ5を容易に溶着することができる。また、溶着領域Aと正極板6の外縁との平均間隔を前記上限以下とすることで、正極板6がセパレータ5及び負極板4に対して必要以上に小さくなることがなく、当該蓄電素子のエネルギー密度を十分な大きさにできる。
セパレータ5の外縁と溶着領域Aとの平均間隔の下限としては、1μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、セパレータ5の外縁と溶着領域Aとの平均間隔の上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。セパレータ5の外縁と溶着領域Aとの平均間隔を前記下限以上とすることで、溶着領域Aを容易に形成することができる。また、セパレータ5の外縁と溶着領域Aとの平均間隔を前記上限以下とすることで、セパレータ5の外縁の剛性を十分に大きくすることができ、袋詰正極板3の位置決めが容易になり、また当該蓄電素子のエネルギー密度を十分な大きさにすることができる。
溶着領域Aは、連続して形成してもよいが、電解質の注液性を向上するために、断続的に形成してもよい。
<正極板>
正極板6は、導電性を有する箔状乃至シート状の正極集電体9と、この正極集電体9の表面に積層される正極活物質層10とを有する。具体的には、正極板6は、正極集電体9の表面に正極活物質層10が積層される平面視矩形状の活物質積層領域と、この活物質積層領域から活物質積層領域よりも幅の小さい帯状に延出し、当該蓄電素子の電極に接続されるリード部とを有する構成とされる。
(正極集電体)
正極集電体9の材質としては、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、導電性の高さとコストとのバランスからアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金が好ましく、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。また、正極集電体9の形成形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極集電体9としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H4000(2014)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
正極集電体9の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい、一方、正極集電体9の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。正極集電体9の平均厚さを前記下限以上とすることで、正極集電体9の十分な強度を得ることができる。また、正極集電体9の平均厚さを前記上限以下とすることで、相対的に正極活物質層10の体積が小さくなることがなく、当該蓄電素子のエネルギー密度を十分に大きくできる。
(正極活物質層)
正極活物質層10は、正極活物質を含むいわゆる正極合材から形成される。また、正極活物質層10を形成する正極合材は、必要に応じて導電剤、結着剤(バインダ)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
前記正極活物質としては、例えばLiMO(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNiαCo(1−α)、LiNiαMnβCo(1−α−β)、LiNiαMn(2−α)等)、LiMe(XO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOF等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質層10においては、これら化合物の一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、正極活物質の結晶構造は、層状構造又はスピネル構造であることが好ましい。
正極活物質層10における正極活物質の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。一方、正極活物質の含有量の上限としては、99質量%が好ましく、94質量%がより好ましい。正極活物質粒子の含有量を前記範囲とすることで、当該蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
前記導電剤としては、電池性能に悪影響を与えない導電性材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、天然又は人造の黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属、導電性セラミックスなどが挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。
正極活物質層10における導電剤の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。一方、導電剤の含有量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。導電剤の含有量を前記範囲とすることで、当該蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
前記結着剤としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子などが挙げられる。
正極活物質層10における結着剤の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。一方、結着剤の含有量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。結着剤の含有量を前記範囲とすることで、正極活物質を安定して保持することができる。
前記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。また、増粘剤がリチウムと反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させておくことが好ましい。
前記フィラーとしては、電池性能に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。フィラーの主成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素などが挙げられる。
<負極板>
負極板4は、正極板6とは異なり、当該積層電極体において、袋詰めされずに積層されている。
負極板4は、導電性を有する箔状乃至シート状の負極集電体11と、この負極集電体11の表面に積層される負極活物質層12とを有する。具体的には、負極板4は、負極集電体11の表面に活物質層12が積層される平面視矩形状の活物質積層領域と、この活物質積層領域から活物質積層領域よりも幅の小さい帯状に延出し、電極に接続されるリード部とを有する構成とされる。
当該積層電極体1では、平面視において、この負極板4の活物質積層領域の内側に袋詰正極板3のセパレータ5の全ての溶着領域Aが内包される。従って、2枚のセパレータ5の溶着領域Aの内側に内包される正極板6の活物質積層領域は、負極板4の活物質積層領域の投影領域内に配置されるため、負極板4の活物質積層領域の外縁部に電流を集中させない。
(負極集電体)
負極集電体11は、上述の正極集電体9と同様の構成とすることができるが、材質としては、銅又は銅合金が好ましい。つまり、負極板4の負極集電体11としては銅箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
(負極活物質層)
負極活物質層12は、負極活物質を含むいわゆる負極板合材から形成される。また、負極活物質層12を形成する負極板合材は、必要に応じて導電剤、結着剤(バインダ)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層10と同様のものを用いることができる。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が好適に用いられる。具体的な負極活物質としては、例えばリチウム、リチウム合金等の金属;金属酸化物;ポリリン酸化合物;黒鉛、非晶質炭素(易黒鉛化炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
前記負極活物質の中でも、正極板6と負極板4との単位対向面積当たりの放電容量を好適な範囲とする観点から、Si、Si酸化物、Sn、Sn酸化物又はこれらの組み合わせを用いることが好ましく、Si酸化物を用いることが特に好ましい。なお、SiとSnとは、酸化物にした際に、黒鉛の3倍程度の放電容量を持つことができる。
負極活物質としてSi酸化物を用いる場合、Si酸化物に含まれるOのSiに対する原子数の比としては0超2未満が好ましい。つまり、Si酸化物としては、SiO(0<x<2)で表される化合物が好ましい。また、前記原子数の比としては、0.5以上1.5以下がより好ましい。
なお、負極活物質は上述したものを一種単体で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。例えば、Si酸化物と他の負極活物質とを混合して用いることで、正極板6と負極板4との単位対向面積当たりの放電容量及び後述する負極活物質の質量に対する前記正極活物質の質量の比が共に好適な値となるように調整できる。Si酸化物と混合して用いる他の負極活物質としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、コークス類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、フラーレン、活性炭等の炭素材料が挙げられる。これらの炭素材料は、一種のみをSi酸化物と混合してもよいし、二種以上を任意の組み合わせ及び比率でSi酸化物と混合してもよい。これらの他の負極活物質の中でも、充放電電位が比較的卑である黒鉛が好ましく、黒鉛を用いることで高いエネルギー密度の二次電池素子が得られる。Si酸化物と混合して用いる黒鉛としては、鱗片状黒鉛、球状黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛等が挙げられる。これらの中でも、充放電を繰り返してもSi酸化物粒子表面との接触を維持しやすい鱗片状黒鉛が好ましい。
負極活物質におけるSi酸化物の含有量の下限としては、30質量%が好ましく、50質量%より好ましく、70質量%がさらに好ましい。一方、Si酸化物の含有量の上限としては、通常100質量%であり、90質量%が好ましい。
さらに、負極活物質層12は、Si酸化物に加えて少量のB、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を含有してもよい。
前記Si酸化物(一般式SiOで表される物質)として、SiO及びSiの両相を含むものを使用することが好ましい。このようなSi酸化物は、SiOのマトリックス中のSiにリチウムが吸蔵及び放出されるため、体積変化が小さく、かつ充放電サイクル特性に優れる。
また、前記Si酸化物の平均粒子径は、1μm以上15μm以下が好ましい。Si酸化物の平均粒子径を前記上限以下とすることで、当該蓄電素子の充放電サイクル特性を向上できる。
前記Si酸化物は、高結晶性のものからアモルファスのものまで使用することができる。さらに、Si酸化物としては、フッ化水素、硫酸などの酸で洗浄されているものや水素で還元されているものを使用してもよい。
負極活物質層12における負極活物質の含有量の下限としては、60質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。一方、負極活物質の含有量の上限としては、99質量%が好ましく、98質量%がより好ましい。負極活物質粒子の含有量を前記範囲とすることで、蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
負極活物質層12における結着剤の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。一方、結着剤の含有量の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。結着剤の含有量を前記範囲とすることで、負極活物質を安定して保持することができる。
〔外装材〕
外装材2は、当該積層電極体1を収容し、内部に電解質が封入される。
外装材2の材質としては、電解質を封入できるシール性と、当該積層電極体1を保護できる強度とを備えるものであれば、例えば樹脂等であってもよいが、金属が好適に用いられる。換言すると、外装材2としては、当該積層電極体1をより確実に保護できる金属ケースを用いることが好ましい。
〔電解質〕
外装材2に封入される電解質としては、蓄電素子に通常用いられる公知の電解液が使用でき、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート、又はジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートを含有する溶媒に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)等を溶解した溶液を用いることができる。
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
当該積層電極体において、溶着部は、線状以外の形状に形成されてもよい。例として、溶着部は、正極板の活物質積層領域の外側に配置される複数の点状に形成されてもよい。
本発明に係る積層電極体及び蓄電素子は、例えば電気自動車、携帯電話等の比較的大きいエネルギー密度が要求される機器の電源として特に好適に利用することができる。
1 積層電極体
2 外装材
3 袋詰正極板
4 負極板
5 セパレータ
6 正極板
7 樹脂層
8 耐熱層
9 正極集電体
10 正極活物質層
11 負極集電体
12 負極活物質層
A 溶着領域

Claims (6)

  1. 樹脂層と前記樹脂層上に形成された耐熱層とを有する2枚のセパレータ間に、平面視矩形状の活物質積層領域を有する正極板を配置し、前記2枚のセパレータを正極板の活物質積層領域の外側で溶着した袋詰正極板と、
    袋詰めされていない負極板と
    を備え、
    前記袋詰正極板と負極板とが積層され、平面視において前記袋詰正極板のセパレータの溶着領域が前記負極板の投影領域に内包される積層電極体。
  2. 前記2枚のセパレータが前記正極板の活物質積層領域の4辺に沿って線状に溶着されている請求項1に記載の積層電極体。
  3. 前記線状の溶着領域の平均幅が10μm以上1000μm以下である請求項2に記載の積層電極体。
  4. 前記溶着領域と前記正極板の外縁との平均間隔が0.1mm以上1.0mm以下である請求項2又は請求項3に記載の積層電極体。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層電極体と、
    この積層電極体を収容する外装材と
    を備える蓄電素子。
  6. 前記外装材が金属ケースである請求項5に記載の蓄電素子。
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